羅針盤戦争〜紺碧の舞台で天使と踊れ
●決戦、『舵輪』ネルソン提督
「やぁ、みんな。羅針盤戦争も三分の一を過ぎ、戦局も順調に推移している様だね。『王笏』の拠点も次々と発見され、他の七大海嘯とも接敵している……今回みんなに相手をして貰うのも、そうした強敵の一角だ」
グリモアベースへと集った猟兵たちを前に、ユエイン・リュンコイスはそう口火を切った。彼女は読みかけの古振るしい海戦記を閉じて代わりにペンを取ると、持ち込んでいた羊皮紙に筆先を走らせる。濡れた墨で描かれるは、奇麗な円を描く『舵輪』の紋章。
「七大海嘯が『舵輪』ネルソン提督。今回はこれまでの様な襲撃への対処ではなく、敵側の本拠地に乗り込んでの決戦となるよ。当然、相手も本気を出してくるだろうね」
数々の島を開放していった結果、猟兵たちはその島を発見する事に成功していた。二つ名の通り、巨大な舵輪が聳え立つ巨島。それが相手の根城としている場所である。後はネルソンを復活限界まで討伐し続ければ勝利となるが……無論、そうすんなりと倒せるような相手ではない。
「自らの本拠地を割られた結果、ネルソンも奥の手を出してきたようだ。襲撃時に従えていた天使たちを限界まで己自身と融合させ、決戦形態(トラファルガー・モード)へと変身しているみたいだね」
決戦形態となったネルソンは戦闘能力が数段強化されるのに加え、痛みや状態異常を無効化できるようになる。その範囲は毒や麻痺と言った肉体的な面から、幻覚や催眠と言った精神的な面にまで及ぶ――つまり、下手な小細工は一切通用しないと考えてよい。
ダメージ自体は通るが付随効果による悪影響を受けないため、それを主軸として立ち回るのは避けるのが無難だろう。
「そうした異常耐性に加え、取り込んだ天使たちを使った戦術はただ脅威の一言だね。彼はネルソン『提督』……正面切っての戦闘は勿論だけれど、軍勢の扱いこそが本領とみて良いだろう。無策で相対すれば、有効打を与える事はまず不可能だ」
驚異的な身体能力、状態異常の無効化、天才的な用兵手腕。正にワンマンネイビーと言っても過言ではない。フォーミュラ級のような世界を変えるほどの特殊能力こそ無いが、ただひたすらに『軍勢』としての強さを突き詰めたタイプの強敵と言えよう。これらを突破して初めて、ネルソンの身体に傷を負わせることが出来るのだ。
「今回の戦争はフォーミュラである『カルロス・グリード』の討伐、それが最終勝利条件だ。その他の七大海嘯は極端に言ってしまえば捨て置いても構わない……が、先の迷宮災厄戦における猟書家の件もあるからね。後々の憂いを取り除けるのなら、それに越したことは無いさ。彼らを一回倒せば支配下に置かれていた島も一つ奪還できるし、決して無駄にはならないよ」
斯くして、ユエインはそう言って説明を締めくくると、猟兵たちを送り出すのであった。
●樽は琥珀に満ち、最小の海にて揺蕩う
「見敵必殺(サーチ&デストロイ)……敵を見つけ次第、速やかに叩く。他ならぬ俺の言った言葉だ。である以上、そうされるのも当然だろう」
カラリと、グラスの中で氷が音を立てる。琥珀色の液体はブランデーか。芳醇な香りを湛えるそれを喉へと流し込みつつ、『舵輪』ネルソンは椅子に腰かけながら海の向こうを見据えていた。提督が居るのは本拠地のすぐそばに停泊した、クレマンソー級空母の甲板上だ。
彼は今この瞬間も己が首を求めて近づきつつある猟兵たちの気配を敏感に感じ取っているが、その表情は飽くまで淡々としたもの。己が異常耐性の影響か、それとも元々の正確故か。そこまでは判然とし難い。
「既にカルロス・グリードの本拠地は半数近くが暴かれ、七大海嘯もまたあとは『邪剣』を残すのみ……兵は神速を貴ぶとはよく言うが、なるほど正に驚嘆に値する進撃速度だ」
だが、と。ネルソンは立ち上がり、テーブル代わりにしていた酒樽の上へとグラスを置いた。その中に満ちていた液体は既に乾され、溶けかかった氷のみが揺らめいている。
「それのみで勝敗全てが決する訳ではない。相対する全てを打ち倒すまで、完全な勝利も完璧な敗北もあり得ん……それこそが『艦隊決戦』思想の根底だ」
ふわりと、提督の身体より無数の翼が伸びる。純白の、穢れる事を拒絶する清らかさの象徴。されど、それらのこの場における役割はただ一つ――敵の殲滅のみ。
「さぁ、来るが良い。勝利の美酒を傾けるのはお前たちか、俺か。その結果を出すとしよう」
ネルソンの視線の先では、水平線の上に無数の船影がうっすらと浮かび上がりつつあるのであった。
月見月
どうも皆様、月見月でございます。
今回は戦争シナリオ、七大海嘯が一角『舵輪』ネルソン提督との決戦となります。
因みに『ネルソンの血』の逸話に関してはラム酒という話が有名ですが、実際はコニャックだったらしいですね。今回はそちらに準拠してみました。
それでは以下補足です。
●最終勝利条件
『舵輪』ネルソン提督の撃破。
●戦場
本拠地近くに停泊しているフランス海軍所属『クレマンソー級空母』の甲板上となります。広さ・耐久性共に戦闘を行うに耐えうる基準となっています。
●『舵輪』ネルソン提督
従えていた天使たちを限界まで取り込み、決戦形態(トラファルガー・モード)となっております。この状態では戦闘能力が大幅に強化されるのに加え、肉体面・心理面に対する状態異常に対する耐性を得ています。ダメージこそ通りますが、それに対する影響は無効化されます。(麻痺を伴う攻撃で傷は負うが、痛みによる動揺や身体機能の低下は発生しないなど)
●プレイングボーナス
敵の先制攻撃ユーベルコードと「決戦形態(トラファルガー・モード)」に対抗する。
先制攻撃に対処して同じ土俵へと立ち、異常耐性を貫いて手傷を与える。その二つを突破する方法を仕掛けられれば、判定にボーナスが発生します。
自由な発想にてお考え下さい。
●プレイングの受付・採用について
断章は無しで、OP公開後から受付を開始いたします。
今回は戦争シナリオの為、採用数は少なめの予定となります。必要成功数+αで無理なく書ける分だけ執筆予定ですので、全採用の確約が出来ない点は予めご了承頂けますと幸いです。
それではどうぞよろしくお願い致します。
第1章 ボス戦
『七大海嘯『舵輪』ネルソン提督』
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POW : 天使の銃
自身の【肉体に吸収融合した天使の軍勢】を【敵に応じた『天使武装』】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
SPD : 聖守護天使
【手から現れる天使達】で攻撃する。[手から現れる天使達]に施された【瞳を覆う聖なる帯】の封印を解除する毎に威力が増加するが、解除度に応じた寿命を削る。
WIZ : 天使槍兵団
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【舵輪の脚から現れた天使達が放つ光の槍】で包囲攻撃する。
イラスト:シャル
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
フェルト・ユメノアール
搦め手が効かないなんて厄介な相手だね
でも、負ける訳にはいかないよ
キミを倒してこの世界に平和を取り戻す!
先制攻撃に対しては『ワンダースモーク』を使用、戦場を煙で包み込む事で視界を奪って射撃攻撃の命中精度を低下させ、飛び退き回避
そのまま煙に紛れてネルソンに接近、『トリックスター』で一閃するよ!
もちろん戦闘力は相手の方が上、奇襲でダメージを与えたら敢えて距離を取り、相手のUCを誘発して『カウンター』UCを決める
この瞬間を待っていたよ!
さあ、夢幻の射手のご登場だ!現れろ!【SPトリックシューター】!
トリックシューターの効果発動!
周囲の飛び道具を吸収して、相手に矢として打ち返す!
シャイニング・アロー!
●開幕は華やかに、鮮烈に
「先陣を切るは道化、か。政事に宮廷道化は付き物だが、戦場で相まみえた事は数える程度。さて、実力は如何ばかりか」
「こっちとしては襲撃戦時に何度か交戦しているけれど……その時から随分とまた変わったのかな。搦め手が効かないなんて、まったくもって厄介な相手だね」
待ち受けるネルソンの眼前に姿を見せたのは、青を基調とした装束に身を包んだ道化だった。先陣を切って駆けつけたフェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)は油断なく構えながら、相手の戦闘力を推し量らんとしている。どう動こうとも確実に先手は取られるだろう。ならば、狙うのは後の先ただ一つ。
「少し見ただけでも分かるさ、強敵だってことぐらいはね……でも、負ける訳にはいかないよ。キミを倒してこの世界に平和を取り戻す!」
「大言壮語を、などと侮るつもりはない。故にこちらも初手から全戦力にて行くぞ」
道化師の言葉に応じてネルソンが小さく指を鳴らすや、聳え立つ舵輪の足元より無数の天使たちが飛び立ち、空母甲板上空へと集結してゆく。その数は百や二百どころか、軽く千を超えていた。巨大なハイロゥの如く陣形を組んだ天使たちは手に手に光の槍を構えて狙いを定めるや、一斉にフェルト目掛けて投擲してくる。
「単なる直線軌道じゃなくて、一本一本が複雑な幾何学模様を描いているね。これを馬鹿正直に避けるのは骨が折れそうだ。なら一つ、『お楽しみ』の仕込みがてらに目晦ましと行こうか!」
四桁を超える数の攻撃に対し、道化師は小さく一礼すると足元へ小さな玉を幾つか放り投げた。瞬間、それらは内部から色とりどりの煙幕を吐き出してゆく。如何に回避困難な軌道を描くとは言え、自動追尾機能を持っている訳でも無し。ネルソンと天使の視界から逃れてしまえば、自ずと照準も甘くなるというものだ……が。
「見えようが見えまいが関係ない。空間全てを攻撃で満たしてしまえば、回避と言う選択そのものが意味を成さん。これが『最大戦力』という言葉の意味だ」
戦いは数だ、とはよく聞くフレーズではあるが、同時に真理でもある。如何に金剛石が硬くとも、一粒で津波を押し留める事など不可能。それと同じことだ。煙幕を貫き、光の槍が剣山の如く甲板へと突き立ってゆく。攻撃の余波で煙が薄まった其処には、しかして道化師の骸は見当たらなかった。
「ほぅ、今のを凌ぐか」
「……見縊って貰っちゃ困るね、仮にもボクは道化師なんだ。こんなのは日常茶飯事の通常業務。寧ろ、足場が多くて助かるよ!」
ネルソンが頭上へ視線を向けると、其処には宙空へと飛び上がったフェルトの姿があった。彼女は持ち前の柔軟さと身軽さを生かして僅かな安全地帯へと身体をねじ込むや、光槍を足場として相手の頭上を取ったのである。とは言え、相手も本気を見せた七大海嘯だ。流石に無傷とはいかなかったらしい。身体には無数の傷が刻まれ、流れ出た血が装束を赤黒く汚してゆく。
だが道化師が浮かべて良いのは笑顔以外に在り得ぬと、少女は苦痛を押し殺しながら笑みを浮かべて見せる。そのまま、フェルトは取り出した短剣群を投擲して牽制を行う。
「大道芸としては悪くなかったが……しかし、そこまでだ。その程度では威力も数も足りんな」
だが、相手も愚かではない。寧ろ用兵家としては超一流だ。抜け目なく護衛用に残していた天使によって短剣を叩き落すと、返す刀で光槍を放ち決着を狙う。空中では身動きが取れず、端的に言って絶体絶命の状況であり――。
「この瞬間を待っていたよ! さぁ、お楽しみはこれからだ!」
これこそ、フェルトの待ち望んだ状況であった。彼女は懐より一枚の札を取り出すや、それを高らかに掲げて見せる。
「飛び道具の相手なら彼にお任せ、夢幻の射手のご登場だ! 現れろ、SPトリックシューター!」
すると札の中より現れたのは赤黒の弓使い。スマイルパペットと称される召喚体は輝く槍の群れへと身を晒してゆく。これを防御に回すのか? 答えは否である。
「トリックシューターの効果発動! 相手の攻撃宣言時、周囲の飛び道具を吸収してそのまま矢として打ち返す! これなら、数の不利はひっくり返せるよね!」
「なるほど、相手の力を利用するか。それもまた一手だ」
光槍は道化師の前まで来た瞬間、くるりと反転して天使たちを逆に貫いてゆく。そうして護衛を殲滅すると、本命の一矢を弓使いが放つ。相手の不意を突いた一撃は狙い過たず、ネルソンの胸板へと突き刺さった。
ダメージとしては決して大きくはないだろう。しかしそれは、何よりも雄弁に猟兵からの宣戦布告を提督へと叩きつける事に成功するのであった。
成功
🔵🔵🔴
青葉・まどか
強敵のネルソン提督が本気になった決戦形態。
相手が強いからといって逃げ出すわけにもいかないからね。
真っ向勝負、打ち勝ってみせるよ。
提督の手から現れる天使たちの攻撃を【視力】で【見切り】、『クレマンソー級空母』の甲板上の【地形の利用】して、フック付きワイヤーを駆使した立体機動で回避を行う。
攻撃を凌いだら、こちらの番だよ!
