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羅針盤戦争〜崩れゆく亡者の輪廻

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #七大海嘯 #フライング・ダッチマン #鬼火島

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●狂った歯車
「ァァァアアアッッ!!」
 フライング・ダッチマンは我を忘れるように荒れていた。カトラスで地面をザクザクと斬りつけ、青炎をジャングルに吐き出しては天に吼える。
「ハァ……ハァ……ぐっ、忌々しい者達め……」
 気配を感じる。その者達は幽霊船漂う鬼火島の海域を突き進み、必ずこの地までやってくる。
 生者の気配。それはどういうわけか、思考をぐちゃぐちゃと掻き回すような不快感を植え付けてきた。理由は――わかっているようで、わからない。己の深く深くに刻み込まれたが、己では見えぬもの。
 そんなもののために我を忘れるようなことがあっては、堪ったものではない。
「刻んでやる……焼いてやる……殺してやる!」
 理不尽な憎悪が、フライング・ダッチマンの中で燃え滾っていた。

●猛攻に次ぐ猛攻の末に
「もう少しです! フライング・ダッチマンを復活させない最後の一押し! いきましょう!」
 ロザリア・ムーンドロップ(薔薇十字と月夜の雫・f00270)の声に張りが出ていた。猟兵達の猛攻は少しずつだが確実に戦果を挙げている。
「というわけで鬼火島へ向かっていただける方々を募集しています! フライング・ダッチマンについては蘇生のユーベルコードが厄介というのが大事なところですね! それを抑え込むのが皆さんの『迷いなき心』です!」
 迷いなき心を見せることで、フライング・ダッチマンのユーベルコードを無効化できるという。心という無形の事象をどう具体化するか。それは猟兵それぞれの手腕にかかっていると言える。
「また、フライング・ダッチマンは先制でユーベルコードを放ってくることでしょう! それについても対処が必要に思います! 攻撃をまともに受けてしまえば一発でダウン、なんてこともあるかもしれませんからね!」
 攻撃を防ぎ、反撃の一手を叩き込む。フライング・ダッチマンとの戦いは、そういった工夫が求められる。
「他の本拠地でもどんどん攻略成功の報告が上がっています! 私も力いっぱい支援しますので、皆さんの頑張りでフライング・ダッチマンをやっつけましょう!」


沙雪海都
 沙雪海都(さゆきかいと)です。
 フライング・ダッチマンを殴り足りない人、もしくはこの機会に1回殴ってみようかな? という人。様々なご要望に応えるべく、頑張る所存……フライング・ダッチマン君に特別な恨みはないんです。

●フラグメント詳細
 第1章:ボス戦『七大海嘯『鬼火』フライング・ダッチマン』
 大切なことは二つです。【迷いなき心】を見せること。そして【先制攻撃ユーベルコード】に対処すること。
 この二点を考慮していれば何とかなるかもしれないし、何とかならないかもしれません。
 そこはまあ、皆さんの頑張りと時の運です。

 最後の一撃じゃい! ってなるかな? 結構判定とかドキドキするんですよ。

●MSのキャパシティ
 戦争ということもありますので、全てのプレイングを採用することが難しい場合も出てくるかもしれません。
 その際はご容赦頂きたく、また戦争期間中はシナリオ運営を継続して参りますので、採用に繋がらなかった方については次の機会をお待ちいただければ幸いです。

 合わせプレイングはお受けできません。申し訳ないです。
 でも複数採用リプレイとかは気まぐれで書いたりするのでソロ希望の方は明記しておいてください。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『七大海嘯『鬼火』フライング・ダッチマン』

POW   :    鎖付き骸球
【『燃え盛る邪悪な魂』の集合体である骸球】が命中した対象を燃やす。放たれた【骸球の『口』から溢れ出す】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    ブルーフレイムカトラス
自身に【怨念の青き炎】をまとい、高速移動と【カトラスからの青炎】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    冥鳥の羽ばたき
【飛び回る愛鳥ゼンタが青炎の羽】を降らせる事で、戦場全体が【生者を蝕む青き炎の海】と同じ環境に変化する。[生者を蝕む青き炎の海]に適応した者の行動成功率が上昇する。

