羅針盤戦争〜カルロスのコスプレコレクション・闇の世界編
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「ついに我が一の王笏島までたどり着いたか、猟兵よ」
暗き島の中、見目麗しい男が衣装棚を開く。
「この島は特に古き島。客人を出迎えるには伝統的な正装が相応しかろう」
その中から、極めて上物の礼服を取り出し、身に纏う男。
「この服ならさぞ美しく闇に溶けることだろう。惜しむらくは黒に黒では目立たず、我が自慢の衣装を彼らに披露できぬことか。出航前の景気づけは……やはり血のように赤い葡萄酒が良かろうな」
含み笑いをしながら言う男を、その服よりも黒い霧が取り巻いていた。
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「皆さん、お疲れ様です……今日も、羅針盤戦争の、依頼です……」
アレクサンドラ・ヒュンディン(狗孤鈍狼・f25572)が集まった猟兵に頭を下げる。
「本日はオブリビオン・フォーミュラのカルロス・グリード、その本拠地の一つである一の王笏島へ向かっていただきます」
七大海嘯筆頭でありグリードオーシャンのオブリビオン・フォーミュラであるカルロスグリード。彼は他の七大海嘯と違い、いくつもの島を本拠地として持ち、その島ごとに違う力を身に着けた分隊を住まわせている。
「一の王笏島はダークセイヴァーの力を持つ島。そこで彼は、いかにも吸血鬼然とした衣装で皆さんを待ち受けています。そして彼は、その圧倒的な力で皆さんに先んじて攻撃してきます」
やはり行われる確定先制攻撃。だが、脅威はそれだけではないとアレクサンドラは言う。
「さらに、この島には闇の力を持った黒い霧が常に立ち込めており、カルロスの姿を隠しています。これによって戦場全体が常に真夜中の様な闇に覆われているので、これをどうにかしないと闇の中から一方的に攻撃されてしまうことになります……」
普通の霧ではないため僅かな風、僅かな光程度で払えるものではない。きちんとした対策を練る必要があるだろう。
「彼はダークセイヴァーの力として、『紋章』という寄生虫型オブリビオンを寄生させています……ですが、種類が違うのか元が強すぎるせいなのか、そこが弱点ということにはなっていません。無理に紋章を狙っても意味はないのでご注意を」
猟兵たちの知る『番犬の紋章』とはまた話が違うらしいが、逆に言えば狙うべき箇所を制限されるというわけではない。
「彼の能力は黒狼への変身、爪による連撃、ドラゴンの召喚の3つです。いずれもすさまじい威力なので、油断なきよう」
迂闊に受ければ一撃で致命傷ともなりかねない。細心の注意を払った戦闘が必要だろう。
「彼を倒してもこの島を直接解法は出来ませんが、代わりに彼が戦闘などで破れるたびに新しい衣装を作らせていた島が一つ解放されます。もし平和になった暁には行く機会があるかもしれませんので、よろしければ……」
アレクサンドラはそう言うと、一の王笏島までの航路を取った。
鳴声海矢
こんにちは、鳴声海矢です。嫌味なくらいこの格好が似合うイケメンですね。
今回のプレイングボーナスはこちら。
『プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードと「黒い霧」に対処する』
強敵おなじみの先制攻撃に加え、戦場全体を覆い敵の姿を隠す『黒い霧』の対処が必要になります。これは普通の霧ではなく闇の力を帯びているため、簡単な方法では晴れません。最も普通の霧じゃないということは普通じゃない方法が通じる可能性もあるため、色々と考えてみてください。
敵は『紋章』という寄生虫型オブリビオンを寄生させていますが、特にここが弱点ということはありません。無理して狙わないでも大丈夫。ちなみに場所は胸の花です。
タイトルがちょっとギャグっぽいですが、このシナリオは『やや難』となります。それ相応に判定を行いますので、きっちり戦った上でもし文字数が余れば遊んでください。戦闘部分はガチです。ジョーク特化にすると普通に負けます。
それでは、闇に輝く上物なプレイングをお待ちしています。
第1章 ボス戦
『七大海嘯『一の王笏』カルロス・グリード』
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POW : 餓える狼の紋章
【紋章の力】を使用する事で、【身体のあちこちに牙を思わせる鋭い角棘】を生やした、自身の身長の3倍の【黒狼】に変身する。
