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言の葉に蓋棺を

#アックス&ウィザーズ #猟書家の侵攻 #猟書家 #眠りの森の魔女ターリア #クレリック #言葉の神シャルムーン #援軍対応シナリオ(海鶴)

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●眠りの森の魔女
 巡礼者であるクレリックは目の前の光景を信じることができなかった。
 いや、彼でなくても理解は出来なかったことだろう。
 茨溢れる棺の中に横たわりながら、目元を覆った少女の美しい髪が風に揺れていた。どのような原理でそうなっているのか理解できないが、花びらが舞い、見えていないはずなのに確かに自分を見ていると確信できてしまう。
「言葉の神『シャルムーン』のクレリックよ。すぐに済みますから、私の話を聞いてください」
 その声は存外に優しげな雰囲気を伴っていた。
 ともすれば、友人に話しかけるような気安さと気さくさでもって巡礼者であるクレリック『ライヴズ』に語りかけてきたのだ。

「な、何を……」
 だが、それでも彼は感じていた。
 底しれぬ悪意を。目の前の少女から感じていたのだ、きっと彼女の語ることは己にとって、ひいては彼が信じ奉じる神にとって不穏なるものをはらんでいると。

「『帝竜戦役』のことはご存知ですよね? そのせいで、わたしたちは困っています」
 微笑む気配さえ在った。
 彼女は本当に困っているのだ。それはわかる。
 けれど、どうしてもクレリック『ライヴズ』は怯んだ。目の前の少女が何を行っているのかを理解できても、どうしても己の中にある信仰が彼女を拒絶するのだ。
「この世界には書架の王が探し求めた『天上界』が確かに存在するはずなのですが、帝竜ヴァルギリオスは其処に至る道を封印し、解くことなく死にました。私達は帝竜の潜んでいた広大な『群竜大陸』で天上界の手がかりを探さねばなりません」

 その言葉は知っている。
 けれど、後ずさる。関わってはならない存在が今目の前にいる。戦うことはおそらく不可能だ。
 いや、その言葉は正確ではない。
 戦うことはできよう。けれど、戦いと呼ぶほどのことさえ彼我の間には起こらない。
「そこであなた達の出番です。あなた方は、死の間際に『破邪の言葉』を放つそうですね」
「――! そこまで何故知っている!?」
 言葉の神シャルムーンのクレリックが放つ事のできる己の生命と引き換えにした最後の手段。それを知る者はシャルムーンのクレリック以外知る者はいないはずだ。
「知っていますよ。ええ、今からあなたを『群竜大陸』に運ぶので、そこで『破邪の言葉』を使い、いくらかでも帝竜の封印を解いてほしいのです」

 それは恐るべきことであった。到底許容できるものではない。
「そんな事をすれば、どのようなことが起こるかわかっているのか……! お前は人に仇名す者だな……!」
 つまり彼女は己に『群竜大陸で死んで欲しい』と言っているのだ。
 己の生命は惜しくない。
 だが、己の生命を無責任に終わらせることなどできない。目の前にいるのは巨悪にして魔女だ。
「断る……! お前達のような輩に与する理由など何処にもない!」
「ああ、抵抗は不可能です。わたしの『眠り』を耐えることはできません。おやすみなさい。次に目覚める時、あなたは――」

 目の前が暗転し、言葉の神『シャルムーン』のクレリック『ライヴズ』は抗いがたい睡魔と共に堕ちていくしかなかったのだった――。

●砂地獄砂漠
 かつてアックス&ウィザーズにおいて猛威を振るった黒龍が在った。
 勇者たちによって滅ぼされた黒龍であったが、その肉片とも言える細胞は自律的に蠢き、様々な生き物を捕食し、再び復活することを目論んでいた。
「――」
 咆哮と呼ぶにはあまりにも弱々しい声。
 その肉片の一つがなにかに気がついたように、砂漠の中をうごめく。
 其処に在ったのは、頭を振って立ち上がらる一人の男性……言葉の神『シャルムーン』のクレリック『ライヴズ』であった。
「こ、ここは……まさか、本当に群竜大陸だというのか……!」
 驚愕すべきことであったが、目の前に広がる砂の渦巻や砂嵐、何処までも続く砂漠が如実に己が居た場所ではないことを知らしめていた。

「……あの魔女の言葉は真……ならば、ここには……!」
 黒い肉片、『黒竜細胞片』がうごめく姿を彼は見た。
 砂塵の中で己が弱るのを待つか、はたまた周囲にうごめく『黒竜細胞片』が集まってくるのを待つか……どちらにせよ、己の生命を捕食し、復活しようとする悪意が在った。
「進むも死地、戻るも死地、か……だが、私は私の使命を全うする。それが我が奉ずる神『シャルムーン』に立てた誓い!」
 悍ましい黒色の化け物たちと砂塵に取り囲まれながらも、『ライヴズ』は構える。

 此処で死ぬわけには行かないのだ。
 あの魔女の目論見を打破しなければ……。これよりもっと恐ろしいことが引き起こされてしまう。
 それを恐れ、けれどどうしようもない状況の中で、彼は孤軍奮闘するのだった――。

●黄金の石版
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回はアックス&ウィザーズにおける事件です」
 アックス&ウィザーズと言えば、『帝竜戦役』という大規模な戦いが起こった世界でもある。
 猟兵たちにとっても、記憶に新しい戦いであったことだろう。
 その戦いの場であった『群竜大陸』が今回の事件と関連しているのだという。『群竜大陸』は猟兵が領主として分割して統治している大陸でも知られているが、今回はその一角、『砂地獄砂漠』にて猟書家の引き起こした事件が予知されたのだ。

「はい、場所は魔力を含んだ砂塵、砂嵐が巻き起こる土地であり、これにはユーベルコードを阻害する魔力が含まれております。そして、この地の残党オブリビオンは砂を自在に操る『アリジゴク能力』を有しています」
 この地に残ったオブリビオンたちは皆、一様に砂を自在に操る能力を持つ相対する者のユーベルコードを阻害するのだ。

「故に至近距離でこれを討たねばならないのですが……私の予知に在ったのは、言葉の神『シャルムーン』のクレリック『ライヴズ』さんが、この事件に巻き込まれて……いえ、彼自身が渦中の人なのです」
 どうやら猟書家によって彼は『群竜大陸』へと運ばれ、捨て置かれたのだという。
 その目的は『群竜大陸』で死に、死の間際に放たれるという『破邪の言葉』による帝竜ヴァルギリオスが施した『天上界』への封印を解くこと。
 たった一人の放つ『破邪の言葉』では封印は溶けないが、何人ものクレリックを犠牲にすれば、その目的は完遂できるというのだ。

「そのために猟書家『眠りの森の魔女ターリア』は、『ライヴズ』さんを『砂地獄砂漠』へと打ち捨てたのでしょう」
 彼を救い、猟書家を打倒しなければならない。
 しかし、棄てられた土地にはユーベルコードを妨害するという厄介な特性が在り、この地に残るオブリビオンに宿った能力と相まって非常に戦いづらい環境となるだろう。
「残党オブリビオンも厄介ですが、猟書家の力もまた厄介であり協力であると言わざるを得ないでしょう」
 ですが、お願いいたしますとナイアルテは頭を下げて見送る。

『天上界』が如何なる意味を持つのかはわからない。けれど、猟書家の目論見は必ず打ち砕かねばならない――!


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はアックス&ウィザーズにおける猟書家との戦いになります。猟書家『眠りの森の魔女ターリア』が、言葉の神『シャルムーン』のクレリックである『ライヴズ』の持つ最後の力『破邪の言葉』を使って、『天上界』へと至ろうとする目論見を打破するシナリオとなります。

 ※このシナリオは二章構成のシナリオです。

●第一章
 集団戦です。
『群竜大陸』の『砂地獄砂漠』での戦いになります。
 この砂漠の砂はユーベルコードを阻害する魔力を秘めており、同時に『黒龍細胞片』と呼ばれるスライムのようなオブリビオンたちの持つ『アリジゴク能力』によって近距離での戦闘をする他ない状況に皆さんを追い込まれています。
 クレリックである『ライヴズ』は、皆さんよりもずっと弱い力です。
 彼が死んだ時点で『破邪の言葉』が放たれてしまいますので、彼を護ることが肝要です。

●第二章
 ボス戦です。
 しびれを切らした『眠りの森の魔女ターリア』が現れます。
 彼女は未だ死んでいない『ライヴズ』と皆さんを狙って戦いを挑むでしょう。無論、攻撃の標的は常に『ライヴズ』を含んでいますので、彼を護りながら、なおかつ『砂地獄砂漠』の砂に含まれるユーベルコードを阻害する魔力を攻略する必要があります。

  ※プレイングボーナス(全章共通)……襲われるクレリックを守る。

 それでは、『天上界』への封印を解く鍵となる『破邪の言葉』。それを有するクレリックを守りながら、猟書家の目論見を打倒する皆さんの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
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第1章 集団戦 『黒龍細胞片』

POW   :    過食
戦闘中に食べた【有機物や生き物】の量と質に応じて【細胞分裂の速度が増して肥大化し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    飽食
攻撃が命中した対象に【自身の細胞の一つ】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【付着した箇所から細胞が増殖、取り込み】による追加攻撃を与え続ける。
WIZ   :    食物連鎖
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【侵食し、細胞群で覆わせ眷属】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 かつて討たれた黒龍。
 猛威を奮い、暴虐の限りを齎した黒龍は古の勇者たちによって討滅された。数百、数千にも及ぶ肉片はしかして、過去の化身として蘇る。
 その細胞片はあらゆる生物を取り込み、貪り、再び元の姿へと戻ろうとしている。
 その黒色のゲル状の細胞片は、ここ『砂地獄砂漠』において、さらなる力を手にした。
 この土地において砂は魔力を宿し、ユーベルコードを阻害する力を持っている。
 遠距離からの攻撃は効果を発揮できず、近距離での戦いを強いられるのだ。
 
 それは言葉の神『シャルムーン』のクレリックである『ライヴズ』にとっては致命的なことであった。
 肉体的な戦闘も可能である彼であったが、その力は猟兵には及ばない。
 オブリビオンである『黒龍細胞片』の群れを前にしては、必ず数に押されて殺されてしまう。
 そうなってしまえば、猟書家『眠りの森の魔女ターリア』の思惑通りになってしまう。

『破邪の言葉』によって帝竜の施した『天上界』への封印。
 その打破こそが猟書家の望み。
 これを為さしめては、オブリビオン・フォーミュラを打倒したアックス&ウィザーズに再びオブリビオンが生まれ、無辜なる人々の犠牲が出てしまうのは当然の帰結である。

 故に、猟兵達は守らなければならない。
『破邪の言葉』を今際の際に発するクレリックを、その生命を守らなけれならないのだ――。
禊義・秋陰斎
この距離は…丁度良いな、私は接近戦しかできぬ由。気遣い…というわけではなさそうだな、悪意がよく視える、ならば応えよう…
相手からの攻撃を【見切り】で判断し、斬るための腕さえ残れば多少傷を負っても構わず襲われるクレリックを守る事に専念しよう。
人間にはできぬ動きを【第六感】で捌き、攻撃の際にできた隙を的確につく…



『群竜大陸』。
 それは猟兵たちにとって言わずと知れた土地である。
『帝竜戦役』の舞台であり、様々な特色ある土地が存在する大陸であり、今はオブリビオンの残党が在りつつも猟兵達によって分割統治されている。

 その中の一つ『砂地獄砂漠』。
 砂に魔力がやどりユーベルコードを阻害し続けるがゆえに、遠距離のユーベルコードは効果を減退させられてしまうがゆえに、砂を操る力を有したオブリビオンは、まさに猟兵たちにとって手強い敵であった。
 うごめくように黒いゲル状の『黒龍細胞片』が猟書家『眠りの森の魔女ターリア』によって連れ去られ、放り捨てられた言葉の神『シャルムーン』のクレリックである『ライヴズ』を襲う。

「くっ……! この砂、ユーベルコードを阻害するのか……! これでは」
 そう、ジリ貧である。
 格闘戦ができないわけではないが、あのゲル状の身体を持つオブリビオンには効果が薄いだろう。
 得物と見定めた『ライヴズ』を捕食せんと次々と細胞分裂を起こし、増殖していく『黒龍細胞片』。
 その力は言うまでもなく、増殖することである。
 さらに砂を操る能力によってユーベルコードの力さえも近距離以外では封じることができる。

 それは厄介というに相応しい力であった。
「だが、この距離は……丁度良いな」
 静かなる声が響き渡る。
 戦場となった『砂地獄砂漠』に凛とした声。その声の主である禊義・秋陰斎(辻斬り侍・f00427)の手にした妖刀の斬撃の一撃が、『黒龍細胞片』の身体を両断していた。
「あ、あなたは……!」
 突如として現れた救いの手、その姿を見て『ライヴズ』は驚愕した。
 彼女は敵がいるにも変わらず、その両の瞳を閉じていた。
 まさか、盲目の剣士なのかと訝しむが秋陰斎はかぶりをふった。たった数瞬の間であっても、即座に彼女は『ライヴズ』の言わんとしていることを理解していたのだ。

「いいや。明鏡止水の心……先入観を捨て、視覚以外の感覚を極限まで研ぎ澄ましているだけである」
 視覚に頼らずとも、と彼女の妖刀がきらめいた瞬間、『黒龍細胞片』は一瞬の明滅と共に切り刻まれていく。
「私は近接戦しかできぬ由。気遣い……というわけではなさそうだな、悪意が欲視える」
 彼女の目の前にいるクレリックは彼女を慮ってくれたのだろう。
 悪意はない。
 だが、己達に向けられる無数の『黒龍細胞片』が集まってきた悪意だけはよくわかる。

 例えユーベルコードを封じられていたとしても、今の彼女には無意味である。
 第六感。
 五感を越えた研ぎ澄まされた超感覚故に、『黒龍細胞片』の動きは手にとるようにわかるのだ。
「人間にはできぬ動き……なるほど、化生の類であるか……ならば」
 秋陰斎の剣閃は、いうなれば舞のようであった。
 クレリックである『ライヴズ』をして、その動きは流麗にして精緻。
 一切の乱れ無く飛ぶ剣閃が、彼女を食らい付くさんとする『黒龍細胞片』のことごとくを両断し、絶命させ続ける。

 本当に瞳を閉じているのかと想うほどの超絶為る技巧の前に、オブリビオンである『黒龍細胞片』は霧散していくしかなかったのだ。
「お主を護るために腕の一本も覚悟をしていたのだが……他愛なし」
 それでも迫る数は圧倒的である。

 しかして、それは恐れる理由になどなっていない。
 秋陰斎は手にした妖刀を輝かせ、その絶技たる業を持って、『黒龍細胞片』のことごとくを鏖殺せしめ、クレリックである『ライヴズ』を護り続ける。
『砂地獄砂漠』に剣閃の舞が飛び、砂塵の彼方に『黒龍細胞片』の霧散する光景だけが広がっていくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アストラ・テレスコープ
よーし、すぐに助けが必要と聞いて急いで来たよ!
シャルムーンとか破邪の言葉とか難しいことは後で考える!
とにかく今はライヴズって人を守らなきゃいけないよね!

