羅針盤戦争〜三つ目を四つ目にしてはならない
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「弟よ、聞いて欲しいことがあるのだが」
「何だ、兄者よ」
「ここまでずっと空けてきた俺の右目だがな、ついに入れるものが見つかったのだ!」
「おお、てことは……!」
「そうさ、グリモアよ! これでついに俺たちの体も完成する!」
「やったな兄者! だがどうやってそれを入手する?」
「おいおい弟よ、俺たちが何なのか忘れたのか? 欲しいものは殺して奪う! それが俺たちのやり方だろう! まずはそのへんの島で島民どもを適当に退化させる! そうすりゃお人好しの猟兵共がグリモアを持ってかけつけてくるから、あとは殺して奪い取るって寸法よ!」
「そんないい加減な作戦を平気で実行して、成功させるだけの力がある……流石だよな、俺ら!」
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「お疲れ様。今日も羅針盤戦争の依頼をするわ」
鉄甲船『黍団号』の上、子豚・オーロラ(豚房流剣士・f02440)が集まった猟兵たちに告げた。
「今日倒して欲しいのは、七大海嘯の一人……というか二人と言うか、『三つ目』のバルバロス兄弟よ。彼らはメガリスや倒した相手の優れた部位を自らの体に繋ぎあわせ、一人の巨大な双頭の巨人となったコンキスタドールよ」
元からそう言う体だったのか改造の果てにくっついたのかは分からないが、とにかく一つの体に二つの頭、多数の腕を持つつぎはぎだらけの巨人だという。
「彼らの目的はグリモアを自らのパーツとして組み込み、最強の存在となること。そうして七大海嘯の頂点……あるいはもっと上すらも目指すつもりみたいね」
またも現れたグリモアを狙うオブリビオン。純粋な自己強化パーツとしてしか見ていない分、その中では分かりやすい存在と言えるだろうか。
「彼らは今元キマイラフューチャーの島に乗り込み、そこの住人を自分の能力で『退化』させて遊んでいるわ。住人を無暗に殺すつもりはないみたいだけど、一方で別に生かしておくつもりもないから、お腹が減ったら家畜代わりに殺して食べる、くらいはする気みたいね」
相手を『退化』させる恐るべき能力を持つが、その行動は随分といい加減である。だが、それも当然のことと言えた。なぜなら。
「彼らは別にこの島を征服したいんじゃない。適当な島で暴れていれば確実に猟兵は自分を討伐に来る。そう考えて、わざとこちらに見せつけるため島を襲っているみたいね」
グリモアの機能や猟兵の性質を理解し、自分の所へ招くために利用する。どこまで正しい情報を持っているのかは分からないが、少なからず猟兵について知っている相手ということだろう。
「相手の作戦に乗るのは癪だけど、このままじゃ島の住人がみんな食べられちゃうわ。行って『三つ目』を討伐してきてちょうだい。彼は多腕による攻撃やその巨体を生かした質量攻めに加え、弟のハイレディンの視線によって敵対者を『退化』させてくる強敵よ。これらの攻撃をまず凌いでからが勝負。油断しないでね」
彼らも先制を行ってくる。つまりそのレベルの実力者だということだ。
「ちなみに彼の一番の目的はグリモアだけど、猟兵の肉体自体もいいパーツとして狙っているから、グリモア猟兵じゃないから安心なんてことはないわ。気を付けてね」
彼らは豪放磊落にして残虐非道。お前のものは俺のものを地で行く性格だ。目の前に立った者を獲物意外として見ることはないだろう。
「こういう敵が出るたび言うことだけど、グリモアをオブリビオンに渡すなんてできないわ。どうか彼らの野望を挫いてきてちょうだい」
そう言ってオーロラは、鉄甲船の舵を目的地へ向けて切った。
鳴声海矢
こんにちは、鳴声海矢です。兄者があまり仕事してないように見えるけどきっとそれは気のせい。
今回は『七大海嘯『三つ目』バルバロス兄弟』の討伐依頼です。今回のプレイングボーナスはこちら。
『プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する』
幹部戦ということでおなじみの先制攻撃対処です。彼らのユーベルコードをなんとかした上で戦闘に持ち込んでください。
舞台となる島は元キマイラフューチャー。住人はほとんどが『退化』させられて動物となってしまっています。バルバロス兄弟を倒せば元に戻りますし、本家キマフュー人みたいに野次馬根性で戦場に居残ったりもしないので、護衛などは気にせず戦ってください(遠巻きに見るくらいはしてるかもしれませんが)。
また元キマフューなのでコンコンコンすれば何かしらは出てきます。大体は食べものかオモチャ類だと思いますが、うまく利用してみてもいいかもしれません。ただやはりシステム自体が劣化しているのか、余り大それたものは出てきません。
今回は島の中での陸戦となりますので、海に対応した行動は不要です。
どういう方向性で退化するか指定のある方はプレイングに書いてくださればそのように退化させます。なければこちらで判断いたします(もちろん退化しないに越したことはないのですが……)。
それでは、進化し続けるプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『七大海嘯『三つ目』バルバロス兄弟』
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POW : フォーアームズ・ストーム
【四腕で振るった武器】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD : 「オルキヌスの瞳」
【弟ハイレディン(左頭部)の凝視】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【肉体、精神の両面に及ぶ「退化」】で攻撃する。
WIZ : バルバロス・パワー
敵より【身体が大きい】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
👑11
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ノビ・ノーノビタ
「……」
『口上を述べる暇はない。瞬時に戦場を見切ってクイックドロウ』
(狙うのは、敵じゃなくてコンコン装置)
『前方、敵との間にあるコンコン装置三箇所にそれぞれ二発を撃ち込んでコンコン、コンコン、コンコン』
「……すまん」
(あとでできる限りの修繕はするから、今は力を貸して、コンコン装置)
射撃しながら前にかける
装置から出現する即席遮蔽に身を隠す
「……肉体、精神を退化させる、か」
『素早く再装填』
(おっかない力だよね、まだしも、僕の銃は退化しなくってよかったな)
『多少変わった身であれ、やることは変わらない、忘れることなどない』
(修練を信じて)
「この心で引き金を引くだけだ」
撃つ、撃つ、狙い撃つ!
