羅針盤戦争~ガレオン船上の戦い
●二度目の航海
――海賊に二度目はあり得ない。
本来なら、そのはずだった。
掟を破った者、嵐や戦闘で海の藻屑と化した者、自警団やらの公的組織に捕まった者。
その先に待ち受けるのは全て死のみで、それが見せしめとして殺されるか、溺死するか、罪人として処刑されるか。死の方法が違うだけに過ぎない。
最も穏やかなものは、溺死だ。「最初の数十秒は苦しいが、後は眠るように意識が遠くなる。不思議と穏やかな気持ちになってなァ」とは、生還したとある海賊の体験談で。
最も手っ取り早いのは、処刑だ。断頭台の上に手招きされて、それでお終い。
最も残酷なのは仲間による掟破りの刑で、時には死よりも辛いと言われる環境が待ち受けている。
海へと漕ぎ出し略奪と殺伐の限りを尽くす以上、一度でも失敗したらその先はない。三十歳まで生きられたら万々歳だ。
死とは身近に有り触れたもの。親しき、しかし、忌むべき隣人。それが海賊にとっての常であり――。
「オマエら、願ってもやまねぇ二度目の航海だ!! 蘇って初の上陸戦だが、ヘマするんじゃねェぞ!!」
掲げられるのは、斧にブロードソード、カトラスにレイピアといった武器武具の類。
音楽と言われれば少なからず洗練された印象を与えるものであるのに、上品とは程遠い不協和音が楽士によって奏でられ、戦闘員たちの怒気を高めていく。
甲板では砲撃手が慌ただしく武器やら備品やらを抱えて走り回っており、開戦の準備を進めていた。
「噂によりゃぁ、あの島は観光と貿易で有名だとのことだ。金目のモンと、武器と酒と、女と見目の良いニンゲンは一つ残らず奪って来い!!」
仲間の殺害という掟破りを犯した結果、孤島に置き去りにされ――元仲間たちへの恨み辛みを呟きながら餓死した者。争いの最中で剣に穿たれ、絶命した者。略奪成功の祝いに酒場でハメを外していたところ、警邏部隊に捕まった者。
そう。彼らは皆、海賊として生きる上で何からの失態をおかし――一度死んだはずの存在であった。
しかし、運命の悪戯か、宝と略奪を追い求める彼らの熱気が死の定めさえをも凌駕したのか。
一度死んだはずの彼らは、オブリビオンとして蘇り、本来なら有り得ぬ二度目の航海へと漕ぎ出していた。
「そろそろ小舟を下せ、複数に分かれて上陸――いや、待て。一時の方角に船影有り!! なんだぁ? 無駄な重装備に……最先端の技術でも使われてンのか? 見慣れねぇけど、ありゃきっと有名所の息が掛かった貿易船だなァ!!」
島に攻め込もうとしたところで、幸先良く略奪するにはうってつけの船が見えたときた。
「幾ら重装備な船も乗っ取っちまえば、コッチのモンだ。船が壊れるといけねぇ、大砲は使うなよ!! 作戦変更だ。まずはあの船を奪って、それから島に乗り込むぞ!」
意気揚々と戦闘準備に取り掛かる海賊たちは、先ほど以上に熱気とやる気に満ちている。
幸先の良い獲物に、あちらはこちらを近隣の島の哨戒船とでも思っているのか――逃げる素振りすら見せない。海賊旗を掲げずに航海する、囮作戦が上手くいくとはな。
オレらには女神様の加護が掛かっているに違いない。そんな思い込みに憑りつかれた彼らは、貿易船(仮)襲撃が成功すると信じてやまない。
そんな海賊たちの唯一の誤算といえば、一時の方角に見えた「いかにもお宝詰んでそうなゴツい貿易船」が、猟兵たちの乗る鉄甲船であったことだろう……。
●その少し前
「『蒼海羅針域の破壊』に向かおうとしているコンキスタドールの大艦隊が押し寄せているのは、もう知っているわよね?
