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羅針盤戦争〜迷うな、心のままに征け

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #七大海嘯 #フライング・ダッチマン #鬼火島

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●亡者の王
 亡者の魂が喚いている。
 生者を喰わせろ、生者を喰わせろ、生者を喰わせろ――と。
 耳を傾けぬつもりでいたフライング・ダッチマンだが、空を飛び回る愛鳥ゼンタが急にひゅんと進路を変え、まるで墜落するかのように降りてきた。
「どうした、ゼンタよ……風でも変わったか?」
 愛鳥は地面すれすれで宙に反転しながら、ようやくフライング・ダッチマンの肩まで戻ってきた。ぴぃと一声鳴いて空を見上げる。
「まさか、いや、そうか……クク」
 込み上げる歓喜を抑え込むように笑う。幽霊船は島の周囲に散りばめておいたが、それを掻い潜り「奴ら」はこの島に乗り込んできた。
「今日は良い日だ……あぁ『お前達』、お待ちかねの生者が来たぞ。ククッ……クカカカ、辿り着いたか猟兵共よ。わが鬼火島……存分に楽しめ! そして亡者の贄となるがいい!」

●過酷な鬼火島ツアー
「鬼火島へ乗り込みましょう!」
 ロザリア・ムーンドロップ(薔薇十字と月夜の雫・f00270)が案内するのは、幽霊船の先の先。フライング・ダッチマンが本拠地とする鬼火島だ。
 七大海嘯の拠点。それは当然ながら直接対決を挑むことになるわけで、ロザリアはグリモアベースで勇猛な仲間を探していた。
「皆さんの頑張りのお陰で、フライング・ダッチマンの本拠地である鬼火島の位置が判明しました! よってこれから行う作戦は、打倒フライング・ダッチマン! です!」
 他の拠点も次々見つかり、戦争は中盤から終盤へと差し掛かるところ。戦争そのものの勝利は不可欠だが、その中で他の勢力を叩いておくのも悪くはないだろう。
「フライング・ダッチマンについてですが、なんと『何度殺されても瞬時に蘇生する』ユーベルコードを持っていることがわかりました! これを使われては絶対に倒せないのですが、一つだけこのユーベルコードを打ち破る方法があります! それは『迷いなき心』を見せること……皆さんの心が、フライング・ダッチマンを討つ刃になるんです!」
 何かに向かって愚直なまでに突き進む精神、何があっても決して曲げることのない信念。猟兵の強き心が求められる。
「また、フライング・ダッチマンは強敵で、必ず先制攻撃でユーベルコードを使ってきます! それに対処する方法も大事ですね! 何も用意が無いと、為す術なくやられてしまう、なんてことも十分起こり得ると思います!」
 攻略法は暴かれているが、七大海嘯は伊達ではない。油断は即敗北に繋がる。
「また、ここでフライング・ダッチマンを倒すことができれば、支配下となっている島を一つ、解放することができるようですね。まだ本拠地が分かっていないものもありますから、ここで倒すことは大きな意味を持ってくるかと思います」
 特に王笏の島は戦争の勝敗に直結するもの。是が非でも見つけなければならない。
「この戦争を少しでも良い形で終わらせられるよう、頑張りましょう!」


沙雪海都
 沙雪海都(さゆきかいと)です。
 戦争ももう残り3分の1なんですねえ……。

●フラグメント詳細
 第1章:ボス戦『七大海嘯『鬼火』フライング・ダッチマン』
 大切なことは二つです。【迷いなき心】を見せること。そして【先制攻撃ユーベルコード】に対処すること。
 この二点を考慮していれば何とかなるかもしれないし、何とかならないかもしれません。
 そこはまあ、皆さんの頑張りと時の運です。

●MSのキャパシティ
 戦争ということもありますので、全てのプレイングを採用することが難しい場合も出てくるかもしれません。
 その際はご容赦頂きたく、また戦争期間中はシナリオ運営を継続して参りますので、採用に繋がらなかった方については次の機会をお待ちいただければ幸いです。

