羅針盤戦争〜ハッピー・チョコレートフォンデュ
「すっごくおいしそうなの!」
冒険と美味しいお菓子が大好きなウトラ・ブルーメトレネ(銀眸竜・f14228)は、その海の異変にめちゃくちゃテンションを上げていた。
だって、海が、チョコレートになっているのだ!
見渡す限りのチョコレート。食べても食べても食べきれないチョコレート。そこそこ齢がいったものなら胸焼け待ったなしの光景かもしれないが、十代半ばの少女にとっては魅力的に過ぎる。
「しかもね、とろとろアチチにとけてるの。ぶわーってふきだしてるとこもあるの!」
ウトラは満面の笑顔だけれど、なんだか不穏の気配が漂う単語の連投に、居合わせた猟兵の幾人かは、きっと眉を顰めたことだろう。
●ハッピー・チョコレートフォンデュ
火山でも近いのか、その海域は海中温泉よろしくぐつぐつに沸いていた。あと、間欠泉も点在していた。
そんな海域が突如としてチョコレート化したのだ。一帯は巨大熱々チョコレートフォンデュ状態だし、そこかしこに天然チョコレートファウンテンが出来上がっていても不思議ではない。
いやそもそも『海の水全てがチョコレートに変貌する』ということ自体が不思議極まりないのだけれど、そこはそれ、七大海嘯がひとり『桜花』メロディア・グリードの仕業なので、常識でもって原理を追求することの方が時間の無駄だ。多分。
然して猟兵たちはメロディア・グリードと同等の力を持つ分身「増殖する私の残滓達(スイート・メロディア)」の大群が次々と出現するチョコレートフォンデュの最中へ送り込まれることになる。
「あのね、あのね、スイート・メロディアのからだは、チョコレートとかキャンディとか、スイーツでできてるんだって!」
ウトラの興奮は収まる気配がない。まぁ、乙女の夢を凝縮させたみたいな状態だ、仕方ない面も確かにある。でも冷静に考えたら、そんなカロリーの坩堝みたいなとこに行きたいと思う?
その上、スイート・メロディアたちは文字通り沸いて出てくる。
素材からして耐久性はからっきしだが、やはり数は暴力だ。加えて攻撃力そのものは七大海嘯と同格というチートぶり。
征ったが最後、逝く前に一体残らず殲滅するしか、生きて還る術はない。
しかし物は考えようだ。
熱や噴出エネルギーを上手く活用すれば、いつも以上に効果的に戦える手段はきっとある。むしろ無い筈がない! もちろん、自分が元々持っている能力だけでスイート・メロディたちをぶっぱするのも大歓迎だ。
「ぜーんぶたべちゃうのもいいかもよ」
味変用に何を準備すればいいのだろうとか言うウトラはさておいて。
いざ征かん! 熱々チョコレートフォンデュの海へ!!
七凪臣
お世話になります、七凪です。
羅針盤戦争シナリオ、お届けします。
●プレイング受付期間
受付開始…2/14 8:31から。
受付締切…任意のタイミング。
※導入部追記はありません。
※受付締切はタグとマスターページでお知らせします。
●シナリオ傾向
はっちゃけネタ系、ギャグまっしぐら。
勢いは不可能も可能にする、きっと。
●プレイングボーナス
一斉攻撃を受ける前に、可能な限り多くの「増殖する私の残滓達」を倒す。
●採用人数・作業日関連
シナリオ完結を優先する為、全員採用はお約束しておりません。
作業日は2/14,16,17(何れも一日2~3時間程度)。
●他
お一人様当たりの文字数は700~1000字になります。
ご縁頂けましたら、幸いです。
宜しくお願い申し上げます。
第1章 集団戦
『増殖する私の残滓『スイート・メロディア』』
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POW : スイート・エンブレイス
【甘い香りと共に抱きしめること】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : キャンディ・ラプソディ
【肉体を切り離して作った毒入りキャンディ】を給仕している間、戦場にいる肉体を切り離して作った毒入りキャンディを楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ : チョコレート・ローズ
対象の攻撃を軽減する【融解体】に変身しつつ、【毒を帯びた薔薇の花型チョコレート】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:hina
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
朱赫七・カムイ
⛩迎櫻
★
斯様な海に変わるとは…
サヨ、気をつけて
歌い無邪気な笑みを浮かべる妻を案じる
ドロドロのチョコ海だ
落ちたら窒息だよ
リルとて泳げぬ海なのだ
…ッ(絞まる)
そんな時もきみを助けるよ
優しく撫で身近な所にあったチョコをへし折りサヨに食べさせる
その意気だ
頭?…噫、目が合った
愛しの巫女がくれた供物ならなんでも食べるよ
例え首であろうとも
かち割って食べればなかなか
こんな食べ方もあるのだね
チョコを纏う果実に菓子も実に美味
サヨもお食べ
確かに美味であるが…私はサヨの作ったチョコの方が好きだよ
きみの愛の味がするから
容赦なく追加されるチョコにリルと目配せをし
噫、やろうと決意をきめる
妻のガッカリする顔はみたくないからね
誘名・櫻宵
🌸迎櫻
★
リル、カムイ!チョコレートパーティーよー!
うふふー!ちょこの海ならこわくなーいわ(チョコレート海は怖くない歌)
え?!チョコでも溺れるの?!
恐ろしいわ…リルでさえ泳げないなんて……怖い!カムイ!
あ、チョコ
美味しいわ
やっぱり怖くないもーん
メロディアを斬って砕いて腕をリルに
頭をカムイにあげる
ハッピーバレンタイン
あら
ひとを食べてるようでもチョコはチョコよ
私、夫と妻の為にたくさん砕くわ
全部食べて
私も食べるわ!
熱いところに追い込むようなぎ払い溶かす
苺やバナナにマシュマロ、アーモンドをつけるのも美味しいわ
飽きたらクリームを添え
かぁいいこと言ってくれるわねふたりとも!
すき!
だからたぁんと召し上がれ!
リル・ルリ
🐟迎櫻
★
ちょこの海なんて夢みたいだよ
櫻、機嫌がいいね
ふふー変な歌!
……でもこの海は僕じゃ泳げないな
人魚のちょこほんじゅ?になるもの
櫻、カムイが絞まってるよ
またそんな、カムイは甘やかすのが上手なんだから!
渡された、どう見ても腕のチョコ
櫻がくれたばれんたん、の…
腕
ひとを食べるみたいだな…なんて思いながら齧る
櫻がくれたんだから特別なんだ
美味しい!
これならぱくぱくできるよ!
ヨルと一緒に貰ったチョコを食べまくる
わー!ふるつ、を付けるのもいい
「癒しの歌」を口ずさむ
おかわり!
僕だって櫻のチョコが1番なんだから!
これより櫻のチョコがすきだぞ!
え、まだくれるの?
渡された脚の前に瞬いて
カムイ
やるぞと覚悟をきめる
●たんと召しませ、私の愛を♥
見渡す限りの栗色だ。珈琲色とも言いたい気がするが、漂うあま~い香気がほろ苦い想像を遠退ける。もちろん、最適解は『チョコレート色』の一択なのだけれど。
「うふふー! うふふー! ちょこの海~」
「斯様な海に変わるとは……」
「ちょこちょこちょこちょこ、チョコパーティー♪ チョコレートパーティーよー」
「櫻、機嫌がいいね」
そんなこんなでチョコレートの海を前にして、ショコラティエな誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)は浮かれて歌い、櫻宵の右手側で朱赫七・カムイ(約倖ノ赫・f30062)は異様な光景に愕然とし、櫻宵の左手側でリル・ルリ(『櫻沫の匣舟』・f10762)は夫のご機嫌ぶりにご満悦――だったのだが。
「ええー、ちょこの海ならこわくなーいわ♪」
「サヨ、気を付けて。ドロドロのチョコ海だ、落ちたら窒息だよ」
「え」
妻を案じるカムイの何気ない一言に、『チョコレート海は怖くない歌』がぴしりと止まる。
「そうだね。この海だと僕も泳げないな。人魚のちょこほんじゅ? になってしまうもの」
「えええええ!?」
そしてマジマジと頷くリルに、櫻宵の顔面は一気に蒼白になった。
「え、え、……チョコでも溺れるの???」
櫻宵、おそるおそるカムイを見る。
「溺れるだろうね」
カムイ、こっくりと頷いた。
「……海なのに、リルも泳げないの????」
声を震わせながら櫻宵、海の救世主ともいえる人魚のリルに尋ねる。
「うん、泳げないね」
ちょっぴり悔しそうにリルも頷く――その途端。
「そんなっ、ばかな! ねぇ、誰か嘘だといって!! チョコなのにチョコなのにいいい」
カナヅチで知られる櫻宵の恐怖と絶望は天元突破、待ったなし。救いを求めてカムイに全力で抱きつく。
「……ッ」
「櫻、櫻、カムイが絞まってるよ」
結果、悪気は微塵もないのだが、リルの指摘通り、櫻宵の腕に首をがっちりホールドされたカムイの顔色が、あっという間に紙よりも白くなっていく。しかし慌てることはない。カムイは神(紙だけに)、大いなる愛を以て櫻宵を受け止める。
「大丈夫だよ、サヨ。私は、どんな時……でも、きみを――助ける、とも」
「またそんな! カムイったら甘やかすのが上手なんだから!」
受け止めはしたものの、神様でもしんどいものはしんどかった。(物理的に)息も絶え絶えなカムイの様子に、リルは怒っていいやら、焦るやら、どうしたものかと迷いに惑う。
とはいえ、神は神。
リルに安心するよう瞬きで合図を送ったカムイは、ひらっと目の前を舞ったチョコへ手を伸ばすと、パキンと圧し折り、どうにかこうにか櫻宵の口許へとそれを運ぶ。
「ほら、サヨ。チョコだよ」
「チョコ!」
唇に触れた馴染みの感触に、イヤイヤ期の幼子みたいになってた櫻宵の目がパチリ。ハムっと食べたら、さらに目はピカリ。
「美味しいわ! 美味しい=正義! やっぱり怖くないも~ん」
然して櫻宵、仏様のように開眼した。例え溺れる可能性があろうと、チョコレートは美味しい。だから怖くない。怖くないったら怖くない。怖くないなら、美味しく頂ける。全部全部、頂ける。
「――ふふ」
するりとカムイから解いた手で、櫻宵は佩いた血桜の太刀を抜くと、無造作に一閃。
ぱきりと割れる手応えは、チョコレート細工を仕上げる時によく感じるもの。そうして手に入れた女の首と腕を、櫻宵は艶やかに微笑んでカムイとリルへと差し出す。
「ハッピーバレンタイン」
「え」
「え」
首を渡されたカムイの、腕を渡されたリルの、腰が若干引ける。
「ハッピーバレンタイン♥」
……引けるけれど、逃げることは許されないらしい。櫻宵のニーッコリ満面笑顔に、カムイとリルは櫻宵を挟んで視線を交わすと、揃ってごくりと喉を鳴らし、おずっと差し出されたものを受け取った。
「……噫、目が合った」
恨めし気な女の眼と合ってしまった目を、カムイは慌てて逸らす。
「腕……ひとを食べるみたいだな……」
「あらあ、ひとを食べてるようでもチョコはチョコよ🌸」
「――そだね」
うっかり心の声が漏れてしまったリルは、暗示みたいな櫻宵の言の葉に釈然としないながらも、意を決す。
だってこれは櫻宵がくれたちょこれえとだ。夫の愛がつまった、特別なものだ。
そしてそれはカムイも同じ。愛しの巫女がくれた供物だ、食べないという選択肢は存在し得ない。
「「いただきます」」
「はい、召し上がれ✨」
リル、細腕をがじり。カムイ、目が合うのはやっぱり微妙なので適当に(適当に)頭をかち割って、かぷり。
「美味しい! 美味しいよ、櫻!」
「うん、確かに美味しいね。なかなかのものだよ」
「よかったー♥🌸✨」
ちなみに。ものすごく雑にスルーしたけれど、カムイが当たり前みたいに圧し折ったのは、我先にと単独で攻めて来たスイート・メロディアの髪だし。櫻宵が普通に断ち落とした首と腕もスイート・メロディアだったのでした。
でもって、こうなったらもうカムイ⛩×櫻宵🌸×リル🐟が止まるわけないよね。ないよね!!!
