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羅針盤戦争〜鮫を喰らう『鮫牙』大帝

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #七大海嘯 #ザンギャバス大帝 #鮫牙島

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●餌はいつでもそこにある
「グリモアァ……またチカづいてくるな、グリモアァァア!!」

 鮫牙島。七大海嘯が一人、『鮫牙』ザンギャバスの支配地である。そしてその上ではまさにその男、7mもの巨人以上の巨漢が涎を地に降らせ、血走った目で空へと吼え猛っていた。
 誰が一目で理解できるだろう。無傷、部位の欠損も無しのこの男が、ここまで幾度の猟兵達の攻撃を、ユーベルコードをその身に受けてきたという事を。
 複数の自分を持つ『王笏』、痛覚を遮断する決戦形態を持つ『舵輪』、死ぬ度に蘇生できる『鬼火』、次々に分身を生み出し回復できる『桜花』。思えば七大海嘯はタフさ、死への耐性を持つものが多い傾向にあった。だが、その中でもこの男は別格である。何故なら彼は蘇生したわけではない。本当にここまで一度も死んでいないのだ。それこそが『鮫牙』が持つ『無敵』。決して死にはしない、単純かつ理不尽な特性。オブリビオンでさえも避けられないはずの死を全く持って受け付けない。その秘密はまだ分からない。だが、猟兵が持つ『グリモア』。それに対しこの男が異常な感情を持っている事と、それを扱う者たちへの異常な殺意だけだ。

「匂いが濃いヤツも、薄いヤツも、関係ねぇ……全員、ぶっコロしてやるぅぅああ!!」

 鮫牙が吼える。その咆哮に応え、どういう仕組みか鮫牙島が海へと沈んでいく。これも果たして何度目か、島は黙して語らない。そして幾らか沈み始め、ザンギャバスも海に沈み始めた時。

「ルゥアアアアアア!!」

 彼の腕が巨大な海蛇へと変わり、海を奔る。そしてその牙がこの辺りの海域に大量にいる巨大鮫を捕らえ喰らいつくと、その身が伸縮。ザンギャバスの手元へと戻り、彼はその鮫に無造作に喰らいつく。鮫がもがくのを意に介さず、あっという間にその身体を解体し、喰らい、骨を砕き咀嚼、次々と周辺の鮫を同じく捕食していく。

「コレで、もう戻るこたぁねぇ……今度こそ、今度こそ……コロしてやる……グリモアアァァアアアアア!!!!」

●『しばらく旅に出ます、探さないで下さい』(予知した瞬間サイレンが残そうとした手紙)
「ボク絶対に現地いかないからね!そして絶対なんとかしてね!ボク今夜の夢に出て来そうなんだから!グリモア猟兵いじめ反対!」

 いつもになく涙目でがくがく大げさに震えている九十九・サイレン(再誕の18不思議・f28205)。ため息をつきながらも説明を始める。

「えーっと、まずは全部の拠点島発見おめでとうー。色々きな臭いけど、後は敵を攻略してくだけだし、もう一息頑張ってこう!
 ってとこで水を差すけど……残念ながら今回の七大海嘯は倒せる相手じゃないんだ。できても追い返すまで。だけどそれができれば、新たに解放できる島がある。だからきっと無駄じゃない。それに、コイツはなんとなくできるだけなんとかしておいた方がいいヤツって気もするしね……。そう、相手は『鮫牙』ザンギャバス。なぜかグリモア使う奴みんな殺すマンになってる超巨人野郎。なんでだろうね、意味わかんないね!?」

 自身もグリモアを扱うサイレンが全く他人事でない顔で嘆きつつ、説明を再開する。

「今までは飢餓状態にするまで耐えたり時間を稼いでなんとかしてたけど、今回も最終的にはそうするしかないかな。ただ今回は耐えるだけじゃダメだね。まず、皆が行くと島が海に沈む。要は海のフィールドになっちゃうんだよね。ザンギャバスは信じられないスピードで泳いでくるからほとんど不利点は無い。その上、海域には巨大鮫がうようよ泳いでて、ザンギャバスは攻撃し終えたり攻撃を受けたりして腹が減ったらその巨大鮫を食べちゃって腹を満たしちゃうんだ。つまり今までの耐久って訳にはいかない。泳ぐ巨大鮫か、巨大鮫を食べようとするザンギャバスか。何か対処もして貰わないと撤退しないザンギャバス相手にジリ貧になっちゃうだろうね。と言う訳で、先制攻撃もしてくるからそっちとも合わせてお願いね!

 ザンギャバスの行動は3種類。掴みかかってどんな重量の相手でも投げ飛ばしたり、身体部位を竜や獅子の頭に変えて噛み付いてきたり、蛇の噛み付きで与えた毒の追加ダメージを与えてきたりするよ。ちなみにこの毒は機械や無機物相手には腐食毒になるらしいから、油断しないでね!
 それからグリモアの匂いに反応はするけどグリモア猟兵だけ狙うって訳じゃなくて猟兵全般に向かってくるみたいだから些細な事だけど注意ね!

 相手は『無敵』。だから皆の攻撃も効いている感じはしないかもしれなくて相手をしてる意味を見失うかもしれないくらいだけど、でもきっと退けまくる事には意味がある筈だよ!こうなったら鮫牙島も完全制圧目指しちゃおう!」

 サイレンは猟兵たちへの話を終えると転移の準備を開始した。


タイツマッソ
 どうも、タイツマッソです。今回は『鮫牙』戦のボス戦シナリオをお送りします。

 難易度はやや難なのでご注意ください。場所も海中となります。

 プレイングボーナスは『敵の先制攻撃ユーベルコードと「巨大鮫を喰おうとするザンギャバス」に対処する』であり、先制とザンギャバスへの対処、両方の対処が充分とみなした場合プレイングボーナスとします。あくまでプレイングボーナスなので対処なしでも苦戦とはなりませんが、やや難でもあるので判定は運が絡みますのでご容赦を。

