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きらめくあなたに、声援を

#サクラミラージュ

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#サクラミラージュ


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 もう針をさすところが無いからと、痛みの強い手の甲に針を刺した点滴。
 ゆっくりと体の中に落ちてくる強い薬剤が、血管の中をちくちくと刺して巡る。
 和らがぬ病状の中で、死の際にいる女性は幽かに声を上げた。

「……妹の舞台を……見て、あげたかった……」

 必死に働いて節約して、ようやくアイドルの養成所に入った妹。
 大事なかわいいあの子のハレの舞台を見ることなく先立つ姉は、こけた頬を一筋の冷たい涙で濡らす。

(あの子の未来を見る事は……私にはできないんだ)

 良い所のない人生だった。
 妹を産んでくれた事以外は良い所のない両親。彼らの残した借金を返す為に、学業を諦めた。
 学が無いから騙されて、店の金を盗んだという濡れ衣を着せられパーラーメイドの職を失った。
 後に無罪だと証明されても、ケチがついたせいで良い職につけず、妹に様々な事を我慢させた。
 ……それでも妹の掲げた夢を見守りたいから命を手放さず生きてきたのに、ちょっと体調が悪い時期が続いたと思ったら転げ落ちるようにあらゆる病に身を蝕まれた。

(どうせこの体を脱ぐのなら…………あの子の舞台を……)

 妹の夢をもう応援できないという事実が魂を暗く彩って、姉の命の灯が尽きる。
 そうして、浮かばれぬ魂となった彼女は桜の世界を彷徨って――数年の後に、影朧として帝都に現れる事となる。

●グリモアベース
「すみません、サクラミラージュで影朧が出現する予知が発生しましたので、その対処を猟兵の皆さんにお願いしたいのです」

 グリモアベースでネオン・エルバイトがそう声をあげる。
 気づいた猟兵が歩み寄ってくれたのを確認すると、ネオンは手帳の中に記した詳細を伝えはじめた。

「週末昼ごろの帝都、とある駅前広場の真ん中に影朧が一体出現します。皆さんにはこの影朧の無力化と、救済の手伝いをお願いしたいのです。……この影朧は現れた際の混乱で攻撃的になっているだけなので、皆さんとの戦闘を経た後はそのまま戦う意欲を失います。戦って勝てば、そのまま無力化は完了するという事ですね」

 帝都を脅かす者は斬るべきだが、脅威ではなくなった後も斬り捨てなければならないのかというとそうではない。
 そも、帝都を守護する帝都桜學府の目的は『影朧の救済』である。無害になるとわかっている影朧ならば、救済を優先するべきだろう。

「少なくとも今回の影朧に関しては、現れる原因となった執着を解消してやれば輪廻の輪に再び乗ることができるはずです。……予知として見つけた際に、現れる影朧の過去もわずかに見えました。出現地点付近の情報と併せて考えると、影朧の目的は本日行われるアイドルライブで間違いありません」

 駅からすぐの繁華街に、いくつかの芸能事務所が出資している小劇場がある。
 そして予知にされた影朧の出現日時は、その小劇場に出資している事務所の一つが新人お披露目ライブをはじめる直前。
 影朧となった女性は妹が舞台に立つ日を楽しみにしていたので、おそらくはその舞台に妹が立つのだろう。

「影朧は無力化後は大変弱っています。人の悪意を受けたり、目的を果たすことができないと絶望しても消えてしまう状態です……人通りが多い場所に急に現れ恐怖を与えてしまっていますので、そのまま向かわせれば市民からの恐怖や悪意を受けて消え去ってしまうでしょう。そうならないように、皆さんに影朧を小劇場まで連れて行ってあげてほしいのです」

 深い執着を残したが故に巡れなかった魂が、それを果たす機会を得た。
 しかし、本当に魂が救済されるかどうかは、猟兵達にかかっている。

「改めて、お願いします。迷ってしまった彼女を正しい巡りに送るために、皆様の力をお貸しください」


碧依
 こんにちは。碧依と申します。
 今回はサクラミラージュにて、弱った影朧の救済シナリオになります。

 一章で影朧と戦闘し無力化させ、二章で目的地まで影朧を連れて行き、三章でアイドルライブを楽しむ感じとなります。
 アイドルライブ関連の描写は三章の断章でちょっと足そうかなと思っています。

 プレイングは大体いつでもOKですが、次の章に進む直前のプレイング等は捌けない可能性があるので、タグに募集中があるかどうかも見ていただけるとご安心かもしれません。
 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『アイスメーカー『サンデューワ』』

POW   :    『アイスメーカーズ』さん、本日も宜しくお願い。
【触れた対象を吸い込むアイスクリーム製造機】で武装した【アイス屋店員】の幽霊をレベル×5体乗せた【百貨店1フロア規模のアイス屋空間】を召喚する。
SPD   :    ご注文はお決まりですか?(『メイクオーダー』)
【開いたメニュー】を向けた対象に、【気になった品に対象を変化させる光】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    『アイス・サンプリング・フェア』
小さな【ガラスケースを設置すると、それは戦場】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【強制アイス化空間で、使用者が持ち出す事】で、いつでも外に出られる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ポーラリア・ベルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フィーナ・シェフィールド
アドリブ絡み歓迎です

影朧さんの心残り、妹さんの夢。
アイドルのデビューライブと言うことですし、一人の先輩アーティストとしても、支援は惜しまないつもりです。

まずは落ち着いてもらわないと。
マイク・イーリスを手に、シュッツエンゲルとツウィリングス・モーントを周囲に展開してミュージック・スタートです!

「デア・フォイアリーゲ・エンゲル!聖なる炎よ、彼女の魂を温めて!」
【歌劇『炎の天使』】を歌い、アイスクリームの幽霊を破魔の力で浄化しつつ、影朧さんの凍った心を温めてなだめましょう。

「聞いて!貴女の願い、妹さんの晴れ舞台を見たいと言う想いを叶えたいの!」
傷つけないよう注意しながら、歌に想いを乗せて届けますね。



 人々の行き交う広場の真ん中で、影が女性の形をとる。
 それに気づいた人々が逃げ惑うなか、影朧もまた混乱の最中にあった。

(ここは?   うるさい     まって、かんがえさせて  しずかに――)

 影朧がざわめきに敵意を向けかけたその時、一人の女性が影朧の前に躍り出る!

「わたし達が引きつけます!今は、ここから離れてください!」

 影朧の前に立つのは、フィーナ・シェフィールド!
 己の身の周りに展開させたドローンの内、スピーカーであるツウィリングス・モーントから彼女の声が周囲に響く!

