羅針盤戦争〜我、未来を征する第四の王笏
●再来、未来
「我の本拠、ついにたどり着いたか。猟兵」
機械的な要塞。その中に1人、男はいた。彼こそこの世界のオブリビオン・フォーミュラ、カルロス・グリード。その姿の1つ、通称『四の王笏』。その姿はコンキスタドールや海賊というイメージとはかけ離れた近未来を思わせる姿だった。黒のインナースーツに白きアーマースーツ。宇宙空間が似合う男、だがいるのは周りに海と空の広がる島の中である。
「この未来、汝は読んでいたのか? 発言を許可する」
『了解。数日ノ誤差アレド、我ガ未来予測ノ結果ト違ワズ』
「ふ、であろうな。だからこその汝だ。かの者に劣らぬ未来予測を可能とした超AI、『白騎士の鎧』よ」
カルロスは愉しそうに笑いながらその声に応えた。その声は彼の着ているスペーススーツから発声した。その機械音声こそがそのスペーススーツ『白騎士の鎧』によるもの。
『白騎士』。それはかつて銀河帝国の幹部として猟兵に立ちはだかり、その驚異的な未来予測により初の大規模戦でもあった猟兵を圧倒し、個体によっては猟兵を退けた者も存在した、悪夢のごとき存在。そしてこの鎧はその未来予測を勝るにも劣らぬ精度で備えた驚異の存在なのだ。
『ナラバ、何故、ソノ予測ノ発言ヲ此処ニ至ルマデ禁ジタ?告ゲレバ侵入ヲ防グ事モデキタ。クエーサービーストノ襲撃モ、未来予測ヲ用イレバ容易ニ』
「それは逃げだ。確かに汝の未来予測を持ってすれば、奴らの到達を予期し罠を仕掛けることもできただろう。我1人でも無事ならば、この世界を侵略形態に戻す手も盤石となったろう。だがな、我らは多世界侵略船団コンキスタドールだ。攻め、蹂躙し、支配し、奪う。未来を読んでの逃げなど、敗北を認めたようなもの。故に、事ここに至るまでは未来予測を禁じた。
そしてアルバドレーダによる襲撃……あれは試しだ。島に匹敵する巨体に奴らがどう対応するか……結果はどうだ。既に何体もが迎撃され果てている。そしてその情報は汝に蓄積させている。尤も、同じ猟兵が来るとは限らんからこれは予測の糧の1つでしかないがな。
そして我は断じた。奴らは我が征服するに値する存在だ。我が得た未来予知にも及ぶ未来予測の汝の力、これを持って奴らを徹底的に蹂躙し打ち倒す。それでこそ我らの矜持は保たれる。汝は完璧な性能を誇るが、そういった合理を越えた考えというものも理解すべきだぞ」
『……了解。参照データトシテ、インプットスル』
「ふっ、真面目な」
無感情な電子音声に、カルロスは静かに口角を上げ、そして電子的な扉が開くのを待つ。
「さあ来るがいい猟兵。汝らの未来を、我らが永遠に閉ざしてやろう」
●
「『四の王笏』の本拠が見つかったよ!サイバーだよ!マシンナリーだよ!でもスペースじゃないよ、残念!」
九十九・サイレン(再誕の18不思議・f28205)は興奮した様子で集まった猟兵たちに語りだす。現れた強敵について。
「『四の王笏』の本拠地が見つかったの聞いてる?奴こそオブリビオン・フォーミュラの1体!奴含めてフォーミュラだけは全員倒さないとなんかグリードオーシャンがなんかどえらいことになっちゃうらしい!だから倒さなくちゃ、ね!なんだけど……」
テンションを上げていたサイレンの語調が明らかに下がる。
「どうも厄介なのを持っててさ。メガリスなのかはわかんないけど、『白騎士の鎧』って言って、なんとあの白騎士ディアブロの未来予測とほぼ同じものを備えててそれを装着している人物の精神にダイレクトに伝える事で未来を読んでいるように攻撃や防御行動をとる事が出来ちゃうんだって。んー、いやなやつ!
そういう訳だから、相手は当然皆のユーベルコードに先んじてユーベルコードを発動してくるよ。しかもその精度は未来予測って能力から段違い。先にユーベルコードを使おうとしたり、敵の攻撃に対して対処をしなかったり対処が不十分となるとその代償は計り知れない。ただでさえ難しい相手だけど今回は失敗もあり得るほどの攻撃が予想されるから本当に気を付けてね!
ちなみにこの先制攻撃ってのは、『こちらがUCを発動する前に確実に相手のUCが命中する』って思って貰っていいかな。だから無敵城塞とかも通じない。そして複数のユーベルコード発動もそれだけ隙が増えるからおすすめはしないかな。
それからボクの予知した個体に関してになるけど、未来予測は相手を捉えてその肉体、武器、目の動き、大気の流れ、音、あらゆる物を白騎士の鎧が高速演算し未来予測を割り出して対応して来るみたい。その計算もあっという間だから隠しておいた物を出しても対応はしてきちゃうみたい。
カルロスの行ってくる攻撃は、まずは貫通斬撃レーザー。これを未来予測した位置に撃ちこんでくるよ!しかも貫通と切断の特性があるから、ただ防御しただけじゃ貫かれるわ切り裂かれるわで大変な事になっちゃうからね!
それから、高速飛翔から隙を見て接近しての光剣による斬撃。ただでさえ捉えにくいのに攻撃もしっかり未来予測して回避してから攻撃してくる辺りほんっと嫌らしいよね!ちなみに攻撃しなければ攻撃してこない、って訳じゃなくてしないならしないでそのまま未来予測に基づいて攻撃してくる、そこまでが先制になるよ。
最後に、66機の動画撮影ドローンを配置しての攻撃。これはドローンを配置して対象の動きを撮影。白騎士の鎧がそのデータを元に未来予測の精度を上げてから攻撃してくる。攻撃方法は不明。で、先制『攻撃』である以上、ドローン配置段階はまだユーベルコードは使えない。相手の解析が終わって攻撃してくるのを待たなきゃいけないから気を付けてね!
場所は鋼で覆われた大きな機械的な広間。レーザー砲とか醜い男を落とす穴とかはないけど、遮蔽物も無いよ。
かなり厳しい相手だってのはわかってる。でも、あくまで未来予測で未来予知ではまだ無いんだ。白騎士を倒した皆なら、きっとその未来を切り開ける筈!グリードオーシャンの物語を終わらせない為にも、皆、頼んだよ!」
そうしてサイレンは猟兵を送りだす。カルロスが突きつける絶対敗北の未来を、打ち砕く為に。
タイツマッソ
マスター、タイツマッソと申します。よろしくおねがいします。
今回は『四の王笏』のボス戦となります。
難易度はやや難なので相応の判定をします。
また、プレイングボーナスは『プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。また、しない限り必ず🔵🔴🔴苦戦か🔴🔴🔴失敗になる』となっており、苦戦や失敗でもリプレイ執筆させて頂きます。
その為、こちらの判断でプレイヤーにとって不快な描写になってしまう可能性があります。その可能性も御容赦頂ければと思います。
先制攻撃に関しては『ユーベルコード無しでのユーベルコードへの対処』『ユーベルコードは1つのみ』を推奨しており、またドローン召喚UCはドローン配置後のカルロスの攻撃、までを先制攻撃とする裁定としますのでご注意ください。
プレイング受付は公開後から始め、なるべく早い返却を目指し本日中の完結を目指しますが、間に合わない場合は12日からの執筆再開となります。
プレイングは基本1人ずつ判定し1人ずつの返却としますが、状況次第では纏めてになるかもしれません。
それでは強大な敵との戦い、プレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『七大海嘯『四の王笏』カルロス・グリード』
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POW : 収束する運命の斬光
【対象の未来位置へ放たれる貫通レーザー】が命中した対象を切断する。
SPD : ディアブロ・オーバーブースト
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【纏う白騎士の鎧による未来予測】から【判明した敵の攻撃を回避し接近、光剣の斬撃】を放つ。
WIZ : デストロイマシン零式
戦闘力のない【66機の動画撮影ドローン】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【正確無比な未来予測シミュレーション】によって武器や防具がパワーアップする。
イラスト:hoi
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
終夜・日明
☆
未来は確率によって決定し、それを計算で引き寄せているだけに過ぎない。
ならそれよりも早く計算し確率を掴めば勝ち……か。
――やってやる。やってみせる。
電脳魔術士を舐めるなよ。
回避は難しいでしょうので【武器受け】、無理なら【激痛耐性・継戦能力】で戦闘続行し初手を凌ぎます。
同時に【ハッキング】で干渉、システムの【破壊工作】を仕掛けつつ【誘導弾】を噛ませドローン狙いで【乱れ撃ち】して【時間稼ぎ】。
僅かに隙ができた間に【指定UC】を発動します。
予知に頼ればありえないモノを見た時に恐怖する。
一度でも僕の攻撃が通る結果を予測させれば【恐怖を与える】には十分のハズ。
その隙を狙い雷の【属性攻撃】を発射します。
●未来を引き寄せる計算
「未来は確率によって決定し、それを計算で引き寄せているだけに過ぎない。ならそれよりも早く計算し確率を掴めば勝ち……か」
終夜・日明(終わりの夜明けの先導者・f28722)は転移前、未来予測を瞬時に計算するという白騎士の鎧の性能を聞き、その未来を操ると呼ばれる性能の正体をそう認識した。計算。そこであの超AIを上回る事こそが彼の勝機。その為には覚悟が必要だと言う事も彼は既に計算していた。その可能性に、少し身体が強張るのを感じる。だが、一度目を閉じ、再び開けば彼は既に迷いを捨てていた。少年兵士として育てられた彼にとってはそれもまた学んだもの。
「――やってやる。やってみせる。電脳魔術士を舐めるなよ」
白騎士のいた世界にいた電脳魔術士。その1人でもある彼は、電脳の存在である超AIを立ち向かう相手としてその瞳に照準(ロック)していた。
●
「ほう。まずは小僧が1人か。白騎士、汝はどう動く?」
『対象データ確認――――データノ更ナル収集ヲ要ス』
「ならばこの手だな。行け!」
日明が現れたのを見て、AIはそのデータを捕捉。そして傾向を読み提案を受けたカルロスは鎧から小型の飛行ドローンを66機空へと放つ。ドローンは瞬時にカメラを展開し日明のデータを収集し瞬時にAIへとそのデータを蓄積していく。
「っ!」
日明がライフルスピアを構え、カルロスに向け、そして引き金を引く。その僅か3アクションの間に。
『データ収集完了。未来予測、開始(アクティブ)』
(馬鹿な、もう!?)
