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羅針盤戦争〜ドラゴン百回殺し

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #七大海嘯 #メロディア・グリード

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「バレンタインはもう終わったはずなのであるが、七大海嘯は関係なしのようだ」
 やれやれ、とため息をついて、ムルヘルベル・アーキロギアは頭を振った。
「先の予兆で出現した"桜花"スイートメロディアが、とんでもないことをしてくれた。
 海域ひとつを「チョコレートの海」に変え、しかも自分の分身を生み出すのだ。
 ……生み出す、というよりも、「勝手に現れる」のほうが近いかもしれないが」
 無限再生能力とやらのせいで、スイートメロディアは苦労しているらしい。
 が、猟兵としては、そんな理由で狼藉を見過ごすわけにもいかない。
「問題はこの分身の数が、ざっと数百……いや、軽く千を超えているということ。
 そしてもう一つは、この菓子の分身は、七大海嘯と同等の戦闘力を持つということだ。
 菓子で出来ているだけあって、耐久力はそれほどでもないのが、唯一の救いであるな」
 逆に言うと、一斉攻撃をされたらおしまい、ということだ。
「それを防ぐためには、とにかく速攻で分身を破壊し尽くすほかにあるまい。
 スイートメロディアの分身体……少々ややこしいが、とにかく本体は現地に居ない。
 つまり、菓子の分身の生成が止まるまで、ひたすら攻撃を続けてもらうことになる」
 気の遠くなる話だが、海域を取り戻すにはやらねばならない仕事だ。
「はたして本拠地ではどんな軍勢と戦うことになるのか、今から頭が痛いのである。
 また嘆息しつつ、ムルヘルベルは本を閉じた。
「竜王というからにはドラゴンの眷属か何かなのであろうが、関係はあるまい。
 彼奴らに好き放題させぬために、オヌシらの力を貸してくれ。健闘を祈る」
 その言葉が、転移の合図となった。


唐揚げ
 チョコボンボンです。戦争シナリオ第16弾は、桜花襲撃戦です!
 リプレイと並行して、ベストプレイス巡りもしようと思ってます。

●プレイングボーナス条件
 一斉攻撃を受ける前に、可能な限り多くの「増殖する私の残滓達」を倒す。

 というわけで、ひたすら速攻かつ大火力が重要になるシナリオです。
 分身はものすげー数が出てくるので、とにかくぶっ倒しましょう。

 プレイングは余裕があれば採用率は上げたいな―と思っています。
 特に期限は設けず、もういいかなーと思ったらタグで締切をご連絡しますので、
 参加をお考えの方は随時タグを確認していただけるとありがたいです!
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第1章 集団戦 『増殖する私の残滓『スイート・メロディア』』

POW   :    スイート・エンブレイス
【甘い香りと共に抱きしめること】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    キャンディ・ラプソディ
【肉体を切り離して作った毒入りキャンディ】を給仕している間、戦場にいる肉体を切り離して作った毒入りキャンディを楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ   :    チョコレート・ローズ
対象の攻撃を軽減する【融解体】に変身しつつ、【毒を帯びた薔薇の花型チョコレート】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:hina

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
キャバリアに乗って出撃
AIは女性の声、敬語

今回もよろしく頼む、Minerva
甘い物は嫌いじゃないんだが、あの量は色々と勘弁願いたい

SPDで判定
遠距離から攻撃する
AIと協力し【視力】【暗視】【聞き耳】で【情報収集】や【索敵】を行う
まずは義眼の藍の災い:圧壊【重量攻撃】を指定UCで付与した弾丸を【全力魔法】【範囲攻撃】【属性攻撃】でばら撒き速度を低下させる
それから赤の災い:炎熱【焼却】や橙の災い:爆破【爆撃】を付与した銃撃で【全力魔法】【範囲攻撃】で広範囲の敵を攻撃
近寄ってきたら後退して距離を取って上記の事を繰り返す


セツナ・フィアネーヴ
チョコレートの海、とは……
だがあれは摂取しすぎると毒になると師から聞いた、侮ってはいけない……!
『(……それ、肥満や虫歯の事じゃないですよね?あの人もどこかずれてる人でしたし……)』