(アイドルのデビューライブと言うことですし、一人の先輩アーティストとしても、支援は惜しまないつもりです)

 そのためにも、まずは影朧を落ち着かせようとフィーナは目の前の存在をしっかりと見る。
 パーラーメイド姿の影朧は、フィーナと目が合うと小さく言葉を発した。

「……りょう、へい」

 影朧もまた、オブリビオンの一種。
 オブリビオンにとって"敵"と同義のそれを口にしたと同時に、民衆に向けられかけた敵意の矛先が完全にフィーナへと向かう!

「わたしに気づいてくれた貴女に、わたしの歌を届けます!」

 フィーナは自身のオーラをドローンであるシュッツエンゲルに注いでバリアを張り、前奏を流しイーリスと名付けたマイクを強く握る。
 それに呼応するかのように、影朧は周囲の景色をユーベルコードで大きく歪めた!

「アイスメーカーズ……」
「デア・フォイアリーゲ・エンゲル!聖なる炎よ、彼女の魂を温めて!」
 
 継ぎ接ぎのアイス屋に変質した空間内に幽霊が湧き出すのと、フィーナの歌が始まったのは同時!
 それはつまり……フィーナの歌の方が先に向こうに届き、先手を取るという事である!

「悪しき魂を浄化する、聖なる炎よ!」

 フィーナの歌が、防御を整える間もない幽霊たちに次々と届き、断罪の炎で包んで消していく。
 無論それは影朧にも炎をつけるが、彼女を傷つけまいとフィーナは可能な限りその炎が発生した瞬間に消していった。
 そう、あくまでフィーナは影朧の心を妹を想う姉へと戻す事を優先しているのだ!

(炎の色が、赤に近くて儚い……幽霊たちのも、影朧さんにつく炎も)

 演奏を聞いた者の魂を浄化する聖なる炎は、相手が邪悪であればあるほど白く輝く。
 通常のオブリビオンであれば、或いはそれらと同等の影朧であれば、もっともっと炎は強く輝いたはずだ。

「……貴女が会いたいのは幽霊じゃなくて、今を生きてる人でしょう?この景色も、あなたが本当に見たいものじゃないはずです!」

 暗い炎。
 救えるはずの存在だと示すそれを見て、フィーナはより影朧に届くようにと強く歌う。
 オブリビオンという過去から蘇った亡者ではなく、大事な家族を思う一人の姉に猟兵を信用してもらうための歌と炎が、継ぎ接ぎのアイス屋の内装に見える空間を駅前広場の景色へと戻していく。

「聞いて!貴女の願い、妹さんの晴れ舞台を見たいと言う想いを叶えたいの!」
「う、うぅっ?   何故っ……なんでっ……?」

 ――何故、知っているのか?なんで、手を貸そうとするのか?
 影朧の途切れた言葉を汲んだフィーナは、確かに届いているという手応えとともに影朧に声をかける。

「貴女が自分を取り戻すまで、わたし達は付き合います!だから今は――この歌を届け続けますよ!」

 歌は、響き続ける。
 影朧が己を取り戻すまでフィーナの歌は止まらない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ハズキ・トーン(サポート)
「仮面って邪魔だよねぇ」
 どこか暢気な話し方をする、仮面をつけた男です。別に仮面が外れようが気にしません。邪魔ならすぐ外します。仮面は帽子感覚。

 攻撃する。という行為が驚くほど苦手な為、野生の勘やら逃げ足やらを駆使して避けつつ、
 『生まれながらの光』で負傷者等の救助を優先とした行動が多め。 
 回復の必要がなければ他UCも使用します。

 説得で回避できるならば話し合いを試みます。 
 自身の多少の怪我は厭いません。

 あとはおまかせします。連携歓迎。


キャンディ・スカイランド(サポート)
猟兵の「キャンディ・スカイランド」と能力で召喚した「井熊・アユム」の2人組です

キャンディはアリスナイトの能力でアユムを強化したりアリスランスで攻撃したりします
バトルゲーマーの能力は基本使いません

アユムはコントローラーで攻撃する腕や足を召喚したり
キャンディからの強化で戦います

基本キャンディはアユムに肩車してもらってます

キャンディは普段は喋りません
人見知りとかではなくテンションが上がると普通に喋りだします
アユムで面白いことをする作戦が思いついた時、アユムが活躍している時はテンションが高いです
それ以外でもなんか突然に喋ります

アユムは引きこもりゲーマー(?)です
嫌がっても最終的にはキャンディに従います


マーシャ・ドラクロフ(サポート)
★サポートプレ
アドリブ連携大歓迎

■キャラ情報
皆の笑顔を力に替えて戦う魔法使い

王道の力、と思われるがこの娘一味違う。

笑顔といっても己の芸で他者を笑わせなければ真の力を発揮できないため、ふざけているようで命懸けである。


どんなネタでもいけます!
年齢的に規制がかかるお色気系じゃない限り!

マーシャです!
がんばります!

■特徴
一人称:私
呼び方:誰に対しても「ちゃん付け」
※おっちゃん呼びなども含む


■ユベコ
・我が祝詞は天を穿つ(ダ・ジャーレ・ウケルテ)

渾身のギャグで敵の急所を突く最強奥義。
ちなみに仲間も笑ってくれないとマーシャの寿命がばりばり減る。

・影が奉ずる賢者の知恵

己の影から使い魔や便利アイテムを召喚する。



 響く歌声。
 影朧は戸惑いからそれを振り払うべく動き出そうとする――が、3名の猟兵が立て続けに現れたことで、オブリビオンの本能から意識がそちらに引き寄せられる!

「……おいアンタ。どうしても戦いたいって言うなら、俺らが遊んでやる」
「説得自体は先ほどの方の歌で続いていますから……私達は聞きいれられるようにサポートしていきましょう」
「そうだね!ドッカンドッカン笑わせて……敵意なんて、無くしてあげるよ!」

 最初に声を発した、キャンディ・スカイランドを肩車させられている井熊・アユム。
 補助優先の方針を立てたハズキ・トーン。
 そして己のやるべきことをバッチリと見定めているマーシャ・ドラグロフ。

 彼らに対抗するためか、影朧は小型のアイス販売用のガラスケースを設置!戦場の雰囲気が変わったことを感じた猟兵達は、違和感から逃れるように行動を開始する!

「……やるなら、こっちもやってやるよ」

 違和感の原因となったアイスケースを破壊しようと、アユムが額に1と描かれた大量の棒人間を召喚!
 ゲームキャラである棒人間達はアイスケースへと突撃していき……その近くに立つ影朧の次の手をくらってしまう!

「……ご注文は……お決まり、ですか?」

 影朧が、持っていたメニュー表を棒人間達に向けて開く。
 メニューに棒人間の一部の視線が集中したかとおもうと、彼らに向けてメニューから光線が発射された!
 ポポンッと軽快な音を立ててアイスに変化した棒人間達が地に落ち、落ちた様々なアイスがアイスケースへと吸い込まれていく……変化による無力化と回収を目の当たりにしたアユムは、残る棒人間達に撤退を促す!

