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羅針盤戦争〜欲望の名に終わりはあるのか?

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #七大海嘯 #カルロス・グリード #オブリビオン・フォーミュラ #終の王笏島

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「何故、彼は『終の王笏』と名乗るのか」

 グリモア猟兵、京奈院・伏籠(K9.2960・f03707)が呟く。
 彼の掌中ではグリモアが『終の王笏島』の俯瞰図を宙に映し出している。円形劇場のような土台に聳える豪奢な居館と無数の尖塔。黄金で象られた豪華絢爛な王宮は、どこか白々しい輝きを放っている。

「つまりさ、彼が『分身体』のオリジナルなら、『始の王笏』とでも名乗りそうなものだろう? そこを、あえて『終』と自称しているわけだ。数字を割り振った分身体とは違うと主張しつつ、かといって彼らの『根っこ』ではいられない、と」

 ブリーフィングに集まった猟兵たちの顔を見回して、伏籠は肩を竦めた。

「実際、オブリビオン・フォーミュラとしてのカルロス・グリードを完全に撃破するためには、7つの分身体が支配する島もすべて制圧しなくちゃならない。『終の王笏』は分身体の本体ではあるけど、彼らにとってクリティカルな存在ではないんだ」

 あるいは『終の王笏』が倒れれば、生き残った王笏が新たな『本体』となるのか。
 たとえ欠片であっても生き残りさえすれば再起を図る。そのしぶとさこそが『強欲』の名には相応しいのかもしれない。

「……まぁ、だからこそ、僕らのやるべきことは変わらない。他の『王笏』と同じように、『終の王笏島』のカルロス・グリードを叩き潰す。それだけだよ」

 口を斜めにした伏籠があえて軽い調子で言ってのける。
 パチン、と彼が指を鳴らすと、グリモアの映す映像が風景から人物へと切り替わった。
 ゆったりとしたガウンを纏った『終の王笏』が、端正な澄まし顔で虚空を見据えている。他の王笏とは違い、異世界のテクスチャを貼り付けたような特異な特徴は見当たらないが……。

「『終の王笏』の主武装は3つ。いずれも恐るべき力を持つメガリスだ。島に乗り込む関係上、先制攻撃の権利はあちらに握られている。まずは初撃を凌いで、そこから反撃を組み立てるべきだろうね」

 伏籠が真剣な表情で指を3つ立てる。
 それぞれが示すのは『終の王笏』の3つのメガリス。すなわち――。

 突き刺した相手のユーベルコードを封じる能力を持つ『鉄鎖ドローミ』。
 あらゆる行動の絶対成功を成立させる『オーシャンオーブ』。
 メガリスで武装したコンキスタドールと空飛ぶ幽霊船を召喚する『さまよえる舵輪』。

 どのメガリスによる攻撃を想定して、どんな対策を立てるのか。勝負の分かれ目はそこにあると言ってもいいだろう。強力な攻撃をいなすことができれば、いかにオブリビオン・フォーミュラといえども必ず隙が生まれるはずだ。

「相手はオブリビオン・フォーミュラ。間違いなくこの世界でも指折りの強敵だ。けれど、今のみんなの実力なら絶対に勝機はある。……くれぐれも気をつけて。頼んだよ、イェーガー!」


灰色梟
 こんにちは、灰色梟です。
 今回のミッションは『終の王笏』との決戦、一章完結の戦争シナリオとなります。
 下記のプレイングボーナスが適用されますので、まずはご確認ください。

 =============================。
 プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。
 =============================。

 オープニング及び下記ボス情報の通り、『終の王笏』は3つのメガリスで先制攻撃を仕掛けてきます。どの攻撃に対して、どのような対策を準備して挑むのか……、ここが攻略上の重要なポイントになるでしょう。

 戦場となる『終の王笏島』は黄金の王宮を中心とした円形の島です(世界地図S39E11)。
 屋内、屋外ともに戦闘には十分な広さが確保可能です。城壁、尖塔、屋根に至るまで黄金なので、ちょっと眩しいかもしれませんね。
 やる気満々のカルロス・グリードは、猟兵たちの出現を察知するとガンガン移動して先制攻撃を狙ってきます。その辺りを利用すれば、自身に有利な開戦位置に誘導できるかも?

 羅針盤戦争も後半戦。オブリビオン・フォーミュラもいよいよ射程圏内です。
 みなさんのプレイング、お待ちしています。それでは、一緒に頑張りましょう!
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第1章 ボス戦 『七大海嘯『終の王笏』カルロス・グリード』

POW   :    メガリス『鉄鎖ドローミ』
命中した【対象1体のユーベルコードを封じる鉄鎖】の【全長】が【対象を束縛するのに充分な長さ】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
SPD   :    メガリス『オーシャンオーブ』
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【王宮にある大量のメガリス】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
WIZ   :    メガリス『さまよえる舵輪』
【様々なメガリス】で武装した【コンキスタドール】の幽霊をレベル×5体乗せた【空飛ぶ幽霊船】を召喚する。

イラスト:hoi

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

イコル・アダマンティウム
「眩しい……住む、のに向いてなさそう」
……あ、夫婦別居の理由?

格闘特化の愛機、キャバリアに搭乗して出撃する、よ
だから……屋外がいい、な
動きやすい

【対鉄鎖】
機体の腕で受ける、よ<武器受け>
「むぅ……痛い」
束縛する長さに変形する、なら
一瞬で拘束されるわけじゃない
突き刺さった鉄鎖を引っ張って
拘束に機体のパワーで対抗する、ね

【決定打】
引っ張り合いになれば、御の字
引っ張り合いの態勢で武装[RS-Bイジェクトモジュール]を使用
"僕"を射出する、ね
鎖が刺さっているのは、機体
僕だけなら、拘束はない
跳び出して、カルロスを殴る、よ
UC[一撃必殺]
「油断、大敵」

もし一瞬で拘束されたとしても同じ手段で、不意を打つ、ね



 蒼い人型が青海を征く。
 大型の鉄甲船を足場に跳躍した新鋭クロムキャバリア、【T.A.:L.ONE】の脚部スラスターが断続的に唸る。義経の八艘飛びも斯くやという勢いで『正門』から終の王笏島に飛び込んだ蒼甲の機体は、スキール音を響かせながら王宮手前の広場で急ブレーキを掛けた。
 黄金の床面に火花を散らして、水平ジャンプの慣性を相殺する5mの巨人。
 そのコックピットでイコル・アダマンティウム(ノーバレッツ・f30109)は僅かに眉を動かした。想定よりも摩擦係数が小さい。接合面さえ見えない黄金の足場は、ピカピカの見た目通り念入りに磨き上げられているらしい。

