●侵略者は退かない
「『終の王笏島』にまで到達されるとはな」
『六の王笏島』に存在するカルロス・グリードは興味深そうに呟いた。
「他の主力メガリスは全てあの島にある。痛手は免れぬ事になりそうだ」
侵略する側が侵略されるとは。コンキスタドールとしては中々に皮肉な事。それでもカルロスは侵略する者としての矜持を失わない。
「面白い。ここから勝利を奪い取ってこそ『七大海嘯』か」
異形のカルロスは虚ろと化した顔で確かに笑った。
●空虚の海を越えて
「皆、羅針盤戦争お疲れ様。大分相手を削れているけれど……まだ油断できないな」
ニイヅキは深々と頭を下げてからタブレットで海図を開き、見つかったばかりの六の王笏島を指さした。
「今回はここに居るカルロス・グリードを叩いて欲しい」
六の王笏島に存在するのはアリスラビリンスの力を具現化したカルロス。他のカルロスとは一線を画す姿に変じた彼は虚無の身体を以て全てを飲み込む力を宿した。
「身体の変化もあるけれど……六の王笏島に持ち込んでいたメガリス二つも変化させて使ってくる」
一つは『銀の鋏』。メガリス『ヤヌスの鏡』を変化させたそれはカルロス自身を切り裂くことで分身体を作り出し、本体同様に全てを虚無に飲み込もうとする。
一つは『金の鋏』。メガリス『玉鋼の塗箱』を変化させたそれは刃で攻撃を防ぐことでユーベルコードをコピーし、己のものにすることが出来る。
「虚無の身体、銀の鋏、金の鋏。この力を活かして先制攻撃を仕掛けてくる。これに当たってしまえば勝機はない。どうにか対処し、その後一気に反撃して欲しい」
先制攻撃は脅威ではあるが、それを凌ぐことが出来れば彼を倒すことも可能だろう。猟兵達はこの戦いの中でも成長し続けて来ているのだから。
「ヤツもオブリビオン・フォーミュラ。どの島でもそうだが、簡単に倒せる相手ではない」
グリモアが静かに輝く。猟兵が深淵を切り裂く合図。
「……でも、皆なら大丈夫だと信じてる」
春海らんぷ
春海です。奥様は無限増殖、旦那様は分身作り。へーぇ。
てなわけで一度旦那を殴っときましょう。
●シナリオについて
羅針盤戦争『六の王笏島』の決戦シナリオで一章構成です。
このシナリオには以下のプレイングボーナスがあります。
●プレイングボーナス
『敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する』
先制攻撃自体を封じることはできませんが、対処することは可能です。上手く凌いで反撃に移りましょう。
●カルロス・グリード(六の王笏)
全てを虚無に返す身体を持ち、銀の鋏で自分を切り裂いて増やしたり、金の鋏で受け止めてユーベルコードをコピーしたりと厄介な戦い方をします。
そこまでやらなければならない程度に追いつめられているということでしょう。
●注意事項
今回は全採用が難しいと思われます。申し訳ございません。
募集状況につきましてはタグにてお知らせいたしますので、ご確認くださいますようお願いいたします。
以上、よろしくお願いいたします。
第1章 ボス戦
『七大海嘯『六の王笏』カルロス・グリード』
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POW : メガリス『銀の鋏』
自身の【体をメガリス『銀の鋏』で切り裂くこと】を代償に、【新たな自分】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【全てを飲み込む『虚無と化した漆黒の体』】で戦う。
SPD : メガリス『金の鋏』
【メガリス『金の鋏』の刃】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、メガリス『金の鋏』の刃から何度でも発動できる。
WIZ : 虚無なる起源
自身が【地面や床に足を付けて】いる間、レベルm半径内の対象全てに【全てを飲み込む『虚無と化した漆黒の体』】によるダメージか【飲み込んだ物体を分解吸収し力と為すこと】による治癒を与え続ける。
イラスト:hoi
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
栗花落・澪
先制は【呪詛耐性、激痛耐性】を乗せた【オーラ防御】を纏い
目眩しとして使われても
【聞き耳】で音を聞き分け敵の位置把握
【学習力】で動きを推測し回避
でも多分僕がUC発動するまではコピー出来ないよね
動き回りながら足場に破魔を乗せた★花園を広げ
敵の移動範囲を制限
【空中戦】で敵の接近は許さず
【高速詠唱】で氷魔法の【属性攻撃】により攻撃兼凍結で足止めし
破魔を宿した【指定UC】
この広範囲技
