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羅針盤戦争〜三の王笏島決戦

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #七大海嘯 #カルロス・グリード #オブリビオン・フォーミュラ #三の王笏島

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「思っていたよりは早かった、が……この地へ猟兵どもを誘い込んでやるのも悪くはあるまい。聞こえているか、邪神どもよ。その力、我に寄越せ。存分に暴れるがよい!」
 彼が居るのは己が根城とする大島。岩漿を抱く巨大山脈からは風の鳴くような唸り声が止まない。
 ……オォ……オォォ……。
 オォ……――。

「まったく、いやな声だね」
 麒・嵐(東方妖怪の冒険商人・f29276)が指し示すのは海図の真下、他の島の数倍はあろうかという敵の拠点であった。
「皆のおかげで見つかった三の王笏島だ。当然、いるのは三の王笏ことカルロス・グリード。ただし、今回はメガリスから召喚する邪神だけではなくてこの島に蔓延る邪神も配下につけているような状況だ。当然、倒すのは前よりも難しくなる」
 ただ、それでもここを早めに攻略するメリットはあるのだと嵐は言う。
「この島を制圧した場合、七大海嘯支配下にある別の島をひとつだけ解放できる。それも踏まえて攻略を頼むよ」

 邪神山脈の力を手に入れたカルロスはそう簡単に倒せる相手ではない。仮にも敵の本拠地に乗り込む格好だ、これまで以上の覚悟がいる。
「やっぱり気をつけるべき点は、カルロスだけでなく島そのものから攻撃を受けるような形になるところかな……当然、こちらの死角となるような場所があるだろうからね。襲われるタイミングによっては致命的になりかねない」
 つけ入る隙があるとすれば、いかなカルロスといえども邪神山脈の力を完全に制御できているわけではないといったところか。

「戦い続けていれば、必ずいつかはぼろが出る――と、思っていいだろうね。なにしろ、邪神山脈といえばUDCアースでも超古代に封印された強力な邪神の眠る地だ。いったいどんなものが出て来るのか……楽しみだね?」


ツヅキ
 プレイング受付期間:公開時~常時受付中。

 リプレイは他の参加者とまとめて判定・執筆する場合があります。
 共同プレイングをかけられる場合はプレイング冒頭にお相手の呼び名とID・もしくは団体名をご記載ください。

●第1章 ボス戦
 七大海嘯『三の王笏』カルロス・グリードとの決戦です。本拠地である三の王笏島は全体が巨大な「邪神山脈」と化しており、カルロスは島全体に蔓延る邪神達を操ることで地形全体より大規模な攻撃を行ってくるようです。

 プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。
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第1章 ボス戦 『七大海嘯『三の王笏』カルロス・グリード』

POW   :    邪神「大地を喰らうもの」
【本拠地の島の面積】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【大地を牙の生えた触手】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    邪神「吼えたけるもの」
【目にした者の正気を奪う、漆黒の巨人型邪神】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    邪神「輝き惑わすもの」
【光り輝く宝石のような美しき邪神】の霊を召喚する。これは【命中した対象を宝石に変える光線】や【敵の欲望をかきたて混乱させる輝き】で攻撃する能力を持つ。

イラスト:hoi

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ディグ・ドリラー
お?
おおお!?

なんじゃこりゃ!
地面をよく分からんやつに変えてんのか!?
じゃあ変わる前に穴だらけにしちまえば問題ねえな!
俺のドリルを見せてやらあ!
うおりゃあああ!

ちっ!
やっぱ足りねえか!
こうなったら真っ向勝負よ!
気合入れて邪神とやらをぶち壊してやるよ!
全部まとめてかかってきな!
全力でちぎり取ってやるよ!

しかし埒が明かねえ!
なんとかして隙を見つけて操ってるあいつを殴らねえといけねえが…ん?
なんか生えてから動き出すのが遅えのか?
じゃあ簡単だ、この触手を全部叩き潰してから速攻で殴りに行けばいい。
簡単だろ?

足りねえ部分は気合でカバーだ!
おっしゃ行くぜ!
俺のドリルは神様だって止められねえ!