イラスト:爪尾

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
WIZ
青炎の羽が降って来たら【火炎耐性】と【オーラ防御】で身を護る、生者を蝕む事から【呪詛耐性】や炎に焼かれ続ける可能性を考え【激痛耐性】も込めてジッと耐え抜く

チャンスは必ず来るはずだ!俺はこんな所でやられたりしない、負けたりしない!
周囲の炎から少しずつ【生命力吸収】で回復しながら【落ち着き】を持ってその時を待つ

無事に凌げたら反撃開始だ
黄昏の翼を発動、負傷を力に、顕現した翼により飛翔しまずは【破魔】を付与した退魔刀で冥鳥を叩き切る、叩き切った冥鳥の生命力を奪いさらなる反撃を

今度は俺の方が空中から攻撃させてもらおう!
【破魔】を付与した光陣の呪札の【乱れ撃ち】【貫通攻撃】で畳みかける!



●迷い在らざるは無きに非ず
 ゼンタはいつも自由だ。フライング・ダッチマンが如何な強者と戦おうとも、自由に空を飛んでいる。
 とはいえ主人の命には従うようで、フライング・ダッチマンが必要と思う時には青炎の羽を降らせて支援するのだ。
 そこは生者を疎み、蝕む青き炎の海。じっと耐え忍んでいるのは鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)だった。
(チャンスは必ず来るはずだ! 俺はこんな所でやられたりしない、負けたりしない!)
 命奪われてなるものか、と己に言い聞かせ、耐性を固めて耐えていた。オーラの守りに火炎への耐性を付与し、生者を蝕む呪詛の耐性、果てはそれでも凌ぎきれない場合に激痛への耐性まで。まるで羽化を待つさなぎのように、じっと、じっと。
 落ち着き払って機を待った。ただ、周囲の炎は生者を蝕む呪の類――そこから生命力を回収することは叶わなかったが。
 待つ、待ち続ける――だが時は待たず、そしてフライング・ダッチマンも待つわけではない。
「猟兵――何を思い、お前はここに立つ!」
 環境は十全に整った。フライング・ダッチマンはカトラスを低く構えながらひりょへ迫ってくる。行動の確度が上がり、素早くひりょの間合いに踏み込んできた。
 閃く剣身。距離は見誤らぬ。脇腹から、炎を遮る両腕、肩までを一直線に斬り裂いた。
「ぐぁっ……っつ……」
 幸い、激痛耐性が機能して、一歩後ずさるだけで踏み止まった。失う血は――ここはもう必要経費と割り切るしかない。
 どうあれ凌いだ。反撃するなら今だ。
『翼よ、今こそ顕現せよ!』
 翼とは――そのように象られた黒白のオーラ。だが翼と言うだけあって飛行能力は備えている。ひりょはフライング・ダッチマンの眼前から素早く宙に上がりカトラスの追撃を逃れると、空の冥鳥ゼンタ目掛けて、
「っらぁっ!!」
 退魔刀『迅雷』を縦一閃、振り抜いた。
 真芯を捉えたかに見えたその斬撃――しかし人の目には追いきれぬ飛翔旋回でゼンタもまた凌ぐ。手ごたえはあったが片翼半分。ゼンタはひりょから逃れるように滑空する。
 ゼンタもまた、青き炎の海の環境に適応した「者」だったか。目標を逸したひりょだが、そのまま宙に留まり続けるのでは何をしに来たのかわからない。
 真の標的は地上だ。
「今度は俺の方が空中から攻撃させてもらおう!」
 光陣の呪札、そこには破魔の力を付与している。それを空中から乱れ撃ち。フライング・ダッチマンの亡者の青炎、貫けるか――。
 見上げるフライング・ダッチマンはかわすでもなく、呪札の雨に打たれていた。炎を塞ぐように呪札が貼りつき、形ある霊体を浄化していくが。
「二度は問わぬぞ、猟兵」
 右手で呪札の端をつまむと、べり、と剥がして手の中で焼く。一枚一枚、実に単調な作業だった。
 浄化され炎を失った部位も、周りから新たな炎をもらい受け、また燃える。

 迷いなき心とは何だったか。己を信じることか?
 それは正しくもあり、正しくもなし。
 ただ一つ言えるのは、ひりょが抱く心は蘇生の力を封じるには及ばぬという事実を、フライング・ダッチマンが暗に語ったということだった。

失敗 🔴​🔴​🔴​

サリア・カーティス
あらあらぁ……追い詰められているからってその態度、少し見苦しいのではなくて?

