羅針盤戦争〜豆舞う島に鬼来たる
●鬼来たる
『王の島までもが戦場に……まさか、こんなにも早く進軍してこようとは』
多彩かつ強大な力を持つカルロス王、その拠点までもが次々と発見され、戦場となっている。
『よもや王が倒れる事は無いだろうが』
この戦争は、この世界の在り方を大きく変えてゆくのだろう。
変化の中心にあるのが、猟兵という存在だ。
『そなたらは何者なのか。何を想い、何の為に戦うのか。その実体を、この目でこの手で確かめねばならぬ』
故に我も戦場へ。
『来たれよ、猟兵。その力見定めてやろうぞ!』
●豆舞う島
桜の花舞うとある島の一角に、現れたのは一体の鬼。
海風に漆黒の髪を靡かせ、穏やかに、されど厳しく勧告する。
『という事で海賊どもよ、この島はこれより戦場となる。今の内に投降せよ、さすれば命までは取ら……』
「いきなりやってきて投降しろだって? そんなの真っ平ごめんだぜ!」
船長だろうか、海賊らしい帽子を被った一人の男が、手にした銃を鬼へと向けて、良く響く声で返事を返す。
『威勢のよい事だ。だがお前達に何が出来る? 弱肉強食は世の常、それは分かっておるのだろう?』
「侮るな鬼。俺達も海賊だ、何もせずやられたりするものか。そうだろう、野郎共!」
声を上げれば、島中に広がる歓声。男も女も子供達さえも、臆する様子は微塵もない。
それぞれの手に銃を……いや、豆を構え、唱える言葉は。
「おにはーそと!」
「ふくはーうち!」
声と共に、無数の豆が宙を飛ぶ。
『そんなもので我が怯むとでも……イタッ! イタタッ!』
地味に効いていた。メガリスの効果だろうか、ダメージは軽微なものの、ちょっと痛い。
鬼の反応に手応えを感じ、勢い付く海賊達。豆を投げる手は止まらない。
『やれやれ、大人しく投降すれば、天寿を全うする事も出来ようものを』
鬼は呆れたように溜息一つ。
『我としては、人と共に在るも嫌いではないのだがな』
寂しそうに笑みを溢し、手にした刀の鯉口を切る。
『……せめて、苦しまぬよう一太刀で』
「おにはーそと!」
「ふくはーうち!」
『そうだな、我は鬼だ。人の心より生まれた鬼なのだから』
●グリモアベース
灰色の髪の少女は黙したまま、手にした玉手箱に視線を落とす。
漆黒に舞う桜模様を指でなぞった後、鈍・小太刀(ある雨の日の猟兵・f12224)は、集まった猟兵達に向け話し始めた。
「皆お疲れ様。戦争もいよいよ中盤、気を引き締めて行かないとね」
羅針盤戦争。蒼海羅針域(コンキスタ・ブルー)が七大海嘯の居場所を示し、彼らもまた攻勢を仕掛けてきている。
グリードオーシャンのいくつもの島で激しい戦闘が巻き起こる中、小太刀もまた、一つの戦場を予知したという。
「とある島を、一体のコンキスタドールが襲撃する様子が見えたわ」
敵はたったの一体だ。しかし油断は禁物、この戦時下に単独で動いているのは、余程の手練れという事に相違ない。
「相手は七大海嘯の麾下、言うまでもなく精鋭よ。まともに戦うと苦戦は避けられないわ」
一筋縄ではいかない相手であると、小太刀もまた念を押す。
だが幸いな事に、対抗する手段が無い訳でもなかった。鍵となるのは、この島を統治している海賊達の存在だ。
「この島の名前はね、『鬼やらい島』っていうの」
鬼やらいとは鬼を払う儀式、いわゆる節分の豆まきの事だ。
この島にはその名の通り、人々が鬼……コンキスタドール達の襲撃を退け、統治を守ってきた歴史がある。
そして彼らには、島を守ってきた誇りと、経験と、メガリスがあった。
「メガリス『福枡』。木製の枡の中に、炒った豆が無限に湧き出すメガリスね」
生み出されるのは勿論ただの豆ではない。一粒一粒に、強い破魔の力が込められている。コンキスタドールに投げ付ければ、それだけで弾丸の雨を浴びせるが如き効果がある程に。
「あとこの豆、食べるとめっちゃ美味しいらしいよ?」
味は勿論、カリカリとした食感は食べ易く、栄養価も高い。
無限に湧き出る兵糧と弾丸。これが、海賊達の戦いを支えていた。
「でも今回は強敵相手、流石に今まで通りとはいかないわね」
かすり傷は負わせても、反撃の一刀を喰らうだけで全滅だ。それでも。
「彼らと皆が協力すれば、きっと有利に戦える」
やり方は任せるわねと、小太刀は笑顔で言葉を添えた。
「対する敵の名は、ミコト。漆黒の髪と角を持つ、羅刹の女性よ」
説明は、相対する敵の話へと移る。
「このコンキスタドール、少し変わっていてね、人に対して好意的な感情を持っているみたい。猟兵にも興味があるみたいだし、語り掛ければ、何かしらの言葉は帰ってくるかもね」
それでも相手はオブリビオン、未来を侵食し、破滅を呼ぶ存在である事に違いは無いのだ。
紫の瞳が宙を睨む。
「一見穏やかだけど、荒事を避ける様子はないわ。島の人々を助ける為には、必ず倒さなければならない相手よ」
小太刀はそう断言した。戦地へ向かう猟兵達の背を押すように。或は、自らの胸に言い聞かせるように。
「さてと、これで説明は終わりよ。後は皆に任せたわ」
ぱちんと両の手を打ち合わせ、転送の準備を始める小太刀。
「戦争だしね、多少は無理しても……なんてのはウソウソ、大怪我なんかしたら承知しないからね!」
軽口と共に、空間を開く。闇の向こうに波の音がした。強敵相手の戦いでも、笑顔で送り出すのは信頼の証だ。戦う理由は皆それぞれに違っても、違うからこそ。
「貴方の思う様に戦ってきて」
揺らがない真っ直ぐな目でそう言って、小太刀は皆を送り出す。
「……あ、お土産の福豆、私の分も忘れないでね!」
クロネコ
シナリオにお目を止めていただき、ありがとうございます。
お久しぶりのクロネコです。
少し時期は外していますが、鬼退治に豆まき、いかがですか?
