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羅針盤戦争〜わがまま王女の水着ハント

作者：星野ユキヒロ

「この島はベルちゃん様のバカンス用の別荘にするのじゃ～！！　なんじゃお前ら水着着とらんのか。せっかくの海なのにもったいないのう」
　突如現れた水着の少女は冗談みたいなことを冗談みたいな恰好で言うが、決して冗談ではない。少女は我儘王女ベルベット。「七大海嘯」麾下の精鋭である。
　ここはアックス＆ウィザーズから落ちてきた、通称「手斧島」。手斧のような形をした島で、ご多分に漏れず海賊の根城になっていた。海賊たちは急にでかいイカに乗って現れた小娘に反発しているが、長年の海賊の勘で気が付いていた。
「この敵は、ヤバい！」

●「皆サン、お疲れ様ヨ。皆サンの頑張りのおかげで順調にコトは進んでいるようネ」
　集まった猟兵達を見回したロバート・ウォン（東方妖怪の猟奇探偵・f30564）は語りだした。
「今回皆サンに向かって欲しいのは手斧島という島ヨ。アックス＆ウィザーズから落ちてきた過ごしやすい島ネ。そこに我儘王女ベルベットが襲撃して来ているヨ。元は魔法の国のお姫様だったようネ。子供に見えるけど見かけによらず、めちゃくちゃ魔力を持ってて強いヨ。普通に倒すのは難しそうだケド、現地の海賊たちと協力して戦えば勝てないこともないと思うネ。なんでも、この娘水着が大好きで集めてるらしいネ。水着以外の物にはあんまり食指動かないらしいアル。だから水着で気を引いて油断したときにズドンでいいんだケド、海賊たちは別に海で泳ぐのにわざわざ水着とか着ないカラ、気を引けなくて困ってるみたいネ。海賊と協力すれば有利にコトを運べるから、倒してやっチャイナ」
　そう言うと、ロバートは転移の準備を始める。
「王女、男性用の水着も全然興味あるらしいカラ、老若男女問わず行ってもらうといいとウォンさん思うヨ」
　世の中にはいろんな蒐集癖ってあるよネ、とロバートは苦笑いをした。

第1章 ボス戦 『『海を満喫』我儘王女ベルベット』

POW   :    ベルちゃん様の言うことを聞くのじゃ！ 自身の【海の魔物を操るレアアイテムに込めた魔力】を代償に、【海の魔物クラーケン】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【無数の触手】で戦う。 SPD   :    ベルちゃん様の水着姿に見惚れるのじゃ！ 装備中のアイテム「【全てのダメージを反射する水着】」の効果・威力・射程を3倍に増幅する。 WIZ   :    あれもこれもベルちゃん様に寄越すのじゃ！ レベル分の1秒で【海に関する装備（主に水着）を奪い取る魔法】を発射できる。 イラスト：リタ 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「なんじゃあ、海賊どもというのは水着も着ないで、泳ぐときはどうしているのじゃ？」
「は、裸か服着たままに決まってんだろー！！」
「なんじゃと！？　蛮族の振る舞いではないか！　まあ良い、水着がないというのなら予定通りこの島をいただくのみじゃ！！　覚悟せい！」
　まってまって！　もうすぐ水着来るから！！　その侵略、待って！！












