羅針盤戦争〜賞金首出てこいやぁ!!
●落ちた者にも一欠片の野望はある
一攫千金。それは幻という意味での夢であり、欲望に囚われる限り、夢が手の中に落ちてくることはない。
しかし、蒼き羅針盤が世界に輝く時、その夢はわずかながら、現実味を帯びてくる。
「蒼海羅針域(コンキスタ・ブルー)をぶっ壊せ!」
「出てくる奴らは全員賞金首だ! 狙え! 狙え!」
誰が指揮を執ったか、夢を追い、夢に破れた若者達が船を繰り出し、世界の未来に手を出してくる。所詮生半可な考えの烏合の衆。
だがそれでも、数は時に力となる。猟兵の戦力とて無限に非ず。押し切られる可能性も零とは言えない。
だからこそ、小さな悪の芽すら逃さぬように。蒼海羅針域を守る戦いが、始まる――。
●守る戦い
「この『羅針盤戦争』において重要な『蒼海羅針域』を破壊しようと企む勢力があるようです!」
ロザリア・ムーンドロップ(薔薇十字と月夜の雫・f00270)が視たものは、七大海嘯の本拠地を目指す裏を突くように押し寄せんとしているコンキスタドールの軍勢。それはもしかしたらほんの小さな綻びに過ぎないかもしれないが、そう遠くない未来を傾ける一石となる可能性も秘めている。
「彼らの正体は『ドロップアウト・ルーキーズ』……いわゆる落伍者というやつでしょうか。駆け出しでつまずいた彼らが、この戦争において一攫千金を目論んでいるようですね」
蒼海羅針域を破壊すれば万々歳。そうでなくても、防衛に立つ猟兵達を討ち取ることができれば賞金が手に入る、とどちらに転んでも彼らにとっては成功だ。
無論、後者は仮定の域を出ることはないように見える。腕の覚えは思い上がり。寄せ集めの集団に猟兵が後れを取るとは考えにくいが。
「攻め一辺倒では、どこかで足元を掬われるかもしれません! だからこそ、私達がこうして立ち上がることに意味があるんです!」
ロザリアは主張する。此度の戦いは敵の大将首を取るような派手なものではない。だが、縁の下の力持ちのような猟兵達の活動があるからこそ、先へ先へと船を出す者達は、安心して背中を預けるのだ、と。
「皆さんには鉄甲船を使って、彼らを迎え撃ってもらいたいんです! そうしてコンキスタドールの侵攻を少しでも遅らせることができれば、前で戦う皆さんの助けになります! ただし、皆さんに向かっていただく海域は飛行や転移といった強力な空間移動能力は阻害されてしまうようです。原因はわかりませんが……とにかくそういう状況である以上、海上、船上での戦いについて何かしら考えておくとよさそうですね」
状況に応じた立ち回りが求められるが、ロザリアは信じている。皆はきっとうまくやってくれると。それは送り出す側としての自負でもあった。
「無駄な戦いは何一つありません! 皆さん、力を合わせましょう!」
沙雪海都
沙雪海都(さゆきかいと)です。
セッツブーンはオープニングとリプレイ執筆で終わりました。
●フラグメント詳細
第1章:集団戦『ドロップアウト・ルーキーズ』
蒼海羅針域の破壊を目論む者達です。ついでに猟兵も倒せたらラッキーとか考えている身の程を弁えない野郎達なのでお好きなようにボコって下さい。
オープニングにもありますように、海上では飛行や転移が阻害されています。地に足を付けた戦い方、というのが求められるかもしれませんね。
そんなわけで、この辺りに工夫があるとプレイングボーナスがつきます。
●MSのキャパシティ
書きたい時に書きます。別で運営しているシナリオの様子も見つつ……。
合わせプレイングはお受けできません。申し訳ないです。
でも複数採用リプレイとかは気まぐれで書いたりするのでソロ希望の方は明記しておいてください。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『ドロップアウト・ルーキーズ』
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POW : 初歩的な斬撃
【大剣】が命中した対象を切断する。
SPD : 未熟な第六感
【山勘で】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : 軽率な限界突破
【闘志】を一時的に増強し、全ての能力を6倍にする。ただし、レベル秒後に1分間の昏睡状態に陥る。
イラスト:ももんにょ
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ビードット・ワイワイ
なるほど大体分かった
相手するのは面倒だ。船を壊そう
メカモササウルスは唯一無二!
