羅針盤戦争〜祈りは邪悪なる獣となった
●森羅の巫女の祈祷術
ジャングルに声が木霊する。それは言語化できているかどうかもよくわからない、不気味な祈祷。
「#$%&@+~~!」
森羅の巫女、と呼ばれるコンキスタドールの集団が祈りを捧げるモニュメントは材質不明の巨大な塊。敢えて形容するならば「巨大な子宮のよう」であった。
そのモニュメントが祈りに応えたか。ジャングルには怪物化した海獣達が次々と生み出され、島を跋扈する。もはや人が住めたものではないその島は、巫女達と海獣達の安息の楽園。
今なお、巫女達は祈りを捧げ続けている。それが天命であるかのように。
●島を解放せよ!
「ついに来ましたね……大きな戦い。『羅針盤戦争』開幕です!」
ロザリア・ムーンドロップ(薔薇十字と月夜の雫・f00270)はぶんと右手を大きく突き上げた。この戦いがグリードオーシャンという世界の命運を分ける。
「では、作戦の概要を説明しますね!」
ロザリアは頑張って『ぐりもあのーと』に書き起こした作戦を読み上げる。
「私が皆さんをお連れするのは、不気味なコンキスタドール『森羅の巫女』の集団が居座る島になります。そこは島全体をジャングルが覆う島なのですが、この森羅の巫女が怪物化した海獣達を生み出して、島を占拠しているんです」
怪物化した海獣達とは――鮫だとかトドだとか、そういった海の生き物たちが怪物となったものらしい。それらは全て元の生物の特性は保ちながら、人間のような四肢を得てジャングルを徘徊し、侵入者には容赦なく襲い掛かる。危険な怪物だ。
「ですから皆さんには、ジャングルと怪物に対処しつつ、島の中央を目指して頂きたいんです。中央には森羅の巫女達がいますが、彼女達を攻撃する必要はありません。彼女達が祈りを捧げる対象としているモニュメントがあり、それを壊せば彼女達も、怪物達も、皆どろどろに溶けてなくなってしまいます」
一瞬の隙を突いて一撃必殺。それが今回求められる戦い方だ。とは言え怪物化した海獣達もいるため、それらについても戦うのか、はたまた目を盗んで回避するのか。それについては、現地へ向かう猟兵諸君が自分のやりやすい方法を取ればいいだろう。
また、ジャングルはジャングルで人などちっぽけに見えるくらいの大自然。島の中央を目指すうえで、この大自然にどう対処するかも考えておきたいところだ。
これらの脅威に対処することができれば、より早く島を解放することができるだろう。
「なんだか長期戦が予想されるので、一つでもたくさんの島を解放していきましょう! 宜しくお願いします!」
沙雪海都
沙雪海都(さゆきかいと)です。
一時期島開拓にはまっていたグリードオーシャンでの戦争となります。
●フラグメント詳細
第1章:冒険『怪物化した海獣たちの無人島』
ジャングルを突き進み、島の中心を目指しましょう。
そして巫女達が祈りを捧げるモニュメントを破壊すればミッションクリアです。
道中には怪物化した海獣達がうようよ。
戦うか避けるか、何かしらの対処を考えておくといいかと思います。
また、ジャングルですので方向がわからなくなったり、底なし沼にはまったりするかもしれません。
そんなハプニングに対応できる何かを考えておいてもいいかもしれません。
つまり【プレイングボーナス】は「ジャングルと怪物海獣に対処する」です。
宜しくお願いします。
●MSのキャパシティ
できるだけサクサクいければいいなあと思ってます。
合わせプレイングはお受けできません。申し訳ないです。
でも複数採用リプレイとかは気まぐれで書いたりするのでソロ希望の方は明記しておいてください。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『怪物化した海獣たちの無人島』
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POW : 怪物化した海獣の脅威を打ち払って前進する
SPD : 不気味なジャングルを探索して、目的地である島の中心を目指す
WIZ : ジャングルの生態や、海獣の行動・習性などから、島の中心地を割り出す
