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崩壊の足音

#クロムキャバリア #リュテス第五民主共和国 #聖ガディル王国 #セレナイト #ヴェルディグリース

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#クロムキャバリア
#リュテス第五民主共和国
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#セレナイト
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●還らぬ平和
 リュテス第五民主共和国首都、メルヴィン市。
 その日もメルヴィン市の人々はいつもと変わらない朝を迎えていた。人々は平和を噛み締め、退屈な、しかしかけがえのない日常を今日も送る。クロムキャバリアでは珍しい平穏な日々がそこにはあった。
 働き、学び、遊び、笑い、愛し合う。誰もがこの日々は永遠に続くのだと信じていた。戦争はどこか遠い国の出来事で、当事者となった国の人々の事は可哀想だとは思うが、出来ることといえば選挙で平和主義の与党に投票するか、復興募金に財布の小銭を投じるくらい。
 それでも、そうすることできっと世界が平和になっていくための小さな一歩の足しにはなっているのだと信じる善性が――あるいは幻想に囚われた愚かさかもしれない――この国にはあったのだ。
 ……あった、のだ。
 首都全域で発生した所属不明の多数の軍用キャバリアによるテロは、まず通勤、通学中の民間人を襲った。
 次いで通報を受け駆けつけたメルヴィン市警察の抵抗を踏み潰して、その被害を拡大させてゆく。
 首都防衛――あくまで外側、他国からの侵攻に備えてのそれだ――を担う国防軍のキャバリア部隊がスクランブル出撃し、テロリストのキャバリアを殲滅するまでの間に、リュテス共和国は二度とあの平和の日々に戻れぬほどの傷跡を刻みつけられる事となった。
 だが、それで終わりとはならないのだ。

●惨劇を回避せよ
「だが、今から出撃すれば間に合う。なのでお前たちの出番だ」
 愛想のない声音でユーレアは集った猟兵たちに出撃を請うた。クロムキャバリアの地域大国、リュテス共和国を襲う未曾有のキャバリアテロ。グリモアの予見をもってしてももはやこれが起こる前に阻止することはできない。だが、猟兵の力をもってすれば被害を最小限に留めることは出来るだろう。
「現地の警察や軍と協力して市民を守るのが最優先。敵はオブリビオンマシンか、それに洗脳された人間が乗った機体だろう……でも、それは今回考慮すべきではない」
 生け捕りに固執する必要はない、と。優先するべきはメルヴィン市民の人命であるとユーレアは猟兵たちに言外に示した。
「それと、これは予知ではなく予測だが敵はただのテロリストじゃない。戦争のつもりで備えて行くべき」
 リュテス共和国は平和主義だが、決して弱小の国家ではない。むしろ政権与党は平和主義が故に国防のための軍事力増強や防諜に余念はなかった。
 それがキャバリアを持ち込んでのテロなどという最悪の攻撃を許してしまった以上、この犯人はそこらの思想で動くテロリストではなく共和国と同等かそれ以上の規模、組織力を持つ国家の手引を受けている、またはそれそのものである可能性が高い。
 正規軍人と戦う心構えで油断なく。グリモアの光で照らされて、猟兵たちは戦場に身を投じてゆく。


紅星ざーりゃ
 おはようございます。
 グリードオーシャンが戦争で大変でもクロムキャバリアで戦争の火種を探す紅星です。
 今回は首都防衛ミッションです。
 皆さんの到着時点でメルヴィン市警とスクランブルした少数の国防軍の先発部隊がテロリストのキャバリアと交戦中。
 テロリストの所属や犯行目的は一切不明のまま、民間人に犠牲が出始めています。

 第一章では突如首都市街地に出現したステルスキャバリアを撃滅し、市民の脅威を排除して下さい。
 第二章、第三章は警戒を厳に、状況に即して対応して下さい。
 これ以上の惨劇の拡大を阻止できるのは猟兵の皆さんだけです。ご武運を。
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第1章 集団戦 『ナイトゴースト』

POW   :    パラライズバレット
命中した【RSキャバリアライフル】の【特殊弾】が【エネルギー伝達阻害装置】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
SPD   :    ゴーストミラー
【両肩のシールド】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、両肩のシールドから何度でも発動できる。
WIZ   :    装甲破砕杭
対象の攻撃を軽減する【電磁装甲モード】に変身しつつ、【手持ち式パイルバンカー】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 爆発。押し寄せる熱風が人々を薙ぎ倒す。轟音が聴覚を麻痺させ、一瞬の静寂を錯覚した直後に悲鳴と人の波が押し寄せた。
 平穏な日常が崩れ去る。
 通勤客を満載した路面電車が火を噴いて吹き飛び、スクールバスが横転してそこへ制御を失った自動車が次々に激突する。
 何が起こったのかわからない。わからないが、この凄惨な現場で生き残った青年はスマートフォンを取り出しカメラを立ち上げ、録画を開始する。
「誰か! 誰か無事な人はいませんか!」
 記録を残さねばならない。好奇心ではなく使命感が彼を突き動かす。
 もうもうと立ち込める黒煙が朝の爽やかな日差しを遮り、辺りからはうめき声や悲鳴、泣き叫ぶ声が絶えない。
 もしかしたら自分も無事に帰れないかもしれない。だから、その時は誰かがこの記録を見つけてくれると信じて、自分という人間が生きた証を残すために。ジャケットを脱ぎ捨て、シャツの胸ポケットに端末を押し込んで、青年は横倒しになったスクールバスに駆け寄った。車体をよじ登り、天を向いた窓から中を覗き込めば、血まみれの子供たちのうち何人かは横倒しになった座席にシートベルトで固定されたまま助けを求めて泣いていた。
「子供たちは……生きてる子がまだ中に居る。――だれか手伝ってくれ、子供がバスに取り残されて……」
 その時、何か大きなものが歩むような地鳴りに青年は振り返る。黒煙を透過して輝く赤い眼差し。
 その下で炎が閃き、そしてバスを覗き込んでいた視点が大きく吹き飛ばされるように天を仰ぐ。それから地面にカメラが押し付けられるようにして映像の記録はそこで終わる。
 そこから先、回収された青年のスマートフォンには悲鳴と砲声、そして爆発音だけが遺されていた。

「ユニット61、アンリ・ウェブスン巡査より市警本部、爆発事故は人為的なものと思われる! キャバリア用武器のものらしき痕跡を確認、これはテロだぞ!」
 その朝、定年退職を翌日に控え、現役最後のパトロール中だったメルヴィン市警巡査長、アンリ・ウェブスンは爆発事故発生の第一報を受けパトカーで現場に急行し、事態に初めて直面した警官の一人であった。
 血を流し倒れ伏す人々。生存者を探す視線が、ごく静かに、しかし存在感を放って去りゆく巨人の背中を目撃する。
「ユニット61より市警本部、コンフェ通り11番に至急レスキュー隊を派遣してくれ。本車は不審なキャバリアを発見、追跡を開始する」
「市警本部了解、直ちにレスキューを派遣する。しかし追跡は許可できない、ユニット61は現場で待機せよ」
「ヤツを野放しにはできないだろうが! 大丈夫だ、老いぼれで無茶はせん。追跡しつつ現在位置を随時報告する。市警本部はヤツの進路に先回りして避難誘導を、それとアンチキャバリアチームを派遣してくれ」
「危険過ぎる、承服できない。ユニット61は現場で待機せよ」
「それこそ承服できない! ヤツを逃せばこの何倍も犠牲者が出るぞ!」
 市警本部の制止を振り切って、ウェブスン巡査長は不明機の追跡を開始。その途中、不明機の移動速度では待ち伏せが間に合わぬと判断した彼はパトカーでキャバリアに陽動を掛け、僅か数分の時間と引き換えに殉職した。
 彼の勇気ある行動により、紙一重のタイミングでメルヴィン市警は警察用量産型キャバリアからなるキャバリア犯罪対策チームを不明機の進路上に先んじて展開、進路上の人口密集地帯からの市民の避難にも成功する。

 メルヴィン市郊外、首都の防衛を司るリュテス共和国国防軍メルヴィン基地は蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。
 どこからともなく出現したキャバリアによる自国中枢への攻撃。これを許してしまったのは、国防軍にとって大きな失態であった。
 だが、完全に慮外の攻撃に対して即応できるのは、実弾射撃訓練のため武装していたパイロット候補生擁する訓練中隊のみ。
 殻も取れない雛鳥をいきなり実戦に投じるか、市警の奮戦を祈り正規兵部隊の出撃を急がせるべきか。
 だが今この瞬間にも、テロリストは無辜の市民を害し共和国政府を脅かしているのだ。
「やむを得ん、901訓練中隊に出撃命令。だがすぐに増援を派遣できるよう全戦闘部隊に出撃準備を急がせろ!」

 猟兵たちが到着したとき、メルヴィン市は各所で黒煙が雲まで届く柱のように聳える有様であった。
 混乱する市民によって道路は埋め尽くされ、市警も総動員でこれを統制して避難誘導しようと試みている。
 警察の量産型キャバリアからなる部隊が防衛線を展開しているようだが、重武装の軍用機を相手取れば不利は明らか。次々に殲滅され、残存は一個小隊ほど。
「こちらはメルヴィン市警ACRT、キャバリア犯罪対策課第一小隊のパーヴェル警部だ! 接近中の友軍機、味方がやられた穴を埋めて欲しい!」
 一方で訓練中隊は隊長機を撃破され、未熟な候補生のうち指揮に覚えのある主席がかろうじて防衛線を維持している有様だった。
「こ、国防軍901訓練中隊、ロマリー・ウィゼット候補生です! 間もなく正規軍の部隊が到着するはずですが、私達だけじゃそれまで支えきれません! できればこちらも援護をお願いします!」
 二つの部隊の奮闘でテロリストが市内に大きく散開する最悪の事態だけは避けられたようで、戦場は大きく分けて二つに絞られた。
 パーヴェル警部らメルヴィン市警ACRTが防戦する市街地の防衛線。こちらは避難誘導も粗方済んでいるが、突破を許せば政府中枢座する官公庁街まで阻むものはなく、そして装甲の薄い警察用キャバリアにリボルバーキャノンを携行する程度の武装で抵抗するACRTの装備は戦力として心許ない。
 一方でウィゼット候補生ら901訓練中隊が抗戦するのはプラント工業区。――テロリストにそこまで押し込まれたのだ、と候補生を責めるのは酷であろうが、こちらは万に一つもプラントを傷つけるわけにもいかず、また作業員や市街地でのテロからこちらに逃げ込んだ市民の避難も万全ではない。救いがあるとすれば901中隊の装備するキャバリアは軍用機で、ACRTの警察用キャバリアに比べれば強力であることだろうか。
 猟兵は選択を強いられる。どちらを選び、手を貸すか。
 卑劣なテロリストが駆るステルスキャバリアは、その逡巡の瞬間にも人の生命を脅かしているのだ。
アリシア・マクリントック
ステルス機によるテロとは卑怯千万!私が天誅を下して差し上げます!
……と言いたいところですが、戦闘は厳しそうなのでサポートに回ります。
変身!マリシテンアーマー!市街地へ向かいます!
ステルス機である以上は僚機同士でも視認できないはず。連携はおそらく通信頼りになるでしょう。ジンツウ・センサーで傍受してそれをヒントに敵の位置を絞り込んでいきましょう。詳細な位置はセンリガン・ゴーグルの熱源探知で。発見したらペイント弾と発信機を撃ち込みます!これでステルス性はなくなりました!撃ち込んだら次の敵を探します。
それと同時に逃げ遅れた人がいないかも見てみましょう。索敵も大事ですが避難誘導を最優先です。


リリウム・マーセナリー
※アドリブ・連携歓迎

防衛こそ私の出る幕というもの。一つでも多くを守ってみせます。
愛機『ホワイトアウト』の背面部レーダーの【索敵】性能を活かしつつ、此方も【ジャミング】で潜伏。友軍を狙い無防備になった所にロングレンジレーザーライフルによる狙撃(選択UC,スナイパー,援護射撃)を叩き込みます。
「――余所見とは余裕ですね」

接敵された場合はアサルトライフルで牽制(威嚇射撃)しながら、高出力ブースタで一気に距離をとります。追いかけてくるようなら、それもまた隙。その隙を友軍が突いてくれる事でしょう。
「――私ばかり見てて良いのですか?」




 死があった。
 炎上する車両は決して軍用車などではなく、路上に横たわり血を流す人々もただ日常を享受していただけの民間人だった。
 彼らを守るように戦い、コックピットを穴だらけにされてビルにめり込んでいる警察用キャバリアの死骸を傍目に、アリシアは下唇を噛んだ。
「貴方達の無念は私がきっと……ステルス機によるテロなどという卑怯千万、許すことはできません。私が天誅を下して差し上げます!」
 破壊され尽くした町に踏み出した彼女は、その装いを忍者の如く変えて跳んだ。ワイヤーガンから撃ち出されたフックがビルの縁を捕らえ、振り子のように市街を飛び回る彼女は、しかし己の戦力を冷静に評価する。
「ティターニアでは高機動のステルス機を相手取るのは圧倒的に不利……けれど生身の私ではキャバリアを倒すだけの火力も出せない……ならば!」
 額に当てたゴーグルセンサーを下ろし、ステルスキャバリアを捉えるべくアリシアは往く。
 そう、捉えるのだ。己が手で屠ることだけが全てではない。厄介極まる不可視の敵を討つ下準備をしてやることがこの戦いの勝利につながる筈だとアリシアは確信している。
「敵が不可視レベルの隠密性を持っているなら、僚機との連携のために何らかの通信をリアルタイムで行っているはず」
 であるならば、どれほど微弱であってもその痕跡を見つけることができたならばステルスの脅威は激減する。
 街を飛び交う無数の通信。軍と国防省の間で交わされる緊急指令、知り合いや家族の安否を問う市民の悲鳴、避難誘導を行う警察の無線、消防や救急の出動要請――混沌とした通信電波の中に、アリシアは一つだけ、か細く単調で、しかし一定の間隔を置いて発される信号を捉えた。
 これだと断定できるものではないが、疑わしきを確かめるのは正道。その信号の発信源を辿るようにビルの上を駆け抜ける。
「――見つけました、あれは……!」
 逃げ遅れたのだろうか、瓦礫の陰に身を潜める少女。目をぎゅっと瞑って、肩を抱いて蹲る彼女の頭上、覗き込むようにして銃を構える不可視の熱源をアリシアのセンリガン・ゴーグルが捉える。
「やらせません!」
 短剣でおそらくセンサー系が集中しているであろう敵機の顔面に傷を刻みつけ、そこめがけて腕の射出機から発信機を内蔵したペイント弾を撃ち込みながら地面を滑るように乱入したアリシアは少女を抱きかかえて再び上空に飛び出してゆく。
「大丈夫ですか? すぐに私が安全なところへ連れて行ってあげます。もう少し辛抱して下さい!」
 状況を飲み込めないまま見知らぬ人間に抱きかかえられて空中に跳び上がった少女を宥めながら、傍受した共和国防軍の通信を頼りに市民の避難先として機能している行政区のシェルターへ向かうアリシアの背後、頭部だけが鮮やかなビビットカラーで塗りつぶされた巨人がライフルを構えて射撃を浴びせようとする。
 キャバリアの火器だ、直撃せずとも余波だけでダメージを与えられるであろうことは容易に予測できる。もしそうなれば、猟兵であるアリシアはともかく一般人である少女は無事では済むまい。
 だから――
「少し急旋回しますよ、舌を噛まないように歯を食いしばって!」
 ワイヤーガンで真横にほぼ直角の急旋回。そうしてアリシアが掻き消えたように見える視界いっぱいに、閃光が飛び込んだ。