決戦形態の提督に小細工は効かないからね。『神速軽妙』発動
周囲にいる天使たちを【フェイント・残像】を駆使して、躱しながらトップスピードで提督に肉薄。
【早業】の【2回攻撃・鎧無視攻撃】の斬撃を決めるよ!
●鋼鉄の巣にて、舞えや乙女
「ふむ……侮ったつもりはなかったが、文字通り一矢報いられたか」
決戦形態による恩恵なのだろう。特に苦痛を覚えた様子も無く、ネルソンは己が胸に突き立った矢を無造作に掴むとそのまま力任せにへし折った。そんな敵の様子に、青葉・まどか(玄鳥・f06729)は元々抱いていた警戒感を更にもう一段上へと引き上げる。事前説明こそ聞いてはいたが、百聞は一見に如かずとは正にこの事だ。
「たかが一撃、されど一撃……ただでさえ強敵のネルソン提督が本気になった決戦形態。でも相手が強いからといって、逃げ出すわけにもいかないからね。真っ向勝負、打ち勝ってみせるよ」
だが恐ろしい敵ならばこれまでに幾度も相対し、そしてその悉くを打ち破ってきた。積み重ねてきた経験が、彼女に怯懦や不安ではなく自信と闘争心を与えてくれている。臆する気配の無い新たな猟兵を前に、提督もまたスッと目を細めてゆく。
「成功とは、勝利とは実に頼もしくも恐ろしいものだ。どの様な弱卒とてそれを得れば獅子へと変わる。故にこそ、経験を蓄積される前に潰すべきだった……このようにな」
ネルソンが優美な仕草で手を横へと振るうや、その軌道に沿って無数の天使たちが呼び出されてゆく。彼らは大きく翼を一打ちすると上空目掛けて飛翔を開始していった。障害物が一切存在しない洋上は、翼を持つ存在にとって絶好の戦場である。平面的にしか動けぬ者がそれに抗する事は極めて難しい。ならばと、まどかは周囲の地形や設備を一瞥して把握しながらフック付きワイヤーを取り出した。
「戦闘機の離着陸を行う甲板と言っても、一切の障害物がない訳じゃない。艦橋を始めとして単装砲やミサイル発射機構などの構造物が存在しますからね。例え翼が無くたって、対抗手段は幾らでもありますよ!」
少女は手近な砲塔へとフックを投擲して自らの身体を引き上げる事により、殺到してくる敵群から間一髪逃れる事に成功する。そのまま艦上設備を足場として、彼女は三次元立体機動へと移行していった。平面対立体の勝負であれば確かに分が悪い。しかし、こうして同じ土俵へと立てれば話は別だ。条件さえ五分ならば、後は個々の力量こそが物を言う。
(眼帯を外されると厄介だから、その前に出来るだけ数を減らしておきたいところかな。フックを掛けられる場所も限られているし、相手としてはそう時間も掛からずに動きを読み切れると考えているかもしれないけど……っと!)
翼を利用し弧を描く軌道の天使と、次々と投擲する鉤縄によって鋭角的な機動を行うまどか。単騎での実力は後者に軍配が上がるものの、状況としては前者が数の差を活かしジリジリと猟兵を追い立てている構図と言って良い。
そんな状況を打破すべく、少女は相手の数そのものを利用する事にした。攻撃を仕掛けんと不用意に接近してきた天使をフックワイヤーで絡めとるや、なんと相手自体を即席の踏み台として利用したのである。跳躍と同時に手にした短刃で仕留めつつ、まどかはそのまま一直線にネルソンへと肉薄してゆく。
「先の道化と良い、随分と身軽な手合いが多いようだ。よもや倒すだけでなく、俺の元へ辿り着く為の道にするとは。苦肉の策とは言え、成し遂げた以上は認めざるを得んだろう」
「素直に誉め言葉として受け取っておくよ! さぁ、いまからはこちらの番だ!」
対するネルソンは手にしたマスケット銃を構えて迎撃の姿勢を見せる。天使は飽くまでも前座だ。痛みや異常の一切を跳ね除ける七大海嘯が一角、『舵輪』の打倒こそが最終目標なのだから。故にこそ、このまま挑んだとしても恐らくネルソンへは届かない。
(決戦形態の提督に小細工は効かないからね。かと言って、相手に痛打を与えられるだけの大火力は残念ながら持ち合わせていない……なら)
――今よりも速く、もっと軽やかに。
提督がトリガーを押し込んで弾丸を放った瞬間、その射線上よりまどかの姿が掻き消える。一撃の威力が足りぬのであれば、早さと手数で挑めば良いだけのこと。その超加速が少女の異能によるものだとネルソンが悟った時点で、既に猟兵は攻撃を放ち終えていた。
「速さと言うただ一点のみを突き詰めた業か……しかも、一撃ではないとはな」
「短刃の一閃で傷を刻み込み、返す二の太刀でより深く斬り裂く。如何に強化されていようとこの刃は防げませんよ。十代永海が鋭春氏の一作、その銘は煌めき駆ける彗星と言う意を籠めて……煌駆」
まどかの左手に握られしは武骨な造りのダガー、そして右手には柄まで総金属製の短刃。刃が己の名を誇るようにうっすらと刀身を煌めかせるや、ネルソンの胸に刻まれた二条の斬傷もまた一拍遅れて輝きを溢れ出させてゆく。そうして傷口を焼く光の斬撃に紛れながら、一撃を与えるという目的を果たした少女は一旦仕切り直すべく後退してゆくのであった。
成功
🔵🔵🔴
未不二・蛟羽
見敵必殺…って良く分かんないすけど、つまりお残しはダメってことっすよね!
そんなのこっちも同じっす
ラスボスじゃなくても逃がす理由なんて無いっすよ!
光の槍に対しては、見切りと野生の勘で対応
【No.40≒chiot】にも死角をカバーして貰いつつ、ダンスするように跳んで跳ねて、緊急回避には笹鉄のロープワークも駆使して掻い潜るっすよ
攻撃を抜けたら墜喰を発動
天使を含めて異形で敵を取り囲み
痛みが無いなら、喰われたって引かない
…なら、俺は喰い放題ってことっすよね?
それなら、一斉に襲い掛かって大食いで生命力を食い尽くし
こいつらは多少潰されたって離れない
その足を、手を、肉を、筋を、筋を、一片も残さず喰いきってやる
●甘き酒精に獣は酔いしれる
輝きが晴れた時、ネルソンは依然として甲板上に佇んでいた。二度猟兵と交戦してもなお、動じた様子はない。ダメージ自体は通っているのだろうが、果たしてどれだけ攻め立てれば倒せるのか。底が知れぬ不気味さが、相手の威容からは滲み出ている。
「見敵必殺こそが戦場の鉄則、戦力の逐次投入など愚策以外の何物でもないと考えていたが……なるほど、波状攻撃と言うのもこれはこれで厄介なものだ」
「見敵必殺、逐次投入……? 難しい専門用語は良く分かんないすけど、つまりお残しはダメってことっすよね! そんなのこっちも同じっす!」
しかし、そんな敵の強大さなど何処吹く風とばかりに威勢の良い声を上げるのは未不二・蛟羽(花散らで・f04322)であった。彼は姿勢を低くしながら翼を広げ、ゆらりゆらりと腰元の蛇をくねらせる。知識や理屈などの小難しい物事は分からぬ。しかし本能は眼前の相手が狩るべき『獲物』であると告げていた。それさえ分かれば十二分。
「色んな世界で暗躍している猟書家の例もあるっすからね。ラスボスじゃなくても逃がす理由なんて一つも無いっすよ!」
「引き際の分からぬ凡愚になるつもりはない……だが、俺の抱く信条に殉ずるならばそうもいかん。まだこちらには十分すぎる程の戦力が残されているのだからな」
敵艦をすべて沈めるか、自分の艦をすべて沈められるか。それこそがネルソンの提唱した『艦隊決戦』思想の根底である。故にこそ、中途半端な決着など己自身が許さないのだろう。再び千を超える天使の軍勢が甲板上空へと姿を現し、光の槍を引き絞ってゆく。
(直撃を受ければひとたまりもないっすね。でも、何か凄い策がある訳でも無いっす。俺が出来る事はただ、全力で避ける事だけ……!)