「苺やバナナ、マシュマロ、アーモンドもあるわよ」
「こんな食べ方もあるのだね」
「わー! ふるつ、おいしい! おかわり、おかわり!!」
愛しい愛しい夫(カムイ)と妻(リル)の為に、櫻宵はチョコレートの海を驀進し、スイート・メロディアを斬って砕いて斬って砕いて斬り砕きまくって、ついでに熱々チョコレートファンテンへと誘導する。
どうしてチョコレートの海を驀進できているかというと、速度という勢いだ。水より粘度があるから、沈む前に次の一歩を踏み出してしまえばなんてことはない。それにほら、櫻宵はショコラティエだし。チョコレートの扱いには誰よりも長けてるし(力説)!!
櫻宵、身体を軸に刃を薙ぎ、生んだ衝撃波でスイート・メロディアたちを一瞬でチョコレートファウンテンへ投入する。
此れは全て、櫻宵の愛。たんと食べて、食べて、食べ尽くして欲しい愛。
「飽きたら言ってちょうだいね。こんなこともあろうかと、クリーム各種も持ってきてるわ!」
美味しいでしょう? と微笑む櫻宵に、「確かに」とカムイは首肯しつつ、ふと思ったままのことを口にする。
「私はサヨの作ったチョコの方が好きだよ。きみの愛の味がするから」
――トゥンク。
うっかりカムイに抜け駆けされたリルも、手持ちのチョコを雛ペンギン型式神のヨルのお口にむぎゅうっと詰め込み、声を大にして訴えた。
「僕だって櫻のチョコが一番なんだから! これより櫻のチョコがすきだぞ!」
――きゅんっ。
なお、カムイとリルの訴えの直後に入った擬音は、櫻宵の心臓のトキメキを表わすものだ。
だってそうだろう? 夫と妻に、七大海嘯特製(?)チョコレートより自分お手製チョコレートの方が美味しいと褒められまくったのだから!
「……かぁいらしいことをいってくれるわね、ふたりとも!」
本日最大の燃料が投下された櫻宵の目は、キラキラを通り越して、太陽みたいに爛々と輝いていた。
「すき! すき、すきすき! だあいすき!」
駆け出した愛の暴走牛車にブレーキなぞ無い。
「だからたぁんと召し上がれ、もっともっと召し上がれ!!!」
櫻宵のチョコレート量産(スイート・メロディアを粉砕すること)する速度がますます上がる。多分、秒速数百体。
「……カムイ」
どうやらまだまだ呉れる気らしい夫の気概に応えるべく、腹を括ったリルはカムイをチラ見。
「噫」
リルの意を察したカムイも、目配せで是を返す。
愛する妻の、愛する夫のがっかりする顏は見たくない。ならばとことん食らうより他に道は無し!
「―― 人もをし 人も恨めし あぢきなく 世を思ふゆゑに 物思ふ身は」
カムイは歌う、櫻宵の行動の一切が成就するよう。
「――ゆらり 蕩ける めざめの朝。泡沫に消える痛み、ありのまま すべて包みこんで抱きしめてあげる。愛を灯す歌、君に 癒しの灯火を」
リルは歌う、心を蕩かす甘やかな歌声に共感した者すべてを癒す奇跡を。
……その対象に自分たちが含まれることをちゃあんと理解して。
つまり、櫻宵が食べさせたいだけカムイもリルもチョコを食べられる。あと、満腹を超えて食あたりを起こしてもリルもカムイもダメージを受けることはない。だからこそリルもカムイも延々とチョコレートを食べ続けられるってわけだ。
傍目にはプチ地獄絵図だが、当人同士が幸せだからいいよね! あとスイート・メロディアものすごく減るし☆
ハッピーバレンタイン♥
夫×(妻=夫)×妻の三人に甘い幸あれ!!!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
栗花落・澪
チョコレートお持ち帰りしたいです!
(綺麗な海になんて事してくれたんだ許さないぞメロディア)
★靴に風魔法を宿す事で海面…チョコ面?
と反発を起こして【水上歩行】
【高速詠唱、多重詠唱】で氷・水魔法の【属性攻撃】
【ダンス】の要領でくるりと回転しながら全方位に【範囲攻撃】でばら撒き
熱々の間欠泉や沸いたチョコと反応させる
狙うのは水蒸気爆発の誘発
近づかれる前にどっかーんとね
更に★Candy popをおまけにばら撒くと【破魔】の【指定UC】を発動
その飴、僕の魔力入りなんだよね
だからUCがぶつかれば魔力連鎖で更に爆発
毒薔薇も焼かれれば溶けるだろうし
大炎上ですね
あ、無事な場所のチョコは空になった瓶に入れて帰ろ
●此れがホントの大・炎・上!
グリードオーシャンの海は、青がとても澄んでいて綺麗だと栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は思っている。
故に。
(そんな綺麗な海になんてことをしてくれるのかな……っ)
ぐぎぎぎぎ。
メロディア許すまじ、と澪は臍を噛む。
年頃的にチョコレートは嫌いじゃないし、隙あらばお持ち帰りしたいって思うけれども。其れは其れ、此れは此れ!
こうする間にも、外見は美しい女性で、中身は甘い甘いお菓子なスイート・メロディアたちは湧いてくる。
だから澪は迷わず真っ白な靴に風を纏わせ、生えた羽で海面――もといチョコ面を走り出す。
お気に入りの靴だ。跳ねるチョコで汚れるのは、ちょっぴり悲しい。
でもそのやるせなさも、澪の原動力になる。
「鬼さんこちら、捕まえられるなら捕まえてごらん」
少女の華やかさを纏い、少年の溌剌さで澪はチョコのステージでステップを踏む。
くるくる、くるり。
広げた両手は、翼のようだ。ただしその指先から放たれるのは純白の羽ではなく、水と氷を掛け合わせた細かな粒子。
闇雲に澪に迫るスイート・メロディアたちは気付かない。楽しげに、リズミカルに踊っているだけに見える澪の行先に、熱々のチョコレートファンテンがあることに。
つまり――。
「どっかーん!」
指揮者を真似て澪が両手を振り上げた途端、一帯に大爆発が起きる。チョコレートの熱と、水と氷の粒子が反応したのだ。所謂、水蒸気爆発というやつだ。いや、正しくはチョコレート爆発かもしれないが。
衝撃に夥しい数のスイート・メロディアたちが木っ端みじんに消し飛ぶ。
けれども澪はまだ攻勢の手を緩めない。お顔はとっても美少女も裸足で逃げ出すキュートぶりだけれど、澪の根っこにあるのは決める時は決めるイケメンなのだ。きっと。
そんなこんなで澪、ポケットの中から小瓶を取り出すと、指先でこつんと叩いてから蓋を開ける。
ころん。転げ出したのは、カラフルな飴玉だ。しかも飴玉は澪が蓋をこつんとやるたびに、スイート・メロディアばりに次から次へと湧いてくる。
「鳥たちよ、どうかあの人を導いてあげて」
あとは破魔の炎で鳥を模れば準備OK。
「どっかーん、その2!」
ころころころころころころころ転がる飴玉は、澪の魔力入り。そこへUCの鳥をけしかければ、魔力の連鎖反応でまたもやの大爆発!