「――余所見とは余裕ですね」
 レーザーライフルによる長距離狙撃を受け、頭部を喪失し擱座したステルス機が首なしの全身を浮かび上がらせる。
 再起動するまえにこれを無力化するべくパーヴェル警部らの警察用キャバリアが接近して警棒でその四肢を叩き割った。
 その様をスコープ越しに確認し、リリウムはほぅと一息を吐く。
「まずは一機。アリシアさんのおかげで敵の通信波長も把握しましたし、これに気づいて通信パターンを切り替えられるまでが勝負ですね」
 この街で最も高いビルの一つであるメルヴィン市庁舎ビルの屋上、ヘリポートで片膝をついた狙撃姿勢を取るホワイトアウトの視野は、障害物こそ多けれども市街地の殆どを捉えている。
 その視界全てに狙撃仕様キャバリアが持つ高精度センサーと高出力レーダーを組み合わせた走査を掛ければ、ある程度の位置のアタリはつく。
 あとはそれらに直撃せずとも良い、とにかく射線が通り次第レーザーを浴びせ撃って狙撃手の存在をアピールする。
 そうするとどうなるか。しびれを切らした愚かな敵機は、市庁舎屋上のスナイパーに無謀な応射を試みるだろう。
「ひとつ。ふたつ、みっつ……意外と反応してくれるものですね」
 隠密行動に徹されれば如何なホワイトアウトでも大雑把な位置しか掴めなかったが、敵が反撃をしてくるならば話は違う。発射炎の光を、発砲時の砲声を、飛来した弾丸の射線を、敵機の位置に結び付けられる情報をいくらでも垂れ流してくれるのだ。
「逆算して敵の所在を予測、マーキング……ACRT部隊にも共有しておきましょう」
 彼らが積極攻勢に出ることはなくとも、敵の位置がわかっていれば奇襲を受けて壊滅するリスクを減らすことは出来る。
 そうして捉えた敵を一機ずつ狙撃で撃ち抜いていくリリウムだが、ついに敵の反撃がホワイトアウトの肩を、次いで頭を掠める程度に肉薄を許してしまった。
 リリウムの狙撃は正確かつ素早いものであったが、レーザーライフルの発振器を冷却するための不可避のタイムラグが接近を許してしまったのだ。
 故に彼女はレーザーライフルをマウントに収め、アサルトライフルを握り締めて市庁舎ビルから飛び降りる。
 接近した敵機に弾幕を張りながら、追撃を撒き再度距離を取るようにバックブーストで逃走する狙撃手を、テロリストも逃さず喰らいついて離さない。
「しつこい相手ですね……ところで私ばかり見ていて良いのですか?」
 アサルトライフルの弾倉が空になり、リロードを行う一瞬の隙を狙って突撃を掛けた敵機。その腕をビルの隙間、路地から伸びた腕が掴み取る。
 そのまま引き倒すように敵機を投げ飛ばし、コックピットにハンドキャノンの銃口を押し付けるACRTの白と青に塗られた警察用キャバリア。
「武器を捨てて投降しろ! 貴様を逮捕――」
 見事な体術で敵機を制圧したパーヴェル警部が投降を促す姿に、リリウムが目論見通り敵をACRTの待ち受けるキルゾーンへと誘い込む策が成り、敵の生け捕りに成功したことを安堵する。
 次の瞬間、小さな爆発音とともにステルスキャバリアのコックピットハッチが弾け飛んだ。
「…………っ!!」
 パーヴェル警部が息を呑む。リリウムもまた絶句した。
 ステルスキャバリアを駆るパイロットは、おそらく手榴弾かなにかを使って自決したのだ。彼または彼女の内蔵物がぶちまけられべっとりと汚れたコックピットハッチの裏側に、言い知れぬ不気味さと不安を覚えるのは至極当然なことではないだろうか。
 このテロは根が深い。その予感に、リリウムは表情を強張らせる。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴィクター・ホリディ
アドリブ連携歓迎・S

首都防衛、か…今は思い出に沈んでる場合じゃないな
まずは雛と合流だ、殻がついたまま死なせるもんじゃない

■方針
訓練中隊と接近
「落ち着けよひよっこども、俺は敵じゃない」
【鼓舞】で中隊を落ち着かせ協力を仰ぐ

合流後は自機を囮にしつつ、【継戦能力/情報収集/戦闘知識】で敵を探る
ステルスは完全に消える訳じゃない
痕跡、音、ここなら追える情報はいくらでも出てくる

敵の凡その位置が掴めたら中隊と共に【弾幕/制圧射撃】で敵を引きずり出す
姿を見せた敵から【推力移動】で接近からのショットガンの【貫通攻撃】で仕留める

「気を抜くな、レーダーを連携して情報共有。
 手の空いた連中は市民の護衛に入れ、急げ!」


玉兎姫・カグヤ
猟兵に回ってくる依頼にしては珍しい
敵パイロットの生死は問わないとはね
キャバリアのテストにはうってつけだな
人権?テロリストにそんなものあるわけないでしょ?
玉兎姫・カグヤ、ヴォルパーティンガー、出撃します!

UCを使用し最短最速でプラント工業区に向かい
周りに被害を出さないように注意を払いながら
攻撃にはUCを使用せず
腕に装備しているレーザーブレードでの接近戦をメインにして戦います
とにかく撃墜することを最優先
敵パイロットの生死は二の次

弱者を踏みにじるのは愉しい?
わかるわ
私もキミらのような弱者を踏みにじって自分は強いと勘違いした弱者をぶん殴るのが好きだからね!




 すでに戦闘は始まっている。
 それだけではない。訓練兵達を統率する立場にあった経験豊富な正規軍人だったであろう中隊長がすでに撃破され、防衛の指揮を執るのが士官候補生であるという現状は極めて悪いと言わざるを得まい。
 候補生ながらによく耐えている、ヴィクターは工業区に急行しながらウィゼット候補生の手腕を評価した。
 工業区に立て籠もる選択肢も、正規軍同士の戦闘であれば敵の攻勢を削ぐ良い判断であったろう。何しろプラントは貴重な資源、クロムキャバリアにおける戦争が(両軍正気である限りと但書がつくものの)究極的にはプラントの奪い合い、陣取り合戦であると考えるならば、敵もプラントを奪うためにプラントを破壊してまで積極攻勢に出ることはできない。その制約を敵に強要し、また戦時国際条約における民間人への危害を制限する項目を掲げて市民の脱出までその護衛に徹するのは間違った判断ではない。
 市民やプラントを盾にするような判断は非難も浴びようが、生き残る味方を増やすという目的においてこのある種汚い作戦を実行できたウィゼット候補生は指揮官としての才を秘めているだろう。
 だが、それも"正規軍同士の戦争ならば"の話だ。
「相手が何でもアリのテロリストだってのを考慮しろ、ってのはひよっこにはキツいかねぇ」
 何にせよ、だ。
 候補生ながらに優秀とはいえ、指揮官不在の防衛戦など早々に瓦解するだろう。
 必要なのだ、戦局を覆すだけの決戦部隊の投入と、いずれ崩れるその前に訓練生らを再び纏め上げる指揮官が。
「自慢じゃないが指揮官のアテはある。問題は俺がひよっこに合流するまで保つかだが……兎耳のお嬢さん、出来るか?」
 視線を上げたヴィクターのプレケス。その頭上、ビルの上を跳ねるように疾駆する兎耳に似たアンテナを生やす白いキャバリアのコックピットで、カグヤはその問いに首肯する。
「大丈夫よ、敵を狩るのは任せて」
 頼もしいことで、とカグヤの獰猛な笑みにヴィクターは肩を竦めて、二人はそれぞれの機を加速させる。
 最初に戦場にたどり着いたのは速力に長けるカグヤのヴォルパーティンガーであった。戦場に乱入するなり、901中隊と銃撃戦を繰り広げていた敵部隊の一機を背後からレーザーブレードで真っ二つに溶断したのである。
 胸部を焼き切った刃は、間違いなくパイロットの生命をも焼き尽くしただろう。しかしカグヤにはそれを配慮するつもりはない。珍しく"そういう仕事"だというのもあるが、状況がそこまで考える事を許さないほどに逼迫しているのも大きいだろう。
 敵兵一人を生け捕りにする間にメルヴィン市民が何人犠牲になるか。それを思えば、ほとんどの猟兵がカグヤと同じ判断を下すに違いない。
 返す刀でもう一機の胸部を貫き、機体が崩れ落ちたのを見届け――二機が一瞬で破壊されたのを目の当たりにした敵部隊は、訓練生相手に優位に立ったことで慢心したか解除していたステルスを再び展開してその姿を消した。
「自分たちより強い相手が来たらすぐ逃げ隠れするのね」
 不可視化してヴォルパーティンガーの目から逃れた敵機に向けて、カグヤは嘲りを向ける。
「わかるわ、弱者を踏み躙るのは愉しいものね。ステルスなんて卑怯な手段で潰すんじゃ、自分が強くなったって勘違いができないもの」
 不可視のまま背後から対装甲ダガーを振り下ろさんとする一機を振り向きざまに斬り捨てて、カグヤは嗤った。
「私もキミらのような弱者を相手に自分が強いって勘違いした弱者をぶん殴るのが好きだからね!」
「おいおい、ヒデェ趣味だな。おっかねぇ」
 その一機を囮に、ヴォルパーティンガーの背を狙うもう一機にショットガンの銃口を押し当てて、ヴィクターは苦笑を浮かべ――しかし内心は冷徹に、その引き金を引いた。
「待たせたな。此処からは俺が引き継ぐ。お嬢さんは好き放題に兎狩り……いや、兎が狐を狩るのか? ともかく暴れてくれ。ステルスの情報はリアルタイムで共有する」
「了解、守るより攻めるほうがこの子の性能も活かせるしね」
 跳んでゆくヴォルパーティンガーを見送り、ヴィクターは一瞬の出来事に困惑する訓練部隊に振り返る。
「さて、落ち着けひよっこども。俺たちは敵じゃない。救援に来た傭兵だ」
「……はっ、本当に来てくれたんですね! ロマリー・ウィゼット候補生です、901中隊の中隊長代行を務めています!」
 溌剌とした発声ながらに僅かに疲弊と憔悴が見える指揮官代行の主席候補生はまだ20もそこそこ、下手をしたら成人すらしていないかもしれない少女であった。勤勉そうな真面目な顔つきに肩の辺りで切りそろえた髪型がどことなく堅物の印象を抱くが、果たして彼女は外様に素直に指揮権を委ねるか――
 というヴィクターの懸念は杞憂に終わった。
「私はあくまで正規兵の到着までの臨時指揮官を任されたに過ぎません。従軍経験、それも指揮官の経験があるとおっしゃるならホリディ大尉殿に部隊を預けます」
「物分りが良くて助かるよ。んじゃ正規兵が来るまでの臨時隊長交代だ。二個小隊残って音紋センサーの感度を最大に上げろ! そっちの機体には振動計の類は?」
「訓練機なのでそこまで高度なセンサーは……」
 なら音紋だけでいい、とヴィクターは中隊の3分の2に耳を澄ますよう指示を下す。
「ウィゼット、人選は任せるから一個小隊で市民の護衛に入れ。連中迂回して市民を狙わんとも限らん、急げ!」
「了解!」
 ヴィクターの指揮のもと、首刈り兎から逃れ御しやすい訓練部隊を狙うステルス機を微かな足音で識別して待ち受ける罠が完成する。
「兎耳のお嬢さんが追い立てた敵を此処で狩る。ひよっこ共、殻がついたまま死ぬんじゃないぞ!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

イザベラ・ラブレス
…ドンパチやるなら前線で十分。それをわざわざ首都でやらかすって事はヤツら、片道切符のスーサイド部隊って訳ね。

海兵諸君、ここは貴方達の祖国じゃない。だからといって無辜の民が殺されるのを指を咥えて見てられる?そんなのは、クソったれよ。

作戦:重武装ヘリ部隊による索敵
指定UCを発動しヘリ部隊を市内に展開、軍や警察から【情報収集】を行いヘリ部隊に伝達。
ヘリ部隊が敵機を発見したら発砲を許可。私もマイティー・バリーに乗って追撃を開始する。

敵機と遭遇したら30mm機銃で牽制しながら【ダッシュ】、パイルを腕部装甲で【かばう】。
【カウンター】に前面装甲厚を活かした【頭突き+鎧砕き】で敵機をフレームごと砕く!


リジューム・レコーズ
もう始まってるの!?訓練兵をテロの対処に回すなんて無茶ですよ!警察部隊が応戦するにしても相手が軍用キャバリアじゃ…
わたし達が…止めないと…!

市街地へ急行
市警部隊の救援に向かいます
ディナのスピードならすぐに届く…!
敵機はナイトゴースト系列のキャバリアですか
特殊弾はEMフィールドを展開し防御します
マンティコアとアンカークローを突き刺し引き寄せ固定
この際可能であれば同時に複数の目標へ並列攻撃を行います
そしてパワーオブザ・シールを起動
エネルギーを吸収し尽くして機能停止に追い込み破壊行動を含むあらゆる挙動を阻止します
行動不能となった敵機は擱坐させ積み上げる事で防壁に転用します




「くそっ、弾が弾かれる!」
「無駄撃ちするな、効かないのがバレたら押しつぶされるぞ!!」
 メルヴィン市警ACRTの残存一個小隊三機のうち、猟兵とともに単独で敵機を撃破していくパーヴェル警部を除いた二機は、軍用機との性能差に苦戦していた。
 パーヴェル警部は軽量で軽快な警察用キャバリアの特性と体術を活かし、敵機を組み伏せてからリボルバーの接射で破壊する離れ業を駆使していたが全員が全員その技量を持つわけではないのだ。
 いままで生き残った優秀な二人の警官も、警部のような格上を圧倒するような技術を有するわけではない。
「畜生、第二小隊の連中がスナイパーライフルごとやられてなきゃあ……」
 強力なキャバリアに対抗するための大口径狙撃銃を運搬中、不可視の敵から奇襲を受け壊滅した第二小隊。軍用の、それも高度なステルス性を持つ機体を相手に最悪の状況だったことは認めるし自分たちもたった今実感しているが、それはそれとして彼らが任務を果たしてくれていればまだ戦況は変わっていたかもしれないと恨み言を言わずには居られない。
 しかしどれだけ恨み言を吐いても、どれだけ同僚の死を嘆いても、戦況が好転することに繫がりはしないのだ。
 そして死は平等に彼らのもとに訪れる。
 リボルバーキャノンが少なくとも銃撃戦の距離では有効打たり得ないことを悟った敵機が攻勢に出たのである。
 大型のキャバリアライフルから放たれるは制圧用の特殊弾。命中すればキャバリアをシステムダウンさせ、続く本命に向けた隙を作る為の補助的な兵装である。
 だが、装甲の薄い警察のキャバリア相手ではその補助兵装でさえ致命的だ。
 発砲時の抑制されたマズルフラッシュで自身が撃たれたことに気づいた若い刑事は、死を前に極限まで引き伸ばされた時間の中で回避が間に合わぬ事を悟り、それでも咄嗟に機体を後ろに引き倒しながら目を瞑る。
 自分が死ねば同僚もすぐに殺されるだろう。パーヴェル警部に任された防衛線の死守を果たせなかったことへの申し訳無さと、死の恐怖が混ざった感情に呑まれた彼は、だがその瞬間を迎えることは無かった。
「相手が軍用キャバリアじゃこれ以上は無理です! ここの防衛はわたし達が引き継ぐので退避を!」
 自動姿勢制御で尻餅をついた機体の前に割り込んだのはリジューム操る蒼銀のキャバリア、アークレイズ・ディナであった。
 彼女の展開する防御フィールドは敵機の放った砲弾の運動エネルギーを減衰し、警察の機体を貫くはずであったそれを地に落としたのである。
「君が猟兵か、援護に感謝するよ。だ、だが一人で此処を支えるのは不可能だと思う。突破されれば議事堂も国防省も丸裸になってしまうからな、盾が一枚でも多いほうが……」
「数の問題なら気にする必要は無いわ。片道切符のクソったれなスーサイド部隊程度なら私達だけで蹴散らせる」
 リジュームだけに任せるわけにはいかないと、庇われたことで逆に覚悟を決めた警官たちがリボルバーキャノンを敵機に向けたその時だ。頭上を飛び越えて飛来したロケット弾が敵機の銃を握りしめた右腕を吹き飛ばし、続く機銃掃射が反撃の隙を与えない。
 そこでようやく刑事たちは気づいた。ビル街の窓ガラスを震わせる轟音。ビルとビルの間をすり抜けるように飛行する戦闘ヘリの編隊が飛来する。
「全機散開、友軍と連携して敵を狩るわよ。此処は貴方達の祖国じゃない。けれどだからといって指を咥えて見守ることなんかできやしないわよね?」
 指揮官の問いに威勢よく応じ、海兵隊の亡霊を満載した空中騎兵が猛然と反撃を開始した。
 その情景に警官たちの視線が釘付けになっている間にも、リジュームは損傷した敵機を仕留めていた。
 尻尾のように撓るアンカーワイヤーを突き刺された機体は、その全動力を喪失して機能を停止する。
「貴方には聞きたいこともありますし、私の手で殺しはしません。死なないように祈っていて下さい」
 動かなくなった機体を装甲護送車の前に座り込ませるように転がせば、即席のバリケードを多少は補強できよう。テロリストが仲間の生命をどこまで重く見るかにもよるが。
「まるで人質だな。どっちが悪役だか……なんて言っちゃ居られんよなぁ、これだけやられたんだ」
 刑事たちも敵機を盾にすることへの抵抗を飲み下し、後続を警戒して防御姿勢を崩さない。
 だが、盲目の中で怯えながら虚勢を張って耐える時間は終わったのだ。ヘリ部隊が逐次送ってよこす観測データは、各地で交戦を開始した猟兵たちの得た情報をもとに不可視の敵の姿を浮かび上がらせる。
「――そこっ!」
 ディナが放つテールアンカー、加えて両肩からも伸びる小型アンカーがなにもない空間に突き刺さり、機能停止した機体がステルスを強制解除され姿を現す。
 それらも盾に積み上げて――全てのアンカーが敵機を捉えたその瞬間、潜んでいたもう一機が猛然たる勢いでその脇を走り抜けた。
 狙うは警察用の機体――ですらない。この防衛線を突破せしめ、政府首脳への直接攻撃を行うのが目的か。
 咄嗟振り返ったリジュームとリボルバーを構えた刑事たちを嘲笑うように、盾にされた味方機の弾薬庫を撃ち抜き爆破して爆炎と衝撃波で彼女たちを封じ込める。
 もはや阻むものは何もない。
「とでも思ったのかしらね」
 正面、機関砲の咆哮。嵐のように押し寄せる弾幕は最後の門番、首無しの――あるいは胴無しの異形のキャバリアからのそれ。
 直撃すれば紙くずのように引き裂かれる圧倒的な暴威を紙一重で躱したテロ機のパイロットは、なるほどエースであろう。エースであるが故に判断は正確で、ライフルで異形のキャバリアと射撃戦を演じるのは不利と判断するや即座に銃をマウントに収めて背部に懸架した大型の杭打機を装備する。
 重装キャバリアの正面装甲すら貫徹破砕するそれを用いた一撃必殺の近接白兵戦。
 唯一の勝機を正しく認識したパイロットは、その杭をコックピットブロック目掛けて正確に突き出して。
「貴方の操縦が上手で助かったわ。……読みやすいもの」
 いくら味方機、構造を熟知している機体が相手とはいえ一瞬の強行突破で正確に弾薬庫を破壊するなどよほどの腕がなければ至難の業。それを成し遂げた凄腕ならば、高威力兵装でのコックピット一点狙いで来ると予測した異形の機体のパイロット、イザベラの勝利であった。
 杭の先端はイザベラ機の腕部を貫通し、その巨大な胸部に僅かに食い込んでそこで止まった。
 すぐさま杭を引き抜き離脱を図る敵機を、命懸けのギャンブルに勝利した女傑が逃がすはずもない。
 重装甲の胸部正面装甲による頭突き。重戦車に轢かれるに等しい衝撃でテロ機のパイロットは意識を刈り取られ、路面を滑るように吹き飛ばされた機体は活動を停止した。――直後に遠隔によるものか、あるいは元々そういう設定だったのかコックピットブロックだけが自爆したことにイザベラとリジュームは眉根を寄せた。
「前は任せたわ。突破した敵は私がここで堰止めるから安心して」
 仮に突破されても最終防衛線ではないという安心感が、重度のプレッシャーに押しつぶされかけていた警官たちの心理的負荷を軽減しその機動にいくらかの精細を取り戻す。
 猟兵の参戦により。市街地の防衛ラインは再び機能し始めていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