👑7
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
シャルロット・クリスティア(サポート)
では、少しお手伝いさせて頂きましょうか。
ユーベルコートは指定内であれば特に制限なく。
射撃とトラップを得手とする、言ってみればゲリラ兵です。
後方支援や攪乱、偵察などをメインにやらせて頂きます。
表立っての活躍は難しくとも、他の皆さんが動きやすいような根回しと行きましょう。
人道には極力配慮しますが、必要であれば毒や裏工作と言った手段も厭わず。
憎まれ役が必要ならこちらで引き受けます。
綺麗ごとに拘って味方の被害が大きくなっては目も当てられませんから。
もちろん、場の空気はなるべく読みますがね。
『楽して勝つ』が基本的スタンス。スマートに進めていきましょう。
●単調な頭脳を誘え
鬱蒼としたジャングルをシャルロット・クリスティア(弾痕・f00330)は駆けていく。地上にまで剥き出しになった太い木の根を踏み台にして高木を駆け上がり、怪物化した海獣達の上空を取る。
うろつくのは手足の生えた鮫が数体。密集する木々の枝葉に阻まれ狭くなった視界でも数体だ。ジャングル全体では数十、あるいは百に上るかもしれない。
(私は言わばゲリラ兵……後の方々、頼みます)
枝を渡りジャングルを征く。その過程でいつの間にか仕掛けられていた投網トラップは、地上へひゅるりと伸びたロープに海獣達が引っかかると作動する。
何体でもいい。動きを鈍らせることができれば僥倖。そう思い、広い範囲に罠を置く。外れたとて、罠は雪だるま式に無数の罠の存在を仄めかす。そうすれば海獣達は警戒し、新たなる存在に距離を置く。
「ギャウゥゥゥウウァァァ!?」
背後で唸り声が上がった。振り返れば、罠を仕掛けた木々がバキバキとなぎ倒されていく。きっと海獣達は、自身の体に引っかかった網を強引に引き回し、その怪力で幹ごと折っていったのだろう。
「……よし」
地形の異変は海獣の存在を周囲に伝えることにも繋がる。シャルロットは継続して罠を仕掛けていった。
成功
🔵🔵🔴
神海・こころ
◆巡回飛行作戦5回目
島内での依頼は思いっきり空を飛べるから最短最速で驚異を取り除いちゃうぞ♪
ヒーローは空からやって来る
鳥か? 飛行機か? ……いえ、ただの黄金バットを振り回す脳筋です♪
「スーパー・ジャスティス」で「飛翔能力」を自身に付与
黄金バット二刀流で
見敵必殺(サーチアンドデストロイ)の精神で見つけ次第デストロイ♪
大分見慣れた光景かも?この島は大きいのも居そうだし
大物狙いで露払いしておこうかな?
パワーレベリングみたいな感じだけど
本命と対峙するまでに強くならないと
黄金バットでぶん殴り
気絶した海獣たちを山の様に積み上げ続け
山の上から謎の塊が見えるようなれば
投擲+貫通攻撃で遠距離の一撃を加えます
片桐・公明
【SPD】
事前に島の地図を取得し記憶していく。
島に到着した後は周囲を素早く観察して、UCを駆使して探索する
行動の痕跡や振動、鳴声などの怪物から発せられる情報に注意を払うことで怪物と遭遇しないように、されど中央部には最短距離で向かうようにする。
怪物を発見した場合は気づかれる前に隠れてやり過ごす
目標は手早く妖刀で解体する
「しかし、まぁうっとおしいわね。焼き払ったほうが速かったかしら。」
(絡み、アドリブ歓迎です。)
鈴木・志乃
UC発動。
戦闘ダメ、絶対。情報もよくわからん内に戦闘する気になれない。何かあるといけないし。このUCで探索に集中してガンガン進むよ。
常に目印は付けるようにしようか。念動力で色付の紐を枝にくくるとか、ナイフで傷を付けるとかかな?
方角は時間帯が分かれば影の向きである程度把握できる。
夜になれば星が目印だ。グリシャンに北極星あるかな。
マッピングは怠らず、方位磁針も忘れずに。
さて、海獣達の習性には結晶を守るものがありそうなんだけど、どうだろう。観察することによって分かること、あるかな。
栗花落・澪
可愛い動物に…人間の足?
