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羅針盤戦争~闇狩り

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #七大海嘯 #カルロス・グリード #オブリビオン・フォーミュラ #一の王笏島

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●羅針盤戦争
『桜花島に……我が麗しの姫君のもとにまで至ったか、猟兵』
 静かに開かれた瞳が一帯を満たす黒霧を見つめる。
 周囲を成す森の名残――葉の無い丸裸の木々や石ころ、岩すら隠すほどの黒霧は、見上げれば映る筈の青空をも視界から奪っていた。だが『一の王笏島』を納めるカルロス・グリードの目は、黒霧の向こう、海を隔てた彼方の島を見ているような目をしている。
『だが』
 揺らがぬ視線はそのままに。
 黒霧に包まれた島の中、カルロスの声だけが確かな音を以って紡がれる。
『我が侵略は止まりはしない。我はこの世界を再び侵略形態へと戻し、次なる航海へと向かう。それを阻むというのならば……汝らを海の藻屑としてくれよう』
 それを現実とするように、カルロスの身に宿る三つの力が脈動する。

●闇狩り
 羅針盤戦争が始まり、月の半分が過ぎた。
 猟兵たちは七大海嘯の本拠地を次々と見つけ出し、オブリビオン・フォーミュラであるカルロス・グリードの本拠地である王笏島は、一から五までを発見している。
 残る王笏島は三つ。この戦いで勝利を収めるには、八つある全ての王笏島を制圧しなくてはならない。
「俺がみんなを連れて行くのは『一の王笏島』。島全体が真っ黒濃霧に覆われて、夜みたいな視界不良島だよ。だから、ぶっちゃけ戦い辛い場所なんだけど……そこへ行って、戦って、勝ってきて」
 勝ってきて。そう言ったリオネル・エコーズ(燦歌・f04185)の目はしっかりと猟兵たちを映し、笑っていた。
 黒霧の影響を一切受けないカルロス・グリードは、ダークセイヴァーの力を具現化しており、襲撃時とは違う三つの紋章を使って確実に先手を奪ってくる。
 オブリビオン・フォーミュラであり、三つの紋章を容易く使う能力は計り知れない。しかし、猟兵たちはカルロス・グリードを始めとする七大海嘯の襲撃や、その配下である精鋭を倒し続けてきた。
 七大海嘯の本拠地もそうだ。
 そのおおよその位置を計算し、見つけ――そして『三の王笏島』を制圧した。
 だからさ、とリオネルがいつものような朗らかな彩で笑む。
「大丈夫。今回も出来るよ、きっと」
 目指す先がどれほどの暗闇に覆われていようとも――それすら狩り尽くすものを、猟兵は持っているのだから。


東間
 ダークセイヴァーの姿なカルロスさんとの戦いをご案内。
 東間(あずま)です。

●当シナリオについて
 導入場面は無し。
 戦争勝利の為、少数採用での運営予定。
 プレイング受付はオープニング公開時から、受付期間は公開日含めた二日くらいになると思いますが、早まる可能性もあります。
 締め切りはタグ・個人ページ・ツイッター(https://twitter.com/azu_ma_tw)でお知らせしますので、送信前の確認をお願い致します。
 ※必要成功度に達しない場合は受付期間延長。
 ※完結時に『一の王笏』が存命なら同舞台のシナリオを再度運営予定。

 プレイングボーナスは【敵の先制攻撃UCと『黒い霧』に対処する】事。
 ただ技能を並べるのではなく、どのような狙いで技能を使うのか・どういった心情で挑むのかを書いて頂けると有り難く。
 技能に「」等のくくりは不要です。記号無しでも読み辛いという事はありません、お気遣いに感謝です。その分の文字数は戦いへのあれそれに使って下さいませ!