うーん、近距離攻撃はあまり得意じゃないんだよねー
よし!ライヴズさん、とりあえず私の近くに来て一緒に戦おう!
私のユーベルコードで回復してもらいながら、近づいてくる敵にはダメージを与えるよ!

あとはライヴズさん、私に近づいた敵はそこそこ弱ってるはずだからトドメのアタックで各個撃破よろしくね!



 誰かが助けを求める時、その言葉は誰かの耳に届いているはずである。
 猟兵は世界に選ばれた戦士である。
 オブリビオンによって世界が滅びの道をたどる時、その世界の悲鳴に応えるのだ。
 故にアストラ・テレスコープ(夢望む天体望遠鏡・f27241)は駆けつける。
 言葉の神『シャルムーン』のクレリックである『ライヴズ』が猟書家『眠りの森の魔女ターリア』によってアックス&ウィザーズの『群龍大陸』に連れ去られたと聞いて、彼女は飛び込んできたのだ。

『破邪の言葉』であるとか、『天上界』への封印だとか、そういった小難しいことは後で考えればいい。
 アストラにとって今一番重要なことはクレリックである『ライヴズ』を助けることだ。
「兎に角今は『ライヴズ』って人を守らなきゃいけないよね!」
 転移した場所である『群竜大陸』の一角である『砂地獄砂漠』は砂にユーベルコードを阻害する魔力が込められている。
 この地に残党として残っているオブリビオン達は皆、砂を操る能力を得て、猟兵のユーベルコードを遠距離では効果のないものへと変えてしまうのだ。

「うーん、近距離攻撃はあんまり得意じゃないんだよねー」
 とは言え、黙ってやられるわけにもいかないし、『ライヴズ』を殺させてはならない。
「助力感謝します……ですが、貴方まで巻き添えになることは……!」
『ライヴズ』はそんな彼女の言葉を慮って言う。
 けれど、アストラは、大丈夫と笑って、その瞳をユーベルコードに輝かせるのだ。
 その輝きは光の力。
 降り注ぐのはPrism/Schmidt–Cassegrain(プリズム・シュミット・カセグレン)の光のエネルギーである。
 右手を天に向け、高く掲げて星の光を集めてアストラはユーベルコードに輝くのだ。

「こ、これは……!」
『黒龍細胞片』たちの数は益々多くなってきている。
 だが、アストラの掲げた掌から暗黒エネルギーが解き放たれ、次々とオブリビオンたちを打倒していく。
 しかし、『黒龍細胞片』たちもやられてばかりではない。
 アストラのユーベルコードによって打ち倒された細胞片の、さらに細かい細胞片を捕食し、細胞群として眷属化して数で圧しようというのだ。

「お星さまの力だよ! けど、数が多いね……! よし、ライヴズさん、とりあえず私の近くから離れないように! 近くにいれば回復できるから」
 アストラのユーベルコードの範囲内であれば互いにカバーすることができるだろう。
 さらに暗黒のエネルギーが眷属化された『黒龍細胞片』のさらに細かいかけらたちをも打倒してくれる。
 弱った敵を『ライヴズ』が打倒してくれれば、随分楽に戦うことができるはずだ。
「役割分担しよう。私が敵を弱らせるから……『ライヴズ』さんはトドメをお願いね!」
「わかった……! だが、そちらも無理をしないでくれ!」
 自分のために誰かが傷つくことはない。
 ましてや、アストラは自分よりも年若い女性だ。そんな風に気遣ってくれるのが、アストラはこそばゆく感じて、快活に笑うのだ。

 ヤドリガミである彼女にとって見た目と年齢は比例しないかもしれない。
 けれど、誰が誰かを思ってくれる気持ちは嬉しいものだ。
 だから、彼女は笑って言う。
「心配ご無用! さあ、行くよ! お星さま、カモン!」
 再びユーベルコードに輝き、アストラの掲げた右手から光があふれる。
 今は星空が遠く。
 けれど、確かにそこにある星の力を借りて、アストラは闇色のオブリビオンたちを星々の存在する宇宙の暗黒エネルギーによって打倒し続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。

第三『侵す者』武の天才
一人称:わし
武器:黒燭炎

遠距離は阻害される。ああ、つまりは近接で戦えと。
ならば、わしの一番得意とするところよ(呵呵大笑。近距離破壊の権化)
本当に切り替えやすいの、今の状態(複合型悪霊)…。

ライヴズ殿には、結界術で防御用の結界を張っておこう。
さて、黒燭炎での炎属性攻撃+なぎ払い。増大しようと、切り捨て焼いてしまおう。
それでも足りぬのなら、指定UCを使ってでも滅してくれる。



『帝竜戦役』。
 それはアックス&ウィザーズにおいて起こった猟兵とオブリビオンによる大きな戦いであった。
 群竜大陸は広大であり、その一区画をとっても奇異なる土地の特性が現れている。
 今回、猟書家『眠りの森の魔女ターリア』が言葉の神『シャルムーン』のクレリックである『ライヴズ』をさらい、放置したのは『砂地獄砂漠』と呼ばれる土地であった。
 この土地の砂には魔力が含まれており、それだけでユーベルコードの効果を阻害する効果があると言われている。
 この土地に残ったオブリビオンたちは皆、この砂を操る能力を身につけており、この土地に置いて猟兵は常に不利な状況に身を置くことに為る。

 だが、4つの魂で一つの猟兵、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は即座に切り替えていた。
「遠距離は阻害される。ああ、つまりは近接で戦えと」
 複合型悪霊である彼にとって、四人の得手不得手は同時に切り替えることで打破できるものであった。
 一人では成せぬことも四人であれば容易い。
 一人の不得手を三人の得手で凌駕すればいい。
「ならば、わしの一番得意とするところよ」
 呵呵と大笑し、『侵す者』が人格を表層に出る。
 彼は武の天才とも言われている男であった。手にした黒色の槍を手に、砂塵荒ぶ中へと猛然と走っていく。

 彼は言われずとも直感していた。
 クレリックである『ライヴズ』を襲うオブリビオンの特性、そのゲル状の身体を一目みて判ったのだ。
「なるほど! わしの出番であるということは即ち、敵の急所を的確に討たねばならぬ相手ということ! クレリックの御仁よ、助太刀致そう!」
 それは一瞬の出来事であった、炎のゆらめきのように『侵す者』は、『ライヴズ』に襲いかからんとゲル状の体を広げたオブリビオン『黒龍細胞片』の中心へと槍を突き立てる。

 だが、かのオブリビオンの体はゲル状である。
 まるで手応えがない上に、これを切り裂けば敵の分裂を助けるようなものである。
「一つのところに力を込めると…」
 ユーベルコードに輝く黒燭炎。
 槍の穂先が明滅し、輝くユーベルコードが一瞬でゲル状の体を崩壊させていく。
 遠距離ではユーベルコードの力を減衰させられてしまうが、ここまで近距離であれば、魔力のこもった砂の力も効果はない。
 爆散するように『黒龍細胞片』の身体が弾けて霧散していく。

「危ないところであったが、無事か。『ライヴズ』殿」
「え、あ、はい……助かりました」
 あまりの早業。一瞬で肩をつけてしまった技量に『ライヴズ』は目をパチクリさせている。
 だが、敵の数はまだまだいるのだ。
 この土地の特性もあるのだろうが、オブリビオンの残党は未だ群竜大陸のあちこちに存在している。

「さて、ライヴズ殿、結界術で防御用の結界を張っておるゆえ、ご安心めされい。効果が切れてしまったら申し訳ないが……」
 だが、それでいいのだ。
 此処に転移してきた猟兵は彼だけではない。
 他にも大勢が集まってきている。故に何も心配は要らないのだ。

「それでは派手に参るとしよう!」
 手にした黒色の槍を振りかざし、『侵す者』が駆けていく。
 颯爽と、それでいて炎のように激しく穂先の炎を宿して描く軌跡が炎の舞のように『黒龍細胞片』たちを薙ぎ払っていく。
 戦えば戦うほどに最適化されていく動き。
 一切の乱れもなく、一分の隙すらない。
 これが武の天才と呼ばれる所以である。

「しかし、本当に切り替えやすいの、今の状態……」
 死んでからの方が己達の力を十全に発揮できるというのは皮肉なものであったが、それでも守れる生命があるというのは誇らしいものである。
 もはや誰一人として己達の立つ戦場では喪わせはしない。
 その決意と共に彼らは戦場を駆け抜ける一つの武として君臨し続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント
◆POW
エンチャントアタッチメントを銃に取り付けておく
この手の敵には銃弾だけの攻撃よりも効果が高そうだ

奴らの目的は捕食、黙っていても寄ってくる
こちらは下手に動かず、ライヴズの近くで彼の守りを優先しつつ敵を待ち受ける
ライヴズに近付く細胞片を確実に、アタッチメントの効果が付与された、炎の『属性攻撃』弾による近距離からの射撃で潰していく
射程距離という利点は消えるものの、至近距離でも銃は使える
むしろ威力と命中率は上がるくらいだと前向きに考える

多数に囲まれても慌てず、腰を据えて敵の接近を待つ
安心しろ、手が無い訳でも諦めた訳でも無い
十分引きつけたところでユーベルコードを発動、接近していた細胞片の一掃を狙う



『群竜大陸』の一角である『砂地獄砂漠』。
 そこは魔力在る砂によってユーベルコードが阻害される土地であり、その砂を操る能力を身に着けたオブリビオンにとっては猟兵を迎え撃つには十分な場所であった。
 だが、今此処に残るオブリビオンは『黒竜細胞片』と呼ばれる、かつて黒龍であったものの成れの果てである。

 ゲル状のスライムの如き姿は、今再び黒竜の姿に戻らんとしているのか、それとも細胞片が持つ捕食と増殖をこなすためだけの意識しか持ち合わせていないのか、判別が付かない。
 そんな場所に言葉の神『シャルムーン』のクレリックである『ライヴズ』は猟書家によって連れ去られ、捨て置かれた。
 目的は言うまでもなく彼の死である。
 彼ら『シャルムーン』のクレリックたちは死の間際に『破邪の言葉』を放つことができる。
 それによって『天上界』へ繋がる封印を解こうというのだ。

「……遠距離が減衰されるとはな」
 戦いづらい状況であるとシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は理解していたが、それでも戦いに赴かぬ理由にはなっていなかった。
 愛用のハンドガン、シロガネにアタッチメントとして装着されたのは炎冠石を加工されたもの。
 炎の魔力をまとわせ、弾丸と共に放つためのオプションである。
 ユーベルコードの攻撃が遠距離であればあるほどに、この土地の砂に含まれた魔力がユーベルコードの力を減衰されてしまう。

 ハンドガンを主に武器として使う彼にとっては不利でしかない。
「奴等の目的は捕食、黙っていても寄ってくる……」
 シキは駆け出し、言葉の神『シャルムーン』のクレリックである『ライヴズ』の元へと駆けつける。
 すでに先行した猟兵たちが彼を援護してくれているおかげでだいぶやりやすい状況にはなっているが、敵の数が多い。
 戦いの気配に、捕食する機会を見出したのだろう。
 シキの言葉どおり、周囲には彼らを取り囲むように『黒龍細胞片』たちの群れが集まっていているのだ。

「より弱いものから捕食しようとする……なるほど、原始的だな」
「すまない……! やはり奴等は私を」
 それは仕方のないことであった。
 彼はこれまで何度も執拗にオブリビオンである『黒龍細胞片』に襲われているのだ
いわば、マーキングされているような状態なのであろう。
 だが、シキは構わなかった。
「むしろ、好都合だ。こちらは迎え撃てばいい」
 アタッチメントの効果で炎の弾丸が打ち込まれていく。遠距離で効果が薄いのであれば、飛びかかってきた者から排除していけばいい。

 弓矢のように矢を引き絞る動作のない分、素早い連射速度を手に入れたのがハンドガンだ。
 静音性はなくても、このような敵を引きつける場合には、むしろ効果的と言えたでろう。
 彼の目論見通り、『黒龍細胞片』たちはシキに群がるように飛びかかってくる。
「至近距離での銃……懐に入れば、勝てるとでも思ったか」
 むしろ、狙いをつける必要がない分、乱れ撃つシキのハンドガン捌きは神がかっていたと言えよう。
 その業は、クレリックである『ライヴズ』をして目を見開かせるものであった。

 次々と『黒龍細胞片』たちが散り散りに霧散させられていく。
 多少囲まれていたとしてもシキに焦りはなかった。
「安心しろ、手が無いわけでも諦めたわけでもない」
 ハンドガンに弾丸を込めながら、シキは視線を巡らせる。それは彼のユーベルコードが放つ鋭き眼光の輝きでもあった。

「後ろに……!」
『ライヴズ』の声が響いた瞬間、シキの腕が跳ね上がる。
 その声に反応し、一瞬で視線を巡らせ、ユーベルコードの残光が『砂地獄砂漠』に走るのだ。
 放たれた弾丸は周囲の全てを打ち払う、狙いすましたかのような連続射撃。
 それこそが彼のユーベルコード、ブレイズ・ブレイク。

 一瞬の明滅のごとく弾丸が宙を走り、彼らに仇為す者たちを討ち滅ぼすのだ。
 未だ敵の数は多い。
 だが、それでも数は減ってきている。このまま押しつぶされることはないだろう。シキはそう判断し、押し寄せる黒色の波のようなオブリビオンの群れに炎の弾丸を打ち込み続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リミティア・スカイクラッド
砂に足を取られないよう風神の靴による「空中戦」で移動
敵の頭上を飛び回り、地上のライヴズさんから注意を逸らします

ご無事ですか、クレリックの方
砂地獄砂漠の領主、リミティアと申します
どうかご安心を。あなたのことは必ず守ります

ここでの戦闘は慣れたものです
敵がどうやってこちらを感知しているかは分かりませんが
魔女の林檎とリムの生命力を釣り餌にして
「オーラ防御」で砂塵や侵食を防ぎつつ
敵が一箇所に集まるよう空中から撹乱・誘導します

敵が纏まったら風神の靴の「封印を解く」と
突風で砂を吹き飛ばしながら接近します
指定UCの炎を宝石剣に纏わせ、切断と同時に「焼却」
二度と復活できないよう、細胞の一片まで焼き尽くしましょう