頭上を埋め尽くす敵の軍勢を蛟羽が睨む中、夥しい数の光条が降り注ぎ始める。青年は持ち前の身体能力を活かして攻撃を避け、弾き、或いは受け流すことによって凌いでゆく。五体のみならず翼で風を捉え、蛇尾を振って重心を移動させ、受ける傷を最小限にせんと試みていった。
「動きは人と言うよりも獣のそれだな。だが、ブラッドスポーツは貴族の嗜みだ。精々逃げ回るが良い。どうせ、長くは続かん」
しかし、相手は稀代の用兵家だ。初撃で仕留められなければ二の太刀にて進路を塞ぎ、足りなければ三撃目を重ねて退路を断つ。ネルソンは天使と言う兵力を存分に活かし、着実に猟兵を追い詰める。蛟羽も懸命に避け続けるものの流石に無傷とはいかず、僅かずつではあるが傷が蓄積してゆく。それこそまさに『キツネ狩り』そのものだ。
「これで終わりだ……取ったぞ」
そうして遂に光の槍が青年を射線上へと捉える。死角となる頭上後方より回り込む、輝ける穂先。それは獲物を確実に仕留めるため猛然と食らい付き――。
「……いいや、そうでもないっすよ。『chiot』のお陰で見えていたっすからね!」
直撃の寸前、猟兵の姿が射線上より掻き消えた。紫の花が刺繍されたパーカー、そこに宿りし餓えたる仔犬が攻撃をいち早く察知するや、傷口より流れ出た血液を媒介として鈎付きワイヤーを生成。周囲の建造物へと引っ掛けることで必殺の包囲網より逃れたのである。
「ほう。単なる獣と侮った俺の落ち度か……いや、寧ろ逆だな」
策が成ったと思った瞬間を外されれば、誰しも隙が生じるものだ。追撃を仕掛けようとする天使の軍勢を尻目に、蛟羽は飛び出した勢いそのままにネルソンへと挑み掛かってゆく。その姿を真正面から見据える提督は、どこか愉快気に口元を歪める。
「痛みが無いなら、喰われたって引かない。止まらないし、逃げ出しもしない……なら、俺は喰い放題ってことっすよね?」
その理由は猟兵の様子に在った。青年の瞳に映る感情は戦意でなければ敵意でもない。ただただ満たされぬ飢餓感のみが、彼の思考を支配している。正しくそれは餓えた獣以外の何物でもない。その欲求を具現化する様に、翼より零れ落ちた羽が異形へと変貌してゆく。ガチガチと歯を打ち鳴らす、口に翼の生えた化け物。それらは蛟羽と共に、獲物を貪り喰わんと殺到する。
「こいつらは多少潰されたって離れない。その足を、手を、肉を、筋を、中に詰まった天使ごと一片も残さず喰いきってやる……!」
「獣は獣でも人喰いの猛獣だったか。躾けるなどと生ぬるいことは言わん、文明の利器にて仕留めてやろう」
異形に四肢を食らい付かれても意に介さず、ネルソンは手にした銃を操って蛟羽へと弾丸を叩き込む。だが獣と化した青年も眷属を経由して供給される生命力に物を言わせ、傷を強引に塞ぎながら猛然と牙を突き立ててゆく。それは戦争や戦闘などというお行儀の良い行為ではない――動物の捕食であり、獣の狩りだ。
「アンタの血、甘くて、何だかクラクラして……だから、全部飲み干してやるっす……!」
「『ネルソンの血』の逸話は飽くまでも比喩だ。酒精が流れている訳がないだろうが」
血を啜られるという感覚はさしもの提督とて不快だったのだろう。至近距離から射撃を浴びせる事によって、ネルソンは強引に蛟羽を引き剝がす。一方の青年は衝撃で吹き飛ばされながらも、唇を濡らす鮮血をちろりと舌で舐めとるのであった。
成功
🔵🔵🔴
ベアータ・ベルトット
天使の猛攻に対処する為、体の前面にありったけのAFを放出し骨の壁を形成
蝙翼機光も展開してオーラ防御するわ
壁の裏側で身を低くして、反撃の隙を伺う
―守りに徹してるだけだと思った?残念、大間違いよ
分厚い壁をこっそり齧って、口内にリンを蓄積
壁から一気に躍り出て炎弾を連射。まず提督の両手を狙い、それから天使共を纏めて焼却してやる
続けてUCを発動、光の翼を更に強化
たとえ空は飛べなくても。機脚のブーストダッシュも活かし、甲板上を高速で駆けまわって機腕銃を乱れ撃ち
提督に接近できたら ダメージの多い部位を見切り、そこに獣爪を突っ立てて思い切り放り投げ
大量の吸血光線を浴びせてやるわ
アンタの血なんて欲しくないけどね
●獣ではなく、人として
「痛みや異常は一切感じないが、それ以外の無意味な不快感と言うものは伝わるものだ。よもや、我が身を喰らおうとする者が居るとはな……同類として、お前はどう思う?」
ネルソンが滂沱と鮮血を垂れ流す傷口をひと撫でするや、うぞうぞと肉が盛り上がり出血箇所を塞いでゆく。その身に宿した天使の数だけ、元々の生命力もまた増大しているのだろう。獣の如き猟兵と交戦した直後の『舵輪』は、胡乱気な視線を新たな敵手へと向ける。その先に居たのは忌々しそうに眉根を顰めるベアータ・ベルトット(餓獣機関BB10・f05212)であった。
「……それは『猟兵』としてじゃないわよね? 幾ら戦術眼が鋭いとはいえ、少しばかり悪趣味じゃないかしら」
「であれば、アレらと自分は違うと?」
「仲間の在り方を否定するつもりはないわ。ただ、人間のつもりよ……飽くまでもね」
七大海嘯が言っているのは先に交戦した、飢餓の求めるままに暴れ貪った猟兵の事である。単なる戯れか、それとも精神的揺さぶりか。一目見ただけで敵手の本質を見抜いたネルソンはそう、少女へと問いを投げかけてきた。かつてのベアータであればきっと返答に窮していただろう。しかし数々の視線を潜り抜けた果てに、彼女はそう即答できるだけの強さを既に身に着けている。
「そうか。ならば精々その化けの皮が剥がれぬよう取り繕う事だ。尤も、そんな余裕を与える気など毛頭ないがな」
しかして、わざわざ問い掛けたにも関わらずネルソンはその回答にさして興味を抱いていなかったらしい。未だに塞がり切らぬ掌の傷を猟兵へと翳すや、そこを門として取り込んだ天使たちを次々と吶喊させ始めた。武器らしい武器こそ持っていないものの、高速で飛翔する人間大の質量はそれ自体が一種の攻撃である。
「こっちだって出し惜しみするつもりはないからね。ありったけのArmored Fluidに加えて、蝙翼機光も最大出力で展開……真正面から防ぎきる!」
対するベアータは各機装より体内を駆け巡る流体物質を散布するや、それらは大気と反応して瞬時に凝固し始める。硬質な骨を思わせるそれらが強固な防御壁を築き上げると同時に、背部に装備されたレーザー発振機構が変形。光学障壁を形成する事によって、天使の突撃に耐えうるだけの護りを固めていった。それを見て、ネルソンはスッと瞳を細めてゆく。
「回避ではなく純粋な防御を選んだのはお前が初めてだ。しかし、天使どもの封印を解除していけばいずれは砕け散る……無論、それを座して待つつもりはないのだろう?」
これまで戦闘を行ってきた猟兵は誰もが回避を主体としていた。しかし、それも無理ないことだ。迫りくる雪崩を前に立ち止まるなど愚の骨頂。故に眼前の少女が敢えて防御を選んだことに何か意味があると相手は考えていた。そして、それは正鵠を射ている。
(流石にそれくらいはお見通しのようね。でも何かが来ると分かっていても、具体的にそれが何かまでは把握できていないはず……だったらまだ、勝機は十分にある)
ベアータは微かに苦笑を浮かべつつ、壁としている硬骨を少しばかり齧り取る。それを口の中で細かく嚙み砕き、指の先ほどの小塊へと成形してゆく。既に天使たちは封印を解きつつあり、骨の壁はミシミシと嫌な音を立てている。少女は十分な数が口内に溜まったと判断するや、防御壁の後ろ側から躊躇なく飛び出した。
(狙うは天使たちを呼び出している掌……まずは供給元を断たないと、どのみち数の差で圧殺される!)
限界に達した壁が砕け落ちるのを横目に、ベアータは骨の小塊をネルソン目掛けて吐き出してゆく。それらは酸素と結びついた瞬間、含有するリン成分によって発火。命中と同時に掌の傷を焼き潰し、新たな天使の召喚を食い止める。同時に彼女は残った小塊を残存する天使たちへと全て叩きつけ、進路を塞ぐ個体から優先して焼き払っていった。
「これで道は開けたわよ! 例え空は飛べなくても、加速さえ出来ればそれで良いッ!」
少女は背部の翼によって瞬時にトップスピードまで加速するや、猛然とネルソン目掛けて挑み掛かってゆく。機械化された脚部を軸として鋭角機動を取りながら、両機腕に内蔵された機銃で牽制。そのまま一気に距離を詰めると、幾つもの傷が刻まれた胸倉を引っ掴んで頭上目掛けて放り投げた。
「なるほど、確かに単なる獣とは違うな。正確に言えば、より性質の悪いモノだろうさ」
「皮肉のつもり? なら英国紳士らしく、もっと上手くやるべきよ。それじゃあただの負け惜しみにしか聞こえないからね!」
こうなってしまえば相手も身動きはとれまい。ベアータは蝙翼機光を限界まで広げるや、そこより幾条もの光線を叩き込んでゆく。落下するまでの数十秒間に浴びせられるそれは、命中した箇所を爆ぜさせて血を奪う吸血の輝き。なれど、少女は不愉快そうに頬を歪ませながら、小さく吐き捨てる。
「『ネルソンの血』ね……私としては、アンタの血なんて絶対に欲しくないけどね」
そうして相手が甲板上へ叩きつけられるのを確認すると、ベアータは残った天使たちを駆逐しながら一時撤退してゆくのであった。
成功
🔵🔵🔴
トリテレイア・ゼロナイン
将自ら銃を執り前線へ…
愚策などとは申しません
七大海嘯『舵輪』最大戦力…討ち取らせて頂きます、提督
天使武装は防御貫く攻撃重視?
なんにせよ●瞬間思考力で銃口から射線見切り
走行から脚部スラスターの●推力移動利用した斜め前進跳躍で回避…!
着地と同時に大盾●怪力●投擲
攻撃であれど、狙いは状態異常に依らぬ●目潰し
陰に隠しUC射出(拳先端センサーで●情報収集戦況把握)
勝利求める程に人の肉体が痛み無き私達に近づく様を見せられるのは…少々複雑ですね
UCで狙うは肉体で無く天使武装の『引き金』
握り潰すか指で塞ぐかで使用困難に
再生成前にワイヤ巻き取り引き寄せ
自己●ハッキング限界突破した怪力で筋断ち骨砕く勢いで剣を一閃
●人より遠ざかる者、人成らんと志す物
「やれやれ、痛みを感じぬのも場合によっては良し悪しか。どうにも、攻撃される事に対する危機感が希薄化する。尤も、それを上回る利がある以上、止めるつもりも無いがな」
甲板上へと勢いよく叩きつけられたネルソンは、そう独り言ちながらゆっくりと身を起こす。骨が何本か折れていてもおかしくない衝撃ではあったが、痛みを感じている様子はなく、口調もどこか他人事めいていた。そんな相手の姿をアイカメラに捉え、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は思わず複雑そうにかぶりを振る。
「将自らが銃を執り、前線へと赴く……いえ、それが愚策などとは申しません。しかし、こちらから見れば好機以外の何ものでもなし。七大海嘯『舵輪』最大戦力……討ち取らせて頂きます、提督」
戦機として思考するのであれば、指揮官自らが前へ出るなど自殺行為でしかない。しかし鋼の騎士という理想的には、それもまた有用な一手であると認めざるを得ないのだろう。相手の姿に一瞬、そんな微かなコンフリクトをトリテレイアは覚えたらしかった。相手は身体の調子を確かめる様に肩を回しながら、じろりと猟兵の威容を見据える。
「騎士甲冑、か。先の娘は骨の壁を以て護りとしたが、お前は頼みとするのはソレか」
「ええ。ナイトの称号を持つ方の前へ身を晒すのは、些か恥ずかしい心持ですが」
「成る程な……であれば、相手をするのはこれが相応しいだろう」
ネルソンは手にしたマスケット銃を構えるや、その表層をぞるりと白い羽根が覆い尽くしてゆく。内包した天使たちを得物と融合させたのだ。騎士が衰退した一因として、銃の存在は大きく関わっている。そうした歴史を踏まえた皮肉が込められているのだろう。
「さて、自慢の鎧が耐えきるか、それとも過去の歴史に倣うのか。一つ見せて貰おうとしよう」
(まずは初撃を防いで……ッ!?)
