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羅針盤戦争~汎霊説島の神馬

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #七大海嘯 #カルロス・グリード #オブリビオン・フォーミュラ


「この祠が地霊信仰の要か。仰々しく飾り立ててある。よいか、ここで飼われている神馬こそ島民の信仰を集めし地霊を降ろすための依代だ。これを弑すれば、この島の支配権は我の元へ下るであろう」
 誰にも知られることなく島に乗り込んだ七大海嘯の王はメガリスに囁くようにして“それ”を呼んだ。恐れをこめて邪神と呼ばれし異形のものたち。“それ”らは触手を蠢かせつつ、祠の入口を壊して漆黒の闇の向こうへと忍び込もうとしていた……。

「七大海嘯の目的は蒼海羅針域の中心にある渦潮の破壊だ。そうすればもう、猟兵はグリードオーシャンに来ることが出来なくなる」
 麒・嵐(東方妖怪の冒険商人・f29276)はテーブルに地図を広げ、オブリビオン・フォーミュラであるカルロス・グリードの分身が狙っている島を指差した。
「ここ、古い風習の残るサムライエンパイア島のひとつだね。夜闇に紛れて上陸した『三の王笏』ことカルロス・グリードは島の南西部にある祠に棲む神馬を狙っている。島民の信仰の対象を殺せば、支配は容易に済む……といったつもりかな。実際、神馬が失われれば島民の気力は大いに削がれてしまうだろうから、できればその前に彼を倒してしまいたい」

 祠の周辺は深い森に囲まれており、いまのところ人気はない。カルロス・グリードは邪神に命じて祠を壊そうとしているところのようだ。
「こいつは七大海嘯のうち三の王笏に当たるわけだけど、どうやらUDCアースの力を具現化してるみたいなんだよね。そう、邪神を従えている。なぜメガリスから邪神が召喚されるのかはわからなけど……って、疑問に思ったら相手の思うつぼだな。彼の連れている邪神は謎を喰らい、虚空を睨み、暴食を尊ぶ。狂気に呑み込まれないように、心していってらっしゃい」


ツヅキ
 プレイング受付期間:公開時~常時受付中。

 リプレイは他の参加者とまとめて判定・執筆する場合があります。
 共同プレイングをかけられる場合はプレイング冒頭にお相手の呼び名とID・もしくは団体名をご記載ください。

●第1章 ボス戦
 七大海嘯『三の王笏』カルロス・グリードが祠に奉られている神馬を殺し、島民を支配しようとしています。神馬を守り、島を救ってあげてください。

 プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。
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第1章 ボス戦 『七大海嘯『三の王笏』カルロス・グリード』

POW   :    邪神「暴食せしもの」
【無数の大口を持つ邪神による噛みつき】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    邪神「虚空を睨むもの」
【巨大眼球型邪神の視線による感染呪詛】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    邪神「謎を喰らうもの」
【疑問】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【触手塊型邪神】から、高命中力の【謎を喰らう触手】を飛ばす。

イラスト:hoi

👑11
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マユラ・エリアル
この世界は面白いな
島ごとに景観が世界が変わる
さてと、七大海嘯の王よ
1つ私と手合わせを願おうか


ふむ、UDCの力を具現化する…か
なかなか不思議だな…としまった疑問に思うのは厳禁だったな

右手の鉤爪で弾き受け止め切り払いながら、敵の触手を『武器受け』して攻撃を躱す
うねうねと…全く薄気味が悪い
だが、どうとでもなるさ

さて、反撃の時間だ
鉤爪で接近戦を仕掛けながら『氷刃展開』発動
氷の刃を展開
それぞれを5本ずつの1グループで運用し、敵を包囲するように飛ばす
鉤爪で格闘をしながら氷の刃を操作
敵を包囲したら私自身は飛びのいて離脱
そして時間差で連続射出、回避する暇すら与えないさ
この一撃で落ちろ!

