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羅針盤戦争〜母なる海と共に

#グリードオーシャン #羅針盤戦争

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#羅針盤戦争


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●仕留めた大物は
 ある島から漁に出た巨人の漁師は、小舟の上で確かな手応えを感じていた。自らの銛は、しっかりと獲物に食い込んでいる。あとは一対一の格闘だ。
 その闘いも、間もなく彼の勝利で終わろうとしている。海面に浮かび上がる影は、今まで捕まえてきたどの獲物よりも大きかった――いや、大きすぎた。
「こいつは……」
 彼は銛が獲物の髪に絡まっているのを「見上げた」。獲物は、巨人の彼を遙かに凌ぐ大きな人型の――。
「……女神様だ」
 恍惚とした表情で呟く彼は、彼の倍はあろうかという巨大なクリオネの触手に絡め捕られ、海の中に消えた。彼と入れ替わるように、海面には鎖で繋がれた無数の巨大クリオネが現れ、踊るように泳ぎ回る。「母」の足元で戯れるようなクリオネ達の踊りは大きな津波を生み――巨人達の住まう島を、母なる海へと還した。

●羅針盤が指し示すのは
「皆さん、グリードオーシャンでの『羅針盤戦争』、お疲れ様ですぅ。わたしもこの戦いの予知が視えたので、皆さんにご説明しますねぇ」
 グリモアベースに集った猟兵達に向けて、グリモア猟兵のミント・キャラメル(眠兎キャラメル・f25338)は自らのグリモアを羅針盤に宿して浮遊させつつ語り始める。
「六の王笏のカルロス・グリードが予兆で言ってた『海底の母』が、巨人達の島を津波で押し流してしまうので、撃退をお願いしますぅ」
 グリモアを宿した羅針盤の上に映像が浮かび、海面上に立つ女性の姿が映し出される。柔和な表情、柔らかな曲線、まさに「母」の姿である。
「この『海底の母』は百メートルほどの巨体で、その姿を見たものにお母さんと認識させたり、津波を起こしたり、子供である十メートルくらいのクリオネを操りますぅ。ですけど、先制攻撃ではないみたいですねぇ」
 海底の母があまりにも巨体すぎることと、辺り一面が海で相対的な比較対象がないために分かり難いが、鎖で繋がれたクリオネも相当な大きさである。
「巨人達の島には海を生活の糧とする人も多いので、漁師さんの小舟とか、海賊船とか商船とか、海上での足場には困らないはずですぅ。『海底の母』は予兆で視えた通り、コンキスタドールの『大いなる神』こと『レディ・オーシャン』が仕向けた直属のオブリビオンで、カルロスの撃破には関わりませんけど、放っておくわけにはいかない気がしますぅ」
 ミントはグリモアを舵輪の形に広げ、回転させ始める。
「『海底の母』をバッカルコーン! とやっつけてきて下さいねぇ☆ グリモア・イリュージョン☆ ワぁン・ツぅー・スリぃー!」
 猟兵達はグリモアの舵取りと共に、グリードオーシャンの海へと出航した。


鷹橋高希
 2021年2月の戦争イベント「羅針盤戦争」の戦争シナリオで、全一章となります。
 オープニングが承認され次第、プレイングを受け付けます。

 このシナリオには、下記の特別な「プレイングボーナス」があります。これに基づく行動をすると有利になります。

 プレイングボーナス……海底の母の放つ攻撃への対抗策を考える(敵は先制攻撃しません)

 クリオネの大きさについては本シナリオと他のマスターのシナリオで解釈が異なる場合がございます。ご注意下さい。

 海に生きる巨人達が影響を受けた世界はお客様にお任せします。得意なバックアップで戦って下さい。

 それでは、海に生きる皆様のご参加を(別にそれほどでもない皆様のご参加も)お待ちしております。
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第1章 ボス戦 『海底の母』

POW   :    海女神
【100m近い自身の巨体】を披露した指定の全対象に【魅了、敵意喪失、母体認識と従順になる】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
SPD   :    回帰
【津波】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に関係なく飲み込み海に変える】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    底無しの愛
自身が【自分の子に底無しの愛情を注いで】いる間、レベルm半径内の対象全てに【愛の力で強化された子供たちの攻撃】によるダメージか【鎖を通じて愛の力】による治癒を与え続ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はラモート・レーパーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ヘスティア・イクテュス
ふむ、なんていうかクエーサービーストを見まくってたせいか…
そんなに驚きは無いわね…
まぁ、さっさと倒させてもらおうかしらね!