スレア・ラドリフ
行く!だって他人事じゃないもの。

軍用機借りて、工業区で避難のお手伝い。
修理装置のメカニックで処置もできるわ。
利かない無理は味方と本人が知ってりゃいいのよ。
誘導流れや立地、敵が優先で叩くものの情報は、
先に貰えると動きに組込めて有難いんだけど!
内容によって無人機体修理を囮にするのもありかしら。
とにかく敵の攻撃は建物や手持ち盾使って避けて、
借りた武装での牽制や攻撃支援が主ね。

あーもう!向こうの立回り性格が悪くて腹立つ!
実戦オンリーじゃない国特有の、
授業の愚痴とかテストあるある。
味方が少しでも笑って聞いてくれるならお楽しみ。
相手が上手でどうせ場所が察されるなら、
楽しく日常喋り倒して追いついてやるから!




 工業区防衛線に残った二個小隊は猟兵の指揮のもとよく健闘し、あれ以降の敵の進出は最小限に抑えられている。
 ロマリーはそんな同期生たちの戦いを無駄にしないよう、避難してきた民間人に一人たりとも死傷者を出すまいと気合を入れ直す。
 訓練部隊の練習機とはいえ、軍のキャバリアが護衛に付いたことで民間人の動揺は抑えられたと言っていいだろう。
 ――問題は、敵が此処まで来てしまえば私達だけでは支えきれないだろうこと、だけれど。
 防衛線とて完璧ではない。まして敵は首都の防空監視体制をすり抜けて現れた高度なステルス性を有するアンノウンだ。仲間たちがその侵入に気づけない、あるいはもしかしたら工業区に先んじて潜伏した機体が動き出す機会が訪れるのを今か今かと待ち構えているかもしれないのだ。
「ロマリーさん、だっけ。小隊指揮、テキパキしてて尊敬しちゃうなあ。主席って何でも出来るのね」
 正規士官でないにも関わらず多くの生命を預かる立場になってしまった重圧からか顔色の悪いロマリーを気遣って、スレアは自機を彼女の機体に寄せて接触回線での通信を開く。
 スレアの機体は軍の主力量産機と同じ型式のキャバリアであった。正規兵用の装備を施された機体はまるでスレアこそこの小隊の教官役かつ指揮官であるように見えたし、彼女が合流したときロマリーはようやく指揮官の重荷を誰かに委ねられると喜んだものだ。
 スレアがロマリーの指揮下に収まることを希望したためにものの数秒でその期待は打ち砕かれたわけだが。
「主席だから何でも出来るというわけじゃありませんよ。誰かが指揮を引き継がないといけない状況で、主席の肩書は皆が信仰するに値するだけの価値があるように見えただけです」
 主席だろうが次席だろうが、あるいは成績最下位だろうが等しく訓練生であることには変わりないのだ。まして指揮官課程の教育も受けていないのであれば、指揮能力の点に於いて他の訓練生とロマリーの間に隔絶するようなレベルの能力差はないだろう。
 そんな分析をウンウンと頷いて聞き入ったスレアは、やっぱりと前置きしてロマリーの能力を評価する。
「指揮官っていうのは臆病なくらいでいいって聞くし、ロマリーさんは良い隊長になれると思うわ。それに私なんてパイロット訓練校の授業はさっぱりだもの。こんな私が隊長やります、なんて言っても皆付いてきてくれないって」
 ちゃんと部隊を掌握できているロマリーを褒めながら、スレアは部隊の緊迫した空気を和らげていく。
 歳や国は違えど同じキャバリアパイロットを目指す訓練生。教練の話を振れば先輩として学ぶところもあり、あるいは共感して笑えるところも、また軍属でないがゆえに学べる事を共有することで彼らに驚きを与えることも出来た。
 昨日まではあったはずの、平和な国の後方都市を思い出させる会話に訓練生たちの肩の力は抜け、訓練を思い出すことで適切な行動を落ち着いて実行する余裕を取り戻す。
 どうせ敵はこちらより装備もパイロットの質も上等なのだ。開き直って意地悪な教官が出す理不尽な演習を熟すつもりで挑めばいい。
 雑談に交えて敵がプラントをあまり狙わなかったこと、その割に工業区に逃げ込もうとする民間人は執拗に襲っていたことを聞き出して、スレアは一つの罠を思いつく。
「――ねえ、ロマリーさん。ちょっと良いかな?」

 車列を護衛するキャバリアの小隊。
 パイロットたちは警戒しつつも、学校の愚痴や日常の他愛ない会話を交わしながら呑気に機体を歩かせている。
 好機だ、とその機体の操縦士は考えた。機体諸共数日間潜伏し続け、任務を果たすチャンスが回ってきた。
 ライフルを構え、彼らが守る車両を照準に収める。
 引き金を引く。砲弾が放たれる。車両に吸い込まれた砲弾が炸裂し、車両は大破炎上する。
「十一時方向ビルの上! 応射開始!!」
 直後、統率の取れた動きで盾を構えた正規軍の機体が一歩前に出て、その機体を遮蔽代わりにした練習機が猛然と反撃を開始した。
 敵は訓練部隊。民間人を囮にこちらの位置を探り出すなどという下衆な手段を選ぶとは到底思えはしない――その思い込みが命取りであった。
「立ち回りといい狙いといい性格の悪いテロリストだものね。腹は立つけどその性格の悪さを利用させてもらったわ!」
 スレアの放った砲弾が敵機の肩部シールドを跳ね上げ、無防備になったコックピットブロックへ訓練生たちの集中射撃が突き刺さる。
 ――スレアの提案で民間人は車両を放棄し、訓練部隊と別れて建物に身を隠したのだ。無人となった車両を彼女はキャバリアからの制御で自動運転するように改造し、囮としたのである。
 見事にその罠に掛かった敵機はその姿をさらけ出し、討ち取られたのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナイン・ダブルワン
プラント工業区。
路地裏からローラーダッシュ(悪路走破)のけたたましい音を立て、白い巨腕の機体が飛び出し、そのまま怪力による一撃で一機吹き飛ばして颯爽と登場。

ここの避難誘導ができてないと聞いてな。助けに来てやったで!
そこのテロリスト、一応警告しておくけどな。その物騒なもん下ろして投降せぇ……。

何発か撃ち込まれる弾丸をオーラ―防御で弾く。
よし、投降する気はないな!話がシンプルで……助かるわ!
言うや、一気に推力移動で近づき、UCを発動。医術の観点から相手の狙いを見切り、上体を低くしてタックル!そのまま相手を掴んで、他の機体にスイングしてぶつける。
お前の装甲が頑丈ならそれを武器にするだけやぁ!




 同業者――猟兵からの通信を受けて、ナインは愛機をひたすらに加速させる。
 軍の護衛部隊――練習機と訓練生からなるひよっこ部隊とはいえ、多少の防御力を有するキャバリア隊を揺動として、敵の目を引きつける作戦。これが為に避難民は今、全くの無防備だというのだ。
 作戦がうまく行けば大丈夫であろう。
 あるいは隠れているというから、ともすれば見つかることなく無事にやり過ごすことも出来るかもしれない。
 だが、最悪に備えるのが自分たち医者の役目なのだ。
「こないなけったいなテロで人死とかお断りや! ウチが着くまで無事で――」
 焦燥に駆られるナインの願いを嘲笑うように、指定された民間人の潜伏する建物の周囲には敵機の反応がふたつ。
 なるほど防衛線をすり抜けて侵入したのだろう。仲間が防衛線を釘付けにしているが為に、負担の大きなステルスを解除してもいいと判断したのだ。
「舐め腐っとるな……そんなら」
 機体が限界に達するすれすれの大加速。進路はそのまま、敵機に直撃するコース。
 脚部のローラーホイールが唸り、工業区特有の大型車両の走行にも耐える堅牢なアスファルトを削って轟音とともに駆け抜ける。
 そのまま敵機の横っ面に拳で一撃。疾駆の加速がそのまま威力に加わった一撃は、ステルスキャバリアの頭を粉々に破砕した上で機体を弾き飛ばした。
 建物に逃げ込んだ獲物をさてどう狩ろうかと思案していたはずの僚機が一瞬で吹き飛ばされたのを見て、もう一機がすかさずライフルを乱入者――ナインが操る純白巨腕のキャバリア、ヴァイスファウストに向ける。
「そこのテロリスト! 一応警告しておくけどな。その物騒なもん下ろして投降せぇ……」
 ナインは軍人ではなく医療従事者である。本質として生命を守るものである彼女は、どれほど悪辣なテロリストであっても問答無用の殲滅を望まない。
 投降の意志があるならばそれを示す機会は与えられて然るべきだという考えは甘いように見えて、しかし彼女のような力あるものだからこそ許される最強の傲りとも言えよう。
 ナインは事実敵が投降するならばそれを受け入れるつもりで居たが、返答はやはり無言での攻撃であった。
 背に避難民が隠れる施設を庇い、砲弾を装甲と意志の力で弾き返すヴァイスファウストの背は、避難民たちにとって何よりも頼もしく、力強かった。
 それだけに自分たちを護るために彼女が一方的な銃撃に甘んじていることに、彼らは歯を食いしばるほどの悔しさを覚える。
 誰が言い始めただろうか。彼女が気兼ねなく反撃できるよう、この施設を放棄して他に移ろう。道中で襲われるかもしれないが、それでも、と。
 その動きを察知して、ナインは外部スピーカーの音量を最大級に上げて一喝する。
「そこォ動くなや! ウチはお前らを助けに来てやったんや、コイツら片したらちゃんと避難させたるからじっとしとき!」
 その言葉が嘘ではないと示すように、銃撃の中を前進するヴァイスファウスト。
「投降するつもりはなさそうやな。話がシンプルで助かるわ!」
 推力最大で突進、銃撃が装甲を削るのも気にせずタックル。組み付かれれば敵は銃を捨ててパイルバンカーを展開するが、人型である以上その構造と可動域を熟知するナインによって腕ごと使用を封じられる。
 そのまま掴み上げられた機体を振り回し、初撃で頭を粉砕され、それでも武装を再起動させヴァイスファウストの背中を狙っていたもう一機に叩きつける。
 二機が衝突する金属同士の破砕音。遅れて何かが爆発する音。
 胸部から黒煙を吐きながら沈黙した二機のキャバリアに、ナインは苦い顔をする。
「自決、か。つまらんことしよるわ……」
 しかしテロリストの死を想う暇はない。ナインは陽動に向かった901中隊ウィゼット小隊に代わり、避難民をシェルターまで誘導せねばならないのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『セレナイト』

POW   :    RXサイ・ブレード
【増幅されたサイキックエナジーを纏う長剣】が命中した対象を切断する。
SPD   :    EPサイ・ブースター
自身に【強制的に増幅されたサイキックエナジー】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    EPサイ・リフレクター
対象のユーベルコードを防御すると、それを【盾の纏うサイキックエナジーにより反射し】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 テロの発生から半日。
 ようやくリュテス共和国国防軍の正規部隊がメルヴィン市に展開し、残存していたテロリストの機体はその全てが撃墜された。
 だが、共和国を襲った未曾有の事態はこれで終わりではなかったのである。
 遡ること数時間前、首都防空圏がテロの対応に奔走している中で指揮系統の混乱を突くように南方国境を越えた所属不明部隊が進撃を開始。
 共和国にとって不運だったのは、通勤時間帯を狙ったテロで国防省の官僚や軍司令部の将校にも少なからぬ犠牲が出ていたことだった。国防軍の指揮系統は十全な対処能力を発揮できぬまま、国防軍南部方面軍は部隊単位で決死の遅滞戦闘を敢行するも、その勢いを殺ぐことはできず濁流の如き進軍に飲み込まれていった。
 斯くて首都に第二の脅威が迫りつつあったのである。

 テロの終結宣言に市民は安堵した。失われたものは多かった。だが悲しみの時が過ぎ去れば、また平和な日々を生きるために復興が始まるのだと。
 だが政府は彼らに帰宅を許さず、さりとて仮設住居の手配をするでもなかった。政府から彼らに告げられたのは、首都メルヴィンからの"避難命令"である。
 首都外縁に展開するは猛将で知られる"剛剣"ロベルト・ホズマン大佐率いる最精鋭第101近衛擲弾兵大隊を中核に、国防軍最強と名高い第一機械化胸甲騎兵連隊のキャバリア総勢150機。
 後備えとして第二機械化胸甲騎兵連隊108機がメルヴィン市内に布陣し、南方より迫る侵略者に対して首都絶対死守防衛線を構える。
 彼らの背中を振り返りながら、市民は愛すべき首都に一時の別れを告げ、友の安否を確かめる間も、家族の死を悼む間すらも与えられぬままに北へと脱した。
 ――平和慣れしきっていたリュテス共和国首脳部の、この"戦争"における初動対応の失敗は後世にも国土防衛の悪例として幾度と指摘されることとなった。
 だが、首都に限ったこととはいえ市民を残しての徹底抗戦ではなく、紙一重のタイミングで全市民疎開を強行した首相の判断だけは英断として後に評価される。
 最後の民間人を乗せたバスが警察のキャバリアが護衛に付いて首都を出発し、日が傾いて肥沃な田園広がる西の平野の地平線に沈むころ、首都外縁に展開する第一機械化胸甲騎兵連隊および第101近衛擲弾兵大隊が所属不明機と交戦を開始。
 此処に至ってリュテス国防軍首脳部は敵の正体を正確に認識した。第一報は近衛擲弾兵大隊指揮官、ホズマン大佐からの報告であったという。
「――敵機に国籍識別標を認む。敵は聖ガディル王国軍、繰り返す、敵は聖ガディル王国正規軍である」