宣言と共に弾丸が発射された瞬間、鋼騎士は危機感を言語化する前に防御ではなく回避を選択していた。銃口の角度から射線を予測するや、その巨躯を屈ませて半ば転ぶ様に前へと身を滑り込ませる。果たして、結果的にその判断は正しかった。外れた弾丸を受けた甲板表層が、まるで砲撃を受けたように吹き飛んだのだ。
(攻撃力、それも装甲貫徹に機能を特化させたのですか! 下手に受けていれば、そのまま勝負が決するところでしたね。これでは盾越しでも防ぎきれません……ですがそれと引き換えに、射撃の反動もまた凄まじいはず。ならば!)
トリテレイアが相手に取りつくか、ネルソンが弾丸を命中させるか。つまり、これはどちらが先に有効打を叩き込めるかと言う勝負である。鋼騎士は一気に距離を詰めるべく脚部スラスターを全開にして跳躍するや、こうなってはデッドウェイトにしかならぬ大盾を敵目掛けて勢いよく投擲してゆく。
「飛び道具勝負か? 確かにそれだけの質量が命中すれば俺もただでは済まんが、余りにも遅すぎる。弾くだけなら一発あれば十分だ」
ネルソンは慌てることなく次弾を装填すると、狙い違わず迫りくる大盾を撃ち落とした。しかし、戦機にとってはそれすらも想定の範囲内である。真の目的は攻撃ではなく、一瞬でも相手の視界を塞ぐこと。
(状態異常に頼らずとも、幾らでもやりようはあるものです。しかし勝利を求める程に、人の肉体が痛みを感じること無き私達に近づく様を見せられるのは……少しばかり複雑ですね)
他世界の話とは言え、それが歴史に名を残す偉人とくれば猶更だ。だが今は感傷に浸っている贅沢などありはしない。トリテレイアはネルソンを射程距離に捉えるや、腰部に搭載されたある機構を作動させる。ワイヤーを伴って射出されたそれは、第三第四の隠し腕だった。電子制御された腕は相手の握るマスケット銃を引っ掴むや、引き金を握り潰して発射機能を喪失させてゆく。
「っ! 鎧の下に何やら仕込まれているかと思えば、こういう絡繰りか」
「ですから、先ほど申し上げたのです。『ナイトの称号を持つ方の前へ身を晒すのは、些か恥ずかしい心持ですが』、と」
そのままワイヤーを巻き上げて得物を奪い取ると、鋼騎士は提督の眼前へと踏み込んだ。大盾の代わりにその手へ握られしは堅牢な儀礼用の騎士剣。相手もマスケット銃を再生成するも、トリテレイアを止めるには一瞬遅く――。
「然れど、これは間違いなく……騎士として振るう一撃です!」
ネルソンが咄嗟に放った弾丸で左肩部を関節部から吹き飛ばされるも、代わりに鋼騎士はハッキングによって躯体のリミッターを解除。限界を超えた威力の一閃により、提督の筋を断ち骨を砕く事に成功するのであった。
成功
🔵🔵🔴
ペイン・フィン
……成る程
状態異常が効果無くて、軍勢を呼ぶ
個人戦闘と状態異常が得意な自分にとっては、天敵とも言えるだろうね
でも、自分は
自分だけじゃない、よ
残像、見切りを中心に回避行動
ダッシュ、ジャンプ、それに船上戦
使える技能は、全部使う
コードを使うまで、時間が稼げれば……、それで、いい
攻撃の合間を縫って、コードを発動
100には、未だに届かないけども
9種重ねて、855の拷問具を展開
……今此処に、天国の門は、閉じられた
さあ、地獄を、始めるよ…………
蹂躙し、なぎ払い、広範囲を殲滅、制圧する
小細工が、効かないならば
こちらも、小細工は無用
兄姉含め、皆で
……天使を、相手取るとしようか
●天なる獄にて責め苦を嗤え
「幾ら痛みを感じぬとは言え、物理的に砕かれては身動きに支障が出るか。随分とまた、強引な手を使うものだ。まぁ実際の騎士なぞ、存外そんなものではあるが」
鋼騎士の一撃は凄まじく、ネルソンの肉体はくの字に折れ曲がってしまっていた。常人であれば苦痛に泣き叫ぶ間もなく即死するレベルだが、七大海嘯は飽くまで淡々としたものだ。取り込んだ天使たちを治癒へと回し、バキゴキと耳を塞ぎたくなるような音を響かせながら再生を果たしてゆく。
「……成る程。痛みを感じ無い上、状態異常は効果が無くて、しかも軍勢を呼ぶ。個人戦闘と状態異常が、得意な自分にとっては……天敵とも言える相手だろう、ね」
そんな相手の様子を目の当たりにして、ペイン・フィン(“指潰し”のヤドリガミ・f04450)は素直に自らの不利を認めた。好む好まざるを別として、彼の本質は拷問器具。その役割は自由を奪い、苦痛を与える事だ。そういう観点で見れば、ネルソンの決戦形態は己が強みを悉く潰すものと言える。
「今度の猟兵は随分と陰気な手合いだな。天使を苦手と嘯くのならば、差し詰め悪魔や魔女の類といった所か」
「そういう種族や職業は、あるけれどね……残念ながら、自分は違う、よ。似たようなモノと言われれば、ちょっとだけ、返答に困るけど」
ジョンブルにとって皮肉は挨拶代わりの様なもの。ぶつけられる言葉をペインは小さく肩を竦めて受け流す。この程度の応酬で動ずるほど、彼の経て来た年月は生温くないのだ。だがその反応は相手のお気に召さなかったらしい。
「同じような存在であれば十分だ。神の加護などとうの昔に消え去ったが、それでも御遣いである事に変わりはない。多少の違いなど意味は成さん。疾く、消え去ると良い」
ネルソンは掌を差し向けるや天使を召喚、会話を断ち切るように突撃させ始めた。空を飛ぶことが許されぬ世界で、唯一の例外こそが彼女たちなのだ。加えて武器らしい武器こそ持っていないが、陰に属するペインにとっては天使の五体そのものが脅威と言える。
(中途半端に攻撃すれば、目を覆う帯が取れて、相手が強化されかねない……攻めに転じるのなら、一気に。多少の傷を負っても、いまは時間が稼げれば……、それで、いい)
ただでさえ相性が悪いのだ、下手に手を出しても効果は薄い。ならばと、赤髪の青年は攻撃の回避へ全神経を集中させてゆく。ある程度のダメージは端から織り込み済みである。戦況を覆す札が整うその瞬間まで、立っていられさえすれば十分だ。
(それに空は飛べなくても、跳躍程度なら問題ないね。周りには、障害物だってある……使える物は、全部使うよ)
艦橋を一直線に駆けあがり、そのまま壁面を蹴って砲塔へと着地。防盾板で相手の進路を防ぎつつ、甲板を転がって追撃を振り切る。多勢に無勢とは正にこの事。四方八方から殺到してくる天使たちの猛攻により、回避に徹していても全身に傷と疲労が蓄積してゆく。だが、ペインの心に陰りが差す事はなかった。
(確かに天使の軍勢は、強大だけど……でも、自分だって、自分だけじゃない、よ。兄も、姉も、傍に居てくれるから。帰りを待ってくれる相手も、ね。だから……)
青年の胸に暖かな灯がともる。それはささやかだが、何よりも大切な熱だ。温もりを愛おしむ様にそっと目を閉じる青年の周囲から、天使たちが襲い掛かる。回避の余地を潰した包囲攻撃が必中必殺を以て閉じられる――その直前。
「……こんなところで、立ち止まっているつもりはないよ」
天使たちが一瞬にして赤い霧と化した。何が起こったと目を剥くネルソンの眼前で、紅の中より飛び出すは幾種類もの拷問具たち。詰まるは指潰し、ナイフ、膝砕き、電撃棒、焼き鏝、九条鞭、毒湯、抱き石、そして骨翼枝。青年の周囲から溢れ出したそれらが、白き翼を瞬く間に引き裂き、潰し、焼き捨てたのだ。これこそが、ペインの伏せていた逆転の一手。
「百には未だに届かないけども、九種を重ねて都合八百と五十五個……これらを以て、今此処に、天国の門は、閉じられた」
――さあ、地獄を、始めるよ。
無慈悲な宣告と共に、拷問具たちは死の奔流と化して荒れ狂う。その瞬間に彼我の立場は逆転し、天使は追われる立場へと墜ちてゆく。だが逃げたところで擦り切れるまでの時間がほんの数秒伸びるだけに過ぎなかった。
「小細工が、効かないならば。こちらも、小細工は無用。数には数で対するのが、一番だから。兄姉含め、皆で……天使を、相手取るとしようか」
「成る程、悪魔ではなく拷問官の類だったという訳か。『魔女狩り将軍』も裸足で逃げ出す陰惨さだな。確かにこれでは天使を以てしても救えまい」
己が従僕の悉くを肉塊へと変えられ、さしものネルソンも忌々しげに頬を歪める。迎撃として弾丸を放つが、大量かつ人よりも遥かに小さい拷問具たちには所詮焼け石に水であり……。
「それは、そうだろうね。自分を救ってくれたのは、天使なんかじゃ、ないのだから」
ペインは気力の続く限り、七大海嘯の身体を全力で蹂躙してゆくのであった。
成功
🔵🔵🔴
勘解由小路・津雲
これはかなり厄介な相手、と言わざるを得んな。付け入る隙がない。さて、どうしたものかな……。
【行動】
まずは本体で敵の攻撃を引き受けよう。後鬼の【援護射撃】と【弾幕】で対空砲火、打ち漏らした分は【結界術】と【オーラ防御】で致命傷を避けるとしよう。
だが守りに徹していてはそのうち押し切られるだろう。相手の攻撃を引き受けている隙に、ネルソンの近くに【歳殺神招来】で式神を展開。駆け引きなしの切り合いといこうじゃないか。
とはいえ式神単体で勝てる相手ではないだろう。こちらが圧倒されそうになったら【二回攻撃】で二人目の式神を召喚、不意をついて一撃加えられれば御の字だ。
駆け引きなし? 何のことだか、記憶にないな。
●言の葉にて賢人を刺す
(全くもってこれは……かなり厄介な相手、と言わざるを得んな。ペインの全力を以てしても斃れぬとは、正直言って付け入る隙がない。苦痛を感じないというだけでは到底耐えられんだろうに)
先行した仲間から僅かに遅れて、クレマンソー級空母の甲板へと降り立った勘解由小路・津雲(明鏡止水の陰陽師・f07917)。彼は討つべき対象である『舵輪』ネルソン提督を見つけた時、思わず袖の袂で口元を覆わざるを得なかった。
視線の先に居たのは全身に負った夥しい数の傷口より、うぞうぞと無数の羽毛を溢れ出させた肉塊だったのである。瞬きをする度に手や足が復元され、回数が二桁を超えた時には既に完全な人型を取り戻していた。耐久自慢の敵は数あれど、此度の手合いはその中でも別格と言えるだろう。
「ァ……はっ……ふむ、これで再生は大方完了か。一つ一つの傷は小さくとも、それが百や二百と積み重なれば馬鹿にはならん。声帯、関節、指、皮膚。よくぞここまで念入りに壊したものだ。さて、見たところお前が次の相手のようだな」
何事も無かったように立ち上がり、陰陽師と相対するネルソン。幾ら偉大な軍人とは言え、その在り方はもはや異常と言っても良い。内心小さく舌打ちをしながら、津雲は油断なく錫杖を構えて距離を測る。
(さて、どうしたものかな……驚異的な治癒能力とは言え無尽蔵ではなかろうが、尋常な立ち回りで打ち倒せる相手でもなし。となれば、少しばかり一計を案じる必要がありそうだが)
「悪いが、細かい部分の調子がまだ良くなくてな。しかし、待たせるのも忍びない。先に舵輪の天使どもと遊んでいると良い」
津雲が戦術を練っている間に、提督は巨大なる舵輪の足元より幾度目かも分からぬ天使の軍勢を呼び寄せてゆく。円を描くように整列し、遥か頭上より見下ろしてくる天の御遣いたち。その相貌は冴え冴えとした美しさを湛えているが、どこか酷薄さも感じられるように思えた。
「気遣い痛み入るが、俺は東洋の陰陽師。生憎と天使よりも八百万の神様の方が親しみを感じるのさ……こんな風にな!」
そう告げながら津雲が後ろへ飛び退ると、入れ替わるように巨大な影が甲板上へと姿を見せる。それは武骨な砲や機銃を搭載した、式神駆動による二脚歩行戦車だ。彼にとって神は崇め奉る存在であると同時に、手繰り従える輩でもある。後鬼と名付けられた頼もしき眷属は搭載兵器群を頭上へと向け、威嚇する様に照準を天使たちへと合わせていった。