電脳魔術士だからこそ理解できる、その異常なデータ収集と計算の速さ。普通なら何パターンも動作を入力しなければいけないものを、白騎士の能力はドローンを使えば僅かな動作で計算完了してしまう。そして終わったのならば
「当たる道理は無いな、小僧」
放たれた弾をカルロスは僅かな体の動きで避け、そしてブースターを噴射し一気に距離を詰めてくる。接近戦……!日明が咄嗟にライフルスピアを盾に構える。武器を盾にするのは危険だが、それでもまだ使い道は存在――
「その防御は既に計算済みだ」
「なっ!」
予期した衝撃は、来ない。来たのは彼の真横――ブースト噴射の調整で、正面から横へと位置を切り替え、そして腕に展開したレーザー砲を向けたカルロスの姿。最適のコース、『日明が確実に想定内の防御行動を取る』コース。そして更にその先が存在する軌道、つまり、ライフルを盾にした彼の横を完全に取る位置。その方向から、絶望の白光が放たれる。
「ガ、ハッ!!!」
盾も間に合わず、レーザーの直撃を受けて日明が吹き飛ばされる。スーツに包まれた華奢な身体が無残にも地に伏し、持っていた機械がショートしたのか、蒼い火花がバチバチと奔る。蹲って動かない様子に、カルロスは満足げに笑う。
「まずは1人、か。呆気なかったが、猟兵と言えどこの力の前ではこの程度、と思えても詮無き事か」
『————戦闘再開ヲ進言。対象行動、終了ナラズ』
「何……?」
「く、うあああああっ!!」
AIの進言にカルロスが僅かに目を開いたのと同時、ダメージも激しい日明が立ちあがり、ライフルスピアを構えたのだ。そして連射モードとなったそのライフルから次々に弾丸が放たれる。その狙いはカルロス、ではない。
「ドローンか! 回避せよ!!」
当然この乱れ撃ちも計算はできた。だが、カルロスがもう終わったと油断したことによる僅かな遅れ、66機という数の多さ、更に日明が既にドローンを捕捉し誘導照準していた事が災いした。結果、回避の遅れた20機程度が直撃を受けて損壊する。
だがカルロスも計算に基づきレーザーを発射。誘導弾を撃ち落とし、ドローン全ての破壊は防ぐ。
「……あえて聞くまいと思ったが、恐らくは理由は同じと思いたい故尋ねる。何故、計算が遅れた」
『————理外。アノ身体データナラバ、アノ一撃デ戦闘不能デモ間違イナイ。故ニ、計算ヲ終了シテシマッタ』
「成程……データでは見出せぬものを我も見過ごしたか……即ち、精神力」
日明は防御できたわけではない。完全に直撃。だが、激痛を耐え、継戦を身体に強いる。少年兵士として身に沁みついたそれ、そして日明自身がここでカルロス達に屈したくないと言う心、それがAIの計算を狂わせた。
「だがそれもここまでだ。数が減ったとはいえ、満身創痍の汝では真面な行動は取れまい。さあ、次は如何にする。どんな物でも計算し尽くす。そして反撃で汝は終わりだ」
「ハァ……ハァ……」
電気をスパークさせ、それでもライフルスピアを構える日明。その動きをもドローンは撮影し、そしてそのデータを受けた超AIが未来を導く。
「さあ、奴は次にどう動く」
『計算開始。次ノ行動―――――――――――――ガ、グ、ガグ、射撃、チガウ、格闘、チガウ、逃亡、チガウ、ユーベ、チガウ』
「!? なんだ、どうした!!」
だがその未来が、ここで初めて途絶えた。ここまで迷いなく日明の行動を計算し尽くしたAIがここで突然その挙動を狂わせたのだ。その様子に、カルロスは日明を見据えて、AIを無視してレーザー砲を向ける。
「何をした小僧!!」
だが満身創痍の相手ならば、もはや未来予測も不要、と何か仕掛けたと思われる日明を始末にかかる。
日明にレーザー砲を向ける、スイッチを押す。レーザーが発射される。その3アクションの間に。
「【知性という名の魔物(シモン・ラプラス・フォンノイマン)】」
此処に、未来予測を越える更なる計算が、完成する。
●
彼が仕掛けたのは、ハッキング。まさに電脳魔術士として基本スキルにして常套手段。とはいえただ仕掛ける事はできない為、彼は覚悟を持ってそれを行った。それは相手の攻撃を受けたまさにあの時。舞い散った蒼き雷のスパーク、あの中にはハッキングの為の電波が混ざっており、それをあの時、AIもまた戦闘行動に集中していたあの瞬間に仕掛けたのだ。そして激痛に耐えながら、行動で把握されない様インカムと思考のみによるハッキングを仕掛け続け、その時間稼ぎにあの乱れ撃ちを行った。回避運動の間に接近したドローンに更にハッキングは電波で感染し、数が減ったのもありその支配割合は確実に増えていた。
そしてトドメのあの更なる動画データ収集。あれによりハッキングで仕込んだシステム破壊ウイルスが本体であるAIにデータと共に仕込まれ、結果、AIはその未来予測システムに大きな傷を負ってしまったのだ。そしてそれにより生じた隙、カルロスがレーザー砲を撃つまでの僅かなそれが、彼の求めた、全てを賭けた一瞬でもあった。
「【知性という名の魔物(シモン・ラプラス・フォンノイマン)】」
それはまさに意趣返しの技。満身創痍の筈の日明が、僅かな動作でレーザー砲をかわしたのだ。
「なっ……!バカな、在り得ん、在り得ん!!」
カルロスがレーザー砲を連射するが、日明は僅かな動きで避け、そしてその間にライフルスピアを構えていく。それはまるで、少し前に自身が日明にやってみせて未来予測による回避そのもの。
「まさか汝も、未来を読んでいるというのか!!」
「……」
彼の瞳が言っている。「そうだ」、と。
彼の【知性という名の魔物(シモン・ラプラス・フォンノイマン)】は脳の演算速度を引き上げ全てを計算し尽くし、自身の行動が100%確定する行動を導き出し、その演算速度はどんな演算すらも確実に越える。そう、ユーベルコードさえ使えたのならば彼は確実にAIの計算を上回れる。その為に必要な隙の為、彼は覚悟と死力を尽くした。
『機能、復帰……計算、開始』
「認めぬ!我が鎧こそが、未来を制圧する力!汝の動きも、未来も、ここで終わりだ!!」
なんとかシステムを復旧したAIが計算を再開。それを受けてカルロスはレーザーソードを抜き、ブースター噴射で日明に突っ込む。
この時すでに、明らかにカルロスは平静を失っていた。日明の確実な回避によるものもあるが、これは彼の能力《蠱毒》も関係している。
彼の生まれつきの能力であり、生命特攻で働きその生存本能に働きかけ恐怖を与える。
AIの計算により絶対有利の状況では発動しなかったが、今、日明自身の計算がAIと同じ未来予測の領域に踏み込んだ事でついに発動した。結果、明らかに危険である接近戦という手段を取った。
日明が迎撃にライフルを構えるのを見やり、カルロスがほくそ笑む。予想通り。やはり先のそれは間違いだった。AIの計算は既にそれを見越している。そして最適コースはもう決定している。
「終わりだ、こぞ」
ライフルを回避し、回り込んだ側面からの斬撃。
そのカルロス向けて――――ライフルの引き金になどかかっていない、彼の指が向いていた。そこから一瞬で蒼い雷が迸る。
「ガハッ!!」
電撃はカルロスを撃ち、そしてその身体を麻痺で止める。その僅かに、ライフルを構え直し再びカルロスを捉える。
「バカな、只人が、超AIを越えるだと……なんだ……何者だ、貴様ぁ!!」
「――――ただの、電脳魔術士だ」
そして再びカルロスを電撃が穿つ。今度は更に破格の威力の物が、その身体を貫いた。
「電脳の領域で……計算で、負ける訳にはいかないんだ」
これ以上は演算の時間制限もあり、撤退を選ぶ日明。彼の覚悟と意志、そして計算は、確かに超AIの未来予測を超えたのだった。
成功
🔵🔵🔴
才堂・紅葉
「さて、困った物ね。あれはちょっとずるくないかしら?」
迷彩マントを纏い、杭打ち銃とSMGを持って対峙する
・先制対策
気圧されずSMGで特殊徹甲弾の弾幕を張ろう
弾幕によって相手の機動を限定し制限する事で、未来予知の上から必殺の杭打ちで仕留める構えだ
(まぁ、躱すわよね…)
ただ、本命は光剣を放たせる事自体である
それも敢えて背中を狙わせるのが狙いだ
「コード・ハイペリア!」
真の姿の封印を解くと、背中に輝く「ハイペリアの紋章」の力場のオーラ防御でジャストガートを狙う。柔術技の背中当身の要領だ
その衝撃を地面に受け流す脱力で、相手の体勢を崩したい
「穿ちなさい……“楔”!!」
戦化粧で笑み、その引き金を引こう
●紋章輝く刻
「さて、困った物ね。あれはちょっとずるくないかしら?」
先の戦いを見た才堂・紅葉(お嬢・f08859)はそう静かに愚痴を零す。未来予測、此方の行動を読み、回避と的確な反撃を可能にする能力。正直に言えばずるいと言いたいが、一応自分達も未来予知を前提に戦いは挑んでいる訳だが、それでも正直ここまでされるとそれを差し引いても理不尽を戦士としては感じざるを得ない紅葉である。