今回は、この大艦隊から逸れた一隻のガレオン船――と、それに乗っている海賊たちの相手をして欲しいの」
グリードオーシャンの平和を護るため。サムライエンパイアからグリードオーシャンへと至る渦潮の破壊を阻止するため。
羅針盤戦争に参加するべく集まった猟兵たちを前に、言葉を切り出したのはハーモニア・ミルクティー(太陽に向かって・f12114)だった。
「一応、彼らには『蒼海羅針域の破壊』っていう役割があるのだけれど……。再び海賊として略奪や殺伐できることが嬉しくて、本来の目的を忘れているみたいね。
観光と貿易で賑わう『キャプテン・エドワード島』っていう島に攻め込もうとしていたわ」
アックス&ウィザーズの世界から落ちてきたと思しきその島は、その昔、「キャプテン・エドワード」という、とある海賊団の船長の活躍により発展した島らしい。
船長への敬意を湛え、船長の名前がそのまま島の名前になり――船長が亡くなって長き年月が経った今でもなお、観光や貿易は廃れずに今へと続いている。争いとは無縁の、活気溢れる賑やかな島だ。
「貴重な貿易品に、酒に料理に、人間に……。海賊が狙うには、絶好の島だもの」
酒もあれば、女も、奴隷になりそうな子どももいる。貴重な香辛料や芸術品の類なんて、売りさばけばかなりの大金が転がり込んでくるだろう。
そんな島へとガレオン船を進める海賊たちは、サムライエンパイアへの渦潮へと至るルートや自分たちに課せられた使命なんて、頭からスッパリ抜け落ちていたに違いない。そもそも目的を理解しているのか、それすらも不明だった。
そのため、観光や貿易が盛んな島を目指して一隻だけでふらりと現れたのだ。
「そのまま島へ上陸しようとしているところなのだけれど、鉄甲船の姿を捉えると、作戦を変更してこちらに向かってくると思うわ。
どうにも、こっちのことを『貴重な品物を積んだ貿易船』って勘違いしているみたいね……」
貪欲な彼らは、見慣れぬ鉄甲船も、島のお宝や人々も、どちらもその手に収めるつもりであるらしい。
「こっちの船を見かけたら、海賊たちはそのまま追いかけてくるわ。戦闘にキャプテン・エドワード島が巻き込まれるといけないもの。逃げていると見せかけて、島からある程度距離をとるわ。そこで降伏したと思わせて――開戦よ!」
鉄甲船を停泊させると、海賊たちはガレオン船を横付けにして、橋代わりの鉄格子を下し――そのまま乗り込こもうとしてくるだろう。
その瞬間を狙い、逆にガレオン船へと攻め込む。というのが、今回の作戦らしい。
「海上への飛行や転移は、異常気象のせいで現実的ではないわね。だから、船上戦や海上戦が主になるかしら?」
敵のガレオン船が主戦場となるが、船には十分な広さがない上に、人数が多い。乱戦が予想されるだろう。
「それにしても、あっちは根っからの海賊なんだもの。折角だし、こちらも海賊らしく戦ってみるのも、面白いかもしれないわね」
きっと上手くから、応援しているわ! と。ハーモニアは手を振って猟兵たちを送り出すのだった。
夜行薫
●挨拶
お世話になっております。夜行薫です。
ガレオン船や大航海時代、海賊は浪漫。
個人的に海賊vs海賊の船上戦は大好物なのですが、皆様はどうでしょうか。
●シナリオについて
サムライエンパイア側の渦潮へと迫る敵の大群を止める為のシナリオです。
このシナリオでは、略奪と殺伐に対して熱狂的になるあまり、大群からはぐれてしまった一隻のガレオン船を相手にします。
●受付について
オープニング公開と共に、プレイング募集開始となります。ソロ参加推奨。
速度重視で、必要成功数となる5人前後の描写を予定しております。
そのため、プレイングが不採用になってしまう可能性が高いです。ご了承の上、ご参加ください。
●状況について
エドワードとは海賊にありがちな名前ですが、既存の島名と被ってません……よね?
観光と貿易で賑わうキャプテン・エドワード島の近くに、敵のガレオン船と猟兵の乗る鉄甲船が2隻。他に敵の船影は見られません。
だって彼ら、略奪と殺伐を求めるあまり、蒼海羅針域破壊の為に示されたルートからかなり外れてしまってるんだもの。
●リプレイ開始時の戦況について
敵のガレオン船と猟兵たちの乗る鉄甲船が横に並び、海上に停泊している状況です。
海賊達は降伏する気になったかと思い込んでいますが、逆です。罠です。
リプレイは、敵船の橋代わりの鉄格子が降りきり、猟兵たちがガレオン船へと乗り込む直前から始まります。
※なお、WIZで海賊の奴らが召喚してくる奴隷も、本シナリオではオブリビオンとして扱います。既に死んでいる存在ですので、手加減なしで大丈夫です。
●プレイングボーナス
海上戦、船上戦を工夫する(海上では飛行や転移が阻害されています)
●戦闘について
(海賊らしく)船上戦や海上戦の工夫がされていればオッケー!
