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銀河帝国攻略戦⑤~星屑乱舞

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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 黒い宇宙の中、長らく光を灯していなかった船が、輝きを放つ。
 決して大きいとは呼べず、主砲も旧型、搭載する戦闘機も古く少ない。銀河帝国の大戦力に比べれば、あまりにも軟弱と言えた。
 だから、これまでは逃げていた。光を消し、静かに息を殺して生きてきた。
「だが、それも終わりだ」
 ブリッジで、船長が力強く言った。
 そう、もう逃げ隠れする時は終わったのだ。解放軍が、再び現れたのだから。
 船長は手元のマイクに口を近づけた。船内全体に響き渡る放送で、高らかに宣言する。
「我々はこれより、解放軍に合流し、銀河帝国との決戦に参戦する! 古い船だが、戦える力は残されているはずだ。ここで死力を尽くさずして、何が宇宙の民か!」
 度重なる奇襲で命を落とした同胞がいた。耐え兼ねて小型船で脱走し、連絡の途絶えた仲間もいた。
 撤退戦の最中、敵にオープン回線で「星屑」と罵倒されたこともあった。
 その悲しい時代に、終止符を打つ時が来たのだ。
「諸君! 我々はもう、弱者ではない。弱者であってはならない! 総員、戦闘配置につけ! 進路A-22、全速前進!」
 船が回頭する。その先に見えた光に、船長は目を見張った。
「あれは……」
 間違いない。宇宙船だ。それも、かなり大きな、戦艦。
「索敵、何をしていた!」
「ワ、ワープです! 突然レーダーに……これは」
 索敵兵の顔が青ざめる。レーダーを凝視していた顔を上げ、この世の終わりのような声音で、叫んだ。
「ぎ、銀河帝国です! 敵戦艦――主砲が来ます!」
「回避ィィィィッ!」
 船長の絶叫が木霊する。船が急速な回避運動に入ると同時に、遥か遠方の戦艦から光が放たれた。
 巨大なレーザーが、船体をかすめる。振動に悲鳴が上がる中、通信兵が慌ただしく言った。
「損傷、軽微です!」
「敵戦艦から、機影多数! 無人戦闘機、来ます!」
 食い入るようにレーダーを睨みつけながら、索敵兵が再び叫ぶ。
 まさか、このタイミングで仕掛けてくるとは。苦々しい顔をしながらも、船長は再び船全体へと通信を飛ばした。
「カタパルト開け、艦載機発進! 主砲開け! 銃座は対空防御を怠るな! ようやく掴んだ希望……みすみす手放してなるものか。星屑の意地を見せてやるッ!」


「戦争だ!」
 気合いの入った声を上げたマクシミリアン・ベイカー(怒れるマックス軍曹・f01737)は、血走った目で猟兵たちを見回した。
「先の『ヘロドトスの戦い』において復活した『ワープドライブ』により、とうとうスペースシップワールドのクソどもへの反攻戦力が結集した! これを解放軍と呼ぶが、その戦力を整うのを、クソどもはみすみす見逃すつもりはないらしい! まったく反吐が出る!」
 銀河帝国は、解放軍に合流する準備を進める船を襲うべく、各宙域へ自軍の戦艦をワープアウトさせている。
 今回救出を目指すその船は、旧式の軽巡洋艦だ。戦闘可能ではあるが、装備も搭載機も古い。銀河帝国軍と真正面からやり合えば、ひとたまりもないだろう。
 そこで、猟兵たちの出番となる。
「これから貴様らを、敵戦艦の中に直接転移させる。中のクソどもを殺し、船のコントロールを奪え。仕事そのものは簡単だな。まるで三歳児のお使いだ!」
 宙域には味方軽巡洋艦と敵戦艦の他、合流を目指す船にワープドライブを搭載するため、ミディア・スターゲイザーが乗船する戦艦もワープしてくる。その援護により軽巡洋艦は多少生きながらえるだろうが、決定打にはならない。
「貴様らがいかにクソどもを始末できるかに、作戦の可否はかかっている。さて、今回貴様らが殺すクソだが、クローンの銀河帝国兵だ! クローンだ! オブリビオンのクソの分際でな!」
 冗談のつもりで言ったのかは知らないが、少なくともマクシミリアンは笑っていなかった。
「奴らは重装だ。アームドフォートを身に着け、空中戦までこなすぞ! 船内は馬鹿のように広い。奴らの機動力と火力を侮るな!」
 転移する敵戦艦は一つだが、巨大な戦艦には当然多数の敵兵が配備されている。激戦は避けられない。
「転移後は速やかにブリッジを制圧。敵のメインコントロールを奪取し、無人戦闘機を停止させろ。ついでに船のコントロールも殺せ! 同時にカタパルトにも侵攻し、脱出用の戦闘機を確保しろ。ことが済んだらミディア・スターゲイザーの船へと退避。敵船が混乱の中にあるうちに、ミディアの戦艦の主砲で沈める!」
 最優先事項は、合流を目指す軽巡洋艦に手出しをさせないことだ。全ての敵を殲滅することは不可能だが、内部で派手に暴れるほど、敵の意識はこちらに向くだろう。
 船内の破損については、考える必要はない。いかに破壊力の高いユーベルコードを使っても、外壁に傷はつけられそうにないためだ。
「貴様らの腕の見せ所だ。派手に暴れろ」
 面白そうに目を光らせて、マクシミリアンは美しい敬礼を見せた。
「宇宙のクソに地獄を見せる死神どもに、敬礼! 世界の存亡がかかっている。猟兵の名にかけて、死ぬ気で戦ってこい! ただし――死ぬんじゃないぞ!」


七篠文
=============================
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
=============================

 どうも、七篠です。

 スペースシップワールドで、戦争ですよ。
 まずはその前哨戦とでも言いましょうか。解放軍に合流予定の船が敵戦艦に奇襲を受けているので、助けましょう。

 上にもある通り、戦艦の内部はバカみたいに広く、外壁もバカみたいに堅いです。なので、何をしても大丈夫です。
 思い切り暴れて敵の目を引き付けつつ、ブリッジとカタパルトに攻め入ります。どちらかを指定してくれてもいいですし、指定がなければこちらで割り振ります。
 偏った場合は、申し訳ありませんがこちらで変更させてもらうかもしれませんので、ご了承ください。

 脱出の描写は特に必要ありません。戦闘機は自動操縦できるっぽいので大丈夫です。

 戦闘終了後、皆さんはミディアとともに軽巡洋艦へと赴き、ワープドライブを搭載後、共に解放軍のもとへと合流することになります。

 思いっきり派手に! とにかく好きに敵をシバき倒してください。よほどのことがなければ採用します。

 それでは、よい戦争を。
 皆さんの熱いプレイング、お待ちしています!
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第1章 集団戦 『クローン重騎兵』