最強の捕食者!賞金などと片腹痛し!咥えて食って引きちぎり歯向かう全てを蹂躙する!そこのけそこのけ我らの道に障害無し!
我が巨体が暴れれば味方にも被害が出よう
離れた場所より行動開始
深く潜り急速浮上しそのまま飛び上がる
敵船に倒れ込めばそのまま船を沈められよう
船をそのまま咥えるのもいいかもしれん
討ち漏らした者が居っても
浮いておったなら良い獲物よ
我が顎は強靭なりて
容易く引きずり込み噛み砕かん
片桐・公明
【POW】
海上での行動はバイク『赤兎』+海戦対応拡張パック『江東の虎』使用して移動する
敵船からの攻撃は普通に回避する
勢いに任せて誘導弾の斉射と共に敵船側部に突撃することで乗り込む
以降向かってくる敵群はUCを使って迎撃する
戦場は敵船なので特に周辺の被害には配慮せずに戦う
敵船が傾き始めたらバイクに乗り込んで脱出する
「あら?私の事知っているのかしら。悪くない気分ね。」
「この程度で相対しようなんて、片腹痛いわね。」
(絡み、アドリブ歓迎です。)
花盛・乙女
お尋ね者か。不名誉な称号ではある…が、放っておいても狙われるとなれば便利でもあるな。
此度の戦役、羅刹女の名をこの海に轟かせるとしようか。
羅刹女、花盛乙女。いざ尋常に。
話を聞くだに、七大海嘯の精鋭ではなく小悪党の集団のようだな。
であれば話は早い。
『殺気』も『覇気』も抑えず放ち、威圧感を持ったまま船に乗り込むぞ。
直ちに面舵を破壊し操舵を不能にしよう。
そして、労せずして一攫千金などという腑抜けた夢を抱く者どもには、その夢を抱いて骸の海に帰ってもらう。
そこに慈悲はない。生と死が表裏にある戦場で腑抜けた自身を悔いてもらおう。
逃げ出す輩がいても、それは良い。
精々この海に羅刹女ありと吹いてもらうとしようか。
●身の程を知れ
敵船団は遠くに見えていた。やーやーわーわー叫び声が聞こえてくるが内容はよくわからない。
碌でもない連中の宴は今、最高潮を迎えているようだ。その理由は、賞金首たる猟兵達を乗せた鉄甲船が現れたからに他ならない。
「お尋ね者か。不名誉な称号ではある……が、放っておいても狙われるとなれば便利でもあるな」
花盛・乙女(羅刹女・f00399)は船首付近に仁王立ちし、三白眼で船団を睨む。手配書と共に流れるのは悪名だ。それを心地良いと言う者はそうそういるものではない。
しかし、お尋ね者の称号は時に役立つこともある。敵船団は賞金目指して舵を切った。一列に揃った船首の群れが外側からぐぐっと曲がって鉄甲船を見る。
敵が足場を用意して、わざわざこちらにやって来るのだ。有難いことだ。
「だがな……我の力は強者にこそ振るわれるべきもの。斯様なならず者共を相手取るのは面倒なのでな……故に船を叩く。皆とはここで別れるが、武運を祈る」
ビードット・ワイワイ(絶対唯一メカモササウルス・f02622)は敵船団を確認すると、先んじて鉄甲船を離脱し海に飛び込む。その姿は遠くなるにつれ小さく――ならない。
「メカモササウルスは唯一無二! 最強の捕食者! 賞金などと片腹痛し! 咥えて食って引きちぎり歯向かう全てを蹂躙する! そこのけそこのけ我らの道に障害無し!」
ガチガチと組み替えられたその体、メカモササウルスは全長300mに達する。一つの浮島を成すかの如く巨大化したビードットは、どぷんと深海に潜り込んだ。