アドリブ連携等歓迎


純真邪神・幼淫魔姫ピュアニカ
対処
何も考えず神罰に集中〜♪

登場と同時に即UC発動
技能値×10×6(60倍)された技能:神罰を用いた落雷の暴風雨嵐
先んじて撃て(先制攻撃)
しこたま撃て(飽和攻撃)
すかさず撃て(連続攻撃)
背中から撃て(背面攻撃)
そして絶えず休まず許さず撃て(最終攻撃)
邪神式料理術の基本中の基本。ピュアニカ流1分半クッキング
邪神の邪神による邪神の為の殲却万雷神罰領域
邪神の怒りを知るが良い……どうなっても知らんけど
さあ、我が手の平の上で踊り足掻き踠き苦しみ死ぬがよい
UC効果終了後はお気に入りの淫魔(装備。自身の美少女百合ハーレムの子)におんぶしてもらって帰る
その姿は無防備でどうみてもただの幼女

すやぁ〜♪すぴぃ〜♡


隠神・華蘭
成る程視線が肝ですか、ではこうしましょう。
手持ちの葉っぱの小判を元に一つに固め、姿見鏡を【化術】で作りだしその裏に隠れます。
そのまま邪神の目を貴方がご覧になってくださいな。

鏡を割られてもそのまま【逃げ足】を駆使して退避し【カウンター】気味に接近して鉈で【切断】、【体勢を崩】させましょう。

さてと、どこの拾いものかは存知ませんが、自分で出してて気持ち悪くないですか? その邪神達。
答えはご自由に。UC発動の為ですので。

出した炎で狙うはもちろん手に持つ杖でしょう、王笏などと言うのであれば尚更。
杖ごと腕を集中放火です。
貴方が倒れるまで気が済みませんので、ずっと燃えててくださいな。


リーヴァルディ・カーライル
…そこまでよ。これ以上先には行かせない

…異郷の神なれど、人々の心の拠り処をお前に奪わせはしないわ

第六感が捉えた敵の殺気や闘争心を暗視して見切り、
触手の乱れ撃ちを戦闘知識を基に最小限の動作で避け、
残像のように攻撃を受け流しつつ懐に切り込みUCを発動

…写し身とはいえ相手はオブリビオン・フォーミュラ

…出し惜しみはしない。全ての魔力を此処で出し切る…!

魔力を溜めた大鎌をなぎ払い触手を切断して早業の武器改造
大鎌が変形した呪詛を纏わせた双剣の2回攻撃で傷口を抉り、
更に変形させた手甲剣を怪力任せに叩きこみ生命力を吸収、
限界突破した闇属性攻撃のオーラで防御を無視して体内から爆破する

…これが、吸血鬼狩りの業よ


矢来・夕立
大きな戦いに相応の難敵です。…でも相手が悪かったですね。

▼先制対策
視線そのものが武器。見ただけで他者を害する。
ほぼ反則の能力ですが――それ、目視できない相手にも通用します?
《闇に紛れる》ことにかけては誰にも負けない自信があります。
もし隠れきるのが難しくとも、直撃…この場合は直視でしょうか。
ともかくまともに喰らうのは避けられると思います。
隠密に注力していれば《暗殺》に持っていくのも容易ですしね。

コイツ偉い人なんですっけ?やりがいがあります。
古来より権力者には暗殺がつきものですから。
それにこの世界はエンパイアと海続きでしょう?
ならこのオレにとって庭みたいなモンです。まず一発殴らせてもらいますよ。


バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ連携など歓迎デース!

島民の大事なゴッドホースを狙うとは不届き千万! 手出しはさせマセーン!
木々に身を隠しながら襲撃を仕掛けマショー!

ふむ、大食らいの邪神を従えているようデスガ……鉛玉は如何デスカ?
向かってくる邪神に対して『内蔵式ガトリングガン』を構え、
UC《ヴァリアブル・ウェポン》で【カウンター】を狙いマース!
奴が何を重視しても、対応して相殺させていただきマース!

この間に他の方のアクションがあれば幸いですが……。
それが望めないようなら一歩ずつ近づいて、射程距離に入ればファルシオンを抜いて切りかかりマース!
召喚魔法使いとはいえ油断は禁物、ヒット&アウェイを念頭に攻めて参りマース!


ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
全く手を変え品を変え……
王気取りもいい加減にせんと足許を掬われるぞ
まァ――今からこちらが掬うのだがな

生憎と呪詛は大得意だ
この身が蝕まれきらないうちは有り難く喰らっておこう
危険な水準になりそうであれば、氷の鏡を作り出して視線を遮ろう
中を複雑に罅割れさせれば、少しは影響も軽減出来ようさ

十全に呪詛を喰らったら――反撃の時間だ
さァ来い【“Níðhǫggr”】
寄越してくれたもののお陰で維持が楽で良い
この場に満ちた呪詛の全て、私が使わせてもらうよ
氷の属性攻撃で強化した爪と尾で、邪神ごと全て斬り払ってくれよう

厄介な奴は徹底的に潰すに限る
幾度現れようとその都度殺すだけのこと
壊すのも殺すのも、得意なものでな


鳴宮・匡
周辺を隈なく深い森に囲まれた土地
――戦場としては申し分ないな

呼吸、気配、情動の一切を殺して
深い森の中に身を潜める

足音を消し、息を殺して闇に身を潜め
敵に捕捉されぬように、周囲の環境を利用して
好機を得るまで、ひたすらに息を殺しておく

その全部が、これまでずっとしてきたこと
生き残るために必要だった“当たり前の動作”だ
今更、恐怖だとか、焦燥だとかに揺れ動くほど柔な心を持っていない
――そういうものをなくした、ともいうけど
こういう時には好都合だ

確実に狙えると判断した場合のみ攻撃に移る
可能なら他の猟兵の攻勢に合わせるよ
相手に捕捉されない状態での一射
この一撃が最初で、本命だ
――間違いなく、頭部を射抜いてみせる


司・千尋
連携、アドリブ可

信仰ってプラスにもマイナスにもなるから面白い


攻防は基本的に『翠色冷光』を使用
回避されても弾道をある程度操作して追尾させる
範囲内に敵が入ったら即発動
範囲外なら位置調整
近接や投擲等の武器も使い
範囲攻撃や2回攻撃など手数で補う

攻撃手が足りているか敵に押され気味なら防御優先


先制含む敵の攻撃は
細かく分割した鳥威を複数展開し防ぐ
割れてもすぐ次を展開
オーラ防御も鳥威に重ねて使用し耐久力を強化
速度や威力を相殺し回避や『翠色冷光』で迎撃する時間を稼ぐ
無理なら防御
間に合わない時は双睛を使用
噛みつかれないよう距離を取る事を最優先で行動
神馬や祠への攻撃は最優先で防ぐ


次は分身じゃなくて本体が出てこいよ


ヴィクティム・ウィンターミュート
オイオイ、今回のフォーミュラは何面相あんだ?
どっからどうやって仕入れてるか知らねえが、此処で死んでもらう
どうせまだ生き返るんだし、快く受け入れたら?

──その邪神の視線がヤベーんだったな
即座に右のクロスボウからフラッシュボルトで【目潰し】
デケエ眼球だろうが、強い刺激はきついだろう
素早く【ダッシュ】して凝視を避けつつ、エクスプロシヴ・ボルトを目に撃ち込んで開けさせない

初撃はこれでいい
さぁ逆転の時間だ──『Illusion』
何の攻撃だと思うだろ?
そら──もう一度視線を向けろ
『座標交換』…俺とお前の位置は入れ替わる
即ち、感染呪詛は"お前が全て受けろ"
ちなみによく知ってるだろうが…途中で止められねえぞ?


