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羅針盤戦争~咲き誇る兎ところにより雛

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #七大海嘯 #カルロス・グリード #オブリビオン・フォーミュラ #ID_サーベル

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 MUI MUI!
 PIYO PIYO!!

 オブリビオン・フォーミュラ『カルロス・グリード』の分身体は洗礼を受けていた。
 この島の住民は、海の怪物たるコンキスタドールを恐れない。
 背中から生える不気味な触手をも、知ったことかと集団で群がり抗議の声を上げる。

 その気になれば一振りで払い飛ばせるだろう、あまりに無力な島の民。
 しかしだからそれゆえ、深層心理で無性に庇護欲を掻き立てるのかもしれない。

『三の王笏』たる彼は涼しい顔を崩さない。
 足元にまとわりつく毛玉どもが、去れと示す方向へ歩を進める。

 そう、すり足で。


「地面からウサギが生えてて、住民はヒヨコときたもんだ。狂った島だぜ、まったく」
 グリモアベースにて仲佐・衣吹(多重人格者のマジックナイト・f02831)が戦地に赴く猟兵達へと情報を与える。
 恐らくアリスラビリンスから落ちて来たものだろう、と語る表情は若干あきれ顔だ。

「この王笏が降りちまったのは、限りなくウサギっぽい植物が生える、見渡すほどデカイ畑の真ん中。で、ヒヨコはそれを世話する農家ってトコロだな。コイツが畑をでるまで待ってもイイんだが――この状況、チャンスでもあるんだぜ?」
 獰猛な笑みへと変ずるは戦闘狂の性格ゆえか。
 目を細めながら、グリモア猟兵は不敵に語り出す。

「なんか知らねーがコイツ、島に降りてからずっとすり足で移動してるらしい」
 踏まないようにしてるんじゃないかな?
「戦闘になってもあまり移動しないで邪神召喚で攻撃してくる。狙いがつけやすいぜ」
 踏まないようにしてるんだと思うよ。
「それで勝てるってタカをくくってるんだろうよ。その慢心、たたきつぶしてやろうぜ」
 だ か ら、ウサギとヒヨコを踏まないようにしてるんだよ!!

 もっとも、コンキスタドールは全てを蹂躙し殺戮する者。
 追い詰められれば無意識の慈悲など、簡単に吹き飛んでしまうだろうが。

 なお、転送ゲートはできるだけ近くに開けておいたと衣吹は言う。
 つまり猟兵も、か弱き作物と島民に囲まれる畑の上へ降りなければいけない。
 この男、無慈悲である。

「カタストロフが起きちまえば島どころか世界ごと滅亡しちまうからな。サッサと倒して最小限の被害で終わらせちまおうぜ」
 猟兵の領域とするからには、島民とも友好に接しておきたい。
 特殊な戦場となるかの島での戦法を思案しながら、猟兵は潮風の香りに包まれる。


小風
 小風(こかぜ)です。
 25作目はグリードオーシャンにて『三の王笏』の襲撃です。
 よろしくお願いします。
=============================
 プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。
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 また、シナリオのクリア数が必要とのことで、早急完結を目指します。
 採用人数は成功値の高い方から4~6人くらいになると思います。
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第1章 ボス戦 『七大海嘯『三の王笏』カルロス・グリード』

POW   :    邪神「暴食せしもの」
【無数の大口を持つ邪神による噛みつき】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    邪神「虚空を睨むもの」
【巨大眼球型邪神の視線による感染呪詛】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    邪神「謎を喰らうもの」
【疑問】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【触手塊型邪神】から、高命中力の【謎を喰らう触手】を飛ばす。

イラスト:hoi

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

中村・裕美
「……うっわ……色々と邪魔そうな……戦場ね」
うさぎとかひよことか見てそんな感想しか出ないあたり色々と終わっているかも知れない

まずは距離をとって相手の攻撃を槍の【武器受け】や電脳魔術の【残像】で凌ぎつつ反撃を伺う

「……何はともあれ……さっさと……終わらせる」
UCで魔竜に変身し、敵に襲いかかる。その際、【ブレス攻撃】で周囲のひよこやうさぎを電子データ化させる。見た感じ消滅したように見える?
そのまま、ブレスで敵の肉体の一部を電子化させて噛み付く口を減らしつつ、爪による【早業】の【切断】攻撃で斬り刻む