　手斧島についた猟兵たちは、浜辺で王女と戦いこりゃ敵わねえと逃げかえってきた海賊たちと鉢合わせ、協力の意思をしめすと臨時の作戦会議が始まっていた。
「……水着取られるんなら好きな人にがいｒｙ、わー変態な敵だなー困ったなー（棒読み）くっそ、私……小さい……のに、何好き好んで水着なぞ……」
　小声で感情を爆発させているのは鈴木・志乃（ブラック・f12101）。大丈夫。君はとても素敵だ。
「海賊さんも水着着てね」
「えっ、海の男は泳ぐときにわざわざ水着なんぞ着ないが……」
「は？ 　まさか着ないとか言わないでしょ？ 　命かかってんだよ？　あんなでも一応コンキスタドールだからね？　ほらビキニ、紐、フィットネス用の半袖タイプもあるから。ね？」
「奇しくもにぃなちゃんの海賊服にぴったりって感じだね☆　とゆー事で海賊さん達も水着着て、皆であの子の気を引こう！　にぃなちゃん的にはマッチョな海賊さんに着て欲しいぞ☆」
「なるほど、なるほど☆水着で気を引いたらいいんだネ！　でも残念！　らきちゃん☆　はアイドルだからネ！　そう簡単に肌は晒さないんだよ？　て　こ　と　で、海賊(おっさん)に水着を着せて気を引くしか無いネ！　スク水、ビキニ、ハイレグ……あっコラ逃げちゃダメ☆」
　もともと海賊ルックに水着のようないでたちのニィナ・アンエノン（スチームライダー・f03174）ととても煽情的な布切れをうきうきと取り出す怨燃・羅鬼（怒りの心を火に焚べろ・f29417）。取り出された水着のファンシーさにあわてて逃げ出そうとする海賊もいたが、でっかく固いファラリスの雄牛を地面にズドンと叩きつける羅鬼を見て、恐怖ですくんで大人しくなった。
「麦わら帽子も合わせるといい感じ？　お化粧もして……もう！　そんな顔しない！　アイドルなら笑顔☆　笑顔☆」
「あらぁ、ほんとに？　海賊さん達着せ替えしてもいいのぉ？　私これでもモデルなの、水着なんて何着でも貸せるわよぉ♪　着てくれるわよね？」
「あ、え？　お、おお……」
　すでにメイクアップを始めている羅鬼を見て、おしゃれなビキニとパレオをすでに着込み、海賊の胸板を人差し指でくりくりとしながら誘惑する栗花落・深香（暴走おねーちゃん・f03474）。生のグラビアモデルの魅力に真っ赤になる割と純情な海賊に深香はどことなく可愛い水着を手渡す。
「男性が着ても勿論いいわよ？　可愛いは正義だもの♪」
「水着、ですか？　いちおうもってはいますけど、こんなのでもいいのかな？」
「ヤな予感……水着着用って言われたから着たっすけどやっぱり慣れない……」
　可愛いクリーム色のワンピース水着を取りだす菫宮・奏莉（血まみれ勇者・f32133）と、女物の水着を着たものの落ち着かずもじもじしている久遠・翔（性別迷子・f00042）
「な、なあ、こんなかわいい子達が頑張るのに俺ら海の男が頑張らないのはちょっと逆に恥ずかしいんじゃないのか？」
「そうだな……しかし恥ずかしがってるお姉ちゃん可愛いな……守ってやりてぇ……でも、これを俺らが着るとなるとなあ」
（翔さん、わたし、このあいだ看護師さんに『必殺の上目遣い』というのを教わったのです。お願いごとをするときに使うとすごく効果的なのだそうです）
（本当っすか？　じゃあ一緒にやってみるっす）
「お願いします、男物の水着も用意がありますので」
「俺たち、頑張って戦うのでこれで隙を作って欲しいっす」
「きゅ、きゅん……」
「と、ときめき……」
　上目遣いでうるうると瞳をうるませ水着を差し出す二人に、渋っていた海賊たちも思わず受け取ってしまう。これで説得は完了。水着に着替えて戦いに赴くのだ。

ーーーーーーー

「おーい！　誰もおらんのか！　まったく！　王女をいつまで待たせるつもりなのじゃ！？　もう上陸するぞ！？」
　ちょっと待ってろと海賊に言われ、律義に待っていたベルベットはもう我慢できなくなっていた！
「おまたせごめりんこーっ☆　というわけで王女様☆　この夏のトレンドになるファッションショーだヨ！　ムサイ男たちが可愛い格好で着飾るってギャップ☆　マジヤバ！」
　メガホンを手にした羅鬼の声が響くと、水着眩しい猟兵たちとむくつけき海賊たちがわっと浜辺に躍り出す！
「むほ！　水着じゃ！！　海賊ども！　やればできるではないか！！　しかしよい水着ばかりじゃのう！　あれもこれもベルちゃん様によこすのじゃ！！」
　色めき立つ王女ベルベットは水着を脱がす魔法を次々と打ち出す！　水着を奪われ浜辺にまろびでる胸毛！　具！　海賊たちの黄色い悲鳴！
「らきちゃん☆　の魅力でみんなの心をゲット！　だネ！！」
　そして逃げ惑う海賊たちに紛れてすでに攻撃を始めている羅鬼。

