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銀河帝国攻略戦⑤～その船は亡霊を運ぶ

作者：こげとら

　その宇宙船は不気味なほど静まり返っていた。時折、通路を金属質な音が響く。足音だろうか？ それにしては声すらないというのは、いったい。
　銀河帝国の紋章をつけた物言わぬ宇宙船、その行く先には『解放軍』への参加をしようと集まる宇宙船があった。

「皆さん、銀河帝国攻略作戦が開始されました。」
　集まった猟兵たちにいくぶん緊張した面持ちでアルトリンデ・エーデルシュタインが説明を続ける。
「現在、『解放軍』として集まり始めている宇宙船にワープドライブを取り付けている最中ですが、ここに銀河帝国軍の襲撃が行われるようです。」
　ワープドライブが出来る宇宙船が増えれば増えるほど銀河帝国にとっては不利になる。さらに、襲撃を許せば『解放軍』への参加を躊躇う人も出るかもしれない。
「ですので先んじて敵宇宙船に乗り込み、内部を制圧、その後宇宙船を撃沈してもらいたいのです。」
　猟兵たちはグリモアの力でワープできるし、ミディアのスペースシップもワープドライブが出来る。敵に察知されるより早く宇宙船に乗り込むことは可能、とアルトリンデは語る。
「ですが、内部の敵を掃討するまで敵宇宙船の撃沈は難しいでしょう。」
　船だけ沈めても、万一オブリビオンが近くの民間船を襲ったら事だ。なので先に内部のオブリビオンを掃討し、その後敵宇宙船を沈める流れとなる。
「帰りはミディアさんのスペースシップが拾ってくれるとの事ですので、脱出自体は問題ないと思います。」
　敵宇宙船もオブリビオンが居ないなら沈める事は容易いという。

「ワープドライブが出来る宇宙船の数が今後の作戦にも大きく影響すると思います。どうか、皆さんの力を貸してください。」

　そう括り、アルトリンデは猟兵たちを戦場へと誘うのだった。

第1章 集団戦 『彷徨うウォーマシン』

POW   :    多弾頭型収納ミサイルポッド レベル分の1秒で【腰元から複数の誘導ミサイル】を発射できる。 SPD   :    演算処理 【高性能ソナーによって】対象の攻撃を予想し、回避する。 WIZ   :    近接形態 自身に【強化外骨格】をまとい、高速移動と【スラスター】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　無人の船内に金属質な音が響く。すでに主なきウォーマシンが、かつてと同じように見まわっているのだ。それはルーチンと呼べるものかもしれない。だがそれゆえに敵襲への対応も早かった。

「派手な開幕になったね。亡霊にはここで退場してもらうよ。」

　船内に突入早々集まってきたウォーマシンが戦闘態勢を整えるより早く、峰谷・恵の【フルバースト・マキシマム】が放たれた。全身に装備された各兵装をすべて使った一斉射は轟音と共に激しく爆炎を上げた。さらに回避行動をとったウォーマシンめがけて恵は翔け、手にした遅すぎた収穫期を突き立てる。装甲をものともしない一撃で動きを止めた相手にＭＣフォートのゼロ距離射撃を叩き込みながら恵を狙い放たれたミサイルの盾にした。その隙に他の猟兵たちもそれぞれ行動を開始する。

「僕が敵を攪乱します。他の人はその隙にウォーマシンの排除を。」

　そう言葉を残し満月・双葉が散乱する瓦礫を伝って身を隠しながら敵陣へと潜り込む。センサーの死角から放たれる札は双葉が父親から貰い、大切にしているパパ直筆のお札。それを用いた術は心を持たぬウォーマシンをして恐怖を抱かせ、敵を正確に認識できなくしていた。一部で同士討ちが始まったのを見やり、ミーナ・ヴァンスタインは優雅に歩き出す。