SPD : 略奪者の紋章
【筋力を奪う爪】【速さを奪う爪】【意志の力を奪う爪】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : 凍影竜の紋章
戦闘用の、自身と同じ強さの【触れる者を凍てつかせる氷の身体のドラゴン】と【影に潜み精神を喰らう黒影のドラゴン】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
イラスト:hoi
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
緋翠・華乃音
ただの暗闇なら幾らでも見通せるんだけどな。
……闇の力であればこちらも相応の手段が必要か。
“星焰の柩”で辺りの黒霧を灼き尽くす。
闇の全てを払えずとも構わない。
少しでも視界が通り、感覚を研ぎ澄ますことができるのなら充分。
先制攻撃への最善手は回避だ。
下手な防御や対抗策は捨て、ただ躱すことのみに注力する。
君は優れた暗殺者のように潜み忍ぶことができない。
黒狼に変身するのなら尚のこと居場所が気配で分かる。
身体が大きくなれば攻撃の死角も増える。
視線や体幹、呼吸やリズム、筋肉や骨格の動き、癖や予備動作、一挙手一投足の全てを見切って躱す。
回避を得られれば反撃だ。
眼窩や喉元、心臓などの致命箇所へ拳銃で銃撃する。
暗き島の中、上等な衣装をまとい立つ『一の王笏』カルロス・グリード。その姿は、島を覆う黒き霧に阻まれ、まるで闇に溶けたように輪郭すら不明瞭だ。
その姿を緋翠・華乃音(終奏の蝶・f03169)は目を見開いてみるが、夜目には自信のある彼をもってしてもその程度では見通すことは出来ない。
「ただの暗闇なら幾らでも見通せるんだけどな。……闇の力であればこちらも相応の手段が必要か――灼き尽くせ」
華乃音は敵の先制のさらに前に、【星焰の柩】を自らの周囲に展開、周囲に瑠璃色の蝶を放った。蝶たちは霧に触れると即座に炎上、その体色と同じ瑠璃色の炎となってあたりに散った。華乃音の意思を受け燃え広がっていくその炎は、まるで闇空に輝く無数の星のようだ。
もちろん、島の全てを覆う闇を照らしつくすには余りにも足りない。だが闇の全てを払えずとも構わない。少しでも視界が通り、感覚を研ぎ澄ますことができるのなら充分。
その意思の元、炎は華乃音の周囲、そして前に立つカルロス・グリードを照らし出した。
だが、先に闇の対処を行ったということは、相手に悠々と先制を行う時間を与えたということ。カルロスは自慢の衣装が傷つかぬよう細心の注意を払う余裕さえもって、己の身を巨大な黒狼へと変じさせた。
通った視界の中、襲い来る黒狼を華乃音は待つ。
あの巨躯、あの動き、下手な防御など容易に突き崩すだろう。故に最善手は回避。下手な防御や対抗策は捨て、ただ躱すことのみに注力する。
光に照らされた闇の中、黒き巨躯が闇を蹴った。それは一瞬のうちに距離を詰め、恐るべき牙を剥いて華乃音を喰らわんとする。
その顎が華乃音の頭部を捉え噛み砕く、その刹那。華乃音は体を屈め、光の縁へとその身を鎮めた。
顔のすぐ横を、息遣い、体温すら感じさせる近さでカルロスの大きな口が通り過ぎる。その動きは早く、一呼吸でも遅れていれば華乃音の頭はその口の中に捕らえられ、粉々に噛み砕かれていたであろう。
その勢いのままカルロスは後ろの闇へと突っ込み、華乃音もそちらに向けて体を返す。
「君は優れた暗殺者のように潜み忍ぶことができない。黒狼に変身するのなら尚のこと居場所が気配で分かる」
黒狼と化したカルロスは、紋章の力を得て異形の体とそれに相応しい圧倒的身体能力を得た。だが、その攻撃方法はあくまで力任せ。無論それしかできないのではなく、それが最も紋章の力を活かせるのだから当然とも言える。
それが分かっているのだから、視線や体幹、呼吸やリズム、筋肉や骨格の動き、癖や予備動作、一挙手一投足の全てを見切って躱せばいい。どんな強い力だろうと、辺りさえしなければ被害はゼロなのだ。だから先制を出来る相手に、さらに時間を与えてまでも先に闇を晴らした。全ては敵を『見切る』。そのためだけに。
しくじれば万に一つの勝機すら潰え、拾えた命を落とす可能性すらある危険な賭け。だが、その賭けに華乃音は勝った。
そして身体が大きくなれば攻撃の死角も増える。無駄な動きはいらない。ただ生物としての急所に、的確に弾丸を叩き込むだけ。
光の中放たれた弾丸が、闇に消えかけるカルロスの目や喉、胸に撃ちかけられる。