「神を意のままに従える、か。なるほど、俺と似たようなものだな」
「それだけは断じて否と言わせて貰おう。職業柄、最低限の敬意だけは忘れた事が無くてな」
「そうか、実に残念だ」
ならばこれで話は終わりだとばかりに、ネルソンはスッと上げた手を振り下ろす。瞬間、天使たちは手の中に光の槍を生み出すや、それを一斉に投擲して来た。それと同時に二脚機もまた猛然と対空砲火を展開してゆく。射撃速度と弾幕の密度は特筆すべきものだが、対する天使の攻撃はそれよりもなお膨大かつ濃密である。当然、全てを撃ち落とすのは無理と言うもの。
「後鬼。複雑な軌道ゆえ難しいかもしれんが、狙うのは直撃するものだけで良い。撃ち漏らしはこちらでカバーする。とは言え、そればかりではやはり厳しいか……!」
津雲もまた結界を展開して防御に回るものの、このままでは押し切られるのも時間の問題だろう。守りってばかりでは後がない以上、ここは無理にでも攻め手に回る必要があった。
「歴史に名高き名将ネルソンが、戦いを部下に丸投げと言うのも詰まらんだろう。折角の機会なんだ、駆け引きなしの切り合いといこうじゃないか……八将神が一柱、歳殺神の名において、式神、来たれ!」
片手で結界を維持しつつ、もう一方の手で印を結ぶ。陰陽師の意に従い顕現するは、武神の威を纏った戦士の霊。ネルソンのすぐ傍へと呼び出された式神は、手にした槍で猛然と七大海嘯へと挑み掛かってゆく。
「これが東洋の神か。物珍しさは確かにあるが……だが、それだけだ。中身は天使どもとそう変わらんな」
繰り出される刺突を提督はマスケット銃のストックで受け流し、そのまま銃身をクルリと一回転。戻って来た銃口にはいつの間にか銃剣が取り付けられており、そのまま戦霊の心臓を貫いた。駄目押しとばかりに引き金が押し込まれれば、銃声と共に霊力で形成された身体が弾け飛ぶ。余りにも短い決着に、津雲は思わず歯噛みする。
「っ、そう弱い訳ではないのだがな。歳殺神の式神がこうもあっさりと倒されるとは……!」
「見世物はこれで終わりか。まぁ、多少は楽しめた。代金変わりだ、望み通り俺が直接手を下し……?」
次は猟兵を仕留める番だと告げるネルソンだったが、開きかけた口を唐突に閉じる。彼が視線を降ろせば、胸元より生える炎を纏った槍が見えた。七大海嘯の背後には陰陽師がいつのまにか呼び出していた二体目の式神が佇んでおり、手にした得物を深々と突き立てていたのだ。
「そちらが天使を大量に出しているんだ。だったら、こちらが出来ぬ道理もないだろう? 一撃与えられれば御の字だったが、上手くいったようで何よりだ」
「……駆け引きなしの切り合い、という話では無かったのか」
「はて? いったい何のことだか、記憶にないな」
じろりと睨みつけて来るネルソンに対し、津雲はおどけた様に肩を竦める。相手も流石に怒りを覚えたのか、天使たちの攻勢が俄かに勢いを増してゆく。だが、最低限の痛手を与える事は出来たのだ。陰陽師はこれ以上の長居は無用とばかりに、天使へ牽制射を放ちながら踵を返して撤退してゆくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ファン・ティンタン
【WIZ】触れたもの皆傷つける
アドリブ共闘可
敵が奥の手を出すなら、私も相応の手を出さないとね
【剣樹海】
天華の接触を起点に、あらゆるものを侵食していく刃の領域
切っ先さえ突き立てられれば、痛みを知らぬ提督を内から食い破る事も出来得るかも知れない
人型はこの際捨て
器たる刃さえ在れば【継戦能力】は確保可能
人型が繰る4刃、本命を見抜けるか?
砕牙で槍を【なぎ払い】、隙を見て細剣を【投擲】し
天華で鎬を削り取り落とすも、無銘で受け止め最後まで【時間稼ぎ】
包囲攻撃を一人で止める自惚れはない
勝機を隠し通すことに意味がある
なに、こちらとて一人じゃない
真に孤軍奮闘するはあちらなのだ
混戦に乗じて【念動力】で【だまし討ち】
エドゥアルト・ルーデル
アレを呼ぶか…!
貴様は最後に神を見るでござろう
大量の【光の槍】が飛んできたら戦闘ツールへ空間に作用する特殊コマンドを最後の一押に入力!槍の数は多ければ多いほど良い
…来た!【物理演算の神】だ!複雑に飛ぶもんだから処理が重いとお怒りだ!【お戯れのバグ】が来るぞォ!
見ろ!槍の軌道が無秩序に狂いますぞ!派手だナー
動くと拙者もバグるがまあ仕方ないね!派手に飛んだりはねたり地面にめり込んだりしながら目を引きつている間にこっそり【流体金属】君を野に放つ!
ネルソンの背後に移動させて襲撃、心臓を貫かせますぞ!更に開けた心臓の穴から潜り込ませて内から体を切り裂く!
痛覚が無いなら即死させればいいんでござるよ
●狂い踊れや刃と鋼
「ぐ、かはっ。痛みはない……が、心肺機能の低下や筋骨の断裂ばかりは無視できん。痛苦を感じはしないが、かと言って傷まで無くなる訳ではない。俺の取り込んだ天使の数は膨大だが、それでも限りがあるのだからな」
度重なる猟兵たちの攻撃は、ネルソンの身体に決して浅からぬ手傷を与えたらしい。相も変わらず淡々と肉体の再生を行うものの、その口振りからは若干の苦々しさが滲み出ている。決戦形態の戦闘能力は取り込んだ天使あってこそのもの。攻撃や再生にそれらを消費してゆけば、当然ながらいずれは尽きる。その瞬間こそが、七大海嘯が『舵輪』の斃れる刻になるだろう。尤も、そこまでの道のりが険しい事この上ないのだが。
「成る程、決戦形態にはそんな絡繰りがあったという訳か。であれば、生半の火力では時間が掛かり過ぎるだろうね。それこそ、一撃で十度は討ち果たせるような業が理想かな」
灰色の甲板、無窮の蒼空。その狭間へ滲み出るように降り立ったのは白き少女。ファン・ティンタン(天津華・f07547)は鮮やかな紅の左瞳で、急速に肉体を修復してゆくネルソンを見据える。相手の内包する天使の数は千か、万か。それを削り切らねばどのみち猟兵側に勝機はない。
「確かに考え方としては間違っていないだろう。だが、そう都合の良い策を持ち合わせているのか。況や、この軍勢を相手にした上で実行出来るものをな」
ネルソンの意に応じ、巨島に聳え立つ舵輪の足元より千を超える天使の軍勢が飛来する。掲げられた光の槍は回避困難な軌道を以て襲い掛かる暴威の象徴だ。だが、ファンは相手が選択した異能を見て静かに目を細めゆく。敵は自らの肉体からではなく、島の舵輪より天使を呼び寄せた。それは裏を返せば、取り込んだ天使を消耗したくないという意識の現れとも見る事が出来るからだ。
「いやっはっはっは、こいつぁ壮観な光景でござるなぁ! 拙者に天使が舞い降りたと言いたいところでござるが、ハートを槍で射貫かれるのは流石にノーセンキュー。となれば、ここはいっそアレを呼ぶか……! うむ、貴様は最後に神を見るでござろう」
と、そんな戦場に場違いなほど陽気な声が響く。白刃と提督の双方が何者かと視線を向ければ、意気揚々と甲板上へ歩み出て来たのは黒髭の傭兵。エドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)はまるでテーマパークに来たが如く、頭上に展開する天使たちを眺めて不敵な笑みを浮かべていた。彼は仲間の姿を見つけるや、そそくさと歩み寄って戯けた様にそっと耳打ちを行う。
「実をいうと、拙者としては槍の数が多ければ多いほど都合が良くてですなぁ。申し訳ありませんが、ご一緒させて頂きますぞ?」
「勿論、見知った顔が居るのは心強いよ……さて、そちらが奥の手を出すなら、私も相応の手を見せないとね。問題はその時までどう凌ぎ切るかだけれど」
微苦笑を浮かべて応じながらも、ファンの表情はすぐにまた真剣さを帯びる。手にした刃を届かせるとて、まずは相手の初撃を防がねば同じ土俵にすら立てないのだ。対するネルソンは相対する敵手が増えたことに然程の感慨も見せず、粛々と攻撃の命令を下す。
「一人が二人に増えたところで誤差の範疇だ。戦いの骨子は数あれど、戦力の差は絶対。王道に小細工など不要なのだからな」
――放て。
号令一下、空を無数の輝きが埋め尽くしてゆく。単純な直線軌道ではない、複雑な幾何学模様を描く光の槍。それに対して猟兵たちの反応は対照的と言って良かった。傭兵は腕に装着した電子端末に何事かを入力し始め、白刃は周囲に四振りの刃を突き立てて真っ向から切り払う構えを取る。両者が僅かな時間で迎撃態勢を整えた瞬間、攻撃の先触れが遂に到達し始めた。
「さぁて、今こそが絶好のチャ~ンス! 戦闘ツールを介して空間に作用する特殊コマンド最後の一押しを入力……って、あああ槍の数が多すぎて処理落ちしているぅぅぅっ!? これじゃあ結果が反映されるまでラグが、っアイタタタ! 」
エドゥアルトもまた何か秘策を練り上げていたようだが、どうやら少しばかり当てが外れたらしい。恥も外聞もかなぐり捨てて甲板上を転げ回り、ギリギリのところで串刺しを免れている。
だが、一方のファンとて仲間に手を差し伸べられるほど余裕がある訳では無かった。右手に白刀、左手に牙剣、必要に応じては細剣や短刃を持ち替えて。両手に握り締めた得物を全力で振るい、ようやく持ち堪えているという状況なのだ
(天華の接触を起点に、あらゆるものを侵食していく刃の領域……相手の抱える天使を削り切るにはこの業が最適だ。切っ先さえ突き立てられれば、痛みを知らぬ提督を内から食い破る事も出来得るかも知れない)
ファンの狙い、それは無限に相手を切り刻む斬刃結界をネルソンの内側へと展開する事。決まれば文字通りの必殺となるが、代わりに発動条件として己自身たる刃での接触が必要となる。そこまでどう状況を持っていくかが、戦いの成否を決める事になるだろう。
(元より人型を捨て置くと決めていたけれど、それでもなお厳しいね。器たる刃さえ在れば継戦能力を確保可能できるというのは、ヤドリガミ故の利点ではあるけれど)
交戦開始からそこまで時間が経っていないにも関わらず、ファンの身体には既に無数の傷が刻まれている。降り注ぐ槍の数が余りにも多過ぎるのだ。致命傷こそ紙一重で避けているが、見る間に滲み出た鮮血が白き装束を紅に染めてゆく。器物こそが本体であり、肉体的には或る程度の無茶が利くとは言え、それでも限度がある。
「………………」
そんな激しい攻防の中、ネルソン本人は依然として動く気配がなかった。どれ程の劣勢に見えたとしても、猟兵ならば何かを仕掛けてくる……そう予測し万が一に備えているのだろう。試しに迎撃の合間を縫って細剣を投擲するも、瞬時に撃ち落とされる。これでは付け入る隙すら見当たらない。
(膠着状態、か。このままじゃジリ貧は確実……加えて、相手はあの歴史に名高きネルソンだ。人型が操る四刃から本命を見抜かないとも限らない。何か、大きく場を動かせると良いんだけれど)
手にした得物は数々の戦いを潜り抜けた逸品ではある。しかし、此度の戦場はそれらに優るとも劣らぬ激しさだ。手にした刀剣の刃は欠け鎬が削れ、衝撃に軋みを上げている。このままでは早晩押し切られかねない。故にどう状況を打破すべきかと思考を巡らせた――その時。
「……来た! 来た来た来た来た! ようやく処理が追いついて、やって来たでござるよ! 物理演算の神だぁぁぁぁッ!」
