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羅針盤戦争〜一の王笏との決戦は光無き島で

作者：夢幻

●闇に閉ざされた『一の王笏島』
「さあ、『一の王笏』カルロス・グリードと決戦だよ」
　グリモア猟兵のスピカ・ネビュラスター（銀河の魔女・f31393）は、集まった猟兵達に任務の説明を始める。今回の任務の目的は、一の王笏の撃破だ。

「戦いは一の王笏島で行われるんだけど、そこは『視界を遮る黒い霧』に覆われているんだよね。でも、カルロスはそんな中で普通に視界を保てるみたいだよ。デビルキングワールドなら褒められる卑怯さだけど、実際にそれと戦うとなると大変だね」
　もちろんカルロスは先制攻撃の能力も持っているので、闇の中からの奇襲に対処しなければならないということになる。

「そしてカルロスの能力だけど、彼は分身と同じでダークセイヴァーの『紋章』の力を使ってくるよ。その種類は分身の時と違うけどね」
　紋章とは、取り付いた宿主を強化する特殊な寄生虫だ。カルロスがどのようにしてこれを手に入れたかは解らないが、その紋章の力はどれも強力だ。オブリビオン・フォーミュラというだけあって、カルロスはそれに相応しい強さを持っている。

「カルロスを撃破出来れば、一の王笏の勢力が低下するよ。それに伴って、1つの島が開放される事になるね」
　つまり、カルロスの撃破は探索の進行にも繋がるということだ。未だ見つかっていない本拠地は幾つもある。有力敵の撃破以外にも、探索を進めることは重要だ。

「えっと……説明はこれで終わりかな。じゃあ、頑張ってね」
　スピカは杖を振って、猟兵達を一の王笏島へと転移させていくのであった。

第1章 ボス戦 『七大海嘯『一の王笏』カルロス・グリード』

POW   :    餓える狼の紋章 【紋章の力】を使用する事で、【身体のあちこちに牙を思わせる鋭い角棘】を生やした、自身の身長の3倍の【黒狼】に変身する。 SPD   :    略奪者の紋章 【筋力を奪う爪】【速さを奪う爪】【意志の力を奪う爪】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。 WIZ   :    凍影竜の紋章 戦闘用の、自身と同じ強さの【触れる者を凍てつかせる氷の身体のドラゴン】と【影に潜み精神を喰らう黒影のドラゴン】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。 イラスト：hoi 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

　最初に『一の王笏島』へと転移してきたのは、神代・セシル（夜を日に継ぐ・f28562）だ。

「一のおじさんとの戦いは二度目ですね。前回は分身ですが」

　前回の戦いとは異なり、この島は黒い霧によって闇に閉ざされていた。相手の姿も見えぬその闇の中で、セシルは敵の攻撃を待ち受ける。

「『Starlit Shield』、最大出力です！」

　そして、闇の中から現れた氷竜の氷竜の噛み付きを、セシルは指輪より発生させたシールドでガードする。……だが、カルロスの放った竜はその一体だけでは無い。

「……あっ！」

　シールドの放つ星光で露わになった黒影の竜は、既に彼女の足下にいたのだ。それに対しての防御は間に合わず、竜の爪はセシルを切り裂いた。

「おじさんは……見つからない？　なら……ドラゴンを倒して、探します！」

　星光が照らす範囲に、カルロスの姿は無かった。それも当然、このユーベルコードは術者が傷つけば、召喚したものは消えてしまう。ならば、本体は攻撃を受けない遠くに離れているものだろう。そして、この闇は黒い霧によって構成されている。いくらセシルの目が良くても、物理的に遠方までは見えないのだ。

「氷には炎、闇には光、です！」

　『Windows of Heart』を発動したセシルは、氷竜にファイアーボールをぶつけて撃破すると、闇影の竜を『レオナルソード』で切り捨てる。相手の先制攻撃によって負傷は受けたが、ユーベルコードによる強化があれば戦いには問題ない。そのままセシルは、シールドの星光を頼りに、竜達が襲ってきた方向へとカルロスを探して島を駆ける。