先手必勝が必要というのなら、ケラヴノスを呼び、《天候操作/属性攻撃(雷)/吹き飛ばし/地形の破壊》で生み出した大嵐に紛れ敵の密集地帯へ強襲を仕掛けるぞ。

密集地帯では早々に全力で【凍える世界】。
一度UCを発動さえすれば私の周囲はこの氷嵐で覆われるし、その時点で嵐の真っただ中。
例え“私の”行動の速度が1/5になったとて、身も心も凍える世界の中で降り注ぐ雹や雷を回避し続けるのは容易ではないぞ……!

※アドリブ他歓迎です


フェルト・フィルファーデン
チョコレートの海から分身って……いくらなんでも無茶苦茶よ。
でも、このまま海をチョコ塗れにしておくわけにもいかないし……これ以上勢力を広げられても困るしね。ええ、なんとかしましょうか。

時間が惜しいわ。まずは速攻でUC発動。(先制攻撃】
速度を活かし海岸へ直行。護身剣から光の斬撃を伸ばし、海岸沿いを飛び島を周回しながら、全て纏めて叩き斬る!【薙ぎ払いx空中戦x早業】

たとえ毒入りキャンディで速度が落ちても、この速さなら影響は少ないわ。毒の痛みくらいは耐えれるしね。(激痛耐性】

総攻撃なんて絶対させない。アナタ達の好きにはさせない。
この世界を滅ぼし侵すというのなら、わたしが絶対に打ち倒す!!


馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。

第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
武器:灰遠雷

ああ、気の遠くなる話であるな。
なるべく高い位置に陣取り。視力を活用してよく見る。

雷の霊力矢を指定UC+早業+炎属性攻撃+衝撃波+制圧射撃+鎧無視攻撃+蹂躙にて放つ。
これで多数を巻き込めれば良いのだが。

軽減するというても、傷は必ずつくのであろ?なれば、それはすでに悪霊に勝てぬということよ。
傷ひとつが、呪いを招く。…次々と不運なる事故がな。

四天霊障による結界術+オーラ防御で、花型チョコはいなそう。
ま、引き際は見極めんとな。



●一秒をも惜しんで

 くすくす、ふふふ、あはは……。

 天上界に遊ぶ仙女のような、可憐で胸騒がされる笑い声がいくつも転がる。
 立ち込める甘やかな匂いはといえば、えづいてしまうほどに濃密だ。
 ただしそれは、けして心地のよい甘露の香りなどではなかった。
 肺胞の隅々まで腐らせるのではないかと思わせるほどに、醜悪なのだ。
「あれが、"桜花"メロディア・グリードの分身……!」
 ごぼごぼと海底火山の噴火口めいて煮え立つ、茶色く染まった海。
 そこから滲み出るように立ち上がる影を見て、フェルト・フィルファーデンは呟いた。
 あまりにも反自然的な光景だ――そして思った以上に時間がない。
「護身剣よ、力を貸して……!」
 フェルトは海岸線に立ち、その小さな体躯に似つかわしからぬ光の刀身を伸ばした。
 射程およそ100メートルの光の斬撃。文字通りの水際となるが、これが限界だ。
 水上では飛行によって何が起きるかわからない――彼女がフェアリーと言えど。
 かといってあのチョコレートの海に触れるのは、あまりにも憚られる。
 フェルトは超音速で飛翔しながら、生成された分身を斬る、斬る、斬る!
 熱した包丁で裁断された菓子のように、ごぼごぼ煮え立ちながら崩れる分身ども。

 くすくす、ふふふ、あはは……。

「一体何がおかしいの……アナタに、総攻撃なんてさせない。好きにはさせないわ!」
 耳障りな笑い声をかき消そうと、フェルトは海岸線を飛翔しながら剣を振るった。
 だが、おお……分身は次々と湧き出る。文字通りに無限じみて!

