羅針盤戦争〜進め、『強欲』を『征服』するために
●強欲の王宮にて
「――見破られたか」
終の王笏島にて海面を見据えるはカルロス・グリード――紛れもなく本人である。
「数多の世界を侵略するが我らの常だったはずだが、逆に喉元に刃を突き付けられるとは」
その言葉は――一度見つけられた以上、もはや侵略されて制圧されるのは免れないであろうと判断しての言葉。無理もない。すでに三と四の王笏が制圧されているのだから。
「未だ発見されてなき島はなし――『舵輪』も討滅されてしまった。『邪剣』は発見されないことを願っていたようだが……」
それは邪剣が撤退を考えていたからだということなど露知らず。
「『桜花』――我が妻、スイート・メロディアも発見されているとなれば討滅は避けられぬか……せめて生き残っていては欲しいのだが」
桜花が真なる恋心ではなくただの利害関係で結婚してるとは露知らず。
「……」
玉座に腰掛ければしばし思案する。
(この状況では、我のみ残ったとして、何ができるか……最悪六の王笏が生きていればヤヌスの鏡で分身は作れるが、それだけでは……七大海嘯を失ったとして、何ができる?
猟兵たちを迎撃し、メガリスを求む次なる航海に――レディ・オーシャンもどう出るかはわからぬ……事態を把握していないだろうしな、未だ……)
しばし時間が経ち、カルロスは立ち上がった。
「致し方なし……我が先だって迎撃をするしかあるまい」
この身がつぶれれば、この島が制圧されれば、真に大打撃は免れない。
もはや『航海』ができなくなる可能性は大きい。
だが。だが――そのリスクを負うしか、いけなくなった。
立ち止まって消えるのを待つか。せめて最後まで戦って消えるか。
――ならば答えは一つ。オブリビオン・フォーミュラとして。
「最後までその未来への希望に抗い続けるのみだ、猟兵共よ!」
●『終』を終わらせるとき
「さあ、最終決戦――なんだけど、まだそういう雰囲気じゃないわよね」
すべての本拠地は見つかれども、まだ王笏も七大海嘯も残りまくっている――そんな戦況下でいつものように案内をするマリア・ルート(千年の王国から堕ちのびた姫・f15057)。
「終の王笏。カルロス・グリードの本体。こいつと7つ――いや、今は5つかしらね――の分身をぶっ潰せば、この戦争は私たちの勝ちよ。
わりかしカタストロフまで時間なさげだけど、今の勢いなら行けると思ってる」
何せ今回いつもの戦争以上に猟兵たちの士気が高い。ガンガン出撃してどんどん賞金首になっている現状だ。
「相手はカルロス・グリード本体。刺突や拘束に長けた『鉄鎖ドローミ』、己の王宮にある控えのメガリスをコストにしあらゆる行動に成功する『オーシャンオーブ』、様々なメガリスを装備したコンキスタドールを乗せた幽霊船を召喚する『さまよえる舵輪』――この3つを使いこなしてくるわ。先制攻撃で使ってくるほどには熟練している」
逆に言えばそれ以外は飛んでこないわけだが、これだけでも脅威である。
「これだけでも怖いでしょうね、組織はこの依頼を『高難度依頼』に認定したわ。
ま、オブリビオン・フォーミュラ本体だし、そりゃそうよね」
現場は王宮の中となる。カルロスは玉座付近で猟兵を待ち構える形だ。
「メガリスもさぞや大量にあるでしょうけど生憎それを調査する時間はなさそうだし、何より何が起きるかわかったもんじゃない。申し訳ないけどカルロス討滅後は早期の撤退をお勧めするわ」
どこか残念そうなのは彼女もまた興味があったからだろうか。
グリモアの先に王宮が見える。
「グリードオーシャン――強欲の海。そして強欲の名を持つカルロス。もはや強欲に征服し支配していくこの世界の在り方、こいつの在り方が見えてくるようね」
一瞬何かを思い出すように思案顔をしたがすぐそれを振りほどく。
「七つの大罪が一つ、強欲。それを生意気にも関する存在に、鉄槌を与えてきなさい!」
――それは彼女なりの、激励の言葉。
「この海の真の征服者(コンキスタドール)は、私達よ!」
――その言葉と共に、決戦に猟兵たちは送り出された。
結衣謙太郎
さあ、征服者の海を征服する時だ!
結衣(最終決戦モード)です!
実は六の王笏と邪剣発見前に前半書いてたけど戦況変わったから書き直した!
以下詳細。
●メイン目標
カルロス・グリードを討滅せよ!
●章構成
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「羅針盤戦争」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。もう全部本拠地見つけたけど。
●ロケーション
王宮の中です。金ぴかです。眩しいほどではない。
SLGでいうなら1人目の転移位置から目の前に1マス挟んでカルロス、その1マス後ろに玉座がある感じの間合いです。
王宮の正面外、長めの階段を下りたすぐそばに海があります。玉座から見えます。使いたい方のために。
遮蔽物は一切ありません。カルロスも全力出したいので。
●先制攻撃について
先制攻撃を持つ敵と戦う時、猟兵たちのコードはなんやかんやで必ず後手になります。
罠とかを張るなど先手が有利になるようなコードを使うときは要注意!