「残った奴は集合!」

 棒人間達がワラワラと彼の元に集まる様子を見ながら、ハズキは影朧のユーベルコードを分析していた。

「メニューを見てしまえば変化させられ、変化して無抵抗になればアイスケースに吸い込まれるという事でしょうね。抵抗の意思があるから私達はまだ吸い込まれていませんが、その意識が途切れたらおそらくアイスにされずともあの中に……」
「えっ?どうしよ、私の無力化方法とアイスケースの相性が悪いかも」

 マーシャの用意していたユーベルコードは、敵意を失わせることに特化している。しかし、それは味方を巻き込む策でもある。
 味方が無抵抗になるという万が一を考えると、使う事は出来ない。

「……元々俺はアレ狙いだ。こいつらを合体させて強力にして、影朧を見ないようにしつつアイスケースに突撃させる」
「そういうことでしたら、相手にこちらの動きを見せないほうが良いでしょうね。一旦、視界を遮ってしまいましょう」

 そう言ってハズキは猟兵達を一か所に集め、ユーベルコードを発動!
 駅前広場に木々が生い茂り、迷路を作り出していく!
 一塊となった猟兵と棒人間達が通れる道幅を確保するために簡易迷路になっているが、この状況であれば影朧の元に到着しやすく、到着後も動きやすいだろう。

「普段ならわくわくするものだけど……今回は目隠しのために作りました。この状況なら、光線に邪魔されずに準備を整えられます……それと、これを。万一の時の光線避けとして、お守りがわりに」

 アユムが残る棒人間達を一体にまとめている間、ハズキはマーシャに自身の仮面を貸す。

「いいの?」
「ええ、あとで返してくれれば問題ありませんよ。私はここで迷路を維持します。戦う事も苦手ですし……皆さんが成功するように、ここで祈らせてもらいますね」
「ありがと!……先にきてた子もずっと頑張ってくれてるし、早く影朧ちゃんを助けてあげよ!」
「こっちは用意できた」
「うん、行こう!」

 ハズキの見送りを受け、3人は迷路を進む。
 いくつか角をまがると、猟兵達は影朧の背を見つける事が出来た。
 影朧本人は、流れてくる歌に戸惑い抗っている最中のようで彼らに気づいていない。

「油断しているな……今だ!」

 アユムの掛け声とともに、棒人間が駆けだす!
 その声で影朧も猟兵達に気づき、先程のように持っていたメニューを棒人間に向けようとした……が、棒人間の後ろをつけるようにダッシュしていたアユムとそれにのるキャンディに気づいて一瞬戸惑いを見せた!
 隙を突こうとアユムは影朧の持つメニューを狙い手を伸ばし、棒人間は己の体力を犠牲にアイスケースに突撃する!!

「~~っ!!」

 影朧の攻撃を通す前に、派手な音を立てて棒人間とアイスケースが衝突!
 大きくひしゃげたアイスケースと、役目を終えた棒人間。その両方が何も残さず、消滅!!

「棒人間ちゃんお手柄!変な感じもなくなったし、次は私の番だね!」

 曲がり角に身を隠して様子を伺っていたマーシャが、預かった仮面をつけて躍り出る。
 一刻でも早く、影朧を無力化しようという意気込みが彼女を走らせた。

「おい、まだ安全は確保できてな――っ?!」

 アユムの警告と同時、影朧は取られまいと腕の中に隠そうとしてたメニュー表を、奪われても構わないとばかりにおもいきり広げる!
 アユムの視界は咄嗟にキャンディの手が覆ったため無事!
 キャンディも、視線の位置が高いのでメニュー表の中は視認せず!

「……?」

 その二人に効かないのは、影朧にも理解できた。
 しかし、駆けつけてくるマーシャ対しても、光線は発射されなかった。
 その事実に影朧が戸惑っているうちに、マーシャは影朧に抱き着き、その姿勢を崩す!
 メニュー表が影朧の手を離れ、閉じた状態で地面に落ちる!

「影朧ちゃんに!私のとっておきの言葉をきかせてあげる!」

 マーシャはこの機を逃すまいと影朧の肩を掴み視線を合わせ、その場の全員に聞こえるように高らかに声を上げる。
 ユーベルコードの力が乗ったそれは、彼女のギャグセンスを魂の奥で光り輝かせ、影朧の混乱で固まった感受性を強引に高める!

「これを聞いて思いだしてほしい――影朧ちゃんの"愛す"るものは"アイス"じゃない!"アイス"を"愛す"な!!」

 感受性を強引に高められた影朧の意識に、マーシャのギャグと流れ続けている歌が叩き込まれる。
 あまりに強い生きた感情に影朧は動きを止め……思い切り体をくの字に折り曲げて、笑った。

「っ~~~ ふっ ~~~~~!!!」

 声も出ないクリティカルヒットの笑いに重なるように、マーシャの頭上からキャンディの笑い声が降ってくる。

「っあはははははは!!ずるい!それはずるいよ~~~!!思いっきり真面目な場面でのギャグはっ ずるいってーー!!」
「でしょ?空気感とのギャップ、狙った甲斐があったってもんよ!」

 そういいながらマーシャは地面に落ちたメニュー表を回収する。

「お守りとして預かった仮面のおかげで、これも直視せずに済んだし……成功!」
「……そうか?」
「そうだよ!だって影朧ちゃんも戦うかんじじゃなさそうだし!」

 影朧は未だ、笑いのツボから抜け出せず地面にうずくまるようにして震えて笑っている。

「……これ、敵意が無いかの判断できなくないか?」
「そうだね☆いったん戻ろっか――あっ」

 様子見という結論が出たあたりで、ハズキが木々で出来た迷路を消して歩み寄ってきた。

「無事で何よりです」
「うん。ありがとうね、お守りの仮面いい感じに効いたよ!お祈りしてくれてたおかげかも」
「それは良かった。……あちらは?動きはとめているみたいですけれど」
「わからない。様子見だ」
「でも、敵意が残っててもあとちょっとじゃないかな♪」
「なるほど……でしたら、私達にできる事は歌っている方の負担を減らす為に、監視を続ける位でしょうか」

 敵意が残っていれば不用意に近づくのは危ないし、そうでなくとも笑いが収まるまで待つ必要がある。
 そう判断した猟兵達は、影朧の様子を見守るようにその場から距離を取っていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ルーヴェニア・サンテチエンヌ
あいすくりーむにされてしまうのは癪だけど、貴女さまが味わった苦難に比べたらなんてことは…
そうですわ!肌の色とかチョコレート味みたいで美味しそうではないかしら??なんて、取り出したくなるような、そんな催眠術を掛けて。