今度は吹き飛ぶだけでは済まず、スイート・メロディアたちは燃え上がる。
余談。
「これが本当の大炎上だね」
轟々と吹き上がる紅蓮を背に、澪は被害を免れたチョコレートを空っぽにした瓶に掬い入れたのでした。
ちゃっかりお土産確保、やったね!
大成功
🔵🔵🔵
千家・菊里
★
チョコフォンデュ食べ放題とは何と太っ腹な――見事平らげてみせましょう(食べ尽くす的な意味ではなく、平定する的な意味の方――かは不明な笑顔で)
UCの狐達に浮遊や歩行で援護頼み軽々チョコ海上を渡りつつ、早業の範囲攻撃で多数霊符放ち先制
符には凝固の呪詛込め、毒チョコはオーラで防ぎ刀で両断しお断り――ふふ、貴女のものを頂かずとも、おやつは適宜自己補給しますのでお構い無く(ちゃっかり持ち込んでいたマシュマロや果実を、隙あらばフォンデュして体力回復)
あ、でも此方の毒チョコ――このまま廃棄も勿体無いので、お返し致しますね
(融解体になった者へ、熱利用し溶かし込む無慈悲)
実に食べ尽…こほん、倒し甲斐のある事で
呉羽・伊織
【守】
…くっ、どうせなら胸焼地獄戦場よか、可愛い女子と熱々甘々のチョコ交換とか楽しみたいだけの日だったー!(コホン)
一味違うちょこ…ウン、ちょこニャンは甘い面してビター極まる味わいだよネ
まぁ自分がチョコフォンデュとか御免なんで頑張るとも!
…しっかしミスマッチな食材投下するみたいな響きだな
同じく三匹の背を借りつつ早業で先制UC
好きなだけつついて来いと鴉達放つと同時
手近な敵へ風切や檠燈も投げ刻んで溶かして2回攻撃
迫る敵は間欠泉吹く瞬間に誘導し纏めて吹っ飛ばそう
ちょっ…その楽しみ方は反則ではっ
(毒にも覚悟決めんとした瞬間
動物の飴玉遊戯たいむ☆を楽しむ事になり!)
大海以上の食気と間欠泉以上の勢いだな!
鈴丸・ちょこ
【守】★
熱々のチョコか
普通の猫なら舌にも体にも毒だが、俺は一味違うからな(突然変異で何でも行ける口)
おい、頭まで沸いたか?
お前等まで全身ちょこ色にならねぇよう、気合入れろよ――しゃけ、おかか、ふかひれ、伊織
メガリスやら何やらで飛行可能な鯱と鯆と鮫の力借り、チョコ海も何のその
早業で三匹の背を跳び回りつつ、片端から沸く敵をがぶがぶUC
飴玉も楽しんでやるとも
俺達は動物だからな
こういう楽しみ方も出来るぞ
(おててで飴玉をちょいちょい転がし遊んだり
三匹がショーのボール芸の如く操ったり
――覇気と共に投げ返し敵ごと間欠泉へしゅーとしたり)
おかわり大サービスとは最高だな
(とことん喰らい尽くす気の腹ペコ大食い)
●腹ペコさんたちの狂騒曲
側頭に被った狐面のように、千家・菊里(隠逸花・f02716)の目は機嫌よく細められた。
「チョコフォンデュ食べ放題とは、何と太っ腹な――」
ふふり。堪え切れなかった笑いが、菊里の口の端から零れる。
見渡す限りのとろとろチョコレートだ。しゃがんで指先に掬ったそれを口に運ぶと、得も言われぬ香気と甘味が口いっぱいに広がる。
――美味しい。
口の中で呟いて、菊里は立ち上がった。
高さを取り戻した視界には、幾つもの影が今まさに蠢き出そうとしている。
「ええ、ええ。見事平らげてみせましょう」
一際深くなった笑みに潜められた意は、果たして『食べ尽くす』ことか『敵を鎮圧する』ことか、はたまたその両方か。
誰に真意と本意を語ることなく、菊里は喚んだ狐の式神たちを足場代わりにして――式神だもの、主に尽くせて満足なのよ。泣いてなんかないもの!――ひらりひらりとチョコレートの海上を征く。
そうする間にも、ゾンビ映画よろしく現れるスイート・メロディアの輪郭が明らかになる。甘ったるい(色んな意味で)女だが、攻撃力は七大海嘯に並ぶと聞いた。
ならば狙いを定められる前に駆逐するのが最善。
「では、参りましょうか」
ひら、ひら、ひらり。
右へ跳び、左へ跳び、スイート・メロディアたちの合間を菊里は縫うと、頃合いを見計らって霊符を束ごと撒き散らす。
あ、とか、う、とか。凝固の呪詛を込められた符に、模造品でしかないスイーツたちは、甘美な苦痛を呻いて身を強張らす。
あとは尽く斬り伏せるだけ――だが。
「このまま廃棄も勿体無いので、」
手を差し出す形のまま固まった女の掌に乗せられた、薔薇型のチョコレートを菊里はひょいと拝借すると、後ろ足に用なしになったスイート・メロディアを蹴り壊し、また走った。
「お仲間からお借りしたもの、お返し致しますね」
そうして毒薔薇を見舞うのは、今まさに融解体になろうとしていたスイート・メロディア。
急には止まらぬ変化に、毒は瞬く間にスイート・メロディアの全身に回って命脈を断つ。
呉羽・伊織(翳・f03578)は無駄に見目が整った男だ。無駄に。無駄に。無、駄、に!
「……っくう!」
「おい」
「今日ってバレンタインデーだろ??!?」
「おい」
「なのにどうしてオレ、こんなとこに居るんだ????」
「おい、聞け」
「確かにチョコレートだらけだけど、此処は違うだろ?」
「いや、だから聞けって」
「ああああどうせならどうせなら胸焼地獄戦場よか、可愛い女子と熱々甘々のチョコ交換とか楽しみたいだけの日だったー!」
「……お前、そんな風だから腐れ縁な奴に見せ場を奪われ――」
「やめて、ちょこニャンっ! それ以上は言わないでっ」
ものすごーく見知った顔が華麗に孤軍奮闘している様から伊織は一生懸命に目を逸らす。鈴丸・ちょこ(不惑・f24585)の的確過ぎるツッコミにも必死で耳を塞ぐ。
だって今日は2月14日。世の女子たちが意中の男性に甘い甘いチョコと熱い熱い想いを贈る日(義理? 知らない子デスネ)!
にもかかわらず、こんな辺鄙な戦場(トコ)に送り込まれたのだ。現実逃避のひとつやふたつ、してもおかしくないというか、しない方がおかしい――という訴えこそ、伊織の見目を『無駄』にしている一因だったりする。
ともあれ、伊織は盛大に肩を落とす。でもって、何か癒しはないだろうかとよろりと視線を巡らせ、くわりと目を見開いた。
「っていうか、ちょこニャン! 其れちょこニャンが食べたらダメなヤツだろ!!」
「んあ?」
どれだけ言っても聞き耳持たず風の伊織に見切りをつけかけていたちょこ、美味しく頂いていたチョコレートを片手に首を傾げる。
「何を言ってるんだ、お前」
「何を言ってるってっ。ちょこニャン、猫だからチョコレートなんて食べたら命に関わ――」
「はぁ? 俺がそんな柔なわけないだろ。俺はそんじょそこらの猫とは一味違うからな」
此処で解説をひとつ。どうして癒しを求めた伊織の目線がちょこへいったかというと、ちょこが四十路の今でも子猫顏を維持する奇跡のぷりちー猫だから(正しくは、賢い動物です)。
しかしちょこの奇跡は可愛らしさだけには留まらない。なんとチョコレートまで美味しく頂ける突然変異体でもあったのだ(どーん)!
しくしくしく。気遣いが無駄になった(だからいい人止まりなのよ、とかいう残酷なことは言わないでおく)伊織は膝を抱える。
「一味違うちょこ……ウン、ちょこニャンは甘い面してビター極まる味わいだよネ。ん? もしかしてオレ、上手いこと言ってない?? あとは……そう! 自分がチョコフォンデュとか御免なんで頑張るとか!!」
「……」
にしてもミスマッチな食材投下するみたいな響きだな、と一人得心を頷く伊織を眺めるちょこの目線は、『ついに頭まで沸いちまって……』と憐み混じりでとってもとっても生温かい。
だがこうする間にもスイート・メロディアたちは現れる。
「お前等まで全身ちょこ色にならねぇよう、気合入れろよ――しゃけ、おかか、ふかひれ、伊織」
遊興は終いだと、ちょこはお魚狩りで意気投合したシャチとイルカとサメを先行させて、なんやかんやで飛行できる三匹の背を、しゅばばばっと早業で駆け巡り、遭遇するスイート・メロディアを片っ端からがぶがぶと美味しく召し上がる。
となれば、伊織だって不貞腐れたり、いじけたり、夢見続けてもいられない。
「好きなだけつついて来い」
面白からの切り替えは一瞬。出来る男の顏になった伊織も、ちょこのお供たちの背にお邪魔してチョコレートの海を往く。
自由を許した鴉たちは、水を得た魚の如くスイート・メロディア達を嘴の餌食にし、伊織はその崩れ落ちる女たちを盾に、銘の通りに風切る暗器や炎を放つ護符を撒く。
あれほど渋りはしたが、始めてしまえば伊織の動きは何時もの通り。
時に鋭く斬り込み、必要あらば逃げるふりでチョコレートファウンテンこと間欠泉が吹き出すのに巻き込み、スイート・メロディアたちに反撃する隙を与えず狩って征く。
「――ちょっ」
そんなイケメンモードの伊織の顏がデレっと崩れたのは、ちょこのせいだ。
「ん? どうした?」
「いやいやいや、どうしたもこうしたもなくナイ?」
ころころころ。スイート・メロディアから強奪したキャンディでちょこ戯れる。おててでつんっと突いたり、ちょいちょいっと転がしたり、しゃけやおかか、ふかひれたちとキャッチボールしたり。
毒で苦しめるつもりだったスイート・メロディアが呆然となっちゃうくらい、ちょこは『可愛らしく』状況を弄び、楽しむ。楽しむ序でに、覇気をキャンディに纏わせスイート・メロディアを間欠泉へ吹っ飛ばしたりもする。
「……ちょこニャン、反則」
「何を言うか。おかわり自由の大サービスなんだ、骨の髄まで喰らい尽くさないと勿体ないだろう」
「そうネ! 大海以上の食気と間欠泉以上の勢いよネ!!!」
亀の甲より年の劫。中身はダンディ中年のちょこには敵わないと、伊織は天を仰いで肩を竦めた。
一方その頃。
――もきゅもきゅもきゅ。
ちゃっかり持ち込んでいたマシュマロや果実をチョコフォンデュして美味しく食し、菊里はしっかり体力回復していた。
「実に食べ尽……こほん、倒し甲斐のある事で」
もしかしなくても菊里、ちょこに匹敵する腹ペコ大飯喰らいさんだったぽい――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ニィエン・バハムート
【先制攻撃】の大地震で熱々チョコレートの大津波【範囲攻撃】!