防ぎきれるものなら防いでみてよ
足りなければ自分も焼かれるよ
それにもしコピーされても…破魔だから
敵であれ味方であれ、悪にしか効かない
僕にも効かない、効果を受けるのは自分だけ
残念だったね
光魔法の【全力魔法】で【浄化】攻撃
「――来たか」
猟兵の気配を察知したカルロスは虚無を広げる。触れたものを無に還す闇を壁の様に展開してしまえば敵は彼を捉える事も出来ず、不用意に攻撃をする事も出来ない。つまり、カルロスは一方的な蹂躙が出来る。侵略と同じく最初が肝心だ、とカルロスは気配を感じたそこに勢いよく金の鋏を振り下ろす。だが、何かが当たった感覚はない。猟兵が避けた事を瞬時に理解した彼は気配を追って刃を振る。掠めた感覚はあれど打撃を与える程の手応えはない。顔を上げたとき、きらりと雫が零れ落ちるように小さな光が見えた。
「そこだな」
光を的確に突けば今度こそバチリと小さな音を立てて手応えを感じた。そのまま薙ぐ様にして猟兵を吹き飛ばそうとする。勢いで一瞬足が離れ、晴れた闇の先で栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が微かに笑っていた。
「やっと届いたね?」
オーラに弾かれて自分を刺せなかった鋏からひらりと離れ、澪は静かに闇の無い場所へ足を付けた。地に足が触れた途端、淡く光ったのは左腕に巻くようについた聖痕。その力が澪の足元に光の花を咲かす。澪は踊るように軽やかに地を蹴り、花を増やしていく。カルロスは彼を捉えようと花を踏み散らすように闇を伸ばした。花は次々に闇に飲まれていくが、幾つかは残っていた。僅かでも残っていればカルロスの行動範囲は徐々に狭まっていく。この花を踏んでしまえばダメージを受けるかもしれない。カルロスは花の危険性を感じ取っていた。
「小賢しい真似を」
下手な傷を作らずに戦う事を選んだ彼が伸ばした闇はこれまでとは比べ物にならない速さで澪に襲い掛かる。漆黒が届く前に、澪の白い翼が力強く羽搏いた。
カルロスは全てを飲み込む虚無の力を使う際、地に足をつけている必要がある。刃も闇も届かない空中へ飛んでしまえばいくら王笏と言えどその力を十全に発揮する事は出来ない。それでも澪を地へ落とそうと虚無を伸ばし、金銀の鋏を宙に向ける彼の足元でパキリ、と小さな音がする。いつの間にか咲いていた氷の花がカルロスの靴を掴んでいた。
「やむを得ないな……」
氷を闇で消し潰し、澪に近づく為に跳ぼうとすると同時に、澪の呟きがカルロスの耳に届く。
「防ぎきれるものなら防いでみてよ。……足りなければ自分も焼かれるよ」
カルロスがその意を理解する前に、島全体を照らす程の眩い光が迸る。
(全ての者に光あれ)
仲間だけでなく、敵にも。全ての者に光を願う祈り【Fiat lux】は、アリスラビリンスの力に身を委ねたカルロスには痛みしか与えない。強い光と身を焼くような痛みを止めようと金の鋏でその力を受け止める。
「……中々の攻撃だな。だが、それをこの金色の鋏に覚えさせたのは愚かだったと思わないか?」
反撃の手が出来たと言わんばかりにカルロスがくつくつと嗤う。それに対して澪は笑みを崩さず残念だったね、と返す。
「その光はね、破魔の光だから」
「ハッタリを」
「やってみたいならやってみたらどうかな」
「善悪を決めるのはその者の基準でしかない。ならば、我が振るうのであれば焼かれるのはお前だ」
嘲るように口を歪め、写した力を振るう。再び光が島を覆う。光が消えた時によろけたのは光を放ったカルロス自身だった。焼くような痛みはなくとも、虚無の力を自らの手で削ってしまったようなもの。先程澪が放った光も、今カルロスが放った光も、強さは違えど敵であれ味方であれ、悪にしか効かない『破魔の光』であることは変わらない。故に今対峙している『本来の光の持ち主』を焼けはしない。カルロスの僅かな動揺を見逃さず、澪は祈るように手を合わせる。ユーベルコードに匹敵する強い光がカルロスを包み込んだ。
成功
🔵🔵🔴
エルシー・ナイン
七大海嘯もずいぶんと追い詰められているようですね。このまま一気に行きますよ。
金の鋏の先制攻撃は『限界突破』したサイキックフィールドジェネレーターによる『オーラ防御』で耐えきりましょう。多少の…いや相当のダメージは『覚悟』の上です。
UCのコピーですが、いくらカルロスといえど銀河帝国製の、しかも用途不明の試作兵器の使い方を一瞬で理解できるはずがありません。多少でも使い方に悩んでくれたらこちらのものです。
UCで呼び出した超光度照明弾をミサイルポッドに詰め込み『誘導弾』を『一斉発射』します。相手が怯んだらガトリングとブラスターの『乱れ撃ち』で追撃です。
この輝きで、あなたの虚無を吹き飛ばしてあげます!