出してもらえたらこちらのもの。
まずはビターに、不協和音で。

どんなに酷い目にあっても
大切な人を支えきった
あなたは強い人


徐々に明るい和音へ移すの。

あなたが作った輝きを見に行かない?
苦難の日々は絶対無駄じゃない
悲劇のヒロインで終わらせない


あまりに寄り添いすぎると、貴女さまの心を、蝕んでしまう技だから。今回はほんの少し、離れた立場で歌うの。


ベルベナ・ラウンドディー
(アイテム:人派の顔面オーラ参考



あー…
お笑いのところスミマセンが確認事項がありましてね


学業を中退
その後はパーラーメイド、しかし売上金を盗んだとされて失職
数年前に他界
…そして妹はどこかの劇団の養成所に所属



これで間違いありませんね?
ユーベルコード使用、敵周辺に結界展開、攻撃を封じる
身元を本人に言い聞かせるように確認、なだめるところから入ります

使い慣れてもいないアイスの技術など大した脅威ではありません
…刺す場所すらない細腕で抵抗されても痛々しいので
他に特技や出来ることが無いかを考えてから結界を破ることをお勧めしますよ
(訳:戦う以外で何か思いだせ



…そういえば開演時間、聞いてませんでした
間に合います?



 その場に新たな猟兵達が降り立った。
 彼らを見つけた影朧は、まだ笑いを引きずっているにもかかわらず抵抗しようと、再びその場にアイスクリームケースを出現させて猟兵達の接近を拒む素振りを見せる。

「なんといいますか、思っていた以上に強情ですね」

 ベルベナ・ラウンドディーの困ったような呟きに、ルーヴェニア・サンテチエンヌが返す。

「わたくし、今している抵抗はあの方の人生からくるものだと思いますの。攻撃性が残っていたとしても、きっと、あともうちょっとですわ」

 ルーヴェニアには、影朧は単純に他者を信じきることができないからこそ抵抗しようとしているように見えていた。
 本当にそうであれば生前の記憶がよみがえってきているという事だが……厄介なことにかわりはなかった。

「一応、あの効果ごと封じる事は出来ますが……冷静に言い聞かせて待つとどのぐぐらいかかりますかね……」
「わたくしは、共感の方面でいくつもりでしたの。いろんな種類の言葉が合わされば、きっとすぐですわ」
「では私が結界を張り――」
「わたくしに先に行かせてくださいな。わたくし、影朧さんのすぐそばで歌ってあげたいですの」

 ルーヴェニアの言葉に、ベルベナは少し考えてから頷く。

「ルーヴェニアさんの歌がユーベルコードであれば、影朧だけを覆うのは良くなさそうですね……わかりました」
「ありがとうございます。では、お先に」

 ルーヴェニアは影朧の方へ向き直り、違和感への拒絶を足に纏って歩んでいく。
 猟兵の事を警戒しつつ観察する影朧に向けて、ルーヴェニアは軽く身振り手振りのパフォーマンスを行いつつ、自分が魅力的に見えるように催眠をかけていく。

「わたくしがそこに入るなら、肌はあまぁいチョコ味で、瞳は輝くベリーソース。貴女さまもきっと、手にとってしまうでしょう。だからそう……アイスのわたくしを見るために、中を覗いてくださいな?」

 催眠に必要な声をかけ終るとすぐに、ルーヴェニアは己の足に纏わりついた違和感を受け入れてアイスケースの中へと吸い込まれていった。

「……えっ?」

 懐に入り込むためとはいえ無茶な方法を取ったルーヴェニアに虚を突かれる影朧。
 小さな声をあげてぽかんとする彼女に向け、ベルベナが行動を開始する!

「対象、影朧ならびに生成物であるアイスケースとその中身! 猫の足音、女の髭、岩の根――以下略!」

 詠唱と共に光の柱が影朧の周囲を囲み、影朧とアイスケースを外部から隔離!
 光の柱から展開された障壁は双方からの影響を遮り、ベルベナと影朧双方の安全を確保する!

「……あー、スミマセンが確認事項がありましてね。あなた自身の事です」

 そのように隔離した以上、やることは攻撃ではなく語りかけである。

「学業を中退。その後はパーラーメイド、しかし売上金を盗んだとされて失職。数年前に他界……そして妹はどこかの劇団の養成所に所属……これで、間違いありませんね?」

 穏やかな表情に、なだめるような声色。それらを駆使してベルベナは影朧の人であった頃の情報をあげていく。
 対して影朧が少し間を開けて返したのは、ぼやけた返答だった。

「たぶ、ん……」
「……その境遇で死に至り影朧になったのであれば、警戒が抜けきらないのは仕方のない事です。私たちは皆、それを理解してあなたに語りかけています……その上で、戦うかどうかを今一度考えていただきたいのです」

 ベルベナは、改めて影朧を見る。
 姿はパーラーメイド時代のものらしく病弱であるようには見えないが、おそらくは影朧として出現する際に整えられた見目。本当にこの姿の頃に戻っているのであれば、騙された記憶も無く警戒心はもっと薄いはずである。
 ……だからこそ、よりはっきりと影朧に自分を思い出させるために、ベルベナは敢えて今際の姿を思い出させる事を口にした。

「使い慣れてもいないアイスの技術など大した脅威ではありません……点滴を刺す場所すらない細腕で抵抗されても痛々しいので、他に特技や出来ることが無いかを考えてから結界を破ることをお勧めしますよ」
「あ……えっ……?」

 混乱と警戒ばかりで状況が見えていなかった影朧が、己の手の甲を見た。点滴の痕の青黒い痣はひとつも無い。
 現状の確認をしたことで思考にかかっていた靄の一つが消えたのか、影朧はベルベナの奥、繁華街のある方向に視線を向ける。

「そう、だ……いかなきゃ―――~~っ……ぅ……」

 それでもなお、僅かに残る何かが猟兵を討てと彼女を苛む。
 その苛立ちから逃れるようにベルベナから背を向けた影朧は、身を隠すものを求めてアイスケースのそばへ駆け……その中を見た瞬間、植え付けられていた催眠が花開いた。

(あいすくりーむにされてしまうのは癪だけど……)

 柔らかい茶色が基本の、アクセントに深いピンクのベリーソースが乗った、黒とピンクが混じり合う器に盛られたアイス。
 気づけば、ケースの中のそれを、影朧は手に取っていた。

「これも、貴女さまが味わった苦難に比べたらなんてことはありませんの。ですからほんの少し、わたくしに歩み寄らせてくださいな」

 そのまま取り出されて少女の姿に戻ったルーヴェニアは、濁った音色のコードに乗せて影朧に歌いかける。

「どんなに酷い目にあっても 大切な人を支えきった あなたは強い人」

 歌いながら徐々に濁った音を澄んだ音へと切り替えてゆき、やがて完全に明るい和音のコードに移り変わる。

「あなたが作った輝きを見に行かない? 苦難の日々は絶対無駄じゃない 悲劇のヒロインで終わらせない」

 歌を介して発動したユーベルコードが、ほんの僅かに残っていた攻撃性を蝕みながら、影朧の視界に輝く舞台を映し出す。
 思わず座り込んだ影朧がそれに向けて伸ばした手を、演奏を終えユーベルコードを解除したルーヴェニアが優しく取った。

