●甘味なる波濤
竜め、と小さく吐き捨て、スフォルツァンド・スケルツァンド(バーチャルキャラクターのバロックメイカー・f10365)は苦い顔で猟兵たちを見た。
「突然、ある海域の海の水すべてがチョコレートに変貌した」
そしてその広大なチョコレートの海から、七大海嘯『桜花』メロディア・グリードと同等の力を持つ分身「増殖する私の残滓達(スイート・メロディア)」の大群が次々と出現する。
それも、1体や2体ではない。文字通り、大群が。
「肉体はチョコレートやキャンディなど、要するにスイーツでできている。そのため耐久力は低いが、その数は何百体、何千体と存在する。その分身たちの攻撃力はすべてが「七大海嘯と同格」だ。攻撃で殲滅される前に、全滅させなければならない」
竜め、とまた吐く。
短くも何かの感情が強くこもった声に、猟兵が眉をひそめた。
「なにか思い入れや因縁でもあるのか?」
「特にないけど、めんどくさい能力を持ったやつにいい感情を持てると思うのか」
問いにものすごく渋い顔で答える。それはたしかに。
まあ倒せば済む、倒せば。と唸るように続けて、
「攻撃方法はそこまで悪質じゃないから、とにかくできるだけたくさん倒せばいい。お前たちなら対応できるだろう。……数以外は」
数。ああ、とにかくそれが問題なのだ。
「そんなめちゃくちゃな数、倒せるのか……?」
「無差別範囲の攻撃とか……そういう……なんかないかな、そういう感じのアレ」
普段の背伸びした口調から少し幼さのある言い方で、意見を求めるでなくうつむく。
猟兵でありながらオブリビオンと戦った経験がほとんどないスフォルツァンドは、あまりユーベルコードに詳しくないようだ。
えっと、うぅん……と考え、それからふと顔を上げた。
「チョコレートの海は固まったりしないし、温度も普通だから心配はいらない。……チョコ。食べられる……?」
海のことではないだろう。もしかして、スイート・メロディアのことだろうか。
スイーツでできた肉体の敵だから、まあ、スイーツの味がするには違いない。それに、猟兵たちのなかにはオブリビオンを食べようとする者もいなくはないが、はてさて。
「まあ、どちらにしてもとにかく大量にいるのでどうにか対処してくれ」
気を取り直し、グリモア猟兵は耳飾りを揺らしてこくりと頷いた。
「任せたぞ、猟兵。俺はここで待つ。お前らが吉報と共に戻ってくるのを」
鈴木リョウジ
こんにちは、鈴木です。
今回お届けするのは、大量のスイーツ。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●チョコレートの海と『増殖する私の残滓達(スイート・メロディア)』
七大海嘯『桜花』メロディア・グリードの分身体の大群が、チョコレートと化した海から出現します。
分身体はチョコレートやキャンディなどのスイーツで出来ており耐久力は低いですが、1体1体の攻撃力は、他の七大海嘯に引けを取りません。
それが何百何千とめちゃくちゃ大量に発生するので、猟兵側が殲滅される前に全滅させてください。
どういう行動をとるのかイメージできれば、詳細な記載がなくても大丈夫です。
但し、常識的に考えて成功しないと判断できるような行動については、判定が厳しくなる可能性があります。
リプレイでは、分身体の大群と接触するシーンから始まります。
このシナリオには、以下のプレイングボーナスがあります。
=============================
プレイングボーナス……一斉攻撃を受ける前に、可能な限り多くの「増殖する私の残滓達」を倒す。
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なお、🔵が成功数に達すると判断して以降のプレイングの採用を見送らせていただく場合があります。
ご了承ください。
それではよろしくお願いいたします。
第1章 集団戦
『増殖する私の残滓『スイート・メロディア』』
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POW : スイート・エンブレイス
【甘い香りと共に抱きしめること】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : キャンディ・ラプソディ
【肉体を切り離して作った毒入りキャンディ】を給仕している間、戦場にいる肉体を切り離して作った毒入りキャンディを楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ : チョコレート・ローズ
対象の攻撃を軽減する【融解体】に変身しつつ、【毒を帯びた薔薇の花型チョコレート】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:hina
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ビスマス・テルマール
バレンタインに対して、旬と言えば旬ですけど、ここまで多いとご当地感が
あっても面倒ですね……ですが!