「七大海嘯もずいぶんと追い詰められているようですね。このまま一気に行きますよ」
エルシー・ナイン(微笑の破壊兵器・f04299)は普段通りの笑顔のまま六の王笏に近寄った。笑顔であっても淡々とした声色なのは、彼女の性質。
「状況は認めざるを得ない。だが、『一気に行ける』などと馬鹿にされる程の劣勢でもない」
先程までの残光を闇で飲み込み、周囲の植物を融かして傷を治すカルロスは鼻で笑う。それに構わず至近距離で【銀河帝国製試作兵器≪デンジャラス・プロトウエポン≫】を展開したエルシー。高火力の兵器の一撃は並のオブリビオンでは一瞬で吹き飛ぶはずだが、カルロスは傷が癒えきっていないにも関わらず容易く金の鋏で受け止めた。
「なめられたものだな。至近距離で兵器を使えばどうにかなるとでも?猟兵は事前に情報を聞いてくると認識していたが……。まあいい。ご自慢の兵器の力、使わせて貰おうか」
カルロスが金の鋏から力を呼び出す。鋏が兵器の力を宿し、姿を変える。刃を阻害しない位置に取り付けられた銃やビーム発射装置、簡単に破損させない装甲。エルシーが呼び出していたのなら、もしくはカルロスがその兵器に触った経験があったのなら、この武器は最大の力を発揮する事ができただろう。装置の多さ故に重量が増してしまった鋏はカルロスの思うように振るえず土を突き刺した。信頼できる金の刃は喰らったユーベルコードの所為で高性能だが理解不能の兵器と化してしまった訳だ。
理解不能な武器であろうと一部でも使えれば良いとカルロスはどうにかエルシーに向けてビームを放つ。カルロスの力を乗せて放たれるビームは島を揺るがす程。だが、最初から攻撃を受けてでも金の鋏を弱体化すると覚悟を決めていたエルシーはサイキックフィールドジェネレーターの力を展開する。
(相当のダメージは覚悟の上です。絶対に耐えきります)
増幅装置の限界を超え、サイキックエナジーが暴発してもおかしくない程のオーラがエルシーを守る。それでも破られるか、という所でビームは途絶えた。
「力は足りぬが、足止めには十分なようだな。己の兵器を不用意に晒した事を後悔すると良い」
カルロスが鋏に搭載された銃口を向け、エルシーのオーラを破らんとする――が、一見簡素に見えた銃は、引き金を引いてもカチンと音がするだけで弾丸が放たれない。最大の隙が生まれた事にエルシーは僅かに笑みを深めた。全て演算通りに進んだ、と。
「これを待っていました」
【銀河帝国製試作兵器】で呼び出された超光度照明弾が手早くミサイルポッドに詰め込まれ、一斉発射される。任意の距離に飛ばせるミサイルポッドが最大の効果を齎す位置まで飛び、カルロスを照らす。夜間に撃っても昼間のように空を照らすであろう光の塊を放たれれば彼とて目を逸らさざるを得ない。先の戦闘で光による打撃があったのもあり、無意識で恐れたのかもしれないが。
「この輝きで、アナタの虚無を吹き飛ばしてあげます!」
光による攻撃を警戒していた彼に、無数の弾丸が撃ち込まれる。『LC9型ガトリングガン』と『ビッグ・ブラスター』の速射。弾の多さと速さに完全に不意を突かれたカルロスがエルシー目掛け闇を放つが、未だ弱まらない照明弾の前では十分に伸びない。エルシーの弾丸が撃ち尽くされても尚、虚無は彼女を絡め取る事は出来なかった。
成功
🔵🔵🔴
ミア・ミュラー
ん、この人を放っておくと、この世界だけじゃなくてアリスラビリンスも危ない、かも。だから、アリスとしてわたしが、倒すよ。
まずはコピーされたわたしのユーベルコードを防がないと、ね。動きは素早くなるけど、光を放つのは殴る蹴るのモーションの、あと。だからそれを「視力」でよく見れば避けることもできると、思う。近づいて直接攻撃されるのはまずいから、「ダッシュ」で距離を取って戦う、ね。
