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羅針盤戦争〜無敵なり、鮫牙の大帝

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #七大海嘯 #ザンギャバス大帝

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●飛来せし鮫牙の暴虐
 グリードオーシャン、ビリジアン島。
 ダークセイヴァーという名の世界から落ちてきたと伝えられるその島は、気象の関係かまともな日光が射す日が殆ど存在しない。
 まともに作物も生育できない環境だが、近海の豊富な漁業資源でなんとか食い繋いでいける。元の世界より継承した技術を絶やすことなく、コンキスタドールと戦いながらも人々は日々を過ごしていた。
 そんな島にある唯一の町の近くの広場に、空より身の丈7mの巨人が落下してきた。
 肉塊の如きその巨人はコンキスタドール。襲来を受け腕に自信のある歴戦の海賊達が排除にかかる。
 が、
『気にいらねぇ。コロす』
 その一声と共に巨人が無造作に腕を振るうと、それだけで歴戦の海賊達が五体四散。そして島民達の血風が町に吹き荒れる。
 コンキスタドール対策に用いられる対人トラップ、人形遣いの仕込み人形の数々もその巨人の前には意味を為さない。そもそも使用者が先に散ってしまっている為にまともに扱えないのだけれども。
 やがて島がすっかり静かになり――人間はおろかその近くにいた動物すらも殺されるか喰われるかして。新鮮な魚だけでなく保存食として作っていた干物も全て巨人の胃袋に収められてしまった。
 彼の巨人の名はザンギャバス大帝。七大海嘯の一、『鮫牙』を冠する無敵の暴君。

「みんなちょっと力を貸して! 羅針盤戦争で七大海嘯の『鮫牙』が動くみたいなのよ!」
 グリモアベース、よく通る大きな声で祓戸・多喜(白象の射手・f21878)が猟兵達に呼びかける。
「その名はザンギャバス大帝! 見た目はもうヤバい位太ってるけども予知によると無敵で倒す事が出来ない厄介な奴なの。弱点はあるみたいで長時間暴れて飢餓状態になると獅子のような姿になって撤退するから全力の攻撃ぶつけたり罠とか策略にはめるかして消耗させて撤退させてほしいの」
 ちなみに頭の方はとっても残念みたいだから搦め手には物凄く引っ掛かり易いみたいよ、と多喜は語る。
「向かって貰いたいのはビリジアン島って島で、落ちてきたダークセイヴァー由来の拷問具、人形の技術の継承が行われているみたいね。予知の時間まで事情を説明する位の時間はあるから道具の貸し出しとか協力を得られるかも。と言っても役に立ちそうなのは……ダメージは与えられないから攪乱する為の道具、くらいかしら」
 色々とあるみたいだから上手く使えるものがあればユーベルコード並みに役立つかもしれないと付け加え、多喜はグリモアを取り出す。
「攻撃自体はシンプルなパンチ、あと蛇、獅子、山羊、竜……伝説にあるキマイラみたいな感じの動物の部位を体から生やして攻撃する位なんだけど、とにかく威力は桁違い。ユーベルコードである程度対抗できる人もいるかもしれないけど躱したりやり過ごす方が多分安全だと思うわ」
 とにかく、無事で帰ってきて頂戴と説明を締め括った白象の女子高生はグリモアを輝かせ、無敵なる暴君の脅威迫る島へと向かう鉄甲船に猟兵達を転送したのであった。


寅杜柳
 オープニングをお読み頂き有難うございます。
 名前しか聞いた事はないですが恐怖の象徴らしいですね。

 このシナリオはダークセイヴァー由来の島で『鮫牙』ザンギャバス大帝と戦い時間切れまで粘るシナリオとなります。
 ザンギャバス大帝は無敵で非常に強力です。ですが、一定時間暴れて飢餓状態になると獅子のような姿になって撤退するのと、頭が非常に残念で色々策略には弱いです。
 戦場は街外れの広場、ザンギャバス大帝飛来まで時間があるので島民の力を借りてトラップを仕掛ける事も可能です。
 また、下記の特別なプレイングボーナスがある為、それに基づく行動があると判定が有利になりますので狙ってみるのもいいかもしれません。

