羅針盤戦争~眠れる獅子号
●キッズの艦隊
大海原を進む大艦隊。コンキスタドールによって構成され、蒼海羅針域を目指す船団の中に、『眠れる獅子号』と呼ばれる船があった。甲板では船を操るマンティコアキッズ達が忙しく働いているが、一歩船の中に降りれば静かなもので。
「すう、すう……」
「んんー、もう食べられないぃ~……」
それもそのはず、この船の船室はほとんど全てが休憩用に作られており、艦隊の非番の船員達を一手に引き受け、皆に心地良い眠りを提供しているのだ。
「ほら、そろそろ起きてー! 交代の時間だぞー」
「ええ~、まだ眠いよぉ……」
一応シフト制なのだろうか、ハンモックに揺られるマンティコアキッズを、外からやってきたもう一体が揺り起こそうとしている。
「二日振りのおやすみなんだから、はやく代わって~~」
「わぁ~~、もう取っ手付きの柱をぐるぐるするのはイヤだよぉ~~~」
あからさまに黒い労働環境が見えた気がするが、ともかく。彼等の尽力を糧に、艦隊は刻一刻と大渦に向けて突き進んでいた。
●おねむ
出港準備の進む鉄甲船を前に、八津崎・くくり(虫食む心音・f13839)が一同の方を振り返る。
「お集まりいただき感謝するよ、諸君。これより我々は、敵艦隊の迎撃に向かう」
現在、グリードオーシャンにおける猟兵側の領海、いわゆる『蒼海羅針域』には、渦潮の破壊を期したコンキスタドールの大艦隊が次々と押し寄せてきている。その一環として、また一つの敵集団――マンティコアと呼ばれる怪物を大量に乗せた艦隊が確認されており、ここでも防衛戦の準備が進められていた。
とはいえ、後手に回るばかりでは芸がない。防衛戦を有利に進めるため、移動中の艦隊に奇襲を仕掛け、少しでもその戦力を削いでおこうというのが今回の作戦だ。
「幸い、この辺りの海域は霧が出ることが多いのだよ。今ならば、敵に悟られる前に、敵艦隊に十分接近できるだろう」
艦隊の中でも重要な艦の位置は特定できている。密かにそれに潜入し、素早くそれを墜とす、という流れが理想だろうか。
「ということで、我々が目指すのは『眠れる獅子号』――マンティコアキッズ艦隊の、お昼寝用の船になる」
お昼寝用。言い間違いではない。お昼寝用だ。
艦隊の構成員は怪物とは言えまだまだお子様。美味しいごはんとお昼寝が大好きらしい。そのため、この『眠れる獅子号』には彼等のためのお昼寝ルームが大量に用意されており、非番のマンティコアキッズの憩いの場となっている。
日光を程よく遮りながらも、風通しをよくした室内。気に入った場所が選べるハンモック。各部屋にはほのかな風を送る大団扇担当と、リラクゼーション音楽を流す演奏担当も居るという盤石の構えだ。この船を失えば、艦隊の仕事効率とやる気はだだ下がり、かなりの戦力低下を見込めるだろう。
「正面から戦ったとしても、諸君等ならば十分に抗戦できるだろう。だがこの状況を活かせば、より有利に戦いを進める事が出来るはずだよ」
そう、付近で戦闘が始まれば、お昼寝中の船員達もさすがに眼を覚ましてしまう。しかし通路の見張りを隠密に排除し、お昼寝部屋まで潜入できれば、お昼寝中の者達にまとめて先制攻撃することができるはず。
「立ち回りの方は君達に一任する。どうか、無事に目的を果たして来てくれたまえ」
最後にそう告げて、グリモア猟兵は一同を出港準備の整った船へと導いた。
つじ
どうも、つじです。今回の舞台はグリードオーシャン、『蒼海羅針域』に向かう『マンティコアキッズ艦隊』との戦いになります。一章構成で、このシナリオの成功によって戦争サバイバルに🏅5000が加算されます。がんばっていきましょう!
●リプレイ
基本的に船内通路への潜入を終えたところからリプレイを開始しますので、そこまでのことは気にしなくて結構です。
1名様(または1グループ)当たりお昼寝部屋一つを担当する形になるかと思います。
●プレイングボーナス
海上戦、船上戦を工夫する(海上では飛行や転移が阻害されています)。
今回はお昼寝中の大半の敵を起こさないよう、通路の見張りやお昼寝に来た船員を隠密に退けるための工夫がそれに当たります。方法は殺害でも、買収でも、一時的にその場を離れてもらう等でも構いません。
●キッズ艦隊
シナリオタグ『#キッズ艦隊』のシナリオとは、同じ艦隊が相手のふんわり合わせになっています。
とはいえ攻略対象は別の船で、攻略タイミングも別々だと思われますので、どれもご自由に、お気軽にご参加ください。
以上になります。それでは、ご参加お待ちしています。
第1章 集団戦
『マンティコアキッズ』
|
POW : こいつをたおしたらご飯にしような!
【食欲】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD : もうちょっとだけがんばる!
【お昼寝の時間までがんばる気持ち】を一時的に増強し、全ての能力を6倍にする。ただし、レベル秒後に1分間の昏睡状態に陥る。
WIZ : 今がチャンスだけどおやつが食べたい…
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【おやつ】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
イラスト:芳乃弥生
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
イコル・アダマンティウム
「ハンモック……いい、な」
終わったら……この船貰っちゃ、ダメ?
