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銀河帝国攻略戦④~カウンター・テロ

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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 世界中から猟兵が集まるグリモアベースに女の声が響いた。
「緊急要請! 猟兵の皆さん、お集まりください! どうか力を貸してください!」
 グリモア猟兵のグロリア・グルッグは自らが予知した事件を駆け付けた猟兵達に説明する。その表情は深刻で切実。何せ自らの故郷である星船だけでなく、宇宙そのものの危機が迫っているのだ。落ち着いてなどいられない。
「すみません、ありがとうございます。説明のほう、始めさせてもらいますね」
 グロリアは深呼吸して平静さを取り繕うと、展開した電脳空間に一隻の星船を表示した。
 それは以前、グロリアの予知した事件に関わった星船であり、猟兵達の活躍によって救われたはずの船だ。彼らは再び銀河帝国の脅威に晒されている。
「こちらが今回、皆さんに突入して頂く民間船となります。彼らは猟兵のことを知っていたので、銀河帝国への抵抗を早期に決めました。現在は解放軍と合流すべく航路を取っています。ですが、みすみす解放軍の結集を許すほど帝国は甘くありません。潜伏させていた工作員にテロを行わせ、コアマシンを破壊することで星船を止めるつもりのようです」
 そこで一息をついたグロリアは情報の整理を行い、さらなる説明を続ける。
「通常であれば艦内制御システムによるセキュリティが発動し、工作員の排除あるいは足止めなどがされます。ですが、今回に限ってはそれが一切機能していません。考えたくない最悪の事態ですが、工作員はサイバー戦争に長けた凄腕の可能性があります。一時的にセキュリティを無力化し、その隙に星船の動力源であるコアマシンのある部屋まで侵入してしまうでしょう」
 そこで、とグロリアは意を決した顔つきで猟兵達に伝える。
「皆さんにお願いしたいのはコアマシンルームの前での防衛……いえ、迎撃戦です。セキュリティを無力化した工作員は一直線でコアマシンを狙ってきます。道中で阻止しようとしても、すり抜けられる公算が高い。ならばいっそのこと、絶対防衛ラインであるコアマシンルーム前に戦力を集中した方が良い、と私は計算しました」
 猟兵達が提案された戦術を吟味するのを少し待ち、グロリアは今回の作戦における重要事項を告げる。
「この戦いにはミディアさんも同行されます。皆さんには彼女の護衛をしつつ工作員を撃破して頂き、その後ミディアさんがコアマシンに『ワープドライブ』を装着するというのが大まかな段取りですね。これからまずミディアさんの居る星船へと飛び、それから事件が起きる民間船へと突入するという流れになるかと思います」
 捲し立てるように説明し終え、呼気を乱すグロリア。
 事態は急を要する。これは戦争なのだ。ならば巧遅より拙速を重視すべきだろう。
「私は皆さんの移動に全霊を尽くします。どうか、力を貸してください。お願いします」
 グロリアは金色の電脳ゴーグルで表情を隠し、深々と頭を下げてから猟兵達を送り出した。


宝野ありか
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 同行する『フォースナイト・ミディア』は直接戦闘には関わらず、ある程度は自分で自分を守るので気にしすぎる必要はないでしょう。
 皆さんは銀河帝国の工作員を相手に全力で戦い、これに勝利してください。
 戦場はそれなりに開けた場所であるとし、明るさや足元はもちろん、高さなども戦闘に支障ないものとします。
 いわゆる純戦ですね。
 コアマシンルームの前に到着した所からスタートし、やってきた敵を迎え撃ちます。
 戦争なので判定は通常2回とプレイングボーナス1~2回で振ります。
 それでは本当に急な話ですが戦争開幕です。
 皆さんの熱く恰好いいプレイングをお待ちしております!
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第1章 ボス戦 『帝国エージェント』