ジェイミィ・ブラッディバック
さて…まずはあの正気を奪う邪神をどうにかしなければ…ならば取れる手段は唯一つですね。ERROR CODE:SERAPHIM、起動。

──そう、この機能は「ウォーマシンの私が本来使用不能な機能」だ。「ウォーマシンとしての正気を失う」ことで、「ウォーマシンのシステム仕様外の機能」を躊躇いなく使用できる。最早認めるしかないな、私が純粋なウォーマシンではないことを。

跳躍して空中へ向かう。
見切り、ダッシュで邪神からの攻撃を回避。PROVIDENCEで周囲を偵察、情報収集を行い島の邪神の予測攻撃ポイントを算出。INDRAとMMX-2900で牽制、そのポイントに誘い出す。

自ら選んだ戦場に食われるが良い──!


黒城・魅夜
何ともつまらぬ能力ですね、邪神よ
その程度で神と名乗るもおこがましいですが
生来の神殺したるダンピールのこの私の力
とくと味わうがいいでしょう

目にしたものの正気を奪う?
「早業」「覚悟」「激痛耐性」とともに短剣でわが眼を引き裂けば
それで無効化できるだけの下らぬ技です
身の程も知らず王笏を名乗る愚か者よ
この程度の覚悟もないものがこの場に来ているとでも思っているのですか

同時に、この傷は逆襲への布石
傷口から噴き出た血が霧となって戦場を覆い
あなたたちの五感を鈍らせます
気づいたときはもう遅い
我が鎖が体内に転移し
内側から引き裂きます

肉塊となった敵を「吸血」すれば
傷も早く癒えるでしょう
王笏と邪神の血の味、楽しみです


鈴木・志乃
……あんまりこのUC使いたく無いんだよね、戦闘能力皆無だから。
まぁでも今回は邪神をスルーして近づかないとだし、安パイな選択なのかなぁ。正直悩んだ。

事前に自分に催眠術で邪神をスルー、カルロスを探すということに狂気的なまでに執着させます。正気は捨てるもの。相手に侵されるぐらいならね。
オーラ防御を多重展開。その上で……UC発動。
カルロスさん探す。カルロスさん探す。高速詠唱で自分の移動速度上げた上で探す。第六感で探す。カルロスさんどこー?

狂気になってるので途中で大声上げ始める。
叫びながらカルロスさん探す。
見つかった瞬間UC解除、全力魔法ぶっぱ。

というところまで催眠術かけときたいけど流石に難しいか。


シズホ・トヒソズマ
やっと1つ本拠地まで乗り込めましたね
邪神な雰囲気ですが怯みはしませんよ、ヒーローとして!

マインドテンタクルで複数の人形を◆早業で◆操縦

目を瞑り巨人を視認しないようにすると同時に
シュヴェラに乗り◆空中浮遊
バルからナノマシンを散布
マジェスの起こした風で感知範囲を広げ
ナノマシンから得た情報を脳でダイレクトにテンタクルを通じてバルから取得
視認無しで巨人の攻撃を感知したらクロスリベルで上げた移動力でシュヴェラの騎乗ユニットを飛行させ回避

UCで賢竜オアニーヴの力を使用
攻撃力を弱める聖なる光と浄化の風で広範囲を攻め
邪神が怯みカルロスとの直線視認範囲から出たら目を開け一気にカルロスに接近
幻影の爪で斬り裂き


ラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ
【アドリブ・連係歓迎】POW
決戦?なにそれ美味しそう!
アクセントをつけようね☆

事前に「肉体改造」を施して弾力と増殖スピードを上げて噛み切れないように強化!
触手の噛み付きを防ぎつつUC【飢餓つくと肉肉しい惨劇】にて増殖し続ける肉塊に変身!
触手の食欲を匂いで(匂いは化学物質だから鼻が無くても出来るはず)増幅させて、増殖した肉塊を齧らせる!
体内に入った肉塊はなおも増殖して……どかーん!