POW   :    インペリアル・フルバースト
【全武装の一斉発射】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    コズミックスナイプ
【味方との相互情報支援】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【狙撃用ビームライフル】で攻撃する。
WIZ   :    サイキッカー拘束用ワイヤー
【アームドフォートから射出した特殊ワイヤー】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

須藤・莉亜
僕はカタパルトで脱出用の船の確保でもしようかな。

んでもって眷属の腐食竜さんを召喚、彼に暴れてもらおう。

彼には爪での引っ掻き、噛みつき、体当たり、尻尾でのなぎ払いなんかで攻撃してもらう。
デカイ咆哮でもしてもらって、敵の勢いを殺してもらっても良いかも。

僕は彼の攻撃で出来た隙をついて、対物ライフルのLadyに血をあげつつ、ちまちま撃っときます。

ヤバそうだったら時喰らいを使って緊急回避を試みる。


「バラバラになりたい人から来ると良いよ?来ないならこっちから行くけど。」


バーソロミュー・スケルトン
ガハハハッ!なかなか懐かしい古参の船じゃな。お互いここまで生き残ってきたんじゃ。共に大暴れして、銀河帝国のクソどもをぶっ潰してやろうじゃねぇか!

敵を見つける端から攻撃していくぞい。
遠くの敵には両手の黄金砲・黄金銃の銃撃を、
近くの敵は黄金砲で殴り飛ばしたり、
巨体と重量を活かして踏みつぶしたりと、思うさま暴れてやるわい。

暴れまくって敵の注意を引きつけ、群がってきたところで
フルバースト・マキシマムで一掃してやればクソどもの焼却完了じゃな。

アドリブ・改変OK


トリテレイア・ゼロナイン
銀河帝国…記憶はありませんがかつての同胞とも言える相手との大規模作戦、宿縁じみたものを感じます

ですが力なき人々を守るため、宇宙を駆ける騎士として立ち塞がりましょう

私の巨体ではブリッジでは不利、カタパルトの制圧に向かいましょう

まずは重騎兵の排除です。センサーで攻撃を「見切り」つつ「盾受け」「武器受け」で防ぎ、味方を「かばう」ことで援護します

拘束用ワイヤーは味方に使われれば厄介ですが、そのワイヤーと繋がれている重騎兵にとっても弱点となります。「怪力」でワイヤーを引っ張り、移動を制限しながら隠し腕を放ったり、「スナイパー」技能を使って格納銃器で狙い撃ちしてしまいましょう


霜月・柊
派手に暴れちゃって良いんだね!!よ〜し敵も中々に強そうだし、やっちゃお〜雪華!
【オルタナティブ・ダブル】で雪華を呼び出して【援護射撃】、【鎧無視攻撃】で援護して貰う。柊は【先制攻撃】で敵陣に切り込み、【見切り】で攻撃を躱しつつ数を減らす。その際、ワイヤーとかが見えたら積極的に斬る様にする。
こういうの腕がなるなぁ〜。猟兵の中にも強い人いそうだし、後で声かけよ〜。


間仲・ディコ
頑張ってる人がいる。
それだけでも全力を尽くす意味があるっす!
【気合い】入れていきましょうか!

私はカタパルトに回るっすよ!
脱出用戦闘機の確保を全力でサポート!

広ーい艦内なんすよね! じゃあ存分に暴れる準備を!
戦艦内の工具やパーツ、あときらきら輝きそうな液晶なんかをちょいとお借りして、
【耀装】でフォームチェンジっす!

カタパルトでうろうろしている敵兵を【おびき寄せ】、
【カウンター】でおみまいするっす!
囲まれたって【見切り】、【範囲攻撃】で反撃っす!
私が相手っす! 遠い相手も【ダッシュ】で追い付いて殴りにいきましょうか!

そんなもんですか! 全っ然こたえませんね!
こっちの意地を見せてやるっす!!


ステラ・エヴァンズ
「戦争とは物騒ではありますが、これもまた致し方なき事。全力で臨ませていただきましょう。」

一先ずは無人戦闘機の早期停止を目標としたいのでブリッジの方でも暴れさせてもらうと致しましょう。
薙刀を振り回しまして壁、或いは床に勢いよく【なぎ払い】させていただきますね。
勿論、積極的に【気絶攻撃】も行っていきたいところです。
ですが“派手に”とご注文をいただいているので基本的には皆さんの援護に回るようにしつつこれみよがしに【UC/ ジャッジメント・クルセイド】で攻撃もしておきましょうか。

「私まだまだ未熟者なため、上手な手加減ができないのです。申し訳ございません」

※アドリブ・絡みお好きなように


エーカ・ライスフェルト
宇宙バイクに【騎乗】して我が物顔に艦内を走り回るわ
最初は敵を混乱されるのが目的だけど、敵兵が隙を晒すようなら【ウィザード・ミサイル】で一掃する

・捕まる?
サイキッカー拘束用ワイヤー、ね
私にとっては天敵だわ
サイキックの代わりに魔法を使っているだけだし
「惜しかったわね。1月前ならこれで勝負が決まっていた」

まあ正直命の危機だけど、この状況でへこたれる性格なら猟兵業なんてしていないわよ
「宇宙線やレーザーに耐える装甲服みたいだけど……魔力の矢はどうかしら」

【属性攻撃】による白い炎の矢を、私を捕まえたクローン重騎兵に撃ち込むわ
「色は白でもそんなに熱くないわ。殺意と気合いと魔力はたっぷり込めてるけどねぇっ」


アルト・カントリック
よーし!バイクで突っ込むよ!!

ユーベルコード【嬰鱗矢の如し】で宇宙バイク(ピュートーン)を変形させ、相手の想像を裏切るようなマッハ(例)で駆け抜けて近づき、そのままバイクで攻撃するよ。

僕は元々、乗り物が大好きだからね。ワクワクしちゃうな。

■嬰鱗矢の如し
●黒い大蛇を連想するようなバイクの化け物になります。
●バイク?化け物?どっち?という感じに。


匕匸・々
派手に動くのは得意ではないんだが……
まあ、悪くはない。

錬成カミヤドリで短剣を複製。
広範囲…複数体に向け念で飛ばして
『マヒ攻撃』を加えつつ、
鈍った者から短剣を集中させて討っていこう。
飛べぬ俺だが、俺達ならばそれができる。
駆けろ、駆けろ。空も地も、ただひたすらに。

敵の攻撃には『見切り』か『オーラ防御』で対処。
鋼糸で近くの敵を絡め寄せて
『敵を盾にし』て戦力を少しでも減らすのも手か。
捕縛されている仲間がいれば短剣でワイヤーを切って救出を。

次に繋げる為に、全力を尽くそう。
……簡単に蹂躙できると思うなよ。


ニィ・ハンブルビー
戦争か~
なんか実感わかないな~
まあでも、やることは変わらないね!
銀河帝国のクソどもは殴る!人は助ける!
そんなわけで……お呼びじゃなくてもボク登場だよ!

