羅針盤戦争〜SAN値直葬、宇宙玉葱登場!
グリードオーシャンの広大な海を進んでいくと、海上を漂う薄霧にぼんやりと黒いシルエットが浮かんで来る。
まるで大きな玉葱のような小島のようで、灯台でも建っているのか不思議な光が船を導く。
金色の怪光は見つめているとなぜだか心が蕩けるように落ち着かせ、いつまでも見続けていたいという衝動が湧いてくる。
もっと近くで、もっと沢山、ずっといつまでも。
いつしかそんな考えが頭を埋め尽くすと、気がつけばあの玉葱島に上陸していた。
脚を踏み入れた感覚でようやく発覚したが、これは島ではない。
「生きてるのか……これ」
いつもの私なら、この不気味さを察知した時点ですぐさま逃げ帰っただろう。
しかし今はそんな些細なことはどうでもよかった。
「あぁ……光に包まれる……暖かい、燃えるように暖かい……」
目の前の黒く蠢く『何か』が私を見つめ、天にも昇るような気持ちで私の意識はそこで絶たれたのだった。
「ってことになってるんだって!」
そういうと、グリモア猟兵の明石・真多子(軟体魔忍マダコ)が動画の停止ボタンを押す。百聞は一見に如かず、拙い説明より動画を見せたほうが楽な現代っ子だ。
「玉葱……じゃなかった王笏カルロス・グリードの分身体が宇宙にいたはずのクエーサービーストを従えたみたい! 意思疎通なんて出来そうもないのにどうやったんだろうね?」
真多子が画面を切り替えて、『クエーサービースト・アルバドラーダ』の全景を映す。
「見ての通りあの宇宙怪物の例に洩れずコイツも滅茶苦茶デッカイよ! 島にそのまま乗っかってるから、島の上はほぼコイツの身体しか見えてないってくらいだもん!」
笑い事ではないのだが、笑っちゃうくらいデカいよねと次のデータを表示する。
「さっきの動画の通り、コイツの不気味な光は見ちゃダメだよ! 心を奪われるからね! だからと言って、光りに照らされるだけでも燃やされちゃうんだけどね。 あ、それとカルロス・グリードがコイツを念動力で動かして、超大質量の攻撃もしてくるみたいだから気を付けて!」
やることが多いねぇと考え込む真多子だが、細かいことは気にしないとばかりに話を断ち切ると猟兵達に視線を戻す。
「きっと皆ならこの困難も切り抜けられるはず! 転送後はいきなりコイツの身体の上に出るから、キャバリアでも生身でも自由に準備して大丈夫だよー!」
そういうと、真多子はすぐさまキミ達をグリモアで転送し始めた。
ペプシ派
戦争シナリオです! 一章しかありません!
戦争に乗り遅れましたが頑張ります!
プレイングが多い場合は、こちらの作業時間の都合で全採用が難しいと思いますのでご了承ください。
【クエーサービースト・アルバドラーダ】について。
先に攻撃してきます。 身体の上に降りちゃいますからね。
さらにめっちゃデカイです。 それはもうデカいです。
あと眩しいので見ない様にしてください。 見られてもダメです。
見なくても向こうから跳んで来ることがありますので頑張って避けてください。
【プレイングボーナス】について。
シンプルに敵のユーベルコードに対策すればOKです。
先に攻撃してくるので注意しましょう。
第1章 ボス戦
『クエーサービースト・アルバドラーダ』
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POW : フエゴドラーダ
【夜明けの如き金色の光】が命中した対象を燃やす。放たれた【高熱の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : ラピドテンペスター
【カルロス・グリードの超能力を受ける】事で【金色に輝く超高速形態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : ソルドミナチオ
【美しい黄金の光】を披露した指定の全対象に【抵抗してはいけないという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
イラスト:芋園缶
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
エミリィ・ジゼル
でっか…クエーサービーストが出てくるとか聞いてないんですけど!卑怯なんですけど!
と、愚痴を吐いても仕方ありません。グリシャンとサメの平和を守るため、わたくしもいっちょ頑張るぞい
見たらアウトとのことなので目は閉じて、かわりに第六感と見切りを使っていきます
また見られてもアウトのことなので、着地前から徳川埋蔵金(偽)を展開。大量の偽物財宝を影にする形で隠れ、QBに接近していきます。
射程圏内まで接近したら、UCで戦闘機を身に包み、ミサイルの一斉発射をお見舞いします。
これで倒せるとも思えませんが、トドメは後続に任せましょう。
一撃入れたらさっさと戦闘圏内から離脱します。
「シャーク1、FOX2!FOX2!」
深島・鮫士
・おいおい、まさか宇宙怪獣までお出ましとは。グリシャンはまさに世界の寄せ鍋だな、こりゃ。
・さてどうすっか。ここまでデカイとやっぱりスーパーシャークに乗ってた戦うしかねぇな。あの光を見ないようにするには単純に目をつぶってアイマスクでもしとくか。肝心の戦闘に関する行為は「野生の勘」に全てを託すぜ。
・戦法は一撃離脱。敵の動きを「野生の勘」で「見切り」、「早業」で【蟻穴天破】を食らわせては「推力移動」で離脱。これを繰り返す。加速度的に広がる傷が複数あれば、あのデカブツだってたまったもんじゃないだろう。
・もし敵の内部に直接打ち込める機会があれば迷わずUCを敵内部に。外からも内からもズタズタにしてやるぜ!