「でも、あの戦争じゃ白騎士だけは対峙しなかったし、黒騎士の方には痛い目に遭ったし、ここで立ち向かうのも悪くはないかしらね」
そう言うと、対戦車杭打銃“楔“とアサルトライフルを構え、迷彩マントを羽織ると戦場へと足を踏み出した。
●
「くっ、まさか一手取られるとは……システム修復は完了したか?」
『システム再構築完了。ウイルス除去問題ナシ』
「よし、なら構わぬ。我も平静を失っていた。一手は奪われたが、我はオブリビオン・フォーミュラ。この程度ではまだ倒れん」
「ふうん、ならどの程度なら倒れて下さるのでしょう、か!」
「む!」
不意打ち気味に紅葉が仕掛けたアサルトライフルの銃撃。だがそれをカルロスはジェット噴射による高速飛翔で回避する。
「次は女か。ほう、顔も良い。上等だな」
「お褒めの言葉どうも!」
奴隷を見定めるような目つきのカルロスに間断なく銃撃を続ける紅葉。その銃撃は確かに回避をされている。だが、確実にそのコースは制限され徐々に紅葉の射程内に入っていく。
「む!」
「ドンピシャ来ましたね!貰った!!」
そして紅葉の真正面にその姿が来た時、マントで見えない位置から向けた対戦車杭打銃“楔“から勢いよく杭が発射される。
「いくら未来予測でも、見えなければ把握なんて」
「既に終わっている」
「な!?」
杭が当たるかと思われた瞬間、アームブラスターが火を噴き、スラスターの役割を果たしカルロスの位置を大きく動かし、杭をなんなくかわす。そしてその位置は、紅葉の背中の直上へと移る。
「その杭打機を視認した瞬間には、超AIは数百以上の計算を開始している。撃った時にはもうパターン計算も完了だ。その程度では、未来予測は越えられぬ!」
カルロスは背中から光剣を抜くと、それを紅葉の背中へと振りおろす。迷彩マントが呆気なく切り裂かれ、そして紅葉の背中を――
「ですよね。だから、隠すなら完全に刹那の直前までやらないと、意味が無いって訳! コード・ハイペリア!!」
その瞬間、彼女は自身にかけた封印を解除。自身に宿すハイペリアの紋章。それを今背中で発動したのだ。
「な、にぃ!?」
紋章により発生した力場は光剣を防ぐ。僅かでも紋章を背中へ発動する予兆を見られない為、その為の迷彩マント。杭打機を隠したあの行動こそブラフ。そして前面を武器で固める事で、ごく自然に相手を背中から奇襲させる心理的罠。
「だが、この程度の物、力押しで……ッ!」
カルロスが振り上げ、打ち下ろした光剣で力場をそのまま破壊しようとした瞬間、そのインパクトをそのまま逃がすかのように、紅葉が脱力する。与える衝撃を受け流され、空中でカルロスの体勢が崩れる。
「『柔よく剛を制す』。三の王笏なら知ってたかもしれないけど、ね!」
その瞬間を逃がさず、紅葉は【対戦車杭打銃“楔”(ロンギヌス)】を発動する。杭に加工されているがそれはある奪還者の偽神兵器の欠片。その力は紅葉を超強化し、その奪還者の力と共に彼女の顔に戦化粧を飾る。再計算も回避も許さない、体勢を崩したこの一瞬だけを確実に貫く、絶対の一撃。
「ある世界の絶望的な未来を切り開く為、強大な嵐に立ち向かった力。その力で、奴の突きつける未来を、穿ちなさい……“楔”!!」
「グ、オオオオオオッ!!!」
紅葉自身にも反動が発生する諸刃の剣。そして未来を切り開き貫く杭。それは今確かに、超AIの計算すら許さぬ程の速さで、確かにカルロス・グリードの体に大きな穴を穿ち貫いた。
成功
🔵🔵🔴
シャーリー・ネィド
【かまぼこ】
未来は変えられる
でも、決して楽じゃない
それでもボクとウィーリィくんなら出来ない事はないよ!
二人で死角を補い合うような位置を取り、ブランダーバスの【乱れ撃ち】で【弾幕】を張って高速移動する敵を迎撃する
当然、攻撃は全部予測されるから当たらないだろうけど、真打ちは次の一撃
【零距離射撃】で熱線銃を地面に撃ってその反動でボク自身を【吹き飛ばし】、光剣の斬撃を躱す
自分への攻撃は予測出来てもボクの動きは予測出来るかな?
で、弾幕を張りながら【罠使い】+【ロープワーク】で周りに張り巡らせておいたワイヤーで敵の動きを止め、ウィーリィくんの攻撃と一緒に熱線銃とブランダーバスの【零距離射撃】!
ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】
未来は変えられる、って定番のフレーズだよな。
けど、タダで変えられるほど安い代物じゃない。
だからリスクは覚悟の上だ!
大包丁の斬撃の【衝撃波】を【フェイント】で放ちそれを敢えて予測させ、相手の攻撃を誘う。
鉄鍋の【盾受け】の【ジャストガード】でダメージを最小限に抑えつつ、【カウンター】で【厨火三昧】の炎で攻撃。
ただし狙うのは奴自身じゃなく66機の動画撮影ドローン。
奴の未来予測も流石にそこまで面倒見は良くないだろうからな。
そして奴が次の手を打つ前に【厨火三昧】の炎を全部叩き込むと同時に【ダッシュ】で間合いを詰め、シャーリーと一緒に炎の【属性攻撃】を付与した大包丁の【二回攻撃】を叩き込む!
●未来に届く僅かなる炎
「未来は変えられる。でも、決して楽じゃない。それでもボクとウィーリィくんなら出来ない事はないよ!」
「ああ、けど、タダで変えられるほど安い代物じゃない。だからリスクは覚悟の上だ!」
鎧を修復し終えたカルロスの元に、新たに猟兵2名が現れる。シャーリー・ネィド(宇宙海賊シャークトルネード・f02673)とウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)、これまで多くの戦場を2人で戦い抜いてきた信頼と絆で結ばれた者たちである。
「面白い。2人だろうと我の征する未来はここからはもう変わる物ではない!」
カルロスは再び66機かのドローンを配置し、二人の姿の撮影を開始する。それを見届けつつ2人は死角を補うようにぴたりと密着し、そしてお互いの得物をカルロスに向ける。
「変えるよ!」
「ああ、この世界の人々を苦しめるお前の未来なんて、認めない!」
シャーリーが銃の弾幕を、ウイーリィが斬撃の衝撃波を放つ。だが、その姿は既に十二分にデータを収集されAIへと送信された。故に
「変わらぬわ!!」
弾幕を難なく回避し、その間隙を縫うように迫る斬撃も首の動きだけで回避する。そしてそのまま高速飛翔に移行し、弾幕をなおも回避していく。
「こ、の!」
ウイーリィも斬撃を続けるが、シャーリーほどの弾幕は作れず高速飛翔は追いきれない。そしてその時は来る。
「まずは汝だ、銃の娘」
シャーリーの目前までカルロスが迫り、抜いていた光の剣を振るう。その速度に避ける事はできない、そう見えた。だが
「はっ!」
その瞬間シャーリーは足元へと銃を放ち、その勢いで空中へと飛びあがる。そして斬撃は背後にいたウイーリィへと伸びる。だが、ウイーリィはその阿吽の呼吸で見ずとも鉄鍋で剣をジャストガードする。
「む」
「自分への攻撃は予測できても、ボクの動きは予測できないでしょ!」
そしてその動きの止まったカルロスへとシャーリーが銃を向ける。その引き金が引かれる――――前に、シャーリー向けてカルロスのもう片腕からレーザー射撃が放たれる。
「えっ、うわあっ!!」
「シャーリー!くっそお!!」
咄嗟に体を捻るもその熱量で吹き飛ばされるシャーリー。その姿に動揺するも、ウイーリィは【厨火三昧】を発動。目の前のカルロス向けて大量の炎を放つ。
「どうした。動揺が隠せておらんな小僧!」
「グッ、アアアア!!」
炎はカルロスに僅かに当たるもほとんどは当たらず通り過ぎてしまう。その炎も僅かな動きで避けられ、そして光剣の振り切りで鉄鍋ごとレーザー光を受けて吹き飛ばされていく。
「く、そ……」
「自分への動きだけ、だと? 甘いな。全てだ。汝たちの動き全てを超AIは捕捉し未来予測をしている。故にその娘が下へ銃撃する事も読めていた。66機によるデータ捕捉からのシミュレーションは攻撃のみを対象とはしていない」
「ぐっ!」
毒づきながら立ち上がろうとするウイーリイ。倒れているシャーリーをなんとかしたいと思うが、自分に近づいてくるカルロスの方が早いだろう。
「くっそおお!!」
「ハハハハ! 何をまだしようとしても無駄だ、さあ次は何を――」
『報告。10機のドローンからのデータ収集が途絶。故に予測情報的中率90%』
「何……っ!」
後ろを見やったカルロスが見た物、それは炎で燃え上がるドローンたちの姿だった。先のウイーリィの炎、アレはシャーリーの被弾で動揺して外れたのではなく、最初からほとんどは外すつもりだったのだ。カルロスはウイーリィの炎を放つ動作までは予測できた。だが、その狙いが外れる予測を、ウイーリィの心の動揺によるもの、と早計で心で結論してしまった。そう、未来予測自体は完全なる平等の計算によるもの。だが、その計算の理由や意図を計るのは心なのだ。そして慢心からドローンの異常にすぐ気づく事が出来なかったこともまたカルロスの油断だった。