武器は持って行かず、体一つで侵入する、よ
【船上戦】
「ぬきあし、さしあし……」
足音を出さないよう、ゆっくりと歩く、ね<足場習熟>
腰を落として歩いたり、匍匐前進で物陰に隠れて進んで
見つからない様にする、よ
<地形の利用>
【排除】
「ん……風通しが良くて、助かる」
隠密の邪魔になりそうな敵は<ダッシュ>で距離を詰めて、掴み上げる
それから船の外へ全力で放り投げる、よ<暴力><グラップル><吹き飛ばし>
遠くで着水するまでを確認する、ね
「……よし」
【おびき寄せ】
投げるのに距離が遠かったりしたら
物陰に隠れておびき寄せる、ね
「おーい……寝床あいたってー」
●ステルス
踏み込んだ船内は静かなもので、揺れる船の軋みに混ざって、涼やかな風の音が聞こえるほどだ。風通しが良くなるように専用の窓が設けられているのだろうが……。
「ぬきあし、さしあし……」
慎重に、足音立てぬように進んでいたイコル・アダマンティウム(ノーバレッツ・f30109)は、自然と周りの音に耳を澄ますことになる。眠りに来たマンティコアキッズなどと鉢合わせては厄介だ。自分以外の足音などに、特に注意しなくては。目立たぬようゆっくりと、資材の置かれている場所は匍匐前進で隠れて、と隠密行動に尽力した彼女は、敵をやり過ごしながら順調に目的地に向かっていた。
「すう、すう……」
「うぅ、誤解だよぉ……盗み食いはしてないぃ……むにゃむにゃ」
ああ、これ風じゃなくて寝息の音だな、とイコルが察したころには、小さく誰かの寝言まで聞こえて来ている。通路の角から片目だけを覗かせ、先を見れば、お昼寝部屋らしき場所の前に、見張りのマンティコアキッズが居ることがわかる。恐らくこんなところでトラブルが起こる事は滅多にないのだろう、見張りの個体は暇そう、というかあからさまにうとうとしていた。
「ん……風通しが良くて、助かる」
睡眠に適した環境なのは見張りにとっても同じことなのだろう、相手の反応が鈍っていることを見越してイコルはその場から素早く飛び出した。迅速に駆ける彼女を認識しきれず、見張りのキッズが見たのはその赤い髪の残滓のみ。
「へぇ、なに? イチゴのババロア?」
すっとぼけた疑問を口にする頃には、イコルがその身体を持ち上げて、力任せに窓の外へと放り投げていた。冷たい風と浮遊感に、キッズが目を見開いたようだが、もう遅い。「アァ~~~~~」みたいな悲鳴が小さく尾を引いて、最後に着水音が聞こえてきた。
「……よし」
排除完了。無事脅威を退けたイコルはついに目的のお昼寝部屋へと辿り着いた。基本的に交代時間までは起きないつもりなのか、キッズ達はみな安らかな寝息を立てている。……一部先程のようにうなされている者も居るようだが。
「ハンモック……いい、な」
思った以上に過ごしやすそうだと、彼女がそんな感想を抱いていると。
「あれぇ? 見張りの子が居なくない?」
「サボリかなぁ?」
部屋の入り口からそんな声が聞こえてくる。どうやら勤務時間を終えて、お昼寝に来た者が居るらしい。少し考え、ハンモックの影に身を潜めたイコルは、異常を察せられる前に手を打つことにした。
「おーい……こっちの寝床あいたってー」
「なんだー、中に居たのかー」
「持ち場離れるとお昼寝きゃぷてんに怒られちゃうよー?」
小声で呼び掛けて、現れた二体を窓辺まで誘導し――。
「えっなに?」
という疑問を言い終わる前に、戦闘の一体を窓の外に投げ捨てた。驚いて固まっていたもう一体は、そこでイコルの事を敵だと認識したようだが。
「誰だか知らないけどお昼寝の邪魔をわぶっ――」
ぽいっ。こちらも綺麗に海へと放り出されていった。
「う~ん、なんだよぉ騒がしいな~~……」
近くで寝ていた一体がもぞもぞと動いて、身を起こすが。
「……あれぇ?」
眼をこすってみても、周囲に異常はみられなかった。不思議そうに首を傾げ、また横になるその様子を、イコルは床に這う形のまま見届けた。
さて、あとは片っ端から投げ捨てていくのみ。
「終わったら……この船貰えないかな……」
そんなことを呟きながらイコルはゆっくりと身を起こして、ただいま眠ったばかりの個体に手を伸ばした。
大成功
🔵🔵🔵
三上・チモシー
すごく快適そうな船だね。自分もここでのんびりまったりしたいなぁ
できるだけマンティコアキッズに見つからないように、忍び足で船内を進むよ
それでも見つかっちゃったら、騒がれる前に手持ちのお菓子詰め合わせからお菓子を差し出す
お菓子あげるから、どうか見逃してください!(小声)
物足りなそうならお菓子追加。もったいないけど仕方ない……!
お昼寝ルームに起きてる子がいたなら、同じようにお菓子を渡して、別部屋に移動してくれるようお願い
寝ているマンティコアキッズたちを【熱湯注意】で攻撃
お昼寝中にごめんねー!