「でしたら、わたしは真正面から……そこのあなた、お相手してくださるかしら？」

　手にした二丁の精霊銃、イレイザーとパニッシャーから放たれるは魔を滅する弾丸。ようやく反撃を始めたウォーマシンの突進をいなすように躱し、まるで舞を踊るかのように途切れる事なき銃撃でなぎ払う。

「さぁ、一緒に遊びましょう？」

　笑みを浮かべる余裕すらあるミーナに続き、コトト・スターチスも前に出た。【ことなまっ☆（コトトノニコニコヒーリングナマホソウ）】をするために呼び出した黒猫型のドローンに向かい配信開始の宣言をする。

「いきなりクライマックスのコトトです！
　世界を救うために、全力で実況しますっ！」

　眼前で繰り広げられているのはスラスターを吹かし高速で襲い掛かるウォーマシンと、それを軽やかにいなすミーナの戦い。見ているだけで目が回りそう。だが、コトトを見守るお兄ちゃんたちの熱い声援がその背を押す。

「世界の平和のために……視聴者のお兄ちゃんたち、力をかしてっ！」

　コトトを敵とみなし襲い掛かってきたウォーマシンをメイド服が受け止める。それはただのメイド服ではない。見守るお兄ちゃんたちの想いがこもっているのだから……！強化外骨格を纏ったその一撃を受け止めたコトトはメイスを振りおろした。可愛らしいエフェクトとは裏腹に、その一撃でウォーマシンは轟沈する。

「銀河帝国ね、何ともデカい規模の相手だこと。」

　種子島・友国はあえて前には出ず、後方より他の猟兵たちの援護をしていた。

「それだけ撃つ的にも困らないって事でいいのかな。」

　そう零しながらも【錬成カミヤドリ】で複製した火縄銃を操り、隙を伺うウォーマシンを吹き飛ばした。ともすれば乱戦になりそうな戦場を前線で戦う者たちが対処できていたのも友国が後方から援護射撃をし、分析した敵の情報に基づいたアドバイスがあったからというのも大きい。彼と連携して双葉が効率よく敵戦力を分断し、撃破できる範囲まで敵の連携を切り崩しているのだ。

「あっちの集団、僕の方を警戒してるなぁ……」
「なら、逆から陽動をかけます。その隙に撃破を。」

　友国をソナーを使って警戒するウォーマシンを倒すために、双葉がその死角から斬り込む。疾風迅雷の如く駆け抜けざまに桜姫でなぎ払い、即座に大鎌へと変えた刃を突き立てる。そこから流れ出るのは血か、あるいは別の物か。どちらでも構うまい、それが命の残滓ならば。吸血で吸った生命を力に変え、大根を叩き込む。あまりの事に対処しきれないウォーマシンを火縄銃が続けざまに撃ち抜いた。友国は連射の利かない火縄銃を複数錬成し、取り換える事で連射をしていたのだ。司令塔を潰すべきと判断したか、友国を囲むように包囲をし始める。

「あら、つれないわね。」

　だが、そのウォーマシンはミーナの放ったダガーを受けて動きが止まる。麻痺毒つきの刃を持つダガーで動きを鈍らせているうちに追いついたコトトが追撃のメイスを振う。初手で相手の情報処理の中枢っぽい頭部を叩き動きを鈍らせ、その隙に足の関節を殴り機動力を削ぐ。

「辻ヒーラーの力、あなどっちゃダメですよっ！」

　視聴者のお兄ちゃんたちの声援を受けたメイスでぽこぽこ叩いているうちにそのウォーマシンは動かなくなった。その様子にウォーマシンは別の相手を狙って駆けていく。逃げたわけではないだろうが。向かう先は味方への援護をしていた双葉だ。スラスターを全開にして突っ込んでくるウォーマシンを双葉は纏うオーラで勢いを減衰させ、両手の武器で受けとめた。ふと見れば普段はしている眼鏡が外されている。