「さてと、私も行くわよ」
片桐・公明(Mathemの名を継ぐ者・f03969)は持ち込んだバイク『赤兎』に海戦対応拡張パック『江東の虎』を装着し終えると、甲板を助走して海に飛び出した。陸より機動力は若干下がるものの、海を渡る力を得るのは大きい。
各々が戦場へと向かっていく。乙女は見送ると、改めて前を向いた。
「此度の戦役、羅刹女の名をこの海に轟かせるとしようか」
刀を抜く、と同時に殺気、覇気を余すことなく解放した。海を走る気迫がざわと波を起こした。
「羅刹女、花盛乙女。いざ尋常に」
それぞれの船に乗るドロップアウト・ルーキーズの面々は背負う大剣を抜き、構えていた。しかしその姿、腰が引けて格好が悪いことこの上ない。大した鍛錬も積まず堕落した者達だ。弱い犬程よく吠える、とはまさにこのこと。
「お、おい! 何か来るぞ!!」
海面に影を見る。ゆらりと濃くなった水面は瞬く間に船を呑み込んだ。
「うわああぁぁぁ!!」
深海より急浮上したビードットが船底からがぶりと噛みつき、そのまま海上へと飛び上がった。傾いた船の上では大して鍛えもしていない足腰は何の役にも立たず、無様に尻餅をついて転がり落ちていく。大剣など向ける暇もない。
ビードットは空中で船をばりばりと噛み砕くと、次の標的を見下ろしていた。飛び上がる時に起こした高波に揺られた船だ。突起に手を掛けて堪えながら大剣を向けようとする者が見える。
「刃を向けるか……だがそんなものではかすり傷一つつけられぬわ!」
巨体を船に向けて倒していく。押し潰しにかかるビードットを見上げるドロップアウト・ルーキーズ達の中で多少は勇敢な者が何人か、立ち上がり大剣を振り上げていた。
その刃が弾かれた音は、直後の巨大な破砕音の前にかき消されていた。まるでそよ風が撫でたかのような一撃など攻撃を受けた内にも入らない。めりめりと船体を押し潰すとまた海中に潜り、沈みゆく船の残骸を眺めながら深海に引きずり込まれていくドロップアウト・ルーキーズ達を噛み砕いていった。
ビードットの計り知れない暴力を遠巻きに眺めつつ、公明はまた別の船を狙っていた。両手にそれぞれ銃を取ると、誘導弾を撃ち込みながらバイクで船側部目掛けて突っ込んでいく。
ガガン、と弾丸が船体につけた亀裂を狙い、波を引っかけウィリー状態でバイクが飛んだ。突き破って侵入した場所は倉庫のようだ。
「やられた! 下だ!」
船側から侵入されたことに気付き、ドロップアウト・ルーキーズ達がぞろぞろと降りてくる。揺れる船体に波が直撃し、公明が侵入した穴から海水が少しずつ流れ込んでいた。
「こいつ……結構な賞金首だぜ!」
「あら? 私の事知っているのかしら。悪くない気分ね」
公明はふふんと鼻を鳴らし、手の中でくるりと銃を回転させる。
「相手は女だ! やっちまえ!」
性別を笠に着るドロップアウト・ルーキーズ達の態度に、公明は短くため息を漏らした。クズの典型――こんな奴らには、銃弾の一発も惜しい。
公明は向かってくるドロップアウト・ルーキーズ達に対し、銃をしまうと舞踊の曲を待つような独特な構えを見せた。