「眩しい……。住む、のに向いてなさそう」

 機体を細かく制動しながら、ほとんど表情を動かさずにイコルは呟く。カメラアイを介した視界では、オレンジ色の火花のちらつきが黄金の壁面でギラギラと反射している。
 落ち着きという言葉を海の向こうに置き去りにしたようなロケーションだ。美術品としての価値はどうあれ、居住環境としてはマイナスの評価を付けざるを得ない。

「……あ、夫婦別居の理由?」
「ほぅ、それは我には無かった視点だな」

  アラート。T.A.:L.ONEがブレーキ姿勢から格闘戦の構えに移るよりも早く、黄金の王宮から極太の鉄鎖が飛び出した。
 速い。
 回避は間に合わないと判断。両開きの大扉を弾き飛ばして飛来した一条の鉄鎖を、イコルはキャバリアの右腕で受け止めた。
 金属のぶつかり合う音と同時に、腕部に重い衝撃。鎖の先端に備えられた銛状の切っ先が超硬のアダマン鋼材を穿ち、蛇のようにうねった『尾』が即座に右腕を絡め取る。
 それと同時に、イコルの視界に無数のエラーが吐き出された。キャバリアの一部の機能が強制的にシャットアウトされる。いずれもユーベルコードに紐付いた武装モジュールだ。直結した人造神経にスパークした痛覚が走る。

「むぅ……、痛い」
「いずれ我が妻にも問うてみよう。黄金の居城は好みではなかったのか、と。あるいは、その蒼き鋼を新たな建材にするのも一興か?」

 余裕綽々、といった歩調で『終の王笏』が開け放たれたエントランスから姿を見せる。
 メガリス『鉄鎖ドローミ』は彼の左腕の袖口から放たれている。信じ難いことに、オブリビオンはT.A.:L.ONEの腕力に身一つで対抗していた。その左腕が、くるりとフリップする。弧を描いた軌道に合わせて、鉄鎖はキャバリアの全身を拘束せんと全長を一気に伸ばした。

「させない」
「無駄な足掻きだ。機械人形とて、ユーベルコード無しにはドローミからは逃れられん」
「試して、みる?」

 キャバリアの左腕が伸びた鉄鎖を掴んだ。フルスペックを発揮したアクチュエータが、文字通り超人的な握力で鉄鎖の運動を阻止する。
 王宮前の広場で、キャバリアとオブリビオンは鉄鎖の引っ張り合いの形となった。体長の差は歴然。しかし、両者のパワーは拮抗している。否、重量差を差し引いてもメガリスのエネルギーの分だけ『終の王笏』がやや有利か。
 カルロス・グリードもそれがわかっているのだろう。彼は左腕の鉄鎖を手繰り寄せながら、じっくりとイコルの乗機に近づきつつある。相手のユーベルコードを封じている以上、直接戦闘で遅れを取る道理はない。このままキャバリアの動きを止めつつ、コックピットの『中身』を叩けばいい、とオブリビオン・フォーミュラは当然の如く考えていることだろう。

 ――もっとも、それは乗り手の戦闘力を無視すればの話なのだが。

「……。イジェクトモジュール、起動」
「なに?」

 瞬間、T.A.:L.ONEがわざと体勢を崩した。鎖の均衡が崩れ、王笏が僅かにのけぞる。
 生じた隙は刹那。しかし、それで十分。
 高回転の駆動音。キャバリアの傾いた身体から、スチームとともにコックピットが『終の王笏』を目掛けて射出された。前面の装甲板が明後日の方向に跳ね飛び、吹き付けた潮風がイコルの頬を叩く。

「油断、大敵」

 最短距離の弾道。彼我の中間点の空中で、イコルは足場代わりのシートを蹴りつけ、再加速で一気に距離を詰める。
 カルロスの左腕には鉄鎖が今も繋がっている。操縦者がキャバリアを飛び出した以上、それはもはやただのデッドウェイトだ。
 当然、カルロスは即座に鉄鎖を手元に戻して迎撃を図る、が、遅い。

 イコル・アダマンティウムは、キャバリア乗りで、ゴッドハンドなのだから。

「砕く」
「ぐ、ぉ……!」

 加速する視界。轟々と耳元で叫ぶ疾風。
 零距離。渾身。右ストレート。
 弾丸の如き拳撃が『終の王笏』の顔面を捉え、真っ直ぐに撃ち抜いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バルタン・ノーヴェ
POW アドリブも連携もOKデス!

ゴールデン!(叫び) ここは金ぴかデスネー!
さて、気を抜かずされど緊張せず、楽しく戦闘開始しマスカナ!

ワタシは円形劇場の舞台を戦場に選びマース!
いつでもカモン! とファルシオンを抜いて待ちマス。
いかに強力なメガリスであろうとも、当たらなければノープロブレム!
走って、弾いて、食らわないよう踊りマース!

そうしてカルロスに近づいていき、射程距離に入ったところでガトリングガンの弾幕を放ちマース!
一発二発HITすればOK……少々酷いので使うのは気が引けマスガ。
「六式武装展開、氷の番……起動!」
ズタズタになって動けなくなったところで、畳みかけるように連射速射デース!



 猛烈な勢いで殴り飛ばされたカルロスが、王宮に隣接する建造物の壁を突き破る。
 砕けた黄金の煉瓦を撒き散らしつつ巨大な円形ホールの中央まで吹き飛ばされた彼は、ガウンをはためかせながら機敏に体勢を立て直した。床も、天井も、段々になった客席に至るまで、目が痛くなるような黄金で作られた歌劇場だ。口の端から流れた血を拭いながら、カルロスはその中心で口元を歪める。

「なかなかどうして、我の想定を上回ってくれるものだ。……だが!」

 オブリビオンの片腕が水平に振り抜かれる。連動して放たれたのは鉄鎖のメガリス。横一文字に飛来した鉄鎖が、客席の三段目を一息に薙ぎ払っていく。
 順繰りに砕ける黄金の椅子たち。その途上に、一人の影。

「ゴールデン!」

 バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は叫び、側方宙返りで鉄鎖の一撃を飛び越えた。ふわりと広がるコンバットメイド服の裾。反転した視界に、オブリビオンの冷たい表情が見える。
 先刻のダメージからの立て直しが速い。意地でも先手は譲らないということか。

「デスガ、ワタシも準備は万端デス。いつでもカモン!」

 粉砕された黄金片がギラギラと宙から落ちてくる。鋭利な雨をくぐり抜けて着地したバルタンは、すらりと無骨なファルシオンを抜き放った。
 側転の勢いのまま円形の客席を横方向に走る。障害物だった椅子が破壊されて、むしろ足場は良好なくらいだ。すっと細められた緑色の瞳が、オブリビオンと鉄鎖の動向を見据えている。