また、先制攻撃で来るコードは猟兵が使うコードと『同じ能力(POW・SPD・WIZ)』のコードによる攻撃が必ず飛んできます。
先制攻撃の対策で重要なことは、先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動です。対抗策を用意せず、ただ単に自分の攻撃だけを行おうとしても先制攻撃で大打撃を受けてしまい、敵にあまりダメージを与える事はできないと思われます。対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性が高いので注意してください。
重要な点はもう一つあります。
先制攻撃は『ユーベルコード1回につき1回』繰り出されます。よって、2つ以上のユーベルコード使用、あるいは1つのユーベルコードの複数回使用は推奨されません。それだけ先制攻撃が飛んでくるので。
以上、先制攻撃についての注意点でした。ギミックの1つとしてご承知おきくだされば幸いです。
●備考
プレイングはオープニング公開後から受け付け開始します。
ただし全採用できない可能性がいつもより大きい点、ご了承ください。
また、このシナリオは高難度依頼、かつ戦争最終決戦依頼です。
判定が2段階辛くなります。容赦なく苦戦や失敗出すのも覚悟してます。ご注意ください。
征服者を征服しようと企むは強欲か、それとも。
それでは、強欲に立ち向かう皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 ボス戦
『七大海嘯『終の王笏』カルロス・グリード』
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POW : メガリス『鉄鎖ドローミ』
命中した【対象1体のユーベルコードを封じる鉄鎖】の【全長】が【対象を束縛するのに充分な長さ】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
SPD : メガリス『オーシャンオーブ』
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【王宮にある大量のメガリス】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
WIZ : メガリス『さまよえる舵輪』
【様々なメガリス】で武装した【コンキスタドール】の幽霊をレベル×5体乗せた【空飛ぶ幽霊船】を召喚する。
イラスト:hoi
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
リューイン・ランサード
この戦争を終わらせる為…(怖いけど)行きます!
先制で呼び出された幽霊&幽霊船による各種攻撃に対しては、自分の翼で飛翔し、第六感で攻撃を予測し、見切り&空中戦にて回避したり、ビームシールド盾受けで防いだり、ばら撒いた残像を攻撃させて躱したりと、状況に応じて対応。
カウンターで光の属性攻撃・全力魔法・破魔・浄化・範囲攻撃・高速詠唱による強制成仏魔法(ニンジャスレイヤー風に言うとナムアミダブツ!)を幽霊&幽霊船に撃ち込みます。
直後、空中戦で上空からカルロスに向け、残像をばら撒いて幻惑しつつ急降下。
2回攻撃の1回目はUC:次元刀で袈裟懸けに斬り、2回目はエーテルソードの光の属性攻撃で更に袈裟懸けに斬る!
●果敢に攻めて
「カルロス・グリード! 僕の手でその首取らせてもらいます! この戦争を終わらせる為!(怖いけど)」
『ほう……』
斬りこむように飛び出していったリューイン・ランサード(竜の雛・f13950)にカルロスは動じないままメガリス『さまよえる舵輪』を取り出す。
『さまよえる舵輪よ、眼前の敵を駆逐する船を呼べ』
「――っ!」
現れた幽霊船から放たれる砲撃をリューインは飛翔して回避。空中を飛びながら砲撃をかいくぐり、避けられないものはフローティング・ビームシールドで防ぐ。
(さすがに、強い! でも、こんなところでやられたらひかるさんにも会わせる顔がない!)
最愛の恋人のことを思いつつ隙を窺うリューイン。だが、隙は全然ない。
――なら、こちらから強引に作るまでだ。
(僕だって、いつまでもヘタレてるわけじゃない!)
ジグザグに動いて残像を作り、砲撃や船員による攻撃を陽動。相手の攻撃が掠るも特に気にせず。
「やあああっ!」
そのまま聖属性の強制成仏魔法を幽霊船に打ち込む! ナムアミダブツ! おお、当たったゴーストシップは何が起こったかも理解できないまま光の粒となって消えていくではないか!
(この類って成功率低いことも多いけど、うまくいってよかった……)
安堵するリューイン。多少の傷は負ったが幽霊船を消し去った――あとは!
『なるほど、あれを消し去るか』
「カルロス!」
『良い目をしている。さあ、来るがいい』
高速で動きつつ空中からカルロスに大胆に正面から斬りかかるリューイン!
「ああ、ならそうさせてもらいます! ――『全てを斬り裂け!』」
『全てを斬り裂く、だと……? 得物もなしにか?』
カルロスは不思議がった。斬りかかるにしては得物がない。格闘か? いやなら斬るとか言わないはず……そも、なぜ空中から――?
だがその答えはすぐ分かった。
『――なるほど』
次元断裂。手刀で抉られた次元の狭間はカルロスの体をケーキにナイフを入れるかのように抉り取っていった。
「まだだ! 本命はあとに残すもの! 光の元素よ、僕に力を!」
『何!?』
素早くターンしたリューインはもう一度、今度は手に輝くエーテルソードを持ち迫る! そしてカルロスの身に、先ほどと合わせてX字の傷をつけた!
