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銀河帝国攻略戦⑤~宇宙駆ける牡牛

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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「長生きしといてよかったわい!」
 解放軍への合流を促すミディア・スターゲイザーの音声ファイルを何度となく繰り返しながら、老爺は意気揚々と舵を取る。
 彼だけではない。航路図を見る者も、火器管制をチェックする者も、搭乗員への連絡を行う者も、皆々老人。
 工作艦シュティーア。
 宇宙らしからぬ大型クレーンを載せた、無骨で巨大で年季の入った艦。
 それは、かつてない速力でもって、宇宙を駆けていた。

●ブリーフィング
「――当然、銀河帝国には察知されています」
 急転直下の事態でも、テュティエティス・イルニスティアは淡々と語る。
「改めて、ざっくりとご説明しましょう。
 先に行われた『ヘロドトスの戦い』の結果、銀河皇帝によって封印されていた遺失技術『ワープドライブ』が復活しました。
 同作戦にて救出されたミディア・スターゲイザーさんのユーベルコードを用いれば、宇宙船のコアマシンには『ワープドライブ』の装着が可能となります。
 それはつまり、銀河帝国に抗う全ての人々を一つに纏められる、ということです」

 ミディアと猟兵の呼び掛けを受け、既に合流しようと行動を起こした人々も多い。
 対して、銀河帝国は戦力として結集する前に各個撃破を行うべく、各地に戦艦をワープアウトさせている。

「工作艦シュティーアの行く手にも、戦艦は待ち構えています。……そこで、皆さんには敵戦艦の格納庫へと直接転移して頂き、搭載戦力の撃破、及び戦艦そのものの撃沈をお願いしたいのです」
 どうやら大型艦であるシュティーアには強襲揚陸作戦が仕掛けられる予定であったらしく、戦艦には大量の小型戦車が載せられている。
 また、戦車に随伴させる歩兵部隊もかなりの数がいるようだ。
「これを撃滅後、破壊工作を行うなり、或いはワープドライブ装着の為に後からやってくるミディアさんの宇宙船や、シュティーアの乗員と協力するなどして、敵戦艦を沈めて下さい。……では、ご武運を」


天枷由良
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 本シナリオは「⑤帝国戦艦迎撃指令」に対応しています。
 大きな格納庫。四方八方敵だらけの空間で集団戦です。
 のりこめー!

 ご参加、お待ちしております。
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第1章 集団戦 『小型歩行戦車』

POW   :    インペリアルキャノン
【機体上部に装備されたビームキャノン】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    タンクデサント
【完全武装した銀河帝国歩兵部隊】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    サイキックナパーム
【機体後部から投射する特殊焼夷弾】が命中した対象を燃やす。放たれた【搭乗者の念動力で操作できる】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

白峰・慎矢
大きな戦いになりそうだから、味方は多い方が良いし、もちろん犠牲は少ない方が良いよね。

初めての世界で、金属の船の中で戦うなんて、ちょっと不安だけど、そんなことは言ってられないか。
敵が数で押してくるなら、俺もそれで対抗しよう。【錬成カミヤドリ】で弓を俺の周りに並べ、斉射するよ。人も機械も鎧が堅そうだから、弾かれないように関節とか武器の発射口とか、弱そうなところを狙い撃ちできると良いね。一発でだめなら「2回攻撃」してあげよう。
敵の攻撃も激しそうだから、俺自身は攻撃せず、弓の操作と回避に専念しよう。「残像」「見切り」「第六感」あたりを活用できるかな?
敵の数が多いから、他の皆と協力できるとありがたいね。


リグレース・ロディット
長生きするのはとっても良い事だから……もっともっと長生きできるように僕たちが頑張るね!生きるために戦うよ!!
【WIZ】んっとね、まず装備のね『導きの銀』で弱点、壊しやすそうな場所を見つけるね。見つけたらできるだけ敵がいる場所でUCの『赤く煌く影が散る』で攻撃するよ。この攻撃で倒しそこなった敵は装備の『暴食紫炎』で一気にガッっといってみるね。一周グルってしたら倒せるかなぁ……なるべくたくさんの敵に攻撃したいから今回は多めに血を吸わせるね。この痛みも敵からの攻撃も『激痛耐性』とか『火炎耐性』で我慢するよ。戦争中なんだからこのくらい我慢できるよ。

(絡み・アドリブ大歓迎)


ミスト・ペルメオス
(POW)

偉大な先達のために。我々の世界のために…。
ミスト・ペルメオス、ブラックバードで出ますッ!