歴史的真偽はさておき、以下は参考までに。
ブロードソードや斧を手にした破壊部隊。
風車よろしくぶん回しつつ、最初に敵船に乗り込み威嚇する奴らです。敵船の索具や設備の破壊が主目的。
カトラス、レイピア等による花形の実働部隊。剣による攻防で格好良く敵を倒していくあの方々。
他にも楽士として味方を盛り上げつつ、ついでに海賊達を倒すとか、海に落ちた振りして海上から奇襲しかけるとか。
捕虜や奴隷として命乞いしつつ、敵の懐に潜り込んだ直後にトドメを刺すムーブも全然有りです。
第1章 集団戦
『海賊団員』
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POW : 身ぐるみを剥ぎなぁ!
【ナイフ】による素早い一撃を放つ。また、【服を脱ぐ】等で身軽になれば、更に加速する。
SPD : おとなしくしろぉ!
【敵の背後】から【アームロック】を放ち、【痛みと締め付け】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 働け奴隷共!
戦闘力のない、レベル×1体の【奴隷】を召喚する。応援や助言、技能「【かばう】」を使った支援をしてくれる。
イラスト:正成
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
才堂・紅葉
「海賊らしくか……まぁそう言うのも悪くはないわね」
真の姿の龍の意匠の中華装束に、蛇矛を肩に担いで笑みを浮かべる
神器の副作用で魂が猛将よりだが問題はなかろう
「海賊共! 今から七海無双がまとめてそっ首叩き落とすから、震えて待ちなさい!!」
【先制攻撃】とばかりに【気合】で大喝
弾かれるように突っ込んで、縦横無尽に蛇矛を振るいましょう
大事なのは船上と言う不安定な場。空手の三戦の要領で内股を意識し、骨盤を立てて体幹を維持するのがコツだ
「ってと、この場合の私のお仕事は……これよね!!」
敵に意気を挫きつつ、敵戦の索具や設備を破壊しましょう
敵味方が入り混じる前の再序盤
甲板の広さを活かし、蛇矛の乱舞を炸裂させます
●切込み舞うは、洋上の華
「海賊らしくか……まぁそう言うのも悪くはないわね」
それは、開戦を告げる重々しい衝撃音だったのだろうか。それとも、まんまと罠に引っ掛かった愚か者達の背後で檻の扉が閉まる音だったのだろうか。
どちらだって構わない。袋のネズミと化した海賊はここで再び眠りにつく運命なのだから。
海風にはためくのは竜の意匠の中華装束。肩に担がれた蛇矛が燦々と照らしつける陽光を受けて、眩しく輝いている。
獰猛な笑みを浮かべながらガレオン船を見下ろしていたのは、才堂・紅葉(お嬢・f08859)だった。
哀れな海賊たちは、こちらの作戦に全く気付いていない。それどころか、意気揚々と乗り込む気満々で。
活気に満ち溢れたその顔が恐怖に歪む瞬間を見るのが、今から楽しみだった――神器使用による副作用でハイテンションになっている紅葉だが、恐らく問題はないだろう。それ以上に獰猛で粗野な奴らが、鉄格子を隔てた向こうに存在しているのだから。
「海賊共! 今から七海無双がまとめてそっ首叩き落とすから、震えて待ちなさい!!」
血気盛んな略奪者たちの雄たけびを掻き消して、ガレオン船の向こうへと響き渡ったのは、紅葉の大きな恫喝だった。
紅葉の大喝に一瞬だけシン……と静まり返る敵の甲板。それから、ドッと笑い声が響き渡る。
『ア“ァ? 七海無双とは、こりゃ大きく出たモンだなぁ!』
『女が切込みたァ、よっぽど人手不足と見た――……』
嘲りを含んだ海賊たちの囀り声は、途中プツリと途切れることになる。
いつの間に目の前に来たのか。先ほどまで鉄甲船に居たはずの紅葉がすぐ近くで自分たちを見下ろし、そして紅葉の登場と共に花嵐よろしく舞っているのは、先ほどまで自船の甲板を構成していたはずの、木材やロープの切れ端……。
「ってと、この場合の私のお仕事は……これよね!!」
縦横無尽に、流れる流水の如く披露されるのは舵矛の乱舞。
甲板を砕き、策具を切り刻んで。全てを喰らい尽くす獰猛な鮫のように、こちらへと迫りくる。紅葉の通った軌跡には、何かの切れ端や木片しか残らない。