七大海嘯が一人、『三つ目』のバルバロス兄弟。グリモアを求め猟兵をおびき寄せるべく、彼らは手近な島を制圧し住人を退化させ遊んでいた。
「弟よ、腹が減っては来ないか?」
「奇遇だな兄者よ、俺もそう思っていたところだ。まあ俺たちの腹は一つしかないから当然なんだがな!」
くだらない冗談を言い笑い合う兄弟。だが、傍らにいた豚……退化させられた豚型キマイラにとってはそれはおおよそ笑えるような言葉ではなかった。
そのいつ気まぐれで実行されるか分からない冗談、それを止めるかのように、一人のキマイラが彼らの前に現れた。
「……来たぞ、兄者!」
「来たな、弟よ!」
住人を全て退化させたこの島に来るものなど一種類しかいない。ならばとるべき行動は一つだと、兄弟は僅かな言葉だけを交わして立ちあがり、弟ハイレディンの頭部が来訪者を睨みつけた。
「……」
その視線に、ノビ・ノーノビタ(沈黙のガンマン・f32090)は何の口上もない。ただ瞬時に、ここと見定めた場所に抜き打ちの射撃を仕掛けるだけであった。
彼が撃ったのはバルバロス兄弟ではなく、自分の前の地面。敵が立ちあがって、睨む。その極僅かな時間の間に前方三箇所にに二発ずつ、コンコン、コンコン、コンコンと銃弾を撃ち込んだ。
そうして現れるのは巨大な立て看板が三つ。『お食事はあちら』『お買い物はあちら』『お帰りはあちら』と書かれたド派手な看板三つが、ノビとバルバロス兄弟の間を遮るようにどんと聳え立った。
「な、なんだこりゃあ!」
「馬鹿言ってんじゃねぇ、俺たちが用があるのはここだ!」
立て看板の文字に思わず悪態をつく兄弟。だが、この状況は決して冗談で済むものではなかった。
ハイレディンの持つ退化の瞳は強力な能力だが、あくまで起動トリガーは『視線』。それそのものには何ら物理的な効果はなく、遮蔽物一つ置かれるだけで一切無効化されてしまうこの上なく脆い能力でもあった。
「……すまん」
看板の影、先制の攻撃をしのいだノビは銃を撃ち込んだコンコンコン装置に小声でそう言いつつ、看板から飛び出し、即座にやや前方の地面を撃って再び遮蔽となるものを出現させてその陰に潜り込む。
(あとでできる限りの修繕はするから、今は力を貸して、コンコン装置)
丈夫とはいえ銃で撃って乱暴に起動するのは心が痛む。だが、決してそれを表に出す事はしないし、敵に聞かせてやる義理もない。本当は優しく気弱なその男は、表情を変えず冷徹を装って少しずつ敵へと近づいていった。
「青狸のくせに生意気な……ぶちのめしてやる!」
兄オルチ側の右腕が武器を振るい遮蔽物を叩き壊し、そこからはみ出したノビの体の一部を弟ハイレディンが睨みつける。僅かに視線を受けてしまった片手が『退化』をはじめ、銃を持つには適さない獣の腕に変わっていった。
「……肉体、精神を退化させる、か」
僅かに受けただけでもこの効果。もし全身に浴びてしまえばと考えると恐ろしい。だが片手で素早く弾丸を再装填し、ノビは用をなさなくなった遮蔽物から転がり出る。
(おっかない力だよね、まだしも、僕の銃は退化しなくってよかったな)
進化は生命の特権ということか、視線の範囲にあったはずの銃は退化せず、その機能に劣化はない。そして自身も多少体を変えられたとはいえ、動きに大きな支障はないのだからやることは変わらない。
(修練を信じて)
敵の視線が自分を捉える前。小数点以下の時間のせめぎ合いで。
「この心で引き金を引くだけだ」
敵の力を抑えるため、撃つ、撃つ、狙い撃つ!
まるで同時に放たれたかのごとき6発の早撃ちは、バルバロス兄弟の首と目が巡るよりも早くその体、頭、腕を捉えその巨体を大きくのけ反らせた。
「ぐあああああっ!!」
「ハ、ハイレディン!」
ハイレディンの首がその目を抑えて上を仰ぎ、オルチは体の眼窩で弟を案ずるように首をひねる。頭を撃たれて激痛で済んでいるのはさすがだが、ともあれこの場はノビが抑えた。
ノビは最後に近くで震えていた豚を連れ、その場を素早く立ち去るのであった。
大成功
🔵🔵🔵
鈴木・志乃
逆境からの逆転の方が、絵的には映えるんだよねぇ……。
ましてや相手は巨人! その癖素早い! もうこれは一発狙って配信するしかない!(キマフュ脳)
UC発動
(事前に概要欄とかに敵の説明、戦争状況、グリシャン世界について書いとく)
どーも、配信者のブラックです。皆元気してたかな?
相手は強敵の七大海嘯だけど張り切って行くよ
皆応援、よろしく頼むぜ!
オーラ防御展開
第六感で行動を見切り光の鎖で早業武器受け
カウンターで足払い狙って行くよー
高速の多重詠唱も混ぜて、氷結弾を乱れ撃ち!
念動力でこっそり(味方は燃やさない魔法の)油ばらまいて、花火の魔法で爆破連発!
例えどんなに強かろうと、屈するのは死ぬのと同じ!
勝負!!