 そこへ、二機のキャバリアが駆けつけた。
 片方は、ルイス・グリッドが乗る銀色の銃兵『Soldato d`argento』。
 もう一方は、キャバリアというよりも嵐そのものだった。
 その銘は『ケラヴノス』。雷鳴と嵐の力宿せし、セツナ・フィアネーヴの災機!
「氷の嵐を巻き起こせ、ケラヴノス! 敵の群れを――吹き飛ばすッ!!」
 まず最初にセツナの災禍の力が解き放たれ、凍てつく氷の嵐を現出させた。
 大嵐はいくつもの竜巻となって海域を渡り、汚染された海を強制的に凍結する。 凍結さえしてしまえばこっちのもの、二機は凍った海面にずしんと着地。
 当然海面から這い出したチョコレートの分身も、氷像に変わり嵐の力で砕け散る!
 降り注ぐ雹と雷は、まるでいたずらなニンフを裁くゼウスの怒りの如し!
「行くぞ、Minerva……!」
『敵性体を検知しました。メガリスとシステム接続、攻撃を開始します』
 同時にコクピット内で眼帯を外したルイスの左目が、藍色に染まった。
 ルイスの左目は強大な呪いを宿したメガリスであり、色に応じた災いを起こす。
 そしてSoldato d`argentoの持つ『銀の魔銃:レプリカ』は、
 メガリスと共鳴することで弾丸をエンチャントし、多彩な攻撃を可能とするのだ。
 藍色の災いは『圧壊』。触れたものを強力な見えざる力で叩き潰す暴威である。
 魔弾となった銃雨は、次々と溢れ出る分身体を凍った海面ごと"圧殺"していく。
 嵐の災禍とメガリスの災い。まさしく災厄的な飽和攻撃である!

 くすくす、ふふふ、あはは……。

「嵐をものともせずに出てくるか、どうやら自意識や判断力は皆無のようだな!」
「だからこそ、怯まないという意味では厄介な敵ですね……!」
 凍り、圧し潰され、砕け散った分身の残骸がまた別の分身の種子となる。
 凍った海面がパキパキとひび割れて新たなメロディアを『芽吹かせる』さまは、
 古ぶるしい巨木に寄生し、生命を収奪して花咲いた寄生植物めいて醜悪だ。
 砕けたメロディアの身体は毒入りキャンディに変わり、破損した分身はドロドロの融解体となって雹や雷、さらに圧壊の魔弾によるダメージを無効化しようとする。
「そうはさせるか……! 爆ぜろ!」
『メガリス、アクティブ。バレットエンチャントを開始……同期完了』
 ルイスの左目が橙色に染まった。オレンジが示す災いは『爆破』である。
 魔弾は着弾した瞬間、融解体を内側から爆砕し次々に消し去っていく。
 吹き飛んだ破片は往生際が悪く再生しようとするが、それをセツナの嵐が吹き飛ばすのだ。