自前の機械鎧を駆って戦闘に臨む。
敵艦に乗り込み次第、【オープンファイア】。
敵群の機先を制するように、可変速ビームキャノン/対艦・対拠点モードでの大威力の砲撃を行う。
猟兵達は新たな力を手に入れ、加えて戦場が敵艦である以上、遠慮など不要。
共闘する猟兵達を巻き込まないよう注意しつつも全力での連続砲撃を叩き込み、敵群の掃射を狙う。
…それだけで終われば良いが、恐らくはそうもいかない。
敵群の反撃はフェイントを混ぜた回避機動、或いはビームシールドやオーラによる防御で凌ぐ。

※他の方々との共闘等、歓迎です


逢坂・宵
星が身近に感じられるのはとても心地がいいですね
こういう戦争、僕は大好きです
さあ、楽しみましょう

それにしてもあれは……すいはんk、いえなんでも

【タンクデサント】がかなり厄介ですね
なんども発動される前に、徹底的に沈めていきたいところですが
仲間と協力して、消耗している敵などを優先して
攻撃していくといたしましょうか

『属性攻撃』『2回攻撃』『高速詠唱』『全力魔法』を用いて
『天撃アストロフィジックス』で攻撃します
猟兵の仲間とも連携や協力をおこなっていきましょう


苧環・つづら
……此処で終わりになんか絶対させないわ。
シュティーアの皆さんにはもっと長生きして頂かなきゃ。
さあ荒事のお時間よ迦河稚ちゃん!準備はいい?

――“承知。理不尽な終焉なぞ猟兵には縁無きものにございましょう?”

初手より全力。路を塞ぐならばこの魂燈にてただ斬り捨てるのみ。
サモニング・ガイストには歩兵を中心に遠慮無く薙いで戴き、
わたくしは歩行戦車へ鎧無視攻撃・だまし討ち・衝撃波を織り交ぜて行きましょう。
物言わぬ鋼絡繰の反撃なぞ見切りと残像で振り切るだけにて。
ふふ、炎の弾など絡繰に打ち返せればさぞ楽しいものになりましょうが油断は禁物。
周囲の猟兵友軍に危機があれば援護にも向かいましょう。


イリス・ウィルター
戦争か、初めてだが、私にやれることをしようか。
戦車といっても小型、ここで立ち止まるわけにも行かない。押し通る!

私の防具は軽い代わりに防御力がないので、回避してからのカウンターを狙っていく。
「残像」を使って攻撃を避けながら接近して、刀が折れない程度ではあるが、「捨て身の一撃」を使用しながらバーバリアンとしての力を込めたグランドクラッシャーを使用して戦う。