「逆境からの逆転の方が、絵的には映えるんだよねぇ……ましてや相手は巨人! その癖素早い! もうこれは一発狙って配信するしかない!」
このキマイラフューチャーだった島で、そんなキマフュー脳全開なことを考えるのは鈴木・志乃(ブラック・f12101)。
世界を越えての配信が可能な彼女だが、当然内容は刺激的なほど受けがいい。幹部級オブリビオンとの戦いなどは集客力抜群。とりわけ今回の相手は分かりやすく巨大で悪そうで強そうな、まさに画面映えの権化とも言える見た目をしていた。
そんな敵のざっくりした特徴と、現在の世界の概要をあらかじめキャプションにかける範囲で書いておき、事前告知もばっちりだ。
「兄者、また何か来たぞ!」
「おお、今度こそ抜かるなよ、弟よ!」
まるで撮影に協力するかのように、分かりやすい戦闘開始の台詞を吐くバルバロス兄弟。その体が、自分より矮小な者の存在を許さぬとばかりに圧倒的威圧を持って志乃へと迫った。
「どーも、配信者のブラックです。皆元気してたかな? 相手は強敵の七大海嘯だけど張り切って行くよ。皆応援、よろしく頼むぜ!」
そのバルバロス兄弟ではなく、画面の向こうの視聴者に向けてアピールする志乃。もちろんただの挨拶ではない。【CHIMERA FUTURE】によるパワーアップを狙った、力ある応援への挨拶である。
だが、バルバロス兄弟はそんなもの知ったことではない。その大きさを感じさせぬ軽やかな動きで志乃に迫り、斧にフレイル、槍、剣といくつもの武器が続けざまに志乃へと叩きつけられた。
「うおぉぉ!?」
命中率まで強化されたその攻撃を避け切るのは難しいと判断、『光の鎖』を伸ばして受けるが、斧はそれすら断ち切りそうなほどに重く叩きつけられる。さらにカウンターでの足払いもしようとするが、その巨大な足がとんとんとステップを踏み、それも避けられてしまった。
「流石だな兄者!」
「こう見えても堅実派でなぁ!」
どうやら状況に応じて体の操作権を譲り合っているらしく、今は上半身の攻めを弟のハイレディンが専任し、兄のオルチが下半身を動かし回避に徹しているようだ。
その軽妙な掛け合いに、画面の向こうの視聴者も若干兄弟に好意的なコメントを送り始める。配信の危うい所、それは見ている者にとっては所詮他人事なため、軽い気持ちで敵に応援が行きかねない所だ。
これはまずい、配信者としてこんな脳筋に場を奪われるわけにはいかない。
「見せ場はこっから……ほらよ!」
反撃開始の宣言の間に高速多重に含まれた魔法の詠唱。それは小さな氷の礫を無数に生み出し、バルバロス兄弟を襲った。きらめく礫が巨体に次々と当たり、画面いっぱいにまるでダイヤモンドダストのような輝きが広がる。
これには一転、その美しさに志乃への応援がコメント欄に殺到。それらは志乃に力を与え、次なる攻撃の原動力となった。まあ中には『キラキラ兄弟かわいい』なんてのもあったりするのだが。
次の魔法として、揺らめくたびに色の変わる炎の魔法を手に溜める志乃。その魔法を撃たせまいと、バルバロス兄弟は手ごと踏み潰さんと片足を上げた。
「火はしっかり消さんとなぁ! 喫煙者こそマナーが大事だ!」
「おいおい兄者、昨日から禁煙してたんじゃなかったか?」
本気かどうかは分からないが、とにかく巨大な足が志乃の手に振り下ろされる。だが、志乃はその火をバルバロス兄弟ではなく、相手の周囲に向かって広げた。
「例えどんなに強かろうと、屈するのは死ぬのと同じ! 勝負!!」
放たれた炎は、志乃とバルバロス兄弟の周囲を取り囲み、けたたましい破裂音と共に色とりどりの火をそこら中にまき散らした。
志乃が使った魔法は火ではなく花火。そしてバルバロス兄弟はもちろん、視聴者にさえ黙って念動力でこっそり撒いた油にそれを引火させ、極大の花火をそこに打ち上げた。
画面いっぱいにド派手な花火が撃ちあがり、視聴者の興奮の志乃への応援は最高潮に達する。そしてその応援が、力となってさらに花火を厚く激しく燃え上がらせる好循環となった。
「へへっ! このチャンネルは私のもの、海賊にジャックなんてさせないさ! それでは猟兵配信者のブラックでした!」
燃え上がるバルバロス兄弟をバックに、志乃は配信のシメとした。
成功
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エミリィ・ジゼル
SPDで対応
戦闘開始に即座にサメ子を盾にして、その影に隠れます
わたくしの身長は149cm、対するサメ子は3m。隠れるには十分なサイズです
こうなると退化凝視がサメ子に当たるわけですが…なんということでしょう。サメ子が新生代の巨大鮫「メガロドン」に退化してしまいました。
最大全長は10メートル以上。まさしく海の王者です
もちろんこのままでは陸上での活動は出来ないので、グリードオーシャン最古の魔術体系である鮫魔術を使って改造しましょう。ちょちょいのちょいで水陸両用メガロドンの完成です
あとはUCでメガロドンと化したサメ子に騎乗し、バルバロス兄弟に突撃だー!
太古の鮫の恐ろしさ、とくと味わうがいい
なおも続く、『三つ目』兄弟と猟兵の戦い。次に彼らの前に立つのはエミリィ・ジゼル(かじできないさん・f01678)だ。
「弟よ、ここらで一発きちんと退化を決めたいな」
「すまねぇ兄者。次こそは!」
軽く叱咤する兄オルチと、気合を入れ直す弟ハイレディン。その気合いを表すが如く、ハイレディンの目から『退化』を促す視線がエミリィに向けて放たれた。
その瞬間、エミリィはさあ来いとばかりに自らの愛鮫『サメ子』を盾にするように構えた。エミリィの身長は149cm、対してサメ子の体調は3メートル。全身をすっぽり覆い隠すには十分すぎる大きさだ。これによって退化の視線はエミリィに届くことなく、サメ子のみを睨みつけその全身を視界に捕らえることとなった。
結果、エミリィは退化を免れたが、サメ子はグリードオーシャンのトンデモ鮫とはいえ歴とした生物。視線を受けることで、彼女は見る見るうちに退化を始めた。