「こ、小僧!!」
「アアアアア!!」
包丁を構えて突っ込んでくるウイーリィ。だがカルロスは当然読んでいる。その包丁の軌跡も全て。かわした後にその身体を両断してくれようと光剣を構えて。
「ならこれは予想できたか!!」
そしてウイーリィの背後が突然大きく爆ぜた。それは彼が放たずに残しておいた【厨火三昧】の炎。彼が放てる最大炎数は実に99個。ドローンを何体か狙っただけでも釣りがくるし、そもそもそれだけ放っていればカルロスにもドローン狙いだとばれてしまっただろう。だから、半分以上は放たずにまだ装填状態だったのだ。そしてそれを予備動作無しの状態で放つ事で未来予測をギリギリまでさせなかった。更に言えばドローンが減った事でその精度が下がっていた事も起因する。
爆発はウイーリィの身体も焼き吹き飛ばす。だが、その吹き飛ばしの推進はカルロスの未来予測を完全に越えている。故に、予定していたアクションにずれが生じ、接敵したウイーリィは包丁を突き刺すと同時にカルロスの身体を大きく吹き飛ばす。
「ガ、ハ!! おの、れぇ……!」
「どうだ、変わったろう、少しでも、未来が!!」
息を切らしながらウイーリィが最後の装填していた炎をカルロスに零距離で放つ。カルロスが爆炎と吹き飛ばされる。
「グ、おの、れ、小僧、ゆるさん!!」
カルロスがウイーリィにアームキャノンを構える。この時カルロスは再び冷静さを失っていた。彼は今自分がいる位置を、覚えているつもりだった。絶対入らないように、と。何故ならそこは、未来予測でシャーリーが何かを仕掛けている事を把握していた場所で――。
「グ!!」
その身体に回りからワイヤーが放たれ彼の動きを止める。そして、そこにダメージを負いながらもここまで迫ってきたシャーリーが銃を構える。
「ウイーリィくんは、やらせない!!」
零距離での銃撃。それがカルロスの、兵装でワイヤーを切り裂いた体を大きく吹き飛ばす。急所は避けた、だが、その無理な回避でその身体は地を転がる。
「くっ! おのれ……!」
立ち上がるも、もうそこに二人の姿は無かった。すぐに撤退を計ったようだ。
『戦況デ見ルナラバ、勝利ハコチラノモノダ』
「確かにそうだ……だが、我が油断したとはいえ、女が仕掛けた場所へと寸分違わず我を吹き飛ばした男。そして、男がそうすると理解し信頼して罠の仕掛けを維持し、最高のタイミングで仕掛けた女……連携、という点では、我は完全に負けた」
そうしてカルロスはちらと見やる。そこには彼は見落とした、自身の兵装であるドローンの焼け焦げた姿が無残に転がっていた。
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
神代・凶津
未来予測とは厄介極まりねえな!?
「・・・でも、負けられません。」
ああ、相棒の言う通りだぜッ!
先ずは先制攻撃をどうにかしねえとな。
持ってる『結界霊符』をありったけばら蒔いて多重の結界を貼って防いでやる。
もし防ぎきれなくても少しくらい時間を稼げる筈だからその隙に攻撃範囲を見切って避けてやる。
次はこっちの番だが未来予測のせいで生半可な攻撃は対処されちまうか。
なら、コイツはどうだ?
いくぜ相棒、『祓神楽』だ。
厄を祓う神楽を舞う事で発生する神気でこの場全体に攻撃だ。
さあさあ、御照覧あれッ!!
俺達の未来予測を教えてやるよ。てめえが祓われるって未来だぜッ!
【技能・結界術、見切り、ダンス、浄化】
【アドリブ歓迎】
●祓
「未来予測とは厄介極まりねえな!?
(・・・でも、負けられません)
「ああ、相棒の言う通りだぜッ!」
鬼面を被った巫女、神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)は新たに数を増やしたドローンを配置したカルロスに向けて向かいながら相棒である桜とそう会話する。
「相棒?どこにもいないが……まあいい、汝の未来も読み切って見せよう」
「さっきもイマイチできてねえだろう、が!」
そう言って凶津は自身の周りに結界霊符をばら撒き、多重の霊術結界を敷く。
「ほう、バリアか。その程度、粉砕してくれる」
カルロスは腕のアームキャノンを構えると、凶津に向けて撃ち放つ。だがレーザーはその目前で結界に阻まれ、その勢いを止める。だが、その熱量はバリアを少しずつ崩壊していく。だがそこは凶津の計算の内。
(今の内にこのレーザーの間合いを覚えて、ギリギリで回避するだけだ!)
レーザーの大きさ、範囲を把握する為の時間稼ぎことが本当の狙い。そして結界をレーザーが粉砕し、凶津へと迫る。
「今だ!!」
レーザーをジャンプした凶津が回避する。間合いは完全に読み切った。しかし。
「なっ、うあああああ!!!」
レーザーが突然、大きく膨らんだ。凶津に迫るその目前のタイミングでエネルギー量が増え、結果、直前で大きさを広げたレーザーが咄嗟に刀で防御をした凶津に直撃してしまったのだ。多大な熱量を受けた凶津が吹き飛ばされ、叩きつけられた凶津から刀や装備品が飛びちり散乱する。
「その程度では未来予測シミュレーションは越えられぬ。汝があのレーザーならどのタイミングで、どこに避けるか。そこまでも動画撮影による正確な未来予測は観測している。その札による防御の為だけの結界では、66機が全方位から撮る汝の動きの計測までは阻害できん」
「う、あ……」
巫女服の少女がよろよろと立ち上がる。何かをする、と思いきや、その足はたたらを踏み、よろりよろりと右に、左に、少しリズムを刻むように息を切らしながらふらつくだけ。未来予測をしても、何も変わらない。フェイントを仕掛けているわけでも何でもない。
「ふん。損傷の深さに、もう真面に何もできはしないか。いいだろう。楽にしてやる」
カルロスがトドメのレーザー砲を放とうとした、その時だった。
「……何だ? 笛?」
少女のふらつく足音だけが響いていた空間に、突然笛の音が鳴りだしたのだ。金属では無く木管……確かサムライエンパイアの島でそんな物を耳にした事があったような。
「待て。誰だ。誰が吹いている。未来予測で描いた未来では、あの女も、何者も存在も、笛を吹いて等いない! 誰だ、一体誰が!」
カルロスが周囲を見回す。ドローンの撮影データでも誰も笛を吹いている様子が見つからない。ここには間違いなく、自分とあの女しかいない。では、誰がこれを吹いているというのか。
「一体……グアッ!!」
その瞬間、カルロスの身体に突然衝撃が走る。吹き飛ばされながら、更に疑問が増えていく。今、誰が我を攻撃した? あの女ではない。あの女は相変わらずふらふらと動いているだけだ。何も向けていない。何か放ったならばドローンが撮影する筈。だが、何もない。そして、笛の音も今だ止んでいないのだ。
「どうなって、グフ!!」
再びの衝撃。やはり攻撃元は分からない。未来予測でも、発生源が分からない。理解できぬままに、カルロスは謎の攻撃を受け続けていた。
「はぁ、はぁ……大丈夫か、相棒……」
ふらつく少女――巫女である桜の足元に、鬼の面がゆっくりと近づいてきていた。それは、凶津の本体。そう、凶津はヒーローマスクであり、本体はこの鬼の面の方なのだ。ダメージを受けた際は受けきれず双方が分ける形で喰らい、衝撃で他の装備品に紛れて凶津もまた弾き飛ばされていたのだ。
そしてこのままでは終われない、と二人ともに予定していた技を使用していたのだ。【祓神楽】。凶津が神楽笛を吹き桜が神楽舞を舞う事で、桜を回復するのと同時に敵には神気により病を祓うダメージ、世界を蝕む過去の大元であるカルロスには覿面であるダメージを与える技。
そう、桜がふらついて見えたのは、完全ではないとはいえ神楽舞の足取りだけを準えていたのだ。後は装備品に紛れて凶津が笛を吹けばユーベルコードが発動する。完全な舞ではないので、桜も完全回復とはならず、カルロスも致命傷ほどのダメージは入っていない。だが、それが却って技に思えない事でカルロスの混乱を招く事になったのは行幸だった。凶津もまた、装備品に紛れた事でドローンの撮影からも逃れていた。そしてカルロスがろくに注意できなくなった今の隙に桜に接近したのだ。
「よく、やりぬいてくれたな」
「きっと……そっちも、やってくれるって、信じてた、から……」
「……残念だが、ここは退くぜ。これ以上無理はできねえ。いくらかダメージは入れたし、後は後続に任せる」
「わかった……」
凶津は桜に被さると、そのまま後ろへと退いた。カルロスもその内気付いてしまう。このままやり続けるのも危険だと判断したのだ。
「だが、てめえの未来予測は外す事が出来た。テメエの祓われる未来は、遠くないはずだぜ」
カルロスの未来を自分なりに予測し、凶津は傷を負った体を庇いながら足を進めていった。