『ふふ……2筋も我に傷をつけるとは、なかなかに強気だな。汝もまた『強欲』と見える』
強気と言われた。オブリビオン・フォーミュラに。それは普段からヘタレと言われているが、今は少し勇気を出した自分にとってまたとない賞賛だった。
成功
🔵🔵🔴
藤原・忠重
【POW】
首のないダチョウのような形のキャバリアに搭乗して登場。
機体の【限界を突破】した【推力移動】で暴走するまま突撃、
鎖に絡み付かれようと自壊しながら引き千切り、突き進む。
「お前の征服欲と俺の殴打欲、どっちが勝るか」
振りかざすのはただ一念、目の前の敵をぶん殴る。
己がそれを欲するがために。ただ自尊心だけが純化する。
暫し暴れた後に機体が限界を迎え自爆、纏わりつく鎖を吹き飛ばす。
合わせてUC発動、爆風を【踏みつけ】【ジャンプ】し飛翔。
「勝負しようかッッ」
尚も行く手を阻む鎖はオーラの【誘導弾】で
進路をこじ開け、その隙間を掻い潜り敵へ肉薄。
全ての力を載せた【捨て身の一撃】を、欲の王へと突き立ててやる。
●全てはこの拳のために
次に現れたのはまるで首のないダチョウのような形をしたキャバリアだった――って完全に突撃してる! 一直線にカルロスをひき逃げしようとする心算だ!
『暴れる獣ほど御しやすいものはない。我らの業と宿命を代償に、鎖よ、彼の存在を喰らえ』
鉄鎖ドローミが突撃するキャバリアにクリーンヒット! キャバリアの動きが止まる。
『造作もない。このまま破壊してやろう』
鎖を引き、キャバリアを――あれ?
(なぜだ、軽い……?)
ハテナマークを浮かべたカルロスは次に自身に迫る気配と風圧を感じた。恐る恐る鎖を引き戻して先を見れば――カラン、という軽い音がし――
『何――!?』
なんと、鎖につないでいたはずのキャバリアはどこにもない!
『なら、この気配は――!』
そう、キャバリアが再びこっちに向かってきてる! なんか一部壊れてるけど!
「へっ、お前の征服欲と俺の殴打欲、どっちが勝るか――このキャバリアなんかどうせ使い捨てだからな!」
キャバリアの中に乗っていた藤原・忠重(じぶんだいじに・f28871)が笑みを浮かべる。そう、このキャバリア、使い捨て。というのもパワーとスピード強すぎてキャバリアの方がついていけてないのだ! 鎖も強引に引きちぎったのではなく、刺さった部分を犠牲にしただけに過ぎない!
振りかざすのはただ一念、目の前の敵をぶん殴る。
己がそれを欲するがために。ただ自尊心だけが純化する。
それがあってこそ他と真摯に向き合えると信じてやまないから。
『なれば拘束せよ!』
カルロスは引き戻した鉄鎖ドローミを今度は拘束するように放ち、はたしてそれはキャバリアを拘束して動けなくさせる。
『……全く、苦労させてくれる』
だが。むしろ拘束は好都合。
「……この辺が限界だな」
限界を迎えたキャバリアからバチバチと音がしたかと思えば大爆発!
『耐えきったか……』
自分の鎖も吹き飛ばされるが大したことではない。カルロスは仕留めたかのように背を向けて玉座へ向かった。
だが!
「まだまだシーンエンドにはしない! 勝負しようかッッ」
自爆した爆風の中から忠重が飛び出してきた! 鎖をオーラの弾で弾いた忠重、そのまま強烈な一撃をバックスタブでカルロスに与えに行く!
『中にいたのかっ!』
口から血を吐くカルロスが忠重をようやく見つめられた。
「ああ、これでも喰らいな、欲の王!」
大地に足をつけた忠重による相性、防御――そのすべてを無視した理屈を超えた全力の拳が、カルロスの腹に突き刺さる!
『ぐっ……があっ!』
その勢いに玉座まで吹き飛ばされ激突、へたれこむように座るカルロス。
――だが、それでもなおも立ち上がる気力は残されていた。
成功
🔵🔵🔴
リリスフィア・スターライト
アドリブ歓迎、苦戦描写OK
いよいよ決戦だね
反則級のメガリスばかりだけれど全力で挑むだけだね
空飛ぶ幽霊船を何とかしないとだけれど
力押しでは厳しいだろうしここは撹乱戦法で挑みたいかな
天体破局で太陽みたいに眩しい光を発生させて
敵船団の視界を奪うようにしたいかな
相手は幽霊だし光に弱いといいのだけれど
それでも攻撃を受けるようなら攻撃を耐えつつ
爆発や煙に紛れて狙いを付けさせないように立ち回るね
順調にかく乱できたならカルロスに接近して魔剣で斬り裂くよ
そうなれば船団も迂闊に攻撃できないだろうし、
簡単には離れるつもりはないよ
「沢山武器があると何を使うか迷っちゃうよね」
「目が眩んでいる隙に攻めるよ!」
●太陽を直接見てはいけません
「反則級のメガリスばかりだけれど全力で挑むだけだね――それにしても沢山武器があると何を使うか迷っちゃうよね」
リリスフィア・スターライト(プリズムジョーカー・f02074)はどこか目を輝かせながらカルロスに向き合う。
『そうか、ならばその反則級の力を見るがいい。さまよえる舵輪よ、眼前の敵を駆逐する船を呼べ』
「来たね……!」
現れた幽霊船を見て構えるリリスフィア。といっても力押しではさすがに難しいだろうと判断した彼女は1歩下がり呪文を詠唱。
「唸れ雷光、輝け太陽、混ざりて煌めき、視界を奪え!」
雷と太陽光を混ぜ、眩しい光を発生させる。これで幽霊たちの視界も奪えるし、もし相手が幽霊なら光に弱いと見れる――!