戦闘が終わったら破壊工作でもしていくよ。
協力員の人や仲間に迷惑をかけない程度に周りの機械を壊していく。


フィン・スターニス
この世界に現れるオブリビオンを、一掃する機会です。
成功させる為にも
まずは、この船団を襲っている彼等を倒さないとですね。


数には数を。
七彩の矢雨を連続で発動させ、
面での制圧を試みましょう。
これだけいるのなら、
狙いは甘くとも問題ないでしょうし、
手数を増やす事を優先です。

同時に、弓での狙撃を行い、
装甲の隙間を狙い、動きの妨害を試みます。

敵の攻撃には、
正面からは見切りで、
死角からは第六感で回避を試み、
タイミング次第では、矢や七彩の矢雨でのカウンターを行います。

他の方との連携として、
援護射撃も行います。


ライヴァルト・ナトゥア
(ふわりと宇宙船に降り立って)
爺さん達を護るのは若者の役目ってね。やると決めたら最後まで、君らの終わりまでお付き合い頂こう
(当初は二回攻撃、第六感、ダッシュ、ジャンプ、フェイントを駆使して鎌での攻撃を主体に戦う。力押しはしないで牽制メイン。攻撃は他の猟兵に任せ気味)
そろそろ頃合いかな。みんな、下がってくれ!ちょっと大きいの行くよ!
さぁ、覚悟はいいか、俺の爪は一切合切に容赦はしないぞ?
、、、薙ぎ払えッ!!
(あらかた敵が出揃ったら皆を下がらせてユーベルコードを起動。左手に青いオーラを纏い、巨大な爪で自分から500m範囲を断裁する)
あらかた片付いたかな
さて、残りは少し、気張っていくとしよう


弦切・リョーコ
工作艦…あの型の骨董品がまだ動いてたのか。
あれを沈めるのはもったいない、外側から損傷を修復できる設備は貴重だし戦争になるなら必ず役に立つだろう。
それに何より、あの骨董品とそれに乗ってる奴らの技術に興味があるねぇ。
是非無事に戦場まで連れて行って存分に見学させてもらおうか

「観測、索敵、ルーティン起動。目標オールレンジ。」
状況が始まったらすぐに目視および電磁場探知で敵機の数と位置を割り出す。『集束電磁放射』の【一斉発射】で全方位に、【スナイパー】の精密さで敵機のコクピットを狙って【一斉発射】して行動不能に追い込む。
敵を壊滅させたら【ハッキング】で艦内構造や状況を把握。シューティーアに通信を繋いでおく


黒瀬・ナナ
四方八方敵だらけってことは、好きなだけ暴れちゃって良いのよね?
ふふーん、それならおねえさんの得意分野だわ。
何処からでもかかってきなさい!

風神様のお力をお借りして、格納庫を飛び回り。
スカートひらり翻し、美脚で『誘惑』しつつ戦場の敵をかく乱。
なるべく多くの敵を一ヶ所に集めたら、
『怪力』でおもいっきり『なぎ払い』、『範囲攻撃』でまとめて蹴散らす!
倒しきれなかった敵には『マヒ攻撃』効果で少しでも動きを止められたら良いな。

『オーラ防御』と『激痛耐性』でダメージは我慢。
痛くても泣かないめげない諦めない!
動ける限り、一体でも多くの敵を吹っ飛ばすわよ!

※アドリブ、他PC様との絡みOK


ツーユウ・ナン
世界に住まう者一人ひとりが強い意志を持つ事こそ、真にオブリビオンの支配を脱し、未来を創る力となる。
心を奮わせ、立ち上がった者をわしらが後押ししてやらねばのう。

どうやら、この”宇宙服”とやらをうまく使えば、うまく勁を生み出せるようじゃ。
◆攻撃を見切って突進し、格闘戦に持ち込む
・宇宙服の推進力で擬似的に重力や遠心力を生み出し、拳法を補助
・熱線や光学攻撃には手に練った氣【オーラ防御】をまとわせて弾き逸らす【見切り】
・多脚戦車の足を折ったり、靠撃で転倒を狙ったり【吹き飛ばし】
◆UC
・密着から、震脚による反発力に推進力と全体重を乗せた双掌打を放つ【気合い】【力溜め】【鎧無視攻撃】
「哈ハアッ!」