見たらまずいなら見なければ良い、AIであるアベルの指示に従って回避・攻撃を【見切り】
あれだけの巨体なら細かく照準を合わさずともに当たるから楽ね

子供、クリオネへはアペイロンによるマルチ・ブラスター【属性攻撃】で
氷結、足止めね【範囲攻撃】
凍らせれば治癒もあまり、溶けたとしても動き出すまで時間は稼げるでしょ

その隙に、マイクロミサイルの【一斉発射】、マルチブラスターも熱モードに切り替えて蒸発させるわ!



●妖精の海戦
 海面を切り裂くような飛沫を上げ、ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)はジェットパック・ティターニアで飛翔する。飛沫を煌めく鱗粉に見立てるならば、その姿はまさに妖精と呼んで差し支えないだろう。
「たったの百メートル……まぁ、この世界では巨体なんでしょうけど」
 宇宙船『イクテュス』を飛び出し、クエーサービーストと呼ばれる小惑星並みの巨怪と何度となく戦ってきたヘスティアにとって、倒すべき敵の体躯が百メートルと聞いても驚くものではない。だが、そのたった百メートルの敵はクエーサービーストと違って「見たらまずい」と聞いている。
(さっさと倒させてもらおうかしらね。アベル、指示をお願い)
(畏まりました)
 ヘスティアは目を閉じ、アベル――サポートAIのティンク・アベルに状況把握を託すとティアラが明滅を返し、アベルの導くままに十メートルのクリオネの間を翔抜けると、アベルはその一瞬でクリオネの情報を解析する。
 アペイロンの属性と攻撃範囲の最適化を伝えられ、ヘスティアは宙返りし海面を頭上にしつつ銃口からユーベルコード「マルチ・ブラスター」を冷凍光線モードで放つ。冷凍光線を浴びたクリオネ達は、ヘスティアに向き直ることもできずに氷の妖精と化した。

 ――オオオオ――!

 愛する子供達を凍らされた海底の母の嗚咽が海鳴りと化して響き渡り、クリオネ達に結ばれた鎖が妖しく輝いてその氷を溶かしていく。海鳴りを解析したアベルは次の攻撃手段と方向を提示し、ヘスティアはティターニアからマイクロミサイルを海底の母に放つ。
 愛の力が途切れ、鎖の輝きが収まるのを見てミサイルの命中を悟ったヘスティアは再度アペイロンをクリオネ達に向ける。
 熱光線モードに切り替わった「マルチ・ブラスター」が氷の妖精を蒸発させると、宇宙の妖精は再び光を煌めかせ海を翔んでいった。

成功 🔵​🔵​🔴​

七那原・望
なるべく速攻で終わらせるべきですよね。
時間を掛ければ掛けるほど被害が拡大しそうです。
アルダワの技術を持っている巨人がいたら二つお願いしたい事があるのです。
一つは決してあの敵の姿を見ないで欲しいのです。
もう一つはあの敵に向かってカタパルトとかでわたしを射出して欲しいのです。

ネルソンさんが使ってた戦法なら最速であの敵の間近まで迫れるはず。
そして見た者の認識を狂わせるなら、わたしも巨人のみなさんもあの敵を見なければ問題ないのです。

【第六感】と【野生の勘】で敵の攻撃を【見切り】、【結界術】やオラトリオで防ぎながら突貫。
敵の至近距離に到達したら即座に【早業】で【絶・蘇威禍割】を放ち粉砕してみせましょう。