 合わせプレイングはお受けできません。申し訳ないです。
 でも複数採用リプレイとかは気まぐれで書いたりするのでソロ希望の方は明記しておいてください。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『七大海嘯『鬼火』フライング・ダッチマン』

POW   :    鎖付き骸球
【『燃え盛る邪悪な魂』の集合体である骸球】が命中した対象を燃やす。放たれた【骸球の『口』から溢れ出す】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    ブルーフレイムカトラス
自身に【怨念の青き炎】をまとい、高速移動と【カトラスからの青炎】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    冥鳥の羽ばたき
【飛び回る愛鳥ゼンタが青炎の羽】を降らせる事で、戦場全体が【生者を蝕む青き炎の海】と同じ環境に変化する。[生者を蝕む青き炎の海]に適応した者の行動成功率が上昇する。

イラスト:爪尾

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フェルト・ユメノアール
ボクの決意、迷いなき心
そんなのはあの日から決まっている
それは世界中のみんなを笑顔にする事!

戦闘開始と同時に後ろに飛び退いて炎を避けつつ『トリックスターを投擲』
相手の狙いを逸らして攻撃を回避し
さらに高速移動で接近してきた相手に向けて白鳩姿の『ハートロッド』を放ち、行動を妨害した所でUCを発動

混沌を纏いし勝利の化身よ!数多の想いを胸に、煌めく舞台へ駆け上がれ!
カモン!【SPクラウンジョーカー】!
この瞬間、クラウンジョーカーの効果発動!

このユニットの攻撃時、キミが傷付けてきた人たちの怒りを戦闘力に変換して自分の戦闘力に加える事ができる!
レイジングチャージ!
みんなの笑顔を守る、その為にボクは戦うんだ!



