羅針盤戦争〜虚無の王と金銀の鋏
「羅針盤戦争への参戦に感謝します。リムは戦況を報告します」
グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、リミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)はグリードオーシャンの海図を広げると、淡々とした口調で語りだした。
「良い報せです。皆様の活躍による航路の開拓の結果、新たに『六の王笏島』が発見されました。これで八つある『王笏』の本拠地は全て発見されたことになります」
グリードオーシャンを支配する『七大海嘯』の筆頭にしてオブリビオン・フォーミュラである『王笏』カルロス・グリード。彼の蘇生拠点である八つの本拠地を制圧することが今回の戦争の勝利条件である。その全てが発見されたということは、猟兵達が敵の王将に王手をかけたことに等しい。
「今回の依頼は『六の王笏島』を支配する、カルロス・グリードの一形態の撃破です」
八つの島を拠点とする八形態のカルロスの中でも、この『六の王笏』は特別な意味のある形態である。それは彼が持つ二つのメガリス『ヤヌスの鏡』と『玉鋼の塗箱』にある。
「『ヤヌスの鏡』は分身を作るメガリス。『玉鋼の塗箱』は死者の力を奪うメガリス。どちらもカルロスの戦略の根本となる重要なメガリスと言っていいでしょう」
此度の戦争で猟兵達は一体何度『王笏』の分身体との戦いを繰り返してきただろうか。このようなメガリスを所持していたのなら、彼の多様な分身にも納得がいく。同時にそれを所蔵する『六の王笏島』の失陥が、彼にとって大きな痛手となるであろうことも。
「同時に『六の王笏』はアリスラビリンスの力を具現化させており、その体は漆黒の虚無と化しています。外見的には同世界のオブリビオン・フォーミュラだった、オウガ・オリジンに類似しています」
この虚無の体で全てを飲み込む力に加えて、『六の王笏』は二つのメガリスをそれぞれ『銀の鋏』と『金の鋏』に変えて戦闘に使用する。武器として転用された場合でも、このメガリスは恐るべき性能を発揮するようだ。
「ヤヌスの鏡が変化した『銀の鋏』は、己を切り裂くことで己を増やす力を持ち。玉鋼の塗箱が変化した『金の鋏』は、切り裂いた敵の能力をコピーする力を持ちます」
いずれも非常に凶悪な力であり、オブリビオン・フォーミュラであるカルロスの基本的な戦闘能力も高い。二つのメガリスと虚無の体による攻撃をどう凌ぎ、そしてどう反撃を行うかが勝利の鍵となるだろう。
「戦争も終盤に差し掛かり、全ての本拠地を発見された事で『王笏』の危機感も増しているでしょう。敵の抵抗も激しくなると思われますが、ここで油断なく勝利を重ねることでこちらの優勢を確実なものとしましょう」
すでに幾つもの拠点を制圧され、コンキスタドールは間違いなく追い詰められている。だが猟兵もカタストロフ到来までのあと10日程のうちに、決着を付けなければならない。
蒼海羅針域(コンキスタ・ブルー)が指し示す勝利への航路と、猟兵の力を信じて――リミティアは手のひらにグリモアを浮かべると、『六の王笏島』へと猟兵達を送り出す。
「出港準備完了です。リムは武運を祈っています」
戌
こんにちは、戌です。
羅針盤戦争もいよいよ山場。今回の依頼は『六の王笏島』にて、七大海嘯『六の王笏』カルロス・グリードに決戦を挑みます。
このシナリオでは下記のプレイングボーナスに基づいた行動を取ると判定が有利になります。
プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。
『六の王笏』カルロスは分身を作る『銀の鋏』と敵の力をコピーする『金の鋏』の二つのメガリスと、全てを飲み込む漆黒の虚無と化した体を武器にして戦います。
いずれも凶悪ですのでどう対処するかの作戦はしっかり練っておくと良いでしょう。非常に強敵ですが、今の猟兵達なら決して勝てない相手ではありません。
なお本リプレイが成功すると『六の王笏島』の戦力が削れる他に、このシナリオの舞台ではない七大海嘯支配下の別な島をひとつ解放できます(世界地図のマスがひとつ埋まります)。この点は他の戦争シナリオと同じ仕様です。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『七大海嘯『六の王笏』カルロス・グリード』
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POW : メガリス『銀の鋏』
自身の【体をメガリス『銀の鋏』で切り裂くこと】を代償に、【新たな自分】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【全てを飲み込む『虚無と化した漆黒の体』】で戦う。
SPD : メガリス『金の鋏』
【メガリス『金の鋏』の刃】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、メガリス『金の鋏』の刃から何度でも発動できる。
WIZ : 虚無なる起源
自身が【地面や床に足を付けて】いる間、レベルm半径内の対象全てに【全てを飲み込む『虚無と化した漆黒の体』】によるダメージか【飲み込んだ物体を分解吸収し力と為すこと】による治癒を与え続ける。
イラスト:hoi
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
御前・梨
いや〜、最後は顔なしっすか。
…ま、何でもいいっすけどね。俺のやることは一つだけっすしね
じゃ、きめましょうか。どっちが虚無に、闇に沈むかを――
先制対策
全てを飲み込む虚無の身体。……なら飲み込んで貰いましょうか。
俺を
…と、いってもただ飲み込まれる訳じゃないっすけどね。身体中に隠し持った暗器、全部虚無の身体にぶつけてやるよ【闇に紛れる、咄嗟の一撃、マヒ攻撃、不意打ち】
いくら飲み込んだものを分解して吸収出来ようが……一気に纏めてってのは無理だろ?
そんじゃ、次はこっちの万全。こっちの闇を見せてやるよ。
指定UC発動、地面に足ついた感覚がなければ発動しないだろ?その力。
じゃ、これで終わりだ【切断、暗殺】
「いや~、最後は顔なしっすか」
これまでに『王笏』を含めた何人もの七大海嘯と戦ってきた御前・梨(後方への再異動希望のエージェント・f31839)。戦争も終盤に入ったこの段階になって、彼が踏み入った『六の王笏島』の主は、他の分身や幹部と比較しても異形な外見をしていた。
「……とうとう、ここにも猟兵の手は及んだか。已むを得んな」
漆黒に染まった男の顔からは表情さえも窺えず、どこから言葉を発しているかも定かではない。アリスラビリンスの力を具現化させた彼の手には、金と銀の二本の鋏が携えられており――そのいずれも、彼が頼みとする強大なメガリスが形を変えたものである。
「……ま、何でもいいっすけどね。俺のやることは一つだけっすしね」
王らしい振舞いで悠然と立ちはだかる『六の王笏』カルロス・グリードに、梨はゆらりと静かに近付いていく。敵意と殺気を隠し、くたびれた黒のスーツの下には多数の暗器を忍ばせて。まるで王の命を狙う暗殺者のように、その眼光は鋭く。
「じゃ、きめましょうか。どっちが虚無に、闇に沈むかを――」
「良かろう。決着を付けようではないか、猟兵よ」
宣戦布告とも取れる言葉に応じ、【虚無なる起源】を発動するカルロス。全身からじわりと漆黒のなにかが滲み出し、大地と空間を飲み込みながら辺りに広がっていく。それはあらゆる物質を分解吸収し己の力と為す、虚無の力の発露であった。
「全てを飲み込む虚無の身体。……なら飲み込んで貰いましょうか。俺を」
広がりゆく虚無の領域に、梨は自らの意思で足を踏み入れた。いかに猟兵であろうともその侵食から逃れうる耐性があるわけではない。傍目には自殺行為としか見えぬだろう。
「……と、いってもただ飲み込まれる訳じゃないっすけどね」
虚無に呑まれる瞬間、彼は目にもとまらぬ速さで身体中に隠し持った暗器の全てを取り出し、カルロスにぶちこんだ。ナイフや隠し針、日用品に偽装された仕込み手裏剣など、男の"裏"の仕事を支える道具の数々が、虚無の身体に突き刺さる。
「何をするかと思えば……この程度か」
暗器の不意打ちを食らったカルロスだが、その声色には余裕が感じられた。全てを飲み込む虚無の身体の前ではどんな武器も無効化され、あらゆる物理攻撃は意味を成さない。
当然、梨もそれは理解していた。効かないと分かる攻撃を敢えて行ったのは別の理由。
「いくら飲み込んだものを分解して吸収出来ようが……一気に纏めてってのは無理だろ?」
叩き込んだ多数の暗器を身代わりにして、自身が分解・吸収されるまでの時間を稼ぐ。それがほんの数秒足らずの猶予だとしても、状況を覆す転機としては十分。虚無に飲み込まれる彼岸の瀬戸際で、男は静かに笑みを浮かべた。
「そんじゃ、次はこっちの万全。こっちの闇を見せてやるよ」
梨の宣言と共に、それまで晴れていた『六の王笏島』の上空から黒い雨が降り始める。
それはクラスC級UDC『■■』が発生させる呪詛の雨。これに打たれた戦場は深い闇に覆われ、一寸先はおろか自分の足元すらも見えない無明の空間に変化する。
「これは……?」
思わずカルロスが上げた声すらも、闇に飲まれて聞こえなくなる。この常闇領域において他者の存在を認識することができるのは、ユーベルコードを発動させた梨本人だけだ。常に後方で暗部の仕事を担ってきた彼にとって、此処こそが慣れ親しんだ己の【現場】。
「地面に足ついた感覚がなければ発動しないだろ? その力」
聞こえていないのを承知の上で梨は語る。足音すら聞こえない常闇の中、先ほどまで虚無のあった場所に踏み込んでも、もう身体が分解されることは無かった。今頃カルロスは何も見えない空間で宙に浮いたような感覚でいるだろう。その状態では【虚無なる起源】の発動を維持することもできなかったようだ。
「じゃ、これで終わりだ」
闇の中で立ち尽くすカルロスの前に立ち、梨は「仕込み剣傘・無銘」を無造作に抜く。
虚無に叩きつけた暗器のうち、最後にひとつだけ手元に残した一振り。すらりと中棒から引き抜かれた細い刀身が、流れるような太刀筋で標的を断つ。
「――……ッ!!」
目と耳を封じる常闇の中で感じた鋭い"痛み"に、カルロスの身体がびくりと震える。
虚無と闇同士の戦いを制したのは、闇により長く身を置いた、闇に馴染んだ者だった。
大成功
🔵🔵🔵
霧沢・仁美
全てを飲み込む虚無…間違いなく脅威の力だね。
でも。この戦い、負けるワケにはいかないから…!
敵のユーベルコードは、こっちのをコピーするもの。
あたしが使うユーベルコードは、自分の武器(サイキック・バスター・ウェーブ)を強化するもの。
となると…強化されたバスターウェーブが返ってくる、のかな。
それなら。
一度バスターウェーブを撃ち込んでコピーさせた後、射程をギリギリ外れる程度に距離を取って【衝撃波】で攻撃。
元は自分の技、威力は桁違いに上がってても、どこまで届くかは把握してるから…!
効果時間が切れたタイミングで再度接近、今度は衝撃波の代わりに光を放って【目潰し】、怯んだところにバスターウェーブを撃ち込む!
「全てを飲み込む虚無……間違いなく脅威の力だね」
アリスラビリンスの力を具現化させた『六の王笏』の恐るべき力を目の当たりにして、霧沢・仁美(普通でありたい女子高生・f02862)はぐっと固唾を呑む。これまでに戦ってきた『王笏』の分身体の中でも、指折りの危険度を肌で感じる。
「でも。この戦い、負けるワケにはいかないから……!」
「それは、我とて同じことだ」
カルロスもまた猟兵という脅威に攻め込まれ、退路のない状況に追い詰められている。
この島をどちらが制するかによって、羅針盤戦争の勝敗も決まる。不退転の覚悟を示すかのように、黒い男は【メガリス『金の鋏』】を構えた。
(敵のユーベルコードは、こっちのをコピーするもの。あたしが使うユーベルコードは、自分の武器を強化するもの)
予知情報で伝えられた敵の能力と自身の能力が対峙した場合どうなるか、仁美は事前にシミュレートを行っていた。カルロスの所持する『金の鋏』がどの程度のレベルまで此方の能力を再現してくるかは分からないが、不明なら最悪のケースを想定するべきだろう。
(となると……強化されたバスターウェーブが返ってくる、のかな。それなら)
と、彼女は【念動超昂】を発動し、全身から迸るサイキックをカルロスに撃ち込んだ。
サイキックエナジーを純粋な物理破壊力に変換した「サイキック・バスター・ウェーブ」。ユーベルコードで強化したその威力は、彼女が持つ攻撃手段の中でも屈指だろう。
「サイキッカーか。なかなか良い力だ」
だがカルロスは携えたメガリスの大鋏を以て、押し寄せるサイキックの波を"斬った"。
波動が雲散霧消し、黄金の刃が不可視の力を纏う。それは紛れもなく仁美のサイキックエナジーと同じ波長を発していた。
「使わせて貰うぞ」
男が大剣のように鋏を振り下ろすと【念動超昂】されたサイキックの波動が今度は仁美に襲い掛かる。技は同じでも使い手の地力の差だろうか、その「サイキック・バスター・ウェーブ」は仁美が放ったものよりも更に威力を増しているように見えた。
(ここまでは、予想通り)
だが仁美は自身の能力をコピーされても慌てず、バックステップで敵から距離を取る。
迫る強大なサイキックの波動は、しかし彼女の元に到達する手前で霧散し、力を失う。
「元は自分の技、威力は桁違いに上がってても、どこまで届くかは把握してるから……!」
「成程、我に力を奪われることも想定済みか」
射程をギリギリ外れる距離を見切り、サイキックの衝撃波で応戦する超能力者の少女。
対するカルロスはその冷静な対処に感心しつつも、金の鋏からバスターウェーブを連射して少女を更に攻めたてる。激突する同種の力は大気を切り裂き、大地を揺るがし、破壊の渦を広げていく。両者一歩も譲らぬ構え、だが優勢なのは明らかにカルロス側だった。
「自分の技が敵に使われるって、こんなに厄介なんだね……!」
直撃すれば昏倒は不可避なバスターウェーブを避けるため、距離を保ちながら威力で劣る長射程攻撃を続けなければいけない仁美。体力的にも精神的にも消耗の激しい戦いだが、まだ逆転のチャンスが彼女に残されていないわけでは無かった。
「む……ここまでか」
そのチャンスとは敵のユーベルコードの時間切れ。いかに超越的な効果を持つメガリスでも奪取した能力を無制限に使えるはずは無く、一定時間が過ぎれば使用不可能になる。
『金の鋏』からサイキックの波動が消えたのを見て、カルロスが不満げに唸る。本当はここまで戦闘が長引く前に決着をつける気だったのだろう。だが仁美の粘りが彼の想定を上回った。
「今だ!」
待ちわびた好機を見逃さず、再度敵に接近する仁美。その全身にサイキックエナジーが漲るのを見て、カルロスはもう一度能力を奪取しようと『金の鋏』を構えるが――彼女が放ったのは衝撃波ではなく閃光だった。
「ぐ……ッ?!」
スタングレネードのような強烈な光が敵の視界をホワイトアウトさせ、一時的に視力を奪う。思わず怯んだカルロスのガードが緩んだところを狙って、仁美は今度こそ本命となるバスターウェーブを撃ち込んだ。
「これがあたしの全力……加減なんかしないんだからね!」
「――……ッ!!」
怒涛の勢いで押し寄せる破壊のサイキックが、『六の王笏』の全身に叩きつけられる。
これまで散々コピーされて利用された分をお返しするように、全力を込めたその一撃は敵彼方まで吹き飛ばすのに十分な威力だった。
大成功
🔵🔵🔵
叢雲・雨幻
こりゃまた厄介な事になったねぇ。
しかしやり様によっては…なんとかなるか?