 宇宙世界への初転移を前に、弓のヤドリガミである白峰・慎矢(弓に宿った刀使い・f05296)は、未知への微かな不安を押し込めて言った。
「やっぱり味方は多い方が、犠牲は少ないほうが良いよね」
「ええ。それに、シュティーアの皆さんにはもっと長生きして頂かなきゃ」
 苧環・つづら(残響にて紡ぐ円環・f06155)が応え、口元を緩める。その一見して性別不明な容姿から繰り出される“おっとりおねえさん系”な語調は、慎矢のみならず猟兵部隊そのものの緊張を解す。
「長生きするのはとっても良い事だもんね! だから僕たちが頑張って助けないと!」
 ダンピールの少年――リグレース・ロディット(夢みる虚・f03337)が言葉を重ねれば、居合わせる仲間たちは無邪気にも映った彼の金瞳の、その中に宿る決意の片鱗を感じ取り、今一度、気を引き締める。
「この宇宙を生き抜いてきた偉大な先達のために。これからを生きていく我々と、世界のために……」
 スペースノイドの誇りと使命感がそうさせたのか、ミスト・ペルメオス(新米猟兵・f05377)が祈るように呟いた。
 己を荒削りな新米と評する彼だが、しかし宇宙世界“スペースシップワールド”に生まれ、銀河帝国の侵略と隣り合わせで生きてきた身であればこそ、反抗の嚆矢に相応しい気配も滲む。
 ――勇気をもって立ち上がった人々を、絶対に守り抜こう。
 作戦に臨む猟兵の志が、一つに纏まった。
 そして光と変わりつつあったミストは、遥か彼方を見据えて吼えた。
「ミスト・ペルメオス――ブラックバード、出ますッ!」

●急襲
 まさか乗り込まれるとは思ってもいなかったのだろう。
 いざや征かんと戦意漲る艦の巨大格納庫。その中心かつ中空に忽然と現れた猟兵を認めはしても、完全武装した帝国兵たちは微かに身動ぐだけで、手にした銃を向けようとすらしなかった。
「うへぇ、意外と硬そう」
 困惑から生まれた隙を突き、リグレースが右目のモノクル型演算デバイス“導きの銀”で、ざっと敵の情報を掠め取る。
「……狙うなら足の付け根とか、かなぁ?」
「確かに、胴体よりはその辺りの方が軟そうだが――」
「これだけいるのですから、狙いは多少甘くとも問題ないでしょう」
 まずは手数で敵を圧す。
 フィン・スターニス(七彩龍の巫女・f00208)が和弓“月風”を構えて、開戦を告げる一矢を射った。
 それをきっかけに百を超える水の破魔矢が敵群へと降り注げば、慎矢も自らの本体である弓の複製をずらりと十七並べて、次々に矢を放つ。
 前後左右三百六十度。狙い所には困らない。早速、白く塗られた機体の幾つかが物言わぬ棺桶へと変わって、何をするまでもなく行動不能に陥った兵器の様子に、帝国兵たちは益々混乱の度合いを深めていく。
「――自分たちが支配する側だって、驕っているからッ!」
 だから、こうして自分たちが奇襲を受ける側になるなど考えもつかず、無様に狼狽えるのだ。
 心底に渦巻くものを思わず吐き出したミストの、機械鎧“ブラックバード”に直結された2門の可変速ビームキャノンが唸りを上げる。
 正確に照準を合わせる必要などない。求められるのは破壊力、殲滅力。向けた砲口は、それに十分な答えを示す。
 閃光、振動、轟音、爆炎。
 格納庫の一角に穿たれた穴から、幾つもの壊れた戦車や歩兵たちが漆黒へと放り出されていく。

「おお……」
 逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)が唸った。
 一撃の凄まじさに――ではなく。
 敵が吸い込まれて消えた先、所々に微かな煌めきを含む宇宙の雄大さに。
 何を暢気な、と思われるかもしれない。だが、猟兵たちはヘロドトスの戦いにて獲得した“極薄かつ透明で、防具の上から着用できる高性能宇宙服”に守られている。
 つまりは星の輝きを眺めるに相応しい状態であって。星と、星を愛でる者と共に過ごしてきた旧き天図盤のヤドリガミならば、暫し遠天に目を奪われても仕方がなかった。
 とはいえ、宵も此処に来た理由を忘れているわけではない。
「……さあ、楽しみましょう」
 星々に見守られながら進むであろう、この戦争を。
 忌まわしき過去の亡霊へと向き直って、宵は魔杖を手にする。