蛇矛と一体化し披露される破壊の舞に、海賊たちも付け入る隙が無く。
不意の揺れで態勢を崩したその瞬間を狙おうにも、空手の三戦の要領で体幹を保っている紅葉は、体勢を崩す素振りすら見せない。
『……なァ、オイ。敵前逃亡って、』
『バレればその場で処刑に決まってるだろ!? いや、隙を付けば数人くらいなら……』
「逃げるとは情けないわね!! 待ってなさい。一人残らず追いかけて、策具と一緒に切り刻んでやるわ!!」
そっと後退りしつつ、緊急脱出用の小舟に乗りこもうとした数人の海賊たち。
震える手でどうにかロープを解こうも、手が滑って上手くロープが掴めない。そうこうしているうちに、紅葉が彼らへと追いつき――。
舵矛によって切り落とされるロープに、誰一人として乗ることなく海上へと落下していった小舟。青白い顔に冷や汗を浮かべたまま、沖へと流れていく小舟を見送る海賊たち。
そーっと背後へと振り返れば、獲物を狩る猛獣のように野蛮な笑みを浮かべた紅葉が。
「さ、そっ首叩き落とされる覚悟はできたかしら?」
彼らが最後に見たのは、紅葉のとても清々しい笑顔だったに違いない。
策具や設備の破壊による威嚇と、敵の士気や戦力低下。それには紅葉が十分過ぎる成果を残して、海賊と猟兵による海戦は、本格的な幕開けとなるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
花澤・まゆ
◆■
思いっきりやっちゃっていいってことだよね?
靴は輪ゴムを利用して簡単な滑り止めを
羽は邪魔になるので折り畳んで隠して
鉄格子が降りてきたら【小夜啼鳥】を抜き放ち
UC発動、まずは衝撃波のご挨拶から、一気に乗り込むよっ
【切り込み】で先頭を行く勢いで相手の船の色々を
どんどん破壊していっちゃう
やいやい、あたしら相手にした覚悟はできてるんだろうな?
なんて海賊風に喧嘩も売っちゃうよ
アームロックは【武器受け】で対応
背後からくるのは【第六感】で気付けるようにするよ
さあ、そっちのお宝置いていってもらおうか!
●次に続くは、春疾風
『野郎ども、まさか怖気づいたワケじゃねェだろうなァッ!!? 思い出せ!! 飢えの苦しみを、カビ臭せぇ牢に閉じ込められた屈辱を、海を知らねぇ軟弱者が向ける、蔑みの視線を!!』
木っ端微塵に破壊された甲板の一部、見事なまでに細かく切り刻まれたロープが海風に弄ばれて海の上へと落ちていく。そして、目の前でバッサリと首を一閃され、黒靄と化して消えていく仲間たち。
鉄格子と共に最速でガレオン船へと乗り込んでいった猟兵により、海賊たちの一部に不安の声がポツリと零れ落ちる。
『最後の慈悲として手渡された拳銃が不良品だった時の絶望を!! 下手な執行人のせいで、何度も刃を振り下ろされる恐怖を!! ソレらに比べれば遥かにマシだろう、なァ!?』
「……思いっきりやっちゃっていいってことだよね?」
白い紙に落とされた一滴の染みのような不安の声は、しかし、リーダー各の存在によって、それ以上は広がりを見せず。
もはや、狂信的と言っても過言ではない。今まで以上の猛りを見せ、攻め込まんと得物を振り上げる海賊たち。
そんな彼らの様子を若干引き気味で鉄甲船の先端から眺めていたのは、花澤・まゆ(千紫万紅・f27638)だ。
相手が本気で来る以上、こちらも手加減する必要はない。それに、奴らは倒すべきコンキスタドールだ。
海賊たちの間に一度差した不安は消えはしないだろう。何なら、そこをついてやれば良い。一度できた傷口を抉るように、容赦なく。
「やいやい、あたしら相手にした覚悟はできてるんだろうな?」
二つ目の鉄格子が轟音と共に降ろされ、船が上下に激しく揺れる。
轟音と地震もかくやの大揺れに晒されるなか、輪ゴムを利用して滑り止めにしておいた事が幸いしたのか、足裏に力を込めても滑ることはなかった。
床を蹴り、斜め四十五度の角度で停止した鉄格子を滑り降りて。
オラトリオである自身を象徴する翼は邪魔になるため、今は収納されている。狭い船内を駆け巡っても、妨げにならないだろう。
解き放たれたまゆを縛る存在は、此処には無い。チィチィと小鳥の鳴き声を伴わせながら、退魔の霊刀【小夜啼鳥】を抜き放って、いざ出陣!!