さて、進化と聞くとより強く、大きくなるようなイメージがあるが、実際にはそんなことはない。食糧事情の悪化や生態系内での地位低下、惑星規模の環境変化などでよりコンパクトに、省エネルギーに生きていけるよう環境に適応していく。これも立派な進化なのだ。
そしてそう言った進化の道をたどったのは鮫も例外ではない。サメ子は鮫の古代の姿へと退化していった結果……なんということでしょう。サメ子が新生代の巨大鮫「メガロドン」に退化してしまいました。
「うおぉぉ、なんだこりゃあ!?」
「オルキヌスもびっくりだぞおい!」
最大全長は10メートル以上。まさしく海の王者とも呼べる姿に、バルバロス兄弟も思わずびっくりだ。
とはいえ超巨大海洋生物はグリードオーシャンでは珍しくない。気を取り直したバルバロス兄弟は、サメ子を膾にせんがため武器を振り上げる。
「さあ、行きますよサメ子」
そして海洋生物が水上に適応するのも、またグリードオーシャンでは珍しくない。元より武器として連れている鮫なのだ。少し鮫魔術を施してやれば、10メートル級だろうが陸上で活動させられるようにするのは容易い。鮫を水上に上げるなど鮫魔術としては初歩の初歩なのだ。
「やはりメイドはサメに乗ってこそ、みたいなところありますよね」
そのまま【メイド流サメ騎乗術】によってサメ子に乗り、バルバロス兄弟に突撃をかけるエミリィ。
「ぐおぉぉぉぉ!?」
「踏ん張れ、兄者!」
大量の腕でサメ子の突撃を抑え込むバルバロス兄弟。流石のパワーにサメ子の突進も一度は止まるが、何しろ元が超巨大な鮫。横幅も相当に大きく、飲まれないように口を抑え込むのだけでも大変だ。
鮫を抑え込む荒くれ巨人……絵的にはむしろバルバロス兄弟の方が主人公側にも見える。だが、力自慢が鮫に真正面からパワーで挑むと言うのはつまり。
「太古の鮫の恐ろしさ、とくと味わうがいい」
お約束通り力負けし、鮫の恐ろしさを存分に表現する噛ませ犬化する兄弟。食われる事こそ凌いだが、その胴体に強烈な体当たりを受け反対側の壁にめり込まされるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
シャルロット・シフファート
退化は困るわね。
そう言って巨大な盾の形にした【電脳精霊兵装】を用いて視界から逃れると同時に【属性攻撃】で闇属性を使い周囲に闇の帳を落とす。
そうして私の事を視認できないようにして『オルキヌスの瞳』を凌ぐわ。
そして私のUC発動。
来なさい完全なる蒸気獣、属性はセレブラム・オルクス。
顕現するは他の災魔(オブリビオン)の属性を書き換える能力と接敵を避けて隠密能力を高める完全なる蒸気獣。
それに騎乗して隠密状態に入った後、オブリビオンである『三つ目』の『オルキヌスの瞳』の属性を書き換えて無力化。
その後は純粋な戦闘能力に長けたレオの属性の蒸気獣をけしかけて倒すわ。
連続して攻めかかられ、不覚をとったバルバロス兄弟。だがシャルロット・シフファート(ツンデレの国のアリス・f23708)が現れた瞬間、空のはずの眼窩にすら光が宿ったかのように三つ目を輝かせた。
「兄者、あれは!」
「ああ、間違いない……グリモア猟兵だ!」
バルバロス兄弟の真の目的であるグリモア。それを持つ猟兵の登場に、今までとは違う興奮を彼らは隠さない。
「退化は困るわね」
その彼らに、それだけ言ってシャルロットは『電脳精霊兵装』を巨大な盾にして構えた。それによりシャルロットの全身はそのほとんどが盾の影に覆われる。
だが、少しでも足先や肩肘などがはみ出れば、その部位を逃さすハイレディンが注視し、退化を促そうとする。たとえ全身を退化させられなくとも、慣れぬ異形の部位が一つ増えるだけで動きは鈍るし、そこから一気に全体を崩されることも十分あり得るのだ。
それをさせぬとばかりに、盾から黒き属性の力が滲み出した。あふれ出る闇はシャルロットの周囲を覆い、その姿を闇の中に隠す。
見る、と言うのは物を見ることではない。物の反射した光を見ることを言うのだ。故に光を漏らさぬ闇に閉ざされた場所を見ることは出来ず、視線がその向こうへと届くことは決してない。視線を向けるだけで発動する能力と言うのは簡便かつ強力だが、かくも脆いのだ。
「弟よ、その力は意外と抜けが多いのかもしれんな!」
「文句はオルキヌスに言ってくれ、兄者よ!」
武器を構え、肉弾戦に切り替えるバルバロス兄弟。ならばとシャルロットはユーベルコードを持って迎え撃つ。
「卵から孵り、その獣は世界の中心で愛を叫んだ。それは反転にして超越、叛逆にして超克、真我にして超絶の生きる理由成り。来なさい完全なる蒸気獣、属性はセレブラム・オルクス」
シャルロットの呼び声に応え現れるのは、第三の魔王の力を宿した災魔。その背に跨り、シャルロットはバルバロス兄弟へと向かっていく。
捕縛の凝視の力を持つその災魔は、故に『視る』力が苦手とするところを知っている。それは先にシャルロットが撒いた闇に紛れ、バルバロス兄弟の視界から外れる。
「どこ行きやがった、こいつ!」
「弟よ、後ろだ!」
兄の警告に弟が首を巡らせ後ろを睨みつける。だがそこにあるのは、属性を書き換え封じる呪いの目。目と目が合い、力を一時的に封じ込める。
「さあ、後は力勝負よ」
そして次に現れるのは、獅子の姿をした力の権化。
「俺の力が目だけだと思うな!」
正面からそれを迎え撃つ兄弟。異能を求めた兄弟と異能を知った猟兵の戦いは、能力を用いぬ暴力のぶつかり合いとなって双方が疲れ果てるまで続くのであった。
大成功
🔵🔵🔵
シャーロット・クリームアイス
ほしいものを強奪して得ようとは、なんとも原始的ですが……
つまり原始的な手段でお引取りいただいても構わない案件ですね?
■対策
汎用鮫型決戦兵器(アイテム)で応戦します
防御フィールドもありますし、サイズ差の条件を満たさなければ、一瞬で突破されたりはしないでしょう
■反撃
たしかにあなた(たち?)は巨人、ゆえに巨大!
ですが、それはあくまで人間サイズを基準にした評価
規模のちがいを見せてあげましょう(UC)
著大! 堅牢! 高火力!