――が、このコード、いかんせん暴走しやすい!
「え、ちょっと、光が、強すぎ――っ!! 目が、目が――!」
生成まではうまくいった。が、制御に失敗して暴走し、辺り一面にまばゆい光をばらまくようになってしまったそれは、幽霊船の幽霊の視界を確かに奪ったが、『自分の視界も奪ってしまった』!
眩しさに目を押さえるリリスフィアにカルロスはため息。
『暴走したか……何しに来たのか、とまではいかないが……』
――あ、カルロスも目を押さえてる。
『……眩しすぎたぞ今のは……チカチカする……』
全員相討ちだー!?
「く、くっ、でも、これしき――!」
しかし全員光にやられている。当初の作戦とは違うがこれはこれでチャンス! リリスフィアは強行突破を狙う! 幽霊船から砲撃が飛ぶ中(視界がやられていて明後日の方向に飛ぶものも多い中)その爆発や煙に紛れて狙いをつけさせないリリスフィア。
「目が眩んでいる隙に攻めるよ!」
『汝も目が眩んでいるように見えるが……っ!』
鈍い感触がカルロスに走る。
「ふ、ふふ」
カルロスの体を斬りつける魔剣。だが――心臓を外した。目が眩んでたからか。ならばもう1回――というところで、リリスフィアの背中に衝撃が!
「なっ!?」
振り向いてみればクラクラする視界の中に幽霊船が! リリスフィアは幽霊船からのバックスタブの砲撃を受けたのだ!
「そうか、強行突破したから、挟み撃ち――!」
『どこを見ている? 目が眩んでいても目の前の敵を逃すほど弱くはない』
「っ! 幽霊船たちはカルロスがどうなってもいいのか!?」
このあたりもリリスフィアの作戦の一つだったが、攻撃を弱める様子はないようだ。
『奇遇にも汝が盾になっているようだな』
「――!」
カルロスの近接攻撃を素早くステップでかわすと、とりあえず自分が視界回復するまでひとまずカルロスと幽霊船から距離を置くことにした。
――幸い追撃はなかった。やはり自分が盾になってたから攻撃を躊躇しなかったのだろう。リリスフィアは軽く歯噛みした。
苦戦
🔵🔴🔴
マリン・フィニス
終の王笏……とうとう追い詰めたのだな。
……覚悟するがいい、偽りの支配者よ
奴のUCは命中さえさせなければ大きな脅威にはならないはず。
バブルワンドから発生させた触れると凍り付く《氷結属性》のバブルや、
自在に出し入れ可能な『アクアシールド』で《盾受け》し、鎖を絡ませようと試みるぞ。
初手を凌げればこちらもUC【インヴェイジョン・キャンサー】を使用、周囲の無機物を素材にカニを生み出し奴に嗾けつつ持てる手を全て使い仕掛ける
……もし鎖を凌ぎきれず捕らわれた時は、
メガリスの力で豪雨を降らせ目くらましにし、
体を液化させ鎧から抜け出し……声を変えてまで隠している鎧の中の「わたし」の姿を晒してでもせめて一撃狙います
●苦戦したと見せかけて
「終の王笏……とうとう追い詰めたのだな……覚悟するがいい、偽りの支配者よ」
『偽りの支配者とは、言うではないか。真の支配者が誰かもわからぬというのに』
マリン・フィニス(蒼海の騎士・f26997)がいきなり言葉を投げかけるもカルロスにはまるできいていない様子。
『我らの業と宿命を代償に、鎖よ、彼の存在を喰らえ』
(あの鎖か、命中さえさせなければ……!)
そう、カルロスが放った鉄鎖ドローミは当たらなければ大きな脅威にはならない。
……当たらなければね。鎧に当たらなければいい、そう考えたマリンはバブルワンドから泡を放てば、それが鉄鎖ドローミに命中、凍り付く。
『凍結か、その程度では止められないぞ』
凍ったくらい何のそのという風になおも動く鉄鎖ドローミ。今度はアクアシールドを取り出してそれにあえて突き刺さりを狙えば、果たしてその通りに盾に鉄鎖ドローミが突き刺さる。
(よし、うまくいった、あとは)
「メガリスの力を以て……来たれ、万物を侵食する大蟹の群れ達よ」
鉄鎖ドローミの刺さった盾を素材に大量のカニを生み出しカルロスに襲い掛からせるマリン。そして自分もバスタードソードを構えて突撃――
『その解放は悪手だったな』
「!?」
盾を素材にされて自由になった鉄鎖ドローミが再びマリンを襲う! 突然の攻撃にマリンも対処できず鎧に鉄鎖ドローミが刺さり捕まってしまう!