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 プレイングボーナス……島の装備やユーベルコードを駆使し、ザンギャバスを消耗させる(ザンギャバスはパンチや蛇・獅子・山羊・竜の部位を作っての攻撃をします)。
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 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 冒険 『ザンギャバスに立ち向かえ!』

POW   :    全力の攻撃をぶつけ、敵の注意を引き付けて侵攻を食い止める

SPD   :    防御と回避に徹し、敵に攻撃させ続けて疲弊を誘う

WIZ   :    策を巡らせ、地形や物資を利用した罠に敵を誘い込む

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

叢雲・雨幻
掠め手に弱い、躱して消耗させれば良い…と。
あーらら、オジサンそう言うの大得意よ。任せて頂戴な。
沢山、力を振るわせてあげようじゃないの…意味もなく、ね。

【SPD】
まず島民には、広場に人が隠れられそうな遮蔽物を
一杯用意しておいてもらおうかね。
後は単純、オジサン自慢の【早業】【ダッシュ】や【スライディング】で相手の攻撃避けつつ、【スモークグレネード】等を使って一瞬見失わせたりして【目立たない】様に遮蔽物へ行きUCを使用。
俺が隠れていない遮蔽物をガタガタ揺らして騙そうかね。
ついでに
「おやおや、威力は流石だけど当たらないと意味がないねぇ」
なんて【挑発】もしちゃいましょうかね。更に力ませるためにねぇ。


ゲニウス・サガレン
食べて暴れて飢餓になると休むとは、永久迷惑機関とでも命名したくなるね

正面からやれる相手ではない
存分に搦め手で体力を消耗してもらおう

広場のあちこちにバリケードを設置
邪魔なものが多いほど、暴れる際に体力を消耗してくれるだろう

私がバリスタも作ろう
岩石でも槍でもいいから射撃準備
ダメージにならなくても痛みがあれば牽制になる

真打は
アイテム「停滞の投網」
アイテム「フライングシュリンプ」

住民と連携し、大帝を牽制しつつ撤退、広場中央に誘導
上空から私の有翅エビに投網を投下してもらう

特殊金属性、しかも自己修復できる投網だ
鬱陶しいぞ!
そこへ集中攻撃
UC「眠れる力を呼び起こせ」で皆を援護
さあ、網を破ろうと暴れるといい


ナイ・デス
『リベレイション』
事情説明しながら変身、準備運動(【限界突破】での自壊&再生の繰り返し)で戦闘力と飛翔速度を高め

3000回も殴れば、ダウンぐらいはさせられそう……ですが、その前にこちらが疲れそう、ですね
でも、やれるだけ、やりましょう!

飛翔に、身体から光を噴いての【推力移動ダッシュ】
最高速度の時速1万km、秒速でいえば約2.7kmの速さで
【重量】ある拳を【生命力吸収】する光を放ちながら【怪力】で【鎧無視攻撃】体の芯に衝撃通るよう叩き込み、人がいない方へ【吹き飛ばす】
そうして一撃離脱戦法、攻撃と同時に疲労回復しながら繰り返し
【覚悟激痛耐性継戦能力】反撃受けても瞬時に再生しより強力に【カウンター】