ドロップアウト・ルーキーズが振り回す大剣はどこにでもある量産品だ。手入れも満足にされていないのか、刀身はくすみ、刃こぼれを起こしている。それでも重量を生かした鈍器程度の役には立つか――ぶんと振り下ろされた大剣を軽いステップで回避すると、回転した勢いで裏拳を頬に叩き込んで吹き飛ばす。
別のドロップアウト・ルーキーズが刃を薙げば、公明は腰を深く落としてその下を掻い潜り、床に手を付いて後方に跳ね上がりながら顎に逆さ蹴りを叩き込んだ。仰け反り飛んでいくドロップアウト・ルーキーズは後方で待機するドロップアウト・ルーキーズの列に突っ込み、ボウリングのピンのように次々倒れて山になる。
「この程度で相対しようなんて、片腹痛いわね」
「まだだ! まだ俺達は負けちゃ……うわぁ!!」
船がぐらりと大きく傾いた。海水が流れ込み重量バランスが崩れたところへ強い横波。揺り返しに振り回されてドロップアウト・ルーキーズ達はあちらへごろごろ、こちらへごろごろ。
「そろそろ引き際ね」
公明は固定していたバイクに乗ると、斜面を駆け上がり脱出、勢いよく海へ着水した。それからすぐに船体は穴から広がった亀裂によって真っ二つに割れ、ぶくぶくと沈んでいった。
二人が離れた鉄甲船は敵船と接近する。乙女は甲板を走り抜けると柵を踏み台に敵船へと跳んだ。ブレーキがてら刀を船体へ突き立てて、がりがりと音を立てながら止まる。
ドロップアウト・ルーキーズ達が身構えていたが、乙女が放つ殺気、覇気に当てられ、わずかな震えを見せていた。
「労せずして一攫千金などという腑抜けた夢を抱く者どもが……」
海を征く者にしてはやけにラフな格好で、一丁前に髪だけ派手に染めていた。乙女は小さく舌打ちすると、軋む甲板を走り出す。
「ひ……怯むんじゃねぇ!!」
声を出した者が動かない。やはり根性の腐った者の集まりだった。それでも乙女が接近すると、恐怖に駆られたか遮二無二大剣を振り回し始める。太刀筋などという立派なものは存在しない。乙女は刀で軽く大剣を弾き上げると、一刀の元に斬り捨てた。
二人、三人と斬りかかりながらドロップアウト・ルーキーズの網を突破すると、扉を破って操舵室へと雪崩れ込んだ。舵輪を根元から斬り落とし、船外へ戻ると残りのドロップアウト・ルーキーズ達を駆逐しにかかる。賞金首と息巻いていたのに、蓋を開ければ震えて足も動かないこの有様。
夢は夢のまま、帰ってもらうのがお似合いだ。
「ひぃ! く、来るなぁ!!」
「ふん……戦場で腑抜けた自身を悔いるのだな」
慈悲などない。棒立ちだろうと何だろうと、戦場で武器を手にしたのなら、己の末路まで責任を持つべし。胴体を一文字、真っ二つにして骸の海へ送り返した。
「逃げ出すか? ならば追わぬぞ。せいぜいこの海に羅刹女ありと吹聴するのだな!」
船荒らし――乙女は次々船を渡っていくのだった。
大成功
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サカマキ・ダブルナイン
(アドリブ・絡み歓迎)
安心せい、このサカマキ・ダブルナインにゃ飛行機能も転移機能も付いとらんのじゃ!!
さて、海上での戦いとな。
不意の揺れに注意せんとならんし、姿勢制御もやらんと落っこちかねんのー。
うーむ……本来大勢相手に切る札ではないんじゃが、背に腹は変えられぬか。
行くぞよ、"99式完全攻勢"!