まっ、やれるだけの事をやってやるさ。勿論掠め手でね。
【SPD】
まずはコピーされる前提で奇襲の様にUCで突貫するかね。
万が一なんらかの方法で先撃ちされる場合も考えて【武器受け】の準備もしておこう。
溜める時間を与えない【早業】で鋏を剣で弾き、手数押しで翻弄していこう。
ただ俺の場合と違い溜めずにノータイムで技を放てる…って場合も考えて、
【スモークグレネード】を事前に散布して入り込み、的を絞らせない様【忍び足】で動き回って【目立たない】よう攪乱しておこう。
時間を乗り切る、もしくは隙を見つけたら一気に【切り込み】攻撃を仕掛けるかね。
「こりゃまた厄介な事になったねぇ」
全てを飲み込む虚無の体に、強力な二つのメガリスを駆使する『六の王笏』カルロス。
こんな面倒な奴を相手にしなければならないのかと、叢雲・雨幻(色褪せた根無し草・f29537)は煙草をふかしながらやれやれと肩をすくめる。
「しかしやり様によっては……なんとかなるか?」
親指で顎髭をなぞり、思案すること数秒。何か思いついたらしい彼は、口元に飄々とした笑みを浮かべて構えを取る。相手が虚無の怪物だろうとオブリビオン・フォーミュラだろうと、やるしかないと言われたならやるだけだ。
(まっ、やれるだけの事をやってやるさ)
勿論搦め手でね――内心でにやりと呟きながら、不意を突くように敵に突貫する雨幻。
鞘に納めた剣に手を添えた居合の構えからの、異常な高速移動と抜剣斬撃。奇襲により初手で仕留めるつもりだろうか? しかし今回の敵はそれで倒せる尋常の相手ではない。
「よぉし……オジサン張り切っちゃおうかな!」
「巫山戯た男だ」
抜き放たれた「黒雲」の斬撃を、カルロスは【メガリス『金の鋏』】であっさりと受け止めた。黒と金の刃が火花を散らした直後、彼は鋏を大剣のように構えて腰を低く落とす――それはたった今雨幻が放った【雷雲撫で】の構えと、まったく同じ姿勢だった。
「貴様自身の技で散るがいい」
ユーベルコードを再現するのに必要な技術すらもコピーした、メガリス『黄金の鋏』。
そこから無数の斬撃が繰り出される寸前、雨幻は「黒雲」と対となる黒剣「黒霧」を抜き放ち、カルロスの姿勢を崩した。
「生憎おいさんの技だからこそ、弱点も分かってるってねぇ」
【雷雲撫で】の欠点は、技を放つ前に暫くその場に留まって構えを維持する「溜め」が必要となる事。ならば溜める時間を与えずに、手数押しで翻弄するのが彼の作戦だった。
居合から二刀の構えにシフトした雨幻の早業は、構えを取り直そうとするカルロスの鋏を弾き、矢継ぎ早の勢いで攻め立てる。黒い刃が黒い敵を掠め、スーツに裂け目ができる――だが、押し込まれているにも関わらず、敵の態度は落ち着いたままだった。
「成程。だが同じ技でも使い手が異なればどうなるだろうな?」
二刀の剣戟の間に生じる僅かな隙に、カルロスはさっと『金の鋏』を構える。雨幻なら4~5秒を要する【雷雲撫で】の溜め時間、それを彼はオブリビオン・フォーミュラとしての驚くべき力量によって、1秒足らずにまで短縮を成し遂げていた。
「この技の特性は理解した。これで仕留めてくれよう」
「あらら。そーくるのね……だったら、っと!」
ノータイムとまではいかずとも、此方を上回る速さの居合斬り。それを見た雨幻は予め用意していた筒状の何かからピンを引き抜き、相手に投げつけながら後ろに飛び退いた。
【雷雲撫で】を再現した黄金の刃は、直前まで彼のいた場所を空振る。その直後に置き土産のスモークグレネードから煙幕が噴き出し、カルロスの視界を遮った。
「また目眩ましか」
散布された煙を振り払いながら『金の鋏』を振り回すカルロス。だが雨幻は音で位置を悟られぬように忍び足で煙幕の中を動き回り、とにかく的を絞らせないように立ち回る。
たとえ溜めを阻止できなくても、メガリスによるユーベルコードの奪取には制限時間がある。長くても数分、その時間を乗り切りさえすれば反撃に転じるチャンスはある。
「こういうギリギリの勝負って、オジサン疲れるから嫌なんだけどねぇ」
弱音のような軽口を叩きつつも、男の表情に焦燥感はない。常に飄々として冗談交じりに、黄金の刃も無数の斬撃も受け流す。のらりくらりとしたその戦いぶりには、攻めているはずのカルロスの方が次第に焦れ始めるほどだ。
「本当に、巫山戯た男だ……ッ」
やがてスモークグレネードの煙幕が完全に晴れる頃には、『金の鋏』の効果も切れる。
その瞬間、雨幻は逃げ回るのを止めて一気に切り込んだ。速度と手数が元に戻るとき、それまでとの速度差からカルロスの動きに隙が生まれたのを、彼は見逃さなかったのだ。
「……その巫山戯た男に、お前さんはやられるんだよ」
サングラスの下から覗く鋭い眼光。そしてそれ以上に鋭い刃の閃きが『王笏』を襲う。
本日最速となる黒雲と黒霧の二連撃は、避ける間もなくカルロスの肉体を切り裂いた。
「がは、ッ!」
赤い鮮血にかわってその身から散るのは、闇が液体になったような漆黒の虚無。
がくりと地に膝を突いた男の足元に、血溜まりのような虚ろが広がっていく――。
大成功
🔵🔵🔵
神宮寺・絵里香
●心情
・これまた随分と物騒だな。まあ敵なら潰すだけだが。では、やるか。対処法は思い浮かんだしな。
●先制攻撃対策
・地面や床に足をつけていれば無敵。分かりやすいな。こちらのUCが発動できるまでは兎に角攻撃を凌ぐ。ゴッドハンドとしての戦闘知識を活かし、格闘攻撃の予想し見切り、鋏は武器受け、地形を利用して上手く距離を取りつつ、第六感で危険な攻撃を見切り躱す。その後、高速詠唱でUCを発動し、敵のいる場所を中心に範囲攻撃をして沼へと変える。
・底なし沼に沈む間は、床や地面に足をつけてない。よってUCの発動条件を満たさない。漆黒の体も解除されるだろう。後は水上歩行で近づき、雷を纏った薙刀で貫き、薙ぎ払う。
「これまた随分と物騒だな。まあ敵なら潰すだけだが」
『六の王笏』カルロスの体から流れ出た虚無が、大地を侵食し全てを飲み込んでいく。
それを見た神宮寺・絵里香(雨冠乃巫女・f03667)はひょいと肩をすくめつつも、まるで大した事はないと言わんばかりの冷静な態度。理不尽な能力や強大な敵との戦いなら、彼女はこれまでにも何度も経験してきた。
「では、やるか。対処法は思い浮かんだしな」
「……ほう。我が【虚無なる起源】をどのように攻略するつもりだ?」
カルロスは大地を分解吸収することで傷を癒やし、二本のメガリスを手に立ち上がる。
その身から溢れる漆黒の虚無は、まるで夜の帳が全てを覆い尽くすように、絵里香の事も飲み込もうと迫ってきた。
「地面や床に足をつけていれば無敵。分かりやすいな」
絵里香は押し寄せる虚無から距離を取り、白蛇の意匠がついた薙刀「叢雲」を構える。
あれが流出する範囲内にいては、どんな物質も飲み込まれてしまう。だが離れさえすれば安全という訳でもなく、虚無の体を持つカルロス自身が追撃を仕掛けてくる。
「切り裂かれるか、飲み込まれるか。貴様の望みはどちらだ」
単純な刃物としても凄まじい切れ味を誇る金と銀の大鋏。その斬撃を薙刀で受け止めた直後には、虚無化した体による格闘攻撃が来る。ゴッドハンドとしての経験からその動きを見切り、咄嗟に身を躱した絵里香の黒髪を数本、虚無の手が飲み込んでいった。
(ひとつ対処を誤れば詰みだな。まあ、誤らなければいいだけだが)
第六感が脳裏に響かせる警鐘を聞きながら、絵里香は顔色ひとつ変えずに攻撃を凌ぎ、岩場や木々の多い島の地形も利用して巧みに敵から距離を取る。その間にも彼女は早口で詠唱を紡ぎ、霊力を溜めてユーベルコードを発動する準備を行っていた。
「いと深き深き湖沼の主、大いなる水を司りし白蛇の神よ! 汝が住処をここに顕現させよ!」
そして準備が整った瞬間、白蛇神に仕える巫女たる彼女は叢雲を掲げて高らかに叫ぶ。
するとその背後から目も冴えるほどに白い巨大な蛇が姿を顕し、薙刀の切っ先が突きつけられた先――カルロスのいる地点を狙って水のブレスを吐いた。
「む……これは、我の知らぬ神の息吹か」
鉄砲水のような勢いで放たれる膨大な量の水流。それ自体は虚無化したカルロスの体にダメージを与えることはできない。だが辺りに散らばった水はそのまま地面を浸し続け、戦場を底なし沼の【白蛇神域】に変える。
「底なし沼に沈む間は、床や地面に足をつけてない。よってユーベルコードの発動条件を満たさない」
「くっ……!!」
足場を失い沼に沈んでいくカルロスを、絵里香はクールな視線で見下ろしていた。蛇神を奉る彼女には水上を歩くくらい造作もないが、敵はそうもいかないだろう。辺りを侵食し続けていた【虚無なる起源】の効果も消え、肉体の虚無化も解除される。
「後は、こいつで終いだ」
ぴちょんと沼の上に波紋を立てながら、絵里香は薙刀を振るう。水神にして雷神としての側面も持つ神宮寺家の祭神「因達羅(インドラ)」の加護を受けたその刃は雷を纏い、神域に囚われた敵を討つ。
「がぁッ!? やって、くれるな……ッ!」
半身まで沼に浸かり動けないでいるカルロスの体を、雷撃を伴う刃が貫き、なぎ払う。
黒く染まったその顔から表情は読み取れないが、苦痛の籠もった声だけでも、彼が受けたダメージを推し測るのは容易かった。
大成功
🔵🔵🔵
ミア・ミュラー
アリスラビリンスでの戦争でも、倒れた後でも力を奪われるなんて、あの人もちょっとかわいそう、ね……。
ん、攻撃を防ぐのは難しそうだから、ひとまず「ダッシュ」で攻撃範囲から、逃げる。捕まりそうになってもコンパスを飲ませて時間を稼いたり、スートロッドで風の壁を作り出して邪魔する、ね。
上手く逃げられたら、【風槍】を使う、よ。風でできた槍なら取り込まれない、よね。斜め下から体に突き刺して吹き飛ばして、空に打ち上げちゃえば回復はできない、はず。そのまま光を纏ったグリッターハートと炎を纏ったアーデントクラブを飛ばして「属性攻撃」、する。
死者は安らかに、眠るべき。ん、何でも奪っちゃう悪い王様にはおしおき、だよ。
「アリスラビリンスでの戦争でも、倒れた後でも力を奪われるなんて、あの人もちょっとかわいそう、ね……」
かの世界の力を具現化させた『六の王笏』の姿から、ミア・ミュラー(アリスの恩返し・f20357)はかつて対峙したオウガ・オリジンを思い出す。彼女はオブリビオン・フォーミュラでありながら猟書家に幽閉され、迷宮厄祭戦でも完全な力を取り戻せずにいた。
"アリス"の1人としては元凶でもある彼女への想いは複雑だが、オウガにも死後の安息を得る権利はあるはず。死者の力を奪う『王笏』の所業は、決して許せるものではない。
「我はコンキスタドールの王。この世のあまねく宝を略奪し、蹂躙する……!」
【虚無なる起源】にて全てを飲み込まんとする傲慢な王と、アリスの少女が対峙する。
どれほど強大な敵でも、既にオウガの女王も倒した事のある彼女に、恐れはなかった。
「ん、攻撃を防ぐのは難しそうだから、ひとまず逃げる、ね」
漆黒の虚無がこちらに向かってくるのを見ると、ミアは冷静にくるりと踵を返して走り出す。見たところ虚無は本体であるカルロスから一定範囲までしか広げられないようだ。つまりその範囲外に出てしまえば攻撃からは逃れられる。
「逃がすものか」
カルロスも当然ながら後を追う。しかしアリスラビリンスでの逃亡生活で培われた健脚は、この「鬼ごっこ」でも存分に発揮される。小柄な身の丈に相応な歩幅でも驚くほどのスピードで、虚無との距離を引き離していく彼女の姿は、まるでウサギのようだった。
「逃げ足の速い奴め……」
ただ走るだけでは追いつけないと悟ったカルロスは、物質を分解吸収する虚無の特性を利用して相手の移動を妨害しにかかる。崩れる足場に回り込んでくる闇――より苛烈さを増した敵の追撃から、ミアは逃れ続けなければいけない。
「こういうのもアリスラビリンスで慣れてる、よ」
スカートを翻してぴょんと障害物を飛び越え、愛用の「スートロッド」をひと振りし、風の壁に作り出して追跡の邪魔を。側面から押し寄せてくる虚無には、持っていた道具の中からシールド付きコンパスを身代わりに飲み込ませ、時間を稼いでいるうちに逃れる。
度重なる妨害にも攻撃にも、ミアは捕まらなかった。そうして無事に【虚無なる起源】の効果範囲から逃げおおせ、十分に敵との距離を取ったところで、彼女は再び踵を返す。
「其は風……穿ち、吹き飛ばせ」
彼方にいる敵に手のひらをかざして【風槍】の魔法を詠唱すると、風の槍が放たれる。それは変幻自在の軌道を描いて飛んでいき、斜め下から突き上げるように標的を貫いた。
「風でできた槍なら取り込まれない、よね」
「ぐおッ……!?」
風の壁が妨害として有効だった事からもそれは間違いない。カルロスの胴体に刺さった槍はそのまま彼の体を空に打ち上げる。その両足が地面から離れた瞬間【虚無なる起源】の効果は解除され、周囲に立ち込めていた虚無も消えた。
「これで回復もできない、はず」
ミアは宙に浮いた敵に狙いを定め、マジックアイテム「グリッターハート」と「アーデントクラブ」を飛ばす。ハートのスートは慈愛の心の、クラブのスートは立ち向かう勇気の証。少女の心の中でその想いが高まることで、それらは優しく輝き、熱を帯びる。
「死者は安らかに、眠るべき。ん、何でも奪っちゃう悪い王様にはおしおき、だよ」
海のような美しい藍色の瞳に、まっすぐな想いの輝きを宿して。ミアの宣言と同時に、光を纏ったハートと炎を纏ったクラブが、骸の安寧を妨げる邪悪な王に撃ち込まれた。
「ぐ、があっ……まさか『アリス』に、この島の我が……!!」
光と炎のスートに射抜かれたカルロスが、苦しみ悶えながら真っ逆さまに落ちていく。
アリスラビリンスの力を具現化した彼が、かの世界に迷い込んだ「アリス」に敗れる。それはなかなかに皮肉のきいた因果応報だった。
大成功
🔵🔵🔵
黒川・闇慈
「そろそろ貴方の分身と戦うのも食傷気味ですのでね……ここで元を断たせていただきますよ。クックック」
【行動】
wizで対抗です。
先制攻撃の対処としてホワイトカーテンの防御魔術を起動し、足元に展開しましょう。オーラ防御、激痛耐性、覚悟、の技能を用いて耐えましょうか。
相手のUCは地面に足を付けている間しか発動できないようです。であれば上空に打ち上げてしまえばいい。
高速詠唱、属性攻撃、全力魔法の技能を用いて風獄刃軍を使用します。竜巻で相手を上空まで打ち上げて、風で切り刻んで差し上げましょう。
「持っているのが鋏でなく傘ならばゆっくり降りて来られたかもしれませんね?クックック」
【アドリブ歓迎】
「そろそろ貴方の分身と戦うのも食傷気味ですのでね……ここで元を断たせていただきますよ。クックック」
そう言って怪しげに笑う黒川・闇慈(魔術の探求者・f00672)の視線は『六の王笏』が所持する二本のメガリス――特に『銀の鋏』に向けられていた。分身を作るヤヌスの鏡が変化したあのメガリスこそ、大量の『王笏』をこの戦争に出現させた原因に違いない。
「我がメガリスの正体も既に知れているようだな。だが、そう安々とこれは渡せん」
戦略の要であるメガリスを死守するためにも『六の王笏』は全力で猟兵達を迎え撃つ。
落下を経て再び地に足をつけた彼の身体からは【虚無なる起源】があふれ出し、大地を黒く染めていく。万物を分解吸収し攻撃と回復を同時に行う、このユーベルコードを攻略しなければ彼には近付くことすらできない。
「虚無の侵食は足元から進むようですね」
闇慈は迫る虚無への対処として魔力を込めた白いカードを自分の足元に置き、防御障壁「ホワイトカーテン」を展開する。実体ではなく魔力のオーラによってダメージを軽減するこの障壁なら、多少なりと耐えられるはずだ。
「無駄だ。我が虚無は全てを飲み込む」
白い障壁に守られた闇慈の周りを、漆黒の虚無がぐるりと取り囲む。即座に分解吸収されることは無かったものの、じわじわと侵食されていくのを肌で感じる――それでも痛みを覚悟してここに来た魔術の探求者は、これしきのダメージで膝を屈することはない。
(相手のユーベルコードは地面に足を付けている間しか発動できないようです。であればもう一度上空に打ち上げてしまえばいい)
自身の分析と味方の交戦結果から、闇慈は【虚無なる起源】の弱点を導き出していた。
虚無の侵食に耐えながら、18式増幅杖・メイガスアンプリファイアを手に詠唱を行う。増幅された魔力が魔法陣を描き、戦場に一陣の風が吹く。
「吹き荒れるは命を逃さぬ致死の風。一切全てを切り刻め、テンペスト・センチネル」
【風獄刃軍】の発動と同時に、その風は目も開けていられない程の激しい竜巻となり、虚無の向こうにいる敵を包み込んだ。吠え、狂い、絶叫する獣のような暴風の音と共に、風圧と真空の刃がカルロスに襲い掛かる。
「ぬおぉぉ……っ!!?」
あまりに強烈な気流の渦に巻き上げられ、カルロスの身体は上空まで打ち上げられる。
またもや地面から足が離れたことで【虚無なる起源】の効果は失われ、闇慈の周りに漂っていた虚無も消える。防御に力を割く必要のなくなった彼は竜巻の制御と強化に意識を集中し、空中の標的をさらに攻め立てる。
「ぐ、がぁッ……降ろせ、痴れ者めが……!」
「持っているのが鋏でなく傘ならばゆっくり降りて来られたかもしれませんね? クックック」
風刃に切り刻まれる『六の王笏』を見上げ、闇慈は乱れた黒髪を風になびかせながら、口の端を三日月のように釣り上げる。この竜巻が止まない限り、虚無の力が復活することもない。敵は空中で成す術のないまま、じわじわとダメージを蓄積させていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ジュリア・ホワイト
メガリスで武装したフォーミュラ
なかなか手ごわい相手だ
「だが、ここで勝てればその意義は大きい。ヒーローとしてはやるしかないね!」
相手の先制はユーベルコードを奪う力を鋏に纏わせる、か
なるほど厄介な特性だけど
「その技、受けたユーベルコードを無効化する性質はないね?そこに付け込ませて貰うよ」
幸い先手を直接攻撃じゃないもので消費してくれたんだ
武器攻撃だけで十分時間稼ぎができる
UCで無いなら受け止められても平気だし
そしてこっちは【回収代行!】を発動
金の鋏で受け止めたら……『金の鋏はボクが奪える』
ちなみにUCの転移先はボクの器物の中に指定してあるから万が一コピーされても無駄さ
片翼がもがれたら
後は落ちるのみさ
「メガリスで武装したフォーミュラ。なかなか手ごわい相手だ」
分裂と簒奪を司る二本の大鋏を装備した『六の王笏』を前に、ぐっと気を引き締めるのはジュリア・ホワイト(白い蒸気と黒い鋼・f17335)。これまでに戦ってきた分身の中でも、この島にいるのが特に強大かつ重要な分身体なのは間違いないだろう。
「だが、ここで勝てればその意義は大きい。ヒーローとしてはやるしかないね!」
「ヒーロー、か。ならば貴様の正義と大義も、この鋏で奪い尽くしてやろう」
意気込みを見せるジュリアに応じるように、相手は【メガリス『金の鋏』】を構える。
ぎらりと剣呑な輝きを放つ黄金の刃。もしその刃に切り裂かれればただでは済まないであろうことを、彼女は肌で感じ取っていた。
(相手の先制はユーベルコードを奪う力を鋏に纏わせる、か。なるほど厄介な特性だけど――)
事前情報から『金の鋏』の効力を把握していたジュリアは、敢えて受けに回るのではなく自分から踏み込んだ。機関車のように力強く、真っ直ぐに、無骨な動輪剣を叩きつけ。
「ユーベルコードで無いなら受け止められても平気だよね」
ぐぉんと唸りを上げて回転する「残虐動輪剣」の刃が、『金の鋏』と火花を散らす。ほぼチェーンソーである彼女の得物と鍔迫り合っても、刃こぼれもしないのは流石にメガリスか。だがユーベルコードではない通常攻撃をコピーすることはやはりできないようだ。
「ユーベルコードを使わずに、この我と渡り合うつもりか?」
舐められたものだな、とカルロスは言う。能力の略奪を抜きにしても、彼の地力は猟兵を大きく上回る。鋏と剣の鍔迫り合いを押し返す力も、ジュリアの腕力を凌駕していた。
単純な武力による力比べでは、機先を制したところでやがて競り負ける。彼女もそれは分かっていた――だから、この武器攻撃は時間稼ぎになれば十分。
「その技、受けたユーベルコードを無効化する性質はないね? そこに付け込ませて貰うよ」
そう言って彼女はふいに動輪剣を手放し、本命となる【回収代行!】を発動。動輪剣に替わって取り出した、落とし物回収用のマジックハンドを伸ばす。当然ながら敵はそれも『金の鋏』で受け止めようとするが――。
「――……なっ?!」
マジックハンドが触れた瞬間、『金の鋏』はカルロスの手元から消えた。いや、正確に言うなら奪われたのだ。ジュリアの使ったユーベルコードは直接的なダメージを与えるものではなく、命中した物品を自身の装備品の中に転移させる能力だった。
「驚いたかい? ちなみに転移先はボクの器物の中に指定してあるから、万が一コピーされても無駄さ」
今ごろ『金の鋏』はヤドリガミである彼女の本体「D110ブラックタイガー号」の中に収納されているだろう。ここなら敵がメガリスを奪還しようとしても簡単にはいかない。
敵はこれまでに数々の世界で宝と力を奪ってきたのだろうが、この局面で自身が大事な宝を奪われる側になるとは思ってもみなかっただろう。双鋏の片割れを失ったカルロスの態度には、明らかな動揺が見てとれた。
「片翼がもがれたら、後は落ちるのみさ」
動揺から生じる隙を見逃さず、ジュリアは即座に追撃に移る。役目を果たしたマジックハンドを放って、大型のスコップを振りかぶり。黒光りするその先端を敵の脳天目掛けて思いっきり振り下ろす。
「貴様……ごはッ!!?」
反応が遅れたカルロスは防ぐ間もなく頭を強かに打ち据えられ、地に叩きつけられた。
血の代わりにその身から流れ出すのは虚無。ぽたりと滴り落ちる漆黒が傷の深さを物語ると共に、大事な宝を奪われた怒りと屈辱から、その身はわなわなと震えていた。
大成功
🔵🔵🔵
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
切った物のコピーを造り出すメガリス、なぁ。
羨ましくないつったら嘘になるけど、
増やし過ぎたらどうなるもんかねぇ?