ショコラ・リング
戦闘中には一瞬の判断の遅れが命取りになりますからね、心を落ち着けボクは自分の直観を信じて疑念を抱かず攻撃するのです

全身を外套で覆い、イヤーマフで耳栓をし、目を瞑った状態で、息を止め、自分の第六感に従い弓を引き放ちます
五感を絞り、相手の言葉や行動、自分に向けられるものを極力省く事で疑問の感情を抱かないようにするのです
邪神を出して的を増やしている事も考慮にいれ、射る必要がある方向が複数あれば、迷わず可能な限り全てに攻撃を放ち
攻撃後はそれが成功したと信じ、そのまま離脱いたします

アドリブ可です


非在・究子
【SPD】
じゃ、邪神「虚空をにらむ者」、は、し、視線を介して、感染呪詛を、使う……こ、この、戦闘、フィールドは、深い、森、だ。
あ、相手の、視線を、切る、遮蔽には、こと、欠かない、わけ、だ。
しゃ、遮蔽も、そんなに、持たない、だろう、から、さ、さっさと、ゆ、UCを、起動、する。も、森の、遮蔽に、加えて、こ、こっちは、ぶ、物理現象を【ハッキング】した、限界突破の、最大、速度、だ。お、お前には、アタシの、影すら、見させは、しない。木々の、遮蔽の間を、最速で、駆け抜けつつ、『ゲームウェポン』の攻撃を、叩き、込んで、行く。ちょ、ちょっとばかり『現実』を、改変するのは、反動が、大きいが、根、比べ、だ。


ロキ・バロックヒート
【猫ひげ:2人】

世界に不都合を齎すものは邪神っていうんだ
笑って零時くんに告げるよう
疑問に引き込まれる前に【祝福】の光を喚んで
触手どもを封じる

神馬というだけで惹かれちゃうのは
俺様が神様だからかも
馬って結構神話に出て来るよね
だから助けてあげても良いよ

さあ零時くん
海を割っちゃうぐらい凄い魔術を頼むよなんて
冗談でも無茶振りでも必死に応えようとしてくれるのが可愛らしい
いやかっわいいだった
ふふ

かれの魔術が成るまで敵は押さえ込む
【神罰】の光をでたらめに放って【悪目立ち】
影でも【捕縛】し【時間稼ぎ】
削れるものがあっても惜しくはない
未来の最強最高の魔術師の至高の光を
この眼に焼き付けるのみ
あはは!君は最っ高だよ!


兎乃・零時
【猫ひげ:2人】
なんで邪神…?いや、まぁいっか
頑張ろうぜ、ロキ!
神馬は殺させねぇ!

ロキがUCを無効化してくれる
なら疑問を挟む余地はない
…俺様は、それに応えれば良い!

事前に長々と口で詠唱しつつ
【魔力溜め】杖から魔力文字創り疑似的な【多重詠唱】

魔力の【操縦】
複数の魔術繋ぎ
己の全て此処に込める

光線《レイ》の魔術を複数作り
それを螺旋が如く束ね、付与の魔術で光線そのものを強化
ただ一点を穿ち貫く、邪の一切を吹き飛ばす一つの攻撃魔術を練り上げる!

―――成った、いくぜ

これが俺様の光線魔術の最大火力!

光【属性攻撃×全力魔法×限界突破×覚悟×貫通攻撃×衝撃波】

   ロード=グリッター
――《闇夜晴らす螺旋の道》ッ!