玉葱島の上空にて。
転移の淡い光が灯ると、一匹のアオザメとさらにもう一匹のサメイドが現れる。
アオザメとはいうが、実際にはキマイラの深島・鮫士(深鮫流活殺刀拳術創始者(自称)・f24778)。
その名に恥じぬ男前もといサメ前な面構えだ。
そしてサメイドとなんぞや。
それはサメの着ぐるみを着たメイド、エミリィ・ジゼル(かじできないさん・f01678)である。
なぜサメの格好をしているのかは定かではないが、奇遇にもサメに縁のある二人が戦場で出会ったのだ。
だがこの島の特性上、目を開けるわけにもいかずお互い目を瞑っているため、その事実には気が付いていない。
「あ、やべ、手が滑りました」
「いてぇっ! な、なんだ? 鳥か!?」
お手入れの最中だったのか、全然片付いていないお宝をエミリィがド派手にぶちまけると、鮫士も巻き込んで玉葱島へと落ちていく。
この際幸運にもお宝が影となり、玉葱島の正体であるアルバドラーダの視界から逃れることに成功していた。
家事が出来ないことも役に立つことがあるらしい。
ジャラジャラとお宝と共に降り立つと、鮫士が長い鼻をさすって立ち上がった。
「痛ってて……おいおい、まさか今のも宇宙怪獣の仕業ってわけじゃないよな? こう何でもありだとグリシャンはまさに世界の寄せ鍋だって実感するぜ、こりゃ」
目を瞑っていたので、先ほど何が起こったか知らないのだろう。
気になって思わず目を開けそうになるが、いやいやと自らを制し首を振る。
そんな彼と同時に落ちて来たエミリィも既に起き上がり、周囲を調べていた。
「でっか……クエーサービーストが出てくるとか聞いてないんですけど! 卑怯なんですけど!」
着ぐるみの柔らかい脚でふみふみぽんぽん地団太を踏み、明らかに地面ではない感触に憤慨している。
眼を開けなくても分かるこのスケール感。
実際に触れたからこそ一筋縄ではいかないだろうとふんだのだろう。
「……と、愚痴を吐いても仕方ありません。 グリシャンとサメの平和を守るため、わたくしもいっちょ頑張るぞい」
だからこそ、関節のあまり曲がらなそうな着ぐるみのヒレ腕でグッとガッツポーズをして気を引き締めた。
「……サメ、だと?」
エミリィの声を耳にして、鮫士が思わず声の主へと振り返る。
視界は塞がれているが、深海でも生きて来たサメの力―サメオーラが辺りを満たす。
その研ぎ澄まされて広がった感覚が、目の前にいる女性に触れる。
(これは……サメなのか? いやたぶんサメ、のような気がするんだが……はたして……?)
姿形はおおよそサメっぽい(着ぐるみなのだが)ため、概ね同類であると認識した鮫士はいくぶんか警戒心を緩めた。
「これは……サメ!」
一方エミリィも鮫士の存在を察知し、内心テンションを上げていた。
なにせ彼女は鮫魔術士。
生粋のサメ好きなので、近くにサメがいればだいたい分かるのである。
そんな彼女の内心などは知る由も無く、心を許した鮫士が声を掛ける。
「なぁあんた、布切れでも何でもいいんだ。 眼を隠せるものがあれば俺に貸してくれるとありがたいんだがなぁ」
先ほどつい目を開けそうになったこともあり、アイマスク代わりのもを着用したいのだろう。
「あーそれなら丁度良いものがありますね。 ちょいと失礼いたします」
ごそごそと何かを取り出し鮫士の方へと近づくと、エミリィが彼の頭にそれを括りつける。
「おお、いい感じだぜ。 すまねぇな!」
そこにはホワイトブリムを着けた鮫士の姿。
一歩後ずさり心の眼で鮫士を見ると、エミリィは満足そうに頷いた。
(やはりサメにはブリムが合いますね)
鮫士の視界対策も済んだところで、二人は早速宇宙怪獣退治に取り掛かる。