……感情プログラム停止。
移動に必要な演算を姿勢制御に充当。当機は足を止めての射撃戦闘に移ります。
「射管狐」の発射による貫通攻撃を実行。遮蔽は無意味です。
対象の回避行動は非論理的ですが、物理法則を無視したものではありません。上昇した反応速度により、第一射回避後の隙を付いた第二射を実行。対象を殲滅します。
高砂・オリフィス
冷静に考えるとあの賞金って誰が払ってくれるんだろ? 素直にくれるとは到底思えないんだけど……まいっか! ぼくも寝首をかかれないようにふんばるぞ! やるぞーっ! こういう時こそ笑顔笑顔、声出してこ!
というわけでラウドボイス! 音の衝撃はバズーカのごとし! 音の波は海の波よりはやいからねっ、これで先制するのがぼく流の海戦さ!
からの、飛び込んで時間差攻撃! 蹴り技のフルコースを食らってちょーだい! あははっ! ハングリー精神はわかるけど、空きっ腹には効くよね、ぼくの蹴りは!
高天原・光明
数は力、烏合の衆とて集まれば厄介だ。早々に退場願おう。
〈ロープワーク〉で船と俺を固定し一心同体にする。慣れぬ海の上だ。波の揺れや船の軋み、そういったものと自身を同調させ、攻撃の精度を高めていく。死なば諸共だ。
集中が高まったら【UC:千里より飛来せし黒死】(SPD)を発動。矢の群れを敵艦目掛けて放つとしよう。
霊力を籠めた鏃を惜しみなく使った〈貫通攻撃〉の〈制圧射撃〉だ。甲板を貫き底部まで到達する威力、無事でいられるものなどいないだろうさ。よしんば、山勘で避けたとしても、だ。避けた先に、既に矢は放たれている。
相手が悪かったな。貴様らにくれてやる首は無いぞ。
(アドリブ連携等々歓迎です)
●所詮、と冠するドロップアウター
「移動性能を削ぐ海域か……じゃが安心せい! このサカマキ・ダブルナインにゃ飛行機能も転移機能も付いとらんのじゃ!!」
えっへん、とサカマキ・ダブルナイン(ロボ巫女きつねのお通りじゃ!!!・f31088)は胸を張る。普段の力が発揮できないのなら不安は残るが、サカマキは至って通常運転、自信を持って戦場に立てる。
「頼りにしてるよー。でもさぁ……冷静に考えるとあの賞金って誰が払ってくれるんだろ? 七大海嘯とかが素直に払うとは到底思えないんだけど……」
「さぁな。だが、そんなもの目当てで集まられると烏合の衆とて厄介だ。早々に退場願おう」
「そうだね、ぼくも寝首をかかれないようにふんばるぞ! やるぞーっ! こういう時こそ笑顔笑顔、声出してこ!」
「声を出すとな? ならばわらわとて負けんのじゃー!! うぅわぁぁー!!」
高砂・オリフィス(南の園のなんのその・f24667)とサカマキが広い広い海の彼方目指して叫ぶ姿を、高天原・光明(彼方より禍を射貫くもの・f29734)はやれやれといった表情で後ろから眺めている。
先行した別の鉄甲船から猟兵達が飛び出して、次々に船を沈めていく。この鉄甲船に乗る者達も、戦の準備を開始する。
「海上での戦いじゃ。不意の揺れに注意せんとならんし、姿勢制御もやらんと落っこちかねんのー」
「あぁ……各々落ちない準備はしておくんだな」
光明はロープで鉄甲船と自身の体を結ぶ。こうすることで、光明の生死は船と共に。船が沈む時は己の敗北、即ち死。敗走などという無様な命の繋ぎ方は有り得ない。
「その辺は心配しないでも大丈夫! これでも、バランス感覚には結構自信があるんだよね」
オリフィスは甲板に手をつくと、ぎゅるんと体を回しての逆さ蹴りで準備運動。揺れる船でも軸はしっかり立っていた。