●D.S.
 巨人の海賊船に備え付けられた蒸気式カタパルトの発射器に砲弾が「乗り込んだ」。その砲弾は白銀色に輝く髪と翼を持ち、巨人の海賊に自らを撃ち出した後の対処――あの姿を見ずに引き返すこと――を語りかけている。髪や翼と対になる黒色の目隠しをした少女――七那原・望(封印されし果実・f04836)は、目隠し越しに巨人の目を見つめ、真剣な警告を示す。
「本当に行くぞ、猟兵のお嬢ちゃん」
「お願いなのですー」
「発射準備開始だ! 20! 19! 18……!」
 望の話を聞いていた巨人が号令を掛けつつ離れると、カタパルトの蒸気機関が駆動を始め、エネルギーの蓄積を表すように甲板に蒸気が漂い始める。カウントダウンは一桁に進み、撃ち出される望も、撃ち出す巨人達も、来たる瞬間に表情が一層引き締まる。
「3! 2! 1! 発射!」
 巨人の張り上げた声をも掻き消すように、カタパルトは蒸気を噴き上げて望を大海原へ撃ち放った。蒸気の白線は瞬く間に消え、海賊船は船首を回頭させ始める。
(やはり速いのです。ネルソンさんが選んだ戦法だけあるのです)
 望は七大海嘯の『舵輪』・ネルソン提督と戦火を交えている。彼がかつて天使に強いた方法を、最速での事態収拾を図るために模倣したのだ。楽しむには難しいほど海風を切り裂いて、天使の翼を持つ望は討つべき敵へと飛翔する。
 望は目隠しに吹き付けるような威圧感を感じていた。威圧感は望の網膜ではなく第六感に像を結ぶ。この曲線の輪郭は紛れもなく「海底の母」。海風と威圧感を振り切るようにエクルベージュの影の園が望を包み、飛翔を加速させるもう一羽ばたき。
(外すなんて有り得ない。絶対に――)
 望は第六感の像に黒と白の双剣を抜き放つ。剣戟は像を切り裂いて、望の姿は「海底の母」を突き抜けた。一閃ずつの双剣――ユーベルコード「絶・蘇威禍割」は、「海底の母」の概念を粉砕する。「彼女」は「母」でも「女神」でもなく、苦悶の呻き声を上げるただの「化け物」となったのだ。「化け物」の呻き声で強烈な打撃を与えられたことを悟った海賊達は、自分達より遙かに小さな「猟兵のお嬢ちゃん」を讃え、甲板に凱歌を響き渡らせる。その歌は、望達猟兵が「化け物」を倒すセーニョに飛ぶだろう。

成功 🔵​🔵​🔴​

イコル・アダマンティウム
「……?」
あれが……母?
ん……よくわかんない、な

僕は格闘特化の愛機、キャバリアに搭乗して出撃する、ね

敵の近くには巨人さんの船を借りて、行く。

【対海女神】
船で進みながら観察する、よ
壮大で、とっても大きい
綺麗……なんだとは思う、けど

僕はプラントで生まれた、レプリカント
母体は……こんなのじゃない
<見切り>

あ、でも……一つ気になる
「クリオネって……食べられる、かな?」
<大食い>

【攻撃】
大きくて、殴るのも大変
目立つところ、お腹を殴る、ね
<ジャンプ>で跳んでお腹を目指す、よ
足りなければその体を<ダッシュ>で駆け上がる
<地形の利用>

