羅針盤戦争~巨いなる海王
●冥き海より還りし嘗ての王
太陽の光も届かぬ、暗く冥い海の中。
人々の漁の対象になる魚類とは異なる独自の進化を遂げた深海の魚がいる世界。
その中を――巨大な何かが動いていた。
まるで海底の岩山が、壊れて流れている様な大きな影。
だがそれは、岩山などではない。
岩山が――泳ぐ筈もない。
それは、嘗てこのグリードオーシャンの海に君臨せしもの。
遥か昔から進化を繰り返し、その果てに海の中で並ぶものがいないであろう巨躯を誇っていたもの。
その巨大さ故か。偉大さ故か。
それは力と瞳を奪われても、忘れ去られる事はなかった。
森羅の巫女と呼ばれる者たちに、神と崇められ信仰の対象となっていた。
そして、現在。
それはこの海に戻ってきた。
死の領域から、戻ってきた。
陸上に住まう生き物を、この巨いなる海に引き摺り降ろす為に。
大海獣『オルキヌス』は戻ってきた。
●外洋の神の娘の島
「さあ着いたよ。ここが、オケアニデス島だ」
カツンと金属製の足場に音を鳴らして、ルシル・フューラー(ノーザンエルフ・f03676)は猟兵達を振り向いた。
島とルシルは言うが、辺りを見回せど、島らしさはない。植物も岩も、自然物は殆ど見当たらず――大半が明らかに人工物で形成されている。
「御覧の通り、島と言っても元々はスペースシップワールドの宇宙船だよ。かつて『オケアニデス』号と言う、海洋惑星の探査船だったらしい」
それがこの世界に落ちてきて――そのまま島の一つとなった。
今ではもう、探査船としての機能の大半は失われているが、人々の生活拠点としては充分に機能している。
「で、今さっき気づいたんだけど。このオケアニデス島。このままだと、もうすぐこの世界の地図から消える。跡形もなく綺麗さっぱりと」
七大海嘯の拠点を探し、蒼海羅針域(コンキスタ・ブルー)を広げる航海の中、ルシルが察したのは深い海の底から迫る脅威。
「全長50mはあろうかという『オルキヌス』と言う大海獣だ」
森羅の巫女たちが神と崇める、太古の海の王。
並ぶものなどそうはいなかったであろう巨体で、ありとあらゆる海の生物の頂点に君臨していたもの。今こうしている間も、深海に住まうサメを支配下に引き入れながら、この島に向かってきている。
「そして嘗ての七大海嘯の一角でもある」
現七大海嘯の一人『三つ目』が持っていた退化の力は、元々はオルキヌスの単眼の力であったという。
「その瞳も力も、まだ戻っていない。不完全な復活なのかもしれないね」
それでも、50mと言うその巨躯だけで、オケアニデス島を海の藻屑と変えるくらいのパワーは有しているだろう。
「というわけで、オルキヌスを倒して来て貰いたい。この島に近づかれる前に――出来れば、海の中で」
海中でも海上でも、オルキヌスの能力に差は生じない。
ならば広い海中の方が、島とオルキヌスとの距離を取った状況での戦いには、持ち込みやすい筈だ。
「幸い、オケアニデス島には、オケアニデス号だった頃の名残、個人用の海中探査用装備がまだ幾つか残っている。借りる手筈は付けておいたよ」
あくまで探査用であり、水中戦闘のための装備ではない。それでも、何もないよりはずっとましだろう。
「どこでどう戦うかは任せるよ。手段は問わない」
オケアニデス島を守るためにも。
蒼海羅針域(コンキスタ・ブルー)を広げるためにも。
「オルキヌスには、また海の底に墜ちて貰おうじゃないか」
泰月
泰月(たいげつ)です。
目を通して頂き、ありがとうございます。
でっかいシャチっぽい敵だー!
とイラストに引かれました。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、『羅針盤戦争』の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
今回は全長50mはあろうかという巨大海獣『オルキヌス』を倒すお仕事です。
巨大な敵との純戦シナリオです。燃えません?
プレイングボーナスは『海上・海中戦を工夫する』です。
なおOPに記載した通り、潜水装備レンタルできます。ただし探査用。
これは『そうした装備を所持していなくとも海中での呼吸が可能になる』程度の効果しかありません。
レンタルしただけではプレイングボーナスにはなりませんので、悪しからず。
プレイングは、公開時点から受け付けます。
今回、受付期間は短めにさせて頂き、書ける限りの採用で2/7~8で完成させる予定です。
一晩は開けておこうと思いますが、人数次第では2/7(日)の午前中くらいで締切とさせていただくかもしれません。
ではでは、よろしければご参加下さい。
第1章 ボス戦
『森羅冠す『オルキヌス』』
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POW : 冥海銀河オルキヌス・オルカ
【支配下にある海の生物】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[支配下にある海の生物]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD : 海帝覇濤ディープブルー
敵より【海に適応した生態をしている】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
WIZ : 回帰狂濤ティクターリク
攻撃が命中した対象に【「海に帰りたい」という強迫観念】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【肺から海水が湧き出す呪い】による追加攻撃を与え続ける。
イラスト:山庫
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「曾場八野・熊五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
フィロメーラ・アステール
「こいつは、デカい!」
とんでもない大きさだな!
あたしから見ればもはや山のよう!
こんなデカいヤツと正面から戦うのは危険かな?
いや、もっとデカいヤツがいたらどうだろう?
【下天あらたむ五行の星守】を発動だ!
【全力魔法】で海水から巨人を作り出すぜ!
その大きさは最大で90m以上!
コイツで【水中戦】を挑んでやるぞー!
巨体から放たれる【グラップル】で怪獣大決戦だ!
敵は海の生物が集まってくると強くなる……でも大乱闘の【衝撃波】が水中に伝わったらどうかな?
いわゆる石打漁のように気絶したりしちゃうかも!
あとこの巨人の、いちおう生えてる羽で水流を起こして【吹き飛ばし】というのもアリかな!
これで生物集結を阻止だー!
ナイ・デス
まさか……この世界で使う程の相手が、現れるとは思いませんでした
偉大なる海獣、オルキヌスさん……
世界に害なす、オブリビオンとなったなら
骸の海へ、お還りください……!