「一のおじさん、見つけました！」
「もう辿り着いたか……」

　そしてセシルは、二体の竜を再召喚するカルロスを発見する。この状況ならば、先制攻撃の不利も存在しない。セシルは炎と雷、それぞれの魔法を付与した光の刀と剣でカルロスに切り込み、彼にダメージを蓄積させたのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

「カルロス、カルロスなあ」

　続いて一の王笏島へ足を踏み入れたのは、ヨナルデ・パズトーリ（テスカトリポカにしてケツァルペトラトル・f16451）であった。

「其の名で王と言うと妾の世界のあの外道が仕えた彼の王国の初代が思い浮かぶが……ま、何れにしてもあの外道、コルテスの主である事は変わらぬ」

　エンパイア・ウォーに参戦していたコンキスタドール、コルテスに関して、彼女は並々ならぬ思い入れがあるようだ。

「部下の行いは主の行い。あの外道に使役されておったあのケツァルコアトルの分も、一撃を喰らわせてやろうぞ！」

　そう。完全な同一存在とは限らぬまでも、テスカトリポカたるヨナルデにとって、ケツァルコアトルを使役していたカルロスは万死に値する。つまり、カルロスも同罪ということだ。

「……そちらであるか？」

　一寸先も見通せぬ闇の中、ヨナルデは感覚を頼りに襲い来るカルロスへ向けて、闇魔法をばらまいて対処する。しかし、完全な位置を掴めていない関係で、その弾幕の密度はさほど高くない。カルロスは魔法の薄い場所を突破し、ヨナルデへと対象の能力を奪う爪による斬撃を放ってきた。

「残念、それは式神であるぞ」

　しかし、カルロスが切り裂いたのはヨナルデが用意した式神だ。単にそれを出すだけでは、闇を見通すカルロスには見破られていただろうが、魔法の弾幕が上手く目眩ましになったようだ。

「さあ、力を貸して貰うぞ！　妾と対なす者、戦友にして好敵手にして兄妹だった者！　神である事に囚われ壊れ妾が過去へと送った伴侶！　翼ある蛇よ！」

　そしてカルロスの先制攻撃を凌いだヨナルデは『今は亡き対なす神の残り香』を発動し、高速飛行形態へと変身する。このスピードならば、カルロス相手でも遅れは取らない。

「お主の配下、コルテスの所業の報いを受けてもらう！」
「コルテス……？　ロロサエルの探索に世界を渡った奴がどうしたというのだ！？」

　困惑するカルロスを意に介さず、飛翔から飛びかかったヨナルデは、全力で振るった『黒曜石の戦斧』を彼へとぶち込んだ。彼女の怪力はカルロスが防御に掲げた爪を叩き折り、その身体を切り裂いたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「どっちから来るかわかんないなら、どこから来てもいいように防御を固めるよ！」

　闇の中より奇襲を仕掛けてくるカルロスに対し、神海・こころ（心海に沈む・f31901）が用意した対策は防御の強化だ。彼女は髪の毛武器を全身に巻き付け、強固な鎧を作り上げたのだ。

「ビーストとか、大型海獣に比べれば大したことないい!?!?　いっ、つうぅぅぅぅっ!!!」

　そうして待ち受けるこころに、闇の中を突進して来た巨大な黒狼が激突した。如何に防御を固めていようとその衝撃は凄まじく、更には黒狼に生えた牙のような鋭い角棘が彼女を抉る。しかし、吹き飛ばされた彼女はその痛みに耐え、闘争心を頼りに立ち上がる。

「ほう……まだ動くか」

　こころのしぶとさに、黒狼に変異したカルロスは感嘆の声を上げる。そんなカルロスへと『黄金バット』を向けて、こころはユーベルコードを発動する。

「アタシがいる限り、好きにはさせないよ!!」
「ぬうっ！？」

　『黄金解放』によって輝く黄金バットは黒狼の目を眩ませ、こころのダメージを癒やしていく。更にはその輝きは周囲を照らし出し、黒狼の姿をはっきりと浮かび上がらせた。

「さぁ、行くぞ!!!　倍返しだ!!!」

　目を眩ませたカルロスに、いまこそ勝機とこころは全力で黄金バットを薙ぎ払い、黄金の斬撃を叩きつけた！

「チッ……不覚を取ったか……」

　黄金の斬撃で負傷したカルロスは、闇の中へと撤退していった。しかし、回復したとは言えこころのダメージは残っている。ここで追撃を狙うのは流石に危険と、彼女も帰還を選択するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「視覚が利かぬ中で奇襲を受けては一溜まりもない。何とか初撃を最少ダメージに抑え、奴を捕えなければ……」