スイート・メロディアの海ごと熱々チョコレートフォンデュ一丁ですわ!
飴細工の身体ならばこれは効果抜群ですわよね!
というか何故その身体でこんな場所を戦場に選んだんですの!?
飛び跳ねる熱々チョコレートの飛沫は【オーラ防御】で防ぎます。
がっつり敵を削れたら離脱します。さすがに七大海嘯がこれで終わるはずがないでしょうし、【空中浮遊】から【衝撃波】で自分の身体を吹き飛ばして加速。逃げますの。この方法なら敵UCで行動速度が遅くなっても衝撃波の威力で身体を無理矢理飛ばせるはずですわ。身体へのダメージは【激痛耐性】で耐えますの。
…あっついんですわよ!!
●灼熱攻防戦
ニィエン・バハムート(竜王のドラゴニアン(自称)・f26511)の見た目は、とても可憐な少女だ。
背の小振りな翼はほんのり庇護欲をそそるし、頭上にそそり立つ一対の竜角もニィエンの意志の強さを感じさせる。緑の瞳だってペリドットのように煌きに満ちているし、髪も柔らかな黎明の色だ。
で、こんな前置きをして何を言いたいかというと。
はにかみがちにチョコレートを差し出せば――実際に2021年のバレンタインにニィエンが用意したのは立派な寿司(だってバレンタインと言えばお寿司ですの! というのがニィエンの持論)だが――、お一人様な男児は頬を赤らめるだろう間違いなしのニィエンは、その実、海の生物の部分を自分の身体から一切切除したメガリスボーグであり、元々はナマズ目の外見を持つ深海人だということ。
つまり――。
「世界を揺るがす竜王の鉄槌! バハムート・デストラクション!」
『バハムート』は世界魚より魔王ポジションの方が断然カッコいい! とハジケたテンションの侭に、ニィエンが使ったのはナマズとしての能力の強化版。
「これでスイート・メロディアの海ごと熱々チョコレートフォンデュ一丁ですわ!」
ざぶうん。
熱々の海にニィエンは地震の応用で問答無用の大波を起こし、わらわら群がって来ようとするスイート・メロディアをめちゃくちゃ端的に一掃した。
だってね、ニィエンに向かって来ていたスイート・メロディアの身体は飴細工で出来ていたんですもの。飴は熱に弱い。あっという間に固体を保てなくなってぐにゃぐにゃになってお終いだ。
正直、どうしてそんな身体でこの場所を戦場に選んでしまったのか、ニィエンは激しく問い詰めたい気分――しかし、一度起きてしまった波はニィエンでもコントロールは不可能。 崩れ逝くスイート・メロディアを戯れに追いかけようものなら、ニィエンがチョコレートフォンデュされてしまう。
それに、だ。押し波があれば、引き波があるのはお約束。
「戦場に長居は不要。撤収ですわ」
さすがに七大海嘯がこれで終わるはずがないでしょうしという建前を盾に、ニィエンは熱々チョコレートの波に背を向けて、ふわっと羽搏くと、後方へ衝撃波を放って加速した。
物理法則を味方につけて、ぎゅいんっとニィエンは飛ぶ。飛んで飛んで、しつこく追いかけてくるチョコレート波から逃れる。
衝撃波を放つ度にビチビチ跳ぶチョコレート飛沫は、辛うじてオーラの壁で弾いた。そう弾きはしたものの、余韻の熱ばかりはどうしようもない。
「……あっついんですわよ!」
斯くしてチョコレートと化した海域を抜けるまで、ニィエンと熱の追いかけっこは続くのであった。お疲れ様!
大成功
🔵🔵🔵
蘭・七結
とろけたチョコレエトに潜らせて
したたり落つる前に口許へと運んでゆく
チョコレエトフォンデュはすきよ
いっとう好ましいのは、苺かしら
やわいマシュマロもよいわね
あついチョコレエトを掬い取って
ちょっぴりいただいてみましょうか
嗚呼、とてもあまやかね
舌の上で転がす度に心が踊るよう
甘い香りを纏わい続けたのならば
ずうとしあわせな心地で居られそうね
とろける甘味に呑まれ逝くのも魅力的だけれど
その先に求める真理はないの
この世界には識りたいことばかり
ねえ、あなたも如何?
此度限りのとびきりの嵐をあげるわ
あかい牡丹一華にチョコレエトを纏わせて
あなたたちを攫ってしまいましょう
お味を気に入っていただけたかしらね
ご馳走さまでした
●チョコレエト華颰
ダークブラウンのラウンドテーブルに、白いレースのテーブルクロスをかけて。
牡丹色のフォンデュ鍋に小さな火を灯したら、琺瑯の内側がくつくつと謳い出す前が丁度の頃合い。
(とろけたチョコレエトに潜らせて)
蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)は白磁の瞼の裡に夢見る瞳を閉じ込め、少しだけクンと鼻を鳴らした。
(したたり落つる前に口許へと運んでゆく)
漂う香りが、七結の記憶と心を甘く満たす。
「チョコレエトフォンデュはすきよ」
思い出すだけで、七結の口許は少女らしいまろやかな笑みを描く。
いっとう好ましいのは、たぶん苺。やわいマシュマロも捨て難い。色とりどりの果実たちをガラス皿に、一口サイズの菓子たちを銀の皿に盛り、フォンデュ鍋と並べたなら、テーブルの上は甘い王国に早変わりすること請け合いだ。
そんな魅力に詰まった光景と同じ香りなのに、そっと目を開いて見渡せば、いつもと違う海原が広がっている。
「……ちょっぴりいただいてみましょうか」
乙女心を好奇心に擽られ、七結は滑らかに光る海面へと手を伸ばし、指先に波をそっとまとわせると、おそるおそる唇へと運ぶ。
「嗚呼、あまい。とてもあまやかね」
舌の上で転がす度に、心が円舞曲を踊るようで、七結の顔(かんばせ)にはほろりと笑みが咲く。
甘くて、熱い、チョコレエト。
この香りで紗を編み身に着けていたなら――。
(ずうとしあわせな心地で居られそうね)
今一度、七結は目を伏せた。
想像するのは、甘味に呑まれ逝く己。溺れて沈めば、七結の身体は甘さに溶ける。
(素敵、ね。魅力的――だけれど)
「その先に、求める真理はないの。わたし、この世界には識りたいことばかりなの」
トン。
足先に纏わせた冷気で、蕩けたチョコレートを板チョコレートに変え。その上にすっくと立った七結は、瞬く間に視界を埋め尽くす艶やかな女の影たちへ――ニコリ。
「ねえ、あなた方も如何?」
――みつめて。
――繹ねて。
七結が冠する一華が、匂い立つよう輝く。纏う暁の彩の鮮やかさが増す。
「此度限りのとびきりの嵐をあげるわ――どうぞ召し上がれ?」
招くが如く伸べられた手から、ひらと一枚。続いて、一枚。また一枚。やがて花嵐と化すあかい牡丹の花弁。それらを全てチョコレートの海に潜らせたなら、あとは思うが侭に吹かすだけ。
今日かぎりのあまやかな嵐は、菓子の身を持つ女たちを攫って攫って、悉く攫う。
攫われ溶けてしまえば、悲鳴を残す間もなく残滓たちは消え逝った。
「お味を気に入っていただけたかしらね?」
肝心のことを聞き忘れたと、薙いだ景を目にふと七結は想い、ならば自分はと芳しい海へ淑女の礼を取る。
――ご馳走さまでした。
大成功
🔵🔵🔵
ユーフィ・バウム
ひとにはやらねばならぬ時というものがあります
いざ、熱々チョコレートフォンデュの海へ!
粉末のコーヒーとか抹茶粉とかを持参しておきましょう
迫りくる残滓達には
時に拳を、時に口を(粉末珈琲とかふりかけて食べる!)
もってお相手しましょう
私は蛮人、逃げも隠れもしない、堂々とお相手しましょう!
【大食い】と【怪力】。野生の培った肉体を信じ、
戦い、食べるのみッッ
多くの残滓たちに攻撃を当てるべく、
【なぎ払い】【衝撃波】を軸に
多数の相手に攻撃します
なるべく囲まれないよう立ち回り、
仲間とも連携して殲滅しますよ
近づかれたら?密着は私の間合い!
《トランスバスター》で粉砕します!