さあ突貫だ!
小さい体と羽や背中の『ウェポンエンジン』、
腰の『マシンベルト』の推進力を利用して敵の攻撃を回避しつつ、
【ダッシュ】で接近して、敵陣中央に向けて【ジャンプ】!
目にも止まらぬ【早業】で、【焦熱の強襲】をぶち込むよ!
狙うのは周囲のクローン重騎兵!
ついでに敵戦闘機に船の操作盤にカタパルトに予備兵装に…
目につく物は手当たり次第だ!焼き殴るよ!

…ホントにやること変わんないなボク!



●突入攪乱戦
『緊急事態発生。緊急事態発生。敵勢力が多数、本艦に侵入の模様。総員、白兵戦用意。各砲座、目標軽巡洋艦から違えるな。作戦は遂行する。繰り返す。作戦は予定通り遂行する――』
 館内に流れる機械的なアナウンスとともに、どこからともなくクローン重騎兵が現れる。
 否、現れたのはこちらの方だ。エーカ・ライスフェルト(電脳ウィザード・f06511)とアルト・カントリック(どこまでも竜オタク・f01356)は、それぞれの宇宙バイクで戦艦内に突入していた。
「それにしても、本当に広いね!」
 集中する砲火を回避しつつ、アルトが感心したように叫んだ。
 一方のエーカは、こちらも弾丸やビームを華麗なハンドル捌きで避けながら、冷笑を浮かべる。
「頭の中身がないことへの比喩かしらね」
「はは、言えてる!」
「……なんだか楽しそうね、アルト」
「僕、乗り物大好きでさ、なんかもうテンション上がっちゃって!」
 バイク乗りの二人が買って出た役割は、敵の攪乱だ。突然戦艦内に猟兵が現れることはもちろん、宇宙バイクを好き放題乗り回されては、敵は嫌でも注目してしまう。
「ブリッジに行かせるな!」
 隊長格らしい男の声が聞こえたが、この場の兵はすべてクローンなのだろうから、どれも似たようなものだ。
 火線は徐々に激しくなり、エーカとアルトは別行動を取ることにした。
 レーザーの熱線が頬をかすめる。エーカの頭上で飛び交うクローン兵が、統率の取れた動きで狙いを定めているのだ。
「徐々にこちらのスピードに慣れてきたわけね。なら――」
 エーカの周囲に、炎の矢が召喚される。クローン兵に動揺が走ったのを、見逃さなかった。
「今度はこっちから、いくわよ!」
 バイクのハンドルを繰りながら、右手を上げる。炎の矢が一斉に動き、回避行動を取るクローン兵を次々に射抜き、撃墜していった。
 それでも集中砲火が止むことはない。アームドフォートのレーザー砲や砲弾、レーザーライフルの熱線が、戦艦内を埋め尽くす。
 放たれた巨大なレーザーを車体を倒し滑らせて潜り、アルトは呆れた笑みを浮かべた。
「自分たちの船なのに、お構いなしなんだね」
 それだけ、戦艦が頑丈な証拠である。ならば、ブリーフィングの通り、暴れるだけだ。
「よーし! アレ、いってみようか!」
 アルトの声に呼応するかのように、バイクが変形する。
 フロントガラス周辺が駆動し、人を轢き飛ばすためにあるような棘が展開される。リアフェンダ―はうねる尾のように伸び。アルトの足を覆うように展開されたレッグガードは、バイクのシルエットをより禍々しいものに変えた。
 それは、漆黒の大蛇のようであった。明らかな殺意をもった変形を見せたアルトのバイクに、クローン兵が警戒する。
「じゃ……今度は僕の番、だッ!」
 アクセルを全開、一気にトップスピードに達した愛用のバイク「ピュートーン」は、備え付けのベンチをジャンプ台に高く跳躍。高速の質量弾となってクローン兵に衝突した。
 なす術もなく弾き飛ばされ壁に激突したクローン兵は、アームドフォートの爆発に巻き込まれて消し飛んだ。
「う、撃てェーッ! ひるむなッ!」
 飛び交う熱線がアルトのバイクをかすめていく。空中で身動きが取れないアルトへと、エーカが援護の炎を射出した。
 敵の攻撃が弱まり、着地したアルトの横につけたエーカが言った。
「無茶をやるわね。嫌いじゃないけれど」
「へへ。援護ありがと! 助かったよ」
 笑いあって、互いにバイクのハンドルを捻ろうとした瞬間だった。
 突如、エーカの体が飛んだ。バイクから転げ落ち受け身を取るも、苦痛に顔を歪めて、肩口を抑えている。
「くッ、狙撃!」
 短く叫んで伝えるエーカ。アルトはそれですべてを理解し、バイクを走らせながら辺りを見回す。
 どいつもこいつも通信しているせいで、狙撃兵に情報を送っている者の見分けがつかない。ならば、スナイパーを探すしかない。
 この状況で、こちらから隠れて狙撃できるところだ。
「……!」
 見つけた。天井付近のダクトの影だ。高いが、仕留めるしかない。
「もう一度だ。行くよ、ピュートーン!」
 再びアクセルを捻り切り、バイクが異様な唸りを上げる。最高速度で敵の死骸を踏み台に跳躍、スナイパーのもとへとまっすぐに迫る。
「う、うわぁぁぁぁッ!?」
 錯乱したスナイパーが何度もライフルの引き金を引くが、アルトのバイクにわずかな傷をつけるばかりだった。
「でりゃぁぁぁぁぁッ!」
 超高速で迫る鉄塊に、鈍重なスナイパーの回避行動が間に合うはずがない。変形した宇宙バイクともろに衝突し、一瞬で肉塊と成り果てた。
 着地し、アルトはエーカへと振り返る。そして、困惑した声を上げた。
「エーカさん!」
「ぬかったわ……」
 エーカは、空中でクローン兵に縛り上げられていた。特殊な電流が流れているワイヤーが、エーカのユーベルコードを封じているのだ。
「ちょっと、引っ張らないでよ。痛いでしょう」
 毒づいてみても、クローン兵は下卑た笑い声をあげるばかりだった。
「エーカさん、今助け――」
「動くな、猟兵のガキ! この女の命が惜しけりゃなぁ……」
 こめかみに当てられる銃の冷たさに、エーカが思わず笑う。
「ふふ。命が惜しければ、か」
「何がおかしい。笑ってんじゃねェー!」
「えぇまぁ、そうね。正直命の危機よ。一月前ならこれで勝負が決まっていた。だけど、この状況でへこたれるようなら――猟兵業なんて、していられないわよ」
 歯噛みして見守るアルトに微笑んで無事を伝えつつ、捕縛したクローン兵に鎌をかける。
「ねぇ。このワイヤー、使用者にも微々たる電流が流れているの、知ってる? それによって寿命が縮まるそうだけれど……あなたはやっぱり、クローンだから命は惜しくない口なのかしら?」
「はぁ? 適当なこと言ってると――」
「適当だと思う? あなたの手、痺れてきてるんじゃないかしら。少しずつ、じわじわと」
 こう言われると、そんな気がしてくるものだ。クローン兵が自分の手を見下ろした、その瞬間。
「取ったッ!」
 エーカは身を翻し、クローン兵の首に足を回す。がっちり固定したまま、その顔面に掌を突きつけた。。
 エーカは掌に白い炎の矢を作り出す。それはユーベルコードではなく、純粋な魔力の塊だ。こみ上げる怒りの一切を、そこに込める。
「色は白でもそんなに熱くないわ。殺意と気合いと魔力は――たっぷり込めてるけどねぇッ!」
 顔面に叩きこんだ矢が、膨張し、爆砕する。エーカを捉えていた兵士は、上半身を完全に消滅させた。
 着地と同時にバイクに跨ったところで、アルトが駆け寄ってきた。
「よかった、無事で。ごめん、僕がもっとしっかりしていれば」
「何言ってるのよ、あなたのせいじゃないわ。それよりほら、第二フェイズよ」
 火線が弱まっている。否、新たに突入した猟兵たちに慌てて対処しているのだ。いよいよ本格的に、戦艦攻略作戦が開始される。