戦闘が終わって理性を取り戻したら、【封印を解く】で電子化したひよこやうさぎを元の状態に戻してゆく。



 この島の特産物と思しきウサギが生えた盛り土の"うね"。
 その農民たるヒヨコの体躯に合わせたのだろう、とても細い"あぜ"。
 艶めく靴の底で自分の軌跡を残しながら進むのは『三の王笏』カルロス・グリード。
 妙な歩き方なのは、足元にまとわりつく小動物をわざわざ踏んで歩きたくない為、とは微動だにしない表情が語るよう。

「……うっわ……色々と邪魔そうな……戦場ね」
 同様の感想を抱き、終わっているかも知れないと独り言ちるのは猟兵がひとり中村・裕美(捻じくれクラッカー・f01705)。
『岩場だからといって、わざわざ平地に舗装しながら歩く者もそういないだろう』
 距離をとって近付いていたはずだが、気付かれた上に返事までかえってきた。
 なぜならば――。

 PIYO PIYO PIYO PIYO PIYO PIYO PIYO PIYO PIYO PIYO!!
 MUI MUI MUI MUI MUI MUI MUI MUI MUI MUI!!

 新たな侵入者に向かって、周りのヒヨコとウサギが大合唱しているからだ。
 なお、独り言を聞き取ったのは、カルロスの方がこの場に耳が慣れていた為だ。
 地元民ならほぼ無音に聞こえるという、田舎の田んぼのカエル現象である。

「……何はともあれ……さっさと……終わらせる」
『その願い、叶えよう』
 瞬時に背中の触手が不気味な円を作り、召喚されるは邪神"暴食せしもの"。
 鋭い刃がぐるりと生えた無数の大口が、裕美を噛み千切ろうと迫り来る。
「……くっ」
 十分なリーチをとり視界を広く、相手の攻撃を見定めた電脳魔術士の姿がノイズをまとって揺れる、消える、槍を撃ちつける音と共に現れる。
 邪神の力及ばない電子の異世界から力を引き出しながら、その猛攻に耐える。

『それで防いでいるつもりか。長くはもつまい』
 円陣を描く触手がぞろりと動き、更なる効果を加えて畳みかけに来る。
 しかしそれで良い。
 相手が喋る、攻撃の手を変える――そのわずかな隙が欲しかった。

「……全てを1と0の世界へ……目覚めなさい……滅びの竜」
 刹那、裕美の姿が膨れ上がり、発動するはユーベルコード魔竜転身(コード・ドラグナー)。
 即座に吐き出したのは電子の力宿るブレス。
 対象を0と1の電子データ化する恐るべきそれ。
 魔流に変化した裕美が着地した時にはもう、ヒヨコもウサギも大口開ける邪神も、電脳の海へ航海に出た後だった。

『!?』
 あれだけ邪魔だった島の地表が消滅し、平地のようになっている。
 電子化を免れたカルロスだったが、彼はこの地に慣れ過ぎた。
 目の前に信じられない速度で魔竜の爪が迫っていても、自身が即座に動くという判断が遅れる。

 大重量の巨大な爪にかき切られ、やっと大きく飛び退きその場を離れるカルロス。
 確かな手応えにユーベルコードを解除し、己の手で電脳世界から島の民を元に戻してゆく裕美。
 何が起こったか分からないと言うように首を傾げたヒヨコとウサギ達が、守られたことも知らず、再び目の前の侵入者に抗議の鳴き声を上げる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロク・ザイオン
(森番は新芽を愛する
柔らかくか弱きひよこも、芽吹く新しきウサギも大変好ましいが)
…お前も、好きか、かわいいの。(疑問)

あっ。

(確実にこちらを狙う触手だと言うのなら
閃煌、雷華二刀【早業】の【薙ぎ払い】で迎え撃ち)
逃すものか。
(返す刀を突き付け「LIGHTNING」
一足飛びに【ジャンプ】ひよことウサギを踏まぬように本体に迫り叩き斬る
ひよことウサギを踏まぬように
ひよことウサギを踏まぬように!)