●鮫牙襲来
 海を渡りビリジアン島へと鉄甲船は辿り着く。
 まずは友好的に島民達へと接触、ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)が手短に七大海嘯『鮫牙』がこの島へとやってくることを伝える。
 七大海嘯の恐怖はこの島の人々も理解していたのか、悩む間もなく島民達は猟兵達への助力を申し出てくれた。
 その申し出に二人の猟兵がザンギャバスが襲来する地点へのバリケードの設置を提案する。
 人手と資材、そして時間が必要になるものだからと動けるものは海賊もただの島民も区別なく即座に島の男達は総出で道具をかき集めに走る。
 設置場所はザンギャバス大帝が近くに落下してくると予知されている広場。北に寂しげな森、東に険しく切り立った断崖、南に村のあるこの場所が最終防衛ラインとなるだろう。
 ザンギャバス襲来までの時間、出来得る限りの準備を猟兵達と島民は整えはじめる。
「食べて暴れて飢餓になると休むとは、永久迷惑機関とでも命名したくなるね」
 バリケードを提案した猟兵の片方、ゲニウス・サガレン(探検家を気取る駆け出し学者・f30902)はバリケード構築を手伝ながら、提案を同じくした叢雲・雨幻(色褪せた根無し草・f29537)へと話しかける。
「しかし掠め手に弱い、躱して消耗させれば良い……と」
 七大海嘯の一人であるザンギャバス大帝、その尋常でない暴力に全能力を振っているのか思考の方は余り宜しくなく、暴れすぎれば飢餓状態に陥り撤退すると聞いている。
 敵は無敵、だから撤退させる方向で作戦を進めなければならないが――、
「あーらら、オジサンそう言うの大得意よ。任せて頂戴な。沢山、力を振るわせてあげようじゃないの」
 意味もなく、ね。そう言う雨幻にゲニウスも同意する。
 正面からやれる相手ではない、ならば存分に搦め手で体力を消耗させる。
 邪魔なものがあればある程無駄に暴れる事になる、そうなれば体力の消耗、ひいては飢餓状態までの時間も短縮されるだろう。
 二人が島民と共に組み立てているバリケードは強度の方は相手が規格外という事もあって最低限。ともかく視界を塞ぐものを大量に、けれど一網打尽にはし難い絶妙な配置で次々と設置していく。
 さらにバリケードの間、ゲニウスが追加で設置しているのはバリスタ。傷を与える事は無理だとしても僅かでも痛みを与えられるよう鋭く尖らせた槍を装填している。
 そしてナイはというと、準備運動を開始していた。
「リベレイション」
 ユーベルコード『ブレンホルズ・ジヴィライゼーション』、黒剣と異界の帝竜の一体を模った体高5mの彫像を全身に融合させて竜の如き黒鎧で覆うそれの能力を最大限に発揮する為に、自壊と再生を限界を超えて繰り返す。
 相手は無敵、猟兵として最大の力を振るえるよう準備するのは当然の事。