目的地に着いたら、[一撃必殺]
機体の拳をお腹にたたきつける、ね
「じゃあ、ね」



●試食
『この辺までに、しよう』
 巨人が乗り合わせる船で、一体の巨人が船の停止を呼び掛ける。その声はマイクを通したような少女の声で、しかしその海の深い青にも似た色の体躯は巨人の少女と呼ぶにはあまりにも硬質な「鎧」に覆われていた。この「鎧」の名はTactical Armor-001:Last ONE。一般的な体躯の人間が搭乗可能な、異世界の人型兵器――キャバリア。巨人達とさほど変わらぬ体高のこれを駆るのは、イコル・アダマンティウム(ノーバレッツ・f30109)という猟兵だ。
『ん、ありがとう。ここからは、僕が行く。みんなは、あれを見ないで』
 視認による影響を受けないであろうギリギリまで近付けてくれた巨人達に礼と忠告を返し、コックピットのシートに座るイコルは「海底の母」に向けての飛翔を想像する。それは彼女の神経から、直結されたキャバリアの人造神経に伝わり、船の甲板を蹴って海に向けて跳躍した。巨人であればただの跳び込みだが、Last ONEはキャバリアであり、脚部のスラスターが点火して水飛沫を吹き上げながら海面を駆けていく。
 百メートルという「海底の母」の巨体はキャバリアをもってしても遥かに大きく、モニター越しにも大きく映る。さらに、その足元には鎖で繋がれたクリオネの群れ。あれらも大きさはキャバリアの倍はあると判る。
(壮大で、とっても大きい。綺麗……なんだとは思う、けど。あれが……母? ん……よくわかんない、な)
 イコルは小首を傾げ、Last ONEもまた同じく首部を駆動させる。
(僕はプラントで生まれた、レプリカント。母体は……こんなのじゃない)
 イコルは「アダマンティウム鋼業」がプラントにて偶然生成したレプリカント――知性を有した人間型の機械である。神経を躊躇いなくキャバリアに繋ぎ、工場の赤字を補ってきた。そんな彼女にあれを母だという認識は解らないのだ。
(あ、でも……一つ気になる)
「クリオネって……食べられる、かな?」
 コックピットの中でつい漏れた言葉は、Last ONEの進路をクリオネに向けるのに充分だった。超格闘戦特化クロムキャバリア・Last ONEは一切の兵装を持たず、クリオネが気付くよりも先に両手で掴みかかると、ナノマシンのコーティングがクリオネを喰らう。
「……食べられなくはない、けど。大味」
 まさか喰われる側に回るなど思いもしなかったクリオネ達はバッカルコーンを振り回し、青い巨人を威嚇する。
 一方のイコルも一旦御馳走様なのでスラスターで跳び上がり、食物連鎖をも受け入れる母性をイコルに向ける「海底の母」の腹部に「一撃必殺」の右拳――ユーベルコードを叩きつけた。
「じゃあ、ね」
 直接腹部を殴られた「海底の母」はさすがに悲鳴を上げ、膨らんでいた腹部は海水と化して零れ落ちていく。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴィクトル・サリヴァン
ん-何かヤバそうなのがいる?
オルキヌスでも大概なのにこの海世界の危機が多すぎない?
滅ぼされる前に倒さないとねー。

なんか見たらヤバそうな気がするから目を閉じてメロン体からの反響定位で周囲の状況確認。
可能なら音属性の魔法でより音を正確に集めて情報収集。
得意な水泳と深海適応、素潜りに高速泳法で深海でも存分に暴れまわるね。
クリオネは攻撃を躱しつつ高速詠唱からの水属性魔法で付近の海流を俺の体を逃げやすい方向に操作して回避。
ボスっぽいでかいのの中枢の位置を魔力と反響音を感知して探り、そこに向けて全力で銛を投擲しUC発動。
周囲の水を巻き込み巨大化させた水シャチ、全力で嚙み砕いちゃって!