「見えているぞ、猟兵。捕らえよ、ドローミ!」
「当たらなければ……、ノープロブレム!」

 180度を薙ぎ払った鉄鎖がバーティカルに跳ねる。
 残像を視界の端に捉えたバルタンは、急停止からのバックステップ。
 直後、上方から叩きつけられた鉄鎖が彼女の眼前に墜落した。
 超重の鋼撃が縦一列の客席をまとめて粉砕する。
 当たらなければノープロブレム。ただし、当たれば一発アウトだ。

「ッ、どこもかしこも金ぴかデスねー! 壊しちゃっていいのデスカー?」
「認めよう、汝らの命には黄金以上の価値がある。であれば、何も惜しくはないとも」

 再び跳ねる鉄鎖。斜め下方から迫る鎖のしなりを、バルタンのファルシオンが弾く。
 甲高い金属音。軌道を逸らされた鎖が彼女の頭上を掠める。
 致命打は凌いだ。しかし、セットになって飛んでくる瓦礫にまでは手が回らない。黄金椅子の残骸が、礫となってバルタンの身体を穿つ。

「なんの!」
「無駄だ」

 メイド服を貫いた鋭い痛みを気合でねじ伏せ、バルタンは前列の椅子を乗り越える。
 前方に身を躍らせた彼女を、鉄鎖が戻りの一撃で撃ち落とす。咄嗟にファルシオンの腹で痛撃を受け止め、そのまま彼女は椅子の陰へと転がり込んだ。
 ……やはり、敵に近づくほど迎撃の密度が厚い。

(どこまで寄せられるか、デスネ!)

 ほぼほぼうつ伏せの低姿勢から、バルタンは黄金製の椅子を蹴り上げる。宙に浮いた椅子は、即座に鉄鎖に絡め取られ、キウイのようにあっさりと握りつぶされた。
 降り注ぐ黄金の破片。バルタンはブレイクダンスの如く、腕のバネでくるりと回転しながら椅子の陰から飛び出した。すぐさま迫りくる鎖をファルシオンの回転斬りで弾き、自身は反動に乗って独楽のように反対側へと跳ねる。

 体勢は危うい、が、止まるわけにはいかない。
 ほとんどスピンに近い形で床を蹴った彼女は、さらに一列、前へ出る。
 黄金だらけの全周に目がくらくらする。その眩しさを遮るように、鉄鎖が縦横に躍る。まるで蜘蛛の巣。触れただけでユーベルコードを封じられる、絶対の防衛線。

「そこまでだ。ドローミはもはや何人たりともそこを通さん」
「イナフ! 射程距離デース!」

 カルロスの冷たい瞳に挑戦的な視線を返し、バルタンはファルシオンから手を離す。
 次の瞬間、彼女の内蔵式ガトリングガンが唸りを上げた。
 サイボーグ用に小型化された重機関銃が銃身を回転させながら咆え猛る。
 嵐のように連射される弾丸。命中精度に難のあるそれを散らして撃つことで、バルタンはオブリビオンに弾幕を張る。

 劇場の音響効果が射撃音のオーケストラを奏でた。
 それ以外の全てを塗りつぶす爆音の中、鉄鎖ドローミがプロペラのように回転する。
 円形のシールドを模した鎖の防壁が、弾幕の大部分を弾き飛ばす。
 鈍色の回転盾に阻まれ、九割以上の弾丸は明後日の方向に跳ね跳んだ。
 鎖の間をすり抜け、カルロスに届いたのは、僅かに二発。それも、着弾したのは両足の末端に近い場所でしかない。

「小癪な。だが、その程度で我の守りを破れるとでも?」
「イエス。……少々酷いので、使うのは気が引けマスガ」

 ガトリングの制圧射撃を続けながら、バルタンは命中した二発の弾丸に意識を飛ばす。
 弾丸の内に密かに書き込まれたコード。そのトリガーをキーワードと共に引き放つ。

「六式武装展開、氷の番……、起動!」
「っ、ぐぉ!」

 硬質で透明な音が劇場に響く。
 カルロスの脚の内側から、氷の棘が咲いた。鋭く赤黒い氷の刃は、彼の血液が凍結したものだ。血管を裂いて体表から飛び出した赤い棘が、周囲の黄金の色を映してグロテスクに輝いている。

「畳み掛けマスヨ! 連射連射デース!」
「ぐ……」

 内側からの思わぬダメージに鉄鎖の回転が僅かに鈍る。
 その間隙を縫って、バルタンはガトリングガンを続けざまに撃ちかけた。
 鎖の守りを抜ける弾丸がにわかに増える。激しい弾幕にさらされたカルロスが呻き、よろめいた。

「お、のれぇ!」
「うわっと!」

 王笏の端正な顔に似合わぬ咆哮が轟く。
 鉄鎖の全長が急激に伸び、回転の直径がいきなり大きくなった。伸びた鎖の先端が劇場の屋根にまで届き、梁を砕き、アーチを削り壊す。
 一秒と保たず、劇場の屋根は堕ちた。大質量の黄金の塊がガラガラと落下し、バルタンとオブリビオンの射線を遮る。

「なりふり構わない暴れっぷりデスネ!」
「……なんとでも言うがいい。我は生き残り、必ずや汝らを討ち滅ぼす。強欲と侵略こそが、我の本懐なればこそ!」

 バルタンの目の前に巨大な黄金の塊が落下した。崩落する劇場から彼女はたまらず脱出を試みる。
 ……彼女を睨む『王笏』の執念をその背に感じながら。

成功 🔵​🔵​🔴​

ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
アドリブ・連携OK


ようやく自前の力を持ち出したと思ったら、ほぼ全能の力とはねえ。
けど、戦う場所を選べるなら、手はあるかな。

戦う場所は宮殿の屋根の上、空から降りて戦うよ。

相手は何でも出来るって事は、何をするか考えて決めなきゃいけない。
瞬間思考力でその僅かなタイムラグに合わせて、
竜の肺腑と化合生成で毒のブレスを吐いて攻撃するよ。

毒の対処とあたしへの攻撃を同時にするなら、
おそらく炎で毒ごと焼くか、風で吹き飛ばすか。
メガリスのある王宮ごと消し飛ばさない威力なら、
古竜の戦斧で切り裂いて致命傷は防げるはず。