「わたくしは戦闘機でミサイル攻撃を行います。 まぁこれで倒せるとは思えませんが」
「ミサイルねぇ、確かにこのデカブツにはそれくらいブチかます方が良さそうだぜ。 だったら俺もスーパーシャークを出すとするか! どうせだから俺が傷口を作る、そこにあんたのミサイルをぶち込んでやろうぜ!」
「いいですね乗りましょう。 あとスーパーシャークかっこいいですねテンション上がってきました」
鮫士の呼び出した巨大鮫士―スーパーシャーク。
それがエミリィの琴線に触れたのか、いつにも増してやる気を出す。
「シャーク1発進! シャーク2、幸運を祈ります!」
着ぐるみの上にさらに戦闘機を着込む(?)と、エミリィのエアフォースメイドが離陸し大きく旋回を始めた。
上空は隠れる物無く非常に危険なはずだが、それでも彼女は五体満足で大空を飛び交う。
それも全て、スーパーシャークが敵の眼を引き付けてくれていたからに他ならない。
「おいおい何処に眼をつけてんだ? 俺はここだぜぇ!」
宇宙怪獣アルバドラーダの比較的肉の薄い表皮付近を鋭い牙で食い破るように潜り込み、トビウオのように再び地上へ姿を現していた。
無作為に暴れるだけならば視界はいらず、味方も地上にいない為好き放題やれるのだ。
そして深手とはならなくとも、身体の表面をこうもズタズタにされてはアルバドラーダも黙っていられない。
彼を焼き払おうと目で追いかけるが、海を泳ぐようにスイスイ機敏に動くサメの軌道は読みにくく、どうにも捕まえることが出来なかった。
「シャーク1、FOX2! FOX2!」
ここでエアフォースメイドからスーパーシャークへ通信が入る。
ミサイル発射の合図だ。
スーパーシャークの移動の軌跡に合わせれば、自ずと傷口に当たるはずである。
二人の連携プレーでエミリィが用意していたミサイルを全弾宇宙怪獣へぶち込む。
「――――――――!!!」
おそらくアルバドラーダのものであろう、耳には入るが理解はできない不可思議な悲鳴が轟く。
「蟻の一穴天下を破る……ってな。 一度穴が開けば肉へダイレクトだ、この時を待っていたぜぇ!!」
表皮の皮を鮫士が破り、エミリィが肉を穿つ。
溢れ出す血の匂いが、焼け付いた肉の香りが、鮫士に眠る本能を呼び起こす。
深く抉られた大穴へスーパーシャークが飛び込むと、肉の鎧に隠されていた血管を食い破っていくのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
夕闇霧・空音
心を奪われる光ねぇ…
それなら相手はどうなのかしらね?
【アドリブOK/戦闘】
巨大な相手にチクチクやっても埒が明かないわね。
とりあえずは敵に注意を向けさせるためにもさっきをまとった攻撃を仕掛けるけど…
こっちに攻撃を仕掛けてくるようになったならこっちの番ね。
ユーベルコードで巨大な氷の壁を作り出して攻撃をガード。
敵が放つ光もこの壁で反射して、敵の心にダメージを与えるわ。
ナミル・タグイール
金ぴかー!!(ガン見猫)
でっっかい金ぴかにゃ!欲しいにゃ!持って帰るデスにゃー!(心奪われまくり猫)
巨大な黄金色に強欲の呪詛モリモリ強化
突撃にゃー!ここらへんの金ぴかはナミルのにゃ!(周り威嚇猫)
ざっくり切り取って持って帰るにゃー!
ぎにゃー!めっちゃぎらぎらにゃ熱いにゃー!
でもめっちゃ綺麗にゃ欲しいにゃ!ゲットするまでは死ねないにゃ!
体が燃えても溶けても呪詛パワーで動くにゃ。金ぴかほしい呪いだけで体動かすにゃ!
光れば光るほどもっと欲しくなるにゃー!金ぴかは全部ナミルのにゃ!
斧にも呪詛を込めて思いっきり大口開けた斧どっかーんにゃー!