先制攻撃の生者を蝕む炎は【激痛耐性】、【火炎耐性】で耐えるわあ。

耐えながらもひたすらダッチマンを倒すという執念だけで【切り込み】に行くわよぉ。貴方にこの鉄塊剣を向けるの、これで何回目かしらぁ?

もちろんそれだけじゃダメなのもわかってるわあ。斬り結んでいる隙に、【黒妖犬召喚】で喚んだ犬達にダッチマンを取り囲んで貰ったり背後から牙で攻撃してもらうわあ。生者じゃないから彼らは問題なく動けるでしょうし。

卑怯なんて思わない事ね。
何としても獲物は仕留めたいだけよぉ。

生者だけでなく死者にも追い詰められるのって、どんな気分かしらぁ?



●倒す――それは必定なり
 グリモア猟兵に伝え聞いたフライング・ダッチマンの姿は実に醜く。
「……ァア、来たか、来たかキタカ……われの炎髄を抉る者よ……」
 サリア・カーティス(犬の子・f02638)の存在を認めたフライング・ダッチマンは不快感を濃縮したような吐息を漏らす。
「あらあらぁ……追い詰められているからってその態度、少し見苦しいのではなくて?」
「追い詰め……られるだと? ……クカカ、この感情は……そういうことかァ!!」
 精神を苛むのは環境。この場に広がる炎の海ではなく、もっと大局を俯瞰する世界の有様。猟兵に踏破されつつある鬼火の島。それこそが元凶。
 生者を蝕む炎には他の例に漏れず、サリアも火炎と激痛の二枚重ね。それをセメントのように塗り固めて強固に己を支えるのは、眼前の敵、フライング・ダッチマンを討伐するという執念。
 何者にも曲げられぬ、迷いなき心。たとえ天地がひっくり返ろうと、サリアはそう在り続けるだろう。
「貴方にこの鉄塊剣を向けるの、これで何回目かしらぁ?」
 問うて数えぬ。それは此度の余興だ。真正面から激突する二人、刃を強く斬り結ぶ。
 薙げば縦に受け、斬り落とせば横に払う。得物の刃幅、重量の面では大きくサリアに分があるが、剣術、捌きの妙でフライング・ダッチマンもよく持ちこたえている。環境適応による利もあるだろう。
 無論、それはサリアも計算の内。刃を交える間に、サリアは少しずつ毒を盛るような包囲を作り上げている。フライング・ダッチマンはそれに気づかぬか。感情とは時に視界を曇らせる。
『さあ、皆で追い込みましょうねえ……!』
「――!?」
 炎の海に紛れた気配。気付くのが一刻、遅すぎた。黒毛赤目の黒妖犬がフライング・ダッチマンという中心点に向かって一斉に飛び掛かり牙を剥いた。
「ぐぉ――ぉおおあぁっ!!」
 背中、肩、腰、足と喰いつける部位には全て喰いついた。フライング・ダッチマンは青炎を熱く燃やすが、黒妖犬は全く怯みもせず牙をずずっと食い込ませてくる。その正体は霊だ。亡者の業が及ぶことはない。
「卑怯なんて思わない事ね。何としても獲物は仕留めたいだけよぉ」
 サリアの笑みには黒妖犬よりなお黒い影が差す。軽く振るわれた鉄塊剣が暴れ馬と化したフライング・ダッチマンの腹を裂いた。炎が腑のようにだらりと流れ落ちる。
「生者だけでなく死者にも追い詰められるのって、どんな気分かしらぁ?」
「気分なぞ……ぐぅぅ! これがっ、屈辱かァッ!!」
 亡者の頂点に立つ者が生者に遅れを取る――あってはならぬことを味わわざるを得なかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