鉄甲船に乗り込もうと鉄格子によじ登っていた海賊たちを吹き飛ばして、ガレオン船の甲板へと降り立った。降りかけていた鉄格子がまゆの放つ衝撃波を受け、再び上と戻っていく激しい音が響き渡る。
「さあ、そっちのお宝置いていってもらおうか!」
鉄格子を押し戻し――ついでに降り立った甲板周辺の床だ手すりだを纏めて吹き飛ばしたのは、所詮挨拶代わりにしか過ぎない。本番はこれからだ。
「覚悟のある奴から、かかってきな!」
『ハン!! 幾ら手練れの極東の戦士とはいえ、所詮は子どもだもんなぁ!?』
『数で攻めれば、あっという間さ!』
海よりも澄んだ瞳で挑発すれば、短気な海賊たちは面白ほど乗ってきた。
甲板の端に立つまゆを取り囲むようにして、半円の包囲網が築かれる。多勢に無勢。少しずつ距離を縮め、一気に飛び掛かるつもりなのだろう。
しかし、そうは問屋が卸さない。
「そんな攻撃で、どうやってあたしを捕らえるつもりなんだい?」
ブンッ! と。空を切る音。背後から飛び掛かったというのに、その場にまゆの姿は無く。
哀れな海賊は自身に何が起こったのかも分からぬまま、衝撃波によって吹き飛ばされ、勢い良く柱に突っ込み――黒靄と化して消えていく。
後に残ったのは、盛大に凹んだ柱の傷跡だけ。
迫る海賊を吹き飛ばし、ついでに進行方向に存在するガレオン船の諸々を破壊して。荒ぶる春雷と化した彼女を止める術を、海賊たちは持ち合わせてはいなかった。
成功
🔵🔵🔴
牧杜・詞
依頼に来るのは久しぶりだけど、やることはあまり変わっていない感じね。
殺せばいいんでしょう?
え? もう死んでる? 2度も死ぬなんて運のないことね。
いつもと違うのは船上ってことだけど、
【足場習熟】でバランスを取りながらいけばなんとかなるかな。
相手の突入に合わせて【切り込み】を使いつつカウンター気味に突撃して、
相手の攻撃を【見切り】と【残像】を使って躱しながら、向こうの船に乗り込んで。
無事に乗り込めたら【識の境界】を発動させて、
スピードで相手を圧倒して、ひとりづつしっかり殺していこう。
乱戦になればなるほど、わたしに有利って気がするわね。
同士討ちとか誘うのもいいんだけど、やっぱり直接殺したいかな。
●刀を握り、風と踊る
『記念すべき初戦闘だ!! せっかく蘇ったんだ、負ける訳にゃァいかねェだろっ!?』
ガレオン船へと先行した味方がある程度の損害を与えてくれてはいるが、それでも、熱狂的な勢いを保った海賊たちを完全に止めることは難しいようで。
鉄格子を渡ってガレオン船へと乗り込んでいく猟兵と、船を死守すべく海賊たちがこちらを待ち構え――本格的に入り乱れようとしていた。
「依頼に来るのは久しぶりだけど、やることはあまり変わっていない感じね」
殺せばいいんでしょう? と。牧杜・詞(身魂乖離・f25693)は、無表情のままこてりと小さく首を傾げて、結論を述べた。
猟兵としての仕事は2、3ヶ月ぶりなのだが、やはりというべきなのか。やることは、あまり変わっていないようだ。
オブリビオンを倒すことは、いつまで経っても変わりそうにはない。
と、そこまで考えて、詞はあることに気付く。
『おうおう、言ってくれるなあ!? オレらはもう死んでんだ、今さら恐れることなんてねぇよ!!』
「……え? もう死んでる? 2度も死ぬなんて運のないことね」
剣の交わる音、叫び声、波の爆ぜる音……音の豪雨に晒されるなか、詞の呟きを敏感に拾い上げ、『舐めるんじゃねぇ!』と吠える海賊たち。
弱い何とかほど良く吠える、とは言ったものか。