金ぴか部分全部斧で捕食してやるにゃ!あとで吐き出させて回収にゃ
この島が玉葱島と呼ばれる所以、それは島の上をほぼ埋め尽くす巨大なクエーサービースト・アルバドラーダがどんと鎮座しており、その形が玉葱に似ているからだ。
そしてこの宇宙怪獣は怪しげな金色の光で餌となる人間達を誘い込んでいる。
アレの琥珀色の眼は絶対に見てはいけない。
心を盗られ、抗う術を失ってしまうからだ。
そのことは散々口を酸っぱくブリーフィング時に言われていたはずだった。
言われていたはずだったのだ……
「金ぴかー!!」
黒い猫獣人のナミル・タグイール(呪飾獣・f00003)が、転移早々アルバドラーダの光をガン見する。
話に聞いていたとしても全く聞く気がない強欲な黒猫は、食い入るように瞬き一つせずじっと琥珀の瞳と見つめ合っていた。
誰がどう見ても完全に心を奪われているのは明白。
「でっっかい金ぴかにゃ! 欲しいにゃ! 持って帰るデスにゃー!」
そのあまりの熱視線に、意思疎通出来ないはずのクエーサービーストが若干引いているように見えたほどだ。
ナミルの強欲はそれほどまでに欲深いのだろう。
「なるほど、これが心を奪われる光の力ねぇ……」
宇宙怪獣の怪光から目を逸らしつつ、目の前で術中に嵌っている猫をまじまじと観察する夕闇霧・空音(凶風・f00424)。
まさかたまたま同行した協力者が、たった一秒で使い物にならなくなるとは予想外だっただろう。
だがその分、敵の力が油断ならないものであるという実感とデータが取れた。
「でもこれだけ強力なら、はたして相手の方はどうなのかしらね? 世の中には自分の毒で死んでしまう生き物もいるらしいものね」
一瞬でこれほどまでにナミルが洗脳されてしまうなら、相手が誰であろうと関係ない無差別な力なのだろう。
「そう、そして本来は自分で自分の光を見ることがないはずよね。 なら免疫をわざわざ持つ必要もないはずだわ」
空音は冷静にそう仮説を立てると、とりあえずナミルをどうにか助けられないかを試みるのであった。
「猫さん、聞こえているわよね? まだ意識があるなら頑張って目を閉じてみてくれるかしら」
心を奪われたナミルに対して、一応念のために空音が声を掛ける。
その声でようやく空音の存在に気が付いたのか、ナミルが一瞬だけこちらを振りむいてくれた。
「ふぎゃー! あのでっっかい金ぴかはナミルのにゃ! 絶対渡さないのにゃ!!」
目を離しても既に手遅れらしく、ナミルはあの金色の巨大な瞳に並々ならぬ執着心を抱いてしまったようである。
猫のように毛を逆立て威嚇し、再びあの目と見つめ合う。
「も、もう辛抱貯まらんのにゃ! 突撃にゃー! ざっくり切り取って持って帰るにゃー!」
「ちょ、ちょっと猫さん!? 不用意に近付いたら……」
もたもたしていたら琥珀の瞳を先に盗られてしまうかもしれない。
そんな脅迫概念がナミルを突き動かしたのか、山のように大きな光の源へと駆け出していく。
「ぎにゃー! めっちゃぎらぎらにゃ熱いにゃー!」
空音の危惧した通り、光源へ近付くにつれてナミルの身体がプスプスと黒い煙を上げて、最後には燃え出した。
「でもめっちゃ綺麗にゃ欲しいにゃ! ゲットするまでは死ねないにゃ!」
まだ道半ばというところで全身を包むほど燃え上がるのならば、手が触れられるほどにまで接近したらどうなってしまうのか。
火達磨になりながらも這いずるナミルを見て、冷静だった空音も焦りを見せる。
「このまま見殺す気はないわ。 これがコールドハートの力よ」
空音がサイボーグ化した両腕をパンと合わせて開くと、広げた両手の間に大きな氷魂が生成される。
それをナミルの目の前に放り投げて、遮蔽と鎮火を試みたのだ。
ガシャンと音を立ててナミルの前へ狙い通り落ちると、氷が割れて粒氷が彼女を覆う。
しかしそれでも火は消えずに氷を解かしていってしまった。
「だめね、あの目をこちらに引き付けるしかなさそうだわ……だったらこうよ」
空音が両手を握りしめると、今度は氷の槍がそれぞれ生成される。
それを目を瞑りながらアルバドラーダの眼に目掛けてぶん投げた。
的が大きいだけに、だいだいの方向さえあっていれば当たるのだ。
「巨大な相手にチクチクやっても埒が明かないけれど……私の方にさえ向いてくれればそれでいいのよ」
彼女の作戦通り、ナミルへ集中していた怪光線が空音の方へと傾いていく。
「今ね、防御兵装展開……絶対氷壁発動!!」
両足で畳み返しのように地を蹴ると、空音を覆っても余りあるほど大きな氷壁が立ち上がる。
鏡のように白く濁りのない壁面はもはや鏡といっても過言ではなく、鏡面が宇宙怪獣の光をそっくりそのまま反射した。
するとクエーサービーストは自分の光で目を眩ませたのか、金色の光が明後日の方を向く。
一方消えない火に包まれたナミル。
身体は既にボロボロだが、反比例するように彼女の身体に刻まれた金色のタトゥーが強く輝きを増す。
それが己の生への渇望よりも、目の前の金への欲を上回り無理やり身体を操っていく。
「光れば光るほどもっと欲しくなるにゃー! 金ぴかは全部ナミルのにゃ! 死んでも渡さないのにゃ!!」
身体が燃えようと、溶けようと、命の炎が揺らごうと、彼女の執念と欲望が枯れることはない。
