2

羅針盤戦争〜攻略フカ能？　巫女の楽園

作者：沙雪海都

●不可能な島、フカの島
　ジャングルの奥地。密集するマングローブ林を奥へ奥へと進んでいった先の秘境。
　そこでは森羅の巫女と呼ばれる者達が熱心に祈りを捧げていた。
　祈りの対象たる御神体は何とも奇妙な形をしていた。言ってしまえば、巨大な子宮のよう。
　何を象徴するものなのかは定かではない。だが、祈りを捧げている限り、この島にはある海洋生物を模した怪物が生まれ続けるのだ。
「「「ラーララーラララーラー……」」」
　狂いなく重なる声は、冒涜的な怪物を生む――。

●ジャングル探検隊結成します！
「へんてこな島を発見しました！」
　ロザリア・ムーンドロップ（薔薇十字と月夜の雫・f00270）は「ぐりもあのーと」を広げて島の形状を見せた。ぐねぐねと海岸線が曲がりくねった、なんだかアメーバみたいな島だった。
「このへんてこな島ですが……ただへんてこなだけじゃないんです。実は、この島の中心で『森羅の巫女』という者達が祈りを捧げ、怪物を生み出していることがわかったんです！」
　島はグリードオーシャンという広大な海洋世界を開拓する足掛かりになる。羅針盤戦争が行われている現在は島の存在が非常に重要であり、それが敵側の手にあるとなれば、猟兵達は解放のために動かねばならない。
「怪物の外見はですね……こんな感じです！　サメです！　なんか色んな所にいるサメですが、こんな島にもいたんです！　しかも手と足が生えてます！　サメ人間です！　本当はもっとごつごつしているのですが、今回は皆さんのためにデフォルメしてます！」
　愛らしいサメに手足が生えて、ちょっとしたクリーチャー。しかしロザリアのデッサンのタッチがファンシーであるために、何とか見るに堪える姿になっていた。
　ということは、本物はもっとげんなりするような外見なのか。一抹の不安がよぎる。
「それと、この島のジャングルもちょっと大変な環境ですね！　水辺です！　多分普通の人なら腰くらいまでは浸ってしまうのではないでしょうか！　私は首の辺りまで浸かってしまうかもしれません！　そんなところに木がぶわーって感じのマングローブ林になってるみたいですね！　何か、ジャングルを抜けるための方法を考えておいた方がいいと思います！」
　強引に乗り越えてもいいのかもしれないが、快適に進む方法があればなお良いだろう。
「なお、この作戦については、森羅の巫女が祈りを捧げる御神体を破壊することが最終目標です！　それで、森羅の巫女も島の怪物も全部溶けてなくなってしまいますので！」
　怪物とは無理に戦う必要はない。遭遇してもやり過ごす方法などを考えておくのもいいだろう。
「どんどん新しい事件が見つかっているかと思います。大変かもしれませんが、継続は力です！　頑張りましょう！」

第1章 冒険 『怪物化した海獣たちの無人島』

POW   :    怪物化した海獣の脅威を打ち払って前進する SPD   :    不気味なジャングルを探索して、目的地である島の中心を目指す WIZ   :    ジャングルの生態や、海獣の行動・習性などから、島の中心地を割り出す 👑7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●サメ人間もびっくりだよ！
　上陸、というには何とも心許ない海岸だった。猫の額ほどの広さの砂浜の先はマングローブ林。海のように広い広い水辺が行く手を塞いでいる。
「成程、水位は僕だと肩まで浸かってしまうくらいね。深く潜れないなら……上を歩いたほうが早いかな」
　ラガルルク・デンケラ（先見の魔女・f28988）は、ぴょいと太い枝に乗る。下を確かめてみるが、水は淀んで底までは見えてこない。サメが泳いでくるかも、なんて少し頭によぎったが、そういえばサメ人間だったことを思い出す。サメ人間なら水の中に身を隠しにくく、ひとまずの危険はなさそうに感じた。
「サメにはサメ……ごほん！　サメには竜をぶつけるんですのよ！」
　ニィエン・バハムート（竜王のドラゴニアン（自称）・f26511）は何かを言いかけて咳払いで必死に誤魔化していた。周りの者達は気にせず聞いている。
『現れよ！　竜の群勢！　バハムート・レギオン！』
　密林の中に現れたのは、竜の軍勢……のようなナマズ……のようなサメ。そこへ鋭い爪を持つ手足と大きな翼を生やせば、あら不思議、竜の完成……？
　ともかく竜である。自称というのは偉大であった。ニィエンが言っているわけであり、その竜のような生物が言っているわけではないのだが……代弁ということにしておこう。
「ジャングルって美味しい食材がいっぱいあるんだよね☆　これは是非とも解放しよう♪」
　ジャングルには豊富な植生――その中には人の口に合う果実などもあるだろう。ラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ（ハラペコかわいいコックさん（可食・高栄養・美味）・f31483）はルンルン気分でジャングルの中心部を目指す。
『嗚呼、世界はかくも美味しいのか！　さぁどうぞ召し上がれ♪』
　ラヴィラヴァのジャングル突破方法は巨大化であった。巨大化してしまえば水辺に嵌まって動けなくなる、などということもない。宇宙牛は食用、高栄養のため、是非一度ご賞味あれ。
　ともかく三人は島の中心を目指していく。巨大化したラヴィラヴァにはなんとなく島の中心らしいところが上方から見て取れたが、鬱蒼と生い茂るマングローブが邪魔で御神体の存在はまだ確認できていない。
「うんうん、輪をかけてちっぽけだね、僕は。でも、こうして全部任せられる仲間がいるのは心強いし、楽しいよ」
「えぇ、そうでしょう！　ラヴィラヴァさんは少々スケールが違い過ぎますけど……サメ人間に対しては斥候も送り出しておりますから、ご心配なさらず、自分のペースで進めばいいんですのよ！」
「うぅん、サメ人間？　あー、見える、見えるよー♪　アハハッ☆　びっくりしてる」
　ラヴィラヴァが無邪気に笑う傍で、ニィエンが送り出していたサメだか竜だかの斥候が帰ってきた。サメ人間が群れている場所が先にあるということだが、ラヴィラヴァの姿を見て慌てているらしい。
「僕はサメとの戦闘は避けておくね……でも、そうして集まっているなら、御神体はその方向の先にあるのかもしれない」
「そうですわね……ラヴィラヴァさん、サメ人間を倒して道を切り開きますわよ！」
「おーっけぇー！」
　ラヴィラヴァはまた変身、巨大化し、ジャングルの木々をなぎ倒していく。その下ではニィエンが雑魚掃討のように竜の軍勢を一斉に向かわせ、道中の異物を排除していた。
　ぷか、と水面に浮くサメの体を足場にして、ラガルルクは先を目指す。他の二人がサメ人間に対処してくれるなら、僕の役目は御神体探し――と息巻き、一直線、前方を凝視する。
「あぁ……あれ、かもね。もう少し先に進めば、はっきり見えそうだよ」
　ずりずりと進むラヴィラヴァ、ばさばさと竜を駆るニィエン、そしてぴょんぴょんと跳んでいくラガルルク。旅の終わりは近いか。
「そう、そう、あそこだね、いるよ、巫女達が」
　歌声のような祈りの声が、三人の耳にも届き始めた。彼女達は猟兵の接近に気付いていないのか、一心不乱に祈りを捧げ続ける。
「叩き潰すならお任せを。さぁ、行くのですわ！」
　ニィエンは竜にぺしっと刺激を入れて、一気に加速させた。翼が大きく広がり宙を滑空する。そして巫女達の頭上を跳び越えると、ガントレットですれ違いざまに横殴りで御神体を吹き飛ばした。ど真ん中から上半分がばっかんと割れて砕け、吹き飛んでいく。
「「「ラーラララ！？　ラーラー！？」」」
　よくわからないが、巫女達はラーラー言いながら狼狽えだした。普通の言葉は発することができないのだろうか。
　そんな疑問もすぐに潰える。ラヴィラヴァの巨体が迫る。
「はかい、はかいだー☆」
　巨体はすり潰すようにして、御神体の残った下半分をべきぼき破壊した。すると狼狽えていた巫女達が蝋のようにどろどろと溶け、消えていく。
「んー、終わりかな？」
「あぁ、そのようだね。見つけるまでが大変だったけど、見つかればなんてことはなかったよ」
「そうですわね。ラヴィラヴァさんのおかげで道中の障害も気にせず進めましたし……これにて一件落着ですわ！」
「じゃあ、次は宴会だねー☆　宴会、宴会♪」
　ジャングルの食材求め、ゆーっくりとＵターン。
　こうして一つの島の一つの事件は解決されたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2021年02月07日