「一緒に踊らない？」

　視線の先にオーラで構成された虹色の薔薇の花弁が舞う。【虹薔薇の静踊（ニジバラノセイブ）】を受け、ウォーマシンは活動を停止した。ならば多数で同時に掛かれば。ミーナを倒すべく強化外骨格を展開し、スラスターを吹かすウォーマシン。だが、そのうちの数機は友国の射撃により阻まれる。

「狙いが分かりやすいんだよね。」

　それでもまだ多数のウォーマシンが突撃してくる。だが、ミーナに焦りはない。すでに何度も見ている機構、ならば恐れる事はない。

「アナタの罪、消し飛ばしてあげる。」

　高密度の魔力を纏った蹴りがカウンターとなって纏めて蹴り飛ばす。装甲を砕かれて吹き飛ぶウォーマシンをミーナは一瞥した。

「その手はもう効かないわ。」

　もはや船体へのダメージもやむなし。そう判断したウォーマシンが誘導ミサイルを放つ。だが、その爆発を恵が掲げたダークミストシールドが防ぐ。盾だけでは抑えきれなかったであろう爆発も、その身に纏う４重の防具が放つオーラにより防がれていた。

「これで、終わりにするよ！」

　防がれ、押し戻された爆風に体勢を崩したウォーマシンに恵の射撃が降り注ぐ。この場に残存するウォーマシンはこの攻撃で壊滅したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　集まってきていたウォーマシンは一掃された。とはいえ、まだ船内を徘徊している者もいるはず。宇宙船を沈める前に残った敵が居ないか確認すべく、猟兵たちは船内へと侵入した。
　通路の角を曲がりざまにティオレンシア・シーディアは手にした銃、オブシディアンを連射した。こちらへ向かってきていたウォーマシンが数機まとめて銃弾の雨に撃ち抜かれる。

「やっぱあたし、こーゆーののほうが得意ねぇ。」

　目標もシンプルだし、わかりやすくていいわねぇ、と甘いロリボイスで呟いた。やはり船内にはまだウォーマシンが居る。それも相当数。鮮やかな手つきで弾を装填し奥からさらに向かってくるウォーマシンに銃口を向けた。出てくる端からティオレンシアが撃ち抜いていく。銃の装弾数を超えた連射、【鏖殺（アサルト）】を使った止む事のない銃撃がウォーマシンをなぎ倒していく。

「6発撃ったら終わり？そんなこと、誰が決めたのかしらぁ？」

　その様子を見て、フィオリナ・ソルレスティアは警戒を強める。

「一刻も早くオブリビオンを掃討しないと。」

　この宇宙船が『解放軍』の船に近づき、ウォーマシンがばら撒かれれば元も子もない。時間との勝負と言えるだろう。そんな姉の気持ちを察してか、フォルセティ・ソルレスティアが前に出る。

「ボク達も『解放軍』の力になるよ！」

　見ればさらにウォーマシンが向かってきていた。来た方向は同じ。ならばこの先にウォーマシンが溜まっていたとでもいうのか。それを調べるためにもここを突破しなくては。ウォーマシンが二人に狙いを定めるより早く、フィオリナの【エレクトロレギオン】により召喚された多数の機械兵器が一斉に攻撃を始める。その隙にフォルセティが一気に距離を詰めていく。

「フィオ姉ちゃん、ボクに任せて。」

　その言葉にフォルセティの動きを妨げないよう機械兵器を避けさせながら、フィオリナはオートフォーカスで狙いを定める。

「これでも喰らえー！」

　箒を掲げて距離を詰め、その勢いのまま【イスベル・ウラーノ】を叩き付ける。彼方より飛来した氷の塊が、通路の奥の隔壁ごとウォーマシンを吹き飛ばす。間髪入れずにフィオリナの【バベルの光（ルス・デ・バベル）】が通路に残るウォーマシンを一掃する。
　拓けた通路、その奥の破壊された隔壁の向こう。そこに見えるは何かの格納庫……いや、整備施設のようなものか。おそらく稼働していたウォーマシンが最初に迎撃に出てきていて、修理や調整などをしていた物が今、残っているのだろう。ならば、ここを殲滅すれば勝機も見える。