「準備がよいのじゃ……なら、わらわもとっておきの札を使うかのぅ。うーむ……本来大勢相手に切る札ではないんじゃが、背に腹は変えられぬか。いくぞよ、99式完全攻勢(ダブルナイン・フルオフェンス)!」
サカマキはぴこんと立った耳をぺたりと伏せる。モードチェンジのための一時的なスリープモード。そして再起動した時、瞳はきゅるりと敵だけを見据えていた。
「移動に必要な演算を姿勢制御に充当。当機は足を止めての射撃戦闘に移ります」
「さて……開戦、だな」
遥か遠くと見えた船団は、
「賞金首だ! 行くぜぇぇ!!」
もうドロップアウト・ルーキーズ達の威勢だけの叫び声が聞こえるまでになっていた。
言うだけなら誰でも言える。ドロップアウト・ルーキーズ達の、根拠の欠片も見えない野心に対し、オリフィスは声さえも武器にする。
「おりゃー!!! 先・制・攻・撃っ!!!」
音のバズーカは空気の層を貫通してドロップアウト・ルーキーズ達の船団へ直撃。舳先から船体をべきべきと剥がし吹き飛ばしていく。
「ぎゃああぁ耳がぁぁぁ!!」
大剣を構えてニヤニヤ笑っていたドロップアウト・ルーキーズ達が軒並み剣を取り落とし、耳を塞ぎながら悶え苦しむ。指向性の高いラウドボイスがまずは敵陣を斬り裂いていった。
「ぼくは飛び込むからねっ! 後ろからの狙撃はよろしく!」
「任せておけ」
「了解。当機は射管狐を用いての迎撃を実行」
的は船上で暴れ回っているが、船と、波と一体化した光明の狙いに狂いはない。集中力は波の音すら消すほどのゾーンに光明を落とし込む。
一射必中。束ねた矢をバッと視線の先へと放つ。放射状に広がった矢はスコールのように敵船団へと降り注いだ。
「うげっ!!」
ドロップアウト・ルーキーズの腹にぶすりと突き刺さった矢がその体を貫通し、船体までも射抜いていた。霊力を籠めた鏃が淡い光を帯びながらぶくんと海の中に飛び込んで、海水が静かに船を沈めていく。
「ぎゃあ!」
「いでぇ!」
乗り手の分だけ船に穴が開く。ドロップアウト・ルーキーズ達が甲板の上へ集まっていた船はそれだけ沈むのが速かった。
「相手が悪かったな。貴様らにくれてやる首は無いぞ」
ドロップアウト・ルーキーズ達に向けられるのは、鋭い鏃と冷酷な真実。光明はそれを躊躇いなく放ち続け、船と言う船に穴を開けていく。
「目標捕捉――発射」
サカマキはキョンシーのように真っ直ぐ前へと伸ばした両手から電磁弾を放っていた。管狐型の電磁弾は宙を駆けて一直線にドロップアウト・ルーキーズ達の懐まで飛び込んでいく。
「ぐぎゃっ!」
持っていた大剣はなまくらであっても金属だ。避雷針のように雷を呼び込みその体を打つ凶器となった。びりびりと痺れて筋肉に電気信号が走らず、ただの置物となったドロップアウト・ルーキーズ達はごとりとその場に倒れていく。
「やっべ、こっちか!?」
そこへ逃げればよいという根拠は何一つない。強いて言えば山勘という役立たずな思考は、己の命と引き換えに船尾を献上することとなった。電磁弾がバリバリと船を突き破ると、溶けた氷山が海に沈むが如く船尾が滑り落ちていく。
「だああぁぁ!!」
ゆっくりと傾く船体に、どうにか落ちまいとドロップアウト・ルーキーズ達は船の前方へ駆け込んだ。
「対象の回避行動は非論理的ですが、物理法則を無視したものではありません。移動速度も向上している模様……よって、それを上回る反応速度による第一射回避後の隙を付いた第二射を実行」
両腕に電磁力を溜めて管狐を再度射出。そして即座に次弾装填。管狐は持ち上がって露になった船底を食い破ると、甲板から飛び出して逃げ回るドロップアウト・ルーキーズを撃ち抜いていく。