………ウサギはともかく
ひよこは逃げてくれないだろうか…
だめか。
そうか。
……農家さんは、えらいな……



 ――ガッ!
 先の猟兵との攻防から、大きく宙を跳んできた『三の王笏』カルロス・グリード。
 ただの着地ではない。
 背中に蠢く触手をわざわざ伸ばして刺した後、慎重に本体を地面に降ろしていたのだ。

『……無駄だ、出て来い。この地で隠れられるはずもないだろう』
 その様子を終始見ており、今呼ばれたのはロク・ザイオン(変遷の灯・f01377)。
 敵の目の前にわざわざ飛び出る猟兵ばかりではないはずだが、なぜ居場所が分かったかといえば。

 MUI MUI MUI MUI MUI MUI MUI MUI MUI MUI!!
 PIYO PIYO PIYO PIYO PIYO PIYO PIYO PIYO PIYO PIYO!!

 まず間違いなく、この周りで騒いでいる作物ウサギと農家ヒヨコ達のせいだ。
 仕方なく身構えながら、それでいて少し窺うようにしながら、ロクは前に出る。

 ――自称・森番のロクは新芽を愛する。柔らかくか弱きひよこも、芽吹く新しきウサギも大変好ましいが。
「……お前も、好きか、かわいいの。……あっ」
 問いかけられる前に、その光景に自ら疑問の感情を抱いてしまった。
 その言葉にやや目を見開いたカルロスだったが、反して攻撃の手は早かった。
 接地面を小さくしようとした着地の時とは異なる、太く禍々しい表皮を持つ触手が新たに呼び出され、キマイラの胸に抱かれた謎めがけ矢のように鋭く放たれる。

 しかし自分から疑問を抱き、それに気付いたロクも早い。
 触手の到達と閃煌、雷華二刀の抜刀はほぼ同時。
 早業で加速させた身のこなしにより最初の触手を薙ぎ払って反らせる。

「逃すものか」
 同時に一刀の切っ先を向け発動させるユーベルコード"LIGHTNING"(ライトニング)。
 刃が熱を帯びるに合わせ、超高速で走り出す。

「(ひよことウサギを踏まぬように。ひよことウサギを踏まぬように!)」
 束の間確保される足場を力強く踏み込み、一足飛びでカルロスのもとへ迫ろうと畑を見渡すキマイラの森番。
「……ウサギはともかく、ひよこは逃げてくれないだろうか……」
 気迫と生み出される風圧でロクから離れるように転がってゆくヒヨコもいたが、植物らしくその場を動けないウサギをかばおうと、覆い被さって震えるヒヨコもそこかしこに見えた。

「だめか。そうか。……農家さんは、えらいな……」
 ならば、自分が踏まなければ良いだけだ。
 踏んではいけない場所を見極めたロクが、不規則な軌道を描いてカルロスに迫る。
 結果、相手の予測から外れた動きになったのだろう。
 狙い澄ましたはずの触手の攻撃は森番の脇をすり抜け、閃煌・烙の灼熱の刃が三の王笏の分身体を焼き斬る。

『ぐっ!!』
 カルロス・グリードに確かな一撃を加えたことを感じ取り、疾走の勢い殺さぬままその場を離れるロク・ザイオン。
『……教えようか猟兵よ。この地をむやみに荒らさないのは……お前達も行動に大きな制限を受けるからだ』
 今回はそれが裏目に出てしまったのだが。
 斬られた傷口を握って血を払う。
 七大海嘯『王笏』の目は、幾分鋭くなっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

終夜・日明
【アドリブ連携歓迎】
……《蠱毒》で望まずとも【恐怖を与える】結果がこうも功を奏するとは夢にも思いませんでしたね。
僕の側にいるうさぎとひよこの皆さんが逃げていきました。

さて、呪詛ですか……僕の【呪詛耐性】は心もとないですし、なるべくなら奴の視線の向きを【見切り】回避したいところです。
最悪当たったら【継戦能力】で無理やり耐えます。
戦闘が始まれば相手の側にいる住民も逃げ出すでしょうので、凌いだ後頃合いを見て【指定UC】。
住民に被害が及ばないようオルトロスで視界を遮りながら【砲撃】することで【おびき寄せ】つつ、【地形破壊】での動きの抑制も兼ねて【制圧射撃・乱れ撃ち】で敵の体力を削っていきましょう。



 MUI MUI MUI Mu...
 PIYO PIYO Pi...