 敵の技は、ザンギャバスポイズンのみ、『機械や無機物(一部除く)には腐食毒と化す』と追加します。

 プレイングはできるだけ採用しますが、解釈が難しい、技能の羅列のみ(技能をどう使うかをお願いします)、タイミングやその他内容次第では採用できない場合がありますのでご容赦ください。
 また敵の性質故に攻撃が通りにくい描写になりがち、即死や確実に殺す描写は難しい旨も注意ください。

 プレイング受付は20日9時から開始し、執筆返却は21日から順次開始します。
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第1章 ボス戦 『七大海嘯『鮫牙』ザンギャバス』

POW   :    ザンギャバスハンド
レベル×1tまでの対象の【腕や頭】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD   :    ザンギャバスファング
自身の身体部位ひとつを【竜、山羊、蛇、蛇のいずれか】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ   :    ザンギャバスポイズン
攻撃が命中した対象に【肉体の部位「蛇」からの猛毒】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【肉体を侵食する猛毒】による追加攻撃を与え続ける。

イラスト:白

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

メアリー・ベスレム

なぁにそれ、ズルいわ
何度も何度も飽きる程
追いかけっこさせられて
ここでやっと殺せると思ったのに!

島が沈んでしまう前
流れ込む水を【足場習熟】【水上歩行】で駆け上がる
もし呑まれても【息止め】海底蹴って【ジャンプ】して
水中戦は避け海上で
【逃げ足】活かして立ち回る

海面下に【聞き耳】立てて
【野生の勘】で身を躱す

人喰いには垂涎のお尻と
【誘う獲物】で【誘惑】
敵の欲望掻き立てて
食欲、それともそれ以外?
鮫なんて目に入らないぐらい
夢中にさせてあげるから!

相手をその気にさせてはしまうけれど
その分、効果は強力だもの
それに浮き沈みを繰り返すのは
ただ泳ぐよりも疲れる筈だから
後はまたお腹が空いて帰るまで
追いかけっこし続ける


イスラ・ピノス
あれが噂のザンギャバス…
普通に戦うとお手上げな感じでも海の中なら話は別。
セイレーンとして負ける訳にはいかないよ。

まずは回避防御に専念!
ソーダオーラでしっかり身を包みつつ水中での回避運動。
逃げ切れなかったら水上に跳んでの水上歩行ダッシュで意表を突くとか
先制凌ぎ切ろう!

逃げ切ったらこっちのターン!
高速泳法からクイック・ドルフィンを使うまで更に加速!
オーラ衝撃波はザンギャバスの近くに巨大鮫を寄せ付けないことを最優先に泳ぐ間使いまくるね!
捕まらないよう気をつけながら秒間目一杯撃って鮫飛ばし&余裕あればザンギャバスへの牽制!
攻撃が効かなくても邪魔が大事だよね
出来たら特にその顔目掛けて放って視界も塞ごう!



●海を駆ける者たち

「結局本拠地でも無敵ぃ……?なぁにそれ、ズルいわ。何度も何度も飽きる程追いかけっこさせられて、ここでやっと殺せると思ったのに!」
「まあまあ……」

 まだ島が沈む前、ザンギャバスからはまだ遠い陸地に辿りついた2人の猟兵。愚痴をこぼしたのはメアリー・ベスレム(WONDERLAND L/REAPER・f24749)。この戦争において、襲撃してきたザンギャバスに相対すること実に8回。部下ですら喰らうその人食いを殺せない事にやきもきしつつ、けれど本拠地でならもしかしたらという希望を抱きあらゆる時間稼ぎの手段でここまで相手をしてきた。だが結局本拠地発見においても彼を殺す手段は発見されずここでも追い返すしか手は無いと知り、頬を膨らませてやや拗ね気味になっている。
 一方、彼女をなだめているのはイスラ・ピノス(セイレーンの冒険商人・f26522)。この世界にて育ったセイレーンであり、ザンギャバスとの相対は初めてだが、倒しきれないにせよ勝てば島を1つでも七大海嘯から取り戻せるというのもあり気概は決してメアリーに負けるものではない。

 その時、二人の耳に男の野太い声が聞こえるとともに、足元があっという間に海から寄せてきた海水に漬かっていく。島が沈んでいく例の減少だろう。

「あの声、間違いないわ。あの人食い豚、こっちに気付いたみたい」
「みたいだね。僕はこのまま最初は潜るけど」
「生憎、わざわざ水中戦に付き合ってやるつもりはないわ!」

 メアリーは少し飛びあがると、押し寄せる海水をまるで地面のように踏みしめる。猟兵の技、水上歩行である。当然沈んでいくのでどんどん高い波が寄せるが、メアリーは人狼特有の素早い身のこなしでどんどん水面を跳ねて『登る』。決して海へ沈みはせずに自身の得意なフィールドを維持していく。その妙技にイスラは感心しつつ自身は海中へと沈んでいく。

「確かに不利なとこに付き合ってあげる理由は無いよね。でも、それは普通の人の話。普通に戦うとお手上げな感じでも海の中ならむしろ話は別。セイレーンとして負ける訳にはいかないよ」

 彼女はセイレーン。深海より生まれし水の精霊。海はむしろ彼女らにとっては生まれし故郷。だからこそ、そこで我が物顔で暴虐を為すザンギャバスは不倶戴天の敵である。彼女は海の中を泳ぎ、ザンギャバスの元へと向かう。
 果たして、イスラの前にザンギャバスの巨体、そして近くを泳ぎ回る巨大鮫の群れが見えてきた。ザンギャバスはイスラ、そして頭上を見上げ興奮した顔で叫ぶ。

「来たな、グリモアを使う奴らぁぁぁぁ!ウエにもいるなぁ?匂いでわかるんだよぉ……しかも今まで、何回も何回も嗅いだ匂いだぁぁぁ!今度こそ喰ってやるぁああああああ!!」
(うわぁ、覚えられてる……)

 流石にザンギャバスといえど8回も遭遇したメアリーは覚えていたのか、どうやら丁度頭上まで来ているらしい彼女へも殺気を露わにする。ザンギャバスは両腕それぞれを蛇と竜の頭に変えると、蛇の腕を海上に、竜の腕をイスラへと伸ばしてくる。その速度は速く、あっという間にイスラの前に竜の咢が迫る。

「おっと、そう簡単には捕まらないよ! ソーダオーラ!」

 彼女は泳いで竜の頭を回避、そして体から弾けるオーラを出すとそのしゅわしゅわした刺激を竜の目に当て、その眼を晦ませその間に距離を取る。

「逃がすかぁぁぁぁ!!」

 だが竜もイスラを追う。視界はまだ直っていないようだがそれでもセイレーンであるイスラにも負けないほどの速度で海中を進んでいく。

(流石にあんなでも七大海嘯……余裕で撒いてその間にUCを使える程の相手じゃないか!)