POW   :    ゴールドアイ
【金色の瞳】に覚醒して【歴戦の白兵戦型ウォーマシン】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    仕込み帽子
自身が装備する【鋭利な刃を仕込んだ帽子】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    ハッキング
対象のユーベルコードに対し【電脳魔術のハッキング】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠グロリア・グルッグです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●スーツの男
 コアマシンルームの前に集結した猟兵達の元に一人の男が現れた。
 スーツの上にコートを羽織り、帽子をかぶったその姿は一見するとどこにでもいそうな勤め人だ。顔立ちは機械であることから、スペースノイドではなくウォーマシンだろうか。
 男は完全武装でたむろする猟兵達を見て驚いたような反応を見せる。
「うわわっ、いったいこれは何事ですか? こんなに大勢で、そこコアマシンのある部屋ですよね? 私はそこに用事がありまして……おっと、怪しいものじゃありませんよ。私、こう見えてメカニックでして。修理を依頼されたんですよ」
 気さくに呼びかけ、男は手にした金属製のケースをぽんぽんと叩いた。
 ね? と小首をかしげて猟兵達の様子を伺う。機械の顔に備えついた赤いマシンアイが高速で周囲を見回していたことに気づいた者はいるだろうか。
 白々しい男だ。あるいはそれは、この場に集った全員の感想だったかもしれない。
 男と猟兵達は互いに観察し合い、剣呑な空気が漂い始めた。
新納・景久
【鬼神軍】
「出陣じゃ! おはんら、気張らんか!!」
鬼吼丸を構え、近づいてくるエージェントに一直線に駆けてゆく
「俺こそはァッ! 鬼神軍が親指武蔵、新納景久ッ! こん戦、一番槍は俺がもろたァッ!!」
負傷などは特に気にすることもなく、【蜻蛉一之太刀】で次々にエージェントを切りつける
敵を寄せ付けないとか、足止めとか、そういうことは他の仲間に任せた
ただ敵の真正面に飛び込み、切り結ぶことに喜びを見出し、蜻蛉の構えからの振り下ろしでチェストチェストッ!!
「流石ん一筋縄でんいかんのう。ククッ、楽しかったど!  またの!」
ある程度のところで退却
と見せかけて、最後に火縄銃を土産に放つ



 はッ、と呼気を吐いた猟兵がいる。
「猿芝居もそこまでにせい。出陣じゃ! おはんら、気張らんか!」
 新納・景久は大太刀・鬼吼丸を蜻蛉の構えにて握りしめた。サムライエンパイアにて発達した独特な剣の型と、景久から放たれる強烈な剣気に気圧された男が慌てたように鞄を投げ捨て身構えた。
「な、なんですか急に! 刃物を振り回すなんて非常識ですよ! そっちがその気なら、すぐに警備を呼んで」
「俺こそはァッ! 鬼神軍が親指武蔵、新納景久ッ! こん戦、一番槍は俺がもろたァッ!!」
 男の話など聞く耳を持たず、景久は誰よりも先に突撃した。
 一番槍こそ武士の誉れ。だから行くのだ。それ以外のことは景久の頭に存在しない。
「チェストォォォォッ!!」
「う、うわぁぁ!」
 一目散に駆けてくる景久に怯えた男。その目が赤色から金色へと変貌した。
 必殺の間合いに入った景久がもう一歩奥へと踏み込んで鬼吼丸を振り下ろす。二之太刀のことなど考えない全霊の一撃が男を両断せしめんと叩き込まれた。
「チッ、蛮族が! 人の話くらい聞きやがれ!」
 豹変した男は機敏な体捌きで景久の剣を受け流すと後ろへと飛び退いた。
 ずさっと足裏の擦れる音が鳴り、別の場所でどさっと何かが落ちる音がした。
「……は? おい、いま確かに払ったよな? なんで俺の腕が落ちてんだ?」
 スーツの男――オブリビオン、帝国エージェントは信じられないといった様子で切断された自分の腕を見ている。
 景久の『蜻蛉一之太刀』はエージェントの防御技術の上から腕を叩き切ったのだ。
 げに恐ろしきはサムライの技。景久はにぃと笑うと、再び鬼吼丸を蜻蛉に構え直す。言い知れぬ圧を受けたエージェントに緊張が走り、金色のマシンアイが一際強く輝いた。
「流石ん一筋縄でんいかんのう。じゃっどん、腕ばもろたど」
「……帝国を舐めるなよ猟兵。腕の一本や二本無くした所で困るものかよ」
 景久の挑発に感情を露わにしたエージェントが徒手空拳の構えを取る。腕を切断されたというのに焦りはなく、歴戦の古強者然とした貫禄さえあった。
 良か敵じゃと景久は思う。
 ただの一人で集結した猟兵達と戦おうとし、腕を切られても怯まない。首級を獲るに相応しい相手だ。
 強敵との巡り合わせを喜び、景久は再び突撃した。