「戦争だのなんだのはどーだっていいけどよ。」

　ウォーマシンが出てくる前に殲滅しようと皐月・灯が駆ける。

「……せこい妨害ってのは気に食わねーな。ブッ飛ばすにゃ十分だ。」

　部屋はこの船の中でも一際大きなものだろう。その中で待機していたウォーマシンが調整もそこそこに起動を始めていた。こちらを狙うウォーマシンの間を縫うように、時にはその足の間をスライディングで潜る灯。射撃はできないと突撃してきたウォーマシンの動きに合わせて拳を叩き込む。

「アザレア・プロトコル３番――《轟ク雷眼》！！」

　闇を裂くような鮮烈な光が迸り、灯が撃ち込んだ【《轟ク雷眼》（トラロック・ドライブ）】がウォーマシンの動きを止める。煙を吹いて崩れ落ちるのを見るにしばらくはまともに動けないだろう。

「どうした、もう終わりか！　次のヤツ、かかってこいよ！」

　だが数が多い。一機ずつ破壊するのは確実だが、まとめて止める手立てはないだろうか。いや、それよりもっとキレイに止められないか。ハルツ・ノウゼンはこの状況を見て考えた。

「えっと、あのウォーマシンを壊すの？ちょっともったいないけど、世界のためなら、しょーがないね！」

　オブリビオンを倒すのに異存はない。だが、もしキレイに壊せたら、バラして自分の機械の一部にしたい。そうすれば今よりもっと強くて優しい良い子に出来る。それは機械いじりが趣味のハルツならではの考え方だろうか。倒した残骸はもはやオブリビオンではないのだから。

「よーしっ！それじゃいっくよー！『ガジェットショータイム』ッ！」

　張り切ってガジェットを召喚する。出てきたのは黒いビー玉のようなもの。どう使うのかな、と思案するハルツの出した答えは。

「うーんと…………ドリャァアアッ！！」

　おもむろに敵に向かって投げた黒い玉が空中で虫の形に変わった。

「やっぱり！ハルツ分かったよ、これって“バグ”なんだ。機械のナカをグチャグチャにしちゃう悪い子だけど、良い子だよ！」

　投げ込まれた多数の“バグ”がウォーマシンに入り込み、中から食い荒らす。次々に動きを止めていくウォーマシンに居合わせた猟兵たちもここで圧すべきだと判断し、行動に移った。

「あっ、もっときれいに壊してよ！」
「心配すんな、ちょっと感電させてるだけだ。」

　次々と拳を打ち込み倒していく灯にハルツが声をあげる。一見、乱暴に見える灯の攻撃も的確にその急所に電撃を撃ち込み無力化していっていた。

「たまには、頭空っぽにして撃ちまくるのもいいのかしらねぇ。あくまでたまには、だけど。」

　そんな二人を後方から援護するようにウォーマシンが放つミサイルごと【封殺（シールド）】で貫きながら撃ちまくるティオレンシア。その横でフォルセティとフィオリナも持てる火力を総動員していた。

「フォルセティ、最後まで油断したらダメよ。」
「大丈夫だよ、フィオ姉ちゃん。いっけー！」

　地形すら破壊するフォルセティの一撃と最後まで油断なく掃討を続けるフィオリナの操る高出力レーザーが残るウォーマシンを討ち倒していく。
　そしてついに、船内のウォーマシンは殲滅された。

「あとちょっと、もう少し拾わせてよ！」
「船も沈み始めてる、急げ！」

　度重なる戦闘の影響か、早くも各所で爆発が起こる船内を駆け抜け、猟兵たちはミディアの待つスペースシップへと帰還するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年02月02日