「作戦どおり、ですね。この隙に攻撃すれば……ベッドで鍛えた腕、今こそ、です！」
　水着剥ぎに夢中の王女をスリングショットカタパルトで狙撃する奏莉。
「なんじゃ？　なんかぺちっとなったのう！　むむ、その清楚な水着！　よいの！　よこすのじゃ！」
「あれ？　あまり効いていません？　って、はわわわわっ、み、水着、返してください－！？　医療安全管理チームの皆さーん！！」
　水着を剥がれた奏莉は慌ててチームを呼び出し、壁になってもらったので少女の裸が衆目に晒されるのは阻止された。

「全く、ここをヌーディストビーチにでもするつもりかこの野郎」
　ワンピース型の水着は奪われたが、丈長めのパーカーを着ていたので事なきを得た志乃。しかしかなりギリギリだ。むにょむにょと蠢くクラーケンの動きを見切り、光の鎖を念動力操作、縛り上げ高速詠唱で爆破。見回すとほとんどの水着が剥ぎ取られているので、幻想であらたな水着を創り出すことにする。
「この変態め……今一時銀貨の星を降らせる、世界の祈りの風よ」
「おお、あっちにも新しい水着じゃ！　待ってろよ！」
　幻想の水着に囚われる王女に志乃はさらなる追撃を行った。

「うまく狙いが分散できているわねぇ、きゃっ、えっち☆　なぁんて。ノリでやっておいたけど恥ずかしさには耐性があるの。でなきゃグラビアなんてできないものね。でも、ちょーっとおいたがすぎたようね王女様」
　深香の装備が無数の鈴蘭の花びらに変わり、広範囲を攻撃した。光り輝く裸身は堂々として、モデルとしてのプロ意識が美しい。
「取ったものは返してね？　お子様にはビキニは早いわよ」

「にぃなちゃん軍団集合完了！　とつげーき☆　あっ、無人機は海賊さんたちやにぃなちゃんを吹き飛ばさないように気を付けてねーっ！」
　ニィナが呼び出した無人の自律稼働式キャバリア、にぃなちゃん軍団がクラーケンの脚を攻撃する。
「一本ずつならクラーケンのでっかいゲソだって焼きイカにし易いんじゃないかな？　って、わっヤバいね！？」
　逃げようとしたニィナの脚に巻き付くゲソ。危機一髪と思われたが、無人機がゲソを攻撃したため助かるニィナだった。

「王女様が夢中になっているあいだに……俺は後ろから……わっ！　わーっお約束！」
　抜き足差し足で後ろから迫っていた翔は、ヤッパリというべきかイカゲソに絡まれ吊り上げられた。
「なんじゃちょこまかとうるさいのう。お前の水着もベルちゃん様のものじゃ！」
「いやーっ！　水着取ったらだめっす！　うわっ！」
「ひゃっ！」
　イカゲソのぬるぬるで滑って、王女に向かって体ごとダイブしてしまう翔。
「こ、この無礼者！　早くその水着をよこすのじゃ！」
「ちょっ！　それ乳首っす！　取れちゃう！　乳首取れちゃう！！　あひん！」
　クラーケンの頭の上でぬるぬるキャットファイトを繰り広げる王女と翔。無自覚の誘惑術の影響で二人の息は艶めきを帯び始めている。
「くっ、屈辱じゃっ」
「んっあっ、ふっ、く」
「おい、あそこ、何やってんだ？」
「うわ、よく見とこ」
　突如始まったぬるぬるレスリングに目を見張る海賊たち。羞恥心を煽られた翔の攻撃力はいや増していき――。
「もー、離してっす！！」
　使役術で王女の拘束を解いた翔は脱兎のごとく逃げ出したのだった。