 押し寄せる黒色の波の如きオブリビオン。
 それはかつての『黒龍』の成れの果てであり、全てを捕食し再び復活戦としている『黒龍細胞片』の群れであった。
 波状攻撃のように絶え間なく集まっている中心にあるのは猟兵たちに守られながら、己も戦いに赴いている言葉の神『シャルムーン』のクレリックである『ライヴズ』であった。
 彼の力は猟兵には及ばないまでも、己の生命は己で護ることができているようであったが、それも時間の問題である。
 物量で責められ、ユーベルコードは砂に宿った魔力に寄って減衰させられてしまう。
 こうなってしまえば、消耗戦にほかならず、打開するにはさらなる戦力が求められていた。

 そこへ風纏う邪神の力が込められた靴と共に降り立つのは、リミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)であった。
「ご無事ですか、クレリックの方。『砂地獄砂漠』の領主、リミティアと申します。どうかご安心を。あなたのことは必ず護ります」
「あなたが、この『群竜大陸の領主』――『ドラゴン・ロード』! ……ご助力感謝いたします……!」
 その言葉にリミティアは頷き、その力を開放する。
 そう、彼女はこの『砂地獄砂漠』の統治を任された猟兵である。その魔女としての力は言うまでもなく絶大なるものである。

 そして、彼女にもまた宿命がある。
 倒さねばならぬ敵。
 オブリビオンにして猟書家『眠りの森の魔女ターリア』。
 彼女との関係が語られたことはない。けれど、魔女の名を冠する以上、リミティアは捨て置くことなどできはしない。
 己が『群竜大陸の領主』として治める土地に『言葉の神シャルムーン』のクレリックを転移させたことを考えれば、偶然とは考えづらい。

「ですが、今は私にできることを――」
 かのオブリビオン『黒龍細胞片』には目も鼻もない。
 他者の存在を感知する器官がないのであれば、それは如何なる方法で、感知しているのか……。
 開放されたオーラが砂塵を吹き飛ばし、そのユーベルコードを減退させる魔力ごと吹き飛ばしていくのだ。
 彼女の生命力の輝きは眩い太陽のようであり、その太陽の恩恵を受けて、手にした黄金の林檎が輝く。
 不死の源とも語られる伝説の果実の生命力は凄まじいものであり、復活を目論む『黒龍細胞片』たちは、彼女に群がろうと細胞分裂と増殖を繰り返し、宙に浮かぶ彼女へと殺到する。
「――やはり、生命力を感知して襲いかかってきますか……ならば」

 見よ、その輝きを。
 放たれた魔力の奔流は、彼女の履いた風神の靴の本来の力を開放する。邪神の力を宿しながらも制御には一切の乱れなく。
 放たれた突風は魔力を含んだ砂ですら、無意味と化す。
 生命力につられて集まってきた『黒龍細胞片』たち。その黒き凶々しい姿を見下ろしながら、リミティアの瞳がユーベルコードに輝く。
 手にするは、『宝石剣エリクシル』。
 赤き宝石で作り出された魔剣に、魔女の火葬(マギア・クリメイション)の如き炎がまとわれ、その力を赤色の輝きによって解き放つのだ。

「骸には火を、墓には花を」
 それはオブリビオンのみを焼却する勿忘草色の炎。
 斬撃と共に放たれるは、かつて在りし暴威を振るった黒龍への手向け。
 二度目の復活などありえない。
 この土地の領主であり、『ドラゴン・ロード』の名を戴くリミティアにとって、今回の出来事は己が為さねばならぬ宿命である。

 故に、彼女の掲げる炎はあまりも眩いものであったことだろう。
 放つ炎が黒色の波のことごとくを切り裂き、燃やし尽くしていく。
「一片のかけらも残しはしません」
 地獄の業火よりも熱く、そしてあらゆるものを燃やし付く炎。
 一度滅びたのならば、その存在は在ってはならぬもの。
 追いすがる過去を振り払うようにリミティアの炎が、『砂地獄砂漠』にほとばしり、オブリビオンの大半を薙ぎ払うのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カイ・オー
ライヴズさん、だったか。面倒な事に巻き込まれたみたいだな。
大丈夫だ。俺達に任せてくれ。

ユーベルコードが封じられてるのは面倒だが、俺も普通の人間じゃない。PCゲームの世界から生まれた「地獄の炎を操る超能力名探偵」という設定の妖怪…いや、妖精だ。何とかなるさ。

「超感覚的知覚」で強化された五感と【第六感】で周囲の状況を【情報収集】。地形や敵の動きを把握し彼を守る様に立ち回る。
「火の手」で召還、制御した地獄の炎で【属性攻撃】。刃に炎を纏わせる。
「P.A.R」の能力で強化された【怪力】と【早業】で敵を【なぎ払い】【切断】していく。

あなたは必ず俺達が守る。言葉の神の信徒に嘘はつかないさ。俺達を信じてくれ。



『群竜大陸』の一角、『砂地獄砂漠』での戦いは苛烈を極めていた。
 押し寄せるオブリビオン『黒龍細胞片』の群れは、一度焼滅しても尚、潜んでいた一片からでも分裂、増殖を繰り返して数を増やしていく。
 他の猟兵達の活躍も在って数を減らしてはいるが、この魔力の宿る砂に覆われた土地にあっては、どこに潜り込んでいるのかわからぬほど無数に点在しているのだろう。

『言葉の神シャルムーン』のクレリックである『ライヴズ』もまた消耗の度合いが激しくなってきていた。
 彼を護ろうとする猟兵達の活躍があったからこそ、彼の生命は此処まで繋がれている。けれど、これだけの消耗戦を強いられていては、いつ押し切られてしまうかもわからない。
 だが、何も案ずることはない。
 何も諦めることはないのだ。
「ライヴズさん、だったか。面倒なことに巻き込まれたみたいだな。大丈夫だ。俺たちに任せてくれ」
 そういって、『ライヴズ』の肩を軽く叩いて励ますのは、カイ・オー(ハードレッド・f13806)であった。

 彼の軽口を叩くような雰囲気は消耗を強いられていた『ライヴズ』にとってはありがたいことであったことだろう。
「ユーベルコードが封じられているのは面倒だが、俺も普通の人間じゃない。そうだな……敢えて名乗るならば『地獄の炎を操る超能力名探偵』という設定の妖怪……いや、妖精だ。なんとかなるさ」
 その言葉に馴染みのない言葉の羅列を告げられた『ライヴズ』は目を丸くする。
 生来の真面目さもあるのだろうが、カイの言葉をしっかり噛み砕こうとして失敗するあたりが、なんとほほえみを誘う。

「ははっ、笑うといい。笑えば人の活力となる。さあ、いくぞ――!」
 カイはほほえみながら、超感覚的知覚で強化された五感、そして、それらとは別の第六感で周囲の状況を知る。
 砂地に潜む『黒龍細胞片』の数。
 その数は無数であった。
 あれだけの猟兵たちが打倒したにも関わらず、やりすごそうとしている存在すらあるのだ。
 ならば、それらを叩かねばならない。

 革手袋から炎が噴出し、無名の刀に炎が宿る。
 加速された知覚能力と身体能力が弾けるように砂地を走る。
 目の前にあるのは、すでに捉えた『黒龍細胞片』の一体。
 分裂も、増殖もさせる暇を与えはしない。
「そこだっ!」
 放たれた圧倒的な膂力と共に放たれた斬撃は炎の軌跡を伴って『黒龍細胞片』の一体を斬り捨てる。

 焔に寄って分裂と増殖を妨げられながら霧散していくオブリビオン。
 その姿を見届けること無くカイは、戦場を駆け抜ける。
 あるのは敵を滅ぼし、クレリックである『ライヴズ』を護るという使命だけである。
「あなたは必ず俺たちが護る。言葉の神の信徒に嘘は付かないさ。俺たちを信じてくれ」
 信じてさえくれれば、己達の力は増していく。
 たったそれだけでいいのだ。
「……もちろん、信じるとも。異邦の勇者たちを疑うことなどない。助力、感謝する」
『ライヴズ』のその言葉だけで十分だった。
 それだけでカイの身のうちから湧き上がる力がある。

 信じられる。
 存在を認められる。それこそがバーチャルキャラクターであるカイにとっての力の源である。
 探偵はいつだって誰かのために。
 何かをなそうとするのならば、誰かのためでなくてはならない。それがバーチャルキャラクターとして存在する己の意義であろう。

 振るう刀が一層燃え上がり、カイの力をユーベルコードの輝きでもって、さらなる高みへと昇華させていくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、世に潜み…胸が目立ちすぎて潜めないとかそんなことないもん!!(お約束

むしろアリジゴクに埋まりそう!
しかしクノイチたるものいかなる場所でも活動できるのです!
具体的には【くちよせの術】で水蜘蛛を取り出して
水も砂も沈むのならこれを履けば大丈夫なはず!
沈まないようにしつつ
ついでにサーフィンすれば移動も楽なのでは!

接近戦しかダメなら
私のハリケーンスラッシュカタールが唸りますよ
【VR忍術】炎纏いの術!
カタールに炎を纏わせて焼き切ってあげましょう!
なるべく接触しないように気をつけて
クノイチとスライムは古来より天敵ですから
あ、こら!張り付いちゃダメ?!

※アドリブ連携OK



「お呼びとあらば参じましょう」
 その声は高らかに『群竜大陸』の一角、『砂地獄砂漠』に響き渡った。
『言葉の神シャルムーン』のクレリックである『ライヴズ』を抹殺せんと迫るオブリビオンたちは見上げたことであろう。
 その姿を、その声を、その存在を。
 煌めくような瞳と、金色の髪をなびかせ、砂漠という土地柄に素敵にマッチングした肌色と共に、サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は名乗りを上げるのだ。

「私はクノイチ。世に潜み……胸が目立ちすぎて潜めないとか、そんなことないもん!!」
 お約束の前口上であるが、クレリックである『ライヴズ』は目を覆っていた。
 ちょっと刺激が強かったようである。
 あたら若い女性がそんな肌を露出するなんてという想いもあったのだろうけれど、なんともまあ、バーチャルキャラクター冥利に尽きる反応というものである。
 ちょっとサージェは気をよくしたことで、着地した場所が悪いことに気がつくのに遅れた。

「って、あー!? むしろアリジゴクに埋まりそう!?」
 着地した場所は、砂を操る能力を得たオブリビオン『黒龍細胞片』の力に寄って入り込んだものを地中に引き込む罠であった。
 まさにアリジゴク。
 本来のアリジゴクはそんなに蟻取れないという話もあるそうだが、サージェに至っては、ある意味クノイチほいほいであったのかもしれない。油断大敵である。
「しかし、クノイチたるものいかなる場所でも活動できるのです!」
 具体的には口寄せの術で水蜘蛛を取り出し、履くのだ。
 水も砂も沈むのなら、これでオッケーというか、もはやサンドサーフィンというやつであろう。

 渦を巻くアリジゴクの中を中心に向かってサージェは飛ぶ。
 なにせ、この土地の砂には魔力が宿っており、ユーベルコードの力を減退させるのだ。遠距離では、減退させられてしまう故、効果が望めない。
 故に、水蜘蛛で砂地を一気に接近して叩くことこそが肝要であった。
「私のハリケーンスラッシュカタールがうなりますよ! そしてそしてー、メモリセット! チェックOK! 参ります!」
 専用メモリをコンソールにインストール。
 VR忍術(イメージスルノハカッコイイワタシ)によって生み出される炎がカタールにまとわりつき、サージェの放つ双撃は砂地獄の奥に潜んでいた『黒龍細胞片』を膾切りにする。

 散り散りに斬り捨てられたオブリビオンが霧散するのをみやりながら、サージェは得意満面である。
 だが、スライムとクノイチとは古来よりの天敵である。

 初耳であるが、まあ、バーチャルゲームの概念が集まった存在であるサージェにとってはある意味前口上よりもお約束である。
 俗に言うサービスシーンというやつである。
 仕方ない。
 お話の展開上どうしても必要なのである。いや、必要ないという話もあるが、これはこれである。それはそれ。
「あ、こら! 張り付いちゃダメ?!」
 なるべく接触しないように気をつけていたサージェ。彼女にのしかかろうとしていた『黒龍細胞片』を斬り捨て、事なきを得たが、もう少し油断していたら危ないところであった。

 だが、それでもまだオブリビオンの数は多い。
 これだけ殲滅しても尚、ありあまる物量。この地にクレリックである『ライヴズ』を捨てた『眠りの森の魔女ターリア』の戦略は確かだったと言わざるを得ない。
 ついでにサージェの天敵、スライム的な敵がいることも計算づくだったのだろう。いや、そんな事実はないけど、それでもサージェは歯噛みするように、けれどそれでも諦めること無く戦い続ける。

 後に彼女はこう語っただろう。
「もうスライムはこりごりですよー!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

星野・祐一
強制的に殴り合いを強いてくるのは厄介だなぁ
…ま、頑張ってみますかね!