口でかぷりと食べるのもまたありかもしれません
●いざ征かん、珈琲と抹茶をお供に
裸足の底に展開したオーラの盾を護りに、ユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)は不安定な足元をものともせずに全力で疾走していた。
日焼けした肌に、空をそのまま嵌めたような瞳。
颯爽とした駆けぶりもあって、ユーフィのいる景色だけサバンナのようだ。だが満ち溢れる甘い香りの通り、此処はどうひっくり返ってもチョコレートの海。
ひとたび足を止めて沈んでしまえば、ユーフィもただでは済むまい。しかしそんな現実を物ともしない覚悟が、ユーフィのどちらかといえば控えめなお胸に燦然と輝いている。
「ひとにはやらねばならぬ時というものがあります!」
ぎゅっと力を込めた拳の中に握るのは、左がコーヒー味の粉末入りの小瓶で、右が抹茶味粉末入りの小瓶。
「私は蛮人、逃げも隠れもしない。堂々とお相手しましょう!」
――行きますよぉっ! これが森の勇者の、一撃ですっ!
然して問答無用で超高速の拳を繰り出せば、菓子の身体を持つ残滓なぞ一瞬で砕け逝く。
で、だ。
手あたり次第、殴って殴って殴って殴って――時々蹴りを浴びせたり、むんずと掴んで投げ飛ばしたりしつつ――、思い出したみたいに固めた拳をほんのり弛めると、指の隙間からふわりと味付き粉末が舞う。
となったら、今度は腹ペコ虫の出番だ。
「いただきですっ!」
間合いを頂いた、と、食事を頂きます、の両方の意を器用に掛け合わせ、ユーフィは見てくれは美しい女を頭から丸かじる。
がぶ。がぶがぶ。
――気が付けば、伊達に『スイート・メロディア』と名乗っていない甘い菓子で出来た女は珈琲の風味をまとって、すっきりさっぱりユーフィの腹の中。
とはいえ量が量なので、同じ味では流石に飽きもくる――胸焼けの心配はない。なぜなら、ユーフィは大食いだから!――ので、そういう時はもちろん抹茶粉末の出番。
速度は落とさず、ユーフィはチョコレートの海を、螺旋を描いて内へ内へと駆ける。
そうして蠢く残滓を引き付けるだけ引き付けた一点で、剣を薙ぎ払うのと同じ要領で拳からの衝撃波を四方へ放ち、ユーフィは夥しい数のスイート・メロディアを一瞬で粉砕せしめた。
その後、辛うじて形を保った女こそ、ユーフィの本命。
「わたしはただ、戦い、食べるのみッッ」
肉薄からの刹那、一帯の大気が緑を帯びた。それはもちろん抹茶粉末の広がり。つまり口に含むと、品の良い苦みと旨味が、スイート・メロディアをより美味しくしてくれる。
野生で培った肉体は、ユーフィの信頼によく応えた。野生の勘も、また同様に。
スイート・メロディアの出現位置と、チョコレート海上を征く同胞。気配さえ感じ取っておけば、不意をつかれる心配もない。
「密着は私の間合いです!」
余裕を見せつけるよう鼻先まで迫ったスイート・メロディアの顔面に拳をめりこませ、ユーフィはふと思い立って千々に砕けた欠片をそのまま齧る。
「――あら」
珍しく甘すぎなかった――スイート・メロディア的には出来損ないだったのかもしれないけれど――その味は思いの外、優しくて。
ほんの一瞬、普段のおっとりさをユーフィは垣間見せ――またすぐに破砕と丸かじりの無限ループに舞い戻るのであった。
大成功
🔵🔵🔵
シェルゥカ・ヨルナギ
【花面】
これ全部チョコ?
少し塩気のものも欲しいなー
ねぇ、お菓子の君、世界で一番甘いものは何?
疑似生物『ポップコーンおばけ』を召喚
熱で孵化する彼らは熱々チョコで元気いっぱい
弾ける勢いであまーい彼女へ体当たり
俺の分のキャンディは彼らに全部食べてもらおう
キャンディコーティングポップコーンの出来上がり
表面パリパリで美味しそう!やったね!
けどまだ食べ足りなさそうだね
そこら中に湧いてる甘い彼女をご馳走になろうか
きっと美味しいよ!
狼ってポップコーン食べるの?
口直しなら、何も食べてないおばけがいいかな
彼らは食べるのも好きだけど、美味しく食べてもらうのも大好きだからね
どうぞ召し上がれ
…リージュ、君も食べるー?
エンティ・シェア
【花面】
※俺人格=リージュ
チョコの海とは、また胃にきそうな
しかも敵はスイーツ製とか
…まぁ、食いごたえも、ありそうか
餌時でありったけの狼を召喚
数相手には数だ。敢えて合体はせずに散開
可能なら、キャンディをばら撒かれる前に本体を齧らせようか
駄目なら仕方ないし、毒耐性頼りに食う
体に負荷のかからない程度に、美味しく味わってやれ
うっわめっちゃ弾けてる…
熱に相性良すぎだろポップコーン
つーかあんたの発想ってたまにやたらファンシーだよな
ま、役に立つなら何でもいいわ
ついでにあいつらの口直し用にそのポップコーン少し齧らせてくんない?
…半分以上冗談だったんだけど、良いのか
俺はいらん(きっぱり
どうせ食うなら普通のが良い
●狼とポップコーン
「これ全部チョコ?」
シェルゥカ・ヨルナギ(暁闇の星を見つめる・f20687)が小首を傾げた。
僅かに見上げる体躯の持ち主の、だが無邪気な子犬を思わす仕草に、リージュ――エンティ・シェア(欠片・f00526)が内包する幾つかの人格のうち『俺』を担うひとつ――の愛想の無さも僅かに緩む。
「チョコの海だからな。まぁ、胃にきそうだが」
しかも現れる敵までスイーツ製と来たものだ、とはリージュの溜め息。
「少しの塩気も欲しいよねー」
間延びした応えは、シェルゥカのもの。
けれども、
「……まぁ、食いごたえも、ありそうか」
リージュがそう呟く頃には、シェルゥカの姿はもう傍らにない。
きっと『彼女』らの声がよく聞こえる場所まで降りていったのだろう。なのでリージュもリージュで、チョコレートの海を往く船縁から適当に身を乗り出す。
噎せ返るような甘い香りだ。だが、空腹感を誘う匂いでもある――で、あるならば。
「全力で、喰らってこい」
そう一言かけるだけで、百に近い数の餓えた狼たちがチョコレートの海に出現する。あとは思う存分、餌の時間を楽しませてやるだけ。
「体に負荷のかからない程度に、美味しく味わってやれ」
促してやると、狼たちは我先にと駆け出す。疾く身軽な彼らなら、チョコレートの波に足を取られる心配はない。気になるのはスイート・メロディアに毒を食わされることだが、豪奢なドレス姿の女と獣では俊敏差は明らかだ。
狼に腿を齧られ仰け反ったスイート・メロディアが、他の狼たちに群がられ、一片も残さず食い尽くされるまで一瞬。そんな光景がそこかしこで繰り広げられ、リージュの視界からは目に見えて敵の数が減っていく。
「――さて」
後は任せても大勢に影響はあるまいと、リージュは消えた姿を探す。
「ねぇ、お菓子の君。世界で一番甘いものは何?」
船体の底部近くに設えられた扉は、平時は荷物の積み込みなどを行うものだろう。それを全開にして大きな口を開けさせたシェルゥカは、我先にと寄り集まってきた女に問うた。
『――?』
残滓でしかない女に、すぐ思いつく答はない。となれば、後はシェルゥカの独壇場。
現れたポップコーンのお化け――シェルゥカの空想から生まれた疑似生物だ――が、チョコレートの熱にぱぁんと弾ける。
「熱々チョコで元気いっぱい!」
欲しいと思っていた塩気の到来にシェルゥカが声を上げると、またポップコーンお化けが弾ける。もちろん、ただ弾けているわけではない。弾けた勢いでスイート・メロディアに体当たりしているのだ。
ぱぁん。
ぽぉん。
ばぁん。
小気味良い破裂音が響く度、ポップコーンお化けは甘い甘いキャンディをその身にまとう。
「表面パリパリで美味しそう! やったね!」
自分の代わりにスイート・メロディアを食べてもらおうと思ってはいたが、出来上がっていくキャンディコーティングポップコーンにシェルゥカの声と笑顔も弾ける。
けれどポップコーンお化けはまだまだ物足りなさそう。
「キャンディだけじゃなくって、チョコレートのまんまのもご馳走なろうか。キャラメルとか、濃厚バターのフィナンシェで出来たのもいいかも。きっと美味しいよ!」
「……うっわ」
予想通りは、シェルゥカの居場所と、彼が上げる成果。
それにしても熱との相性が良すぎるポップコーンたちの奮戦ぶりに、リージュはシェルゥカと並べた肩を思わず竦めた。
「つーかあんたの発想ってたまにやたらファンシーだよな」
「そう?」
未だ留まる処を知らぬ勢いのポップコーンたちへ声援を送っていたシェルゥカの視線が、リージュへ降りてくる。
見交わす間は、自然な一拍の沈黙。
「――ま、役に立つなら何でもいいわ。ついでにあいつらの口直し用にそのポップコーン少し齧らせてくんない?」
「え、狼ってポップコーン食べるの? 口直しなら、何も食べてないおばけがいいかな」
リージュの提案は、半ば冗談のつもりだった。けれどもいそいそとスイート・メロディア達へ差し向けるのとは別口のポップコーンお化けを編み出し始めたシェルゥカの様子に、リージュは今さら言い直す気にもならず「いいのか?」と首を傾げて短く尋ねる。
「もちろん! 彼らは食べるのも好きだけど、美味しく食べてもらうのも大好きだからね」
放たれた真白のポップコーンに、狩りを一頻り終えた狼たちが寄り集まって食らいつく。
そうして味覚をリセットされた彼らは、また新たな獲物を求めてチョコレートの海を果てまで駆けるだろう。
余談。
「……リージュ、君も食べるー?」
「俺はいらん」
重ねられたシェルゥカの気遣いには、きっぱりすっぱり辞退を固辞するリージュであった。
「どうせ食うなら普通のが良い」
「そうなのー? おばけたち美味しいのに」
――いや、そこは美味しい美味しくないの問題じゃない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
須藤・莉亜
「なるほど、全部食べちゃえば良いんだね?」
…僕、この戦争が終わったらめっちゃ太ってそう。
UCで竜人化して戦う。毒を飲んで毒を食べる作戦って感じで。
足場用にArgentaを周囲に展開。それらの上を走りながら敵さんを攻撃して行く。
毒入りキャンディを食べて敵さんも食べて、それからカロリーを消費する為に走って次の敵さんを食べに行く事にしよう。目指せ、全種類の味。
足場にしている以外のArgentaで敵さんらを攻撃するのと、悪魔の見えざる手にLadyで狙撃してもらうのも忘れずに。
あ、折角だから暴食外套も一緒に連れてって一緒に食べてまわるかな?