 三人の戦いを、海域に面した島の丘の上から眺める者も居た。
「次から次へと……あれを滅ぼしきるとは、ああ、気の遠くなる話であるなあ」
 馬県・義透は年季を感じさせる声音で言い、ふうむと顎をさする。
 多重人格……厳密に言えば複数の悪霊がひとつの人間体を象った義透のうち、
 このような状況に向いたのは第三の人格『侵す者』である。
 しかしその『侵す者』をして、やはり七大海嘯の力は手に余るようだ。
「嵐でも災いでも足りぬというなら、どれ、ひとつ呪いをかけてやるとするか」
『侵す者』が片手に持った強弓を引くと、弓弦にばちばちと電光がまとわりつく。
 その銘、灰遠雷。その気になれば千里さえも届かせよう恐るべき雷弓……!
 弓弦に生じた電光は『侵す者』の指を伝い、五本の霊力の矢に結実した。
「軽減すると云うても、傷は必ずつくのであろ――なれば、それはすでに悪霊(われら)に勝てぬということよ」
『侵す者』は剽げた笑みを浮かべ、片目を閉じて狙いを定めた。
「呪いを招く傷ひとつ。我らの呪い、思い知れ……!!」
 限界まで引き絞られた霊力矢が……バァン!! という炸裂音とともに放たれた。
 音を超えた矢は、そのプラズマ熱によって大気を灼きながら飛翔する。
 セツナの生み出した大嵐さえも切り裂く強弓が、巨大な融解体の脳天に命中!
『ああ……何でしょうか、これは……?』
 巨人体が己の身体に打ち込まれたそれを訝しげに抜き取ろうとした瞬間。
 ルイスとセツナの攻撃によって破壊された凍結体の破片が、散弾めいて全身に突き刺さる。
 さらにそれは、二つの災いの力が増幅され、そして凝縮されていた。
 体内に突き刺さった破片は共鳴反応を起こし、炸裂。偶然の連携……いや、これぞまさしく呪いがもたらした、累乗倍された災いの恐ろしさ……!
『ああああ……!!』
 巨人体は身をくねらせながら連鎖爆発を起こして崩壊し、融けていった。
 その残滓さえもが、島に到達すれば永劫に地脈を穢しかねぬ瘴気の塊である。
「消えなさい、アナタの残滓はこの世に遺しはしないわ……!」
 フェルトの護身剣が、海岸線に迫ったチョコの波を真っ二つに切り裂く。
 分身は依然生じ続ける――だがどうやら、猟兵たちの総攻撃は効いているようだ。
「この調子で片付けばよいが……ま、引き際は見極めんとな」
『侵す者』は相変わらず飄々とした様子で言い、二の矢を番えた。
 甘やかな匂いと胸騒がす笑い声は、未だ途切れていない……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡
……数を相手にするなら慣れた仕事だ
相応にやらせてもらうさ

一体一体が絶大な攻撃力
取り付かれたら無事じゃすまないだろうが――
生憎、至近まで近づかせる気はないよ

【影装の牙】は、装甲を犠牲に攻撃回数を強化
弾幕で押し返すような形で相手を寄せ付けないように立ち回るよ
必要に応じて高所を取る、遮蔽物を利用するのもありか

脆いと言ったって一発で倒れるような相手じゃないだろう
攻撃の間相手の観察は怠らず
「どこを叩けば効率的に倒せるか」を見極めて狙いを修正
殲滅速度を上げていくよ
途絶えるまで根気強く付き合うけど、早いに越したことはない

――海は凪いでいるほうが好きなんだ
お前らじゃ、ちょっと騒がしすぎる
おとなしくしてもらうよ



●あるべき静寂
 ――BLAMN!!
『あら……?』
 脳天に徹甲弾を受けた分身体は、訝しむような声を漏らし、そして砕けた。
 知覚さえ出来ぬ距離のスナイプ……普通ならば生成速度には追いつかないはずだ。
 しかし弾丸は、一度に五、いや六発は同時に放たれていた。
 狙いはいずれも脳天、さもなくば心臓……ないし同じレベルの致命的急所ばかり。
 これほど精密なスナイプを、しかも複数にこなす。
 はたして、どんな精鋭部隊が潜んでいるというのか。