このシナリオは、一章構成の戦争シナリオです。
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プレイングボーナス……海賊達と協力する。
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福豆は、海賊達に頼めば快く分けて貰えます。
シリアスに行くも、ゆるっとコミカルに突き抜けるも、皆様の動き易いスタイルでどうぞ。
プレイングには、各自の心情も書き添えて戴けると、大変有難いです。
戦争シナリオという事もあり、なるべく早期での完結を目指しますが、遅筆なため、期間ギリギリまでお時間いただくかもしれません。すみませんが、クロネコのキャパシティを超えた場合は、プレイングの不採用も有り得ます事、予めご承知おきください。
また、プレイング受付状況や執筆期間に関しては、シナリオ上部の#タグと、MSページもご参考にどうぞ。
それでは、皆様のご参加を楽しみにお待ちしています。
どうぞよろしくお願いします!
第1章 ボス戦
『ミコト』
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POW : 悪く思わないでくれ
自身の【人間への好意】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD : 居合斬り
【納刀状態の刀を瞬時に抜刀すること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【鉄さえも切断し、飛翔する斬撃】で攻撃する。
WIZ : 鬼神戟
自身に【鬼神の力】をまとい、高速移動と【斬撃や打撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
イラスト:夜神紗衣
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「琶咲・真琴」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
イコル・アダマンティウム
ん、食べ物を投げるのは……勿体ない、ね(しかも美味しい)
「終わったら、拾っていい?」
無限に出るからって粗末にしたく、ない
僕は格闘特化の愛機、キャバリアに搭乗して出撃する、よ
【協力申請:援護射撃】
豆の攻撃は有効
僕が前にでる、から援護をお願いする
「一杯、投げて」
後で貰える分が、増える
もし、鬼の攻撃が海賊に向いたら機体で割り込む、ね
「相手は、僕」<武器受け><見切り>
【攻撃】
「んー……」
そんなに悪い人?に見えない
けど戦う意思がある、敵
なら、拳で語るだけだ、ね
殴ったり、蹴ったり、頭突きしたり……
島の人を守る為に、がんがん戦う、よ
<暴力><捨て身の一撃><頭突き>
「ね……見定めは、できた?」
*アドOK
●
鬼が刀に手をかけるその寸前、降り立ったのは、青き鋼鉄の巨人。初めて目にするキャバリアの姿に、鬼にも人にも緊張が走る。
『来たな猟兵』
口元を引き結び、後方へ跳躍し距離を取るミコト。人々もまた、固唾を呑んで様子を窺っていた。
新たな来訪者。彼は敵なのか、味方なのか。
「ここが、鬼やらい島?」
周囲の緊張を他所に、マイペースな声が響く。鋼鉄の巨人、【T.A.:L.ONE】の肩に立つのは、一人の少年だろうか。
イコル・アダマンティウム(ノーバレッツ・f30109)は無表情のまま、その赤い瞳で周囲を見渡した。ひょいと地面へ降り立つと、落ちていた豆粒をその手に拾い、じっと見る。
「ん、食べ物を投げるのは……勿体ない、ね」
そのまま口へと放り込めば、カリッとした食感の奥に広がる、香ばしい香りと程よい甘さ。なるほどこれは、美味しい食べ物だ。
「終わったら、拾っていい?」
「も、勿論構わんが……どうしてだ?」
「無限に出るからって粗末にしたく、ない」
海賊達もミコトもそこで、共通する一つの結論に達していた。
――ああ、この子いい子だ。すっごく、いい子だ。
イコルは再び愛機の上へ。今度は肩ではなく、内部へと搭乗する。
接続されていく疑似神経。拳を握る動作も、大地を踏みしめる感触も、それはまるで自分自身であるかのように。
「豆の攻撃は有効。僕が前にでる、から、援護をお願いする」
「おう、任せとけ兄ちゃん!」
海賊達へと要請すれば、間髪入れずに返る言葉と、豆の雨。
「一杯、投げて」
(「後で貰える分が、増える、から」)
援護を受けて、大地を蹴るキャバリア。
「……あと、僕、女だよ?」
「『えっ!?』」
海賊達もミコトも、ここで再び一つの結論に達する事となる。
――猟兵は、見た目じゃ性別分からない。
それはこの世界の、猟兵という存在の、一つの真理なのかもしれない。
豆の嵐の中、【T.A.:L.ONE】は駆けた。
キャバリアの体高は5m、ミコトの3倍はあるだろうか。
その姿を真正面から見据えるミコト。退く気は一切見られない。
「んー……」
(「そんなに悪い人? に、見えない」)
それはミコトに対する、イコルの素直な印象だった。
しかし敵である事実に変わりはなく、何よりこの相手には、戦う意思がある。
(「なら、拳で語るだけだ、ね」)
鋼鉄の拳を掴み、振り下ろすイコル。響き渡る金属音。
一撃目、右手の殴打を刀が弾く。
二撃目の足払いは、寸での所で躱された。
三撃目、左手を構えた先、ミコトが刀を納めるのが見えた。抜刀術の構えだ。
このタイミング、【T.A.:L.ONE】の機動力があれば、ギリギリ回避する事も可能だろう。だがこの背の先には海賊達が居る。
イコルは両手を広げ、襲い来る斬撃と衝撃波を、その身に全て受け止めた。
刻まれる傷により、全身へ痛みが走る。凄まじい衝撃だ。
しかし一歩とて退くことは無い。彼らを守ると決めたのは、イコル自身。
『守る為に戦う、か』
それはきっと彼女の、イコルの強さの源だ。
そしてそれはきっと、ミコトがこれまでに見失ってしまった、何か。
ミコトの腹を、イコルの拳が打ち据える。基本にして奥義。一撃必殺のゴッドハンド。腕に感じる確かな手ごたえ。