　

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　浜辺で繰り広げられる乱戦の一方で。船で海からの参戦を試みる者たちもいた。
「全ての攻撃を反射する水着とか、ビキニアーマー界隈に戦慄が走るね……」
『どんな界隈それ』
　王女のデタラメな特性におののくセフィリカ・ランブレイ（蒼剣姫・f00633）。すかさず突っ込むのは相棒の魔剣シェル姉だ。
「水着を狙う王女様って、大分ヤバイ性格してるね……女の子の被害が増える前に、アタシが何とかしないと」
「……とんだ変態王女ってことじゃない。まあ相手に合わせるこっちもという気がするけど。いつも下着の代わりに水着着てるから普段と変わらないし、いいか」
　使命感に決意を新たにする星川・アイ（男の娘アイドル風プロゲーマー・f09817）と冷静なコメントを残すラモート・レーパー（生きた概念・f03606）。
「私は攻撃が苦手なので……水着を脱がせてくる敵達の囮になっている内に、海賊さん達に敵をやっつけて頂く。そう言う作戦で行きますっ、よろしくお願いしますっ」
　ちょっとほっとけない雰囲気の桜沢・のどか（桜の精のパーラーメイド・f27124）に、この娘をエッチな目で見ていいのかそうでもないのかなけなしの良心がうずく海賊たちがうんうんとうなずく。
「ベルちゃん様、わがままはそこまでです！」
　そんな中、船の舳先で去年のコンテストで来た黒のマイクロビキニを着て王女をおびき寄せようとするアリスドール・トゥエルブ（ロ○コン殲滅するドール・f12300）。ほぼ裸同然の水着を海賊たちに見られて、なんかいろいろ限界だ！

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「なんじゃおまえらは！　新手か！？　新しい水着ならまた奪うまでよ！」
　アリスドールに向けて水着を奪う魔法を撃ってくる王女。その魔法が着弾する瞬間、ミレナリオ・リフレクションで相殺！　二人の水着が同時にすぽんと相手の手の中に！
「んきょわあああああっ！！！？　い、いや、変な悲鳴あげちゃったけど奪った水着はこっちのほうが大きいです！　か、海賊のみなさん、今です！！」
（偶然とはいえ、美少女の水着が手にはいっちゃったぁ……）
　奪った水着を不可抗力とばかりにいそいそと着込みながらもにへら、といけない笑いを漏らすアリスドールだった。

「去年の夏、水着コンテストを駆け抜けた青いビキニ……テーマはあなたのヒロイン、だったりしてね！」
「ならそれもよこすのじゃ！」
「まあ取られたら意味ないんだけど！　恥ずかしい～……」
　水着を取られたセフィリカは頬を赤らめ、体をかばい、震える瞳……。
「なんて思わず恥じらっちゃったけど！　ノルマは果たした！　サービスシーンはここまで！　きて、スプレンディア！」
　半ばやけくそめいて叫ぶと紫水晶の戦姫を呼び出し乗り込むセフィリカ。
「専用スーツ着てないからちょっと効率悪いけど……無敵の水着が覆ってないところを狙い撃つよ！」
　よーく狙って、火雷ノ禊を繰り出した。

「ひゃ、やぁん、やめてください」
　攻撃が苦手なので囮になる――。そう言って甲板でうねる触手のクラーケンから逃れようと奮闘していたのどかだったが、奮闘むなしくぬるぬると巻き付かれてしまっていた。
「お話、お話をしませんか？　ねっ？」
　頑張って心に呼び掛けているのだがどうにも話を聞いてくれないクラーケンに涙目になるのどか。そんなのどかの痴態に心配やら気が散るやらでチラ見どころかガン見してしまう海賊たちにとうとうのどかは恥辱の叫び声をあげる。
「や、やだぁっ！こっちばかり見てないで、やっつけて下さいよーっ！」