 ――実際に訪れてみると、その場所が戦場としては申し分のない場所であることはすぐにわかった。鳴宮・匡(凪の海・f01612)は息や気配どころか、情動の一切すら殺して深い森の中に身を潜ませる。もう――彼がさっきまでどこにいたのかすらわからなくなった。
「……そこまでよ。これ以上先には行かせない」
 背後からかけられた声に祠を壊していた触手が動きを止めた。振り返った先にはリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)とマユラ・エリアル(氷刃の行方・f01439)。
「1つ私と手合わせを願おうか。七大海嘯の王よ」
「せっかくだが……」
 第三の王笏は心からそう思っているような憂いを浮かべ、手にしたメガリスに唇を寄せた。ざわりと空間が歪み、顎――そう形容する他ない。それも、巨大な――が牙を剥いた。
「君たちの相手をするのは私ではなく、この邪神だ。見れば賞金首の猟兵の顔もちらほらと。いい機会だ、屠ってやれ、暴食せしものよ」
「なんの……!」
 リーヴァルディの産毛が総毛立ち、危険を告げる。
 ――極上の、殺気。
 恐れを抱かせ、闘志をもぎ折るためのそれもリーヴァルディにとっては敵の動きを躱すための手がかりとなる。
「ほう?」
 あまりにも早い回避は残像となって敵の目を惑わせ、触手の群れを攪乱する。
「やるな、しかし――!」
 突如、邪神が動きの角度を変えて一直線に狙いをつける。司・千尋(ヤドリガミの人形遣い・f01891)はとっさに細かく分割していた鳥威をひとつにまとめてこの突進を防いだ。
「舐めてもらっちゃ、困るな……!」
 衝撃に震え、皹が入る。
「無駄だ」
 派手な音がして鳥威が割れた。
「――無駄はどっちだよ?」
 だが、すぐに新手を展開。裏側より貼り付けた気膜が欠けた場所を補い、耐久力を底上げる。
「そのまま引き付けていてクダサーイ!!」
 調子っぱずれな喋り方とは裏腹に、バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)の弾幕は確実に攻撃の要所を突き、敵の侵攻を抑え込む。
「どこからだ?」
 しかし、木々の陰に身を隠したバルタンの姿は闇にまぎれて捉えづらい。射角を手掛かりに探す他ないが、首をめぐらせて探そうとした途端に横っ面を鉛玉で叩かれてはそれもままならなかった。
「島民の大事なゴッドホースを狙うとは不届き千万! 手出しはさせマセーン!」
「ち……、暴食せしものだけでは切り抜けられんか。ならば――」
 第三の王笏がメガリスを撫で回す。虚空を睨むもの。巨大な眼球型の邪神が宙に浮かび、ぎょろりと血走った眼を左右に動かした。

 ここに、矢来・夕立(影・f14904)という男がいる。わざわざ説明するのはそうでもしないと彼が“いる”という証明ができないからだ。
 闇に紛れるという一点にかけて、誰にも負けない自信があった。
 たとえ相手が邪神であろうとも、闇より出ずる狂気の化身であろうとも、大きな戦いに相応の難敵であろうとも。
 ――さあ、できるものなら見つけてごらんなさい。
 夕立から十四時の方向に数十メートルほど離れた場所では匡が好機の到来を待っている。恐怖や焦燥など匡には無縁。あるいはなくしてしまったのかもしれないが、それはそれで好都合だと彼ならあっさり受け入れるだろう。
「ふ、深い、森、は、アタシ、達に、ゆ、有利……!」
 非在・究子(非実在少女Q・f14901)は一心不乱に木々の間を駆け抜けた。目論見通り、敵は愚直にこちらの動きを追ってくる。
 だが、究子の方が上手であった。
「どうした、早く見つけ――」
 第三の王笏も気がついたらしい。
 究子の動きが速まったのだ。勝つためならばどんなチートを使うことも厭わない。手当たり次第に物理現象をハッキング。空気抵抗をなくし、筋力を増強させ、酸素濃度をアップ――もはや影さえも捉えること叶わず。
「もし、よろしいですか?」
 ふとかけられた声に眼球型の邪神が振り返った。
「――――」
 鏡だ。
 そこにあったのは言うまでもなく自分の姿。
 視線、視線が――。
 瞬く間に呪詛が邪神の全身を覆い尽くし、ひくひくと痙攣を繰り返す。鏡は隠神・華蘭(八百八の末席・f30198)が手持ちの葉の小判を元に化術で作り上げたものであった。
「鏡を割れ!」
 だが、その時にはもう華蘭は遠くまで逃げてしまっている。だんだんと邪神側にいら立ちが募り始めた。なぜ、こいつらには攻撃が効かないのだ?
「そりゃあ、この身が呪詛の申し子であるからだろうよ」
 ふふっ、とニルズヘッグ・ニヴルヘイム(竜吼・f01811)は肩を竦めて邪神を眺めやった。汚染されゆく手足が赤黒い紋様に染まり、宿主を呪いに堕とそうと蠢いている。ニルズヘッグは涼しい顔でそれを見下ろした。
 それがどうした、と言わんばかりに。
「……忌み子、か。ならば」
 眼球型の邪神が3体に増えた。
「これならどうだ、さすがに持つまい」
「ふむ。まあ、“奴”の餌にはこのくらいでよかろうな。後は返してやるよ」
 無造作に向けた手のひらの前に氷の鏡が出現。よく見ると、複雑に罅割れた模様が白く表面を濁して視線が集まらないように細工してあるようだ。
「壊せ」
 第三の王笏が暴食せしものに命ずる。
 一瞬、その意識が眼球型邪神から逸れた。その一瞬をヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)は完全に生かしきった。
「な――」
 クロスボウから放たれた雷閃が邪神の眼を機能不全に陥らせたのである。目潰しをくらわせた方のヴィクティムは回復される前に次の攻撃を放っていた――大爆発。
 