……いや、試したくはねぇよ?
だってほら、増え過ぎたら対処に困るだろうし。
虚無とか虚空を相手にするにゃ、アタシはかなり不得手だからねぇ。
ま、やれる事は全力でやるだけさ。
銀の鋏へ向かって『マヒ攻撃』を乗せた電撃の『属性攻撃』を放ち、
なるべく手放させようとするよ。
……その攻撃自体が『フェイント』だけどな。
その間にサイキックを練り上げ、メガリスの力の根源目掛けて
【魂削ぐ刃】を全力で振り抜く!
流石に完全消滅までは狙わないさ、
けれども不具合くらいは起こせるだろうよ!
「まさかコンキスタドールである我が略奪を受けるとはな……だが、これさえあれば」
猟兵達の攻勢により劣勢に陥った『六の王笏』は、しかしすぐに余裕の態度に戻った。
彼の手元にあるのは【メガリス『銀の鋏』】。その刃で自身の体を切り裂けば、噴き出した虚無が新たな「カルロス・グリード」の体となり、衣服や装備品――奪われたはずの『金の鋏』まで含めた、完全な分身を作り上げる。
「切った物のコピーを造り出すメガリス、なぁ」
その様子を目の当たりにした数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は険しい顔をする。必要に応じて分身をいくらでも作り出せるとは夢のようなアイテムだが、それが敵の手中にあるのはまさに悪夢でしかない。
「羨ましくないつったら嘘になるけど、増やし過ぎたらどうなるもんかねぇ?」
「ほう。1人2人では不足だと?」
「……いや、試したくはねぇよ? だってほら、増え過ぎたら対処に困るだろうし」
異口同音に声を上げる二人のカルロスに、顔をしかめながら訂正を入れる多喜。虚無や虚空を相手にするには、彼女はかなり不得手なほうだ。正直一体だけでもキツいと言うのにぽんぽん頭数を増やされてはどうにもならない。
「ま、やれる事は全力でやるだけさ」
これ以上分身を作られる前にと、多喜は『銀の鋏』に向かって手のひらからサイキックの電撃を放つ。メガリスとはいえ金属製なら電気も通るだろう、そこから相手が感電して鋏を手放せば上等。ついでにマヒで動きを封じられれば御の字といったところか。
「全力か。それは我とて同じことだ」
己の生命線であるメガリスを、カルロスがそう簡単に手放すはずもない。電撃に狙われた本体と『銀の鋏』をかばうように、新たに作り出された分身体がさっと立ちはだかる。
完全な虚無と化した彼の体は、電撃のエネルギーすら全て飲み込んでしまう。生物なら感電死もありうる電圧を浴びても、その漆黒の体はまるでダメージを受けていなかった。
「この島とメガリスは何としてでも死守する……っ?!」
だが反撃に移ろうとしたカルロスの視界内から、多喜の姿はいつの間にか消えていた。
彼女にとって電撃による攻撃はただのフェイント。敵がその対処に追われている間に、真打ちの一撃を叩き込むための布石に過ぎなかった。
「……見えたよ、そいつの力の『根源』って奴が……」
「ッ!?」
カルロス本体から見た死角より、不意をついて急接近する多喜。手刀の形に構えられたその手には練り上げられたサイキックエナジーが収束され、おぼろげに光を放っている。
この一度きりの好機に全てを費やす覚悟を以て、彼女はその手刀を全力で振り抜いた。
「引き裂け、アストラル・グラインド!」
対象の核となる超常存在を斬る【魂削ぐ刃】で、狙い定めたのは『銀の鋏』ただ一つ。
思念で構成された刃は物理的には何の破壊ももたらさない。だが、その一撃がメガリスに届いた瞬間、金属が砕けるような音が戦場にいる者達の耳に響いた。
「流石に完全消滅までは狙わないさ、けれども不具合くらいは起こせるだろうよ!」
多喜の一喝と同時に、先ほど作り出されたばかりの分身が、輪郭を失って影法師のように消失する。そしてそれを作り出したカルロスも、損傷した『銀の鋏』を抱えてよろめいていた。彼もまた、別の「カルロス」によって作られた分身だったという事なのだろう。
「貴様、なんという……ことを……ッ!」
メガリスの力であまりに増えすぎた彼らの、どれが本物か見定める手段はないだろう。
だがそれが彼の無敵や不滅を意味しないのは『銀の鋏』を傷つけた多喜の一撃によって証明された。
大成功
🔵🔵🔵
リア・ファル
挑ませてもらうよ、カルロス
その虚無の身体は脅威だけど、
『イルダーナ』で空中へ逃れ、避け切ろうか
(空中戦、操縦)
対抗するなら、やはり足下か
『ライブラリデッキ』製のマイクロブラックホール弾を
『セブンカラーズ』に装填、相手の動きを読み、撃つ
(情報収集、偵察、スナイパー)
足が僅かでも浮いたなら、すかさず『グラビティアンカー』で絡みとり、
イルダーナとの空中散歩へご招待だ
(捕縛、ロープワーク)
トドメは、UC【凪の潮騒】で動きの止まったカルロスへ
突撃し、『ヌァザ』の斬撃を浴びせよう
(切り込み、なぎ払い)
未知なる大海は、新たなるモノを生む
故に、虚無には相応しくないさ
「挑ませてもらうよ、カルロス」
バイク型の制宙高速戦闘機『イルダーナ』に乗り、1人の少女が『王笏』と対峙する。
彼女の名はリア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)。星の海より来たる電脳の戦士にして、この戦争を終わらせるために来た猟兵の1人。
「その装備、スペースシップワールドの者か。ならば我も受けて立とう」
挑戦を受けたカルロスは【虚無なる起源】を発動し、体から流れる虚無で再び島を侵食し始める。漆黒の奔流はまたたく間に大地を染め、さらには空中にも侵食を拡げていく。
「宇宙の闇よりも暗き我が深淵。貴様はどう乗り越える?」
ブラックホールのように全てを飲み込む虚無の中心から、漆黒の顔でカルロスが問う。
対するリアの答えは『イルダーナ』による空中戦。巧みな操縦技術で縦横無尽に空を駆け、押し寄せる虚無に捕まらないよう逃げ回りながら敵の様子を観察する。
(対抗するなら、やはり足下か)
とにかくこの虚無を止めなければ勝機はない。ユーベルコードの発動条件が「地に足を付けている間」に限定されているのなら、まずは足場を崩しにかかるのが合理的な策だ。
リアは回避機動を続けながら、各種攻撃・治療用データを集積した『コードライブラリ・デッキ』より作戦に適した魔術を選択し、リボルバー銃の『セブンカラーズ』に装填。目標の動きを読んでその足元に着弾させるよう、弾道計算をシミュレートして――撃つ。
「なに……っ?」
コーディングした重力魔術を封入した『セブンカラーズ』のマグナム弾は、極小のマイクロブラックホール弾となってターゲットの足元に着弾、地面を半球状にえぐり取った。
足場が消え去り、カルロスの体が宙に浮いた瞬間【虚無なる起源】の効果は失われる。すかさずリアは『グラヴィティ・アンカー』を射出、重力の錨で敵を絡め取る。
「イルダーナとの空中散歩へご招待だ」
「ぐ……放せっ!」
環境制御ナノマシンで構成された錨と鎖は、オブリビオン・フォーミュラの膂力でも簡単には振りほどけない。カルロスがもがいている内に『イルダーナ』は高度を上げ、敵を地上から遠くに引き離していく。
「対象の固有振動数について解析完了。……さあ、キミを世界から少しだけ切り離す!」
『六の王笏島』を遥か下方に見下ろせる高度に達すると、リアは【凪の潮騒】を発動。
片手で『イルダーナ』の操縦桿を握ったまま、もう片手の平を拘束したカルロスに向け。そこから放たれた共鳴波が、対象を正常な時空間から断絶させる。
「なにを―――……」
まるで彼だけの時間が停まったように、カルロスの動きがぴたりと止まる。この状態を何秒維持できるかの保障はないが、たとえ一瞬だとしても攻めるには十分な時間だった。
「未知なる大海は、新たなるモノを生む。故に、虚無には相応しくないさ」
推進機関の出力を最大に上げ、白銀の機体と共に突撃するリア。その手に現出するのは魔剣型多元干渉デバイス『ヌァザ』。万物に干渉し、次元すらも裂くというその刃は今、未知なる可能性にあふれた蒼海の世界を守る為にこそ振るわれる。
「……―――!!!」
流星の如き一閃が、虚無と化した『六の王笏』の肉体を薙ぐ。時空断絶による停滞から開放された彼は、血飛沫のような虚無を空中に撒き散らしながら、島に墜落していった。
大成功
🔵🔵🔵
ルカ・ウェンズ
あ!奥さんがのろけてた王様だわ。自分と岩に【オーラ防御】じゃんけんだと鋏より石の方が強いから私の【怪力】で持ち上げた岩をくらえ!!
岩を盾にして距離を詰めて岩で敵を鋏ごと潰すのを狙ってみるわ。
もし岩が破壊されたら対オブリビオン用スタングレネードを使い目潰し、目はどこかしら?耳も本当の耳か怪しいし……昆虫戦車に頼んで【一斉発射】これで攻撃してもらって、その隙にユーベルコードを使い攻撃するわ。
これでコピーされないと思うけど、もしされたら【まるで10秒先の未来を見てきたかのように】攻撃を予想し、回避されるから先に【グラップル】これで動きを止めて「今のうちに私と一緒に攻撃して」と言ってみるわ。
「ッ……やってくれるな、猟兵め……」
再び地上に墜とされた『六の王笏』カルロスは、落下の衝撃も抜けきらぬうちから即座に立ち上がる。虚無と化したその体にどの程度の耐久力があるかは不明瞭だが、まだ戦闘に支障をきたす程のダメージはないようだ。
「あ! 奥さんがのろけてた王様だわ」
そんな彼の姿を見つけるなり、指差して叫んだのはルカ・ウェンズ(風変わりな仕事人・f03582)。「奥さん」というのは七大海嘯の1人、メロディア・グリードの事だろう。予兆でも垣間見られたその関係性は、素直になれないながらも良好な仲らしかった。
「……そう言えば、貴様達には我が妻も世話になっていたな」
虚無化したカルロスの表情は分からないが、その時ぞわりと怒気があふれ出したような気がした。【メガリス『金の鋏』】を取り出した彼は攻めにも守りにも転じられる構えを取り、不埒者の首を切り落とさんと迫る。
「じゃんけんだと鋏より石の方が強いから」
対するルカは気圧されたふうもなく、自前の怪力で近くにあった大岩をよいしょと持ち上げる。これをオーラで自分ごと包んで補強すれば、刃を防ぐ即席の盾の出来上がりだ。
「大した馬鹿力だが、その程度か」
原始的とも言えるルカの対抗策に、カルロスは驚きと侮蔑を込めて大鋏を振るう。武器としても鋭い切れ味を誇るメガリスの刃は、ルカの黒いオーラごと岩を削り取っていく。
それでもルカは岩を盾にして強引に距離を詰めて、敵を鋏ごと押し潰そうとするが――斬撃の連打に負けて、岩がバラバラになるほうが速い。
「終わりだ」
「まだよ」
盾を失った相手に止めの一撃を振るおうとするカルロス。だがルカはその寸前で持っていた「対オブリビオン用スタングレネード」を使う。至近距離で炸裂する閃光と爆発音が、戦場を震わせた。
(目はどこかしら? 耳も本当の耳か怪しいし……)
敵の身体構造上スタンが入らない場合のことも考えて、ルカは別の策も用意していた。
閃光と爆音を合図にして、後方で待機していた彼女の「昆虫戦車」が、背中に装備した大砲や機銃による一斉攻撃を仕掛ける。
「ぐっ……やってくれる!」
対オブリビオン用スタングレネードにはオブリビオンに恐怖を与える追加効果もある。その影響でカルロスが怯んだところに浴びせられた砲火の雨は、決定打とはならなかったものの彼に手傷を負わせていた。
「ここからが本番よ」
目潰しと支援砲撃で敵に隙を作ったルカは、この機を逃さず【絶望の福音】を使用して攻撃を仕掛ける。攻撃や強化ではなく「未来予測」という特殊なタイプのユーベルコードなら『金の鋏』でもコピーされないのではと考えたのだ。
(でももしされたら私の攻撃を予想し、回避されるから……)
10秒先までの未来を見てきた彼女はカルロスが振るう大鋏を避けてさらに距離を詰め、組技の技能を使って敵に掴みかかる。先ほど大岩を軽々と持ち上げてみせた彼女の膂力で一度組み付かれれば、敵もすぐには引き剥がせまい。
「今のうちに私と一緒に攻撃して」
「な……貴様、放せッ!」
慌てて拘束を振りほどこうとするカルロスと、万力のような力で組み付きを保つルカ。
硬直状態の二人のいる座標に向けて、再び昆虫戦車による一斉砲撃の嵐が降りかかる。
「貴様、最初から我を道連れにするつもりで……がはぁッ!!」
当然ながらルカもダメージを負う。だがカルロスが負ったダメージはそれ以上だった。
事前に覚悟を決めていた者とその猶予がなかった者の差。砲撃が止んでルカがその場から離脱すると、拘束の解けたカルロスはがっくりとその場に膝を屈した。
大成功
🔵🔵🔵
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎
ヤヌス…物事の内と外を同時に見る神の名だが、それを操るお前の姿が虚無そのものとは笑える話だな
デゼス・ポアとナガクニを装備
切り裂く代償が大きければ奴は動けなくだろうし、少なければ分身体の能力も低くなるだろう
その事を踏まえて分身体を相手に戦いつつ、本体の攻撃にも注意して行動
デゼス・ポアで切り裂き喰らわせながら攻撃する
フン…その中が空っぽなら、存分に満たしてやろう
十分に喰らったお前の呪詛でな
デゼス・ポアが十分に喰らったらUCを発動
巨大な鉤爪を振るい分身体ごと本体を切り裂く
その鋏よりもよく切れるだろう?