勝利の暁には触手「料理」で「宴会」だー!
あ、代償になった島の面積は切り離した肉塊を改造して島の土壌にするよ♪


鳴宮・匡
島全体が邪神の舌の上みたいなもんだな、これは
正直、長居はしたくない

視れば正気を奪われる、か
それなら――目を閉じる
【六識の針】で聴覚を極限まで強化
環境音、戦闘音、声――
全ての音を聴き分けて周囲に存在するものを知覚
音の反射も駆使して地形や環境条件を詳細に把握する
……エコーロケーションってやつだ

目の利かない暗闇で戦う機会だって何度もあった
それと同じようなものだと思えば対処するのも易い
聴覚以外に、肌を撫でる風の強さ、におい、空気の温度――
知覚の助けになるものは幾つでもある
暗闇の中での“いつも通り”を履行すればいい

――もちろん、敵の位置だって解ってる
声も、殺意も、筒抜けだ
遠慮はしないぜ、射抜かせてもらう


クロト・ラトキエ
“一”に続き…
“三の”王笏は、邪神。
なら、矢張りアレは、凡ゆる世界に通ずると…?
…いえ。考えるのは後。
グリモア――その名さえ口にはさせない。
それだけです。

平坦、荒野でも無く、
地形が幾らでも障害物と成る、と…
何たる好都合。
ワイヤーを掛け宙に躍り出、邪神を足場に、
攻撃が来るなら無理繰り糸を引き進路を変えて。
当たらなければ何とやら――って、誰かが言ってましたし。
生憎と――俺は、欲望を抑えるなんて殊勝な真似は出来ぬので。
手前を潰す。
抗う必要も無かろう?

先制を往なせたならUCにてお返しを。
精々マシな宝石になって下さいませ。
陸空縦横無尽に。
王笏を鋼糸で絡め、断てるなら四肢の一つでも落とし。
後を繋ぐは皆様へ


司・千尋
連携、アドリブ可

邪神山脈か…
敵の上で戦闘とかレアな経験だな
全然嬉しくないけど


常に周囲に気を配り敵の攻撃に備え
少しでも戦闘を有利に進められるように意識しておく

攻防は基本的に『子虚烏有』を使う
範囲内に敵が入ったら即発動
範囲外なら位置調整
近接や投擲等の武器も使い
範囲攻撃や2回攻撃など手数で補う
攻撃手が足りてるか押され気味なら防御優先


先制含む敵の攻撃は細かく分割した鳥威を複数展開し防ぐ
割れてもすぐ次を展開
オーラ防御も鳥威に重ねて使用し耐久力を強化
回避や迎撃する時間を稼ぐ
間に合わない時は双睛を使用

敵の攻撃が光線や輝きなら双睛を鏡として使い反射出来ないか試す


俺一応『紐』だから宝石になるのは勘弁してくれよ


ヴィクティム・ウィンターミュート
オイオイ、邪神テイマーに転職したのか?
随分バリエーションが豊富なことで…退屈させないでくれてありがとよ
お礼に死をプレゼントしてやるぜ、ありがたいだろ?

『見てはいけない』のは面倒だな
仕込みクロスボウから、索敵用のソナーを絶えず出し続ける新しいボルト──『サーチ・ボルト』を地面に撃ち込む
エコーロケーションの要領で敵の輪郭を捉える
さらに──『そして、獣が解き放たれた』
この鋭い感覚も合わされば、巨人の攻撃も避けられるはず

一撃をやり過ごしたら【ダッシュ】
巨人の身体を伝いながら、ナイフで切り刻みつつ頭へ
首を刈り、落とした後は落下の勢いでカルロスを目指す
もう眼は開けていい…狙いは外さん
ここで消えろ、カス野郎


フェルト・ユメノアール
今回の相手は島そのもの、前回の状態でも厄介だったのにこれはシャレにならないね
邪神を相手にする余裕はない、何とか攻撃を躱してカルロス・グリードだけに狙いを絞る!