非在・究子
ま、迷いなき、心、とかは、正直、よくわからん、が……と、とりあえず、お、お前が、倒れるまで、やらせて、貰う、ぞ?
さ、最初の、か、カトラスの、攻撃は、じ、自分のステを【ハッキング】、して、瞬間的にAGIを、上げて、避ける。だ、ダメなら、『ボム』の、無敵時間と、さ、最悪、『残機』の、消耗で、ゆ、UCを、起動、する……せ、セーブ、ポイントを、設置、して、む、無限、リスポーンで、こ、根競べと、行こうじゃ、ない、か。お、お前の、全部、見せて、もらう……そ、その上で【学習力】を、駆使、して、攻略パターンを、見つける。
あ、アタシは、ど、どんな、ボスキャラ、だって、攻略、して、みせる。
ただ、それだけ、だ。



●消失の一フレーム
「お、お前が、倒れるまで、やらせて、貰う、ぞ?」
「……その言葉、偽りはないな?」
 フライング・ダッチマンは口を平べったい三日月にして笑う。倒す、倒すと息巻いて突撃してきた者は幾度となく見た。非在・究子(非実在少女Q・f14901)の言葉、果たして真か、偽りか――。
 ブルーフレイム。それは怨念の青き炎――身に纏い疾駆する姿は一瞬にして究子の視界を塞いでいた。
 青い螺旋の突きが弾丸の如く飛ぶ。
「ハッキン、グッ」
 究子は自分のステータスへアクセスし、瞬間的に敏捷をバグらせ通常では起こり得ない速さへと到達した。鋼鉄の刃が頬を掠めていく様をスローモーションで目の当たりにしながらフライング・ダッチマンの側面へと回り込む。
「――甘い!」
 点は線に、線は面に。突き出されたカトラスはフライング・ダッチマンの回転に合わせて円弧を描き薙ぎ払いへと変わる。まだ逃れていない、被弾する――!
「ボ、ムぅ!」
 バチン、と破裂した閃光。刃は鏡面のように光を反射し、究子の体をすり抜けていく。
「食らい抜けるか……ならば!」
 通過したカトラスに炎を宿し、反転させた。斬れるまで繰り返すか――否、待ち受け、当て斬るのだ。
 究子は、やいばの、なかに、いる。
「あばっ、あああ、残、機っ」
 シャカシャカシャカシャカと減り続ける残機数。0になればゲームオーバー、しかし0になるまでなら、何度でも繰り返せる。
「死ん、で、覚え、る……お、お前の、全部、見せて、もらう、ぞ……!」
 究子が見る世界はある地点からぴょんとタイムリープして返ってくる。ああ、しんでしまうとはなさけない――とばかりにフライング・ダッチマンの前へと戻ってくるのだ。
「あ、アタシは、ど、どんな、ボスキャラ、だって、攻略、して、みせる。ただ、それだけ、だ……!」
 鬼火の島の戦いは負けイベントか? いや、もう何度も猟兵達は攻略している。攻略法が存在するとわかっている限り、究子は必ず掴み取りにいく――!
「フレー、ム……パー、フェク、トっ!」
 目まぐるしく変化する画面のたった一枚の画像。揺れ動く炎が全て非アクティブ、その瞬間に賭けた。
 ぐりゅ、ぐりゅと刃をずらすのは気持ち悪い。が、乗り越えた先は一刹那、全く熱さを感じない凪だ。
 究子は飛び込んだ、頭から。
「んぐぉっ!?」
 人間であれば鳩尾にあたる場所。フライング・ダッチマンの重心にもなる胴の一点を突き動かすと、不思議と紙切れのように吹き飛んでいった。
「ぅごぉ……偽りは、無きか……おのれェッ!!」
 ざりざりとカトラスで地面を引っ掻き滑り止まったフライング・ダッチマン。怨念はさらに熱く、燃え上がっていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

クロス・シュバルツ
アドリブ、連携可

迷いなき心……ですか。正直今の俺は迷ってばかりですが、それでも
今、この戦いの間だけは迷いを捨てて、道を切り開きましょう
少なくとも、この世界を破壊させるようなことを見過ごすわけにはいきませんから