攻撃を突破したら【三界巨怪】で怪鳥に変身。
怪我を変身で誤魔化して、そのまま体当たりを仕掛けるよ。



 ぽっかりと崩落した劇場の天井から、どこまでも青い空が覗いている。
 瓦礫の山の中心から天を見上げた『終の王笏』は、蒼穹にぽつんと黒点をひとつ認め、忌々しげに口元を歪めた。

「次は空からか。なれど、我が王宮に容易く侵入り込めるとは思わんことだ」

 そう吐き捨て、王笏は劇場の瓦礫を足場にして天井の大穴から屋上へと躍り出る。
 戸外では太陽の光が燦々と降り注ぎ、柔らかな曲線を描く王宮の屋根が黄金色に輝いていた。空気は場違いなほどに暖かい。建造物よりも高い位置には、うっすらとハイロゥに似た光輪が浮かんでいる。
 その謎めいた光輪に近い高度から、異形の影、ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)が『終の王笏島』の宮殿に向けて滑空してきている。

「見つかったかな」

 屋上にオブリビオンの人影が現れた瞬間、ペトは瞬間的に思考を回転させる。
 言語化される前の雲のような意思の流れが、竜の肺腑を膨らませ、体内で生成された猛毒を揮発、充填させる。
 空色の鰭翼が風を掴む。一瞬のホバリングから、息を止めて、急加速。
 大きく膨らんだ胸部はブレスの構え。しかし、オブリビオンが一手早い。

「オーシャンオーブよ、我が秘宝をここに!」

 彼我の距離はおおよそ200メートル。有効打を狙うには、まだ遠い。
 カルロスの右の掌で、地球儀を模したメガリスが波打つ。質量を無視して地図上の海から溢れ出す海水。ざわつく水音を鳴らしながら宙に流れ出た水球から、緑鱗のシルエットが産まれ落ちた。
 召喚物の外観はドラゴンのミニチュア。と言ってもサイズは人間の背丈ほどある。おそらくは、宮殿の奥底に安置されたメガリスのひとつか。
 カルロスの左腕が動く。物言わぬグリーン・ドラゴンの頚椎を鷲掴みにし、握り潰す。核を砕かれたメガリスは瞬く間に分解され、粒子となったその権能がオブリビオン・フォーミュラの指先に宿った。

(そういう仕組かぁ。メガリスを代償にした、ほぼ全能の力とはねえ)

 息を止めたまま、ペトがカルロスの制空圏に飛び込む。
 先制の召喚でオブリビオンの側も迎撃の準備は万端。
 膨らむペトの頬と、振るわれるカルロスの指先。両者の攻撃は、ほとんど同時に放たれた。

「せーのっ!」
「竜炎、翼風、天を焦がせ!」

 高空から放たれる毒のブレス。迎え撃つはドラゴン・メガリスに由来する炎と強風。
 一瞬の均衡。直後、真っ向からぶつかった2つのブレスが衝突点で弾け、毒煙と炎とが空を覆った。特殊な化合物が燃焼するぷつぷつとした音が奇妙に響き渡る。そこから間髪入れず、カルロスの放った豪風が炎を毒とをペトに向けて押し上げた。

「やっぱり通らないかぁ。でも、この威力なら……!」

 ブレスを吐いた反動で、ペトがくるりと空中で一回転する。
 再び身体が正面に戻った時、彼女の右手には古竜の骨で出来た戦斧が握られていた。
 ユーベルコードを切り払い弱めるという古竜の戦斧を肩に構え、ペトは鰭翼を傾ける。

「最短距離で行くよぉ!」

 視界が傾く。斜め下方、カルロスを目掛けての錐揉み急降下。
 目まぐるしく重力の方向が入れ替わるのを感じながら、ペトは帯状に広がった炎と毒の渦へと突っ込んでいく。
 逆巻く風で皮膚が痛い。方向感覚の保持はギリギリ。半端な回避はできそうにもない。
 危険空域に突入した彼女は錐揉みの遠心力に乗せて戦斧を豪快に振り回す。体の芯だけを守る、ただただ致命傷を避けることを考えた突破スタイルだ。

「あぐ……、うぅ……っ!」

 炎が翼を焦がし、毒が傷を蝕む。抉るような痛みに視界がちかちかと明滅する。
 間違いなく無謀。しかし、それでもギリギリで耐えきれるとペトは読んだ。
 オブリビオン・フォーミュラに一発叩き込めるなら、致命にならないダメージなんて安いものだ!

「もう、堕ちたか? ……いや」
「ぅ、大きくなろうか。――三界巨怪(イノーマス・クリーチャー)!」

 翼を畳み、ボブスレーのように縮こまったペトが上空の炎の帯を突き抜ける。
 晴れる視界。直下にターゲット。瞬間、彼女は畳んでいた翼を大きく広げた。
 焼け焦げた翼が向かい風に切る。風切り音が高らかに鳴る。

 『終の王笏』が目を瞠った。
 彼の視界の先で、ペトの身体が瞬時に巨大化する。シルエットを変えて羽ばたいたのは、豪壮な大翼を具えた巨大な怪鳥。満身創痍の細身から一変、その体躯には傷一つ見当たらない。

「っ、炎熱に耐性があるのか? くっ……!」

 無傷の怪鳥を目の当たりにして、刹那、迎え撃つカルロスに迷いが生じる。
 ……言うまでもなく、元気な姿はただのフェイク。ペトの変身能力で見た目を誤魔化しているだけだ。今もまた、怪鳥が羽ばたくたびに彼女の全身の神経が悲鳴を上げている。

 その激痛を意思の力で抑え込んで、ペトは力の限り飛翔する。
 オブリビオンの晒した、千載一遇の好機。
 その僅かな隙に懸けて、巨大な怪鳥は一直線にカルロスへと突撃した。

「――ッ!」
「が、ぁあ!」

 怪鳥の巨大な体躯が正面からカルロスを襲う。
 飛翔速度と落下速度とを乗算した質量攻撃が、咄嗟にクロスした彼の腕ごと、カルロスを屋根に押し潰した。

 ぐしゃり、と生々しい音が空に響く。
 シンプルにして、なおかつ圧倒的な威力を持った体当たりが、黄金の屋根さえ突き破り、オブリビオンを宮殿の階下へと叩き落とした。

成功 🔵​🔵​🔴​

鴇巣・或羽
正面からの戦いってのは趣味じゃあないけど……仕方ないか。
メガリスってのがどの程度のお宝か気にはなるし、それに――

あんたには、ウチの団員が世話になったらしいしな。

怪盗姿で挑もう。
POWで対策
鉄鎖ドローミは命中が前提のメガリスだ。
俺はフックショットを利用し、読み難い移動をしつつ、遮蔽物を使って初撃を躱そう。
【地形の利用】【空中戦】を併用する。

