羅針盤戦争〜一騎当千はもう古い?
●
「天使よ、俺はお前に期待していない」
金髪の男が、己の前に居並ぶ白き翼をもった女に声をかける。
「お前は突進した先で敵に討たれるだろう。お前は持った爆雷ごと切り裂かれるだろう。そしてお前は、機関砲を撃つ前に敵の光線に砕かれるだろう」
天使と呼んだ女に、次々と無残な最期を告げる男。
「だがそれがどうしたことか。お前が撃たれている間、他の者は敵を抉り、爆破し、蜂の巣にする。それは即ち、お前たちの勝利だ。そして俺の勝利だ」
その言葉を天使は黙って聞いている。感情がないのか、あるいは同意しているのか、少なくとも異を唱える者は一人もいない。
「故に、俺はお前たちに期待している。俺の元に一兵たりと近づけず敵を撃滅せしめる火力と魔力を持つお前たちを」
男の言葉と共に、天使たちは一斉に羽を広げた。
「俺は弱い。だが勝利する。俺はこの弱さを誇ろう。さあ行け天使たちよ。最強のヒーローを、この聡く弱い俺の前に沈めて見せろ」
その言葉と共に、一斉に天使たちは乱気流渦巻くグリードオーシャンの空へと飛び立った。
●
「皆様方、羅針盤戦争の始まりにござる!」
シャイニー・デュール(シャイニングサムライ・f00386)が高らかにそう告げた。
「これより戦っていただく敵は七大海嘯が一人『舵輪』こと『ネルソン提督』にござる」
七大海嘯、それはグリードオーシャンを牛耳る巨大海賊の一人。いきなりの大物登場に、猟兵たちにざわめきが走る。
「彼は己が配下の天使を連れ、とある島を襲っております。ここは元々ヒーローズアースの島で、現在は周囲のヒーロー系海賊たちのトレーニング場となっております。この島にネルソン提督は配下の『天使』なる者を率いて空爆を行っている模様」
グリードオーシャンの空には乱気流があり、どんなものでも空高くを飛ぶことは出来ないはず。だが、その天使たちは魔術的処置によりそれへの耐性を持ち、一方的な航空戦を展開することができると言うのだ。
「この島には現在もヒーローの力を持つ海賊たちが降りますが、彼らも高空を飛ぶことは出来ず成す術もありません。皆様には、どうにかして彼らに代わりこの島を守っていただきたく」
残念ながら飛ぶ敵に対してヒーローたちは成す術を持たない。猟兵だけで何とかするしかないということだ。
「天使たちはネルソン提督の指揮の下、科学と魔力の融合した戦法を使ってきます。ネルソン提督は本人ははっきり言って強くはありませぬ。が、七大海嘯随一の戦略家であり、皆様を見るに即座に天使たちを指揮し、先制を行わせてきます。これを防いでからが戦いの始まりとなりましょう」
強敵おなじみの先制攻撃だが、彼は戦闘力ではなく知力と統率力でそれを行ってくる。今までにない敵とも言えるだろう。
「天使たちはネルソン提督指揮下での集団戦術に長け、全体の勝利のためのみに行動します。交渉や脅迫などは一切通じませぬのでそのおつもりで。また、倒すべきはあくまで指揮官であるネルソン提督でござる。天使たちの相手にかまけてそちらを忘れぬようゆめご注意を」
ネルソン提督は単純な実力ならば七大海嘯最弱である。だが、それは直接の接敵を許さぬ戦術と保有する武力だけで七大海嘯の地位を保持しているということでもある。
「敵はまさに『戦争』の達人と言え申すが、緻密な戦略と完璧な布陣さえ打ち破る圧倒的戦力を持つのが皆様にござる! どうぞ敵の棋譜を破壊しつくして着てくだされ!」
そう言ってシャイニーは、猟兵たちを見送るのであった。
鳴声海矢
こんにちは、鳴声海矢です。羅針盤戦争の始まりです!
今回のプレイングボーナスはこちら。
『プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する』
ボス級おなじみの先制攻撃ですが、攻撃してくるのはネルソン提督ではなく天使たちです。彼女たちの集団戦術をどうにかして躱し、空中戦を展開する天使軍団を突破してください。
ネルソン提督自身は後方にある船で指揮を執っており、こちらから接敵しない限り前線には出てきません。また彼は幹部級ではありますが、単純な実力は低めです(難易度も普通です)。直接の殴り合いになればほぼ後れをとることはないと思いますが、物凄く頭がよくその殴り合いに持ち込むまでが難しい相手ですので、プレイングは天使たちを突破する手段の方に多めに割くことをお勧めします。
島にはヒーローズアースの力を持つ海賊たちがいますが、ぶっちゃけ余り役に立ちません(弱くはないですが航空戦を想像したことすらありません)。島全体がトレーニング施設のような島なので、多少壊しても文句は出ません。派手にやってください。
それでは、BON VOYAGE!