●POW
『オーラ防御&激痛耐性&覚悟』で備え『第六感』で攻撃を『見切り』『残像』で回避しつつ『空中戦&推力移動』で駆け回りながら『属性攻撃(炎)&誘導弾』を込めた『一斉射撃&制圧射撃』の『砲撃』を全遠距離武装と【ウルシ】さんの協力で撃ち『早業』でUCを『属性攻撃(炎)』込め『範囲攻撃』で纏めて攻撃
UCの名前から考えたら
さんがらっぽい炎の旋風の刃に
なってしまいそうですが
それはさておき『継続戦闘&限界突破』でUCと一斉射撃をさっきと同じ技能郡で
味方と連携しつつ一掃し続けます
※アドリブ絡み掛け合い大歓迎
ニィエン・バハムート
『無差別範囲の攻撃とかそういう感じのアレ』の【先制攻撃】の【範囲攻撃】!
増殖する爆鳴気が燃える炎とその時生じる爆発の【衝撃波】!それが無限に続き敵の大群を【なぎ払い】【蹂躙】し続けますわ!
実際やり方ミスると自分にも衝撃波や爆音で悪影響が出るので自分は【オーラ防御】で色々防ぎますの。
敵が大勢を立て直して一斉攻撃しそうな気配があったらそれを【野生の勘】で感じ取り、【空中浮遊】【水上歩行】で海上を駆け抜け一斉攻撃を受ける前に離脱しますわ。
分身体の駆除にも慣れてきましたわね…おっと、油断は禁物ですの。
ですが、この調子で本体も殺しまくってやりますわ!
真なる竜王のドラゴニアンの名にかけて!私深海人ですが!
牧杜・詞
生きて動くなら、殺せるってことよね。
しかも無限再生してくるなら、殺し放題ってことかしら?
1体1体はそこまでタフじゃなさそうだし、囲まれる前に殺していけばいいわよね。
メロディアの攻撃には、
【見切り】と【残像】を使って、抱きしめた、と思わせて間合いから離脱しよう。
こちらも引き続き【残像】と【切り込み】も使いながら、
【新月小鴨】に発動させた【命根裁截】で、相手の命を刈り取っていこう。
囲まれることがいちばん危ないから、
どんな行動をしていても、動きは絶対に止めないで、
できるなら相手の死角にまわりこんでいくわね。
それにしても……殺して殺して殺しまくっていいなんて、
猟兵ってやっぱり素敵なお仕事ね。
ラモート・レーパー
(あ……チョコってそもそも有機物じゃない)
UCを使いチョコレートの海に病魔をばら撒いて大量増殖させる。
一般的なチョコは水分が少ないから腐ることはあまりないけど、チョコの海であるのなら話が変わってくるはず。
病魔はもとをただせば細菌や菌類であり、これらの増殖の条件は水分と温度と栄養。水分の問題さえ解決すればあとは問題は無い
クロス・シュバルツ
アドリブ、連携可
これだけの数、正直殲滅しきれるか……いえ、無理でもやらねば先はない
加減抜きならどうにかやりようもあるでしょう
『オーラ防御』の応用。オーラを足に纏わせて海面に立った状態で、先手をとってUCを発動
闇の瘴気で周辺の敵を無差別に朽ち果てさせる
一体でも多く倒さねばならないこの戦場で行動速度低下は致命的なので、毒入りキャンディを給仕された場合は『毒耐性』にまかせて口にする
肉体だったモノを口にするのは精神的になんですが、元の肉体がスイーツなら意外と悪くない味でなんとか楽しめるくらいになっていたりするのでは
毒のダメージは近くの敵に黒剣や鎖を突き刺して、そこから『生命力吸収』で回復する
上里・あかり
アドリブ、連携お任せ
チョコは甘くて好きですが、今回はチョコの敵ですか……
さすがにお土産にはできませんよね
わっ、本当にすごい数の敵
攻撃を受けたらひとたまりもないですね
なので先制攻撃をして攻撃を受ける前に倒せば大丈夫ですね!