向こうが島内を移動してくるなら、遮蔽物の多い場所で待ち受ける。
今回は品定めだから予告状はないが、怪盗としての【パフォーマンス】をご覧に入れよう。
あえて大きく距離を取らず、ギリギリで躱してみせる。

そして、懐に飛び込んで【零距離射撃】だ。

――あんたの油断、戴いた。



「まずは品定め、の、つもりだったんだけどな」

 赤い前髪の先端を摘み、鴇巣・或羽(Trigger・f31397)はため息をつく。
 黄金宮殿の内側、大広間から深域へと繋がる壮麗な大回廊である。巨人のための通路と言われても信じてしまいそうな幅広の廊下に、成人の腕の一抱えより太い支柱が等間隔で並んでいる。天井のアーチも異様に高く、もちろん、全ての構造に黄金が用いられている。

 その一方で、宮殿には生活感というものが一切無かった。『終の王笏』が普段どんな生活をしているのか、忍び込んだ或羽にもさっぱり想像がつかない。家臣が使用人がいるでもなく、黄金宮は空虚な静寂に満たされている。

 否、正確には、それも数秒前までの話だ。

 メガリスなるものがどの程度のお宝なのか。実利と好奇心の双方から、或羽は宮殿の宝物庫を探していた。下調べも『怪盗』の嗜みだ。知識と経験、直感とで宮殿の深域に目星をつけた彼は音もなく宮殿の回廊に入り込み、その半ばまで歩を進めていた。
 ……その背後に、大回廊の屋根が砕き割られ、ガウンの人影が墜落してきたのだ。

「正面からの戦いってのは趣味じゃあないけど……、仕方ないか」

 墜落の轟音に或羽が振り返った。
 どうやら屋根の上で一戦あったらしい。板状になって砕けた建材がドカドカと廊下に落ちてくるが、すべてが黄金の宮殿では砂埃のひとつも立ちはしない。せいぜいが剥離した金属片がちらりと舞うくらいだ。
 自然、落下点でゆらりと立ち上がる『終の王笏』の姿も容易に視認できた。
 切り込むには半端な距離。瞬時に状況を認識した或羽は、素早く回廊の支柱の陰へと転がり込む。

「……鼠か」

 カルロス・グリードもまた、敵対者の存在を即座に把握する。
 蓄積したダメージに僅かに眉を顰め、しかし、彼はノータイムで鉄鎖を放つ。
 左腕の動きに連動したメガリス・ドローミが鞭のようにしなり、水平に薙ぐ。
 狙いは或羽が姿を隠した支柱。高い金属音とともに側面を叩いた鉄鎖が、物理法則に従って柱に巻き付くようにベクトルを変える。

「おっと!」

 死角を狙って鋭角に飛来した鋼の鞭打を、或羽は大きく跳び上がって躱す。
 頭部を刈り取る軌道の、さらに上へ。フックショットを廊下を挟んだ隣の支柱に撃ち込み、巻取りの勢いに乗って一気に柱の中ほどまで高度を上げる。

「盗賊め、我の居城に許可なく足を踏み入れるとは。後悔するぞ」
「ま、下調べにもアクシデントはつきものだしね。それに――」

 黄金の回廊にダークレッドの影が躍る。
 機敏に動く侵入者を狙い、間髪入れず振り回される鉄鎖による薙ぎ払い。
 怪盗服に身を包んだ或羽こと、コードネーム・トリガーが、その凶撃を縫い、フックショットで縦横に支柱を跳び移っていく。稲妻のような鋭角軌道。鉄鎖と黄金の激突音が、回廊の広い空間にぐわんぐわんと反響する。

「――あんたには、ウチの団員が世話になったらしいしな」

 急加速と急停止を繰り返す視界の中、トリガーはカルロスの白い顔を睨んだ。
 次々と新しい支柱に『着地』しながら、目測で鉄鎖ドローミのリーチを測る。
 メガリスの軌道はカルロスの腕に連動しているが、始動から着弾までのタイムラグは、当然、距離が近づくほどに短くなる。命中すれば一発アウトの封印効果を持つ攻撃だ。生半可なスピードでは、薙ぎ払いの隙を突いても迎撃の網目を掻い潜るのは不可能だろう。

 ならば、どうする?
 単純明快。相手の捕捉が追いつかないほどに、自身の速さを高めればいい。

「今回は予告状は無しだが――、さぁ、ショウ・タイムだ!」
「ふん、自ら姿を晒すとは。驕ったか?」

 トリガーが回避運動の軌道を変えた。柱の裏側や側面を足場にしていたのを、オブリビオンと相対する正面側を経由するようにスイッチする。
 樹上動物のように支柱を跳び移っていく彼の姿は、今やカルロスにも丸見えだ。鉄鎖の連撃も苛烈さを増す。その攻撃範囲に一歩踏み込んだ距離を狙い、トリガーは挑発的に黄金の回廊を跳ね回る。

 こころなしか足場を蹴る怪盗の靴音が常よりも快く響く。
 ダークレッドのシルエットは、黄金の輝きとのコントラストではっきりとカルロスの目に残影を描いている。
 鉄鎖の打撃音はいつの間にかBGMのように意識から半ば追い出されていた。
 もしもこの場に観客がいたとすれば、彼らはカルロスとともに怪盗の影を追うことに全神経を集中させることとなっただろう。

 ――すなわち、これこそが『Queen's trick』!
 自身の注目度を上げ、敢えて目立つことで身体能力を上昇させる『盗賊魔法』だ。

「クライマックスだ、見逃すなよ!」
「ッ、先刻よりも速く……!?」

 ショーは佳境。舞台も演者も、十分に『あたたまった』。
 至近を薙いだ鉄鎖をムーンソルトで躱し、トリガーは唐突にフックショットをカルロスの足元に撃ち込む。
 ギミックの駆動音が唸る。柱を蹴って斜め下方に跳んだトリガーを、ワイヤーの巻き取りがさらに加速させる。
 高所での連続移動にオブリビオンの目を慣らさせたタイミングでの急襲。カルロスが空振りした鉄鎖を手元に戻すよりも、怪盗の急接近が僅かに速い。

 無意識に、カルロスが一歩下がる。
 その眼前に着地するトリガー。瞬間、膝のバネが落下速度を突進力に変換する。
 縮地と見紛う踏み込み。
 ぶつかる両者の視線。
 カルロスが床を踏み抜く。力任せのストンピング。砕けた黄金が礫となる。
 トリガーの瞳孔はカルロスを捉えたまま。瞬間の思考が礫を数える。
 大が2つ、小が5つ。
 この好機は逃せない。ストッピングパワーのある大きな礫だけを選んで避ける。
 速度を殺さずすり抜ける。小片が左肩と右脇に刺さった。問題なし。続行可能。
 下がられた距離を一瞬で潰す。
 至近距離。カルロスの左腕が振り下ろされる。鉄鎖の打ち落とし。だが、遅い。