陸より海のほうが大きい――これが真理ですよ
殺して奪う。シンプルかつ拙劣なその手段こそ海賊の本分と誇るバルバロス兄弟に、シャーロット・クリームアイス(Gleam Eyes・f26268)は冷ややかに言う。
「ほしいものを強奪して得ようとは、なんとも原始的ですが……つまり原始的な手段でお引取りいただいても構わない案件ですね?」
その言葉に、兄弟は共に笑って答えた。
「おうともよ。まあ、それができるんならな!」
自身より小さく弱いものは存在することさえ許さないとばかりに、その巨躯をもってシャーロットに迫る兄弟。その圧倒的な体躯の前に、三分の一にも満たない彼女の体は余りにも頼りなく、すぐに折れてしまいそうにさえ見えた。
バルバロス兄弟の、自身より小さいものを許さぬ力。それに抗する手段として、シャーロットは『汎用鮫型決戦兵器』を彼らの前に突き出した。
防御フィールドを張るそのジャイアントキャバリアは、バルバロス兄弟と比べても引けを取らぬ巨体。故に、小さいものを圧する彼らの力もその前には効果を失っていく。
だが、それでもバルバロス兄弟の力はなお強い。振り回されたフレイルがキャバリアに叩きつけられ、防御フィールド越しにすら甚大なるダメージを与えてくる。巨人の中でも大柄な彼らだ、測り方によってはキャバリアよりもなお巨大と言える体躯を誇っていると言えるのかもしれない。もしそうならば、彼らの力も完全に消えたわけではなく、いずれは圧倒的な破壊力を取り戻すだろう。
「大きいことはいいことだ、なぁ兄者!」
「その通りだ弟よ!」
でかい、それはシンプルに強さを感じさせる要素。だからこそ彼らは力強いパーツを次々と継ぎ足し、己の体を強化してきた。その大きな力を、シャーロットは確かに否定することは出来ない。
「たしかにあなた……たち? は巨人、ゆえに巨大! ですが、それはあくまで人間サイズを基準にした評価」
彼らが巨大であることはまごうことなき事実。だが、それは人間の物差しで測ればの話。とはいえ彼らは巨人基準でも大柄と言える体躯だ。
「規模のちがいを見せてあげましょう」
それさえも超える物差しを。シャーロットは【文明の利器】で呼び出した。リードシクティス・プロブレマティカス。遥か古代に生息していた最大の硬骨魚だ。
その全長は20メートルから40メートル。研究が進むに従い実際はもっと小さいのではという説も出てきたが、それでも16メートルという、魚の範疇にはおおよそ収まらない大きさだ。
「うおお! 何だこの魚は! さっきの鮫よりでけぇぞ!」
驚くバルバロス兄弟に、リードシクティスは一跳ねして詰め寄り、自身よりはるかに『小さい』彼らを圧倒する。
「著大! 堅牢! 高火力!」
シャーロットのその掛け声と共に、その巨大魚からは強烈な熱線が発せられた。
「あ、熱っ! おい待て、いくらなんでも魚が焼いてくるとか聞いたことねぇぞ!」
もちろん本物のリードシクティスはこんな力はない。これはユーベルコードとして持たされた力だが、とかくその巨体から発せられる熱は炙る範囲も広い。それは己よりずっと小さいバルバロス兄弟を焼くには十分すぎる程の面積であった。
抵抗すべく殴り返すが、最早大きさのアドバンテージはなく、その攻撃は反重力のバリアに跳ね返される。
「原始的な力にて、お引き取り願いましょう」
原始ってそっちの意味かよ。兄弟のぼやきは高熱に炙られる喉からかすれ声として僅かに漏れるのであった。
大成功
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高砂・オリフィス
いでよキャバリアーっ! どんだけデカい相手でも、こいつなら組みあえるよ! いざ勝負!!
っていきなり腕とか足とかぶっ壊されてるし! リーチが全然違うしなぁ! やむなしっ
こうなったら全出力を出して突撃! 単純な質量で無理やり押し通る! もとから敏捷性と物理攻撃力に全振りだしね! いわばフライングボディプレスだよ! 頭しかないけど!
怯んだところで爆発する機体から脱出! トドメの迫撃肉弾戦を挑む! 奪われる前にぶっ飛ばす! 体サイズは負けてても気持ちでは負けないからっ! あははっ!
次々と手を変え品を変え攻め来る猟兵に、バルバロス兄弟は幾度となく苦杯をなめてきた。だからもう、目の前に現れた相手がどんな姿をしていようと侮らない。
「弟よ、何かされる前に潰すぞ!」
「おうよ!」
振るわれる数多の武器に、高砂・オリフィス(南の園のなんのその・f24667)は正面から向き合って指を鳴らした。
「いでよキャバリアーっ! どんだけデカい相手でも、こいつなら組みあえるよ! いざ勝負!!」
その呼び声に応えるように、巨大な頭部を想起させるキャバリア『ガオウ』が彼女の元に飛来。オリフィスは素早くそれに搭乗し、兄弟の攻撃を真正面から受け止めた。
だが、凄まじい勢いで振るわれる武器は難なくガオウの四肢を砕き、切断する。
「っていきなり腕とか足とかぶっ壊されてるし! リーチが全然違うしなぁ! やむなしっ」
頭部に似たフォルムということは、ボディ比して手足は少々短い。もともと優れた長い腕を自らに継ぎ、そこに武器まで持ったバルバロス兄弟とは根本的にリーチに差があった。
正面からのぶつかり合いで、先制のダメージを許してしまったオリフィス。だがこれで、普通の戦い方では話にならないということは分かった。
「こうなったら全出力を出して突撃! 単純な質量で無理やり押し通る!」
ならばと取る手段は、出力最大にしてのフライングボディプレス。もっともボディと言っても頭しかないが、その敏捷力と物理攻撃力に特化したマシンを弾丸としてぶつける戦法は、正面からそれを抑え込んだ兄弟の足を思い切り後退させる。
「どうした弟よ! 打ち返せないか!!」
「すまん兄者、思わず掴んじまった!」
極太の足を広げて力強く踏ん張るが、じりじりとその体は後ろに押されていく。そうしてがオウガさらに出力を上げた瞬間、オリフィスはそのコックピットから転がり出た。
「最後はこれだ! プレゼントだよ! かっちりバッチリやっちゃうぞ!」
「なに? うおぉぉぉぉっ!?」
オリフィスの言葉と共に、ガオウの機体が白熱、全長5メートルの巨大な爆弾となってバルバロス兄弟の腕の中で大爆発を起こした。【哦王灰塵撃】にて強化されたキャバリアの力、それをオーバーヒートさせ機体そのものを捨て身の武器とするその攻撃。燃料の火力と機体の破片による傷は深く、バルバロス兄弟の体の前面は無数の火傷と切り傷で覆われる。指物頑健な兄弟も、これはたまらぬとばかりに体を揺らがせた。
「最後はやっぱ体だよ! 奪われる前にぶっ飛ばす!」
その一瞬のスキを突き、オリフィスはバルバロス兄弟に掴みかかった。全身に闘気を滾らせ、文字通り胸を借りると言った勢いでその体に力強く攻撃を加える。
「いい趣味してるな……グリモアを持ってなきゃ俺の配下に誘ってるところだ!」
そのオリフィスを、兄弟は好ましいとばかりに極太の腕で締め上げた。五本腕のベアハッグがオリフィスを抱きしめ、分厚い胸板との間でその体をへし折ろうとする。
「体サイズは負けてても気持ちでは負けないからっ! あははっ!」
背骨が軋む苦境の中、オリフィスはあえて笑い、その腕を力勝負で引きはがしにかかった。
互いに押しての力比べが続くが、やがて両者の体の間に少しの隙間ができる。
「どりゃあ!」
そこに足を入れ、兄弟の腹をオリフィスは思い切り蹴り飛ばした。結果、戒めを解き仰向けに転がるバルバロス兄弟。
「根性はこっちの方がでかかったみたいだね!」
その姿に、オリフィスは胸をどーんと叩いて自分の方が大きいものをアピールするのであった。
成功
🔵🔵🔴
フィランサ・ロセウス
まずは【ドーピング】で脚力や瞬発力を強化、建物やコンコンコンから出てきたアイテムなどの【地形の利用】しつつ、素早く動き回る事で弟くんの目に捕捉されないようにする
上手く死角に入り込めたら、そこから【早業】で「ニンジャ・フックシューター」を巨人目掛けて射出!