 邪神のうちふたつまでもが無力化された事態は七大海嘯の王たる第三の王笏を少なからず驚愕させた。
「よもや、まさか。UDCアースより呼び寄せた彼の世界の邪神をもってしても歯が立たぬとは」
 そもそも、と兎乃・零時(其は断崖を駆けあがるもの・f00283)は首を捻る。
「なんで邪神……? っと」
 ロキ・バロックヒート(深淵を覗く・f25190)の指先でちょんと唇を抑えられ、零時は口をつぐんだ。
「世界に不都合を齎すものは邪神っていうんだ。闇、狂気。それらを根源とする存在には――これが効くだろう?」
 俄かに辺りを照らす祝福の光。祠の中で奉られていた神馬が反応したように鼻を鳴らし、ゆったりと首をもたげた。
 ――大丈夫、助けてあげても良いよ。
 ロキの神の血がそうさせるのだろうか。ふと、力を貸してやる気になったのだ。気まぐれに笑い、零時を背に庇うように歩み出る。
「さあ、零時くん。海を割っちゃうくらい凄い魔術を頼むよ」
「ああ、頑張ろうぜロキ! こんなやつらに神馬は殺させねぇ!」
 零時は杖を握り締め、魔力を貯めるための詠唱に入った。言葉で紡ぐ他に杖の先からも呪文の羅列が宙を埋めるように迸り、多重詠唱の魔法陣が花開く。
 相変わらず、凄い。
 ぞくりとするものが背筋を込み上げ、ロキは愛しげに目を細める。自分を信じ切って、冗談でも無茶振りでも必死に応えようとしてくれるのが可愛らしい。
「――いや、かっわいい。ふふ」
 神罰の光に触れられず、蹈鞴を踏む触手を純真邪神・幼淫魔姫ピュアニカ(永遠に無垢なる幼く淫らな魔貌の姫【邪神潜水艦艦長】・f30297)の暴虐なる大嵐が蹂躙する。
 慈悲も容赦も欠片もない、限界まで――いやそれすらも突破した超弩級の神罰が襲いかかったのであった。
「あははっ! ふれふれ~♪」
 ピュアニカ曰く、『邪神の邪神による邪神の為の殲却万雷神罰領域』とやらはあまりにも箍の外れた狂おしき暴風を引き起こして周囲の木々ごと薙ぎ倒し、岩をも粉砕し、触手の群体を敢え無く地面へとひれ伏させた。
 邪と言えども、曲がりなりにも神の名を持つ者を――だ。
「くッ……貴様の力はその程度か!?」
 第三の王笏に叱咤され、ぐぐ、と体を起こそうとして触手が悶える。
 だが、ショコラ・リング(キマイラのアーチャー・f00670)の弓矢がそれを射抜いた。全身を外套で纏い、五感の全てを覆うか閉じるかして。ましてや息すら止め、勘だけを頼りに狙いを研ぎ澄ます。まるで自動的に、あるいは反射的に。触手の居場所を感じ取った先からそれらを躊躇なく射抜いていった。
 この世界は面白い、とマユラは思う。崩れかけた祠には見たこともないような飾りの注連縄がかけられていた。
「この島にはこの島の信仰がある。それを奪うなど、誰にも許されんよ」
 蠢く触手を右の鉤爪で弾き、タイミングを見計らう。
「それにしてもうねうねうと……全く薄気味が悪い」
 だが、そのようなものはどうとでもなる。マユラはほくそ笑み、軽やかな体術で攻撃を躱しつつその時を待った。