「ね……見定めは、できた?」
『……いや、まだまだ。まだまだこれからさ』
大成功
🔵🔵🔵
栗花落・澪
実は僕、豆まきってやった事ないんだよね
鬼さんが当たってくれるなら
一回やってみたいんだけどなー、ダメかなー
言いつつ鬼さんをチラッチラ
許可貰ったらわーいっと喜んで投げます
背後に回した片手の指で島民に散ってと無言の指示
気を引いてる間に四方から豆当てて
一瞬でも隙ができたら【破魔】を宿した★花園を地面に展開
怯んだところに畳みかけるように【高速詠唱】で氷魔法の【属性攻撃】
刀を凍結させる事で抜刀行為自体を封じる
貴方の心に穢れは見えない
敵じゃなければ良かったのにね
多少の傷は厭わない
鬼さんに近付いて、その手に触れて
僕の理由は
全てを救う事
だから
ごめんね
人を嫌いにならないでくれて、ありがとう
【指定UC】の【浄化】を
●
打ち据えられた腹を抑え、立ち上がるミコト。
その口元には小さく笑みが浮かんでいる。
『来たな、二人目』
闘気渦巻く戦場に舞い降りたのは天使……いや、一人のオラトリオだった。
栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は真白の翼を広げ、無邪気な笑顔を皆に向ける。
「実は僕、豆まきってやった事ないんだよね。鬼さんが当たってくれるなら、一回やってみたいんだけどなー、ダメかなー」
言いつつ鬼さんをチラッチラッ。その可愛い仕草は小悪魔か、或はどこかの世界のアイドルか。海賊達の間にざわめきが起こる。
『いや、投げても良いが、避けるぞ?』
「え? いいの? ホントに? わーいっ!」
はしゃぐ澪を前に、困惑した表情のミコト。
いつの間にか毒気を抜かれてしまった。これはこれで恐ろしい相手なのかもしれない。
そうこうしている間に、四方から豆が飛んでくる。
『しまった、囲まれたか』
澪がミコトの気を引いている間に海賊達が四方を囲む、全て澪の作戦だ。
数と地の利は海賊達の大きな強み、この布陣であれば、最大限に生かし戦える。
「お嬢さんのためならば、例え火の中水の中っ!」
「……ええと、僕、男なんだけど」
「『えっ!?』」
海賊達もミコトも動きが止まる。そして遂に確信するのであった。
先のキャバリア乗りの少女といい、この天使の様な少年といい、見た目だけでは猟兵の性別は分からない。それがこの世界の、猟兵という存在の、一つの真理である事を。
そうして生じた一瞬の隙。
意図していた流れからは若干ズレている気もしなくはないが、それはまあそれである。
澪は地に向け、静かに聖痕を翳した。光と共に広がるのは、美しく咲く色とりどりの花たち。そして花園へ宿るのは、清浄なる破魔の力。
『これは……!?』
足下に伸びる花を警戒し、後退したその一瞬、今度は氷の花がミコトを襲う。
いや、凍結したのはミコト自身ではない。抜けぬ刀に、ミコトの表情が初めて強張る。
澪の放った氷魔法。長くは持たない、それでも。
ミコトに歩み寄り、その手に触れる澪。
振り払う手が澪の頬を打つが、多少の傷も厭わない。
「貴方の心に穢れは見えない。敵じゃなければ良かったのにね」
悲しそうなその微笑みは、どこまでも優しくて。
『お前は、何を……』
「僕の理由は、全てを救う事」
故にその意志は、揺らがない。
「だからごめんね」
琥珀の瞳に湛えるは、どこまでも深い、聖者の優しさだった。
「人を嫌いにならないでくれて、ありがとう」
澪の全身から強き光が放たれる。全ての者に光あれ、それが澪の願いだ。
そしてその願いは、ミコトに対しても向けられている。
この光は、コンキスタドールであるミコトの身を大きく削るだろう。それでも。
(「この優しさもまた、猟兵の力、なのか」)
身を包むあたたかな光に、ミコトはそっと目を閉じた。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:漆黒風
アイコンはUC使用時イメージ
豆、相手に向かって撒いてくれません?
いえね、たぶん、私が持つと私にもダメージが…(悪霊と鬼的な意味で)
UC使用。中の三人騒いでますね(削る寿命は『疾き者』のみのため)
私は鬼に堕ちる運命を持っていましたけど。堕ちる前に死にましたけど。堕ちたとして人を愛してるでしょうねー。
(皆が幸せであればいい、に自分含めない人)
漆黒風の投擲や、近接武器として握りこんでのなぎ払い。
見切りと第六感で回避を狙い、無理ならば、四天霊障による結界術とオーラ防御しますねー。
※三人「だから、無茶するなと!」
●
「なるほど、鬼ですか」
音もなく戦場に立ち、閉じた目で戦いの行方を窺う男が一人。
齢も50は過ぎているだろうか、のほほんと穏やかな表情だ。
だが一方で、纏う気配には隙が無い。
そろそろ頃合いと見たのだろうか、男が懐から取り出したのは、なんの変哲もない棒手裏剣。
その漆黒風を掌に握ったまま、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は海賊達へと声をかけた。
「そこの方。私、そろそろ前に出ようかと。豆、相手に向かって撒いてくれません?」
「へい、分かりやした。でも、旦那は持って行かなくていいんで?」
「いえね、たぶん、私が持つと私にもダメージが……」
首を捻る海賊の男に、義透もまた言葉を濁す。
警戒されていないのならば、敢えて言う必要も無いのだろうが。
「まあ、直ぐに分りますよ。そういう事で、宜しくお願いしますね」
一言言い置き跳躍すれば、降り立つ先は最前線。
『三人目か。今度は男……いや、もう性別には触れまい』
「はて? 確かに私は男ですが、何か?」
周囲に、どこか安堵したような空気が流れたのは気のせいか。いや、気のせいという事にしておこう。
ミコトは一つ咳払いをした後、再び言葉を続ける。
『しかしそなたは寧ろ、人より我の同類の様にも見えるが。しかも4人……か?』
「はい、4人ですね、私は『疾き者』。まあ、死人どころか悪霊ですし。でも人を呪う気もありませんよ?」
言葉と共に、空気が変わる。
常に閉じていた目を開けば、現れるは鬼の気配。
白髪交じりの黒髪は、美しき銀灰色へと変わり、額には2本の角。