巻取りの勢いで飛び上がり、太陽を背にして襲い掛かる
これなら眩しくてこっちをちゃんと見れないよね?
この隙にUCで更に加速して、弟くんに【目潰し】!
さらに駄目押しで【傷口をえぐる】事で確実に【部位破壊】♥
これでもう弟くんは何も見えないねぇ♥
後は勢いのまま壊(あい)してあげるだけ
お兄さんと弟くん、どっちが私の愛を沢山受け止めてくれるかな?楽しみだわ♥
「能力に頼っても駄目、力勝負でも駄目、難しいものだな兄者よ」
「その通りだ。だからこそ戦いは面白い」
劣勢にそう話し合う兄弟の前、フィランサ・ロセウス(危険な好意・f16445)が地面を叩きながら素早く駆け回る。薬物投与で強化した動きは素早く、次々出てくる遮蔽物の関係もあって首の動きだけではハイレディンは彼女を捉えられないでいた。
「弟よ、右は任せろ。お前は左だけ見ていろ!」
「助かる兄者!」
右側の二本の手が動き、出てきた看板などの遮蔽物諸共周囲の床を抉る。フィランサは瞬時に素早くそれを避け逆側へと飛ぶが、そちらにはハイレディンの視線が待ち受けていた。
「貰った!」
「そんなに見つめないでくださいまし❤」
着地地点で睨みつけられる、そう思われた瞬間にはフィランサは身を返し、地を蹴って跳躍、さらに左に飛んだうえで彼の左側腕の下まで一気に滑り込んだ。
「すばしっこいなおい!」
とかく、ここまで回避に徹してきたフィランサは早い。そちらをさらに睨みつけようとするが、極太の二本の腕が邪魔となり、フィランサをしっかりと目の中に捕らえることは出来なかった。
その様子を見て、ここが彼の死角とそう確信するフィランサ。その腕が退く前に、フィランサは『ニンジャ・フックシューター』を素早く射出し、遥か上方にあるその肩口に巻き付けた。
そのまま高速巻取りし、その勢いで空へ舞い上がるフィランサ。それを負ってハイレディンは視線を上に向けるが、その目は強烈すぎる光に焼かれ何も見ることは能わなかった。
「これなら眩しくてこっちをちゃんと見れないよね?」
そう告げるフィランサの後ろにあるのは、冬でもなお眩いグリードオーシャンの太陽。ここに来てまた、ハイレディンは『視る』ということの弱さを突かれることとなった。
日輪を背負ったフィランサが指をぱちんとならす。その瞬間、逆光となっていた彼女の姿が掻き消え、代わりに太い注射針がハイレディンの目に突き立てられた。
「ぬおぉぉぉぉっ!」
顔をしかめ瞼を半ば閉じていた故、瞳への直撃は避けられた。だが、【クロックアップ・スピード】にて高速戦闘モードとなったフィランサは容赦なく、一度張りの刺さった場所をぐりぐりと抉り中身をかき出そうとする。
「これでもう弟くんは何も見えないねぇ♥」
目を抑えるハイレディンに心底愛おしそうにそう言うフィランサは、さらにもう一人の男も『愛』すべく右側に回り込む。
「後は勢いのまま壊(あい)してあげるだけ。お兄さんと弟くん、どっちが私の愛を沢山受け止めてくれるかな? 楽しみだわ♥」
そう言って抉るのは、彼がグリモアを入れようと空けていた空の眼窩。注射針がその虚ろをかき回し、たっぷりの愛を注ぎ込む。
「弟よ! この女はお前に譲る!」
「そりゃないぜ兄者! 俺にだって選ぶ権利がある!」
半ば冗談、半ば本気の押し付け合いを始める兄弟に、フィランサは困ったように言う。
「そんなに求められたら困っちゃうわ♥それじゃあ愛で溺れるまで注いであげるから♥」
求めてくれるなら最大級の愛を。殺と愛を取り違えた女は、自分ができ得る最大の愛を仲良し兄弟に供するのであった。
大成功
🔵🔵🔵
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
確かに危険な方ですねぇ。
島内なら飛行は可能、『FBS』を四肢に嵌め飛行し、三つ目さんとの間に『FMS』のバリアを板状に複数枚形成しますねぇ。
三つ目さんに飛行能力は有るか不明、仮に有っても『其方側』にバリアを移せば突破は必須となりますぅ。
『四腕の武器』で破るにもタイムラグが発生する以上、その間に距離を取れば回避可能でしょう。
そして【処檻】を使用、三つ目さんを『超重力の檻』と『棘』で捕えますねぇ。
『海賊団頭目=部下との会話有り』『極めて強力な個体』『重力の影響を受け易い巨体』となれば、【処檻】の力は十全に発揮出来ますぅ。
後は動きを止めている間に『F●S』の集中砲火ですねぇ。
「おい兄者ぁ……ありゃねぇぜ」
「すまんな弟よ……今度一発奢るから勘弁してくれ」
大きく息をつきながら言う兄弟。ハイレディンの目は、あれほど抉られたにもかかわらず既に元に戻りかけている。その圧倒的な生命力と、この状況でも軽口をたたき合える肝の太さと絆の強さ。この兄弟を強者たらしめるそれらの要素に、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は彼らが恐るべき敵であることを改めて確認した。
「確かに危険な方ですねぇ」
それだけ言うと、るこるは戦輪『FBS』を四肢にはめて浮かび上がった。だが、それを制するかのように素早く振るわれる多腕からの連撃。るこるはさらに円盤型バリア発生装置『FMS』を自身の兄弟の間に置き、その攻撃を受け止めんとした。