「ぐっ……!」
そのままカルロスは闇に沈み、光の照らす外、そして闇に紛れその全てが見えぬ所へと消えていく。
奇襲を懸念し構えを解かぬ華乃音だが、その気配はない。恐らく一時撤退したのだろう。この一戦が終わったと判断した華乃音はようやく一息つき、銃を下ろす。
ただ一撃で急所を狙い合った刹那の攻防は、敵を見定め、見極めた華乃音に軍配が上がったのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ナイ・デス
キャバリア相当「ダイウルゴス」
彫像達の塊で、モニターみたいなものはない
中に入れば視界0
【第六感】で感じ取る。だから
まぁでも、光るのですが
隙間から光を噴いて【推力移動】や
【生命力吸収】する「聖なる光」を【レーザー射撃一斉発射】
霧を【浄化なぎ払い】ながら、索敵
見つけたら光噴き荒らしながら装甲厚を活かした【重量攻撃】体当たりしに
先制攻撃はそうして
全身から放たれる生命力吸収光での奪力に
【念動力オーラ防御】
そして彫像の塊でしかないという装甲厚で半端に貫かせ、私には届かせず
彫像達動かし一瞬でも拘束しての【カウンター】を
光となった私が、ダイウルゴスから飛び出して
『瞬断撃』
【鎧無視切断】
私は生身でも、戦えます
島を包む闇の中。その闇を貫くように巨大な黒い姿が立っていた。
「ほほう、これはこれは……」
その姿を、まるで闇を見通している蚊の如く見上げるカルロス。それはかつて猟兵と相まみえた帝竜ダイウルゴス……それを模した巨大な彫像であった。
無論、ただの彫像ではない。小型の彫像を接続しサイキックキャバリアとして建造された武器となる巨像。それを操るのは、ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)だ。
像の中のナイは目を閉じる。元よりこの像にはカメラやモニターのようなものは付いていない。中にいるナイの第六感、それだけがこの像の知覚器官の全てだ。
その像の隙間から、光が漏れだして来る。
推力としての移動に、生命力を奪う浄化の効果を持たせた力のレーザーで霧をなぎ払い、闇の力を振り払わんとするナイ。事前に聞いていた通りこの霧はただの自然現象ではない。並の風、並の光では払えぬダークセイヴァーの夜の如き暗闇の霧。それ故に、力あるものの光で払わんとするナイの目論見は当たり、霧は巨像の周りから徐々に晴れ始めた。
そのまま巨体の重量を持ってカルロスを押し潰さんとするナイ。だが。
「闇に光るか……目立つ者はそれだけ狙われる」
その押し潰しにかかる前、カルロスの爪が像を切り裂いた。生命を奪う光を浴びせたはずのカルロスの動きは、それを感じさせぬほどに早く、鋭い。効いていないのではない。カルロスの力がそれだけ圧倒的なのだ。多少削がれたところで、その動きが目に見えて鈍るようなことはない。
カルロスが回るように動き、像を切り裂きそれを構成する小さな像を引きはがしていく。像に筋肉はない。意思もない。だが、構成要素を奪うことで速さは削がれていく。その爪は中のナイに届くことはなかれども、至近距離と言う巨体ならではの死角を連続して削ぎ、カルロスはその像を闇の中に釘付けにした。
ここまで速さを奪われれば、例え倒れ込もうとその前にカルロスは離脱するだろう。像によってカルロスを攻めるのは、もはや不可能と思われた。
まるで致命傷を受けたかの如く、生物なら急所であろう場所の彫像が剥がれる。その様に、カルロスはそこを抉らんとさらに早くそこへと昇った。
そしてそこから零れ落ちる。血ではなく、一つの光が。
「私は生身でも、戦えます」
巨像ダイウルゴスを捨て、飛び出したナイ。落下速度より早く落ち、上りくるカルロスと真正面からぶつかった。
そして放たれる、【瞬断撃】の一閃。巨像は巨大な囮。これを攻撃することでカルロスを足止めできればそれでよかった。
幸いにしてカルロスの今の武器である爪は早いが短い。一撃で巨大な物体を壊しつくすには全く向いていない。そして大きなものに気を取られれば、それよりずっと小さなものへの注意はおろそかになるものだ。捕まえることこそならなかったが、敵を自らのみに釘付けにすればそれは立派な拘束と言えた。
闇の中を一筋の光が切り裂き、上り切ることなく闇の主を地に落とした。
成功
🔵🔵🔴
黒田・牙印
・闇の中での戦闘か……ハ、俺がまだワニだった頃を思いだすねぇ。光のない下水道、それも水中。さあ、昔取った何とやら。試してみるか!