『て、敵襲だ!』
『歩行戦車を全て起動させろ! 一人も生きて帰すな!!』
 戦艦のダメージコントロールシステムが自動的に大穴の修繕を始めると共に、急襲によって止められていた帝国兵たちの世界も、ようやっと動き出す。
 しかし、逡巡の代償に大きな犠牲を支払ってから形作られた敵意は、あまりにも――あまりにも、滑稽で。
 ふわりと緩やかに降り立ったキマイラの“護人”ライヴァルト・ナトゥア(巫女の護人・f00051)は、魂を簒奪する巨鎌を構えたまま鼻で笑う。
「生きて帰すな、だって? 勘違いしてもらっちゃ困る。ここで終わるのは君たちの方さ」
「驕り高ぶって現実が見えていないとは、どうやら真のようだな」
 まだ耳に残るミストの叫びを噛みしめるように頷いて、人狼のイリス・ウィルター(刀の技を磨くもの・f02397)も嘲笑を浮かべた。
『貴様ら……撃て、撃て撃て! 撃ち殺せ!』
 戦闘部隊の指揮を担っているらしき兵が癇癪めいた叫びを上げる。
 それと同時に、動き出した小型戦車たちが一斉に機体上部のビームキャノンを向けた。
 工作艦シュティーアへの攻撃を目前に控えていたため、暖気も十分に済んでいたのだろう。蠍の尾にも似た仕草で伸びる砲塔は矢継ぎ早に閃光を発して、侵入者たちの駆逐を目指す。
 だが、驟雨の如き攻撃など、猟兵にとって何ら珍しいものではない。
「戦車といっても小型――押し通る!」
 抜刀一閃。微かな紅色の軌跡が描かれた直後、四足で立ち上がったばかりの兵器が一つ、耳障りな音を響かせて崩れ落ちた。
『な……ひ、怯むな! 撃て、撃てェ!』
「甘いッ!」
 がむしゃらな砲撃が狙う位置に虚像を残して、真のイリスはもう一段深くへと踏み込む。
 己の無事をも顧みぬ振る舞いは、一歩間違えれば当然ながら破滅を呼ぶ。しかしその分、首尾よく運べばより大きな戦果へと繋がる。
 身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ。幾重もの光線を越えたイリスの先に待つのは、搭乗者の戦慄を示すように揺れながら後退る白い棺桶。
「貰った!」
 大上段に構えられた妖刀“紅葉姫”が、渾身の力で以って振り下ろされる。
 その一太刀は鉄を鉄とも思わぬ勢いで裂き、格納庫の床にまで深い亀裂を生んだ。

「負けていられないわね。さあ、荒事のお時間よ迦河稚ちゃん! 準備はいい?」
 ――承知。理不尽な終焉なぞ猟兵には縁無きものにございましょう?
 心の内から答えが来た瞬間、つづらは“彼女”に自由を明け渡す。
 そして、つづらであった肉体の主導権を握った迦河稚(かがち)は微かに上品さ漂う視線で敵を睨めつけると、手始めに名もなき英霊を一人、眠りから喚び起こす。
「出し惜しみはなしで参りましょう――!」
 呟きに応えて、槍を手に猛然と突っ込んだ英霊は銃撃を受けながらも歩兵の一角を薙ぎ払う。
 無謀極まりないその攻撃は、すぐさま反撃に出た小型戦車の焼夷弾でもって終幕を迎えた。
 だが、彼に与えられた役目はとうに果たされている。それに戦車のパイロットが気づけたかどうかは、残念ながら知る由もない。
 ともすれば、自らが何で終わりを迎えたのかさえも分からなかっただろうか。迦河稚が携える艶のない黒鞘から滑り出た直刀は、それほどまでに鮮やかな太刀筋で戦車を鉄屑に変えてしまっていた。