●寝耳に水
「すごく快適そう……自分もここでのんびりまったりしたいなぁ」
船内通路にまで聞こえてくる安らかな寝息を聞きながら、三上・チモシー(カラフル鉄瓶・f07057)がしみじみと呟く。極力見つからぬよう、周囲に気を配りながら忍び足で歩くのは、やはり心情的に疲れるもの。何も考えず気持ちよく眠れるのは羨ましく感じられる。
「あと一時間……いやさんじゅっぷんで良いからおやすみを……」
「はたらきたくないよぉ~……」
まあ一部地獄のような寝言も聞こえるが、それは些細な事だろう。こっそりと、うまく隠れながら進んでいったチモシーは、やがて目的の部屋を発見する。距離にすればほんの数メートル、けれどその手前には、マンティコアキッズが見張りとして立っていた。
今までやり過ごしてきた者達と違い、そこを見張っている以上、待っていても事態は変わらないだろう。ならばやる事は一つ。意を決したチモシーは持参した袋を手に、見張りの前へと進み出た。
「お菓子あげるから、どうか見逃してください!」
そう、買収である。相手が口を開く前に、彼の集めたお茶請けセットを目の前に差し出して、チモシーは食欲に訴えかけた。もちろん、寝ている者達に気付かれないよう、小声で。
「長い船旅で疲れてるんじゃないかな? ほら、この羊羹なんてどう……?」
「えぇ~……でも侵入者は捕まえないといけないし~~」
お菓子を詰め合わせた袋から、個包装のそれを取り出してやると、あからさまに見張りの目が泳ぐ。口では否定しているが、すぐさま行動に移っていない時点でその内心は透けているようなものである。
「ほらほら、今ならこれも付けちゃいますよ?」
「へ、へぇ~」
チラチラと袋の方を窺っている相手に合わせて、さらに差し出すお菓子を追加。チモシーとしても楽しみにとっておいたお菓子がなくなるのは痛いけれど、背に腹は代えられない。
「ちょっとの間、見逃がしてくれるだけで良いんだけどなー……」
「し、仕方ないなぁ~」
懐柔成功。チモシーからお菓子を受け取った見張りは、「何も見ていませんよ」とう風に道を開ける。
「あ、でも、食べてるの見つかったら困っちゃうんじゃない?」
そうチモシーが指摘してやると、折良く寝ぼけたキッズの一体が気付いたようで。
「んん、なんかいい匂いが……?」
「あわわ……!」
もぞもぞと動き出したその様子を見て、お菓子を持った見張りは慌ててその場を離れていった。
よし。どうにか目的の部屋まで無事辿り着いたチモシーはすやすやと眠るマンティコアキッズ達を見回して、器物の南部鉄器、平丸型鉄瓶を取り出す。なるほど平和な光景である。この部屋の環境ならば、揺れる船の中でもよく眠れることだろう。
だが、それもここまでだ。チモシーはおもむろに、その鉄瓶を傾けた。
「お昼寝中にごめんねー!」
「えっ!?」
「熱っっっつい!!!!!??」
流れ出たそれに続いて悲鳴が上がる。寝耳に水という言葉もあるが、今回はそれを遥かに超える熱湯である。
「な、なんなんだコイツー!?」
「やめてー! それこっち向けないでー!!」
「そーれ、熱湯ざばー!!!」
「あーーーーーーーーッ!!!!!!!」
阿鼻叫喚。チモシーが鉄瓶から熱湯をぶちまけたことにより、マンティコアキッズ達は逃げ惑い、次々と倒れていった。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィクティム・ウィンターミュート
気の抜けそうなメンツだなぁ…
こんなんでもオブリビオンだし、手は抜かないけどさぁ
……別に、殺すことに躊躇は無いよ
ジューヴを始末した経験はたくさんある
ただまぁ、人に見せるものでも無いなと思っただけさ
【迷彩】で景色に溶け込み、【忍び足】で静かに移動する
見張りを見つけたら、物陰に隠れてトラップの用意
適当な持ち物にホログラムを被せて、上等な料理にでも見せかける
そいで隠れ場所まで【おびき寄せ】て、口を塞ぎながら引き摺り込んで【暗殺】し、お昼寝部屋へ
後はまぁ、簡単だ
眠ってる奴らを一人ずつ仕留めるだけ
口を塞ぎ、首を掻き切る
それの繰り返し
『Ferryman』は決して容赦しない
勝利の為なら、非道も外道もやってやる
●渡し守
「はー……見張り飽きてきたー」
「待ってねー……いま壁の木目が焼肉に見えてきたところだからー」
「えぇーほんとに?」
どのへん? あそこだよあそこ。見張りらしきマンティコアキッズ二体の交わす、全く中身のない会話を聞きながら、ヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)は密かに溜息を吐いた。気の抜けそうな、というか間の抜けた連中にしか見えないが、この怪物たちはこれでもれっきとしたオブリビオンである。
迷彩で気配を消して、物陰を縫うようにして来たところで、居るのがこんな連中となれば溜息が出るのも当然なのだが。
「……ま、手は抜かないけどさぁ」
小さくそう零す。相手の見た目がどうあれ、殺すことに躊躇はない。ジューヴを始末した経験だって少なくはないのだ、幼くとも、それが人食いの怪物となればなおのこと。
「え? ショーユがなに? もう一回言って?」
「いや、何も言ってないけどー……?」
何にせよ、おしゃべりを続ける見張り達を、ここから退けない事には話が進まない。状況を打開すべく、ヴィクティムは電算機を操り、ホログラムを描き出した。
「や、焼肉だ……」
「そんな、ほんとに焼肉が見える……?」
動揺する彼等に追い打ちをかけるように、壁に移ったそれを移動させて。
「あっ、焼肉が逃げる」
「待って~~」
涎を垂らしながら歩き出した二体を追って、ヴィクティムは音も無くナイフを引き抜いた。まずは後ろの一体を物陰に引き寄せ、口を塞ぎながら喉を裂く。静かに仕留めたそれを置いて、そのまま続く一体へと。
「――あれ?」
気付かれたのは、恐らく敵が人食いの獣であるがゆえ。血の匂いに敏感な獣は、振り向いて襲撃者の存在を認識する。それが吠えるよりも一手早く、ヴィクティムが敵の口を塞ぐ。だがこの怪物には、腹部にもう一つ、巨大な牙の並んだ口がある。声帯のないそれが、唸るような音を鳴らすのを聞いて、ヴィクティムは舌打ちしながらナイフを振るった。
先程同様に喉を一閃、そしてすぐさまそれを引き戻し、腹部の口を上下縫い留めるように、突き刺した。ぶくぶくと、血の泡を吐いて沈むその身体を、通路脇へと引き摺り、彼はしばし、息を殺す。
「近づいてくる奴は……」
いない、か。どうやら気付かれずには済んだらしい。立ち上がったヴィクティムは、ナイフに付いた血を拭い、目的地――見張りの居た、お昼寝部屋へと踏み込んだ。
すやすやと、穏やかな寝息が聞こえて、一見無垢な寝顔がいくつも並んでいる。けれど、『Ferryman』は容赦しない。勝利のためならば、非道も外道もこなしてみせよう。
眠った連中の口を塞ぎ、首を掻き切る。後はその繰り返しだ。
斬られた痛みも、苦しみも、そこには確かに在るだろうが、それで骸の海に還るだけだと言うのなら、刃を鈍らせる理由はない。何よりも、安らかな眠りの中で終われるのならば――。
「やだあ……おやすみの日までおしごとしたくないぃ……」
いや、うなされてるのも居るなぁ。こいつらはこいつらでろくな労働環境じゃないな、などと思いつつ、ヴィクティムは手を動かした。
「ふふ……バレンタイン……チョコ食べ放題だよぉ……」
ああ、お前はバレンタインを目前にして死んじまうんだけどな。
唯一の話相手は寝言だけ。死神はそうして仕事を終える。
大成功
🔵🔵🔵
菱川・彌三八
俺も寝てェ
アー…そうさナ
したが、天狗の銅判握りこんで透過しちまおうか
此奴ァ禁じ手みてえなモンだな、既にする事がねェ
折角字数も余りそうなんで、ちいといっち眠れそうな場所を探すとするか
目指すは御大尽の様な分厚くて暖かくて好い感じの寝床
おっと、当然足音には気をつけねェとな
姿が消えるだけ…な筈だからヨ
余り気にした事ァねえが
見張りはチョッと、コウ、首をな
絞めたか手刀で眠ってもらったかは想像に任せるとして
覗いた部屋は大當り
さァゝヽ退きなガキ共、眠ってる場合じゃねェゼ
布団を引っぺがし、簀巻きにして転がし、妙に柔い枕を投げ
一頻り暴れて片が付いたら俺ァ寝る
此奴等よ、昼寝と飯が好きなんだろ?