 一方、自分が狙われたと気づていない筈の海上のメアリーは。

「海中を進む音……!やっと気づいたわね人食い豚!」

 海を蹴りすかさず身を翻す。刹那、さっきまでいた位置を突き破り蛇の頭が飛び出してくる。彼女には深海を見通すほどの視力は無い。だが、人狼としての聴力で蛇の頭が海を進んでくる音を感知し、直前で回避してみせたのだ。蛇がすかさず襲い掛かるが、メアリーはその身のこなしで次々に回避し海の上を駆けていく。攻撃は無駄だとわかっている。ならばむしろ逃げに徹し集中することもできる。そうなれば、スピードに秀でた人狼であり、海上という地上と同じアドバンテージを保っている彼女の逃げ足を追うのは至難の業である。時折は潜り奇襲をしかける蛇だが、耳、それに加え獣としての野生の勘もフルに発揮した彼女にはまるで奇襲を為しはしない。ましてや相手はあのザンギャバス。フェイントだのなんだのを仕掛ける事はできない、と彼女はここまでで知っている。

「さて、そろそろ……ん?」

 海中から別の音を聞き、メアリーが目を向ける。と、その水面を突き破り飛び出てきたのはイスラだった。イスラもまた水上歩行ができるのでそのままメアリーと同じく海面に立つ。

「ちょっ、水中で勝手にやるんじゃなかったの?」
「ごめん、ギリギリになってきたんで上がって来ちゃった!」
「ってことは……っ!」

 メアリーがこれまでとは比べものにならない程の音を聞くと大きく飛び退く。そして、その海面を突き破ってきたのは巨体。竜の腕ではない、それは紛れもないザンギャバスの巨体。業を煮やしたザンギャバスは竜の腕で追いながら自身もイスラを追ってきた。それにより距離が詰まってきたため、水上へと上がってきたのだ。ザンギャバスは空中で2人の姿を視認する。

「逃がすかぁ……そしてやっぱおめぇかああ、なんどもナンドも、食べられなかったおめぇ……今度こそ、今度こそコロしてやるぁああああああ!!」
「ふん。本当はそれアリスのセリフなんだから。最後には殺してやろうと思ってたのに……でもいつか、絶対殺してやるわ」
「今、おれが、ころすって、いってんだろォオオオオオ!! でも、少し腹減ったからなぁ……しょくじしてから、殺してやるぅぅ!!」

 ザンギャバスが腕を海中へと伸ばそうとする。二人を追った分の体力を海中の巨大鮫で補おうとしているらしい。だが、メアリーはさせはしない。むしろ、ザンギャバス本人がこうして目の前に業を煮やして現れる、この瞬間こそが彼女の待ちわびたものだった。

「させないわ。今までよりは少しは頭を使ったみたいだけど、アリスに他の食事なんて関係ないの。だって、アリスは他のものに見向きなんてさせないんだから! 『ほら、アリスを食べたいんでしょ?』」
「ウ、ガァッ!?」

 メアリーが自分のお尻を強調するようなポーズを取ると、海中に腕を伸ばそうとしていたザンギャバスの動きが止まり、その視線がメアリーへと釘付けになる。これこそ彼女の技【誘う獲物(セダクティヴヴィクティム)】。対処の欲望に自身への食欲を植え付け、更にその欲望を操作することができる技。これにより彼女は自身への食欲を植え付けるとともに、巨大鮫等の他の対象への食欲を一斉に排除。完全に自分へとターゲットを集中させる事で、巨大鮫への食事を見事に妨害した。とはいえだ。

「食べる、食べるぅぅうぅ、おめぇ、食べるぅぅぅぅぅ!!!!」

 デメリットとして、ザンギャバスの戦闘能力を上げてしまうという点がある。それはつまり攻撃力そして速度。今まで以上のスピードで迫るザンギャバスにメアリーも逃げるのはかなり難しい……しかし忘れてはいけない、ここにはもう1人猟兵がいる。

「させない!」

 メアリーが足を動かしていないにも関わらず、今まで以上のスピードで海上を移動し、ザンギャバスの空振った巨体を海面へと打ち付けた。

「大丈夫?急発進しちゃったけど」
「アリスはこれくらいで酔ったりしないわ!」

 よく見れば、メアリーの足を水中から隙を突き潜っていたイスラが掴んでおり、超高速泳法で泳ぐ事でメアリーを高速で移動させていたのだ。これこそ彼女の【クイックドルフィン】。超高速泳法の実現、そして衝撃波の発生による加速でのブーストをかけての高速度を維持できる技。ザンギャバスのスピードアップは想定内でアリ、その為に連携する手はずだったのだ。

「っと、進行方向に巨大鮫。悪いけど、目の前に来たら反射的に喰いついちゃうかもしれないから、ちょっとどいてて!」

 イスラがソーダオーラを伴うしゅわしゅわした衝撃波を巨大鮫たちに放つ。手加減してはいるが、その衝撃に鮫はびっくりして遠くへと逃げていく。同じ海の者としては申し訳なく思うが、これも彼らの命の為ではある。