 そうして一つ、また一つと“点”で敵が葬られていく一方。
 猟兵達は、完全武装の帝国兵との“面”での争いでも優勢に転じていく。
「数ばかり多いというのも厄介なものですね」
 そんな言葉とは裏腹に、小型戦車を見た宵の頭を過るのは――。
「……あれは、どう見てもすいは……」
「何か言った?」
「いえ、なんでも」
 まだ余裕があるとはいえ、それを口にするのはさすがに憚られた。
 宵は自身をも律するように短く応えて、百を超える流星の矢を幾度となく撃ち放つ。
 その様子を見たリグレースも追求はせず、血と影で出来た夕顔の花びらで包んだ戦車を、何処からともなく取り出した紫炎纏う大鎌で斬り裂く。
 装者の血を啜って猛る刃を扱うには必然的に痛みも伴うが、戦争に身を投じておきながら泣き言を漏らすわけにもいかなければ、元よりそんなつもりもない。
「たっぷり吸わせてあげるから、その分はしっかり働いてよ……!」
 いつの間にやら受けていた腕の傷から滴る血を浴びせて、リグレースはなおも敵へと――。

「みんな、下がってくれ!」
 斬りかかろうとした所で、不意に呼びかけられて足を止めた。
 すかざす浴びせられた銃撃を躱しつつ後退れば、それまで然程前には出ていなかったライヴァルトが、鎌でなく左手を掲げながら不敵な笑みを浮かべている。
「ちょっと大きいの行くよ!」
 そう呼びかけるや否や、藍色の衣を靡かせた人狼は戦場の中心へと身を躍らせて。
「さぁ覚悟はいいか、俺の爪は一切合切に容赦はしないぞ?」
 答えを聞くつもりもない問いを投げた後、全てを左腕に込め。
「――薙ぎ払えッ!!」
 一閃。青い気を纏う手の、万象全てを断裁する巨大な天狼の爪で、戦車も兵士も艦の内壁も、全てを一緒くたに裂いてみせた。

●援軍
「さて、これで残りは――」
 あと少し。そう断言しようとした矢先、ライヴァルトの目には新たな兵士と戦車の団体が映る。
 全機起動などと大層なことを言いながら、まだ何処かに残していたらしい。
 或いは起動に手間がかかっていたか。ともかく隔壁を挟んだ向こう辺りから来たそれは、猟兵たちを取り囲むほどの数ではなくとも、前に進ませず、後ろには退かせずが出来る程度の量ではあった。

 ――が、戦場に新たな駒を加えられるのは、猟兵の側とて同じ。
「よかった! 間に合ったわね!」
 不意に歪んだ空間から飛び出してきた黒瀬・ナナ(春陽鬼・f02709)は、一日限定数個の甘味でも求めに来たかのような声音で言って、薙刀を振りかざす。
「あとはおねえさんに任せなさい! 支配者気取りで高慢ちきな悪い子は、みんな纏めて懲らしめちゃうんだから!」
 何処からでもかかってきなさい!
 勇ましく言い放ちながら、しかしナナは敵が攻めてくるのを待つまでもなく、自ら斬り込んでいく。
 やはり種族そのものが闘争を好んでやまない羅刹としては、大軍を前にして血が滾るに違いない。
「ほらほら、私はこっちよ!」
 風神の加護を得た健脚で以て、野山を駆けるが如き軽やかさで中空を飛び回る。
 その度に翻る裾から、ちらりと覗くおみ足の美しさが敵を誘惑――。
『ふざけたガキだ! 撃ち殺せ!』
 誘惑するかと思っていた所で、帝国兵のバイザー越しから聞こえたのは非情なる無関心。
 それがナナの、心の箍を一つ、ぽんっと軽く吹き飛ばした。
「誰がガキですって! 私はおねえさんよ!」
 お酒だって飲めるんだから! ――と、やや的はずれな反論をしつつも振り回される薙刀が、小型戦車と連携を図ろうとしていた兵士の一群を纏めて薙ぎ払う。