「食べて走ってまた食べて走れば、カロリー的には0になるよね?」
●走って走って走って走れ!
須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)は、マイペース風に生きる男だ。
そしてこのチョコレートと化した海と言うトンチキな戦場は、彼にマイペースを極めさせるに相応しい地でもあった。
「なるほど、全部食べちゃえば良いんだね?」
誰に確認するつもりもなく莉亜は尋ねる句を口にして、適当に頷く。
食べればよい。簡単なことだ。ただこの戦いが終わったあと、めちゃくちゃ太っていそうな気がしないではないが。
「ま、いっか」
後の体調面――主に動きやすさとかに影響しそうな――の問題は一先ず棚に上げ、莉亜は自由自在に飛び回る銀の槍たちを適当にぶちまけた。
持ち主を助ける便利な一品である槍たちの、今日の役目は足場となること。
「えーい」
チョコレートの海をゆく船の縁から飛び降り、ひょいと槍に着地すると、莉亜はまたすぐに次の槍へと飛び移る。太ってしまえば不可能になりかねない妙技だが、今のところは問題ない。
そうして莉亜は今まさに腕を切り離そうとしていたスイート・メロディアに瞬く間に肉薄し、その指にがじりと齧りついた。
「クソまずい……!」
口から転げ出たのは、舌に転げたものへの端的かつ的確な感想。それはそうだ、毒を帯びているのだから。でもこの毒こそ莉亜の希求するもの。
悪態で招いた眷属の腐蝕竜の血を、莉亜は飲む。飲んでまた「クソまずい」と言い放つ――が、眷属の血により竜人と化した莉亜は現状ほぼほぼ無敵。
だって一切の毒が効かず、しかも超速再生能力を手に入れたからだ(対価として毎秒命を削るが、その浪費も面白の前には些事だ)。
「よおし」
今度は勢いをつけて跳ねる。
着地地点にいたのは、ほんのりオレンジがかったスイート・メロディア。血を啜るみたいに首筋に歯を立てたら、捥げる直前だった首から毒に混ざってオレンジの風味が莉亜の口いっぱいに広がる。
「これは……マズい? マズくない??」
莉亜が迷う僅かの隙も、従えた見えざる悪魔の手が白い対物ライフルの引金をひいてくれているし、袖を通したあらゆるモノを喰らう外套――通称、グラさん――が莉亜に近付こうとするスイート・メロディアを平らげてくれていたし、手持無沙汰な銀の槍にいたっては蠢こうとするスイート・メロディアを悉く串刺しにしまくっていた。
何とも頼もしい仲間たちである。莉亜に付き従う価値がなければ、当然そのような真価は微塵も発揮してくれないだろうけれど。
「……よし」
結局、莉亜は出ない結論も先送りにすることに決め、今度はジグザグに走る。
どうせなら、全ての味を網羅してみようという興味が勝ったのだ。というわけで、すれ違いざまに、スイート・メロディアたちを片っ端から齧る。
「これは苺――これはリンゴで……これはドリアン?」
毒とキャンディの味わいを余韻に、スイート・メロディア達は潰えて逝く。
残されるのは、カロリーというとてつもなく重い現実だけ。
だが、その難題さえも莉亜は軽々と乗り越える。
「食べて走ってまた食べて走れば、カロリー的には0になるよね?」
――その為のジグザグ走法だった。
然して莉亜、ひたすら走りまくる。とにかく走りまくる。めちゃくちゃ走りまくる。命を削りながら走りまくる。
果たして真実「軽々と乗り越える」問題だったかは定かではないが、とにもかくにも棚上げした問題が後々莉亜を妨げることはなかった――体重増加はなかった――ことを此処に明記しておく。
「うーん、美味しかったのか……マズかったのか……」
こっちの結論は最後まで出なかったらしい――。
大成功
🔵🔵🔵
クロト・ラトキエ
★
千之助(f00454)、ご覧下さい。
チョコが溶けまくってます…
はっ!
この海域が伝説の…愛ランド!?
らぶの力でチョコは溶かせる!
――って、誰かも言ってました!
(※ただの熱気です
戦場は船上?
海面より周辺温度、間欠泉のタイミングを把握。
敵の沸く前兆と共に、より高温側へ位置取り、
UC励起、炎の魔力を攻撃力へ。
範囲攻撃の為の鋼糸も張り放題。
悉くを糸でさくさくと…
そう。熱い=柔い=切り易い!
アツアツですから。仕方ないですね!
(※熱気です
誘き寄せ…ワイヤーを引き寄せて頂き…
そいやー!
間欠泉のタイミングを狙い、追手を巻き込みたく。
らぶの力でチョコは溶ける!
(※熱です
でも。らぶ云々は内密、で…
(注:個人の認識
佐那・千之助
★
クロト(f00472)、
この海、津波とか起こらぬよな…
伝説?
アツアツとからぶとか一体?
…バレンタインシーズンだからそんな発想を?私といるから?
この頬の熱も地熱の所為
彼が刻んだ敵の欠片を、板チョコよろしく齧って生命力吸収
増した力を敵の湧き出る一帯へ放つ
此方の安全を確保しつつ、炎龍を泳がせ火の海にしよう
戦乱の中、人妻の群れに彼と分断されたように見せかけて距離を取り
黒剣と炎のオーラで護りを固め
敵を引き付けるクロトが怪我しないようUCで援護
機が熟せばワイヤーで繋がった彼を勢いよく釣り上げ回収
大自然の力は偉大じゃな
あれだけ叫んでおいて?
そなたも複雑な子よな
どのみち聞いた者は一人も残さぬから、御心配なく
●Chocolate saga
「千之助、ご覧下さい」
視線を導く聲に、佐那・千之助(火輪・f00454)はゆっくりと瞬いた。
もとより一帯は大海原だ。何処へ目をやろうと見える景色に大差はない――のだけれど。
「チョコが溶けまくってます……」
そうしみじみを極めた耳元の嘆息に、これまた千之助もしみじみと頷く。
確かにそこはチョコレートが溶けていた。溶けているっていうか、固まる前のチョコレートで満ちている。
「この海、津波とか起こらぬよな……」
ただでさえ危険なものなのに、そこに重量と粘度が加わったらどんなことになってしまうのか。想像にさえ千之助の背筋は冷たく凍りかける。
なんとけったいで意味不明な海だろうか――いや。
「っは! この海域が伝説の……愛ランド!?」
「伝説?」
「そうです、伝説です! らぶの力でチョコは溶かせる! 即ち、あつあつチョコ!」
「アツアツ……らぶ……?」
「そうですとも! ええ、ええ、――ええと、そう、って誰かも言ってましたし!!」
「……」
けったいで意味不明なのは海だけではなかった。千之助の傍らに居るクロト・ラトキエ(TTX・f00472)の言動がまさにそれだ。
しかし。
(……バレンタインシーズンだからそんな発想を?)
(……私といるから?)