「後ろの方から潜航音!来てるわよ!」
「おっけ!完全にソナーみたいになってるね!」

 メアリーからの知らせで後方を確認すればそこには追ってくるザンギャバス。如何にかなりのブーストをかけてはいるとはいっても相手は七大海嘯、それも強化されている。少しずつイスラへと距離を詰めてくる。

「逃がさねぇええええ!食わせろぉぉぉぉぉ!!」
「攻撃は効かなくても、視界だけなら!」

 イスラはそのザンギャバスの顔面めがけ、衝撃波を発射した。被弾しても彼にダメージは無い。だが、そのしゅわしゅわとした泡はザンギャバスの視界を封じ、確かな刺激を与えて怯ませる。

「ぐぅうああああ!ちっくしょぉぉぉぉ!!まてぇえええええ!!」

 振り払い再び追うザンギャバス。それを見ながらイスラは海上で運んでいるメアリーに声を掛ける。

「このまま海面スレスレでいいんだね?」
「ええ。浮き沈みを繰り替えさせた方が相手も疲れやすい筈だもの。さあ、このまま効果が切れるまで追いかけっこよ。出来る限りアイツの腹を減らさせてやるわ」
「りょーかい!セイレーンとして、絶対に追いつかせないって保証するよ!」

 メアリーの足を掴んだままイスラが驀進し、その後を盲目にザンギャバスが追う。メアリーしか目に入らないザンギャバスの腹は確実にそのリミットまで近づいていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

八重咲・科戸
ぎょわ゛ぁぁー!?食べないでくださーい!!?

空中戦で風を纏いダッシュ、逃げ足で逃げ回る
牽制で鎌を振るって属性攻撃で真空刃を飛ばして切断を試みるが

あ、ぜんぜんきいてないなこれ

だが全力魔法で思いっきり吹き飛ばして間合いを離すことはできる筈!

そしてイタチシャーク作戦パート2だ!
ユベコで手にした瓢箪から津波のように軟膏薬が!

それをザンギャバスとサメにぶっかけてサメは戦域から避難させて

ザンギャバスは…うわっきもちわる(思わず直球)

デブの巨漢に鎌鼬の耳と尻尾とか似合わないなー

よし、じゃ、泳がずに海底に沈んでいろ、出来れば永遠に!
……無理だろうなぁ、時間は稼げるだろうが
ダッシュで逃げる用意はしておくか



●イタチシャーク作戦

「ぎょわ゛ぁぁー!?食べないでくださーい!!?」
「まてェエエエエエエエ!!」

 水上にて、風を纏い浮遊する鼬の妖怪、八重咲・科戸(一人一組の鎌鼬・f28254)を血走った目で泳いだザンギャバスが追いかけていた。先の猟兵らと交代してきてみればすっかり怒り心頭のザンギャバス。慌てて自身の鎌鼬所以の風の力で空を浮遊し逃げはするが、ここはグリードオーシャン。高高度へは飛べずにどうしてもザンギャバスの射程圏内である水上付近を飛ぶ事しか出来ないのだ。

「くわせろぉおぉぉぉ!!」

 ザンギャバスの腕が獅子の頭に変わり、科戸に喰らいついて来ようとする。

「させない!イタチシャーク作戦、喰らいついてくるところに真空刃!」

 科戸が鎌を奮うと真空刃が発生。喰らいついてこようとした獅子の口に命中する。鎌鼬としての風で斬り裂く力。普通ならばこれで口内がズタズタになってしまうはず、なのだが。

「おれに、攻撃は、効かねえええええええ!!」
(あ、ぜんぜんきいてないなこれ……でも!)

 獅子の部分もザンギャバスの一部。そしてザンギャバスは『無敵』。攻撃で傷つき怯むことはない。だが、科戸もそれは想定内。本命はその後、周囲の風を鎌に収束しての返しの一撃。

「イタチシャーク作戦・真! 攻撃は効かなくても吹き飛ばす!!」
「ぬ、おぉぉおぉおおお!!」

 『無敵』はつまり死にはしない。そして個体にもよるが攻撃で傷つかないということ。つまり、風による強烈な吹き飛ばしの力。これに抗える特性では決してないのだ。科戸が放った全力の突風は、踏ん張りの効かないザンギャバスの身体を大きく吹き飛ばす。

「そしてイタチシャーク作戦パート2だ! 今だけお前たちも我が一族の一員だ!」

 この隙こそが科戸の欲しかったもの。瓢箪を取り出すと、その中から一族秘伝の軟膏薬が津波のように噴き出すと、周りの海へと次々に降り注いでいく。それは海中にいた巨大鮫にもかかっていく。そして鮫に鼬の耳が生え、尾びれの先が鼬の尻尾に変わる。これこそ【捌式・悪禅妙薬】。軟膏薬を塗布した対象に鎌鼬の部位、能力、連携能力を与え、その肉体を操作することができる秘術。

「さあ、遠くへ逃げろ!それはもう急いで逃げろ!」

 科戸が操作すると巨大鮫たちはあっという間に遠くへと退避していく。ザンギャバスに喰われない距離へと。

「さて、あっちは……うわっきもちわる」
「テメェエエエエエエエエ!!!俺の食事を、ドコへやったあああああ!!」

 科戸が目をやった先には、戻ってきたザンギャバス。そしてその身体には鼬の耳と尻尾が生えていた。そう、さっきの軟膏薬の津波はザンギャバスにもかかっており、彼もまた術の対象内になったのだ。そしてその姿は科戸としてもあまり同族として迎え入れたくないものだった。なにせ7mの巨漢デブ男にまるで萌えにのっかったような鼬耳と尻尾が生えているのだ。目を逸らしたくなるのも無理はない。

「こうなったら、おめぇを食べ」
「もうそれは通じない。よし、じゃ、泳がずに海底に沈んでいろ、出来れば永遠に!」
「グ、ガァ!?」

 科戸の術は対象の肉体を操作する。つまり、体の動きを完全に止めてしまえばもう攻撃も出来ない。そして海である以上、そうなればもう沈んでいくしかない。これもまた攻撃ではなく致命傷を与える類のものではないのでザンギャバスにも通じる。