成功 🔵​🔵​🔴​

レッグ・ワート
普段乗ってる船もそのうち来そうだし、他人事じゃないんだよな。この手の物騒からは逃したい。そんな訳で還り時だぜ、働きもん。

相手の立ち回り見て緊急時の瞬発分も込みに見積もりながら、コアマシンルームへの動線を潰していきたい。それには見切りや武器受けしつつ俺自身も鉄骨も糸も使うし、手数がてら複製で鉄骨増やして動かしもする。複製した鉄骨は一本で足りなけりゃ組み合わせたり並べたりすりゃ俺や仲間の盾や足場、敵が体勢立て直す前に向けたり進退路塞ぐ壁にできるかね。邪魔になったり使われそうになったら即動かすか消すわ。

そちらさんが何だろうと仕事できないキツさは想像つくが、はいどうぞとはいかなくて悪いね。お疲れさん。


ヴェスター・アーベント
目的/敵の撃破
「俺を抜けられると思うなよ」

戦術/UC【聖魔二刀流】で攻撃
重視は攻撃回数。
『怪力』を以って振るう攻防一体の剣技。
聖剣で『武器受け流し』、『鎧砕き』の威力を持つ魔剣で斬りつけながら『吸血』して『生命力を奪い』受けた傷を癒しながら敵を倒すまで戦う継戦能力に長けた戦術。

行動/最前線に立ち、執拗に食いつき戦い続けて抜かせない。
「どうした、目の前に集中しろ…死ぬぞ」
抜かれないよう攻撃回数重視で釘付けにして、防御に優れ傷を癒しながら敵を焦れさせてゆき最終的な勝利を得る。
「オブリビオン滅すべし、銀河帝国滅ぼすべし!」

※アドリブ歓迎


稲荷・恋狐
■戦闘
恋狐は少しでもみなさんがエージェントとの戦いに専念出来るようにコアマシンの防衛を頑張りますねっ!
基本的にはコアマシンルーム前でエージェントさんの攻撃が飛んで来たら狐火の舞で作り出した子狐で迎撃します!

あとはエージェントさんが同行する猟兵さんの攻撃を相殺しようとした時に【呪詛】を込めたとっておきの七星七縛符でエージェントさんの相殺攻撃を封じてしまおうかと!
「今の姿の恋狐だと呪詛も封印も真の姿の恋狐ほど上手く出来ないけど……。困ってる人達を助けるために!いっしょに戦う仲間を支えるために!今の恋狐の全力であなたの動きを封じてみせますっ!!!」

(アドリブ・他の方との絡み大歓迎ですっ!)



 先駆けの一番槍となったサムライの猟兵が帝国エージェントと切り結んでいる。その戦いを稲荷・恋狐は後衛から――猟兵側の陣形の最奥である、コアマシンルームへの扉の前で固唾を飲んで見守っていた。
 お気に入りの扇を握る手に力が入る。恋狐の周りをふよふよと漂う表裏一体の護符は、主を危険から守る盾にならんと展開していた。
 恋狐が緊張するのも無理はない。
 先ほどミディアをコアマシンルームへと送り出した際、何の問題もなく入室できた。本来であれば厳重なロックが何重にも掛けられ、部外者の侵入を拒むはずの防御機構が機能していない証拠だ。
 つまり恋狐が背中で守る扉は敵の侵入をもたやすく許してしまう。万が一にも陣形を突破されるようなことがあれば、中にいるミディア共々コアマシンを破壊されてしまうかもしれない。
 ここは絶対防衛ラインの奥も奥、星船の人々や仲間の生命を左右する危険極まりないレッドゾーンなのだ。
 その意味を理解するからこそ恋狐は気合いを入れて扉の前に立つ。
「恋狐は少しでもみなさんがエージェントとの戦いに専念出来るように、コアマシンの防衛を頑張りますねっ!」
 敵は一人、こちらはチーム。仲間が攻撃に集中できるよう、恋狐は自分が要所を守ると明言し護符と狐火の舞で守りを固めた。