●自分の笑顔、みんなの笑顔
 いつだって忘れたことは無い。
 自らがすべきこと、それはあの時、決意した。
(ボクの決意、迷いなき心――それは世界中のみんなを笑顔にする事!)
 心から笑える世界に。それでこそ、フェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)の道化の芸が生きるというもの。
「生者を喰らえ、わが炎よ!」
 フライング・ダッチマンはカトラスを虚空に突き出す。体から湧き上がる青炎がすらりと長く伸びた刀身に沿って地上を焼き払うように走っていくのを、フェルトはさっと後ろへ飛び退いて避けながら「トリックスター」と呼ばれる投擲用のダガーを放った。
「逃げるか、猟兵!」
 フェルトの動きを見て、フライング・ダッチマンは口から青炎を吐き出し叫びながら迫ってくる。ダガーは真正面から見れば針のように細いものだが、フライング・ダッチマンはカトラスを振り回し正確に打ち落としていた。
「逃げるわけ、ないよ!」
 速度ではフライング・ダッチマンに分があり、フェルトは瞬く間に詰め寄られる。そこへ用意するのは白鳩姿の「ハートロッド」だ。ばさばさとフェルトの手から飛び立てば、接近するフライング・ダッチマンへの一瞬の目くらましになるか――。
 だがフライング・ダッチマンは構わず突っ込んできた。青き炎を纏った姿だ。触れればダメージを受けるのは相手。ぶつかったところで小鳩ごとき、大した痛手でもない。
 白鳩はすいっと空に逃げる。フライング・ダッチマンは止まらない。フェルトは間髪入れず次の手へ動くしかない。
『混沌を纏いし勝利の化身よ! 数多の想いを胸に、煌めく舞台へ駆け上がれ! カモン! SPクラウンジョーカー!』
 フェルトの頭上に召喚されたのは黒衣の道化師。ジョーカーの名の如く、手には大鎌を持っていた。
「このユニットの攻撃時、キミが傷付けてきた人たちの怒りを戦闘力に変換して自分の戦闘力に加える事ができる!」
「ならば見せてみよ! その力!」
「いいよ! レイジングチャージ!」
 フェルトは燃え盛り輝くフライング・ダッチマンを前にしても決して目を逸らさない。皆の笑顔を守るという、決意があるから――。
 立ち止まり、攻撃指示を出すように右腕を振ると、黒衣の道化師が大鎌を振り下ろした。それに合わせてフライング・ダッチマンがカトラスを振り上げ、空中でぶつかり火花を散らす。
 フライング・ダッチマンにより傷つけられた者達の怒りが今、跳ね返るようにフライング・ダッチマンへ襲い掛かっている。それはフライング・ダッチマンを押し留めるほどに強く。
「これが……われが傷つけてきた者共の怒りか……クカカカ、『この程度』か」
 だが、互角に見えた力の衝突が、じわり、じわりと道化師側へ押し込まれていく。それはまるで道化師すら弄ぶような挙動。全力を出せば一瞬で覆るものを、わざわざ拮抗させ、相手の力を楽しんでいる。
 道化師の存在を維持するフェルトは歯を食いしばって耐えていた。非常に高い集中力を要する。力が発散してしまえば、そのまま即座に斬られてしまう。
(このままじゃダメ――みんなの笑顔を守る、その為にボクは戦うんだ!)
 フェルトは無理矢理口角を上げて笑顔を見せた。戦闘中に、それも苦境に立たされた状況で笑うなど正気を疑われるかもしれないが、フェルトにとって笑うことには意味がある。
 道化師が笑わずして、誰が笑うか――。
「……猟兵、お前も底力を残していたか」
 一段、道化師の大鎌が重くなった。蘇生という絶対のユーベルコードを打ち破る力を宿して。
 そしてついに、長く続いた力の削り合いに終止符を打たれる。フライング・ダッチマンが振り下ろされる大鎌の下へ滑るように入り込んできた。大鎌の餌食――だが、振り切られる前に相手そのものを斬り捨ててしまえばよいと。自由となったカトラスが水平に走る。
 大鎌の刃がフライング・ダッチマンの肩口に食い込んだ。しかしそれは地面まで振り下ろされることはなく。
「――っぐぅっ!」
 道化師諸共、フェルトを斬る。咄嗟に身を守らねばならず、その瞬間召喚された道化師は消えていた。
 身を守った両腕を渡るように裂傷が刻まれ、鮮血が飛ぶ。痛み分け――と言うには少々フェルトの傷が重く、フライング・ダッチマンはフェルトのお株を奪うように笑っていた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

シリン・カービン
【WIZ】
弓では無く銃を得物とし、獣では無くオブリビオンを獲物とする
猟兵となってからも、何ら変わることはない。
一度獲物と定めた相手は、必ず狩る。
「あなたは、私の獲物」

飛び回るゼンタを威嚇射撃で誘導。羽を降らせる場所を限定します。
さらに風の精霊に呼びかけて羽を吹き集め、氷の精霊弾で凍らせて破壊します。

【シャドウ・ダブル】を発動。
鬼火が動揺している隙に影を死角に放ちます。
私が鬼火を狙撃し、こちらに注意が向いたら影が鳥を狙撃。
鬼火が鳥に注意を向けたら私が鬼火を狙撃、と交互に攻撃を繰り替えします。
鬼火が私と影のどちらかを攻撃する際はもう片方が射撃で攻撃を妨害。
焦れて隙が出来たら、二人同時攻撃で止めを。