全身が燃えて目が霞んでいるのか、手を伸ばせば届きそうな目の前の光にふらふらと寄っていく。
それは空音が作った氷壁に反射した光であった。
「猫さん……? いえ、もしかしたら彼女なら……」
明らかに致死量の火傷を負っていてもなお動けるあのナミルの身体。
それこそが、あの怪物に近付ける唯一の糸口かもしれない。
「私があなたを導くわ。 必ずアレを止めてくれると信じているわよ」
空音が反射光を利用して作ったこのチャンス。
いつまでアルバドラーダが目を回しているかは分からない。
そして光源付近は直接見られていなくとも、漏れ出た光で燃やされてしまうだろう。
「金ぴかにゃ! もうすぐ手に入るのにゃ! まだ死ねないにゃ! 金ぴかが呼んでるのにゃ!!」
空音の光を辿り、遂に琥珀色の大目玉と対面する。
だが先程よりも激しく燃え上がり、空音からではナミルの原型すら見えないほどになっていた。
「やって猫さん! 敵は目の前よ!!」
「お前の全部寄越せデスにゃー! 喰らえにゃ! 貪るのにゃー!!」
火に包まれた大斧を振りかぶり、金色の刃が目玉に食い込んでいく。
否、まるで抉り取ったかのように傷跡が広がり、アルバドラーダが地を揺らす悲鳴を上げた。
光を奪い取っていくように次々振るわれる斧が止まることはなく、それに合わせてナミルの身体から火が引いていくのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
菫宮・奏莉
ここがお姉ちゃん達ががんばってるところなんですね。
わたしも勇者に選ばれたことだし、これからがんばりますよ!
それにしても……いきなりすごい相手に当たってしまった気がします。
大きい相手にはくっついちゃうのがいいと思うけど、
松葉杖で叩いてどのくらい効くかなぁ?
【チーム】のみんなにも手伝ってもらえば、少しはなんとかなるかな?
って、わわっ速い!?
はわわわわ、見えません-!?
と、相手のスピードに翻弄されたまま盛大にコケたら、
【医療安全管理チーム】が発動して、チームのみんなが来てくれました。
み、みんな、いきなりごめんなさいだけど、助けてー
全員でなんとか相手を捉えてくっついで、穴を掘るみたいに攻撃していくよ!
エィミー・ロストリンク
【POW】
クエーサービーストまで持ち出してくるなんて反則だよ!?
だけどそれで引くほど、わたし達は弱くないよー!
キャバリア・アカハガネに搭乗して参戦
金色の光に対してラクチェの要石で、海水を鉄水に変えて自在に操り、何重のドーム状にして受けて直撃を避ける
例え食らっても帝竜ガイオウガ装甲の耐熱性があるので、ある程度は耐えることは可能なので、戦闘不能にならないように注意する
先制後は両腕のガトリングキャノンで特殊弾を含めた弾幕を張って攻撃
隙を見てUC「RE:祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」を発動させて、二足歩行戦車と大魔王第一形態を背後に召喚して前後からの一斉砲撃
これが絆の力! そして数の暴力だー!
元は平坦で何もなかった小島。
今では誰が呼び始めたのか玉葱島と名付けられたこの島は、海に面している部分以外はほぼすべてが巨大な宇宙生物の身体であった。
それはあまりにも強大で、あまりにも無謀な戦い。
生きて帰れるという保証はなく、それでも平和のために猟兵達が駆け付けて来た。
傷付いているとはいえ未だ健在なクエーサービースト・アルバドラーダの上空に淡い光が灯る。
光が収束すると、中から赤い巨大ロボットが姿を現す。
島の中央から溢れ出す黄金の怪光からは目を逸らすためか、スーパーロボットは背を向けて何かを手の中に抱いていた。
「わぁ~! ここがお姉ちゃん達ががんばってるところなんですね」
大事そうに手で覆われていた黒髪の少女、菫宮・奏莉(血まみれ勇者・f32133)が指の間からひょこりと顔を出して島を見下ろす。
その際ロボットの指にゴチンと顔をぶつけていたため、かなりドジっ娘らしい。
「そうだよー……って、わわ、落ちない様に気を付けてね! それと後ろの方は見ちゃダメだよー」
真紅のスーパーロボット『アカハガネ』を駆るエィミー・ロストリンク(再臨せし絆の乙女・f26184)が心配そうに声を掛けた。
エィミーの方が年下のはずなのだが、手の中の奏莉は少しでも目を離せば怪我を増やしそうな危うさで気が気じゃないのだろう。
背中側への注意は、現在進行形でアカハガネの背がじりじりと焼かれているからだ。
あの玉葱島の正体、アルバドラーダの放つ奇怪な灯りは照らすもの全てを焼き尽くしてしまう。
しかしアカハガネの特殊な装甲が、その熱を微塵も感じさせず奏莉を護っているのだ。
「はい、ありがとうございます! それにしても……いきなりすごい相手に当たってしまった気がします」
アカハガネの指の間から風に当たっていた頭を引っ込めると、コックピット付近を見つめて奏莉が神妙な声色で呟いた。
なにせ敵は本来、地上での戦闘など想定していない程に巨大なのだ。
「本当だよまったく、クエーサービーストまで持ち出してくるなんて反則だよね! ま、だけどそれで引くほどわたし達は弱くないよねー!」