　闇に包まれた一の王笏島へと降り立ったナギ・ヌドゥー（殺戮遊戯・f21507）は、カルロスの奇襲攻撃への他対応に頭を悩ませる。先制攻撃だけでも脅威であるのに、地形も味方に付けているとは始末が悪い。

「『邪絞帯』を周囲に這わせば……奴が触れた瞬間を感知できる」

　ナギは呪詛包帯を全周囲に展開することで、それを鳴子のようにして敵の接近を見極める手に出た。ドーピングにより反応速度を上げた今の彼であれば、ほんの少し触れただけでも察知は出来る。
　そして、それからさほどの時間が経たぬうちに、カルロスの襲撃は訪れた。邪絞帯が断ち切られたかと思えば、その次の瞬間にはナギの元に略奪者の爪による三条の斬撃が向かってきていた。力、速さ、意志、それぞれを奪う斬撃は、一つでも喰らえばそれが敗因になりかねない。

「猟兵よ。全てを奪われ、ここに散るのだ」
「いいや。散るのはアンタだ」

　身を捻って2つの斬撃を回避したナギは、残る一つをオーラの壁で逸らし被弾を避けた。そのまま彼は無事な邪絞帯を操り、カルロスの拘束を試みる。

「そんなものが効くものか！」

　カルロスは爪を振るい邪絞帯を両断する。しかし、それへの対応を優先したことで、ナギへの警戒が一瞬薄れた。

「『九忌怨刃』！！　毒を塗った刃の連撃だ、どこまで耐えられるかな？」
「ぐ……面倒なことを……」

　一瞬の隙を逃さず、ナギは『歪な怨刃』で斬り掛かる。その圧倒的な攻撃速度はカルロスの防御を突破し、その身体に幾筋の傷を刻み込んだ。如何なカルロスといえ、毒を無力化するまでには多少の時間は掛かる。このまま戦闘は続けていられないと、闇の中へと退却していった。

　カルロスへのダメージはかなり蓄積している。撃破までは、もう後少しだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

　闇の中を疾走する黒狼、その正確な位置を、トリテレイア・ゼロナイン（紛い物の機械騎士・f04141）は捉えていた。

「工作員に照明を落とされた状況で暗殺者への対応を行わねばならない……そんな状況を想定した運用を前提に設計された身です。私のセンサーの前には、この闇でも昼間も同じです」

　そう、トリテレイアは機体に装備されたマルチセンサーによって、カルロスの歩行振動や音、熱源を解析することでその場所を把握していた。その上、視界を赤外線モードに切り替えれば、この闇による不利は最早存在しない。彼は黒狼の襲撃にタイミングに合わせて盾を構え、その爪牙を大型シールドで受けきった！

「王の拝謁に足る資格は示せたかと……。一の王杓、折らせて頂きます」
「たかだか初撃を防いだ程度で、調子に乗るな！」

　飛びかかってくる巨大な黒狼の下を、トリテレイアは脚部スラスターを用いた地面の滑走で潜り抜ける。そのついでに脚を斬り付けるおまけ付きだ。これで敵の機動力は大きく落ちた。

「さて、巨体の怪物への対処は……騎士として心得ております。少々、野蛮ではありますが……」

　足下を抜けて敵の背後へ回ったトリテレイアは、電流を放ち黒狼の動きを封じると、展開した隠し腕で拘束、そのままカルロスを地面に叩きつけた。そうしてひっくり返して晒された柔らかい腹に、追撃の刃を突き立てる。

「馬鹿な……紋章の力を具現化した、コンキスタドールの王たる我が……」

　腹を貫いた長剣はそのままカルロスの心臓を貫き、それがトドメとなった。黒狼の姿が小さくなり、元の人型のカルロスになったかと思えば、彼の体は消滅していった。骸の海へと還っていったのだ。

　こうして猟兵達は闇と紋章を攻略し、『一の王笏』に勝利した。彼の勢力は低下し、新たなる島も解放されたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2021年02月16日