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羅針盤戦争〜ザンギャバスの食卓

作者：夢幻

●メインディッシュは巨大鮫
「『鮫牙島』が発見されたよ。さあ、『鮫牙』ザンギャバス大帝と決戦だ！　……とはいっても、撃破は出来ないんだけどね」
　グリモア猟兵のスピカ・ネビュラスター（銀河の魔女・f31393）は、新たなる本拠地の発見と七大海嘯の一人との決戦の始まりを告げる。しかし、撃破出来ないとはどういうことだろうか？

「ザンギャバス大帝は『無敵』だからね。ダメージを与えることは出来ないよ。でも、これまでに襲撃してきた時と同じように、『長時間暴れると飢餓状態になる』んだよ。だから、腹ぺこにして撤退させてしまえばボクら猟兵の勝ちだ」
　そのあたりは襲撃の時と同じようだ。しかし、ここは彼の本拠地、スピカはそう簡単に狙い通りに持って行くことは難しいだろうと言う。
「猟兵の襲撃を察知すると鮫牙島は急速潜航するから、決戦は海中で行われることになるよ。でも、そこには周りに『凄まじい数の巨大鮫』が泳ぎ回っているんだ。ザンギャバス大帝はお腹が減るとその巨大鮫を食べようとするから、飢餓状態に追い込むにはそれを妨害しないといけないよ」
　巨大鮫の捕食を妨害出来なければ、いつまで経っても敵を撤退させることは出来ない。ちなみに海中での戦闘となるが、スペースシップワールドで使った宇宙服が流用出来るため、呼吸や水圧の心配は必要ない。もちろん水中に適応した技能や能力を持っているなら、それには水中戦闘に有効だ。

「ザンギャバス大帝は他の七大海嘯と同じように、先制攻撃の能力を持っているから注意してね。後は……彼の頭はかなりお粗末だ。白痴……というのが解りやすいかな。作戦や策略を用意するのは、極めて有効だよ」
　無敵で先制攻撃持ち、更に弱点の飢餓も回復されてしまうと厄介な相手だが、策略が効くならば対処も色々と考えられるであろう。

「そうそう。ザンギャバス大帝を撤退させれば、勢力が低下して深海島が一つ、解放されるよ。その意味でも、撃破は頑張って欲しいかな」
　ザンギャバス大帝の撃破は、探索の進行にも繋がるのだ。
「説明は以上だよ。大変な相手だけど、頑張ってね」
　説明を終えたスピカは、鮫牙島の座標へと猟兵を転移させていくのであった。

第1章 ボス戦 『七大海嘯『鮫牙』ザンギャバス』

POW   :    ザンギャバスハンド レベル×1tまでの対象の【腕や頭】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。 SPD   :    ザンギャバスファング 自身の身体部位ひとつを【竜、山羊、蛇、蛇のいずれか】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。 WIZ   :    ザンギャバスポイズン 攻撃が命中した対象に【肉体の部位「蛇」からの猛毒】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【肉体を侵食する猛毒】による追加攻撃を与え続ける。 イラスト：白 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

「見つけた。それにしても……どうすれば滅ぼせるのかしらね、あれ」

　急速潜航する『鮫牙島』を追いかけて水に潜ったリーヴァルディ・カーライル（ダンピールの黒騎士・f01841）、島の上に浮く7ｍ程の肉塊のような男を発見する。

「オブリビオンになっているのだから、必ず滅ぼす方法があるはずなんだけど……」

　オブリビオンは過去の存在である以上、一度は死んでいるはずである。とはいえ、寿命などで死んだ場合や、オブリビオンとなってから能力を獲得した可能性もある。もし死因が判明したとしても、必ずしもそれで倒せるとは限らないか。

「俺の島を狙う奴は、ゼンブコロす」

　本拠地へと侵入した猟兵に、ザンギャバス大帝は怒り狂い襲い掛かってくる。巨体に似合わぬ凄まじい速度でリーヴァルディへと接近した彼は、その身から生やす毒蛇による『ザンギャバスポイズン』を仕掛けて来た。

「……向こうも水中で動きが鈍いはずなんだけど……全然、そんな雰囲気がないわね」

　それをリーヴァルディは魔槍化した大鎌の石突きより、魔力を推進力として噴射することで回避する。さらに、本来は空中専用の"血の翼"を方向転換に使うことで、彼女は水中での機動力を確保する。猟兵はここまでしてようやく自在に動けるというのに、ザンギャバス大帝が海上と同様に動いているのは反則級だ。
　ともあれ、水中でもザンギャバス大帝と互角以上の機動力を得たリーヴァルディは、水中を動き回って敵の攻撃を回避し続ける。このまま敵の消耗を目指すのだ。