「――あんたの油断、戴いた」

 大型オートマチックの銃口がカルロスの腹部に触れる。
 完全な零距離。
 目を瞠るカルロスにニヤリと口角を上げ、トリガーは愛銃の引き金を引き絞った。

成功 🔵​🔵​🔴​

神樹・鐵火
貴公は初代皇帝故、知らないも無理はないが
スペインハプスブルクは――
いや、今はやめておこう



圧倒的物量には圧倒的暴力で対処する
幽霊船の出現を確認後、【陰陽魔弾】を静かに発動
しかし撃つのは後だ
※高速詠唱と※魔力溜めで短時間で最大威力を出せる様に温存
その間、※覇気でダメージを抑えつつ
近い者は※怪力にモノを言わせ霊拳で撃破
轟拳の※衝撃波の※吹き飛ばしで距離を取りつつ撃退
なるべく一か所に集まる様に誘導する

頃合いを見計らって陰陽魔弾を幽霊船目掛け※全力魔法をもって出力
呼ばれたコンキスタドール程度は掠っただけで消し飛ぶだろう



最後の王は貴公の名を取ったそうだ
巨大帝国になったが故の業を全て背負った人だったがな


シノギ・リンダリンダリンダ
王笏。終の王笏
お前がどういう存在で、なんなのかは関係ないです
ただ七大海嘯である事だけで、貴様はもう私にとって殺すリストの上位です

死霊海賊の私に向けて幽霊船を差し向けますか
面白いです
開けた空、城壁の上で迎え撃つ
【対征服者超振動突撃衝角艦隊】を召喚
空を駆け、ジャラジャラとコインのジャックポットのような音を出してチェーンソーを回す
空飛ぶ幽霊船なんて、この突撃で斬り裂いてあげましょう

王笏自身にも、大雑把に突撃させる
当たれば儲けもの。相手の邪魔を、思考を乱れさせれば十分
その隙に、我が内なる毒を染み込ませた呪弾をMidās Lichから発射
王笏。お前はすぐには殺しません
じわじわと、なぶるように、殺します


木霊・ウタ
心情
渦潮は絶対にぶっ潰す
分身体を海へ還してやるぜ

先制対策
迦楼羅を炎翼として顕現
爆炎のスラスターで回避行動

当たりそうなら
大剣&炎流で受け流し

メガリスのパワーは
文字通りの火力で拮抗~押し返す

戦闘
UC発動
船へ突撃
速さを乗せて剣を振るい
船を炎渦に巻き込み
王宮へ墜落させる

渦潮ならぬって奴だ

獄炎纏う焔摩天で終の王笏を攻撃
乱打で鋼と炎を畳みかける

で何度目かの剣撃時に
炎を一気に燃え上がらせ
閃光で視界を灼く

更にその輝きは黄金宮にも乱反射するから
相当眩しいぜ?

一瞬でも隙が出来りゃいい

大焔摩天を一閃
幽霊船諸共、炎の刃で薙ぎ払い
舵輪や他メガリスを砕き
終の王笏を灰へ還す

事後
鎮魂曲を奏でる
安らかにな



「そうだ。その選択は正しい。戦況が逆であれば、我も同じ策を採っただろう」

 『終の王笏』は黄金宮殿のもっとも高い位置にあるバルコニーに立っていた。
 眼下には無数の尖塔と宮殿前の広場が黄金に輝いているが、彼の視線はそちらを見向きもしない。オブリビオン・フォーミュラの目はまっすぐ水平に、島を取り囲む黄金の城壁を見つめている。
 ……より正確に言うのであれば、黄金城壁を構築する大小の丸太状の構造物、その先端部に立つ人影を。

「消耗させた敵に火力を集中させ、反撃を許さず落としきる。なるほど、定石だ」

 潮風を受けて佇む人影は3つ。互いに距離を置いて三方向から宮殿を包囲している。
 袋の鼠、という異国の慣用句がカルロスに浮かぶ。事実、これまでの交戦によるダメージは彼が現界可能なギリギリのところまで蓄積している。オブリビオン・フォーミュラである、この『王笏』が、だ。

 カルロスは不思議と穏やかに微笑んだ。

 『鉄鎖ドローミ』と『オーシャンオーブ』は既に破られた。結局、最後に頼るのはこれになるのか、と彼は残された切り札、『さまよえる舵輪』に指を掛ける。
 七大海嘯とはコンキスタドールの首領の称号なのだ。なればこそ、このメガリスはもっともその在り方に相応しい。

 メガリスを掴んだカルロスが、思い切り『舵を切った』。さまよえる舵輪が回転し、バルコニーにからからと木製の快音が響く。
 晴れ晴れとした蒼穹が突然ぶ厚い雲に覆われ、終の王笏島を薄暗い闇が覆う。パラパラと降り始める冷たい雨。鳴り響く遠雷。
 真っ黒な雲を裂いて、巨大な帆船が現れた。五百を優に超えるコンキスタドールの亡霊を乗せた武装幽霊船だ。思い思いの武器を持った悪漢が地上を威嚇し、両舷に備えられた複数の大砲に乗組員が急ピッチで砲弾を詰め込んでいる。

「では、最後の海戦を始めよう」

 いつの間にか、『終の王笏』は幽霊船に姿を移し、甲板でその舵輪を握っていた。彼の宣戦に亡霊たちが鬨の声を上げる。

 ――コンキスタドールがこの海の覇者たる所以、その身で知るがいい!