[SPD]
あんたがライヴズさんかい?とんだ災難に遭っちまったな
とにかく直ぐに【かばい】に行ける様に一緒に居てくれ
保険として盾状態のピアース持たせたEsを護衛に付けとくぜ(遊撃、コミュ力

宇宙服とFZの二重の障壁で防御を固めたら(オーラ防御、念動力
雷鳴の【貫通攻撃、零距離射撃】で【吹き飛ばし】
【焼却】状態のEKで【串刺し、継続ダメージ】か【衝撃波、なぎ払い】
ライヴズさんの安全を優先しつつ敵の数を減らしていく

相手の攻撃は危ないのだけ【視力で見切り】EKで【受け流す】
敵の処理が追いつかない場合はUCを使って強引にゴリ押すぞ

アドリブ歓迎



『黒龍細胞片』。
 それがこのユーベルコードを阻害する魔力を秘めた砂を持つ『砂地獄砂漠』に潜むオブリビオンの名である。
 この地に残るオブリビオンたちは皆、この砂を操る『アリジゴク』能力を獲得し、猟兵達に近距離での戦闘を強いるのだ。
 それは普段から遠距離での戦法を得意とする猟兵たちにとって、不利な状況での戦いになることは明白であった。
 だが、それだけの理由で戦いに赴かぬ猟兵はいない。

「強制的に殴り合いを強いてくるのは厄介だなぁ……ま、頑張ってみますかね!」
 星野・祐一(シルバーアイズ・f17856)は転移してすぐ、オブリビオンに囲まれ続けている『言葉の神シャルムーン』のクレリックである『ライヴズ』の元へと駆けつけた。
 彼に襲いかかろうとしていた『黒龍細胞片』の姿を視認した瞬間、可変型の装甲を変形させた盾を投げつけ、両者の間に割って入らせたのだ。
 さらにサポートドローンである『Es』が盾を掴んで、『ライヴズ』に手渡す。

「あんたがライヴズさんかい? とんだ災難に遭っちまったな。とにかく直ぐにかばいに行けるように一緒に居てくれ」
 その言葉に盾を手渡された『ライヴズ』は頷く。
 これまで多数の猟兵たちが彼を助けていたことが、段取りを簡略化することに成功していた。
 彼は己の窮地に駆けつけてくれた猟兵たちを疑うことなどなかった。
「ありがたい……しかし、この盾を私に手渡してはあなたの防御が……」
「大丈夫だって、俺にはこれがあるんでね」
 そう言って祐一は己の着込んだ宇宙服とフィールドジッパーの装置が取り付けられた腕を叩く。

 空間を圧縮する力と念動力、そして手にした熱線銃の放つ弾丸で『黒龍細胞片』を吹き飛ばしていく。
 手にしたエクステンドナイフがエネルギーに振動し、『黒龍細胞片』の能力である分裂、増殖の力を削いでいく。
「Es、ライヴズさんの安全を優先してくれ……俺は、奴等を叩く!」
 祐一は一気に駆け出す。
 周囲には無数の『黒龍細胞片』たちが分裂と増殖を繰り返し、猟兵達の攻撃に寄って減った数を再び取り戻そうとしている。
「まだまだ数がいるようなんだ……! 油断はしないでくれ!」
『ライヴズ』が叫ぶ。
 猟兵たちが多数駆けつけてくれてはいたが、それでも数が尋常ではないのだ。
 ここまで数が増えるというのは、オブリビオンの特性なのであろう。
 一体一体は大したことはなくても、その分裂増殖を繰り返す能力は厄介というほか無い。

 これまで多くを討ち果たしていたが、それでもまだ数が残っていることが、帝竜を打倒してもオブリビオンによる事件が終わらぬことを示していた。
 オブリビオン・フォーミュラ無き後はオブリビオンは発生しない。
 けれど、この『黒龍細胞片』を遺しておけば、いずれ驚異となることは明白であった。
 猟書家の起こした事件がきっかけとは言え、ここでこのオブリビオンを叩くことができることは大きいだろう。
「数が多いが……! ゴリ押す!」
 その瞳がユーベルコードに輝く。
 手にした熱線銃に力が込められていく。数が多いのであれば、一気に薙ぎ払う。
 躱し、いなしているだけでは敵の数は減るどころか増える一方だ。

 だからこそ!
「この一撃雷で終わりにしようぜ…!」
 輝くは、冬雷(トウライ)。
 その雷撃の如き放射される銃弾の放つ衝撃波は、祐一の周囲に集まってきたオブリビオンたちをことごとく霧散させていく。
 それは増殖、分裂を繰り返す暇すら与えず、一撃のもとに消滅させるだけの威力を伴って、オブリビオンたちの細胞の一片まで焼き尽くす威力で持って戦場となった『砂地獄砂漠』を明滅させ、その黒色の細胞片を白く塗りつぶして行くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
ライヴズさんに襲い掛かる細胞片を
石から創った使い魔で石化させて
安全を確保しよう

細かい説明は後にするけど味方だよ
ちょっと気配が怪しいのは気にしないで

使い魔にライヴズさんを守らせて
僕は周りのを倒していこう

あれにガトリングガン効くのかなぁ
というか化繊はあれに触れて大丈夫なのかな
宵闇の衣を使うしかないか…

分霊の手助けは期待できないし…
見るからに美しくないからね

邪神の繰り糸で自分を陶器の球体関節人形に変えて接近
纏わりつかれても有機物でなければ吸収できないだろうしね
神気で石に変えて砕いてしまおう

自分から可愛い服着た人形になるとか
邪神はほくそ笑んでるだろうなぁ
と硬くなった体についた石片を払い落としつつ思うよ



 増殖、分裂を繰り返すオブリビオン『黒龍細胞片』。
 その一体一体の力はオブリビオンとしては弱々しいものであった。猟兵と比べても、いわば弱いと断定できる程度の力しか持っていなかったが、それでも黒色の波のように押し寄せる姿は圧倒的であった。
 一体でも残せば、増殖と分裂を繰り返す。
 それだけで元の木阿弥になってしまうのだ。
 しかも、遠距離でのユーベルコードは、この土地、『砂地獄砂漠』の砂に含まれる魔力に寄って効果を減退させられてしまうのだ。

 それ故に猟兵達は近距離での戦闘を余儀なくされ、同時にその分裂と増殖の力を以下にして封じるかが、今回の戦いにおける焦点となっていた。
 ある者は炎で焼き切る。
 そして、ある者が見出したのは――。

「さあ、使い魔たちよ。あいつらを石化させて砕いてしまおう」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)の見出したのは、使い魔によってゲル状の『黒龍細胞片』を石化させ、分裂も増殖も許さぬというやり方であった。
 それは身のうちに宿した邪神の権能があればこそであり、『言葉の神シャルムーン』のクレリックである『ライヴズ』にとっては、好ましい雰囲気ではなかったかもしれない。

 彼の前の前に降り立った晶は、それを感じ取っていた。
「細かい説明は後にするけど味方だよ。ちょっと気配が怪しいのは気にしないで」
 猟兵とは様々な存在が混在しているものである。
 それ故に、『ライヴズ』はこれまで自分を助けてくれた猟兵と晶がなんら変わらぬ存在であることを認識していた。
「いや、助けて頂いている以上、詮索はしない。それでも、助力を願いたい」
 使い魔たちが『ライヴズ』を守るように展開し、晶は彼女たちに任せて頷き、戦場へと駆け込んでいく。

 説明の手間が省けたこともあるが、『ライヴズ』の信頼を背中に追って戦うのは、悪くない気分だった。
「しかし、分霊の手助けは期待できないな……見るからに美しくないからね」
 少しだけ邪神の分霊の手助けを期待した晶であったのだが、それはゲル状の『黒龍細胞片』のうごめく姿を見て、ないと判断できるものであった。
「しかたない……接近戦は苦手なんだよ……だから」
 邪神の繰り糸(オーダード・マリオネット)が晶の身体を人形化させる。

 それは呪い後からであり、人形操りの魔法である。
 身を宵闇の衣で包み、魔法に寄る先行入力によって己の身体を接近戦に特化させた状態へと変えるユーベルコード。
 しかし、晶の顔は渋いものであった。
 オブリビオンとの戦いで仕方のないことであるのは理解しているのだが、自分から可愛い服着た人形になるというのは、邪神にとっては好都合なことであり、彼女の好みそのものであったからでる。

 普段はあれこれ弄して、自分を着飾らせようとするだけに、今の邪神は何をせずとも棚からぼたもちでほくそ笑んでいるのに違いない。
「けど、そんなこと言ってる状況じゃないか」
 晶は嘆息しながら、邪神の権能を使い、己を捕食せんと迫る『黒龍細胞片』を神気いによって石化させ、砕いていく。

 どれだけ増殖、分裂の力を持っていようとも、石化して砕いてしまえば、その特性も意味をなさない。
 そしてユーベルコードを阻害する魔力宿りし砂も関係がない。
 ただし、先行入力型のユーベルコード故に、一端発動してしまえば、中止でいない。
 次々と『黒龍細胞片』の群れを石化させ、砕いていく。
 こんなにも労力を要するなんて、と人形化し、固くなった体についた石片を払い除けながら、邪神のとびっきりの笑顔が脳裏に浮かび、げんなりした顔に成りつつ、晶は、己の役目を果たすために、邪神の掌で踊り続けるように戦うのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…ふむ、遠距離からの攻撃は効果が薄い…ね…
その上でライヴズを守らないとならない、となれば苦労しそうだ…相手が黒龍の細胞じゃなかったら、だけど…
…【竜屠る英雄の詩】を発動…装備品に竜殺しを付与…
…黎明剣【アウローラ】で適当に切り伏せながらライヴズに接近…
…一層にするから…ちょっと近くに居てと声を掛けて…
…術式組紐【アリアドネ】を自分たちを中心に網状に張り巡らせよう…
…近距離、と言うのがどの程度までかは判らないけど…これならユーベルコードが効果を発揮する距離までに細胞が接近すれば自動的に殺すことが出来る…
…あとはライヴズにも竜殺しの概念を付与して網の目の隙間を抜けてくる細胞を倒していこう…



 その大陸一つに様々な特色を宿す土地、それが『群竜大陸』である。
 様々な世界を見てきた猟兵たちでさえも圧倒される程の多様性をもつ大陸、その一角にある『砂地獄砂漠』。
 そこはまさに猟兵たちにとって不利なる戦場であった。
 広がる砂漠地帯。
 その砂には魔力がやどり、その魔力故にユーベルコードの効果を阻害するのだ。

「……ふむ、遠距離からの攻撃は効果が薄い……ね……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は電子解析型眼鏡『アルゴスの眼』から送られてくる情報を一通り精査してため息をつく。
 さらに今回は、『言葉の神シャルムーン』のクレリックである『ライヴズ』を護りながら戦わなければならないのだ。
 対するオブリビオンは『アリジゴク』能力によって、砂を自在に操る『黒竜細胞片』。
 その分裂と増殖の能力は多くの猟兵たちをしても、未だ滅ぼしきれていない。
 一片でも遺しておけば、そこから再び増殖していくのだ。

 かつてありし『黒龍』の執念とでも言えばいいのだろうか。
 メンカルが嘆息するのも無理なからなぬことであったが……メンカルには在る種に対して特化したユーベルコードがある。
 それ故に彼女の瞳は絶望にも諦観にも染まることはなかった。
「苦労しそうだけれど……相手が『黒龍』の細胞じゃなかったのなら、の話……」

 そう、彼女は猟兵にして叡智司る研究者。
「厄討つ譚歌よ、応じよ、宿れ。汝は鏖殺、汝は屠龍。魔女が望むは災厄断ち切る英傑の業」
 そして謳うは竜屠る英雄の詩(ドラゴンスレイヤーズ・バラッド)。
 彼女の手にした黎明剣『アウローラ』に竜にまつわるものを殺す竜殺しの概念術式が搭載される。
 それは即ち、彼女の持つ者が全て『竜殺し』足り得る力を持つということである。
 
 対するオブリビオンは細胞片であったとしてもかつて竜でありしものである。
 ならば、メンカルの前には滅びるのが必定である。
「……一掃にするから……ちょっと近くに居て」
 メンカルは振るう竜殺しの概念の付与された剣と共に『ライヴズ』へと駆け寄る。
 すでに彼女が屠りさった『細胞片』は凄まじい数に登っているが、それでも敵を一掃するには手間であった。

「あなたは……えっ、何を……?」
『ライヴズ』が驚くのも無理なからなぬことであった。
 メンカルが彼の襟首を捕まえて、張り巡らせたのは術式組紐『アリアドネ』である。
 彼女の展開した組紐の術式は、それだけで網目状覆い、迫る『黒龍細胞片』から二人を守る防壁となる。
 しかし、それだけでは『黒龍細胞片』の黒色の波のような侵攻を抑えられないはずだ。
 メンカルと『ライヴズ』の生命力につられて、『黒龍細胞片』たちが周囲から集まってきている。

 これまで猟兵たちに尽く滅ぼされてきた細胞片だけでは、本来の目的である『黒龍』復活は為し得ない。
 それに数を減らしたからこそ、彼らは飢餓状態になっているのだ。
 そこに餌となる生命力が在るというのならば、自ずと集まってくるのである。
「接近戦、というのがどの程度までかはわからないけど……これならユーベルコードが効果を発揮する距離までに細胞が接近すれば……」

 そう、今の彼女の持つ品物全てに『竜殺し』の概念が付与されている。
 メンカル達は座して待てばいいのだ。
 広げ、展開された『アリアドネ』こそが盾であり矛であるのだ。
 天網恢恢疎にして漏らさず。
 網目は確かに荒く、その隙間からメンカルたちを捕食しようと迫るだろう。
「……でも、イージーだよね。こういうのはさ」
 後は、それらを狙う討てばいい。
 メンカルは術式装填銃『アヌエヌエ』の銃口を向け、組み込まれた術式のままに『黒龍細胞片』を滅ぼし続ける。

 竜屠る英雄の詩が響く限り、竜は彼女を殺すことなど、敵わないのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィア・シュヴァルツ
「ほほう。ここがかの帝竜戦役の舞台となったという群龍大陸か。
ここは一つ、観光するのも悪くな……
ぬわあああっ!?」

転移後、観光……もとい、クレリックを探すためにウィザードブルームで飛んでいたら、砂嵐に巻き込まれて墜落。

「これは、砂が我の魔力を阻害しているのか?」(グリモア猟兵の言葉をちゃんと聞いてなかった

さらに、なにやら魔物まで出てきおったか。
まずいな。砂嵐で魔法が使えんと、我、何もできん。

「というわけで、眷属たちよ、戦いは任せた!」

天才死霊魔術士でもある我。
【リザレクト・オブリビオン】で死霊騎士と死霊蛇竜を呼び出して戦わせるとしよう。

……まあ我と同程度の戦闘能力なので、接近戦は弱々なのだが!



 フィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)は、わりとごきげんであった。
 意志持つ箒、ウィザードブルームにまたがり、空を飛びながらアックス&ウィザーズ世界の『群竜大陸』を見下ろしていた。
 はっきり言って、観光気分であった。
「ほほう。ここがかの帝竜戦役の舞台となったという『群竜大陸』か」
 大陸一つであるというのに、この大地には様々な生態系や、特色が溢れている。一角といして似た土地はなく、そのそれぞれを猟兵が『群竜大陸の領主』、即ち『ドラゴン・ロード』として治めて居るというのだから、驚きである。

 フィアは転移した後も、ウィザードブルームにまたがったまま空の旅を楽しんでいた。
 色々と見て回ったのだが、これはいよいよ持って観光する他あるまいと悪魔特有の悪いことがカッコイイという理念の元行動しようとしていた瞬間であった。
「ここは一つ、観光するのも悪くな……ぬわあああっ!?」
 いや、本当にクレリックをさがすために空を飛んでいただけなんです、と後から言い訳されても、観光って言葉が聞こえたしなぁっていう気持ちもないわけではないのだが、フィアはユーベルコードを阻害する砂嵐に巻き込まれ、あえなく『砂地獄砂漠』へと墜落してしまった。

 げほごほと口の中に入った砂を吐き出しながら、フィアは頭を振る。
「これは、砂が我の魔力を阻害しているのか?」
 転移前にグリモア猟兵がちゃんと説明していたはずなのだが、群竜大陸という大地に対する興味のほうが先行しており、あまりちゃんと聞いては居なかったのだろう。
 ぺっぺと魔力籠もった砂を吐き出しながら、顔を上げたフィアの前には黒色の波とも言うべきオブリビオン、『黒龍細胞片』がうごめく姿。
 そのどこに口が在るのかもわからぬゲル状の体を広げ、捕食しようとフィアに迫るのだ。

「まずいな。この砂嵐で魔法が使えんとは……」
 フィアの見上げるさきに在るのはゲル状の大口。
 あれに飲み込まれてしまえば、如何なフィアと言えど無事ではすまないだろう。
 だが、彼女は少しも怯んでは居なかった。焦ってはいなかった。
 己の最大の武器が封じられている時に冷や汗をかくなど二流がやることである。

 そう、フィアこそは、『漆黒の魔女』!
「我、何もできん……というわけえ、眷属たちよ、戦いは任せた! 鏖殺せよ!」
 リザレクト・オブリビオンによって召喚された死霊騎士と死霊蛇竜が戦場に現れる。
 その姿は確かに人々に恐怖をもたらすには十分であったが、『黒龍細胞片』にとっては捕食対象が増えただけに過ぎない。
「天才死霊魔術士でもある我。このような自体にも華麗に対処するのだ……まあ我と同程度の戦闘能力なので、接近戦は弱々なのだが!」
 それでも十分である。
 死霊騎士の剣がゲル状の体を切り裂き蛇竜が丸呑みにしていく。

 例え、ここで全ての『細胞片』を排除できなかったとしても、他にも猟兵達はいる。
 彼らと連携すれば、この『砂地獄砂漠』における『黒龍細胞片』はひとかけらも残すこと無く骸の海へと帰されることだろう。
 体に張り付いた砂嵐の砂を払いながら、フィアは呼び出した死霊騎士と死霊蛇竜が『黒龍細胞片』の最後の一片まで飲み込み、排除するまで、これからのことを考えていた。

「ふむ……しかして、これだけ豊かな土地であれば、どんな場所があるか調べるだけでも楽しかろうなぁ……」
 と、思いを巡らせていいたが、彼女の目的はあくまで『言葉の神シャルムーン』のクレリックである『ライヴズ』の保護である。
 彼が死してしまえば、『破邪の言葉』は解き放たれ、この大地の何処かにある天上界へ至る封印がほどかれてしまう。

 そうなってしまえば、これまでの奮闘は無意味になってしまう。
 猟書家『眠りの森の魔女ターリア』を打倒してからでも観光はできるだろう。むしろ、そうしていただきたい、切に!
「まあ、よかろう。さて、そろそろ終いだ」
 指を鳴らし、ユーベルコードの輝きが失せた時、『砂地獄砂漠』を取り巻く砂嵐は消え失せる。
 それはこの大地に巣食うオブリビオンたちの全てが打倒された証であり、同時に猟書家『眠りの森の魔女ターリア』の到来を告げるものであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『眠りの森の魔女ターリア』

POW   :    ようこそ眠りの森へ
戦場全体に、【「眠りの森」 】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
SPD   :    醒めざる夢の茨
【棺の中から伸びる「眠りの茨」 】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    忘却の眠り
【記憶を一時的に奪う呪詛 】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【過去の記憶】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠リミティア・スカイクラッドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 全てのオブリビオンが打倒された『砂地獄砂漠』。
 すでに魔力宿る砂を自在に操る能力を持った『黒龍細胞片』は、猟兵達の並々ならぬ力を尽くした攻勢の前に全てが排除されていた。
 もはや細胞の一欠片とて残っては居ない。
 言葉の神『シャルムーン』のクレリックである『ライヴズ』は守られながら、しかし戦い続け消耗も激しいようであった。
 荒い息を吐き出す彼は、猟兵たちの力がなければ護り切ることなどできはしなかったであろう。

「……これは以外な。一向に『破邪の言葉』が発せられた気配がないと思っていれば……なるほど」
 その声は頭上から響いた。
 空に浮かぶ棺。
 その中に在るのは一人の少女。目元を覆った黒い布。そして、棺に納められた夥し数の薔薇の棘と花弁。
 いかなる原理か、彼女は空にかびながら、抱えた蔵書を開いた。

「猟兵でしたか。ですが、私の力からは誰も逃れることはできません。猟兵が何故猟兵足り得るのか。その力の源、記憶を奪って差し上げましょう。そして、眠りを与えましょう。目覚めることのない眠り……」
 猟書家『眠りの森の魔女ターリア』が小さくつぶやく。
 ただ、それだけであるというのに猟兵達は凄まじい重圧を感じたことだろう。

 これが猟書家。
 強大なるオブリビオンであり、世界を侵略しようとする者たち。
 その力は過去のものであったのだとしても、猟兵としての個が敵うこと能わず。されど、ここで猟兵たちが退くことはない。
 退いてしまえば、ここでクレリックである『ライヴズ』の生命は断たれ、猟書家の目的である『天上界』への封印が解かれてしまう。

「はい、とても私達は困っているのです。だから、どうか邪魔をしないでいただけますか? どれだけのクレリックの生命が必要なのかはわかりませんが、どうせそこまで時間はかからないはずです」
 ね? と微笑む気配すら遭ったが、其処にあったのは底抜けの悪意と邪悪であった。
 猟兵たちは覚悟を決めなければならない。

 今相対するのは『眠りの森の魔女』。
 その絶大なる眠りの力と、記憶を奪う呪詛を持って猟兵たちを鏖殺せんとする邪悪の権化である――。
禊義・秋陰斎
今までよりも更に大きな悪意の気配を感じるな…戦いに誘われたか
さて、側を離れるなよ…間違えて斬ってしまうからな

護衛対象を常に近くに置きながら、慎重さ重視で立ち回ろう。
なるべく接近戦で戦えるように攻撃を【見切り】ながら近づいて斬り伏せる…
行動の全てはただ剣士として刷り込まれた【第六感】だけで動いておる



 猟書家『眠りの森の魔女ターリア』。
 その存在感は瞳を閉じ、その視覚情報の一切を断つ猟兵、禊義・秋陰斎(辻斬り侍・f00427)にとっても凄まじい存在感を放つ物であった。
 聞こえる声色は穏やかなものであり、言葉の使い方も柔らかであった。
 それが生来から身につけたであろう所作であることは言うまでもない。
 嫋やかな為る存在。
 されど、その見に秘めている邪悪さは言うまでもない。

 どこまでも己の目的のために合理を突き詰めたような存在。
 それは悪意と呼ぶに相応しいものであり、秋陰斎の極限まで高めた感覚が、それを教える。
 対峙するオブリビオン『眠りの森の魔女ターリア』はこれまで出逢ったオブリビオンのどれよりも強大な存在だと。
「今までよりも更に大きな悪意の気配を感じるな……戦いに誘われたか」
 彼女にとって、戦いは戦いを呼ぶものである。
 大きな戦いであればあるほどに呼び水となって戦いの気配が訪れる。

 それはこれまで何度も経験したことであり、彼女の研ぎ澄まされた感覚が教えている。
「さて、傍を離れるなよ……間違えて斬ってしまうからな」
 彼女の背後には『言葉の神シャルムーン』のクレリックである『ライヴズ』の気配がある。
 これまで長く続いた戦いで消耗していることが息遣い一つからでもわかる。
 簡単にすぐには動けないだろう。
 ならば、己のやることは一つしかない。

「――冗談だ。聞き流されよ」
 秋陰斎は周囲に展開された『眠りの森』の迷路から放たれるバラの蔦を一刀の元に斬り捨てる。
 間違えるはずがない。
 これだけの悪意の気配を放つものを極限まで高めた己の感覚が間違えるはずなどないのだ。
 剣閃の冴え渡ること。
 これは強敵に相まみえれば見えるほどに鋭くなっていく。

 勝負勘とも言うべき彼女の感覚は視覚を封じていても、それでも遺憾なく発揮される。
「見えていないはずですが、それでも凌ぎますか……貴方にはそこで立ち止まっていてもらいましょう。他にも猟兵はいるようですしね」
『眠りの森の魔女ターリア』の声が聞こえる。
 彼女にとって、もっとも面倒な展開は『ライヴズ』を連れて遠く逃げられてしまうことだ。
 ここで一人の猟兵を迷宮にて足止めできることは行幸であった。

 だが、それでもすり潰す事のできる算段はあったのだ。
「――それはその通りだな。だが、私を甘く見積もったものだ」
 秋陰斎は手にした刀を振るう。
 どれだけ彼女を追い詰める蔦が伸びてこようとも、その尽くを視覚以外の感覚で読み取り、躱し、斬撃でもって斬り捨てるのだ。

 それは剣舞。
 花びらが散るように捉えることなどできようはずもない。
 彼女の剣士として刷り込まれた第六感とも言うべき感覚が全てを凌駕する。
 四方から襲う蔦による攻撃も、何もかもが彼女の見えぬ瞳、心眼とでも言うべき超絶為る剣技の前には無意味である。

 剣閃がひらめき、迷宮から忍び寄る罠の全てを斬り捨て、秋陰斎は『ライヴズ』と共に迷宮を踏破するのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
引き続き『侵す者』
武器持ち替え:四天霊障

はてさて、勝手なことを。
ライヴズ殿に、結界術を張り直して。ちとこのあと、驚かせるかもしれん。

悪霊たるわしが、潔く退くと思うか?答えは否よ。
忘却の眠りな、それは呪詛耐性である程度抵抗しつつ
(めちゃくちゃ豪快な記憶だったりする)


人格交代
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん

私たちは、複数からなる悪霊である。
一人が一時的に動けなくなっても、他の三人が補助をしますからねー。
ダッシュで近づき、四天霊障による早業での【連鎖する呪い】ですねー。呪われなさいなー。
ほんと、今の方が動きやすいなんてねー。



『眠りの森』と呼ばれる迷宮から猟兵とともに飛び出してきた『言葉の神シャルムーン』のクレリックである『ライヴズ』は未だ消耗から回復しきれていなかった。
 猟兵とともに驚異的な迷宮から脱出できたことは幸運であった。
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は即座に彼に駆け寄り、結界術を張り直して、彼の消耗を回復しようとした。
 しかし、それだけでは足りない。
 対するは猟書家『眠りの森の魔女ターリア』である。

 彼女の重圧は、その柔和な姿形からは想像を絶するものである。
 並の人間であれば、彼女と相対したいだけで死を連想するだろう。それだけの強者であり、その能力の尽くが猟兵たちにとって驚異的なものであることはいうまでもない。
「あら、何故迷宮から出るのです? 朽ち果てておけばいいものを。貴方の死は絶対。覆せる運命ではないというのに」
『眠りの森の魔女ターリア』の声が響く。
 それは、その言葉一つ一つが呪詛であることを『侵す者』は気づいていた。
「はてさて、勝手なことを。ライヴズ殿、ちとこのあと、驚かせるかもしれんが、あしからず」
『侵す者』はわかっていた。
 この言葉一つだけで呪詛である。
 他者の記憶を奪い、一時的ではあるが空白の時間を作る。

 己が何を為さねばならぬかを忘れた者は、どうしたって反応が遅れる。
 それが戦場であれば致命的な隙となるだろう。
 武の天才と呼ばれた者であるからこそ、理解できるものである。
 目の前には『眠りの森の魔女ターリア』の顔があった。いつの間に、と想うまもなく手にした黒色の槍を振るう。
「――……退いてはくださいませんか? 時間をかけるつもりはないのです。大勢の生命を奪おうというわけではないのです。今はたった一人だけ。もしかしたのならば、もう少し喪われる生命が増えるかも知れませんが、それでも全体で見れば少ない犠牲です。どうか退いてはくださいませんか?」

 その言葉は甘やか為るものであった。
 一つを犠牲にして多数を助ける。そんな犠牲を肯定する言葉であった。犠牲はつきものだ。喪われてしまうものは当たり前である。
「悪霊たるわしが、潔く退くと想うか? 答えは否よ。忘却の眠り……あゝ、確かに甘美だろうよ。だがな!」
 それを是とはしない。
 肯定はしない。
 喪われる生命が在ることを許容しない。
 なぜなら、この身はすでに己一人のものではない。

「私達は複数から為る悪霊である。一人が動けなくなっても、他の産院が補助をしますからねー」
 意趣返しのように『眠りの森の魔女ターリア』へと間合いを詰めるは『疾き者』。
 彼の手にした棒手裏剣が躱そうとした『眠りの森の魔女ターリア』の肩に突き立てられる。
 一瞬の早業。
 呪詛の力を発動される前に、先手を打つのだ。

「くっ……悪霊……ああ、そうですか。なるほど。その器に4つの魂。私達オブリビオン憎しで結合した存在……ああ、哀れです。その在り方、有り様、あまりにも執着が過ぎる。その魂に安らかなる眠りを……――!?」
 放つ呪詛。
 だが、そこへ降りかかるは、連鎖する呪い。
 今まで展開していた茨の迷宮の蔦が何故か、彼女の棺に絡みつく。それは完全に不幸なる事故であったし、不慮の事故でもあった。
 何故そうなったのかはわからない。

 いや、違う。
 これは呪いである。悪霊たる4つの魂が織りなしたユーベルコード。
『疾き者』は笑った。
 自分達の在り方を醜悪だと笑うオブリビオンがいる。けれど、それでいい。どうあっても己達は滅ぼし合う存在である。
 なればこそ、互いの姿が醜く思えてしまうのは致し方ないこと。
「ほんと、今のほうが動きやすいなんてねー」
 皮肉なことである。
 あの出来事がなければ、争いがなければ、何事もなければ。
 オブリビオンなんてものと関わらなければ。

 穏やかなる日々が続いたかも知れない。
 けれど、それは奪われたのだ。ならば、己達はもはや奪わさせない。たった一つの生命と軽んじたものでさえ、己たちは何一つ喪わせわしないと誓ったのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…まさにお前達を困らせるのが目的だから退くわけには行かないね…
さて、記憶を奪う呪詛とは厄介だけど…対抗策はある…
…【神話終わる幕引きの舞台】を発動…呪詛を減衰…
…術式組紐【アリアドネ】でライヴズを守りつつ…術式装填銃【アヌエヌエ】で焼却術式の込められた銃弾を撃って眠りの茨を焼き払うよ…
…減衰してもなお記憶を奪われたときのために…アルゴスの片隅に「近くに居る神官を守れ」「茨を出して来る魔女を倒せ」「銃弾の場所と弾の込め方」「魔女の能力」を常に表示…
…さらに【アヌエヌエ】の自動照準機能を起動して射撃技術を補うよ…
…記憶を奪えても記録は奪えないならこう言う手を使える…ターリアへと銃弾を撃ち込もう…



「ああ、困りました……こんなにも激しく抵抗されるとは思ってもいませんでしたから」
 猟書家『眠りの森の魔女ターリア』は困ったようにほほえみながら、棺に収まったまま猟兵たちを見下ろす。
 周囲には迷宮とかした薔薇の蔦で形成された迷宮。
 すでに踏破されてしまっているが、それでも蔦は『言葉の神シャルムーン』のクレリックを抹殺しようと付け狙ってる。
 彼女たち猟書家がアックス&ウィザーズにて探している『天上界』。
 それは本来であれば『帝竜ヴァルギリオス』が施した封印が標となるのであるが、その封印をほどかれることなく猟兵に滅ぼされてしまったがゆえに、遠回りをすることになってしまったのだ。

「……まさにお前達を困らせるのが目的だから退くわけにはいかないね……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は対峙する猟書家の圧力、そして、その能力を警戒していた。
 記憶を一時的とは言え奪う呪詛。
 それはあまりにも強力なものであった。己が一瞬前に何をしようとしていたのかさえ忘却させられてしまう。
 永続的ではないにせよ、その力によって猟兵達は己が何をしようとしていたのか、それを忘れてしまえば、猟書家の目的を阻むことはできなくなってしまう。

 重要なのは、『ライヴズ』を護り通すこと。
 彼を殺されてしまえば、『眠りの森の魔女ターリア』の最大の目的は果たされてしまう。
 そう、彼女の目的は猟兵を殲滅することではない。
 あくまで『破邪の言葉』を死せる『ライヴズ』から発生させることなのだ。
 故に、メンカルは対抗策を瞬時に思考にて練り上げる。
「奪いましょう。貴方が何を為さねばならないのか、何故貴方が猟兵であるのか。私と貴方が敵であるという記憶すらも――」
 その言葉は一つ一つが呪詛であった。

 聞いてしまえば、それだけ己の中の記憶が奪われてしまう。
 故にメンカルは紡いだ。
「人知及ばぬ演目よ、締まれ、閉じよ。汝は静謐、汝は静寂。魔女が望むは神魔の去りし只人の地」
 メンカルが立つは、神話終わる幕引きの舞台(ゼロ・キャスト)。
 世界法則を改変する数多の鍵剣が戦場に降り注ぐ。
 あらゆる加護と呪詛を極限まで減衰させる結界を展開する。周囲に在った迷宮の森が消え失せていく。

 紡がれる呪詛をも減衰させるが、それでもメンカルの記憶を奪うのは猟書家の強大なる力があればこそであろう。
「メンカル殿――!」
 術式組紐『アリアドネ』の結界に守られた『ライヴズ』が叫ぶ。
 眠りの茨を打ち払っていた術式装填銃『アヌエヌエ』を取り落とすメンカル。ユーベルコードの輝き失せていく。

 あれだけ極度に減衰させたというのに、それでもメンカルの記憶が奪われてしまう。
 己が何を為していたのか。
 何を為さねばならないのか。
 どうしてこんなことをしているのか。
 全てがわからない。思い出せない。何故、自分は此処に居る――?