代償で潰れるギリギリまで敵を攻撃する
勝利まであと一歩だ
今更、此処で退くつもりはないさ
「ヤヌス……物事の内と外を同時に見る神の名だが、それを操るお前の姿が虚無そのものとは笑える話だな」
漆黒に染まったカルロスと、彼が手にする『銀の鋏』――メガリス『ヤヌスの鏡』が変じた武器に視線を向けながら、キリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)は挑発的に笑う。神話に謳われるヤヌス神は前後に二つの顔を持つ双面神としても知られるが、その名を冠したメガリスの使い手が"無貌"なのはなるほど皮肉である。
「ふん……メガリスの由来などに興味はない。我にとって有用でさえあればな」
黒面のカルロスはキリカの皮肉を下らぬとばかりに聞き流すと、『銀の鋏』で自らの体を切る。裂けた傷口から溢れ出した虚無は新たな「カルロス・グリード」の分身となり、外敵を排除するために自らの意思で行動を開始する。
「行くぞ、デゼス・ポア」
キリカは黒革拵えの短刀「ナガクニ」を構え、傍らにいる呪いの人形「デゼス・ポア」と共にカルロスの分身体を迎え撃つ。完全なる虚無と化したその体は、刃であれ呪いであれ全てを飲み込んでしまう――正面から切り結ぶのは不利だが、やってのけるしかない。
「飲まれよ、虚無に」
「キキキキキキッ」
万物を侵食する虚無の腕と、デゼス・ポアの放つ錆びた刃が激突する。呪いを帯びた刃はカルロスの体を切り裂くが、同時に虚無に飲まれ大きなダメージは与えられていない。キリカ自身は短刀を振るって分身を牽制しつつ、後方にいる本体にも警戒を続けていた。
(切り裂く代償が大きければ奴は動けなくだろうし、少なければ分身体の能力も低くなるだろう)
『銀の鋏』による分身の作成は、その分本体の力を削る諸刃の刃と言える。見方を変えれば分身がどの程度の強さかを確かめることで、本体の余力を推し測れるということだ。
一合交えた手応えからして、この分身は本体と遜色ない力を持っているように感じる。ならば大きな代償を支払った本体がすぐに戦線に復帰してくる可能性は低いだろう。
「なら、今のうちだ。喰らえ、デゼス・ポア」
呪いの人形はキリカの指示に応え、何本もの錆刃を犠牲にしながら分身体を切り裂き、血の代わりに噴き出した漆黒の残滓を喰う。だが何度傷つけられても敵の動きは鈍らず、人も人形も大地も平等に飲み込まんと手を伸ばす――その在り様はまさに虚無的だった。
「フン……その中が空っぽなら、存分に満たしてやろう。十分に喰らったお前の呪詛でな」
頃合いを見計らってキリカは人形を傍に呼び戻すと【呪詛の獣】を発動。デゼス・ポアが喰らったオブリビオンの残滓を自身に纏わせることで、戦闘力の飛躍的な強化を図る。
デゼス・ポアとほぼ一体化したことにより、衣装は人形のそれに似た黒いドレスに変化し、オペラマスクが顔を覆い、そして袖からは獣のような巨大で鋭い鉤爪が覗いていた。
「――……ッ!!」
キリカがその鉤爪をひと振りすると、ざっくりと分身の体が切り裂かれる。虚無の力で飲み込むことができなかったのは、それが他ならぬカルロスの残滓を纏った一撃であるため。「全て」の中に例外があるとすれば、それは同じ虚無の力だ。
「その鋏よりもよく切れるだろう?」
キリカはにやりと笑いながら両腕の鉤爪を振るい、分身体ごと本体を切り裂いていく。
これほどの力を人の身で行使するには、当然ながら代償を伴う。世界を呪い破壊しようとするオブリビオンの力を取り込んだ反動は肉体と精神を蝕む。それでも彼女は辛い様子など微塵も見せず、瞳から血の涙を流しながらも、笑みを浮かべたまま攻め続ける。
「勝利まであと一歩だ。今更、此処で退くつもりはないさ」
「ぐッ……貴様ァ……!」
――代償で潰れるギリギリまで、呪詛の獣はカルロスを攻撃し続けた。そして、その間にカルロスが受けたダメージと消耗は、獣が負った代償をはるかに上回るものであった。
大成功
🔵🔵🔵
祇条・結月
“メガリス”か
……あの金色の鋏はヤバい気がする(第六感)
どうせ初動は向こうのほうが速い
なら迂闊に手の内は見せずに、回避に専念するよ
相手の攻撃の【見切り】に徹して下がりながら
なるべく間合いから逃げれるように苦無【投擲】で牽制しながら隙を……
なんてレベルじゃないな
苦無を受けに来てる
回避じゃなくて防御主体って感じ
カウンター系の能力だって当たりをつけて
身体能力も戦闘技術も僕は、勝てない
不格好でも。斬られても、動きだけは止めないことしかできない
ほんとに、せめて格闘の訓練とかしないとって苦笑して
致命打を避けて、カウンター狙い
……そう、思わせる
≪鍵ノ悪魔≫を降ろして反撃
受け太刀はをすり抜けて、真向から一撃
「流石に、ここまで辿り着いた兵(つわもの)達よ……だが、この程度ではあるまい」
猟兵達の激しい攻勢によって、次第に後退を余儀なくされるカルロス。だが虚無と同化した彼は、少なくとも表面上は疲弊した様子を見せず【メガリス『金の鋏』】を構える。
「"メガリス"か……あの金色の鋏はヤバい気がする」
それを見た祇条・結月(銀の鍵・f02067)の第六感は、全力で警鐘を鳴らしていた。
玉鋼の塗箱を加工したメガリス『金の鋏』。その刃に切り裂かれた者はユーベルコードの力を奪われるという。そんな危険な武器の間合いに気軽に近付くわけにはいかない。
(どうせ初動は向こうのほうが速い。なら迂闊に手の内は見せずに、回避に専念しよう)
距離を詰めてくる敵に対し、結月はひとまず見切りに徹して下がることにした。大鋏の間合いからなるべく逃げられるように、上着の中から苦無を数本取り出して投げつける。
(これで牽制しながら隙を……なんてレベルじゃないな)
それなりに鍛えている彼の投擲術を、カルロスは大鋏の刃であっさりと弾いてみせた。
武器としては扱い辛そうな形状のそれを、敵は完全に使いこなしている。技量の差を痛感している暇もなく、無貌の男はずんずんと少年に迫ってきていた。
(苦無を受けに来てる。回避じゃなくて防御主体って感じ)
結月が何度苦無を投げても結果は同じ。牽制としては殆ど意味は成さなかったものの、敵の挙動から得られる情報はあった。おそらく『金の鋏』のユーベルコードはカウンター系の能力――そう当たりをつけた彼は逃げるのを止めた。
「ほう。覚悟を決めたか」
緊張に強張った少年の表情を見て、カルロスはその意図を察した。牽制は無意味、攻めてもカウンターされるとなれば、残された手は致命傷を避けての捨て身の特攻しかない。
「身体能力も戦闘技術も僕は、勝てない。不格好でも。斬られても、動きだけは止めないことしかできない」
ほんとに、せめて格闘の訓練とかしないと――そう言って苦笑して、結月は首から下げた「銀の鍵」を魔鍵形態「咎人の鍵」に変えて構える。防御を一切考えていない、ただ敵に一撃打ち込むことのみに専念した、素人くささの抜けない大上段の構えで。
「その心意気は称賛しよう。だが、その報酬は死だ」
カルロスの表情は読めないが、その時だけは黒い無貌の面が嗤っているように感じた。
両者の距離が刀剣の間合いまで詰まった瞬間、『金の鋏』が襲い掛かる。一撃で胴体を真っ二つにしてしまえば反撃のしようもあるまいと、この瞬間男は勝利を確信していた。
「……僕を、見るな」
まさにその瞬間、結月は構えた鍵を自分の胸に差し込み、【鍵ノ悪魔】を発動させた。
鍵の悪魔は境界を統べる権能により、壁や地面、敵の攻撃や防御をも透過することができる。それはメガリスという神秘の宝物であっても例外はなく。
「――……何っ?!」
必殺を期した大鋏の一撃は、悪魔を降ろした少年の体を傷つけることなくすり抜けた。
相打ち狙いだと思わされ、完全に虚を突かれたカルロスの思考が止まる一瞬。その隙を突いて結月は鍵を身体から引き抜き、真っ向から反撃の一撃を叩きつける。
「僕の、勝ちだよ」
咄嗟に掲げられた鋏の受け太刀もすり抜け、魔鍵の一撃がカルロスの体に突き刺さる。
それは肉体ではなく心を刺す道具。たとえ敵が虚無の体を持っていようとも、その中に心が――魂が宿っているのならダメージは通る。
「ぐ、がはぁっ?!」
苦悶の叫びと共に大量の黒い液体を吐き、がくりとその場に崩れ落ちる『六の王笏』。
相手を弱く、無力なただの人間だと侮った代償は、彼が思ったよりも遥かに重かった。
大成功
🔵🔵🔵
フェルト・ユメノアール
いよいよ最後の勝負だね、気合を入れていくよ
まずは『トリックスターを投擲』、相手を牽制しつつ『フックロープ』を高所に引っ掛け、巻き上げる事で攻撃を回避
そのまま距離を取って戦いを仕切り直す
さあ、ここからが本番だ!
ボクは手札からスペシャルゲストをご招待!
カモン!【SPアクロバット】!
投擲物の中に『ワンダースモーク』を混ぜ、相手の視覚を奪えば聴覚でモノを見るアクロバットが圧倒的に有利
ボクが投擲攻撃で相手の隙を作って、そこをアクロバットが攻撃する作戦でいくよ
たとえUCをコピーしてもキミには効果を発動する為の手札も動物を操る技術もない
手札を全て捨て、加速した攻撃でコピーを蹴散らしそのままカルロスを攻撃だ!
「いよいよ最後の勝負だね、気合を入れていくよ」
羅針盤戦争も終盤に入り、ついに発見された『王笏』最後となる拠点。その島主である『六の王笏』カルロスを対峙したフェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)は、ショーのクライマックスにふさわしい溌剌とした笑顔を浮かべた。
「道化め。貴様には随分と手を焼かされた」
対するカルロスの表情は窺えないが、声にははっきりと苛立ちが混じる。この戦争中にフェルトがコンキスタドールに掛けられた賞金額は実に60,000G以上――それだけ多くの戦場で戦果を挙げ、敵に脅威として認識されている証拠である。
「貴様の下らぬ劇もここで幕引きとしてくれよう」
【メガリス『金の鋏』】を構え、賞金付きの首級を手ずから落とさんとするカルロス。
フェルトはさっと曲芸用ナイフの「トリックスター」を投げつけて相手を牽制しつつ、離れたところに立っている樹木にフックロープを放ち、先端のフックを枝に引っ掛ける。
「ここは場所が良くないね。一度仕切り直すよ」
敵がナイフを弾いてそのまま斬りかかろうとした刹那、道化師の身体は巻き上げられたロープに引っ張られて刃から逃れる。ステージで鍛えたロープアクションによる移動は、まるで空を駆けるようで――攻撃を躱した少女は軽やかにすたっ、と木の上に着地する。
「さあ、ここからが本番だ! ボクは手札からスペシャルゲストをご招待!」
十分に相手との距離も取ったところで、フェルトは改めてステージの開演を宣言する。
腕に装着した「ソリッドディスク」に、魔物や精霊を封印した「サモナーズ・ロード」のユニットカードをセット。ディスクの機能と魔力によってカードに力を具現化させる。
「カモン! 【SPアクロバット】!」
招来の声と共に現れるのは――デフォルメされた蝙蝠のような姿の、どこか愛嬌のあるモンスター。色鮮やかな翼でぱたぱたと空を飛びまわり、とんがった耳をピンと立てる。
「……それが貴様の切り札か?」
もっとおどろおどろしい怪物が出てくるものと思っていたカルロスは、若干拍子抜けしたような反応を見せる。その気の緩みを見逃さなかったフェルトは、樹の上からナイフやボールを次々と投げつける。
「この子を油断したら痛い目を見るよ!」
「ほう。ならば見せてもらおうか……」
カルロスが投擲物を切り払うと、その中に紛れていた「ワンダースモーク」が破裂し、カラフルな煙を発生させる。本来はステージ演出用の小道具も、戦場で使えば敵の視界を奪う煙幕になる。そこに勢いよく飛び込んでいくのは、道化師の喚んだアクロバットだ。
(相手の視覚を奪えば、聴覚でモノを見るアクロバットが圧倒的に有利)
自分が敵の隙を作り、アクロバットが攻撃する。それがフェルトの立てた作戦だった。
分厚い煙の中でも蝙蝠は標的を見失わず、高空から一気に急降下。突風のような速さで攻撃を仕掛けるが――カルロスとてそう簡単にやられはしない。
「……成程。思ったよりも速いな」
奇襲となったはずの蝙蝠の一撃は、『金の鋏』に受け止められていた。メガリスの力は即座に受けたユーベルコードの効果をコピーし、フェルトが召喚したものとまったく同じ見た目の【SPアクロバット】がカルロスの傍らに現れる。
「ここでボクはアクロバットの効果発動!」
だが、切り札をコピーされたはずのフェルトの表情に焦りは無かった。彼女はナイフを投擲して自分のアクロバットが離脱する隙を作ると、片手に持っていた「サモナーズ・ロード」の手札を全て投げ捨てる。
「<闇夜の眷属>! このカードの戦闘力は、捨てた手札の数分UPする!」
「なんだと……!?」
カルロスは逃げた相手を自分の魔物に追わせようとしたが、相手の動きが急に加速していくのを見て驚愕する。手札の消費という重い代償と引き換えにパワーアップしたアクロバットは、もう何者にも追いつけないほどの速さを手に入れていた。
「たとえユーベルコードをコピーしても、キミには効果を発動する為の手札も動物を操る技術もない」
カードの性能を活かすのも殺すのもプレイヤー次第。同じカードを使っていれば尚更、プレイヤースキルの差は勝敗に直結する。カルロスもその事を知らないわけでは無かっただろう――だが、コピーしたカードに対する理解が足りなかった。
「もう一度攻撃だ、アクロバット!」
高らかなフェルトの号令に応えて、再び急降下するアクロバット。コピーモンスターを風船のように蹴散らすと、そのまま地上にいるカルロス目掛けて真っ直ぐに体当りする。
「がは……ッ!!!!」
前の攻撃とは比べ物にもならないほどの衝撃が、受け止める間もなくカルロスを襲う。
無貌の男の身体はそのまま煙幕の外まで吹き飛ばされ、島の岸壁へと叩きつけられた。
大成功
🔵🔵🔵
シノギ・リンダリンダリンダ
なかなか面白いものを持っていますね第六の王笏
死者の力を奪うメガリス…良いお宝です。あぁ、いいモノですね、それは
にっこり笑ってから、ドールのガワを捨てる
【憤怒の海賊】を解放
漆黒の呪詛の霧と、黄金の星々が輝く宇宙のような人型へ
コピー?あぁ、海賊の、海賊版を作ると?
あははは!!!!面白いですね王笏!
あぁ、面白い!!!お前に、我が呪詛全てを飲み込む事ができますか!?
どれだけコピーされようが、この体、この霧は全てを弱らせ腐らせ黄金にさせるもの
同様の力をぶつけられた所で、お互いに作用しより混沌となるだけ
王笏、我が呪詛に耐える事はできますか?