五十路の男が変化したのは、銀灰色の瞳持つ、美しき鬼の青年だった。
『ほほう、人を呪わぬとは、変わった鬼もいたものだ』
投げられた棒手裏剣を刀で弾きつつ、ミコトが笑う。
『しかも寿命を削る仲間を想い、ざわざわ騒ぐ悪霊まで』
「やれやれ、中の三人が騒いでるのもお見通しですか」
お道化たように肩を竦める義透。
だが投げられる漆黒風は、ミコトの急所を的確に狙い続けていた。
「確かに私は、鬼に堕ちる運命を持っていました。……いや、堕ちる前に死にましたけど」
ミコトの刃を躱し、握り込んだ漆黒風で薙ぎ払う。ミコトの白い腕に傷が走った。
鬼への覚醒によって爆発的に高まった戦闘力。一方で、極限まで上昇した血流に、義透の心の臓もまた悲鳴を上げていた。
「堕ちたとして人を愛してるでしょうねー」
その言葉に嘘は無い。皆が幸せであればいい、そう思う。
『皆が幸せに、か……』
そこには『疾き者』たる彼自身は含まれていないのだろう、そんな戦い方だった。
ミコトの刀が閃いた。狙うは義透の心の臓。この至近距離、最早回避は間に合わない。
貫かれる、誰もがそう思った瞬間、刃を弾く何かがあった。
『結界術!?』
ミコトの目が、驚きに見開かれる。
「四天霊障。……我々4人の無念、そのものです」
穏やかに笑う義透。
一人であって、一人でない。共に歩み、支える力。
それもまた、義透の強さの一つであった。
「いやぁ、死ぬかと思いましたよ? いや、もう死んでますけどね」
(「「「だから、無茶するなと!」」」)
仲良く騒ぐ悪霊達を前に、腕の傷口を抑えつつ、苦笑するミコトであった。
大成功
🔵🔵🔵
クロス・シュバルツ
アドリブ、連携可
多少好意的ではあっても敵は敵、ならば敢えて言葉を交える事はしないでおきましょう
しかし、鬼に効く豆ということは故郷の吸血鬼にも有効な可能性が……いや、流石にないでしょうね。仮にあったとしても持ち帰る訳にはいきませんし
UCを発動して幽霊騎士団を召喚。幽霊騎士には敵を大まかに包囲させつつ、海賊と協力してひたすら豆を投げさせる
敵が高速で移動しようと包囲した状態で大量に豆を撒けば全ての回避は出来ない筈
豆をぶつけて怯んだ所に『ダッシュ』で近づき黒剣や鎖で攻撃
まずは足を攻撃、『串刺し』にした上で『傷口をえぐる』事で機動力を削いでいく
自分は念の為『オーラ防御』で豆と敵の攻撃から身を守る
●
戦地に降り立つ影がもう一つ、流れる様な銀の髪の青年だ。
クロス・シュバルツ(血と昏闇・f04034)は、油断なく敵の、ミコトの様子を確認する。
(「多少好意的ではあっても敵は敵」)
ならば敢えて言葉を交える事はしない、それも一つの選択であった。
「しかし、鬼に効く豆ということは、故郷の吸血鬼にも有効な可能性が……いや、流石にないでしょうね。仮にあったとしても持ち帰る訳にはいきませんし」
転がる豆を一粒拾い、その形状を確かめるクロス。豆自体は日持ちしそうだが、自生する訳ではないのだ。例え効果があったとしても、継続的に使う事は難しいのだろう、きっと。
「何だい兄ちゃん、お土産用を希望かい?」
呟きに対する思わぬ反応に、はっとして顔を上げるクロス。
そこには備蓄した豆を、俵から戦闘用の枡へと補充している海賊達の姿があった。
「まあ、兄ちゃんの言う吸血鬼とやらに効くかどうかは分からないが、味と栄養ならバッチリ保証するからさ。もし気に入ったなら、後で俵の一つでも持って行ってやんなよ」
豆はこの地の特産品、名物として気に入って貰えたならば、それもまた誇らしい、そんな表情だ。
「その代わりと言っちゃなんだが……あれ倒すの、手伝ってくれるんだろ?」
海賊の問いかけに、クロスの答えは一つであった。
「無論、その心算です。俺がここへ来たのはその為ですから」
『4人目か。なるほど猟兵とは人材豊富と見える』
新たな敵の出現に、鬼は軽口で出迎えた。
手に足に、見える場所に限ってみても、軽傷とは言えぬ真新しい傷が幾つもあるが、まだまだ余裕のある口ぶりだ。
口元に笑みを浮かべつつ、右手で頬を、十字に走る古傷をなぞれば、膨らむ殺気。鬼であるミコトの身を、更なる鬼神の力が覆っていった。
クロスもまた手を天に翳し、ユーベルコードを発動させる。
「呼び出すは異界の軍勢。駆け抜けろ、異形の騎士達」
天を裂き現れたのは、天翔ける戦馬と古代の戦車。その戦車より、続々と飛び出したるは異界の騎士達470体。鬼を包囲するべく散開し、手にする武器は、呪われた骨の剣と弓……ではなく、海賊達と同じ福豆だ。
海賊と異界の騎士団、完成した二重の包囲網から放たれるは、破魔の力持つ福豆の嵐。
『……まさか、たった一人でこれほどの軍勢を引き連れて来ようとは』
ミコトも鬼神の力による高速移動で回避を続けるが、これ程の数ともなれば、流石に無傷のままとはいかないだろう。
ミコトは刀を振り、その衝撃波により豆を払った。
ミコトの注意がクロスから逸れたのは、ほんの一瞬の事だった。
しかしその一瞬を、クロスが見逃す筈もない。
無言のままダッシュで接近し、ミコトの足へ黒剣、【葬装】黒羽を突き立てる。
確かな手ごたえと、血の匂い。
『……ぐ、まだまだ!』
苦し紛れに放たれた斬撃が、今度はクロスの腕を赤に染めた。
オーラ防御で深手は免れるも、浅くはない。それでも。
「前に進むしか、ない」
【冥装】罪茨、クロスの血を啜る呪われた鎖。それを伸ばし、ミコトの傷口を更に抉る。
●
『……これが猟兵の、意志を貫く力か』
足を穿たれ、大きく削られた機動力。最早鬼の顔に余裕は無い。
それでも何かを掴みかけている、そんな確信があった。
自分にはない、猟兵達の持つ何か。
自分には出来なかった、猟兵達なら出来るかもしれない、何か。
前に進もうと、手を伸ばす。
大成功
🔵🔵🔵
ガーネット・グレイローズ
さて、小太刀が予知した事件の島はここかな。
「こんにちは、私は商人のガーネット。何やら物騒な鬼に
居座られているとか」
敵の撃退を手伝うと進言すれば、きっと協力してくれる筈だ。
それにしてもこの豆…そのまま食べても美味しいが、
菓子に加工してもよさそうだな。
「すいません…これ、ウチで取り扱ってもいいですか!?