 ――と、その時。
『来たぞ!』
 空を警戒していた島民の海賊が叫び、だんだん高くなる奇妙な音が島民の耳に届く。
 巨大な砲弾が飛来してくるようなその音がどんどん高くなって、少し広場を外れた北の森に大きなモノが突き刺さって停止する。
 アレが『鮫牙』ザンギャバス大帝――準備は手早く行われていたが、まだバリケードの完成にはもう少しかかる。
 即座にナイは光を黒鎧より噴射しつつ飛翔、ゲニウスは村人に待ち伏せを伝えた上で飛び出していく。
 ナイの再生量に応じ強化された能力は相当なもの、一秒と経たぬ内に砲弾が着弾したかの如き惨状の場を視認する。
 同時、状況を確認する為か首を振っているザンギャバス大帝の顔面に鎧の重量を乗せた光の拳を叩き込む。
 手応えあり、拳に纏わせた光の生命力奪取能力も働いている感触もある。
 だが、ザンギャバスの体勢は崩れない。その目がぎょろりと動き、眼前のナイを認識すると雑に掴もうとする。
 即座に光を噴射し巨人のリーチから離脱、鮫牙の大帝の背より伸びた蛇が喰らいつこうとしてくるのを回避しつつ、再びの攻撃を敢行する。
 三千回も殴ればダウンはさせられるかもしれない。けれどこちらが疲れて捕まえられてしまう可能性も高いだろう。
「でも、やれるだけ、やりましょう!」
 ヒットアンドアウェイ、一撃離脱を繰り返すナイを掴まんとするザンギャバスの腕をすり抜け再びその顔面に一撃を叩きこもうとする。
 だが、突如ザンギャバス大帝の肩口より生えたドラゴンの頭部がナイの鎧に牙を突き立てる。
 焼けるような痛み、だが覚悟の上。今せねばならぬことはザンギャバスへと一撃を叩き込む事だ。
 噴射する光が勢いを増し、ドラゴンの牙を怪力で砕き突破。そのままザンギャバスの顎に一撃を喰らわせる。
 その一撃で巨体は宙へと僅かに浮き、巨大な音を立てて尻もちを付く。
 だがその巨体はまるでダメージなど受けてないかのようにのっそりと起き上がる。
 顔色は真っ赤、怒り狂った鮫牙の大帝は島全体を恐怖に陥れるような咆哮をあげた。
 そのタイミング、移動速度の関係でやや遅れてゲニウスもザンギャバスの元へたどり着く。
 やや緩慢な動きの巨体――巨人種族よりも一回り背の高く、横幅も縦の長さに近い程に広い。
『んだァ? オマエら?』
 のっそりと、未だ繰り返されるナイの攻撃に変形した獣達の頭部で迎撃しつつザンギャバス大帝はゲニウスを見下ろす。
 さて、この相手に物理的な攻撃で気を惹くのは正直難しいだろうとゲニウスは即座に思考する。
 高速の連撃も物ともしない様子、それ以上の火力を叩き込んでも効果は薄そうだ。
 ならば、言葉。
「こっちだこっちだ! のろまめ!」
 ゲニウスはそう挑発し、反転して広場へと駆け出す。
『うぜエ、喰わせロ』
 その言葉に苛ついたのかザンギャバスは己を攻撃する二人の猟兵を無視してゲニウスを追い始める。
 ナイの方はこれまで一人で抑え込んでいてこれ以上の継戦は難しいのだろう、追いかけてくる気配がない。
 後方より迫る死の圧力に、首筋を伝う冷や汗を感じながらゲニウスは走る。けれど鈍重そうな見た目の癖に異様に足は速いようで、みるみる距離を詰めてくる。
 そこに途中で待ち伏せていた雨幻がザンギャバスの顔面目掛けスモークグレネードを放り、爆発とともに広がる煙幕でザンギャバスの視界を奪う。
「うぜエ!」
 見上げるような巨人が雨幻に拳を振り下ろそうとするが、即座にダッシュし雨幻は一撃を躱し、二人はそのまま広場へと全力で駆けていく。
 そしてバリケードの張り巡らされた広場へと到着、勢いを緩めぬザンギャバスの巨体がもう少しで二人を掴もうとしたその瞬間、空より金属製の投網が降りその巨体を覆うような形で封じる。
 それはゲニウスの仕掛け。彼の羽持つエビ達が空で投網を投下する準備をしていたのだ。
「さあ、網を破ろうと暴れるといい」
 特殊金属製投網をザンギャバスは苛立ったように払おうとするが千切れる端から自己修復機能が作動し再び結合していく。
 時間をかければ、或いは冷静に対応すればすぐに脱出できる程度の仕掛けだが、真っ向からの力技で破るには少々鬱陶しい代物。
 そしてその投網が稼いだ時間に雨幻のユーベルコードの準備は整っている。
(「おいさんの間合いの外ン時ぁ…足元注意だぜ」)
 薄い色の影の帯が静かに伸び、誰も潜んでいないバリケードをカタカタと揺らす。
 音に反応し攻撃したザンギャバスだが当然そこには誰もおらず、ただバリケードを破壊するだけ。
「おやおや、威力は流石だけど当たらないと意味がないねぇ」
 バリケードの影から影へと渡りながら挑発する雨幻。その言葉にザンギャバスのただでさえ短気そうな顔が紅潮し、
『ぶっコロス!』
 その背より生やした竜の頭部が投網を噛み切り穴を一気に広げ脱出、更に挑発の声に向け肩口より生やした蛇がバリケードを穿つ。
 間一髪、スライディングで回避した雨幻、力ませる事で消耗を早める作戦だが、ザンギャバスの破壊力は当然ながら速度も相当なもの。このままの状況で凌ぎ切るには厳しいか。
 そこに待ち伏せしていた村人と海賊が加勢にかかる。ゲニウスの説得に同意した島の海賊達がバトルオーラを纏い、予めバリケードの隙間に仕掛けていたバリスタ等で遠間よりザンギャバスに攻撃を仕掛ける。
 猟兵のユーベルコードに強化された攻撃は無敵のザンギャバスと言えど無痛という訳にはいかなかったようで更に苛立ちを増している様子。
 影の帯で別のバリケードへと注意を惹きつつ、ゲニウスと雨幻はどうにか離脱する。
 大分消耗しているだろうが、まだザンギャバスが撤退する様子はない。
 こんな状況でもう二人、挑発を仕掛ける二人分の声が響く。彼らを支援する為二人は島民と共に支援に回る。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鴇巣・或羽
WIZ
事前に罠を用意しておき、敵の進行を食い止める
飢餓状態までの時間を稼ぐ目的