苦戦
🔵🔴🔴
トリテレイア・ゼロナイン
☆
ウォーマシンとして、かの世界で騎士を志す者の一人として
その鎧の力を、他世界の人々に向けさせる訳にはいきません
レーザーが普及するSSW、当然対抗措置もあり
対光線反射処理施した大盾で●盾受け(世界知識+防具改造)しつつ脚部スラスターの●推力移動で接近
勿論、一時の気休め
二の手はワイヤーアンカー射出し●操縦
●ロープワークで敵が握る宝珠の●武器落とし
王冠、王杓に並ぶ王権を象徴する『レガリア』…それを猟兵に奪われるのは彼の矜持が許さぬでしょう
回避かワイヤの迎撃か
此方への攻め手が緩めばUC使用
戦場に自分と王を閉じ込める力場牢獄形成
内部へ大電流放電
ECM対策のテストです(電撃耐性)
機能ダウンした敵へ剣を一閃
●合理を越える白騎士
「ウォーマシンとして、かの世界で騎士を志す者の一人として、その鎧の力を、他世界の人々に向けさせる訳にはいきません」
「ほう? その姿……かの帝国の機体の1つか汝」
次に現れたのは白き騎士、されどその身は鋼でできたウォーマシン。元は銀河帝国式典・要人警護機体であったトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)。猟兵として目覚め、銀河帝国戦争では白騎士をはじめとした幹部や銀河皇帝とも交戦した経験を持つ。だからこそ、再びオブリビオンに利用され、他世界の侵略に使われている白騎士の力を放っておく事はできなかった。
「トリテレイア・ゼロナイン。騎士としていざ尋常に」
「良かろう。我は第四の王笏カルロス・グリード。鋼の騎士の挑戦、王として受けよう」
互いが構えを取り、決闘の体裁としての礼儀を果たす。鋼の騎士と宇宙服の男が向かい合う光景は、外が晴れ渡る空でなければ、あの宇宙の世界を思わせただろう。そして
「参ります!」
スラスターを噴射しトリテレイアが旋回軌道で動く。
「その程度の速度では、未来予測は追いつくぞ」
カルロスはそれに臆する事も無く、レーザー砲を発射する。その挙動を見てトリテレイアが軌道を変える。だが、レーザー砲はそれすら計算に入れているかのようにその位置へと過たず放たれる。レーザーはトリテレイアへとまっすぐのびる。
「ええ。その力は、既にこの身に沁みています」
それを取り出した盾で防御する。レーザーの直撃。そして多くのレーザーが跳ね返されるように分散し、部屋の一部を破壊する。
「何……その盾、反射装甲か」
「その通り。察しの通り、私は銀河帝国の出身。そして私たちの世界は貴方が使っている通りレーザー技術が発展しています。故に、そのレーザーへの対抗策もまた同時に発展していったのです」
対光線反射処理。彼の盾にはこれが施してあり、これがレーザーを受けても反射していたのだ。レーザーを受け続けながら、脚部のスラスターでカルロスへの距離を詰めていく。
「フッ……成程。白騎士と戦った経験もどうやらあるようだ。だがな。我は侵略船団の王。得た技術をそのまま使う、とでも思ったのか?」
「ぬっ……!」
レーザーを受けているシールド。その一部が、徐々に熱で寸断されていきているのだ。更にレーザーを受けている部分も徐々に溶けてきている。
「我はこの技術を得るにあたり、些か改良を施した。その1つが、未来位置にて防御を選んだ相手用に、この『貫通』と『切断』の属性を追加したレーザー砲だ。ただのレーザーならば反射もできよう。だが、貫通の特性がある限り、100%の反射はできん!そして受け続ければ切断の特性によりその防御は崩壊していく。汝が我に届く事はない!」
「ぐっ……!」
かつての白騎士ならば、未来位置へのレーザー砲なら当たればルールを宣告する効果のみで回避は不能でも防御は十分に可能であった。だが、カルロスのレーザー砲は更に改変が加えられている。ルール宣告をオミットし、その代わりに攻撃性を高める事で防御をも完全に封じる攻撃的改造。
防ぎ切れなくなってきたレーザーがトリテレイアのボディにも掠ってくる。これではユーベルコードを使う隙もない。
「ハハハハ、何もやらせぬ、このまま……」
『新タナ未来予測ヲ感知。敵ワイヤー射出、サレド、コチラヘハ届カズ腰部分ヲ掠るルノミ。支障無シ。攻撃継続サレタシ』
「!? 腰、だと……!?」
AIの未来予測にカルロスが目を見開く。そこに在る物、それを彼自身が一番理解していたからだ。だからこそそこに逡巡が生じる。
(どうやら狙い通りのようですね。では!)
それをトリテレイアは確認し安堵する。このカルロスの反応こそが分水嶺だった。それは賭け。そしてそれは、AIにはなくトリテレイアが此処までの『人生』で得てきたものによる差。
果たしてトリテレイアの体からワイヤーアンカー兼用マルチハッキングジャックが発射され、レーザーをかきわけカルロスへと迫る。それは未来予測の通り、カルロスの腰部へと伸びる。されど、本体へは届きはしない。腰部にある『それ』を掴み取る、ないし破壊するのが手一杯だろう。カルロスがこの状態を維持し、攻撃し続ければ程なく盾を貫通するか切断しレーザーにトリテレイアが貫かれる。AIの合理的な予測から導き出す最適解による結論。
だが、時に合理に従えないのが人間。それは過去であるオブリビオンでも変わりはない。
「う、おおおおおおおお!!!」
カルロスが、その身をよじり大きく体を動かしワイヤーを回避したのだ。コースは分かっていた。だから本当ならば最小限の動きでも回避が出来た。だが、最後の瞬間前までも彼は迷ってしまった。だからこそ生じた、無駄な回避。そしてその動きにより、レーザーがずれて盾から外される。
『ナ……何故……!?』
「く……!」
「貴方の『矜持』に賭けました。そしてその隙、頂きます!」
その僅かな隙こそがトリテレイアの好機。体から発射された杭状発信器が空へ放たれると展開し装置となり浮遊。そしてそこから防御壁が発生し、トリテレイアとカルロスを包みこむ。
「これは……!?」
「これぞ力場牢獄。これで未来予測が出来ても貴方は回避が不能。未来予測攻略が1つ、予測できても回避不能の攻撃をするべし、です。逃げ場を無くす事、そしてもう1つ!」
装置から大量の放電がされると、それが力場内の全てへ降り注ぐ。当然それはトリテレイアにも、カルロスにも。レーザーで撃ち落とすのも間に合わず、電気がその身へと降り注ぐ。
「さあ、ECM対策のテストです。う、おおおおおおおお!!!」
「ぐ、あああああああああ!!!」
ウォーマシンにとっても天敵であるとなるであろうECM。それをトリテレイアは躊躇なく自分をもまきこんで使用した。電気が2人を迸り、そして膝を付く。
『機能……システム、ダウン……未来予測、一定時間、使用不能……』
「おの、れ……やって、くれたな……!」
「ええ。騎士として非難されても構いません。ですが、その力はこれくらいで挑まねばならないと私は知っていますから」
動けないカルロスに対し、トリテレイアは少し鈍い程度で立ちあがる。彼は事前に電撃対策を施してあったので、ダメージは避けてはいないがカルロスよりは軽度で済んだのだ、
『理解不能……何故……最適解ヲ選バズ、回避ヲ……』
「……」
「礼を失した身として、私が代わりに答えましょう。彼はその腰の宝珠、おそらくはレガリアの1つを守ったのです。ワイヤーが当たれば良くて強奪、悪くて破損は避けられなかったでしょう。奪い、蹂躙し、侵略するのが貴方の矜持ならば、それを私達に奪われ、ましてや損傷する事は屈辱以外の何物でもない。故に、貴方は確実な勝利よりも、その宝珠を守る事を選択した。人間であるが故、貴方は最適解に従えなかったのです」
儀式用長剣を抜き、歩みながらトリテレイアは答えた。これが彼の賭け。機械ならば導き出さない、人間の非合理的な部分を『信じる』やり方。そしてそれは、彼が猟兵として得て学習してきたからこそ見つけた道筋でもあった。
『……私ハ、入力データヲ、活用デキナカッタ、ノカ……』
「言うな。今のは我の不手際だ。宝珠を捨てて勝利を優先する事も、宝珠を優先し最適な回避を即座に選ぶ事も、どちらも判断が遅れた。汝の未来予測は間違っていない。またも、我の心が邪魔をしたのだ。フッ……これでは白騎士より相手がしやすかったであろう」
「いえ、そんな事はありません。彼もまた考え、心を持ち得た者でした。そして貴方も、それは弱さでもあり強さでもある。私はそう思っています」
「フ……機械であっても汝のような物が生まれる、か。誠、面白いものだな……!」
トリテレイアを見つめ、寂しくも楽しそうに笑うカルロスへ、トリテレイアは容赦なくその剣を振り下ろした。剣は鎧を切り裂く。
未来予測は絶対。だが、それを元に判断し動く心は、絶対ではない。
成功
🔵🔵🔴
榊・ポポ
全部お見通しなんでしょ、知ってた!
ならもう当たる前提で行くっきゃねぇな!