●グループ参加:ニ人まで
 プレイング冒頭に【グループ名】の明記、そして【プレイング送信日の統一】をお願い致します。タイミングは別々で大丈夫です(【】は不要)
 日付を跨ぎそうな場合は翌8:31以降だと失効日が延びますので、出来ればそのタイミングでお願い致します。

 以上です。
 皆様のご参加、お待ちしております。
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第1章 ボス戦 『七大海嘯『一の王笏』カルロス・グリード』

POW   :    餓える狼の紋章
【紋章の力】を使用する事で、【身体のあちこちに牙を思わせる鋭い角棘】を生やした、自身の身長の3倍の【黒狼】に変身する。
SPD   :    略奪者の紋章
【筋力を奪う爪】【速さを奪う爪】【意志の力を奪う爪】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    凍影竜の紋章
戦闘用の、自身と同じ強さの【触れる者を凍てつかせる氷の身体のドラゴン】と【影に潜み精神を喰らう黒影のドラゴン】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。

イラスト:hoi

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ナギ・ヌドゥー
視覚を封じられた中で先手を受けねばならないとはな……
多少のダメージは覚悟の上で敵の捕縛を狙おう。

結界術でオーラ防御の結界を周囲に展開
これでどの方向から攻撃が来てもダメージ軽減できる。
後背に呪獣ソウルトーチャーを配置し、背を守らせる。
ドーピングによりリミッター解除し反応速度向上
結界に触れた者を第六感で感知し即切り込む。
相討ちの危険があるが、爪全ての命中は防げる筈。
ユーベルコードさえ封じられなければ反撃可能
オレから一部の力を奪おうと、ソウルトーチャーは既に動いている……
ソウルトーチャーよ、禍ツ肉蝕を放て!
奴の動きを封じ捕食せよ!


スキアファール・イリャルギ
自身の周囲に炎を纏ったオーラの防壁を展開
これで冷気や影からの奇襲をある程度は防御できる筈
存在感を消し闇に紛れ乍ら聴覚と触覚で索敵
影に潜もうが呼吸や風を切る音は隠せないし纏う冷気の強さは調整し辛い筈
音や気配で竜たち位置を把握次第、霊障を発動し一瞬だけでも怯ませる

追撃が来る前にUCを発動、敵の有利な状況を一時的に無効化
黒霧を消し去り、竜たちを行動不能にさせる
……これで技の解除はできませんよ
私の黒霧が拡がっている限りは、おまえに有利な状況は何一つ生まれない
戦えない儘で攻撃を受けるがいい――!
カルロスの姿を捉えたら雷を帯びた呪瘡包帯を伸ばし捕縛
UCの制限時間ギリギリまで呪詛を流し込み乍ら締め上げてやる