●狩りの精神
 シリン・カービン(緑の狩り人・f04146)は弓の代わりに銃を取り、獣の代わりにオブリビオンを追った。
 たったそれだけのこと。猟兵となった今でも、何ら変わることはない。
 一度獲物と定めた相手は、必ず狩る。それはある種の信念のようなものであり、シリンが抱く、迷わぬ心。
「あなたは、私の獲物」
「『獲物』と来たか……笑わせてくれる!」
 フライング・ダッチマンは空へ愛鳥ゼンタを放つ。飛び回ろうとするが、その行く先をシリンの猟銃が狙っていた。
 ダン、ダンと放たれるはゼンタを掠めるか、というところへ跳んで威嚇する。自由な鳥も猟銃に狙われては逃げ回るしかなく、不自然な軌跡を描きながら青炎の羽を降らせていた。
 舞い落ちる羽。その範囲はシリンの想定内。
「風よ」
 呼び起こすは風の精霊。その力でふわりと軽い羽を宙に集めると、猟銃の弾丸を氷の精霊弾で一発、撃ち抜いた。
 命中の瞬間、炎が凍り付き氷塊となった。澄んだ氷の中に閉じ込められた青炎がごとりと地面に落ちて転がる。
「ぬぅ、ゼンタを封じるか――」
「言ったでしょう……『あなた』は、私の獲物だと」
 フライング・ダッチマンがシリンとゼンタの攻防に気を取られているうちに、シリンは自らの影をその背後に放っていた。ゼンタの動きを気にしていた分、足元は疎かになり影を送り込みやすかった。
 正面から銃声が轟く。それはフライング・ダッチマンを狙ったものだった。しかしさすがに正面の狙撃はカトラスの刃面で受けた。
「あくまでも狙いはわれ――」
「――だけ、とでも思いましたか?」
 再び銃声。背後からだ。フライング・ダッチマンは急反転したが、銃弾の狙いはゼンタ。今度はゼンタそのものを撃ち落とすように狙われ、広げたゼンタの翼の先が虫食いのように千切れていた。
「どちらも『狩る』か――その意気、見事だがさせぬわ!」
 影は何らかの術の類、そう判断したフライング・ダッチマンは術者であるシリンを狙い接近する。炎を全身に纏っていた時ほどではないが、その瞬発力、反応速度もなかなかのもの。
 だが、シリンの狙い時はまさにその瞬間。影が音無く銃口をフライング・ダッチマンへと切り替え発砲。音、そして気配を感じてフライング・ダッチマンは反転、今度は向かってくる銃弾をカトラスで斬り落とすが、その瞬間にシリンが背後を狙撃した。
「ちぃ、やかましい!」
 交互に背後から狙撃されるため、さすがのフライング・ダッチマンも少々苛立ちを見せる。その感情の変化が挙動となって現れた時が決め所。
 タイミングは計るまでもない。自身と同じ影ならば、その瞬間は必ず分かる。
 同時に発射された弾丸がフライング・ダッチマンを挟むようにして撃ち込まれる。一太刀では前後から来る二つの弾丸を対処しきれない。
「がっ……ぐぉぅ……」
 背中から飛び込んだ弾丸が腹から射出され、ベルトについた錨の装飾が弾き飛ばされる。
 できた空洞には炎が流れ込み、滑稽な青い図星となった。

成功 🔵​🔵​🔴​

クロス・シュバルツ
アドリブ、連携可

無敵、増殖、蘇る……今回そのような敵が多くありませんか?
まあ、今回の相手はまだ解りやすいほうかもしれません
ただ真っ直ぐに、ぶつかりましょう

先制攻撃、炎の海には『オーラ防御』に『環境耐性』で炎熱のダメージを軽減
だが、長時間は持たないだろうから短期決戦を狙う

UCを発動し、闇の回廊から銀の短剣を取り出し右手に持っておく
貴方は長く彷徨いすぎたようですから、もう眠るべきでしょう。その旅の道標を此処に

『ダッシュ』で接近、左手に持つ黒剣とカトラスで暫し切り結んだ所で『不意打ち』で黒剣を『投擲』して敵の『体勢を崩す』
隙が出来たところで迷いなく、心臓があるだろう位置に銀の短刀を突き立てる