霧を広げ、王笏を包み込み、死ぬまで腐らせ、黄金にして、殺す
「なかなか面白いものを持っていますね第六の王笏」
略奪と蹂躙を求めて『六の王笏島』にやって来たシノギ・リンダリンダリンダ(強欲の溟海・f03214)の視線は、カルロス王が持つ【メガリス『金の鋏』】に注がれていた。
「死者の力を奪うメガリス……良いお宝です。あぁ、いいモノですね、それは」
死者を従える幽霊海賊団の船長としては、この上なく相性のいいお宝には間違いない。
彼女はにっこりと笑ってから、自身の肉体であるミレナリィドールのガワを脱ぎ捨て、【憤怒の海賊】としての本性を開放した。
「【Emergency,Emergency,憤怒の海賊が解放されます。当機への接触は控えてください。繰り返します、】」
かたんと糸が切れたように崩れ落ちたドールの躯から、無機質な警告メッセージが告げられる。その隣にいるのは、呪詛と強欲と黄金で構成された死霊海賊の王。漆黒の呪詛の霧の中で、黄金の星々が輝いている様子は、まるで人型をした宇宙のようにも見える。
「手配書で見たな、貴様の顔は……賞金額50,000G超えの大物だったか」
「あははははは! それっぽっちとは甚だ不本意ですが!」
"それ"は理性が吹っ飛んだような大声で笑い、呪詛の霧を辺りに撒き散らしながら掴み掛かってくる。カルロスは『金の鋏』を盾にしてその吶喊を受け止めると、即座に彼女の能力や特性をそっくり再現した【憤怒の海賊】のコピーを作り上げた。
「貴様には貴様自身の強欲で身を滅ぼすのが似合いだろう」
メガリスから放たれた死霊海賊のコピーが、オリジナルと激突する。模倣とはいえ性能や特性に本物との大きな差異はなく、両者の戦闘力はほぼ互角。だが、それを見たシノギは焦りもせず、怒りもせず、それどころか逆に愉快そうに大笑いした。
「コピー? あぁ、海賊の、海賊版を作ると? あははは!!!! 面白いですね王笏!」
ガワと一緒に理性まで捨てた今の彼女は、ただ目の前の宝を略奪し敵を蹂躙する事しか考えていない。それが自分と同じツラをしていようが躊躇はなく、馬鹿笑いしながら呪詛を吐く。それはコピーされた方も同じことで、霧と霧は互いを飲み込もうとうねり、ゆらめきながら、戦場を漆黒と黄金に染めていく。
「あぁ、面白い!!! お前に、我が呪詛全てを飲み込む事ができますか!?」
どれだけカルロスがコピーしようが、今のシノギの体と霧は全てを弱らせ腐らせ黄金にさせるもの。同様の力をぶつけられた所で、お互いに作用しより混沌となるだけだった。
「「あはははははははははははは!!!!!」」
もはやどれが本物でどれが偽物なのかも分からない。混じり合った霧はやがて『王笏』の元まで広がり、腐敗を、猛毒を、黄金化をもたらさんとする。虚無と化した身体でも、果たして呪詛の産物たるソレから免れ得るものか。
「王笏、我が呪詛に耐える事はできますか?」
ケタケタと響き重なる笑い声の中で、誰かがそう言ったのが辛うじてカルロスの耳に届いた。もはや一寸先も見えないほどの呪詛霧に包まれて、彼の肉体は崩壊を始めていた。
「死ぬまで腐らせ、黄金にして、殺す」
「ッ……付き合っていられるか、黄金狂いめが……!」
カルロスは止む無く、呪詛と強欲と黄金に満ちたこの戦場から離脱するしかなかった。
『金の鋏』の効果時間が終了するまで、理性を喪失したシノギは目の前にいる自身のコピー達と笑いあいながら殺し合い、蹂躙の衝動を心ゆくまで満たしたのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
分身を作るメガリスと死者の力を奪うメガリス…か
カルロスの戦略の根本ともなれば是非とも撃破したいところだね…
…あの虚無の身体をしているのがここのカルロスか…全てを飲み込んでくるのだから…
…術式組紐【アリアドネ】を周囲の地形に伸ばし、突き刺して身体を固定…吸い込まれる事を防ごう…
…そのまま【アリアドネ】の一端を伸ばして地中からカルロスへの足下へと接近…
…地面に足を付けなくてはならない以上、地面は吸い込めない…
…【投じられしは空裂く巨岩】を発動…足下の地面ごとカルロスを真上へと射出しよう…
…そして地に足が着かなければ吸い込めない…空中のカルロスへ術式装填銃【アヌエヌエ】で射撃するよ…
「分身を作るメガリスと死者の力を奪うメガリス……か。カルロスの戦略の根本ともなれば是非とも撃破したいところだね……」
『六の王笏島』に保管されていた二つの至宝。それを所持する『王笏』カルロスを討つためにやって来たメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、上陸からほどなくして島主らしき無貌の男を見つけた。
「……あの虚無の身体をしているのがここのカルロスか……全てを飲み込んでくるのだから……」
アリスラビリンスの力を具現化したことで【虚無なる起源】を身に着けたカルロスに、通常の攻撃手段は効きづらい。対策を講じようとメンカルが動いたのとほぼ同時、敵もまた彼女に気付き襲い掛かってきた。
「貴様の狙いも我が宝物か? 盗人には王として死を齎そう」
厳かな宣告と共にカルロスから溢れ出した虚無が、周囲にある全てを飲み込んでいく。
大気すらも吸収しているのか、彼のいる方に向かっては強い風が吹き、気を抜けば吸い寄せられそうになる。
「……まずは、これで……」
メンカルは術式組紐【アリアドネ】を周囲に伸ばし、地面や岩や樹に突き刺して身体を地形と固定する。こうすれば少なくとも吸い込まれることは防げるが、虚無は彼女が張った命綱さえも侵食して分解吸収していく。あまり悠長に構えている余裕は無いだろう。
(時間をかけると負傷も治癒されるし……早くユーベルコードを停止させよう……)
メンカルは命綱として張った【アリアドネ】の一端を操り、敵に気付かれないよう地中へと伸ばす。この組紐は魔力を込めることで針金のように硬くもなり、離れていても意のままに動かすことができた。
(……地面に足を付けなくてはならない以上、地面は吸い込めない……)
それが【虚無なる起源】の最大の弱点であり制約。ほとんどの攻撃を分解吸収することで無効化できても、地中から足下に迫る一本の紐には対処できない。物理的にも能力的にも盲点となる死角を突いて、彼女は反撃のユーベルコードを発動する。
「見えざる腕よ、投げろ、放て。汝は剛力、汝は投擲。魔女が望むは大山投じる巨神の手」
「何を……ッ!!!?」
メンカルが呪文を唱えた直後、カルロスは足下から突き上げるような衝撃と強烈なGを感じた。地中の紐を起点に発動した【投じられしは空裂く巨岩】が、地面ごとカルロスを真上へと射出したのだ。
「我に直接触れられないからと、足場ごと投げ飛ばしたのか……っ?!」
数十トン分の土砂や地盤と一緒になって、無貌の男が宙を舞う。まさかこんな豪快な真似を仕掛けてくる輩がいるとは予想外だったのだろう。だが、それを実行したメンカルは涼しい顔のまま敵を見上げつつ、一丁の拳銃を構える。
「……地に足が着かなければ吸い込めない……空中だとただの的だね……」
メンカルが術式装填銃【アヌエヌエ】のトリガーを引くと、術式を込めた弾が放たれ、上空のカルロスを狙い撃つ。【虚無なる起源】を失い、空を飛ぶ手段もない分身体には、これを回避する術はない。
「が、はぁっ……!!!」
術式弾に身体を撃ち抜かれ、虚無の雫を鮮血のように撒き散らす無貌の男。見えざる腕に打ち上げられたその身は再び重力に引かれ、大量の土砂と共に落下していった――。
大成功
🔵🔵🔵
フレミア・レイブラッド
アレが敵の能力の要ね…。ここを押さえれば一気に戦局を動かせそうね
敵の金の鋏による先制の対策として、多属性の魔力弾【高速・多重詠唱、全力魔法、誘導弾、属性攻撃】による連続斉射と【念動力】による拘束妨害で接近を許さず、分身含めて動きを牽制。
その隙に【神滅の焔剣】を発動。
高速移動からの神滅の焔で分身諸共殲滅する様に全て焼き払い、焔のカーテンで目眩まし。
敵がこちらの姿を見失った隙に敵の本体へ一気に接近し、急所へレーヴァテインを突き立て、零距離で神滅の焔を直接注ぎ込んで焼き尽くしてあげるわ!
その虚無の身体、神滅の焔で滅ぼしてあげる!
「ッ……この我が、何度も地を這わされることになるとはな……」
大地に強かに叩きつけられた『六の王笏』は、両手に携えた金と銀の鋏を支えにして、よろめきながらも立ち上がる。掃討のダメージを負っているようだが、フォーミュラとしての矜持に加え、重要な宝物を死守しなければならない使命がこの分身体にはあった。
「アレが敵の能力の要ね……。ここを押さえれば一気に戦局を動かせそうね」
その宝物――二つのメガリスを確認したフレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)は、きっと表情を引き締める。万が一どこかの本拠地を制圧し損ねても、ここさえ陥とせば敵の分身を封じられるとしたら、戦略的価値は非常に大きい。
「大オーシャンボールへの移行が完了するまで、この島を失うわけにはいかんな」
この世界そのものを『侵略形態』に戻し、次なる航海に乗り出そうと企む『王笏』は、残りの時間を稼ぐために猟兵と対峙する。敵の力を奪う【メガリス『金の鋏』】を構え、隙のない構えで切り掛かった。
「貴方の侵略しようとする世界には私の故郷もあるのよ。やらせる訳にはいかないわ」
ユーベルコードを奪われる事を警戒し、フレミアは魔力弾の連続斉射で敵を迎え撃つ。
炎や氷、風に雷、光に闇。様々な属性を込めた魔弾の弾幕が降り注ぐが、カルロスはその尽くを『金の鋏』で切り払った。メガリスで武装したオブリビオン・フォーミュラを、足止めするのは容易な事ではない。
「では次なる略奪の前に、貴様の生命から貰っていこう」
「それもお断りよ」
だがフレミアは魔力弾に合わせて念動力を使い、疾走中のカルロスの足を押さえ込む。
動きが鈍った直後に弾幕の嵐。これには流石の彼も足を止めて防御に徹するしかない。
ユーベルコードなしでの地力の差は技術と手札の多さでカバー。持てる技能の数々による拘束妨害と牽制で、敵の接近を許さない。
「我が血に眠る力……今こそ目覚めよ! 我が眼前の全てに滅びの焔を与えよう!」
そうして時間を稼いだ隙に彼女は【神滅の焔剣】を発動。真祖の魔力を身に纏い、背中に生えた4対の翼で空に飛び上がる。真の力を解放したその手には、赫々と燃え盛る神滅の焔が、剣の形を成していた。
「さあ、ここからはわたしの番よ!」
フレミアが翼を羽ばたかせると、その身は目にも留まらぬ速さで上空を翔け、神滅の焔を放射する。その火力はたとえ敵が分身を作り出したとしても、諸共に殲滅する算段だ。
「ちいっ……」
カルロスは『金の鋏』を盾にして焔を防いだが、吸血姫が翔け抜けていった後には焔のカーテンが敷かれ、目眩ましになる。燃え盛る光熱は僅かな時ではあるが、彼に敵を見失わせるのに十分なものだった。
「ようやく隙を見せたわね」
この好機を逃すフレミアではない。彼女は焔の目眩ましから敵の死角へと回り込むと、その手元では焔を極限まで圧縮しながら、真祖の翼が出せる最高速度で一気に接近する。
「その虚無の身体、神滅の焔で滅ぼしてあげる!」
「――ッ!?」
神焔剣レーヴァテインへと昇華された紅焔の一突きが、カルロスの急所に突き刺さる。
零距離から直接注ぎ込まれる神滅の焔。いかに虚無の身体を持つオブリビオン・フォーミュラとて、この熱量全てを取り込めるわけがない。
「ぐ、がああぁぁぁぁぁ―――ッ!!!」
体内より焼き焦がす灼熱に耐えかねて、絶叫する『六の王笏』。虚無の肉体から噴き出す火の粉と漆黒の体液が、びちゃりと音を立てて辺りを汚し、そして焼き焦がしていく。
大成功
🔵🔵🔵
カビパン・カピパン
カルロス様
最終面接にお越し頂きたくご連絡を差し上げました。
【面接日時】
・今から
「では希望職種について教えてください」
「…」
「キャラクターデザイン、イラストレーターね」
「勝手にイラストレーター志望にするな!」
「今の時代イラスト書けた方がいいわよ。漫画家になってヒットを一本飛ばしてみなさい。ウッハウッハで女の子にサイン書いたらモテるし」
「ふむ、でもやっぱり最初はアシから…って違う、ちがーう!」
なかなかデキル優秀な人材だコイツは。ノリツッコミができる辺り雅を心得ている。就活生はまだ何か叫んでいたが、無視した。
「オチついてないぞ、俺の話聞いて!」
めでたく就職先が決まりそうなカルロスは悲痛な声を上げた。
「ッ……このダメージは、不味い……」
度重なる猟兵の猛攻により深手を負ったカルロスは、【虚無なる起源】で無差別に周囲を飲み込みながら後退する。虚無と化した彼の肉体は、あらゆる物体を分解吸収し力と為すことができる。時間さえあればじきに元の力を取り戻すことも可能だろう。
「今は回復に専念を……むっ?」
だが、ひとたび本拠地に侵攻を許した彼に、悠長な回復の時間など訪れはしなかった。
何処からともなく飛んできた一枚の書状が、彼の足下にはらりと落ちる。そこには妙に丁寧な筆致でこう書き記されていた。
カルロス様
最終面接にお越し頂きたくご連絡を差し上げました。
【面接日時】
・今から
「……………なんだこれは」
「ようこそお越しくださいました」
困惑するカルロスの背後から、ふいに声をかけたのは1人の女。書簡の送り主にして、旅団「悩み聞くカレー屋」店主ことカビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)は、新たなアルバイトの採用面接場に『六の王笏』を引きずり込んだ。
「それではこれより最終面接を開始致します」
より正確には【黒柳カビパンの部屋】を発動したカビパンのいる所が、強制的に面接会場という名のギャグ空間になる。彼女が「女神のハリセン」をパシーンとしばくだけで、全てのシリアスは雲散霧消するのだ。いくら虚無でもこれを飲み込むことはできまい。
「では希望職種について教えてください」
「……」
あれよあれよと始まってしまった面接に、カルロスの返した答えは沈黙。こんな茶番などに付き合ってはいられないとばかりに、口どころか目も耳も鼻もない顔で無言を貫く。
だが彼はまだ理解していなかった。どんなに適応することを拒否しようとも、ギャグは向こうから問答無用で押し寄せてくるのだと。
「キャラクターデザイン、イラストレーターね」
「勝手にイラストレーター志望にするな!」
何の脈絡もない決めつけに、思わずツッコミを入れてしまうカルロス。黙っていたって事態は好転なんかしないのである。降霊術によって圧倒的なトーク力を手にしたカビパンは、ゲストの事なんてガン無視して勝手に話を進めてしまうから。
「今の時代イラスト書けた方がいいわよ。漫画家になってヒットを一本飛ばしてみなさい。ウッハウッハで女の子にサイン書いたらモテるし」
気が付いたらカレー屋とはまったく関係のない方向性でカルロスの進路が決まりつつある。というかこれは面接でする話ではない気がする。あえて言うなら学校の進路相談だ。
「ふむ、ではやはり最初はアシから……って、いや違う、違うだろう!」
圧倒的なトーク力につい流されそうになってしまったカルロスは、慌てて自分の発言を否定する。だがそれを見たカビパンは逆に「ほほう」と感心したように笑みを浮かべた。
(なかなかデキル優秀な人材だコイツは。ノリツッコミができる辺り雅を心得ている)
「何だそのいかにも誤解していそうな面は。違うと言っているだろう?!」
就活生カルロスはまだ何か叫んでいたが、カビパンは無視した。この男にはギャグ漫画家としての才能があるかもしれない。ある程度の画力を身に着けつつキレのいいツッコミとテンポの良さを持ち味にすれば、大手漫画雑誌に連載という可能性も――。
「ふむふむ。なるほどなるほど。よし」
「何が『よし』だ。まだオチはついていないぞ、我の話を聞け……!」
めでたく就職先が(勝手にかつ無配慮に)決まりそうなカルロスは悲痛な声を上げた。
だが、もう自分の世界に入ってしまったカビパンに彼の声は届かない。どうやってこの男を漫画家に仕立てるか、他人の人生のロードマップを描く事しか今は頭にないようだ。
「ええい、付き合ってられん……!」
業を煮やしたカルロスは席を立ち、当たり散らすように虚無を振り撒きながら去った。
傍目にも怒り心頭な彼が、なぜカビパンを飲み込んでしまわなかったのか――それは説明せずとも分かるだろう。誰だってあんな理不尽な存在を分解吸収したくはないのだ。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィクティム・ウィンターミュート
──オイオイ、ある意味で「久しぶり」だな
クライングジェネシスに続いて、お前も虚無使いとはね
同じ力の使い手っつーよしみで、いいもん見せてやる
おっとぉ、こいつはすげえ範囲だ
飲み込まれるわけにもいかねえ──Void Link Start
お前の虚無が拡がった瞬間、こっちも最速で発動させる
『Void Hex」
俺にそんなもの向けるなよ……「消えろ」
何が起きたかわかるか?『過去』を削り取ったのさ
どうやら俺とお前じゃ、性質が違うようだ
接近、一気に片付けてやる
虚無を纏わせたナイフとショットガンで、切り裂き、撃ち抜く
攻撃は虚無で消し飛ばし、とにかく攻める
あまり耐えない方が良い…時間が経てば、俺は止められなくなるぞ
「──オイオイ、ある意味で『久しぶり』だな」
アリスラビリンスの力を具現化した『王笏』に懐かしい敵の面影を見て、ヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)の眼つきが鋭くなる。特に、虚無化によって黒く染まったその姿には、"同類"として意識せざるを得ない。
「クライングジェネシスに続いて、お前も虚無使いとはね。同じ力の使い手っつーよしみで、いいもん見せてやる」
「貴様も、虚無を操る者か……ならば早急に排除せねばな」
青年の発言を聞いたカルロスが警戒を露わにする。【虚無なる起源】を得た者として、虚無の力の危険性をよく理解しているが故の反応だろう。それが虚言か事実かを問わず、同じ戦場に虚無使いは二人と要らぬ――男の体から、全てを飲み込む黒が解き放たれた。
「おっとぉ、こいつはすげえ範囲だ」
無貌の男を中心として拡がっていく漆黒の領域に、ヴィクティムは茶化すように笑う。
だが笑っていられるほど状況は良くはない。カルロスの虚無は範囲内にいる対象全てを侵食し、分解吸収した物体を自らの力と為す。規模と汎用性では彼よりも上の使い手か。
「飲み込まれるわけにもいかねえ──Void Link Start」
この現象に対抗するために、ヴィクティムもまた最速でユーベルコードを発動させる。
【Forbidden Code『Void Hex』】。カルロスの虚無が彼を飲み込むよりも早く、彼自身が過去より呼び寄せた虚無が、彼の身体を漆黒に覆った。
「俺にそんなもの向けるなよ……『消えろ』」
鎧のように全身を虚無で包んだヴィクティムは、向かってくる虚無にその手を伸ばす。
すると、指先が触れた点からさっとかき消えるように、漆黒の領域の一部が消失した。
「今のは……」
「何が起きたかわかるか? 『過去』を削り取ったのさ」
驚いたような反応を見せるカルロス。この無貌の男の虚無が全てを飲み込むのに対し、ヴィクティムの虚無はあらゆるものを消失させる。過去の化身であるオブリビオンが具現化した虚無を、過去ごと消し去ることで無に帰したのだ。
「どうやら俺とお前じゃ、性質が違うようだ」
「そうらしいな。貴様のそれは非常に危険だ」
向かいあう二人の虚無使い。無貌の男が再び虚無を放つと、青年はそれを消し飛ばしながら接近する。虚無を纏った生体ナイフ『エクス・マキナ・ヴォイド』を右手に構えて。
「一気に片付けてやる」
一閃。同種にして異質な力を帯びた刃は、虚無化した『王笏』の体すらも切り裂いた。
鮮血のかわりに黒い雫を噴き出す傷口に、すかさず機械化した左腕を向ける。内蔵されたショットガンが銃声を上げ、漆黒に染まった散弾が敵を撃ち抜いた。
「ッ……ここまでとはな」
敵に回した虚無の力がこれほど厄介とはと、カルロスは傷を押さえながら舌打ちする。
彼の発する虚無もまた、全てを消し去ろうとするヴィクティムの虚無を逆に飲み込み、吸収している。だがそのペースはダメージを負う速度とは明らかに釣り合っていない。
「あまり耐えない方が良い……時間が経てば、俺は止められなくなるぞ」
カルロスが飲み込んだ物体を力と為すのに対して、ヴィクティムは戦闘時間に比例して力を増す。戦いが長期化すれば彼が纏う虚無は相手の力を完全に凌駕するだろう――その代償として、使い手の人間性を蝕みながら。
「全テヲ虚無二……」
理性がかき消える瀬戸際で、ヴィクティムはとにかく攻める事のみに意識を集中する。
悉くを無に帰し、過去も、そして敵の未来をも虚無に染めろ。人間性と引き換えにして純粋に研ぎ澄まされゆく漆黒の意志に、『六の王笏』は次第に押されはじめた。
「……醜い姿だ。だが、この場においては、貴様の方が強いか」
人の世にあらざりしものが、黒き虚無の奔流が、無貌の男の体を削り取っていく――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎
その姿は…なるほどね
今度はあの子の力ってわけか
んもー
次から次へと人のものを借りてばっかりじゃないか
●対策
効果が限定的なUC!彼がボクのそっくりコピーでもなきゃコピーしてもあんまり意味無いんじゃないかな?