 聖ガディル王国。教王と呼ばれる君主を頂点に戴く宗教的専制国家である。
 リュテス第五民主共和国の南方に隣接する国家であり、歴史的に共和国との関係は良好とは言い難い物があった。
 かつて共和国が王国であった頃、両王家は姻戚関係であった。それがリュテス王国の市民革命によって王族が断頭台の露と消え民主化を果たしたことで、王国にとっては王の権威を脅かす仮想敵として、共和国にとっては憎き王族の血を引く政治的後進国として両国はにらみ合う関係だった。
 それでも関係改善は進んでいたのだ。平和路線の共和国現与党による国交正常化への交渉は少なくない結果を齎していた。――そのはずなのだ。
「恥知らずの血統主義者どもめ……! ならば来い、我が剛剣の錆にしてくれる!!」
 戦闘は熾烈を極めた。両軍ともにキャバリアの屍を積み上げ、生命がいくつも消えてゆく。地の利を活かし、堅固な防衛線を展開する共和国国防軍が戦線を維持している傍らで、国防軍南部方面軍を打ち破った勢いに乗って気勢衰えることを知らず攻め立てる聖王国軍。
 ――そして、第二胸甲騎兵連隊の補助戦力として控えていた猟兵と901訓練中隊の下へも、聖王国軍の刃が届こうとしていた。
 敵第二波、第三波到来。主力が激突する南の主戦場を迂回するように東西から雪崩込んだ聖王国軍の後続部隊との間に戦端が開かれる。
 第二連隊と猟兵らが敗れれば、勇戦する第一連隊と近衛擲弾兵は挟撃され殲滅されるだろう。
 故に――いつもと変わらぬことではあるが――これは敗北の許されぬ決戦である。
 猟兵らの眼前、国防軍の戦車を天面から串刺しに、戦車砲による一斉射撃を重厚な盾で受け止め前進するは騎士の如き白き機体。
 聖ガディル王国軍の主力機は発掘した機体を元に現代技術でこれを再現した量産型サイキックキャバリア、セレナイト。
 剣と盾をのみ武装とする前時代的な機体であるが、それでも主力機として成り立つポテンシャルは侮れぬものである。
 テロによって傷ついた首都を襲う突然の侵略。そこに隠された真実を、あるいはそんなものが存在するのかを考える暇すら与えられぬままに、戦火は共和国を焼き尽くさんと猛烈な勢いで押し寄せる。
ナイン・ダブルワン
クソッ!何が目的か知らんが人様の所に迷惑をかけよってに!
そない喧嘩したいなら相手になるで!

UC【白衣の機神】を発動、ヴァイスファウストの腕部リミッターを解除。
行くで!ギガンティッシュ!アルムッ!

ギガンティッシュアルム……
巨腕を推力移動で飛ばし、驚異的速力と圧倒的な重量攻撃で鎧を砕く伸縮する腕部兵装である。

そして、この拳骨、まっすぐ飛ぶと思ったら大間違いや!
怪力で腕を引っ張り上げ、無理やり剛腕を振り回す、ラリアットの要領で周囲を巻き込み粉砕する。

半径73Mがこの剛腕の届く距離や!ケガしたないならウチから離れや!
近くにいたヤツは後で直したるわ!


リリウム・マーセナリー
※アドリブ・連携歓迎

「嫌な感じがしますね……ただ、何をするにもまずは防衛が先決でしょう」

失ってからでは遅い。失わない為の努力――迎撃に注力致します。
軍人時代は国境警備部隊に長く所属した身。迎え撃つのは慣れています。狙撃ポイントとして高所を選択し、地の利を最大限に生かして(選択UC)、ロングレンジレーザーライフル(レーザー射撃)による狙撃(スナイパー,援護射撃)を敢行。リロード、冷却時間中はアサルトライフルを用いて牽制(威嚇射撃)できるようにしつつ、隠密型高出力ブースタ(推力移動)で【目立たない】ように次の狙撃ポイントに向かう。

「――今は私が此処にいます。此処は絶対に落とさせません」




 メルヴィン市の東西より挟撃を仕掛けた聖王国軍のキャバリア部隊は、戦車と自走砲からなる国防軍の支援砲撃部隊をまず強襲した。
 南方から攻め上がる第一陣を阻止する上で、第一胸甲騎兵連隊と近衛擲弾兵大隊の手の届かないところを支えるこれら支援車両部隊は絶対に失ってはならぬ戦力であった。
 敵もそれを承知で敢えて自分たちの脅威となる第二胸甲騎兵連隊と猟兵らを無視してまず戦車隊を襲ったのだ。
 第二陣として攻め込んだ部隊の損耗を無視するならば、戦術的にそれは正しい判断であろう。聖王国軍の装備する白兵型キャバリアにとって射程外から一方的な攻撃を加えられる砲兵はただならぬ脅威である。
 だが、それ以上にリリウムはこの攻撃にただならぬ予感を覚えていた。
「嫌な感じがしますね……」
 第一陣を助く意味で砲兵排除は重要である、それは分かる。
 だが攻め込む第二陣の騎士たちの並々ならぬ気迫は、どちらかというと戦友を護るためのような優しい覚悟ではなく、もっと怖ろしい、国防軍にとって致命的な何かを齎すための決死のように思えてならないのだ。
「それが何か、というのはまだ判断できませんが。……ただ、何をするにもまずは防衛が先決でしょう」
 戦車砲兵部隊が壊滅すれば、第二胸甲騎兵連隊が突破されず挟撃にならなくとも前衛部隊は圧殺されかねない。リリウムは愛機を駆り、砲兵陣地を見下ろせる高層の商業ビルに機体を潜ませる。
 スラスターを使って外から登れば熱源反応で気付かれるかもしれない。だからこそ、こういった商業ビルに備え付けてある資材搬入用の大型エレベーターが役に立つのだ。
 上階に機体を進ませ、窓際で砲兵陣地をその視野に収めた白いキャバリアが銃口をビルの外へと突き出した。
 国防軍の死力を尽くした迎撃戦が見える。彼らはこれ以上一つたりとも失われないように生命を懸けて戦っているのだ。そう、失ってからでは何もかもが遅い。
 自らの手の届かぬところで故国を喪ったリリウムは、彼らに己と同じ想いをさせぬようにと表情を険しく、白い騎士甲冑を模した機体を睨みつける。
 戦車砲の直撃を耐え、爆煙を切り裂き自走砲に斬りかかる騎士の大盾に描かれた双剣と王冠の国章をスコープの中心に収め、
「――今は私が此処にいます。この国は絶対に落とさせません」
 閃光が一瞬瞬き、盾は溶融して騎士の脇腹が焼け落ちた。
 完全なアウトレンジからの狙撃。強襲部隊の小隊長格であったのだろう機体が一瞬で撃ち抜かれ、絶対の信頼を置く盾すらも意識外からの狙撃には無力に貫かれた。
 聖王国軍に動揺が走るのを見届けることなく、リリウムは機体を後退させ、エレベーターを伝って狙撃ポイントを迅速に放棄する。
 聖王国軍のセレナイトは射撃兵装の一切を装備していない。リリウムのこの判断はスナイパーとして正解であったが、しかしこと聖王国軍に対しては警戒しすぎとも言えただろう。 
 銃を持たない彼らに出来ることは、小隊残存機で密集して盾を掲げ全集防御を行うことくらいであったのだから。
 だが、これによって砲兵陣地を襲撃した聖王国軍の全部隊が見えない狙撃手を警戒してその攻勢を緩めたことで、リリウムの戦術的な役割は果たされたと言ってもいいだろう。
 ――第二胸甲騎兵連隊より派遣されたキャバリア中隊と、彼らに同行する猟兵が到来したのである。
「――スティールダンサー各機、招かれざるお客様には国境までお帰り願おう。猟兵、繰り返し聞くが護衛は必要ないのかね?」
 203機械化胸甲騎兵中隊、スティールダンス中隊。十二人の精鋭を指揮するいかにも紳士という風体のパイロット、アーサー・ステュワート大尉の問いかけに、白い鉄巨人を駆るナインは首を横に振って応えた。
「むしろ近くに居ったら気ぃ遣うからな。ケガしたないならウチから離れや、巻き込んだっても後で直したるけどその時間は無いやろ」
「なるほど、それでは貴女の気遣いに甘えるとしよう。援護が必要になったらいつでも呼んでくれ」
 十二機のキャバリアと別れて戦場に突入するヴァイスファウスト。その眼前には四方に盾を構えて方陣を組む騎士の小隊。
「人様のところで亀みたいに蹲りよって、他所に迷惑かけたらあかんって母ちゃんに習わんかったんかい!」
 渾身の殴打。ヴァイスファウストの鉄拳が文字通り"飛んだ"。
 腕部ブースターによる加速で射出された有線式ロケットパンチは防御陣を組むセレナイトの盾に正面から直撃し――セレナイトの強力なサイキックエナジーを纏う盾によって、正面からの攻撃は弾き返された。
「うわっと! けったいな防御しよってからに……正面からの攻撃は全部通用せんってわけか」
 防御を崩すことなく相対するところからも、この陣形が強力な反射シールドを用いて敵の自滅を誘うものだというのは予想できる。
 だが同時に、パイロットのサイキックエナジーに依存するのだとすれば。
 辺りに転がる、側面から盾ごと撃ち抜かれた残骸からも予想はできる。
 あれはパイロットが攻撃に対して身構えることで初めて発動するもので、常時あの盾が反射能力を持つわけではない、と。
「そんなら攻略できんこともないわ。ヴァイスファウスト、リミッター解除! 行くで、ギガンティッシュ! アルムッ!」
 芸のないロケットパンチ――騎士が盾を構えて嘲笑う。
 だがそれを引きずるように、ヴァイスファウストが機体を旋回させた。
 ムチのように撓る鉄拳が、攻撃に対して無防備な――戦車や203中隊からの奇襲を警戒し、ヴァイスファウストへの対処を戦友に任せきっていた機体を薙ぎ払う。
「この拳骨、まっすぐ飛ぶだけと思ったら大間違いや!」
 銃火器の間合いで振り回される鉄の旋風が方陣を突き崩し、いくつかの小隊が防御の構えを破壊される。
 そうして崩れた陣形を襲うのは、203中隊からの支援攻撃と――
「このまま一気に殲滅しましょう。盾が無いのであれば最大照射で冷却に時間を取られる必要もありません」
 速射モードで続けざまに撃ち込まれるレーザーが、盾の護りを失ったセレナイトの胸に突き刺さって彼らを無力化していく。
 砲兵陣地の被害は決して軽くはないが、最悪の事態を招く前に猟兵の救援は成った。
 ナインによる負傷兵の治療と、203中隊、リリウムによる護衛下での再編。これによってメルヴィン市防衛線を支える砲兵部隊はかろうじて機能を保持し続けたのである。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リジューム・レコーズ
ここまで露骨だと最早清々しいですね
姑息な手段に及ぶ暇があるなら初めから全戦力を投じていれば良いものを…行くよ、ディナ

セレナイトタイプ…運用思想は旧世代的だけど単純故に役割が明確な専門性の高い機体
過小評価は出来ない
機動力で撹乱しつつイグゼクターとマンティコアのプラズマキャノンを連射
瞬間火力で圧倒します
反撃の隙を与えず高速攻撃を継続して行い意図的に防御体勢を取らせます
戦車砲も難なく防いだその盾さえあれば安全だと思い込んでいるんでしょうが!ディナにはブレイクドライバーがあるんですよ!
最大戦速で突進しそれを起点に孔壊処刑を執行
盾の守りごと機体を抉り砕く
オブリビオンの罪科はディナが断罪するッ!


ヴィクター・ホリディ
アドリブ連携歓迎・S

やり方がどうにもキナ臭い
裏で糸をひいてるのは本当に王国か? それとも…

■方針
UCを発動し、引き続き訓練中隊と行動
【情報収集/戦闘知識】で敵機と地形情報を確認して訓練兵や猟兵に共有
訓練兵には一体一は避け、多対一の機動戦を行うよう【鼓舞】し指示を出す
「連携を崩すな、絶えず動け、複数で対応しろ。
 勝手に押し入ってきた騎士様に弾丸を腹一杯食わせてやればいい」

自分は【推力移動/限界突破】で機動戦を仕掛ける
「ひよっこにああいって見せたんだ、少しはいい所も見せなきゃいけないね」
装甲全てが堅い訳じゃあない、装甲の隙間を【戦闘知識】で見極め
ショットガンの【部位破壊/貫通攻撃】を叩き込む




