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銀河帝国攻略戦⑤～遅襲戦艦＆ヘッドレス・ウォーマシン

作者：柊透胡

「遺失技術の復活……ほんま、すごいよなぁ」
　しみじみと呟き、集まった猟兵は見回すのは各務・瞳子（トンボ眼鏡のグリモア猟兵・f02599）。
　かつて、銀河皇帝によって封印されていた遺失技術『ワープドライブ』――フォースナイト・ミディアのユーベルコードによって、コアマシンに『ワープドライブ』を装着した宇宙船は、スペースシップワールド内でのワープが可能となる。
「スペースシップワールドの全戦力を糾合し、銀河帝国に対抗する事が出来るようになったお陰で、伝説の『解放軍』の再来って訳やな」
　銀河帝国攻略戦が始まって、１０日が過ぎた。戦況は順調に解放軍の優勢だ。
「皆の奮闘もあって、スペースシップワールドの艦隊は、既に集結完了や。けど……『辺境星域を航行』していた所為で、行動が遅れてしもたスペースシップも幾らか残ってるんや」
　そして、遅れてきた戦力を、銀河帝国が静観する訳はない。
「少数ではあるけど、放っておく訳にはいかんよな。こっちの救援もお願いするわ」
　基本の作戦は、以前と同じく。ワープアウトしてきた帝国の宇宙戦艦の撃破だ。猟兵達はグリモアベースから直接、敵の戦艦に転移、戦艦内の敵を撃破する事になる。
「敵は仰山おるで。纏めて片して戦艦を撃破したら、さっさと脱出したってな」
　瞳子が猟兵達を転移させる戦艦には、『彷徨うウォーマシン』が詰め込まれている。
「頭が無くなった戦闘機兵でな。上の命令に諾々と従うだけのロボットや。けど、三脚による一撃離脱や高速移動が得意さかい、油断は禁物やで」
　主砲は多弾頭型収納ミサイルポッド。頭部こそないが、高性能ソナーによって、回避行動も取る。
　又、戦艦の内部は、ウォーマシンが待機中の大フロアが大半を占めている。転移先はこの大フロアだ。『彷徨うウォーマシン』と即戦闘開始となるだろう。
「所謂『集団戦』になるけど、皆やったら、絶対大丈夫。活躍を期待しとるで！」

第1章 集団戦 『彷徨うウォーマシン』

POW   :    多弾頭型収納ミサイルポッド レベル分の1秒で【腰元から複数の誘導ミサイル】を発射できる。 SPD   :    演算処理 【高性能ソナーによって】対象の攻撃を予想し、回避する。 WIZ   :    近接形態 自身に【強化外骨格】をまとい、高速移動と【スラスター】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

　グリモアベースから帝国戦艦へ――転移した猟兵達が見たものは、広々としたフロアに整然と並んだウォーマシン。何れも頭部を喪い、いっそ華奢にも見える三脚で立ち尽くす。
　――――！！
　だが、猟兵達が動くより早く、けたたましくサイレンが鳴り響く。
　ブゥゥゥン――。
　起動音が幾重にも重なり、数多の『彷徨うウォーマシン』が侵入者の排除に動こうとしたその時。
「プログラムコード改変、アクセス！」
　紫電疾駆――初手から全力、端的にユーベルコード発動を宣言するや、紫電光が何十と奔る。
「いいペースで銀河帝国と戦えてるみたいだし、こういうところでペースを乱したくないわね」
　右手の次は左手、立続けに紫電を放ち、不敵に笑みを浮かべるボーリャ・コータス（ミレナリィドールのシンフォニア・f02027）。
「……そう言えば、宇宙世界の人たちって、放電現象は見たことあるかしら？」
「ホーデンゲンショウ？」
　紫雲に染めた髪を揺らし、コノハ・ライゼ（空々・f03130）はゆるりと首を傾げる。
「ジジイの拙い知識を照らし合わすに……プラズマ化する物質が無い超高度真空である宇宙空間では、稲光は発生しなかったかと」
　鷹揚に肩を竦めたカーニンヒェン・ボーゲン（或いは一介のジジイ・f05393）は愛刀「老兎」を抜刀、紫電を浴びながらも接近してくるウォーマシンを睥睨する。
「ただ、ここは空気がある。我々の呼吸も問題ありませんでな。現に、ユーベルコードであっても、コータスどのの雷もしっかと視えた訳で」
　軽口に慇懃な応え。考え込むのも束の間、コノハはヘラリと唇を緩める。
「つまり……問題なく攻撃出来るって訳だ」
　コノハの唇が微かに動く。忽ち青年の周囲に燃え上がる焔は数えて24。冷たくさえ見える月白は、コノハの手の動きに呼応して広範囲に降り注ぐ。
「そら、もう１度。暖めてあげようか」
　２度に渡る月焔で、火花がバチバチとあちこちで爆ぜる。
「どんどん片付けちゃいましょう」
「任せといて。嫌いじゃナイよ、大掃除」
　ボーリャの紫電とコノハの白炎、多を巻き込んで露払いせんと。だが、ウォーマシンとて一方的に破壊されるばかりではない。
　―――！！
　鈍重そうな外見にそぐわぬ反応速度で、猟兵の攻撃を回避。腰部から複数の誘導ミサイルが次々と発射される。
「……っ」
　辛うじてオーラ防御が間に合った。衝撃による痛みを堪え、懐のナイフを探りながら更に炎を操るコノハ。
「……そっち」
「かたじけない」
　炎の半分が正面を穿てば、こじ開けられた路をカーニンヒェンが疾駆する。
「１つたりとて落とさせはしません」
　迫るミサイルを愛刀で受け流し、爆風の勢いで更に前へ。
「宇宙船とて星々同様、１つとして同じものはなく、輝きは尊い」
　カーニンヒェンが望むのは――宇宙船の救援の向こうにある筈の、皆が笑い合う未来。
　剣刃一閃！　美しき業物でウォーマシンを斬り払い、人狼紳士は爆風に乱れた衣類と焦げた帽子を素早く整える。
「そろそろ、殲滅はお任せしたい所なんだけどっ！」
　どんどん火力ぶっ放してきたボーリャだが、流石に全てを掃討する前に息が切れそうか。
「ま、バトンタッチするまで、着実に数を減らしていきたいネ」
　ボーリャの紫電を追い、白炎、否、コノハが奔る。炎を煙幕に敵の懐に飛び込み、黒剣「柘榴」がウォーマシンを抉る。
「……へぇ」
　刃を通して充電されるような感覚に、青年は面白そうに薄氷の眼を瞬いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