快哉を上げたのはエドゥアルトであった。彼の腕に装着された端末の液晶画面、そこに踊るは『100%』の文字。初手で起動させた何らかの仕掛けが、ここにきてようやく作動し始めたのである。だが、発動すべきタイミングを逸した一手が如何ほどの効果を発揮するのか。それを端的に評するのであれば……。
「尋常でない数がやたらと複雑に飛ぶもんだから、どうにも処理が重いとお怒りだ! こういうのは負荷を掛け過ぎると、クラッシュすると相場が決まっているでござる! 天罰神罰八つ当たり、お戯れのバグが来るぞォ!」
控えめに言っても大惨事であった。複雑ながらも統制された軌道を描いていた光の槍が、一斉にてんでバラバラな方向へと吹っ飛び始めたのである。槍同士が触れ合えばピンボールの様に弾き合い、甲板に突き立ったと思いきやそのまますり抜け落下してゆく。これにはさしものネルソンも、目を見開かざるを得なかった。
「地獄絵図とはこの事だな……お前、いったい何をした?」
「何って、天使には神をぶつけただけでござるよ。物理演算の神がお戯れ、荒ぶる挙動は全ての者に等しく与えられる。そう、敵、味方、果ては召喚した拙者にさえもな! 見ろ、槍の軌道が無秩序に狂いますぞ! とっても派手だナー」
「………………」
傭兵の飽くまでもふざけた物言いに、提督は無言でマスケット銃を構えるや瞬時に弾丸を放つ。しかしそれはエドゥアルトへと命中した途端、何故か彼の身体を天高く舞い上げるだけに留まった。その背後に満面の笑みを浮かべた老翁が見えたのは、きっと気のせいだろう。
「はははは! 神様は平等でござるからな、動くと拙者もバグるがまあ仕方ないね! これぞ正しく天使とダンスと言う訳でござるよ!」
その影響から猟兵自身も逃れられぬようだが、既にこのような状態は慣れっこらしい。空中を飛んだり跳ねたり艦橋にめり込んだりしながら、エドゥアルトは自動小銃や火炎放射器を手に天使たちを瞬く間に刈り取ってゆく。相手も反撃を試みるが狂った物理法則にそう容易く適応できる訳もなく、空に溺れながら同士討ちをする始末だ。
「……こうなってしまえば、天使も所詮無様を晒す烏合の衆か」
(包囲攻撃を一人で食い止められるなんて自惚れはなかったけれど、流石にこれは予想外かな。だけど、お陰でこちらの勝ち筋は隠し通せた……それに、あれはもしや)
不快気に眉根を顰めるネルソン。その視線の先では相変わらずエドゥアルトがはしゃぎ回っている。だがファンは彼が相手に気取られぬよう、水銀じみた流体金属をそれとなく野に放つ様子を視界に捉えていた。と同時に、そっと茶目っ気交じりのウインクを投げかけて来るのもだ。
(なに、こちらとて一人じゃない。ちょっと言動はあれだけど、やるべき事はしっかり果たしてくれているしね。そういう意味では、真に孤軍奮闘するはあちらなのだから)
戦況は正しくカオス。なれど、無勢が多勢を打ち破るのは得てしてこうした乱戦である。であればこれ以上の機会など有りはしない。ファンは薄く笑みを浮かべながらボロボロの身体に活を入れると、白刀を手に吶喊してゆく。目指すは『舵輪』ネルソン提督ただ一つ。
「俺の身体に状態異常が通じぬからと、よもや戦場全体を狂わせるとはな。恥じるべきは地の利が此方にあると疑わなかった己の驕りか。だが、術中から逃れられぬのはお前もだろう?」
神の戯れによってネルソンの射撃は狙いが定まらぬものの、対する白き刃もまた動きがぎこちない。だが、彼我の距離が縮まれば物理演算の影響もまた低下してゆく。そうなれば必然、射程に優る相手側が先に攻撃を当てるのが道理である。
「笑劇としては悪くなかったが……これで幕引きだ」
「ッ!?」
ネルソンの放った弾丸がファンの手にした得物を弾き飛ばす。放物線を描いて飛んで行った刃は彼女の遥か後方へと突き立った。これにて少女は無手。トドメを刺さんと、提督は次弾を籠めた銃口を猟兵へと差し向ける……。
「……そういやお前さん、空飛ぶ兵器がどうたら言ってたでござるよな? なら、終わる前に憶えていくと良いですぞ……自分の国で生まれた傑作機の名前を、な」
――やっちまえ、Spitfire。
のに、一瞬先んじて。エドゥアルトの言葉と共に飛び出した流体金属が、背後よりネルソンの胸元を貫いた。癇癪の名を冠するそれは深々と穿った傷口から体内へと侵入するや、全身をズタズタに引き裂いてゆく。
「苦痛無効? 凄まじい治癒能力? そいつは結構。痛覚が無いなら即死させればいいんでござるよ!」
「っ!? だがこの程度ならば、俺の再生力の方が優るぞ……!」
体内へ金糸の如く伸びる流体金属が、ダメージと共に提督の身動きを封じていった。しかし相手は持ち前の再生力によってそれを駆逐し、体外へ排除せんと試みる。一方の少女は既に武器無し、故に脅威とはなり得ない――そう。
「だったら、もう一つ駄目押しだ。ねぇ、知っているかい? 東洋にはね、地獄には刃で満たされた世界があるんだって……こんな風に、ね」
「な、にぃ……ッ!?」
弾き飛ばされた刃が猟兵の現身でもなければ、だが。流体金属と交差する様に突き立てられた、真白き刀身。その瞬間、無限の刃を内包する極小領域がネルソンの体内へと展開され、そして。
「か、はッ、あぁあっ!?」
肉を、骨を突き破り。液体金属を纏った刀身が、七大海嘯の肉体を全身余すことなく穿ち斬り裂いてゆくのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
吉備・狐珀
小細工無用。全力で挑みます!
祝詞を唱え自分達の周囲に激痛耐性のオーラを纏った結界を張り巡らせ準備を整えたらUC【神使招来】使用。
幾何学模様を描き複雑に飛翔しようと、狙う先は一点。しかも包囲攻撃ならどこから来るか探る必要もなく。
霊力を高め結界の強化に努めつつ、みけさんのレーザー射撃で光の槍を相殺し全力でこの場を守ることに集中する。
槍兵の攻撃を凌いだら反撃開始。
ウケ、私共に御神矢で天使達を撃ち落しウカの援護に努めますよ。
ウカはその神剣でネルソン提督を。
懐に飛び込む速度が上がれば月の威力は増し、急に速度が上がれば不意もつける。
月代、みけさん、衝撃波をウカに放ちウカの速度を上げるのです!
●墜ちた天、地に立つ神
「……よも、や。ただの一撃を重ねただけにも関わらず、俺の裡に残存していた天使の半数近くを奪い去るとは。これも消耗を厭った結果、か」
体内を駆け巡った流体金属の棘、無限の刃を内包した極小領域。全身を内側より食い破った、二重鋼鉄の無間地獄。その二連撃を受けてもなお、ネルソンは未だ健在であった。彼はこれまでと同じように負傷箇所を再生してゆくが、その速度は戦闘開始前と比べれば目に見えて鈍り始めている。相手の言葉通り、遂に無尽蔵にも思えた耐久力の底が見えつつあるのだ。
「如何に強大な存在であれ、終焉からは逃れられぬのが世の常です。もはや事ここに至りては問答……いえ、小細工無用。全力を以て挑みます!」
佳境へと至りつつある戦場に降り立った吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)は手負いの敵を前にして、油断する事無く気を引き締め直している。猟兵たちの記憶からは迷宮災厄戦での顛末が未だに色褪せてはいない。眼前の相手は猟書家ではないが、この世界そのものが骸の海を渡る船の様なもの。万が一取り逃す可能性を潰す為にも、ここで手を緩める道理など無かった。
「……兵を出し惜しみ勝機を逸するのは愚策だが、あたら無駄に消耗して予備戦力を失えば勝ち筋すら失われる。となれば業腹だが、取れる手段はこれしかあるまい」
これ以上、取り込んだ天使の数を減らすような事態は避けたいのだろう。ネルソンは一分一秒でも時間を稼ぐべく、舵輪の根元より天使の軍勢を呼び寄せて自らの守りとする。相手にとっては当座を凌ぐための一手かもしれないが、猟兵側からしてみればそれだけでも十分過ぎる程の脅威である。だがこれを防ぎ、突破せねば提督の首級に手を届かせる事は出来ないのだ。
(敵の数は確かに脅威です。ですが幾ら数がこちらよりも多く、複雑な軌道を描こうとも……辿り着く先はただ一点。この様な包囲攻撃ならどこから来るか探る必要もありません)
如何に協力無比であろうとも、来ると分かっているものを防げぬ道理はない。天使たちが手に手に光の槍を生み出すのを確認しながら、狐珀は黒白の子狐たちと共に祝詞を唱え結界を形成してゆく。範囲は小さくても構わない。代わりに厚く、硬く、霊力で出来た障壁を展開する。
「それも東洋の術式か。詐術師紛いも居れば、地獄を招いた者も居たが……さて、お前はどうなのだろうな」
ネルソンの示す者がいったい誰なのか。脳裏へ朧げに人影が浮かんだと思った瞬間、頭上より一斉に光の槍が降り注いできた。直角的な幾何学模様を描くそれらは、まるで空に浮かぶ迷宮の如し。あれら全てを受けてしまえば、流石に結界が持たない。故に狐像の少女は新たなる第三の狐を手招いた。
「みけさん、レーザー射撃で迎撃をお願いします! 一本でも多く相殺できれば、それだけ耐え凌げる可能性が増えます!」
それは機械仕掛けの青狐。くるりと尻尾を差し向ければ、放たれるは五条の光線。青みがかった熱閃は光の槍を真っ二つに焼き切り、中空で消滅させてゆく。だがそれでもなお、槍の数は尋常ではない。撃ち漏らしが次々と結界へ突き刺さり、瞬く間に隙間もないほど埋め尽くしていった。
「さて、まさかこれで終わりではあるまい?」
針鼠か海栗を彷彿とさせる光景を前に、しかしてネルソンは警戒を解くことは無い。これまでの戦闘でも猟兵は必ず反撃へと転じて来た。此度もまたそうであると提督は判断し、そして。
「……猛き者達よ 深き眠りから目覚め 我と共に闇を祓う力となれ」
果たして、光の槍を弾き飛ばしながら狐珀が結界内部より飛び出してきた。彼女の傍らに付き従うのは狐たちではなく、それぞれ剣と弓を携えた二体の近衛兵。少女は白き弓兵と共に矢を番えると、天使を次々と射貫いてゆく。
「ウケは私と共に御神矢で天使達を撃ち落し、皆の援護に努めますよ。ウカはその神剣でネルソン提督を頼みます。月代、みけさんも援護をお願いしますね!」
天使の相手を引き受けつつ、黒き剣士は一直線にネルソンの元へと向かう。だが彼我の距離は遠く、相手の得物は銃器だ。当然、先手を取るのは敵側となる。
「神の威を纏う従僕か。悪いが似たような手合いは先ほども見ている。同じ轍を踏むつもりなどない」
照星が剣士を捉え、引き金に指が掛かる。提督はそのまま指に力を籠めて押し込もうとした……。
「ッ、今です! 衝撃波を放ち、ウカの速度を上げてください!」
瞬間、小さかった剣士の姿がネルソンの視界いっぱいにまで広がった。狐珀の傍に控えていた青狐と月色の仔龍、彼らは黒剣士の背へと衝撃波を放つことによって一気に加速させたのである。斯くして狙いを外れた弾丸は虚しく空を穿ち、勢いをそのまま威力へと転化させた神剣の突きがネルソンへと吸い込まれてゆく。
「これは……俺が言えた義理ではないが、まさか味方に巻き添えにするとはな!」
「同じにされるのは少し心外ですね。決して使い捨てるのではなく、信じて任せた結果なのですから」
そうして切っ先は提督の身体へと深々と突き刺さるや、内包した霊力を開放。四神の力を以て、七大海嘯の肉体を盛大に吹き飛ばすのであった。
成功
🔵🔵🔴
セルマ・エンフィールド
ほぼ障害物のない地形での撃ち合いなど通常であれば考えられませんが、その形態においては潜伏も不要ということですか。
彼自身には小細工は通用しないとのことですが、これならば……!