「ここまで露骨だと最早清々しいですね……!」
 猛然と突進を仕掛け、振りかざした剣を一閃するセレナイトをスラスターの噴射で細やかな回避機動を行い受け流したリジュームは怒りを隠そうともせずに呟いた。
 残虐なテロ行為で国防体勢が崩れた所に本命の侵略軍投入。市民の犠牲を許容するどころか手段として利用するだけでは飽き足らず、正規軍のために先行して事を起こしたテロ部隊を完全に捨て駒として斬り捨て、口封じすら徹底していた聖王国軍の戦略は姑息であると彼女は断じる。
「国境守備軍を突破して、首都防衛隊すら圧倒する戦力を投入する余力があるならば……!」
 ならば何故、怨念と犠牲だけが膨れ上がっていくこのような戦略絵図しか描けなかったのか。
 両国の言い分をリジュームは知らない。もしかすれば、聖ガディル王国にも侵攻を開始するに足る正当な理由が存在するのかもしれない。
 だが、この戦いがこんな形で始まってしまったからには開戦の理由などどうでも良くなってしまった。手段を誤った聖王国軍にはもはや理解に至る正しさを見いだせない。
 斬撃を受け流されたセレナイトの背中にプラズマキャノンを連射すれば、すかさず敵の僚機が割り込み盾でそれを受け止め後退していく。
「練度が高い……だったらなおさら、何故……!」
 これほどの技量を備えた部隊が卑怯な戦争を良しとする。オブリビオンマシンの齎した歪みへの怒りが、それを開戦のきっかけとして是とした聖王国への怒りがふつふつと湧き上がる。
「落ち着きなお嬢ちゃん。国ぐるみで選ぶにはやり方がどうにもキナ臭い」
 ウィゼット候補生が率いる別働隊を再び加えた901訓練中隊の臨時指揮権を握ったまま戦線に参加するヴィクターが、さらに後退する分隊を陽動として連携しリジュームの背後を狙うセレナイト分隊をショットガンで強襲する。
 無数の礫を浴びて盾を跳ね上げられた騎士へと訓練生たちの集中攻撃が突き刺さり、致命傷こそ与えられずともアークレイズ・ディナへのバックアタックを阻止して敵機を離脱させることに成功した。
「いい調子だ。地の利はこっちが握ってる、市街戦を続ける限りは技量の差を差し引きしてもお前たちは五分でやれる」
 訓練生たちの働きを褒めつつも警戒を崩さないヴィクター。その内心にはやはり回りくどく憎悪を煽る手段を取ったテロ攻撃への疑念が渦巻いていた。
 聖王国の目的が侵略――リュテス第五民主共和国を制圧、支配することであるならば、どのみち解体するであろう全体のごく一部に過ぎない軍や政府首脳部はともかく大多数を占め、聖王国側にも利用価値のある民間人に要らぬ憎しみを植え付けることは愚策。
 逆に憎まれても関係がない、共和国民を根こそぎに虐殺することこそ目的であるならば、テロで防衛体制を乱してからの本隊侵攻などという方法は無駄でしか無い。全軍で正面から共和国国防軍を押しつぶし、共和国領を焦土にすればよいのだから。
 ヴィクターは考える。聖王国がこの戦略を選んだメリットは何処にある? オブリビオンマシンの狂気がためと言ってしまえばそれまでだが、もしその裏に人間の意志が介在しているならば、裏で糸を引くものが存在する可能性を考慮するべきかもしれない。
「――ホリディ隊長、敵後続部隊が接近してきます! 中隊規模!」
「……考えてる場合じゃないな。ウィゼット候補生、全員に徹底させろ。いいか、連携を崩すな。絶えず動け。必ず一機に複数で対応しろ。勝手に押し入ってきた騎士様に弾丸を腹一杯食わせてやれ」
「りょ、了解!」
 ヴィクターの鼓舞を受け、訓練部隊は慣れ親しんだメルヴィン市の町並みを盾に、ときに身を隠す隠れ蓑にして騎士たちを迎え撃つ。
 未熟な訓練生だが地の利を活かし多対一を徹底し、連携で各個撃破すれば聖王国の正騎士とて勝てぬ相手ではない。
「凄いものですね。確かに彼女たちは指揮官機を失っても瓦解こそしませんでしたが」
 それでもジリ貧の防衛戦を展開するのでやっとだった訓練部隊が実戦で正規軍相手に対等に渡り合っている。リジュームはヴィクターの指揮能力がゆえの結果だろうと彼を称賛するが、それにヴィクターはいやいや、と首を横に振って応じた。
「連中の地力と状況が上手い具合にこっちに偏ってるのさ。俺はそこまで丁寧に面倒見ちゃいないぜ」
 プレケスとアークレイズ・ディナ、指揮官機と決戦級キャバリアの二機が轡を並べて聖王国騎士たちと激突する。
「セレナイトタイプ、旧世代機が故に白兵戦に最適化された機体、白兵戦しかできない……などと過小評価できる相手ではありませんね」
 プラズマキャノンを浴びせ撃ちながら切り込んでいくアークレイズに、セレナイト隊は盾を構えた横隊で国道を塞ぐように防御陣形を取る。
 攻撃を弾き返す強力な盾だ。生半な攻撃では突破不可能なそれを密集させ、絶対防御を展開し敵の疲弊を待つ聖王国軍の常勝戦術。
 だが、その優位を崩す方法はすでに割れている。他ならぬヴィクターの指揮下で訓練生たちが実証しているのだ。
「ひよっこに言って聞かせるばっかじゃなくて、俺も出来るところを少しは見せなきゃいけないね」
 みっしりと敷きつめられた盾はなるほど鉄壁だろう。だが、セレナイトの装甲自体が鉄壁ではない。
 一方向からの攻撃に対しての無敵。一方向からの攻撃を敵に強いる陣形。なるほどこの攻略は難しいのかもしれないが、こちらは単騎である程度やりあえる精鋭が二機。
 アークレイズを陽動に残し、路地に飛び込んだプレケスが迂回して敵陣の後方に回り込めば、備え程度に背後を警戒する機体はあれど正面に比べて盾の護りは隙だらけだ。
「後ろに回り込むのはズルいってか? 残念、こいつは戦争だからな」
 盾の防御面積を上回る拡散率で飛び散った散弾がセレナイトの装甲を叩き割り、防御姿勢が崩れた所に次弾が着弾して白騎士を屠る。
 そうして後方防御を担う騎士たちが斃れたことで、前衛のパイロットに僅かな動揺が走り――
 それをリジュームは見逃さない。
「戦車砲にも耐える盾といってもムテk時ではありません! それさえあれば安全だと思いこんでいるんでしょうが――」
 中距離砲戦で防御陣形を釘付けにしていたアークレイズ・ディナが瞬間的に超加速して距離を詰める。
「行くよ、ディナ。その盾ごとオブリビオンの罪科を断罪するッ!」
 掘削用の巨大な槍が盾に突き立てられ、その表面を覆うサイキックエナジーによって押し止められる。
 激突はセレナイトの勝利だと、かの白騎士を駆るパイロットは盾を構えたまま右腕部で剣を抜く。
 このまま拮抗する敵機の腕を切り落とし、返す刀でコックピットを破砕する。
 これで勝利だ――その確信を抱いたまま、砕け散った盾諸共にパイロットは槍から飛び出した螺旋衝角にその身を挽き潰された。
 セレナイトの盾は絶対無敵である。その誇りを諸共に打ち砕く兵器の出現に動揺する周囲のパイロットたち。
 これまでの常勝戦術を信じ防御に徹するか、もはや盾は無敵ではないと切り捨て回避を重視するべきか。迷いから生じた機動の乱れを突いたリジュームとヴィクター、そして自らの敵を倒し戦列に加わった訓練生達によって、侵略の騎士たちは一機ずつ丁寧に屠られてゆく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アリシア・マクリントック
そちらにも主張はあるのでしょうが……無辜の民に害為すに足る理由などありえはしません!力あるものとして責務を果たしましょう……変身!ティターニアアーマー!
敵の数は多いですが、市街戦なら連携次第で私も戦えるはず。周囲に被害が出ないように、と言いたいところですがそこまでの余裕はなさそうですね……
まずは武器の調達ですね。幸いにも敵の武器は剣です。利用させてもらうとしましょうか。
囲まれないよう注意しながら仕掛けます。鈍重とはいえティターニアはあくまで鎧。私の技は使えるのです。ブシドー奥義……虚の太刀・迷迭香!
剣さえ手に入れればこちらのもの。人々を護るために鍛え上げた我が剣技、とくとご覧に入れましょう!


玉兎姫・カグヤ
襲撃してくるタイミングがあからさますぎる
いっそ清々しいくらいね
招かれざるお客人には帰って頂きましょう
いくよ、ヴォルパーティンガー!

UCを発動し高速飛翔で距離を取りつつ盾で攻撃を防がれないように
回り込んで背後や側面からリニアライフルによる射撃攻撃
相手の射撃攻撃は斬撃による衝撃波
剣を振るという動作が必要な以上
攻撃範囲は広くても真横まで
そして攻撃発生にはワンテンポ遅れるはず
相手の動きも速いけど落ち着いて対応していきましょう
そんな機体じゃ私達には敵わない
それを教えてあげる!




「ランサー01より全機、敵の防御フィールドを正面から抜こうなんてお馬鹿は居ないわよね? 機動性では勝っているのだから背中を刺してやるのよ!」
 ジェシカ・マルティエ大尉率いる第二胸甲騎兵連隊、第204機械化胸甲騎兵中隊"フレイムランス"のキャバリアが推進剤の燃焼で生じた青白の炎を曳いて敵陣に斬り込んでゆく。
 彼女らは後詰の予備部隊。第一機械化胸甲騎兵連隊が国防軍最強に名を連ねる最精鋭であるならば、第二機械化胸甲騎兵連隊はそこに一歩及ばなかった者たちだ。
 だからといってフレイムランス中隊を二線級部隊だと侮った聖王国騎士団のパイロットたちは、須らく全員が屍を晒すこととなった。
 マルティエ大尉を筆頭に、キャバリアによる市街地三次元機動砲撃戦に於いてはトップクラスの腕利きを抱えた中隊はまたたく間に敵の頭上や背後を獲ると、その名の通りライフルから放たれた炎の槍で以てまず敵の先陣を食い破った。
 そうして隊列が乱れれば、そこにさらなる威力をもって猟兵が突入してゆく。
「……襲撃のタイミングがあからさますぎる。いっそ清々しいくらいね」
 吐き捨てるように聖王国の謀略の露骨さを指摘して、カグヤの操るヴォルパーティンガーは戦場に飛び込んだ。
 フレイムランスの強襲で分断された敵陣は、彼女ら中隊など前座に過ぎぬとばかりの全力の高速機動で襲いかかったヴォルパーティンガーに即応することができなかった。
 ビル街の窓ガラスを軒並み叩き割り、衝撃波を伴う多段階加速で一気に死角に滑り込む白兎に対し、いかに近接白兵戦に長け機動性や旋回性に優れた機体といえどセレナイトでは対応しきれない。
 数機が成す術もなくリニアライフルの砲弾に貫通され、鉄と油のはらわたを撒き散らして崩れ落ちる。その犠牲を払ってどうにか旋回しきれた機体が剣を振るう――が、必殺神速の剣とて間合いが足りぬ。聖王国騎士団のセレナイトは、中距離砲戦装備のヴォルパーティンガーに対して致命的に相性が悪かった。
 撃ち合いにもならぬ火器兵装の射程の差。追えど届かぬ推力の絶対的な差。剣を届かせるためには追いつく必要があるが、ヴォルパーティンガーにセレナイトが追いつくことは不可能である。
 残された道は反射シールドを展開して防戦を展開し、持久戦でヴォルパーティンガーが推進剤なり弾薬なりを欠乏するまで耐えることくらいだが、それすらヴォルパーティンガーとフレイムランス中隊の機動戦術が許しはしない。
 ならば抵抗虚しく全滅する他にないのか。否である。セレナイトにはサイキックエナジーを増幅して攻防に用いる古の秘跡が搭載されているのだ。
 パイロットたちは重く枷になる盾を投棄し、両の手で握りしめた剣に全てのサイキックエナジーを注ぎ込んで白兎と相対する。
「それがあなたたちの切り札ってわけね。見せてもらいましょう」
 カグヤのセリフは果たしてセレナイトのパイロットたちに届いたのか、同時に三機のセレナイトが斬りかかる――二機はそのまま斬撃の間合いまで踏み込み、あえなく回避されるが寸前踏みとどまった一機が届かぬ間合いで剣を振る――空を切った斬撃が、空を斬って跳んだ白兎に迫る。
 サイキックによる斬撃の射出。いわば鎌鼬のような、非実体の斬撃事象がカグヤに迫る。
 その最初の一撃は確かに初見殺しであったろう。そして命中したのであれば、決して重装甲ではないヴォルパーティンガーに重大なダメージを与えたはずだ。
 ――だから彼女は阻止のために動いた。
「私は力あるものとして、無辜の民を害為す力に抗う責務を果たしましょう。――変身!」
 ビルの屋上から飛び降りた少女を中心に、重装甲のキャバリアめいた巨体が出現する。
 重力に従って自由落下しながら防御姿勢を取ったその機体がヴォルパーティンガーに替わって分厚い装甲で飛翔する斬撃を受け止めれば、そのまま落下の勢いで陽動の斬撃を繰り出した一機に体当たりをかまして吹き飛ばす。
 質量差の前に紙人形の如くアスファルトの上を跳ね回って転がったセレナイトの残骸から剣を拾い上げ、残る二機のうちもう一機の陽動を担った機体にその重量機、ティターニアアーマーは相対する。
「そちらにも侵略に足る主張があるのでしょう。資源、歴史、民族、宗教、何が理由で戦争を決断したのか私にはわかりません」
 ともすれば、手段こそ悪辣ではあったが開戦に踏み切った聖王国にも理解の余地があって、第五共和国こそ相容れぬ悪――ということもあるかもしれない。それでもアリシアは、その可能性があったとしても剣を手放さない。
「この街の人々はただ日々を愛し生きていただけでした。その生命を、その日常を奪うに足る理由など何処にもありはしません!」
 非戦闘員を傷つけ、戦争などと呼べないような卑劣な奇襲攻撃で彼らを帰る場所から追い立てた。騎士であるなら、軍人であるなら、それが罷りならぬ悪行であることを知るはずだ。
 知らぬというなら、知っても己には関係ないと耳を塞ぐならば、それを糺すことこそ貴族の務め。
「――いざ。ブシドー奥義……虚の太刀・迷迭香!」
 踏み込み、一閃。
 足元の盾を蹴り上げ、打突。
 両者の動きは同時、セレナイトの盾がティターニアの剣を弾いて砕く――アリシアはそれを承知で更に距離を詰め、盾を突き出した姿勢のセレナイトの懐に飛び込み柄だけに成り果てた剣で敵機の肘を砕く。
 火花を散らしてへし折れたセレナイトの右腕が剣を取り落とす。それを奪って、二刀――一刀と砕けた刃の柄――を振るい、さらに左肩、そして頭を潰す。
「貴方も騎士、貴族を名乗るのであればこの戦争の有様が正しいのか、どうかそこで考え直してください」
 ――アリシアが決着を付けた瞬間よりさかのぼって、カグヤも眼前の敵機を沈黙せしめていた。
 もとより機体相性で有利。斬撃飛ばしも初見殺しとしては優秀だが――
「剣を振るという予備動作の都合、攻撃範囲は機体前方180度がせいぜい。攻撃速度も音速と仮定するなら、剣を振ってからほんの一瞬だけ遅れが生じる」
 ならば、精鋭の振るう刃といえど攻略不可能の魔剣にあらず。
 徹底して死角を狙うヴォルパーティンガーの前に、セレナイトはビルや路面に太刀傷を刻むばかりで有効打を与える事ができずに居る。
「その機体じゃ私達には敵わない。それを教えてあげる!」
 リニアライフルの連射が白騎士の鎧を射抜き、奇剣の騎士は斃れた。
 時を同じくして第二機械化胸甲騎兵連隊所属の各隊による敵第二、第三波部隊に対する反転攻勢が開始された。
 戦線はメルヴィン南方、第一連隊と近衛擲弾兵が戦うそこ以外に認めぬ。共和国国防軍の意地が、怒りが、猟兵という起爆剤を得て一気に戦場を塗り潰してゆく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

イザベラ・ラブレス
スーサイド部隊の次は宗教にサイキックキャバリア、ねぇ?
探偵なんてガラじゃないけどきな臭さがプンプンじゃないのよ。
まぁ、推理は本業に任せるとして出撃よ…!

喧嘩必勝の極意、横合いから思いっきりブン殴ろうってね。
ダッシュで突っ込み指定UCを発動、170mmと30mmの零距離射撃で粉砕。

残骸は悪路走破で踏み砕きながら敵陣を横断!これを繰り返して戦力分断を図る。

敵にオープン通信で挑発を仕掛け食い付いたらツァーリ・ラケータの鎧無視攻撃。

避けられたら決闘よろしく真っ向勝負。斬られるより先にマイティー・バリーの頭突きをキメるわよ!

大佐、こいつは魔女からの餞別よ。お代はその剛剣がフカシじゃないって証明でどう?




 共和国国防軍による反転攻勢。
 聖王国軍の第二波、第三波攻撃部隊の迂回挟撃作戦が頓挫し、後方の安全が確保されたことで戦力をメルヴィン南方の主戦場に集中投入出来るようになった共和国国防軍は、聖王国軍主力を逆に半包囲せしむることに成功した。
 メルヴィン市内の敵を掃討し増援として駆けつけた第二胸甲騎兵連隊は次々と白磁の騎士たちを屠り、祖国の土を踏み躙る侵略者たちを打ち倒すべく攻勢に加わっていく。その来援を受けた第一胸甲騎兵連隊および近衛擲弾兵大隊もまた、それまでの一進一退の攻防から一転して攻勢に打って出た。
 メルヴィン市南方の平野、この戦いにおける主戦場を飲み込む戦火はいっそうの激しさを得て燃え盛っていた。
 ――その様をイザベラはつぶさに観察していた。もはや聖王国軍主力部隊の劣勢は明確だ。正常な判断能力を有する軍組織であるならば、半包囲が全集包囲になる前に南方へ脱出し講和するなり再侵攻の機を伺うなりするもの。
 だが、彼らにその気配はなかった。あるいは監視網がずたずたに寸断されたであろうメルヴィン以南の共和国領内に第四波以降の聖王国部隊がすでに到来している可能性はある。それらと合流すれば首都占領は成ると確信しているのであれば、ここまで攻め込み押し上げた前線を明け渡したがらないのだろうと聖王国軍の行動にも一定の説得力は生まれる。
 だが、イザベラの脳裏にこびりついて離れないテロ部隊の最期が嫌な予感を彼女に示唆し続ける。
 大方の予想通りあの部隊が聖王国の所属であり、メルヴィン市を混乱させ、国防軍の初動対応を妨害させる陽動の為にテロを引き起こしたのだとしたら。眼前で戦う正規軍の彼らもテロ部隊よろしく自決に躊躇しない精神性を持つ軍隊である可能性も無いではない。
「宗教国家のサイキックキャバリア部隊、だものねぇ……きな臭さがプンプンじゃないのよ」
 人の精神に強く働きかけるサイキックキャバリア――大量生産型のセレナイトがどこまでその性質を保っているかはわからないが――と狂信的な信仰の組み合わせは、ほとんど例外なく悲劇を生む。
 戦場で国防軍と切り結ぶ聖王国軍機全てが自らの生命より殉教を、あるいは国際法や常識の枠を外れた宗教的目標を選んで死兵と化さぬなど、イザベラには楽観できなかった。
「とはいえ此処で考えたところで聖王国の思考が読めるわけでもないし。まぁ、推理は本業に任せるとして出撃よ……!」
 そういった思考は他国の知識を持つ共和国外務省の老獪な外交官や大局的視点で戦争を主導しうる国防軍総司令部のエリート達の仕事だと、イザベラは眼前の戦闘に参戦するべくマイティ・バリーの操縦桿を握りしめ、フットペダルを踏み込んでその重厚な巨体を戦場に繰り出した。
 聖王国騎士たちにとって、マイティ・バリーはまさに最悪の敵であった。
 共和国国防軍機が標準装備としているアサルトライフルや、一段上がってマークスマン装備の機体が持つようなバトルライフル程度は盾を構えるだけで弾き返し、戦車や火力支援機が背負う長口径の滑腔砲ですら集中し守りを固めれば弾き返すだけの防御力を持つセレナイトだが、多少鈍重だとて直進の突破力に長け、自走砲やともすれば小型の列車砲クラスの大型砲を"ガトリングガンとして"運用する規格外の狂ったカスタマイズを施された突撃戦車の前にはトーストの表面よりも脆く防御姿勢を取る暇すら与えられずに破砕されていく。
 そしてその暴威を阻止しようにもセレナイトの装備では間合いに踏み込む前に凶暴なる鰐顎の前で同胞よろしく鉄屑に成り果てるほかないのだ。
「喧嘩必勝の極意、先手必勝で横合いから思いっきりブン殴ろう! ってね」
 敵陣を縦横に直進して部隊を切り刻むマイティ・バリーによって、国防軍部隊が孤立したものから順に殲滅を成してゆく。
 これによって戦局は決定的にリュテス第五民主共和国優勢に傾いた。
 ――そう、誰もが確信した。