 恋狐が宣言した頃合いで、帝国エージェントと戦っていた猟兵が置き土産の銃撃を浴びせて後退した。その機に乗じて走り出す漆黒の騎士ヴェスター・アーベントの目には敵しか映っていない。
 戦場に同伴した猟兵が要所を守ると言った。ならばあとは敵を滅ぼすのみ。元よりオブリビオンの殲滅に執念を燃やすヴェスターに迷いなどなかった。
「チッ、味な真似をしやがって!」
「目の前に集中しろ……死ぬぞ」
 銃弾を頭に浴びたエージェントが金色に光るマシンアイをヴェスターに向ける。
 その反応は速いようで、実際は一手遅かった。
 ヴェスターは敵が構える瞬間を狙って加速する。意表を突かれた相手に束の間の恐怖を与え、魔剣・ブラッドイーターと聖剣・リヒトクライスを叩き込んだ。
「がぁっ! くそったれ、てめぇ……!」
「集中しろと言った」
 悪態をついた敵を冷たく突き放すヴェスター。ダンピールの怪力と聖天騎士団の剣技が猛威を振るう。
 聖魔二刀流。
 復讐の旅と数多の戦場で鍛え抜かれた聖魔二刀による怒涛の連続攻撃がエージェントを圧倒した。
 だが敵もさるもの。エージェントはゴールドアイを強く輝かせながら、ヴェスターに負けじと歴戦の徒手空拳でもって剣戟を捌いていく。
 優勢なのはヴェスターだ。先手を取るだけでなく、魔剣で敵の鎧を砕きながら聖剣で敵の反撃を受け流す。さらに敵に有効打を与えれば吸血し、魔法に頼ることなく自己回復してしまう。
 いくらエージェントが歴戦の古強者であったとしても、戦いながら回復するような相手では分が悪いようだ。
「オブリビオン滅すべし、銀河帝国滅ぼすべし!」
 防戦となった敵を追い打つようにヴェスターは気炎を上げて聖魔二刀を振るった。

 おおすげぇ、あれがキシドーとブシドーってやつか。
 仲間の猟兵の戦いぶりを心強く思いながら、ウォーマシンのレッグ・ワートは戦場の形を構築する。
 ウォーマシンが出てきたことに気づいたのか、帝国エージェントが金色の目に苛立ちを乗せて見てきた。
 ――そちらさんが何だろうと仕事できないキツさは想像つくが、はいどうぞとはいかなくて悪いね。お疲れさん。
 レッグは敵の動きから行動可能ルートを計算し、コアマシンルームへの道筋を潰しにかかる。同席した猟兵の恋狐が直接扉を守るなら、その前にも防御陣を組んでやれば盤石だ。
「あらよっと」
 レッグは複製した鉄骨を地面に突き立てるとその間を結ぶようにカーボン糸を張り巡らせた。敵に対する攻撃力こそ低いものの、容易には近寄らせない即席バリケード陣地の出来上がりである。
「す、すごいです! えっと、レグさん! あっという間に組み立てるなんて!」
「おぅ、昔取った杵柄ってやつよ。お嬢ちゃんの前は俺が守っからよ、そっちの扉は任せたぜ?」
 はいっ、と元気よく返事をしてくれた恋狐にレッグは満足した。
 正直な所、バリケードには大して期待していない。強化された鉄骨や頑丈なカーボン糸で組み上げたとは言え所詮はインスタント。本気で構築する防御陣形ほどの強度は望むべくもない。
 が、しかしだ。
 力任せでバリケードを破ろうとも、上を飛んで行こうとしても、地上には多数の猟兵が待ち構えている。彼らの前でたとえ一瞬でも隙を見せようものならどうなることか。
 そう計算させることも含め、レッグは防御陣地を構築した。