「幻よりももっと素敵な、本物を見に行きましょう?」
「……はいっ!」 

 涙声ではあるが、たしかな意思が乗った返事と共にアイスケースが消え去る。
 影朧が敵意を完全に失い無力化したと判断したベルベナも、結界を解除して彼女たちに歩み寄った。

「道中も我々猟兵がフォローします………そういえば開演時間、聞いてませんでした。間に合います?」
「わたくしは聞いておきましたの。道中を急げば、今からでも問題ないのですわ」
「……なるほど。座り込んでいる暇はなさそうですよ?行きましょう」

 影朧は頷いて、立ち上がる。
 彼女の最後の旅路を支えるように、猟兵達も同じ方向へと向かっていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 冒険 『はかない影朧、町を歩く』

POW   :    何か事件があった場合は、壁になって影朧を守る

SPD   :    先回りして町の人々に協力を要請するなど、移動が円滑に行えるように工夫する

WIZ   :    影朧と楽しい会話をするなどして、影朧に生きる希望を持ち続けさせる

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 影朧は、執着に導かれるように歩き出す。
 無力化前のように頑なな姿勢ではないらしく、無力化を手伝った猟兵達に詫びて頭を下げる時などは足を止めたが……同時に、可能ならば本当は駆けだしたいのだと彼女は語った。

「私が走ったからって、公演の時間が変わるわけではないんですけれど……でも、普通に戦っていた場合よりは、ずっと元気でいられていると思います。皆さんの、おかげです」

 猟兵達が彼女の心を戻すのに注力したおかげで、戦闘でのダメージはほぼない。
 彼女が思う様に駆けることができないのは、単純に彼女の構成要素が通常の影朧よりもずっと薄く、儚い存在だからだ。

「あと、少し……妹に、声援を届けるまで……どうか、お付き合いください」

 そう言って、影朧は再び猟兵達に頭を下げた。
フィーナ・シェフィールド
アドリブ絡みOKです。

願いを叶える前に影朧さんの存在が消えてしまわないよう、楽しいお話をして意志をしっかり持っていただきましょう。
隣に並んでささえながら、ペースを合わせて歩いていきます。

わたしも歌手として、演奏家としてステージに上がっていますし、舞台の上から見る客席の景色は、とても素晴らしいものだと知っています。
「妹さんもこれから同じ場所に立って、夢を叶えていくんですね。」

そして、そんなわたしを応援して、支えてくれる方々の想いを大切に思っています。
「妹さんも、きっとお姉さんの想いを胸に、今日の舞台に臨んでいると思いますよ。」

だから…一目その姿を見るまで、がんばってくださいね。



 駅前から繁華街の中へと、猟兵達と影朧は歩みを進める。
 無力化に協力していた猟兵であるフィーナ・シェフィールドも、時折ふらつく影朧を支えながら隣を歩いていた。

「すみません……最初からずっと、ご迷惑をおかけして」
「いいんですよ。それよりも……これから行く場所の事を話しましょう?」

 元々が弱った魂であるが故に、オブリビオンとしての攻撃性を失った影朧は儚い存在だ。
 普通の人間の悪意を受けるだけでも消えてしまうような状態の彼女に、フィーナは明るい会話をしようと提案する。

「わたしも、歌手や演奏家としてステージに上がっているんです」
「まぁ、そうだったんですね……納得しました。呼びかけて下さっていた時の歌が、とても素敵でしたから……折角なら客席で聞きたかったと思う程に」
「ありがとうございます。客席でパフォーマンスを見た事は?」

 たずねた内容に、影朧はゆっくりと首を横に振る、

「……思い出せないだけかもしれないですけれど、ないです……妹も、目指すと言い出したのはそういった映像を見る機会があったからで……」
「そうなんですね……良い場所ですよ。少なくともわたしは、舞台の上から見る客席の景色は、とても素晴らしいものだと知っています」

 フィーナは既にスタアとして名を馳せている。
 大きな場所、小さな場所、多人数向け、少人数向け……様々な場所で己の歌と演奏を披露してきた。
 そしてどのような場面であっても、己が向かい合うべき人々が居る客席が見せる景色は、彼女の心を動かすものだった。

「妹さんもこれから同じ場所に立って、夢を叶えていくんですね」
「……妹にとっても、その景色が素晴らしいものになるでしょうか?」
「ええ、そこは大丈夫です!……わたしは、わたしを応援して、支えてくれる方々の想いを大切に思ってるんです。そして、それを思うほどに、客席の景色って素晴らしく感じるんです」

 デビュー年齢が若い方が良いとされるアイドル。だというのに養成所に入ってからの期間が長いのは、妹にもそれなりに波乱があったのだろうとフィーナには予測できた。
 それでもデビューの日を迎えているという事は、応援してくれているという事実を知っていて、その想いに応えようとしている人物のはず。

「妹さんも、きっとお姉さんの想いを胸に、今日の舞台に臨んでいると思いますよ」

 あなたが居たからこそ、あなたの妹が見る景色は美しい物であるはずだとフィーナは言葉の外に含ませる。

「互いに思いあっていたから、今日があるはずです。だから……一目その姿を見るまで、がんばってくださいね」
「……はいっ!」

 フィーナに励まされた影朧は、不安げだった顔に小さく笑みを浮かべて意気込む。
 それでもまだ存在感の薄い彼女を支えるために、フィーナは癒しの力をのせながら、明るく未来を想う歌を口ずさんだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

ベルベナ・ラウンドディー
諜報用端末操作、帝都桜學府に連絡
女性一名保護、護送につき経路の交通規制よろしく、と
あとは私のバイクを使えば最悪でも遅刻は無いでしょうが…




それより給仕服では仕方が無いので準備を始めましょう
帝都に洋服屋、無いほうがおかしいか
行かねばならぬ、などと義務感だけで妹さんは見て貰いたいと思います?
相応しい装いで己に自信を持ち、前向きになって頂かないと



碌でもない死に方を無理に思いださせるつもりはありません
ただ、本来あったはずの権利を手放して選ばなかった生き方をしたように聞こえましてね
ならば今からの僅かな時間を楽しむ権利はあるはずです
長い時間は取れませんが、妹の舞台を口実に贅沢をさせたいのですよ