「国防省作戦総司令部より戦域内の全国防軍部隊、および猟兵部隊に通達」

 その通信は前触れ無く発され、兵士たちの意識を動揺させた。
 即ち、これは。
「――総司令部はメルヴィン市の放棄を決定した。支援車両部隊及び市内で待機中の203、204中隊、901訓練中隊は政府首脳とともに直ちに北方へ脱出、フランドルス基地へ撤退せよ」
「――第一、第二胸甲騎兵連隊、および第101近衛擲弾兵大隊は戦闘状態を維持しつつメルヴィン市内まで後退、追って指示あり次第フランドルスまでの全力撤退を開始せよ」
 どういうことだ、優勢だったのではないのか。国防軍兵士達の間で走る不安と不満。
 それは外様であるイザベラとて例外ではない。勝てる戦だ、と思う。思い上がりではなく、多少の敵増援が来たとしても跳ね除けるだけの練度を国防軍は持っているし、自分たち猟兵の手もある。
 今勝っている勢いを保てば、国境線まで打って出て聖王国軍を叩き出すことすら可能だとも。
「どういうこと、状況が変わった……? 反撃が出来なくなったにしても降伏じゃなく脱出を命令するってことは、司令部の戦意は萎えてないはずよね……」
 考えど答えが得られぬまま、一騎打ちを仕掛けてきた腕利きの騎士を分厚い正面装甲の頭突きで黙らせ降りかかる火の粉を払うイザベラ。
 だが、一部の部隊が動揺のあまり自衛すらままならぬ程に追い込まれていることに気づけば、マイティ・バリーを駆りその救援に向かう――
「待て猟兵。殿軍は近衛の役割だ。貴様は後退する友軍の護衛を頼む」
 割り込んだのは近衛擲弾兵大隊の大隊長機。長大な両手剣を担いだカスタムメイドの量産機を駆るホズマン大佐に押し止められ、イザベラは食い下がろうとして――やめた。
「了解大佐。でもその前に」
 自分が行けば敵の騎士団を蹴散らし、退路を確保することは出来るだろう。だが包囲された彼らを精神的に立ち直らせることが出来るのは、この国の人間で、この撤退命令に戦場の誰よりも納得できぬという顔をしながら忠実に命令を遂行するこの軍人のほうだという確信がある。
 イザベラの救援では、命を救えても魂を救えない。自らの手で首都を護るという誇りをも理不尽に手折ってしまうから、マイティ・バリーの脚を止める。
 代わりに国防軍の脆くなった包囲を突き崩し突破せんと勢いを盛り返す敵に大型のロケット弾を全弾お見舞いして吹き飛ばしてやった。
「こいつは魔女からの餞別よ。お代はその剛剣がフカシじゃないってのをここから全員で帰還して証明してもらうってのでどう?」
「剛剣を自称したことはないんだがな……しかしもとより部下も同朋も死なせるつもりはないとも。我らが戻るまで、撤退する戦友を頼むぞ猟兵」
 仲間を救出し、敵を押し止めるためホズマン大佐を先頭に敵陣に突撃していく近衛擲弾兵達。
 その背中を見送って、イザベラは追い縋る敵軍に砲弾を喰らわせながら戦線の後退を支援し続けた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『ヴェルディグリース』

POW   :    メラルダの剣
【サイキックエナジーを実体化させて自分の剣】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
SPD   :    ベリドートの鎧
全身を【緑青色に輝く強固なサイキックオーラ】で覆い、自身の【搭乗者を顧みない出力のサイキックエナジー】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
WIZ   :    ロムスフェーンの外套
自身の【搭乗者の生命力および精神力】を代償に、【対象の至近距離へテレポートし、サイキック】を籠めた一撃を放つ。自分にとって搭乗者の生命力および精神力を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ツェリスカ・ディートリッヒです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ――時間は遡る。
 共和国国防省はテロの直後、その時にはすでに壊滅し通信途絶していた南部方面軍を除く全軍に非常事態への即応体制を敷き、所属不明のキャバリア部隊が首都を直撃した時には最も迅速に戦闘態勢を整え出撃可能状態にあった東部方面軍に首都への増援部隊派遣を命じていた。
 かくてリュテス国防軍東部方面軍は首都救援の大義を背負い、キャバリアからなる四個機械化胸甲騎兵連隊と司令部大隊――戦車やヘリなどの支援戦力を持たないが、ほぼ一個師団に値する兵力を首都に向け西進させる。
 指揮官には人民平等会議南方海軍による拡大戦略に対して沿岸防衛に功を挙げたシルヴァン・サルバニエリ少将を据え、東部軍が持つほぼ全てのキャバリア戦力を吐き出したこれは東部軍の全力であった。
 国防省と総司令部のプランでは、この東部軍来援まで首都駐留の中央軍で敵を押し留め、東部軍到着後首都近郊を奪還、防衛線を構築。後に西部軍を加えた一大統合軍を編成し国境線まで攻め上がり、制圧された南部軍管轄区域を奪還する予定である。
 堅実かつ侵略者には容赦をしない。リュテス民主共和国が国歌に歌うように、彼らは平和を愛するがゆえにかつて先人の血によって得た平和を崩すものには相応の血で贖わせるのだ。
「国歌斉唱――」
 サルバニエリ少将の音頭によって、五百に近いキャバリアのパイロットたちが男も女も老いも若きも、見事な隊列飛行を維持したまま国歌を詠って行軍する。
 直前のテロ攻撃で民間人に多くの犠牲が出たことも知らされ、誰もが瞳に怒りを燃やしていた。卑劣な侵略者を許すな。生きてこのリュテスの空から地から逃しはしない。練度も戦意も高い水準にあるこの東部軍が参戦すれば、敵はひとたまりもないだろう。
 地上の街では首都を襲った惨劇をラジオやテレビ放送で知り、悲しみ怒る人々が東部軍の勇士たちに手を振り彼らの武運を祈っていた。
 ――だが、その祈りが加護となることはなかった。
 一瞬だった。空を切り裂く閃光が、東部軍のキャバリアを舐めるようにその隊列の先頭から後尾まで滑り、その閃光を浴びた機体は一機の例外もなく赤く溶け落ちた断面を晒して真二つに"裁断"され墜ちた。
 ただの一瞬で五百に届こうかという大部隊は半数以下にまでその数を減じたのである。そして不運なことに、その異常事態にはサルバニエリ少将の機体も巻き込まれていた。
 指揮官を失った東部軍に生じた一瞬の混乱を、その閃光は逃さない。二度目の攻撃で東部軍四個胸甲騎兵連隊は壊滅し、作戦能力を喪失したのである。

 国境からいくらか北進したガヤルド高原に展開する聖王国軍の後方支援部隊は、その威力に喝采し勝利を確信する。
 通常のキャバリアの数倍、ともすれば十倍近い巨体の鋼鉄竜。この侵攻作戦に際して投入された騎士ならぬ機械兵器の威力は、南部の高原地帯から東部の平原までの超長距離――それこそ狙撃型キャバリアの数十、数百倍の長射程から一方的に共和国国防軍東部方面軍を殲滅せしめたのだ。
『機竜コルタールの威力は充分だな。首都攻略軍の援護はこのくらいでよかろう。全軍前進、敵南部軍残党の抵抗を炙り出し踏み潰せ』
『騎士団長閣下、地の利は敵にあります。市街地に立てこもられた場合にはこちらの被害をどの程度許容されますか』
 副官の問いに、南部方面掃討を預かる聖ガディル王国第八騎士団長フェリペ・サンドーサ正騎士長は覆面の下で獰猛に笑んだ。
「許容しない。敵が民間人を盾に取るのであれば、それは敵の悪行だ。あまつさえ民間人がその悪人らを庇うのであれば、それは我らの敵」
 機体の持つ剣を進軍方向――北に向け、サンドーサ正騎士長はそれが当たり前であるように告げた。
『敵に容赦はするな。恭順するもの以外は全て焼き払え』
 守るものの消えた大地へ、暴虐の剣が侵攻を開始する。

「――総司令部はメルヴィン市の放棄を決定した。支援車両部隊及び市内で待機中の203、204中隊、901訓練中隊は政府首脳とともに直ちに北方へ脱出、フランドルス基地へ撤退せよ」
「――第一、第二胸甲騎兵連隊、および第101近衛擲弾兵大隊は戦闘状態を維持しつつメルヴィン市内まで後退、追って指示あり次第フランドルスまでの全力撤退を開始せよ」
 東部軍壊滅。来るはずの増援は来ない。その報せを受け、国防省の面々は握りしめた拳を机に叩きつけ、噛み締めた唇から血を流しながらその命令を下した。
 もはやメルヴィンを起点とした反抗は困難。眼前の敵はあくまで先発に過ぎず、後方には敵の本隊も控えていよう。それを東部軍なしで迎撃することは困難であろうし、西部軍を急ぎ動かした結果東部軍の二の舞となればそのときこそ共和国は終わる。
 出来ることは北部軍との合流。残存部隊を北に逃し、西部軍も北部軍と連携した防衛体制を取らせ反攻作戦に備えるしかない。
 故にその命令を下した。それは制圧された南部、そして戦力の殆どを失った東部の市民を見捨てるに等しい決断であると知って。
「せめて私は市民とともにあろう。これからの戦争に腰の重い政治家は要るまい」
 老いた国防大臣は若い官僚や軍の士官たちに脱出を促し、自らの執務机に向かい合う。
「まさかこの国で私が働く日が来ようとはな……それもこんな形で。どうか勝ってくれ、我が愛すべきリュテスの市民達よ……」

『なるほど剛剣、音に聞こえる英傑は伊達ではない』
「そちらこそ名のある騎士とお見受けする。強い……が、だからこそ行かせはせん!」
 騎士を模した指揮官機と、カスタムメイドの白兵型量産機が剣で切り結ぶ。
 片や近衛擲弾兵、ホズマン大佐。片や聖王国正騎士長イベリオ。
 両者の技量は拮抗。だが、近衛擲弾兵大隊は既にほとんどが討ち取られ、ホズマン大佐はたとえイベリオ正騎士長を討ったとて生還は絶望的であると覚悟していた。
「騎士よ、私が勝てば軍を退け。私が負けたとしても我が剣に欠片でも敬意を抱く余地があるならば、僅かでもいい同朋の追撃を待って欲しい」
 決死を覚悟した願いに、イベリオ正騎士長は頷いた。
『約束しよう。貴殿の剣は私の敬意を捧ぐに値する――』
 両者の刃が再びぶつかり合い、そしてふたつの剣の片方が砕ける音が轟いた。

 撤退中の部隊の後方を守るよう指示され、隊列の最後尾を陸路で往く猟兵は、撤退の半ばで後方から圧倒的なサイキックエナジーが接近することに気づいた。
 すぐさま迎撃体制を取る彼らの前に現れたのは深緑の騎士。
『道を開けたまえ猟兵。我らと共和国の戦争に君たちは無関係のはずだ』
 理知的な青年の声で呼びかける深緑の騎士。だが猟兵にはその声音に宿る狂信が透けて見えていた。
『譲らぬならば斬るしかなくなる。共和国軍を殲滅せねばならぬこの大事に無用な殺生は私も望むところではない』
 青年騎士は本気で言っている。殺すために殺生をしたくないと。
『正騎士長閣下は騎士の名誉を重んじるが、私は違う。命とは大切なものだ。名誉よりもな。共和国軍を逃せば彼らの抵抗でより多くの命が奪われるだろう。それは私も望むところではない』
 猟兵は退かぬ。退けばメルヴィンの惨劇が繰り返されるという確信があった。
 眼前の騎士の狂気はオブリビオンマシンのそれなのだ。彼の理性は既に骸の海の淀みで歪みきっている。
『退かぬか、退いてくれぬか。ならば仕方ない、斬らねばならぬ。聞け! 我が名はジョルジオ・デ・イベリオ正騎士長が副官、ロルダン・ヴィシガット正騎士――いざ、君たちを斬り百万同胞の生命を戦火から守らねばならぬ!』
 騎士が剣を構え、力強く地を踏み込んだ。
 逃げることは叶うまい。逃げれば撤退している国防軍の無防備な背中を彼の騎士は斬り捨てるだろうから。
 説得は通じるまい。正気で狂う彼の騎士に、猟兵の言葉は届かぬだろうから。
 ――そして、後世においてメルヴィン撤退戦と呼ばれた戦いの最後の一戦が始まった。
リリウム・マーセナリー
※アドリブ・連携歓迎

「退く理由は何処にもありませんね。国、街、人々を守る。どれだけ失われようとも、一つでも多くを助ける。――それが私の決まりなので」

猟兵だから、というのもありますが、それ以上に何かを失う事については見過ごす事はできません。
幸い、友軍――他の猟兵の方々もいますし、最後まで私のやり方(スナイパー,援護射撃)を徹底致しましょう。見た目からは近距離以外の攻撃が考えにくいですが、何やら変な気配も感じます(瞬間思考力)ので、いつでも咄嗟に【推力移動】で回避する心構えだけはしておきます。


リジューム・レコーズ
黙って聞いていれば、あたかも生殺与奪の権利を握っていると思い込んでいる傲慢な物言い…斬る?あなたが?わたしを?
はあァ?殺ッッッてみなさいよッ!!!