『カニ自体はなかなかやるものではある、が――術者さえやってしまえば恐れるものではない。このまま――』
――と、カルロスの顔に何かが落ちた。雨粒だ。
『――雨? 雨漏りでもしたか?』
ついカルロスが上を向けば――
『――ばかな』
なんと、王宮内が大雨ではないか! しかも視界が悪くなるほどの豪雨だ!
『こっちが本命だったとでもいうのか!? くっ』
その隙に地上のカニたちからの集中攻撃を喰らってしまうカルロス。大雨の中むしろ生き生きとしてるカニに蹂躙されるカルロス。
『ええい、術者を――』
と、鉄鎖ドローミを引っ張り――軽い。さっきほどではない、感触はあるが、なんか軽い。恐る恐る近づいて刺さった先、鎧を見れば――
『何!? この鎧――空だと!? では術者は――!?』
「ここだ」
凛とした風の声がカルロスの頭上からした。
直後、カルロスの脳天に響く斬撃の痛み――!
「まさか『わたし』を晒すことになるとは思わなかったぞ――この姿を見られたからには死んでもらう。声を変えてまで隠しているからな」
雨の中にふと見える、水と化した何か――
『――セイレーンか!』
そう、マリンはセイレーンの力で体を液化させ鎧から脱出、鎧の効果で豪雨を振らせてその中に擬態したのだ。バスタードソードだけ隠せていなかったが、豪雨による目くらましがうまくいったようで。
「貴様を倒す理由がまた一つできたな」
『――くっ、カニどもにセイレーンに――なっ、向こうにいるのは鮫か!?』
遠くを見れば鮫のような何かがこちらに迫っており。
「サメットのことか? ああ、今ではわたしの忠実なしもべだ。さて、遺言はそれで十分か?」
『――』
カルロスは歯噛みした。さすがに相手が液体では鉄鎖ドローミもうまく刺さらないだろう、というか下手すると錆びる。メンツも向こうの方が圧倒的に上だ。動こうにも動けず、後ずさりするしかなかった。
成功
🔵🔵🔴
伊高・鷹介
ドロレス(f12180)と共に
・ハ、ようやく分身体じゃない本体に出会えたか。何回復活できるか知らねぇが、ここで残機を1つ減らさせてもらうぜ。
・先制攻撃対策:先んじて幽霊船を召喚か。海賊の数は多いが、船に乗ってるのが災いしたな。「念動力」を全開にして幽霊船の周囲に力場を展開して収束。UCほどじゃないが、その行動を船ごと制限してやるぜ。
・その後は「一時停止」で幽霊船とカルロスの動きを可能な限り押し止め、ドロレスが防御を気にせずに攻撃できるよう力を尽くす。戦闘行動が終わった後にぶっ倒れても構わねぇよ……そのくらいで凌げる射相手だしな。
・アドリブ歓迎。ドロレスの事はディーの愛称で呼びます。
ドロレス・コスタクルタ
鷹介さん(f23926)と共に。彼のことは「シェロ」と呼びます。
「これで本当に最後ですね。骸の海へ還りなさい!」
鷹介さんの前にビームシールドを構えて立つ。
放たれるメガリス攻撃を【盾受け、リミッター解除、限界突破】で
ビーム展開量を増やして防御力を上げ2人を守る。
先制の一撃さえ凌げばビームシールドが焼き付いても構わない。
「吶喊します!」
二丁拳銃を構えカルロスの懐に飛び込む。
射撃の反動を利用したトリッキーな動きと
銃を鈍器として扱い殴りつける格闘と
零距離から放つ銃撃の連続攻撃を、
鷹介さんの援護を受けながら流れるように連続で叩き込む。
戦闘後は鷹介さんを膝枕しながら目覚めるのを待つ。
「お目覚めですか?」
紫・藍
藍ちゃんくんでっすよー!
乗り込んだは良いものの、居並ぶ幽霊船を前に絶賛逃走中の藍ちゃんくんなのでっす!
あややや、流石に多すぎるのでっす!
演技なのでっすが先制攻撃には逃げるが勝ちは本当なのでっすよ?
逃げ切れぬ分はオーラで防ぎつつ時間稼ぎ!
ちょこまか逃げる藍ちゃんくんの大声と存在感で自然と挑発して誘い込みつつ、地形を利用し部屋の角に追い詰められたようにおびき寄せ!
そこからは藍ちゃんくんのダンスなのでっす!
幽霊船や幽霊たちを派手に踊らせぶつけ合ったり、藍砲撃をあらぬ方向へと飛ばしたりととにかく同士討ちさせるのでっす!
おびき寄せて密集してるでしょうから!
王宮もカルロスも派手に巻き込んじゃうのでっす!