●迷いなし、は迷いなきか?
 無敵だの増殖だの蘇るだの。
 猟兵達が相手をする七大海嘯とは実に厄介な敵が多い。
 その中では、蘇生の力を持つフライング・ダッチマンはまだ分かりやすいほうなのかもしれない。
 ただ真っ直ぐぶつかればいい。クロス・シュバルツ(血と昏闇・f04034)は炎の海の中を駆けていた。
 ゼンタは今度こそ羽を戦場全体に散らして生者を蝕む環境を作り出す。炎は炎でも異質の炎。青い戦場をクロスはオーラによる防御と環境への耐性で抜けようとしていた。
 全てを防ぎ切れるわけではない――それは百も承知だ。故にクロスは短期決戦に打って出る。
『闇より出でし魔の凶刃――これを、あなたの死出の道標に捧げよう』
 闇の回廊から引きずり出した銀の短剣を右手に。そして黒剣は左手に。接近戦となればフライング・ダッチマンの左手に存在するカトラスは脅威だ。それを退ける黒刃を手にして肉薄する。
「われに剣で挑むか。猟兵、どこまで耐えられるか見せてみよ!」
 フライング・ダッチマンはカトラスを掲げて待ち構えていた。そこへ裏をかくでもなく、クロスは正面から薙ぎ払う。カンと金属特有の高音が耳朶を打った。
 己の内、だが内臓とも違う。言わば魂を焼かれるような熱に息苦しさを感じる。その中で剣を振り回すのは辛くもあるが、クロスは攻めを切らさない。左に振り抜いた後は翻して右へ、そしてまた翻して左へと連続で斬りかかる。それをフライング・ダッチマンは一歩ずつ下がりながらカトラスで受け流し、防戦を続ける。
 圧倒しているようにも見える。あと一歩踏み込めば刃が届くか、というところ。しかしクロスの狙いは黒剣を届かせることではない。
「貴方は長く彷徨いすぎたようですから、もう眠るべきでしょう」
「……む?」
 振り上げから、8の字を描くように剣を引き戻し、また斬りつけてくるかとフライング・ダッチマンが構えたところへ、クロスは唐突に黒剣を顔目掛けて投擲した。決して投擲向きの形状ではないが、刃は真っ直ぐに顔面へと向かっていた。
 フライング・ダッチマンは咄嗟に体を引き、仰け反るように黒剣を回避した。その体勢を崩した瞬間こそクロスが本当に狙う一撃が放たれる時。
 右手に握り込んだ短剣を、フライング・ダッチマンの胸元、最も青き炎が輝く場所へ、ズン、と深く突き立てた。
「んぐぅ!?」
 衝撃に一歩、二歩よろめくフライング・ダッチマン。短剣をさらに強く突き立てんと押し込むクロスの腕を、フライング・ダッチマンの震える右手が掴み取る。
「……刃は届いたか? 猟兵よ」
 低く重い声が響く。フライング・ダッチマンは至って冷静だった。心臓を貫く。その想定でクロスが突き立てた刃は外れていたのか?
 いや、そこに心臓があるかないかはどちらでもよく、突き立てた刃に思うほどの効力が認められない――これは。
「……では、今度はこちらの刃を見舞うとしよう」
「――っ!!」
 クロスは掴まれた右手を振り解こうともがく。結果、フライング・ダッチマンの束縛からは逃れたが、斜に振り下ろされたカトラスの範囲からの脱出は叶わず。
「ぐあぁっ……!」
 右肩から対角の左脇腹までをずばっと斬り裂かれ、バランスを崩したクロスは背中から落ちていく。
「わが力を打ち破るには……足りんぞ、猟兵……クカカカ」
 クロスの刃はフライング・ダッチマンに傷をつけたが、蘇生の力を完全に封じ込めるには至らない。迷いなき心を示すことの難しさを、クロスは鉄臭い血の味と共に噛み締めることとなった。
 フライング・ダッチマンは二本の指で柄をつまみ、ゆっくりと短剣を引き抜く。
 放り捨てられた短剣は回転しながらクロスの元まで滑っていった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。