UCで風の魔法を足場にしてチョコの海を渡って攻撃します
炎の魔法で強化したらチョコの敵もあっという間に溶けちゃいそうですね
たくさん攻撃しますよ!
攻撃を受けないように距離は意識しますが狙われたら風の魔法を使って急いで離れます
そういえばバレンタインのチョコを用意してなかったですが……(チョコの海を見る)
これ、大丈夫ですかね?
チョコレートに変貌した海で、づぞづぞと波が立つ。
そのひとつずつがヒトの形を取りヒトの姿となるそのさまを銀の髪の下から黒瞳で見据え、クロス・シュバルツ(血と昏闇・f04034)は息を呑んだ。
「これだけの数、正直殲滅しきれるか……いえ、無理でもやらねば先はない」
呻吟めいた言葉にそうねと応え、牧杜・詞(身魂乖離・f25693)がかすかに頭をかしげた。
「生きて動くなら、殺せるってことよね。しかも無限再生してくるなら、殺し放題ってことかしら?」
なんとも穏やかな殺伐。だが、紛れもない事実である。
生きて動くなら殺せ。無限に再生するなら無限に殺せ。そのための技法は備えている。
「1体1体はそこまでタフじゃなさそうだし、囲まれる前に殺していけばいいわよね」
「加減抜きならどうにかやりようもあるでしょう」
濡れた深い緑の刃を抜きながら言い放つ彼女へ応えるように口にし、クロスも鎖をきりと鳴らして腕輪に触れた。
七大海嘯『桜花』メロディア・グリードの分身体、スイート・メロディアの大群が近づいてくるにつれ、甘い匂いが胸を灼く。
「チョコは甘くて好きですが、今回はチョコの敵ですか……」
さすがにお土産にはできませんよね。
うーん、と首を傾げる上里・あかり(あかりを照らすもの・f06738)。等身大メロディア・グリードであるスイート・メロディアをお土産に持ち帰ったら、ちょっといろいろ大変である。
むせるような匂いに、ビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)が呼気を吐いた。
「バレンタインに対して、旬と言えば旬ですけど、ここまで多いとご当地感があっても面倒ですね……ですが!」
「『無差別範囲の攻撃とかそういう感じのアレ』の先制攻撃の範囲攻撃!」
彼女の脇をすり抜け、陽射しを受けて輝く竜翼を羽ばたかせ飛躍するニィエン・バハムート(竜王のドラゴニアン(自称)・f26511)の周囲に炎が渦巻く。
「竜王の息吹で消し飛びなさい! バハムート・オーバード・ヘル・ブロア!」
ゴオゥッ!!!!
増殖する爆鳴気が燃える炎とその時生じる爆発の衝撃波! それが無限に続き敵の大群をなぎ払い、蹂躙し続ける!