先制攻撃は『ダッシュ』と『残像』で撹乱しながら回避してゆき、近くの分は魔力を込めた黒剣で骸球を切り裂いていく
防げない分には『オーラ防御』で防ぎ、炎を振り払う

接近した後、黒剣とカトラスで数度打ち合った後の一撃にUCを発動。闇の力でカトラスの防御をすり抜けて直接、生命を切り捨てる
UCによる『不意打ち』の一撃と同時に足元に鎖を放ち、敵『体勢を崩す』と『傷口をえぐる』ことで 追加攻撃を喰らわせる



●ただその刹那のみ、迷わぬと
 クロス・シュバルツ(血と昏闇・f04034)は内心複雑だった。迷いなき、とは自らを偽る行為に思えた。振り返れば分かれ道の連続で、迷って迷って、進まなければならない時が来て、自分で選んだのか、それとも選ばされたのか判然としない中で一歩ずつ進んできた道は、未だ正解かどうかよくわからない。
 死ぬまでにわかればいい、とゆったり構えてもいられない。死は不意に訪れる。それはまさに今かもしれないからだ。
 フライング・ダッチマンは迷う者を殺す。迷いなき、とは手が届きそうで届かない、唯一の武器だった。クロスにとっては闇を弄って一本の糸を手繰り寄せるような、不確実極まりない行為。
 だが、迷いは罪。ならば今、この一瞬だけ迷いを捨てよ、とクロスは己に暗示した。
 思う物は何でもいい。ならば世界か。この世界。縁は決して多いとは言えないが、守らねばならない、と。
 骸の口が眼前に迫っていた。クロスは体を左前方に倒しながら地を蹴って一度は回避する。だが邪悪な魂の集合体、骸球には鎖があった。
 フライング・ダッチマンは右腕に巻きつけた鎖を思い切り引いて骸球の軌道を変えた。引けば振り子のように弧を描いてクロスの背後へと迫る。
 迷わない一歩は、右だ。骸球の軌道の内側へ。残像を生じるほどの高速で鎖を潜り抜ける。フライング・ダッチマンは手元に返ってきた骸球をまた投じていた。
 正面――迷うな、進め、とクロスは心の内で叱咤した。信号を足の筋肉に送り、前へ、前へと押し出す意思で。
「っあぁっ!!」
 黒剣を薙いだ。骸球の口を裂くように滑り込んだ一撃で弾き返す。骸球はごぼりと炎を溢れさせていたが、オーラの守りを笠にクロスは駆け抜ける。
「ォオァァッ!!」
 骸球は使い物にならないと見てフライング・ダッチマンはカトラスを振り上げていた。クロスの首を刈り取る一閃が走る。それをクロスは感覚で追って黒剣を差し向けていた。
 火花散る剣戟。体の間近で受け続けていたクロスは返すべき一瞬を探っていた。
 そして正面から降ろされた刃が黒剣に弾かれ浮いた――その時に。
『その生命を斬獲する、真なる影の刃』
 魔力が黒剣を変質させる。逆転する攻防。フライング・ダッチマンは咄嗟にカトラスを引いて受けに使うが、クロスの刃は次元を超えてその守りを通り抜けた。
 クロスの攻撃はフライング・ダッチマンの想定の埒外を征く。炎の巨体に滑り込むと一気に厚みの半分以上を斬り裂いていった。
「グゥゥゥッ!?」
 青炎を吐き出し悶絶するフライング・ダッチマンに、クロスは間髪入れず鎖を発射し足元を掬う。そうして仰向けに傾いた体へ刃を捻じ込んだ。
「ァガアアァァッッ!!」
 深く刻まれた傷を抉る突きの刃。フライング・ダッチマンの体は刃面を滑りながら炎を零し、落ちていく。
 二、三、後ずさったが足がもたず、膝から崩れ落ちカトラスが地を突いた。
「グ……ガハッ……ハァ、ハァ……猟兵っ……その刃……われを喰らうかァッ!!」
 フライング・ダッチマンは己が零した炎の海で、怨嗟の咆哮を上げていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シノギ・リンダリンダリンダ
鬼火、憎悪に、憤怒に駆られてるのがお前だけだとお思いで?