・昔の俺がやってたのはとにかく「待つ」ことだった。そして俺は猟兵で奴はオブリビオン。奴は俺を放置はできねぇ……そういう風にできてるからな俺らは。因果なモンだよ、全く。
・加え、奴は「狼」になると聞いた。ならば、その攻撃は噛みつきに準ずる。偉い学者が言ってたな、噛みつかれたらチャンスだ、と。奴が噛みついてきたら筋肉を「怪力」で締めて牙が抜けないようにし、そのまま捕まえてUCで投げまくってやる。こうなれば闇もクソもねぇからな。
体力が続く限り大地に叩きつけてやるぜ!
「闇の中での戦闘か……ハ、俺がまだワニだった頃を思いだすねぇ」
知っているだろうか。都市伝説、『下水道のワニ』を。捨てられたペットのワニが下水道で生き延び、配管を通ってトイレで用を足す人間の尻にかじりつくという話だ。
黒田・牙印(黒ワニ・f31321)はまさにその出自を持つ者。バイオモンスターとして覚醒し人の尻どころかヴィランとして堂々と活動したことのある彼は、それ以前は下水道にてまさに汚水を啜る生活をしていたのだ。
「光のない下水道、それも水中。さあ、昔取った何とやら。試してみるか!」
あののころに比べれば、自在に動ける陸上で、霧に包まれているとはいえ真の闇ではない、この状況のなんと恵まれたことか。
その状況で、牙印は闇の向こうにいるカルロスを見つめた。
その闇がゆらりと揺らぎ、その姿が巨大化する。そして一瞬後、巨大な狼の顎が牙印の右腕にかじりついた。
分厚い筋肉を穿ち、その腕からは鮮血がほとばしる。まるで吸血鬼の如く、黒狼と化したカルロスはその血を吸い上げ、食いちぎらんばかりにさらに顎を閉じて歯ぎしりするようにその口を動かした。
己の体を濡らすほどにまで血が溢れる中、牙印は思う。
「昔の俺がやってたのはとにかく「待つ」ことだった。そして俺は猟兵で奴はオブリビオン。奴は俺を放置はできねぇ……そういう風にできてるからな俺らは。因果なモンだよ、全く」
そう、全ては分かっていたこと。敵は己に先んじて攻撃してくる。たとえそれがこちらの予想の内だろうとそれを止めることは出来ない。暗闇の中いつ来るか分からない獲物を待った日々を思えば、必ず来ると分かっている攻撃を待つことのなんと気楽なことだろう。
「加え、奴は「狼」になると聞いた。ならば、その攻撃は噛みつきに準ずる。偉い学者が言ってたな、噛みつかれたらチャンスだ、と……ワニの肉は意外とうまいって聞くぜ。ゆっくり味わいな!」
全身に力を込め、敵の牙が刺さる筋肉を収縮させる。より牙が食い込み激痛が走るが、それは即ち相手の牙を己の体に捕らえられた証。かつて怪力で暴れまわったヴィランであり、今は力自慢のヒーローだ。超怪力を誇る黒狼の牙を受けても、一撃で倒れるようなことはない。
当てさせて、耐える。先制攻撃と暗闇を同時に攻略するための策は、ここに一応の成功を見た。だが、カルロスの力はすさまじい。出血も多く気を抜けば意識すら奪われそうだ。時間はあまりなく、持久戦になれば己が不利。ならばと己の腕を叱咤し、牙印はカルロスの体を強引に持ち上げた。
「うおぉぉぉぉぉぉっ!」
絶叫と共に、カルロスを地面に叩きつける。さらに血を撒き散らせながら、逆側にもう一度。カルロスがたまらず噛みつきをほどこうとしても、締まった筋肉がそれをゆるさない。
「どうだ、どうだぁっ!」
右へ、左へ、一度叩きつけるごとに肉が裂け血が噴きあがるが、それと同時にカルロスの体は腕と地面の間で潰される。壮絶なる【びったんびったん】の嵐が闇の中に木霊し、そしてしばし。
「ぐ……はぁぁ……」
疲労と出血で、ついに牙印の巨体が倒れた。同時に筋肉も緩み、カルロスは牙を引き抜いて彼から離れる。
とどめを刺す余裕もないのか、そのまま離れていくカルロス。後には暗闇に寝る、巨大なワニの姿が残されていた。
成功