可愛くない…なんで…(虚無顔
とりあえず★靴に風魔法を宿してふんわり浮かぶ事で
足音を立てないように
生い茂る木の影に隠れながら進むよ
戦いも避けられるなら回避したいし
通った道の木には目印に傷をつけて
【聞き耳】で怪物達の足音を聞き分けながら焦らず前進
それでももし見つかりそうになったら【指定UC】を
花くらい、ジャングルにあってもそこまでおかしくないし
【範囲攻撃】で周辺の怪物もろとも眠っててもらえると助かるなー、なんて
寝かせちゃった子達の近くにはごめんねの代わりに★飴玉を置いて
無事モニュメントの側まで到達できたら
遠くから植物魔法の【属性攻撃】
祈りの邪魔はしないよ
僕も捧げる側だからね
アハト・アリスズナンバー
なんつーか。恐ろしい島ですこと。
ここを余計に探索すると永遠に迷うこと間違いなし。世はスマートに情報を得る時代。私もそれにあやかり、最短ルートを見つけていくとしましょう。
ソード・ソーシャル・ドローン展開。先に行って周囲の情報を確認してきてください。
私はその情報をもとにUCを発動。同個体達に演算させて最適なルートを割り出しましょう。
ついでに足元も怪しければ暗視で事前に底なし沼などを察知しておきましょう。
怪物海獣に対しては相手をしない。どうせ中心を叩けば終わりなのですから、ダッシュとジャングルでのサバイバル知識を生かして逃げ回ります。
モニュメントを見つけたらレーザーライフルで狙撃です。
ティノ・ミラーリア
不気味な島……儀式ってことは、それが完了する前に妨害しないと面倒?
ささっと探して、早い所片付けてしまおう……。
UC≪眷属の召喚≫で「眷属」を増やして島の中へ展開し『情報収集』。
道中の怪物や障害物を先に見付けて回避しつつ、儀式の場所を目指そう。
移動は「影狼」に乗って「纏影」と合わせて『闇に紛れる』ように、
回避が困難なら『先制攻撃』で可能な限り素早く、他の怪物が寄ってくる前に処理してしまおう。
儀式の場にたどり着いたら「狩猟銃」に込めた『鎧砕き』の『呪殺弾』で目標のものを破壊。
アドリブ・連携可
高砂・オリフィス
一撃必殺、ほほう。それはゴッドハンドであるぼくの独壇場! とまではいかないでも、結構腕っ節に自信はあるよ。なんてったって鍛えてるからね
ほらほら見ててね。ばしっと足で蹴り払ってからのユーベルコード! 一撃必殺!
倒した獣の上を飛び石みたく踏み台にしていけば、ジャングルに足を取られるなんてことはなさそうだね
怪物たちにとっては災難かもしれないけど、ぼくらも一歩だって退けないからね。びしばし打ち込んで、ジャングル踏破! がんばるぞ! あははっ
●獣は邪悪なる祈りと消えた
鳥か? 飛行機か? いいや、あれは神海・こころ(心海に沈む・f31901)だ!
そう、こころは空を飛んでいた。スーパー・ジャスティス。正義のヒーローは空からやってくるのが定番なのだ。
その姿は地上から見ると金色だった。スーパーでうんたらかんたらな超人的パワー……でもよかったが、その色の源は黄金バットだった。しかも二刀流。
『ハハッ、こんだけ飛べりゃ気分がいいな』
こころと生死を共にするオウガのシャー君も少しばかり気持ちが躍っているようだ。高速で流れる景色、ビュンビュンと風を切るのはスカッとする。
「いたいた♪ じゃあシャーくん、見敵(サーチアンド)――」
『必殺(デストロイ)!』
こころはぎゅおんと地上へ進路を変えて、深緑の樹海に突っ込んでいく。
地上では二手に分かれた猟兵達。一つは一騎当千の力を掲げてジャングルを猛進する高砂・オリフィス(南の園のなんのその・f24667)だ。
「腕っ節には結構自信があるからね。なんてったって鍛えてるから!」
女性らしさを存分に含んだその体だが、肉付きの良さは何も胸だけではない。腕や足にもしっかりと筋肉の起伏がある。
一撃必殺。それはオリフィスのためにある言葉なのかもしれない。放たれる蹴りは、拳は。如何に海獣達を倒していくのか、見物であろう。
そしてオリフィスが海獣達を倒して進まんとする理由はもう一つ。天然の罠が張り巡らされているジャングルに海獣という足場を築く。そのためには、災難だろうと何だろうと、海獣達には倒れてもらわねばならぬのだ。
「ジャングル踏破! がんばるぞ! あははっ」
軽快な笑い声が響く。海獣達との邂逅は近い。
余計な戦闘は避けるに限る。それもまた一つの選択だ。
「なんつーか。恐ろしい島ですこと」
アハト・アリスズナンバー(8番目のアリス・f28285)はそう呟き、口を引き結ぶ。恐ろしいのは海獣達のみに非ず。ジャングルという大自然もまた、猟兵達に牙を剥く存在だ。
「それに、不気味……儀式ってことは、それが完了する前に妨害しないと面倒? ささっと探して、早い所片付けてしまおう……」
影から作り出した巨躯のオオカミ――影狼に乗って駆けるティノ・ミラーリア(夜闇を伴い・f01828)がアハトの呟きに反応していた。影は音を立てることなく、影から影、闇から闇へと紛れることで姿を虚ろに惑わしていく。
その猟兵達の先頭を行くのは片桐・公明(Mathemの名を継ぐ者・f03969)だ。事前に島の地図を取得することで、島の形状、高低差、樹木の密集度などを頭に叩き込んでいる。現地調査でより正確な情報が得られるまでの道標として公明は集団を引っ張っていた。
「前方……1時の方向、約20メートル、いますよ」
「皆、一旦隠れて」
飛ばしていたソード・ソーシャル・ドローンから転送された情報をアハトは瞬時に他の個体達へ同期し検証、最短経路を割り出す。だが、どうやらその近辺に怪物化した海獣がいたようで、検証結果を伝えると公明は仲間を制して身を隠すよう小声で伝えた。
「何、あれ……イルカ? 手足生えてるけど」
「可愛い動物なのに……可愛くない……なんで……」
鈴木・志乃(ブラック・f12101)は翼を小さく折りたたんで木の陰に隠し、先の様子をそっと伺う。見れば見るほど奇妙な生物。その力はどれほどの物か。走力は。瞬発力は。肉体派に見えて実は魔法でも使うのか?