 最初に反撃の狼煙を上げたのはリーヴァルディとバルタンであった。触れるだけで火傷するほどの魔力を宿した大鎌の一閃が触手を薙ぎ払い、道を切り拓く。先に飛び込んだバルタンのファルシオンが大口を開けた邪神の大本である喉部分を深々と斬り裂いた。
「今デース!!」
「任せて……!!」
 リーヴァルディの大鎌は双剣となり、バルタンのつけた傷を更に抉り広げながら手裏剣型に変形させたそれを力の限りに叩き込んだ。
「……これが、吸血鬼狩りの業よ」
 全ての魔力を注ぎ込んだ闇の波動が膨張し、内部から弾けて爆砕する。そつなく離脱して巻き込まれるのを避けたバルタンと入れ違いでマユラと華蘭が躍りかかった。
 鉤爪が触手を薙ぎ払い、鉈が眼球を維持する神経を切り落とす。
「どこの拾いものかは存知ませんが、自分で出してて気持ち悪くないですか? その邪神達」
 そっと、華蘭の問いかけは第三の王笏の心の隙に入り込むような自然さで紡がれた。だから一瞬、彼は真面目に考えてしまった。
 ――いつの間にか、マユラの氷刃による包囲が完了しているとも知らずに。
「この一撃で落ちろ!」
 戦場を幾つかの組に分かれた氷刃が取り囲み、華蘭の青白き火の玉と一緒になって四方八方から襲いかかる。
「わたくしが満足する答えをくれない限り、その炎は消えませんよ。もっとも、貴方が倒れるまで気が済みそうにありませんけどね?」
 煌々と燃ゆる炎は杖を握る腕を目がけて殺到した。避けようとすれば次々と降り注ぐ氷刃に動きを封じられてしまう。
「この、程度で……七大海嘯の王たるこの我が……ぐはッ――」
 ここぞ、と火力に優れる者たちの一斉砲火が始まった。くすくすとピュアニカは無邪気に微笑み、その外見とは裏腹なる怒涛の攻撃にて対象を弄ぶ。
「邪神式料理術のあじわいは、どう? ピュアニカ流1分半クッキング~♪」
 落雷を受け、丸焦げになった触手のフライが一丁上がりである。背面から使役していた触手の壁がなくなり、千尋の光弾が直接敵の本体に届くようになった。
 すい、と指先の細やかな動きで軌道を操作し、できるだけ多くの攻撃を当てられるように神経を集中する。
「信仰ってプラスにもマイナスにもなるから面白いよな」
「フン、土着の神を殺して王気取りなど片腹痛いわ。策士策に溺れるという格言を知らんのか、第三の王笏とやら?」
 俄かに力の奔流の向きが変わった。それまでニルズヘッグの内へと流れ込んでいた――溜め込まれていた呪詛の魔力が、今度は外に向かって迸ったのである。
「なに?」
 第三の王笏には避ける暇もなかった。
 放出された呪詛を喰らうように顕れた骸魂がニルズヘッグの身に宿り、瞬く間に凍て付かせた爪刃で敵を裂いたのである。
 続けて足元を狙ったのは、その身に思い知らせてやるためだ。厄介な奴は徹底的に潰す。殺す。幾度現れようとその都度、何度でも。
 ――王気取りもいい加減にせんと足許を掬われるぞ。
 氷尾で足を払ってやると、大きく相手の態勢が崩れた。
「悔しかったら、次は分身じゃなくて本体が出てこいよ」
 祠に余波が行かぬよう、割り振った鳥威と双睛を背にして千尋が告げる。短刀や鈍器の混ざった光弾の激しい攻めに、ショコラの狙撃が加わった。
「ち、い……!」
 右肩を貫かれ、第三の王笏の手からメガリスが転がり落ちた。手応えありと見て、ショコラはそのまま離脱する。
「よ、し、今だ」
 木々の遮蔽の間を駆け巡り、迂回して敵の背後に出た究子はここぞという機会を逃さなかった。