(商品化の誘い)」
基本戦術は剣を用いた斬り合い。回避よりガード重視
二刀流による《2回攻撃》と《武器受け》で攻防、
追い詰められたらバックステップで距離を離そうとする…
だがそれは《フェイント》で、そのタイミングで海賊に
豆を投げつけてもらおう。ミコトが怯んだ隙に
【サマーソルトブレイク】で相殺を試みるぞ。
●
「さて、小太刀が予知した事件の島はここかな」
黒衣に真紅の髪を靡かせて、颯爽と島に降り立ったのは、ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)。
その美しき赤の瞳が見据えるのは、倒すべき敵か、はたまたこの島の未来か。
彼女は臆することなく、海賊達へと話しかけた。
「こんにちは、私は商人のガーネット。何やら物騒な鬼に居座られているとか」
現れた妖艶なる女商人に、船長の鼻の下が一瞬伸びたが、それは置いておくとしよう。
「アンタも猟兵かい? 見ての通り、なかなか手ごわい相手でな、手伝って貰えると助かるんだが……」
海賊達も、決して退けぬ戦いであるとはいえ、自分達だけで手に負える相手でない事も、十分に分かっている様だ。
猟兵達と良好な協力関係を築くことは、彼らにとってもただ一つの生命線であった。
「私もまた戦う為に来たのだ、勿論協力させて貰うよ」
ガーネットはごくごくスムーズに、海賊達との協力関係を取り結ぶ。
先ずは商品の品定め……もとい、今回の作戦の要たる福豆について確認するガーネット。
手に取れば、なるほど破魔の力を強く感じる。
外形は綺麗な楕円を描き、表面はすべすべ、粒の大きさはどれも揃って美しい。
口中に入れてみれば、カリッとした歯ごたえと香ばしい香り。そしてゆっくりと広がるほのかな甘み。これは……。
(「そのまま食べても美味しいが、菓子に加工してもよさそうだな」)
なるほど、勝機だけでなく商機も十分ありそうだ。ガーネットの商人たる目がキラリと光った。
「すいません……これ、ウチで取り扱ってもいいですか!?」
幾つも浮かぶ、商品化のプラン。
「え? うちの福豆を!?」
「ふむふむ。……流石姐さん、目の付け所が違うなぁ」
思いもかけぬ申し出に、ただただ驚く海賊達。だが、島の自慢の福豆に、これまで以上の価値を見出して貰えたというのなら、こんなに嬉しい事は無い。
「商品化か……はは、悪くねぇな♪ よし、この戦いが終わったら、がっつり商談と行こうじゃないか!」
未来への展望と確信は、今を戦う力となる。戦い続ける海賊達の手にも、再び力が入るというものだ。
海賊達の頼もしき援護を背に、ガーネットは鬼の前に立った。
『楽しそうだな猟兵よ』
手にした刀の鯉口を切り、笑みを浮かべるミコト。
「楽しい……そうだな」
右手には妖刀を、左手には光剣を。二刀を構えガーネットも笑う。
新しい出会いには、いつも新しい発見がある。どう活かすのか、どう繋いでゆくかは自分次第。それはとてもワクワクするものだ。商いでも、戦いでも。
先に動いたのはミコトだった。抜刀し、その勢いのまま逆袈裟に切り上げる。
響く金属音。重ねた妖刀と光剣に衝撃が走る。
『これで止めたつもりかい?』
「さあ、どうだろうね」
次の瞬間、ミコトを包む気配が変わった。膨らむ殺気と共に、鬼神の力がミコトを包む。
切り結んだ刀の圧力が急激に増し、剣気だけでガーネットの腕に頬に、傷が走った。
何とか刃先を逸らすも、そう何度も耐えきれるものでは無さそうだ。
バックステップで距離を取るガーネット。
それを追うミコト。
「今だ!」
海賊達の放つ無数の豆が、ミコトの背を襲う。
しかし鬼神たるミコトの足は止まらない。
それでも注意は一瞬逸れた。それだけで十分だ。
青き空に美しき弧を描き、ガーネットの身体が宙を舞う。
「これが、グレイローズ家秘伝の一撃!」
ガーネットの履くゴシックスタイルのブーツが、ミコトの頭部を弾き飛ばした。
『やれやれ蹴り技が本命とは、猟兵の戦い方は多彩だな』
鬼神の力は相殺され、ダメージも少なくない。それでも。
『……新しき出会い、か』
ミコトの顔には、穏やかな笑みがあった。
大成功
🔵🔵🔵
怨燃・羅鬼
豆まきにアイドルのらきちゃん☆も参加だよ☆
あっ、羅鬼って名前だけど鬼じゃないから豆投げないでネ!
らきちゃん☆も福豆を受け取って鬼は~外!【怪力】福は~内(パリポリパリポリ)
あっ☆鬼さんも食べる?美味しいよ?
くふふ☆魔目は魔滅…外から内から鬼倒胃死ってネ!
攻撃はふぁらりすくんを盾にガードだ☆
鬼は陰(おぬ)…人に好意的なれども、もたらすわ災厄…
なら、その陰の鬼喰らおうか、喰らおうか、喰らおうか…
くふふふふふふふふふ
赤い鬼慈(キジ)に燃やされて~♪鬼はおぬ☆鬼殺らい島から逝亡苦なりましたとさ♪目出度死目出度死♪
●
「豆まきに、アイドルのらきちゃん☆も参加だよ☆」
可愛らしいアイドル衣装に身を包み、緑の髪をふわっと揺らし、煌めく瞳でぱちっとウインク。
「あ、カメラさん、もうちょっと右寄りー! あ、そこそこ♪」
カメラ目線でポーズを決めるのは、自称炎上系アイドル、怨燃・羅鬼(怒りの心を火に焚べろ・f29417)。
いつの間にやら海賊達を巻き込んで、アイドル動画の撮影会が始まっていた。
「あっ、羅鬼って名前だけど鬼じゃないから、豆投げないでネ!」
きゅるん☆と笑って注意書き。
らきちゃんは陰摩羅鬼、東方妖怪だけど鬼じゃないのだ。ないのだ。ないよね?
「お祓いなんてしちゃったら、滅☆! だからネ?」
細かい事は、きゅるん☆と笑って誤魔化そう。
「らっきちゃーん☆」
巻き起こる野太い声援。
この短時間にファンまで付いていた。アイドル恐るべし。
「そんなこんなで、福豆GETならきちゃん☆です♪ 早速攻撃いっちゃうよー。そーれ、鬼は~~外!」
ぶんっと放れば、びゅうっと飛んでく福豆たち。
カカカカカッと、カメラの後ろの壁にめり込んだ。
カメラマン役の海賊の背に、冷や汗が走る。
『ええと、鬼はこっち……だけど?』
これには鬼もびっくりだ。思わず声をかけてしまうミコト。
「あはははは、ちょこっと方向間違えちゃった、かな? ごめんネ☆」
怪力技能、恐るべし。
さあさあ、気を取り直してもう一回!
「行っくよー、福は~~内♪」
バリバリボリボリ、響き渡る咀嚼音。ひたすら響く咀嚼音。
「あっ☆ 鬼さんも食べる? 美味しいよ?」
枡ごとハイと渡し、いい笑顔。
「くふふ☆ 魔目は魔滅……外から内から鬼倒胃死ってネ!」
心なしか目が座っている羅鬼。クマなんかも出来ちゃったりして。
あれ? 地味に破魔の力効いてませんか? 大丈夫? おーい!!