ゲーミングドリンク飲んで☆気合いと☆元気で耐えて
ポポちゃんセンサーアイの☆瞬間思考力愚直☆ダッシュでギリ回避する!
ドローン攻撃はミニポポちゃんズを束にして、☆レーザー射撃☆一斉発射でビーム干渉で耐える!
あのねぇ!ボタン入力した瞬間に最適解出してくる最高難易度CPUは格ゲーだけにしてくだち!
でもポポちゃんの頭ん中は分かるかな?
ポポちゃんの頭の中を読め!
スゴイコンピューター積んでるなら余裕だよね?
ちょっとでも疑問に思ったら大変な事になるよ!
その隙にミニポポちゃんズを☆リミッター解除して、ビーム干渉オニギリビームぶつけてやる!
●ポポちゃん未来大冒険
「合理を越えた思考……ふっ、汝に諭した事を我が突かれるとは。猟兵の相手というのは存外に面白い」
『面白ガッテイル場合デハ、ナイ!肉体損傷率50%オーバー……フォーミュラトイエド、モウ無視デキルダメージ率デハナイ…!』
「そうだな。流石に、少々きつくなってきた……だが負けはせぬ。まだ勝負は分からぬ。次が分水嶺よ」
一撃を受けつつ耐え、退避したカルロスは回復をしつつもその勝負勘が告げていた。次が勝つか負けるかの全体的趨勢を決める事になると。次の猟兵さえ凌ぐことができれば――そして、ついに現れる。
「ポポちゃん降臨!満を持して!」
『————』
「…………カカポか」
「ほう、ポポちゃんを『インコ』と呼ばないとは良い目を持ってるねカルロスゥ!」
「名前で呼ぶでない」
現れたのは榊・ポポ(デキる事務員(鳥)・f29942)。アニマロイドなのか普通に賢い動物なのかいまいち不明な事務員カカポである。その独特な口調と姿にAIは思考停止状態に陥る。一方、カルロスは油断せずにドローンを配備。その姿を撮影しデータ収集を開始する。
「いきなりポポちゃんの撮影が始まってしまった!事務所通して事務所ー!でもポポちゃんは許すよ!ならば見よ、このCMが来るくらいの飲みっぷり!」
そうしてポポはゲーミングドリンクを取り出しごくごくと飲み始める。撮影し未来予測が始まるが、別にこの瓶を投げつけてくるとかそう言う事もなさそうな無駄な未来予測に至る。
「んぐんぐ、うまぁい、もう一杯! CMのお仕事はこちらの番号まで!」
「どこだ」
何も無い空間を後でテロップ入れてくださいとばかりに羽根で指差すポポ。そしてドリンク瓶をバッグに入れると一息。ついにここからシリアスな流れが。果たして未来予測にポポはどう――
「ならもう当たる前提で行くっきゃねぇな!ポポちゃんうおおおおおお!やってやる、やってやるぞお!!」
「……未来予測は?」
『違ワズ。防御行動ハ見エタガ及バズ。直線ノ突進、フェイントハナイ』
「そうか、ならば消えるがいい」
カルロスがレーザー砲を構える。未来予測でフェイントが無いとなればもはや確実。これはただの気合の玉砕。当たっても気合でなんとかすればいいなどというのは対処でも何でもない。カルロスは嘆息しつつも、レーザー砲を未来予測位置へと撃ち放つ。
僅かな時間。レーザーがポポに届くまで、2秒もない。その2秒の間に。
『!? ナ、ニ……』
「なっ……!」
AI、そしてリンクしたカルロスの思考が驚愕に染まる。ここまで一度も無かった事が起こった。何故なら、未来予測が――変わっていく。今まさにこの瞬間にも。
その理由はまさに策がないように見えたポポにあった。それは
(レーザーきたーあ、もう直撃間違いなしこれだけどゲーミングドリンクで元気を先取り後は考えない賢さ拳100べぇ状態の頭は今瞬間思考バリバリ状態に覚醒してるんだよね!未来予測が思考も読むとしてもなら撃った後に思考を変えちゃえばいいもんね瞬間瞬間瞬間瞬間!普通身体が動かない?いやいやもうここまで瞬間瞬間で考えられちゃうならもう動くよ!バリバリ動くよ!だってポポちゃん高性能アニマロイドだもの!賢さと身体が直結してるもん!ああ、刻が見える!)
ポポのセンサーアイにキュピーンと稲妻のようなエフェクトが走り始まった連続瞬間思考。それはまさにAIの高速計算と同列。故に先にカルロスが放ったのならその軌跡を読む事も高速でできる。そして普通ならば身体が付いていけないであろう動きも、ゲーミングドリンクによるブーストで無理矢理動かす!
ポポが懐から取り出したのは大量の量産型半自律式小型カカポロボミニポポちゃんズ。ミニポポちゃんズは眼からレーザーを発射しレーザーに干渉する。その時間も僅かで、レーザーはそれを打ち破りポポへと突き進む。だが、そのわずかな時間こそが瞬間思考を重ねたポポには必要。
「まずい、未来予測を!」
『右―違ウ、左―上――バカナ、予測が、次々ニ変化スル……何故、何故!?』
「それはポポちゃんが今この瞬間瞬間を必死に生きているからさ!勝手にまとめるなんて言うな!」
「言っておらん!!」
ポポの瞬間思考で次々に変わる未来予測に、AIも最適回避を見出させない。そしてその結果動きをほとんど変えられなかったレーザー、それを
「グレイズ回避なんですわああああああ!」
ポポが瞬間思考で導き出したギリチョン回避。動かした首を、レーザーが掠める。だがポポ自体への被弾はない……あ、羽先がちょっと焦げた。でもまだ本鳥気付いてないからいいか。
「回避しただと……」
「あのねぇ!ボタン入力した瞬間に最適解出してくる最高難易度CPUは格ゲーだけにしてくだち!クレーム不可避!でもポポちゃんの頭ん中は分かるかな?ポポちゃんの頭の中を読め!スゴイコンピューター積んでるなら余裕だよね?」
「なっ……待て、挑発に乗るな!」
ポポの問いかけにカルロスが嫌な予感を感じ静止する。だが、もうその時には手遅れだった。
『何故、何故未来ガ変ワル……瞬間思考……!?読メナイ、読ミキレナイ、次々ト変ワル思考、理解ガ不能……!』
「ポポちゃんに疑問、感じちゃったね?大変な事になっちゃうよ!キエェェェェッ!!(クソデカ奇声)」
ポポが施設に響き渡る奇声を上げる。そして次の瞬間には、カルロスらの周りを大量のポポが埋め尽くす、ポポちゃんゾーンが完成していた。これこそ【ポポちゃんの頭の中(ポポチャンカオス)】。ポポへの疑問を感じてしまった瞬間、周囲をポポのカオスな脳内が埋め尽くすポポちゃんワールドと化す。今回は瞬間思考による未来予測回避と言う結果がその疑問を後押しする事になった。
「クソCPUはもうハメ殺しするしかないでござる!完全包囲ポポちゃんおにぎりスプラッシュビィィィィィィンム!!」
「く、逃げ場も無く、未来予測も不能……だが、一つだけでも落とせば!!」
全方位からのおにぎりビーム。だが1つだけでもレーザーで相殺すればそこに僅かな逃げ道ができる。カルロスはそう考え正面のビームにレーザーを放つ。しかし、レーザーはビームに弾かれその勢いの原則も叶わない。
「既にビーム干渉処理済みさあ!!ビーム干渉処理ビームって何かって?知らん、そりゃポポちゃんの管轄外だ!ポポちゃんゾーンに理屈なんてなぁい!」
「まさか、こんな形で未来を変える奴がいるとは、な……!!」
そしてカルロスへと全方位からのおにぎりビームが炸裂する。未来予測AIも、瞬間瞬間に思考を変えるカオスな脳までは読み切れなかったのだ。
成功
🔵🔵🔴
メンカル・プルモーサ
…白騎士の力を持った鎧……ね……
…その力を使いこなせているのかどうか……試させて貰おうか…
…ドローン召喚した白騎士の攻撃を術式障壁と術式組紐【アリアドネ】を布状に展開する事による盾で防御…
…更に光学・電子的な迷彩術式を用いて私や周囲の情報を…気付かないほど…ほんの僅かにずらして認識させるよ…
…正確無比な未来予測には正確無比な情報が必要…それが少しでもずれれば…数多の要素が絡み合う未来予測は大きくずれ…蝶の羽ばたきは嵐を起こす…
…無論、気付けば再計算からの予測は出来るだろうね…それを許すつもりは無いけれど
…【空より降りたる静謐の魔剣】を発動…限りなく透明な氷で出来た魔剣をカルロスへと殺到させるよ
家綿・衣更着
予知ではなく予測なら基にする情報が必要。おいらはそれを隠し騙すのに特化した化術忍者っす!
キャバリアに搭乗しスラスターから【ジャミング】粒子を撒きながら登場
即座に妖怪煙の大放出しつつ機体から脱出し【化術】も駆使して煙に身を隠す【迷彩】
(すまんテングリーフ、隙を作る犠牲になってくれっす)
【化術】で様々な猟兵が煙の中から狙ってくる【残像】を見せ演算圧迫。ジャミング粒子を出すキャバリアを攻撃した瞬間にユベコ『魔剣憑依・神斬りの一閃』【なぎ払い】!
…それでも本体割り出して攻撃されたら身代わり人形と入れ替わる【罠使い】、【呪詛】で動きが止まる瞬間をユベコで攻撃!