※アドリブ絡み等お任せ



●海の虎の狩り
(オルキヌスでも大概なのに、この海、ヤバいのが多すぎない?)
 シャチのキマイラ、ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)は母なる海の深い底へと潜水していく。全長50メートルはあろうかという巨躯の海獣にして元・七大海嘯であったオルキヌスを討って進水した、その矢先の全長100メートルである。単純計算で倍の規模だ。いくら広大な海の世界・グリードオーシャンと言えど、世界の危機が倍々ゲームで泳いでいては堪らない。
(そろそろ、意識をこっちに切り替えようか)
 ヴィクトルは目を閉じ、視界をシャットアウトすると同時に頭部中央に意識を集中させる。シャチのキマイラであるヴィクトルには、種特有の反響定位感知器官――メロン体が備わっている。それを震わせた音波に音属性の魔力を乗せて反響を受け取れば、例え陽の光も届かぬ海底だろうと、その光景がありありと感じられる。
(……いるね)
 音波の反響で前方に姿が浮かび上がる。大きさは10メートル程、そして揺れる鎖。「子供」のクリオネだ。海棲生物の本領発揮とばかりに天使の如く海中を飛び回り、ヴィクトルを捕らえようと禍々しいバッカルコーンを差し向ける。しかし、その触手は突然巻き起こる海流にねじ曲げられ、海流に乗ってヴィクトルはクリオネの合間を泳ぎ抜ける。この海流は叡智の結晶――魔法詠唱によりヴィクトルが生み出したもの。「海の狩人」が狩るべき獲物は、クリオネのような小物ではない。
(大物の影……あいつだ!)
 反響した音波が描き出す大物、「海底の母」は両腕を広げ、海流のような母性をヴィクトルに向ける。だが、目を閉じたままのヴィクトルに感じられたのは海流だけだ。魔法の海流は錐揉み回転し、「海底の母」の海流を突き抜け、その腋下をくぐり抜けた――乳房と呼ぶべき胸元に銛を残して。
「さあ、追いかけて、齧り付いて――噛み砕け!」
 海中を旋回し再び「海底の母」を正面に感知したヴィクトルが命じるように言い放つと、別の魔法の――ユーベルコード「大海より来たれり」――海流が並走を始める。その海流は大きさを増して巨大なシャチを象り、ヴィクトルが投げ付けた銛目掛けて食らい付く。あまりにも獰猛な乳呑み児に「海底の母」は悲鳴を上げるように海流を荒れ狂わせた。

成功 🔵​🔵​🔴​

クレア・フォースフェンサー
此度の敵は、直接目にしてはならぬ存在と聞く。
ならば、目は閉じ、索敵用に光珠を展開して敵や戦場の把握を行うこととしよう。

しかし、オブリビオンと言えど、腹が膨らんでいる者を討つというのはあまり気分の良いものではないのう。
じゃが、あの中の者達が溢れ出たならば、この地がどのような災厄に見舞われるのか分からぬ。
すまぬが、そのまま海底に……いや、骸の海へと還ってもらうぞ。

残りの光珠で自身の周囲に結界を作り、空中へと移動。
全ての光炉を稼働させ、UCの力とともに光弓へエネルギーを伝達。
索敵用の光珠で把握した敵の核に、全力を込めた一矢を放つ。


中村・裕美
「……子供を戦わせる……愛用の武器か何かと思っているのかしら? ……そんな母親なら……必要ないわ」

相手の攻撃の対策は、自身の感情や理性を封印し、目の前の目標だけを排除する存在になればいい
「……巻き込むかもしれない……適当に避けて」
と味方に警告してから【魔竜転身】で巨大な竜になって敵に襲いかかる。クリオネは【ブレス攻撃】の【ハッキング】でその肉体を電子データ化させ、行動不能にさせ、敵本体は爪で切り裂いて【切断】

(……助けられる可能性があるのなら)
後で電子データ化したクリオネのデータを拾い、敵に捕食された巨人さん達のものがあれば、健康な状態に電脳魔術で修復した上で【封印を解く】で戻してあげたい