「ぬぅん!」
そのバリアに、兄弟たちの攻撃が叩きつけられる。一撃、二撃、それごとにバリアは砕け、円盤が押し返されていく。ただ目の前にある邪魔なものをぶん殴るというシンプル極まりない行動だが、ユーベルコードの域にまで達したその攻撃は、神器であるはずのFMSを軽々と破壊していった。
瞬く間の四発で半数近くを撃墜されたFMS。だが、残りを壊そうと再度四腕を兄弟が振り上げた時、るこるは既に彼らの間合いの外へと離脱していた。
四腕だからこそ互いが邪魔になり生じる僅かなタイムラグ。一撃で一つを犠牲としても二巡目まで持ちこたえられるFMSの数。それら全てを積み重ねることで、るこるは彼らの先制を外すことに成功したのだ。
そして一度外せば今度はこちらの番。
「大いなる豊饒の女神の名に於いて、仇なす者達に厳格なる裁きを」
るこるは【豊乳女神の加護・処檻】にて乳白色の波動を放ち、バルバロス兄弟をその中に閉じ込めた。その中は重力の棘で相手を捉える超空間。その空間に捕らわれた者は強ければ強いほど、そして仲間との会話が多いほどにその体を棘に貫かれていく。
「ぬおぉぉ……重い!」
「どういう原理だ……まあ、考えても分からんか!」
全身を棘に貫かれながらも、兄弟の膝は地につかない。それは彼らが強いから。そして愚かではなく、それでいて余計な思考に囚われるくらいなら力で打破することを好む剛毅なる性質であるから。己で己の強さを跳ね返すかの如く、兄弟はその檻から抜け出そうと一歩足を踏み出した。
「要素は十分あるはずなのにその強さ、感服いたしますけど……残念ながらぁ」
その檻の中に兄弟を押し戻すべく、『FRS』『FSS』の二種の兵装が集中砲火を浴びせた。多くの配下を抱え、圧倒的な巨体を持ち、個の力は七大海嘯に列するものとして恥じないレベルと強いものほど嵌め殺せる【処檻】にとっては恰好の餌のはず。
それでも力だけで前に進んでくるその姿に、これが最大限の敬意だとばかりに砲の雨が降り注ぐ。
「ぐはは……弟よ、そう言えば体を洗っていなかったな?」
「そうだな兄者……シャワー代わりに使わせてもらうか」
あくまで軽口はやめない兄弟。だが、その太い両膝はがくりと落ち、地についた。生命力を削られてなお、笑い進むことをやめない巨人たち。その巨人の姿勢にるこるが何を感じるか、脳波の指令を受け撃ち続ける砲台たちは語りはしなかった。
大成功
🔵🔵🔵
ジェイク・リー
※アリス、エルーゼと行動
アドリブ・その他OK
残像と忍び足、迷彩を用いて対抗。残像に気を取られたら地形の利用とグラップルで背後から組付けたら目潰しを狙う。
ホークムーンに魔力を込め、邪魔になる弟から始末して動きやすくする。
「目も腕も二つありゃいいだろ」
ヤマトとグリムを呼び出し、さらに攻める。機械音声ではなくなっている。
「さあ、悪夢を見せよう!」
白髪になると同時に首のない粘土状のゴーレムを召喚、打撃や爆発するレーザーを薙ぎ払ったりさせる。
十束刃を槍から長剣、閻羅刀との二刀流による連撃という流れで攻める。
アリス・スラクシナ
※エルーゼ、ジェイクと行動
アドリブ・その他OK
ジェイクが目を潰せたら今度はこちらが動く。
複数の腕は厄介だが、こちらは連携の強みで攻める。
リージョンをグレネードランチャーに形成。弾薬は特殊なものだ。
弾を当てたらすぐに下がる。
「図体ばかりでかくては動きは鈍いようだ」
こちらに誘い込む。属性攻撃による電撃を食らわせる。
点と線を結ぶ、つまりあいつに当てたの以外に地面や物に撃ち込んだ弾とあいつに撃ち込んだ弾が連動してさらに強力な電撃を食らわせる。
切れたら弾は爆発するが、倒れなければ二人が何とかするらしい。
エルーゼ・フーシェン
※アリス、ジェイクと行動
アドリブ・その他OK
まったく、こんなにした以上は倒さないと。
ダンスの要領と見切りを組み合わせ、野生の勘で大きいのは何とかできるかも。
あの偽精霊の時に形成できた長剣をまた形成できるなんて。
相手の懐にダッシュと滑空で飛び込んで一撃叩き込めればそのまま吹き飛ばして追い撃ちに。
両手で持って一気にUCの一撃を繰り出す。
圧倒的な巨体とそれに見合う筋力。そして『退化』の瞳を持つ七大海嘯『三つ目』ことバルバロス兄弟。互いに協力し、己の最後のパーツとしてグリモアを得んとしてきた彼らだが、その強靭な体もついに限界を迎えていた。
「こいつは参ったな兄者よ。一つでも猟兵の体を奪えていればまた違ったのだろうが……」
「出来なかったことを悔いても仕方がないぞ弟よ。俺たちの後ろに宝はない。宝とは常に前にあるのだ……見ろ!」
その声にハイレディンの視線が前方を注視する。そこには一見何もないが、よく見れば周囲の景色に紛れるように、自身の色さえ塗り替えて進む男が一人。姿を消し、音もなく、先制の一撃を誘発させぬようギリギリまで近づこうと進んでいたジェイク・リー(嵐を齎す者・f24231)の姿が確かにそこにあった。
如何に上手い迷彩とはいえ、そこに何かがいるという前提で注視すれば違和感は感じ取れるもの。目が自分に向いた、そう感じたジェイクはとっさにその場から動こうとした。そのジェイクを逃さぬとばかりに、ハイレディンの視線が射貫く。