「ほら！　王女様！　セクシーシェル水着のアタシを見て！　魅力的でしょ！」
「む、本当じゃのう！！　それもよこすが良い！」
　のどかにならって自らを囮に王女の目の前に躍り出るアイ。その間に海賊たちに攻撃させようという作戦だ。
「やばっ、もう水着取られた！？　でもこれも作戦のうち！」
　アイは中に着ていた触手ビキニを展開して王女を捕縛。
「うおっ、離すのじゃ離すのじゃ！」
「これがアタシの推しゲーキャラ！　さぁ、一緒に行くよ！　ステラ！」
　ステラは弾幕で攻撃しながらアイに笑いかける。
『あはは☆　アイも災難だね☆』
「う、うん。だから、あとで水着も取ってきて……」
　アイちゃんのアイちゃんがこれ以上見えちゃったら大変だからね。

「恥ずかしくはないが、胸が揺れて戦いにくい」
　戦いの中ですでに王女によって水着を奪われたラモートは顔色一つ変えずに黒剣を変化させた槍を構えて迫る。
　この混戦の中でも水着に対する執着からか、すでに新しい水着に着替えていた王女の肩ひもを狙って――。
「斬った」
「むお！？」
　肩ひもだけがが切れて驚く王女の隙をついて、海賊の大砲がどぉんどぉんとクラーケンを揺らした。
「むむぅ、邪魔な虫けらどもめ！」
「そんなことない。海賊たちはよくやってくれてるよ」
　王女の攻撃が海賊船へ向かう。ラモートは海賊たちを助けるためにそれを追いかけるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　すでに今大暴れしている海賊たちの後から戦いに参加しようとしている別の島から帰ってきたばかりの別動隊の海賊たちは混乱していた。仲間たちがあられもない格好でかわいい女の子（男の子もいたがそれはそれとして）たちも混じって大イカと戦っているのである。
「と、言うわけで、みんな自分が囮になって隙を作りながら強い敵と戦ってるの」
「それで、あの水着なのか？」
「好みにツッコミは野暮だとは思うけど、尖ってるね！　しかも『男女問わず』というのが素敵。水着にも貴賤なし、なのかな？　水着は偽装錬金で作っちゃえば良いよねあ、でも、わたしの水着はちゃんと用意してきたよ！　いちごさんもいっしょだもん。可愛いの着ていかないとね！」
「水着を集める趣味とか、こいつ変態さんかにゃ？　尖り過ぎにゃあ。老若男女関係なく剥ぎ取るみたいだし、そうとしか見えないにゃー。あ、私いつもの恰好だったにゃ。水着……には見えない、ですにゃねぇ」
「うわぁ、変態王女ですか。水着で注意を引くのはいいですけど、奪われたくはないですね。ビキニだと簡単に取られそうですし。学校指定のスク水で行きましょう……なんで水着取られるかもしれないのに、いちごさんが同行してるんですか？　私達のあられのない姿を見たいと？　……この、変態」
　海賊たちに事態と作戦について説明する菫宮・理緒（バーチャルダイバー・f06437）。フェリーネ・フォルス（にゃん狐・f26982）もあまり耳慣れない類の王女の習癖に首をひねるばかり。生真面目な瀬戸・玲子（淫魔にされた少女・f32112）は女の子たちの中に混ざっている彩波・いちご（ないしょの土地神様・f00301）をねめつけた。
「って、玲子さん、その言い草は酷いですよぅ。これだって猟兵の仕事なんですから……私だって水着で参戦します。とりあえず海賊の皆さんにも異界の服飾で作り出した水着を着てもらいましょう。フェリーネさんもその恰好はあれですから、この水着着てくださいね」
「いちごさん、用意してあるって？　これがいいですにゃ～」
　赤面して玲子から視線をそらしつつもフェリーネに水着を勧めるいちご。フェリーネは白のバンドゥビキニを選び取った。
「水着が好きといっても人のものを奪うのはよくありませんね。私はけっこう青いワンピース水着を下着代わりにしているのですが、上にいつものドレスを着ていれば脱がされることは無いと思いましょう」
　ルイザ・シャーロット（冷静な弓箭衛士・f27402）は水着を取られる心配はあまりしていないようだった。
「猟兵って肝が据わってんだなあ」
　まるで海水浴にでも行くかのようなはしゃぎっぷりの面々を見て、海賊たちはそんな感想を漏らした。