なら、起きたら飯だな
●良い昼寝場所
涼やかに流れる風と、誰かの歌う子守唄。複数のマンティコアキッズの寝息の聞こえるこの船は、波風による揺れさえも計算に入れた、揺り籠の様相を呈していた。部屋を選んで、後は簡単な寝具でもあればよく眠れることだろう。
「俺も寝てェな」
そんな感想を抱きつつ、菱川・彌三八(彌栄・f12195)は鞍馬天狗の描かれた銅判を握り込んだ。大天狗の神通力が宿り、彌三八は自身を透過させた。
終わりである。
透明になれば見張りに見つかることなどそうそうない。匂いに敏感なマンティコアキッズも、「おかしい」と感じたところで首を傾げるのが精々。彌三八が足音にだけ気を付ければもう大体することがない。
「……ちいといっち眠れそうな場所を探すとするか」
というわけで、暇を持て余した彌三八は、最も良い感じの寝床を求めて船内をうろつくことにした。事前に在った情報通り、船内通路を行く者はそう多くない。別段不自由もせずに歩いた彼は、やがて一つの部屋に辿り着く。
「こいつァ大當り、かもなァ」
覗き込んだその部屋の様子を見て、口の端を吊り上げる。今まで見てきた部屋にはどこもハンモックが吊るされていたが、ここにはそれだけでなく、やたらと柔らかそうな寝台も置かれている。好みの問題もあるのだろうが、『布団』に慣れた彌三八にとってはこちらの方が馴染みがある。
そうと決まれば行動を。とりあえず見張りに立っているキッズの後ろに回り、首をきゅっとして黙らせる。後はもう一度、部屋の中央へと戻って。
「さァゝヽ退きなガキ共、眠ってる場合じゃねェゼ」
そう宣言するや否や、彌三八は眠るマンティコアキッズから布団を引っぺがした。
「アーーーーーーッ!!」
布団にしがみつくようにしていた個体が、振り払われてごろごろと床を転がる。
「エッなになに!?」
「う~、まだ交代時間には早いよぉ」
その音に次々とキッズ達が目を覚まし、お昼寝部屋が俄かに騒がしくなる。
「ワー! なにこいつ!?」
「すいみんぼうがいだーッ!」
「うったえてやるからなー!!」
「眠ィこと言ってないで、さっさとかかってこいよ」
挑発ついでに枕を投擲。それを顔面に喰らった個体が悲鳴を上げてひっくり返る。
「やったなー!?」
「やっつけてやるー!」
わーわーと騒ぎ立てて、目覚めたキッズ達はお昼寝の時間を取り戻すべく、気合を入れ直した。敵の身体に力が宿り――そして、結論から言うならば、その頑張りは二分と保たなかった。
「やっぱりまだねむいよぉ~~」
死屍累々。お昼寝どころではなく、昏倒する羽目に陥ったキッズ達は、そう簡単に目を覚ますことはないだろう。少なくとも、この事態が終息するまでは。
ただ一人立っていた彌三八は、周りの状況を確認すると、自身もその場に横になった。
「んじゃ、俺ァ寝るからな」
心地良い風を味わいながら、眼を瞑る。なるほど睡眠と食事の好きな獣らしい、良い環境だ。
ならば、一休みしたら今度は飯――連中の厨房に乗り込んでやるのも良いだろう。
大成功
🔵🔵🔵
ソニア・シルヴァーヌ
あらあら、可愛らしい子達ですね…
けれど、こんな子達でもコンキスタドール。倒さなければ世界の命運は閉ざされることになってしまいます。
倒させてもらいます、ね。
まずは見張りの仔へゆっくり近づき、下半身の『Bestia』で【捕食】。
騒ぐ間も与えぬよう、丸呑みにしてしまいましょうかと。
お昼寝部屋にいる仔達も同様に、順次丸呑みにしていきます。
起きてしまわれましたら、妄執の賢者石にて「良い仔ですからお静かにお願いしますね?」という願いを込めたキャンディを生成。
相手もユーベルコードにお菓子が必要ですし、受け取って頂けるかなと。
後はキャンディを食べてる間に死角に回って【捕食】してしまいましょう。
●捕食者
「いやーつかれたねー」
「じゅうろうどうだったー、はやくやすみたいよぉ」
休憩時間なのだろう、お昼寝部屋へと歩いていくマンティコアキッズ達を物陰から眺め、ソニア・シルヴァーヌ(玻璃の白百合ラスボス仕立て・f31357)が「あらあら」と溜息を吐く。中身が人食いの怪物であれ、彼女からすれば可愛らしいもの。慈しむ様に眼を細めてしまうが、同時にそれが叶わぬ行いであることもわかっていた。
「けれど、こんな子達でもコンキスタドールなのですから……」
倒さなければ、この世界の命運は閉ざされてしまうだろう。確認するように胸中で呟き、彼女は意を固めて、動き出した。
「倒させてもらいます、ね。」
異形の下半身が蠢き、ずるりとその身を進ませる。迫るのは、お昼寝部屋の入口に立て要る見張り番だ。首を傾けた反対側から、ゆっくりと忍び寄った彼女は、見張りのキッズを前にして『立ち上がる』。
ソニアの本来の身長はかなりのもの。天井まで届かんばかりに身体を伸ばせば、異形の下半身が大きく口を開く。
「――へ?」
悪寒に振り向いた見張りが目にしたのは、自分よりも巨大な捕食者の姿だった。
見張りの個体を騒ぐ間もなく丸呑みにしたソニアは、ハンモックの並ぶお昼寝部屋に入り込む。
すやすやと寝息を立てるキッズ等も、行く末は同じこと。微笑ましいその様子を見下ろして、ソニアはそれらを順次丸呑みにしていった。
「うぅん……なんか寒気が……?」
「あら、起きてしまわれましたか」
食事を続けている最中に、寝こけていた内の一体が、眼をこすりながら体を起こす。むにゃむにゃ言っているその子の元へと向かったソニアは、口元に人差し指を立てつつ、飴玉を差し出した。
「どうぞ。皆さんお休みしておられますから、起こさないようお静かにお願いしますね?」
「はぁい……」
若干不思議そうに首を傾げたマンティコアキッズだが、ソニアの渡したUC製のそれを口にしたことで、彼女の願い通り大人しくなる。
「んん……なにこれ変な味……?」
口の中でころころと飴玉を転がしているその個体の背後には、『Bestia』がまた、大口を開けていた。
大成功
🔵🔵🔵
メアリー・ベスレム
ふぅん……
この艦隊、全部自分達で作り上げたのかしら?