二度とは言わずに、蘇る限り何度でも殺してあげるのだけど、と。詞は騒がしく怒鳴りつける海賊たちに狙いを付けて、切り込む。
まずは、頭に血が上って突っ込むことしか考えられなくなっている、彼らから。
「ん。やっぱり直接手を下すに限るかな――根源を示せ」
先行した猟兵により、一度は上げられた二つ目の鉄格子。それが再び降ろされる瞬間を見計らい、駆けた。
普段の戦闘とは異なり、ここは海に停泊している船の上だ。不安定な足場の元で戦わなくてはならない。しかし、バランスを保てば何とかなりそうだった。
『ちったぁ楽しませてくれよぉ!』
「それはこちらの台詞ね。少しは殺しがいがあると良いんだけど」
躊躇い無く手にしたカトラスを振り下ろす海賊の一撃は、喰らえばかすり傷程度では済まされない。
しかし、剣が振り下ろされた先に既に詞の姿は無く。唖然としているうちに背後から強い衝撃を受け、気付いた頃に海賊当人は床に倒れ伏している有様だった。
「残念。期待外れ、かな」
ふわりふわりと狭い船内を物ともせず、揺れ動いていく詞の身体。そこに居るのは分かっているのに、圧倒的な速度で薙ぎ払い、突きを繰り出す彼女に追いつける者は居ない。
鮮やかで無駄のない動きは、もはや芸術の域に到達しているだろう。
首筋を斬り裂き、左胸の付近を一突きし。何処をどう攻撃すれば致命傷を与えられるか――全て詞の頭に、経験と共に知識が記憶されているのだから。
「同士討ちとか誘うのもいいんだけど、やっぱり直接殺したいかな。出来れば、もう少し手ごたえのある相手と」
詞を狙う海賊が増える度、戦況は彼女有利へと傾いていく。氷上を滑るように身を動かし、フェイントをかけ、時には同士討ちを誘って。
同士討ちも良いけれど、直接手を下すあの感覚が堪らない。それでも甲板付近の海賊は、少し手ごたえがなさ過ぎたから。
更なる強者を求めて、詞はガレオン船の内部へと歩みを進めていく――向かってくる海賊たちを、一人残らず倒しながら。
成功
🔵🔵🔴
サンディ・ノックス
いいじゃないか
オブリビオンになって自らの価値観さえ歪んでしまう存在も多々あるなか、生前の思いのまま好きに暴れるって嫌いじゃないよ
だから俺は攻め込まれる船の護衛として剣を持ち戦う
彼らが生前にやっていたことをなぞるように…ただ、こちらが勝たせてもらうけどね
黒剣を抜きUC解放・宵を発動
攻撃回数を重視して、まずは鉄格子を下りてくる連中、それが終わったら鉄格子を使って相手の船に攻め込んで次々と剣戟を仕掛けていく
素早く動く彼らに時折やるねと感心する声をかけながら、俺のペースは崩さず確実に一人ずつ仕留めていくよ
痛みはあまり感じない身体(激痛耐性)だけどむやみに受けてあげる必要もない
見切った動きは躱していくよ
●喰らい尽くすは、黒き宵
『こンだけの手練れが乗ってる船ったぁ、きっとお宝がたんまりあるぜ! 怖気づくな、掛かれ!!』
戦争の目的も、当初の予定も、渦潮へと迫るルートすらも。
何もかもを聞き流し、或いは、傍から聞くつもりでは無かったであろう彼らは、一周回ってある種の清々しさを感じされるほどだった。
「いいじゃないか。
オブリビオンになって自らの価値観さえ歪んでしまう存在も多々あるなか、生前の思いのまま好きに暴れるって嫌いじゃないよ」
オブリビオンとして蘇る際に、自らの価値観や存在意義さえも歪めてしまう存在も居るなか、自らの欲望に忠実なまま、生前と変わらぬ思いを抱き好き勝手に暴れられるのだから。