「おいらは衣更着、騙しの達人、化狸忍者っす」
渚波・レンカ
もう、誰かが戦わなくていいようにする…だから…
この世界から…
……出ていけっ!
対策
アンサースーツを着用して序号機との同調率を高め、ダッシュで接近
瞬間思考力で予想した結果に従い前転側転後転(パフォーマンス)やジャンプで回避し踏みつけ攻撃
被弾する時はスナイパーライフルや左腕を盾に
腕を落とされたらUCで覚醒し機体と刻印を強化
続く攻撃を左腕から展開した心の壁で防ぎ砲撃の様にそのまま放つ
エネルギー充填、無差別に鎧砕き貫通レーザー射撃
確実な時にスナイパーでドローンを狙い、攻撃成功すれば刻印の力で捕食融合、損傷を補いドローンの能力を獲得し利用
僕がどうなったっていい…でも、皆は…皆だけは…絶対に、助けるっ!!
『ダメージ率、危険域突破……』
「ふ、未来予測をせずとも分かる。この我ももう、長くはないな」
全方位のビームを受け、逃れたカルロスはもはや満身創痍。フォーミュラとしての破格のタフネスももはや限界に近付いており、息も絶え絶えとなっていた。
『……私ハ不甲斐ナイ。本物ノ白騎士ダッタナラバ、貴方ニコンナ結末ハ……』
「ふ、そう言うな。奴らが未来を越える程に強かった、それだけだ。汝が不十分だったのではない。我も、汝も、奴らの力、覚悟、自由なる思考……届かぬものが多かったのだ。ああ、手に入れたかったものだ」
『貴方ハ、コンナ時マデ……!』
「仕方あるまい。侵略こそが我が性分故な」
そう苦笑を漏らすカルロスに、近づいてくる姿があった。姿は3人。
「…白騎士の力を持った鎧……ね………その力を使いこなせているのかどうか……試させて貰おうか…」
電脳魔術に長け、銀河帝国戦争も経験している人間の少女、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)。
(予知ではなく予測なら基にする情報が必要。おいらはそれを隠し騙すのに特化した化術忍者っす!)
化術を得意とし、クロムキャバリア「テングリーフ・ホワイト」に搭乗している狸の妖怪、家綿・衣更着(綿狸忍者・f28451)。
「もう、誰かが戦わなくていいようにする…だから…この世界から………出ていけっ!」
一般人として生きていて、その戦う感覚もまだ一般人に近いジャイアントキャバリア「汎用巨人型決戦機兵クリューエリオン序号機」に搭乗している10歳の少女、渚波・レンカ(クリューヱリヲン序号機・Cruel Angel・f32002)。
電脳魔術を嗜む魔女、並び立つは2機の鋼の巨人。それはまさにスペースシップワールドを体現するカルロスと相対するには相応しい構図であった。
「異な事を言う。乗り込んできたのは汝らだろうに……そして使いこなしているか、か。ふふ、耳が痛い。だが……我にもまだ矜持は残っている。そうですか、と降伏するような真似はせん」
カルロスは傷だらけの体でありながら、光剣を抜きドローンを配置していく。その数は通常の倍の132機。相手の数に応じて増やしてきたようだ。その顔に敗北者の色は決して見えない。
「未来予測はまだ健在。なれば、最期まで汝らの未来を読み、そしてその命を少しでも貰う! それが、我が残る我にできる最期の貢献となるだろう! ……死出の道、付き合って貰うぞ」
『————元ヨリ、私ハソノ為ノ存在。ココカラノ未来ハ、貴方ノ物ダ』
「……往くぞ、第四の王笏、カルロス・グリード、参る!!」
カルロスが血を零しながら笑みを作り、ついに最後の戦いが始まった。
●
「まずは目晦ましっす!!」
衣更着のテングリーフから大量の煙が発生し、メンカルやレンカの機体ごと自らを煙の中へ隠していく。視界の遮り、未来予測に対しては確かに有効ではある。
「だが、既に煙の前に多数のドローンの撮影は終わっている。そのデータでも十分汝らの未来は……む?」
弾きだした未来予測に怪訝な顔を示すカルロス。そしてそれを余所に、煙から飛び出してきたのは2機のキャバリア。巨体の迫る様は、まさに圧巻。重厚な足音を響かせ駆けてくる様は敵を十分に威圧する、はず。だがカルロスはなんら動じず、静かにレーザー砲を構えた。
「愚かな。未来予測は汝らの動きから算出し導き出す。故にだ。未来予測には存在しない上、データともズレのあるその存在は……まやかし!」
カルロスがレーザー砲を発射。それが煙の中に潜む何かに命中。すると、接近していた2機の姿がまるで朧のように消え失せる。そして、少し晴れた煙の中から、レーザーで撃ち抜かれ、バチバチと電流を迸らせる本物のテングリーフの姿が現れる。やがてテングリーフが膝を付くと、その機体が爆発を起こし破片が舞い散る。
「この程度では未来は変わらぬ。さて、残るは小娘とあと1機……」
「うあああああああ!!!!」
煙を突き抜けて現れたのは、レンカの序号機。今度は紛れもない振動を伴った足音。それがカルロス向けて一直線に突っ込んでくる。
「破れかぶれの特攻……とは断じまい。さあ、何をして見せるか!」
カルロスは動画撮影を続行しつつ、序号機向けてアームキャノンを連射した。どれもが未来予測に基づく不可避の一撃。その筈だった。
『未来予測微小変化――類似パターン、先ノ鳥ノ猟兵!』
「瞬間思考、あやつもか……!」
レンカはアンサースーツを身に纏い、手足とほぼ同じレベルにまで序号機と挙動を同調させている。そして先の者と同じ様に瞬間思考を繰り返しビームの後から挙動を修正しギリギリの所で回避をする。その動きは無理矢理さを表すように前転後転を行っているようにさえ見える。
「く、ああああっ!!」
そしてビームを縫いジャンプすると踏みつけの体勢で落下して来ようとする。それはカルロスへの直撃コース。
「だが調子に乗り過ぎたな!アレに比べれば汝の瞬間思考、粗が多く読めやすい!」
『瞬間思考パターン、データインプットーー未来予測完了』
カルロスとて同じ轍は踏まない。瞬間思考を繰り返すのならばそれを計算に組み込む。多数のドローンの撮影データはそれすらも可能にする。
「空中ならばもう逃げ場はあるまい!」
カルロスがレーザー砲をレンカ向けて発射する。序号機は咄嗟のように左腕とスナイパーライフルを盾にする。だがそれはカルロスの計算内。
「無駄だ。我がレーザーは切り裂き、そして貫通する!」
何かがちぎれる音がする。それは、序号機の左腕が切り裂かれる音。そして先の通り、レンカと元が巨人である序号機の神経は同調している。そして、それは痛覚もまた同様。
(ア、グ、アアアアアァアアアアアア!!!アアアアアアアアア!!!!)
瞬間思考を全開にしていたが故に、一瞬の間に激痛がまだ無事な自身の腕からレンカの脳へと襲い掛かる。そして同時に瞬間思考する。レーザーはまだ死んでおらず、このままなら序号機の胸を貫き、レンカにも致命傷レベルのショックを脳に与える事になる、と。だがここから何ができる。どうしようもない。普通ならそう。諦め、自分の命をこう、神を呪う。だがレンカに過ったのはどれでも無かった。それは、この後の世界。フォーミュラを倒せず、この世界に今いる人々が逃げる事も出来ずに何かに呑み込まれて消えてしまう、そんなイメージ。それは、自分の死以上に、嫌だった。
(僕がどうなったっていい…でも、皆は…皆だけは…絶対に、助けるっ!!)
その少女の意志が、絶死の未来を覆す。
もたらされたのは胸を貫く無残な音、ではなく、レーザーが何かに弾かれる音だった。
【ウオオオオオオオオオオオオ…!!】
「なん、だと……!?」
カルロスが見た物。それは、腕を切り裂いたレーザーがその切断面を横切り終わるその刹那、切断面から光でできた盾のような物が出現し、レーザーを間一髪で防いだのだ。そして序号機が咆哮する。まるで獣のように、それまでとまるで違う動きで。これが【偽神化第1形態(アウェイキング・ファーストフォーム)】。片腕を失う事を代償もしくはトリガーとし、その能力を解放し高める。腕に攻撃を受けた事で先制の時間を凌ぐ時間が満ち、寸でのところでUCを使用する事が出来た。これもまた瞬間思考によるもの。そして解放する能力の1つが、心の壁を放つ攻撃。
【ウオオオオオオオオオオオオ…!!】
「くっ!」
タイミングを揃えれば防御、だが撃ち放てばそのまま砲弾となるそれを序号機はカルロスへと次々に撃ち放つ。それを回避する様は、どう見ても未来予測によるものではなく彼の自力によるもの。なぜなら
『未来予測、ドレモ計算不成立――先程マデト動作データガ違イスギル!』
「暴走の入った形態……ならば、先程までのデータが使えぬのも当然か。だが……!」
距離を取った所でカルロスが再びレーザー砲を構える。貫通と切断、この砲撃ならばあの盾ではもう2度までは防げない。序号機は既に地に降りたち、ドローンに喰いかかるように襲い掛かっている。暴走していてはカルロスを優先もしていないか。だがドローンが破壊されてもカルロスには痛くはない。隙を晒すならば未来予測も必要はない。
「今度こそ、死ぬがいい!」
そしてカルロスが引き金を引き絞る――。
(今っす!!)