●ブリッジ強襲戦
 戦艦の司令塔へ向かう道は、さすがに敵の守りが厚い。その中にありながら、霜月・柊(Inane Withdraw・f09791)は目を輝かせていた。
「派手に暴れちゃっていいんだよね! 嬉しいなぁ~、敵も中々強いし!」
 美しい水色の刀身が煌めく。彼女の愛刀「斬月六華」は、レーザーの熱線すらも切り裂いてみせた。
 意気揚々とレーザーもクローン兵も切り捨て駆け抜けていく柊とは対照的に、ステラ・エヴァンズ(泡沫の星巫女・f01935)は走りながら頬に手を当て、ため息をつく。
「戦争とは物騒ではありますが、これもまた致し方なき事。せめて早期の終息を果たせますよう、全力で臨ませていただきましょう」
 悲哀の嘆息を漏らしながらも、ステラは華麗な足取りで薙刀を振り回し、敵を打ちのめしていく。彼女が駆け抜けた後の兵士は多くが気絶していた。
 銃撃を潜り抜けて駆け続け、とうとうブリッジの正面に辿り着いた。しかし、その扉を何人ものクローン兵が守っている。簡単には、入らせてもらえそうにない。
 正面突破あるのみと柊が突撃を仕掛けようとしたその時、ステラが叫んだ。
「柊さん、上です!」
「えっ? わっ!」
 降り注ぐ幾本ものワイヤーに気づき、刀で切り払う。天井だと思っていたそこは、無重力化において通路として使用される空間だったのだ。
 サイキッカー拘束用ワイヤーが、柊とステラを狙う。得物を振るって切り捨てていくも、その数が、多すぎた。
「あぁっ!」
「この、やだ! 離せ~!」
 体を縛られた二人は、体から力が抜け落ちていくのを感じた。ユーベルコードを封じられてしまっては、反撃に転じにくい。
 もがく柊とステラに、入口を守るクローン兵の銃が向けられる。
「よくもやってくれやがったな。今すぐ殺したいが、貴様ら猟兵には聞きたいことが山ほどある!」
「……」
 ぴーぴーとわめく柊をよそに、ステラは静かに敵兵を見返していた。
「私たちがあなた方に話してさしあげる情報など、一つもありません」
「ほう、死にたいか。ならば死ね! 宇宙の藻屑にしてやろう!」
「いいえ。私たちは、死にません」
 はっきりと断言したステラに、銃口が集中する。しかし、引き金が引かれることはなかった。
 突如、入口を守っていたクローン兵が喉笛から血を噴き、倒れたのだ。問答をしていた兵士が狂乱し、銃をあちこちに向けている。
「な、なんだ!? サイキックか? くそ! さっきから派手にやってくれやがって!!」
「いや……派手に動くのは、得意ではない」
 柊たちの背後から、足音が聞こえる。と同時に、一本の短剣が二人のもとへ飛来し、ワイヤーを切断した。頭上の通路からも、血塗れの兵士が落ちてくる。
「だが、やれることは多くある」
 自身の器物たる短剣を無数に繰り、この場の敵兵を一瞬で沈黙して見せた匕匸・々(一介・f04763)は、淡々と言った。
 残された兵士が銃を構えるより早く、その脳天に短剣が突き刺さった。ぐらりと傾いて、クローン兵は斃れた。
 ワイヤーの拘束から解かれた柊は、一度うんと伸びをしてから、々に駆け寄る。
「キミ、すごいねぇ~! 僕、感動しちゃったよ。ねぇねぇ、あとで手合わせ――」
「しない」
「ケチ~!」
 ぶーぶーと唇を尖らせる柊に苦笑しつつ、ステラが頭を下げる。
「々さん、助かりました。ありがとうございます」
「いや……俺も遅れた身だ。すまんな」
「ねぇねぇ~、もう行こうよぉ。ブリッジに突入するときは、僕が一番ね!」
 まるでアトラクションに来た子供のようにはしゃぐ柊は、刀を握る腕をぐるぐる回しながら、舌なめずりをした。
「よ~し、やっちゃお~、雪華!」
 柊の声とともに、青白く眩い光が結集し、人の形を取り始める。それはやがて、柊と瓜二つ――どころか、まったく同じ容姿の少女となった。
 姿かたちは同じだが、その手に持つ弓と、纏う雰囲気は別人のそれだった。柊とは対照的な程に真面目そうな少女は、柊の内にいるもう一人の人格、雪華である。
「柊、あまりはしゃいじゃダメですよ。今は戦争なのだから」
「出てくるなり説教~? まぁいいや! とにかく援護、よろしくね!」
 笑いながら言って、雪華が止めるのも聞かずに、柊はロックされたブリッジのドアを切り裂き、蹴破った。
 直後、中から凄まじい火線が襲う。
「ひゃはぁぁぁっ!」
 どこか楽し気な悲鳴を上げながら、雪華は刀をもってその火線を切り払っていく。
「すごいすごい! 雪華、援護援護!」
「む、無茶言わないでください!」
 こちらは本当の悲鳴を上げながら、雪華は物陰に隠れて弓を射るタイミングを待っている。
「このままでは、埒が明かないな。さて……」
 々は再び短剣を操り、熱線の間を潜ってブリッジに突入させた。
 ブリッジから悲鳴が上がり、火線が一瞬止む。直後に柊と雪華が踏み込み、ステラがそのあとに続く。
 侵入と同時にさらなる迎撃が行われる。飛び交う熱線の中、その身に数度の被弾を受けても構わず、ステラは手を広げて指先を敵に向けた。
「派手に……と言われていますから」
 指先から放たれる天よりもたらされる輝きは、五指の延長線にいたクローン兵を串刺しにした。
 極太の光線に刺されて焼かれるクローン兵を見て、ステラはあらあらと申し訳なさそうに言った。
「ごめんなさい。私、未熟者ですから……上手な手加減ができないのです」
「加減なんて、いらないでしょ~!」
 嬉々として叫ぶ柊は、薄く輝く青い刀身を血に染めて、敵兵士をバッタバッタと切り裂いてる。もはや、どれが船長だったのかも分からない。
 雪華の弓は、科学的性能でいえば雲泥の差があるアームドフォートやレーザーライフルを相手に、一歩も劣っていなかった。凄まじい速射で、次々に敵を射止めている。
「この狭い場所に、よくもこれほど集めていましたね」
「あぁ。どうしても落とせない場所なのだろう」
 熱線を見切り、頭上から砲弾を放とうとしていたクローン兵を鋼糸で捕まえ盾にしつつ、々がブリッジを観察する。
 あらゆる機械が並んでいるが、どれが無人機や船のコントロールを司るものなのかが分からない。
 ふと、背後の気配に振り返り、短剣をそちらに集中させる。ブリッジの入り口から、増援が現れていた。
「動くな! 袋の鼠だぞ、猟兵ども!」
「どうかな。……駆けろ、駆けろ。空も地も、ただひたすらに」
 念力で操られた短剣が、増援のクローン兵を切り裂いていく。手首を、足の腱を、喉笛を裂いて、次々に倒れていく。
 その状況が派手かと聞かれたら微妙だが、少なくとも隠密時にはほとんどあり得ない戦い方だ。
 であれば、ブリーフィングで言われた派手な戦い方ということも、達成できたと思っていいだろう。
「まぁ、悪くはない」
 淡々と呟きながらも、々がその手を止めることはない。
 その身に熱線が直撃しても、オーラで威力を軽減させつつ、戦い続ける。
 世界の存亡をかけて戦うために目覚めた人々を、こんなところで死なせるわけにはいかないのだ。
「……簡単に蹂躙できると思うなよ」
 見えざる力で振るわれる短剣は、縦横無尽に空中を駆け抜け、その軌道にいたクローン兵を絶命させていく。
 全ての増援を倒し切るまでに、さして時間はかからなかった。
 一方、ブリッジの戦いも終盤に入っていた。もはや、残された敵は少ない。
「なんなんだよ、猟兵って! なんでこんなに強いんだよぉぉぉッ!」
 クローン兵の悲鳴は、ステラが跳躍と同時に振るった薙刀の一閃に掻き消える。
「ごめんなさい――さようなら」
 肩口から心臓までを切り裂かれ、兵士は即死し、暴走したアームドフォートの推力で壁に激突して血のシミとなった。
 着地と同時に床を薙ぎ払い、付近にいた兵士の足を刈り取る。返す刀で首を落として、ステラは返り血を浴びる前に優雅に下がった。
「手加減……練習しないといけないかしら」
 とはいえ、この状況で加減がいるのかと言えば――味方を見ていれば、答えは明らかだった。
 もはや自暴自棄となった兵士が、アームドフォートの火力を全開にして柊に熱線を集中させている。それらをすべて切り払いながら、柊は笑った。
「いいねいいね~! でも、もっとがんばらないと! 僕がそっちに行っちゃうぞ~!」
「柊、遊ばないの!」
 物陰から叱り飛ばしながら、雪華が身を乗り出して弓を引く。放たれた矢は、全てクローン兵の顔面に打ち込まれていた。
 力なく落ちていくクローン兵に、敵の恐慌はさらに進む。
「このガキッ! まずはあの弓矢から――」
「はいよそ見! 減点~」
 通信台を足場に跳んだ柊が、刀を逆手に敵の眼前へ迫る。身を捻って回転し、高速の斬撃を見舞った。
 両断されたクローン兵が声もなく落下し、柊は着地と同時に刀を順手に持ち替えた。そのまま突進し、着地の硬直を狙っていた兵士の熱線を切り裂いて、突きを放つ。
 ヘルメットのバイザーが割れ、くぐもった声が聞こえたと同時に、兵士は斃れた。それが最後の一人だった。
 静まり返ったブリッジで、一同はそれぞれに息をつく。
「とりあえずは、片付いたか」
 々が短剣を戻しつつ、ブリッジを見回す。凄惨な死体の山だが、任務の通り派手に暴れた結果としては、上々だろう。
 頷いて、ステラは機械の山に手を触れる。まだ生きており、信号やら専門用語が並んで表示されていた。
「あとは、無人機を止めて戦艦のコントロールを停止させれば、脱出ですね」
「でも、どうやって止めるのでしょう?」
 雪華が首を傾げる。これには、々もステラも沈黙した。巨大戦艦の仕組みなど、分かるわけがない。
 少し離れたところで機械を適当にいじくりまわしていた柊が、顔を上げた。
「ん~。面倒くさいし、ぶっ壊しちゃえばいいんじゃないかなぁ~」
「……」
 一同は沈黙し、目を合わせ、数秒考える。
 結局、そのようにすることにした。