「これは、もたついておれば全て掻っ攫われてしまうかのう」
 勇ましい光景を前にくぐもった笑い声を漏らしつつ、ツーユウ・ナン(粋酔たる女用心棒・f04066)は拳を構えた。
 それから――飛んできたビームキャノンの一撃を“平手”で受け流す。
『なっ……!?』
「それほど驚くことでもあるまいに。どうも鉄砲やら絡繰やらに頼りすぎて、武芸の基本を喪っているようじゃの」
 ならば実戦で叩き込んでみせよう。
「尤も、それを活かす機会などないじゃろうが」
 ツーユウはニィと笑って床を蹴る。
 素直過ぎる突進にはビームキャノンだけでなく歩兵部隊の熱線銃までもが向けられた。
 しかし、どれほどの威力を秘めた兵器だろうと当たらなければ意味はない。
 加えて、迫るドラゴニアンの拳士は矢弾の嵐くらいで竦みはしない。
 自らの身体と同じ軸線に乗ったエネルギーだけを的確に掌の闘気で弾き、ツーユウはするすると戦場をすり抜けていく。
 そして程なく辿り着いたのは、小型戦車の前足の狭間。
 そこで白い鉄板を一撫でして感触を確かめると。
「哈ッ!」
 強く床を蹴りつけて生まれた力を、脚から両掌へと伝えて一気に叩き込む。
 戦車はがくんと大きく揺れて、それきり動かなくなった。

「ふむ、この宇宙服とやらも存外悪くない。勁もいつもどおり扱えそうじゃ」
「それは良かったわ! じゃあ、この勢いで残りもばしばし片付けていくわよ! ――あなた達も行けるわよね!?」
 両掌を開閉しつつ呟くツーユウから、第一陣の猟兵たちに目を向け直して、ナナが問う。
「勿論、まだまだ大丈夫です」
 身体の力も、放つべき矢も残っている。フィンが応えると、ナナは一度だけ大きく頷いてから再び敵群へと斬りかかっていく。
 その背を追うように、矢を番えたフィンは彼方の敵へと狙いを定めて――。
「観測、索敵、ルーティン起動。目標オールレンジ」
 間近で聞こえた声に振り返る。
 また新たな仲間だ。……不健康そうな子供にしか見えないが、今此処に居るということは猟兵で間違いない。

「今から撃つ光を同じところを狙え。それで大概の事は済む」
 やや横柄というか尊大な口ぶりで指示するなり、弦切・リョーコ(世界演算機・f03781)は閃光を迸らせる。
 一斉に放たれたそれは、九十五本の光線となって的確に戦車の胴体部へと届いた。
 其処を目掛けて、慎矢やフィンの弓、ミストの砲撃、宵の流星の矢などが次々と向けられる。より効率よく、集中された力は装甲を打ち破り、兵器に最も重要な部品、つまりは搭乗者を破壊していく。
 そして程なく――爆音が静まり、銃声が途絶えて、剣戟も止む。
 それは無数の小型戦車と完全武装した帝国兵を残らず退けて、猟兵たちが格納庫の制圧に成功した事を示していた。

●終結
 殆ど全ての戦闘要員を喪失した戦艦には、猟兵を止める手立てなどない。
 艦内構造と状況をハッキングにて把握したリョーコの進言に従い、一行は戦艦内を手当たり次第に破壊しつつ、ブリッジへと乗り込み、工作艦シュティーアに連絡を取った。
 解放軍だと告げれば、老人たちは通信機越しに歓声を上げる。
 彼らを快く出迎えるべく、猟兵たちはワープドライブの装着に現れたミディアの艦へと移り、帝国戦艦に引導を渡した。

「……おお」
 間もなく姿を現した、骨董品とも言うべき古い艦の姿に、リョーコは知的好奇心を掻き立てられる。
 設備も気になるが、それを扱う老練な技術者たちもどんな人物であるか、大層興味が湧く。
 元来の気質に突き動かされるまま、リョーコはいの一番にシュティーアへと乗り込んだ。
 そして――。
「ミディアちゃんじゃあ! 生ミディアちゃんがお迎えにきたんじゃあ!」
「長生きしとってほんとーによかったわい!」
 年甲斐もなく興奮して、あちこちで騒ぐ老人たちの姿に、暫し呆然と立ち尽くすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月05日


挿絵イラスト