 ふと、島の住民たるウサギとヒヨコの声が鳴り止む。
 白い綿毛は長い耳を倒して自ら土を被り始め、黄色い綿毛は左右のうねへ隠れるように走り去ってゆく。
 あれだけの戦場の中でも懲りずに抗議の鳴き声を上げ続けていた図太い奴らなのに。
 そんな妙な芸当ができるものはこの場において、コンキスタドールの王たるカルロス・グリードを除けば――世界を渡る埒外者に他ならない。

「……僕の《蠱毒》がこうも功を奏するとは夢にも思いませんでしたね」
 ヒヨコ達を悠々と退けて走り追いついたのは終夜・日明(終わりの夜明けの先導者・f28722)。
 生まれ持った《生存本能を刺激し恐怖させる特効》が優位に働き、畑の侵入者を排除しようと群がる彼らの邪魔を受けずに来れたのだ。
 ただ植物らしくその場を動けないウサギと、彼らを心配してか側にいるヒヨコはいた。
 足を止めた日明に驚き、ウサギは震える目で見つめてくる。
 静まり返った戦場に、ヒヨコの眼差しがチクチクと刺さる。

「うぅ……視線が痛いです」
『我は静かすぎて耳が痛い……嫌な慣れだ』
 自嘲するように呟いたカルロスの背負う細い触手がヌルヌルと蠢き、空中に編み上げるは不気味な魔法陣の文様。
『視線に痛みを感じるならば、この邪神はさぞや効くだろう』
 虚空を破って出現するおぞましい巨大眼球が、明確な殺意を以って日明を睨みつける。

「うっ!」
 放たれた呪詛を僅かに耐性でこらえ、直視しないよう目を逸らしながら畑の中を走る。
 じわじわと内側から侵食してくる呪いの力を感じて、継戦の技能を駆使するとだましだまし体を動かす。
 空中から放たれる邪神の視線で次々と土が弾け飛ぶ様子を見て、いよいよやっとヤバイと思ったのか。農家ヒヨコは一目散に逃げて、作物ウサギは自ら周囲の土を寄せて被って耳先しか出ていない。
 ――つまり、準備は整った。

「メインタームアクセス、システムリンク、モードアクティブ――来い、オルトロス!」
 天へ向かって詠唱し、発動するはユーベルコードCC:【Code-Week】[ORTHRUS](コーリングキャバリア・コードウィーク・オルトロス)。
 遠隔操作で呼び出した黒い騎士型の5M級キャバリアが、ウサギ畑へズシンと降り立つ。
 ……安心して下さい。あぜ道につま先立ちです!

 新手の出現に一層強い視線を射る邪神だが、日明は未搭乗。機体であるクロムキャバリアに呪詛が効くはずもない。
「人々……うさぎとひよこの日常を脅かす者は、誰であろうと容赦はしない」
 乱れ撃ちされる対キャバリア戦用の武器CW-MkⅢ:MU-Sickleの威力は巨大眼球型邪神にも申し分ない威力を発揮し、ビームの光がその巨体を容赦なく穿ってゆく。
 触手で繋がれたカルロスも邪神の後退と共に次第に押されてゆき。
 最後の一撃で禍々しい眼球が消し飛ぶと同時に、彼方へ弾かれていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
畑は!畑は流石に可哀想なので…!
★靴に風魔法を宿しておいて常に【空中浮遊】しとくね…
可愛い子と自然に優しいつゆりんです
もふもふしたいけど我慢だ我慢…

疑問さえ抱かなきゃ敵の技って発動しないよね
発動しちゃった場合も【オーラ防御】しつつ
【高速詠唱】から打つ氷魔法の【属性攻撃】で迎え撃ち
触手を凍結相殺狙い
危ない時は【空中戦】でくるっと回避

カルロスさん…ある意味では同士かもね
だからちょっとだけ敬意を表して…華やかにいくよ!