ラモート・レーパー
「狩猟武器じゃないから扱うのは苦手なんだけど」
お姉さんの姿で戦う
UC対策
???で生成した短機関銃二丁を武器に乱射。跳弾も含めた弾幕で戦場を埋め尽くす。適当撃ちだから自分にも当たるだろうけど死の概念であることと激痛耐性で我慢。
UCが発動出来るようになったらグリード当人とコストに使われるメガリスに対して発動。
破損度合いがメガリスであるかの境界線であるかは知らないけど、何かの拍子にメガリスが壊れたり消えちゃったりするかもしれないし?
●そして崩壊へ
豪雨の降る中あるセイレーンが呼んだ大量の存在、それに歯噛みするカルロス。だが――悲劇はこれだけでは終わらない。
「ハ、ようやく分身体じゃない本体に出会えたか。何回復活できるか知らねぇが、ここで残機を1つ減らさせてもらうぜ」
「これで本当に最後ですね。骸の海へ還りなさい!」
伊高・鷹介(ディフェクティブ・f23926)とドロレス・コスタクルタ(ルビーレッド・f12180)のコンビというかカップルが揃ってカルロスに人差し指を向けていた。
『汝ら……! ふふ、だがこれは好都合だろう』
力を振り絞り、カルロスが舵輪を構える――!
『さまよえる舵輪よ、眼前の敵を駆逐する船を呼べ!』
その言葉と共に数多の幽霊船がカルロスの眼前に現れれば即座に砲撃でカニや鮫を一掃。
「シェロ、わたくしの後ろに!」
ドロレスがビームシールドを構えて幽霊船の目前に立つ。
幽霊船は容赦なく砲撃を放っていくが、それをビームシールドの出力を上げて全て受け止めていく。
焼き付いても構わない、シェロが守れるならそれでいい。
「ふん、海賊の数も多い――が、船に乗ってるのが災いしたな」
鷹介が念動力を強め、幽霊船の周囲に力場を展開して収束すれば海賊たちがそれに引き寄せられ、船も動きが緩やかになる。
「ディー、好きなタイミングでいいからな」
「わかっていますわ。ただ――」
「どうした?」
ドロレスが守りつつもどこか不審がる。
「気のせいでしょうか、どこかから声が聞こえるような――」
――ぁぁぁぁぁややや――
「あ? 海賊どもの声じゃないのか? あるいはカルロスの」
「いえ、そうじゃなくてこれは――」
「――ぁぁぁああややややーー! 助けてほしいのですー!!」
え、幽霊船の方から――この声、まさか藍ちゃんくんこと紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)!?
「はい、みんなの藍ちゃんくん――ってそんな場合じゃないのです!」
「ディー、知ってるか?」
「いえ、知らないわ、シェロ」
「知らないなら教えてあげるのでっす! 藍ちゃんくんは」
「あーいい、喋るな、集中が乱れる。逃げてきたなら適当にディーの後ろにいろ」
「なんと藍ちゃんくんにサイレントでバックダンサーを!? 藍ちゃんくんもメインに立ちたいのです!」
『猟兵共が増えたか……だがこちらの優位に変わりはない』
幽霊船の後ろでカルロスは雨に濡れながら息を整える。
『動けなくするのが場所によるものなら、数を増やせば良い』
さまよえる舵輪が再び幽霊船を大量に召喚する――!
「――くっ、そろそろきついか?」
「えっ、どうしましたのシェロ?」
「ディー、わかるだろう……敵の攻撃が激しくなっている」
「ええ、ビームシールドの出力を上げてオーバーヒート覚悟で――まさか?」
「ああ、そのまさかだ。奴め、『増援を呼びやがった』。こうなると、俺の力場だけじゃもうキチぃ……数で押されて力場の範囲を突破される……」
「シェロ……くっ、でも確かにこのままではジリ貧ですわね……」
「んー……じゃあ、藍ちゃんくんが一芝居うつのでっす」
2人の視線が藍ちゃんくんの方を向く。
「要は幽霊船の数をどうにかすればいいのでっすよね?」
「そうだが――?」
「任せるのでっす! お二人はそこで観客としてソーシャルディスタンス守って見ててほしいのでっすよー!」
言うや否やカルロスの方に駆けだす藍ちゃんくん。
「カルロス、覚――あややや、跳び出したはいいけど流石に幽霊船が多すぎるのでっす!」
『我を討とうとしてこの数に怯えたか。想定外だったと見える』
藍ちゃんくんが大声で泣きながら部屋の隅に駆け込むのを見てカルロスがニヤリ顔をする。
「何しているんだあいつ……」
「でもシェロ、狙いが向こうにそれたわ。今のうちに」
ビームシールドの整備と精神の整えを行う2人と対照的に藍ちゃんくんは怯えたように部屋の隅にいる。
「あややや、もう終わりでっすか……?」
『下手に出たのが災いしたな、猟兵よ――では』
「そうでっすね――下手に出たのはマズかったです。なので」
パチン、と指を鳴らして藍ちゃんくんがほほ笑む。
「どうせ死ぬならここで踊っちゃうのでっす!」
藍ちゃんくん、なんかいきなりダンスを始めたぞ!?