個人的には好感を抱ける振舞い方だが、見過ごすことはできないと、サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)は黒剣を手に、海賊たちを見据えていた。
「彼らが生前にやっていたことをなぞるように……ただ、こちらが勝たせてもらうけどね」
貪欲な略奪者と化して、鉄手甲を渡り――或いは、完全に降りきるまで待ち切れなかったのか、よじ登ってくる海賊の姿もあった。
鉄甲船の護衛として、黒剣の柄に手をかけ。海賊たちから船を守るべく、サンディは黒剣を抜き放つ。
「さぁ、宴の時間だよ」
鉄格子によじ登り、降りきらぬうちから攻め込もうとしている数人の海賊。
サンディは彼らを標的に、黒剣を構えて鉄甲船の端からガレオン船へと、勢いを付けて跳躍し――そのまま大きく振りかぶり、切りかかった。
海賊たちの両手は鉄格子を掴み、腰の武器を抜くことすらできない。それに少しの距離とはいえ、まさか飛び越えてくるとは思ってもいなかったのだろう。
慌てて武器を抜こうとし、海へと落下する者。サンディの黒剣から放たれた一閃を至近距離で浴び、声も無く転がり落ちていく者。少しの時間を惜しんだ彼らの末路は、実に散々なものだった。
「っと、失礼。お邪魔するよ」
鉄格子へと華麗に着地してみせたサンディから紡がれる声は軽く、しかし、その剣先は声音とは正反対に鋭い。すれ違いざまに肩から腰へと大きく剣を振り下ろし、海賊を倒していくことも忘れない。
鉄格子を渡ろうとしていた奴らを全員倒したのなら、次はガレオン船の連中が標的だ。
「なかなかやるね」
戦法もルールも、海賊の戦闘にそんな綺麗な言葉は存在しない。数はそのまま力に直結し、使えるものは何でも使う。それが彼らの流儀だ。
素早い身のこなしで突撃してくる大柄な男の攻撃は軽く身体を右に逸らすことで躱し、匍匐前進で視界外から迫り、足を引っ張って体勢を崩そうとしてくる小柄な砲撃手は――少しばかり相手に悪い気もするが、そのまま踏みつけた。
数こそ力だと一気に向かってくる彼ら。戦法も技術も有って無い様なものなのだが、不思議とある程度の連携は取られている。
サンディは時折感心の声を上げながら、黒剣を横に構えて振り下ろされるカトラスを受け止めた。
「忘れ物があるみたいだけど」
敵ながら天晴な素早い身のこなしだが、わざわざ攻撃を受けてやる義理もなければ、必要もない。
あまり痛みを感じない身であれど、無用な傷は勘弁だ。
ナイフによる一撃を受け止められた衝撃で、よろめき得物を取り落とした海賊。背中を向けてひっくり返る彼に向かってナイフを投げ返し、挟み撃ちにしようと前方と後方から一度に向かってきた男たちに対しては、身体をしゃがみ込ませることで回避した。
恐らく、お互いに胸を突き刺す合う形になったのだろう。後方から呻き声が聞こえたが、サンディは振り返らずに――一人ずつ確実に、自身のペースを保ちながら倒していく。
大成功
🔵🔵🔵
シル・ウィンディア
うぅ、空飛べないのつらいなぁ…
でも、弱音言ってる場合じゃないか
機動戦はみんなに任せて
わたしは防衛中心で動くね
乗り込もうとしている海賊さん達には
腰部の精霊電磁砲の【誘導弾】と
風精杖の風の【属性攻撃】の【誘導弾】で
乗り移られる前に海に叩き落すっ!
乗ってきたら、杖から光刃剣と精霊剣を柄部分で結合した
両刃剣モードでお相手だね
【なぎ払い】で対複数戦しつつも詠唱開始
【高速詠唱】で隙を減らして【限界突破】の【魔力溜め】をしつつ
【全力魔法】のエレメンタル・シューターで一気に押し通るっ!!