・技能
【地形の利用】【罠使い】

・罠内容
落とし穴及び崖に偽の足場を仕掛ける
(ザンギャバスと鬼ごっこをしつつ、最終的に崖から落とす想定)

予め島内の崖からひとつ選び、木の骨組みに布と土でハリボテの足場を作っておく
また、敵の出現場所から崖までの誘導コースに落とし穴を複数作っておき、追撃を遅らせるために利用

崖まで誘導し、ギリギリまで引き付けた上で偽の足場へ
飛びかかってくれれば御の字、そうでなくても敵と同時に偽足場を踏む

但し、自分はマルチギミックガンのフックショットで落下を免れる

「お前から盗むものはない。だが、利用させて貰うぞ」


隣・人
「隣人ちゃん🌈ネル始めますよ!!! 良い子も悪い子もこの動画みて🌈ってくださいね!!! グッド・ナイス。お願い致します」
罠仕掛けましょうか。罠! え? どんな罠が効果的かって? 落とし穴? ベアトラップ? 必要な物はシンプル
人体拘束用の拷問具。まあ、出来れば巨体用があればいいのですが、なければ仕方がありません。縄で良いです。あのデカブツを誘い込みましょうか。勿論全力で逃走します
「やーい! 木偶の棒!!! 隣人ちゃんはこっちですよ」
拷問具で身動き取れなくなったか動きが鈍ったかしたところに『どっきり目回し』しましょう。これで千鳥足にすりゃ体勢も崩せるでしょう
今度は逆回転ですね。おらっ! 吐けや



 そして少しだけ時を遡り。
 島民達がバリケードを作る一方、鴇巣・或羽(Trigger・f31397)は東の崖で仕上げの仕掛けを準備していた。
 広場からこの場所までの道中にはいくつも落とし穴を掘っている。森の視界の悪さを利用してある程度以上の負荷がかかれば砕ける板で覆い隠しておけばザンギャバスのような規格外の重さ以外は引っ掛かる事なく走り抜けられるだろう。
 落とし穴でどれほど時間稼ぎができるかが分からないのが少々不安要素ではあるが怪盗としてその位は誇りに掛けてやってみせる。
「隣人ちゃん🌈ネル始めますよ!!! 良い子も悪い子もこの動画みて🌈ってくださいね!!!」
 そうしてそんな彼の横では異様にハイテンションな目隠しバーチャルキャラクターの隣・人(・f13161)がぐるぐる回転椅子を回しながら動画撮影ドローンに向けて自己紹介していた。
「グッド・ナイス。お願い致します――罠仕掛けましょうか。罠!」
 そんな彼女は用意していた拘束用の鉄棺を崖の近くに隠している。一応は巨人用、持ち運びにはちょっと難があるサイズだが、これでもあの特徴的過ぎるザンギャバス大帝の体型と暴力を抑え込めるかは正直怪しい。
 そしてもう一つは縄。一番太い縄を幾重にも束ねたそれはそう簡単には引き千切られる事もないと思われる。
 或羽の最後の仕掛けも突貫作業ではあったが完成はしている。あとは敵の襲来を待つだけ、と思った所に空からの音。
 見上げれば巨大な肉の砲弾、それが広場の方角へと落ちていくのが見えた。
 頃合いか、と二人は森を抜けて広場へと向かう。