ぼちゃん、ざぱんと仲間が次々落ちていく中、単なる偶然で生き永らえたドロップアウト・ルーキーズ達は、
「でぇぇぃ前へ飛びゃどうにかなるっ!」
ダン、と蹴って飛び出した。しかしその先に見たのは、無機質なサカマキの視線。
「対象を殲滅します」
発射された管狐はビームのようにじゅうっとドロップアウト・ルーキーズの腹を焼き焦がす。丸く黒く焦がされた腹の穴はドーナツのようだった。
「やってるねー。やってるねー!!!」
後衛の二人の活躍を感じ取りながら、オリフィスは声を張り上げる。放つ気迫は巨大化してドロップアウト・ルーキーズ達に襲い掛かった。
「あがぁぁぁ!! どっちに行ってもダメだぁぁ!!」
声とは広がりを持つ。山勘で逃げた先にも声は届いているのだから、船上という狭い領域の中では逃げ場など無い。
オリフィスは一つ潰した船の上からまた別の船へと跳んでいく。幅跳びの要領で少しばかりの無重力を感じながら、海風に押されて次の船へと着地した。
「かーらーのーっ!」
そして転がり込みながら逆立ちし、両腕をバネに飛び上がってドロップアウト・ルーキーズの側頭部へ踵を薙ぐ。滞空時間と前方への推進力を利用して溜めを作り、もったいぶるような時間差でゴンと踵をめり込ませた。
ドロップアウト・ルーキーズは横殴りに吹き飛んで船外へ。どぽんと着水する音を聞く間もなく、オリフィスは次の相手へと向かう。
「ちぃっ!」
オリフィスの動きは目で追えたものじゃない。何となく体を傾けて右へ逃げるが、そこで待っていたのは。
「ふっ……とぅっ!」
すらりと伸びた背筋から、回転に合わせて振り回される胸はまだ全貌を明かさない。まだか、まだか――戦場と言うに待ちわびるドロップアウト・ルーキーズへと、強烈な回し蹴りが放たれた。一昔前の携帯電話の如く腹からぐしゃりと折れ曲がった体は甲板を擦れて縁に叩きつけられ動かなくなった。
「あーあ、もうお仲間さんもいないよー?」
オリフィスが相手取るのはこの船の最後の一人であった。オリフィスの行く先を追って無数の矢と電磁弾が到達しており、周りにはドロップアウト・ルーキーズが死屍累々。船そのものも長くは持たない。
「くっ……!」
残された一人は広い海を見回した。あれだけいたはずの船が、もうどこにも見当たらない。知らず孤島にぽつんと取り残された気分だった。
悲愴、幻想。賞金首だ何だと息巻いていたのもいつのことやら。今はこれが白昼夢であることを祈りたかった。
「ハングリー精神はわかるけどさ……空きっ腹には効くよねー、ぼくの蹴りは――さ!」
最後の最後、大盤振る舞いだった。オリフィスは前方へ跳びながら膝を曲げ、力を溜める様を見せてやった。ゆら、と揺れた爪先はどこに逃げようが狙っていると言わんばかりで、ドロップアウト・ルーキーズに絶望という名の現実を見せつけた。
走馬灯すら灯らない。オリフィスの足がふっとドロップアウト・ルーキーズの視界から消えた瞬間、顎を打ち抜かれた感触が一瞬、ギラと目に焼き付く太陽が一瞬、そして目の前が真っ暗になり、肉塊となった体はどしゃりと船尾へ落ちる。
「っと、この船ももうすぐ沈むね……あ、いいところに」
気付けば横付けしていた鉄甲船。
「任務完了。通常モードへ移行します」
「ま、こんなものだな。……帰るぞ」
オリフィスはサカマキと光明が待つ船へと飛び込んで、拠点へ戻るまでの一時の船旅を楽しむのだった。
大成功
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