 ……実際のところそれは、部隊などではない。ただひとりきりの活躍によるもの。
 鳴宮・匡は黒き海の深影で象ったスナイパーライフルで、淡々と敵を撃つ。
 放たれた銃弾は着弾寸前に複数にばらけ、別の分身体に命中しているのだ。
 無論、ただ弾丸がバラけるだけではああも繊細な箇所を狙うことはできない。
 影で出来た魔弾であるがゆえにある程度の調整が効く――それでも足りない。
 空気の抵抗や敵の位置取り、射線から見た最効率のポイント。
 それらを匡が精密機械めいた判断し、実行しているからこそ出来る芸当だ。
 単独で多数の如き弾幕を生み出す。まさしく、ワンマンアーミーである。
「――海は、凪いでいるほうが好きなんだ」
 高台に伏せた匡の鼻には、むかつくほどの甘ったるい匂いが届いている。
 匂いだけではない。分身体のあの耳障りな笑い声、そして病的に汚染された海。
 何もかもが生者の怖気を煽る醜悪な光景だ。そこに静寂と安寧はない。
 あの群れが陸地に届いたら、何が起こるか――想像するまでもないだろう。
 そこに感傷はない。ただ、絶対に到達させないという意地と決意がある。
「お前らじゃ、ちょっと騒がしすぎる。……おとなしくしてろよ」
 心を凪いだ海のように静かに落ち着かせ、ただひたすらに敵を殺す。
 いっそ本体にさえ弾丸を届かせてやるという心意気で、ただ撃ち続ける。
 匡の心をざわつかせるのは、声よりも見た目よりも何より匂いだった。
 甘ったるい匂い。戦場で幾度となく嗅いだことのある匂いだ。
 禁止された生物兵器。
 腐り落ちた死体の山。
 極度の緊張で麻痺した鼻孔の誤作動――理由は枚挙に暇がない。
 その香りは、ようやく自分が許された日常すらも嘲笑うかのようで。
 だからこそ匡は、いつもよりも心を凪がせてただ撃ち続けた。
「……気に入らないな、この匂いは」
 かすかな硝煙の香りが、今日ばかりは救いにさえ思えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱酉・逢真
心情)防御捨てて攻撃力・数量に特化したかィ。ひひ、戦争においちゃ最適解だ。どんだけ強いひとりだろォと、けっきょくは大群に押しつぶされるモンさ。ホレ、鮫牙もそうだったろ?
行動)チョコは食いモンだし、粗末にするのはよくないぜ。そうだろ? マ・俺ぁメシ食えンがね。かわりにパズ坊、《仔》を喚んどくれ。食いたいだけ食っていい。毒入りらしいが、お前も俺の仔。お前の仔は俺の孫みてェなもんだ。スパイス代わりにちょうどよかろうぜ。食って食らって溶けたチョコに溺れ、仲間の死体も食い尽くせ。ついでだ、あの青空も虫雲で隠しておくれよゥ。ひ、ひ、ひ。



●ドラゴン百回殺し
 曰く、メロディア・グリードは竜王なのだという。
 無限再生能力という呪いを持つ女は、はたしていかなる竜なのか。
 フォーミュラの妻たるその身は、おそらく世界一つを支配して余りあるのだろう。

 しかしだ。
 その竜王ですら逃れられぬもの――それが、死である。
 竜王より分かたれた身を、甘き死の群れを、蝗の群れが食い荒らす。
 おお、それは太古より災厄そのものとして恐れられる凶兆。
 飢餓――逃れ得ぬ地獄の苦しみ。飢えは身体を病ませ心を苦しめる。
 猛き勇者とて、
 財宝を持つ竜ですら、
 腹が減れば弱る。そしていずれは病に斃れて死ぬ。
 蝗どもは飢餓という概念の象徴、何もかもを食い尽くす悪魔の群れだ。
 そして聞け、熱病もたらす大風が吹きすさぶ音を。
 毒など効かぬ。なぜならそれらは朱酉・逢真と呼ばれる神の一部であるがゆえ。
 喰って、喰らって、溺れ死に、その死骸さえも同種が喰らい尽くす。
 喰い続ける。
 ただただに喰い続ける。
 そこに終わりなどない。
 蝗の群れが喰らうのは生きるためですらないからだ。
 自動化された生物の群れは、いかなる天災よりもおぞましく恐ろしい。
 ぶんぶんと唸る蝗の群れは、ついには空をも覆い隠してしまった。
「ひひひ、こりゃあいい。この世界は在るだけでも参っちまうもんなあ、ひ、ひ」
 地獄じみた光景のなか、逢真は愉快愉快と喉を鳴らして笑っていた。
 甘ったるい匂い。
 分身たちのかそけき悲鳴。
 耳に障る虫どもの羽音。
 ただただ無機的に喰らい続ける悪魔の群れ。
 暗澹たる闇と、熱病をもたらすぬめった風――まさしく、終末の様相。
 そんな誰もが忌避する景色のなかで、逢真は嗤っていた。
「どんな強いひとりだろォと、けっきょくは大群におしつぶされるモンさ。ひひ……」
 無敵だろうと、
 無限だろうと、
 いかなる個であれ『多』に敵いはしない。
 海が蒼を取り戻すまで、蝗の群れはすべてを喰らいつくした。

 少なくともそれは、今のところは世界にとって善に思えた。
 ……今のところは。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月19日


挿絵イラスト