――と、疑問から膨らんだあれこれに頬を赤らめる(海域の熱に責任をおっかぶせることにした)千之助にも責任の一端はある。たぶん。いや、きっと(むしろ絶対)。
「というわけで、いざ征かん伝説の愛ランド!」
そんなこんなで、混沌の種を撒くだけ撒いたクロトが、船縁からひょいとチョコレートの海に身投げする(ちがう)様を千之助はぼんやりと見送る。
なんやかんやでクロトのことだ、熱の籠った不安定なチョコレート海面でもどうにかするだろう。
果たして千之助の無意識の期待は正しく実現された。
「はーははー、アツアツですね!」
風の魔力を足にまとわせたクロト、じゃぱにーずにんじゃも斯くやの動きでチョコレート(以下略)の海面を征く。征く序でに、張り巡らせ放題の鋼糸でスイート・メロディア達をすぱんすぱんとみじん切りにして征く。
「そう! 熱い=柔い=切り易いですとも!」
明らかに度を超えたテンションだが、それでもクロトのチョコ熱と炎で切れ味を増した鋼糸の閃きは確かなもので、千之助は時折船上まで飛んでくるスイート・メロディアの欠片をひょいと掴み取ると、物は試しにと口に運ぶ。
――甘い。
パキン、と板チョコによく似た音を立て噛み砕いたそれは、味わいもやはりチョコレートそのもの。
とは言え、生命力を吸収するには十分で、千之助は増した力を炎の龍として放つ。
「わぁ、ますますアツアツになりました! ははは、仕方ないですね!!」
――仕方なくない。
というか、クロトへ類が及ばぬよう最大限の注意を払って龍は放ったはずだ。いったい今日のクロトはどうしたというのだ――とまた考えかけて、千之助はそこで思考を一度区切る。
此れでは堂々巡りだ。気付くとまた頬に熱が上がった気がする。
(龍のせいじゃの)
先ほどとは違う言い訳を見繕い、千之助は飛んでくる欠片を摘まんでは龍をけしかけ、クロトの道行きを助けることに専念する――ただしあくまでさり気なく。
(これで人妻の群れは銘々勝手に動いていると思うじゃろうて)
そういえばスイート・メロディアの元であるメロディア・グリードはツンデレ人妻だった――なんてのは右か左に置いておいて(あとクロトが戯れてるのがその人妻の群れであるのも脇に追いやって)、千之助は大局を視界の端に収め続ける。
クロトはしっかり働いているし、炎の龍も良い仕事をしている。だがもっと効率的にスイート・メロディア達へ引導を渡すには――。
「よし、此処じゃ」
見定めた唯一無二のタイミングで、千之助はクロトが残していった二人の繋がり――一本の鋼糸を、マグロの一本釣り漁師よろしく(マグロの一本釣り漁師ってなんじゃ? by千之助)手繰り寄せた。
「そいやー!」
ひらり、クロトが宙を舞う。
そしてそんな展開になるとは夢にも思わずクロトを追っかけていた人妻たちは、不意に出来上がったチョコレートファウンテンの餌食になる。
「うむ、大自然の力は偉大じゃな」
全ては間欠泉が吹き出すタイミングまで計算に入れた連携技、だが――。
「らぶの力でチョコは溶ける、つまりらぶ大勝利!!」
ひゅ~るり~。
――クロトにとってはらぶの成せる奇跡だったらしい。
追記。
「ええ、と。らぶ云々は内密、で……」
船上に戻ったクロトがイマサラのように言い出した正気の科白に、千之助に眉を下げた。
あれだけ叫んでおいて、よく言ったものだと思わないではない。
「そなたも複雑な子よな」
返す応えは、いつも通り。
求められるまでもなく、どのみち聞いた者を残すつもりは爪の先ほども千之助にはなかったのだけれども。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
雨煤・レイリ
有珠ちゃん(f06286)と
どうして
溜息零して、有珠ちゃんに引き摺られてきた
確かに甘いものも好きだけど
…もしかして荷物持ちとしてだったのでは
手持ちは夏に持っていったクーラーボックスに
ひと口サイズに切って冷やした果実を沢山と、マシュマロをいれて
これ完全にチョコフォンデュここで食べる心算だよね?!
これは右手にも食べさせたって困らなさそう
こんなに気持ちよく捕食させられるなんて、滅多にない
お腹がいっぱいになったらご馳走さま
糧を欲して喰らう存在でないとはいえ、力の使い方のせいで栄養が不足しがちだけど
朱忌ももう充分味わったよね
俺も満足
≪朱贋≫でスイート・エンブレイスをコピー
思う存分食べられたよ、ありがとう
尭海・有珠
レイリ(f14253)と
どうして?じゃないんだよな
レイリを引き摺り連れてきて
大丈夫荷物は持って貰うが折角だ一緒に食べよう
カロリーとか気にしたことないしな
余剰カロリーはほぼ魔力の補填に使われている…気がするし
お、ようやく察してくれたか
ぐつぐつ熱いチョコレートといえばチョコレートフォンデュ
甘いものは好きだし、私は沢山食べたいんだ
すっきりレモン水も持ち込んだので、思う存分食べていこう
酸味が効いた果実がやはりアクセントになってどこまでもいけるな
限界まで食べたら、後始末といこうじゃないか
天変地異に似た事象ならば私とてそれで返してやろう
≪天つ暴虐≫で凍らせて、カチカチに固めて
あとはレイリ、頼んだぞ
●お腹いっぱいは幸せなこと
「……」
自分の後ろを無言でついてくる雨煤・レイリ(花綻・f14253)の様子を、尭海・有珠(殲蒼・f06286)はチラ見する。
一回りほど年上の同居人は、明らかに項垂れていた。もふもふの垂れ耳は、レイリにアフガンハウンドとしての血が流れていることを鑑みれば不思議ではないが、それにしたって僅かな風にも揺れるくらいの力の入らなさは普通ではない。
「……どうして」
「どうして?」
(――じゃないんだよな)
ようやくレイリが口にした単語を反芻した有珠は、胸中では呟きごと華麗に斬って捨てる。もちろん、レイリはそんな扱われ方をしているなぞ知る由もないが、どっちかっていうと結果は同じ。
「確かに、俺は甘いものが好きだけど……でももしかして有珠ちゃんは荷物持ちが欲しかっただけなんじゃないのかな?」
レイリの声からは哀愁と哀惜がじんわり漂う。もし心ある誰かが居たら、彼が三十路なことは気にせず、頭を撫で撫でしてあげたくなったに違いない(有珠が心無いとは言っていない。断じて)。
実際、有珠がレイリに持たせた(持たせた←大事)クーラーボックスの中には、色とりどりの一口サイズのカットフルーツとマシュマロがぎゅぎゅうっと詰まっている。
「これ完全にチョコフォンデュをここで食べる心算だよね!?」
「お、ようやく察してくれたか」
いやいやいや、察してくれたか、じゃない――というのはレイリの心の声か、はたまた天の声か。だってここはチョコレートの海を渡る船の上……の、海面に面することが出来る物資搬入扉の真ん前。しかも辿り着くや否や、有珠はそれを問答無用で開け放って、とろ~りチョコレートの温度をめちゃくちゃ確認してたし。
「いや、ぐつぐつ熱いチョコレートといえばチョコレートフォンデュだし」
「それは否定しない」
「甘いものは好きだし、私は沢山食べたいんだ」
「……チョコレートは食べ尽くせないくらいあるね」
「大丈夫、すっきりレモン水も持ってきている。お互い、思う存分食べようじゃないか」
「――お互い?」
きゅぴーん。そこで初めて、レイリの目に光が差す。
え、え、お互いって言った? それはつまり、一緒にチョコレートフォンデュを食べようってこと??
膨らむ期待に、だがレイリは一度待ったをかける。気を抜いてはいけない、もしかすると言葉の綾とかいうものの可能性も無いでは無い。
「一緒に食べる?」
じいと有珠の瞳を窺い見るレイリは、まるっきり気の好い大型犬だ。そしてレイリは聞く、本日二度目の「ようやく察してくれたか」という肯定を!
それならそうと初めから言ってくれれば良いのに、とはレイリは言わない。言わない代わりに、自分の勘違いが間違いであった(あながち間違いとも言い切れない気もするが、ここは本人の幸せの為に黙っておく)幸せにアフガンハウンド尻尾は左右に揺れる。
「そうだったんだね。確かにこれは右手に食べさせたって困らなさそう」
歓びに穏やかに微笑んだレイリは、異形の右手をぶうんと振り回した。
ばきり。その右手に硬い何かが触れたが、細かいことは気にならない。そのままもしゃもしゃ咀嚼した感触もあったが、今はどのフルーツを食べるか迷う事の方が大事だ。
「有珠ちゃんはどれから食べたい?」
「私はまずは苺だな。それからパイナップル」
酸味も効いた方が、甘いチョコレートと掛け合わせるには都合が良いという有珠の弁に、レイリは納得しきり。彼女の求めるままに、苺とパイナップルをクーラーボックスの中から選び取ると、紙皿によそって「はい」と手渡す。
「まずは有珠ちゃんからどうぞ」
「では頂くとしよう」
そういえば大事なフォークを持参そびれていたのに此処で有珠は気付くが、慌てず騒がず、ちょうど目の前に伸びてきた枝のようなものをポキリと折って代用品に仕立てる。
ぐつぐつ煮えたチョコレートは、ほんの少しくぐらせただけで、果実によく絡まった。
そしてはふはふと口に運べば、予想通りの美味!
「ご馳走さま」
「ああ、限界まで食べたな」
腹がくちくなれば、それがチョコレートフォンデュ終了の合図。
二人はきちんと合わせた両手をするりと解くと、此処を訪れた役目(not目的)を果たす算段に入る。
「来たれ、世界の澱。集いて、呑み干せ――≪天つ暴虐≫」
天変地異に似た事象には、やはり天変地異に似たものを。
クーラーボックスの横に置いておいた仄暗い海の底の気配を帯びた剣を有珠は触媒に掲げ、合成した氷の津波で一帯をカチンコチンに固めた。
「レイリ、あとは頼んだぞ」
急激に変化した足場に、二人へわらわらと集い始めていたスイート・メロディア達に成す術はない。
身動きの取れなくなった残滓たちは、数はあれどただの置物。
「それじゃあやろうか、朱忌」
力の使い方のせいでどうしても栄養不足になりがちなレイリは、本来ならば糧を要する存在ではない『右手』の封印を解く。
途端、巨大化した腕は容赦なくスイート・メロディア達をコピーして蹂躙し始めた。
きっと朱忌も満足していたのだろう。いつもより動きが俊敏で、レイリは嬉しくなる。
「思う存分食べられたよ、ありがとう」
告げる礼は心から、送るものは終焉だけれど。
余談。
途中、朱忌がぱりぽり食べちゃったのは、二人の気配に敏く気付いて単身現れたスイート・メロディアだったし、有珠がフォーク代わりにしたのもその一部であったことを此処にしたためておく。
船影だったこともあって目一杯チョコレートフォンデュ楽しめて良かったね!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
菱川・彌三八
においで酔っちまいそうだ
しょくらとをって奴ァ大層甘いんだってな
こんねェな味噌だかわからねェ色で俄に信じがてえ…が
酒に合うてなァ、真かい?
一先ず噴き上げた分を上手い事器に移して…と
敵の群れは筆の一閃で纏めて片し乍ら
…器の中身に酒を入れて
一閃
…混ぜて、舐める
一閃
…ンヽ!