だったら子供と言っても侮れないわね
だからこそ、ここで確実に殺さなきゃ
不思議な水薬で【肉体改造】小さくなって
障害物は【ジャンプ】で跳び越え
【目立たない】よう密かに潜入を
寝ている姿は可愛らしいけれど
それでも人喰いに変わりはないから
人喰い愉しむオブリビオンは
みんなメアリが殺すんだから
見張りや他に起きている子がいたのなら
まずはその子から着実に
声を挙げられないよう首斬り落とす【部位破壊】
その後は眠っている子を一人? 一匹? ずつ殺してく
……水薬の甘い匂いの所為かしら
小さい姿でうっかりと
近づきすぎてもぐもぐと
寝ぼけた子に食べられそうにもなったけど
●首狩り
「ふぅん……この艦隊、全部自分達で作り上げたのかしら?」
窓の外、霧の向こうに並ぶ船列を目にして、メアリー・ベスレム(WONDERLAND L/REAPER・f24749)が呟く。大した物量だ、と言っても良いだろう。蒼海羅針域を、猟兵達の頼りにする『大渦』を、落とそうという本気具合も窺い知れるというもの。
「だったら、子供と言っても侮れないわね」
ここで確実に殺さなきゃ。結論は明白で、彼女はそれを行うことに大して躊躇いはない。不思議な水薬の薬瓶を開けたメアリーは、目立たなくなるよう自らの身体を縮ませた。
一歩の歩幅は小さくなってしまうけれど、このサイズならば、物陰を伝えばそうそう見つかる事はない。
「いま、なにか動いたような……?」
「ほんとにー?」
「うーん……勘違いだったみたい……」
目敏い敵を上手くやり過ごし、邪魔な障害物を跳び越えて、彼女は目的の部屋の前に辿り着いた。
静かに走り出したメアリーは、見張りに立っていた個体の、足の間を抜けていく。
「あまいにおいが……?」
ひくひくと鼻を鳴らして、見張りが辺りを見回すが、さすがに足元のメアリーには気付かなかったようだ。
「ふわぁ……てんごく……」
「こんなの二度と起き上がれないよぉ……」
お昼寝部屋に踏み込んだメアリーは、そんな寝言を聞きながら、ハンモックの一つに飛び乗って、部屋の中をぐるりと見渡す。聞こえてくるのは控えめな鼾と、寝息が入り混じった音色。無邪気に眠るマンティコアキッズ達の姿は、微笑ましくも思えるが。『アリス』であるところの彼女は、その口に並んだ牙の意味するところを敏感に察知していた。
「うーん……おやつ……?」
足場にしていたマンティコアキッズが、そんな寝言と共に大口を開けるのを目にして、メアリーは咄嗟に跳び退る。先程の水薬による甘い匂いが原因なのだが、問題はそこではない。
そう、ここに眠っているのは人喰いの猛獣。人喰いを愉しむオブリビオンは、みんなメアリが殺さなくては。赤い瞳に狩猟者の色を乗せて、メアリーは血塗られた刃を手に、標的に向かって跳躍した。
まずは、部屋の入口に立つ見張り。肩に飛び乗るようにしてから、それを一閃させて、首を狩る。その後は、ハンモックの上で揺れる、眠った個体へと飛び掛かって。
悲鳴を上げられぬよう、そして一太刀で片付くよう喉を裂く。そうして次々に跳ねた彼女は、その場の猛獣を順番に仕留めていった
大成功
🔵🔵🔵
ケビ・ピオシュ
【星書】
鴛海殿の背中にくっついて、背より掌を展開して四つ足の後側のマネだよ
もし本物とすれ違っても鴛海殿が良くしてくれるさ、私は精々顔が光らないように光量を落そう
そうだね
でも私からは最後のお昼寝前に
もうひと仕事頼もうかな
敵を掌で引っ掴んでジャイアントスイング
ぐるぐる回って貰おう
ついでに君のおやつが足りなくなる様に振り回してばら撒くよ
落ちた分は食べてしまって良いよ、キッズ達!
ウウム
たしかにコレは辛いね
背中から伸びる尾や掌を使って叩いたり、防いだりして戦います
大きくなられたらもう頑張るしかない
鴛海殿への攻撃は庇えるよう出来るだけ彼女の近くにいよう
流れ矢も当たらず済むしね
ウムウム
私達の為に眠っておくれ
鴛海・エチカ
【星書】
ふわぁ、やっと交代の時間なのじゃ
干したてふわふわシーツ~
とキッズぽく呟きながら通路を進むぞ
ケビと同じお昼寝シーツをすっぽり被っておるうえ
我らのシルエットをキッズの形に似せておる
チカは人型部分と前足役じゃ
これで向こうも仲間と見間違えるはず
うむうむ、よく寝ておるのう
可哀想じゃが叩き起こしてやるかの
そっと部屋の奥を確かめてからケビと突入
さあ、交代の時間じゃ! ただし永遠のお昼寝へのな!
――二律排反
星よ、彼奴らに降り注ぎ、導きとなれ!
おお、ケビ! 良いぞ!