『ワンダースモーク』を使用、邪神の光攻撃を軽減しながら物陰へ
敵はどこから攻撃を仕掛けてくるか分からない
肩に『ハートロッド』を乗せ、ボクの死角を警戒してもらって反撃に移る
煙幕を飛び出し、『トリックスターを投擲』しながら接近

敵の攻撃に対してはUCで対処
千客万来の大勝負、食べ物の恨みを思い知れ!
現れろ!【SPゴーストン】!
大量のゴーストンを呼び出し、盾にする事で相手の能力をダウンさせ、その隙を突いてカルロスに肉薄
トリックスターで首を一閃するよ!



 クロト・ラトキエ(TTX・f00472)は己の脳裏を過ぎった予感に軽く身震いした。そうでなければ説明のつかぬことがある、どうだとすれば納得できることがある。
 ――グリモア。
「……だれが、お前などに」
 手に馴染む鋼糸は禍々しき大気に満ちた敵の地にあっても優雅に冷徹にクロトの思うがままに舞うのであった。
 邪神が眠る山岳地帯であるから、邪神山脈と呼ばれている。
 あまりにもそのままな名前をつけるものだ、と司・千尋(ヤドリガミの人形遣い・f01891)は苦笑を漏らした。
「島全体が邪神の舌の上みたいなもんだな、これは」
 鳴宮・匡(凪の海・f01612)の正直でてらいのない感想に肩を竦め、
「レアな体験だな」
 頷いた。
 気が遠くなるほどに巨大なる山脈群。
 圧倒的なまでの深さを持つ渓谷の底からは、三角形に切り取られた赤い空が見えた。あまりの高低差に崖の天辺より転げ落ちた小石が地面に落ちる音さえ聞こえない。
「よくぞここまでたどり着いたものだ、猟兵よ。それ自体は褒めてやらんでもないぞ? 全力をもって歓迎させていただこう」
 三の王笏たるカルロス・グリードは切り立った峰にいた。
 突然の地響きが地割れを起こし、とある一部が崩落しながら別の一部がそそり立つ。牙だ。唾液に塗れた鋭い牙を生やした、一本が太い丸太ほどもある触手がカルロス・グリードを守るようにこちらへと襲いかかった。