「テ、メェエエエエエエ!!」

 ザンギャバスが悔しそうな顔で動けないまま海底へと沈んでいく。科戸はなんとか一息をつくが、油断しないよう顔を引き締めた。

「永遠に、は無理だろうなぁ、時間は稼げるだろうが。できればその間に空腹になって欲しいけど……なんとなくまだ無理な気がする……術が切れた時の為にダッシュで逃げる準備をしておこう」

 相手は七大海嘯。まだまだその活動限界は先、と妖怪としての勘が囁いていた。万一ザンギャバスが浮上した時に備えてすぐ逃げる準備をしておくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

神代・凶津
戦場は海中な上に相手は『無敵』ときた。厳しい戦いになりそうだぜ、相棒。
「・・・でも、退く訳にはいきません。」

敵の先制攻撃はいつも通り『結界霊符』で防御・・・げぇッ!?符が濡れて結界の強度が下がってやがる!?
このままじゃ時間を稼ぐのが精々か!?いや、なら今の内に水神霊装を纏うぜ、相棒ッ!
「・・・転身ッ!」

霊装を纏えたら引き上げた反応速度とスピードで敵の攻撃を見切って妖刀で受け流すぜッ!
そのまま海中を縦横無尽に移動してフェイントを交えつつ攻撃するぜ。

鮫を食おうとするタイミングを見切って間に入り妖刀で補食攻撃を受け流すッ!
そして鮫に殺気を当ててやる、そうすりゃ鮫もビビって逃げるだろ。


【アドリブ歓迎】



●海を鬼面と巫女が舞う

「戦場は海中な上に相手は『無敵』ときた。厳しい戦いになりそうだぜ、相棒」
(・・・でも、退く訳にはいきません)
「ああ、この戦いもいよいよ大詰めだ。なら島は1つでも救うし、倒せないにしてもその力を抑えてやらぁ!」

 転移し海中に沈んだ、鬼面を付けた巫女、神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)は厳しい戦いだとしても相棒の桜と共に退かずに戦う事を改めて決める。敵は無敵。だが一定数追い払うことができれば、ザンギャバスは撤退したままもう鮫牙島に現れる事は無くなる。ザンギャバスの無敵の謎、その存在という禍根は残るがこの世界に残る脅威を減らす事が出来る。その為なら立ち向かってやるという気概だった。

「いやがったな、デカブツ野郎!」
「やっとうごけるなぁ……あたらしい、グリモア……おめぇかあああああ!!」

 海底から浮上してきたザンギャバスが凶津を捉える。腕を山羊に変えるのと同時に噛み付きで襲い掛かってくる。

「させるか!結界術だ!」

 凶津は咄嗟に結界霊符をばらまくと、結界防壁を形成。ザンギャバスの攻撃を防御する。が、その防壁に一撃で罅が入る姿に凶津が愕然とする。確かに相手は七大海嘯、パワーが桁違いだ。だがそれにしてもいつもに比べて脆すぎる。

(もしかして、結界霊符が濡れて字が滲んで結界術式が弱まった?)
「マジかよ……くっそ、次からは耐水スプレーでもしとくか!」
(霊験新かな霊符を耐水コーティング……なんだか、神秘が薄れる……って、そんな場合じゃ!)
「ぶっこわれろおおおおおお!!」

 結界を破壊し、ヤギの口が凶津へと喰らいついてくる。凶津はその大口に薙刀を差し込み閉じるのを防ぎ防御する。

「むだだぁ!そんなもん、ぶちこわしてやるぁ!」
「へっ、いいんだよ……ここまで凌げば、後はこっちのもんだ!行くぜ、相棒!」
(・・・転身ッ!【水神霊装】!)

 2回の防御、それでやっとUC発動の時間を稼ぐことができた凶津はその面、そして巫女風の色を青色へと変える。その姿が薙刀と共に瞬時に消え、ヤギの口は空振り閉じる。

「な、にぃ!?」
「こっちだよデカブツ野郎!」

 声がした方には水中を高速で泳ぐ凶津の姿。これこそ【水神霊装(スプラッシュフォーム)】。二人の力を一つにする事で、水中や深海に適応し高速で動く事が出来る姿へと変身する技。この時間さえ稼げれば水中は逆にアドバンテージへと変わる。

「ちょこまかとぉぉぉ!!」
「はっ、止まって見えるぜ!」

 ザンギャバスも負けじと追い、ヤギの頭と共に喰らいつくが、反応速度も強化された凶津は妖刀で攻撃を受け流し軽く捌いてみせる。

「ほれほれ、こっちだ! いや、実はこっちなんだな!」
「ぐ、くそ、くそ、くそおおおおおおおお!!」

 海中を自由に泳ぐ凶津はフェイントを交えつつ動き回り、ザンギャバスをおちょくりその怒りを刺激し冷静な判断を更に無くさせていく。だがザンギャバスも流石にあの存在だけは忘れてはいない。

「くっそ、腹が減ってきやがった……こうなったら、食事してからだ!!」

 ザンギャバスは腕を竜に変えるとその伸びた腕を巨大鮫へと伸ばし捕食しようとする。だが、当然それも反応を強化した凶津には把握は難しくない行動。

「させるかよ!!」
「ギ、ィ!!」

 間に即座に割り込み、妖刀でその力を逸らし受け流す事で巨大鮫から外させる。相手が無敵だと分かっているなら、攻撃せずにこうして力を受け流す事を優先した防御方法もあるのだ。

「おら、食われたくなかったらとっととどっかいけ!それとも?その前に俺に8枚以上に卸されてフカヒレとして売り捌かれたいかあぁん!?」
「「「!!!」」」
(そこまで脅さなくても……)

 そしてすかさず凶津が巨大鮫に向けて殺気と共に脅し文句を飛ばすと、威圧された巨大鮫たちは素直に海域から一目散に遠ざかっていく。

「て、めぇ、おれの、食事をぉぉぉ!」
「ハッ、ざまあねえぜ!さあ、悔しかったら捕まえてみろよ!その前にお前が腹減らせて、尻尾まいて逃げ出すのが先だろうがな!」
「ころす、ころぉすぅあああああああああああああ!!!」

 怒りに目を滾らせたザンギャバスが凶津を追う。だが、凶津は海の中を自在に舞い決してその腕に捕らえさせない。それはまるで神に奉げる神楽を舞う巫女のようであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ
【アドリブ・連係歓迎】POW
暴食の化身、お前は飢え続けるのがお似合いだよ☆

事前に「肉体改造」を自身に施し、自身の表面をヌルヌル成分と吐き気成分で覆います。
これで掴もうとしてもヌルヌルして掴めないよね!
対策したら次はUC【飢餓つくと肉肉しい惨劇】で肉塊になるよ!
肉体改造はそのままに、巨大鮫にわざと肉塊の一部を齧らせて鮫の内部で増殖して爆散★肉片に吐き気成分を纏わせよう!
吐き気成分ごと肉片や肉塊をザンギャバスにも食べさせて、内側のものを全部逆流させれば飢えるよね!
UCの飢え続ける匂いを海水に混ぜてもザンギャバスを飢え続けさせられるはず!
それに、水中戦はちょっと得意だよ♪

勝利の暁には羊肉で宴会だよ☆


ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】
改めて条件聞くと絶望的としか思えない戦いだな。
けど、追い返す事で解放できる島があるのなら少なくとも意義はあるかな。

【地形の利用】で水中というフィールドを活かし、水の流れを【見切り】それに乗る事で先制攻撃のザンギャバスハンドを回避する。
そしてザンギャバスの足止めはシャーリーに任せて俺は鮫を逃がす事で奴を飢餓状態に追い込む。
奴と逆方向の速い水の流れに乗せる形で【料理】で使った鶏の血を流し、血の匂いで鮫を誘導して奴から遠ざける。
もし奴が蛇に変えた腕を伸ばして捕食しようとしたら【料理の鉄刃】で斬りつけて妨害する。
そうやってシャーリーと連携して奴にお帰りいただく。


シャーリー・ネィド
【かまぼこ】
Σボクはサメじゃないから食べても美味しくないからねっ!?
って、グリモアの匂いに反応するんだったらどっちにしろ狙われるんだよね
けど、今回はそれが好都合かも

先制攻撃で捕まえようとしてきたらビーム銃の【弾幕】+【目潰し】で目を晦ませてその手をかわす
水中では威力は減衰しても目くらましにはなるからね
その隙に【エクストリームミッション】で宇宙バイクと合体し【水中機動】モードで水中を動き回りながら【挑発】して、【ロープワーク】+【罠使い】で水中に張り巡らせておいたワイヤーに引っかけたりする
そうやってサメを逃がそうとするウィーリィくんの注意を逸らすと同時に暴れさせてお腹を空かせる



●料理人たちは鮫牙に『飢餓』を振舞う

「敵は絶対に倒せない。餓えさせれば撤退させられるけど周りには鮫だらけ。そして場所は海の中で敵は先制してくる……改めて条件聞くと絶望的としか思えない戦いだな。けど、追い返す事で解放できる島があるのなら少なくとも意義はあるかな」
「そうだね、ボクも場所は違うけど海賊としてこれ以上アイツをこの世界にのさばらせるのは良くないと思う!倒せないにしてもせめて追い出してやろう!」

 激戦続く海域に沈みゆく猟兵。料理人ウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)と、宇宙海賊シャーリー・ネィド(宇宙海賊シャークトルネード・f02673)の2人である。これまで連携して戦ってき、ザンギャバスとも数度戦っている。戦争も大詰めとなってきた今、残った脅威であるザンギャバスを追い出し島を少しでも救わんとやってきた。
 そしてもう1人。

「そろそろ鮫牙にもデザートを振舞う頃かな☆」

 海の中を泳ぐピンク色のクジラ。いや、そのクジラの上に上半身を生やしフォークとナイフを構えたシェフ。新世界からの来訪者、ラスボス種族のラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ(ハラペコかわいいコックさん(可食・高栄養・美味)である。戦争にも精力的に参加し賞金首額も高いコンキスタドールにとっても大物の1人。ザンギャバスも幾度も相手にしており、その態度にはいささかの気おくれも見られない。

「にしても料理人さんと一緒に来れるなんてね♪異世界とはいえその腕、見せて欲しいな☆」
「ああ、俺も一緒に挑めて嬉しいぜ。悪魔の世界のシェフの腕前、楽しみにしとくよ」
「うーん、ボクは助手ってことで……あ、来たよ!」

 シャーリーが注意すると、そこには猛烈な勢いで泳ぎ突っ込んでくるザンギャバスの姿。その顔は息遣いが荒く、涎が次々海に漏れ出している。どうやら空腹も大分限界まで来ているらしい。

「食わせろ、食わせろ、食わせろおおおおおお! グゥリモァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
「ボクはサメじゃないから食べても美味しくないからねっ!?」
「シャーリー、アイツそういうの関係ないから」
「グリモアの匂いさえあればなんでもいいって暴食屋さんだからね☆」

 言っている間に突っ込んできたザンギャバスがその大きな腕を開き、掴みかかってくる。その腕に捕まれればあっという間に叩きつけられ、その後どうなるかは想像したくはない。まず標的になったのはウイーリィだった。彼目がけ腕が伸びてくる。

「いや……見切った!ここだ!」
「ナニィ!?」

 ウイーリィは身体を僅かに動かすと、ザンギャバスの腕でかきわけられ流れを変えた海流、その流れに乗り、ザンギャバスの腕をかわして見せたのだ。相手が巨体でパワーがあるなら、海では動けばそれだけ海流の動きが大きく生じる。ウイーリィはそれを見切ったのだ。

「いい目をしてるね♪」
「料理人の基本の1つだからな!」
「そしてボクが追撃なんてさせない!」

 シャーリーがザンギャバスの目めがけ、ビーム銃を連続で放つ。水中ではビームは威力が減衰する為威力は下がるが、そもそもザンギャバスには攻撃が通じない、と分かっているので別の目的の為に躊躇い無く使用できる。その目的とは、目を狙った以上1つしかない。

「ギャァア!目が、目がああああ!!」

 目晦まし。これもまたザンギャバスへの傷や致命傷の類の攻撃ではないので、ザンギャバスにも有効となる。目晦ましを受け、おぼろげな視界しか見えないザンギャバスには、自分にとっては小さいシャーリーとウイーリィはもう見つける事が出来ない。だが……。

「ちくしょぉ、だが、ピンクのクジラ、てめえはそこだなぁああ!」
「ま、オイラの図体じゃそりゃわかるよね☆」
「呑気過ぎないか!?」

 申告身長243cmのラヴィラヴァの大きくピンクな身体は流石におぼろげな視界でも十分捉えられる。そしてどこでも捉えられればザンギャバスは投げ飛ばすだけ。ザンギャバスはとにかくピンクの体へとその腕を思いきり伸ばしそして掴む――いや、掴もうとしたところでその手がつるんと滑る。

「なぁ!?」
「お2人の為に説明してあげよう♪オイラは既に身体にぬるぬる成分を仕込みしておいたんだ☆掴もうとしたってそんなのはウナギを掴もうとするくらい無理な話♪」
「成程、掴もうとする攻撃にウナギの特性をヒントにしたのか、料理人ならではって感じだ!」
「ふふん☆それに仕込みはそれだけじゃない♪隠し味も施し済みさ♪」
「う、うげえええっ!」

 突如ザンギャバスが気分が悪そうになり口を押えて後ろへと下がる。顔色が悪く、吐き気を催しているように見えた。

「吐き気成分か!」
「正解☆暴食が過ぎる暴食の化身に振舞う料理は、吐き気と餓えがお似合いだよ☆」
「ク、ソ、があぁあああぁぁ!!」
「2人の料理人的センスがかみ合った会話に参加できないシャーリーです…」

 腕から吸収された吐き気成分に苦しむザンギャバス。そこに、巨大鮫の群れが近寄ってくるのを見た3人。いくら吐き気の状態とはいえ、空腹も近づいてきたザンギャバスでは格好の餌にされてしまう。

「まずっ! 2人とも、ボクが時間を稼ぐから、鮫の群れをお願い!」
「わかった!こっちは任せたぞ!」
「凄い信頼だね☆なら、オイラも鮫の皆に大振舞いしてこよう♪」

 そうしてウイーリィとラヴィラヴァが巨大鮫の方に向かったのを確認したシャーリーは手を掲げると近くに宇宙バイクハイメガシャークを引き寄せる。

「史上最大の凶暴すぎる竜巻、戦う覚悟はある?【エクストリームミッション】!」

 掛け声と共にハイメガシャークが変形、サメ型のパワードスーツになりシャーリーの全身に装着される。それはまさに巨大鮫が人型になったような姿。その姿にまだ視界が回復しきっていないザンギャバスは怪訝そうな顔で見つめてくる。

「あぁ?鮫……でもグリモアの匂いぃ……!?」
「どうしたの?ほら、食べれるもんなら食べてみなこのノロマ!」
「な、にぃ? なめるんじゃねえ、このイラつく食事がぁあ!!」

 だがシャーリーの挑発により、鮫を食べないといけないという意志とグリモアを扱う者への殺意がごちゃ混ぜになり、結果とにかくコイツを喰えばいいと言う結論に達したザンギャバスは水中機動モードで動き回るシャーリーへと狙いを絞る。

(これで暫くはこっちに引き付けられる!後は頼んだよ、二人とも!)



「く、数が予想よりも多いな!悪いが、手分けしていこう!」
「おっけー☆厨房も分担が大事だもんね♪」
「そういうこと!」

 一方、巨大鮫への対処に回った2人はその予想以上の数に方向を手分けする事に決め、一旦分かれる。
 ウイーリィは巨大鮫、そして付近の海流の位置を先程と同じ要領で見極めると、懐から赤い液体の入った瓶を取り出した。

「調理に使った鶏の血抜きした血、まさかこんな所でも使えるとはな!本当に『ごちそうさまです』って奴だ!」

 食材への感謝を奉げ、ウイーリィは海流の流れる場所へと瓶から出した血を流した。血はあっという間に戦闘界域から外へと流れていき、そしてその血を感知した鮫は血の流れて行った方向へと一斉に流れていく。

「鮫の嗅覚は敏感だな……よし、次はあっちだ!」

 それでもまだ離れた場所にいる巨大鮫を遠くに逃がすべくウイーリィは海を泳いでいく。

 一方、ラヴィラヴァの方は対照的に殆ど動いていなかった。

「たっぷりたらふく満足するまでオイラを召し上がれ♪【飢餓つくと肉肉しい惨劇(ラ・ファミーヌ・デ・ラ・ヴィアンド)】!」

 ラヴィラヴァの身体があっという間にどんどん増殖していく肉塊に包まれていく。そしてその肉塊からは美味しそうな匂いと共に弱そうだと判断する認識が鮫たちへと流れていく。鮫たちは刺激された食欲のままに、ラヴィラヴァへの肉塊へと喰らいつき殺到し咀嚼する。次々に増えていく肉塊は大量の鮫をも許容し喰らいつかせ、ラヴィラヴァにもダメージは無い。

「うんうん☆とびっきり美味しくしたから楽しんでね♪最後の晩餐、だけどね?」
「「!!??」」

 美味しそうに食べていた巨大鮫たちが突然もがきだすと、内部から膨れ上がった肉塊によって弾けて爆発四散。血と肉片を撒き散らし、それはザンギャバスの方へと流れていき、残った鮫たちはそれに恐れをなし、ラヴィラヴァから逃げるように戦闘海域から離脱していく。これではザンギャバスに鮫肉が流れていってしまうが、だがラヴィラヴァは余裕の顔をしている。

「ごめんね?でも君たちのお肉はちゃんと無駄にはしないよ☆」



 一方、そのザンギャバスとシャーリーは。

「ぐぅ、くそぉぉぉ!こんなものおおおおおお!」
「ちょっ、ほんとなら身動き1つできないくらいのワイヤートラップなんだけど!?」

 ザンギャバスが身体中にワイヤーを巻き付け、それでももがき足掻いていた。これはシャーリーが水中機動している間に岩等に仕掛けたワイヤートラップ。ザンギャバスは信じられないくらいに罠にかかりまくり、身体中に巻き付いたワイヤーで動けなくなる筈だった。だが、想定外だとたのはその膂力。怪力で無理やりワイヤーを引き、その繋がった岩や岩盤を砕こうとしているのだ。まずい、とシャーリーが思った時だった。そこに大量の鮫肉が流れ着いてきたのは。

「え、あれ!?」
「肉!肉だぁぉ!これで、グリモアのやつらを、最後まで殺せるぞおおおおおお!」

 歓喜に顔を歪めたザンギャバスは動かせる範囲の顔を動かし、流れてきた鮫肉に食らい付き次々とそれを頬張っていく。しまった、とシャーリーが顔を青ざめたところに、巨大肉塊鯨が悠々と泳いできた。

「おー、食べてる食べてる☆」
「ぎゃあああああああ新手のオブリビオンーーー!!」
「違う違う♪オイラオイラ☆」
「なんだ、さっきのシェフさんか……って、食べさせちゃってどうすんの!?」
「まあまあ見ててよ☆」
「見ててって……あれ?」
「お、おおおお、ぐ、ぐぼおおおおおお!!」
「ぎいやあああああああああ!!」

 そこでシャーリーが見たのは、さっきまで肉に食らいついていたザンギャバスが一転、先程以上に顔色を悪くして口から盛大にリバースしている光景だった。これには同じ海水内にいるシャーリーとしては乙女として色んな意味で悪夢の光景である。

「オイラは肉塊にさっきの吐き気成分を残しておいて鮫を爆散させたんだ☆当然鮫肉にも吐き気成分をうつらせて、肉塊自体も混ぜ混んでね♪それだけ食べれば後は溜まらず、元々入ってた分も全部吐き出すだけ!プラマイマイナスってわけさ☆」
「おげ、おげえええええ!」
「ううう、アームドスーツ来てて良かったあ……」

 なんとか乙女としての一線を越えずに済んだと、安堵したシャーリーが胸を撫で下ろしたその時、ザンギャバスが口を手でおさえると、そのもう片方の腕を、吐き出した吐瀉物へと伸ばしたのだ。

「ころす、グリモア、ごろず、ごろず、ごおろずうう!!」
(コイツ、無理やり吐き出しを押さえて吐いたものを食べようとしてる!?まず!)

 空腹間近となったザンギャバスはその殺意で力を振り絞り無理やり吐き気を押さえ込み、目の前の吐瀉した鮫肉を再び戻そうとしているのだ。シャーリーが動こうとしたとき、もう既に動いている者がいた。

「させ、るかああああああ!」

 ウイーリィが横から泳いでくると、その大包丁でザンギャバスの巨大な掌に斬りかかり、肉を取ろうとするその手を押し止めたのだ。【料理の鉄刃(ブレイドワーク・オブ・アイアンシェフ)】を発動させたその刃は、切り裂きこそできないがザンギャバスの腕力と拮抗する。

「て、めぇ、じゃまをおお!」
「シャーリー、今だ!」
「っ!わかった!」

 ウイーリィの呼びかけにシャーリーはその意図を察し、水中機動のジェットを噴射した。彼女が突撃する先、それはザンギャバスの鳩尾付近!

「もう覚悟決めた!全部、吐き出せええええ!」
「ぐっ、ぐぼおおおおおおおお!!」

 ウイーリィの刃による拮抗も長くは続かない。その上での彼女の行動は、アーマーと共に全力でザンギャバスの鳩尾付近、胃の辺りに突撃する事。傷は入らない。だが、その衝撃と圧迫感だけは無敵だろうと通用すると考えたのだ。それが、最後の一押しになると。

「ぐ、ぐぐ、がばあああああああ!」

 突進で吹き飛ばされると同時に、押さえていた腕が剥がれ、最後の残っていた肉がザンギャバスから吐き出される。もうストックはなく、周囲に鮫も残っておらず、そしてここまで散々に暴れ尽くした。トドメに、ここまで肉塊を維持しているラヴィラヴァから漂う香りが腹を刺激。それが、彼の限界だった。彼の意思を無視した『飢餓』により、体が獅子へと変わると体を翻して海域を去っていく。

『ちくしょお、ちくしょおグリモアああああああ!次こそ、次こそ、ころじでやらああああああ!』

 負け惜しみにしか聞こえない殺意の声を残し、餓えた獅子は海を駆けて去っていった。

「またのお越しをお待ちしています、なんてね☆」
「望む所だ。今は倒せなくても、いつかは」
「うん。ボクたちは絶対お前なんかに殺されてやらないからね!」

 三者三様でその姿を見送るのだった。と、シャーリーが何かに気づく。

「あれ?アーマーに何か……これ、島の座標?」

 シャーリーはどうやら突撃したときにザンギャバスから外れたらしい装飾を手に取る。そこには、鮫牙配下によって占領されている島の座標が記されていた。



 その後、当該の座標にて猟兵は島の解放に成功。島の住人らに感謝され、そしてザンギャバス対処に参加した者たちも含めての宴会が盛大に催された。料理人は勿論、ウイーリィとラヴィラヴァの夢のコラボ。メインディッシュは羊肉料理、そして鮫肉料理。きちんとダメな部分は処理したし、吐き気成分も残ってないと二人に説明されたが、全ての真実を知るシャーリーだけはどこか遠くを見る目で料理を食べていたという。
 そんなこんなで宴会は大盛り上がりで終了。鮫牙の驚異を少しでも減らし、そして島の住人に笑顔を取り戻し、猟兵たちは任を終えたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月27日


挿絵イラスト