第二『静かなる者』霊力使いの武士
一人称:私
武器:白雪林

『我ら』と似た者同士…故に相容れず。
『我ら』は生きとし生けるものを守る悪霊なり。そのために力を奮う者である。
故郷の二の舞なぞ、起こさせませんよ。

先制攻撃…『我ら』は悪霊で死者ですからね。これは言い換えれば呪いですし…適応できますね。
物理的攻撃には、四天霊障による結界術+オーラ防御で対応。

制圧射撃つき二回攻撃。早業での【四天境地・『雪』】が一の矢。二の矢に破魔+水属性攻撃ですね。
迷いは矢に出ますからね。ぶれぬ矢こそ、証拠ですよ。

我らが真に終わる、そのときまで。我らは戦うのです。



●亡者と悪霊
 生者を蝕む。なら死者が相対すればどうか?
 彼を死者と位置付けるのが適切かどうかは不明だが――馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は涼しげな表情で戦場に立っていた。
 熱は熱として感じないこともないが、それだけに過ぎない。我ら悪霊、さぁ蝕んでみせよ、と義透は大きく振舞う。
(故郷の二の舞なぞ、起こさせませんよ)
 オブリビオンに滅ぼされた故郷。世界に二つとしてそのような場所が現れぬよう、義透は白雪林を素早く構えた。
 心は矢に現れる。迷いあらば、矢は揺れる。裏を返せば、迷いの無い矢こそ、必中の矢。
『凍れ、そのままに』
 早業で放たれた矢は分裂してフライング・ダッチマンへ襲い掛かっていた。四肢を穿つように、的確に四方向を狙っている。
「氷なぞ効かぬわ!」
 矢を恐れず突っ込んでくるフライング・ダッチマンもまた、迷いなき、と言うべきか。カトラスで眼前を斬り払う。それで落とせるのは両腕を狙う二矢。残りの二矢は両足に受けながらも速度を落とさず義透に迫る。
 だが義透もまた、すかさず二の矢を用意していた。破魔の念を込めた水の矢を放つ。
 フライング・ダッチマンの正中へと矢は一直線に飛んでいた。矢尻から水の飛沫が光を反射して蒸発する。
 フライング・ダッチマンは矢をかわそうともせず、またカトラスを振り上げた。飛来する矢は自らが前進する分だけ加速するが、その中で一瞬のタイミングを逃さず矢尻をガツンと叩き落とした。
 それは環境への適応力が成した業だった。義透も青き炎の海の悪影響は大して受けぬようだが、青き炎は生者を蝕む。
 生者を殺す鬼火と生者を守る悪霊。その差が出たか。
「何故に炎が効かぬかはわからぬが……われが滅ぼしてくれる!」
 フライング・ダッチマンは強く踏み込みカトラスを突き出した。迫る刃もまた矢のように鋭く。義透は四天霊障による結界にオーラを重ねて突きを正面から受けた。
 半透明の壁に切っ先が阻まれる。止まったかに見えたが、ずぶ、と刃がめり込むと一瞬で結界とオーラを貫いた。
「――っ!?」
 義透は結界を破られた衝撃で後方へ突き飛ばされていた。体勢を崩したところにカトラスの突きがぐさりと刺さるか――。
 しかし刃はあとほんのわずかのところで届かず。義透は倒れ転げはしたものの、際どくフライング・ダッチマンの刃から逃れていた。
「……ちっ、この氷か、忌々しい」
 初めに撃ち込んだ矢が足枷となり、義透を救っていた。フライング・ダッチマンが少しでも気に留めていれば九死に一生のこの結果は起こり得なかった――そんなごくわずかな差だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

緋神・美麗
アドリブ歓迎

性懲りもなくまた鬼火が出てきたのね。まぁ、何度出てこようと潰すだけだけどね。しっかりきっちり完璧に潰すわよ。

POW
シールドビットを念動力で操作して骸玉の口を塞ぐように配置しオーラ防御も全力展開して炎を遮り、そのままシールドビットを指定UCの砲弾として撃ちだし骸玉を貫いて鬼火を攻撃する
「燃やせるものなら好きなだけ燃やしてみなさいな。まぁ、そんな悠長な時間をあげたりはしないんだけどね」
「ダッチマンは必ず潰すわよ。何度でも復活するっていうなら使う気力も起こらなくなる位何度でも滅ぼしてあげる。そっちの心がへし折れるまで何百何蝉何千何万回でも滅ぼしてみせるんだからね」