死霊海賊たる私に怨念の炎?面白いですね
内なる呪詛の塊を放出し、鬼火以上の呪詛を纏って打ち消す
カトラスの攻撃くらいなら楽々と見切れるでしょう

そして【憤怒の海賊】を解放
ドールのガワを排出し、呪詛の霧、霧の中の黄金の星々、そして憤怒の意思のみの人型のモノへ
例えカトラスが向けられようとそれを腐食させ、炎を向けられようとそれを黄金に変える

あぁ鬼火!貴様は!我が海を我が物顔で荒らし!
あまつさえ!貴様は我が共の船の名を騙り!!
貴様が何だろうと!何に怒ろうと変わらない!
貴様はこの手で、殺す!!

霧を纏い、弱らせ、腐食させ、黄金に満たし、殺す
絶対、殺す



●身を滅すは因果応報
「鬼火、憎悪に、憤怒に駆られてるのがお前だけだとお思いで?」
「――ァア!?」
 膝をつくフライング・ダッチマンに冷たい視線を投げ落とすシノギ・リンダリンダリンダ(強欲の溟海・f03214)。まるで怒り狂うのがお前だけの特権ではないと言わんばかりに。
「われの……何が分かるかァ猟兵ィッ!!」
 憎悪は槍だ。突き出されたカトラスから炎が飛んだ。波打つ炎。そこには呪詛を返せ、と。
「分かるとか――」
 外殻、ドールの内に込めていた呪詛を引きずり出して放出し炎を弾く。正確には炎を被っていたが、その本質たる呪詛を打ち消し、ただの揺らめく酸化現象へと劣化させていた。
「あァ、分かるものかァァ!!」
 怒りに身を任せるとは、今のフライング・ダッチマンの姿を指すのだろう。とめどなく流れ落ちる炎の跡を地面に残しながら、バネのように弾け飛んで来たその巨体。カトラスの乱れ突きはチカチカと明滅する銀光だ。それを目で追うでもなく、微小の身体操作でシノギは後ずさりながら回避していた。
「――分からないとか」
 頭から胴体へと狙いを移した一突きに、縁を蹴り出すように踵に体重を預け、飛び退く。フライング・ダッチマンから見れば、くん、と凹んだ胴部が遠い。
「同列で語るな鬼火!!」
 着地した慣性でドールを捨て去り、シノギは死霊海賊の王へと変貌する。秘めたるは呪詛の霧、黄金の星々、そして憤怒の意思。練り合わされたシノギという一つの事象が、怒る亡者に槌を下す。
「あぁ鬼火! 貴様は! 我が海を我が物顔で荒らし! あまつさえ! 貴様は我が共の船の名を騙り!!」
 憤怒を具現する体は飛び出しフライング・ダッチマンへと突っ込んでいた。
 フライング・ダッチマンが突き出したカトラスは届いたが――ずぶとシノギに呑み込まれる。所詮は鋼鉄。シノギの体に触れればボロっと腐食する。
 二人を包むように広がっていく青炎は錬金され転がった。隔てる物はもう何もない。
「貴様が何だろうと! 何に怒ろうと変わらない! 貴様はこの手で、殺す!!」
 語るまでもない。そこにあるのは、殺すという一念のみ。
 濃青の喉元を鷲掴みにして絞り上げた。呪詛の霧は首から顔、そして全身に回り、フライング・ダッチマンを冒す。
「ぅご――おぉ……ゴフッ!」
 喉に詰まったのは黄金だった。内側を蝕んで、その体を構成する炎を一つ残らず黄金へと。
「――絶対、殺す」
 指を突き立てて首へ食い込ませると、唐突にぐしゅっと。捩じ切れた首がシノギの手から零れ落ちていく。
 真上を向き視線がかち合ったような気がしたが、虚ろな目に意思はない。
 残された体は滑り落ちて、頭に覆いかぶさって倒れた。後は地面に溶け込むように消えていくだけ。
 終焉を招く、フライング・ダッチマンという事象の死だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月23日


挿絵イラスト