●滅びの竜と再生の女神
 巨人の漁船に乗り込んだ二人の猟兵は、共に海風に長い髪を靡かせながら、巨人の丈に合わせて造られた船端に身を預けていた。
「……子供を戦わせる……愛用の武器か何かと思っているのかしら? ……そんな母親なら……必要ないわ」
 水兵の装束を――女子高生として――纏い、海風に舞う黒髪の中に厚いレンズの眼鏡を掛けた少女、中村・裕美(捻じくれクラッカー・f01705)は呟いた。
「わしらも元々は海より生まれ陸に上がったと一説に聞く。鎖で縛るような母性愛は重すぎじゃ。子離れしてもらわぬとのう」
 裕美とは別の白い軍服に身を包み、金色の髪を風に遊ばせる少女、クレア・フォースフェンサー(UDCのエージェント・f09175)が古風な口調で返す。
「……そろそろね……。私のユーベルコード、あなたを巻き込むかもしれない……適当に避けて。漁師さんも、この船のスピードに気を付けて」
「解った。漁師の皆、協力感謝じゃ。わしらが降りたら、手筈通りに振り返らず引き返してくれ」
 巨人の漁師達に礼を伝えて、二人は船端から荒れ狂う海に飛び込んだ。目的はただ一つ、この海を鎮めるため。しかしそれは人身御供の身投げではなく、海を荒れ狂わせる敵を討つためだ。現にクレアは落水しておらず、金色に輝く数十個の光の珠でできた結界の中にいる。波飛沫に濡れず暴風にも髪を乱されずその敵の元へ飛んでいこうとすると、その後方から巨大な竜がクレアを追い抜いていった。その竜は波を被るが、波は吐息が触れた部分から急激に水蒸気――ではなく無数の「1」と「0」に化す。この竜こそ、ユーベルコード「魔竜転身」による裕美の姿だ。
 魔竜と化した裕美は感情や理性を代償の形で封印し、目の前で腕を広げる「海底の母」の母性を遮断した。裕美の目に映るのは、魔竜の姿に怯むことなく向かってくる「子供」の巨大クリオネ達。裕美は滅びの竜の衝動のままにホログラフィー色のブレスを浴びせると、クリオネの巨体は「1」と「0」に分解されながらブレスの中に溶けていき、もがくように振り回すバッカルコーンも白黒の帯へと変わっていく。「海底の母」の腕が愛しき我が子に差し伸べられるが、その腕は鎖ごと裕美の爪に切り飛ばされ、海に落ちる前に電子の水蒸気と化して海風に消えた。
(此度の敵は直接目にしてはならぬと聞いたが、そう断ち切ったか)
 先行した形の裕美に追い付いたクレアは、結界の中で目を閉じていた。その周囲には結界を構成するものと同じ光の珠が十数個ほど四方八方と飛び回っている。このグリードオーシャンとは違う世界でオブリビオンを討つために造られた人造人間であるクレアは、光珠から情報を収集して分析していた。裕美が滅びの竜であるならば、クレアという金髪の美女が多数の光の珠を操る様は再生の女神と呼んでも差し支えないだろう。
(……おるな。しかし、オブリビオンと言えど、腹が膨らんでいる者を討つというのはあまり気分の良いものではないのう)
 クレアは「海底の母」の気配と相対する。その名の通り「子」を身籠もっているように膨らむ腹部は、何かを産み出す力が感じられる。しかし『羅針盤戦争』の中で産まれるその「子」は間違いなくこの世界を死に追いやるものだ。
 母の本能とでも言うべきか、「海底の母」は「子」を守り、そして全ての存在を「子」とするため、海の中に抱き込もうと大波でクレアを包み込む。大波に呑み込まれたクレアは母なる海へ――還らずその場に浮遊している。眩い光に切り裂かれるように海水が結界を流れ落ちると、クレアは光の弓矢を矧いでいた。
「海底に……いや、骸の海へと還ってもらうぞ」
 クレアの手から「海底の母」の丸い腹部に一筋の光が疾ると、腹部は内部から無数の光の粒子と化していき、腹部から上下へ粒子化が進んでいく。上下に分断された100メートルの巨体は崩れ落ちぬまま光の粒子となっては海と空に溶けていき、その全てが溶け切った後には、生まれ変わったかのように穏やかな海が広がっていた。

●母なる海と共に
 海が晴れ渡り、猟兵達が巨人の島に帰り着くと、巨人達の豪勢な宴会が待ち受けていた。豊富な海の幸が、陸の巨人達が如何に海と深く繋がって生死を共にしてきたかを物語る。海から帰らぬ者のうち、あのクリオネの犠牲になった者達は裕美が電子データとして回収しており、弔いの儀の前に蘇生を行なった。これにより、今回の一件での犠牲者はゼロとなり、事件とは関係なく帰らぬ者だけの弔いの儀を挟んで、宴会が再開された。
 母なる海と共に生きていくグリードオーシャンの人々を、そしてこの世界を守るために、猟兵達は暫しの休息の後、オブリビオン・フォーミュラ――カルロス・グリードを捜し求めて大海に出る。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年03月15日
宿敵 『海底の母』 を撃破!


挿絵イラスト