「女性一名保護……護送につき経路の交通規制をよろしく……っと」

 ベルベナ・ラウンドディーは自身の持つ端末を用いて帝都桜學府に連絡を入れた後、流れるように経路上にある一件の服屋に連絡を入れる。

「現在の服装ですと影朧として目立ってしまいますので……はい、後の混乱を避けるためのご協力をお願いします」

 その店の了承を得たベルベナは、影朧を誘導すべく彼女のもとに向かった。

「少々よろしいですか?劇場に向かう前に、給仕服では仕方が無いので準備をしましょう」
「準備……ですか?」
「ええ。行かねばならぬ、などと義務感だけで妹さんは見て貰いたいと思います?相応しい装いで己に自信を持ち、前向きになって頂かないと」

 影朧の口から出たのは「思いつかなかった」という、声と吐息の中間のような小さな言葉だった。
 その呟きの意味を深く掘るようなことはせず、ベルベナは既に手配してあることを告げて少し先にある服屋へと影朧をエスコートする。

 手を引いて向かった先は、小さ目の婦人服のセレクトショップだった。

「こちらです……私のバイクもあるので時間に多少の余裕はありますが、長い時間は取れませんので既製品から選ぶ形になります」
「ええと……並べてあるものから選べばいいのですよね?」
「そういう事です」

 この世界はUDCアースで言えば大正頃の文化が中心。服飾店も、オーダーメイドやセミオーダーを提案する場所が少なくない。
 そのような世界知識を前提に、ベルベナは己の偵察能力を使って『買ってすぐに着れる物を売っている』『選択肢が多くなりすぎない店』を選んだのだった。

「あの、すみません……」
「はい、何か気になるものがございましたか?」

 影朧は店員に質問を投げ、戸惑いながらも服を選ぶ。
 店員も、事前連絡のおかげであくまで普通の客に接するように影朧に対応していた。

 数分後。
 影朧はひまわりのような色合いのワンピースと、赤いリボンのついた麦わら帽子を手に悩んでいるようだった。
 冬場には似つかわしくない夏の装い。しかし、それらを手に取って以降は他のものに興味を示していない事に気づいていたため、ベルベナは影朧に声をかける。

「何か迷っているのならば、聞きますよ?」
「……だ、大丈夫です。これにしようかと思います」

 ベルベナは差し出されたワンピースを受取り、一方で影朧が後ろ手にかくそうとした麦わら帽子もさっと回収する。
 驚いた様子の影朧に、彼は穏やかな笑みを浮かべたまま言った。

「遠慮は不要です。大事な時間のための、大事な準備です。我慢する必要はありません」
「す、すみません……では、おねがいします……」
「ええ」

 普通に生きる事が出来ていたなら持っていたはずの権利を手放す生き方。彼女の生である以上、それが間違いだったとは言えない。
 しかし、それでもできたはずの事を選ばなかった……というよりも選べなかったのであれば。

「……今からの僅かな時間を楽しむ権利は、あるはずです」

 着替える影朧を待ちながら、ベルベナは誰に言うでもなくそう呟いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

コノハ・ライゼ(サポート)
UCの使用/不使用お任せ。

態度口調、一人称までも気分次第、嘘吐きで気紛れなお調子者。
オブリビオンは喰らうもの、猟兵業は餌場で狩場。悪食で酒好き。
楽しい事と人の笑顔が好きで戦闘中も飄々と笑みを絶やさない。

※妖孤だが耳と尻尾は晒さない

・以下PC口調
未知の事にはワクワクしちゃうタイプだネ。
大体の事は楽しめるし、驚かせたり怖がらせたりはする方が好き。
魔道系には鼻が利くケド、推理とかは苦手かしら。悪巧みなら得意なんだけどねぇ。
愛想よく人に話聞くのも得意かな。
「子供は幸せに」が信条なの。子供には優しくするケド、汚い大人には遠慮しねぇつもり。
あと料理は仕事にしてる位得意、使える場面では積極的に使ってくネ。



 影朧が移動する際の混乱を抑えるための交通整理。
 それを手伝うために、コノハ・ライゼは予定ルートの付近を見回っていた。

「なるほど。このあたりを通るんだネ」

 影朧の周囲についてくれている猟兵達のおかげで、影朧本人は希望を持てるようになった。
 だが、未だに人の悪意という脅威が残っている。

「それが刺さらないためのトラブル対応あたりが、オレの役目ってコトかな?」

 先の猟兵が出した協力願いに応じて、既に繁華街に巡る路地のそこかしこに一時立ち入り禁止の看板が立てられている。
 影朧の保護のためのそれは、恐怖や不安をむやみに煽らないように、事情説明の無いものとなっていた。

「あれ?ここ、だめなの?」

 そんな簡易な看板の先を覗きながら、子供が首をかしげている。
 それを見つけたコノハは、笑みを浮かべながら声をかけた。

「こんにちは。きみ、何かお困り?」
「えぇとね……おつかい、ここから商店街のほうにいくの……」
「なるほど。ちょっとまってネ、回り道を調べてみるから」

 周囲を見回して案内板を見つけた彼は、それにあわせて子供を案内する事にした。

「ちょっと先にある地下道を使えば、こっちの道じゃなくても商店街に行けるんだって。あまり通らない道は不安だろうから送ってくよぉ」

 少し迷ってから「おねがいします」といった子供の手をとって、コノハは地下道へ向かう。
 それなりに人が多い地下に、その子は僅かに委縮したようだった。

「ひといっぱい……」
「上の交通規制を逃れて移動しようとしてる人達みたいだねぇ」

 コノハが視線を巡らせ人々の様子を探れば、皆どこか不安気だった。
 普段と違う行動由来の不安だろう。
 それが悪意となって影朧に突き刺さる前に、何より今この場にいる人々に笑顔を戻す為に、コノハは一つ手をうった。

「まぁ、一時的なものだっていうから大丈夫!きみや、今ここを使っている人達が次通る頃にはいつもどおりだよ」

 大きく発した、楽観的な言葉。その中に、コノハは恐怖に鈍くなる呪詛を軽く忍ばせた。
 強引に不安の芽を摘む声が届けば、手を繋いだ子供だけでなく声が聞こえた周囲からわずかに安堵の気配が広がっていく。

「せっかくだから、いつもと違う道を楽しむのはどう?行動範囲も広がって、楽しいんじゃないカナ?」

 うなづく子供に笑みを見せたコノハは、不安を除くまじないを混ぜた会話を続けながら、地下道を通り抜けて行った。

成功 🔵​🔵​🔴​

キャンディ・スカイランド
「アイドルライブは詳しくないけど他の人が邪魔でよく見えなかったらやばいよな」

アユムの考えを受けライブ会場にいきます
自由席(?)ならアユム君に頼んで場所取りをするし
席指定ならいきなり良い席に座れるよう運営さんと交渉するようにこれもアユム君に任せる

あまりアユム君から降りたくないけど一般人の集まるならちょっと危ないし(特に場所取りなら)降りて買い物にいきます
影朧の子がライブを楽しめるように応援のペンライトや汗を拭くためのタオルとかを買っていこう