「お? おおお!?」
 ディグ・ドリラー(ドリル仁義・f31701)のドリルが轟音を立てて牙を砕き、周辺に無惨な残骸を撒き散らす。
「なんじゃこりゃ! 地面がよく分からんやつに変わりやがった!」
「おいしそーだよねぇ♪」
 一緒に迎撃に回ったラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ(ハラペコかわいいコックさん(可食・高栄養・美味)・f31483)がとんでもないことを言うので「マジでか」と絶句する。
「世の中、俺の知らねーことがいっぱいだぜ……よし、逆に言えば俺のことも相手は知らねーはずだからドリルを布教しまくるチャンスってやつだな? よし任せろ、うおりゃあああ!!」
「じゃー、おいらもおいしいお料理作ってみんなに振るまおっと!」
 2人は左右に分かれ、まずはラヴィラヴァが触手の前に躍り出た。それも、ぶくぶくと際限なく膨張しながら――まるでゴムのような肉質に苦戦する触手の食欲を匂いによってさらに増幅させる。
「さあ、召し上がれ★」
 胃袋の限界を超えた膨張で触手が破裂。ディグはそのただ中を愚直に突進し、よく磨き抜かれた自慢のドリルをこれから触手が産み出される前の地面へと突き刺してやった。
「どうだ!? やっぱ足りねえか!!」
「いや、牽制にはなったようだ」
 ジェイミィ・ブラッディバック(脱サラの傭兵・f29697)は頷き、背の翼を羽搏かせて大地を離れる。
「お前、それ……いいのつけてんなああ!!」
 脊髄反射気味のの感想はジェイミィを自嘲ぎみに笑わせた。おかしい話だと思う。ウォーマシンであるこの自分が、どうしてこの機能――ERROR CODE:SERAPHIMを発動した状態で動けるのか。
 最早、認めるしかあるまい。
 ジェイミィは跳躍し、渓谷から頭を出した漆黒の巨人と相対する。その口が大きく開いた途端、突風のような咆哮が迸った。
「PROVIDENCE展開、INDRAとMMX-2900の射出準備完了」
 戦場をミサイルの直撃による煙塵が舞う。漆黒の巨人は羽虫を振り払おうとするかのような動きを見せ、しかし叶わずに足止めを食らう形となった。
「……なに?」
 カルロスは眉をひそめる。
「いま、なんと言った?」
「何ともつまらぬ能力だと言ったのです。その程度で神と名乗るもおこがましい」
 黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)は両手を顔の前で交差し、手にした短剣で一気に両目を引き裂いた。十字に迸る紅の血は揺蕩う霧となって戦場全体を覆い尽くし、視界を遮る。
「これは……!」
 とっさにカルロスは口元を覆った。不気味な声が届いたのはその時である。
「……こー? ねー、カルロスさーん? いるなら返事してよー」
 正気とは思えぬほどに喉を枯らして叫ぶ声。
 いや、正気ではない。
 絶対に違う。
 こんな声が正気で出せるはずが――ない。
「な、なんだこの声は? なぜ我を呼んでいる……?」
「ねえ、カルロスさんってばー」
 ――鈴木・志乃(ブラック・f12101)であった。自らに催眠術をかけ、自ずから正気をかなぐり捨てる。
 防御は気膜に任せ、自分はとにかく探す。どこだ? どこどこどこどこにいるのかわわわからなななあこここちからこえする? ――いた。
「はッ……」
「えっ」
 カルロスの驚愕した顔を、正気に戻った志乃は意外そうな顔で眺めた。まさか成功するとは思ってもいなかったのだ。それくらい、やるかどうか悩んだ。
「と、取り合えず叩き込んどかないと!」
 全力魔法がカルロスを吹き飛ばす。肩と足を弾丸に射抜かれた。言うまでもない、匡の手による正確無比なる狙撃であった。
「な、なぜ目を閉じているのに我の居場所がわかる……? なぜ、当てられる!?」
「……エコーロケーションってやつさ。筒抜けなんだよ、全部」
 ぜんぶ、と匡は繰り返す。
 肌を撫ぜる風の流れ、鼻孔を刺激する硫黄の匂い、温度まで。研ぎ澄まされた聴覚はなんということのない環境音すら拾いあげ、戦いの為の材料へと変えてしまう。
「たとえば、味方の攻撃を受けてのけぞったお前の肩が空を切るほんの微かな気流の乱れでさえも、だ」
 これは別段、特異なことをしているわけではない。蝙蝠やイルカなどは実際にこうした能力をもって野生を生き抜いている。やり方にはいろいろあるが、例えばヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)の場合は地面に撃ち込んだ『サーチ・ボルト』による索敵用のソナーを用いて敵の輪郭を特定できる。
「どうやら、こっちの方が一枚上手だったようだな? お前のここは、見晴らしがいいぜ」
 一瞬にして巨人の身体を伝いのぼった軌跡が血に塗れている。ナイフ。とても利口な機械仕掛けによる歪な傷跡。

 シズホ・トヒソズマ(因果応報マスクドM・f04564)は堪えきれずに笑った。目さえ封じれば勝てるとでも思ったのならば、片腹痛い。
「シュヴェラ、マジェス、パル、いきましょう。ヒーローの力を見せつけてやるのです!」
 宙を舞い、散布したナノマシンからの情報をダイレクト接続。――見つけた。
「クロスリベル!」
 ズァ、ッとシズホの背を紙一重で掠めていったのは邪神の巨大な右腕である。
 おかしい、とようやくカルロスは疑いはじめた。少し眩暈がする。これはなにかの罠なのか……?
 くすりと微笑する声が霧の向こうから聞こえた。
「もう、手遅れです」
 再び、咆哮しかけた邪神が体を折り曲げる。その背や喉から無数の鎖が彼を突き破って迸った。
 直後に落ちる首。
 ヴィクティムだった。
「ここで消えろ、カス野郎」
「――――!!」
 落下の勢いを殺さぬまま、迫り来る獣のように爛々と輝く瞳と目が合った。とっておきのプレゼントは真っ赤な包装紙にナイフのリボン。解いて箱を開けるためにはお前の悲鳴が必要だ。
「泣いても無駄だぜ、中身は死――だ」
 ぷはっ、と傷口に喰らいついていた魅夜がようやく唇を離した。あっというまに眼球が再生し、血に染まる唇を蠱惑的な舌がちろりと舐めとる。
 これが、生まれながらに神殺しを宿命づけられたダンピールの力。そして魅夜自身の力であった。
 