ディナ!アサルトホリック!
超高速機動で逃さないし捉えさせもしない
敵機も相応の技量と速力を有するのでしょうが、手数で圧倒し主導権を握らせません
目標を多重ロック
スレイプニルを連続発射
広域にミサイルをばら撒いて更にイグゼクターで集中射撃
続けてマンティコアのプラズマキャノンで絶え間無い波状攻撃を継続し近接格闘戦へ持ち込む
纏うサイキックオーラなどブレイクドライバーで突き砕いてやる!
アンカークローとブレードモードのマンティコアも組み合わせ連続で攻撃を加え続けます




『音に聞く猟兵のキャバリア部隊……腕利き揃いと言うが、我ら聖王国騎士団に及ぶものではない!』
 一瞬のうちに彼我の距離を詰めた――物理法則すらも超越するまさに魔法の如き高速移動でだ――ヴェルディグリース、深緑の騎士機が刃を振るう。
 横薙ぎに払われた十字の刃がアークレイズ・ディナの穿孔衝角と激突して火花を散らした。正々堂々正面からの奇襲攻撃に防御が間に合ったのは奇跡的だった。もし一瞬でも対応が遅れていれば、防御ごと機体を両断されていたかもしれぬ。
 だがそうはならなかった。させなかった。偶然か、技量か、そのどちらもか。確かにディナの防御はヴェルディグリースの刃を防ぎ、鍔迫り合いに持ち込んだのだ。
 そして単純な力比べであれば、サイキックエナジーの扱いに特化したヴェルディグリースよりもアークレイズ・ディナの方が勝る。
『然り、正直に力を比べるならば私はその機体に及ぶまいよ』
 故、ヴェルディグリースを駆るヴィシガット正騎士は剣を引いた。わざと思い通りのタイミングで押し負け、そのまま攻撃を受ける危険と引き換えに致命の一撃を加える好機を得る。
 経験豊富な熟練騎士であるヴィシガットは、その状況にあってリジュームより疾く刃を突き立てる自信があった。
 そこに連続して瞬く光条が割り込んだ。追撃はならぬと瞬時に判断した深緑の騎士は飛び退り、レーザー狙撃を回避する。
 撃ったのはホワイトアウト、リリウムの駆る白銀の軽量級狙撃機である。二機目の乱入にヴィシガットが眉間に皺を寄せて唸る。
『一騎打ちに水を差すとは、所詮は騎士ならぬ蛮兵か。やはり君たちは危険だな、ここで斬っておくに越したことは――』
「……黙って聞いていれば」
 彼の高圧的で独善的な物言いに怒りを滾らせたのは、野蛮と揶揄されたリリウムではなくリジュームであった。
「この場の生殺与奪を握っているとでも思い込んでいる傲慢な物言い……!」
 猟兵も、撤退中の共和国国防軍も、全て斬れるという確信。それは傲りであると、リジュームは知る。敬意ある死闘の末にどちらかが斬られるを望むではなく、ただ一方的なものであればそれはもはや巻藁を斬るのと同じ。眼前の敵を敵とも思わぬヴィシガットの傲慢は、彼女の闘志に火を付けた。
「傲慢なあなたがわたしを斬る? はあァ? 殺ッッッてみなさいよッ!!」
 瞬間、アークレイズ・ディナは超加速を発動した。よほど高性能な、それこそ狙撃仕様や電子戦仕様の機体のセンサーでもなければ補足できないような超高速機動戦。
『君が怒るのは理解できる。だが純然たる事実として我らには隔絶した壁がある!』
 それに追随するのがヴェルディグリースという機体の恐ろしさだ。
 ディナが速度と手数で攻めるスピードファイターであるならば、ヴェルディグリースは有り余る出力で重く疾い一撃を放つ超パワーファイター。
 アサルトホリック・モードでヴェルディグリースに比肩する機動性を発揮し、多連装拡散ミサイルやプラズマキャノン、アサルトライフルによる超高速連撃を放つディナの攻撃の過半がヴェルディグリースの纏うベリドートの鎧の前に致命傷にまでは至らない。
 一方でヴェルディグリースの振るうメラルダの剣はディナに当てれば一撃でその装甲の殆どを破砕するだろうが、リジュームはその危険すぎる凶器を十分に警戒し、反撃があれば回避に徹することで致命傷を避け続ける。
 そしてヴェルディグリースをディナ単騎で、千日手に等しい状況といえど拘束できているということが彼の傲慢を否定する。
「隔絶した壁? そんなものがあるならとっくに私を殺しているはずじゃないの? 大言壮語も程々にしないとみっともないわよ!」
『……そうか、ならば』
 騎士が刃を伸ばす。ベリドートの鎧に膨大なサイキックエナジーを割いていながらに、メラルダの剣すらも強化し刀身を延伸させるは人外のエナジー量を持つ証明か、あるいは生命をすり減らし過剰出力を発揮している証左か。
 どちらにせよ機体の数倍にも至る長い刀身を軽やかに振るうヴェルディグリースの脅威度は跳ね上がった。
 ――これが一騎打ちならば、だが。
 ヴィシガット正騎士の言葉に分かりやすく逆上したリジュームと、続く彼女の猛攻は狙撃手の姿を騎士の目から覆い隠した。
 斯くて白い少女は絶好の機会を掴み取る。
「貴方を行かせるわけにはいきません。猟兵だからオブリビオンマシンを見逃せない……というのもありますが」
 ほんの僅かな時間共闘した人がいる。顔も知らない、声も知らない、ただ同じ戦場に居ただけという人もいる。
 彼らとともに戦った少女は、しかし守るべき街を失った。そのうえでかの騎士は彼らをも奪おうというのだ。
「退けません。退く理由がありません。国、街、人々を守る。どれだけ及ばなくとも、いくつ失われようとも、一つでも多くを助ける」
 最期に立ち会えなかった祖国がある。帰れなかった故郷がある。死に目に会えなかった人がいる。
 そして、今目の前でメルヴィンという街が奪われ、殿軍として撤退を支えた近衛擲弾兵はきっともう還れない。
 ああ、失われたのだ。また。
 しかし、失われていないものもあるはずだ。
 先んじて首都を脱出した民間人たち。撤退していく首都、中部方面軍の部隊と装備。そしてリュテス第五民主共和国という国の尊厳の灯。
 奪わせない。だから――
「私の決まりを果たします」
 トリガー。放たれた閃光はディナに振り下ろされんとした巨剣を包むサイキックエナジーを霧散させた。機体を脳天から両断するはずだった刃は剣先がディナの胸部装甲を掠めて傷を刻むも、それはダメージと言うには浅い。
 致命の一撃が届かなかった。その隙をリジュームが逃そうはずがなかった。
「――刻み込む!!」
『馬鹿な……ッ!?』
 ベリドートの鎧を覆う緑青のオーラを巻き込み散らして、ブレイクドライバーがヴェルディグリースの装甲を穿つ。
 青銅の鎧が凹んで砕け、鉄壁のはずの騎士の甲冑に一つの大穴が刻まれる。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

イザベラ・ラブレス
人を護るはずの騎士が人狩りとは滑稽ね。
さっさと廃業してコメディアンにでも転職する事をオススメするわ。絶対応援しないけど。

悪いけど、こちとら観光に来てる訳じゃないんでね。
その棒っ切れ、真っ向から圧し折ってやるわ!


ヤツが突っ込んで来る前にこっちから仕掛けるわよバリー・ボーイ!

指定UCを発動しツァーリ・ラケータを一斉発射、地形破壊も兼ねた範囲攻撃で足止めをしつつ、170mmをばら撒きながら吶喊するわ。

相手は巨大化した剣をブン回す以上、足を止めて踏ん張るだろうから脚部の部位破壊を狙う!
あとは弾倉が空になるまでブチ込むわよ!


ナイン・ダブルワン
それはできない相談やな。ウチかてケガ人守るんが使命や。
どかせるもんならどかせてみぃ!

さっきからサイキックエナジーとやら、胡散臭い力を使いよる。
コイツもきっとそういう類や。野生の勘がそう告げる。

瞬間移動共に現れる緑の機体の一撃をあえて受ける。
リミッター解除!駆動系(怪力)全開や!!UC【医療の神の名のもとに】!
ウチは医者や!ウチの背中にも守らなあかん人がおる!
強烈な一撃に対して医者としての意地(医術)で踏みとどまる。

瞬間移動されたときは逃げたと思たわ。やけど捕まえる手間が省けたで。
片方の腕で機体をグラップルし、もう片方の腕で重量攻撃、そのすました顔面を打ち砕く(鎧砕き)!




『そこを……そこを退きたまえ、猟兵。君たちが守っているものは、共和国軍の残党は此処で討たねばより多くの血を流させる存在だ!』
「それはできない相談やな。ウチかてケガ人守るんが使命や!」
「人狩り騎士とは滑稽ね。コメディアンにでもなったら如何? 全然面白くないから応援はしないけど」
 損傷と引き換えに猟兵の迎撃を強行突破したヴェルディグリースの行く手を阻んだのは、鰐頭の重装キャバリアからの砲弾の壁であった。
 破損したベリドートの鎧の傷に流れ弾が飛び込めば如何な騎士のキャバリアとて無事ではすまない。急制動を――サイキックエナジーによる物理法則を半ば無視した機体挙動だ――掛けたヴェルディグリースは大剣を胸の前で構え、飛来した砲弾を弾いて防ぐ。
 そこに側面から殴り込んだ白い機体、ヴァイスファウストの巨拳。ぶんと空気を切り裂いて振るわれた分厚い五指を翻したマントで受け流し、ヴィシガット正騎士は苛立ちを押し殺して告げる。
 共和国国防軍残存部隊が戦力を維持したまま北部方面軍と合流すれば、なるほど彼らは反撃の為の力を蓄えるだろう。その先に待つのは聖王国との長い戦いだ。両軍ともに、もしかしたら戦場となる共和国領に住まう民間人にも犠牲が出るかもしれない。
 ただ戦争を終らせることだけを考えれば、ヴィシガットの言葉は正論にも聞こえる。が、聞こえるだけだ。その言葉に埋もれているのは狂気であると猟兵たちは気づいている。
 この狂える騎士を行かせるわけにはいかない。そも、卑怯千万の手段で共和国を襲撃したのは聖王国であろう。
 ナインとイザベラは眼前の騎士の弁をはいそうですかと飲み込まぬ。睨み合う緑青の騎士がオブリビオンマシンであるからには、どれだけ上等の文句を並べたところで上辺だけのハリボテ、多くを殺すための方便に貼り付けられた見栄えのいいテクスチャでしかない。
『道理を解さない賤民か……この急事でなければ教化の慈悲をくれるべきだが、そうも言ってはおられまい。君たちを討って私は聖王国同胞の生命を守る!』
 メラルダの剣を構え一歩を踏み出したヴェルディグリース。刀身に纏うサイキックエナジーが延伸し、殺意の刃をぐんと伸ばす。マイティ・バリーでも耐えられるかは五分。ヴィシガットの技量――彼が騎士団長副官であるならば、それにふさわしい実力を持っているとして装甲の比較的薄い箇所を的確に狙われたならば彼の鰐頭とて危うかろう。
「させるかいな!」
『邪魔をするな……ッ!』
 だが至近距離で纏わりつくヴァイスファウストの鉄拳が斬撃を放たせない。
 火花を散らして刃が弾かれ、ぶち当てられた拳もまた剣によって弾かれる。
「どかせるもんならどかせてみぃ! ウチはテコでも此処を動かん!」
 ナインにとっての勝利は、負傷者も多く含まれる国防軍残存部隊が無事フランドルス基地まで辿り着くこと。医者として負傷者を守り助けるという信念が、単純な戦闘能力では圧倒しているヴェルディグリースに食い下がる力を彼女に与えるのだ。
「ウチは医者や……!」
 ヴァイスファウストの拳撃を早くも見切りはじめたヴェルディグリースが、カウンターでこれを圧倒する。
 マイティ・バリーはその大火力が故に、ヴァイスファウストを巻き込むことを恐れてトリガーを引けぬ。
「ウチの背中には守らなあかん人が大勢おる! やから!」
 外套を翻して姿を消し、瞬時にヴァイスファウストの背後に"転移"したヴェルディグリースがメラルダの剣を突き下ろす。
 白い装甲が貫かれ――背から腹に抜けた剣を、巨人はがっしりと掴んで離さない。
「捕まえたで……ウチはな、言って聞かん奴はぶん殴って治すんが信条でな――」
 撃て、とイザベラに告げれば、僅かな逡巡とナインがその身を呈してこの好機を作ってくれたのだという理解の間で惑った指がトリガーをしっかりと引き絞った。
「格好いいところ持っていくじゃないミス・アンビュランス! だったら私も格好つけなきゃ嘘ってものよね……!」
 砂埃を上げて地表を滑走し、側面に回り込むマイティ・バリーの腕部ガトリングガンから放たれた170粍の砲弾。回転式機関砲のそれは僅かなブレも許されず、一秒に満たぬ連射で解き放たれて二機の間、ヴァイスファウストとヴェルディグリースを繋ぐメラルダの剣に着弾し――その刃を半ばより砕いた。
「そのキラキラした棒っ切れ、へし折ってやったわ!!」
「ウチごとぶちかませ言うたやないか……! せやけど一発叩っ込む好機はありがたいで!」
 剣を損耗した――つまりは串刺しにされたヴァイスファウストと剣を掴まれたヴェルディグリース、互いに拘束が解かれたということ。
 刃を腹から生やしたまま振り返るヴァイスファウストの鉄拳がヴェルディグリースを弾き飛ばし、そこへ弾倉の中身が尽き果てるまでトリガーを引き続けたイザベラの猛攻が叩きつけられる――!
 硝煙弾雨、炎と煙の渦が晴れれば容赦なき砲爆撃で掘り返された大地に緑青の欠片がごろりと転がる。だが検分するまでもなく一機分には遠く及ばぬ量であった。
「逃したわね……あのマントで防御して、爆煙を隠れ蓑に短距離テレポートで逃げた、ってところかしら」
「けど無事やないで。剣は折れて鎧も穴空きや。もう澄ました顔はできへんやろ」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

玉兎姫・カグヤ
連係アレンジ歓迎

そう……なら、あなた達の手によって喪われるであろう共和国の人達の命を守るためにあなた達を殲滅しないとね
お互い、立つ瀬を守るための命の取り合いにご託はいらないわ
いくわよ、ヴォルパーティンガー

見た感じはセレナイトの高級機といった所かしら
なら、UCを発動して高速飛翔で距離を取りつつ
牽制射撃等で可能な限り距離を維持しながら引き撃ちしましょうか
隙を見せたら一斉射撃で火力を集中させた攻撃を叩き込みましょう

命を尊いといいながら、その命に貴賤をつけてる時点でね
自己矛盾してる戦争狂が、墜ちなさい!




 ロルダン・ヴィシガットという男は独善的である。
 が、それは聖王国の教義に忠実な騎士であれば少なからず持ち得る気質であるし、その点で教義のために同胞の死を賛美しない彼は信仰者としても軍人どちらの思考も持ち得た模範的騎士であった。
 彼は聖王国騎士の無為な死を許容しないし、同胞の生命ほど優先されるべきではないにしても第五共和国民――"未だ改宗の余地ある無知な大衆"に対してもできる限りは生命の危険を感じることなく騎士の庇護下で信仰を啓く機会を与えられるべきだと考えていた。
 然るに投降の機会を捨て、徹底抗戦の構えで軍を温存せんとする共和国国防軍は騎士団のみならず自国民すら戦火に晒すを良しとする悪であると彼は認識する。
 それがオブリビオンマシンと化した愛機によって歪められた思考だとしても、彼の正義は信仰という鎧に固められて揺るがない。
 この身が朽ち果てようとも、刺し違えてでも共和国軍を追討する。
 それが大多数の生命を守る行いであると彼は信じているのである。