この技は寿命を、削る。時間が経てば必ず隙ができる、はず。そこを狙ってわたしもユーベルコードを、使うよ。あなたの虚無から生み出す光より、わたしのみんなの想いを変えた光の方がきっと、強い。想いの力……あなたに教えて、あげる。
(この人を放っておくと、この世界だけじゃなくてアリスラビリンスも危ない、かも。――だから、アリスとしてわたしが、倒すよ)
ミア・ミュラー(アリスの恩返し・f20357)は静かに決意する。かつてアリスラビリンスで助けてくれた愉快な仲間の為にも、脅威になる可能性のある漆黒のカルロスを止めたい。
【プリンセス・ドライブ】で自身に輝く魔法の光を纏わせ、高速移動と体術を強化する。逃亡生活で鍛えられた健脚もあり、カルロスが闇を展開するよりも早く間合いに入る。強化された拳が、カルロスの顔面を叩こうとしたが寸でのところで金の鋏に阻まれる。
「速いな、小娘」
「そう、かな」
その速さと力強さがユーベルコードのものと認識していたからこその防御だったのだろう。カルロスが即座に鋏を振るって自身を強化すれば昏い顔がミアに迫る。ミアは間合いに飛び込んだ時よりも更に速く走りカルロスから離れ、彼の動きを冷静に見て避ける。一瞬至近距離に迫られた高速攻撃の中でも彼女はカルロスの動きを見極めて避けきった。カルロスの癖を見抜いてしまえば、避け続けるのは容易。それでも反撃に転じず、彼女は虚無に追われる。相手が真意に気づかないように、引きつけ、離れ、引きつけ、離れ。間隔を保つように気を付けながら走り続けた。
ミアの使ったユーベルコードの特性に『寿命を削る』というデメリットがある。金の鋏の時間切れになるか、寿命を削る特性で相手が弱るか。どちらにせよ時間が経てば必ず隙が出来る。【プリンセス・ドライブ】を使い続ければミア自身も苦しくはなるが、走り続けられるのは心に残る優しい記憶があるから。助けてくれた人達の想いを繋げるように、自分も誰かを助けたい。その願いがミアを走らせ――カルロスが足を止めた。カルロスは金の鋏に残ったユーベルコードの最後の力を振り絞るかのように光を放とうとしたが、線香花火が終わるように落ちて消えた。
「使えん力だ……」
「虚無から生み出す、奪うだけの、あなたの光はとても小さい。あなたの虚無から生み出す光より、わたしのみんなの想いを変えた光の方が、強い」
ミアは僅かに痛む身体に構わず再びカルロスの間合いに入り、拳を顔にぶつけた。よろけた相手の腹や胸にも蹴りを入れる。本来なら存在するはずのしっかりとした手応えはなく、曖昧な、どろりとした何かを殴るような感覚に僅かに恐怖を覚える。
(アリスラビリンスの、オウガの、嫌な感覚がする……気がする)
でも、引けない。誰かを助けるという想いと覚悟が、彼女を動かす大きな力となっていた。カルロスに攻撃を阻ませるタイミングも見せず次々に体術を繰り出す。ユーベルコードの力をもう一度奪おうとした鋏も避け、周囲を取り込んで治癒させる事も許さない。防戦一方になったカルロスの微かな疲労の息が、虚無の中から響く。
「想いの力……あなたに教えて、あげる」
彼女の優しさ、祈り、そして恩返しの気持ちが光を重ねていく。ミアの手に宿った光はカルロスの落とした光とは比べ物にならないくらいに大きく、温かな光だった。アリスラビリンスに存在した漆黒を、かつての恐怖ごと断つように、光刃はカルロスの身体を斬りつけた。
成功
🔵🔵🔴
バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ絡み歓迎デース!
「とうとう面の皮が無くなったデスネ、カルロス……」
さておき。虚無の身体とはいったいどのようなものなのか。試させてもらいマース!