またたく間に形を崩していく甘味の七大海嘯たちに、猟兵たちは思わず嘆息した。
「豪快というか、うっかりすると自分も巻き添えを食らうというか……」
「実際やり方ミスると自分にも衝撃波や爆音で悪影響が出ますのよ」
なので、自分はオーラ防御で色々防ぐ。力技に思えるが、立ち回りが求められる技巧派の戦い方だ。
どろりと溶けてチョコレートの塊となり海に沈むそれらを蹴りつけ、クロスはオーラ防御の応用でオーラを足に纏わせて海面に立つ。
津波のように押し寄せるスイート・メロディアを睨みつけ――。
「すみませんが、加減は出来ません。全て纏めて――朽ち果てろ」
口にした詫びは無論敵へではない。じらと彼の周囲で触れた物を著しく劣化させる瘴気が滾り、周辺の存在を無差別に朽ち果てさせる。瘴気が蝕むのは敵に限らず仲間たちをも冒すが、足取りを鈍らせる者はいない。
範囲外にあったスイート・メロディアたちが、驚異的な速さで詞へと肉迫する。数多の麗人の繊手が少女を捉えたと思ったそのとき、姿がふっと消えた。残像に惑わされた敵をひと振りで両断し、間合いから即座に離脱する。
残像をまといながら再び敵群へ切り込み、白鞘の短刀、新月小鴨にユーベルコードを発動させる。命根裁截で相手の命を刈り取っていく彼女のさまにビスマスは感嘆し、
「ではわたしも!」
防御を取りながらも自身も無事では済まない覚悟で、荒ぶる爆鳴気炎のなかを駆け抜ける。手を伸ばし捉えようとするスイート・メロディアの攻撃を第六感で見切っては残像で回避し、跳躍して空中を駆け回りながら全遠距離武装を展開すると、
「ウルシさん!」
叫んでお椀を投擲する。いや、それはただのお椀ではない。意思を持つ漆塗りのお椀型支援機『可変漆塗りスッポン型グルメツール『ウルシ』』がスッポン型メカに変形し、彼女とともに炎の属性を込めた一斉射撃と制圧射撃で、菓子細工の七大海嘯たちをなぎ倒していく。
存分にその技を振るう猟兵と、彼らに手をかける間もなく打ち倒される敵。
一見猟兵たちの優勢に見えるその戦いは、紙一重で一気に打ち崩されかねない。その能力もそうだが、ひとたび押し負ければ恐るべき数の暴力に屈服するしかないのだ。
それと理解するあかりは、驚嘆しながら魔法剣を構えた。
「わっ、本当にすごい数の敵。攻撃を受けたらひとたまりもないですね」
攻撃を受ける前に倒せば大丈夫ですね!
難易度の高いことを言ってのけながら風の魔法を足場にし、軽快にチョコレートの海を渡って。
「炎の魔法で強化したらチョコの敵もあっという間に溶けちゃいそうですね」
うん、と頷き魔法剣に炎をまとわせると身を躍らせた。
「たくさん攻撃しますよ!」
宣言とともに勢いよく剣を振るう。敵に囲まれず攻撃を受けないよう距離を意識しながら戦うが、他の猟兵たちに比べて手数が少なく技量で劣る彼女は、すぐに囲まれてしまった。さながら曼珠沙華の花のようにいくつもの腕に捕らわれそうになれば、風の魔法を使って急いで離れ、再び攻撃へと向かう。
あかりと入れ替わるように前へ出て立ち回り剣技を振るうクロスの目の前に、一体のスイート・メロディアが現れる。他へと同じように攻撃を放とうとして、しかし気付いた。
妖艶な笑みを浮かべた菓子細工の『桜花』は、花に包まれたキャンディを差し出していた。それも、……ヒトの形が残っている。
一体でも多く倒さねばならないこの戦場で行動速度低下は致命的だ。毒を食らうことと天秤にかければ、選ぶべき選択肢は決まっているが。
(「肉体だったモノを口にするのは精神的になんですが」)
元の肉体がスイーツなら意外と悪くない味でなんとか楽しめるくらいになっていたりするのでは。
さして期待していない希望と毒耐性に任せてキャンディを口にする。思ったよりも、いや、予想外に美味い。これが普通の菓子であれば言うことはなかったのだが、
「っぐ……」
思わず苦鳴がこぼれた。精神的なものはともかく、耐えられないほどではないが毒を完全に防げない。
そのわずかな隙を狙い、押し寄せる菓子細工の七大海嘯。
一斉攻撃しそうな気配を野生の勘で感じ取ったニィエンが、爆鳴気炎を叩き払い敵をねじ伏せながら空中浮遊と水上歩行を駆使して海上を駆け抜け離脱する。数瞬の余裕を得たクロスは短く息を吐くと、なおも押し寄せる鎖で絡め取り黒剣の薄刃を突き刺しその生命を己のものと奪い戦闘態勢を取り直した。
彼をカバーする形でビスマスがフォースセイバーを構え、
「なめろうフォースセイバー……ご当地パワー出力全開っ! なめろうスプラッシュ……サイクロンッ!」
ザザザザザッ!!