 確か今の時刻は日中だ。それも、太陽が高く在る真っ昼間の筈だ。
 しかしナギ・ヌドゥー(殺戮遊戯・f21507)の視界に存在するのは暗闇ばかり。霧と称するにはあまりにも濃く黒いものが、光という光を断ち、世界を闇に閉ざしている。――まるで、吸血鬼と異端の神が蔓延るあの世界のように。
(「視覚を封じられた中で先手を受けねばならないとはな……」)
 ナギは警戒姿勢をそのままに目だけを動かした。後背に配した呪獣ソウルトーチャーも微動だにしない。五感で感じるのは自分たちの鼓動と、暗闇と――影と。そして、周囲に展開していた結界がいとも容易く裂かれたこと。
 漂い満ちる黒霧の中、それを裂いた男の肌色はほんの僅かばかり暗闇に滲んだ程度。
 常人であれば捉えることは出来ず知覚すら不可能であろうその一瞬に、ナギは追いついていた。全ての枷を解いた感覚が思考するより速く体を反応させたのだ。
 意志そのものを裂いて奪おうとした爪を刃でもって弾き返した瞬間、左腕に鋭い痛みが走る。途端、意志に反し動きが鈍った。
(「筋力を」)
 奪られた。
 戦いと殺しに身を投じてきた筈の体が立つことすら出来ず膝をつく。体を支えようとした手は地面に届いた瞬間かくりと力が抜けた。大地へ転がりかけた体から次を奪おうと爪が迫る。
 呪獣の咆哮が響く中、爪が暗闇を、黒霧を、空気を裂いて、
『っ、ぐ――!?』
 爪の主が、第一の王笏たるカルロス・グリードが呻いた。皮膚を抜け肉を通り、骨や神経、果ては精神まで侵す異常――己を襲う何かを察知し飛び退こうとする。
 夜そのものめいた黒霧の内に戻り、もう一度。
 その思惑に二体の竜を乗せ解き放った瞬間、黒霧の下で“影が動いた”。
 だが、飛び出したドラゴンはそれを気にしない。アレではない、己が、己が敵を殺すのだと喜ぶように吼え、獲物を引き裂こうと爪を揮う。
 爪に裂かれた空気が凍りつき、ほんの一瞬だけ暗闇に生まれた氷雪の軌跡が散る。影が膨らんで――黒霧という面にぽたりと落ちた白色が闇に穴を開け、カルロス・グリードの体を影より迸ったものが締め上げる。
 頭上から降り、空と地上両方にまあるく広がっていくのは、グリードオーシャン全てに注がれる空の青と太陽の光。燦々と世界を渡る輝きを齎したのは人間モドキの元人間、今は怪奇であり――猟兵の、スキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)。
 いっとき晴れゆく世界の中心、光を浴びて白すぎる肌をより白く見せるスキアファールから溢れゆくのは眩さとは対極のものだ。選んだものに味方し幸運を招く全てを喰らう呪詛が黒霧を消し去り、竜たちをその場にのたうち回らせる。
「……これで技の解除はできませんよ」
『闇に何か居ると思ったが。そうか、影か。だが、ただでは済むまい』
 ひと目で代償を見抜かれた。だがスキアファールは黒包帯の下で蠢くものを感じながら、構いませんよと言ってのける。
 迫る刻限を過ぎてもなおこの力を使えば自分は死ぬ。
 そんなことはわかっている。
 それよりも。
「私の力が拡がっている限りは、おまえに有利な状況は何一つ生まれない」
 奪ってやる。この世界の侵略航路も、次を狙う野心も。
 その身を捕らえ、締め上げ続ける呪瘡包帯も、緩めるものか。
「戦えない儘で攻撃を受けるがいい――!」
 覚悟と共に流し込んだ呪詛が包帯に染み込んだ雷を激しく躍らせた。
 弾けて爆ぜる光の音に重なった、奇妙で恐ろしい咆哮の主。骨と肉を剥き出しにした獣が、牙の隙間からぬちゃりと赤を滴らせて駆ける。
「ソウルトーチャーよ」
 その声は震えていた。だが、一部を奪われようとも半身を起こしたナギの目はしっかりとカルロスを映し――捕食の時を告げた瞬間、呪獣の肉体から屍肉の触手と骨針が花開いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

緋翠・華乃音
“眼”だけでものを“視て”いると思ったら大間違いだ。
行動を抑制したいのならば、少なくとも3つ以上の感覚を奪うべきだったな。

ただ闇を払うだけが対処法の全てではない。
例えば――目を閉じる。

そうすれば俺が闇を払えずに立ち止まっていると思うだろう。
それこそが罠であるとも知らずに。

視覚が無ければ他の感覚と直観を用いれば良い。
感覚が一つ欠ければ、それを補う為に他が研ぎ澄まされる。

周囲の音を、空気の匂いを、地の振動を、肌に触れる風の流れを。
星空にも似た瞳は鎖し、けれど闇を見通す合理性を携えて。

先制攻撃への最善手は回避だ。
集積したあらゆる情報を戦闘行為の糧とし最適化させる。

さあ――反撃だ。銃弾はもう飽きたか?