「悲しいことですね。どれだけ力を持っていても、記憶なくば何も為せない。猟兵とは即ち可能性。可能性が閉じた過去の化身と相対する者。互いに滅ぼし合う関係に在りながらも、その記憶さえなければ、私達を敵と認識することもできませんよね?」
『眠りの森の魔女ターリア』の微笑む気配があった。
 彼女は満足していたようだった。
 彼女の最大の目的である『ライヴズ』。その生命を守る盾となっていた猟兵の一人を無力化したのだから。

 故に、彼女はもう術式に守られた『ライヴズ』に警戒無く攻撃を加えようとして、それが浅はかであることに気付かされる。
 その瞳、その目が何を見ていたのか。
 メンカル・プルモーサという猟兵の記憶、その何を知ったのか。
 奪った記憶の中にある、彼女の取った対抗策。
 その意味するところを知って、『眠りの森の魔女ターリア』は己の失策を知る。

「『近くにいる神官を護れ』『茨を出して来る魔女を倒せ』『銃弾の場所と弾の込め方』『魔女の能力』……なるほどね」
 メンカルの瞳にユーベルコードが輝く。
 その瞳は何もかも忘れてしまったのかも知れない。けれど、もう一つの『眼』がある。
 それは彼女のかけた電子解析型眼鏡『アルゴスの眼』。その片隅に常に表示されるは、今の現状と為さねばならぬこと。
 聡い彼女ならば即座に理解しただろう。

 己が何者であり、何を為さねばならぬのかを。
「……記憶を奪えても記録は奪えない。私を見誤ったようだね、魔女殿?」
 メンカルの冷やかな瞳が『眠りの森の魔女』を捕らえる。
 手にした術式装填銃『アヌエヌエ』の銃口が無防備に迫った『眠りの森の魔女ターリア』を狙う。
 自動照準機能が起動された『アヌエヌエ』が狙いを違うことはない。

 放たれた弾丸は狙い過たず、『眠りの森の魔女ターリア』の体を貫き、奪われた記憶をメンカルへと手放すしかなかった。
「絶対はない。けれど、それに近づけることはできる。お前達オブリビオンは……いつだって、己の個ばかりに執着する。そこが私達との決定的な差」
 打ち込まれた術式の装填された弾丸が弾け、『眠りの森の魔女ターリア』の絶叫が響き渡るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント
◆SPD
常にライヴズと敵の間に割り込んで行動、茨は彼に向かうものから処理し、自らを盾にしてでも被害を防ぎたい
どれだけの命が必要かなど考えるだけ無駄だ
誰一人として犠牲にさせるつもりは無いからな

アタッチメントの効果を利用した炎の『属性攻撃』弾を撃ち出し、伸びてくる茨を焼き払う
…効果あっても一本ずつではきりがないか
邪魔な茨を焼って射線を確保し、茨の根元、棺の中へ属性攻撃弾を撃ち込む(『スナイパー』)
猟書家相手では少し動きを止める程度だろうが十分だ

その隙にユーベルコードを発動、狼の姿へ変身し敵に向かって走る
高く跳んで頭上から爪の一撃を叩き込み、体勢を立て直す前に人の姿に戻って零距離射撃での追撃を試みる



 穿たれた銃弾の痕がじくじくと痛むのを『眠りの森の魔女ターリア』は感じた。
 絶叫など、己が己として、オブリビオンとして染み出してから初めてのことであった。
 それは己の身体が、肉体が傷つけられたという事実にほかならず。
 棺の中に納められた彼女の背後から茨が蠢き始める。
 それは醒めざる眠りの茨。
 彼女のユーベルコードであり、彼女の名の由来である。
「どこまでも邪魔をするというのですね、猟兵。書架の王が託した願い、天上界へと私達が至ろうとする道を塞ぐと」
 ならばこそ、やはり猟兵とオブリビオンは滅ぼし合う関係にほかならない。

 蠢いていた茨が凄まじい速度で放たれる。
 狙いは『言葉の神シャルムーン』のクレリック『ライヴズ』だけだ。
 彼を殺してしまえば、猟兵は後回しでいい。一つでも『破邪の言葉』によって『帝竜ヴァルギリオス』が施した封印を解く。
 それが彼女の勝利条件であった。
 だが、それを阻むように飛び込む影があった。放たれる炎の弾丸が茨を焼き払い、その目論見を貫く。
「どれだけ生命が必要化など考えるだけ無駄だ。誰ひとりとして犠牲にさせるつもりは無いからな」
 シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)が手にしたハンドガンに装着したアタッチメントを撫でる。

 調子は悪くない。
 炎の属性を付与した弾丸は茨を焼き払うのに十分な威力を持っていたが、伸びる茨はシキの想像以上であった。
「いいえ、犠牲にしてみせますとも。私達の目的のために。猟兵、貴方達は、ここで眠っていただきます。どこにでも行けないように」
 眠りの茨に触れてしまえば、それだけユーベルコードが封じられてしまう。
「……効果があっても一本ずつではキリがないか……」
 その瞳が見ていたのは、茨を操る根源、猟書家『眠りの森の魔女ターリア』。
 棺に納められ、無数の茨によって守られた彼女と己をつなぐ射線を見出す事は困難であったし、同時にシキは『ライヴズ』を守らなければならない。

「邪魔だ……」
 炎冠石を加工したアタッチメントが輝き、その炎の属性で持って茨を貫き焼き払う。
 狙うは茨の根本、その棺である。
 だが、その狙いは『眠りの森の魔女ターリア』にとっては予測されたことであった。
 焼き払って、射線を確保した瞬間に其処をカバーするように茨が張り巡らせられるのだ。
 目的は果たせない。

 だが、シキにはそれでよかった。
 射線を通すということは敵である『眠りの森の魔女ターリア』からもこちらの動きが視えるということである。
 ならば、覆い隠すようにした茨の網はシキがこれから何をするのかを見ることはできなかったであろうし、同時にシキの姿を見失うきっかけにしか過ぎなかったのである。

 その瞳が見据えるのは己が滅ぼすべきオブリビオン。
 ならば、その爪が、その足が。
 何を為すべきかをシキは理解していた。
「猟書家相手に手を抜くことなどできない……理由はそれで十分だ」
 イクシードリミット。
 その瞳がユーベルコードに輝く。普段は抑えている人狼の獣性を開放した瞬間であった。
 本来であれば、彼はこの姿を好まない。
 己の姿は凶悪であり、獣そのものである。故に誰かの己の姿を見せることを嫌うのだ。
 だが、今は違う。

 為すべきことを為さなければならない。肉体のリミッターが外され、人狼としての姿が顕になる。
 それは気高さ故に輝くユーベルコード。
 一瞬の出来事であった。強靭なる足が大地を蹴り、瞬時に『眠りの森の魔女ターリア』へと肉薄する。
 その超スピードは言うまでもない。
 高く飛んだ跳躍力は、その鋭く伸びた爪が振り下ろされる。
「その姿は――!」
 驚愕する『眠りの森の魔女ターリア』。
 彼女は見ただろう。その爪が己へと振り下ろされるのを。交錯させ防御の体制を取るように編み上げられた茨すらも、まるで紙切れのように切り裂く爪が己を強かに打ち据える。

「態勢は整えさせぬない……!」
 それは一瞬の輝きであった。
 そのユーベルコードは解除するまで、寿命を削る。だが、距離を詰めることはできた。
 シキはその一瞬を見逃さない。
 ゼロ距離。
 茨の全てを躱し、シキは手にしたハンドガンから炎の属性を込めた弾丸を打ち込み続ける。

 それは猟書家『眠りの森の魔女ターリア』をさらなる消耗へと追い込む人狼の矜持であった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カイ・オー
俺はデータの海から生まれた存在。「記憶」と「記録」が血肉だ。
相性の悪い敵だが、必ず守ると誓った。逃げる訳にはいかないな。

UCで雷の【属性攻撃】。電磁場で敵のUCを封じる。
かわされたらアンチサイの【呪詛耐性】で記憶奪取に耐える。
念の為【早業】で地面に刀で言葉を刻んでおく。耐えきれず記憶を失ったらこれを読め。

『COMMAND:ELECTRO-KINESIS:ENTER』

電子の妖精である俺にとってコマンドワードは絶対だ。意味も効果も分からなくとも詠唱入力(エンター)すれば強制的にUCは発動される。
危険な力だがそんな事は忘れた。【限界突破】した全力の電撃で敵を【焼却】【捕縛】し炎を纏った刀で【切断】。



 猟兵とは生命の埒外にある者である。
 その姿形は千差万別であることは言うまでもない。同時に、その出自、生命の発生に対しても同一のものは存在していない。
 どこまで行っても画一的な存在ではないのだ。
 バーチャルキャラクターとは電子の海にたゆたう概念が情報が集まってできた存在である。
 ならば、その身体、血肉を構成しているのは『記憶』と『記録』である。
 バーチャルキャラクターは、身体の一片までももが情報の集積体。であるのならば、猟書家『眠りの森の魔女ターリア』との相性は最悪であると言えるであろう。
 記憶を奪う呪詛。
 例えそれが一時的なものだとは言え、奪われてしまえば体の一部を切り取られるのと同じである。

「……相性の悪い……だが、必ず守ると誓った。逃げるわけにはいかないな」
 カイ・オー(ハードレッド・f13806)はバーチャルキャラクターである。元はレトロADGのキャラクターであるが、それ故に不利であった。
「記憶の集合体。規格に当てはまらない生命が数多ある中でも、確かに貴方の言う通り私との相性は最悪でしょうね? 今ならば見逃して差し上げますが、どうにもそういうわけにはまいりませんね? 私としましても、面倒事が減るので歓迎なのですが」
 そう言う『眠りの森の魔女ターリア』から紡がれる呪詛は、その言葉通りではなかった。

 言葉の一つ一つが呪詛。
 記憶を奪うユーベルコードである。カイにとって、それはあまりにも相性の悪い攻撃であり、ユーベルコードの輝きと共に放つ雷撃であっても防ぐことはでいない。
 呪詛への耐性がないわけではないのだが、それでも相手は猟書家である。
 対抗しようと思ってできる力ではなかったのかもしれない。
「――ぐっ……! これ、は……!」
 堪えきれない。
 己の手足がもがれているような気配する。
 それほどまでに『眠りの森の魔女ターリア』の持つ記憶奪う呪詛の力は凄まじいのだ。

 手にした刀をやたらめったらに振り回す。
 それは『眠りの森の魔女ターリア』にとって、悪あがきにしかみえなかったことだろう。
「無様ですね、猟兵。貴方が記憶の集合体である以上、私の呪詛に耐えられる道理などないのです。残念でしたね」
 茨が伸びる。
 その切っ先にあるのは、刀を地面につきたて辛うじて立っているだけのうなだれたカイであった。
 記憶を奪われた彼にとって、活力とも言うべきものはもはや絶無。
 刀で身体を支えていたとしても、立っている事自体が奇跡であった。

 けれど、未だ倒れぬ猟兵を前にして『眠りの森の魔女ターリア』は訝しむ。
 何故倒れないのか。
 己の道を塞ぐ猟兵。ならば、貫いて投げ捨てればいいと放った茨の切っ先はしかして、カイに届くことはなかった。
「――何故?」
 猟兵とは生命の埒外に在る者。
 ならば、その瞳宿るのはユーベルコードの輝き。

 うなだれたカイの瞳に映っていたのは、

『COMMAND:ELECTRO-KINESIS――』

 刀で地面を切りつけ刻まれていたその文字。
 それはコマンドワード。電子の妖精であるカイにとって、コマンドワードは絶対である。意味も効果もわからずとも詠唱入力さえ終わってしまえば、この身が例え朽ちてしまっても強制的に効果は発動される。
 周囲に電流が迸る。
 それはユーベルコードが生み出す光。

「強制発動……!? そんなことをすれば、身体が……!」
 だが、そんなことは忘れた。
 奪ったのだ。その危険性を知らせる記憶ごと、『眠りの森の魔女ターリア』が。
 故にカイの瞳に恐れはない。
「――ENTER」
 電流操作能力(エレクトロキネシス)。
 それがカイのユーベルコードの名である。
 その身から迸る電流が己の身体の限界を超えて、走り、『眠りの森の魔女ターリア』の身体を掴み上げる。
 身体が軋む。

 けれど、そんなことにかまっている暇はない。
 何故なら、彼は誓ったのだ。例え記憶を奪われていたとしても、その誓いだけは守る。
 そう決めたのだ。
「生憎と、やると決めたことだけは忘れない質でね」
 炎纏いし刀が振るわれる。
 袈裟懸けに振るわれた斬撃の一撃が『眠りの森の魔女ターリア』へと刻まれ、そして奪われた記憶を取り戻すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サージェ・ライト
邪魔するなと言われたら邪魔しないといけないのがクノイチなのです
というか邪魔とか得意分野ですし
ここは【威風堂々】とクノイチムーブ
『ここを通りたくば私を倒していけ!』ってやつですね!
喋りすぎるとフラグになりそうなので速攻で仕掛けるとしましょう!