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ジェイク・リー
絡み・アドリブOK
剣にした十束刃と閻羅刀に風と光の魔力を込め、魔力溜めを行い全力魔法とリミッター解除を行い浄化と合わせて暴風と回転による竜巻を起こす。
目視できない状況であるなら相手の攻撃には聞き耳と第六感に集中し、気配の察知や動きを警戒して回避する。
ダッシュで距離を取り、状況に応じて攻撃や防御を使い分ける。
受け流す要領のジャストガードからのカウンターによる一閃。
相手の動きに合わせて見切りながら動きを合せて斬る剣舞等を繰り出す。
結界術とオーラ防御にジャストガードを組み合わせた防御術を用いる。
暗い島の中、そこに溶け込む黒狼と、黒き衣装をまとった男が向かい合っていた。既に狼に変じたカルロス・グリードを前に、ジェイク・リー(嵐を齎す者・f24231)は『十束剣』と『閻羅刀』を二刀流で構え、前傾に溜めるような姿勢を取る。
カルロスがその構えを許さぬとばかりに飛び掛かると同時に、ジェイクは両手を広げ大きく回転した。
元より長身のジェイクが武器を構えて回転するのだ、その勢いはすさまじく、その様子はさながら竜巻。さらに彼が溜めていたのは筋力だけではない。その身に宿す魔力もまた体の中に溜め、今武器に乗せて解放していたのだ。
闇の力を持つ霧は、通常の手段が通じ難い代わりに通常出ない手段に耐性を持たない。筋力と魔力、二つの力の暴風が辺りを覆う霧を吹き飛ばし、その一体の視界を確保した。
だが、その竜巻は霧を払うには十分だが、黒狼と化したカルロスを弾き飛ばすにはさすがに力不足。その暴風ごと噛み砕いてくれようとかかるカルロスを、ジェイクは瞬時に竜巻諸共横に動いて躱した。
己の体を高速回転させているのだから、どうせ視認するのは難しい。ならば闇も回転も変わらぬと、ジェイクは直観力と音、気配の察知など視覚以外の感覚に頼って回避することを最初から決めていた。
霧を対処してから避けるのではなく、霧払いと回避を並行して行う。それがジェイクの出した答えであり、結果カルロスの強力な初撃を見事外すことに成功した。
回転を止めたジェイクは一旦霧がないギリギリまで距離を取り、再び武器を構える。
そして再びぶつかり合う黒と黒。牙や爪に加え、体に生えた棘までも用い猛攻をかけるカルロスに、ジェイクは最小限の動きを見切っての回避と防御で対応する。
正面から受けたら防御が突き崩されかねない。致命の一撃となる部分のみを僅かに武器に当てて反らし、もう一つの武器でのカウンターで一閃し、敵の体に傷を刻む。
さらに大ぶりな攻撃をうまく外すことができたら舞うような剣での連撃をその開いた体に叩き込む。そして敵が反撃に転じれば、肉体から迸るオーラと魔術的に作り上げた即席の結界でその攻撃を抑え、自身への致命打を防ぐ。
最初とは違い既に視界は確保されているのだ。相手の攻撃を見切るための用意は十全。その上で強力極まる相手と真正面からぶつからず、ダメージを抑えいなし続けることで少しずつの反撃を積み重ねながら好機を待つ。
そして、その時は訪れた。積み重なりのダメージからしからぬ甘い一撃を出したところを叩き落とし、相手を死に体に追い込む。
「これが俺達の力だ」
『護る』という誓いの元に発動された【狼竜合連】の力。真の姿を剥き出しにし、今こそその時と全力の二刀が振り下ろされた。
二刀は強かにカルロスを捉え、黒の支配する世界に赤き鮮血を舞わせるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
クロス・シュバルツ
アドリブ、連携可
ダークセイヴァーの支配者たる吸血鬼然とした態度……全く気に入らない相手です
あの世界に生きる者として、見逃す訳にもいきませんね
この厄介な霧は、少々の力では払えないのであれば大きな力をぶつけてみましょう
『暗視』で多少なりの視界を確保、『第六感』を活かしつつ『殺気』を探知して攻撃の回避と『オーラ防御』で防ぐ
UCを発動、闇属性の竜巻を霧にぶつけて霧を払い、敵を見つけたならば闇の雷と『目立たない』よう鎖を風に紛れ込ませて遠距離からの攻撃
霧を完全には晴らせずとも、僅かな光があれば敵の位置を見極める事はできるし、単純にかなりの『範囲攻撃』なので、方向がある程度あっていれば巻き込める筈
黒い世界の中、上等な礼服を着て、戦前には血のように赤いワインを飲んだカルロス・グリード。その姿はまるで闇の世界の支配者たる吸血鬼のようだ。
その居住まいが、クロス・シュバルツ(血と昏闇・f04034)にとっては気に入らないことこの上なかった。
「ダークセイヴァーの支配者たる吸血鬼然とした態度……全く気に入らない相手です。あの世界に生きる者として、見逃す訳にもいきませんね」
出自から来る吸血鬼そのものへの複雑な感情もあるが、そもそもカルロスはグリードオーシャンのオブリビオン・フォーミュラ。吸血鬼などではなく、ダークセイヴァーとは本来関わりないはずの存在。それがグリードオーシャンという地の特異性故に得た知識で、彼の存在の真似事をしているのだ。これを許して置けるほどクロスは寛容ではなかった。
「この厄介な霧は、少々の力では払えないのであれば大きな力をぶつけてみましょう」
しかし無暗に向かっていくほど、彼は短絡的でもない。まずは闇を見通せる目を使い可能な限りの視界を確保、確実に向こうから来るはずの巨大な殺気と攻撃を、己の勘と力で避け、防ぐことに全力を注ぐ。
緊張感の中、それは来た。闇さえも凍てつかれるほどの冷気が霧をかき分け、クロスの体に触れんとする。そして同時に影を渡る闇の竜が、ここは己の世界だと言わんばかりに悠々と闇を渡りクロスの心を侵さんとした。
その体は冷たく、心は暗く、厚く張ったオーラの上からも体と心を蝕みクロスを滅ぼそうとする。だがクロスとて、棒立ちで耐えきるつもりはない。攻撃が己に触れた瞬間、それ以上の浸食を抑えるべく跳び退り余計な消耗を防いだ。
そして一撃目で倒されなければ手はあるのだ。己の中にあるこの霧よりも暗い闇。それを耐えることなく、クロスは解放した。
「大地を包み、大空を閉ざす――闇よ、溢れ出ろ」
クロスの命令に従うように現れるのは黒き奔流、【黒天招く闇の氾濫】によって呼び出された闇属性の竜巻だ。制御の難しいそれは周囲を無差別に吹き飛ばさんと荒れ狂うが、まさにそれこそがクロスの狙い。周囲全てにある霧を、この竜巻で吹き飛ばすつもりなのだ。
光で切り裂くだけが闇の対処法ではない。流れはより大きな流れに飲み込まれる、そう言わんばかりに、より強き闇で戦場に満ちる闇をクロスは押し流したのだ。
それに押され、まずは氷のドラゴンが体を折る。しかし黒影のドラゴンはそれが心地いいと言わんばかりにクロスに迫った。だが、クロスはもう、それのことなど見ていなかった。
「霧を完全には晴らせずとも、僅かな光があれば敵の位置を見極める事はできるし、単純にかなりの『範囲攻撃』なので、方向がある程度あっていれば巻き込める筈……そこです」
彼が見ているのは晴れた霧の中、僅かに見えたカルロス・グリードの姿。クロスはそこへと竜巻を差し向ける。制御の難しい力とは言え、全く操れないわけではない。そして、広範囲に荒れ狂う竜巻なのだ。大雑把な方向さえ合っていれば相手を巻き込むこともできよう。
そして。
「ぐっ……!」
闇に侵されカルロスが膝をつく。それと同時に、今まさにクロスを喰らわんとしていた黒影の竜も消え失せた。操作者が僅かな傷を追えば消えるドラゴンを消すには、躱せない力を本体に差し向ければいい。その作戦通り、己に迫った脅威は今消えたのだ。
闇に喰われ、直接命を吸われるカルロス。それは浅はかに吸血鬼を騙った者に闇が下す制裁のようにも見えた。
成功
🔵🔵🔴
リーヴァルディ・カーライル
…確かに。この闇の中では私の眼でもお前の姿は見えない
…だけど、それならそれで幾らでも対処法はあるもの
…この闇がお前を利する物と考えているならば、
その思い違いの代償を支払わせてあげるわ
"影精霊装"の魔力を周囲の闇に紛れて同化させて、
闇の中で全周囲を知覚する暗視のオーラで防御して敵の存在感を見切り、
今までの戦闘知識を基に最適な動作で攻撃を受け流してUCを発動
…無駄よ。お前の攻撃は通用しない
自身を"闇の炎"化して周囲の闇を吸収して魔力を溜めて切り込み、
生命力を吸収する黒炎の呪詛を纏う大鎌をなぎ払い、
無数の黒炎の斬撃で敵を乱れ撃つ闇属性攻撃を放つ
…その衣装に足りない物を教えてあげる
…お前の血よ
ナギ・ヌドゥー
……色んな形態が存在しても見た目は衣装しか変わってないからな。
コスプレ・フォーミュラの誹りを受ける訳だ。
……今はその自慢のコスプレ衣装すら見えんが。
ドーピングによりリミッター解除し第六感を研ぎ澄ます。
餓える狼の紋章で巨大化したなら動く時の気配や音は大きくなる筈、それを感知する。
……そんな巨大化したらせっかくの礼服が台無しだろうに。
奴の殺気を感知したらオーラ防御で受け致命傷を避ける。
完全に避けずにあえて攻撃を受けた、オレの呪詛毒混じりの血を浴びせる為にな!
この呪われた血を霧の中でも感知できるモノがいる
UC禍ツ凶魂を発動
ソウルトーチャーよ、我が呪血を受けたカルロスを探知し捕食せよ!
一の王笏の名の通り、カルロスは複数の形態を持ち、それぞれに異なる能力と、その元となった世界に合わせた衣装を身に着けている。全ての形態と分体がそうというわけでもないだろうが、今ここにいるカルロスは衣装の方にも相当のこだわりがあるようだ。
「……色んな形態が存在しても見た目は衣装しか変わってないからな。コスプレ・フォーミュラの誹りを受ける訳だ……今はその自慢のコスプレ衣装すら見えんが」
ナギ・ヌドゥー(殺戮遊戯・f21507)の言葉通り、彼が自慢とする衣装は闇に紛れて視認することができない。それはつまり彼が好き嫌いや自己顕示に拘泥して勝手に不利を被るような愚者ではない、ということの証左とも言えた。
「……確かに。この闇の中では私の眼でもお前の姿は見えない……だけど、それならそれで幾らでも対処法はあるもの」
その姿を隠す闇の効果を、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は冷静に分析する。本家ダークセイヴァーにて吸血鬼狩りのスペシャリストとして動く彼女をもってしても、この闇は容易く見通せない。
だが、それは事前の情報から分かっていたこと。それだからこそ十全に対策を練ってきた。
その二人を前に、カルロスは何度目かの黒狼への変身を遂げる。特殊な仕立てなのか服が破れて丸裸になるようなことは今までもなかったが、それでも度重なる戦いで、その衣装は汚れ、あちこちは既に破れていた。
その衣装に合わぬ……あるいは汚れた今の姿にはふさわしき獣性をもって、カルロスは二人へと噛みかかる。まず最初の標的はナギ。そしてナギもまた自分が先に狙われていることを、事前のドーピングによって限界以上に研ぎ澄まされた感覚の冴えによって感じ取っていた。
たとえ見えなくとも、地を蹴る音、獣の息の臭い、撒き散らされるさっきは闇を通して鋭敏に伝わってくる。
その動きを、ナギはすべて把握したうえで、オーラを纏わせた腕をその前に差し出す形で受け止めた。鋭い牙が肉を裂き、多量の血を溢れさせナギとカルロスを汚す。
「……そんな巨大化したらせっかくの礼服が台無しだろうに」
被害は最小限に抑えたつもりとはいえ傷は深い。だがナギはあくまで冷静に、カルロスに向けてそう言った。
「その通りだ……故に諸君らには早々にお引き取り頂き、新しい衣装を仕立てに行きたい」
獣の口で思いのほか流暢にそう告げると、カルロスはナギから離れ闇へと飛び込んだ。次なる狙いはリーヴァルディだ。
狼の鼻が獲物を探し、その牙がそれと定めたところに噛みかかる。だが間違いなく相手を捉えたはずの牙は固いものに滑らされ、ただ真っ黒な虚空を噛むにとどまった。
「……この闇がお前を利する物と考えているならば、その思い違いの代償を支払わせてあげるわ」
冷たく、眼前の闇が告げた。要綱を遮断する『影精霊装』の魔力を周囲の闇に紛れて同化させ、闇の中で全周囲を知覚する暗視のオーラで防御し敵の存在感を見切り、今までの戦闘知識を基に最適な動作で攻撃を受け流す。己を闇そのものと化すような防御術に、カルロスの牙はいなされた。
闇があるなら普通なら払うが吉。だがもし闇を味方とできるなら、この島程うってつけの場所はない。それはカルロス自身が用いた戦法だが、同じ手段を用いる者がいることをはたして彼は考えていたのか。
だが、仮に一人が闇を用いるとしても、もう一人は闇を払わず耐えることを選んでいた。ならばそちらを先に仕留めんと振り返ったカルロスに、その考えは通じぬとナギは強く告げる。
「完全に避けずにあえて攻撃を受けた、オレの呪詛毒混じりの血を浴びせる為にな! 禍つ魂の封印は今解かれる――恐怖を知れ」
ナギの足元で、皮を剥いだ犬のような怪物が唸り声を上げる。それは【禍ツ凶魂】の力にて殺戮捕食形態となった呪獣ソウルトーチャー。その餌は、主たるナギ自身の血。
「この呪われた血を霧の中でも感知できるモノがいる。ソウルトーチャーよ、我が呪血を受けたカルロスを探知し捕食せよ!」
真っ直ぐに、自らの餌をたっぷり塗り込まれたカルロスへと飛び掛かるソウルトーチャー。肉色の狼犬が、黒狼の胸を食いちぎり、その血肉を啜る。生物的な感覚器官を持たず、さらに霧よりも濃い血をたどるソウルトーチャーには、闇の霧など何の障害にもならなかった。
「ぐうぅ……がっ……はっ……!」
血を吐き、強引にソウルトーチャーを引き剥がすカルロス。噛みつかれていた部分の肉は裂け、服などは当然最早見る影もない。
「……限定解放。テンカウント……ッ。魔力錬成…。10秒以内に、決着をつける……ッ」
その後ろの闇が、最後のカウントを告げた。リーヴァルディが発動した【限定解放・血の魔装】、属性と自然現象と言うユーベルコードを持ってすら制御し難き力に自らを同化する、まさに限定解放してようやく制御能うその力。それにて変ずるは、周囲を取り巻く闇の霧さえ焼き尽くす、暗くも熱い闇の炎。
闇の炎と化したリーヴァルディは周囲の闇を焚き付けとして食らい、際限なく大きくなっていく。その黒炎は呪詛を纏う大鎌まで燃え移り、触れたすべての生命を啜りつくさんと闇を切るかのごとく振るわれた。
その斬撃をカルロスは身をよじって躱すが、その動きは徐々に理性を失い、早く動くものを自動追尾するリーヴァルディにとっては的がここにいると教えているも同じ。動けば動くほどに、無数の黒炎の斬撃が乱れ撃たれカルロスの逃げ場を奪っていく。
ユーベルコードで闇に溶けていく中、リーヴァルディは残ったりせいで闇の中の彼の衣服を見つめ、言う。
「……その衣装に足りない物を教えてあげる……お前の血よ」
その言葉と共に、鎌が確かにカルロスの体を捉え、その体から多量の鮮血を噴き上げその衣装に最後の色を添えた。
カルロスは倒れ、闇に溶けるように消えていく。それはまるで今まで数多の猟兵に刈り取られた吸血鬼たちの姿をなぞるかのようでもある。皮肉にも、彼の真似事衣装はその最期を持って完璧に仕上げられたのだ。
闇の霧はこの島固有のもの。カルロスが倒れたとて晴れることはない。
より深い闇と濃い血が、その霧の中をただ去り行くのみであった。
大成功
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