『文明守護竜』連続発動
大気、海水を一時的に竜化、世界を守るため、協力してもらい
無数の竜の集合体、大きく、強い巨竜となります
「惑星破壊級ブラスター」が使える程の、数十、百数十kmにも届く巨竜に
【覚悟激痛耐性継戦能力】維持に頭が破裂しそう、するけれど、聖者の力が再生させる。本体は無事だから死なない
そうして【念動力オーラ防御】を纏った竜の体が動き【重量攻撃】捕まえ
天に向けて【レーザー射撃】体内に再現したブラスターを放ち、消し飛ばしにかかる
●深海
水は空気よりも密度が高く重いものだ。
深く潜れば潜る程、水の圧力は高くなる。
その水圧ゆえに、呼吸を要する生物では潜れる限界がある。体内の空気が、水に押し潰されてしまうから。
深海魚に類される生物と同じ深さにまで、潜れる存在がいるとすれば。
それは埒外の存在でしかあり得まい。
――猟兵の様な。
●測定不能深度――海水より作られし竜と巨人
陽の光も熱も届かない深海。
まるで冥府の様に冥い海は、現在も昔も、オルキヌスの天下である筈だった。
いる筈がなかった。
オルキヌスよりも大きな、黒い竜など。
(『ナンダ――ナンダ、ナンダ、ナンダ。ナンダ、アレハ』)
(「もう遭遇してしまいましたか……」)
困惑してじっと見据えるオルキヌスの視線を、黒い竜――の中枢でナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)が浴びていた。
――文明守護竜
周辺の自然環境を新生ダイウルゴスと変える業。
ナイは、何度も何度もその業を使いながら、海の中を潜ってきた。海水を竜に変えながら潜り、水圧に圧し潰されそうになったら、また海水を竜へと変える。
繰り返す度に、海水が変化した竜の体躯は倍増していく。
そうしてナイは、オルキヌスの巨躯を越えたダイウルゴスとなった。
だが――まだ早い。
変化と合体を繰り返せば、数十Kmの巨竜たるダイウルゴスにだってなれる筈なのだ。そうなるつもりで、ナイは海の深くを目指したのだ。
目指した巨竜の体躯には、まだ足りない。
(「まさか……この世界でここまで使っても十分と思えない程の相手が現れるとは、思いませんでした」)
それでも出会ってしまったのなら、戦う以外にない。
ここがナイの――ナイ=ダイウルゴスの、フロンティア・ラインだ。
「今を守る力を、みんなに。世界を、守りましょう。私達は、文明を守護する竜、ダイウルゴスです……!」
最後にもう一度、海水を竜と変えて合体しより大きくなって、ナイ=ダイウルゴスはオルキヌスに掴み掛る。
『何者カ知ラヌガ――ソノ姿、ソノ翼。陸ニ上ガッタ竜風情ガ!!!』
オルキヌスから伝わる怒りの思念を感じた直後、ナイ=ダイウルゴスの身体に凄まじい力がかかった。
オルキヌスが泳ぎ出したのだ。
「行かせ……ません!」
竜の腕に力を込めて、ナイ=ダイウルゴスはその突進を阻む。
だがオルキヌスの周りに、深海に生きる魚類、特にサメが集まり出した。
ラブカ、メガマウス、ギンザメ――様々な深海のサメの群れが、ナイ=ダイウルゴスの腕や脚、身体に食らいつこうとする。
その全てはナイ=ダイウルゴスの念動力に阻まれていたが、数が増えるにつれて、次第にオルキヌスの押す力が強くなっていた。
(「このままでは……アレを使う余裕が」)
ダイウルゴスの姿を維持しながら、念動力も使い、念動力を使いながら、周囲の水圧やオルキヌスの押し込みにも耐える――それらが齎す痛みに、ナイは頭が潰れるか破裂しそうになっていた。聖なる光が癒す傍から、続く痛みがナイを襲い続ける。
このままでは、ダイウルゴスの姿を取ったもう一つの理由を使う余裕がない。
「何だ、何だ。デカいのが2ついるぞ! 1体じゃなかったのか!」
そこに、星の様な輝きと新たな猟兵の声が降ってきた。
「そっちの竜は見覚えあるな。猟兵っぽいし、もう片方がオルキヌスか。どっちもとんでもない大きさだな!」
その輝きがなければ、ナイ=ダイウルゴスも、オルキヌスも声の主がどこにいるのか、すぐに気づけなかっただろう。
「あたしから見ればもはや山のようだな!」
現れたのはフィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)――身長22cm程度の、小さなフェアリーなのだから。
「こんなデカいやつとの戦うなら、もっとデカいヤツが必要だな」
フィロメーラの纏う輝きが、強く明滅する。
「最大まで魔力を込めてやる。星を廻る命の形……デカくなれ!」
『!!』
周囲の海水が、フィロメーラに向かって集まって行く。
直後、巨大な水の腕がオルキヌスを掴んでいた。
下天あらたむ五行の星守――キャラクター・ミューテーション。
周囲の自然物から動物を作り出す術。
フィロメーラは海水から『巨人』を作り出していた。
そもそも、フィロメーラがこんな深度まで潜って来れたのも、海水の巨人の中に入り込む事で水圧から身を守ってきたからだ。
海水を利用し、巨大な力を得る。
ナイとフィロメーラが取った手段は、その過程も性質も違うが、奇しくも着眼点と最終的な帰結が似ていた。
海水ならば、オルキヌスを越えるだけ使っても有り余るほどの量が、この世界中に溢れているのだから。
90m以上――フィロメーラが込められる限りの魔力を込めてオルキヌスよりも大きくなった海水の巨人は、その巨腕の片方でオルキヌスを掴み、もう片方で殴りつける。
「巨人よ、周りの生物も蹴散らしとけ!」
フィロメーラの声で海水の巨人は、その背中の翼を羽ばたかせる。それで生まれた水流が、ナイ=ダイウルゴスに食らいついていた深海のサメを、押し流した。
「しばらくは抑える! 何か狙ってるんだろ――やっちまえ!」
フィロメーラは海水の巨人を再びけしかけ、支配下の生き物が周囲から減ったオルキヌスに、海水の拳を連続で叩き込んだ。
海水の砲弾の如き拳打の衝撃が、オルキヌスを押しとどめ、押し流された深海のサメたちに近づくことを許さない。
(「偉大なる海獣、オルキヌスさん……」)
文字通りの水中格闘から、ナイ=ダイウルゴスが距離を取る。
その体内に、ナイは力を集めていた。
惑星破壊級ブラスター。文明守護竜を何度も重ねて使った時のみ使用可能な力。
(「世界に害なす、オブリビオンとなったなら、骸の海へ、お還りください……!」)
フィロメーラの参戦で溜める余裕が出来た力を、ナイ=ダイウルゴスは一気に解き放った。凄まじい熱と光の奔流が、深海に迸る。
『!!?!?!?』
「おっと、逃がさないぜ!」
咄嗟に身を翻そうとしたオルキヌスをフィロメーラの海水の巨人が押さえつけ――オルキヌスの巨躯が、光の奔流に飲み込まれた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アリス・レヴェリー
【選択UC】を発動して、シロナガスクジラに似た幻獣のお友達、ムートを召喚
わたしはドールだから海の中でも平気だし、彼のお口の中に潜んで海中のオルキヌスへと挑むわ
体格では大体35m程と不利だけれどあらゆる場所を泳ぐ力を持ち、今の海を生きているムートは……もはや過去であるオルキヌスに、海への適応という意味では決して劣らない筈
ムートの魔法の力による氷の大槍等で応戦して、彼が受ける傷は身につけた魔法のチョーカー『我儘な献身』の力で、わたしの左腕で引き受ける
隙を見つけたら口の中から出て、敵の単眼へとわたし自身がムートと同時に攻撃するわ
あなたのおめめはひとつだもの
わたしとムート、同時には見られないでしょう?