「ちょこまかと逃げやがって……腹が空いてきたなぁ」

　飢餓状態まではまだ遠いものの、ザンギャバス大帝は巨大鮫を捕食する気配を見せた。これを見逃せば、いつまで経っても彼を撤退させることは出来ない。リーヴァルディは捕食を妨害するため、ユーベルコードを発動する。

「……何かの本で読んだけど、鮫は電気を知覚する器官があるとか。つまり、奴の回りを電撃で覆えば、鮫は驚いて逃げるはず……！」

　リーヴァルディの放った『限定解放・血の教義』によって、ザンギャバス大帝を中心に"雷の渦"が発生した。それは無敵のザンギャバス大帝へのダメージにはならないが、狙い通りに周囲の巨大鮫達はそれを嫌って逃げていった。この調子で戦っていけば、ザンギャバス大帝を飢餓状態へ追い込むことが出来そうだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「……あれが鮫牙か。あんなのがサメをなのるなんて、サメにとってのフーヒョーヒガイだよ」

　鮫要素が欠片も無いザンギャバス大帝に、喋るホホジロザメが憤慨する。彼は、ブルース・カルカロドン（全米が恐怖した史上最悪のモンスター・f21590）、見た目は完全な鮫であるが、歴とした猟兵である。

「先ずは逃げ回って消耗させてやる……あれ？」
「ふしゅぅるるるるるる……」

　水中戦闘なら鮫であるブルースにはお手の物だ。しかし、ザンギャバス大帝の行動は彼の予想以上に早かった。ブルースがユーベルコードを発動する前に、その尻尾を掴んだザンギャバス大帝は、彼を滅茶苦茶に振り回す。

「うわああああああ！！」
「いま、助ける」

　そこで横合いから現れたキャバリアが、ザンギャバス大帝を蹴り飛ばしてブルースを救出する。救援に入ったその機体は、『Tactical Armor-001:Last ONE』。イコル・アダマンティウム（ノーバレッツ・f30109）の操る格闘戦特化のキャバリアだ。

「邪魔したな……コロす！」
「噛まれたら、いけない。……跳ぶ」

　ザンギャバス大帝は、『ザンギャバスファング』でその右腕を竜と化すと、T.A.:L.ONEへと竜の口で喰らいついてきた。それに対して、イコルはちょうど近くに居た巨大鮫を蹴ってジャンプ！　さらにスラスターを吹かせてザンギャバス大帝から距離を取る。

「さっきはやられたけど、もう負けない！　さっきまでのボクならともかく、スピード重視になったボクを捕まえられると思うなよ！」

　イコルがザンギャバス大帝と交戦する間に、ブルースは『サメ映画のサメ』でシャープな形態へと変身していた。スピードの上がったこの状態になれば、最早ザンギャバス大帝に捕まることは無い。今度こそと、ブルースはザンギャバス大帝を翻弄する。

「ん、分かった。僕もうろちょろして……攪乱、する」

　イコルもブルースと同じく、回避に徹してザンギャバス大帝の消耗を誘う。二人がそうしている間に腹が空いてきたか、ザンギャバス大帝が巨大鮫を捕食しようとする気配を見せた。

「ここは、早食い勝負といこうじゃないか」
「おまえ……！」

　ザンギャバス大帝が手を伸ばした巨大鮫は、ブルースによって横取りされた。かなりの大きさの鮫ではあるが、サメ映画のサメの食欲に上限は無い。ブルースはバクンと巨大鮫を一飲みにして、敵の捕食を妨害する。もし飢餓状態になっても無敵であることには変わりないので噛み砕けないのは気に入らないが、次善としての撤退をさせるために頑張るのだ。

「なら……こっちのやつを……」
「食べちゃ、ダメ」

　ブルースに何度も邪魔され、ザンギャバス大帝は彼から離れた巨大鮫に狙いを付ける。しかし今度は、イコルの操るT.A.:L.ONEが巨大鮫を蹴り飛ばし、ザンギャバス大帝に捕食を許さない。これを繰り返して、二人はザンギャバス大帝に一度も捕食させること無く、戦いを終えたのであった。


「それにしても……鮫、美味しい、の？」

　ちなみに戦い終えて撤退する中で、コックピットのイコルがブルースを見ながらそう呟いたのは秘密である。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

「サメが食料？　これは鮫魔術師として放ってはいけません。絶対に止めないと！」

　グリモア猟兵の話では、ザンギャバス大帝は鮫達を食料として空腹を満たすらしい。それを聞いたエミリィ・ジゼル（かじできないさん・f01678）は、そんなことは許せないと『鮫牙島』ヘ向けて水中を進んでいた。