「あな口惜しや、口惜しや、口惜しや」
唐突に剥がされるアイドルの仮面。
怨念の炎に身を燃やし、燃え盛る炎の鳥の姿へと変貌してゆく羅鬼。
「まさかの放送事故!?」
「プ、プロデューサー呼んで来―い!!」
大慌ての海賊達。居もしないプロデユーサーを探し右往左往。
だがそんな騒ぎも他所に、自称炎上系アイドル・らきちゃん☆は我が道を行く。
そう、これこそが羅鬼のユーベルコード、怨燃羅鬼。
陰摩羅鬼としての妖怪の姿へと変身し、戦闘力を大幅にアップするのだ。
解除するまで毎秒理性を喪失していくが……まあ、そういう事もあるよネ☆!
「鬼は陰(おぬ)…………人に好意的なれども、もたらすわ災厄……なら、その陰の鬼喰らおうか、喰らおうか、喰らおうか…………くふふふふふふふふふ」
『海賊達よ、一旦下がるのだ! この渦巻く妖気、ただ者ではないぞ』
ああ、最早どっちが鬼だか分からなくなってきたが、倒すべきはコンキスタドールの方で間違いない。
とりあえず、豆と一緒に声援を送る事にする海賊達。
「「らっきちゃーん☆」」
再び巻き起こる野太い声援。
それに応えるように、壊滅的なリズムで歌い出す、らきちゃん☆。
「赤い鬼慈(キジ)に燃やされて~♪ 鬼はおぬ☆ 鬼殺らい島から逝亡苦なりましたとさ♪ 目出度死目出度死♪」
それはもう、混沌(カオス)と呼ぶに相応しき地獄絵図。
羅鬼の愛用武器であるふぁらりすくんは、呆れ顔で唸るのだった。
『ぶもぉ~~!』
大成功
🔵🔵🔵
シリン・カービン
「豆を分けてもらいますね」
福豆は鬼狩りの道具。薬莢に詰めて福豆弾を作ります。
一発は纏めて詰めて散弾に。
照準器に彼女を捉えながら、敢えて目を合わせます。
狙われていることを知りながら、少しも動じることの無い瞳。
そこにどんな想いがあるのか。
福豆弾を連射し彼女を近づけさせませんが、
彼女ほどの剣技であれば、豆を切り捨てて間合いを
詰めてくるのは十分有り得ます。
勝機はそこに。
弾切れを読んで一気に踏み込んできたら、
銃把で受けながら身体を捻って躱します。
身体の陰に銃が隠れたその一瞬、
流れるように福豆散弾を装填。
零距離射撃を見舞います。
一カ所に集弾された、福豆の威力が伝える私の想い。
『あなたの強さと矜持に敬意を』
●
「……カオス、ですか?」
木の上から島の惨状……いや、戦況を確認しながら、シリン・カービン(緑の狩り人・f04146)は首を傾げた。
一先ず、ミコトの注意は海賊ではなく猟兵へと向いている様だ。だが相手はコンキスタドール、いつ彼らに危険が及ぶかは分からない。準備をするなら今の内に。そう、鬼狩りの準備を。
「豆を分けてもらいますね」
「はいよ姐さん、量はこれぐらいで大丈夫で?」
近くにいた女海賊達へ声をかければ、小気味よい声が返って来る。
猟兵達の活躍に、海賊達の士気も上がっている様だ。
「ええ十分です、ありがとう」
「いやいやお安い御用で!……ところでそれは、ライフル銃で?」
女海賊が興味津々で指さしたのは、シリンの背負う、愛用の精霊猟銃。
「ええ、福豆は鬼狩りの道具。薬莢に詰めて福豆弾を作ろうかと」
「なるほどなるほど、だったらこれも使ってくだせぇ。アタイ達が銃を使う時に使ってるもんですがね、ライフルの威力にも耐えられるよう、特に堅い豆を集めてるんですよ。まあ、つまみ食いするには堅すぎるのが難点ですケド」
ハハハと笑い、差し出されたのは麻袋。他の枡に入った豆に比べると、やや小ぶりで堅めの豆が詰まっていた。なるほど耐久性は高そうだ。
「確かに、これは使えそうですね。感謝します」
「えへへ、ちょっとでもお役に立てるなら何よりデス。頼りにしてますぜ、姐さん!」
女海賊の笑顔には、目の前の勇者(ヒーロー)への信頼と、尊敬と、憧れの心が現れていた。
海賊達の期待を背に受けて、シリンもまた前線へと向かう。
高台に建つ家屋の屋根に上り、精霊猟銃を構えるシリン。照準器の中には一体の鬼の姿。彼女はゆっくりとした動作で振り向いた後、何をするでもなく、ただじっとこちらを見上げていた。
(「狙われていることを知りながら、少しも動じることの無い瞳。そこにどんな想いがあるのか」)
シリンは深く息を吐いた後、その赤き瞳に向けて引き金を引く。
シリンは即座に跳躍した。元居た場所は、放たれた衝撃波により抉られている。
中空でステップを踏みながら福豆弾を連射、距離を保ちつつ、次なる足場へと移動する。
ミコトもまた地を走る。その身に纏うは鬼神の力。高速移動で弾丸の悉くを回避していった。
(「いや、彼女ほどの剣技であれば、豆を切り捨てて間合いを詰めてくる事も十分有り得ます。距離……おそらく、勝機はそこに」)
足を止めることなく、シリンは冷静に戦況を読む。
銃声が止まった、弾切れだ。その瞬間に合わせ、ミコトが一気に距離を詰める。
横薙ぎの一閃。銃把で受けるも、その衝撃だけで腕と頬に傷が走った。
何とか身を捻り、刃を逸らすシリン。だがそのまま後退はしない。
身体の陰に銃が隠れたその一瞬、流れるように福豆を装填すると、ミコトの腹に銃口を押し当て、引き金を引いた。
「あなたの強さと矜持に、敬意を」
零距離射撃。体表で弾けた弾丸が、ミコトの腹に穴を穿つ。
『……散弾!?』
穿つ穴は一つではなかった。一発の弾丸に凝集されていた幾つもの豆。
決して驕ることなく、侮ることなく、臆することなく、真っ直ぐに。
その一粒一粒が、込められた破魔の力と共に、シリンの想いを伝えていた。
大成功
🔵🔵🔵
灰神楽・綾
【不死蝶/2人】
季節外れに舞う桜の花弁をひとつ手に取り
…ここはサクラミラージュから落ちてきた島なのかな?
もしここがその世界なら
あの鬼も、人と共存こそ出来なくても
転生という道があったかもしれないよね
あっ、これめちゃくちゃ美味しいよ梓
何気なく口にした豆の味に目を輝かせる
こういう豆って何個も食べると飽きてくるんだけど
これはいくつでもいけそう
ほら、梓も食べてみなって(はいあーん
もう仕方ないなぁ
躊躇している梓の代わりに前に出て
豆を投げつけて敵の注意を引く
ほらほら、鬼さんこちら、なんてね
外れた豆も念動力で操り
死角から投げつけて不意打ち
同時にUCで蝶の花弁を桜の花弁に紛れ込ませ
少しずつ生命力を削っていく
乱獅子・梓
【不死蝶】
人に好意を持っているようだし
これまで相手にしてきた奴とは少し違うよな
それでも容赦なく倒すしか選択肢が無いのは
まぁ後味が悪いな…
おい、シリアスな空気が一気に変わったぞ??