庇ってもいいよ
庇われても、それごと撃ち抜かせてもらうから
あ、でも、【誘導弾】で自分たちの船に当たらないように注意だね
●飛び交うは、千に近し魔力弾
グリードオーシャンの海上には、グリモアによる予知や転移、猟兵たちの飛行すらも不可能になるほどの異常気象が度々見受けられるのが常だ。
空に飛び立ったが最後、乱気流に巻き込まれて何処か遠くへ――なんてなってしまったら、戦争に参加するどころでは無くなってしまう。
「うぅ、空飛べないのつらいなぁ……。でも、弱音言ってる場合じゃないか」
自由自在に空を翔け、立体的な戦闘を得意とするシル・ウィンディア(光刃の精霊術士・f03964)にとって、空中戦が封じられている環境はかなりの痛手となっていた。
それでも弱音を言っている場合ではないと頬を軽く叩き、意識を切り替えて、海賊たちへと視線を向ける。
ガレオン船の甲板では猟兵と海賊たちが入り乱れ、まさに乱戦の最中にあった。猟兵たちが優位に立っているが、それでも油断は許されない。
機動戦はガレオン船へと乗り込んでいった味方に任せ、シル自身は防衛戦へと徹するつもりだった。
倒されていってはいるが、如何せん海賊たちの数が多い。猟兵たちの隙を付き、あわよくば鉄甲船に乗り込もうと企んでいる輩も少なくはないだろう。
「そうと決まれば、さっそくお仕事だね」
流石、海賊とあって狡猾さも持ち合わせているらしい。気配を殺し、猟兵たちの攻撃を掻い潜って鉄甲船に乗り込もうと、忍び足で近づいてくる不届き者がシルの視界を横切った。
「お兄さんたち、何処にいくのかな?」
抜き足差し足、忍び足。鉄格子を踏む音も立てず、相手が気付く素振りもない。
しめしめ、上手く行ったとほくそ笑みながら乗り込もうとしている海賊たちに――ふと、影が差した。
海賊たちが驚いたように顔を上げると、そこに居たのは小さなエルフの少女。
「残念だけど、ここまで! ガレオン船にお帰りお願いするよ!」
なんでここに子どもが、と。口を半開きにしたまま、呆気にとられる海賊たちを前に、風精杖を構えたシルは容赦なく魔力弾を発射させていく。
風の精霊の力を借り、鉄格子の中央を真っ直ぐに駆け抜けていく魔力弾の群れ。海賊たちはそれを避けようと左右に飛び――しかし、それこそがシルの狙いだった。
何時まで立っても足が地面に届かない。そのことを不思議に思った海賊たちは下を見。眼下に広がるのは、憎々しいほどに澄んだ青い海。
誘導されたと気付く間もなく、哀れな男たちは海へと落下していった。
「わあ、盛大に上がったね」
海へと落下した海賊たちが作り出した大きな水飛沫を眺めつつ、シルは光刃剣と精霊剣を結合させ――両刃剣モードへと形状変化させる。
魔力弾を避けそこなった者たちもまた、粗方そのまま吹き飛ばされ、海へと叩き落とされたが、それでもしぶとく鉄格子にしがみついて耐えた者も居たようで。
『お前……! よくもやってくれたなアァ!? 来い、奴隷ども!!』
大人としての矜持や海賊としてのプライドなど、先の魔力弾と共に海に落下したに違いない。子どもとは言え容赦はしないと、奴隷たちを呼び出し――集団で襲い掛かってきた。
繰り出されるカトラスやレイピアによる斬撃は両刃剣による薙ぎ払いで応戦しつつ、シルは本命となる魔法の詠唱も忘れていない。
「庇ってもらっても無駄だと思うけど……エレメンタル・シューターで一気に押し通るからねっ!!」
縦横無尽に飛翔するのは、火、水、風、土4つの複合属性の魔力弾。千に近い魔力弾が全力で放たれ、白く明滅しながら海賊たちへと向かっていく。
苦し紛れに「庇え」と奴隷たちに出された指示も、意味のないようなもので。
奴隷ごと撃ち抜かれた事実を認められないまま、海賊たちは再び骸の海へと還される。
魔力弾が空中で霧散した後、そこに海賊たちの姿は無く。
――猟兵たちの活躍によって、海賊たちが一人残らず討伐されたのは、これからもう少しした時分のことだった。
大成功
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