ーーーーーーー

　まずは数がたくさんいる海賊たちに囮になってもらおう。恋華荘の面々はそれぞれの作戦を開始した。
「おうおう、またぞろ水着がたくさん来たのう。今日は大漁じゃ」
　今までの猟兵との戦いでへたりつつも、王女の闘志はなくなっていないようだった。
「上に服を着ていても水着を奪えますか？」
　ドレスの裾をめくり上げながら、ルイザが賢者の影での質問を浴びせる。
「ん？　奪えるが？」
「えっ！？　奪えるんですか！？」
　そんな会話の間にも、海賊たちは奮闘していた。
「きゃー、！　俺のおいなりさんが！」
「順調に海賊を囮にしてるみたいだし、その間に……って、にゃー！？　私の剥ぎ取られたにゃーっ！？」
「え？　もう海賊の水着剥いじゃったの？　って、上下とも剥ぐとかダメ－！？」
「本当にもう。みんな変態。変態。ってよそ見してる場合じゃないですね、機械兵器が盾になってる間にキャノンブルームで攻撃しますよ！　海賊さん達も今のうちにドンドン攻撃してください！」
　黄色い悲鳴があちらこちらから聞こえる中、冷静に戦いを進めていた玲子だが。
「ちょこざいな、おまえの水着もよこすのじゃ！」
「うっ、しまった！　避けきれない、直撃！？　……あれ？痛くない？　い、いやぁぁぁぁぁ！　こっち見ないでぇぇ！？　水着取る魔法ってなによぉぉぉぉ！？」
　みんな取られてしまった。フェリーネのバンドゥも、理緒の緑のフリルハンカチーフビキニも。玲子のスクール水着も。そして。
「って、気がついたらいつの間にかに服の下の水着を脱がされてしまって……。しかも、服を脱がさずに！？」
　ルイザの青いワンピース水着もだ。
「海賊の皆さんの水着で引き付けてくれている間に異界の深焔で生きた炎を召喚して攻撃を……ふんぐるいふんぐるい……、遠き星海にて燃え盛る神の炎よ！　って、あれ……えっ！？　もう海賊の皆さんの水着とられてる！？　という事は……」
　いちごがゆっくりとみんなのほうを振り返ると……。
「い、いちごさん、私の全部、見ちゃったか……にゃ？　あ、後でなら幾らでも見ていいですから、今は～っ！」
「い、いちごさん、見ちゃダメ……でもないけど、2人きりのときがいいよー！」
「へ、変態、変態～！！　こんなの、こんなの～！」
「……え、いちごさんに、はいてないのをみられてしまうなんて。え、理緒さんもフェリーネさんも玲子さんも……私のお子様な股間を見たんですか！？」
「わ、わ、わあああっ！！！」
　フィリーネ、理緒、玲子、ルイザ、全員のあられもない姿をばっちりと見てしまったいちご。
「皆さんもう脱がされて……色々見てはいけないものがっ。というか胸もあそこも全部見えていたり……いえ、あとからならとか二人きりでとか言われても―っ！？」
　その場で立ち尽くし真っ赤に赤面するいちごの水着が、そのままずぱんと吸い取られた。
「もう、こんな恥ずかしいことしちゃう輩は～～吹っ飛べばいいのにゃー！」
「もう許せない！　屈折率、固定……収斂！」
「海賊さんたちも見てないでどんどん攻撃してーっ！！」
「こうなったら、我儘王女を射抜いてハリネズミにしてあげます！！」
　乙女の怒りの声が島中にこだまし、それからは鬼神のような猛攻撃が続いた。

ーーーーーーー

「くっ……水着……万歳なのじゃ……」
　
　やがて大海原に、焼けたイカの匂いと燃えた水着塗れの王女ベルベットが漂う。
　かくして、ポロリだらけの戦いは幕を閉じたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2021年02月10日