今のところ情報は視覚に頼るのみ。そんな状況では相手にする気になれなかった。
栗花落・澪(泡沫の花・f03165)にとっては哀しき現実。イルカは円らな瞳が愛らしく、水族館ではアイドルのような存在だ。それが胸びれの下からにょきりにょきりと筋肉の盛り上がった腕が生え、尾びれの付け根からは毛むくじゃらな足が突き出していた。尾びれはまさに尾になって、件の海獣が歩くとぴょこと揺れている。
志乃の横でふわりと浮かびながら、しかし顔は生気の抜けた虚無に覆われ固まっていた。
「この先全ての海獣を避けるなら……10時の方向から迂回するルートになりますが」
「それだと上り下りの激しいルートになるはずなのよね……。印は……つけてるのよね?」
「もちろん」
「……うん、ばっちりだよ!」
迷わぬようにと、志乃と澪が後方で通ってきた道の木に傷をつけていた。それを見落とさぬようにすれば、進路を曲げても迷うことはないはずだ。
だが、海獣の存在で進路を曲げることは、ある意味敵の術中に嵌まるようで口惜しい。
決断のための時間は限られている。
「……そのまま行ったほうが早いよ。私なら、戦闘を回避できる」
「僕も、戦いにならないような作戦、あるんだよ!」
「……それなら、二人に任せるわよ」
「じゃあ、決まり。僕の眷属を先に行かせてみたけど、まだこっちには気づいてないね」
「地形検証、完了しています。前方10メートル付近に突き出た木の根がいくつかありますので、足を取られぬよう、お気をつけて。また、いくつか罠が仕掛けられている様子……垂れ下がるロープには触れぬよう、お願いします」
「それじゃ……1、2の……3!」
タイミングを計った公明の号令で5人は飛び出した。そしてすぐに見えたのは、まるで足を取るかのようにアーチ状に突き出た木の根。それらを跳び越え、または横をすり抜けるように進んでいく。
イルカの姿が大きく映る。存在感があり――そして迫る気配に気づいたか、くるりと尾を揺らして振り向いた。
「キャキャキャ――」
「うるさい、見るな」
鳴き声はイルカそのもので、それがまた憎たらしい。志乃は光球でイルカの目を潰す。眩い光を受けたイルカは太い手で小さな瞳を覆って苦しんでいた。
5人は光に包まれながら突き進む。今度は怪物化したアシカが行く手を阻んできた。光に気づいてか、ヒレで器用に目を隠しながら巨体を生かして突進してくる。
「しかし、まぁ鬱陶しいわね。焼き払ったほうが早かったかしら」
「でも……可愛くないけど、倒すのも可哀そうだよ。だからおやすみなさい。良い夢を」
澪が放つのは、優しく甘い香りを放つ花吹雪。ジャングルに生きる極彩色の花々に負けぬ彩りの花吹雪はアシカを夢の世界へと誘っていく。
アシカは5人の目の前を通り過ぎて、窪みに嵌まって転げて眠る。澪はほんの少しだけ寄り道して、その傍らに飴玉を置いた。
光と眠り。二つの力が猟兵の行く手を守る。そして、海獣達に戦いを挑む彼女達は――。
「大物狙い……いたー!」
クジラだ。それだけでも怪物並みの巨体なのに、さらにそれを支えるだけの、樹齢何百年とかいう巨木の幹のような極太の足が生え揃い、まさにジャングルの主と言えた。
「ゴオォォォォォ!!」
口を開き、咆哮での威嚇。宙をかっ飛ぶこころに空気の壁が襲い掛かっていた。
「むぅおー……負けない!」
壁は突き破るためにある。限界は超えるためにある。クジラとこころの根競べ。どちらが先に音を上げるか。
「でえぇぇりゃあっ!!」
黄金バットをぐるんと振り抜いたこころに軍配が上がった。咆哮が続かなくなったクジラの鼻先をばきゃんと一撃。巨体が踏ん反り返るように持ち上がり、一瞬静止した後、ゆっくりと横倒しになっていく。