漆黒竜ノ牙を全投擲からの、ダッシュ&スライディングで間合いを詰めて
ハリケーンスラッシュカタールで連続(2回)攻撃です!
じゃんじゃん攻撃していきますよラッシュってやつです!

記憶を奪うといわれましても、思い出せないなら奪われた方はわからなくないです?
つまり気にするだけ無駄!
というか白猫又の動きだけは真似しないように!
かわせないから!

※アドリブ連携OK



 炎纏いし斬撃の一撃が猟書家『眠りの森の魔女ターリア』の身体を袈裟懸けに刻む。
 その一撃を持って、奪われた記憶は元ある場所へと戻る。
 しかし、未だ彼女は健在である。
 棺に納められたまま蠢く茨が彼女を護るように交錯していく。
「……記憶奪われても動くとは……猟兵とは、やはり生命の埒外に在る者……! 常識で考えてはならぬ相手……! そんな者が何故私達の邪魔をするのです」
 苛立ちが募っていく。
 どれだけ叩いても湧いて出てくる猟兵。
 己たちが行動を開始すれば、必ずやってくる。世界の悲鳴に応える選ばれた戦士。彼らの存在を疎ましく思う。

 何故、欲望のままに振る舞ってはならないのか。
 世界を壊すほどの欲望こそが世界を推し進めるものではないのか。そのためには『天上界』に至る必要があるというのに。
「邪魔するなと言われたら邪魔しないといけないのがクノイチなのです。というか、邪魔とか得意分野ですし」
 威風堂々(シノベテナイクノイチ)とサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は言い放つ。
 その物言いはどうかと思われたが、彼女のユーベルコードは輝いていた。
 まったく忍べていないが、それこそが彼女のユーベルコードの特性である。忍び、クノイチとして、それはどうなのだろうかという野暮なことは誰も言わない。

 対する猟書家『眠りの森の魔女ターリア』の実力を考えれば、そんな暇もないというのが本当のところであるが。
「私はクノイチ、影より悪を討つ者なり!!『ここを通りたくば私を倒していけ!』ってやつですね!」
 喋りすぎるとフラグになりそうであったのでサージェは速攻に駆ける。
 記憶奪う呪詛は、バーチャルキャラクターという概念の集合体であるサージェにとって相性の悪い相手であったが、関係ない。
 今の彼女はあらゆる攻撃手段を躱す確率がおよそ3倍にまで跳ね上がっているのだ。

 まったく忍べていないというところが若干引っかかるところであるが、それはそれである。
 手にしたカタールを手にサージェは『眠りの森の魔女ターリア』へと迫る。
「デタラメなことばかり! 貴方も記憶の集合体だというのならば――!」
 須らく記憶奪う呪詛が効果的なはずだった。
 だが、『眠りの森の魔女ターリア』は驚愕する。

 どれだけ記憶を奪う呪詛を放ってもサージェの動きは鈍らないのだ。
 いや、どれだけ無数の記憶の集合体であれ、その記憶を奪うということは何かしらの影響があるはずなのだ。
「記憶を奪うと言われましても、思い出せないなら奪われた方はわからなくないです?」
「何を……!?」
「つまり、気にするだけ無駄!」
 そう、サージェは気にしていない。
 いや、奪われた記憶すら、認知していない。彼女には無数の記憶が在る。それこそ彼女の概念を構成するクノイチという存在。
 それは千差万別である。

 思い描く者たちの数だけクノイチという形がある。
 それ一つを奪ったところで、数千、数万という想いの形が崩れることなどないのである。
「まあ、奪ったところで白猫又の動きだけは真似しようがないですよね! それだと私躱せませんけど!」
 そう、奪うだけなのだ。
 奪ったところで、こちらに有効な白猫又の動きなど再現はできないだろう。

 だからこそ、サージェは構わず突撃する。
 走る。走って、走って、茨が彼女を貫かんとしても構わずに走り続ける。今目の前にあるやらねばならぬことを為すために、サージェは両手に構えたカタールを工作させ、その斬撃を『眠りの森の魔女ターリア』へと刻み、例え呪詛であったとしても、己を構成する概念を崩すことが叶わぬことを証明してみせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

星野・祐一
おっとそいつは聞けない相談だぜ
あんた等の邪魔をする為に此処に来たんだ
観念して諦めちまいな

[SPD]
記憶を奪われるのは厄介だな
両手に「ライヴスさんは体を張って【かばえ】」とか
「手に持った銃で【乱れ撃ち】まくれ」とか書いとくか
【オーラ防御、念動力】で防御も固めておこう

Esには引き続きライヴスさんの護衛と【情報収集】を指示して
茨に気を付けながらUC付きの流星の【誘導弾】を浴びせる(マヒ攻撃
記憶を奪われたらEsの【戦闘知識】による指示を頼りに
【第六感、読心術】で茨を反射的に避けられる事を祈ろう(幸運
おっと【体勢を崩し】たな?この如何にも強そうな銃(雷鳴)
に持ち替えてズドンと決めちまおうか

アドリブ歓迎



 猟書家『眠りの森の魔女ターリア』は消耗させられ、追い詰められ始めていた。
 はじめは『言葉の神シャルムーン』のクレリックを殺すだけで良かったのだ。けれど、今はそれさえ叶わない。
 何故なら、クレリックである『ライヴズ』は猟兵達に守られ、その防御は分厚い。
 この囲いを突破するだけでは間に合わないだろう。
 故に『眠りの森の魔女ターリア』は猟兵達の要であるユーベルコードを封じる。
 その蠢く茨は触れてしまえば、ユーベルコードを封じる力を持つ。
「まったく邪魔ばかりをしてくれますね……猟兵!」
 一斉に放たれた茨が猟兵たちを襲う。
 それは圧倒的な物量であり、これまで『砂地獄砂漠』で猟兵たちが相手取っていたオブリビオンをも超える物量であった。

「おっとそいつは聞けない相談だぜ。あんたらの邪魔をするために此処に来たんだ。観念して諦めちまいな」
 星野・祐一(シルバーアイズ・f17856)はユーベルコードを封じる茨の動きを警戒しながら駆ける。
 同時に記憶を奪うという『眠りの森の魔女ターリア』のユーベルコードにもまた警戒を強めていた。
 記憶がなければ、猟兵は己が何をしようとしていたのかも、同時に守らねばならぬ『ライヴズ』の存在すらも忘れてしまう。

 そうなってしまえば、『眠りの森の魔女ターリア』の目的である『破邪の言葉』を達成されてしまうからだ。
「そうはさせねぇ!」
 祐一の手にはそれぞれ『ライヴズさんは体を張ってかばえ」であるとか、『手に持った銃で乱れ打ちまくれ』だとか書き込んでいた。
 記憶を喪った己がこれを見て、きっと同じように行動してくれることを期待してのことだったが、そもそも記憶を奪われないようにすることのほうが肝要であると覚悟を決めて祐一はオーラと念動力の力で防御を固めて茨の追撃を振り払っていく。

「Es! ライヴズさんの護衛と情報収集! 茨の動きに注意してくれ!」
 サポートAIのドローンに命じ、祐一は茨の攻撃を躱していく。
 どこまでも追いかけてくる茨。
 それに対抗するために熱線銃から放つ弾丸で打ち払っていく。
「無駄ですよ……あなたのユーベルコードは封じさせていただきます。どれだけあなたが早く動こうが、私の茨からは逃げられない」
 放つ弾丸。
 けれど、それでも迫る茨は徐々に祐一を追い詰めていく。

 これが猟書家。
 強大なるオブリビオンの力。
 しかし、祐一は両手を握りしめる。やるべきことはやった。己に出来ること。その全てを搾り尽くした。
「俺の限界をお前が決めるんじゃあない!」
 どれだけ記憶を奪われようとも、祐一は銃を手にするだろう。
 何度生まれ変わったとしても、きっと銃を選ぶ。
 手にした銃の名は『雷鳴』。
 その轟く咆哮の如き銃声が響き渡る。

 ユーベルコード、冬雷(トウライ)によって強化された青白い弾丸が茨を突き破って飛ぶ。
 違えぬ目標は『眠りの森の魔女ターリア』。
 棺に納められている茨を繰り出す魔女。その力は確かに絶大なるものであったが、同時にそれは強大過ぎるゆえに祐一にとって狙い易い存在でもあった。

 第六感と人は呼ぶ。 
 五感のすべてを超えた超感覚。その言葉を言い表すには、人の言葉は足りないものであったが、それでも確かにある感覚を頼りに祐一は引き金を引く。
 教わったこと、体得したこと。
 その全てを動員して己の敵を打つ。
 誰かを傷つけたいためじゃない。 
 誰かを助けるために振るう力にこそ、祐一の求めた力が宿るのだと信じている。
「この一撃雷で終わりにしようぜ…!」

 引き金を引く時はためらわず。
 在るのは一意専心。
 極限まで高められたユーベルコードの輝きが青白い弾丸を膨れ上がらせ茨のこと如くを焼き払うように進み、その一撃を『眠りの森の魔女ターリア』へと届かせるのであった――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィア・シュヴァルツ
「ほほう、天上界か。
漆黒の魔女たる我としては、次は天の世界の観光も悪くないな」

ふむふむ、そこのクレリックの命を差し出せば天上界への道が開けるのか。
それは興味深……

「ぬっ、なんだ……!?
唐突に眠気が……」(記憶を奪われました

……あら?
ここはどこかしら?
私は確か、魔術の修行をしてて……
そのあとの記憶が曖昧ですね。(不老不死になる前まで記憶が退行したようだ!

「よくわかりませんが、オブリビオンがクレリックさんを襲っている状況は見過ごすことはできませんね!
私の大魔法を受けてください!」

【極寒地獄】で周囲一帯を凍りつかせれば、魔力阻害の砂も関係ないはずです!

……あ、クレリックさんも巻き込んじゃいましたっ!



 猟兵の抵抗は苛烈を極めていた。
 どこまでも邪魔をしてくる。それは猟兵とオブリビオンである間柄では当然の帰結であった。
 世界を壊す過去の化身。
 その世界の悲鳴に応える猟兵。
 そこにあったのは滅ぼさなければならないという、たった一つの真実だけであった。
「邪魔立てを……!」
 棺に収められ、蠢く茨が猟兵たちをなぎ倒してでも『言葉の神シャルムーン』のクレリックである『ライヴズ』を抹殺せんと迫る。

 だが、それらの尽くが彼を護る猟兵達によって阻まれていた。
「天上界……そこに至らなければ……!」
 それだけが彼女たちアックス&ウィザーズに集った猟書家の目論見であった。
 だからこそ、なんとしても『破邪の言葉』によって帝竜ヴァルギリオスが施した封印をほどかねばならないのだ。

「ほほう、天上界か。漆黒の魔女たる我としては、次は天の世界の観光も悪くないな」
 フィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)は猟兵達の中にあって、一人違った感想を抱いていた。
 悪魔と契約した彼女にとって善悪の価値観は通常の世界の者たちとは異なるものであった。いや、正確には真逆である。
 悪徳こそが美徳。
 なればこそ、彼女は考えるのだ。

 彼女の目下の悩みにして関心事はたった一つである。
「ふむふむ、そこのクレリックの生命を差し出せば天上界への道が開けるのか。それは興味深……」
 だが、そんなことは猟書家『眠りの森の魔女ターリア』にとっては関係のないことである。
 どれだけ善悪の価値基準が正反対であったとしても、猟兵は猟兵である。滅ぼさなければならない存在なのだ。
 記憶奪う呪詛がフィアの体を蝕んでいく。

「ええ、そうです。そのとおりです、猟兵。確かにあなたの言葉は、私達に寄っているのかもしれませんが。それでも猟兵なのです。あなたは。あなたは滅ぼさなければならない」
 その呪詛の言葉は記憶を奪う。
 如何に不死の魔女と言えど、記憶を奪われてしまえば、その力の扱い方すら理解できなくなってしまうだろう。
「ぬっ、なんだ……!? 唐突に眠気が……」
 記憶奪われたフィアにとっては、それは如何なる退行をもたらすものであっただろうか。

「……あら? ここはどこかしら? 私は確か、魔術の修行をしてて……その後の記憶が曖昧ですね」
 長きにわたる魔女としての記憶。
 それは奪われたとしても、今のフィアたらしめる物を奪われただけに過ぎないのだろう。今の彼女は不老不死となる前まで記憶が退行しているのだ。
 それは知識がないというだけの話である。

 その身に宿した魔力は変わらぬ。 
 だが、彼女の記憶はない。なればこそ、その彼女が放つ魔術にしてユーベルコードの威力はフィアが想定していたもの以上になることだろう。
「我が魔力により、この世界に顕現せよ、極寒の地獄よ」
「――!? 記憶を奪ったはずでは……!」
 確かに奪ったが、今のフィアは悪魔と契約する以前の状態である。
 そんな彼女の善悪の価値基準は通常の世界の者たちと同じものであったことだろう。

 元人間の悪魔。
 言葉にすればそれだけであるが、それがどれだけ異常なることであるかを知るには、あまりにも時間が足りなかった。
「よくわかりませんが、オブリビオンがクレリックさんを襲っている状況は見過ごすことはできませんね! 私の大魔法を受けて下さい!」
 放たれるユーベルコードは、極寒地獄(コキュートス)。
 氷壁が次々と『眠りの森の魔女ターリア』を覆い尽くしていく。
 周囲一体を凍りつかせる氷獄の輝きは、棺に収まった『眠りの森の魔女ターリア』の操る茨すらも凍りつかせていく。

 魔力阻害も何も関係ない。
 ただ、凍りつかせ、滅ぼすだけの極限なる魔術。
「……あ、クレリックさんも巻き込んじゃってませんか!?」
 うっかりである。
 だが、フィアの心配を他所に他の猟兵達の駆けた結界や護衛が『ライヴズ』を守ってくれていることを見て、胸をなでおろす。
 いや、なでおろすほどないだろうという、声が脳裏に響いたような気がしたが気の所為だろう。

 一時的とは言え、記憶奪われたフィアは、記憶戻った時、クレリックである『ライヴズ』を巻き込みかけた、目の前の惨状になんという言い訳をしようかと頭を悩ませるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
使い魔にライヴズさんを守らせ
ターリアと戦うよ

茨を避けるのに素早く動けて良いから
邪神の繰り糸を継続しつつ
ガトリングガンで攻撃

何か考えが纏まらない
これが記憶を奪う呪詛か
というか体が動かせない
いや人形だから当たり前なのか

あらあら本当にお人形みたいになってしまいましたの
これはこれで可愛らしいですの
こんなに素直になって
抱き着いて頬擦りしても嫌がりませんの

という訳でこれは私のおもちゃですから頂いていきますの
…ってあら?