 ――いっときとはいえ、黒霧を消されるとは。
 カルロス・グリードは黒狼となった身の内にその言葉を留め、獣の四肢でその場にじっと立ち止まった。
 黒霧は再び島全体を包み込んでおり、光とは何かを改めて示すような眩い光景は消えていた。王笏たる己以外の全ては今、暗闇という世界の中に閉ざされているだろう。身構えたまま動かずにいる、あの猟兵のように。
 目を凝らさずともよく見える、雪月を思わす髪と白い肌。その持ち主である猟兵は――緋翠・華乃音(終奏の蝶・f03169)には――この状況下だ、閉じたままの瞳を開けたところで、自らの色であるそれを認識する事は難しかろう。
 カルロス・グリードはじっと華乃音の挙動を伺い続ける。瞼。呼吸。指先。音もなく流れては満たす黒霧に包まれた青年の胸中は読めないが――何もしないまま過ごしていることだけは確かだ。

 一撃で仕留めなくては。
 余計なものは敵に余計な機会を与えるだけだ。

 カルロス・グリードの中に、開戦後ここまで迫ってきた『猟兵』という生命への侮りは無い。故に、獲物を見定めた獣と同様、華乃音という猟兵を確実に屠るべく距離を目測し――駆けた。
 空気を置いていくように速く。地を蹴る回数はほんの数回。足の鋭い爪が地を一度蹴っただけで、何メートルもの距離を行く。
 もし、暗闇の中でも全て見通す目があったとして。
 闇より迫る黒狼を見たとして。
 それが敵であると。カルロス・グリードであると。そう認識する間もなく、殺されると理解する時も得られぬまま、死んだだろう。

 常人であれば。

 捉えた筈の姿に届かなかった。空を裂いただけの前足が地面を大きくへこませる。体中に生やした牙の如き角棘も、遥かに小さく華奢な体を捉えるに至らない。
 なぜだ。そう語る黒狼の目を星空の彩が“射抜いた”。闇の中、狼を捉えるのは困難な筈だというのに華乃音の目は確かに黒狼を“見た”のだ。そして視線交える一瞬さえあれば、華乃音は宿す全てを武器として標的を捉える“異能”である。
「失敗したな。少なくとも三つ以上の感覚を奪うべきだった」
 反撃告げる銃口が向く。
「銃弾はもう飽きたか?」
 空気が震え――蒼き蝶が舞った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

柊・はとり
会うの三度目だな
犯人はよく喋るしやる事が多い…ってか
なら闇の中の真実を掴むのが『探偵』の役割だ

基本方針として第六感で敵との接触を避ける
偽翼を生やし空中浮遊で上空へ
俺は元々冷凍された死体だ
氷の方は氷結耐性で凌げる
影の方は喰われる心がない偽神兵器を盾にする