 投網を千切り、バリケードを紙襖のように軽々砕いて。それでもザンギャバス大帝は誰一人殺す事はできていなかった。
「やーい! 木偶の棒!!! 隣人ちゃんはこっちですよ」
「このノロマ!」
 苛立ちも頂点に達する中、二人の声がザンギャバス大帝の耳に届く。
 直球の罵倒、どう考えても挑発だけれども、既にブチ切れ状態の巨人は猪突猛進に恐ろしい速度で走ってきた。
 森の中に仕掛けられた落とし穴、普通の人が歩く程度では壊れないが巨人が踏み込めば容易く崩壊する渡し板と迷彩を施したそれにこれでもかという程にザンギャバス大帝は嵌っていくけれども、足を止める事はない。
「ああウゼエ!!!」
 しかしこの光景を撮影している動画撮影ドローンの視点で見るならば、配信者を追いかける怪物が障害をものともせず迫っている状況。視聴者――尋常の者である保証もないけれど、それらからすれば余興としてはアリなのかもしれない。
 片方が掴まれる瞬間にもう片方が牽制の攻撃を行い、更には細かな足止めの甲斐あって、東の崖へと二人は辿り着いた。
 そして二人を追うザンギャバス大帝が森を抜けた瞬間、仕掛けていた幾重にも束ねられた縄がザンギャバス大帝の足を絡め取りよろめかせると、丁度倒れ込む位置に設置されていた巨人用の鉄棺がザンギャバスを中に閉じ込める。
 内側からの肉の圧力に鉄棺が弾けんばかりの状態だが、視聴者? の応援により強化され何とか持ちこたえている模様。
 長時間は持たないだろうが、今から行う事にはこれだけで十分。鉄棺をぐるぐる独楽のように回転させて遠心力で立ち上げて、そのまま一気に加速させる。
 三半規管がどれだけ頑丈なのかは分からないが――少なくとも今のザンギャバス大帝は目を回しているように見える。
 そこでとうとう耐え切れず鉄棺がばちんと大きな断末魔と共に弾け飛び、近くの人へとザンギャバスは掌で叩き潰そうとするが、視界がぐらついているのかキレがない。
 ハエたたきの一撃を回避してザンギャバスの足にまだ絡みついていた縄を掴んで。
「今度は逆回転ですね。おらっ! 吐けや」
 それは先程の逆回転。独楽回しの紐を引っ張るようにして回転させればザンギャバスは酔ったような千鳥足。
「ほら、こっちだぞウスノロ!」
 そこに誇りの悪魔の挑発の声、ふらつく頭を手で引っ張って崖の端に立つの或羽の方へと向く。
 足取りが怪しい事になっているがそれでも一直線に或羽へと向かい、その巨人の腕で潰さんとする。
 だが、或羽はその身を崖から投げ出した。同時、ザンギャバスの足元が突如崩壊。
 それは或羽の仕掛けた崖に偽装した偽の足場。
 ザンギャバスの体重に耐え切れない事を見越し、海へと落とす為に仕掛けた最後の罠だ。
「お前から盗むものはない。だが、利用させて貰うぞ」
 完全に騙せた、つまり騙しの腕で勝ったという事。或羽の盗賊魔術は彼の感覚を数倍に研ぎ澄ませ、フックショットへと変形したマルチギミックガンの照準を瞬時に定めさせる。
 頑丈な木々に向け発射したフックが突き刺さり、彼の体を一気に崖の上へと持ち上げる。
 一方のザンギャバス大帝はそのまま墜落、崖の下の岩に体を打ち付けてうつ伏せに倒れている。
 だがすぐさま起き上がり――同時に異変。
 ザンギャバスの体が獅子のそれへと変形し、島に襲来した時と同様に唐突に飛び去って行った。
 飢餓状態、ザンギャバス大帝の弱点であるその状態にとうとう至ったのだ。
 逃走する獅子の怪物の姿を見届け、或羽と人は勝利を報告する為に広場へと戻っていった。

 大いなる災厄に襲われた島。滅びの未来しかなかったこの地は、かくして猟兵達により救われたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月20日


挿絵イラスト