それを承知でこの仕事を受けたのだ。
幼い彼女達もそれ相応の覚悟と信念を持って、この島へ乗りこんでいるのだろう。
「もちろんです! わたしも勇者に選ばれたことだし、これから精一杯がんばりますよ!」
純粋で明るいエィミーにつられて、初陣である奏莉も緊張を解し笑顔で笑い合う。
後ろで怖い瞳が睨みを利かせる中、和気あいあい少女たちが絆を深めているとアカハガネが島に降り立つ。
「これ綺麗なんだよー、見ててね! 海水よー鉄水に変われ!」
エィミーが黒い球を抱いて念じると、島に面していた海水が赤錆びた色に変わって噴き上がる。
いくつも昇る赤い水柱は噴水アートのように自在に動き、子供心をくすぐるアトラクションになっていた。
「わ、わ、すごいです初めて見ました! わたしいっつも入院してたから!」
包帯で片目が隠れた瞳を輝かせ、奏莉がぱちぱちと柔らかい手を叩く。
「まだまだここからが本番だよ! それー!」
エィミーの掛け声に合わせて赤い鉄水が島へ飛び込んで来ると、アカハガネを半ドーム状に囲んで凝固していく。
幾重にも飴細工のように加工して重ねることで、その強度をましていき頑強な拠点が出来上がる。
「秘密前線基地かんせーい! もう降りてもいいよ!」
エィミーの声に従い奏莉が降りると、ぱぁっと笑顔を咲かせる。
新米勇者奏莉の冒険はここから始まるのだ。
「あとはわたしに任せてください! 勇者の剣だってありますから!」
王城から出立する選ばれし戦士のように松葉杖を掲げる奏莉。
もちろん刃のないひのきの棒同然なのだが、根拠のない自信が彼女を突き動かす。
「ならわたしはガトリングで援護射撃するねー! クエーサービーストだって目が痛くて閉じちゃうはずだよ!」
赤錆び色のドームからアカハガネの腕だけ出すと、アルバドラーダの大目玉に向けてガムシャラに撃ち放つ。
銃身が焼け付く前にもう片方の腕のガトリング砲を放つことで、絶え間なく弾幕を張って敵の眼を逸らしていた。
「よし、今ですね! たぁー!」
このチャンスを活かすため、イマイチ覇気に欠ける掛け声で奏莉がたたたと駆けだした。
しかしアカハガネの弾幕は予想以上に痛かったのだろう。
大目玉の宇宙怪獣は、たまらず身体を震わせ悶絶する。
「って、わわっ地震!? はわわわわ、立てませんー!?」
島サイズともなるとそれだけでも地上は大地震のようなもの、ドジっ娘な奏莉は当然の如く盛大に顔からズッコケた。
震える地面に恐る恐る半身を起こすと、転んだ時に擦りむいたのか鼻血は一筋流れ落ちる。
どこで察知したのか、奏莉の出血が確認されると何処からか救急車のサイレンが鳴り響き出した。
「あー!? ちょっと何してくれてるの! もう許さないよー!!」
後方から支援していたエィミーは、奏莉が転んで鼻血を出したことに対して激昂。
短い間とはいえ絆を深めた仲、彼女が傷ついたとあっては黙っていられない。
こうなっては自分達だけの力でなんて拘りは捨て去って、強力な助っ人へ連絡する。
「メイスンお義姉ちゃん、お願い! あいつをやっつけちゃってー!!」
『任せるといいのー』
アカハガネの通信装置で義姉に助力を願うと、グリモアの淡い光が無数に灯り辺りを包でいく。
光が収束すると、アカハガネと同サイズの二足歩行戦車がずらりと並び立っていた。
それだけではない、さらにその後ろに大きな光が広がり中から金色の巨体が顔を出す。
いつぞや猟兵達を苦しめたあの機体、それがそのまま出現したのだ。
「さっすがメイスンお義姉ちゃん! 太っ腹だねー!」
助太刀に来たのはそれだけではない。
鳴り響くサイレンが近付くと、二足歩行戦車達の間に次々と武装救急車と物騒な医者や看護師が駆け付ける。
「うちの可愛いの患者になにしてくれるんですか、ア゛ァン゛?」
ベキベキと拳を鳴らすわ、大鉈のようなメスをショリショリ研ぐわ、怪しい色の薬を巨大注射器に詰めているわで殺意満々である。
病院で奏莉はさぞ可愛がられて来たのだろう。
昨日までの白衣の天使が、今や白装束の死神である。
「み、みんな……」
駆け付けた超大部隊を目にして、奏莉の眼尻にじんわりと涙が浮かぶ。
人を惹きつけるこの才こそが、彼女の勇者としての力の片鱗なのだろう。
「いきなりごめんなさいだけど、助けてー!」
その言葉を合図に大部隊がわっと動き出す。
「もちろんだよ! 喰らえクエーサービースト! これが絆の力! そして数の暴力だー!」
アカハガネが両腕のガトリングを撃ち放ち、歩行戦車部隊もそれに続く。
後方の巨大な金色の機体は、胸部の大きな口から真っ赤な光線で薙ぎ払う。
救急部隊はそれぞれの特異得物で違法手術を行い、的確に生物の急所を狙っていった。
絶え間ない攻撃の連続、防ぎ入れない数の暴力。
いくら島程の巨体と言えどもそれらに勝てるはずも無く、アルバドラーダは一方的に損傷していくのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヘスティア・イクテュス
クエーサー…クエ…クエーサービースト…?なんでそんなのがこっちの世界にいるのよ…
SSWの住人として流石に放ってはおけないわね、ヘスティア・イクテュス出るわよ!