開幕自傷行為には驚きマスガ、それで分身を作るとは厄介な!
しかし、こちらに向けてくる武器(鋏)が物理的なのであれば、防ぐのは不可能ではありマセーン!
ファルシオンで受け流しながら、二体が固まるよう立ち位置を誘導しマース!
固まったところで、UC《火炎放射器》を起動!
全てを飲み込むと謳うならば、粘着して消えぬ炎を味わってくだサーイ!
燃え上がれー! カルロスー!
……カルロス・バーニングモード! みたいな強化にならなければよいのデスガ、と残心しマス。
「加減をしている場合ではないか……」
カルロスは自身に銀の鋏を突き刺し、紙を破るように切り裂いた。躊躇いの無いその行動を見ていたのはバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)。
「とうとう面の皮が無くなったデスネ、カルロス……しかも開幕自傷行為……」
憐れむような声色で呟きつつ、虚無の身体とはいったいどのようなものなのかと興味深くもある。そんな彼女に教えてやろうと言わんばかりに分身体が飛び掛かる。虚無の身体に金銀の鋏。厄介さは本体と全く変わらない。追撃するように本体もバルタンに鋏を向け、二人がかりで彼女の身体を破壊せんとする。それに顔色を変えずバルタンはファルシオンで四本の鋏を受け流した。可愛らしいメイドに見える彼女だが実は歴戦兵。二人くらいならば大した脅威ではない。
「甘く見られちゃ困りマース!」
バルタンが本体目掛けてファルシオンを振るうも分身体がそれを阻害する。ぬるりと割り込むように出てくる姿は少しばかり気味が悪いがそこでバルタンが怯む事はない。分身を斬ろうとすると本体が金の鋏で受け止める。バルタンの攻撃はユーベルコードを用いたものでなくただの剣術。カルロスは金の鋏で受け止めようが力を得られず、純粋な斬り合いを強いられ、激しい剣戟で闇を広げる暇もない。
暫くの間、金属同士が激しくぶつかり合う音が鳴り響く。一対二の戦いにも関わらず、バルタンは優勢とまでは行かずとも対処しきれている。更に手数を増やすべきと判断したカルロスが銀の鋏を持ち、自身を守らせるように分身体を前に立たせたその時、かちり、と機械的な音がした。
「六式武装展開、炎の番!」
戦場に不釣り合いなテンションでバルタンが叫ぶ。彼女が内蔵していた【火炎放射器≪フランメヴェアファー≫】が起動した音だった。爆炎かと見紛う程の勢いで放たれる火焔が二人のカルロスを焼く。粘着して消えぬ炎はカルロスの闇を以てしても飲み込み切れない。
「燃え上がれー!カルロスー!」
どこかで聞いたような、応援するような言葉を歌うように言いながら火焔を放ち続けるバルタン。カルロスは火焔を切り裂いて突破しようとしても粘着性のあるそれの前では鋏は鈍のよう。金の鋏で炎に触れ、粘着する炎の中で炎を放ってもバルタンに届くはずもなく。カルロスの前でぐじゃりと分身体が焼け落ちた。切り拓くための刃を二つ失ったカルロスは炎を斬ることを諦め、泥にとらわれたかのように重い足をずるりと引きずる。
炎の中から出てきたら再び火焔を浴びせてやろうと構えていたバルタンはカルロスが出てこない事に小首を傾げる。倒れた気配はない。まさか。
「……カルロス・バーニングモード! みたいな強化にならなければよいのデスガ」
倒しきれていないままそんな事になれば厄介だ。流石にそうなったらバルタンでも手こずるかもしれない。どうしたものかと考えていると遂に炎の中からカルロスが出て来た。
「……なんだそれは」
「あっ生きてマシタ!パワーアップもないデスネ!」
カルロスが闇で自身を癒す前にとバルタンは容赦なく火炎放射器を向けて火焔を放つ。戦闘で荒れた場所を少し整えたバルタンが去るまでカルロスはぼうぼうと焼かれ続けていた。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
(あの身体は…かの戦争で未確認であったオウガ・オリジン完全体の真の力だったやもしれませんね)
今を生きる人々の安寧の為、その侵略の野望を許す訳には参りません
六の王笏、折らせて頂きます、王よ
銀の鋏で我が身を切り裂く前に全身の格納銃器で●乱れ撃ちスナイパー射撃
狙うは身体でなく鋏
着弾の衝撃での●武器落としや可動部への弾の食い込み(破壊工作)による稼働の制限で代償行為を妨害
分身体の発生を遅らせUCの展開時間を稼ぎ戦場に発振器を射出
さて、全てを飲み込む虚無とはいえ王は御身の姿を保っています
つまり…制御された力という事
その均衡を崩せば、分身諸共自滅も有り得るのでは?