 レッグのバリケードを邪魔に思ったのか、エージェントは自身が装備する帽子を複製し始めた。その数は多く、加速度的に増えていく。
 内部に刃を仕込まれた帽子はエージェントの念力操作を受け一部はバリケードの破壊へ向かい、また一部は至近距離にいたヴェスターへと殺到した。
 ゴールドアイの格闘戦と仕込み帽子による飽和攻撃。通常であれば肉弾格闘と念力操作を同時に行うことは難しいだろう。だがエージェントは電脳魔術の使い手でもあった。ならば肉体の制御とは別領域で、思念操作をするなど造作もない――!
 そう、そのはずだった。事実多くの仕込み帽子がヴェスターに命中し、内部から飛び出た刃がその肉体に食い込んでいたのだ。だが……。
「どうした。集中力が落ちているぞ」
「ば、ばかやろう! てめぇ、何なんだいったい!」
 ヴェスターは肉に食い込む刃など気にも留めず魔剣を振るう。
 敵を斬りつけたブラッドイーターが吸血し、奪い取った生命力をヴェスターへと還元した。暗黒の力を纏う漆黒の剣は、ただ敵の血を吸うことで主の傷を癒したのだ。
「ふっ、ふざけんな化け物が!」
 宇宙技術が発達した世界の住人であるエージェントの常識では計り知れない存在だった。だいたいの負傷は医術や魔法で癒すことができる。だが敵を傷つけ、その血を吸うことで瞬時に回復するなど邪道も邪道、反則技だ。
 くそが、と怒りを込めてエージェントが鉄拳を放つ。弧を描く蛇の如き軌道に沿った致命の一打をヴェスターは聖剣にて弾き返した。
 聖剣リヒトクライス。守護の光を宿す聖剣は、聖天騎士団の長であった父の形見であり、騎士団を象徴する剣。その聖なる剣が悪機の拳に打ち勝った。
 ――勝機あり。
 態勢を崩されたエージェントが無防備な隙を見せ、勝利を確かなものにするべくヴェスターが力を溜めた。
 その瞬間、エージェントの金色の目が高速で明滅を繰り返し、眼前に電脳魔術のサイバーフレームを描き出した。
「視えたぜ、てめぇのコードがよぉ!」
 電脳魔術によるハッキングが行われる。
 微小な感電を伴ったハッキングは成功し、ヴェスターの聖魔二刀流を相殺した。
「取った! すみやかに死ね!」
 ほんの一瞬だけ硬直したヴェスターの隙を逃さず、エージェントの攻撃が放たれた。
 ――ここだ!
 飛来する仕込み帽子の群れを火の子狐で撃ち落としていた恋狐が好機を掴む。
 それは野生の勘とでも呼ぶべき超感覚であったが、恋狐はずっと何者かの視線を感じていたのだ。まさか激しく戦っていたエージェントが後ろの方まで見ていたとは想像もしないが、たしかに今この瞬間、恋狐を見ていた目が消えた。
 だから勝負を仕掛けるならここなのだ。
 ――お姉ちゃん、恋狐に力を貸して!
「エージェントさんを封じます! 動いちゃだめですよー!」
 恋狐は護符を鋭く打ち出した。限界まで引き絞られた弓から矢が放たれるように、速度を持った護符はエージェントに命中する。
 恋狐の呪詛に彩られた『七星七縛符』が発動し敵を縛り上げた。
「あぁ?! ふざ、けろ、てめぇら――!!」
 不可視の呪詛により身動きを封じられたエージェントの目が金色から赤色に戻った。複製されていた仕込み帽子の群れも消滅している。
 恋狐は自分の寿命を削りながら敵のユーベルコードをも封印していたのだ。
「う、ううぅ! この姿の恋狐だと、呪詛も封印も真の姿の恋狐ほど上手く出来ないけど……!」
 恋狐は苦し気な顔でエージェントに手をかざす。視界の先で呪縛を解こうとする敵が暴れるほど、恋狐の爪が割れて血が滲みだした。
 痛い。苦しい。寿命を削る技は強力であるがゆえに恋狐の心身を蝕んだ。
 こんなに辛いなら、苦しいなら、いっそ止めてもいいのではないか。他にも仲間はいるし、きっと誰かが何とかしてくれるはず。恋狐が苦しい思いをしなくても。
「……困ってる人達を助けるためにっ! いっしょに戦う仲間を支えるためにっ! 今の恋狐の全力で、あなたの動きを封じてみせますっ!!!」
「がああっ! やめろぉぉぉ!!」
 ふと湧いた弱気と敵を一緒に握りつぶすように、恋狐はぐっと手を握り固めた。
 空間ごと身動きを封じられたエージェントを見てレッグは喝采を上げる。
「でかした嬢ちゃん! 大金星じゃねぇか!」
 恋狐を見ると苦しそうな顔をしていた。どうやらイージーではないらしい。効果は推して知るべしだが、術者にも反動がある系統のものだろう。
 ふむとレッグは思考を切り替えた。
 近接型の騎士とやり合いながらハッキングを成功させた敵は凄腕だったが、相殺合戦は猟兵側が勝利を収めた。どんな策も先出し不利で後出し有利だ。敵がソロだったことと、こちらがチームだったことが明暗の分かれ目か。
「俺が普段乗ってる船にもそのうち来そうだし、他人事じゃないんだよなこいつらは。この手の物騒からは逃したい。そんな訳で還り時だぜ、働きもん!」
 レッグもまた星船に乗る一員であり、そのフネが銀河帝国に狙われないという保証はない。運よく敵の動きを事前に察知できればラッキーだが、中にはアンラッキーのまま沈められるケースもあるだろう。
 本当に他人事ではない。明日は我が身なのだから。
 レッグは構築したバリケード陣地を丸ごと念力で宙に浮かせた。そのまま巨大な塊を持ち上げるように気合いを入れると、おもむろに前へと投げつける。
 念力投射されたバリケード陣地がエージェントの退路を完全に断つように着弾した。
 恋狐の七星七縛符に封じられたままエージェントが後ずさる。その背に当たったものは、物言わぬ冷たい鉄骨だった。
「おい、まてやめろ、冗談だろ……?」
「あいにくお前の分の逃げ道はないぜ? 大人しく逝ってくれや」
 びしっと引導を渡すレッグ。その言葉に応答するように、力を溜め終えたヴェスターが顔を上げた。
 ヴェスターは暗黒の炎に魂をくべ、オブリビオンを滅殺するためだけの剣となる。
「死ね、オブリビオン――!!」
 聖と魔の剣がエージェントの身体を十字に切り裂いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ナハト・ダァト
これ以上荒らすのはやめて貰おうカ