あっ……
チカの流星が落ちたおやつを砕いてしまったのじゃ
……ごめんなのじゃ
この星と共に、お主達の行方は我らが見送る
眠りの彼方に向かうが良い!
●たべもののうらみ
お昼寝船を行き交う船員の数はさほど多くない。寝息ばかりが響く、静かな船内を歩むのは、表情が明暗わかれら二種類のマンティコアキッズ達。お昼寝に行く者と、お昼寝の時間が終わってしまった者、安堵と絶望、その見分け方は言うまでもない。
「うう、またおしごとが始まっちゃうよぉ……」
「行きたくないぃ~」
死にそうな顔で去っていくキッズ達が、向かいからやってきたもう一体とすれ違う。
「ふわぁ、やっと交代の時間なのじゃ」
こちらはどうやら一仕事終えてきた個体らしい、持参してきたらしいお昼寝用のシーツは、彼女の頭からすっぽりと覆うように広げられており、その歩みに合わせて裾が揺れる。
「干したてふわふわシーツ~」
「いいなぁ~……」
鼻歌交じりのそれを羨まし気に見送った二体のキッズは、がっくりと肩を落として担当の船に戻っていった。すれ違ったシーツの個体の足音が、普通とは違うことにも気付かぬまま。
「問題なさそうじゃのう。チカの計算通りなのじゃ」
角を曲がったところで、シーツを被っていたマンティコアキッズ……こと、鴛海・エチカ(ユークリッド・f02721)が自慢気に胸を張る。
「うむうむ、そうだねえ」
返事をしたのはその腰のあたりに引っ付いたケビ・ピオシュ(テレビウムのUDCメカニック・f00041)だ。彼は背中から展開した巨大な手を床につけている。要するに、マンティコアで言う獅子の後ろ足担当。姿勢に大分無理があるが、その甲斐あって、シーツを被せればマンティコアキッズ同様のシルエットの出来上がっていた。
「よーし次の角は左に曲がるぞ、ケビよ」
「了解したよ鴛海殿」
全く前の見えていないケビに行先を伝えながら、船室を目指す。キッズ達とは違う靴音と爪音。足音と、それからテレビウムの画面光が目立たぬよう抑えながら、二人は欠伸しながら立っている見張りの脇を通り過ぎた。
「おつとめごくろうなのじゃ~」
「はーい、こっちも交代まだかなぁ~」
思ったよりもうまくいったか、ぐうぐうすやすやと寝息が聞こえるそこを、エチカとケビはシーツをどけて覗き込む。
「うむうむ、よく寝ておるのう」
では可哀想じゃが、叩き起こしてやるかの。そう呟いたエチカは、キッズ達がお昼寝中の部屋に乗り込むと同時に、高らかに宣言した。
「さあ、交代の時間じゃ! ただし永遠のお昼寝へのな!」
「ふぇ!? な、なんだー!?
「えいえんに寝てていいの!?」
突然起こされてわけが分からない様子の彼女等に向けて、杖の先を掲げれば。
「――星よ、彼奴らに降り注ぎ、導きとなれ!」
「アーッ! まぶしい!!」
輝く流星が降り注ぎ、キッズ達を穿つ。わあわあ悲鳴を上げて、大混乱に陥った彼等の内、一番騒がしい一体に目を付けたケビは、その巨大な手を展開しながら声をかけた。
「君にはもうひとつ仕事を頼みたいんだよ」
「えっ」
「まずはぐるぐる回ってもらおうかな」
がしっと彼女の尾を掴んだケビは、その身体を軽々と振り回し始めた。
「ギニャーーーーーーッ!!!」
ジャイアントスイングの要領でぶん回されたキッズは、目を回すだけではなく、その勢いで懐に仕舞っていたらしきおやつをバラバラと飛び散らせた。
「おお、ケビ! 良いぞ!」
「わー、なんかわかんないけどクッキーが降ってきたー!」
「キッズ諸君、落ちた分は食べてしまって良いよ」
振り回していた個体を放り投げて、ケビが言う。おやつを糧に強化される敵から、その材料を奪い取った形だが。
「あっ」
飛び散ったおかしに手を伸ばそうとしたキッズ達の前に、エチカの展開していた流星の矢が降り注ぐ。転がっていたお菓子は、当然それに耐えられるはずもなく、ことごとく粉砕されてしまった。
「お、おやつ……」
「……ごめんなのじゃ」
「ウウム、たしかにコレは辛いね」
気まずい。涙目になったキッズ達に、思わずエチカが謝罪するが。
「よ、よくもおやつを!!!」
許さん、と一際大きな声を上げたのは、さっきジャイアントスイングを喰らって目を回していた個体だ。失われたおやつを悼み、その食欲に任せて巨大化した彼女は、二人に向かって突進する。
「フム、これは……」
厄介な事になったかもしれない。傍らのエチカを庇い、ケビが広げた両腕で敵の攻撃を受け止める。
一体程度ならどうとでもなるだろうが、目の前でおかしをやられた彼女の仲間達も、次々と巨大化しており――。
「あーっ! 一斉に巨大化しちゃダメって言ったでしょ!!」
「せまーいっ!!」
結果オーライと言うべきか、敵の連携はうまくいかなかったようだ。寝起きの判断力なんてこんなものなのかも知れない。
「案外なんとかなりそうだねえ」
「そうじゃのう」
押し合いへし合いしているキッズ達に、エチカは再度流星の矢を向けた。今度は、足元に描かれた大魔法陣の強化付きで。
「この星と共に、お主達の行方は我らが見送る! 安心して眠りの彼方に向かうが良い!」
降り注ぐ光の雨。この場の鎮圧に、そう時間はかからなかった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
朱赫七・カムイ
⛩迎櫻
健やかなる寝息が聞こえてくるかのようだね
噫、承知した
静かに密やかに動こうか
……何だか私も楽しい心地がするよ
サヨ、眠いのかい?夜は余りよく眠れなかったかな…私の子守唄では駄目か
ふふ、リル
ヨルは少し眠った方が良いかもしれない
カラス、偵察をお願い
念動力で身を隠せるものを移動させその影に隠れたりしつつ進む
サヨが眠らせた子は捕縛しておこう
此処がお昼寝部屋のようだね
……寝込みを襲うのは少しばかり抵抗があるが、仕方なし
祝災ノ厄倖
眠れる子らに不幸を約そう
起き上がっては転び
そのまま眠りに堕ちる神罰を巡らせ
一思いになぎ払い切断するよ
我が巫女の桜花とリルの子守唄で眠れるなんて幸福だね
それはいい
楽しみが増えたよ
リル・ルリ
🐟迎櫻
しー、だよ
静かに游ぐんだ
ふふー、皆いいこに寝てるかな?
何だか僕も眠く……ないんだから!
あ、ヨル!起きて!
お昼寝、はあと!
欠伸をひとつ
見張りの気配にさっと身を隠す
よし、櫻が眠らせたなら先に進もう
カムイ、こっちにお昼寝部屋が?
さすがだね、僕はさっぱりわからなかった
起きちゃったかな?
でもいい子に眠っているんだ
怖いことも痛いことも感じないように
夢の中にとかすようかえしてあげる
誘惑こめて歌う、『魅惑の歌』
搦めてとらえてあげる
とろりおやすみ
桜が咲いてカムイの約す幸と不幸が巡る
ヨルはきゅっ!と鼓舞してくれているよ!
わぁ、いいね
僕もふかふかなお布団の上でお昼寝したいよ
三人でお昼寝しよう!
よーし頑張る!
誘名・櫻宵
🌸迎櫻
あら……皆気持ちよさそうにおねんねしてるわね
何だか眠くなってしまうわ
大丈夫よカムイ
昨夜は私、お陰様でぐっすりよ
リル、ヨルがお眠なようよ
…もしかしてリルも?
声を忍ばせそろりそろり忍び足
眠る子を起こさぬように進んでいく
何だかわくわくしてきたわ!
まだ起きていた子がいたの?
『睡華』はたり桜と共に眠りにおとす
そのまま永遠に眠りなさい
カムイの導きのとおり進めばきっと、お昼寝部屋に辿り着くはず
桜化の神罰巡らせて美しく夢見草を咲かせましょ
人魚の子守唄で眠れるのも
優しい神に素敵な夢路へ見送られるのも幸いなことよ
眠くなっちゃった
お仕事終わったら3人でお昼寝したいわ
寄り添い眠る幸を胸に──あともうひと仕事!
●獣達の寝所
お昼寝船、そう呼ぶともはや冗談にしか聞こえないが、『寝所』と呼び変えればその在り方に合点がいく部分もあるだろう。穏やかに揺れるそこは、心地良く静かで、訪れる者が皆自然と息を潜めてしまうような、不思議な空気が流れている。
「健やかなる寝息が聞こえてくるかのようだね」
朱赫七・カムイ(約倖ノ赫・f30062)が言及したのは、恐らくその辺りの事だろう。
「そうね……何だか私も眠くなってしまうわ」
欠伸を噛み殺すようにしながら答えた誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)に、カムイは少しばかり眉根を寄せる。
「サヨ、眠いのかい?」
昨夜は余り眠れなかったということだろうか。そうすると、一部責任を感じずには居られないのが彼である。
「やはり、私の子守唄では駄目か」
「大丈夫よカムイ。昨夜は私、お陰様でぐっすりだったから」
それでも、ここはちょっと眠気を誘う。櫻宵がそうフォローを入れた辺りで、リル・ルリ(『櫻沫の匣舟』・f10762)は口元に人差し指を立ててみせた。
「しー、だよ」
この船は艦隊の中でも一際声が響く。できるだけ見つからないように、と改めて確認した後で、リルは静かに游ぎはじめた。
空中に滑り出すのと同時に、ぺたぺたとペンギンが後から付いてくるはずなのだが。
「リル、ヨルがお眠なようよ」
「あ、ヨル! 起きて! お昼寝、はあと!」
「ふふ、リル、ヨルは少し眠った方が良いかもしれない」
こちらもここの空気に中てられていたらしい。うとうとしているヨルを起こして――そのリルにも、小さく欠伸が浮かんだようで。
「……もしかしてリルも?」
微笑む櫻宵に、「そんなことはないから」、とリルは首を横に振ってみせた。
そうこうしている内に、先行していたカムイのカラスが、彼の元に戻ってくる。偵察を終えたその情報を基にして、目的のお昼寝部屋を決めたいところだが。
「あれぇ? さっきの鳥どこいったー?」
通路の先から声が聞こえて、リルを先頭にした三人は通路脇に身を潜める。近づいてくるのは、二体のマンティコアキッズか。さすがに狭い船内で鳥を見つけたとなれば、見張りとしては見過ごすわけにはいかなかったのだろう。
「やきとりにしたらおいしーかなぁ?」
「えー、それはちょっとかわいそー」
いや、ただの興味本位かも知れない。心なしかカラスが気まずそうにしているが、ともかく。
「まだ起きていた子がいたのね」
「どうしようか?」
「大丈夫よ、とりあえず眠ってもらうわ」
『睡華』、櫻宵の翼から生じた桜吹雪が二体を包むと、それらを瞬く間に眠りの淵へと落とした。
「念のため、拘束しておこう」
見たところそう簡単に起きそうには思えなかったが、カムイは慎重を期して眠ったそれらの自由を奪う。ひとまずは、それで近づいてくる者はいなくなったようだ。
「よし、先に進もう」
お昼寝部屋はこっち? そう問いかけたリルに、カムイが頷いて返す。今回は直接連れてきてしまったが、偵察の成果として他の見張りの位置にも当たりは付いていた。
「さすがだね、カムイ」
「それじゃ、寝た子を起こさぬように慎重に進みましょ」
声を忍ばせ、そろりそろりと忍び足。こうすると、いかにも『潜入中です』という雰囲気が味わえるもので。
「何だかわくわくしてきたわ!」
「楽しそうだね、我が巫女は」
やけにテンションの上がった櫻宵を中心に、一行は目的地へと歩を進めた。
「此処がお昼寝部屋のようだね」
「あら……皆気持ちよさそうにおねんねしてるわね」
結果的には、先に見張りを片付けられたのが功を奏した。三人は他の敵に遭遇することなくお昼寝部屋に至り、ハンモックの上で丸くなったマンティコアキッズ達を見下ろすことになった。
「……寝込みを襲うのは少しばかり抵抗があるが」
それでも、これは世界のために必要なこと。そう頷いたカムイは、自らの権能をその場に齎した。
眠る彼等に厄災が降りかかる。手始めとばかりにハンモックが引っくり返り、頭をぶつけて眼を回したキッズ達に、櫻宵の神罰が巡る。桜化した者達はカムイの手により薙ぎ払われて――。