 ゲームウェポンが現在最もふさわしい形状に変わる。あと少しだから、耐えろ――現実改変の重みを堪え、究子は思いっきりそれを振り下ろした。
「ッ!!」
「ど、うだ!」
 華蘭の火玉に撒かれていた左手から遂に杖が転がり落ちる。それが合図だった。
「さぁ逆転の時間だ」
 ――ヴィクティムは囁くようにプログラムの名を告げる。『Illusion』。まるで手品みたいに。
「そら──もう一度視線を向けろ」
 制御を失った邪神は焼けただれ、原形を留めていない眼球をぎょろりと開ける。だが、そこにヴィクティムはいなかった。
「な……」
 目が合ったのは、第三の王笏その人。
「状況がよくわかってないようだから説明してやる。『座標交換』……俺とお前の位置は入れ替わった。即ち、感染呪詛は"お前が全て受けろ"」
 呪詛に塗れ、苦悶に身を捩る相手に止めの一言をくれてやる。ヴィクティムは人の悪い笑みを唇に刻み、言質を取った。
「ちなみによく知ってるだろうが……途中で止められねえぞ?」
「ち、畜生……!! 覚えていろ、きさ」
 本性を剥き出した男の胸と側頭部から片や白刃、片や銃弾が飛び出した。何の前触れもなく、突然に。
「は……ッ?」
 敵が愕然と目を見開くのを察し、背後にぴたりと忍び寄っていた夕立は哀れみと蔑みの混ざり合った眼差しを向ける。
 その手には抜き身の脇差。刃は胸の真芯を貫き、赤い血を滴らせている。
「ここはオレにとって庭みたいなモンなんで。偉い人なら、そういうの荒らされたくない気持ちわかってもらえますよね」
 ――暗殺。
 この時のためだけに息を潜め、待ち続けた。
「な、なんという……なんという精神力、胆力……」
「いや、“当たり前の動作”だよ」
 あまりにも自然に匡は立ち上がる。ずっと息を殺し、地面に伏せて銃を構えていたというのに。おはよう、とでも言い出しそうなほどに気負いなく前髪をかきあげた。
「王だなんだと偉ぶるなら、もう少し警戒をすべきでしたね」
 夕立は肩越しに振り返り、
「止めが来るようですよ。では、さようなら」
「じゃ~ね~。すやぁ~♪ すぴぃ〜♡」
 幼淫魔姫に仕えし忠実なる淫魔に背負われ、ピュアニカは夢心地で戦場を後にした。
 そして――来る。
 ぎりぎりまで捕縛に使った影をその場に止め、傷から流れる血を拭うこともなしにその両眼を見開き、ロキが叫ぶ。
「零時くん、いっちゃえ!」
 ――光線《レイ》の魔術が縒り上がる。
 幾つもの層を重ね、螺旋が如くに束ねて。
 ただ一点を穿ち貫く、邪の一切を吹き飛ばすための攻撃魔術が今ここに練り上がる。
「―――成った、いくぜ」
 白夜。そう錯覚するほどの静けさと明るさに島は包み込まれた。驚いて家の外へ飛び出した住民たちは白々と明けた空を見てそこに天啓を知るだろう。
「ロード=グリッター――《闇夜晴らす螺旋の道》ッ!」
 遍く闇を照らし、導きの道を指し示す。
 まるで光それ自体が質量を持っているかの如き、圧倒的なまでの殲滅力。敵性存在を千々に滅し、跡形も残さずに無へと帰すほどの。
「あはは! 君は最っ高だよ!」
 刮目し、焼き付けた光をロキは忘れないだろう。これこそが最強最高の魔術師が誇る至高の光だ。
「お、おぉ……――!!」
 光に呑まれゆく第三の王笏が最期に漏らしたのは陶酔の溜息であった。やがて光が収まった時、島は再び夜の帳に閉ざされていったのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月03日


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト