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羅針盤戦争〜己に問え、汝に迷いはありや?

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #七大海嘯 #フライング・ダッチマン #鬼火島

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●鬼火の島の王
「カカカ……愛鳥ゼンタよ、ついに来てしまったようだ。われが猟兵と対峙する、この時が!」
 鬼火島への上陸を許したフライング・ダッチマン。しかしそれを悲観するわけでもなく、狼狽えるわけでもなく、むしろ待ちわびたかのようにフライング・ダッチマンは嗤う。
「彼らは知るか知らぬか……いや、きっと知っていよう、わがユーベルコードを。故にその対策も考えていようが……カカカ、むしろそうでなくては、われの前に立つ資格は無かろう」
 玉座を立つと、ゆら、と蒼炎を揺らめかせながらフライング・ダッチマンは歩き出す。
 客人には最高のもてなしを。それは、彼自らが出迎えることで果たされる。
「さぁ、見せてみよ、猟兵。己を信じる強き心――われが握りつぶしてくれようぞ!」

●迷う者に光無し、迷わぬ者に光在り
「決戦の……時です!」
 ロザリア・ムーンドロップ(薔薇十字と月夜の雫・f00270)も少し緊張した面持ちだった。声を張り上げるが喉が貼り付くように乾く。ごくりと唾を飲み込んだ。
「七大海嘯『鬼火』――フライング・ダッチマン、というのがその名前だそうですが、ついに本拠地へと乗り込む時が来ました!」
 長く隠されてきた七大海嘯。その一つの正体が暴かれたのはつい先日のこと。本拠地も見つかったことで、猟兵から攻め入ることが可能になった。
「本拠地ではフライング・ダッチマンと戦うことになりますが、非常に強大な敵なので、注意点があります! 一つは、フライング・ダッチマンが先制で攻撃を仕掛けてくるということです! 素早く行動するための技能というのはいくつかあるかと思いますが、それを以て『先制攻撃そのものを封じる』ということはできません。攻撃はきっと放たれます! なのでそれを防ぐかかわすか、何らかの対処をしないと一発でやられてしまいます!」
 一撃が戦闘不能に直結する戦いになる。対処法は万全にして臨みたい。
「また、フライング・ダッチマンは『何度殺されても瞬時に蘇生する』という非常に恐ろしいユーベルコードを持っています。これが発動する限り、フライング・ダッチマンを倒すことはできません。では、どうやって倒すのかというと……皆さんの『迷いなき心』、これが蘇生のユーベルコードを封じる手段になります!」
 何者にも惑わされず、己の信念を貫く強き心。それを持つ者のみが、フライング・ダッチマンに打ち勝てる。
「フライング・ダッチマンを倒すことができれば、本拠地とは別の支配下の島を一つ、解放できるようですね! つまり、未だ隠された本拠地を見つけ出す手掛かりになる、というわけです!」
 本拠地を目指す者、新たな本拠地を探す者――皆の力は決してバラバラではないのだ。
「……人は迷う生き物です。私だって迷わず生きていると言い張れる自信はありません。ですが……強大な敵を前にした時、皆さんの真価が発揮される、そう信じています! 迷いなき心を胸に、絶対に倒しましょう!」


沙雪海都
 沙雪海都(さゆきかいと)です。
 戦争は何度か経験していますが、幹部クラスのシナリオ出すの初めてです。

●フラグメント詳細
 第1章:ボス戦『七大海嘯『鬼火』フライング・ダッチマン』
 一つ、彼は先制攻撃を仕掛けてきます。対処することで戦闘を有利に進めることができるかもしれません。
 一つ、迷いなき心を見せることで、絶対蘇生のユーベルコードを封じることができます。迷いなき心を持って戦うことが大切です。

 これらはどちらも欠けてはなりません。迷いなき心を持ち、敵の攻撃に対処する。
 そうした皆さんの頑張りをできる限り演出できるよう、自分も頑張っていく所存です。

●MSのキャパシティ
 戦争ということもありますので、全てのプレイングを採用することが難しい場合も出てくるかもしれません。
 その際はご容赦頂きたく、また戦争期間中はシナリオ運営を継続して参りますので、採用に繋がらなかった方については次の機会をお待ちいただければ幸いです。

 合わせプレイングはお受けできません。申し訳ないです。
 でも複数採用リプレイとかは気まぐれで書いたりするのでソロ希望の方は明記しておいてください。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『七大海嘯『鬼火』フライング・ダッチマン』

POW   :    鎖付き骸球
【『燃え盛る邪悪な魂』の集合体である骸球】が命中した対象を燃やす。放たれた【骸球の『口』から溢れ出す】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    ブルーフレイムカトラス
自身に【怨念の青き炎】をまとい、高速移動と【カトラスからの青炎】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    冥鳥の羽ばたき
【飛び回る愛鳥ゼンタが青炎の羽】を降らせる事で、戦場全体が【生者を蝕む青き炎の海】と同じ環境に変化する。[生者を蝕む青き炎の海]に適応した者の行動成功率が上昇する。

イラスト:爪尾

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

大豪傑・麗刃
よろしい迷いなく敵に叩きつけてやろうではないか。わたしの渾身の

ギャグ

を!

敵の先制攻撃は炎か。
覚悟を決め、火炎耐性をもつオーラで防御。気合を入れれば熱くない、熱くないのだ!わたしに迷いはないのだ!!

耐えきったら覚悟を決め、威厳をもって敵に対峙。そして渾身の精神攻撃で挑発をきめるのだ!!

たしかきみはフラワーアレンジメントくん。
違った?ごめんごめんポテトフライくん。
そう怒るなダッチワ(略)

フライングダッチマンとかけまして、ゆで卵ととく。
そのこころは

かえる事ができない

これで相手に喜怒哀楽恐の感情を呼び起こさせ、動揺から平常通りに戦えなくなった所を刀で斬る。動揺のため蘇生もできない!(迷いなき決めつけ)



●鬼火はそのこころなんて言わないが
 迷いなき心。言うは易く行うは難し。その心を猟兵達はどう示すか。
「カカカ……われに何を示す、猟兵よ!!」
 フライング・ダッチマンが青々と燃え滾る骸玉を放つ。虚ろな双眸は青黒く凹み、わずかに開閉する口からは炎が濁流のように溢れ出した。
「……!!」
 覚悟はしていた。墓場の燐光にも似た青く不気味な輝きを前に、大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)は足を止め両腕で身を固めて炎を受ける。
「ふおおおおお!!」
 炎が当たる直前に火炎耐性を付与したオーラで体を覆ったが、なお貫いてくる熱が麗刃を襲う。
 熱い、熱いか――? 麗刃は己に問い質す。
(……熱くない! 熱くない! 熱くないのだ!!)
 傍から見れば全身が炎上しているようで、見ているだけでも熱気で肌を焼かれそうになる状態だ。だが麗刃は頑なに己の感覚を捻じ曲げる。
 熱くないと言えば熱くないのだ。心頭滅却すれば火もまた涼し。青い炎が何だ。麗刃にはこの島に乗り込むに当たり、固く誓った信念があるではないか。
 決めるのだ、渾身のギャグを。
「ふあああぁぁっっ!!」
 呼吸すら熱い。麗刃は肺がぺしゃんこに潰れそうになるほど息を吐き尽くし、炎を振り切った。
「だはぁ! はぁ……はぁ……ぬぅ……」
 腕の間から見るフライング・ダッチマンは嗤っていた。耐えたことすら喜ばしい、という風に。
「気に召さぬか? わが炎は」
「ふぅっ……くくっ、ははは、熱くない……熱くないのだよ、フラワーアレンジメントくん」
「ほう……冗談を口にできるほど余裕があるか。ならばその口、斬り落としてくれようか?」
「違った? ごめんごめんポテトフライくん……これも違う? そう怒るな、ダッチ――あー、ダッチ……」
 フライング・ダッチマンの身から漏れる炎が空気を吹き込まれたようにごうっと燃え盛った。
「気が短い男は嫌われるのだぞ? フライング・ダッチマン。そんなきみに、わたしが場を盛り上げる手本を見せてあげよう。フライング・ダッチマンとかけまして、ゆで卵ととく――そのこころは」
 謎かけ。しかしフライング・ダッチマンが調子のいい合いの手など入れるはずもなく、場にはしんとした静かな空気が流れる。
「かえる事ができない」
「ほう……ククク、クカカカ……ハァーッハッハッハッハァ!! それがどうしたぁ!!」
 ギャグに説明を求めるな――そんなことをツッコむ間もなく、フライング・ダッチマンは左腕の刃を振り上げ襲い掛かってきた。
 速い。炎が靡くほど速い。骸球を放つなどほんの小手調べに過ぎなかったというのか――。
「……笑いが過ぎるぞ? ダッチマン氏」
 麗刃は見抜いていた。渾身のギャグは確かにフライング・ダッチマンに響いている。逆上した怒りか、それとも別の感情か――何でもいい。真正面から飛び掛かってくれるなら僥倖。
 麗刃は刀を振る。一閃、交差する刃が勝負を決める。
「カカカ……カハハハハ! 届かぬか? 届かぬかァ!?」
「ダッチマン氏……もう一度言おう。『笑いが過ぎる』と――身を斬られ、何が楽しいのだ?」
「カカカカ……ハハハッ……ぐぉぅっ」
 麗刃の背に高笑いを続けるフライング・ダッチマン。しかし鬼火の象徴たる青き体に走った傷に、堪らず炎を吐き出すのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

緋神・美麗
アドリブ歓迎

とうとう鬼火本体の登場ね。長かったダッチマン潰しもようやくお終いに出来るわね。しっかりきっちり完璧に潰すわよ。

POW
シールドビットを念動力で操作して骸玉の口を塞ぐように配置しオーラ防御も全力展開して炎を遮り、そのままシールドビットを指定UCの砲弾として撃ちだし骸玉を貫いて鬼火を攻撃する
「燃やせるものなら好きなだけ燃やしてみなさいな。まぁ、そんな悠長な時間をあげたりはしないんだけどね」
「ダッチマンは必ず潰すわよ。何度でも復活するっていうなら使う気力も起こらなくなる位何度でも滅ぼしてあげる。そっちの心がへし折れるまで何百何蝉何千何万回でも滅ぼしてみせるんだからね」



●滅びるまで滅ぼすまで
「行って」
 緋神・美麗(白翼極光砲・f01866)は念動力でシールドビットを送り出していた。
「盾か……わが炎、防げるか!?」
 フライング・ダッチマンが放つ骸球がガチガチと歯を鳴らす。一直線に飛行する骸球はそのまま口から大量の炎を吐き出そうとするが、その進路上に配置されたシールドビットに衝突した。
 骸球の口を塞ぐことを意図して配置されたシールドビット。しかし球状の骸球に対し、その形状の多くが平面で構成されるシールドビットでは分が悪く、吐き出される炎の全てを留めることができない。
 漏れ出た炎はシールドビットの表面に降り注ぎ、溢れ、後方の美麗にまで届いてくる。その炎――青き海の如き炎をさらに留める二枚目の壁。全力を以て展開されたオーラ防御が美麗を炎から守っていた。
 一時たりとも気が抜けない。吐き出される炎の量を制限し、それを全力で防いでどうにか耐えられるレベル。一筋縄ではいかないことを痛感するが、同時に覚悟の炎も燃える。
 フライング・ダッチマンとの戦いは今に始まったことではない。広がった海域を見渡せば、その配下とは何度も戦火を交えている。
 鬼火の島を発見するのにも長い時間をかけてしまった。だが、この本拠地で討つことこそが、長き戦いに終止符を打つと信じて。
「必ず……潰すわよ。何度でも復活するっていうなら使う気力も起こらなくなる位何度でも滅ぼしてあげる。そっちの心がへし折れるまで何百何千何万回でも滅ぼしてみせるんだからね」
「その言葉……口だけではなかろうな? われに本気を示してみせろ!」
 ぐん、と骸球の圧が上がった。フライング・ダッチマンが全力で、美麗に向かってくる。遮るシールドビットとの押し合いはフライング・ダッチマンの一呼吸の力押しで簡単に決着がついた。
 宙に弾かれるシールドビットの下を骸球は弾丸のように飛んでくる。圧と炎が全力ならば、美麗の全力のオーラ防御も容易く突き破り襲い掛かるが。
 滅びきるまで滅ぼすという迷いなき心、迷いなき意志が美麗を後押しする。宙に弾き出されたシールドビットはくるくると回転しながら美麗の眼前へと落ちてきた。
『チャージ、セット、いっせーのっ!!』
 盾はそのまま美麗の剣となる。形状を生かして砲弾のように扱い、骸球に真正面からぶつけていった。再びの衝突は守りではなく攻めの一手で、骸球の大きく開いた口へと突き刺さった。
「ダッチマン、あなたとの戦いもようやく終わりが見えてきそうね。こうして本体を潰すことができるんだか――らっ!!」
 電磁加速されたシールドビットがさらに勢いを増し、徐々に骸球を押し返す。
「ぐぅ……うぉぉぉっ!!」
 骸球の牙はフライング・ダッチマン自身にも剥くか――真正面に返ってくる骸球を、フライング・ダッチマンは逃げず、退かず、受け止めに入った。
 衝突の衝撃でフライング・ダッチマンの体から青い炎が溢れた。足元を滑らせながら、ジェットエンジンよりも遥かに推進力のある電磁砲の威力に耐えている。
「ぬぅぅあぁっ!!」
 一撃で落ちるなどして七大海嘯を名乗れるか。フライング・ダッチマンは受け止めた骸球を上方へ逸らして繋がれた鎖で引き戻し、強引にシールドビットを外した。空へ飛び立ったシールドビットは反転して美麗の元へと帰っていく。
「……フハ、ハハハ……こんなものでは、まだまだ倒れんわ!!」
 一際青みの濃いフライング・ダッチマンの牙が蠢く。その表情にはまだ余裕の色が伺えるが、骸球を受け止めたダメージは決して零ではない。フライング・ダッチマンの胸元から零れる炎がそれを物語っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

筒石・トオル
先制攻撃への対処は【見切り、第六感。残像】で回避。
回避出来なかった場合に備えて【オーラ防御、火炎耐性、激痛耐性】で耐えるようにする。

敵の先制攻撃の後、UC発動。
自身を含め、仲間の負傷状態が激しければ回復を。そうでなければ攻撃を。

迷いがあるとすれば、過去の記憶が無い事かもしれない。
”何かが欠けている”感覚が常に付きまとう……けれど、こうして戦っていると、その欠けた何かが満たされる感覚があるんだ。
だから”今”僕は何も迷わない。内側から溢れ出す欠片が”大丈夫”だと告げてくるから。

「──大丈夫だ。邪魔な奴等は”俺”が全て消してやる」
弟を傷付ける奴は誰であろうとぶちのめす。それ以外に何がある?