「頭をなくしたウォーマシンですか……死に損なった同胞の哀れな姿は、見るに堪えません」
　機械的に応戦する敵と同じ高さの視線に、同情が滲むよう。
　だが、まだ残機の多さを見て取り、エルシー・ナイン（微笑の破壊兵器・f04299）は小型エルシー軍団を招集する――全機、緊急発進！！
「みんなで、あの頭無しの人達を引っ掻き回してくるんですよ」
　一撃で消滅する小型エルシーロボだが、その数は三桁に迫る。攪乱要員にはなるだろう。
「せめて安らかに眠れるよう、完膚なきまでに破壊してあげましょう」
　エルシー自身は只管攻撃あるのみ。ガトリング、ブラスター、ミサイルを一斉発射、ウォーマシンひしめく一帯に降り注ぐ。
　ガション、ガション。
　ダメージの累積が規定を越えたか。敵の残機が次々と強化外骨格を装着する。
　ブゥゥン――。
　スラスター起動――化学ロケットのノズルより白煙噴き出すや、一気に加速！
「『まる』……がんばって」
　高速で迫り来るウォーマシン群を遮ったのは、丸々とした超巨大猫、の霊。
　ミャァァァオッ！
　高らかな鳴き声が、ビリビリとフロア全体を震わせる。
「で、でっかい、ですね……」
　隕石から創られたという弓の光の弦を引き絞りながら、ビックリ眼を瞬くショコラ・リング（キマイラのアーチャー・f00670）。当の召喚者、舞音・ミケ（キマイラのサイキッカー・f01267）は、いっそぼんやりと眠たげだ。
「……機械はひっかくと痛いから、苦手」
　だから「まる」に頑張って貰おう。戦艦のフロアは広々としているから、暴れてもきっと大丈夫。
「みんなみんな、潰しちゃえ」
　でも、味方はだめだよ――ミケの言い付けをよく守り、超巨大猫は器用に猟兵を避けながら全力で転げ回る。少しくらい攻撃されても大丈夫。頑丈だし。勢いでその辺壊しちゃっても大丈夫。それも目的だし。
「……あ、援護します！」
　でっかい癖に何だかコミカルなでんぐりニャンコに、思わず見惚れてしまったショコラだが……近接形態のウォーマシンが猫まっしぐらなのを見て取り、慌てて矢を番え直す。
（「皆様の頑張りをここで無に帰すわけにはいきません」）
　立ち上がる者を助け仲間の元へ導く事こそ、猟兵の役目と思うから。
　その一矢は一撃貫通の威力重視。強化外骨格を目印に、少年アーチャーは次々と狙う。
　一方、ミケ自身は翳した両掌から高圧電流を放つ。
（「硬いの嫌だし……電気は効きやすいだろうし、ね」）
「遅れてきた船を狙うなどという姑息な真似は、このワタシが許しません！」
　短時間でも高速機動を封じられれば、エルシーの射撃も確実にマシンの中枢部を撃ち抜いていった。

　――帝国戦艦に挑んだ猟兵６名は、圧倒的な寡兵ながら一騎当千。ヘッドレス・ウォーマシンは、戦艦から彷徨い出る前に総て沈黙する。
「捧げるは我が祈り、矢に纏いたるは神の怒り――」
　戦艦脱出の駄賃に、ミケは転がり上手のまんまる猫を存分に転げさせ、ショコラは漆黒の矢を戦艦の中枢目掛けて放つ。
「全てを薙ぎ払う破壊の果てに創造を」
　そうして、再利用も叶わぬ程、帝国戦艦を徹底的にスクラップにした猟兵達は、迎えに来てくれたミディアの宇宙船に意気揚々と乗り込んだ。
　彼らが救援に成功したスペースシップは、遅ればせながらも解放軍に加わる事になるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年02月16日