同志に頼まれてネ、君を排除する者達だヨ

情報収集、世界知識で対象を観察
【三ノ叡智】も用いつつ、攻撃の弱点や行動を読むヨ

味方の援護にハ生まれながらの光ダ
光を放って敵の目潰しを行ってもいいだろウ


バウンドボディ、武器改造で体を伸ばしテ
一ノ叡智で向上させた防御力にオーラ防御も重ねてかばおう
激痛耐性は持ち合わせえているからネ。

※アドリブはお任せします


ナミル・タグイール
来る敵を迎え撃つだけにゃ?わかりやすいにゃ!
前衛は任せろデスにゃー!!
(脳筋猫)
・行動
姿が見えたら突撃にゃ!
【呪詛】纏った斧をぶんぶんして迎撃デスにゃ。呪いパワーで動き鈍くなったりしてくれないかにゃー。
ナミルが狙われてるうちに他の人がなんとかしてくれると信じるマスにゃー!
思いっきり近くまで近づけたら思いっきり斧を振りかぶって【呪飾獣の一撃】狙い
どっかーんデスにゃー!
ナミルは近づいて殴るしかできないからにゃ!
他の援護その他は皆ファイトデスにゃー!
何でも歓迎


大豪傑・麗刃
【鬼神軍】のみんなと参加。

おおう!もう始まってたのだ!さっそく天王星するのだ!

その恰好、あれか、悪ィせぇるすまんという奴なのか?
あやしいやつなのだ!わたしも日頃からあやしいあやしい言われるが、ここまでではないのだ!

武人として、あやしいやつは斬るに限るのだ!
右手に刀、左手に脇差(と呼ぶにはちょっと大きすぎる剣)を持ち、全力で斬り捨ててやるのだ!

帽子が飛んで来たら見切って斬って捨てる!
変身しても構わないのだ!剣刃一閃!二刀流だから二閃!2回攻撃で四閃!
ハッキング……もしされたらされてる間に他の人頼むのだ!


宇冠・龍
【鬼神団】の皆さんと参加します
新納さんに続きましょう

ここを突破されれば後がありません、手加減はなしでお相手します
私は【画竜点睛】で相手を捕らえ、動きを封じます
百以上の数となる悪霊の腕々、壁から天井から足元から。次々に出現する腕に、ハッキングで解析するにも時間がかかるはず、味方の攻撃連携のチャンスとなるでしょう

そして同時に帽子も取り上げるか抑え込むことで、遠距離における技を封殺、味方が攻撃しやすくします

「さて、あなたのスピードと私達の粘り強さ、どちらが上が根競べといきましょう」


宇冠・由
【鬼神団】の皆様と参加します

何やらダンディなエージェント、ここまで一直線で来た実力は恐ろしいの一言です
しかしここを通すわけにはいきません
拠点防衛は私の得意とするところ、皆様と一緒に守り切ります

【十六夜月】にて狼の群れを召喚
その爪と牙は金属相手でも切り裂きかみ砕きます

他の方に気を取られている隙を、その好機を見逃すわけにはいきませんの
どのような機械も、センサーがなければ満足に行動ができません
狙うは頭部の赤い目、そこを破損すれば変身機能もうまく動作しないはずですわ