●俺が守る――絶対にだ
「なるほど……少しはやるようだな。いいぞ……いいぞ猟兵共!」
 戦こそ歓喜の時――そう言わんばかりに叫ぶと、フライング・ダッチマンは愛鳥ゼンタをその肩から空へと放った。愛鳥ゼンタは飛び回りながら青炎の羽を戦場に降らせ、場を生者を蝕む青き炎の海と同じ環境へと変えていく。
 体を芯から焼かれるような感覚だった。戦場全体とはあまりに広く、戦線からの離脱を図らねば回避は不可能と判断した筒石・トオル(多重人格者のマジックナイト・f04677)は咄嗟に防御へと対応を変えた。
 オーラで体を覆った後、己の内へ力を溜めて火炎、そしてその延長にある激痛への耐性を高める。それでようやく場の環境に五分で耐えられるようになった。
 だが、耐えられるだけであり、体が消耗し続けていることに変わりはない。双つの反する瞳は治癒の力も与えるが、環境に耐え、さらにフライング・ダッチマンの攻撃に耐えるにはジリ貧の感が拭えない。
 トオルは一か八かの勝負に打って出る。そう決断させたのは、トオルが信じる迷いなき心。
(迷いがあるとすれば、過去の記憶が無い事かもしれない。『何かが欠けている』感覚が常に付きまとう……けれど、こうして戦っていると、その欠けた何かが満たされる感覚があるんだ)
 戦い――それはトオルの心の欠けた部分を満たすものなのか。
 いや、それはきっかけに過ぎない。戦いを通してトオルの心を満たすものは、トオル自身の内より湧き上がるもの。
(……内側から溢れ出す欠片が『大丈夫』だと、告げてくるから――)
 迷いは無い。眼鏡の縁に指をかけ、脱ぐように外した。
「戦ほど……われの心を滾らせるものはないぞ!」
 フライング・ダッチマンはカトラスの刃を向け、トオル目掛けて突進してきた。鋭く繰り出された刺突――しかし、捉えたかに見えた一撃は空を切る。
 そこに落ちていたのは残像だ。貫かれ、かき消えた。
「弟を傷付ける奴は……誰であろうとぶちのめす」
 フライング・ダッチマンの背後で眉を寄せて睨みを利かせるトオルは雰囲気をがらりと変えて、金の瞳を向ける。放たれる光はフライング・ダッチマンの全身を、青炎よりなお苛烈に焼いた。
「ぐおぉぉっっ……その瞳を……止めろぉっ!!」
 フライング・ダッチマンは光を浴びて苦しみながらトオルを追った。今度はカトラスを振り上げて袈裟に薙いだが、またも残像を切り捨てるのみ。
「──大丈夫だ。邪魔な奴等は『俺』が全て消してやる」
 射抜くように放たれる視線。ただ一つの信念に突き動かされているトオルを、フライング・ダッチマンは止めることができなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルムル・ベリアクス
アレンジ歓迎
わたしの迷いなき心。それは人々を守りたいという気持ちに他なりません。これがわたしの持ち続けてきた覚悟です!
先制攻撃に対しては、フォーチュンカードの【投擲】【乱れ撃ち】で青炎の羽を撃ち落としつつゼンタにも攻撃を加えて対処します。
UCを発動し、迷いなき心によって結晶を成長させ全身を覆います。さあラケルタよ、わたしの思いを受け取れ!両手に持ったカードを結晶の刃で強化して攻防一体の姿となり、接近して切り刻みます。
成長し続ける結晶の鎧が炎を防ぐとともに、味方を【かばう】のにも役立つでしょう。
どれだけ苛烈な攻撃に曝されようと、わたしの思いは揺らぎません。必ず打ち勝ってみせます!