●未だ深度不明――海獣と幻獣
海のそこで起きた光は、海上に届かず霧散した。
だがその衝撃は、オルキヌスの身体に残る大きな傷跡が物語っていた。
(『オノレ、オノレ――オノレオノレオノレオノレ! モットダ! モット海ノ生物ヲ支配下ニオケバ、アノ者タチナドニ追イヤラレル事モナイ筈ダ!』)
いきなり思わぬ痛手を受けたオルキヌスの怒りが、海に響き渡る。
その思念が、また海の生物を支配下にするのだろう。
だがその思念を感じたのは、支配下になるものばかりではない。
「もう誰かが戦ったみたいね。お怒りよ、ムート」
冥い海の中にあって、その純白の身体が星の様に眩い白鯨の幻獣『ムート』と、その口の中に隠れたアリス・レヴェリー(真鍮の詩・f02153)にも届いていた。
「ムート。見ての通り、体格ではあなたが不利。でもあらゆる場所を泳ぐ力を持ち、今の海を生きているムートなら……もはや過去であるオルキヌスに、決して劣らない筈よ」
アリスが内から魔力を放ち、氷で覆うムートの身体は35m程。
オルキヌスの7割ほどだが、ムートが負けないと、アリスは信じていた。
「行くわよ、ムート。揺蕩う勇魚、優しき王よ、微睡み歌う、わたしの友よ!」
友なる白鯨、悠然の調べ――カーム・オブ・ムート。
アリスの信頼に応えて、ムートは尾びれで水を強く蹴って、オルキヌスに向かって真っすぐに進んでいく。
黒と白の混じった巨体と、純白の巨体の距離が近づき――どちらも避けずに、ドゴンッと鈍い音を立てて、ぶつかり合った。
ムートが纏った氷が砕けて、その身体以上の距離を押し戻される。
だがオルキヌスもほぼ同じ距離、押し戻されていた。
『馬鹿ナ……同等ニ海ニ適シテイルダト』
驚きながらも再び泳ぎ出したオルキヌスに、ムートが氷の槍を放ち抑え込む。
――パキンッ、パキンッ。
巨体と巨体がぶつかる度に、ムートの口の中で、アリスの左腕に亀裂が走っていた。
それは、アリスの首に着けたチョーカーから伝わった衝撃の被害。
我儘な献身――友たる幻獣が受ける被害を代わりに受けるアリスがムートの中にいる事を、オルキヌスは知らない。
『何故ダ! 何故、クジラ如キニ』
だからオルキヌスには、己ばかりが傷ついているように思えていた。
「今よ、ムート」
オルキヌスが冷静さを欠いた瞬間、ムートが開いた口からアリスが飛び出した。
その左腕はもう半壊していたが、そんな身体でも血の通っていないミレナリィドールの身体なら、まだ少し、深海に耐えられる。
「あなたのおめめはひとつだもの。わたしとムート、同時には見られないでしょう?」
ムートしか見えていないオルキヌスの単眼に、アリスの放った氷が突き刺さった。
大成功
🔵🔵🔵
エル・クーゴー
●POW
あれが海賊・ハイレディンが眼窩に装填していた瞳の「本家」――
撃破目標を目視で捕捉しました
躯体番号L-95、海中戦仕様にシフト
これより、敵性の完全沈黙まで――ワイルドハントを開始します
・【狩猟の魔眼(状態異常力重視)】発動、電脳魔術を広域展開
・オルキヌス支配下の海生物らに対し【ハッキング】を実施、意思統一をジャミングし【切断】することで敵コードを強化させない
・マニピュレーターでアームドフォートはじめ己の装備を改修(メカニック+武器改造)
・銛を発射する捕鯨砲に魚雷、己の搭載武装/使用火器を海中戦仕様に改修
・鎧装騎兵のプラズマジェットも海中の【推力移動】に使えるスクリューへと変更し立ち回る
レナータ・バルダーヌ
水中でこれほどの巨体相手となると、潜水装備をお借りしたとしても生身で戦うのは骨が折れそうですね……。
今こそ、これまでの戦争の臨時収入を貯めて購入した万能機動艇『ごぼ天号』の出番のようです。
いざ、【ごぼ天号スクランブル!】
ごぼ天号はかんたんボタン操作なので、機械に不慣れなわたしでも操縦できます。
自動操縦にすれば敵の呪いで溺れても戦えますけど、あまり時間はかけられませんね。
搭載しているミサイルも1基ですし、呪いの効果範囲に入ったら一撃離脱を試みましょう。
「えーっと……『全自動』『スピーディ』『脱水』、っと」
何を隠そう、わたしはゴボウのオラトリオです。
ゴボウは山のものですから、海には帰りませんよ!
ミスト・ペルメオス
・POW
――墜ちろ、大海獣。
愛機たる機械鎧を駆って参戦。
ヘルム等を介して念動力を活用、機体をフルコントロール。
想定される戦域は海上もしくは海中。愛機の本領発揮は難しい。
――このままでは。
念動力を最大限に解放。【ミューテーション・アンスピーカブル】……!
異次元領域にアクセス。膨大なサイキックエナジーを汲み上げ、自身と愛機をサイキックエナジーとの融合体へと変異させて。
深海にまで吹き荒れる念動力の嵐を放ちつつ、海中へと飛び込む。
物質界から半分抜け出した状態相応の機動で突き進み、念動力を乗せた射撃を叩き込むことで大海獣を攻撃。
周囲の取り巻きを蹴散らし、幾度となく喰らい付く。猛禽のように、或いは……、
●水深:約2000~1500m――科学技術の集重
(『何ダ……何ナノダ。ドウナッテイル!』)
いきなり思わぬ痛手を受けて、さらに単眼を傷つけられたオルキヌスは、それでも諦める筈もなく、また浮上してきていた。
ここまで来る間に、途中の深度にいた魚類も再び従えている。
「――来たか」
レーダーに反応あり。
漆黒の機械鎧『ブラックバード改』の中で、ミスト・ペルメオス(銀河渡りの黒い鳥・f05377)が閉じていた目を開く。
『ソレデ隠レタツモリカ』
「音で見るのだったか。奇襲は無理か」
届いたオルキヌスの思念に、ミストは機械鎧の中で呟く。
鯱や鯨は音の反響で水中の様子――獲物や同族の位置を把握するという。
ミストの乗る9m程の黒い愛機は深海の暗闇に潜んでいたが、オルキヌスには気づかれていた。元より、全領域での稼働を想定して作られた機械鎧とは言え、海中は本領発揮できる空間ではない。
だからミストも、正面から戦うつもりはなかった。
「シュラウド、――その力を、貸せ……ッ!」
異次元の領域から汲み上げられた膨大なサイキックエナジーが、『ブラックバード改』とその中のミスト自身に融合していく。
ミューテーション・アンスピーカブル。
物質としての形を一時的に失い、サイキックエナジーの融合体となる業。
そうして得られるものは――深海の水圧に負けない、念動力。
ゴゴゴッ!
念動力の嵐が深海に渦巻き、吹き荒れる。
『!?!?ナ、ナンダ!?』
未知の水流に、オルキヌスも支配下の生物も動けない。
オルキヌスの進行が止まった所に、新たな猟兵――猟兵なのだろうか。
大きな円柱形の何かが、ぐるぐる回りながら潜ってきた。
『うわぁ、すごい巨体ですね。これほどの巨体となると、生身で戦うのは骨が折れるなんてものではなさそうです。『ごぼ天号』の出番で正解でしたね』
円柱の中から、レナータ・バルダーヌ(護望天・f13031)の声が響く。
円柱に見えたのは、レナータがコツコツと費用を溜めて購入した万能機動艇――その名も『ごぼ天号』である。
そんな船っぽくないフォルムの『ごぼ天号』の陰から、別の猟兵も現れた。
「あれが海賊・ハイレディンが眼窩に装填していた瞳の「本家」――」
自身の装備を自ら改造して、海中戦仕様にシフトしたエル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)である。
「撃破目標を目視で捕捉しました。躯体番号L-95。これより、敵性の完全沈黙を目標として――ワイルドハントを開始します」
エルが淡々と告げると同時に、プラズマジェットから改造したスクリューがゆっくりと回転し始める。
「あの嵐の様な水流、範囲を抑えてオルキヌスのみに出来ますか?」
「――可能だ」
エルの問いに、ミストが頷く。
「では合図でお願いします」
そう言い残し、エルは水を蹴って跳び出す。スクリューで得た推力に乗って、念動力の嵐が渦巻く領域のぎりぎり外を回って行く。
「ザミエルシステム、起動」
ぐるぐると渦の周囲を回りながら、エルが電脳ゴーグルを装着する。エルが通り過ぎた後には、電脳魔術のウインドウが浮かび上がっていた。
「――ハッキングを開始します」
広域展開した電脳魔術のウインドウに、無数の文字が走る。
だが、何をハッキングしようというのか。
この場にいるのは、オルキヌスもその支配下にある生物も、生身の生き物の筈だ。どちらの身体にも、ハッキング出来るような機械はない筈なのに。
狩猟の魔眼――ザミエルシステム。
その真価は、術式の展開範囲の広さだけではない。超高度な情報分析と状況予測。それらがエルの視界と意識にフィードバックされる事にある。
エルには視えていた。オルキヌスから深海魚たちへ流れる力。深海魚を支配下に置いている力。オルキヌスのユーベルコードの流れが。
エルがハッキングしたのは、その流れだ。流れを切断し、繋がりを妨害する。
「今です」
「心得た」
エルの合図でミストが念動力を弱めると、支配下から解き放たれた深海魚たちは、散り散りに離れていった。
「おやおや? これは、絶好のチャンスと言うものでは」
『ごぼ天号』の中から、レナータはオルキヌスの周囲から深海魚が離れていくのを確認していた。
そしてオルキヌスは動けないままだ。
今こそ、『ごぼ天号』の唯一の攻撃手段を使う時ではないか。
「動けないなら、呪いもかからない筈。今の内に攻撃してしまいましょう。自動操縦にすれば呪いで溺れても戦えますけど、あまり時間はかけられませんね」
レナータは傍らの『ごぼ天号操作マニュアル』を、パラパラと捲った。
『ごぼ天号』は、かんたんボタン操作。
だから機械に不慣れなレナータでも、ここまで操縦してくることが出来た。
だが、今から撃つのは、たった1基だけ搭載しているミサイルだ。外すことは出来ないし、反撃で呪いを受ける前に離脱したい。
だからレナータは、うっかり間違えないよう、ボタンを押す順番を調べる。
「えーっと……まずは『全自動』ですね」
レナータがぽちっとスイッチを押すと、『ごぼ天号』がゆっくりと傾いて――船体の中央を貫く形で搭載されたミサイルの弾頭を、オルキヌスに向ける。
「さらに『スピーディ』『脱水』、っと」
なんだろう、このボタンは。
もしかして、『ごぼ天号』ってば洗濯機って家電の凄くデカい親戚みたいなものだったりするのだろうか?
ズドンッ!
大きな音を響かせて、大型ミサイルが『ごぼ天号』から発射された。
って言うか――え?
「わたしはゴボウのオラトリオ。ゴボウは山のものですから、海には帰りませんよ!」
そう言い残したレナータを乗せて、『ごぼ天号』が早々に離脱を始める。
一方、発射された大型なミサイルが、オルキヌス目掛けて落ちて来ていた。
『っ!!!! オ、オノレ!』
「じたばたするな――無駄だ」
流石に脅威と見たか、身をよじり出したオルキヌスの動きに、ミストが念動力を強めて渦巻く流れを強くする。
念動力の嵐を抜け出せないオルキヌスに、迫るミサイル。
「砲撃、合わせます」
銛を撃ち出す捕鯨砲と、魚雷を撃ち出す砲に変えたアームドフォートを、エルがオルキヌスに向ける。
「――墜ちろ、大海獣」
ミストも多連装粒子散弾砲『ヘルファイア』を向けて――放つ。
大型ミサイルに、魚雷と銛と、圧縮エネルギーの散弾。世界を越えた科学技術の武力が重なり、オルキヌスが大爆発に包まれた。
渦巻いていた水流が破裂し、大量の気泡が拡散する。
気泡が静まり辺りに静寂が戻った時――オルキヌスの姿はなく、しかしその巨躯から流れたであろう血が漂っていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…そう。装備を借りれるならありがたく
…お陰で余分な魔力を使わなくて済む
…貴方達から借り受けたこの装具を使い、
必ずや、オルキニスを海の藻屑にしてあげる
潜水装備を借り空中戦を行う"血の翼"の推力で水中を進み、
UCを発動し反響定位を用いて周囲の敵の位置や動作を暗視して見切り、
敵の攻撃を超音波震動のオーラで防御して受け流し、
魔力を溜めた指向性の超音波を乱れ撃ち敵の体内に切り込み、
分子結合を切断する超震動で内臓を粉砕する音波属性攻撃を放つ
…音は大気中より水中の方が減衰せず遠くまで飛ばせる
…わざわざ近付くまでもない。此処から撃ち落としてやるわ
…消えなさい、時代遅れの海の王様
お前には骸の海の底がお似合いよ
七那原・望
【果実変性・ウィッシーズウンディーネ】で【水中戦】。
【全力魔法】で自身の【リミッター解除】と【深海適応】。
風【属性魔法】による【高速泳法】で【水中機動力】を高め【弾幕】で挑発。
放置すると鬱陶しい餌と思わせるよう【誘惑】しつつ深く深海へ。
今のわたしに深海で活動する上でのハンデはありません。
ここまで来れば海への適応度合いとしては同等、もしくはこちらが僅かに上回るはず。
【第六感】と【野生の勘】、【聞き耳】による反響定位で敵の行動を【見切り】回避。
オラトリオによる【カウンター】【クイックドロウ】【全力魔法】【マヒ】【弾幕】で攻撃を。
相手が深海から脱出しようとしたらオラトリオの【早業】で【捕縛】します。
●水深:約1500~1000m――深海で羽撃く翼
――ギュィ。
――ギュィ。
海の中に、時折そんな甲高い音が響くようになっていた。
それは、オルキヌスの鳴き声だ。
一部のクジラ類の生き物は、指向性のある音を発し、その反響で周囲の状況や獲物との距離を測る能力を持っている。
反響定位――エコーロケーションと呼ばれるものだ。
オルキヌスも、その能力を有していた。
だがその音を聞いているのは、オルキヌスだけではない。
「敵発見、なのですー」
聞こえてきたその音に、七那原・望(封印されし果実・f04836)は背中の白い翼を大きく広げた。
白い翼を羽ばたせ、望はまるで空を飛ぶような速さで水中を進む。
果実変性・ウィッシーズウンディーネ。
幾重にも強化魔法を重ねて得た、水中戦特化形態。水中呼吸が可能になるばかりか、爆発的な遊泳速度と反応速度を得るに至ったが、そこまで重ねた強化の魔法の反動は、望の寿命を僅かながらに削り続ける。
そんな負担を感じさせない動きで、望は音を頼りに進んでいく。
そして、もう1人。
(「……見つけた」)
リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)もまた、オルキヌスが発した鳴き声を聞き取っていた。
吸血鬼狩りの業・天響の型――カーライル。
その業によってイルカの持つ反響定位の能力を得ているリーヴァルディには、オルキヌスの鳴き声は良く聞こえていた。
本来なら、人の耳に聞こえない音域のものすらも。
(「借りた装備――無駄にはしないわ」)
限定的に吸血鬼化したリーヴァルディの背中から、血の様な朱が広がる。
空を飛翔する為の血色の魔力の双翼を推進力に、リーヴァルディもまた、聞こえた音の方へと飛ぶように泳いでいった。
そして――。
「ここで通行止め、なのですー」
「……狩人からは逃れられない」
白と朱。
色の違う翼を持つ2人の猟兵が、オルキヌスの行く手を阻む。
深海に現れたオルキヌスは当初、鳴いていなかった。
オルキヌスが鳴き声を発するようになったのは、猟兵達がいたからだ。
何度か猟兵と遭遇し、その度に看過し難い痛手をこうむり続けたオルキヌスは、猟兵達を脅威とみなし、その位置を反響定位で把握しようとした。
その為の鳴き声で、逆に猟兵に見つかってしまうとは――皮肉なものだ。
白い翼を羽搏かせ、風を起こして望が深い海の中を飛ぶ。
オルキヌスの単眼の前を飛び回り、分離させた『銃奏・セプテット』の七つの銃口から弾丸を浴びせかける。
「こんな小さなわたし一人、捕まえられないなんて、大したことないのですー」
望が重ねる、弾幕と挑発。
オルキヌスの巨躯からすれば、弾丸も豆粒程度かもしれない。それでも数を重ねて撃ち続ければ、鬱陶しいというものだ。
そう思わせる事が、望の狙い。
自身を放置すると鬱陶しい存在と思わせて気を引く事で、深海へ誘導する。
「ほらほら、わたしはこっちですよー」
オルキヌスの巨躯の横を飛び抜けて、望は尾の先に回り込む。そこで再び七つの銃口を向けて、一斉に放つ。
ぶォんっ!
「っと!」
煩わし気にオルキヌスが尾を振るのを先に察して、望はその場から飛び去った。
望が離れた空間を、強烈な水流が過ぎていく。
「餌……とは見てなさそうなのですー」
オルキヌスとの水中適応に差が生じていないのは望の予想通り。だが自身を餌に深海へと誘惑するのは、予想通りとはいかないようだ。
とは言え――気は引けた。
隙は作れた。
「海の藻屑にしてあげる」
オルキヌスを離れて眺め、リーヴァルディが指を鳴らす様に打ち合わせる。
パチン――と言う音は聞こえない。
水中だからではなく、リーヴァルディがその音の振動を震動にまで増幅し、指向性を持たせてオルキヌスへと放ったからだ。
天響の型は、単に反響定位の能力を得るだけではない。元来はイルカが生きるための能力を、戦闘用にまで高める業だ。
『!!!』
超震動の音波と呼べるほどになったリーヴァルディの飛ばした音が、オルキヌスの巨躯を撃ち抜く。
「……わざわざ近付くまでもない。此処から撃ち落としてやるわ」
音は空気中よりも水の中の方が、速く遠くまで届く。
リーヴァルディは立て続けに指を打ち合わせ、超震動の音波を放ち続ける。
しかし、オルキヌスもまた、反響定位の能力を持つ。
リーヴァルディの攻撃が音を使ったものだと気づいたオルキヌスが、ギュィッと甲高い鳴き声を放った。
リーヴァルディの音波を相殺する程ではないが、その威力を減衰する程度にはなる。
「私と撃ち合おうというの? いいわ、付き合ってあげる」
深海で繰り広げられる、音の応酬。
しかしそれは、あっさりと止まった。
「やっと効いたのですー」
望が何発も撃ち込んだ弾幕は、挑発の為だけではない。
全ての弾丸に、マヒの効果を込めていた。豆粒ほどでも重ねた力が、オルキヌスの動きを封じる。
「……消えなさい、時代遅れの海の王様。お前には骸の海の底がお似合いよ」
動きの止まったオルキヌスを、リーヴァルディの放った超震動の音が撃ち抜いた。さらに攻撃を重ねようとしたリーヴァルディの目の前で、身体が動くようになったオルキヌスは2人から逃げるように上昇し始めた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ニィエン・バハムート
私は竜王ですが深海人。【環境耐性】【深海適応】【高速泳法】【水中適応】なんでもござれですの。海中でも十分に動けますし、海上でも【水上歩行】と【空中浮遊】で問題なく動き回れますわ。
それでも敵は巨大ですし形態的にも水中での動きは私よりも上でしょう。敵の攻撃にはメガリスによって強化された発電能力による電気【属性・マヒ攻撃】を【カウンター】で仕掛け怯ませる等して対処。もしくは自身のメガリスから【衝撃波】を放ち、その勢いで無理矢理に避けます。
最悪、肺から水が出ても短時間であれば隠されたエラ呼吸で…。
私のUC攻撃は敵の大きさなんて関係ありませんわ。微塵切りにして差し上げますの!やーい!『元』七大海嘯ぅー!
陽向・理玖
でけー!
かっけぇ!!
そりゃ信仰の対象にもなるよなぁ…
だからこそ
還ってくるべきじゃなかった
…終わらせてやる
覚悟決め
龍珠弾いて握り締めドライバーにセット
変身ッ!
衝撃波撒き散らしつつUC起動
残像纏い各紙間合い詰めグラップル
拳で殴る
海中でも飛べば普通に動けるな
呼吸はオーラ防御で空気保って
足りなかったらヒット&アウェイで息継ぎ
海の生物引き連れて
海の王って感じだなぁ
なるべく…普通の生き物は倒したくねぇな
衝撃波ぶち当て吹き飛ばし
蹴散らしつつ
何体か倒したら気絶とかさせられるか
さすがに弱い場所も分かる
攻撃はスピード上げ見切り
暗殺用い目狙い部位破壊
拳の乱れ撃ち
強くてでかくてかっけぇなぁ
戦えて少し嬉しい
けど
もう還れ
●水深:約1000~700m――ダブルドラゴン
猟兵との戦いよりも、島を優先しようというのか。
なりふり構わず急浮上し始めたオルキヌスの行く手に、眩い輝きが飛来する。
「でけー! かっけぇ!!」
七色に輝く光を纏った陽向・理玖(夏疾風・f22773)が、目の当たりにしたオルキヌスの巨躯に思わず声を上げる。
「そりゃ信仰の対象にもなるよなぁ……」
理玖が零した素直な畏敬の言葉。
だがその声は、オルキヌスには届いていなかった。
龍神翔――ライジングドラグーン。
腰に装着したドラゴンドライバーを起点に全身を覆う七色の龍のオーラを、理玖はオケアニデス島の上で発動していた。
龍のオーラの内側に、地上の空気を留める為に。
いわばオーラは理玖にとっての潜水服。
故に理玖の声は纏うオーラの外には届かない。
だからだろうか。
オルキヌスは、理玖が突然現れても勢いを弱めなかった。
(『最初カラコウスレバ良カッタ。小サキ陸ノ生キ物ナド、コノ身一ツデ簡単ニ蹴散ラセルデハナイカ』)
大きさは、それだけで力だ。
遥かに小さきものに、怯む必要などない。
海の王たるオルキヌスの路が、海の中で途絶える筈などないのだから。
「……そんなになっても、止まる気はねぇんだな」
身体の表面だけではなく口からも血を流し、それでも止まらぬオルキヌスに、理玖は畏敬の念を強くしながら拳を握る。
「海の生物引き連れて、海の王って感じだしなぁ……止まれないのか」
またも支配下に置いたサメ類を引き連れ進む姿に、理玖は王の威厳の様なものも感じていた。
だからこそ――拳を握る。
「……終わらせてやる! ライジングドラグーン!!」
握った拳に込めた理玖の覚悟に呼応して、七色の龍のオーラがさらに強く輝いた。
輝きを纏った理玖が、オルキヌスに向かって飛び出す。
ここまで潜る間に、海の中でも飛ぶ要領で動けるのは把握している。空ならば高く飛べば気圧は下がるが、海の中は潜れば水圧が強くなる。
その違いを理解すれば、出せる最高速度に差が出るくらいだ。
「あんたらに用はねえよ!」
ツノの様な吻を持つサメも、鋸の様な頭部を持つサメも、理玖は龍神翔の速度で置き去りにして、オルキヌスの巨躯に肉薄する。
「おぉぉっ!」
そして、体格差をものともせずに、両拳を叩き込む。
『――!!』
「逃がすか!」
振り切ろうというのか、オルキヌスが泳ぐ速度を上げれば、理玖も飛ぶ速度を上げて食らいついて、さらに拳を叩き込む。
その行く手に、新たな光が現れた。
「まるで逃げているようですわ! やーい!『元』七大海嘯ぅー!」
バチバチと帯電して輝くオーラを纏って嘲る様に言い放ったのは、ニィエン・バハムート(竜王のドラゴニアン(自称)・f26511)である。
「ですが、竜王たる私が逃がしはしません!」
竜王と自称してはいるが、ニィエンは別にドラゴニアンでもない。
ニィエンは、ナマズ目の深海人だ。
世界魚『バハムート』を信仰する深海人の一族に生まれたニィエンは、ある日、知ってしまった。バハムートが『竜王』として扱われる世界もあると。
そこから竜王に傾倒するニィエンの人生が始まり、今では、海の生物の身体部位を減らしてでも竜の力を持つメガリスを移植するまでに至っている。
それでも、深海人の特性全てを失ったわけではない。
今でもニィエンは、この深海に適応し、泳ぐ事も出来る。
だが――それでは50mの巨躯を持つオルキヌスには足りないであろう。
だからニィエンは、海の中で待ち伏せていた。そして、気づいた。七色に輝く光が、なにかの周りを飛び交う様に動いているのを。
「これでもくらいやがれですわ!」
バハムート・オーラによって、ニィエンの発電能力が増幅される。本来、水の中で電気は拡散する筈だが、ニィエンが掌から放った電撃はオルキヌスを直撃した。
バヂィッと電撃が爆ぜて、オルキヌスの動きが一瞬止まる。
「これだけ殴っても、倒せる気がしねえ……強くてでかくてかっけぇなぁ」
一旦距離を取っていた理玖が、オルキヌスの頭部の前に回り込む。
「戦えて少し嬉しかった。けどな――」
オルキヌスの身体から、電撃の痺れが抜けていく。
その前に、理玖は両の拳を組んで腕を掲げた。
「あんたは、還ってくるべきじゃなかった。だからもう――還れ」
渾身の力を込めて、理玖は組んだ両拳をオルキヌスの単眼に振り下ろした。これまでにも攻撃を受けていた単眼が、その衝撃でついに砕け散る。
その後ろで、ニィエンが腕を掲げていた。
かつてはヒレがあったその腕にあるのは、竜の如き鋭い爪。
「この爪が虚空を切り裂いた時、あなたは微塵切りですの……!」
――竜王の爪。
ニィエンが腕を振り下ろす。竜爪が水を薙いで切り裂けば、斬撃は400を超える竜の水刃となって、オルキヌスの全身を切り裂いた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フェルト・ユメノアール
ただでさえ巨大な海獣相手に海で戦うなんてこれは一筋縄じゃいかないね
でも、やってみせる!道化師に不可能はないんだから!
潜水装備で呼吸が出来るとは言っても海の中じゃ速度も攻撃力も向こうの方が上、なら少し強引な手を使うしかないね
ボクは手札からカウンタースペル、【光の拘束鎖】を発動!
もちろん、これであの巨大な相手を捕まえられるとは思っていないよ
楔の付いた鎖をオルキヌスに撃ち込みアンカーのように使用
サーカスの猛獣使いのように、振り落とされないようバランスを保ちながらオルキヌスの体に着地
そのまま『トリックスター』を突き立て、表皮を切り裂いて内部に攻撃を加えるよ!
ヴィクトル・サリヴァン
うーん…目の位置変だし胸鰭多いし偽シャチなのでは?
同族感はある見た目だけど、だからこそ倒さなきゃだよね。
かつての七大海嘯全力で挑ませて貰うよ。
潜水装備を借り暗色に塗って迷彩。
水泳素潜り水中機動、後は持ち前の尾とかフルに活かして水中を泳ぐ。
無酸素詠唱で水の魔法使い行動音、向こうの反響定位を誤魔化しながらオルキヌスの背鰭側に接近。
静かにUC発動し渦潮と氷の属性を合成、海中という地形利用しできるだけ巨大な氷の大渦を作り出しオルキヌスの足止めを狙う。
泳ぎで引き離されそうになったら背鰭に銛を直接突き刺し剥がされないようにしつつ少しでも動きを鈍らせる。
はぐれ者は群にやられるものだよ。
※アドリブ絡み等お任せ
●水深:約700~500m――疑惑と意地と
(「うーん……」)
海の中で腕を組んで、ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)は何やら悩んでいた。その視線の先にいるのは、オルキヌスだ。
オルキヌス。
その名は、シャチのキマイラであるヴィクトルとある意味で同じなのだ。オルキヌスとは、違う世界でシャチの学名についている名でもあるのだから。
だが、オルキヌスの姿はどうだろうか。
(「もう潰れてるっぽいけど、目の位置変だし。胸鰭多いし」)
既に全身から血を流しているのを差っ引いても、疑惑が生まれる。
――偽シャチなのでは?
という疑惑が。
(「ま、いいか。いずれにせよ、倒さなきゃだよね」)
同族であろうがなかろうが、止めなければならない。
ヴィクトルは無酸素詠唱での水の魔法も駆使して、静かに、僅かな音を立てないようにオルキヌスの背後に回り込んでいく。
単眼を潰されていても、反響定位で周囲を探る能力は、いまだ健在の筈だ。
気取られない様に動き、魔力を練り上げる。
「よし――かつての七大海嘯、全力で挑ませて貰うよ!」
何とか気取られずにオルキヌスの背びれの前で、ヴィクトルはエレメンタル・ファンタジアを発動した。
「属性は氷、現象は渦潮――いっけぇ!」
海中の気温がぐっと下がり、大きな渦を巻いて回り出す。
エレメンタル・ファンタジアは、猟兵でも制御が難しく、暴走しやすい術だ。しかしヴィクトルは海の中と言う状況を活かし、起こしやすい現象と、使い易い属性を組み合わせる事で、暴走のリスクを抑えていた。
突如発生した氷の大渦が、浮上するオルキヌスの動きを封じる。
「今だ!」
それを見ていたフェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)が、訪れた機会に目を見開く。
巨大な海獣相手に海で戦うなんて、一筋縄でいかない。
だからフェルトは機会を伺っていた。少し前――龍の光を纏った猟兵達が戦っていた頃から、オルキヌスに仕掛ける隙が生まれるのを。
氷の大渦によって動きが封じられた今は、まさに千載一遇の機会。
「カウンタースペル、光の拘束鎖を発動!」
腕に装着したソリッドディスクに、フェルトがカードを入れる。
周囲の空間に空いた穴から、幾つもの光の鎖が飛び出した。
だが――数こそは多いが、光の鎖一つ一つは、オルキヌスの巨躯からすると細く、縛るには頼りないと言わざるを得ない。
だがフェルトは、鎖で拘束しようとは考えていなかった。
「ボクの狙いは――こうだ!」
光の鎖の先端にある楔が、オルキヌスの巨体に打ち込まれる。
『……! ……ッ!!』
その瞬間、オルキヌスが氷の大渦を強引に抜け出し、再び急浮上し始めた。
だがうねるその巨体から、光の鎖が幾つも伸びている。突き刺さった楔がアンカーの役割を果たしていた――フェルトの予想通りに。
そのフェルトは、鎖の一つを掴んで、オルキヌスに離されまいとする。
「ここからだ……やってみせる! 道化師に不可能はないんだから!」
いつか見たサーカスの猛獣使いの姿を脳裏に描きながら、フェルトは振り落とされない様にバランスを取りながら鎖を手繰り、オルキヌスの背中に降り立つ。
「これはいいね。おかげで追いつけた」
フェルトに倣って光の鎖を手繰って、ヴィクトルもオルキヌスの背中に降りる。
フェルトは道化師の使うダガーを、ヴィクトルは金属製の三叉槍を。2人は借りた潜水道具の酸素供給が限界を迎えるまで、オルキヌスの身体に突き立て続けた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
栗花落・澪
いいよ、装備はいらない
【指定UC】を使用し人魚モードで【海中戦】
敵の攻撃に当たらないよう動き回りながら
【催眠術】を乗せた【歌唱】を音波として響かせ
オルキヌスを混乱、足止め
混乱ついでに口開けてくれたら
★Candy popの蓋を開け、“僕の魔力を宿した飴”を大量に放り込みたい
【聞き耳】でオルキヌスの声を聞き分け
催眠が解ける兆候が見えたらすぐに離れて
わざと視界に入り追いかけて来るように仕向け
頃合いを見てドルフィンジャンプ
敵も海中に出て来たら飴玉をもう一つ落としながら
その飴目掛けて炎魔法の【高速詠唱、属性攻撃】
魔力同士は連動する
君は僕の飴、何粒食べた?
引火した瞬間全部の飴が連動爆発内部から攻撃を
ラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ
【アドリブ・連係歓迎】POW
シャチだー!
どっちが真の捕食者か教えてあげよーぅ☆
UC【飢餓つくと肉肉しい惨劇】にて、増殖し続ける肉塊に変身!
「肉体改造」を施して、増殖スピードをアップ!
戦場を飛ぶように見せて泳ぎます!
(ペンギンだって飛ぶように泳ぐって言うしね!)
匂いを海水に混ぜる事で、敵の意思を「お腹すいた」「食べたい」と思わせて統一させるよ!
後はあえて食べられて、体内で増殖して……どかーん!!
勝利の暁にはシャチ肉パーティだ☆
もちろん海鮮料理も沢山!?
鵜飼・章
これは大物だ
僕には数多の怪魚類を葬ってきた経験値がある…
ただの千葉県民を超えたレベルの【水泳】を見せてあげよう
敵が海に適応しているなら
僕は人間らしさを放棄し海の生き物になる
UC【バベルの塔】
僕は海に適応したオーシャンハンター鵜飼
今だけ水中呼吸できるし私物の銛も装備してきた
動物の手は借りず【素潜り】と【水中戦】だけで戦うよ
とは言っても体格差があるから
まずは額の眼を集中狙いで突く
敵が口を開けた瞬間に【早業】で口内に潜り
柔らかそうな内側から攻撃を加える
【暗殺】の腕の見せ所だ
【毒使い】で銛に猛毒を仕込んでおき
巨大な獲物を小労力で仕留められるよう細工
あちこちを銛で刺して【傷口をえぐり】
皆が戦い易くするね
●水深:約500~200m――文字通りの食わせ者たち
全身から血を流し、唯一つの瞳を潰されても止まらないオルキヌス。
その進路上に、紅い肉塊が漂っていた。
なんかこう、ぶよぶよしてる感じの肉々しい肉塊が漂っていた。
「たっぷりたらふく満足するまでオイラを召し上がれ♪」
肉塊が喋る。
なにそれ怖い。だが喋ったのだ。
喋る肉塊――そんなの、埒外の存在以外の何者でもない。
その正体は、ラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ(ハラペコかわいいコックさん(可食・高栄養・美味)・f31483)である。
飢餓つくと肉肉しい惨劇――ラ・ファミーヌ・デ・ラ・ヴィアンド。
ラヴィラヴァは増殖する肉塊に変身して、オルキヌスを待ち伏せていた。
「随分やられてるじゃないか。ここらで、食べときなよ」
『……』
自らを食えと迫る肉塊なラヴィラヴァから、オルキヌスは無言で回頭した。傷だらけでも流石に、こんなに怪しい肉塊は食べる気にならないようだ。
「おーっと、どこに行くんだい?」
しかし、肉塊なラヴィラヴァが、その前に回り込んだ。
「オイラを食べずに進めると思うなよ♪」
この肉塊、喋るだけじゃなくて動くのだ。泳ぐのだ。
――ペンギンだって飛ぶように泳ぐって言うしね!
ラヴィラヴァ曰くそういう事らしいが、そんな事はさておき、実はラヴィラヴァの肉塊ボディからは、僅かな匂いが放たれ続けていた。
その匂いは嗅ぎ続けたものに、強烈な飢餓感を与える。
傷だらけになったオルキヌスが、匂いの齎す飢餓感に抗える筈もない。
『――ッッ!!!』
ペンギンの可愛らしさの欠片もない気がする肉塊に、オルキヌスが喰らいついた。肉々しい肉塊が、オルキヌスに食いちぎられ、飲み込まれていく。
「食事中かな。失礼するよ」
そんなシーンに平然と、鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)が泳いできた。
「すごい食欲だ。これは大物だね」
野性味あふれるお食事シーンだが、章は表情一つ動かさない。
何故なら――今の章は、人間らしさを地上に置いてきていた。
バベルの塔。
人間らしさを代償に、あらゆる行動に成功する能力を得る業。
「僕は人間らしさを放棄し海に適応したオーシャンハンター鵜飼だ」
ハンターなのだ。狩る側なのだ。捕食者なのだ。お食事シーンくらいでは動じない。
「食事は終わったかな?」
肉塊を食べ尽くしたオルキヌスに、章は無人島仕様の銛を突き付ける。その鋭い切っ先は、獲物を狩るためだけに研ぎ澄まされていた。
「数多の怪魚類を葬ってきた僕が、君もハントしてあげよう」
銛を構え、章は両足を揃えて泳ぎ出す。
「これが、ただの千葉県民を超えたレベルの水泳だ」
なんともすごい自信だが、言うほど章は泳ぎが早いわけではない。
そして――肉塊を食らいつくす程にオルキヌスが覚えた飢餓感が、そう簡単に消えてはいなかった。
「あ」
オルキヌスの大きな口の中に、章が消えた。
●口の中の食わせ者たち
ラヴィラヴァ、章。立て続けに、2人の猟兵が食われてしまった。
だが――2人とも、それが狙いだったのだ。
「よし」
オルキヌスの体内に突き刺した銛にぷらーんとぶら下がって、章が頷く。
喉に刺さった骨状態である。
「ここからが、オーシャンハンター鵜飼の暗殺の腕の見せ所だ」
章は銛を引き抜くと、その刃に生成した毒を塗り付けて――再びぶっ刺した。
ぶすっ。
ぶすっ。
ぶすっ。
オルキヌスの体内を歩きながら、章は毒の銛を刺して回る。
「おやぁ?」
その行く手に、なんかぷるぷるしてる肉塊がいた。
「いやあ、まさか自分から食われる酔狂ものがオイラ以外にもいるなんて」
肉塊――ラヴィラヴァが、章に気づいて声を上げる。
「お肉が喋った。喋るなんて活きの良い肉だね」
「あっはっはっは! キミ面白いね!」
肉塊が喋るという怪奇現象を平然と受け入れる章に、肉塊のままラヴィラヴァが笑い声をあげる。
「僕はもう少し細工して回るけど」
「おいらはこの辺にいるよ。チャンスを待ってるんだ」
●水深:約200~0m――響く歌声マジカルミラクル
視点を再び、海中に戻そう。
――♪
――♪♪
オルキヌスの周りに、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)の歌声が響いていた。
その姿は、人魚の様に魚の下半身を持つ姿に変わっていた。
――マジカルつゆりん☆アクアフォーム。
水の精霊の力を借りた澪の姿は、見た目だけのものではない。水中で呼吸し、歌う事すら可能になる術だ。
(「うーん……なんかさっきから、急に動かなくなったけどどうしたんだろう」)
優雅に泳ぎ回り歌声を響かせながら、澪は内心、首を傾げていた。
少し前、遠くに見えていた頃は何か動いていたのだが、澪が近づいた時から今まで、ピタリと動きが止まっている。
(「急に動き出されたら、怖いなぁ」)
感じる不安と裏腹に、澪の歌声は高らかに響いている。催眠を乗せたその歌声は、つい先ほど、飢餓感を植え付けられたオルキヌスの頭に殊更良く届いた。
再び起こる飢餓感に、オルキヌスの口が開く。
(「何だかわからないけど、チャーンス!」)
その口に澪は小瓶を向けて、叩いてから『Candy pop』の蓋を開けた。小瓶から飴玉が漂い出て、オルキヌスの口の奥へと流れ込んでいく。
『――ヌグァッ!?』
「うわっ!」
突如、オルキヌスから発せられた苦悶の思念に、澪は驚き慌てて離れる。
丁度その頃、オルキヌスの喉の辺りでは、オーシャンハンターが毒の銛をぐさぐさして回っていた。
(「本当に急に動くし!」)
『キサマ――何ヲシタ!!!』
そのまま上昇していく澪を追って、オルキヌスが猛然と泳ぎ出す。
『何ダコノ痛ミハ! 何ヲ食ワセタ!』
(「痛み? まだ僕何もしてないけど――まあいいや」)
オルキヌスの怒りの思念に驚きながら、澪はわざとオルキヌスに追われてみせる。つかず離れずの距離を保ちながら、正面から外れずに。
オルキヌスと澪との体格差では、もしも追いつかれて体当たりを受けてしまえば、一度の接触でも危険が大きい。
そんな綱渡りのゴールが、近づいていた。
暗かった水の色に次第に青が戻って来る。空にある太陽の光が届いて、海の中が明るくなってくる。
バシャーンッ!
波打つ水面を突き破って、澪がイルカの様に水面高く飛び上がった。
ザバァッ!
そのすぐ下から、大口を開けたオルキヌスも飛び出して来る。
「おっと」
アクアフォームを解除した澪は、ふわりと空に浮き上がる。
「君は僕の飴、何粒食べた?」
『Candy pop』の蓋を開いて、飴玉一粒――オルキヌスの口に落とす。
その飴玉一粒に、澪は小さな炎を放った。
飴玉は全て、澪の魔力を宿している。
そして魔力同士は、何かあれば連鎖する。
ポウッと灯った小さな炎が、連動して次々と引火していく。
澪は知らなかった。見てなかった。
わざわざ食べられて体内に入った猟兵がいたのを。
その1人が体内で肉塊のまま増殖して、どかんと爆発する機会を伺っていたことを。
オルキヌスの身体の中で、飴玉が燃え上がり爆ぜて、肉塊も爆発する。
オルキヌスの口から、火山と見まごう程の爆炎が立ち昇った。
「…………」
予想以上の火力に呆然とする澪の前で、オルキヌスの口から黒焦げの人と黒焦げの肉塊が、ひょっこりと出てきた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
空桐・清導
POWで挑む
巨大怪獣退治か
必ず島のみんなを守って見せるさ!
だから力を貸してくれ!相棒!
叫びと共に海を切り裂き、オルキヌスに匹敵する程の巨神が現れる
さあ、行くぜオルキヌス!
迫りくるオルキヌスを両手で抑え込む
同時に胸部から熱線を放って攻撃だ!
オルキヌスの攻撃を[オーラ防御]を展開して防ぐ
姿勢は[気合い]で立て直す
オレと相棒は一心同体だ!
こんなもんじゃ倒れねーぞ!
巨体と巨体のぶつかり合いを繰り広げるが、
支配下の生物の強化によって押される
まだだ!お前はこんなもんじゃねえだろ!
奮い立て!ブレイザイン・ギガース!
共に[限界突破]して拳に光焔を乗せる
こいつでトドメだ!1
喰らえ剛拳!ブレイジング・アッパー!!
エインセル・ティアシュピス
【アドリブ連携歓迎】
にゃーん、いちおううみのなかでいきができるのかりてたたかうね!
しまをしずめちゃうのはめーだもん、とめなきゃ!
【指定UC】でうみねこさんにのってうみのうえをはしるよ!
でもあんまりちかづくとなみでひっくりかえっちゃうから、
ちょっとはなれたところにいるね。
【属性攻撃(氷)】の【全力魔法】をつかって、てきさんのまわりをこおらせて、うごくのとめられないかやってみる!
それと【式神使い】でぬのやりさん(装備『生命を守護せし聖布の霊槍』)におめめをねらってーっておねがいするよ!
こうげきは【結界術】と【オーラ防御】でがまんして、
みんながこうげきしやすくなるように【時間稼ぎ】するにゃーん!
ガーネット・グレイローズ
太古の海王、オルキヌスか。
神と崇められるのも納得の威容だな。
だが…勝ってみせるさ。
私たちは今までも、巨大な相手と何度も戦ってきたのだから!
シルバーホエール号で出航し、船上で【海の猛者達の宴】を開く!まずは存分に食べて飲んで、《宴会》で皆の士気を上げていこう!ついでに敵の弱体化を図れて一石二鳥というわけだ。
船はその後海上で待機させ、探査装備でマン太の背に乗って出撃。《水中戦》だ!
《水中機動》で敵の攻撃をいなしつつ、
スラッシュストリングを《念動力》で操り、速度の落ちた敵を死角から《鎧無視攻撃》で攻め立てるぞ!
●海上:ラストバトル
海上まで上がってきたオルキヌスの姿は、体中が焼かれて、切り裂かれた。
背びれは半ば以上が失われ、胸鰭は根元の肉ごとごっそりと落とされている。
骨はあちこちが砕け、臓器は分子レベルで崩壊し、胃袋は黒焦げである。
まさに満身創痍。
何もしなくても、時が経てばオルキヌスは力尽きるだろう。
だが――それを良しとする筈もない。
『せめて島の1つ――この身の道連れにしてくれる!』
戦いは、まだ終わっていない。
「あれが太古の海王、オルキヌスか」
その姿を、ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)が海に浮かんだシルバーホエール号の上から眺めていた。
「神と崇められるのも納得の威容だ。何より、あんなになっていても諦めないとは」
満身創痍の身体を引きずる様に、それでも並みの船より速い勢いで泳ぐオルキヌスの最後の意思を察して、ガーネットは思わず息を呑んだ。
そうまでする執念じみた精神性、恐ろしさすら感じる。
だが――そうでなくては。
「勝ってみせるさ。私たちは今までも、巨大な相手と何度も戦ってきたのだから! いくぞ、マン太」
ガーネットは巨大なオニイトマキエイ『マン太』に飛び乗って、海面を飛んで行く。
「にゃーん。まだあきらめにゃいかー」
エインセル・ティアシュピス(生命育む白羽の猫・f29333)は、オケアニデス島の上から、オルキヌスが動き出すのを見ていた。
「とりさんとりさん、てつだってほしいにゃーん!」
エインセルの声に応えて、空から真っ白なうみねこが飛来する。
大海原を征く白き夏羽――ラルス・クラシロトリス。
「しまをしずめちゃうのはめーだもん、とめなきゃ!」
その真っ白な背中にエインセルが飛び乗ると、うみねこは大きく翼を広げて――オケアニデス島から飛び立った。
真っすぐに、残る力を振り絞ってオケアニデス島に迫るオルキヌス。
「……まだやる気かよ」
迫る巨体を、空桐・清導(ブレイザイン・f28542)もオケアニデス島の上からじっと見据えていた。
「島を、島の皆を守るためだ! 力を貸してくれ! 相棒!」
清導は海に向かって、声を張り上げる。
「炎を纏い、勇気は鋼となる!! “また”頼むぜ、ブレイザイン・ギガース!!」
続く叫びに、清導の前の海が――割れた。
『光焔勇機』――ブレイザイン・ギガース。
清導の想像から創造された巨大ロボが、海の中から現れる。
「さあ来い、オルキヌス! 俺達が――止めてやる」
迫るオルキヌスの前に、ブレイザイン・ギガースが立ちはだかる。
ガシャンッ!!!
重たく大きな音を響かせて、ブレイザイン・ギガースの両腕が突っ込んできたオルキヌスの巨躯を抑え込んだ。
「うわわっ! とりさん、ちょっとはなれよっ」
その衝撃で起こった波に、エインセルのうみねこが飲まれかける。
「オレと相棒は一心同体だ! こんなもんじゃ倒れねーぞ!」
押し込もうとするオルキヌスを、清導の声に応えて、ブレイザイン・ギガースが押し返す。だがその足元から、白い何かが海の中から現れた。
「なに!?」
大きな――おそらくダイオウイカの触腕だ。
オルキヌスの能力に支配され、深海から這い出て来たか。
それにより、オルキヌスが僅かに力を取り戻す。
ブレイザイン・ギガースが押していた筈が、力は拮抗し出していた。
「まだだ!お前はこんなもんじゃねえだろ! 奮い立て! ブレイザイン・ギガース!」
清導が叫ぶが、ブレイザイン・ギガースの腕にイカの触腕がゆっくりと近づき――。
ヒュンッ。
何かが風を斬る音が響いて、イカの触腕はブレイザイン・ギガースの腕に絡みつく前にバラバラになって海に落ちていく。
「食いでのありそうなイカだ。刺身にでもしてやろうか」
マン太に乗ったガーネットの周りには、極細のワイヤーが漂っていた。宇宙海獣の肉体すら切り裂くスラッシュストリングス。
それを念動力で操って、ガーネットは海中から現れるイカの触腕を次々とバラバラに切り刻んでいく。
そもそも――遅いのだ。
イカの触腕の動きが。
その理由は、ガーネットが残してきたシルバーホエール号。その甲板で今も続いている宴会にあった。
海の猛者達の宴。
グリードオーシャンの料理や酒を出している間、それを楽しんでいない敵の動きを遅くする業。その為に、ガーネットはシルバーホエール号を出して、その上でガーネット商会の宴会を許したのだ。
「よし、いまのうちに――とりさん、とりさん、おねがい」
10本目のイカの触腕が、バラバラになって海に落ちる。
それを見たエインセルは、うみねこの背中をそっと触れた。願いに応えて、うみねこの速度があがる。
うみねこが、海の上を走る。
オルキヌスの周りを走る。
その上から、エインセルは海に氷の魔力を流していき――。
「こおっちゃえ、にゃーん!」
エインセルが全力で放った氷の魔法が、オルキヌスの周りの海を凍らせた。
これでは――支配された生物がまだいても、そう簡単に海から出てこられない。
「今だ、ブレイザイン・ギガース!」
これを機会と見た清導が、声を張り上げた。
ブレイザイン・ギガースの胸部が開いて、熱線がオルキヌスに浴びせられる。
「こいつでトドメだ!」
さらにブレイザイン・ギガースの拳に、煌々と輝く焔を乗せて。
「喰らえ剛拳! ブレイジング・アッパー!!」
光焔を乗せた拳の一撃が、オルキヌスの巨体を吹っ飛ばす。
オケアニデス島の沖に追いやられたオルキヌスが、動かなくなる。
そのままゆっくりと海の中へと沈んでいき――浮かんでくることはなかった。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2021年02月10日
宿敵
『森羅冠す『オルキヌス』』
を撃破!
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