●星を見る者と星屑と
「……敵艦、駆動を停止! 無人戦闘機が沈黙します!」
 索敵兵の知らせは、驚くべき内容だった。船長が絶句する。
「何が、起こっているというのだ」
「分かりません。……船長、C23方向より戦艦接近! 通信入ります。これは……ミディア・スターゲイザーと名乗っています!」
「何? 繋げ!」
 ブリッジの上部スクリーンに、映像が映し出される。戦艦のブリッジらしいその場所に立つ、青い髪の美しい女は、優しくも勇ましい顔をしていた。
『皆さん、よく生きながらえてくださいました。私はミディア・スターゲイザー。皆さんを、お迎えに上がりました』
「解放軍のお方、ですかな」
『あなた方の呼称を借りるとするならば、そうなります。今、銀河帝国の戦艦では、内部に突入した猟兵が戦いを繰り広げています。それが終わり次第、あなた方の船にワープドライブを――』
 言いかけたミディアを、目を見開いた船長が遮る。
「お待ちください。突入、と言いましたかな。敵戦艦に」
『えぇ。直接突入し、敵のコントロールを奪取しました。それが、皆さんが見ている状況です』
 敵戦艦、それも痛手の一つもない船に突入を仕掛けるなど、まるでゲリラのそれだ。負け戦の最後のあがきにも似ている。
 それを、あたかも正攻法のように言う。この女もさることながら、敵艦で戦い、コントロールまで奪った戦士の、なんと無謀な、なんと勇猛なことか。
「その戦士たちの名を……、もう一度お聞かせ願えますかな」
『……えぇ、何度でも。彼らの名は、猟兵です』
 ミディアの微笑には、猟兵と呼ばれる戦士たちへの絶対的な信頼と、誇りが混ざって見えた。
 広い宇宙には、とんでもない戦士がいるものだ。船長は久方ぶりに武者震いを覚えた。この戦いは、これまでに経験したどの戦いとも違う、凄まじいものになる。
『船長、貴艦のお名前を教えていただけますか? 申し訳ありませんが、その、少々年季が入っておられるので、識別コードが……』
 遠慮がちなミディアの言葉に、船長は顔を上げた。識別コードがないのは当然だ。敵に認識されることを恐れて、消去してしまったのだから。
 ならば、また名づければいい。こちらを見上げるクルーを見回し、船長は力強く宣言した。
「本艦の名は――『スターダスト』。全宇宙で最も勇敢な軽巡洋艦であります」