息をつかせぬ早業で、光の旋風刃に炎の属性を込め広範囲を薙ぎ払うと、香ばしい匂いも一緒に撒き散らす。あたりにただよう味噌の香りが、戦闘中であれどもほんの少しだけ食欲を刺激した。
「UCの名前から考えたら、さんがらっぽい炎の旋風の刃になってしまいそうですが」
さんがらとは、青魚などをたたいて調味料や香味野菜と混ぜ、つみれもしくはハンバーグ状にして焼いた郷土料理であり、なめろうを焼いたものと言える。
連戦に次ぐ連戦で疲弊し、少し思考が脱線してしまったか。それはさておき、限界を越えても戦闘を続ける。勝つために。
猟兵やウルシさんと連携を取りながら、ぐるっと頭をめぐらせて敵の数を確認して叫んだ。
「あともう少しです!」
彼女の言葉のとおり、あれほどいたスイート・メロディアは視界に収まるほどにまで減っていた。
あと、もう少し。
(「あ……チョコってそもそも有機物じゃない」)
ラモート・レーパー(生きた概念・f03606)は判断し、詠唱とともに高濃度かつ強力な病魔を含んだ息を放つ。
「『』の役目を持って、生命の均衡と調停を行う」
ユーベルコードを使いチョコレートの海に病魔をばら撒いて大量増殖させる。
一般的なチョコは水分が少ないから腐ることはあまりないけど、チョコの海であるのなら話が変わってくるはず。
病魔はもとをただせば細菌や菌類であり、これらの増殖の条件は水分と温度と栄養。水分の問題さえ解決すればあとは問題は無い。
そう考えてのことだったが……予想に反して、思うほどの効果は期待できなかった。
それでも動きの鈍ったスイート・メロディアを、詞が斬り伏せる。
囲まれることがいちばん危ないから、どんな行動をしていても、動きは絶対に止めないで。相手の死角にまわりこんでいき確実に仕留めていく。
あれほどの大群であった菓子細工の七大海嘯は数えるほどまでに減り、
「これで、終わり」
静かな一言ともに一閃が放たれ、最後の群れが溶け崩れ消えていく。
姿を隠し残存する敵からの不意打ちや奇襲がないかしばらく警戒を続け、ようやく安全を確認してから戦闘態勢を解く。
もはや荒ぶることのない波にこっくり首を傾げて、あかりがふと口を開いた。
「そういえばバレンタインのチョコを用意してなかったですが……」
チョコレートの海を見て。
「これ、大丈夫ですかね?」
その問いにあまり芳しくない反応がかえる間に、海の色がさぁ……と碧く戻っていく。
ふう。と息をつき、ゆるりと竜の尾を揺らすニィエン。
「分身体の駆除にも慣れてきましたわね……おっと、油断は禁物ですの」
油断すれば足元をすくわれる。彼女たちが身を置くのは、そんな場所だ。
「ですが、この調子で本体も殺しまくってやりますわ! 真なる竜王のドラゴニアンの名にかけて! 私深海人ですが!」
言わなければ可憐な見た目からは分からないので、真なる竜王のドラゴニアンということにしておこう!
数多の敵を屠り沈めた海面を見つめて、詞がそっと口にする。
「それにしても……殺して殺して殺しまくっていいなんて、猟兵ってやっぱり素敵なお仕事ね」
猟兵は敵を倒すのが仕事だ。たとえ理由がどうであれ。
今は穏やかな海に背を向け、猟兵たちは次の戦場へと足を向けた。
大成功
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