【破魔】を宿した光魔法で実態の無い攻撃と目眩し
邪神使いに破魔は痛いでしょ
その隙に宙を蹴り一瞬でも良い、背後を取り
追尾式の【指定UC】で花弁による斬撃を仕掛ける
狙った場所は外さないよ



 邪神の消滅と共に弾き飛ばされた『三の王笏』カルロス・グリード。
 先は触手にて衝撃を和らげる着地も出来たが、幾度も激戦を経た今はそうもいかない。
 常の戦場と同じく、それにしては十分な、足を踏み出し地面を滑るようにして受けた威力を逃がしながら体勢を立て直した。

 PIYO PIYO PIYO PIYO PI!!!!
 MUI... MUI...

 慌ただしい鳴き声に振り向けば、どうやら作物ウサギの植えられたうねに突っ込み掘り返してしまったらしい。
 涙目で駆け付けた後、睨みつけてくる農家ヒヨコに、苦い顔を向けるカルロス。

「カルロスさん……ある意味では同士かもね」
 静かに響くその声にハッとして振り返るカルロス。
 この地では侵入者はもれなく鳥と獣の鳴き声に囲まれるはずなのに。
 視線の先で後方のウサギとヒヨコを気遣わし気に見つめるのは栗花落・澪(泡沫の花・f03165)。
 周りが妙に静かだったのはウサギの頭より高く、その身を空中へ留めているおかげと思われる。靴の輝きに、僅かに風の魔法を感じる。

「もふもふしたいけど、その子が治るまで我慢だ我慢……可愛い子と自然に優しいつゆりんです」
『邪魔この上ない島民だが、猟兵の行動を乱すには優秀であったゆえ生かしておいただけだ。お前と私の心情は違う』
 ふと、今の会話は答えなければ疑問に繋げられたなと気付くカルロス。
 好機を逃したのは疲労が蓄積している為だと、小さく唇を噛む。図星の動揺ではない。

『…………では訊くが、このウサギは何故鳴いて意思表示もできるのに歩けぬ。独り立ちしているこれはヒヨコと呼べるのか?』
「えっ!? えーっと……」
 突然の話題をぶった切っての質問。鮮やかではないが至近距離に標的がいる今がその時。ザラザラと毛羽だった数多の触手が、澪を捉えようと包囲する。
「――あ! アリスラビリンスだからだよ!!」
 レベルカンスト猟兵、および立派な上位賞金首であるオラトリオの最適解!
 そうだよ、どう見たって彼ら"愉快な仲間"だもの!
 もっと根源に関わる解答が欲しい? ゲーム終了後に上様にでも訊いてくれ!!

 謎という目標物を失った触手の動きが鈍った隙を突き、オーラ防御を盾に、高速詠唱からの氷属性攻撃の相殺と、技能盛り沢山でかわしてゆく澪。
 小さく悲鳴を上げながらも、動きのキレがいつも以上に良い。触手に対する嫌悪で無意識ながら限界突破状態。フォーミュラー相手に対等以上の動きを披露してくれています!

『――ちっ!』
 冷たくガチリと固まり、動かぬ氷の像となった触手群。それを背に負うカルロスの動きも、鈍るは当然。
 破魔を乗せた光魔法で目眩しわ掛けられれば追うことも叶わず。
 目の前から舞い上がるように、間合いにいたはずの澪の姿が、届かぬ空へと消える。

「否定してるけれど、やっぱりすごく似てる気持ちだと思うよ。だからちょっとだけ敬意を表して……華やかにいくよ!」
 背面に降り立ち、香り高く舞い遊べと唱えるはユーベルコードOrage de fleurs(オラージュ・ドゥ・フレア)。
 幾度もカルロスを撫で切るは、冬に鮮やかに咲く黄色い花・蝋梅。その花言葉は――"慈しみ"。

『……どうとでも語れ、それも勝者の特権だ』
 今も全身を切り刻まれても、『三の王笏』カルロス・グリードの分身体は膝をつかない。それは王たるものの意地か、それとも。
 ふと、千切れゆく体の行く先を見れば、丁寧に作物ウサギを植え直す農家ヒヨコの姿があって。
『奪い侵略し搾取するのが我らコンキスタドール……だがこの小さく矮小な島は……』

 ――このまま欲しかったな。

 蝋の花弁が、言の葉を乗せて舞い落ちる。
 王の一人たる彼には、許されなかった言葉なのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月09日


挿絵イラスト