「また俺の島を狙ってきたかぁ。気にいらねぇ。コロす」

　そんなエミリィの前に、ザンギャバス大帝が現れる。巨体に似合わぬ猛スピードで接近したザンギャバス大帝、その彼の身体から生えた蛇の部位が、エミリィへと噛み付いてくる。

「回避です！　……致命傷だけは、避けられたでしょうか」

　エミリィは蛇の動きを見切って直撃こそは回避したものの、水中という動きの制限がある状況では完全には避けきれなかった。掠めた毒牙から流し込まれた毒は、彼女の身体を蝕んでいく。

「毒なら心得があるんですよ！　このタイプの毒ならこの血清で……」

　しかし、エミリィは優秀な毒使いだ。すぐさま毒を分析し、血清によって症状を緩和させる。そうして先制攻撃を凌いだ彼女は、反撃に移る。

「カモーン！　サメダディ！」

　彼女が謎空間から召喚したのは、『すべてのサメの父』ことリヴァイアサンだ。海とサメの術を操るこの悪魔は、なるほどこの状況には最適だ。

「サメダディ、こいつサメ食うとか言ってるんですよ！　いっちょギャフンと言わせてくだち！」

　エミリィの願いを聞き届けたリヴァイアサンは、ザンギャバス大帝を巨大な渦潮で足止めすると共に、周囲の巨大鮫たちに退避の指示を出す。流石にすべてのサメの父からの命令となれば、巨大鮫たちは我先にと海域から離れていった。

「うがあああああ！！」

　渦潮に揉まれてまともに動けないザンギャバス大帝の咆哮が海中に響く。もっとも、動けたとしても食事は存在しないわけだが。
　これで、ザンギャバス大帝の空腹も加速した。飢餓状態へ追い込むまでは、あと一歩と言ったところか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

　続いてザンギャバス大帝との決戦に臨むのはシノギ・リンダリンダリンダ（強欲の溟海・f03214）。“強欲”のシノギの二つ名を持つ海賊だ。

「無敵……七大海嘯全てをブチ殺したいのに酷い話ですね」

　同じ海賊として七大海嘯にはかなりの執着を持つシノギだが、このザンギャバス大帝は無敵、つまりここで殺すことは出来ないのだ。対するザンギャバス大帝も、猟兵達に食事を悉く邪魔され、その殺意は溢れんばかりだ。

「ゼンブコロしてヤル……！」

　水中であることを感じさせない動きで、ザンギャバス大帝はシノギへと襲いかかって来る。竜に変じた彼の手はシノギの左の肩口に喰らい付き、胴から伸びる蛇は彼女の右腕に噛み付いた。

「あぁ鮫牙。お前は、見た目も、戦い方も、そのあり方だって、全てが全て、思い通りにならなくて、癪に障りますね」

　絶体絶命の状況に見えるが、シノギの様子には微塵も焦りは感じらない。むしろ苛立ちを隠しもせずに、ザンギャバス大帝を睨み付けている。それもそのはず、彼女はミレナリィドール、人形の身体が壊れた所で問題は無いのだ。

「『憤怒の海賊』の力、思い知らせてあげましょう」

　ユーベルコードを発動したシノギは、外殻を脱ぎ捨て強欲の化身へとその身を変える。漆黒の呪詛の霧と黄金の星が輝く宇宙のような悍ましき姿を持つ、死霊海賊の王の降臨だ！

「死ななくても殺す……絶対に殺す！」

　理性を失ったシノギは、腐敗・猛毒・黄金化を齎す霧を撒き散らしながら、ザンギャバス大帝へと殴りかかる。倒せるかどうかなど関係ない。滾る殺意のままに、その拳を叩き込み続ける。
　シノギが交戦する中で、これまで猟兵によって追い払われた巨大鮫もいくらか戻ってきていた。しかし、シノギの撒き散らす呪詛の霧にひっかかった仲間が腐り果て、黄金と化して絶命するのを見ると、これはヤバイと逃げ去っていった。これで、この海域にザンギャバス大帝の食事は存在しない。

「うがああああああ！！！」

　各種呪詛も無効化し、シノギの攻撃もノーダメージのザンギャバス大帝であったが、遂に空腹が限界に達したようだ。飢餓状態になった彼は、獅子の如き姿へと変じて何処かへと撤退していった。

　猟兵達は、ザンギャバス大帝を撤退させることに成功した。その結果、勢力の低下した『鮫牙』支配下にある深海島の一つが解放される。撃破することは出来なくとも、猟兵達はこの戦いに勝利したのだ！

大成功 🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2021年02月14日