分霊をターニアにぶん投げ
その隙に女神降臨を使用
茨を避けたり使い魔に石化させたりしつつ
ガトリングガンで本体を攻撃

なぜ記憶が戻ったか?
一時的な呪詛より
この身に宿る邪神の呪詛の方が強いってとこかな



 氷壁に覆われたユーベルコードから猟書家『眠りの森の魔女ターリア』は茨を膨れ上がらせることに寄って破壊し、棺とともに宙に脱出する。
 あれ程の強度を誇ったユーベルコードの迷宮から脱出する実力は言うまでもない。
 あふれかえる呪詛が、その怒りを、儘ならぬ目論見に対する苛立ちを表しているようであもった。

「なんという失態。一人のクレリックに此処まで時間を掛けてしまうとは……猟兵、私達の邪魔ばかりを……!」
 その強烈なる呪詛は、他者の記憶を奪う。
 圧倒的な力。
 呪詛に対する耐性を持っていたとしても、関係がないとでも言うかのような強烈なる呪詛の前に佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は己の考えがうまくまとまらないことを自覚していた。
「これが記憶を奪う呪詛か。というか、身体が動かせない。いや人形だから当たり前なのか」
 使い魔たちが『ライヴズ』を守ってくれている。
 けれど、茨を躱そうにも素早く動けないのだ。ユーベルコードによる人形化と合わせて宵闇の衣を纏っていても、これだけの呪詛の前には無意味と化す。

 恐るべきは猟書家ということであろう。
 携行型ガトリングガンを討ち放ち、茨を貫いても次から次にあふれかえる茨の数に圧倒されていく。
「記憶なくば、猟兵と言えど、己の意義を見出すことはできないでしょう。人の可能性、人の未来へとつなぐ楔であるあなた方には、記憶こそが可能性」
 故に、記憶が奪われてしまえば、猟兵と言えど恐れるに足らない。
 だからこそ、『眠りの森の魔女ターリア』は猟兵を圧倒してきた。

 だが、これまでもそうであったように猟兵達は様々な対策を持って己の呪詛に対抗してきたのだ。
「あらあら本当にお人形みたいになってしまいましたの。これはこれで可愛らしいですの」
 そんな風に邪神の分霊が晶の身体がから現れて、動きの鈍った晶を撫で回す。
 普段であれば、鬱陶しがられてはねのけられてしまうが、呪詛に寄って記憶を奪われた状態であれば、こんなにも簡単に素直に従うのだと思えばこそ、邪神の分霊はこころに抱く欲望がただ漏れになってしまうのだ。
「こんなに素直になって、抱きついて頬ずりしても嫌がりませんの」

 これはすごいことですの、と邪神の分霊は、あれやこれやと敢行していく。
 邪神の気配に同じものを感じ取ったであろう『眠りの森の魔女ターリア』は呆れを通り越していた。
 好きにすればいい。己は為すべきことを、と思ったはずだ。
「というわけで、これは私のおもちゃですから頂いていきますの……」
 そこまで言葉を紡いだ邪神の分霊の胸ぐらを掴む手があった。
 がっしりと掴んだ手は晶のものであり、その笑顔は凄みがあた。
「……ってあら?」
「いいわけないだろう!」

 そのまま邪神の分霊を『眠りの森の魔女ターリア』へと放り投げ、晶はユーベルコード、女神降臨(ドレスアップ・ガッデス)によって輝きを放つ。
「……何故、記憶が!」
「何も不思議なことじゃないさ!」
 翼を広げ、晶が空に舞う。
 それに追従する茨を躱しながら、ガトリングガンの弾丸をばらまき、尽くを撃ち落としていく。

「一時的な呪詛より、この身に宿る邪神の呪詛の方が強いってことかな」
 それはあまりにも型破りな対抗策であった。
 その身に宿した邪神。
 石化し、人形化させる停滞と固定の権能。その力の前では、確かに記憶を奪う呪詛であったとしても、上書きされてしまうことだろう。
 邪神の分霊が、投げるなんてひどいですのー! と抗議の声を上げているが、晶は無視した。
 こっちが動けないことをいいことに勝手なことばかりを言った罰だと言わんばかりに晶は手にしたガトリングガンの弾丸を撃ち尽くすまで、一切の躊躇いなく茨を打ち払い続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アストラ・テレスコープ
敵の親玉発見!
森の迷路は真面目に攻略しようとしたら時間かかっちゃうよねー
ロケット噴射で森を焼却しながらどんどん進んじゃおう!

迷路を突破して敵に奇襲して、一気に近距離に近づいてユーベルコード発動!
ロケット級の威力で頭突きをお見舞いするよ!!



「敵の親玉発見!」
 アストラ・テレスコープ(夢望む天体望遠鏡・f27241)は、宇宙の藍色を映し出したかのような瞳に猟書家『眠りの森の魔女ターリア』の姿を認めた。
 その姿はすでに満身創痍であった。
 数多の猟兵達によって刻まれた傷跡。
 棺に納められた身体には斬撃の痕が残り、棺自体にも氷結のダメージが残っている。さらには蠢く茨もまた焼き払われ、打ち払われ、あらゆる手段でもって、強大なる力を前に抵抗した痕が残されていた。

「まだ、来ますか、猟兵――!」
 蠢く茨が迷宮を生み出し、アストラを飲み込んでいく。
 時間稼ぎ、とアストラは瞬時に理解した。
 満身創痍である猟書家『眠りの森の魔女ターリア』。彼女にとって今もっとも必要なことは、態勢を整えることである。
 この迷宮で手間取っていては、これまで他の猟兵たちが紡ぎ、つないできた事が水泡へと帰す。
 それだけはさせてはならぬことであった。

「真面目に攻略しようとしたら時間かかっちゃうよねー!」
 なら! とアストラの藍色の瞳がユーベルコードに輝く。
 それは、ロケットブレットハートビート。
 腰に装着したミニロケットが次々と全長1mの大きさに変形し、アストラの知性を代償にして、自身の打ち上げ速度と心肺機能、そして何よりも打たれ強さを強化する。

 そのユーベルコードはいわば、無心になること。
 彼女が今為さねばならぬことのみに、一直線に突っ切っていくためのユーベルコードだ。
「3・2・1……発射!!」
 ロケットスタートも斯くやというほどに猛然とミニロケットであったものたちの噴射口から炎が吹き出し、迷宮を形成している茨の尽くを焼き払っていく。
 どれだけ迷宮と言われようとも、今のアストラにとって目指すべきは『敵の親玉』である『眠りの森の魔女ターリア』だけである。
 故に彼女は止まらない。

 いや、止まれないと言った方が正しいだろう。
 どれだけ茨が痛そうでも、迷宮が複雑怪奇であるろうとも、アストラは止まらない。
 ミニロケットの噴射する勢いに任せて、迷宮の壁という壁をぶち抜いていくのだ。
 それはかなりの強度を持つはずの『眠りの森の魔女ターリア』の迷宮すらも破壊しながら、一直線に進む星の海を征く宇宙船そのもの。
「な――ッ!?」
『眠りの森の魔女ターリア』は見ただろう。
 迷宮に落とし込めた猟兵。
 アストラが迷宮事態を破壊しながら己に迫る姿を、そして、その頭が己へと迫っていることを。

 それを知覚したところでもう遅い。
 次の瞬間にはアストラのロケット級の威力を持つ頭突きが、彼女の額に炸裂する。
 それは正に星が視界に明滅するほどの威力であり、アストラの目的のためならば、一直線に突き進む気質をあらわしていたかのように、盛大なる一撃となって、彼女の目論見を打破する。

「いったーい! けど、これで時間稼ぎはできないよね!」
 みんなが紡いだ時間。
 強大なるオブリビオンにも立ち止まること無く戦い続ける猟兵としての戦いをアストラは見事に成し遂げ、続く猟兵につなぐように『眠りの森の魔女ターリア』を追い詰めるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リミティア・スカイクラッド
※トドメ希望
――あなたがここに来るのを待っていました
災厄追跡者にして群竜大陸の領主として、勿忘草の魔女があなたに終焉をもたらします

ライヴズさんの傍にはフェンリルを護衛につけ
魔女の刻印の「リミッター解除」し、砂獄槍を地面に突き刺す
眠りの森もUCの産物なら砂地獄で「地形破壊」可能なはず
この地とあなたの事はリムが一番「情報収集」していますから

砂の渦で眠りの森を崩しながらターリアに迫り
茨に絡まれても「継戦能力」で耐え、逆に掴んで引き寄せて
その耳元に唇を寄せ、相打ち覚悟の指定UC発動
あなたが求めていた『破邪の言葉』をお聞かせします

――眠れ

戦後は【魔女の火葬】にて骸を弔い
遠い先祖である彼女の安息を祈ります



 頭蓋に響く一撃を受けて、猟書家『眠りの森の魔女ターリア』はうめいた。
 吹き出す血潮は暖かくて、己の血が流れていることを自覚する。
 生み出した迷宮は未だ健在。
 けれど、それでもまだ、己は滅びていない。
 その自覚が在った。
「私は『眠りの森の魔女』……まだ倒れるわけにはいかないのです」
 そう、目的を果たすまで。
『天上界』へ至るための封を解き放つこと。
 己に課せられた使命。そのためならば、己は何度でも蘇る。過去の化身、オブリビオンとして何度だって『言葉の神シャルムーン』のクレリックを殺すだろう。

 例え、それが果の見えぬ追憶が見せる幻影なのだとしても、その身に宿し過去にねじ曲がった欲望故に。
 だが、しかし。
 それでも終わりはやってくる。
 見果てぬ夢がないように。
 終わらぬ夜がないように。
 止まぬ雨がないように。
「――あなたがここに来るのを待っていました」

 終わりを告げる声が響き渡る。
 災厄追跡者『オウガ・チェイサー』にして、群竜大陸の領主『ドラゴン・ロード』。この大地、『砂地獄砂漠』を治める猟兵。
 リミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)の声が響き渡る。
「勿忘草の魔女があなたに終焉をもたらします」
 彼女の傍を炎の体を持つ巨大な魔狼が駆け抜け、クレリックである『ライヴズ』を庇うようにして立つ。
 それは万に一つも彼に類が及ばぬことを示していた。

「ああ、何故でしょう。猟兵であるというのに、知らぬ者であるというのに――」
 懐かしさを覚えてしまうのは。
『眠りの森の魔女ターリア』は小さく呟いた。
 瞳を覆う黒布の先に在る瞳は何を写していただろうか。それを知ることはリミティアにはできぬことであったが、その懐かしさの理由ならば知っている。

 彼女の体に刻まれた魔女の証である刻印が明滅する。
 それは彼女の魔女としての力を封印するリミッターであり、荒れ狂うような魔力が突風となって戦場となった『砂地獄砂漠』に吹き荒れる。
 手にした砂獄槍『アントライオン』が突風のような魔力に反応して砂の渦を海抱いていく。
 この土地に宿る砂には魔力がやどりユーベルコードを阻害する。
 それは『眠りの森の魔女ターリア』の持つユーベルコードもまた同様である。健在であった迷宮は尽くが効果を喪って消えていく。
「オブリビオンでもないのに、何故……この地に宿る魔力を……!」
「この地とあなたのことはリムが一番良く知っていますから」
 リミティアは駆け出した。
 手にした砂獄槍を携え、その瞳を見据える。

 そこにあったものにリミティアは何を感じただろうか。
 人はそれを感傷と呼ぶのかもしれない。
 時間は過去に排出されながら未来に進んでいく。否応なしに過去の集積地『骸の海』へと至る。
 リミティアという魔女もまた同じであるのかもしれない。
 例え、どんなに長く生きようとも、己もまた過去になっていく。それを悲しいとは思わないかも知れない。

 けれど、それでもリミティアの心に宿るのは哀惜の念であったかもしれない。
 砂の渦が眠りの森を突き崩していく。
「あなたは、何だというのです。私の心に去来する懐かしさは一体なんだというのです」
『眠りの森の魔女ターリア』が叫ぶ。
 それは理解できぬものを理解しようとして軋む心の叫びであったのかもしれない。
 労しい。
 リミティアはそれだけを辛うじて呟いた。

 たった、それだけで互いの瞳が確かに交錯したのを感じた。過去と今。それが交錯する一瞬があっただけでも幸せなことであったのかも知れない。
 いや、それは違う。
 過去は過去に在るべきものだ。
 今に滲み出ていいものではない。だからこそ、リミティアは己が為すべきことを為す。
 茨がリミティアに絡みつき、その四肢を封じる。
 ぎりぎりと身体が軋む。傷みが走る。それでも、リミティアの体に刻まれた魔女の刻印の明滅は消えない。
 滅ぼさなければならないという心の叫びが、その瞳をユーベルコードに輝かせる。

「あなたはなんなのです――!」
 その叫びは哀切。
 故に、リミティアは渾身の力を振り絞って、絡みつく茨ごと『眠りの森の魔女ターリア』を引き寄せる。
 その輝きは一時の借用。
 本来であれば成せぬ奇跡。
 けれど、その軌跡を手繰り寄せるのは紛れもなく人の意思。現在を生きるリミティアの揺るがぬ信念故。

「あなたが求めていた『破邪の言葉』をお聞かせします」
 引き寄せられた『眠りの森の魔女ターリア』を抱き寄せる力は力強かったけれど、優しかった。
 ただ、遠い親戚にそうするように。
 親愛を持って為された抱擁であった。このユーベルコードの輝きが終わる頃、己はきっともう戦うことは出来ないだろう。

 けれど、今はそれでいい。
「――眠れ」
 その言葉は優しく。魔女の囁き(マギア・ウィスパー)の如く。
 紡がれた『破邪の言葉』は神の加護を持って邪なる者を打ち砕く。
 二人の魔女が折り重なるようにして倒れ込む。

 相打ちであったのかもしれない。
 けれど、リミティアは立ち上がる。目の前に横たわる遺骸。それを見下ろし、本来であれば死の間際に放たれる奇跡をも乗り越えて、リミティアはかつての『眠りの森の魔女』の遺骸を抱える。

 すでに骸の海へと還るしかない遺骸。
 けれど、リミティアは頭を振る。勿忘草色の炎が遺骸を包み込み、霧散し消滅していくさまを見送る。
 遠い先祖である彼女が再び現界することはない。
 決して。
 それは己の宿命に紐付けられたものであるがゆえに、それだけがリミティアの心を慰める唯一の真実。

「――感謝します。言葉の神シャルムーン……」
 せめて。
 せめて、遠きいつかのあなたに安息があるようにと、そう祈りながらリミティアは消えゆく勿忘草色の炎を見送るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年01月28日
宿敵 『眠りの森の魔女ターリア』 を撃破!


挿絵イラスト