「く……なぜだ、なぜ勝てん……!?」
 しかし、とカルロスは深手を押してメガリスを握り直す。まだ最後の邪神が残っているではないか。しかし、フェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)が広めたスモークの前に光線は拡散、その威力を発揮し得ないでいた。
「悪いけど、速攻でいかせてもらうよ!」
 白い鳩を従えたフェルトは素早く手元を翻す。千尋の光剣とフェルトのダガーに射抜かれた邪神の動きに陰りが見え、あからさまに攻撃の手が弱まって見えた。
「いけるかな?」
「おそらくは」
 千尋とクロトは視線を交わし合い、僅かに頷いた。
「俺、こう見えても一応『紐』なんだよな。宝石になるのは勘弁してくれよ」
 鳥威が注意を引き、崖にワイヤーを引っ掛けたクロトの体が重さを感じ冴えない動きで弧を描く。邪神を足場に向きを変え、右に左にと翻弄した。
「当たらなければ何とやら――って、誰かが言ってましたし。それに、俺が欲望を抑えるような殊勝な人間だとでもお思いで?」
 すっかり目の前の敵の虜になっていた邪神が気付く気配はない。クロトの狙い、千尋の布石、そしてフェルトのカード。
「千客万来の大勝負、食べ物の恨みを思い知れ! 現れろ!【SPゴーストン】!」
 見た目こそ美しい邪神もフォークとナイフを手に襲いかかる大量のゴーストンを盾にされては為す術がないようであった。好機と見た千尋が烏威と双睛を入れ替える。
「効いたか?」
 まるでオーロラのように宝石化してゆく、邪神の霊体。効くのだ。例えそれが自分の発した光線であっても、確実に。
「精々マシな宝石になって下さいませ」
 動きが、まるで捉えられない。クロトはもはや死神そのものであった。鋼糸はカルロスの四肢から自由を奪い、しまいには音を立てて割れてしまう。
 ものの見事に宝石化した腕が地面に転がり、フェルトのトリックスターに貫かれた喉元に大きな割れ目が入った。
「ば、かな……」
 その時、とある異変を最初に察知したのはディグであった。
「ん?」
 首を傾げ、しげしげと地面を見つめる。カルロスが弱ったことで邪神の操作力が衰えたのだろう、今度はしっかりとわかった。
「おい、生えてから動き出すのが遅え気がしねえか?」
「確かに」
 ジェイミィは頷き、誘導兵器の動きを変えた。俄かに眩しい輝きが戦場を包み込む。――真白き翼竜、オアニーヴ。渓谷に立ちはだかる巨人を抑え、一気にカルロスへと躍りかかる。
「――手応えありです!」
「ぐッ……」
 カルロスの胸に決して浅からぬ爪痕が走った。
「よし、いいぜ!」
 ドリルであらん限りの触手を砕きまくったディグが合図を送る。ジェイミィはただ一点を目指し、カルロスを引き付けた。
「自ら選んだ戦場に食われるが良い──!」
「!! まさか、ここは……!?」
 足元には見覚えのある亀裂。
 ディグが荒らしたおかげで再生に手間取っていた触手がようやく狩りを再開した、まさにその瞬間であった。立つことすらままならない体は咀嚼され、大地の底へと消え失せる。
 結局のところ、カルロスを追い詰めたのは猟兵たちの粘りであったといえるのだろう。
「食べられるって、最高じゃない?」
 ラヴィラヴァは自らの肉塊を失われた大地の代わりに提供してやりながら、うっとりと呟いた。
「触手料理で宴会、楽しみだね★」
 ナイフの先に刺さった触手がびちびちと生きよく跳ねる。デリシャスな邪神山脈ツアーでした、まる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月07日


挿絵イラスト