虚無の体を一時でも解除すれば接敵、剣を一閃
(あの身体は……かの戦争で未確認であったオウガ・オリジン完全体の真の力だったやもしれませんね)
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は敵対する漆黒を見て思案する。騎士道を掲げるトリテレイアにとって、弱きを蹂躙するカルロスは許されざる存在。今を生きる人々の安寧の為、その侵略の野望を止めなければならない。
「まだ来るか……だが我は負けぬ。このメガリスがあればいくらでも……ッ!」
銀の鋏を掲げ、再び自らに突き刺そうとするカルロス。それを狙うようにトリテレイアの全身に格納されていた銃器が無数の弾丸を放つ。弾丸が向かう先は一つ、銀の鋏だった。一つの銃弾では大きな鋏を落とさせるどころか傷つける事は出来ない。だが、無数の弾丸を撃ち込めば弱り切ったカルロスの手から鋏を落とさせる事が出来る。落とさせてもトリテレイアとしては分身体を生み出す妨害とするにはまだ足りない。トリテレイアは落ちた鋏の螺子を狙い弾丸を撃ち込む。ギ、と鋏が嫌な音を立てる。
「……小癪な。だが、少しばかり鋏を壊したところでどうにもならん」
カルロスは鋏を拾い上げ、分身を生み出そうと身体を切り裂く。だが、これまでの彼の経験とは違い、すぐに分身が出てこない。
「何だ?」
別の場所に現れたのか。それとも。カルロスが周囲を見回す。目に映ったのは杭状の発振器だった。それを見つけた数秒後に現れた分身体。その分身体の動きも酷く鈍い。
【対ユーベルコード制御妨害力場発振器射出ユニット≪アンチ・ユーベルコードフィールドジェネレーター≫】。それがカルロスに起こった異変の原因だった。トリテレイアが放った杭は相手のユーベルコードの制御を失わせる力場を展開させる。カルロスの行動範囲を予測したトリテレイアは多くの杭を使い、広い範囲に力場を発生させていたのだ。
「厄介な物を持つ」
ならば同じものを奪い、展開してしまえば互角だとカルロスは笑う。疲労故か『既にユーベルコードの制御を失っている』事を見落として。金の鋏が力場を突き刺すが、鋏に力は宿らない。それに気付いた時にはもうトリテレイアがゆっくりとカルロスに近づいていた。牽制しようと闇を伸ばすもその距離は短い。鈍い動きの分身は本体を守る盾にもならない。
「全てを飲み込む虚無とはいえ王は御身の姿を保っています。つまり、制御された力という事」
昏く何も感じさせない虚無の貌を見据え、トリテレイアは言葉を紡ぐ。まるで騎士が王へ進言するかのように。何も答えず、カルロスは闇を引かない。隙さえあれば目の前の猟兵を喰らってしまおうと、未だ逆転の可能性を信じて。傲慢な王に、騎士は更なる進言を――考えられる弱点を告げた。
「その均衡を崩せば、分身諸共自滅も有り得るのでは?」
「喧しい!我がそんな愚かな事をすると思うか!?」
怒りに任せた闇が伸びる。今度は力場で過剰強化された虚無が分身諸共トリテレイアを飲み込もうとする。分身を飲み込み更に強まった虚無は津波の様に広がったが、そこから動かなくなってしまった。
「……何」
「六の王笏、折らせて頂きます、王よ」
暴走にも等しい力の所為でほんの一瞬だけ見えた、カルロスの本来の姿。トリテレイアはその一瞬を逃さず剣を振るったのだ。咄嗟に虚無で繋ぎ止め、傷を癒そうとするカルロスの身体がぼたぼたと崩れ始める。回復が間に合わないと悟ってもカルロスはトリテレイアの首を、その先にある世界を掴もうと手を伸ばす。
「嗚呼、嗚呼。猟兵め、どいつもこいつも腹立たしい……!」
何も掴まないまま、虚無の身体は崩れ落ちた。
大成功
🔵🔵🔵