●守る者の覚悟の証
 何かを守る。それは時に己の身を犠牲にしなければ為し得ない。辛く、苦しい時もあろう。報われない時もあろう。
 それでも当然のように他者のために立ち上がるのは、その心に迷いなく、確固たる覚悟があるからだ。
 戦場は生者を蝕む炎の海と化している。ルムル・ベリアクス(鳥仮面のタロティスト・f23552)はその中でフライング・ダッチマンと対峙していた。全身を炙られているようなじりじりとした熱さが襲っているが、ルムルの覚悟はその程度で折れるようなものではない。
「ゼンタよ……生者への枷が足りぬようだ。征け――戦場をその羽で染めてみせろ!」
 フライング・ダッチマンは再びゼンタを舞わせようとする。飛び立つゼンタを見てルムルはフォーチュンカードを取っていた。
「させません!」
 ゼンタの飛行を追いながらルムルは宙にフォーチュンカードを投擲する。揺れて落ちる羽は狙いをつけにくいが、ルムルは数を乱れ撃つことで補った。
 フォーチュンカードは羽に触れると激しく燃え上がり、対消滅していく。
「われがいるのを忘れたか! 猟兵!」
 ゼンタを空へ放ったフライング・ダッチマンは同時にルムルへと詰めていた。振り上げるカトラスに炎が走る。
『蜥蜴の悪魔よ、砕けない想いの強さを今、形と成せ!』
 振り下ろされる刃を前に、ルムルは全身を鋭いアメジストの鱗で覆った。両腕を盾にしてフライング・ダッチマンの斬撃を受けると、ガリっと抉れて鱗の破片が散っていく。
 削れたが、突き破られてはいない。ルムルはマスクが象る双眸を力強くフライング・ダッチマンに向けた。その身こそが鬼火であると主張するかのように、フライング・ダッチマンの体は燃え上がる。 
「砕けぬ想いとは――この程度か!」
 手応えからして二撃目は耐えられまいと、フライング・ダッチマンはルムルの腕を弾きながらもう一度カトラスを振り上げる。もはやフライング・ダッチマン自身が炎の海そのものであるかのように、炎は滾り溢れてくる。
「いいえ違います――さあラケルタよ、わたしの思いを受け取れ!」
 ルムルが咆哮すると、全身の鱗に生えた結晶がその思いに応えるかのように盛り上がり始めた。
 フライング・ダッチマンの攻撃がどれだけ苛烈になろうとも、ルムルは立ち続けると誓ったのだ。人々を守りたいという気持ちがルムルにそれほどの覚悟を抱かせた。
 立ち続ける限り、負けることは無い。たとえ悠久の時が流れようとも、立ってさえいればその先に一筋の光明――勝利が見えてくる。
 ルムルは逃げない。揺るがない、迷いのないルムルの心に結晶は急速な成長を遂げ、ルムルの両手のフォーチュンカードへ派生した。
 結晶の刃、それは攻防一体の新たなる姿。
 ルムルは両の刃を交差させて頭上へと突き出した。フライング・ダッチマンが全身を使って振り下ろしてくる刃を挟み込んで受け止める。衝撃は重く、ルムルの足元がぐしゃと沈み込んだが、ルムルの覚悟――結晶は砕けない。
 なお成長を続ける結晶はフライング・ダッチマンが撒き散らす青炎を跳ね除け、さらにその体を縛り付けるように纏わりついていく。
「ぬぅ……おぉっ……!」
 フライング・ダッチマンは自身の身体にまで侵食してきた結晶をカトラスで叩くが、固い感触が跳ね返ってくるばかり。
 今度はルムルが刃を振り上げる番だ。フライング・ダッチマンは結晶によってルムルと繋がれている。
「逃がしません!」
 左の刃をガツンとぶつけてカトラスを跳ね上げると、無防備の体へ右の刃から一気の交差三連撃。一閃ごとにフライング・ダッチマンの体から炎の飛沫が舞い上がり、最後の渾身の薙ぎ払いはフライング・ダッチマンを結晶から剥ぐほどに強烈に刻み込まれ、燃え上がる体を吹き飛ばした。
「ぐぉぉあぁぁっ!!」
 背中から落ちたフライング・ダッチマンは一度跳ねた後、横倒しになって転がった。
 此度の戦いにおいて、フライング・ダッチマンが地を舐めるのは初めてだろうか。猟兵達が少しずつ積み上げてきた攻撃が、今こうして形となって現れている。
「ぐ……猟兵共、許さんぞ……!」
 炎が揺らぐように細く伸びたフライング・ダッチマンの右手は、恨みを込めるようにガリガリと地を毟っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

煙草・火花
骸球を霊力式小銃の霊力弾を発射、集合体であるなら魂が減れば火力も抑えられるかもしれないであります
炎が溢れだすのに合わせ耐熱式外套で全身を包み、踏み込むのであります!
元より小生は火の扱いには慣れた身、【火炎耐性】で耐えながら駆けるであります!

小生は老い先短い怪奇人間
故に小生は望みます、世界に己の証を残すことを
學徒兵として世界を守ること、それこそ小生にとっては己の証を残すことに他ならないであります!
だから小生は迷いません
この身を焼き焦がす炎へ踏み入ること、それが世界を守ることになるならば!
恐れることなく足を踏みだしましょう!
炎を抜けると同時、軍刀の斬り込みと同時にガスを爆破であります!



●証は世界の記憶となりて
「骸球よ……全てを焼き払え!」
 フライング・ダッチマンは鎖の先に付いた骸球を振り回し、投げ縄の要領で煙草・火花(ゴシップモダンガァル・f22624)目掛けて飛ばしてきた。
「骸球は邪悪な魂の集合体……であれば!」
 火花は霊力式小銃を構えながら、自ら骸球へと突っ込んでいく。照準を合わせて一発、二発と骸球へ霊力弾を放つと、弾丸は骸球の表面を捉えて削り、また開閉する無数の口に生え揃う牙を折っていった。
 そうして骸球から魂を少しでも減らすことができれば、吐き出される炎も少しは緩和されるかもしれない。可能性には賭けるとして、火花は耐熱式外套で身を包んだ。
 骸球の口が一斉に大きく開き、炎が濁流のように溢れ出した。火花の思惑が結実するか――それは結果を以て知るしかない。
 火花は顔も半分ほど外套に埋めるように着込んだが、どうしても目の周りの露出は避けられない。そのため火炎への耐性を自身へ重ねることで二重の防壁を張った。
 炎に飛び込んだ先は青一色の世界で、炎が質量を持ったかのような圧力が全身に襲い掛かってきた。駆け出した勢いが一気に消沈し、そこからは摺り足気味に一歩ずつ歩みを進めるしかない。
「うぐ……」
 じわり、と肌に染み込んでくるような熱さを感じた。炎に晒され続ければ、如何に耐性を重ねようといずれ限界がきてしまう。時間との勝負だった。
 そんな中、炎の中を歩むのは何のためかと火花は自問する。苦難の道に身を投じてまで成し遂げたいこと――それは、世界に己の証を残すこと。
 短命とされる怪奇人間である火花。ならば命尽きる前に、一つでも多く「煙草火花」という者がいたことを世界に刻む。
 いくらか方法は考えられよう。そして火花が選んだのは、學徒兵として世界を守る――それこそが己の証を残すことと信じた。
 海と島々の世界は七大海嘯という脅威に晒されている。それを取り払うためならば、身を焼き焦がす炎へ踏み入ることすら辞さない覚悟。
 前進無くして勝利はない。勝利無くして世界はない。ならば世界を守るため、突き進むことこそ己がすべきこと。疑わない火花の心に迷いなどあろうか。
「ぬぅ……まだ止まらぬか!」
 炎の中に揺れる影はゆっくりとだが、決して止まることなく進み続ける。フライング・ダッチマンはさらに炎を浴びせかけようとするが、もう一息、というところで火花を完全に押し返すだけの火力が得られない。
 いくらか歪になっていた骸球は、それだけ魂を失っていたのだ。失われた魂の分だけ、火花は強く前に進める。
「辿り……着いたで、あります!」
 目の前に現れた炎のほんの少しの切れ目に軍刀を割り込ませて一気に捌いた。骸球の口が裂けて炎が零れ落ち、火花の視界が一気に開ける。鎖に沿うように走り込んだ火花は一直線、フライング・ダッチマンの元へ。
『威力はお墨付きでありますよ!』
 鬼火が相手ならなおのことか。軍刀の刀身を可燃性ガスが覆う。火花はその一撃に全てを込めた。
 フライング・ダッチマンは鎖を捨ててカトラスを構えた。ならば差し違えるか――否。
 証は残すが、ここを最後の証とする気はない。
「世界のため――大人しく散るであります!」
「戯言を!」
 突き出された刃は火花自身の速度の分だけ加速する。それを紙一重、数本の髪を散らして避けると、胴体を真一文字に斬り裂く一閃を放った。
 厚手の海賊服を両断し、直後にガスが一気に爆発。
「ぐああぁぁぁっ!!」
 まるでヒーローショーでも見ているかのような、青く派手な爆発となった。上下に断裂したフライング・ダッチマンの体は無残に千切れ飛び、拠り所をなくした炎が空にかき消えていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年02月15日


挿絵イラスト