第1章 ボス戦
『七大海嘯『舵輪』ネルソン提督』
|
POW : 天使の行軍
【カタパルトで加速射出された天使の】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【他の天使】の協力があれば威力が倍増する。
SPD : 天使による高高度爆撃
【天使達が投下する爆雷】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【位置と予測される移動範囲】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ : 武装天使隊
召喚したレベル×1体の【透き通った体を持つ天使】に【機関砲や投下用の爆雷】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
イラスト:シャル
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アルミィ・キングフィッシャー
ああ、このタイプは厄介だね。
相性の悪いやつもいるだろう、でもアタシは「この手合」こそ得意な相手なんでね。
相手の攻撃は甘んじて受ける。そのまま水の中に飛び込んで血糊を広げつつ隠者の指輪で姿を隠すよ。あとは慎重に物陰に隠れながら、あと濡れている場所を選んで気付かれないようにクロスボウの射程にまで踏み込むよ。
多分護衛も周りにつけているはずだ、他の猟兵の対応とかで飛び立った時、新しく護衛が来る前の一瞬に引き金を引いて撃つよ。
並のオブリビオンならこの程度で死なないはずだがアンタは違う。
違うからこそ慎重でやり辛かった、褒めてやるよ。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
成程、確かに難敵ですぅ。
まず『FMS』を島の上方、気流よりも下の位置に配置し広域にバリアを展開しますねぇ。
そうして『空爆』を防ぎつつ[カウンター]の『光線』で迎撃しましょう。
或る程度防いだら『FBS』を四肢に嵌め『推進器』に使用、『水着』の効果による『水中呼吸』と合わせ、潜水して船に近づきますぅ。
その際は【耀衣舞】を発動、『光の結界』で『空爆』を防ぎつつ『光速突撃』を『移動手段』に使い一気に船に近づきましょう。
船に近づいたら『FBS』の用途を浮遊に切替え水中から『光速突撃』で一気に甲板へ飛込み、そのまま提督めがけて突撃と『FRS』『FSS』による[砲撃]を行いますねぇ。
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
チッ、戦争開始っていきなり軍隊戦かよ!
甲板に陣取ってるだけじゃジリ貧だ、
遊撃に出させてもらうよっ!
カブを水上モードに変形させて『騎乗』し、
船に先行するように海上から天使隊の迎撃に入るよ。
そうして雷の『属性攻撃』を込めたマシンガンで
『弾幕』を張って『制圧射撃』を『援護射撃』する。
そうして銃撃戦を繰り広げる間に、戦場に静電を満たす。
奴らがアタシの狙いにいつ気付くかがカギだけど、
早く気付いたならただ『範囲攻撃』で押すだけさ。
【超感覚領域】の展開に成功したなら、
天使の悉くを撃ち落とせるよ!
そしてネルソン、アンタまで一直線に続く海路を
堂々と切り拓いてやろうじゃないのさ!
ジェイク・リー
絡み・アドリブOK
アラスとヤマトが切断力を伴った衝撃波を爆雷へ繰り出し、グリムが猛禽類に似た魔獣を使役して電撃を撃ち出す。
エルザにゼノファジを持たせて狙撃銃によるスナイパーで迎撃させ、ヨルに闇属性の追尾弾を撃たせる。
「本気でそいつを振うのか?」
矛の姿をした神器、十束刃を剣や刀に変えてみる。
戦神ですら忠告する危険な神器だと分かるが。
「やるしかねえだろ」
矛にした十束刃と閻羅刀によるきりもみ回転による滑空突撃を繰り出す。
接近できればジョウとフェンを呼び出す。
ベアトリス・ミラー
※ジェイクと行動
絡み・アドリブOK
相手は戦術に長けた相手。とすれば穴はありますね。
邪神竜のコインで対空迎撃用の長距離銃やランチャーを作り出して使わせましょう。
「十束、話には聞いていましたが」
カリコシャ島で伝説として聞いた程度ですが、本当にあるとは。
「ああ、ジョウさんの技を」
カタパルト射出される天使を迎撃しつつ進撃できるのはあの技特有の強みですね。
援護もしっかりと行いますよ。
「最強ではないですよ。私達はカバーし合うだけです」