大切な人の応援に行く事は自分も楽しいことは分かるから☆
さらに楽しくする準備をして影朧を待ちます

※キャラ設定により今回キャンディは喋りません(喋っても一、二言)



 影朧が服を揃えている間に、ライブの会場となる小劇場に一足先に到達した猟兵がいた。

「ここか……アイドルライブは詳しくないけど他の人が邪魔でよく見えなかったらやばいよな」

 井熊・アユムの呟きに、キャンディ・スカイランドはその肩に乗っかったままコクンとうなづいた。

 早速、アユムは中に入り席の取り方を確認する。
 受付に質問をしてみたところ、前売券は割増のかわりに席を指定でき、当日券は立ち見になる事も込みでの自由席らしい。

「新人お披露目系統はギリギリだったり途中からくる方も少なくないので、今からであれば良い席につけると思いますよ」
「……あとから、これを一番楽しみにしてるやつが来るんだが、その席も取れるか?」
「お友達の分も席を取ろうとする方はいらっしゃいますよ。でも、基本はいない人よりもいる人ですから、混んで来たら席をお譲りくださいね」

 前売券での指定席は座席にカバーがかけてあるという注意事項も聞き、アユムは席を確保しに向かった。
 一方キャンディはアユムの肩を名残惜しげに降りた後、物販へと向かっていた。

「いらっしゃいませ」

 お財布を胸元に抱えるように持つキャンディに気づき、物販の店員が対応する。
 影朧はおそらく、こちらに寄る余裕はないだろう。
 素敵な時をもっと楽しくするために準備が必要だと考えたキャンディは、品物をしっかりと吟味する。

(大切な人の応援に行く事は、自分も楽しいことは分かるから☆)

 汗を拭くためのタオルや、応援のためのペンライト。それらを言葉少なにうなづきと指差しで示しながら店員と意思疎通していく。
 ほどなくして会計を済ませると、キャンディは品物の入った袋を持って、そっとうかがうようにステージと席のある空間を覗き込む。
 アユムはどうやら、かなり良い席を確保したらしい。
 ダメ元であろうが、その席を譲ってもらえないか?という交渉をしに来る人達に対応しようと、必死になって影朧の事を伝えていた。

「なるほど、そういう事なら。後で来るやつにも伝えておくよ」
「遠方に住んでるのに身内のデビューと聞いてくる人も実際いるもんな」

 納得する人々が別の席に行くのと入れ違いに、キャンディは影朧用の席に買ったものを置いてから、説得疲れでうなだれるアユムの横に座る。

「……疲れた」

 アユムのこぼした独り言に、キャンディはキラキラとした笑顔を向けながら手を伸ばす。そうして、彼女は影朧が来るまで彼の頭を撫でつづけた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 日常 『アヰドルラヰブへようこそ』

POW   :    力の限りアヰドル達を応援する

SPD   :    マイペースにラヰブを楽しむ

WIZ   :    物販などの併設ヰベントを楽しむ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ステージの裏手にて。
 新人アイドルたちは殆どが皆、緊張の面持ちだった。
 デビューするのはソロ二組、3人ユニットが1組。
 今日の流れはこうだ。
 まず事務所のソロユニット2組が連続で一曲づつ歌い、次にアイドル5人を紹介していき、その後に3人ユニットが1曲、つづけて最後に全員で一つの曲を歌う。
 全員で段取りや曲の練習をしてきたため、5人全員が同期として既に仲間意識を持っていた。

「はわ、わ……お客さん、けっこういますね……大丈夫かな……」
「ああー、みんなが不安がるかもってことで私だけ聞かされてたんだけど……何か駅前で影朧関連の事があったらしいわよ?それで、対応した人達も見に来てくれてるんですって」

 最年長の女性がそういうと、少女たちは不安そうにざわめく。
 しかし、それを吹き飛ばすような明るさで女性は言った。

「なかなかない機会よ!その手のおっかけがメインじゃない人が来るのは貴重な上に、失敗してもみーんな今日が初めてだってわかってるんだからスタートダッシュには最適ってもんよ!」
「そういうものでしょうか?」
「そういうものよ。伊達にこの業界見てきたわけじゃないもの。みんなでドーンと行きましょ♪」

 一緒に練習してきた女性の言葉に、少女達は少し緊張を和らげる。
 生活基盤を固めつつ業界に慣れるために、マネージャーとアイドル候補生の二足のわらじを履き続けた彼女の事を皆信頼していた。

「アンタがそういうなら、そうなんだろうな」
「ここにその人たちが来てるということは、解決しているということですものね……なら、頑張った皆様を労わる為にも、わたくしたちが不安がっていてはいけませんわね」
「開場挨拶はじまりましたね……みんな!気合い、入れましょう!」

 3人組のセンターを務める少女が、女性の鼓舞を引き継いで号令をかける。
 5人で円陣を組んで声をかけ合った後、司会の説明する注意事項にかき消されるような小さな声で、かつて妹だった……今はみんなの"おねえさん"である新人アイドルは呟いた。

「……ソロの子たちや、センターのあの子ほどプレッシャーかかる立場じゃないけど……でも、見に来てくれたんだもの。そのために、いろんな人が頑張ってくれたのだもの……頑張るから、見ててね」

 見に来てくれた姉と、彼女を連れて来てくれた人々を最後まで楽しませると誓った彼女は、己の出番に備えて息をととのえた。
ベルベナ・ラウンドディー
実は妹さんへの興味は始めから薄く
始めからお姉さんの方しか眼中になかったのですよ
目的地に送り届けたら私の役目はおしまい
邪魔になる前に帰ります


輝かしくはない
が、絶望に相応しい生き方ではありませんでしたし
その生き方に誇りを持つべきと、気付く機会があってもいいはずでした
彼女の方にこそ声援を送りたかった、というのが本音です


…本当に世の中上手く行きませんね
いい女性とは大抵彼氏持ちか事情持ちだ(クソデカ溜息
華やかな桜より路傍の野花のほうが好みなのですがねぇ…


プロマイドでも一枚記念に買って帰ります
ファンなんですよ、その【アイドルのお姉さん】
顔がよく似てるから一枚、願掛けに持っていきます
…また会えたらいいですね



 開場の挨拶の直前に、影朧と猟兵達は小劇場へと到着した。
 席を用意してもらったと聞いた影朧はそちらへと案内され……そこで、これまで影朧をエスコートしていたベルベナ・ラウンドディーは彼女の手を離した。

「後は、あなたが味わうべき時間です。最後まで楽しんで行ってください」
「ありがとうございます。ここまで連れてきていただけたことも、お洋服の事も……本当にお世話になりました」