一瞬時間稼ぎが出来れば十分
属性攻撃と天候操作で暴風と落雷を起こし
霧を払いながら敵全体を牽制
UC発動

さて…ここはまさに嵐の孤島
クローズドサークルで探偵から逃げ切れると思うなよ

凶器が竜でした、なんて
馬鹿馬鹿しい真相無しだぜ
なぎ払いで竜達を切断しながらカルロス本体へ切り込み
何匹出されても全部倒し殺気で奴を萎縮させる

悪いな
俺は物理でも解決する探偵なんだよ



(「会うの三度目だな」)
 同じ敵との遭遇はまま在ること。
 探偵ものなら、“宿命の敵”が何度も事件を起こしては現れるものだ。
 しかし柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)の第六感が告げた犯人出現――襲撃主はオブリビオン・フォーミュラだ。いくら何でもチートじみた存在が犯人では、犯人も探偵もやることが多くなり過ぎるというもの。
 それでも。
 はとりは偽翼を広げると即座に上空へ向かい、ぐるりと体を回転させて真っ暗な地上を見た。感覚をひりひりと焼くような、暗闇から迫り来る冷気は無視だ。
 はとりは高校生探偵だが、同時に冷凍されていた死体でもある。故にこの瞬間優先すべきは――影より飛び出したであろうドラゴンの方。
 感じた気配へと向けた大剣が何かに激突され、ガキンッと音を立ててはとりの体を更に上へと押し上げる。それ同時に走ったもの――足の肉が随分と減った感覚とそこからせり上がる冷気が、はとりに一つの“結果”を告げた。
(「片足を少し喰われたか」)
 思考が巡るのにかかる時間は僅か。
 ぐん、と大剣の向きを変えた。大剣にしつこく食いついていたドラゴンがいた気がするが、一切構わない。何かをこそぎ落とすような手応えに、ギャオァン! と聞こえた悲鳴。そこ目がけ遠慮なく踏みつければ、やけに重たかった大剣がいつも通りの重量を取り戻す。
 その瞬間、はとりは偽神兵器より荒れ狂う自然そのものを巻き起こした。
 殴り付けるような暴風。全てをつんざく雷。それらは霧を一瞬払い、黒き世界であった空間の底で悠然と立つ男を露わにする。
『我が身を嵐の内に封じたつもりか』
「嵐の孤島ってやつだ。……クローズドサークルで探偵から逃げ切れると思うなよ」
 “凶器はドラゴンだった”? いくらここがグリードオーシャンであろうと、そんな馬鹿馬鹿しい真相は無しだ。冗談じゃない。そんな探偵ものがあってたまるか。
 冷えた瞳が嘆きの川を謳う大剣と共に急降下する。勢いに乗せて見舞った一閃で氷と影の竜を断ち、本体へ。即座に現れたドラゴンは遠慮のない殺気と斬撃で屠った。
 氷色の眼がカルロスを捉え大剣が躍って――肩を貫いた刃が鮮血で濡れる。
『……我が知る探偵とは随分と違うようだ』
「悪いな。俺は物理でも解決する探偵なんだよ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

フェルト・ユメノアール
仮にも王様が闇討ちだなんて、そういうのちょっとカッコ悪いんじゃない?

戦闘開始と同時にワンダースモークを使用、煙幕を発生させて勘を頼りに飛び退き回避
相手が無効化できるのは黒霧のみ、ならこっちも相手の視界を煙で遮る事で命中精度を下げ
先制攻撃の被害を最小限にする

お楽しみはこれからだ!
逆巻く水の魔術師よ!その魔力を以て、世界に新たな理を示せ!
現れろ!SPマーメイジ!
煙幕が晴れる前にUCを発動、人魚の魔力で腕をモグラのモノに変え、地中に潜行する
いくらキミでも地面を透視する事はできないよね?
そのまま地中を掘り進み、相手の出す音を頼りに接近
地上に飛び出して相手がいるであろう場所をトリックスターで斬りつけるよ



 道化師が笑顔を咲かせるステージにしては、そこはあまりにも真っ暗だった。スポットライトのひとつも有りはしない。けれど戦場に飛び込んだフェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)は、大きなエメラルドの目を誰よりも何よりもきらきらさせて言った。
「仮にも王様が闇討ちだなんて、そういうのちょっとカッコ悪いんじゃない?」
『――王だからこそ猟兵を殺す手段を取ったまでのこと』
(「上!」)
 淡々とした声。同時にフェルトはワンダースモークを足元に叩きつけた。勘のままに飛び退き、バク転してその場から――ふとした拍子に喰い付いてきそうな“何か”から一気に距離を取る。
 それでも、その“何か”によって頬や腕を裂かれたのがわかった。暗くて見えないが、ひりひりとした鋭い感覚が痛みとなって訴えてくる。
 それでもフェルトは明るく笑っていた。
 傷を負った。視界は相変わらず。叩きつけ溢れた筈のワンダースモークのカラフルな煙も見えない。しかし黒霧を無いものとして見たいままにものを見ているカルロス・グリードの視界には、あの賑やかで楽しい煙が思う存分躍っているだろう。
 視界を確保しているのなら、飛び退いたばかりの自分を殺すべく即座に追う筈だ。しかし来てもおかしくない攻撃が来るまで数秒。それがほんの僅かなものだとしても、数秒も要しているのなら――そんなにモタモタしてるなら、ショーを始めちゃおう。
「お楽しみはこれからだ!」
 高らかに声を響かせ取り出したユニットカード。
 見えなくても“どのユニットカードか”は力が伝えてくれる。迷わない。
「逆巻く水の魔術師よ! その魔力を以て、世界に新たな理を示せ! 現れろ! スマイルパペット・マーメイジ!」
 声でこちらを捉えたのだろう。一気に迫りくる気配を感じた。しかし人魚の魔力を腕で受け取ると鮮やかに地中へと潜り込んだ。直前に届いた息を呑む気配を地上に残し、モグラのものとなった両腕で土も岩も抉って砕いて掘り進んで――地中という暗い世界に響く音の元へ。
 飛び出した先は相変わらず暗いが、手にした派手で悪戯な金色には十分な手応え。
 その証に。
『おのれ――!!』
「やっぱりね! いくらキミでも地中は透視できないと思ったんだ!」
 言ったはずだよ。お楽しみはこれからだ、って!

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡
【冬と凪】


今年で一番「お前が言うな」って思った瞬間だよ
自分の持ってる手札数えたことある?

さあ、眼だけなら問題だったかもな

相手の攻撃を感知するのは自身の全知覚を以て
視認できる限りの周囲の状況
風の音や肌で感じる空気、微かな相手の移動音も逃さず捉え
“どこから”“いつ”攻撃が飛んでくるかを予測
銃撃で軌道を逸らして回避の隙を作るよ

あのな、簡単に言うけど痛いもんは痛いんだぞ?
……いいけどさ
致命傷を避けるように【見切り】、相手の爪を“うまく”受けるよ

さて、こっちの番だな
目も耳もいいんでね、敵の位置くらいこの視界でも判る
……二回も打たせてやったんだ
お前の動きの癖も、すっかり覚えさせてもらったよ
――逃がさないぜ


ヴィクティム・ウィンターミュート
【冬と凪】

野郎…前戦った時から手持ちの札が変わってやがる
小賢しい奴だ……お前が言うなって思ってる?
まぁいいさ、やることは結局同じだ
「勝利」するだけ…シンプルだろ?

爪飛ばしてくるな…撃ち落とすか避けるぞ
脳波【ハッキング】によるニューロリンクを開始
演算貸すから、知覚貸してくれ
お前の眼なら、視界不良でも問題無いだろ
右腕の仕込みクロスボウで爪を迎撃しつつ【ダッシュ】
初撃を凌ぐのはこれでいい

勝負は次のフェーズだ──『運命転換』
よう、水も滴るイイ男じゃねえか…安心しな、ダメージは無い
いいか匡…いつぞやと同じ、爪全部食らえ
そうしたら『反転』が働いて…お前は強くなる
黒い霧を見通す眼で、必殺の一発ぶちこんでやれ



 ヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)は既に一度『一の王笏』と戦っている。当然、あの戦いで得た情報は全て記憶し――ているのだが、一の王笏島の主であるカルロス・グリードはアナウンス無しで仕様を変えたらしい。
 闇霧、紅き月、黒百合。それらが狼への変身、裂いたものから一つを奪う三種の爪、氷のドラゴンと影のドラゴンへと――三種全ては、“変え過ぎ”ではなかろうか。
「野郎……前戦った時から手持ちの札が変わってやがる。小賢しい奴だ」
「……」
 すぐそこにいる鳴宮・匡(凪の海・f01612)の顔は見えないが、不思議なことにどんな顔をしているかよくわかった。お前が言うなって思ってる? 笑みを含んだ声をかければ、ああ、といつも通りの静かな声。
「今年で一番『お前が言うな』って思った瞬間だよ。自分の持ってる手札数えたことある?」
 小賢しい、と紡いだ不敵な声の主が操るユーベルコードは、アリスラビリンスのオウガ・オリジンも驚くレパートリーを誇っているというのに。
 自分の手札くらいそりゃ把握してる、なんてヴィクティムは気軽に言い、まぁいいさと笑った。仕様が変わっていようがいなかろうが、やることは結局同じだと。
「『勝利』するだけ……シンプルだろ?」
『――勝利。汝ら猟兵がか』
 来た。
 世界は相変わらず暗いが――連れが言った通りだ。やることは、結局同じ。
「さあ、眼だけなら問題だったかもな」
「爪飛ばしてくるな……撃ち落とすか避けるぞ」
「ああ」
 カルロス・グリードの声を聞いたと同時、匡の意識にヴィクティムが“繋がった”。
《演算貸すから、知覚貸してくれ。お前の眼なら、視界不良でも問題無いだろ》
 届いたメッセージに匡の表情は変わらない。全知覚で以って周り全てを捉えにかかることを躊躇なく選んだ時のまま、余計な意識を一切排除して前を見つめ――、
「あのな、簡単に言うけど痛いもんは痛いんだぞ?」
 ……いいけどさ。
 一言添えながら、匡の知覚はものが動いたことにより生じるあらゆる音を拾っていた。そこから捉えた周りを暗闇に描き、立てた予測のままに銃口を向け――甲高く響いた音に、よし、とも何とも言わず次に備える。
『ほう』
 感心するような声は暗闇の向こうから。
(「呑気に感心してる場合かよ」)
 ヴィクティムの口が笑った瞬間、二人の世界が交わり、視える世界が変わる。
 大地を踏んだ音。風の音。空気の流れ。匂い。
 撃った瞬間から音が響くまでの時間。方向。
 それぞれがこれまで経験し身につけたものに、ヴィクティムの演算が、匡の感覚が添い、押し上げる。情報を認識した瞬間に予測が立つ。体が、反応する。
 スパンッと腿を裂かれた瞬間、力の入り具合が意志と離れることになった匡だが、貸し出されたものから必要なものを導き出していたから、“うまく”やれた。
 ヴィクティムは既に暗闇を駆けていた。爪のひとつ目がけ右腕に仕込んでいたクロスボウを放ち――匡の知覚から描き出された世界に笑みを浮かべ、“来た”と捉えた瞬間に勝負を仕掛ける。
 破魔の水弾が標的を射抜けば、水も滴るイイ男の出来上がり。ダメージ無しの安心仕様にヴィクティムは笑って言った。《いつぞやと同じ、全部食らえ》と。そして――、
(「わかってる」)
 二人の会話は侵略者たちの王であるカルロス・グリードには当然聞こえていない。それでも、自分のみが視える世界に、そこで見た二人の様に感じる何かがあったのだろう。例えば――爪による一撃を受けた筈の猟兵に対する、違和。
『我が爪に何をした』
 食らった標的からひとつを奪う略奪者の紋章。だというのになぜこの猟兵は、当たり前のように反応した。なぜ手にした得物を落とすことなく己を捉えている。なぜその目は確かな光を宿している。なぜ――こちらへと真っ直ぐ向かいながら、次なる爪を撃ち砕いてみせるのか。
『何をした!』
「悪いな。俺は目も耳もいい。……二回も打たせてやったんだ。お前の動きの癖も、すっかり覚えさせてもらったよ」
「そういうわけだ。それに、訊かれてぺらぺらと種明かしするヤツもここにはいねぇ」
 現代、中世、宇宙、竜鎧――色々と見せられてきたが、ファッションショーもそろそろ終いにすべきだろう。新作を用意されてお披露目しに来られても面倒だ。だから。
《ぶちこんでやれ》
「ああ」
 東洋人らしい色合いをした凪いだ瞳が、目を見開くカルロス・グリードを映し――至近で繰り出された爪を躱し、跳ぶ。肩を掴んだのとは逆の手にある刃が黒霧を音もなく撫で、その刃を僅かに濡らした瞬間。
「逃がさないぜ」
 捉えられた王の首は、見事に刎ねられ――闇に舞う。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月22日


挿絵イラスト