ずぅん、と地震が起こったようだった。こころの目的、まず一段目は十分な足場となるクジラの巨体だ。
「シャグシャアァァァ!!」
『――! 後ろだ!』
派手に巨体を転がしたのだ。他の海獣達が気づかぬはずがない。怪物化した鮫が牙をギラつかせ、こころの背後に迫っていた。シャー君が一瞬早く気づいたが、こころの反応が間に合わないか――。
「後ろを狙うのはお互い様だよっ!」
鮫の背後からさらに飛び込んできたのはオリフィスだった。鮫がこころに噛みつく前に、生えた不自然な人間様の足を後ろから蹴り払った。
ガチンと噛みついた牙はこころには刺さらず。そして足を払われ宙を滑る鮫へと追い討ちの一撃が放たれる。
「やっ!」
層になったエラがぐしゃりと潰れ、くの字になった鮫は近くの木に激突してなお勢いが止まらず、地面の凹凸で跳ねて飛んでいく。
「わぉ、助かっちゃったよ。ありがと!」
「どういたしまして! あなた、空から行くって言ってた人だよね? このまま行くのかな?」
「んー……アタシはここから? 強くなるためのパワーレベリングっ。この辺の脅威も取り除いて、山ができたら狙っちゃうぞ♪ って」
「わかった。ぼくはもっと先へ行くから、この辺は頼んだよ!」
一時の共闘。また道は分かれていくが、目指すものは同じと信じ、二人は戦いを挑み続けるのだ。
「ギャアアァゥゥゥ!!」
「ギュギュッギュゥゥゥ!!」
やかましい。明らかに、やかましい。
「気づかれてる……わけではないのよね?」
「えぇ。『彼女達』が戦って、海獣達を引き付けてくれているようですね」
アハトが状況を逐時報告していた。海獣達を極力避けて進まんとする5人の前から明らかに海獣達は減っている。引き付け役がいるからだ。
「……! 見えたよ、あれ」
狼を駆るティノが指差す先は開けた場所だった。森羅の巫女と思しき髪の長い女性達が一心不乱に祈りを捧げる。
彼女達の祈りの先には、奇妙な形をしたモニュメントがある。
「祈りは、邪魔したくない……だから、ここから!」
澪は一足先に宙へ留まり、周囲の植物達へ、力を貸してほしいと、祈る。
蔓が、枝が、根が、葉が。あらゆる植物の息吹が巫女達の頭上を越えてモニュメントへと突き刺さり、刻んだ。
丸みを帯びた角の部分がごりっと欠けて地面へ落ちる。敵襲、しかし巫女達に押し寄せる猟兵を止める術はない。
「射線確保……完了」
「あれが目標……一発で、砕くよ」
アハトは立ち止まり、ティノは狼の背から降りる。それぞれレーザーライフルと狩猟銃を構え、狙い撃つ。
ド、バンと続けざまに放たれた二発の弾丸が平行に走り、モニュメントを対角に貫いた。弾痕からびきびきとヒビが広がり、ぼろりとモニュメントが崩れていく。
「あと少し……っ!?」
公明が妖刀を抜き詰めていたところ、突如飛来した黄金バット。鋭角でモニュメントに突き刺さったゴールデンクラッシュが残った上部をごっそり削っていった。
こころが放ったものと気づき、公明はふっと笑みを零す。そして巫女達の間を抜けて。
「ふっ!」
飛び上がりながら妖刀を一つ、二つ、三つと閃かせる。下半分が残ったモニュメントとその台座。それらは豆腐の如く斬られて、ごろ、ごろんと倒れ転げる。
「#$%ォァ&%~~!」
辛うじて呻いているように聞こえた巫女達の叫び。それは溶かされていく巫女達の断末魔でもあり。
一つの島の一つの事件は猟兵達の活躍により、見事解決されたのだった。
大成功
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