それこそが、彼が待っていた瞬間だった。
まだわずかに残っていた煙の中、そこから狸の意匠を持った忍の青年が飛び出す。彼こそが、家綿・衣更着。先程破壊されたテングリーフの搭乗者である。彼は煙を撒いている間に既にキャバリアから脱出しており、キャバリアの幻影を出した後に煙の中に潜んでいたのだ。
(未来予測が捕捉したデータから挙動を割り出すタイプなら、機体と煙の中にいてずっと出てこないでドローンに捕捉されなければ未来予測はできない筈っす!すまんテングリーフ、隙を作る犠牲になってくれっす)
囮にする愛機に謝罪しつつ、ある仕掛けを起動させつづけながら傍を離れ、ビームで撃たれ沈む愛機の姿に、絶体絶命のレンカの姿にも耐えてここまで待ったチャンス。カルロスの注目が完全に序号機に集中した今ここで、彼は試作魔剣『空亡・蒼』の妖力を全身に纏い、彼は煙の中から高速で飛び出した。そして全てを切り裂く力を纏った刀がカルロスを――
「やはり、ここで仕掛けたな?もう1人のパイロット」
序号機に向いていた筈のレーザー砲が、瞬間に衣更着を正面に捉える。驚いた彼にレーザーを放ちながらカルロスが答える。
「誰か乗っていたにしては妙だったのでな。煙に乗じて脱出し、残った小娘と二人で襲ってくると踏んでいた。だが未来予測ではあの小娘は煙の中で今まで全く動かん。だから残った1人が、来るならここと踏み、ドローンの撮影地点を我の周辺に集中させておいたまでだ。後は貴様を捕捉するだけの事。詰めが甘かったな。先の為にも、ここでどちらも狩らせて貰う!!」
そしてカルロスのレーザーが衣更着の身体を穿ち、同時にアームキャノンから放ったビームの連続がメンカルの未来予測位置へと叩きこまれた。彼女は衣更着と違い、その姿がドローンに煙に紛れる前に捉えられている。彼女の未来予測の位置に狂いはない。これで終わり、とカルロスは確信した。
「そうっすね。アンタならそこまで読んでいる、って信じさせてもらったっす」
レーザーが命中するその瞬間、奇術のように衣更着の姿が身代わりの人形へと姿を変える。そして祟り縄でできた人形はレーザーに貫かれあっという間に炎上する。
「な、にぃ!? ガッ!!」
驚愕したカルロスに、燃えた人形から呪詛が現れその身に襲い掛かる。未来予測のしようがない呪詛には抗えず、カルロスの動きが止まる。
そしてその前に、再び煙から現れた衣更着が刀を構える。
「汝、いったい、何を……!幻では無かった、先程までの汝は本物だった筈…!」
「ええ、確かにさっきまでのおいらは本物っす。でもね、おいらの身代わり呪人形「空蝉君」はおいらが攻撃を受けた時入れ替わるってのが呪詛の1つとして組み込まれてるっす。だから、おいら自身の動きなんて関係なく、おいらが攻撃を受けた時点で煙の中に隠しておいた空蝉君と入れ替わる。流石にこんなのは未来予測できないっすよね?おいらは衣更着、騙しの達人、化狸忍者っす。未来なんてそう簡単に読ませないっす!」
衣更着が自身の身体で防御や回避をしたのなら、そのデータで未来予測が出来る。だが、彼は何もせずにその身体が煙に消え失せる、というのはこのカルロスの未来予測では導き出せない。妖怪ならではの奇想天外な装備ならではのトリックだった。
『バカナ、ソレデモ、ソレデモ……!』
「それでも、納得ができん……!未来予測ならばもっと汝らの動きを掴めた筈。あの機体とて腕で防御など赦しもしなかった。何か、何かが少しずつ狂っている……!」
「その答え、教えてあげる…」
カルロスの疑問に答えたのは、やっと煙から現れたメンカルだった。その周りに展開していた術式障壁と布状にしたアリアドネで先の攻撃を防いだようだ。
「無事だと……ばかな、その程度で防げる筈は……!」
「ここで、お前の前に現れた時から…もう…光学・電子的な迷彩術式を用いて私や周囲の情報を…気付かないほど…ほんの僅かにずらして認識させてたのよ……勿論、ドローンの撮影データにも」
「ただしおいらのテングリーフだけは囮っすからそのままで、乗ってたおいらにやってもらったっす」
眼鏡を直したメンカルが続ける。
「…正確無比な未来予測には正確無比な情報が必要…それが少しでもずれれば…数多の要素が絡み合う未来予測は大きくずれ…蝶の羽ばたきは嵐を起こす…」
「更においらのテングリーフ、実は煙と一緒にジャミング粒子を放出させていたんっす。倒れた時もそのままっす。そして姐さんの電脳魔術でジャミングを強化して、ドローンの映像を少しずつ更に狂わせてったんっす!」
「…姐さんは、やめて…」
衣更着の三下口調にメンカルが戸惑うようにそっぽを向く。その様子にカルロスは在りし日の妻を思い出し、苦笑する。
「成程…先の未来予測位置も大きくずれ、汝はその余波を防ぐだけで済んだという訳か…」
「そういう事…」
諦めたような様子のカルロス。だが――
『マダダ……マダ終ワッテイナイ!未来予測ハマダ可能!再計算ヲスレバ、次コソ』「許すつもりは…ない。【空より降りたる静謐の魔剣(ステイシス・レイン)】」
高速で未来予測を叩きだそうとした白騎士の鎧へと、刹那に虚空から現れたかに思えた氷の剣が次々と突き刺さる。そして突き刺さった個所から凍り付いていき、カルロスの身体を身動きが出来ない程に氷漬けにしていく。
『ガ……透明ニシテ、既ニ、包囲サセテイタ、ノカ……魔女、メ……!』
「それ、褒め言葉…」
「ふ、そうだな……」
「さあ、そろそろ終らせて貰うっす……【魔剣憑依・神斬りの一閃(ソラナキツルギ)】!」
そう言って衣更着が今度こそ刀を奮う。
「メロディア……遺す汝の為にも、1人でも葬りたかったが……すまないな」
最後の言葉を紡いだカルロスの首を、全てを切り裂く刀が一閃。首が舞い飛び、無機質な床へと落ちて転がった。
「……最期に女の名前とか、言うんじゃねえっすよ。後味悪い……」
「……侵略してきているのは、アッチ……気にする事は、ない……」
苦い顔をした衣更着に冷静に声を掛けるメンカル。凍り付いたままの首なき白騎士の鎧の骸を背に、まだ暴れている序号機を静止に向かおうと――――
『サセルカ、猟兵イィィイイイイイイイイイ!!!!』
それは、誰にも予想していなかった未来だった。首が無くなったカルロスの身体が、鎧から異常な熱量を放出する事で無理矢理氷を溶かし、そしてジェット噴射で2人目がけて光剣を抜き突っ込んできたのだ。その予想外の挙動に、振り向いた2人も反応はそこまでだった。
カルロス? いや、彼はもう死んでいる。なら、誰があの身体を動かしている……いや、もう答えは1つしかない。
(『白騎士の鎧』が、自分で無理矢理カルロスの骸を動かしてるんっすか……!?そんな、バカな……!)
(不可能な話じゃ、ない。鎧の構造次第なら…AIが自分で身体を動かす事も不可能じゃない……でも今まであった仕様じゃ、無い筈……!)
『私ハ白騎士自身デハ無イ!彼ノ為ニ生マレタタダノAIダ!だが、だかラコソ、彼の、私をここまで信じ共にいてくれた、彼の遺志を代わりに為す! 機構も限界も全て越える! お前達を、彼の代わりに殺せれば、もうそれでいい!! 死ねえええええええええええ!!!』
異常なまでの超高速度。それはもう呪人形を使ってしまった衣更着にも、防御術式も僅かに間に合わないメンカルにも対応できない程。光剣は過たずに2人を捉える。AIを越え、合理を越え、此処に至り心を得るまでになったその異常な動きは、誰にも予測が出来なかった。
たった一人を、除いて。
「目標をセンターにロック――撮影機能強化からの限定的予測、完了――」
それは、ドローンを全て壊滅していた序号機。序号機は捕食融合でドローンの機能を取り込み、その動画撮影機能を獲得。それで氷漬けになっていたカルロスから異常な熱量を感知。何か動くと予測し、正気を取り戻したレンカが操縦を取り戻し、瞬間思考により白騎士の鎧の動きを予測したのだ。そして、左腕から回収したスナイパーライフルを構える。
そして捉える。主の骸を動かし、その意志を果たさんと仲間に襲い掛かるAIの鎧を。レンカにもその情動は伝わってくる。だとしても。
「僕だって、僕だって、誰も殺させたくなんてないんだよ!!!」
それは、仲間を守る為に引き金を引く彼女の指を止める事は無い。
放たれた荷電粒子砲は、白騎士の鎧が二人に届く前に、その身体を完全に光に飲みこんだ。過たず全身。今度こそ、何も動かせないほどに焼き尽くす。
『カルロス…………未来は、貴方の未来は、私が、私が……』
その言葉を最後に、白騎士の鎧は焼け焦げ、光の中に消えていく。
●
こうして未来を越えて、第四の王笏は討ち果たされた。
同室内から、彼が支配していた島の1つの座標が見つかり、同時に防衛を解除するコードも入力を完了。また1つ、新たな島を猟兵は得て、海図を更に広げる事が出来る。
そして無機質な部屋からは人が消える。残されたのは、焼け焦げ破壊された戦闘の後。
その片隅に、彼の鎧の白き破片が残っていた。
それは二つの欠片が重なり、寄り添うようにも見えていた――。
●我、王笏と共に在る白き騎士鎧
大成功
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