●百万回でも躊躇わない
 七大海嘯とて骸の海の一部であることに変わりなく、ユーベルコードの如何に関わらず一定回数の復活は遂げる。
(性懲りもなくまた鬼火が出てきたのね。……まぁ、何度出てこようと潰すだけだけどね)
 緋神・美麗(白翼極光砲・f01866)がフライング・ダッチマンの前に立つのはこれが初めてではない。しかし感動の再会などではなく、そこにあるのは必ず潰すという決意のみ。
 フライング・ダッチマンは骸球を振り上げる。
「喰われるか、焼かれるか、好きな方を選ぶがいい!」
 空に放たれた骸球はまるで他の世界に現れた骸の月のように禍々しく輝きながら、円弧を描いて美麗の頭上へと落下してくる。
「どっちも選ぶわけ……ないでしょ!」
 シールドビットを念動力で操作し、受け皿のような形を作って落下する骸球を受け止める。ごしゃん、と直撃した骸球の衝撃でシールドビットの配置が若干崩れたが、念動力を強く放って持ち直した。
「燃やせるものなら好きなだけ燃やしてみなさいな。まぁ、そんな悠長な時間をあげたりはしないんだけどね」
 溢れ出す青い炎はシールドビット上に溜まる。継ぎ目部分からわずかに漏れ出すも大部分は行き場を失い、シールドビットの端からぼわぼわと零れていた。
「ダッチマンは必ず潰すわよ。何度でも復活するっていうなら使う気力も起こらなくなる位何度でも滅ぼしてあげる!」
 骸球は重い――が、受け止める一瞬さえ乗り越えてしまえば耐えられる。美麗は念動力を一気に解放し、骸球を押し返した。
「そっちの心がへし折れるまで何百何千何万回でも滅ぼしてみせるんだからね!」
「ぬぅっ!?」
 骸球が放物線を描いてフライング・ダッチマンへと還されていく。美麗はシールドビットを操作して溜まった炎をその辺へべしゃりと撒き散らすように払い落とすと、水平状態を保ったまま目の前へ移動させ、
『チャージ、セット、いっせーのっ!!』
 掛け声に合わせ、帯電した右腕で思い切りシールドビットの端を打ち抜いた。パンチの威力と電磁加速により高速で射出されたシールドビットは巨大な弾丸となってフライング・ダッチマンに向かっていく。
 フライング・ダッチマンは鎖を手繰り寄せ、骸球を引き戻し盾にする――が、槍のように突き刺さってきたシールドビットの勢いが勝り、盾の弾丸は邪魂の砲弾となった。
「ぬぐぅ……おぉぉっ!!?」
 右腕に揺らめく炎をぶつけて相殺を試みるが、骸球の向こう側でバチバチと響く電撃は衰えを見せていなかった。そのまま骸球を押し切ってフライング・ダッチマンの顔面にぶち当たる。
「ぐぉっ……がぁっ」
 後ろにバランスを崩し、尻餅をつくように倒れるフライング・ダッチマン。その後方に骸球が転がり、シールドビットはなお直進した後に反転して美麗の元への帰還飛行に移る。
「われを何度でも滅ぼすか……ぐっ、亡者に劣らぬ執念よ……」
 皮肉。しかしそれはフライング・ダッチマンの余裕の無さの表れでもあった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ナイ・デス
全ての王笏島を、発見しました
あなた達は、強いです。それでも

「迷いなき心」
勝利するのは、私達、です……!