 影朧自身も、妹のステージを見届けたら消えてしまう自覚があるらしい。
 今しか言えないからと頭を下げて礼を述べる彼女に、ベルベナは席につくように促す。そして、影朧と、ライブを見ていく事にしたらしい猟兵達からそっと距離を取っていった。
 彼は始まりの挨拶をしていた司会の声が、新人を迎える拍手にかわるさまを聞きながら大きな溜息をついた。

「……本当に世の中上手く行きませんね……いい女性とは大抵彼氏持ちか事情持ちだ」

 彼ははじめから、影朧の妹を含むアイドルたちに対する興味は薄かった。
 彼が手を差し伸べようと思ったのは、最初から影朧本人に対してだったのだ。

(私は……彼女の方にこそ、声援を送りたかった)

 かすかに漏れ聞こえる歌は、どうやら出会いをかざるものらしい。
 きらきらしく明るい曲調のそれから、ベルベナは意識を逸らし物販へと向かう。

「いらっしゃいませ。何をお求めでしょうか?」
「そうですね……少し、見せてください」

 そう言って視線を飾られている品に移していくと、影朧と目鼻立ちが良く似た女性の写真が目に入った。
 しかし、やはり雰囲気が影朧とは違う。
 "妹"だけではない。並べられた写真のアイドルたちは、感じさせる季節やシチュエーションは違うかもしれないが、この世界での桜のように咲き誇って見えた。

(華やかな桜より路傍の野花のほうが好みなのですがねぇ……)

 送り届けた影朧の人生は、輝かしくはなかった。
 だが、絶望にふさわしい生き方でもなかった。
 その生き方に誇りを持つべきと、彼女が気付く機会があってもいいはずの人生だったはずだ。

「プロマイドでも一枚記念に買って帰ります。ファンなんですよ、その"アイドルのお姉さん"」

 写っている新人アイドルではない別の女性のことを想いながら、ベルベナは一つの写真を指す。
 商品の確認対してに頷いた後は、清算用のトレーに釣りが出ないように金を置き、店員が写真を包むのを待った。

「お待たせいたしました、ありがとうございました」

 包まれた品を手に、ベルベナは小劇場を後にする。
 影朧を目的地に届けたことで交通規制は解除され、バイクで飛ばして来る時は猫の子一匹いなかった道を安心したように人々が行き交っていた。
 その景色の中でもひらひらと舞う桜の花弁から目をそらすように、街路樹の足元に咲いていた小さな花を見て彼は思う。

(……また会えたら、いいですね)

 巡った後、いつか、どこかで。
 願掛けのプロマイドを仕舞い込み、彼はその場を離れて行った。

成功 🔵​🔵​🔴​

フィーナ・シェフィールド
アドリブ絡みOKです。

影朧さんを支えながら会場へ。

「ステージからだと、意外と客席のみなさんの顔は見えるものなんですよ」
きっと応援しているあなたの姿も、見えているはずです。
「だから、全力で応援しましょう!」
ずっとそばで支えますから、思うままに、想いを込めて。

消えそうな影朧さんの応援の言葉…この賑やかな会場の中、ステージの上からなんて、普通なら聞こえるはずもないけれど。
「大丈夫、きっと届きますよ…」
ツウィリングス・モーントの指向性スピーカーで妹さんへ届けます。

心から紡がれた応援のメッセージ、いつまでも彼女の胸に残って、苦しい時も支えてくれるはずです。

「…お疲れ様でした」
影朧さん、満足できたかな…?



 影朧の隣に座りながら、フィーナ・シェフィールドは自身の過去のステージを思い返す。
 はじめて見かける人、何度も足を運んでくれていることに気づく人、猟兵として活動した中で触れ合った後に来てくれた人……様々な表情が、応援が、フィーナとステージを形作っていた。
 それはきっと、このライブでも変わらない。

「影朧さん。今日は、楽しみましょうね」
「はい!」

 フィーナが見てきた中で一番はっきりとした影朧の声が聞こえた直後、司会が開演の挨拶をはじめた。

(……妹さんの出番がいつかはわかりませんが、準備だけはしておきましょう)

 フィーナはそっと、天井近くにスピーカードローンのツウィリングス・モーントを浮かべる。
 配置されてるスピーカーの邪魔にならない位置を探り、最善の位置を見つけて留めたところで一人目の新人がステージにあがった。

 ちらりと隣を見れば、応援の仕方がよく判らない影朧に、フィーナと逆側の隣に座っていた猟兵がペンライトとタオルを差し出している。
 使い方を教わり、控えめながらも曲調に合わせて振って応援する影朧を見て、フィーナはまだ彼女の妹の出番ではない事を察した。

 舞台は進行していく。
 二人目が歌い終わり、緩急をつける為か今日デビューするアイドル達を紹介するミニコーナーに入ったとき、影朧の動きが固まった。
 フィーナがその視線を追えば、この後に歌うという3人組のうちのひとりに行きあたった。
 ふわりと揺らめきかけた影朧をフィーナが支え、声をかける。

「ステージからだと、意外と客席のみなさんの顔は見えるものなんです……きっと応援しているあなたの姿も、見えているはずです……だから、全力で応援しましょう!」

 顔見せだけではなく、次の曲。次の曲までではなく、最後まで。影朧が思うままに、想いを込められるようにとフィーナは彼女を支え続けた。

「……ありがとうございます。ふふ、本当に一目だけ、だなんて……もったいないですよね?」
「ええ、そのとおりです……ほら、はじまりますよ」

 明るい曲調の前奏が流れ始める。友情を歌い上げる歌を、ステージ上のアイドルたちが強く、可憐に歌い上げていく。
 タオルとペンライトを握りしめた影朧は、流れ来る歌声に声を詰まらせながらも腕を振り、応援のために名を呼び、歓声を上げた。

(消えそうな影朧さんの応援の言葉……この賑やかな会場の中、ステージの上からなんて、普通なら聞こえるはずもないけれど……)

 浮かべてあったツウィリングス・モーントを、指向性スピーカーとして使い影朧の声援をそれに乗せる。向ける先は、ステージの上のただ一人。

(大丈夫、きっと届きますよ)

 フィーナは顔をあげ、ステージを見る。影朧と顔立ちの似たアイドルが、フィーナのすぐ近くに視線を向けているのがハッキリとわかった。


 全ての予定がつつがなく終わり、幕が下りて観客席が照らされる。
 今日のステージを最後まで見届けた影朧の姿は、まるで照明に紛れるように光の粒となって散っていった。

「……お疲れ様でした」

 フィーナは消えて行った影朧にむけた、ねぎらいの言葉とともに席を立つ。
 ふと、彼女の脳裏に疑問が浮かんだ……が、すぐに空間にこもる熱めいた余韻に気づく。
 この余韻を作り上げた中に影朧が居た。
 その事実が浮かんだ疑問への何よりの答えだと感じて、フィーナは小さく笑みを浮かべた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年06月11日


挿絵イラスト