さっきの動画を見る限り…映像なら…問題ないってことよね?
映像でダメならその時点でわたし達全員OUTだし
S.F.Oに乗り込んで【空中戦】キャノピーを直接視認じゃなくて外部カメラからの映像データ投影方式に変更
一旦外部カメラの映像を経由させることで光を防ぐわ
この中なら耐熱もそこそこってね【環境耐性】
そんで、底部からマイクロミサイルの一斉発射で爆撃よ!
シノギ・リンダリンダリンダ
巨大な敵との戦いはロマン!
もはや海戦もクソもない状況ですが、海で戦い、そして海賊船で戦うのならそれも立派な海戦です!
wiz対抗
転送後、少しのラグの後に【対征服者超振動突撃衝角艦隊】を使用するようプログラム
いざ黄金の光を目の前にしたら、なるほどこの美しい黄金の輝き、我が強欲に突き刺さります!
ですが、こちとら数多の呪詛の籠もったお宝を略奪してきた大海賊。狂気、呪詛に対する抵抗はそれなりにあります!
なにより、この戦いが七大海嘯へと繋がるのなら、静かにしている場合じゃない!
例えどんな状況であろうと、プログラムした艦隊は召喚され
自動操縦の艦隊は私の意思とは関係なく玉葱を切り刻む
空中を駆ける海賊船によって
ここは己の欲に従い数多の海を渡り行く海賊たちの縄張りグリードオーシャンである。
どこぞの海で金色に輝くものがあると知れば、彼らは迷わず駆け付けた。
それはこの玉葱島のでも例外ではない。
かの光りに誘われて今日も海賊たちがやって来たのだ。
「巨大な敵との戦いはロマン! 島の主を倒して財宝ゲットもロマン! 相手がクエーサービーストなどというレア敵なのもさらにロマン! ロマンが私を呼んでいます!」
玉葱島の上空にて、淡い光がぐぅんと大きく広がって海賊船の船底が見えて来る。
「もはや海戦もクソもない状況ですが、海で戦い、そして海賊船で戦うのならそれも立派な海戦です! さぁ目の前のお宝に向けて面舵いっぱいです!」
巨大な海賊船が重力の鎖に引かれてズズズと落ちて来ると、甲板にシノギ・リンダリンダリンダ(強欲の溟海・f03214)の姿が現れる。
彼女がいる場所は海でも河でもなく島の上空であり、舵どころではないのだが気にも留めない。
「クエーサー……クエ……もしかして今、クエーサービーストって言った……?」
シノギの海賊船のマストと同時にヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)が顔を出して困惑する。
ふよふよと浮かぶUFOに似た乗り物『S.T.O』の中で、シノギの言葉に耳を疑ったのだ。
「なんでそんなのがこっちの世界にいるのよ……まさか小惑星サイズのじゃないわよね?」
乗り物からも分かる通り彼女は宇宙の出身であり、広大な空を巡る宇宙海賊を生業とする。
そのため、向こうの世界でクエーサービーストとは少々因縁があるのだ。
「SSWの住人として流石に放ってはおけないわね、ヘスティア・イクテュス出るわよ!」
決意のわりにはなんとも愛嬌のあるS.T.Oが、ふよよよと音を立てて海賊船を器用に避けながら玉葱島へと接近していった。
「おや、同業に先を越されてはかないませんね。 こちらも本気を出しましょう、駆けろッ!! 飛べッ!!! 空陸海、そして宇宙、これが全ての状況に適応し、蹂躙する対征服者用艦隊です!!」
ヘスティアが先行したのを横目で流し見ると、シノギも負けじと海賊の意地を見せる。
彼女の掛け声が上がると、乗っていたレトロなガレオン船に似付かわしくない特大チェーンソーが船首に生えてきて、けたたましい駆動音を鳴らす。
さらに自重でどんどん地上へ落下していた海賊船が、急に空中へ着水し薄霧の飛沫を上げた。
ギィギィと古い木材の擦れる音と共に、霞を漂い玉葱島を旋回する船はさながら幽霊船のようだった。
「ヨーソロー!」
しばらく漂い、島の中心から漏れ出る光に眼を奪われそうになるも、色白く人形関節のある手を見下ろし耐える。