氷の弾丸で彼の足元を凍らせ、不安定にすることで多少なりとも動きの妨害を狙いつつ周囲の気温を下げます。
攻撃は武装の特性を素早く『見切り』、半分になったものが攻撃力ならフィンブルヴェトの銃剣で『武器受け』。攻撃回数なら回避。射程、移動力なら距離を取りつつ武器受け、回避することで防ぎます。
敵が武装の装甲を半分にし、攻撃特化の形態になったら攻めるチャンス。
ネルソン提督が銃を撃つよりも早い『クイックドロウ』で【砕氷弾】を撃ち込みます。
●手にせし武器が応える者は
「ふ、ふふふ……ひどい劣勢にも関わらず、ここまで良いようにやられると寧ろ笑えて来るな。どうやら、いよいよ以て戦力が払底し始めたらしい」
よくぞここまで追い詰めたと猟兵を讃えるべきだろうか。それとも度重なる戦闘を経てもなお復活し続ける敵を褒めるべきだろうか。神剣の刺突によって半身を吹き飛ばされたネルソンは、緩慢な速度で肉体を再構成してゆく。その口元に浮かぶのは皮肉気な笑み。精神異常耐性の影響で本来現れるはずのないそれが示すのは、相手の決戦形態が解けつつあるという言う事実。しかしそんな状態にも関わらず、戦闘可能なレベルにまで再生を果たすとは流石七大海嘯と言った所か。
「射手とは隠れ潜み、常に身を隠す存在……ほぼ障害物のない地形での撃ち合いなど通常であれば考えられませんが、その形態においては潜伏も不要ということですか。尤も、このような姿を目の当たりにしては羨ましいなどと微塵も思えませんが」
そんな敵の姿に、セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)はただただ冷たい視線を注いでいた。彼女の様な狙撃手にとって、敵前に身を晒すなど自殺行為以外の何ものでもない。見つからぬことこそが最上の自己防衛であり、最良の攻撃条件なのだから。故に、それを気にせずに済むのは強者の特権とも言い換える事が出来るが……だからといって、人外に成り果てるなど御免被ると言うのがセルマの率直な感想なのだろう。
「俺自身もこうして本拠地を見つけられでもしなければ、決戦形態などになる必要も無かったのだがな。ともあれ、それ無しでお前たちと渡り合うのが難しいという事実もまた、認めざるを得ん」
そう言いながらネルソンは手にしたマスケット銃へと天使の力を纏わせ、眼前の敵に適した形状へと変化させてゆく。そうして形作られるは、一見すれば単なる諸刃の剣。しかしてよくよく見れば、その側面には二連装式の銃身が備え付けられている。歴史において彼が愛用したと記される武器、ソードピストルだ。
「これ以上は天使を悪戯に消耗できん。加えて、やはり使い慣れた武器こそがいちばん手に馴染むものだからな。見たところ、そちらは射撃戦が得意なのだろう? 相手の土俵に上がってやるほど、俺もまだ勝機を捨ててはいない」
狙いを定める様に切っ先と銃口を向けて来る『舵輪』。刃は当然、側面のピストルとてそこまでの射程は無いはず。であれば、相手がまず優先させたのは機動力だろう。片手で扱える武器ならば、身のこなしを邪魔しないという事か。
「射程の差を踏まえた上でも、間合いを詰めさえすれば勝てると読みましたか。それを否定はしませんが、容易く近づけさせるつもりはありません」
「そうか。だが陸なら兎も角、船上での戦闘経験なら俺に一日の長がある。一つ、どちらが優っているか試すとしよう」
その会話が切っ掛けとなり、ネルソンは甲板を蹴って猛然と猟兵目掛けて吶喊を開始する。一方の狙撃手は後ろ向きに後退して距離を取りつつ、愛銃を構えて瞬時にトリガーを引いた。狙いは敵そのものではなく、進路上の甲板。
(彼自身には小細工は通用しないとのことですが、これならば……! 海水で濡れる事は多々あれど、氷に覆い尽くされる事などそうなかったはず!)
放たれた弾丸は着弾と同時に、内包された氷風の魔力を周囲一帯へと撒き散らしてゆく。凍てつく冬の空気を思わせる冷気と共に、ピシリと甲高い音を立てて厚い氷が甲板を覆い尽くしていった。強く踏み込めば摩擦を奪われ転倒し、かと言って立ち止まれば諸共に凍り付く。これで少しでも速度を削ぐことが出来れば。そう考えるセルマだが、ネルソンはそれを見透かしたように口元を歪めた。
「……甘いな。狙いは悪くないが、滑る氷など絶えず揺れ動く船と似たようなものだ。だが、船と違ってこちらは自力でどうにかできる分まだ対処が楽だぞ」
ネルソンは刀身側面の銃身より立て続けに弾丸を放つや、氷を砕いて凹凸を生じさせる。それによって速度低下を最小限にしつつ、凍結地帯を難なく踏破していった。目論見が外れた結果となったが、かと言って無駄だったかと言えばそうではない。
(放たれた弾丸は二発以上……という事は、代償として半減させたのは攻撃回数ではありませんね。魔力で出来た氷を砕いた事から、恐らく威力もそのまま。射程もピストルとしては標準の範囲内です……となれば、犠牲にした能力は恐らく)
数瞬の思考の間に猟兵を間合いへと捉えるや、ネルソンは踏み込んだ勢いそのままに斬撃を放つ。対するセルマは咄嗟にくるりと銃身を回転させ、先端に取りつけた銃剣にてそれを防いだ。
「こうなってしまえば銃の長さが却って仇となる。氷の足止めが踏破された時点で、お前の劣勢が確定したわけだ」
「……いえ、そうでもありませんよ。少なくとも、『頑丈さ』ではフィンブルヴェトの方が上でしょうからね」
鍔迫り合う中でそう揺さぶりをかける提督。だが、狙撃手は相手の言葉を冷たく切って捨てる。彼女は銃身をスライドさせて掛けられていた圧力を斜め後方へと受け流すや、銃剣の切っ先をソードピストルの横腹へと叩きつけた。瞬間、ぐしゃりと銃身が歪み潰れてしまう。移動力と引き換えに失われたものは防御力。接近さえしてしまえばどうとでもなると考えたのだろうが、それこそ正に甘い考えだ。
「ちぃっ!」
「隙を見せましたね? 撃ち砕きます……!」
残った刀身で反撃を試みるも時既に遅し。セルマは神速の速さで相手の眉間へと銃口を宛がうや、分厚い氷すら打ち砕く一発によってネルソンの頭部を吹き飛ばすのであった。
大成功
🔵🔵🔵
シキ・ジルモント
【狼と焔】2名
こちらに向けられた天使武装は結希に任せ、逆に結希へ向けられる武装の対応に専念
何をおいても結希の被弾は防ぐ
剣を扱う結希に応じた武装だ、遠距離で撃ち合えばその前提を崩せると予想
間に割って入り遠距離からナイフの投擲や射撃で反撃する(『スナイパー』)
ナイフには小型グレネードを隠して括り付けておく
ナイフは無痛状態では取るに足らない攻撃と見せかけ警戒させない為の偽装
結希の援護として手榴弾の爆風でネルソンの体勢を崩したい
更に結希の攻撃に合わせてUCで追撃
痛覚が無いなら細かい傷より火力の集中が効果的だ、一気に喰らい付く
天使の力を使うネルソンの手強さは認める
しかし、こちらの『天使』もなかなかだろう
春乃・結希
【狼と焔】
天使の銃が、相手に合わせて形を変えるというのなら…
シキに向けられた銃は、私が受ける
遠距離のシキを狙うなら、近距離は対応しにくい、はず
私に向けられたものは気にしない
あの人が絶対防いでくれる
懐に飛び込み、シキを狙う銃を弾き、狙いをずらす
…私も天使になれるんですよ。見せてあげます。
『with』ーー私の側にいて。
真の姿解放
同時にUC発動
防御されたとしても命中した箇所を破壊する羽根
痛みを感じないのは私も同じ。戦うのに邪魔なだけですよね【激痛態勢】
だけど、あなたには無いものが、私にはある
傷を塞ぐ地獄の焔と…そして共に戦う、狼の牙
…喰らいつかれないように、ね
天使には天使を
銃には銃を
絶対に、負けない
●天使は銃弾を導き、銀狼は黒剣を護りて
「……ぁ、はは、はははは。ハハハハハハッ!」
戦場に声が響く。始めは不鮮明でくぐもり、だが数秒もすれば明瞭な輪郭を伴って木霊する叫び。愉快で堪らないといった様子で、吹き飛ばされた頭部を再生しながら『舵輪』ネルソン提督は呵々と大笑していたのだ。原型を取り戻したその相貌には、追い詰められているにも関わらず燃え滾る様な敢闘精神が滲んでいる。
「驕りがあったことは、まぁ否定は出来ん。だが、猟兵を侮っていたつもりはない。にも関わらずこうまで追い詰められるとは……俺の身体に残っている天使のなんと心許ないことか。今の身体を維持するので精々とはな!」
度重なる戦闘によって取り込んだ天使たちは軒並み屠られ、既に頼みの綱であった決戦形態は解除一歩手前。文字通り、もはや後がない事を彼自身も認めていた。だが裏を返せば、まだ辛うじて決戦形態は維持されているとも言える。である以上、ネルソンが諦める事などあり得ない。
「だが、まだだ! まだ俺は戦える。俺は未だ……沈んではいないッ!」
自分が艦隊司令官だったら、敵艦をすべて沈めるか、自分の艦をすべて沈められるかのどちらかだ――それこそが提督と呼ばれた男の信条、『艦隊決戦』思想の全てなのだから。
「……最後まで戦い抜くと言えば聞こえは良いですけど、その果てに在るのはどこまでも広がる戦禍だけ。この大洋のみならず他の世界にまで手を伸ばそうとするのは、ちょっと見過ごせんけんね」
「しかし、事前説明で聞いていた様子から随分と様変わりしたものだ。だが、決定的な敗北以外で止まらないというのであれば、こちらとて是非もない。此処で終わりを与えてやる。いけるか、結希?」
「はいっ! 勿論ですよ、シキさん!」
故に完全なる決着を過去の亡霊に下すべく、二人の猟兵たちがクレマンソー級空母の甲板へと降り立つ。一人は漆黒の大剣を背負いし旅人、もう一人は大型の自動拳銃を携えた銀の人狼。春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)とシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は共に肩を並べながら、七大海嘯の一角と相対した。『舵輪』の二つ名を冠せし男もまた、スッと目を細めながら敵対者へと視線を向ける。