無限に湧くからってあんまり食ってんじゃ…
(あーんされたのを受け止め)…おぉ、マジで美味い
思わず肩に乗る仔竜たちにも分けてやる
美味すぎてむしろ投げつけるの勿体なくなってくるな
食べ物を粗末にしちゃいけません!みたいな
綾の放った蝶の花弁に気付き
…あいつなりに苦しまないように
逝かせてやろうとしているんだな
ならば俺も、とUC発動
零の咆哮を戦場に響かせる
生命力を削ると同時に
誘眠効果で敵の動きを鈍らせて
綾が対処しやすいようにサポート
●
島の中心に立つ桜の大木。その下へ降り立ったのは、【不死蝶】の二人。
灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は、漆黒の髪を風に揺らしながら、季節外れに舞う桜の花弁をひとつ手に取った。
「ここはサクラミラージュから落ちてきた島なのかな?」
それは問いというよりも、半ば確信に近い。
サングラスの赤いレンズ越しに見る世界は、どこか優しさを秘めているようで……しかしここは、グリードオーシャンの島であった。
もしここがその世界であったなら。
「……あの鬼も、人と共存こそ出来なくても、転生という道があったかもしれないよね」
見上げた先の日の眩しさに目を細め、浮かぶ思いを言葉にのせる。
乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)もまた、大木を見上げた。
「人に好意を持っているようだし、これまで相手にしてきた奴とは少し違うよな」
人の生き方が十人十色であるように、オブリビオンもまた、抱える過去はそれぞれなのだろう。
「それでも容赦なく倒すしか選択肢が無いのは、まぁ後味が悪いな……」
例え思いがあったとしても、オブリビオンが未来を壊す存在であることは間違いない。
或はUDC-Pの様な例も無くはないが、それは極めて特殊な事例であった。
やるせない思いに、溜息がこぼれてしまうのも致し方あるまい。
「あっ、これめちゃくちゃ美味しいよ、梓!」
呼ばれて振りむけば、目を輝かせる綾の姿。
「おい、シリアスな空気が一気に変わったぞ??」
ああ、先程までの感傷的な姿は何だったのか。再び溜息がこぼれてしまうのも、これまた致し方あるまい。
試しに口にした豆の味がよほど美味しかったのだろうか、海賊達に分けて貰った福豆が、見る間に減っていく。
「こういう豆って何個も食べると飽きてくるんだけど、これはいくつでもいけそう。ほら、梓も食べてみなって。はい、あーん」
「無限に湧くからってあんまり食ってんじゃ……」
差し出された豆。笑顔の綾。仕方ないなと口を開ける梓。
カリッとした歯ごたえの奥に広がったのは、香ばしい香りと、ほのかな甘みだった。
「……おぉ、マジで美味い」
梓の顔にもまた笑顔がこぼれる。
肩に乗る仔竜たちにも分けてやろうと、新たな豆を掌に載せる梓。
『キュー!』
『……ガウ』
炎竜の焔も、氷竜の零も、それぞれ美味しそうに豆を齧り始める。
「美味すぎてむしろ、投げつけるの勿体なくなってくるな。食べ物を粗末にしちゃいけません! みたいな」
それはもしかしたら、言い訳の様なものだったのかもしれない。ただぶつかり合うだけでなく、他にも手立てがあったなら……。
それでも、いつまでも食べてばかりもいられないのだ。勿論それは、二人とも分かっていた。
鬼は、ミコトはこちらの様子を窺いつつも、まだ動く様子は見られない。
既に深手を負っているのだろう。それでも諦める事無く、何かを探る様に、求める様に、慎重に機を窺っている。
「もう、仕方ないなぁ」
綾が苦笑し前に出た。豆を投げつけ、敵の注意を引く。
「ほらほら、鬼さんこちら、なんてね」
ミコトも動いた。
傷ついた足を無理やり動かし、豆の間をすり抜ける。
急接近し放たれた斬撃は、咄嗟に身を引いた綾の鼻先を掠めた。
二撃目を構えたその瞬間、ミコトの脇腹を無数の豆が襲う。綾の念動力による、死角からの不意打ちだった。
しかし、綾の真なる攻撃はこれではない。
バタフライ・ブロッサム。ユーベルコードにより生み出された無数の紅く光る蝶の形の花びらが、舞い散る桜と共にミコトへと降り注いだ。
「……紅く彩られながら、おやすみ」
それは触れても苦しみや痛みを感じさせる事無く、鬼たるミコトの生命力のみを少しずつ、しかし確実に削っていく。
(「……あいつなりに苦しまないように、逝かせてやろうとしているんだな」)
舞い散る花びらを前に、梓もまた動き出した。
「歌え、氷晶の歌姫よ」
先程まで福豆を美味しそうに食べていた氷竜は、主の呼び声に頷くと、その声を空へと響かせる。
神秘的とも言える咆哮が、花舞う戦場に広がっていった。
その歌声もまた、痛みなく降り積もり、ミコトの命を削っていく。
それはひやりと冷たくも穏やかで、どこか優しい……声。
見上げれば、無数の蝶と桜が、陽の光を映し舞っていた。
『……この島は、この世界は、美しいな』
鬼ではなくただの人であるかの様に、綾と梓に向けて微笑むミコト。
そして強烈な眠気が、ミコトの意識を覆っていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●
●
(『これは、夢?』)
緑深い山の中に、ミコトは一人立っていた。
いや、一人ではない。目の前には幼子の背中が見える。隣にはもう一人の鬼。
そして幼子の駆けゆく先には、彼女の父親が立っていた。
悲しみが胸を締め付ける。
(『行ってはダメだ!』)
咄嗟に叫ぶが、言葉は一つも声にならない。少女へは届かない。
儚き命へと手をかけたのは、父の闇か、少女の光か。
絶望を知る少女の傍らで、もう一人の鬼が、こちらを見て笑っていた。
(『分かっている。これは夢だ、現実ではない』)
――現実でなければよかったと、今はただ、思うばかり。
琶咲・真琴
POW
またお祖父ちゃん達の様子が変だ…
何かあるのかな?
あ、お土産了解だよ
姉さん
海賊達には福豆で攻撃支援をお願い
あれ
お祖父ちゃんとお祖母ちゃんを知ってるの?!