目で追えない高速移動も【第六感】で知覚して
僅かでも【見切り】回避、無理でも反応して黒剣で防御
【激痛耐性、継戦能力】両断されても【念動力】で繋げ動かす。そのうち再生してくっつく傷。痛みは【覚悟】でねじ伏せて
【浄化オーラ防御】怨念の青き炎は、聖なる光で防ぎ散らしながら
隙を探す

本拠地を見つけることが、できたように
必ず、見つける。見つけだす
迷いなき心は光となって【目潰し】強く輝き【生命力吸収】
その光を【推力】に大地【怪力で踏みつけダッシュ】

『瞬断撃』

【限界突破】の輝きで、一部真の姿
【鎧無視切断】の一撃



●勝利を掴むまで
 フライング・ダッチマン――七大海嘯は強い。それはナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)も認めるところ。だが、相手を認めるということも、また強さの象徴である。
(それでも……勝利するのは、私達、です……!)
 追い込まれたフライング・ダッチマンが選択する起死回生の一撃。全身に怨念の青き炎を纏わせ、戦場を高速で駆ける。
 目で追うには――人の限界を超えている。ナイは内なる己に働きかけた。心眼、などと称されることもあるその第六感。感じ取り、左に跳んだ。
「ぬるいわっ!」
 紙一重――とまではいかず、カトラスの先がナイの右腕、表面を突き破っていた。だが骨も肉もまだ繋がっている。たとえ切断されても激痛に耐えて動かす覚悟だ。多少の切り傷など無いに等しい。
 フライング・ダッチマンは角度をつけて反転しながらナイの周囲を跳び回り、死角を狙い続けていた。感知できぬことはない。しかし反応速度では一つ上をいくフライング・ダッチマンが、ナイの肉体を少しずつ傷つけていく。
 耐えるナイ。仕掛けるフライング・ダッチマン。その構図はしばし続いた。
 耐えることには慣れている。そうしてこれまでも戦ってきた。だがフライング・ダッチマンはどうか。彼もまたナイを攻め立てているように見えて、好機を見いだせず耐えている時間だった。
 それでも少しずつ傷を負わせていけばいつか――という雰囲気が、ナイの姿勢からは漂ってこない。一昼夜同じことを続けたとしても、ナイはきっと全く表情を変えずに立っていることだろう。
「――ぐぬぅぁぁ!! 燃え尽きてしまえ!!」
 痺れを切らしたフライング・ダッチマンは急停止すると、カトラスに炎を溜め込み、レーザーのように放ってきた。
 動きを捉えた。反撃の狼煙のようにナイは浄化のオーラを張りながら突っ込んでいく。その身に受けながら聖なる光で防ぎ散らして、ナイは突き進む。
 予知を読み解き、海域を広げ、見つけ出した本拠地。
 決して成し遂げられないことではなかった。だから今度も見つけ出し、掴み取る。――勝利を。
 ナイの身から溢れる光がフライング・ダッチマンの目を焼いた。
「ぐおぉっ……小癪な……っ!」
 青炎が噴き出す顔を押さえて苦しむフライング・ダッチマン。その光は存在という生を奪う。
 後光がナイを後押しする。大地が崩れんばかりに一歩、強く蹴り出して。
「ただ速く――もっと速く」
 刹那の時だけ、ナイの体は真の姿の片鱗を見せたか――。
 反応速度はフライング・ダッチマンの強化を上回り、黒刃、閃く。
「おぉお……!? ぉがあぁぁ……」
 ナイが脇を通過し、切断されたことに気付いたフライング・ダッチマンが呻く。纏う炎が呼吸困難に陥り、ぼわっ、ぼわっと小爆発を起こして散っていた。ずずっと滑り落ちる上半身を支えるかのようにカトラスが地面へ突き刺さったが、肘がぐにゃっと折れてフライング・ダッチマンは後頭部から倒れていく。
 胴から下は青炎が包み込み、灰も残さず消えてしまった。
「われに、勝利し、た……とて……勝った、と……」
 恨み節のような遺言は、最後まで語られることなく。
 青き炎がまた一つ、晴れていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月21日


挿絵イラスト