「ふむ、いざ黄金の光を目の前にしたら、なるほどこの美しい黄金の輝き。 我が強欲に突き刺さります!」
陶器のように艶のある掌は、島から放たれる黄昏色の灯を反射し色を付ける。
直視ではないため心まで奪われないが、しかし彼女の独占欲を刺激してやまないのだ。
一方、先行していたヘスティアは小回りの利く機体でこの玉葱島の正体を調べていた。
「あっちも動き出したみたいね」
S.T.Oはキャノピーを閉じて完全に遮光しており、周囲の状況はモニターから読み取っている。
映像には空を切る海賊船の雄姿が映されており、それを切り替えると島の中心を捉えた。
画面には金色の光が眩く機内を照らすが、思わず目を瞑ったヘスティアが恐る恐る薄目を開ける。
「ブリーフィングの動画を見る限り……映像なら……問題ないってこと……よね?」
目に飛び込んで来たのは紛れもないクエーサービーストの悍ましい姿。
それに嫌悪感を抱けるということは、まだ自分の意思は保てているということだろう。
「本当にこっちに来てるなんてね……この眼で見るまで半信半疑だったわ。 でも幸い重力で縛られて自分じゃ動けないみたい」
大きすぎる身体が災いし、この島から勝手に動き出すことは出来ないらしい。
「まさかそれも含めて黒幕カルロス・グリードの目論見通りってことかしら?」
世界の危機を案じていると、宇宙怪獣が既に猟兵達によってかなりダメージを与えられていることに気が付く。
「そうだったわね、私達は一人で立ち向かってるわけじゃなかったわ。 ここは海賊同士なんて競い合ってる場合じゃないわよね」
スキャンデータを解析すると、ヘスティアはシノギの乗る海賊船へと急いだ。
シノギの海賊船は自動操縦で玉葱島アルバドラーダを切り裂いていた。
船に見合う程の大きさのチェーンソーであればかなりの威力であり、どんどん巨大玉葱をみじん斬りにしていく。
「だいぶ斬ったようですね。 しかし、どれくらい進んだのか確認できないのはもどかしいばかりです」
なにせ相手は島と同じ大きさ。
実際は解体作業がままならず、決着が着く前に船が燃やされかねない状況であった。
「ストーップ! それじゃ日が暮れるわよ。 ここは手を組みましょう、向こうに急所がもうすぐ掘れそうなところがあるわ。 リスクはあるけどやるわよね?」
S.T.Oが飛んで来ると外部スピーカーからヘスティアの声が響く。
敵から思いっきり睨まれることにはなるが、あと一歩で喉笛が見えるとのことだった。
「いいでしょう乗りました! こちとら数多の呪詛の籠もったお宝を略奪してきた大海賊。 危険を承知で吶喊した経験は数知れず! なにより、この戦いが七大海嘯へと繋がるのなら、静かにしている場合じゃない!」
二つ返事でシノギが加わると、ヘスティアに先導されてアルバドラーダの正面へと回る。
こちら側は今まで以上に黄金の光が輝き、じりじりと肌を焼く。
「わたしが可能な限りのマイクロミサイルを光源に向けて撃つわ! その隙に深い傷のあるところ突き破るのよ!」
まずは耐熱性のある装甲を活かしてS.T.Oが大目玉の前に躍り出る。
機体下部からミサイルを乱れ撃ってクエーサービーストに命中すると、爆炎と黒い煙硝が煙幕のように光を閉ざしていった。
しかしそれでも所々漏れ出る光が、あの怪物の健在を証明していた。
「場所はわかりました、あとは私の海賊船に任せてください! 跡形も残さずに、全てを蹂躙しやりましょう!!!」
だが海賊船が破損することなく接近するには十分。
弱まった光の中を突き進み、敵が接近を警戒していた傷口へ乱暴に刃を立てた。
強力なモーターで無慈悲に肉を抉り取っていき、絶え間なく振るわれるチェーンソー。
ついにぶ厚い肉の壁を突き破り核となる結晶を砕くと、クエーサービーストはサイレンの様な絶叫を最後に活動を止めるのであった。
大成功
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