「カルロス・グリード。貴公は初代皇帝故、知らないのも無理はないが、スペインハプスブルクは――」

 白の和装に天馬の羽衣を纏う戦神、神樹・鐵火(脳筋駄女神・f29049)は言葉を詰まらせ、赤い瞳を僅かに伏せた。
 オブリビオンは過去の化身。であれば、カルロス・グリードにも『生前』が存在する。 正しいか否かはさておき、鐵火には『カルロス』の名に覚えがあるのだが……。

「……いや、今はやめておこう」
「アレがどういう存在で、正体がなんであっても、関係ないですよ」

 この場で何を言っても詮無きことか、と口を噤む鐵火。一方、オブリビオン・フォーミュラを睨むシノギ・リンダリンダリンダ(強欲の溟海・f03214)は、鐵火とは別の形で静かにヒートアップしていた。

「ただ七大海嘯である事だけで、アレはもう私にとって殺すリストの上位なのです」
「そ、そうか……」
「しかも、死霊海賊の私に向けて幽霊船を差し向けますか。……ふふ」

 普段の七割増しでプリズムの瞳をギラつかせたシノギが、ぐっと拳を握る。猟兵として清く正しく(?)海賊団を率いるひとりの船長としては、七大海嘯の存在についてなにやら思うところがあるらしい。
 ……その辺りの機微はともかくとして、もうひとりの猟兵、木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)もシノギの意気込みには力強く頷いた。巨大剣・焔摩天を肩に担ぎ、彼はすっと目を細める。

「なにがあっても絶対にぶっ潰すって気持ちは俺も同じだぜ。……二人とも、来るぞ!」

 鋭い叫びが開戦の狼煙となった。
 嵐の空を進む幽霊船が、猟兵たちを射程に捉える。両舷の大砲が火を噴き、コンキスタドールの亡霊がそれぞれの武器を放つ。
 弓矢、ボウガン、ライフルは序の口で、バリスタ、榴弾、マジック・ランチャーまで総動員した一斉射がたちまち空を塗り潰す。
 コンキスタドールをただの数合わせと侮るなかれ。彼らが手にしているのは紛れもなく本物のメガリスだ。使い手が亡霊だろうと、その破壊力は絶大と言ってなお余りある。

「行くぜ、迦楼羅! 炎翼顕現!」
「いつもと同じ、圧倒的物量には圧倒的暴力で対処するだけだ」
「ええ、ええ。敢えて言いましょう。――面白いです、と!」

 怒声やら風切り音やら発砲音やら爆音やら雷鳴やら……、にわかに混沌に飲み込まれた戦場で、猟兵たちはそれぞれ己の得手を以て攻撃に対処する。
 縦に飛んだのがウタ。横に跳んだのが鐵火。そして、指を鳴らしたのがシノギだ。

「そう易々と、当たるかよ!」

 垂直にジャンプしたウタの背に、金翅鳥の炎が翼となって喚び出される。
 燃え盛る真紅の翼は、羽ばたくと同時にその内に猛烈な爆炎を生じさせた。
 大砲よりも一回り大きい爆音が轟く。
 爆発をスラスター代わりに、ウタの身体が空を滑った。コンキスタドールの射撃攻撃が、寸前の彼の位置をすり抜けて彼方に消えていく。
 撃ち損じにもめげず、すぐさま照準を修正するコンキスタドールたち。
 続けざまに放たれた二度目の斉射に、ウタは炎を纏った大剣で応える。

「いいぜ、来いよ。真っ向勝負だ!」

 気迫とともに振り抜かれる焔摩天。
 剣圧による暴風と巻き起こった炎流が、メガリスのパワーとぶつかり合う。
 激しい閃光と衝撃。
 火力は拮抗。2つのエネルギーが両者の中間点でバチバチと吼え、莫大な熱量を滞留させつつ相殺された。

「――! ――!」

 幽霊船でコンキスタドールたちが何事かを叫んでいる。
 ウタの火力を警戒したのか、はたまた飛行する彼を絶好の的と認識したのか。いずれにせよ、彼らは腕をぶん回しながら上空のウタを指差している。
 その慌てっぷりを視界に収め、ウタはニヤリと口の端を持ち上げた。

「陰陽魔弾、発動、待機。……征くぞっ!」

 ド派手な爆音も、目立ちまくりの豪炎も、陽動を兼ねた一手。
 コンキスタドールたちの視線が上方に集まった瞬間、黄金城壁を蹴った鐵火が幽霊船の甲板へと跳び移った。
 着地した彼女の足元で雨水の飛沫が弾ける。濡れた木板がきゅっと鳴る。
 近場の亡霊がぎょっと仰け反った。そのとぼけたツラを、鐵火の『霊拳』が容赦なく殴り飛ばす。

 ミシリと嫌な音。木製の手摺を突き破って嵐の空に落ちていった仲間の姿を認め、すぐさま亡霊たちが鐵火を取り囲む。
 拳を振り抜いた残心を取ったまま、鐵火は滔々と魔弾の詠唱を口ずさむ。背後から斬りかかった亡霊船員のファルシオンを、背を向けたまま覇気を纏う両腕で受け止め、返しの『轟拳』で一蹴。衝撃波で不心得者を吹っ飛ばした彼女は、落ち着いた口調で言う。

「このまま暴れてもいいのだが……、まったく、シノギ君も無茶をする」

 ふっと頬を緩め、鐵火はメインマストから伸びたロープを掴む。
 幽霊船を地獄のような衝撃が襲ったのは、その直後だ。

「駆けろッ!! 飛べッ!!! 跡形も残さずに、全てを蹂躙してください!!!」

 どこからともなく物騒なセリフが高らかに響き渡った。
 あらゆる爆音を塗りつぶして、ジャラジャラと金属の擦過音が聞こえてくる。カジノ・フリークのコンキスタドールがいれば、それをジャックポットしたコインの音のように感じたかもしれない。
 だが、現実はもっと残酷で、スプラッターだ。

「回れ、超振動衝角! 空飛ぶ幽霊船なんて、この突撃で斬り裂いてあげましょう!」

 コンキスタドールの巨大幽霊船の横っ腹に、明らかに戦闘用の海賊船が鼻っ面を突き立てている。それも、ぶちかまされたのはただの舳先でも衝角でもない。
 バカでかい擦過音の正体。それは、海賊船の船首の『特大チェーンソー 』だった。

 どうにか突撃のインパクトに耐えた幽霊船の船体が、チェーンソーの回転でガタガタと激しく振動する。ゴリゴリと外装が切り裂かれ、あっという間に竜骨まで鋸刃が迫る。
 生前から色々と無茶を重ねてきたはずのコンキスタドールたちも思わず頭を抱えた。そもそも、船首にチェーンソーを取り付けるという発想が常軌を逸している。こんなオーバー・パワーな武装に対する防御策など、持っている海賊船の方がおかしいくらいだ。

「よお、こっちもちょいと荒っぽいぜ? ……焔摩天、転生!」

 頭を抱えるついでに天を仰いだ亡霊は、元々青い顔をさらに青白く染めた。
 懸命に対空射撃を繰り返す甲板に向けて、ウタが地獄の炎を全身に纏い、猛禽の如く突っ込んできたのだ。
 迎え撃つ亡霊たちの射撃は超高熱の断層に一瞬で弾かれる。さながら空を裂く火矢。オレンジの軌跡を真っ直ぐに残し、炎の嵐は一瞬で幽霊船の甲板から船底までを貫いた。