狼は機動性もあるため、体勢を崩した方や吹き飛ばされた方のフォローにも周り、背に乗せ最速短で再び戦場へ送り届けます



 致命的な攻撃を受けたエージェントは最後の気力を振り絞って死地から脱出した。
 しかし満身創痍では立つこともままならず、ふらりふらりと身を揺らしている。
 追撃のチャンスと見た【鬼神軍】の宇冠・龍と宇冠・由の親子が目線を合わせる。それだけで互いの意図を読み取り、敵を仕留めるべく動き出した。
「行きましょうお母様。狩り入れ時というものですわ」
「ええ、行きましょう。逃がすことなく丁寧に丁寧に狩り立てましょう」
 由が『十六夜月』にて歴戦の狼の群れを召喚した。
 星無きソラに狼達の遠吠えが響き渡る。ヒーローマスクである由は一匹の狼に飛び移ると、群れを率いて駆け巡った。
「何やらダンディなエージェント、ここまで一直線で来た実力は恐ろしいの一言です。しかしここを通すわけにはいきません。どうかお覚悟を」
 狼群による連携行動は瞬く間にエージェントを包囲した。死角から襲い掛かった狼の爪がエージェントの顔面に命中し、いくつかのマシンアイを削ぎ落とす。
「くそっ、ケモノ風情が! やりやがったな!」
 狼の群れが召喚されたモノであるならば、それはユーベルコードによるものだ。ならば電脳魔術によるハッキングで相殺するのが早いだろう。
 そう計算したエージェントが虚空に電脳魔術の魔法陣であるサイバーフレームを描き出し、術者の由が騎乗した狼に狙いを定めた。
「由クン、狼でカバーしたまエ!」
 ロックオンされた由に声を飛ばすナハト・ダァト。彼もまた鬼神軍の一員であり、同僚に頼まれオブリビオンを排除しに来た猟兵である。
 ナハトの助言に従った由が一匹の狼に自身を庇わせると、ハッキングを受けた狼だけが消滅した。
 難を逃れた由が狼群による包囲陣形を作る中、龍はその中心に追い込まれた敵に向けて『画竜点睛』を放つ。
「咲けよ徒花、一つ二つと首垂らせ」
 死霊術に長けた龍の詠唱が呼び水となり、あらゆる空間から百を越える悪霊の腕が伸びてきた。生気を失った白く細い異形の腕の群れは、まるで救いを求める亡者のようにエージェントへと殺到する。
「ケモノの次はゴーストかよ! くそっ、俺に近寄るんじゃねぇ!!」
 群がる悪霊の手を乱暴に振り払うが、その手に触れた瞬間に生気を吸われるような怖気が走った。
 何らかの危険な呪詛が込められている。これに捕まるのはとてもマズい。
 そう判断したエージェントは電脳魔術による解析を行いながら回避行動を取った。
「よそ見するとはつれない御方。浮気はいけませんよ」
 悪霊の腕の隙間を縫うように狼を走らせた由が奇襲を仕掛ける。狼の爪がすれ違いざまにエージェントを切り裂き、機械の身体に深い爪痕を刻み付けた。
「あらあら、由ったら。そういう年頃なのかしら?」
 おとがいに指を添えた龍が小首を傾げる。のんきな親子のやり取りが交わされる間に、悪霊の腕がエージェントを捉えた。
 属性を帯びた技を極端に低減させる呪詛が込められた悪霊の腕を、エージェントは力任せに振り解こうと必死にもがく。ウォーマシンの怪力をもってしても拘束を解くのは困難であるようだ。
 それでも強引に悪霊の腕を振り回し、エージェントは残った金色のマシンアイを目まぐるしく動かしていた。ひどく低速化した術式展開で何とかハッキングを試みようと龍に目を向ける。
「――させないヨ。キミはここでおしまイなんダ」
 エージェントの視界から龍の姿を隠すように立ちはだかるナハト。
 ブラックタールであるナハトはバウンドボディで自らの表面積を拡張し、文字通りの巨大な石壁と化す。全身に纏ったオーラは仲間を守るために力強く輝き、金城鉄壁の如き堅牢さで敵対者を圧倒した。
「キミのハッキングは対象を『視る』ことで解析シ、それに対応したコードを打ち込むようダ。その速サは目を見張るものがあるガ、同時にそれが弱みなのサ。視なければ解析できない高速演算――それがキミのハッカーとしての限界なのだヨ」