「いたーーーいッ!」
「嵐かー!? あらしがきたのかー!?」
それらを免れた者達が、にわかに騒ぎ始めたところで、ヨルがその場できゅっと手を掲げる。
「なにあれ?」
「今日のごはん?」
「違うよ。僕を応援してくれてるんだ」
それに合わせて、リルが『魅惑の歌』を紡ぎ出す。怖くないように、痛くないように、夢の中にとかすよう、搦めてとらえて、とろりおやすみ。
「我が巫女の桜花とリルの子守唄で眠れるなんて、幸福だね」
「人魚の子守唄で眠れるのも、優しい神に素敵な夢路へ見送られるのも幸いなことよ」
「なんかむつかしいこと言われてない?」
「もっとねむくなっちゃうよー」
眠り行く彼等のもとに、さらなる桜の花が芽吹いて。外からの風が花弁を揺らす。気が付けば、そこは訪れた時よりもずっと静かになっていた。
眠くなっちゃった、と笑って、櫻宵は二人の方へと声をかける。
「お仕事終わったら3人でお昼寝したいわ」
「わぁ、いいね! 僕もふかふかなお布団の上でお昼寝したいよ」
歌い終えたリルがそう応えれば、カムイもそれに首肯して。
「三人でお昼寝しよう!」
「それはいい、楽しみが増えたよ」
この先に待つ、そんな幸を胸に抱いて、三人は残るもう一仕事へと取り掛かった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ユリィ・ミディット
キャバリアで行っても大丈夫なのか不安だけど…今回はこの世界でも戦争だし、何とか力になれないかな、と思った
かっこいい新兵器だよって、この子達に言っておけばいいのかな?
見回りに来る子達には、この兵器が自動で見回りをするから、見回りに行かなくても大丈夫だよとも言っておこう。
なるべく起こさない様に気をつけて、或程度ウロウロして信用を得てから、一気に強襲する
【グリード・イーター】で可哀想だけど一人丸呑み
それに相手の食欲を失せさせたら、こっちも弱るかも知れないけど、相手も弱るかも
僕は銃を使い分け「弾幕」と「2回攻撃」「援護射撃」を組み合わせて応戦
せめて、弾の内容は強力な催眠弾にしておく
仕事、大変そうだし…
●新兵器
「はぁ……おいしいごはんが食べたいなぁ」
マンティコアキッズ達の寝息が響くお昼寝船。今のところは平和そのものといった様子の船内に、見張りの個体の溜息が混ざり込む。今回のシフトが終わったらお食事船の方に向かうつもりなのだろう、ぐう、と鳴るお腹をさすって。
「見張りの交代時間、まだか、な……?」
と、窓の外へと視線を移したところで、マンティコアキッズが硬直した。霧に覆われたこの海域では、隣の船の様子を見る事もおぼつかないのだが、現在、そこにはユリィ・ミディット(銀色の月・f30122)の駆るキャバリアが、船と併走するようにしてすぐ傍に居た。
「ふぇ……こ、これは……!?」
思わず声を上げかけたマンティコアキッズに先んじて、ユリィ・ミディット(銀色の月・f30122)が釘を刺しにかかる。
「カッコイイ……!!」」
「かっこいいよね、新しく配備された新兵器だよ」
キャバリアからこちらのお昼寝船へと移動した彼は、見た目の格好良さに瞳を輝かせているキッズに、後の突破口になるよう誤魔化していく。
「へ~、ビームとか出る?」
「もちろん光学兵器も積んでる。今なら怪しい侵入者に自動で射撃するモードにも入れるよ」
「本当に? すっごーーーーい」
だから、そう。見回りなんてこいつに任せてしまえば良いのだと、ユリィはそれに乗じて誘導していった。見張りも任せて良いだろうし、見回りだってほう不要だ。これを良い機会に、この新兵器の腕に乗ってみせても良い……。
扱いやすいタイプの敵は、まんまとそれに乗せられて、船に併走して飛ぶユリィのキャバリアの腕に乗っかった。すると。
「可哀そうだけど……」
小さく呟いたユリィの指示に従って、キャバリアは無防備なその一体を丸呑みにした。
ユーベルコード、『グリード・イーター』発動。マンティコアキッズの使う力をコピーして、キャバリアがそれを解き放つ。端的に言うなら、今回のそれはパワーアップと巨大化である。
「わ、ワー! なんかすごいの出てきたーーーッ!!」
さすがにそうなると、この機体も目立ってしまう。別のマンティコアキッズ達が騒ぎ出すのを察して、ユリィはそのキャバリアと共に、お昼寝部屋の一つに強襲をかけた。
「すごーい、かっこいいー!!」
「でもたぶん敵だよねコレ!!」
わいわい言いながら応戦するべく走り回る敵達へ、キャバリアが仕掛け、その派手な動きに紛れてユリィが銃を操る。
遮蔽物を盾にして、彼の放った銃弾は、隙を晒したキッズ達を次々に撃ち抜いていった。
「や、やられたー!?」
「ふにゃ、これなんかまるで、眠く……」
「うん、おやすみ」
銃弾を受けた個体がふらふらと体を揺するのを見て、ユリィが呟く。彼の操る銃には、催眠弾が込められていた。
「仕事、大変そうだし……」
「お気遣いありがとー! でもしねぇーーー!!」
突っ込んでくる個体へ、さらに応射。お昼寝船における戦いは、そのまましばし続いた。
大成功
🔵🔵🔵
●もうねむれない
猟兵達の活躍により、キッズ艦隊のお昼寝船は大打撃を被った。
おやすみ中だった交代人員は悉く倒され、休憩室はもう使い物にならない状態だ。頭数と憩いの場を失ったマンティコアキッズ達の士気は下がり、仕事の効率は落ち、すると働く時間も伸び始め――。
「お、おやすみなし!? バレンタインなのに!?」
「エーーーーーン!!!!」
眠れなくなった獅子の悲鳴が、グリードオーシャンの波間に消えた。