「お前は人間か? ならば猿にでも……」
「まて弟よ、様子がおかしい!」
瞳を輝かせるハイレディンを、オルチが制する。ハイレディンが力のない方の目を大きく見開くと、そのジェイクの姿が揺らいで消えた。
「見たけりゃこっちだ」
それと同時に、敵の左側からジェイクの声が聞こえる。思わず二人がそちらを同時に向くと、ジェイクの構えた『ムーンホーク』が火を噴きハイレディンの目をふきとばした。
「ぬおおおおおおっ!」
「弟よ! ……やるな! 我らの三つの目を全て騙すとは!」
血を流す目を抑えるハイレディン。その出血量は到底かすり傷などから出る量ではない。彼らの生命力は驚嘆の一言だが、これで少なくともこの交戦の間くらいは再生も追いつかず、最早退化の力は使うこともできないだろう。
「複数の腕は厄介だが、こちらは連携の強みで攻める」
目を潰したのを合図として、次はアリス・スラクシナ(邪神の仔・f21329)が攻めかかった。『リージョン』をグレネードランチャーに変え、それでまずは一撃を撃ち込まんとした。
「おっと、そいつは怖そうだなぁ!」
左の手が大きく横ぶりにされ、その弾を撃ち返すように槍を薙ぐ。柄に弾丸が当たった瞬間大きな音が鳴るが、分厚い腕の筋肉が衝撃を抑え込み、その体制は崩れることはなかった。
「まったく、こんなにした以上は倒さないと」
それと同時にエルーゼ・フーシェン(踊り子・f13445)も踊るような動きで切りかかるが、そちらは右手のフレイルによる打ち下ろしが阻む。
「そっちもいいものを持ってるじゃねぇか!」
その軌道を身を引いて躱し、くるりと回るエルーゼ。だが、柄の動きこそ躱せたが、鎖に振り回されワンテンポ遅れる形で襲い来る鉄球の方の軌道に捕らえられ、その動きが一度止まる。
「くっ……!」
警戒はしていたが、やはり四本腕をユーベルコードとして振り回す勢いは凄まじい。一度先制を防がれても別の相手にはなおも先制を取るその動きに、エルーゼとアリスの攻めかかりは一度は止められてしまった。
「だが、まだまだ……!」
それでもアリスはなお、もう一撃のグレネードを撃つ。だが、それもすっと動いた兄弟にあっさり躱され、地面に着弾するにとどまった。
「生憎だなぁ、こっちは色々ついてる分ちょっとばかし器用なんだよ!」
そう言って、とどめを刺さんと武器を振り上げる兄弟。だが、その動きは割り込んだ別のものが遮った。
「目も腕も二つありゃいいだろ」
そう言って、腕を抑え込むのは3メートルの巨人と黒いローブの魔術師。巨人ヤマトが腕にしがみついて折るようにひん曲げ、魔術師グリムは足元の土に魔力をかける。
「さあ、悪夢を見せよう!」
思いのほか通る……今までの彼とはまるで違う声でそう言うと、その髪が白髪になると同時に首のない粘土状のゴーレムを召喚、ゴーレムたちが打撃のみならずレーザーさえも当ててバルバロス兄弟を爆破させた。
「ぬおぉ!? また増えやがったか!」
「この男は手強いぞ兄者!」
ジェイクの召喚術による攻撃に一瞬怯む兄弟。だが、まるで敵はジェイクのみと言わんばかりのその言い草に、アリスは苛立ちを覚え言った。
「図体ばかりでかくては動きは鈍いようだ」
初手を制したくらいで調子に乗るな。そう言わんばかりに、アリスはリージョンを操作。すると柄に突き刺さったものと地面のもの、二つの弾丸が光りその間を繋ぐ用に電光の帯が走った。
点と点を結んだ線がバルバロス兄弟を貫き、最後には弾自体が爆発して大きなダメージを与える。
「後は任せて。またこの剣を作れるなんてね」
その怯みを突くように、宝石の嵌った片刃の西洋剣という一風変わった形の剣を振るい切りかかるエルーゼ。かつてある精霊術士の力を借りて作ったそれを単独で作りだせたことに驚きつつ、それを両手持ちにして空中からの振り下ろして一気に地形を破壊するほどの一撃を叩きつけた。
体勢を崩していた兄弟は完全にダウン、その巨体が転倒し、仰向けに倒れた。
最後はそこから離れたヤマトとグリムの間を縫い、『十束刃』と『閻羅刀』の二刀流で構えたジェイクが迫る。
「わはは、抜かったな兄者!」
「全くだ弟よ! 猟兵よ、宣言しておく……俺たちの首は必ず俺たちが取り返すぞ! このままで済むと思うな!」
最後まで笑う二つの首を、ジェイクの連撃が跳ね飛ばした。二つの首が宙を舞って地に落ちるとともに、それは巨大な胴体共々消滅し、周囲から突然人の気配が多数湧き出てくる。恐らくは退化させられていたキマイラたちが元に戻ったのだろう。
「負け惜しみ言っちゃって……と言いたいけど」
「奴らにとって一度首を取られるなど大したことではない、ということか」
七大海嘯は本拠地を突き止めそこを陥落させない限り、何度倒そうとすぐ蘇ってくる。ではこの勝利もまた一時の気休めに過ぎないのか。
「……話を聞きに戻るぞ」
否。この島もまた探索の足掛かりの一つになる。海の一つに猟兵の旗が立つことで、真の勝利にまた一歩近づくのだ。
そして帰還した彼らに一つの報がもたらされる。『三つ目』の本拠地が発見されたと――。
成功
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