 ――だからこそ、その歪んだ正義にカグヤは唾を吐いた。
「命を尊いといいながら、その命に貴賤をつけてる時点でね――」
 短距離転移で出現するなり、後退する共和国軍の背中を睨みつけた緑青の騎士へと飛びかかる白兎。
 騎士と刃を交えた猟兵たちとの通信記録から、彼の思想を彼女は見て取った。その上で見出したのが彼の矛盾である。
 初撃、超近接射撃を転移直後の隙を狙った飽和攻撃を警戒した障壁の高出力展開で受け止めることに成功した騎士は、反転迎撃の予想に反して逃げに徹する共和国軍と、代わりに挑みかかってきたたった一機のキャバリアの姿に状況を直ちに把握した。
『やめたまえ、私は君たちと積極的にやり合うつもりはない!』
 猟兵といえど所詮は傭兵。共和国のために命を捨てる道理はあるまい。
 ヴィシガットにとって共和国軍を討てればそれでよし。その邪魔をする猟兵は敵ではあるが、討たねばならぬ相手ではない。猟兵との戦いは大義の前の無用な前哨戦であると彼は認識していた。
 そして、その割に彼らが油断ならぬ敵であり戦えば己も無事では済まぬというのをヴィシガットは既にその身を以て痛感している。
 輝く念動防壁によって弾かれた弾頭が地を穿ち砂を巻き上げるのを背に振り払われた折れた刃を白兎は蹴飛ばし距離を取る。
 これで騎士の目は一旦引き付けられたと言えるだろう。あとはどこまで拘束できるか、どこまでダメージを与えられるか。
 カグヤはヴェルディグリースタイプのキャバリアはあのセレナイト型の上位互換機と見て間違いないだろうと予測する。どちらも強固な念動障壁を頼みに肉薄し、強化された刀剣で敵機を斬り伏せる。
 セレナイト型はそこに量産機の強みである複数連携による戦術機動を、ヴェルディグリースはより強力なサイキックによる短距離転移を加えてただの時代遅れ以上に厄介な機体となっているが、取りうる戦術の根幹は似たようなものであろう。
 カグヤの予想通り、聖王国領で頻繁に――といっても他国に比べればである――産出するヴェルディグリースは、セレナイトで功を上げ昇格した騎士に与えられる事が多い。
 閑話休題、つまるところ近寄らせねば問題ない機体である事は変わらず、セレナイトの反射シールドのような厄介さの代わりに方向を限定されない汎用性を手に入れたヴェルディグリースの障壁を迂回して突破することは困難ではあるが、その分中距離以遠の敵への反撃手段が限られる相手は御しやすいとカグヤは分析したのだ。
 その考えは正解であった。ヴェルディグリースは絶え間なく飛来する砲弾の迎撃に専念せざるを得ず、防壁を解いて短距離転移で追撃することもできない。
「あなた達の手で喪われる共和国の人たちの命を守るために、私はあなたを殲滅するのよ」
『正義を知らぬから!』
「御託はいらないわ!」
 距離を維持してリニアガンを連射するヴォルパーティンガーに対して手も足も出ないヴェルディグリース。
 だが、その優勢が僅かに一瞬だけ緩む瞬間がある。
 残弾が心許なくなって弾倉を交換する一瞬。彼我の距離を考えればリロードの時間は十分にある――はずだった。
 だがその一瞬でヴィシガット正騎士は捨て身の判断を下す。
 防壁に回していた全てのエナジーを脚部に回して瞬発力を強化し、凄まじい蹴脚で地面にクレーターを刻みながら距離をゼロに。
 右腕でヴォルパーティンガーの頭を掴んで押し倒すと、柔らかな土の大地に半ば埋没させるように白い機体を引きずって騎士は猛進する。
『君たちが彼らを守ればより多くの血が流れるのだ……!』
「ぐっ……一方的な理屈ばかり! 今から流血を強いようとする自己矛盾の塊が!」
 墜落の衝撃で取り落とされた弾倉は既に遥か彼方。地面とヴェルディグリースに挟まれ、背面を中心にヴォルパーティンガーはダメージを示すアラートが鳴り響く。
『万人を救うのは主の御心だ! 私にそれができると思い上がってはいない! ならば――』
 それでも諦めない。カグヤは衝撃に刈り取られそうな意識を奮い立たせてレーザーブレードを起動すると、愛機の頭を鷲掴みにする緑青の腕を――機動力に加護を割り振り、守られていない無防備なそれを狙って振り払った。
 ヴォルパーティンガーを戒める騎士の右腕が半ばから落とされ、代わりに柔らかな地の代わりに跳躍の土台として蹴りつけられた衝撃で白兎の戦闘システムが一時的にダウンする。
 暗闇と化したコックピットが復旧した時には、騎士の姿は既に見えず――共和国軍の退いていった北から微かに戦闘の音が聞こえていた。
「この世の全員を救えないなら救いたい者のためにそれ以外の犠牲を認めるしか無い、か……」
 機体がダウンする寸前、かろうじて拾えたヴィシガットの言葉。
 矛盾で、欺瞞だ。だが、理解はできてしまうことにカグヤは渋面を浮かべて空を仰いだ。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

アリシア・マクリントック
騎士が名乗りをあげ戦いに臨むのであれば、こちらも正面から応ずるのが礼儀というもの。合体です!ティターニアアーマー・ボクサー!
私の名はアリシア・マクリントック!この地に縁があるわけでもない、ただここにいただけの貴族ですが……ノブレス・オブリージュを果たすため!我が誇りのため!あなたを止めてみせます!

生半可な技では通じないでしょう……ここはボクサーの速さを活かすのみ。剣ではなく拳で勝負です。リミッター解除!限界を超えた速度でラッシュを撃ち込みます!問題は私達が負荷に耐えられるかどうか……マリア、無茶な戦い方に付き合わせてしまってごめんなさいね……




「私の名はアリシア・マクリントック! この地に縁があるわけでもない、ただ此処に居るだけの貴族ですが……」
 それでも彼女は剣を取ったのだ。テロに翻弄される人々を救うために。その混乱を突くように襲来した聖王国軍に立ち向かうために。
「ノブレス・オブリージュを果たすため、我が誇りのため! あなたを止めてみせます!」
 近接戦用のボクサー装備に身を固めたティターニアを駆り、背には共和国軍を守って立つアリシア。
 宗教国家であるという聖ガディル王国において、騎士すなわち貴族という理は通じぬとしても。それでも僧兵ではなく騎士と名乗るからには、この一騎打ちの申し出を無視するわけには行くまい。
 果たしてヴェルディグリースは、それを駆る正騎士はアリシアに正対する。
『受けて立とう――と言いたいが、今はそれどころではないのだ。名誉より優先されるべきものがある。私が卑怯卑劣の誹りを受けようと、あれを逃して友が命を失うことに比べれば――』
 折れた剣、穴だらけの鎧。右腕は前腕の半ばで斬り落とされ、満身創痍の緑青の騎士はしかしその姿でも相当の威圧感を放っていた。
 それがアリシアの申し出を聞き届けながらも、明確に否を突きつけた。
 瞬間、その機影が掻き消える。背後から振るわれる直剣。折れて短くなった刃でも、ティターニアの首を刈るには十分。
 それをクローで受け止め弾いて振り返れば、弾き返された反動で機体を旋回させたヴェルディグリースの蹴脚が襲う。
『君のような誇りある人間がどうして共和国の味方をする!』
「誇りを謳うのであればどうしてあんな戦いを始めたのですか!」
 蹴脚をステップで躱し、反撃に突き出した鉄爪はくるりと廻った刃が弾く。
「無差別テロで流れた血、あなた達騎士の血よりも軽いとは言わせません!」
 あのテロで喪われた命は決して少なくない。猟兵の活躍で被害を抑え込めたと言っても、市民や初動対応にあたった警察に犠牲は出ている。
 それを棚上げして、テロから始まった戦いの犠牲者だけを論じることは不誠実だとアリシアは指摘する。
 そも、テロさえなければ覚悟の上で戦場に立つ軍人の命だけを語ればよかったのだ。テロによって民間人に犠牲が出たことが、そしてそれを利用した電撃的攻勢によって軍の防衛機構が機能不全のまま市街戦にもつれ込んだことが不必要な犠牲を強いる戦いの原因。
 流血の多寡を、犠牲の大小を論じるならばその責任の全ては国土奪回のため戦力温存を図る共和国軍ではなくテロリストこそ負うべきであろう。
 そして猟兵を含む殆どの共和国側の人々は、テロリストを聖王国の手の者だと見ていた。でなければあそこまで迅速に連携して侵攻などできようものか。
『――わからぬことを! 共和主義者のギロチン狂いが言える言葉か!』
 両の爪を連続で繰り出すティターニアに対して防戦を強いられるヴェルディグリース。そのパイロットの言葉に、アリシアは噛み合わぬ違和感を感じる。
 そうだ。眼前の騎士の言葉が上辺だけの偽りでないならば、テロに対して憤りを感じるはず。それが聖王国軍の正式な作戦行動の一環であったならば、こうも自身の正義を盲信してはいられまい。
 それが騎士からは感じられなかった。ならばテロは聖王国と関係がない――というのは状況証拠からはほとんどありえないだろうが、少なくとも彼には知らされていない――軍団の副長クラスに?
「どうやらこの戦争、私達が思っている以上に大きな悪意が蠢いているように思えますね……」
『だとしても、そのようなものを突き止めるのは戦争が終わったあとでのことだ!』
 渾身の拳打を短距離転移による緊急回避で躱され、突き出された腕を潜るように出現するヴェルディグリース。この距離から剣を突き出されればただでは済まない。
「くっ……リミッター解除、マリア、無茶な戦い方ですが――」
 もはや機体の機動性が追いつかぬ必殺の間合いに飛び込んできた敵機に対して、限界を越えて無理矢理の機動で爪撃を――
 愛機を共に制御する相棒への謝罪を告げる間もなく手応え。同時に機体が限界を迎え、関節から火花と煙を噴き出して停止する。
 果たして戦果は、とアリシアが腕の先をみれば、爪はヴェルディグリースの厄介な防御装備――すなわちベリドートの鎧を砕き、ロムスフェーンの外套――を引き裂いて、しかして本体は影も形もない。
 最後の転移。騎士の生命力を注ぎ込んだ、捨て身のそれはアリシアへのトドメではなく共和国軍本隊への追撃のため。
 過負荷で動けぬティターニアの背を越えて、緑青の騎士は砕けて重い鎧を引きずるように北進を再開した。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ヴィクター・ホリディ
流石にこれの相手をさせるのは無理か…
ウィゼット候補生、隊を率いて基地まで退け
振り返るなよ、さぁ走れ!

■方針
他の猟兵と連携
UCを発動させ、敵の【情報収集】を開始
情報収集中は【推進移動/継戦能力/戦闘知識】を駆使しつつ
【援護射撃/制圧射撃/弾幕】で牽制

情報収集完了後、一撃を撃ち込む瞬間を待つ
狙うべきは剣を振るうその瞬間
剣を振るい切る前に【推進移動】で吶喊
自分と自機のダメージは【覚悟/限界突破】で耐え
カウンターとしてダインスレイフの【重量/貫通攻撃/部位破壊】で穿つ

「なぁ騎士様、お前この戦争の理由を覚えてるかい?
 共和国憎しはあるだろうさ、だがここまでしたのは本当に聖王国の意思かい?」




「後方より機影1、識別は……敵機!」
 候補生の悲鳴じみた報告に、ヴィクターは直ちに散開し警戒陣形を取る訓練生たちに集合を命じた。
 テロ部隊との緒戦から出ずっぱりだった訓練中隊だが、敵正規軍との戦闘はこちらも正規兵が主となって前面に出たためそこでの損耗は少ない。
 それを理由に、敵の第二次、第三次追撃隊による迂回強襲を警戒するための斥候として後方を警戒していた訓練中隊は、果たしてその予備部隊こそなかったものの猟兵の迎撃を突破して迫るヴェルディグリースと共和国軍機としては最初に接敵することとなったのだ。
 ――猟兵連中がダメージの一つも与えられずに素通りさせたとは思えん。相手も相応に出来るヤツだろうが、手負いなのは間違いない。さて、それを考慮した上で……
 ヴィクターは思考を高速で回転させ、候補生をどう扱うかを決定する。
 猟兵たちとの交戦データは適宜回収済みだ。敵機が損傷しているのを差し引いても、それなり以上の脅威度であると言えるだろう。
 疲労した訓練生では数の優位を最大限に利用しても、一人二人の犠牲者は避け得まい。で、あるならば。
「どうせ犠牲が出るなら若者より年寄りのほうがいいだろうさ」
 単騎で止めるとなれば、候補生たちを指揮してのそれより成功度は格段に落ちる。候補生数人の犠牲を厭うて、自分だけでなく共和国軍にもそれ以上の損害を出してしまう最悪の結果すらありうるだろう。
 だがヴィクターには、どれだけ戦術的に正しかろうと若者を死なせて得る勝利など糞食らえだった。それならば自分が何を失おうと、血反吐を吐いてでも一人で掴み得る最高の結末を得てみせる。
 ――だから。
「お前たちにこれの相手は無理だ。ウィゼット候補生、隊を率いて基地まで全力撤退! 振り返るなよ、さぁ走れ!」
「でも、ホリディ大尉!」
「でもじゃあない! お前たちが命を捨てようが俺一人で刺し違えようが、対して作戦成功率は変わらん! 実戦経験者の判断に従え!」
 そう言われては、未熟な候補生に反論する余地はない。短い間とはいえ指揮を預け、共に戦った年長者への敬礼を残し、訓練生達の機体は北へと駆け出した。
「――御武運を! 必ず応援を連れて戻ります!」
 その言葉にヴィクターは苦笑し、追いついてきた騎士に問いかけた。
「あいつら、応援を連れて戻るんだとよ。振り返るなって言ったばっかなんだがなぁ」
『よい部下を持ったようだ。だが――あれは共和国軍だ。君が猟兵だとしても、共和国軍の仲間であるならば』
「お前もよくやるよ、そんなボロボロの機体でよくもまぁ戦えたもんだぜ。ま、あいつらは間に合わんだろう。戻った頃には俺かお前か、どっちかの死体が転がってるに違いない」
 残弾僅かなショットガンを構えて、ヴィクターは戦う意志を示す。
 一方でヴィシガットももはや転移の連打でヴィクターをやり過ごすだけの余力はない。このまま追撃するにはあまりにも疲弊しすぎている。
 彼の部下が共和国軍を連れて戻るというなら、此処で彼を討ち引き返してきた共和国軍を相手に暴れ損害を強いて反攻の戦力を削るくらいが許容しうる最大限だろう。
 双方の目的が眼前の敵を倒すことで合致した。
 発砲、撒き散らされる散弾――重要区画や装甲の半壊した胸部を守るように、使い物にならぬ右腕を盾にして突撃――被弾した右腕が罅割れ、二発目、三発目の散弾を受けてついに砕け散る。
 緑色に煌めく破片が飛び散った――残弾ゼロ、散弾銃を投棄――距離が詰まる。白兵の間合い。逃れるようにバックブースト、首都での戦闘の合間、補給として受け取っていたキャバリア用ナイフを抜く――即座に振るわれたメラルダの剣がマニピュレーターを掠め、抵抗するにはあまりにも短い刃を弾き飛ばす――再び距離が詰められた。ナイフを弾き飛ばした勢いのまま振り上げられた刃がサイキックの輝きを宿して振り下ろされる。
 ――プレケスの右腕が落ち、
 ――ヴェルディグリースの胸をエネルギーフィールドに包まれた拳が突き破った。
 黒い機体がダメージにその単眼を明滅させ、緑青の機体は纏ったオーラを霧散させて死に絶える。
「なぁ騎士様。お前この戦争の理由を覚えてるかい」
 ヴィクターの言葉に答えるものはない。ロルダン・ヴィシガット正騎士はたった今彼の手で戦死したのだから。
「歴史がどうこうってのはあったろう。燻ってた共和国憎しが燃えちまったっていうなら、戦争を始めちまったのはわかる。だが……」
 だが、彼のような騎士がありながら。彼の言葉を信じるならば、彼以上に名誉や誇りを重んじる将帥を抱えながら、あんな開戦の仕方を選ぶなどというのはやはり不可解なもの。
 煙草を取り出し、咥えて火を付ける。
 狭いコックピットに紫煙が満ちて、煙を嫌った機体のAIが文句を垂れながら換気を開始した。
 ヤニ混じりの空気を吸い上げ、機外に吐き出す為に全力稼働をはじめたエアコンの出すやかましい音にまぎれて、ヴィクターの問いかけは煙とともに溶けていった。



 かくて聖ガディル王国による宣戦布告なき侵略は、リュテス第五民主共和国に多くの犠牲と損害を強いた。
 首都占領。南部制圧。そして東部軍主力壊滅に伴い国土のおよそ半分強に至る広範な領域を放棄せざるを得なかった共和国軍は、北部軍、西部軍を主力に部隊を再編。
 ヴォルシュ山地を天然の要害として利用し、守勢に長けた北部軍を防衛の要として聖王国軍の散発的な追撃を撃退することに注力する。
 この間軍人たちの間で唱えられた、"国を取り戻せ"という標語は軍のみならず民間にも広く浸透し、警察官や予備役将校を中心とした国民義勇軍の募集には多くの市民が志願し、来る大反攻に向け正面主力を担う正規軍の支援部隊としてその規模は瞬く間に膨れ上がっていった。
 一方の聖王国軍は南部の共和国残存戦力を"迅速かつ徹底的に"掃討した後、東部制圧に舵を切った。
 東部戦線の指揮を執るは、徹底的な南部方面軍殲滅作戦で早期に首都への補給線を確保した"燎原"フェリペ・サンドーサ正騎士長率いる第八騎士団。そして東部各軍港都市を拠点とする共和国艦隊の逃亡を防ぐべく、"黄金艦隊"ドゥルセ・ハルバリ提督率いる第四騎士団が海上に布陣。
 首都を抑えた"大総督"ジョルジオ・デ・イベリオ正騎士長率いる第三騎士団は侵攻を停止し、旧共和国首都一帯の安定化に注力していくことになる。
 互いに主力はにらみ合いの構図となり、主戦場は東へと移りゆく。
 戦いの火はわずかにその勢いを弱めたかに見え――しかしその時が訪れれば、たやすく再び燃え上がり共和国の草原を焼き尽くすだろう。
 その時、猟兵の出番が今一度訪れるに違いない。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年03月25日


挿絵イラスト