「それでは皆様、ご一緒に! レッツ・ダンシングなのでっすよー!」
「ダンスだと? そんなんするため――」
「シェロ、見て!」
二人も驚いた光景。それは――
『なっ、ついつられて体が動いてしまうぞ!?』
「ふっふっふ、一緒に踊る皆様の動きを見て微調整を常に加えてくのがポイントなのでっすよー! ほら、幽霊船の皆さんもご一緒にー!」
『巻き込むな! 幽霊共、何をしている!』
『イェーイ!』
『何乗り気で舵輪回している! 何乗り気で船動かしてる! 何乗り気で大砲明後日の方向に撃っている!』
『お頭が踊っているもんでつい』
『汝らーー!』
完全にペースが藍ちゃんくんに乗っ取られてしまった。幽霊船はあられもない方向に動いては激突し密になり、大砲があらぬ場所に撃たれては王宮に響く。もう藍ちゃんくんをやろうと統率が取れていたのはどこへやら。ついでにカルロスも踊っているしなんなら無差別な砲撃に何度か当たりかけてる! そう、これが藍ちゃんくんの作戦だったのだ!
「それではここで――」
と、藍ちゃんくんがひときわ大声を出す。
「スペシャルサプライズゲスト2名の登場なのでっすー!」
ウインクをして見せる藍ちゃんくん。もちろんその相手とは――
「あんがとよ。おかげでだいぶ回復できた」
鷹介と――
「ビームシールドもいい感じですわ。よくやってくれましたね」
ドロレスの2名だ!
「こんだけ密なら数多くてもいける――!」
空間すら捻じ曲げるひときわ強い念動力が幽霊船たちを押しとどめる!
「ディー! いけぇ! 俺はぶっ倒れても構わねえ! これくらいで済むなら――いや、この機会を逃すほかはねえ!」
「シェロ――」
滝のように汗をかいてはそれが雨で洗い流されるのを見るドロレス。ひとつ息を吐くと、
「吶喊します!」
二丁拳銃を構え踊っているカルロスに跳びこんでいく!
「戦況を確認………完了。物理演算開始。コード入力『EC-10-044!』
――さぁ、わたくしと一緒に踊りましょう、カルロス?」
射撃と体術の融合、それを用いた情熱的で殺伐としたダンスがカルロスに繰り広げられる。カルロスに銃撃が放たれればその反動を使い体を1回転させ銃身で殴り、そのままもう片方の銃身で殴ればもう片方の銃で零距離の銃撃。怒涛の攻撃はまさにダンスを踊っているようだった。カルロスに傷をつける、激しいダンスを。
『くっ、ペースが――』
「おおっとまだダンスパーティーは終わってないのでっすよー? 途中退場は認められてないのでっす!」
藍ちゃんくんが踊る限りカルロスもうまく動けない。それは図らずもドロレスの支援になっていた。
――だが、宴もたけなわ。何かが壊れる音がした。
『――なんだ? この音は?』
カルロスが踊らされながら音のした方を見てみれば、王宮の壁の一部が壊れ、そしてそこから崩れて――!
『わ、我が王宮が!?』
そう、幽霊船たちがしっちゃかめっちゃかに砲撃したから王宮めっちゃダメージ受けて、今まさに崩壊しようとしているのだ!
「おい! 一つしかけるぞ!」
それを見た鷹介から声が飛ぶ。
「俺が今からこいつらを落とす! ディー、その隙に仕留めろ!」
「わかったわ、シェロ」
「藍ちゃんくんはこれで終わりのつもりでしたがー、アンコールをご所望で?」
「お前はそのままこっち戻ってこい!」
「オッケーなのでっす!」
鷹介が念動力を集中させ――
『やらせるか――!』
カルロスが鷹介の方を向く――が!
「力場、全開! 落ちろぉぉぉぉ!!!」
――ズガガガガガ!!
鷹介の力場により、あれだけいた幽霊船たちが、全て墜落してペシャンコにされていくではないか! 王宮の幽霊船に支えられて崩壊を免れていた部分も崩壊していく! 雨と共にがれきが降り注ぐ!