●カタパルト制圧戦
 この巨大な戦艦において、カタパルトもまた広大であった。
 無人戦闘機はまだ多数残っている。それらは破壊してもいいだろうが、有人の戦闘機は複数確保せねばならない。
 それらを適当に見繕いながら、須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)は飛来するクローン兵に目をやった。
「うん。あれとかよさそう。じゃあ腐蝕竜さん、暴れてくれる?」
 何気ない呟きに応え、床から巨大な肉塊がせりあがる。それは、まさしく竜であった。腐った翼を一打ち、首をもたげて、咆哮を上げる。
 クローン兵がうろたえている。二十メートルを超える巨体はカタパルトで飛ぶことは叶わないが、それでも尻尾の薙ぎ払いや爪の一撃は脅威だ。
 突如現れた化け物に、クローン兵が悲鳴を上げながら熱線を集中させる。腐蝕竜は鬱陶し気に尾を振るい、それだけで数人のクローン兵が打ち付けられて死んだ。
 その様子にうんうんと頷きつつ、莉亜は白い対物ライフルを構える。腐食竜と間合いを取る敵を、一人ずつ確実に撃ち落としていく。
「バラバラになりたい人から来るといいよ。来ないなら、こっちから行くけど」
「ガハハハッ! まるで映画だなオイ! 録画すりゃ売れるんじゃねぇか!?」
 巨大生物とクローン兵の戦いが繰り広げられるカタパルトに意気揚々と現れたバーソロミュー・スケルトン(ウォーマシンの宇宙海賊・f03437)は、さぞ愉快そうに哄笑した。
「これは俺も暴れてやんねぇとなぁ! デカい体が活かせるってェもんだぜ!」
「確かに。しかし、これでは私たちも怪物扱いになりそうですね……」
 熱線を大盾で防ぎつつ、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が冗談めかして言った。巨大生物に三メートル近い身長を持つウォーマシンが二人となれば、その異様は筆舌に尽くしがたい。
 それだけの体躯が並べば、敵の目がこちらに向くのは当然だった。トリテレイアは一歩前に出て大盾を構えた。
「バーソロミュー様。守りは引き受けます」
「お、いいのかい?」
「私は騎士です。その勤めを果たすまで。どうぞ、『派手に』暴れてください」
「ガッハハハ! 『派手に』な! 任せろや、思うさまに暴れてやるわいッ!」
 片手に黄金銃を、もう片手には黄金の艦載砲を持ち、それらを同時に、ぶっぱなす。
 雷光の如き熱線と艦載砲の砲撃が、圧倒的な存在感をもってカタパルトに響き渡る。熱線が敵を焼き、砲撃はさしもの頑丈な戦艦であっても、その外壁に致命的なダメージを与えていく。
「あのデカブツ正気か!? 船が沈むだろうが!」
「何を言う。わしらは船を沈めに来とるんじゃ! ガハハハ! 怖かったら止めてみんかいッ!!」
 愉快極まりないとばかりに笑うバーソロミュー。その哄笑と腐蝕竜の咆哮が混ざり合い、悪魔の雄叫びのようにすら聞こえる。
 その最中で、物陰から狙撃していた莉亜は、対物ライフルのスコープを覗きながら呟く。
「怪獣大決戦だね、これじゃ」
「本当に、すごい状態っすね。私も負けてられないっす!」
 いつの間にか横にいた少女、間仲・ディコ(振り返らず振り出しに戻らず・f01702)は、世界観の混濁した戦場にやる気十分だった。
「気合い入ってるね」
 対物ライフルに自身の血を流し込みながら、莉亜が微笑んだ。
「もちろん!」
 笑顔で答え、ディコは手を強く握る。
「戦うために――生きるために頑張ってる人がいる。それだけでも、全力を尽くす意味があるっす!」
「そう。……そうだね、うん」
「よーし! じゃ、援護頼むっすよ!」
 飛び出したディコの体が輝く。カタパルトに散らばっていた工具や戦闘機のパーツが集まり、さらには割れたディスプレイの破片がその身に集約していく。
 やがて現れたのは、ディコの身の丈の倍はあろうかという巨大なロボだった。トリテレイアやバーソロミューをも超えた体躯の頭頂には、ディコの頭がある。
「よっしゃー! いくっすよー!」
 巨体ながら素早い動きで、ディコは腐蝕竜に銃撃を見舞っていたクローン兵を殴り飛ばした。すかさず敵兵の視線が集まり、熱線が集中する。腕を交差させてそれらを防いだ。
「そんなもんですか! 全ッ然、こたえませんね!」
 射線を見切って突撃を敢行する。莉亜の対物ライフルとバーソロミューの砲撃、トリテレイアの格納機銃による援護を受けながら、巨大な拳でクローン兵をなぎ倒していく。
 とはいえ、敵の数は圧倒的だった。一瞬で囲まれ、銃を突きつけられる。
「ガキが、これで終わりだ!」
「それは、どうですかねッ!」
 拳を振り上げ、床に叩きこむ。戦艦が振動するほどの衝撃波が、包囲していたクローン兵を吹き飛ばした。
 遠方から放たれた熱線をボクサーのスウェーの要領で掻い潜り、逃げ惑う敵に追い付いては、拳を叩きこむ。
「まだまだ、私はやれるっすよ! こっちの意地を、見せてやるっす!」
 ガチリと拳を打ち鳴らし、ディコは爛々と目を輝かせた。
 特大の竜が一匹と巨大なロボが三体もいる戦場に、小さな小さな人影が飛び込んできた。
「お呼びじゃなくてもボク登場ーって、えー!? なんかみんなでっかくない!?」
 天井の通気口から現れたニィ・ハンブルビー(怪力フェアリー・f04621)は、味方と思われる巨体群に目を丸くした。
 ただでさえ大きいというのに、妖精であるニィの体からすれば、それはもはやビルにも等しい。腐蝕竜ともなれば、島の類だ。
 それに立ち向かうクローン兵が気の毒にすら思えたが、それはそれだ。
「まぁいいや! やることは変わらないからね! 銀河帝国のクソどもは殴る! さぁ、突貫だー!」
 背中のウェポンエンジンと腰のマシンベルトで推進力を増大させ、ニィは敵に突撃を敢行する。狙いは、皆の頭上から攻撃を仕掛けている連中だ。
「いっくぞぉぉぉぉッ!」
「うおっ! なんだこのチビ――」
 言いかけたクローン兵は、高速で放たれた拳に顔面を打たれた。ヘルメットごと首が捻じれ、激しく吹き飛ぶ。
 即座に狙いをニィへと定めた敵兵が、その熱線を浴びせてくる。それらを素早く回避しながら、ニィは目の下を引っ張って舌を出した。
「べーっ! 当たんないよー!」
「くそ、なんだこいつ! ふざけやがって!」
「ふざけてんのは、お前らだぁーッ!」
 熱線を掻い潜って接敵し、小さな体をフルに動かしてかかと落としをお見舞いする。
 床に叩きつけられたクローン兵の腹部に追撃の拳をめり込ませて沈黙させ、ニィは飛び上がって、バーソロミューの頭に着地した。
「ふふん! ボクにかかれば、こんなもんだよ!」
「おうおうおう! やるじゃねぇか、妖精の!」
「まぁね! でっかけりゃいいってもんじゃないって、わかったでしょ!」
「こりゃ参ったな! 肝に銘じておくぜ、ガッハハハ!」
 愉快そうに笑いながら、バーソロミューの射撃と砲撃は続く。と、その時。
『そ、総員、本艦より退避! 脱出ポットなどないため――有人戦闘機を使って脱出せよ! 早い者勝ちだ!』
 クローン兵に脱出の権利などないのだろう。それでも命が惜しいらしい兵士が叫んだその放送により、カタパルトへと敵の気配が近づいてくる。
 やはりというべきか、船内へと続く通路から、多数のクローン兵がライフルを持って、狂ったように突撃してくるのが見えた。
 ライフルの弾丸や熱線はバーソロミューとトリテレイアには通用しないだろうが、ニィにとっては十分な脅威となり得る。
 咄嗟にニィを手に包み込んだトリテレイアが、彼女を頭上に放った。
「わぁっ!」
「ニィ様は退避を! ここは私たちに」