「なるほど、お前たちが最後の相手か。どちらも、己が武器に並みならぬ信頼を置いている様だな。であれば、こちらもそれに倣わねば礼を失するというものだ」
ネルソンは両手を振るうと、掌から滲み出た天使たちが武器を形作ってゆく。右手には刀身横に二連装短銃を備えた愛用のソードピストル、左手には元々持っていた得物を強化した長銃身のマスケット銃。だがどちらもこれまでの戦闘で一度破られた武器だ。思わず、結希は訝し気に眉根を顰める。
「わざわざこちらに合わせるだなんて、随分と律儀なんですね?」
「これでも俺は爵位を持つ正真正銘の貴族だ。戦場の作法も守れぬと笑われては、ジョンブルの沽券にかかわるからな」
偽りなしの本心か、英国流の冗句か。相手の真意を測りきる前に、ネルソンはスッとマスケット銃の銃口を差し向けて来た。これより先に悠長な問答など不要。あとはただ剣弾をもって決するのみだと、その仕草が言外に告げている。それに応じ、二人もまたそれぞれの武器を構えてゆく。
「七大海嘯が『舵輪』、ネルソン。来るが良い、猟兵……私は私の義務を果たしてみせよう」
斯くして、船上/戦場に銃声が鳴り響く。それが最終決戦の開幕を告げる号砲であった。放たれた弾丸は発砲と同時に音の壁を越え、一直線に人狼へと吸い込まれてゆく。咄嗟に回避を試みるものの、弾丸の方が僅かに早い。
「射撃戦には射撃戦を、か……! 確かに射程や威力はそちらの方が上、シロガネで抗するにはやや荷が重いやもしれん。だがな、そんな事はこちらとて想定済みだ」
身を捩り、甲板を擦らんばかりに姿勢を低くするシキ。だがそれは、弾丸を避けようという動きではない。寧ろ、弾丸と己の間に空間を作ろうとしているように思える。果たして、着弾の寸前。僅かばかりの間隙を縫うように、黒き刃が疾風と共に閃いた。
「天使の銃が、相手に合わせて形を変えるというのなら……シキさんに向けられた攻撃は、私が受けます。動きの速い相手なら、優先するのはきっと手数か射程のはず。それなら『with』で防ぐことはそう難しくありませんから」
真っ二つに両断された銃弾が宙を舞う。仲間への攻撃を察知した結希が愛する黒剣を瞬時に鞘走らせ、間一髪直撃を防いだのである。甲板へと落下した鉛玉がカツンと音を立てたのを切っ掛けに、彼女は得物を握り直しながら猛然と吶喊を開始した。蒸気脚甲から勢いよく白煙を噴き上げながら、旅人は甲板を踏み砕かんばかりの勢いで距離を詰めてゆく。
「遠距離のシキさんを狙うなら、近距離は対応しにくい、はず。だからまずは、私が一番得意な間合いにまで持ち込みます!」
「速い……次弾を装填している暇はないか。しかし、切り結ぶのが望みとあらば是非もない。愛用の武器を手に敗北したままなど、こちらとしても収まりがつかなかったのでな!」
近距離戦となっては、銃身の長いマスケット銃は取り回しに難があった。そちらは咄嗟の盾代わりと割り切りつつ、ネルソンは右手に握った剣銃にて応じんとする。
(今は追い詰められているけど、それでも分かる。あの人は凄く強い。気を抜けば、一瞬にして切り捨てられるかもしれないけれど。でも、私に向けられる刃は気にしない……あの人が絶対防いでくれるから)
追い詰められても、瀕死の状態でも、相手は稀代の名将。強敵であることは疑いようがなく、得意とする白兵戦でも無傷では済まないと容易く想像できる。だがそれでも、少女が踏み込みの速度を緩める事は無かった。共に立つ仲間を、心の底より信じていたが故に。
果たして、その想いへ応える様にシキは少女の背後から飛び出した。仲間の援護で体勢を立て直した彼は、側面へ回り込む様に駆けながら銀色の大型自動拳銃で牽制射を放つ。
「ソードピストル……銃こそついては居るが射程が短く、射撃能力は飽くまでも補助。メインは剣での近接戦だ。ならば先程とは違い、射撃戦の利は此方にある」
「これは……ああ、なるほどな。それぞれが異なる得物を扱う事によって、互いにカバーし合いながら後の先を取ろうという魂胆か。単純ではあるが、天使と言う数を頼みに出来ぬ俺には忌々しいほどに効果的と言える」
マスケット銃の長射程は人狼にとって厄介だが、黒剣を打ち砕く程の威力はない。ソードピストルでの立ち回りは旅人と圧倒するだろうが、拳銃の間合いには対処できない。仲間が不得手とする攻撃を引き受け、相手の強みを片端から潰してゆく。これこそがシキと結希の選んだ作戦だった。取り込んだ天使の数が枯渇した提督には、既にその連携を崩すだけの戦力は残されていない。
「そう言う訳だ。俺が健在な限り、結希に攻撃を通させるつもりはない。その逆も然り、だ。とは言え、俺も白兵戦の心得がない訳でもない。少しばかり、手の内を見せてやる」
相手の注意を引きつけつつシキは空いた片手を腰元へと伸ばすや、ネルソン目掛けて素早く何かを投擲した。それは焔色と月色の宝玉が美しい合金製のナイフだ。装飾に目を惹くものはある。しかし、武器としては短刃以上の何ものでもない。所詮は仲間の援護を兼ねた時間稼ぎかと、提督はそれを弾き返そうとし……。
「何だ、柄に何か括り付けて……っ、もしや炸薬の類か!」
「気付かれたか。だが、もう遅い!」
柄の部分に楕円状の物体が括られているのを見つけるも、既にそこは爆風圏内。炸裂した小型グレネードの爆発に巻き込まれ、提督は全身に強烈な熱波と衝撃が受けてしまう。更には濛々と立ち込める爆煙が視界を塞ぐ。ネルソンは速やかに体勢を立て直そうとするが、その隙は戦場に置いて余りにも致命的に過ぎていた。
「……貴方はたくさんの天使を従えていたようですけど。実は私も、天使になれるんですよ?」
「っ!?」
煙越しに響く結希の声は、すぐ目の前から聞こえたもの。咄嗟に『舵輪』はソードピストルを構えトリガーを引くが、放たれた弾丸が旅人へと到達することは無かった。
「いま、見せてあげます。さぁ、『with』……」
――どうか、私の側に居て。
黒き煙を吹き飛ばすは赤々と燃え盛る炎の煌めき。視界が晴れた時、ネルソンの瞳に飛び込んできた少女の姿は劇的な変化を遂げていた。身に纏う装束は愚か、たなびく髪すらも漆黒から純白へと変わり。瞳の色は背に揺らめく焔の翼と同じ、鮮やかな紅へと染め上げられている。舞い散る羽の一枚一枚が、触れたモノを破壊する拒絶の意思。異能の行使により、半ば強引に真の姿を解放したのだ。
「数然り、質も然り。お前の操る天使の力、その手強さは俺も認めるところだ。二人掛かりでなければ苦戦は免れなかっただろう。しかし、だ」
そして同時に、人狼もまた爆発に乗じて相手の眼前へと躍り出る。彼はがらりと様変わりした仲間を横目で捉えつつ、油断なく拳銃を構えながらも誇るように不敵な笑みを浮かべた。
「そっちに負けず劣らず……こちらの『天使』もなかなかだろう?」
「は、ははははっ! これを俺の従えていた天使と同じに扱うなど、それこそお前たちへの侮辱と言うものだ。文字通り、格が違う。だからこそ、我が相手に相応しいッ!」
正しく進退此処に極まれり。だがネルソンは獰猛に吼え猛りながら、両手の得物を振るって真っ向から猟兵たちへと応じた。接触した羽に肉体を破壊されながらも、それを意に介した様子は微塵もない。決戦形態の苦痛無効化を、相手はここぞとばかりに活かしているのだ。
「痛みを感じないのは、私も同じ。戦うのに邪魔なだけですよね? 気持ちは良く分かります……だけど、あなたには無いものが、私にはある」
提督の振るうソードピストルと切り結びながら、結希は静かにそう言葉を紡ぐ。確かに頭数は相手が圧倒していた。質も七大海嘯に数えられるだけあって極めて高い。だがそれでも、自分たちにはそれらに優るモノがあると彼女は告げる。
「傷を塞ぐ地獄の焔と、共に在り続けてくれる恋人と……そして共に戦う、狼の牙。私と同じくらい、強いから……精々、喰らいつかれないように、ね」
「結希から『強い』と評されるなど、これ以上ない誉め言葉だ。そう言って貰えた早々、仲間を嘘つきにする訳にはいかないからな。さぁ、そろそろ決着をつけよう」
小刻みに狙いをつけて来るマスケット銃の銃口から逃れつつ、獣由来の俊敏性を以て相手の懐へと飛び込むシキ。この間合いであればマスケット銃は勿論、ソードピストルすらもその長さが仇となる、対して、握り締めた拳銃を外すことは絶対に無い距離。更には、人狼の攻撃へ合わせる様に旅人もまた黒剣を振りかぶる。
「……天使には、天使を」
「銃には銃を。俺は、いや俺たちは」
――絶対に、負けない。
静かな、しかして何よりも強き意思を以て叩き込まれる斬撃と銃撃。焔を纏った一閃は相手の胴を上下に斬断し、一点集中で放たれた弾丸が狼牙の如く斬り飛ばされた上半身へと食らい付いてゆく。
「前の様に、神へ縋るつもりなどは、なかったのだが……ああ、全く」
傷口が再生する様子はない。寧ろ逆に、ボロボロと切断面からネルソンの身体が崩壊してゆく。彼の言葉に嘘偽りはなかった。既に取り込んだ天使の残数は正真正銘のゼロ。故に決戦形態の維持は続けられず、即ちそれは提督の終焉を意味していた。しかして、彼の顔に浮かぶのはどこか満足げな笑み。
「今回ばかりは、俺は俺の義務を、果たせなんだ、か……――――」
そうして、男の肉体は甲板へと落下する前に塵となって消え去り。
斯くして七大海嘯が一角、『舵輪』ネルソン提督は此処に討ち果たされるのであった。
大成功
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