水飴の様な舌触りと甘さなンだが、独特の風味が強い濃い
其れでいて酒の味と薫りは残ってるってんだから驚ェた(饒舌)
何?諸白にも異国の酒にも合うって?
…屹度都合良く船に積んであるに違ェねえ
善は急げ
途中から只の酒盛りになりそうなんだが、其れは其れ
気分良く筆を薙ぎ続けてやろう
水菓子に付けて食うのもアリなんだな
マ、血が煮えちまいそうなんで程々に
●しょくらとを酒宴
――鼻がひん曲がるような匂いじゃあねェな。
不快ではない。だが酔ってしまいそうな濃厚な香りに、菱川・彌三八(彌栄・f12195)の顏は興味半分、怖いもの見たさ半分といったところだ。
「しょくらとをって奴ァ、大層甘いんだってな」
実際に彌三八が口にしたことはないが、花街の女たちがきゃあきゃあ騒いでいたのは聞いたことがある。
「――酒に合うてなァ、真かい?」
ふと過った逸話に、彌三八の胸中は一気に興味へ傾く。
とは言え、味噌だかなんだか分からない色をしているものだ。俄かには信じがたい――。
(味噌?)
引っ掛かったのは、自分で喩えに使った馴染みの食品である。あれは確かに酒に合う。
「焼くとまた美味ェ……、!」
この時の彌三八の頭の中の流れは明快だ。チョコレートは色が味噌に似ている。味噌は酒に合う。成程、それなら確かにチョコレートも酒に合うかもしれない。
味噌とチョコレートでは塩味と甘味で方向性としては真逆なのだが、そんなことは関係ない。
「よし来た」
善は急げと彌三八は甲板から船底近くへ降りていく。この船には船体側部に荷物積み込み口がり、そこならば海面がとても近いのだ。
「頼もー!」
道場破りな勢いで木製扉を蹴り開けると、彌三八は途中でちゃっかり失敬してきた小皿を片手に身を乗り出す。
都合よく、すぐ近くでチョコレートファウンテンなるモノが吹き出した。けれどあと少しが届かない。
「ッチ、あと、もう……チョイッ」
船縁を握ったままでは埒が明かないと、彌三八は『手近』に『あったモノ』を適当にぶん殴って足場にすると、貴重な一歩を踏み出し、ようやくとろとろに溶けたものを皿に受け止めるのに成功する。
「よしよし――」
間近で眺めた『しょくらとを』は味噌より緩く、何とも言えない照りがあった。甘い匂いも、悪くない。
「で、今度はコイツを……」
懐に忍ばせた竹筒を取り出しがてら、彌三八は握った筆をさっと払う。
――ざっばーん。
「よしよし、これで――」
竹筒の中身を、先ほどチョコレートを掬った器に注ぎ足す。とぷん、船の揺れに合わせて跳ねたそれは、豊かな酒精を香らせ、彌三八の期待をいやがおうにも煽った。
そこでもう一度、筆を一閃。
――ざっぱーん。
「後は、混ぜて……」
もう一度、筆を一閃。
――ざっぱあああああん。
「……舐める、と」
さらに筆を一閃。
――ざっぱああああああああんん。
「……ン、!」
未知との出逢いの衝撃に、彌三八の細い眼もくわわと見開く。
御しがたい感銘にまずは胸が震え、その震えの侭に彌三八は筆をばっさばっさと振りまくる。
――ざっぱあああん。
「水飴の様な舌触りと甘さなンだが、独特の風味が強い濃い」
――ざっぱあああああん
「其れでいて酒の味と薫りは残ってるってんだから驚ェた」
――ざっぱあああああああん。
彌三八、おそろしく饒舌だ。饒舌な分、筆の走りも良い。
――ざっぱあああああああん。
――ざっぱああああああああああん。
――ざっぱあああああっん!
「そういや、諸白にも異国の酒にも合うっツう話だったナ――いや、さっき見かけたような……!!!!」
――ざざざあざざざざざああああああああああああああんんんんっぱあああああんんん。
「ヘー、水菓子に付けて食うのもアリなんだな」
満遍なくチョコレートを絡めた、楊枝を突き刺した苺――これも何処からか拝借してきたもの――を頬張り、彌三八は満足そうに咀嚼する。
甘味の中に潜んだ酸味の棘と瑞々しさが、酒に乾いた喉に心地よい。
本日の彌三八、ただの酒盛りに興じていただけくさいが、一応やることはちゃんとやった。何を隠そう――隠れてない――、筆のひと振りごとに大浪を起こしていたのだ。ざっぱん。
熱々の波に、菓子で出来たスイート・メロディア達はイチコロだった――まぁ、彌三八本人の意識は殆どそっちへ向いてなかったので、結果としてやっぱり酒盛りしてただけって感じにならなくもないが。
あと、途中で踏み台にしたのも当然スイート・メロディアだ。
然して彌三八のチョコレートとの初遭遇は、心地よいほろ酔い気分で幕を閉じるのであった。めでたしめでたし!
大成功
🔵🔵🔵
チロル・キャンディベル
チョコ!
チロ、あまーいのだいすきなのよ!
これぜんぶ食べてもいいのかしら?
こういうとろとろチョコ
チョコフォンデュって聞いたことあるのよ
でも本物見るのははじめて!
チロ、フルーツいっぱい持ってきたの!
イチゴ、キウイ、リンゴ…
いろいろチョコといっしょに食べるのよ
こうやって、いっぱいチョコつけるとおいしいって…
んー!すっごくおいしいのよ!
あ、ソルベはチョコはダメなのよ
動物にチョコはよくないの
ソルベはふつうのフルーツを食べましょう
食べても食べてもなくならないチョコ
しあわせだけど、戦いもしないとね
エレメンタル・ファンタジアで、チョコの海をたつまきにしちゃうのよ
…あまーいかおりで、またおなか空いてきちゃった
●美味しい大団円
「チョコ!」
チロル・キャンディベル(雪のはっぱ・f09776)の若葉の瞳には、息吹たての春の日差しが煌めきっぱなしだった。
だってチロルは甘いものが大好きで、大好きで大好きなのだ!
「これぜんぶ食べてもいいのかしら?」
見渡す限りのチョコレート。悪いオブリビオンの仕業だけれど、今だけはちょっぴりお礼を言いたい気分になる。
これだけチョコレートがあったら、毎日お腹いっぱい食べても大丈夫だろう。
いつも一緒の白クマのソルベの背から身を乗り出すチロルのふさふさ狼尻尾は、さきほどからご機嫌に振れたまま。
そんなチロルの様子が嬉しいのか、水上歩行の要領でチョコレートの海の上を行くソルベの足も軽やかだ。
そうして一人と一体は、できるだけ波が穏やかな場所を目指す。だってせっかくの甘い一時だ、ぐらぐらしていては楽しめるものも楽しめない。
「ぐらぐらじゃなくって、チョコレートのぐつぐつのとろとろはステキだけれど!」
ぐつぐつとろとろ熱々になったチョコレートを、フルーツやお菓子に絡めて食べるととっても美味しいらしい。聞きかじった知識でそれを『チョコレートフォンデュ』と言うことを思い出しながら、チロルは肩から下げた鞄の中身に思いを馳せる――と、その時。
「わあ!」
ソルベが歩みを止めたのに気付き、周囲を見渡したチロルは歓声をあげた。誰も居ない海原。海底から常時水が湧いているのか、テーブルみたいに一部だけこんもり盛り上がっている。
「さっそくいただきますなのよ」
座ったソルベの背中を滑り台に、ひらり海面に降り立ったチロルは、いそいそと鞄の中から透明な保存容器を引っ張り出す。
「チロ、フルーツいっぱい持ってきたの!」
イチゴ、キウイ、リンゴ、エトセトラエトセトラ。一口大にカットされたそれらは、カラフルな宝石のようだ。でもこの宝石は眺めているだけではなく、美味しく食べられるもの。
「こうやって……いっぱいチョコをつけて……」
まずはイチゴをフォークでつぷり。それから手首を上手に使い、イチゴをチョコレートの海で泳がせ、めいっぱいからませる。
あとは思い切り頬張るだけ!
「……んんー! すっごくおいしいのよ!」
甘い甘いチョコレートのドレスを着たイチゴは、いつもより少しだけ酸っぱく感じるけれど、それがまた堪らない。
感動にふるりと肩を震わせたチロルは、落っこちそうになる頬を両手で支え、満面の笑みをほころばせる。となれば、当然ソルベだってご相伴に与りたくなるけれど――。
「あ、ソルベはダメなのよ。動物にはチョコはよくないの」
鼻先をチョコレートの海につっこみかけていたソルベをチロルは慌てて止めると、代わりに「はい、ソルベはこっち!」とチロル用より大きめにカットしたフルーツをソルベの口へと運んだ。
「とってもおいしかったの! ありがとう」
食べても食べてもなくならないチョコレートは魅力的だったけれど、困ったオブリビオンが湧いてくるのは、猟兵として目を瞑れない。
ちょうどチョコレートフォンデュを堪能し尽くした頃のろのろと現れたスイート・メロディアに、チロルはエレメンタル・ファンタジアで起こした竜巻をけしかけた。
熱々のチョコレートの海で起きた竜巻は、大きく大きく膨れ上がって、あっという間にスイート・メロディア達を消し飛ばした。
そして気付けば、チロルの足元はいつもと同じ海の色。どうやら全てのチョコレートまで吹き飛ばしてしまったらしい。
唯一残されたのは、チョコレートの香り。
「……ふふ、またおなか空いてきちゃった」
鼻先を擽る甘い余韻に、チロルはまた美味しいチョコレートを食べようと帰途の足を早めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