「やるぞい、トリテレイア!」
 トリテレイアが大盾を、バーソロミューが黄金砲を、それぞれぶん回す。突撃を仕掛けてきた兵士は、巨大な質量を持つ鉄塊に殴られ、全身の骨を砕いて吹き飛び事切れた。
 無理矢理カタパルトに侵入しようとするものは、掴み上げ、あるいはそのまま踏みつぶす。通路前は即座に血の海となった。
 敵の破れかぶれの突撃は続く。弾丸は二人のウォーマシンの体に弾かれ、熱線もわずかに傷跡を残す程度しかない。
 暴れる二人の巨体、その上空から、さらなる増援が現れた。きらきら輝くロボと、その中にいる、ディコだ。
「お、ま、た、せぇぇぇぇっす!!」
 着地ついでに拳を振るい、目の前にいたクローン兵を叩きつぶして、ディコは振り返った。巨大な腕で汗を拭おうとして、諦める。
「あっちはあらかた片付いたっすよ。あとは、この突撃兵をなんとかすれば終わりです!」
「なるほど、承知しました。では、ここの守りは我らで。ニィ様は、莉亜様と機体の処理を!」
「がってん承知だよ!」
 腕まくりをして見せてから、ニィが飛んだ。それを確認して、ディコが構える。視線の先には、なおも無数の敵兵がいた。
「さっき放送で、早い者勝ちって言ってたっすね。じゃ、私たちも?」
「ガハハハ! 敵を倒すのは早い者勝ちか、いいじゃねぇか! なぁトリテレイア!!」
「私はそういう趣味はありません。ですが、務めとあらば、やりましょう」
 真横を通り抜けようとしたクローン兵を、ワイヤー制御の隠し腕で捉える。
 もがくクローン兵を見ながら、トリテレイアはわずかな時間で考えた。
 彼の記憶データに、いわゆる過去のことはほとんど残されていない。それでも、かつての同胞と呼べるかもしれない相手との戦いは、宿縁じみたものを感じざるを得ない。
 そこに迷いはあるか。戦い抜けるか。
 答えは、是だ。他にあろうはずもない。
「私は、騎士。力なき人々を守るのが、私の務め」
 静かに、しかし力強く呟いて、トリテレイアはさらに隠し腕を二本展開し、それぞれでクローン兵を捕まえた。
「あなた方の行動パターンは、もう見切っています。逃がしません」
「やめろ、離してくれアババババ」
 流れた特殊電流に身を震わせ、トリテレイアは無慈悲に敵を放り投げた。その先にいた腐蝕竜が口を開け、一飲みにする。
 敵は次から次へと殺到する。このままでは、例え三人であっても抜かれてしまうだろう。
 最前線で敵を討ち倒していたディコが、振り返って叫ぶ。
「数が多すぎます! まとめて薙ぎ払えませんか!」
「おッ! じゃったらわしの出番だわな! 溜めに溜めてくんなぁ!」
 バーソロミューの声を受けて、トリテレイアが大盾を、ディコが腕を交差させ、それぞれ構えた。
 壁の如く立ちふさがる二つの巨体に、兵士が怒涛の如く殺到する。漏れ出すものを殴り倒し踏みつぶす。
 それでも押し寄せる、ウォーマシンとフォームチェンジのロボが揺らぐほどの人の波に、ディコが歯噛みする。
「ま、まだ……ですか! ちょっと押さないで、数、多すぎっす!」
「どけよデカブツ! 逃げられねぇだろうが!」
 罵声を上げるクローン兵を蹴り飛ばすも、もう限界だった。ディコが纏うロボの腕がもげかける。トリテレイアの大盾も、徐々に押され始めた。
「バーソロミュー様ッ!」
「待たせたなぁ。放っていいぞい!」
 トリテレイアとディコが、同時に下がる。我先にと群がっていたクローン兵が、お互いを踏みつぶしながらカタパルトになだれ込んだ。
 その先に立つ異様なウォーマシンを見て、誰が立ち止まろうとしただろうか。
「古参の船よぉ! お互いここまで生き残ってきたんじゃ。共に大暴れして、銀河帝国のクソどもをぶっ潰してやろうじゃねぇか!」
 襲われていた軽巡洋艦スターダストへと叫びながら、バーソロミューは全武装のありったけの弾薬を、なだれ込む敵へとぶっ放した。
 火砲の爆音と熱線が肉を焼く音、そしてクローン兵の耳をつんざくような悲鳴が、カタパルトに響く。
 もう一つ。バーソロミューの哄笑だ。
「ガハハハ! クソどもの焼却完了じゃな、ガハハハハ!」
 業火に包まれスプリンクラーまで起動する始末だが、バーソロミューは全弾を撃ち尽くすまで手を緩めることはなかった。
 やがて砲声が消え、爆音にくらくらしていたディコが頭を振った。
「お、終わりっすか?」
「……いえ。敵が来ます。先ほどより多くはありませんが」
 トリテレイアが言う通り、通路にさらなるクローン兵が現れた。味方の無残すぎる死体を見て躊躇しているが、こちらを視認するや、レーザーライフルを撃ってくる。
 黄金砲で防いで、バーソロミューは鼻を鳴らした。
「あとは小物じゃろ。各個撃破でいくぞい」
「了解っす!」
 拳を打ち鳴らし、ディコが気合いを入れなおす。
 一方、カタパルトでは、腐蝕竜が消えていた。役目を果たしたのだ。もう、ここに敵はいない。
 やれやれと一息ついている莉亜の肩に、ニィが飛びつく。
「莉亜くん、まだ終わってないよ! もうひとがんばり、あとちょっと!」
「まだ何かあったっけ?」
「ボクらが脱出する以外の戦闘機、壊さないと!」
「あぁ、そうか。じゃ、僕は無人機やるから、有人機頼める?」
「うん!」
 莉亜は対物ライフルに血を流し込み、その威力を極限まで強化する。もう身を隠す必要もない。堂々と立ち上がり、その照準に無人機を捉える。
 無機物に対して、慈悲はない。莉亜は無感情に引き金を引いた。
 放たれた銃弾は、無人機の分厚い装甲を容易く破り、その内部を食いちぎる。
「これで、終わりだ」
 放たれる銃弾は、巨大な銃声を伴って無人機の内部を抉り、やがて黒い煙を起こし、爆発した。
 スコープから目を外し、莉亜は長い前髪をかき上げた。
 一方、ニィの破壊工作は非常に賑やかだった。有人戦闘機のコックピットガラスを蹴破り中に入って、ボタンをぺちぺちと触ってみるも、うんともすんとも言わない。
「まぁそうだよね! 知ってた! でりゃりゃりゃりゃぁぁぁぁッ!」
 敵の脱出を許さないために、ニィはその拳でもって、戦闘機の操作盤を殴りつける。ボタンがちぎれ飛び、画面が砕け、精巧な機械は見るも無残な姿に変わっていく。
 本当は格好良く自爆装置など使ってみたかったのだが、結局いつも通りの力押しとなっていた。
「本当にやること変わらないなボク!」
 とどめの一撃を叩きつけると、嫌な臭いと煙が立ち上った。すぐさまその場を退避する。
 莉亜のように爆発こそしないが、修理でもしない限り、もう動くことはないだろう。そして、そんな時間はこの船に残されていない。
 二人がかりで戦闘機を潰し終わった頃、敵の突撃も止まった。恐らく、もう戦力が残されていないのだろう。
 トリテレイアとバーソロミュー、ディコの三人と合流し、お互いを労い合う。敵兵は残っているだろうが、もう戦力とは言えない。
 ウォーマシンの二人が脱出用戦闘機の起動と自動操縦の設定を手伝ってくれたおかげで、脱出の準備は整った。
「あとは、この船を沈めるだけっすね」
 フォームチェンジを解除したディコが、戦艦を見渡す。敵の声はもうなく、戦闘の跡が残されているだけだ。
 この船により、何隻の罪のない船が宇宙の藻屑となってしまったことだろう。どれほどの命が奪われたのだろう。
 ディコは許せない気持ちになった。拳を握り、戦闘中に叫んだ言葉を、悔し気に口にする。
「今度はこっちの番っす……。銀河帝国に、絶対意地を見せてやるっす!」
 必ず、この戦争に勝つのだ。死んでしまった人々のために、これから死にゆく人々のために。
 強い強いディコの誓いは、その場にいる猟兵全員の誓いでもあった。

●星屑乱舞
『全猟兵の回収を確認しました。敵戦艦撃沈の後、私と猟兵が貴艦に参ります。貴艦にワープドライブを付与した後、ワープを用いて我が軍と合流いたしましょう』
 ミディアの言葉に、スターダスト船長が頷く。
「先ほどの手はず通りですな。さて、敵艦の撃沈ですが――」
 言葉を止めたスターダスト船長は、ディスプレイ越しにミディアと猟兵たちの目を、じっと見据えた。
 船長の強い意志を受けて、ミディアが頷く。
『貴艦に、頼みます』
「心遣い、感謝します。では、敵艦撃沈を確認後、当艦へいらしてください」
『了解いたしました。通信終わります』
 ディスプレイが消える。ブリッジから見える宇宙の先に、今も輝きながらも沈黙している敵戦艦が見えた。
 あの船に、まだ敵が残っているのだ。ようやくこの手で、敵に一太刀浴びせられる。船長の手は、震えていた。
「……始めるぞ。皆、準備はいいか」
 クルーたちが振り返り、頷く。船長は立ち上がり、敵戦艦へと手を向けた。
「主砲発射用意! 続いて全砲座開け! 目標、銀河帝国軍戦艦! 照準合わせ、主砲発射と同時に各砲座一斉砲撃!」
「了解! 主砲照準合わせ完了、スタンバイ!」
 船長は頷いた。この一撃をもって、この船は生まれ変わるのだ。逃げ惑っていた宇宙の星屑から、解放軍の一端を担う巡洋艦「スターダスト」へと。
 その誇り高い一射を撃てることに、魂が震えた。
「総員、対ショック体勢! ……てぇぇぇぇぇッ!」
 宙域を揺るがすような振動が、ブリッジを襲う。久々の感覚だ。すべてを攻めるために使った者のみが味わえる、長らく忘れていた感覚。
 巨大なレーザー砲を中心に、いくつものレーザーと実弾砲が、敵戦艦に向かっていく。
 ややあって、戦艦がいくつもの光に包まれた。光は消えることなく断続的に続き、やがて巨大な炎を上げて、宇宙を赤く染める。
「……敵戦艦、撃沈!」
 涙に震える通信兵の叫びが、ブリッジに木霊する。すべてのクルーが立ち上がり、歓声を上げた。
 その中で、船長だけが椅子に座り込む。手を組み、そこに額を乗せて、深々と息を吐いた。
「……ようやく」
 出来ればクルーには見せたくなかったが、もう堪えることはできなかった。
 抱き合い喜ぶクルーたちを前に、船長は一人、男泣きに泣いた。


 その日、解放軍の最前線に、一隻の軽巡洋艦が加わった。
 船も装備も旧型、整備改修をしたところで、最新鋭にはとても敵わない。取り柄といえば、クルーの練度とチームワークだけ。
 その船の名は、「スターダスト」。
 例えその身を焼かれようと、冷たい宇宙に放り出されようとも、クルーたちは最後の一人まで戦い続けるだろう。
 その信念こそが、軽巡洋艦「スターダスト」クルーが胸に秘める、星屑の意地なのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年02月02日


挿絵イラスト