いくら魔術や化学、戦術等が優れていても仲間と呼べる者がいないのなら勝ち目なんて。
死絡・送
※アドリブ、共闘、絡みOK
「制空権に航空主兵か!」
ジガンソーレに乗って出撃、こっも空中戦で飛ぶ。
敵の先制のユベコの第一波、俺の下の船だけも守る。
他の仲間とも通信でやり取りして協力する。
オーラ防御と火炎耐性を組み合わせてバリヤーを貼り空を飛ぶ盾になる。
気合い、と継戦能力で空でも踏ん張る。
受けて盾になるだけじゃ守れないなら打消しを狙う。
「対消滅ってのを教えてやる!」
ユーベルコードの光子魚雷一万発発射!!を使用し相殺を狙う。
「熱き日輪の輝きを受けろルーチェ・デル・ドーレ!」
必殺のビーム兵器ルーチェ・デル・ドーレで鎧無視攻撃と一斉射撃
を天使共にぶっぱなして敵兵を削るだけ削ろうと試みる。
ついに侵攻を開始した、七大海嘯が一人『舵輪』ことネルソン提督。己の弱さを自覚しつつ、それを火力と戦略で補う近代戦の名手は、一騎当千の兵揃いであった今までのフォーミュラ軍とは一味も二味も違う難敵と言えた。
「成程、確かに難敵ですぅ」
「ああ、このタイプは厄介だね」
歴戦の猟兵である夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)とアルミィ・キングフィッシャー(「ネフライト」・f02059)も、今までにないスタイルのその敵に強い警戒感を示す。るこるは温暖なグリードオーシャンの気候に合わせたか、豊満な体を惜しげもなく曝した眼帯ビキニの水着姿だ。
そんな猟兵たちの不安をさらに煽るかのように、ネルソン配下である『天使』たちが空中から雲霞の如く群れを成して迫っていた。それは数えきれないほどの数がいながら動きにまるで乱れはなく、ただ群れているだけではない統制の取れた『軍隊』であることが見て取れる。
「チッ、戦争開始っていきなり軍隊戦かよ!」
その天使の軍団に、数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)が舌打ちをした。空を覆うその軍団は有象無象の集団とはわけが違う。己の命も手柄も顧みず、ただ全体の勝利の為に動くまさに『駒』であることに徹した軍勢。一人倒すことは容易でも、全てをいなすことが困難を極めるのは見て明らかであった。
ネルソンの指揮の下、既に布陣の完了していた天使たちが持っていた爆雷を一斉に落とし始めた。
「制空権に航空主兵か!」
それに真っ先に対応したのは死絡・送。彼はスーパーロボット『ジガンソーレ』に搭乗し、まっすぐその爆雷へと向かって飛行していった。
ジガンソーレの体表で、次々と爆発が起こる。その爆発に揺らぐことなく、ジガンソーレは気流に届かないギリギリの空中にとどまり続けた。
「俺の下だけでも守る!」
上からの一方的展開を許さないための捨て身の防御。送の送る通信を受けた仲間は、その下で各々準備を整え始めた。
「相手は戦術に長けた相手。とすれば穴はありますね」
ベアトリス・ミラー(クリエイター・f30743)が『邪神竜のコイン』を変形させ対空迎撃用の砲台にし、前方へと向けた。その隣でジェイク・リー(嵐を齎す者・f24231)は己の召喚できる者たちを召喚し、攻撃に対応する。
「とにかく防げ、着弾させるな!」
「任せろ、親父!」
戦神と巨人が刃を振るって衝撃波を飛ばし、さらにその隣では魔術師たちが狙撃と闇の力で爆炎とそれによっておこる閃光を抑え込んだ。
「それではいきましょうかぁ」
るこるも円盤『FMS』を上空に並べ、傘のかかる範囲をさらに広げた。だが、その前方からはカタパルトより発射され、超高速の弾丸となった天使が飛来してくる。それにカウンターをかけるかのように、るこるは光線を放ってそれも迎撃していった。
「前から来るなら」
さらに他の天使をベアトリスの砲台が次々撃ち落としていく。だが、元々何体か落とされるのは予想の内ということか、次々と打ち出される天使は砲撃の合間を縫い、今だ出撃できない猟兵たちへ体当たりを仕掛けてきた。
「甲板に陣取ってるだけじゃジリ貧だ、遊撃に出させてもらうよっ!」
それでも強引に前に出ていくのは多喜。『宇宙カブJD-1725』を水上モードに切り替え、前から迫る武装天使隊にマシンガンを撃ちかけた。敵も機関砲の射撃や爆雷の投下で多喜に攻撃を繰り返すが、先に敵が展開しているのは分かっていたこと。とにかく攻撃してくる敵を足止めすべく、雷属性を込めたマシンガンを辺り一面にまき散らした。
その戦列にアルミィも加わろうとする。だが。
「くぅっ……!」
前に出た瞬間、機銃掃射を受けてアルミィは大きくバランスを崩す。そのまま彼女は海へと落ち、その場に赤い地の利を広がらせながら海の中へと消えていった。
「アルミィさん!」
るこるが彼女を追うように高度を低くする。だがそれを追うように、追加の爆雷が彼女にも落とされた。
水上で連続で爆発が起き、大波が起こる。その炎と揺れが収まった時、るこるの姿もまたそこからなくなっていた。
「ちくしょう……やりやがったな!」
二人が水中に消えたのを見て、多喜が歯噛みする。だが、二人がいなくなったことで一番突出する形となった多喜に、天使たちの狙いは集中した。
「アタシに目を付けたのがアンタの運の尽きさ!」
狙いを付けられたことを近くした多喜が、これまで自分が散々雷を撒き散らした水面に意識を集中させた。それと同時に、水面にいくつものスパークが走る。
「ネルソン、アンタまで一直線に続く海路を堂々と切り拓いてやろうじゃないのさ!」
掛け声と共に海が真っ白に光る。それは【超感覚領域】が起こした電撃の嵐。それは多喜に攻撃の意思を示していた天使を一網打尽にし、天使で埋め尽くされていた海に一つの空白地帯を作った。
「よし……今だ! ここは任せろ!」
先が開けたのを見て、送はジガンソーレの高度をさらに上げた。火炎に耐性のあるオーラのバリアに包まれたその姿は、さながら第二の太陽。しかし、いかに頑丈なスーパーロボットとはいえ敵の攻撃を一身に受ける傘となったのだ。ここまで嵩んだダメージは計り知れない。
「対消滅ってのを教えてやる!」
ジガンソーレの周囲から、大量の魚雷が放たれる。
「全てを光に変えて消す!! 光子魚雷、射て~~~~~~~っ!!」
【光子魚雷一万発発射!!】が天使たちに向けて放たれた。さらに、残る出力を全て砲に回し、必殺のビーム兵器を開く。
「熱き日輪の輝きを受けろルーチェ・デル・ドーレ!」
太陽から放たれた熱線が、ついに空の天使さえも焼き尽くした。だが、ここまで攻撃を一身に受け続けてきたジガンソーレはついにエネルギー尽き、地表へと落下していく。
「……後は任せろ」
最後の操作で被害のない場所へ落ちていくジガンソーレを見ながら、ジェイクは呼び出した者たちの間を抜け一つの剣を握りしめた。
「本気でそいつを振うのか?」
それを見た戦神アラスはジェイクに声をかける。
「十束、話には聞いていましたが」
ベアトリスがかつて別の島で話だけは聞いた武器。正直存在自体を疑っていたが、今目の前にあるとなれば信じるしかない。
「やるしかねえだろ」
戦神すら忠告をする危険な神器。だが、仲間たちが命がけで開いた道が今目の前に広がっているのだ。ここで行かずして何とする。
ジェイクは十束刃と閻羅刀の二刀を矛として目の前に構え、天使たちの向こうを張るかのようにきりもみ回転し開かれた道を突進していった。
「さすが規格外。つくづく人の描いた絵を滅茶苦茶にしてくれる。だが、一度くらいは破られる、それも想定していた。変わりはない、続けて撃ち続けろ」
ネルソンは後方にいた部隊にそのまま前へ動き代わりとなるよう指示する。前線が一度くらい押し返されるのは予想していたのだろう。その動きは極めてスムーズで、再布陣にさほど時間はかかるまい。
そして絶え間なく、当たるか否かを考慮せず機関銃のように打ち出し続けられている天使もジェイクを狙うが、ネルソン自身が認めている通り単体での力には圧倒的さがある。天使は一方的に弾き飛ばされ、ついにジェイクはネルソンのいる旗艦、その甲板へと自ら弾丸となって突き刺さった。
「ああ、ジョウさんの技を」
ベアトリスはその動きを、彼がかつて呼び出した別のものの技と同じと見た。敵の攻撃を弾きながら進めるその技を体得し使用したその選択に感心しつつ、さらに前方へ向けての斉射を放つ。
「やった! 行きやがったな!」
その様子を後方から見ていた多喜も、砲撃に後押しされるように快哉を叫びながら自身もバイクを走らせ旗艦へと向かった。
「天使たちよ、爆雷ごと落ちて奴を止めろ! さて最強の者よ、ここまで来たのは褒めてやるが……もし、俺が誰よりも強かったらどうする?」
通じるはずもない見え見えの安いハッタリを告げるネルソン。だが、彼がそんな安い行動をとること自体が何かを臭わせる。恐らく自身がどう評価されているかを猟兵も知っているのが分かっているのだろう。ジェイクは油断なくさらに自身によく似た男と獣の皮を被った男を呼び出し、完全包囲の構えを作る。
「迷いがないな。どうだろうと全力で仕留めに来るのは変わらないか。なあ、天使どもよ」
ネルソンの陰から天使が飛び出し、ジェイクたちを組み伏せにかかった。そして天使がネルソンの脇から離れた瞬間。
「なに……?」
驚愕の表情でネルソンが自身の脇腹を見る。そこには一本の矢が深々と突き刺さっていた。
「相性の悪いやつもいるだろう、でもアタシは「この手合」こそ得意な相手なんでね」
海面から顔を出しクロスボウを構える女。それは早々に被弾し海の藻屑と消えたと思われていた、アルミィであった。
彼女は敵の先制をあえて受け、自身の血さえもを迷彩として水に沈み、そのまま【隠者の指輪】の力で姿を消しながら物陰を伝って静かに、ゆっくりとネルソンへと近づいていたのだ。
負傷した状態で、ストラクチャーに隠れつつ、疲労するユーベルコードを使いながらのゆっくりとした進行。これだけの事をすれば、たとえ相手にたどり着けたところでまともに交戦する力は残るまい。事実、今のアルミィは今の一矢を放つのが精一杯という状態であった。
だが、それでいい。
「並のオブリビオンならこの程度で死なないはずだがアンタは違う。違うからこそ慎重でやり辛かった、褒めてやるよ」
自分の弱さを知るからこそ守りを固めた相手。敵との交戦を仲間に任せ、完全に相手の意識の外へと自分を追いやって、さらに隠し玉まで仲間に向けさせてのようやくたどり着けたこの一撃。あの相手はこれを狡いなどとは決して言うまい。もし言ったとしてもそれは皮肉なしの賛辞であろう。己同様にそれを知る相手に文字通りに一矢報いたと、アルミィは水の中で敵へ向かって笑んだ。
「ここまで隠密に徹するとは……抜かった、としか言いようがないな……天使よ!」
そのアルミィを仕留めるべく天使を空から数人分け、差し向ける。だがその爆雷は、白き光の結界に当たりそこで爆発した。
そう、アルミィが無事だったということは彼女もまた。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その衣を纏いて舞を捧げましょう」
光の速さを纏ったるこるが、水中から飛び出し天使を弾き飛ばしながら甲板へと突進した。
るこるもまた、水中でアルミィの無事を確認した後は潜行を続け、浮遊戦輪『FBS』を推進器として水中を進み続けた。さらに神器でもある水着の力で水中での呼吸を確保、結界で水上での激戦の衝撃から己を守り、素早くネルソンの元までたどり着いていたのだ。
そのままネルソンへ仕掛けることもできたが、初撃を叩き込めようとネルソンならば即座に対策を考え、前線を崩壊させることなく対応してくるであろう。彼は確かに七大海嘯としては弱いが、不意打ち一発で倒せるほどの弱者ではない。
一瞬の戦線の崩壊と、それに乗じた仲間たちの一斉攻撃。その瞬間を見極めたるこるは今まさに光となって待ちに待った一撃を決めたのだ。
「たったこれだけで俺の軍を抜けるとは……最強の座に偽りなしか」
「最強ではないですよ。私達はカバーし合うだけです」
ネルソンの言葉に、聞こえていないはずのベアトリスが答えた。いくら魔術や化学、戦術等が優れていても仲間と呼べる者がいないのなら勝ち目なんて。そう思いながら彼女は対空砲撃を続け、天使を島に上陸させないよう押し返し続ける。その後方ではジガンソーレから降りた送が傷ついた体を押して機体の上に立ち、島自体を人質に取られる事のないよう天使の進入に備えていた。
「みんな早いぜ! 道作ったのはあたしなのにさ!」
水面でバイクを大きく跳ねさせた多喜が甲板にバイクごと降りる。天使の囲みはついに抜けた。そしてネルソンが『最強』と評した者たちの力と技が、弱き名将に容赦なく叩きつけられるのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
イリス・アンリリンキッシュ
spd
空には乱気流で飛行不可能、その中を自由に飛び回る「天使」…でしたか?
そして相手の位置へ的確に爆雷投下を行わせる提督…空高く飛行しなければいいんですよね?
爆雷を確認してUC発動、ダメージを吸収して熱量として排出、海面付近を加速して私自身を砲弾とします
速度が足りないとしても…的確に投下を行うのなら私は速くなれるでしょう
大事なことは島を守りあの『舵輪』を砕くこと。
一定速度で近づき続けば「物凄く頭が良い」提督は「自身へ到達する時間」を弾き出すでしょうね
【エネルギー充填】、【限界突破】…「電力変換システム(v2.80)」起動、超過加速!
【激痛耐性】もあるので衝突を狙いましょうか!
アドリブ・共闘歓迎
アイソラ・グランホエール
「この世界で空を飛ぶとは…それならこちらは海を行こうか」
水中戦用キャバリアの星海機竜・レヴィア(下半身が水棲恐竜型)に乗り込んで海中から移動。
深海適応しているこの機体で高速泳法で進み、敵からの突進や爆雷は情報収集で攻撃機動を読んで、武器改造で魔力弾を撃てるようにした命中重視ユーベルコードの誘導弾乱れ撃ちで迎撃する。
それでも抜けた攻撃は海という地形の利用をし、念動力で海水を海水を圧縮して壁に、サイキックエナジーのオーラ防御で受け流しながら水中機動で回避する。
敵船に近づいたら攻撃力重視に切り替えたユーベルコードで全力魔法を乗せた砲撃を行う。
「航空戦力だけかい?護衛艦も必要だったんじゃないかな。」
ナイ・デス
一騎当千……というには、ちょっと違うでしょう、けれど
一致団結して、一体となった竜の力……みせましょう
あなたが、天使の力をかりるなら
私は世界に、願いましょう
一緒に、侵略してきた過去と、戦いましょう
『フロンティア・ライン』
体高5mの「ダイウルゴス」で
先制と突撃してくる天使を、迎撃する
【念動力】で受け止めて【生命力吸収】する光を吐いて喰らい尽くす
そして、願う
海水や大気を一時的に竜として、合体、5mが10mに
再びの先制突撃を受け止めて、もう一度合体
先制突撃を受け止めて、大きくなった分、一度に複数体も
【覚悟激痛耐性継戦能力】耐えて
繰り返し、計8回
体高約1kmとなった、巨竜が
【レーザー射撃】で【なぎ払う】
純真邪神・幼淫魔姫ピュアニカ
対空戦闘法を心がけて読心術で心を読んで催眠術で足止めてる間にUC発動
足下の地中から潜水艦の搭乗口が現れ飛び込むよ〜♪
発進っ♪
眷属淫魔87人に操縦を任せて〜♪
地形を利用し最大船速を保ったまま、敵が巨大な程に威力を増す螺旋錐大衝角(ドリルパイルバンカー)による邪神(ぴゅあ)の神罰を敵空母の船底目掛けランスチャージ♪
眷属
『目標発見、本艦直上!』
『推力移動最大!』
『耐衝撃オーラ防御全開です!』
『本日のおやつの祝勝プリン出来てます!』
『ピュアニカ様、私達はいつでも行けます!』
『『『『ご命令を!!!!』』』』
さあ、突撃だよ〜っ♪
『星界を穿ち破りし(ギガントラム)ーー』
『一角獣(モノケロース)ッ!!!!!』
ジェイミィ・ブラッディバック
さて、すでに制空権は確保されている状態、ならば敢えて海から行きましょう
ORCAを装備
サーフィンしつつ推力移動とダッシュで最初の爆雷を見切り、回避します
回避が難しいならばGAW-WM-209Xで弾幕を張り対空戦闘
そのまま海中へ潜行し海の中を水中機動+ダッシュ
さて、天使と言えど下級天使
ならば──ERROR CODE:SERAPHIM、解放
白翼形態へと姿を変じましょう
白翼形態解放後、私は敵司令官の目と鼻の先で水中から飛び出し空中へ
天使の羽をCRESCENT MOONLIGHTで切断、空母へMMX-2900を一斉発射
身の程を知るのだな、弱者よ
雑兵を集めたところで貴様の戦略など私の前では児戯に等しい
一度囲みを突破され、その身に全力の攻撃を叩き込まれたネルソン提督。一命こそとりとめたが、その傷は深い。だがそれでも、彼は天使たちを指揮するため堂々と甲板に立った。
「将が見えるところに立つと言うのはそれだけで軍の指揮を上げる。俺の武器はこの存在そのものだ」
それは死を命じた天使たちへのせめてもの報いか、あるいは言葉のまま、ただの士気高揚のためか。
ともあれ傷を負おうと彼の指揮に乱れはない。それに従い迅速に再度布陣していく軍を、猟兵たちは見上げた。
「一騎当千……というには、ちょっと違うでしょう、けれど、一致団結して、一体となった竜の力……みせましょう」
ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)はその天使の群れを、迎え撃つ姿勢を見せて待ち受ける。その身は徐々に、かつて戦った竜の力が宿り始める。
「空には乱気流で飛行不可能、その中を自由に飛び回る「天使」…でしたか? そして相手の位置へ的確に爆雷投下を行わせる提督…空高く飛行しなければいいんですよね?」
イリス・アンリリンキッシュ(私は「いつも笑顔」です!・f21317)も空を見上げ、そして笑む。だが別に彼女はこの状況を楽しんでいるわけでも、また楽勝と甘く見えいるわけでもない。彼女はただ、いつも笑顔。だからこの軍勢に対しても、今までの敵と変わらず笑顔で対応するだけだ。
まず来るのは、空から落ちてくる大量の爆雷。天使たちが落とすそれを、イリスは笑顔で迎え入れた。
「これは心の姿、わたしの姿。私を捉えた。なんてない!ユーベルコード:自分を衝き動かす緋い月(ブロークン・マリオネット)!」
完全脱力で圧倒的な量の爆雷をその身に受けるイリス。【自分を衝き動かす緋い月】の力でそれは全て熱量として排出されていくが、落ちてくる爆雷の数は多い。少しでも心乱れれば、余計な力が入れば、爆雷の雨はイリスを粉々に噴き飛ばすだろう。眼前に広がる爆炎にも、耳をつんざく轟音にも、一切心を乱すことなくあらなければならない。気を張ることすら許されないその爆炎の中、イリスはただ笑顔であった。
そして、ナイも
「あなたが、天使の力をかりるなら、私は世界に、願いましょう。一緒に、侵略してきた過去と、戦いましょう」
【フロンティアライン】、自身を核として、かつて帝竜戦役にて戦った100の意思を持つドラゴン『ダイウルゴス』を構築する。触れた者を己として取り込むその力で大地を、海を吸収し、巨大化を繰り返すその身でナイは天使たちを迎え撃った。
こうして陸で天使の猛攻を迎え撃つ者がいる間、海に打って出る者たちがまたいた。
「この世界で空を飛ぶとは…それならこちらは海を行こうか」
「さて、すでに制空権は確保されている状態、ならば敢えて海から行きましょう」
二機のマシンが海へと出る。まずはジェイミィ・ブラッディバック(脱サラの傭兵・f29697)は『WMWR-3000 "ORCA"』を装備し、サーフィンの要領で波を越えて進んだ。その彼の前に最初の爆雷が落とされるが、推力移動で水上を走るように動き、それを難なく躱すジェイミィ。だが、天使は一体だけではない。元より空から数を頼みとした爆撃が降り注いでいるのだ。いかにただのサーフボードではなく自社製の機械兵器を用いているとはいえ、いつまでもその危険な雨の中を行くわけにもいかない。
「そろそろ頃合いでしょうか」
ジェイミィは二丁のマシンガン『GAW-WM-209X』を空に向かって撃ち、同時に潜行モードへと移行、海の中へと沈んでいった。
海中を進むジェイミィの隣を、彼の二倍ほどある機械の竜が進んでいった。
それはアイソラ・グランホエール(三海操る魔術剣士・f09631)の駆るサイキックキャバリア、『星海機竜・レヴィア』。アイソラはそれを操縦し、水棲恐竜を模したその姿に違わず、水中を難なく進み深海を高速航行していく。だが、いかに水中にあるとはいえ、発進時の姿は捉えられているし敵が見逃してくれるはずもない。まるで魚雷の如く、カタパルトから撃ちだされた天使たちがレヴィアを襲った。
「来たな。だが真っ直ぐ来るなら読みやすい。これと仲良くしておけ」
その軌道を瞬時に読み、魔力弾に改造した内蔵兵器に誘導性を持たせ迎撃に向かわせる。次々と弾と当たり、海に散っていく天使たち。それでも敵が数頼みなのは分かっている。それ故アイソラ自身が念動力で海水を操作し壁とすることで、僅かな抜けも許さぬ守りを構えて海中の道を進んでいった。
こうして天使たちの布陣をいなしていく猟兵たち。だが、元より数と火力という単純かつ効果的な力を頼みとする彼らの攻撃は止むことはない。それをいなすだけでなく止めようと試みるのは、純真邪神・幼淫魔姫ピュアニカ(永遠に無垢なる幼く淫らな魔貌の姫【邪神潜水艦艦長】・f30297)。
「天使の分際で邪神に逆らおうとか身の程知らず♪」
彼女が行うのは、天使たちの心を読んでの洗脳。普段は気に入った女性を籠絡するために行うものだが、今回は敵に行う故に容赦はない。天使たちに人と同じような確たる意思があるかは分からないが、少なくとも作戦を理解し、遂行するだけの知能があるのは間違いない。意識を乱された天使たちが爆雷をあらぬ方向に落とし続ける間に、ピュアニカは地中に潜水艦の搭乗口を開け、そこへ飛び込んだ。
中には多数の眷属たちが侍り、それを操作しようとしている。既に幾度となく繰り返した手順、その動きに淀みはない。
最大船速を保ったま船は先に向かった者の後を追って水中を進んでいった。
そして再び水上。天使たちをいなす巨大竜は、進むごとにその威容を巨大にし、ネルソンの視界を圧倒していた。
近づいているから大きく見えるのではない。一歩進むごとに、本当に大きくなっているのだ。大気を、海を、そして自らに向かってくる天使さえも。その力の元となった帝竜の如く侵略融合し、際限なくその体を巨大化させていくナイ。
敵の攻撃を全て耐え、崩れそうになるたびにそれを糧に膨れ上がったその体は、ついに乱気流にまで届きそうなほどになる。
『フロンティア・ライン』
ここが限界。これが最後。溜めに溜めた力をこめて。
「今を守る力を、みんなに。世界を、守りましょう。私達は、文明を守護する竜、ダイウルゴスです……!」
レーザーの一閃が、彼の眼前に群れた天使たちをなぎ払った。その威力に壁のような水が上がり、ネルソンの乗る旗艦さえ大きく揺らす。
その水の壁を、一つの砲弾が通り抜けた。
「大事なことは島を守りあの『舵輪』を砕くこと」