ボクは【念動力・貫通攻撃・武器落とし・鎧砕き・切断・武器受け・怪力・重量攻撃】あたりを強化しようか!
頼んだよ!球体くんたち!
念動力でさらに強化したおっきな[超重浮遊鉄球]くんや[ドリルボール]くんたちを叩きつけて彼の鋏や外装ごと彼にダメージを与えるべく攻撃するよ!
さぁ!いい加減にキミのなかの他人を引きずり出してあげないとね!
そしていい加減に、本当のキミをボクに見せてよ!
「その姿は……なるほどね。今度はあの子の力ってわけか」
どこか古風でメルヘンな装束に、黒く染まった無貌の面。その姿からロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)が連想したのは、過去に戦った事もあるアリスラビリンスのかつての支配者、オウガ・オリジンだった。
「んもー、次から次へと人のものを借りてばっかりじゃないか」
確認されただけで7世界もの力を具現化し利用する『王笏』の戦い方に、彼は呆れるやら憤るやら。これが侵略者、コンキスタドールの王たる所以だとでも言うのだろうか――何にせよこれ以上、この男に何かを奪わせるわけにはいかない。
「我に力を奪われた者が愚かだったというだけのこと。貴様の力も我が物となれ」
『六の王笏』カルロスは傲然とそう言い放つと【メガリス『金の鋏』】を構え、斬り掛かる。その刃で切り裂かれるか受け止められた者は、ユーベルコードを奪われる事はもう分かっている。ならばとロニは奪われても影響の少ないユーベルコードで対抗する。
(効果が限定的なユーベルコード! 彼がボクのそっくりコピーでもなきゃコピーしてもあんまり意味無いんじゃないかな?)
【神知】を発動した少年神の瞳が仄かに輝く。これはギリギリで「習得した」と呼べる練度の技能を、一時的に達人レベルまで引き上げる権能だ。裏を返せばそうした低レベルの技能を習得していなければ、何の効果もない力でもある。
「頼んだよ! 球体くんたち!」
号令と共にロニの周りに浮かぶ球体群が、敵を迎撃するために飛んでいく。先頭を往くのは念動力で加速させた「超重浮遊鉄球」。手のひらの上に乗るくらいのサイズながら、その質量は異常なほど重い。
「む……これは」
カルロスは飛んできた鉄球を『金の鋏』で受け止め、同時にロニが使用した権能の効果を理解する。だが彼は【神知】で強化できるような技能を習得していない。ロニのような「広く浅く」の極地のような技能習得をした者でなければ、真価を発揮できない権能だ。
「まったく妙なユーベルコードを使うものだ……」
コピーした力が無意味であった事に、カルロスは苛立ちを隠せないまま大鋏を振るう。ユーベルコードを抜きにしてもメガリスの刃は鋭く、それを振るう彼の技量と身体能力も並のオブリビオンの比ではない。
「姿も力も借り物ばかりだったキミに、それでどこまで戦えるのかな?」
対するロニは武器にして防具である球体群と、強化された技能の数々を駆使して戦う。
強固な浮遊鉄球を盾にして鋏を受け止め、高速回転する『ドリルボール』で刃を弾く。ガードをこじ開けて胴体が無防備になった隙を突き、残った球体を一斉に巨大化。
「さぁ! いい加減にキミのなかの他人を引きずり出してあげないとね!」
手のひら大から一気に十数m程度まで大きくなった球体群が、勢いよくカルロスに叩きつけられる。重量と数を武器とした単純な攻撃だが、それだけにヒット時の威力は高い。
「そしていい加減に、本当のキミをボクに見せてよ!」
「ぐ……ッ!!!」
超重鉄球を打ち込まれたカルロスの体がみしりと軋み、無貌の面から呻き声が漏れる。
その直後に襲い掛かったドリルボールが、漆黒の肉体をがりがりと削り取っていった。
仮りそめの外装を砕き、真の「カルロス・グリード」を暴き出すまで――ロニの攻勢は止まらない。あるいはその中身が、虚無に飲まれたがらんどうだとしても。
大成功
🔵🔵🔵
家綿・衣更着
「衣更着参上っす!死者の力を奪うメガリスが変化した鋏っすか…いや死者って部分どこ行ったんすか!おいら妖怪っすけど死んでないっす!」
【化術】で攻撃をユベコっぽく【演技】して誤認させ、虚実で惑わす作戦
敵の攻撃は【見切り】で回避
手裏剣を巨大化し「封魔手裏剣っす!」と【呪詛】込めて【投擲】
キャバリアに変化しストール槍モードで【ダッシュ】【ランスチャージ】「流星突撃槍(偽)っす!」【化術】の【残像】でタイミングをずらし無理な姿勢でストール槍が弾かせ【おどろかし】【体勢を崩す】
そこに本命ユベコ、空亡・蒼で魔剣憑依・
「『神斬りの一閃』っす!」
受け止める武器ごと切り裂く【なぎ払い】
「世界は護らせてもらうっす」
「衣更着参上っす!」
敵の本拠地たる『六の王笏島』に、颯爽と現れる妖怪忍者。家綿・衣更着(綿狸忍者・f28451)が戦いの構えを取ると、島の王たるカルロス・グリードもまた大鋏を構える。
「妖怪……かつてUDCアースに存在したという種族か」
虚無化した貌のせいで表情は分からないが、好奇に似た視線を感じる。その手に持っているのは【メガリス『金の鋏』】――まだこの世界にはいない異種族の力をも、我が物にしようという思惑か。
「死者の力を奪うメガリスが変化した鋏っすか……いや死者って部分どこ行ったんすか! おいら妖怪っすけど死んでないっす!」
金色の刃を突きつけられ、ツッコミと抗議を入れる衣更着。形状変化に伴ってメガリスの特性まで変化したのか、現在の『金の鋏』は元となった玉鋼の塗箱より汎用性が高い。
「現世から忘れ去られた種族だ。死んでいるのも同然だろう」
「そいつは聞き捨てならないっすね!」
傲然とした物言いと共に斬り掛かるカルロス。その発言にカチンときた衣更着は懐から忍者手裏剣を取り出し、化術を使って自分の身の丈ほどのサイズまでそれを巨大化する。
「封魔手裏剣っす!」
ぶおん、と呪詛を込めて投げ放たれた巨大手裏剣。いかにもユーベルコードらしい派手な一投を、カルロスは『金の鋏』を盾にして受け止めるが――直後に「違う」と呟いた。
「この技はユーベルコードではないな」
それがユーベルコードなら、彼は刃で受け止めた技や能力をコピーできる。その手応えが無かったということは、今の「封魔手裏剣」とやらはユーベルコードではない。妖術と演技でさも大技のように見せかけているだけだ。
「お次は流星突撃槍っす!」
手裏剣を防ぐためにカルロスが足を止めた隙を狙って、衣更着はさらに追撃を重ねる。
走り出した彼の体はどろんと煙に包まれ、体高5m程の白いキャバリアに変化。トレードマークである首のストールも巨大な槍に変化し、その姿のままランスチャージを挑む。
「これが本命か……っ?」
カルロスは再び『金の鋏』で防御の構えを取るが、その寸前でキャバリアの姿が微かにブレる――化術を応用した残像だ。迎撃のタイミングをずらされた彼は、無理な姿勢で攻撃を受けざるを得なくなり、ストール槍を弾きこそしたものの大きく体勢を崩した。
「――……これも、違う」
そして手裏剣に続いて「流星突撃槍(偽)」とやらも、ユーベルコードではなかった。
力を奪われないようユーベルコードを使わずに攻めきるつもりか? カルロスの脳裏にそんな疑念がよぎるが、今は熟考する余裕はなかった。彼が体勢を立て直すよりも早く、衣更着は変化を解いて追撃の構えに入っている。
「『神斬りの一閃』っす!」
試作魔剣『空亡・蒼』を抜き放ち、真っ向から振り下ろす。強力な妖力を纏った斬撃、これもまた先ほどまでの攻撃と同様か? 疑惑の拭えないカルロスの対応は僅かに遅れ、それが致命的な結果をもたらした。
「世界は護らせてもらうっす」
三度目の正直――本命であったユーベルコード【魔剣憑依・神斬りの一閃】の妖力は、神をも殺し、全てを切り裂く。受け止めようとした金の刃ごと、魔剣が敵をなぎ払った。
「ぐ、ぁッ!!!」
ピシリと音を立てて金の刃に亀裂が走り、虚無と化した体から漆黒の液体が噴き出す。
虚実織り交ぜた衣更着の作戦にまんまと嵌められたカルロスは、悔しげに膝を突いた。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
オウガ・オリジン完全体の力か…
如何に強力であろうと、その侵略の野望を看過する訳には参りません
六の王笏…折らせて頂きます、王よ
分身体の攻撃に合わせ手首関節の稼働活かし大盾をブーメランのような軌道で●怪力で本体に●投擲
本体の防御と此方への攻撃を同時に行う様移動ルートを誘導
脚部スラスターの●推力移動で横跳びし分身体を躱しつつUC使用
格納銃器でのスナイパー射撃で銀の鋏武器落とし
ワイヤーアンカー射出し奪取
ご無礼!
刃をへし折る勢い(射程半分)で5回自ら切り裂き
五体の漆黒の分身で王の分身を戦闘から排除
本来の主ではないとメガリスも不満のようです
手から抜けそうですので…御覚悟を
剣と鈍器として扱う鋏の二刀流で攻撃
「オウガ・オリジン完全体の力か……」
半年ほど前にアリスラビリンスで戦った「はじまりのオウガ」の事を思い出しながら、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は『六の王笏』と対峙する。
彼を含めた猟兵が知るのは、猟書家に力を奪われた状態のオウガ・オリジン――今、目の前にいる無貌の男は、その何割に当たる力を具現化しているのだろうか。
「如何に強力であろうと、その侵略の野望を看過する訳には参りません。六の王笏……折らせて頂きます、王よ」
「そう安々と折られるわけにはいかぬな。次なる航海の時はもう目前である」
儀礼剣と大盾を構えるトリテレイアに対して、カルロスは【メガリス『銀の鋏』】を自らに突き立てた。裂けた体から滲み出た虚無が、新たな「カルロス・グリード」となる。
「あと少し、時間を稼げばよい。我が分身よ、この島を守れ」
じわり、と足下を漆黒に染めながら襲い掛かる分身体。全てを飲み込む虚無の肉体は、それ自体が武器であり無敵の鎧である。物理攻撃を主体とする騎士とは相性の悪い敵だ。
「それが『銀の鋏』の力……改めてメガリスの力とは不可思議です」
トリテレイアは分身体が近付いて来るのに合わせて、大盾を振りかぶり手首をぐるりと捻る。人体よりも可動域の広い関節を活かした投擲のフォーム――そこから投げ放たれた盾はブーメランのような軌道でカルロスの本体に飛んでいく。
「無駄だ」
すかさず分身が軌道上に割り込み、本体に代わって攻撃を受ける。ウォーマシンの怪力と大盾の質量を鑑みれば、吹き飛んでもおかしくない威力のはずだが、虚無の体はまるで底なし沼のように衝撃も大盾そのものも飲み込んでしまった。
「我が野望を阻まんとする者よ、悉く虚無に飲まれるがいい」
カルロスの分身体はそのままトリテレイアさえも飲み込まんと襲ってくる。だが一度防御のために進路を変更したことで、彼の移動ルートは当初とは変わっている。その誘導こそ騎士が盾を犠牲にして求めたものだった。
「脚部スラスター、出力全開」
分身体に掴みかかられる寸前、トリテレイアは脚からエネルギーを放射して横に跳び、辛くも攻撃を躱す。そして後方にいる本体に狙い定めると、頭部に格納した銃器を開く。
「ご無礼!」
「なっ……!」
狙いすました一発の弾丸が、カルロスの手から『銀の鋏』を取り落とさせる。彼がそれを拾い上げるよりも早く、トリテレイアはワイヤーアンカーを射出してそれを捕まえる。
これは敵の装備品を奪取する【強盗騎士】の技術。ワイヤーの巻き上げと共に引き寄せられた『銀の鋏』は、騎士の手の内に収まった。
「少々、不作法ですがこれも戦法。ご容赦を」
このメガリスの効果も運用方法も、彼は既に把握している。煌めく銀刃で自らを切り裂けば、カルロスがやってみせたのと同じように、虚無の体を持つ騎士の分身が生まれる。
「……少々"切れすぎました"が、まあ良いでしょう」
刃をへし折るほどの勢いで、トリテレイアは自らの体を『銀の鋏』で5度切り裂いた。
そうして作り出された5体の分身は、各々が指示を待たずして王の分身に襲い掛かる。
騎士の狙いは敵の分身体を戦闘から排除する事。どちらも虚無の体なら、互いに有効打がなく決着は長引くはずだ。分身が分子を押さえているうちに、自分は敵の本体を討つ。
「おのれ……我が宝物を乱暴に扱いおって……!」
カルロスは怒りに声を荒げるが、分身を作り出す際に自らを切り裂いた代償のせいか、動きは鈍い。トリテレイアも同じ代償を支払ってはいるが、こちらは飽くまで足止め程度の役に立つ分身を作れさえすれば良かったため、それほど深手を負う必要がなかった。
「本来の主ではないとメガリスも不満のようです。手から抜けそうですので……御覚悟を」
刃の先がひしゃげた『銀の鋏』と、儀礼用の長剣を構え、カルロスの本体に斬り掛かるトリテレイア。"斬る"と言うよりは鈍器扱いに近い、力任せの殴打が叩きつけられる。
「がっ、ぐ、おのれ……ぐおぉッ!!」
略奪された宝で打ちのめされる苦痛と屈辱。肉体的なダメージもさることながら、それは侵略者としてのカルロスの矜持を大いに傷つけるものだった。じわりと血のように滲み出す虚無が、慟哭の涙のように漆黒の体を伝い落ちていく――。
大成功
🔵🔵🔵
鷲生・嵯泉
王笏と云えど此れも蜥蜴の尾に過ぎんのだろうが
追い詰める為の1手、逃す事なぞ出来ん
集中した第六感と戦闘知識で気配に気の流れ、変化と攻撃の起点を見極め
カウンターのなぎ払いで威力を削ぎ、致命への攻撃は武器受けにて防ぐ
――弩炮峩芥
お前が何を使おうとも、術理其の物を砕き壊してしまえば無意味と終わる
其の後大層な鋏も唯の鈍らと大差無く変わろう
囲い飛ばす衝撃波で躱す途を塞ぐと同時、一気呵成に接敵
怪力乗せた斬撃で以って、其の目論見ごと叩き斬ってくれる
如何なものへと変じようが根本が変わる訳では無かろう
お前に得られる海も往ける世界も在りはしない
世界も未来も、生きるものの為にこそ在る
其れを心得、疾く潰えろ、過去の残滓
「王笏と云えど此れも蜥蜴の尾に過ぎんのだろうが、追い詰める為の1手、逃す事なぞ出来ん」
窮地に立たされつつある『王笏』に追撃を与えんと、鷲生・嵯泉(烈志・f05845)は刀を抜く。敵が作り出した分身はあまりにも多く、もはやどれが本体なのかも定かではないが、立ちはだかる者を全て討ち、敵の本拠地を制圧すれば勝敗は決するはずだ。
「全ての拠点は暴かれ、もはや逃げる場所はなし。ならば此方も全力で迎え撃つのみよ」
対するカルロスは傷ついた体に鞭打って立ち上がる。左手には刃の欠けた『金の鋏』、右手には先端のひしゃげた『銀の鋏』。使い手と同じくメガリスもまた、度重なる戦闘によるダメージを隠しきれない状態にあった。
「往くぞ、猟兵よ」
【メガリス『金の鋏』】を振りかざし、『六の王笏』が戦場を駆ける。迎え撃つ嵯泉は意識を研ぎ澄ませ、敵の気配に気の流れ、その変化や攻撃の起点となる動きを見極める。常人よりも鋭い第六感と、幾多の戦場で培った知識。その積み重ねが彼に活路を見せる。
「――そこだ」
退魔刀「晶龍」を横一文字に振るう。完璧にタイミングを合わせたカウンターが、敵の攻撃の威力を削ぐ。それでも斬撃が止まらぬとみた彼は、すかさず短刀「春暁」を逆手で抜き、黄金の刃を受け止めた。
「――弩炮峩芥」
敵の初撃を凌いだ嵯泉は、即座に反撃へと転じる。体内で練り上げた氣を刃に纏わせ、真っ向から斬り伏せる構え。それを見たカルロスはすぐ『金の鋏』で受けの構えを取る。
「見せてみよ、貴様の技を。どのようなユーベルコードもこのメガリスで再現して――」
「お前が何を使おうとも、術理其の物を砕き壊してしまえば無意味と終わる」
無貌の男の言葉を遮って、烈志の剣豪の一撃が放たれる。其は敵悉く、回避防御を赦さぬ氣魄の斬撃――この氣には、対象の帯びた術式を破砕する破魔の力が込められていた。
「ぐ……ッ!!?」
予想以上に重い斬撃を受けたカルロスの体が、衝撃で数歩後退する。だがそれ以上に彼を困惑させたのは、相手のユーベルコードを受けたにも関わらず、コピーできた手応えが無い事だった。
「其の御大層な鋏も唯の鈍らと大差無く変わろう」
「まさか……我がメガリスを無力化したといのか!?」
嵯泉の【弩炮峩芥】を受けた『金の鋏』は魔力を失い、ただの大きな鋏と化していた。
それが一時的なものにせよ、彼の剣技はメガリスの力さえも封じたのだ。そして彼は、この好機を見逃すような甘い男ではない。
「覚悟はいいか、王笏よ」
「くっ……不味い、ッ」
今のカルロスにもし人並みの表情があれば、冷や汗を流していたことだろう。体勢を立て直そうと距離を取ろうとするが、その左右と背後を囲いこむように衝撃が翔け抜ける。
「如何なものへと変じようが根本が変わる訳では無かろう。お前に得られる海も往ける世界も在りはしない」
隻眼で敵を睨め付け、厳しい語調で侵略者を糾弾する嵯泉。敵の躱す途を塞ぐと同時、一気呵成に踏み込んだ彼は、其の目論見ごと叩き斬ってくれようと渾身の斬撃を放った。
「世界も未来も、生きるものの為にこそ在る。其れを心得、疾く潰えろ、過去の残滓」
怪力を乗せた大上段の一太刀が、頭頂から股下にかけて『六の王笏』を斬り伏せる。
一拍置いて、裂けた体から噴き出す漆黒の飛沫――蒼き海を支配し、侵略と略奪の限りを尽くしてきたコンキスタドールの王は、言葉にならぬ絶叫と共に膝を屈した。
大成功
🔵🔵🔵
雛菊・璃奈
敵の先制攻撃に対し、呪力の縛鎖【呪詛、高速詠唱】と幻影呪術【残像、高速詠唱、呪詛】で対抗…。
相手を縛鎖で捕縛し、幻影で実体を斬らせない様に攪乱する事で能力を封じるよ…。
貴方のメガリスは「切り裂く事」が能力発動の鍵…。
だったら、相手にその行動を取らせなければ良い…。
相手の能力を封じてる隙に【九尾化・天照】封印解放…。
今度は光による虚像と光速化で金の鋏を封じ、凶太刀と神太刀による光速剣で逐次攻撃を加える事で銀の鋏を自身に使用する隙を与えず、一気に打ち倒すよ…!
メガリス然り、異世界の力然り…貴方の力は道具や他の世界からの借りもの…自分の力を磨き上げ、戦い抜いて来たわたし達が負けるハズない…!
「ッ……まだ……まだだ、我が航海の果ては此処ではない……!」
裂けた傷口からぼたぼたと黒い虚無を滴らせながら、『六の王笏』は再び立ち上がる。
アリスラビリンスの力で虚無化した身体。両手に携えたメガリス。それを武器として徹底抗戦の構えを取る彼を見て、雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)はぽつりと呟いた。
「借りものだね……」
異世界の力も、メガリスも、彼らコンキスタドールが侵略の過程で奪い集めてきた物。
それを我が物顔で振るう『王笏』に、少女は静かな憤りを感じながら妖刀を抜き放つ。
「貴様達の脅威はよく理解した。ならばその力を奪い、我らは次なる航海に向かおうぞ」
カルロスが【メガリス『金の鋏』】を握りしめると、欠けた刃が再び輝きを取り戻す。
本来は死者の力を奪うという『玉鋼の塗箱』の改造メガリス。その危険性も特性も既に把握していた璃奈は、敵が攻撃を仕掛けてくる前に、呪力を練り上げて呪術詠唱を行う。
「貴方のメガリスは『切り裂く事』が能力発動の鍵……。だったら、相手にその行動を取らせなければ良い……」
そう語る少女の周囲に、まったく同じ姿をした幻影が幾つも現れる。同時にカルロスの足下からは呪力で編み上げられた鎖が出現し、彼を拘束しようと絡みついた。
「ええい、邪魔だっ」
呪力の縛鎖を『金の鋏』で断ち切り、幻影に斬り掛かるカルロス。これは撹乱が目的であり、メガリスの能力を封じたまま時間を稼ぐのが狙いだとは分かっている。だが多数の幻影の中に紛れた、たった1人の実体を探り当てるのは、彼の観察眼でも容易ではない。
「我らに仇成す全ての敵に太陽の裁きを……封印解放……!」
その隙は、璃奈がユーベルコードを発動するまでの十分な猶予となった。幻影の群れの中から眩い光が放たれ、九本の尾を持った金髪の妖狐が現れる。それは【九尾化・天照】の封印を解き、太陽の力を得た璃奈の姿だった。
「わたしの力が見たいなら、見せてあげる……」
璃奈は両手に妖刀「九尾乃凶太刀」と「九尾乃神太刀」を構えると、たんっと地を蹴って走り出す。そのスピードはたちまち光速に達し、一条の光の軌跡としか人の目には認識できなくなる。
「速い……ッ!」
カルロスが辛うじて捉えられたのは、光が作りだす彼女の虚像だけだった。『金の鋏』に対する基本的な対処法は変わらず――呪術に代わり圧倒的なスピードと光を操る力で、彼女は敵に実体を捉えさせない。
「ッ、ならば『銀の鋏』で……」
この状況を打開するために、カルロスはもう一つのメガリスで虚無の分身を作り出そうとする。だが、彼が銀の刃で己を切り裂くよりも早く、璃奈が距離を詰めて斬り掛かる。
「そうはさせない……」
「ぐぅッ!?」
白光を纏った妖刀による光速の剣技が無貌の男を切り刻み、鋏を振るう隙を与えない。
敵のメガリスが危険なら、そもそも使わせないというシンプルな戦法。天照の光速化でそれを可能とした璃奈は、このまま一気に敵を打ち倒さんと攻め立てる。
「メガリス然り、異世界の力然り……貴方の力は道具や他の世界からの借りもの……自分の力を磨き上げ、戦い抜いて来たわたし達が負けるハズない……!」
妖刀を振るう璃奈の心には、過酷な過去や幾多の戦いを乗り越えてきた己の力に対する自信と矜持があった。一族から受け継いだ魔剣の巫女としての力、オブリビオンと戦う為に鍛え上げた剣技――血肉と一体となった力が、借りものの力に負けるものか。
「ぐ……この我に、奪えぬ力があるというのか……ッ!」
勢いを増す光速の斬撃に、為す術なく斬り伏せられる『六の王笏』。数多の分身を作り数多の世界の力を具現化させてきた彼にも、いよいよ終戦の時が迫りつつあった。
大成功
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リーヴァルディ・カーライル
…既に七大海嘯の全ての拠点は暴かれた
後はお前を討ち果たし、羅針盤戦争を終わらせるだけよ
"精霊石の耳飾り"で得た第六感で虚無の精霊の存在感を暗視し、
今までの戦闘知識から最適な回避動作を選択して見切り、
敵の攻撃を虚属性のオーラで防御した瞬間に、
早業の体捌きで受け流しカウンターでUC発動
…本当に、異世界の闘いは驚きの連続だわ
お前のような出鱈目な存在と闘わなければ、
こんな精霊が存在しているなんて知る由も無かったもの
虚属性の魔力を溜めた大鎌で空間ごと敵をなぎ払い、
切断面から広がる虚無空間で敵の虚無を打ち消し破壊する
…刃に充ちよ、虚空の理。我が刀身に宿りて過去を刻め
…名付けて、吸血鬼狩りの業…虚空の型
「……既に七大海嘯の全ての拠点は暴かれた」
傷ついた『王笏』に大鎌の刃を突きつけ、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は告げる。戦争も終盤を迎え、蒼海羅針域(コンキスタ・ブルー)に導かれた猟兵達の航海は、コンキスタドールにいよいよ王手をかけていた。
「後はお前を討ち果たし、羅針盤戦争を終わらせるだけよ」
「終わらせる事に異存はない。だが、それは我らの勝利でだ」
静かな声に決然とした意志を込めて語る黒衣の少女。対する無貌の男はゆらりと立ち上がれば、金と銀、二本のメガリスを構えて抗戦の意志を示す。全ての『王笏島』が陥落するその時までは、勝敗の天秤はどちらに傾いてもおかしくは無かった。
「……来たれ、我が分身よ」
負傷した体をさらに痛めつけることを承知で、カルロスは【メガリス『銀の鋏』】の刃を自らに突き立てる。切り裂かれた虚無から本人と寸分違わぬ「カルロス・グリード」が現れ、傷ついた本人にかわってリーヴァルディと対峙する。
「次なる航海へと船出する為に、貴様達はここで消し去る」
全身が虚無と化した無貌の男。ただそこに在るだけで全てを飲み込む漆黒が、影法師のようにゆらりと近付いてくる。その時、黒衣の少女の耳元で"精霊石の耳飾り"が耳鳴りのような音で警告を発した。
「……本当に、異世界の闘いは驚きの連続だわ」
警告に耳を傾けながら、リーヴァルディは大鎌にオーラを纏わせ、今までの戦闘知識から最適な回避動作を選択する。だが全てを飲み込む虚無の前では、どのような武器も力も無意味。どれほど立派な業物を使っても、受け流しという行為そのものが無意味――。
「お前のような出鱈目な存在と闘わなければ、こんな精霊が存在しているなんて知る由も無かったもの」
「――……?!」
そう、そのはずだった。だがリーヴァルディを捕らえんとした『王笏』の虚無の手は、黒い大鎌に弾かれる。その瞬間に彼女はあっと驚くほどの早業で身を翻し、華麗な体捌きで攻撃を受け流すと、そのままカウンターの構えに移行する。
「……刃に充ちよ、虚空の理。我が刀身に宿りて過去を刻め」
耳飾りを通じてリーヴァルディに囁きかけていたのは、この世界に偏在する「虚無」の精霊。他の精霊とは異質な存在なれど、それもまた自然を構成する一要素には違いない。
故に彼らは虚無の力で世界に滅びをもたらさんとするオブリビオン・フォーミュラを倒すために、猟兵であるリーヴァルディに力を貸すことを選んだのだ。
「虚無が……自らの意思で、猟兵を助けているだと……!?」
驚愕するカルロスの目の前で、大鎌"過去を刻むもの"に虚無の魔力が溜まっていく。闇よりも暗い漆黒に染まった刃は、同種の力である虚無を斬れる数少ない武器と化す。そこから繰り出されるのは敵を暗黒の空間に放逐し無に還す、吸血鬼狩人の新たなる奥義。
「……名付けて、吸血鬼狩りの業……虚空の型」
一閃。戦場を薙いだ黒の軌跡が『六の王笏』カルロス本体と分身を空間ごとなぎ払う。
虚無の刃が虚無の体を切り裂き、その切断面から広がる虚空はこの世に仇なす虚無の力を打ち消し、破壊する。
「馬鹿な……ッ、がはぁっ!!!」
分身の体は塵のように崩れて消滅し、本体もまた体に消えない傷を刻まれ膝を屈する。
リーヴァルディがこの世界での経験から編み出した新たな力は、『六の王笏』カルロスをさらなる窮地に追い込む一手となった。
大成功
🔵🔵🔵
メフィス・フェイスレス
全てを飲み込む敵ね
なら敵自体ではなく敵の足下を崩すべきね
向かってきた敵に「迷彩」化させ「罠使い」で「微塵」での「爆撃」を仕掛け足場を崩す事で「体勢を崩し」つつ本体ごと「目潰し」し爆煙の「闇に紛れて」「滑空」で距離を取る
その後地上に降り立ちUC発動
接触している地面から「範囲攻撃」で夥しい数の「骨身」を隆起させ、分身を撹乱しつつ本体を串刺しにする
敵が鋏で自傷しようとした時、UCで敵の傷を「自身に転写する」
転写させた傷は「激痛耐性」「継戦能力」で耐え【醜態】で即再生し
再度串刺しにする
その鋏は自分の体を傷つけないと使えないんでしょ?
この力はこういう使い方も出来るのよ
ま、本来の用途とは違うんだけどね
「ッ……ここが我が航海の終わりたというのか……? 否、断じて否だ」
深手を負った『六の王笏』カルロスは、【メガリス『銀の鋏』】を支えに立ち上がる。
たとえこの身が力尽きようと、このメガリスさえあれば新たな我は無限に生み出せる。我が身を切り裂き、流れ出す虚無の血潮を贄として、黒きカルロスの分身が再び現れる。
「全てを飲み込む敵ね。なら敵自体ではなく敵の足下を崩すべきね」
非生物的な姿をしたその無貌の男を目の当たりにして、しかしメフィス・フェイスレス(継ぎ合わされた者達・f27547)は冷静だった。全てを飲み込む虚無とはいえ、移動手段が歩行に限られているなら、対処のしようは幾らでもある。
「アンタはこいつでも喰らってなさい」
「……ッ!!」
向かってきたカルロスの分身体に、彼女は己の躰から生成した眷属爆弾「微塵に砕く」を放つ。それは影のように地面を這い、標的の足下から爆風と骨身と血潮を撒き散らす。
至近距離で爆撃を受けても、虚無化した体には傷一つ付かないだろう。だが地面はそうもいかない。崩れた足場で体勢を乱した分身体は、血飛沫と土埃の煙幕に視界を遮られ、メフィスの姿を見失った。
「くっ、目眩ましか。何処へ行った……」
後方にいたカルロス本体の視界でも、メフィスの姿は爆煙の闇に紛れて見当たらない。
敵勢が動揺している間に、屍人の娘は背中から生やした骨身の翼で爆風に乗り、グライダーのように滑空して分身から距離を取っていた。
「情けも仇も、全ては在るべき場所に還る」
すぐには追撃を受けない距離まで離れた後で、彼女は地上に降り立ち【恩讐を刻む】を発動。詠唱と共に微かな地鳴りが聞こえたかと思うと、夥しい数の「骨身」が地面を突き破って隆起する。それはまるで、獲物に喰らいつかんとする巨大な獣の牙のように。
「何だ、これは……ぐッ!?」
白く、鋭く、触れたものを分解捕食する特性も持った骨の武具達。煙幕の中でその攻撃に晒された二体のカルロスは反応が遅れ、足を串刺しにされる。分身ほどには完全な虚無の体を持っていない本体にとって、その傷はかなりの痛手となる。
「ぐ……邪魔を、するなっ!」
頼みの綱となる分身も、次々と地面から伸びてくる骨に撹乱され、本体の元に近付けない。両者を分断し片方を足止めしている内に本体を倒す――それがメフィスの策だった。
「我を倒すことだけに的を絞ってきたか……ならば」
カルロスの本体は再び『銀の鋏』で新たな分身を作り出し、己を助けさせようとする。
だが――白銀の刃が漆黒の体を切り裂いた直後、そこから虚無が噴き出すよりも早く、まるで逆再生のように傷が塞がってしまう。
「なにっ?! これはどういう事だ……」
「私が貰っただけよ、アンタの傷を」
困惑するカルロスに、遠くからメフィスが答える。攻撃を受けないよう離れていたはずの彼女の躰には、たった今カルロスが切り裂いたのとまったく同じ箇所に負傷があった。
「この力はこういう使い方も出来るのよ。ま、本来の用途とは違うんだけどね」
【恩讐を刻む】で発生させた骨身の武具にはある呪詛が宿っている。その効果は、術者と対象が受けた被害を互いに転写できるというもの――これを使えば自分が受けた負傷を敵に押し付けることも、相手の傷を自身に転写することもできる。
「その鋏は自分の体を傷つけないと使えないんでしょ?」
『銀の鋏』による自傷行動さえ無効化すれば、カルロスはもう新たな分身を作れない。
自らの負傷を前提として、敵のユーベルコードを封じる捨て身の奇策。どうやら上手くいったみたいねと、彼女はにやりと歯を見せて笑った。
「おのれ……ッ!!」
躍起になって自分の体を『銀の鋏』で切りつけまくるカルロス。その傷は全てメフィスの体に転写されるが、屍の躰が持つ痛みへの耐性と再生能力から、致命傷には至らない。
そしてお返しとばかりに、地を裂く長大な骨の槍や牙が、カルロスの全身を刺し貫く。
「さっさと在るべき場所に還りなさい」
「ぐがあぁぁ―――ッ!!!」
絶叫が戦場に木霊し、無貌の男が『銀の鋏』を取り落とす。からんと乾いた音を立てて地面に転がるひしゃげた大鋏――それを拾い上げる余裕も余力も、今の彼には無かった。
大成功
🔵🔵🔵
非在・究子
きょ、『虚無と化した漆黒の身体での攻撃』? す、吸い込み、吸収系、か。や、厄介な、やつだ。だ、だけど、は、発動の、条件は、足をつけている、あいだ、だな……も、ものは、試し、だ。あ、『アシストツールQ』を、使って、相手ボスの、パラメータに、【ハッキング】、あ、相手の、ざ、座標情報を、改竄して、『浮いている』ように、誤認、させる。だ、ダメなら、『残機』を、消耗して、リスポーンの、無敵の、間に、ゆ、UCを、起動。ま、魔砲少女、モードで、突っ込んで、至近距離で、砲撃しつつ、相手を、かちあげる、ぞ。そ、そのまま、空中コンボに、行こう。お、終わるまで、地に足は、つかせん、ぞ。
「体が維持できぬ……再生を……」
度重なる負傷により地に屈した『六の王笏』カルロスは、治療の為に【虚無なる起源】を発動する。傷ついた全身から血のように流れ出す漆黒の虚無――それが飲み込んだ物体は無機物であれ生物であれ、全てが彼の力となる。
「きょ、『虚無と化した漆黒の身体での攻撃』? す、吸い込み、吸収系、か」
辺り構わずあらゆる物を飲み込んでいく敵の様子を見て、非在・究子(非実在少女Q・f14901)は笑みを微かに引きつらせる。広いリーチに加えて通常の防御は無効、さらに与えたダメージだけ自分は回復するとは、ゲームなら確実に制限のかかるクソ技だろう。
「や、厄介な、やつだ。だ、だけど、は、発動の、条件は、足をつけている、あいだ、だな……も、ものは、試し、だ」
味方の戦いから【虚無なる起源】の弱点を把握していた究子は、広がる虚無に呑み込まれないよう後退しつつ、アシストツール【Q】を起動する。これはどうしようもなくクソゲーな現実に対抗するためのアイテム。現実を思うさまに改変するチートコード。
「す、スキル自体、の、設定、を、変える、ことは、む、難しくても……」
相手ボスの『パラメータ』を開くと、バカみたいに高いレベルと数値の羅列が現れる。
流石はこの世界のラスボスなだけはあり、ハッキングの難易度も尋常ではない。しかし一つだけ、たった一つだけ数値を弄ることができれば、この状況は覆せる――。
「何をしようとしているのかは分からんが……貴様の好きにはさせん」
緑髪の少女が怪しい動きをしているのを見て、カルロスはそれを阻止せんと虚無の奔流を放つ。電子の世界で生まれたバーチャルキャラクターであれ、実体を持つ以上は虚無の侵食には耐えられない。だが究子には、もし自分が倒れても予備となる「残機」がある。
「も、もう少し、ま、待ってろ」
一度は漆黒の虚無に飲み込まれたかに見えた彼女は、残機を消耗して即座に復活。さらにリスポーン時に発生する無敵時間を利用して、ラスボスへのハッキングを完遂させた。
「こ、これで、どうだ」
「むっ……なんだ、足下の感覚が……?」
究子が改竄したのはカルロスが存在する座標情報。これを地表面から空中に移動させることで、あたかも相手に「浮いている」ように誤認させる。「地に足をつけている」判定が失われれば、ユーベルコードの効果も消えるだろうと考えたのだ。
「貴様、何をしたっ」
ゲーム的な知識のないカルロスには、自分の身に起こったことが理解できない。事実として明らかなのは【虚無なる起源】が解除され、虚無による侵食が止まった事。そして、究子はこのチャンスを見逃すようなヌルいゲーマーでは無いという事だ。
「『ラジカル・エクステンション! 魔砲の力でなんでも壊決! ラジカルQ子、ただ今、惨状!』」
すかさず【魔砲少女ラジカルQ子】に変身した究子は、斥力フィールドを発生させて敵に突っ込み、魔砲形態にコンバートした「ゲームウェポン」を構える。ちなみに変身時のセリフは彼女の趣味ではなく、スキップ不可能の強制演出である。
「そ、空の旅に、ご招待、だ」
「ぐお―――ッ!!!」
至近距離でぶっ放された砲撃がカルロスをかち上げ、空中に吹き飛ばす。そのまま究子は空中コンボに移行。砲撃と近接攻撃を組み合わせた猛烈なラッシュで敵を攻め立てる。
「お、終わるまで、地に足は、つかせん、ぞ」
「ぐっ、がっ、ごっ、おのれ、がはぁっ!!」
永久かと思うほどの連続攻撃を浴びて、空中に浮かされ続ける『六の王笏』カルロス。
コンボ補正を加味しても、加算させる総ダメージは膨大であり。究子の視界に浮かんだ敵のHPゲージは、既にあと数ミリを残すのみとなっていた。
大成功
🔵🔵🔵
ハイドラ・モリアーティ
【CHAOS】
ヤツが発動した途端に、【Zoltaxiang】
手札を切るのに迷いはないぜ
実は俺って結構賢いの
同じようなコードを持っててね
エコーが場所を地獄に塗り替える
ダンスのお相手は処刑人さ
俺のとっておき。お前に貸すのが惜しいねえ!
俺の傍で出来る限り匡には戦ってもらう
エコー、後ろに二歩下がれ
――はっは、ヒット・アンド・アウェイだよ
ダメージが目立つたびにエコーに指示を出す
ンで、回復したらまた前に出てもらう
夢中になってきちゃった?だよね
そう「もてなしてる」
さて、お客様
踊るための足はどちらに?
「真っ赤な靴で死ぬまで踊れ」だってのに
――がっかりだぜ。なァ、エコー?
お伽話はいつも残酷が「お決まり」なんだよ
エコー・クラストフ
【CHAOS】
漆黒の虚無……その能力は強力だが、あくまでその能力は地面に足がついている間だけだ
なら、その足場を崩してやる。地獄に招待しよう、オブリビオンの親玉よ
【底知れぬ処の穴】
地獄に足場がないわけじゃないが、そう安定したところはないだろう。特に罪人が自由に動けるような場所じゃあない
そして安定した足場を確保する隙なんて与えてやるつもりはない。適度にハイドラの元に戻り回復しつつ、カルロスに攻撃を繰り返す
……狙いは仕留めることじゃない。鳴宮の奴が敵の足を潰すまでの時間稼ぎだ
さて……ああ、ダンスは終わりだ
地獄の番人、処刑人として極刑を下そう。身勝手な悪人は裁かれる。それもおとぎ話のお約束だからな
鳴宮・匡
【CHAOS】
ハイドラの傍をできるだけ離れないで戦うよ
この位置が、一番ハイドラへの攻撃に対処しやすいからな
狙撃で動きを阻害して、近づかせないように
エコーのUCが発動するまで
『虚無』とやらに呑み込まれないよう立ち回るさ
――地獄、ね
生きるには過酷だけど、戦場としてなら話は別
少ない足場をうまく利用して体勢を整えながら戦うよ
相手の足場を砕くか、体勢を崩させて足を止め
ハイドラの術の半径内に相手を踏み込ませない
目測は正確だよ、目がいいからな
大きく体勢が崩れた瞬間
【NV-03】に精製させた特殊弾を装填して足を狙撃
――強力な炸裂弾みたいなもんだ
当たった箇所は跡形もないだろうさ
……じゃ、後は任せたぜ
「がはっ、ごほっ、げほっ……我が野望は、ここで潰えるというのか……?」
コンボの終了と共に地に叩きつけられたカルロスは、無貌の顔で咳き込みながら呻く。
もはやその身は満身創痍。武器であるメガリスも何処かへ手放してしまい、頼みになるのは虚無と化した己の体のみ。オブリビオン・フォーミュラとて覆し難い窮地であった。
「……否。我が生命尽きぬ限り、我が航海は終わらず」
されど王としての矜持は投了を拒み、最期の一瞬まで出港までの時を稼ぐ事を選んだ。
アリスラビリンスから具現化させた【虚無なる起源】の能力。全てを飲み込む漆黒が、『六の王笏島』を染め上げていく――。
「はっは、敵さん気合入ってるねぇ。んじゃ俺もやりますか」
無貌の男の身体から漆黒の虚無が放たれた瞬間、ハイドラ・モリアーティ(冥海より・f19307)は迷いなく手札を切る。発動するのは【Zoltaxiang】――口元で燻らせた煙草の煙がゆらゆらと妖しげに渦を巻き、彼女とその仲間達を包み込んだ。
「実は俺って結構賢いの。同じようなコードを持っててね」
あらゆる物体を分解吸収するカルロスの虚無。対してハイドラの放つ煙には結合崩壊を引き起こす猛毒が含まれている。原理は異なるものの類似の性質を持った二つのユーベルコードは、互いの効果範囲の境界で激しくせめぎ合う。
「毒の煙による防御膜か。ならばそれごと飲み込んで――」
「おっと、近づくなよ」
一歩踏み出そうとしたカルロスの足下に、煙の向こうから一発の銃弾が撃ち込まれる。
射撃の主は鳴宮・匡(凪の海・f01612)。煙草を吹かすハイドラの傍にボディーガードのように立った彼は、愛銃[Resonance]の銃口を標的に向けている。
「この位置が、一番ハイドラへの攻撃に対処しやすいからな。エコーのユーベルコードが発動するまで、『虚無』とやらを近づけさせないようにすればいいんだろ」
戦場で培われた技術と経験に基づいた正確な狙撃。敵のユーベルコードが発動している間は実弾の効果も薄いが、動きを阻害することはできる。彼の役割は防御の要であるハイドラに敵を接近させないこと、そして"もうひとり"が動くまでの時間を稼ぐことだ。
「漆黒の虚無……その能力は強力だが、あくまでその能力は地面に足がついている間だけだ」
虚無に呑み込まれないよう二人が立ち回っている間、エコー・クラストフ(死海より・f27542)は敵だけをじっと見据えていた。かつて海でオブリビオンに家族と自分の生命を奪われた彼女の心には、この場にいる誰よりも強いオブリビオンへの殺意と"復讐"という動機がある――そして今、復讐すべき敵の首魁が目の前にいる。
「なら、その足場を崩してやる。地獄に招待しよう、オブリビオンの親玉よ」
【虚無なる起源】の弱点を知る彼女は、冷徹な宣告と共に【底知れぬ処の穴】を開く。
虚無と毒煙が渦巻く戦場に、空から熱い血の雨がぽたぽたと降り注ぐ。まるで誰かの涙のように地を濡らしたそれは、島を『王笏』の拠点から罪人を罰する地獄に塗り替える。
「なに……っ!」
戦場の環境が一変したことでカルロスがバランスを崩す。流れる血の河、険しい岩場、荒んだ強風――この地獄において安定して立っていられるような場所などひとつも無い。敵のユーベルコードの効果が失われ、虚無の拡大が止まる。
「ここは罪人が自由に動けるような場所じゃあない」
地獄に適応できる生者がいるとすれば、それは"生き地獄"に慣れ親しんだ者か、或いは罪人を"罰する者"。この時を待ち望んでいたと、呪剣『スプリテ・デ・サングェ』を携えたエコーが、忌まわしきオブリビオンに斬り掛かった。
「ダンスのお相手は処刑人さ。俺のとっておき。お前に貸すのが惜しいねえ!」
敵に向かっていく少女の後ろ姿を、ハイドラは愉快そうに笑って見ていた。復讐の為に生きる屍と、不老不死の何でも屋――どういった奇縁が彼女達を引き寄せたのかは本人達のみぞ知るところだが、この二人の間には深い絆があった。
「長引かせるつもりはないよ。すぐに戻る」
「痴れ者め……もう勝ったつもりか!」
赤い雷を纏った呪剣の一撃が、漆黒を抉る。対するカルロスも体勢を即座に立て直し、虚無の体を武器にしてエコーに反撃する。その様子は輪舞曲を踊る一組のようでも、喰らいあう二頭の獣のようでもあり。双方共に護りより攻めに徹した熾烈な削り合いとなる。
「エコー、後ろに二歩下がれ」
そこに再びハイドラが声をかけ、ぴくりと反応したエコーが言われた通りに後退する。
そこは魔王が張った煙の中。毒と薬は本来同一であるように、彼女のユーベルコードは味方に薬効魔術による超回復を与える効果もある。
「逃すか、ッ?!」
させじとカルロスは追撃を図るが、その時またもや銃声が響き、彼の足場が砕かれる。
ハイドラの術の半径内には踏み込ませない。それは匡からの足止めであり警告だった。
「――地獄、ね。生きるには過酷だけど、戦場としてなら話は別」
エコーが変化させた地獄の環境も、数多の戦場を渡り歩いてきた匡はすぐに適応する。
少ない足場をうまく利用して体勢を整えつつ、仲間達からは離れすぎないように。銃を自分の身体の一部のように的確に扱って、敵の足を止め続ける。よほど視力がいいのか、その目測は極めて正確だ。
「助かった。では再開といこう」
「おのれ……っ!」
そうしている間に、回復を終えたエコーが前線へと復帰する。匡の援護射撃と合わせてカルロスに攻撃を仕掛け、安定した足場を確保する隙を与えず不利な体勢を強い続ける。
また適度にハイドラの元に戻って傷を回復するのも忘れない。復讐の対象を前にしても彼女は激情に駆られるのではなく、恐ろしいまでに冷静に獲物を追い詰める狩人だった。
「――はっは、ヒット・アンド・アウェイだよ」
この戦場を一番広く見渡せる位置から、ハイドラは自分達の戦法を楽しげにそう評す。
ダメージが目立つたびにエコーに指示を出し、回復させ、薬毒の煙と匡の援護で安全圏を確保。敵が体勢を立て直す暇もないのに対して、猟兵達は盤石の体制を保っていた。
「夢中になってきちゃった? だよね。そう『もてなしてる』」
無様に踊るカルロスに、冥海の魔王はからかうような言葉を投げかけて。常に笑いを絶やさない彼女とは対照的に、冷たい表情と氷のような眼光でエコーが相手を攻め立てる。
(……狙いは仕留めることじゃない。鳴宮の奴が敵の足を潰すまでの時間稼ぎだ)
殺意を見せつつ踊ってやりながら、足場のより不安定なところに敵を追い込む。血の雨が作り出した赤い河、そのせせらぎに向かって押し込めば――濡れた地面に足を取られ、無貌の男は大きく体勢を崩した。
「……貰った」
その瞬間、匡は錬成の悪魔【NV-03:Metal Manipulator】に精製させた特殊弾を装填、カルロスの足を狙ってトリガーを引く。放たれたのは破壊力を重視した強力な炸裂弾。直撃させればオブリビオン・フォーミュラの部位すら砕くほどの。
「がぁッ―――!!!」
大砲めいた銃声が鳴り響くのとほぼ同時に、カルロスの両足は跡形もなく吹き飛んだ。
彼は獣のような悲鳴を上げ、血の雨に濡れた大地に倒れ込む。それを確認した匡は銃口を下げ「……じゃ、後は任せたぜ」と、【CHAOS】のチームメイト達に告げた。
「さて、お客様。踊るための足はどちらに?」
ダンスの最中みっともなく転んだカルロスを揶揄するように、にやりと笑うハイドラ。
ユーベルコードを継続させる余裕もなく、足まで失った奴に、もはや"彼女"の相手は務まるまいと分かっているのだ。
「『真っ赤な靴で死ぬまで踊れ』だってのに――がっかりだぜ。なァ、エコー?」
ハイドラが話を振った少女は、短く揃えた髪を荒風に揺らし、黒い剣を握りしめながら敵に近付いていく。バチバチとその刀身に爆ぜる赤い雷は、さも彼女の執念を現すよう。
「さて……ああ、ダンスは終わりだ。地獄の番人、処刑人として極刑を下そう」
倒れ込んだままの黒い男の前で、エコーは『スプリテ・デ・サングェ』を振り上げる。
かの呪剣の刃は、周囲の血の量に応じて切れ味を増すという――ならば血の雨が降りしきるこの地獄において、彼女に斬れぬ罪人の首は無いだろう。
「……そうか。ここが我の終焉か」
敗北を悟った男はそれ以上の醜態を晒すことなく、自ら首を差し出すように項垂れる。
裁きの一撃が下される刹那。冥海の魔王と死海の復讐者が、彼に最後の言葉をかける。
「お伽話はいつも残酷が『お決まり』なんだよ」
「身勝手な悪人は裁かれる。それもおとぎ話のお約束だからな」
赤い雷を纏った黒い断罪の刃が、『六の王笏』カルロス・グリードの首を地に落とす。
見事だ――最期にそう言い残して、虚無と化したその体は溶けるように消えていった。
血の雨は止んで、地獄も元の景色を取り戻す。それがこの戦いの終わりを告げていた。
かくして猟兵達は『六の王笏島』の王を討ち、この島の制圧に向けて大きく前進する。
残された時間は少ない。だが確実に勝利に向かっている手応えを、彼らは感じていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