『汝――!』
「あなたの相手はわたくしです!」
ドロレスが素早くカルロスにバックスタブをし、怒涛の連撃を浴びせればトドメに二丁拳銃の銃口を頭と胸にそれぞれ向ける。
「これで――フィニッシュ!」
銃声。頭と胸を撃ちぬいたその弾丸に、カルロスはついに倒れこむ。
『我が――我が、敗れる、だと――!?』
「ディー、はや……く……」
「シェロ!」
「あややや、サプライズゲストが倒れては責任問題なのでっす!」
藍ちゃんくんに寄りかかるように倒れた鷹介にドロレスが駆けよれば二人で目くばせ。すぐに二人で鷹介を持って王宮から脱出していった。
『待て! 待て――くっ』
手を伸ばすも体が動かない。もう、限界か――
『汝ら――』
言葉の先も聞こえないまま、カルロスを残し王宮は崩壊していった。
●
「――ん――」
鷹介が目を覚ますと、そこは先程とは打って変わった青空。太陽がまぶしいほどだった。
「お目覚めですか?」
顔を横にすればドロレスが膝枕しているようだ。ふと顔がほころぶ。
「ああ……やったな、ディー」
「ええ、無事でよかったです、シェロ」
鷹介は起き上がると王宮だったものの方を見つめる。
「……カルロスは」
「やったと信じましょう。わたしが確かに片をつけたつもりなので。頭と胸に当てたので」
「……そうかよ」
微笑みあう2人――
「おおー、熱いのです。これは藍ちゃんくんも茶化すわけにはいかないのでっす」
その場にいた藍ちゃんくんは少し距離を取れば一つのびをし。
「じゃあせっかく海があるでっすし――叫ぶでっすよー!」
「あ、それならわたくしも」
「俺も」
「あやややや」
邪魔しちゃ悪いと思って離れたはずなのになんだかんだ揃ってしまった3人。笑い合うと海に向かって一つ叫んだ。
果たして何を叫んだのか、それは、彼らだけの秘密――
●
『ぐ……ぐぅ……』
崩壊した王宮の中、カルロスは瓦礫だらけの中目覚めた。満身創痍だがまだ死んではいなかった。
「お目覚めかな?」
そんなカルロスを膝枕――してないけどそういう感じに覗き込んだのはラモート・レーパー(生きた概念・f03606)。
『猟兵……! まだ……ぐっ』
胸を押さえるカルロス。
「あなたの死神でーすっ☆」
ラモートがカルロスに無邪気な笑みを浮かべる。その恰好こそお姉さんっぽいものだが。
『死神、だと……! まだだ、まだ我は――!』
震える手でカルロスはオーシャンオーブを取る。それはまだ見せてなかったメガリス――王宮にある大量のメガリスを代償にし、あらゆる行動に成功する代物――
『目覚めろ、オーシャンオーブ!』
「あー、抵抗するんだ……」
ラモートがあきれつつ短機関銃二丁を構えれば乱射する。瓦礫に当たり、跳弾がどこかへ向かう。自分にも当たるがまるでそれを意にも介さないように。
「んー、狩猟武器じゃないから扱うのは苦手なんだけど……これ」
『……は、はははは』
乾いた笑いがカルロスから零れる。
『そのような慣れていない武器で向かうとは、死神もずいぶん舐めたことをしてくれる。なら我はここで汝を倒し、死の運命を』
「凌駕させるつもりはないよ?」
クスクス笑いながらカルロスを銃身でつんつんするラモート。まるで無邪気な子供のよう。しかもまだ乱射してるから銃撃しっかり零距離で当たってるし。
『言っていられるのも今のうちだ――オーシャンオーブ、我に――再び戦う力を! 猟兵共に一矢報いる力を!』
オーシャンオーブが輝き、その力が放たれる――!
――と思いきや、光は治まった。
『――?』
ならカルロスは元気に自分の体が動けるようになったかというと――
『ぐっ――がはっ! なぜ……なぜだ!』
即血を吐くカルロス。全然ダメ。発動に失敗した――!
『なぜだ、オーシャンオーブは起動したはずだ! なぜ!』
「うんうん、発動できたみたいだね。でも、良好は不調の前兆だよ」
ラモートが子供のように微笑む。――オーシャンオーブが発動しなかったのはラモートのコードの力だ。カルロスのコードに後出しする形で発動したそのコードは――『敵にとっては不幸な出来事』を起こすこと! まさに天敵!
『なぜだ、王宮にまだメガリスは大量にあるはずだ! なのに、なぜ!』
「うん、あったんだろうね。でも」
ラモートが奥の方を見る。
「破損度合いがメガリスであるかの境界線であるかは知らないけど、もしかしたら――『何かの拍子に』メガリスが『壊れた』り、あるいは『消えちゃった』りするかもしれないし――ね?」
クスクスと笑みを浮かべるラモートにカルロスは全てを察した。そうか、やたらめったらな攻撃と見せかけて、まさか――!
『汝――!』
思わずラモートに掴み掛るカルロス。が――ドクン、と一つカルロスに痙攣が走る。
『うっ――ぐ――』
そのまま胸を押さえ前のめりに倒れるカルロス。
「あーあ、そんなに動くからだよ。そんな満身創痍なときに頭に血上らせて激しく動いたら――そりゃ、『死』まで一直線だよね?」
――ついでにカルロスは見誤っている。銃撃もそうだが、ラモートのコード――不吉を与えるそれも、銃撃を介してメガリスに与えている。そして、コードはカルロス本人にもかけている――この状況でカルロスにとっての不幸、つまり――
――ラモートは冷たくなったカルロスの手を触りうんうん、とうなずくと、膝枕して耳元に囁く。
「死の概念、肉体の冥界として汝に『死』を与えよう。地獄まで1名様ご案なーいっ♪」
ブラックアウトした意識に、優しくその言葉が聞こえた。
それが、カルロス・グリードの最期だった。
――『王笏』カルロス・グリードは、ここに死んだ。
征服者たちの征服はじきに止むことだろう。
海は再び静けさを取り戻し、海賊たちを、猟兵たちを、優しく迎えてくれる。
――錨を上げろ。帆を張れ。
不確かな未来への希望を乗せ、今日も大海原へと船は出航する。
成功
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