輝乃って…
ボクのお母さんの名前っ
え、えっ
どういう事?
っ、やるっきゃない!
UC使用時に空中系技能やフェイント等でミコトの周りを飛び交いながら攻撃
オーラ防御・第六感・カウンター等で防御及び回避
ミコトから渡された脇差を手に呆然とする
お母さんから…生まれた人格?
他にもいるの?
じゃぁ、あの女の子も?
何で、笑ってたの?
ありがとうって
訳わかんないよ…
最後に自分の頭を撫でてくれた手の感触は母のもので
片翼人形と黒い指輪が静かに少年を見守っていた
アドリブ歓迎
●
豆と桜の舞う島へ、琶咲・真琴(一抹の謎に心揺れる継承者・f08611)もまた降り立った。
可愛らしいエプロンドレスを身に纏い、灰色の髪には、ふわふわとしたウサギの耳が揺れている。その姿はまるで、不思議の国に迷い込んだアリスのよう。
まだ8歳の幼子は、それでも確かに猟兵だった。
「お土産は了解だよ、姉さん」
今しがた通り過ぎたばかりの空間を振り返り、言葉を返す真琴。
「ええと先ずは、海賊さん達に福豆での攻撃支援をお願いしてこよう」
そう言って駆けだす幼子の傍らには、古びた2体の人形があった。
少女の背には右の、少年の背には左の、それぞれ片方ずつの翼を持った人形達。
日々成長する幼子を見守るのが、彼らに託された役目であり、意志だった。
しかし今日はいつもと様子が違っている。どこか強張った表情をしているように、真琴には見えた。
それは、この島に降り立ち、倒すべき鬼の気配を感じた瞬間からずっと。
「どうしたの、お祖父ちゃん、お祖母ちゃん?」
真琴の問いに二人は答えない。しかしその原因たる鬼は、今、目の前にいた。
●
鬼が、目を覚ます。
穿たれた四肢を襲う激痛に、顔を顰めるミコト。
眠りの中で力尽きれば、楽に死ねたのかも知れない。
それでも何かを求める様に、ミコトは瞼を開き、前を向いた。
『……輝乃?』
目の前には幼子が居た。
『いや、髪色が違う。あの子の髪は、我と同じ漆黒だ』
混濁する記憶。
それでも感じるのは、懐かしき気配。
『……お父さん、お母さん』
小さく呟いた言葉の先には、片翼の人形達があった。
「あれ? お祖父ちゃんとお祖母ちゃんを知ってるの?」
海賊達から受け取った枡と福豆を手に、首を傾げる真琴。
「それに、輝乃って……ボクのお母さんの名前っ」
状況が呑み込めず、ますます困惑する真琴であった。
●
会ったのは、共に在ったのは、悠彼方の記憶の先。
「(久しぶりだな、ミコト)」
男の子の片翼人形が、ミコトへと言葉を返す。
「(この子は真琴、輝乃の息子よ)」
女の子の片翼人形もまた、言葉を紡ぐ。
『そうか、息子か』
枡を抱える真琴の指に見えるのは、撫子と龍鱗の模様が刻まれた黒き指輪。
ミコトは優しく微笑んだ。
あの幼子は成長し、母となったのだ。
それが分かっただけで、もう、十分だった。
漆黒に桜舞う鞘から、ゆっくりと刀を抜き、真琴へと刃を向ける。
(「え、えっ? どういう事??」)
真琴には、事の成り行きが掴めない。
それでも、自身が今やるべき事だけは分かっていた。
「……っ、やるっきゃない!」
真琴は素早く大地を蹴った。
「その疾風は、荒れ狂う嵐の如く――― 神羅畏楼・怒涛迅雷!」
言葉を唱えると共に、体内を巡る大量のサイキックエナジーを放出、優しき藤色の闘気と、鷹の様に鋭き白銀のオーラが真琴を包む。
得られたのは早さ、威力、そして天翔ける力。
対するミコトの足は動かない。ただそこに立ち、真琴の動きを見極める。
背後を狙った真琴の拳を、ミコトは身を捻り躱した。
その勢いのまま、横薙ぎに刀を振るう。
真琴はオーラで受け止め斬撃を何とか凌ぐも、強い衝撃に全身が悲鳴を上げる。
「まだまだ!」
それでも真琴は止まらない。再び空を駆け、闘気を放った。
具現化した巨大な白銀の鷹がミコトに迫る。
刀で受けたその瞬間、ミコトの胸部が、背後から穿たれた。
それは、福豆を握り、藤色の闘気を纏った真琴の拳。
『見事だぞ、猟兵……』
優しく微笑むミコト。
それは、この戦いにおける猟兵達の勝利を祝うものであり。
鬼の辿った長い長い旅路の、終焉を告げるものであった。
●
『真琴……』
地に倒れながらも真琴を呼ぶその声は、とても穏やかで、温かなものだった。
『これを、お前に』
それは一本の脇差だった。先程まで、ミコトが振るっていたものだ。
受け取った刀を手に、呆然とする真琴。
黒漆の鞘には、桜と星、そして兎の模様が描かれている。
『桜降る夜に兎は舞い星は踊る……なんともまぁ、ロマンチックな代物だ』
苦笑するミコト。それはどこか、嬉しそうでもあった。
『この刀は元々輝乃のものだ。そして我もまた、輝乃の心より生まれた人格に過ぎぬ』
「お母さんから……生まれた、人格?」
真琴にも一つだけ、心当たりがあった。
「他にもいるの? じゃぁ、あの女の子も?」
『そうか、喪輝に会ったのだな。……そうだ。あの子も輝乃の一部、過去の残滓』
世界を呪い、自分を呪い続ける幼き子。そしてまた、もう一人の鬼も。
『あの子の事、心配してくれるのかい? 真琴は優しい子だな』
ありがとうと、ミコトは笑った。
そろそろ限界なのだろう。鬼の身体は光となり、桜舞う空へと溶けてゆく。
最後のきらめきが、真琴の頭を優しく撫でた。
その温かな感触は、母の手の様だと真琴は思う。
託された刀を握り光を見送る少年を、片翼の人形達もまた、静かに見守っていた。
●
●
――この世に未練が無いと言えば嘘になる。
――泣きじゃくる幼子を、我はただ護りたかった。
――遺された過去も、侵食される未来も、救えるものなら救いたかった。
――それでも、過去の残滓たる自分には、どうする事も出来なかった。
――だがこの子なら、そしてあの猟兵達なら、きっと。
願いは光となり、桜と蝶の花びらと共に、空へ。
鬼やらい島の鬼退治は、こうして幕を閉じたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2021年02月14日
宿敵
『ミコト』
を撃破!
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