その砲弾は受けた熱量を全て推進力としたイリス。的確に投下された爆雷は、その正確さのお陰で余すところなく力に変えられた。
「一定速度で近づき続けば「物凄く頭が良い」提督は「自身へ到達する時間」を弾き出すでしょうね」
その目論見通り、ネルソンはイリスが自分に着弾するまでの時間を瞬時にはじき出し、その威力を殺せるだけの天使を盾として前に配備していた。
「【エネルギー充填】、【限界突破】……「電力変換システム(v2.80)」起動、超過加速!」
受けたエネルギーだけではない。自分の持つ力さえも加え、さらに加速していくイリス。耐性を備えているとはいえ、これだけの速度でぶつかれば自分も無事では済むまい。だが構わない。
ネルソンは天使を貫き、自分の視界いっぱいに広がる笑顔を見た一瞬後、甲板に開いた大穴の縁へと吹き飛ばされた。
「空飛ぶ火力を多く備えた方が勝つ……俺の考えを否定するか、たった一発の最強の砲弾よ」
揺れる船の上、何とか立ち上がりながらネルソンは呟く。だが、その足は再び折られることとなった。
『目標発見、本艦直上!』
『推力移動最大!』
『耐衝撃オーラ防御全開です!』
『本日のおやつの祝勝プリン出来てます!』
『ピュアニカ様、私達はいつでも行けます!』
『『『『ご命令を!!!!』』』』
眷属がこういった時、ピュアニカの下す命令は決まっている。
「さあ、突撃だよ〜っ♪」
ネルソンが男である以上、ピュアニカにとってその存在はプリン一つほどの価値もない。
『星界を穿ち破りし(ギガントラム)ーー』
彼の戦術、知性、思想、誇り、その一切が一顧だにするにも値しないとばかりに。
『一角獣(モノケロース)ッ!!!!!』
邪神の権能が、ネルソンの旗艦の船底を穿った。
上下から開けられた大穴に船の機能はダウン。大量に流れ込む海水によって、船は傾きその身を海に沈め始めた。
だが、自然に沈没するのを待つほど猟兵は甘くなく、またネルソンも潔くはない。
「天使よ、一度引くぞ。爆雷を持った者は一斉に落とし敵を足止め……」
「航空戦力だけかい?護衛艦も必要だったんじゃないかな」
沈没の影響で持ちあがりつつある船首。その眼前に、電脳の機海竜が浮かび上がった。
アイソラの言葉通り、守る者はもちろん、撤退のため乗り移る船すらない孤独の指揮官。旗艦一隻しかないその船は、天使に期待せず、天使たちに期待したその男の自信の表れだったのだろうか。だが、その考えは間違っていたと言わざるを得ない。
水中の天使をいなした後、アイソラはレヴィアの持つ兵器を今一度作り替えた。向かってくるものを正確に撃ち落とす誘導性を排し、前にあるものをただ破壊するだけの破壊力に特化した形に。
相手は動けない状況で前にいるのだ。狙いをつける必要もない。ましてや、ここにたどり着くまでに己を消耗させる護衛艦すらもない丸裸の相手。
一斉に放たれた砲撃が、旗艦のほとんどを吹き飛ばした。
宙にいた何体もの天使が残る僅かな部位……もはや船の形すら成さすそれに殺到する。そこに立つネルソンを守り、連れて逃げようと言うのだろうか。ここに及んで天使の動きにはまだよどみがなく、恐らくは船が壊されたときを想定したマニュアル通りの動きを正確に行っているにすぎないのだろう。
「さて、天使と言えど下級天使。ならば──ERROR CODE:SERAPHIM、解放」
水の底から、白き姿が舞い上がった。
それはここまで水中を潜行してきたジェイミィ。だがその姿は三対六枚の白翼を生やした、伝説に謳われる大天使を象ったかのような姿。水中にてその姿を取った彼は、天使たちがネルソンを捉えるより早く、その目と鼻の先に姿を現した。
「Unknown Error: Sanctus, Sanctus, Sanctus Dominus Deus Ex Machina」
それは彼の声か、システムメッセージか。無機質な音声と共に、二刀のプラズマソードが次々と天使たちの羽を切り裂き、海へと落としていく。それはまるで下等なる天使を神に近きものが裁き、追放するようですらあって。
「身の程を知るのだな、弱者よ。雑兵を集めたところで貴様の戦略など私の前では児戯に等しい」
知恵を武器に挑んだ傲慢なるものに下される裁きの言葉。
「ああ、そうだな……強き力と技術、そして地形の利を揃えたものが勝つ。俺の持論は間違ってはいなかった。ただ、力と呼ばれるものの広さに俺の知が及ばなかった……それが口惜しい」
賞賛、悔悟、自賛、全てを込めたその言葉は、ミサイルポッドより放たれた無数の光によって船の最後の欠片ごと海へと消えた。
今この海にいる竜、笑顔、邪神、機竜、白翼。知将ネルソン提督の弱さと強さを圧したそれをなべてこう呼ぶ。『猟兵』と。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