 ナハトは看破した敵の弱点を指摘しながら両手を前にかざした。『滅悪の右手』から放たれた厳罰の赤光がエージェントを打ち据える。
「どうかネ? 由クンと龍クン、そして私のコード。どれから視るんだイ? それとも全て同時に視てみるかイ?」
 赤光を放ちながらエージェントを攻撃するナハト。打たれるがままになっていたエージェントは地獄の底から響くような唸り声を上げた。
「……俺の限界、だと? てめぇ……ぶっころす!!」
 激高したエージェントが強引に電脳魔術を展開した。狙われたナハトは『三ノ叡智』にて敵の攻撃を予想し、逆に赤光を連射する。こちらを攻撃させず、防御させることに成功した。
 その間にも龍の悪霊の腕による拘束は強まり、ついには身動きすらできないほどに大量の腕がエージェントに絡みついた。
「さァこれで王手ダ。あとは頼むヨ、麗刃クン、ナミルクン」
「応っ、なのだ!」
「にゃっはー! 前衛は任せろデスにゃー!」
 満を持して躍り出るは鬼神軍が頭目、大豪傑・麗刃だ。その隣を行くのは金ぴかの装飾品をじゃらつかせた猫科キマイラのナミル・タグイール。
「その恰好、あれか、悪ィせぇるすまんという奴なのか? あやしいやつなのだ! わたしも日頃からあやしいあやしい言われるが、ここまでではないのだ!」
「あやしいやつにゃ! 成敗するのにゃ!」
「武人として、あやしいやつは斬るに限るのだ!」
「そうにゃ! その通りにゃ!」
 勢いとフィーリングで会話しながら二人は進む。
 麗刃の右手には武人の魂であるサムライブレイド。左手には脇差と言い張ったバスタードソード。武士であれば二本差し。だからこれは脇差なのだ! と麗刃は完璧に理論武装していた。
 ナミルの手にあるのは多数の装飾が施された黄金に光り輝く巨大な斧だ。刻まれた妖しげなルーンは呪詛を増幅させ、比類なき呪いパワーを斧に宿していた。
 黄金の巨大斧を目にしたエージェントに戦慄が走る。封じられた電脳魔術で解析するまでもなく、あの斧はヤバイと本能が叫んだのだ。
 ――なん、だ、ありゃ。
 エージェントの金色の目がナミルの黄金の斧に吸い寄せられる。それは正しく黄金の呪いであり、魅せられた者に破滅をもたらす呪詛だった。
 敵の目は金色でナミルの斧も金色。ならば、と思い立った麗刃がぐっと全身全霊の気合を入れて髪を逆立てながら黄金のオーラを身に纏う。
「ハァァァァ!! これが、変態人の力だ!!」
「ひ、光ったにゃー!」
 しゅいんしゅいんと音が鳴っていそうで光っているだけのオーラを纏った麗刃に、ちょっとびっくりしたナミル。麗刃は『スーパー変態人』による発光でナミルの黄金斧と張り合い、満足した様子でエージェントを追い詰めた。
 ――なんだ、こいつ……!
 エージェントは勝ち誇った顔で近づいてくる麗刃に驚愕した。急に叫んだかと思えば光りだし、妙な圧力で迫ってくるのだ。この心境、なんと言葉にしたものか。
 麗刃のコードを電脳魔術で解析しようとして止めたエージェント。理解不能なコードを視て変なバグを起こしたとあってはハッカーとしての魂が死ぬと思ったのだ。
「ちくしょう、こんなのが俺の終わりかよ……!」
 怨嗟の声を上げたエージェント。その終わりを実行すべく、麗刃が剣を構えた。
「剣刃一閃! 二刀流だから二閃! 2回攻撃で四閃なのだぁぁぁ!」
 麗刃の剣が四条の閃きとなりエージェントを斬りつける。サムライエンパイアの剣豪の力を証明するように、その機械の身体を切断せしめた。
「さよならのどっかんかーんですにゃー!」
 ナミルは力いっぱい斧を振りかぶり、恐るべき呪詛を乗せた『呪飾獣の一撃』を叩き付ける。絶大な破壊力がエージェントを粉砕し、肉片の一つに至るまでの呪いを与えた。
 断末魔の叫びを残すことも許されず、オブリビオンの帝国エージェントは消滅。
 かくして星船は再び救われ、銀河帝国に反抗する解放軍の戦力が追加されることとなった。
 猟兵達の勝利である。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月09日


挿絵イラスト