「さて、年貢の納め時だ」

 弩級の衝撃からロープを頼りに体勢を立て直し、鐵火が操舵席へと拳を向ける。
 木材と金属補強がひしゃげる異音が悲鳴のように耳を打つ。いまやコンキスタドールの幽霊船は、船の中心を境にして真っ二つにせん断されようとしていた。
 船底から炎上しつつある、45度に傾いた甲板。そのマストを足場にした鐵火を、操舵輪を握ったカルロス・グリードが静かに睨み返す。

「否、白旗を揚げるにはまだ早い。そうだろう、我が精鋭たちよ」
「……諦めの悪い皇帝だ」

 カルロスを守るように数体の亡霊がゆらりと立ち塞がる。彼らはそれぞれ野卑な(つまり、いつもどおりの)にやけ面を浮かべていた。悪漢たちは劣勢を嘆くでもなく、ただただ戦闘の快楽に胸を躍らせている。
 足場の悪さもなんのその、槍を持った亡霊が鐵火を目掛けて突っ込んでくる。その直線的な攻撃をゆったりとした構えで受け流し、カウンターの霊拳を叩き込みながら鐵火は眉を傾けた。
 海のならず者は、やはり、死んでも性根が変わらないものらしい。

「まぁ、そこのところはどうでもいいんですけど」

 透き通った、しかし、ばっさりとした声。
 相変わらず巨大チェーンソーをバキバキぶち当てている戦闘海賊船の艦橋から、シノギがひょいと姿を現し、即座に『黄金の右腕』を猛らせた。
 かつて大魔王に黄金化の呪いを掛けられた腕の名は『Midās Lich』。その掌から撃ち出されるのは、シノギの体内に生まれた『毒』を染み込ませた、黄金の呪弾だ。

「王笏。お前はすぐには殺しません。……じわじわと、なぶるように、殺します」
「ふむ? そう言うわりには剣呑な弾丸ではないか」

 稲妻に光った黄金の輝きに反応して、メガリスの大盾を構えた亡霊が射線を塞ぐ。
 タタタ、とタイプライタのような音。雨に濡れた黄金弾が連続で大盾に突き刺さる。
 呪いの効果は甚大。金属製の大盾は、あっという間に錆び、腐り、溶ける。
 しかし、流石は盾のメガリスと言うべきか、絶え間ない射撃を受けつつも、亡霊は弾丸の貫通だけは許さない。
 まさに鉄壁。
 その連携を崩すべく、船底から炎を纏う影が飛び出した。

「焔摩天、獄炎を纏え!」
「前衛、そのまま格闘家と射撃を抑えろ。こちらは我が対処する」

 ウタが炎翼で大盾を飛び越え、カルロス・グリードに相対する。カルロスが握るのは、消滅したコンキスタドールが遺したメガリス・ファルシオン。挑発するように薄刃をくるくると閃かせ、オブリビオンは空中のウタを牽制する。

「下を見ろよ、もうすぐ墜落だぜ?」
「それがどうした? 我の島へと戻るだけのことではないか」

 地獄の炎を纏った巨大剣が豪快に振り下ろされた。
 高所の有利を活かした雷鎚の如き連撃。
 息もつかせぬその強打をカルロスが軽やかに捌いた。

 黒い空に雨が弾けて火炎が咲く。
 十合にも及ぶ刃のせめぎ合い。
 その決着は幽霊船の墜落によって破られた。
 接触した黄金宮殿の丸天井が、一息で竜骨を砕き、船底を食い破る。

 巨大な岩礁に乗り上げるのにも等しい大衝撃が船を襲った。
 荒海に慣れているはずの亡霊さえが大きくよろめく。
 誰とも知れぬ叫びが混沌と混じり合う中、最速で動いたのは宙を駆けるウタだった。

「こいつは相当眩しいぜ? 目を灼く炎よ、燃え上がれ!」

 爆音。閃光。圧倒的な炎の輝きとギラついた黄金宮の反射とが世界を塗り潰す。
 亡霊をも怯ませる光の暴力。
 その真っ只中、鋼鉄と炎を司る戦神が、果敢にマストを蹴った。

「刮目せよ、これが私の全力だ。――破ァ!!!!」

 裂帛の気合とともに放たれる最大出力の『陰陽魔弾』。
 陰陽属性の波動弾が、護衛部隊を巻き込み、カルロス・グリードに叩きつけられる。
 その威力、まさに烈日の如し。
 一直線に幽霊船を貫いた魔弾が、掠っただけの亡霊たちさえ消し飛ばしていく。
 断末魔もなく存在を霧散させるコンキスタドールたち。
 直撃を受けたカルロス・グリードもまた、甚大なダメージにぐらりと体を傾けた。

「ッ、これほど、とは……、ぐっ!?」
「その隙、私が逃すとでも?」

 間髪入れずに撃ち込まれるシノギの呪弾。
 胸部に連続して吸い込まれた黄金から、夥しい呪詛がカルロスに襲いかかる。
 自重が数倍になる感覚。四肢が萎え、ぴくりとも動かない。
 臓腑を侵した毒が出血を強い、ごぽりと口元から血塊を溢れさせた。
 拭う腕さえ動かない。配下は既に無く、皇帝は独り、雨中に佇むのみ。
 深海のように暗く重い執念が、オブリビオン・フォーミュラの瞳で鈍く揺れる。
 その瞳を通して彼が最期に見たのは、暗雲を吹き飛ばす鮮やかな炎だった。

「吼えろ、大焔摩天! 分身体ごと海へ還してやるぜ!」
「……敗着か。いいだろう。あとは、我が大いなる神に託すのみ、だ」

 薙ぎ払われる炎の刃。
 カルロスも、幽霊船も、メガリスも……。
 振るわれた地獄の炎が、すべての悪意を灰燼に帰した。



「骸の海に還れ。……安らかにな」

 黄金宮殿の屋根の上で、ウタがギターの弦を弾く。
 消えかけの雷雲の切れ間から、穏やかな陽光が島へと降り注いでいる。
 ウタが奏でる静かな鎮魂曲を聞きながら、シノギは口を斜めにした。

「ああいう海賊に安息なんて、きっと、似合いませんよ」

 ミレナリィドールの海賊船長が、足元の黄金の欠片を軽く蹴り飛ばした。
 ころころと屋根を転がっていく小さな黄金。その行方を眺めて、鐵火は呟く。

「あの王朝の最後の王は、貴公の名を取ったそうだ。……巨大帝国になったが故の業を全て背負った人だったがな」

 感傷的な言葉は、潮風に攫われてどこかに消えた。
 屋根から落ちた黄金は、ぽちゃりと海に沈み、二度と浮かぶことはなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月22日


挿絵イラスト