●友斬りの業
――何故に斯様なこととなってしまったのか、男は握っていた血に塗れた刀を細かく震わせた。
妖剣士として絶え間なく、心と技と体を鍛えてきた身であるのにも関わらず、手にある刀の呪いは彼を殺戮の道に走らせてしまった。
血に塗れた道場の中、横たわる男の大切な愛弟子――飲まれればこうなるという最悪の反面教師の取り返しは最早つかず。
偶然に妻やまだ乳飲み子の赤子を連れて遊びに来た、かつての、そして今も続く友人達も、皆全て血に塗れて横たわる。
返り血に身体を染めて、膝をついた男へと声が響く。
「う、ぁ、……」
――其方が殺した。衝動の儘に。友を、情を、青雲の志も。
――もう其方は戻れない。其方に輝かしき明日はない。それ故に美しい。
――目覚めよ。美しき絶望の鬼よ……。
「嗚呼阿阿阿阿阿ッ!!」
その日、新たな修羅が悲しみと嘲笑の中に生まれた。
●切れぬ定め
「妖の力を使う者、自らの心までも妖とするべからず」
異界の天使スフィーエ・シエルフィートは、神妙な顔つきで語り出した。
決して力に飲まれ心も蝕まれるな、というある種の決まり文句を呟くと、彼女の銀灰色の瞳には、鈍く輝く怒りが宿っていた。
「……させたのは、許されざる悪意だがね」
西洋刀を杖の代わりとし、その柄を強く握り締めながら彼女はいつものように語り出した。
「さぁ語ろうか。舞台は妖と刀の逸話事欠かぬサムライエンパイア、君達には鬼と化してしまった妖剣士を止めに行って貰いたい」
猟書家幹部【刀狩】――妖剣士の扱う呪われた武器に宿り、妖剣士を絶望の淵に叩き落し、鬼と化させていた亡霊。
刀狩そのものは、追跡者の手によって討伐が果たされてはいるのだが。
「志は消えない。今も同じ事件は起こり、こうして鬼が生み出されてしまった」
血に塗れた道場の中、慟哭と共に六本腕の修羅となって立つ鬼と、その記録を映し出して。
こういう志ばかり受け継がなくていいのにね、と溜息を交えつつ彼女は下唇を噛み締めていた。
「だから君達には、まずは彼の道場へ行き、彼を正気に戻して欲しい」
そう言って彼女は戦場となる、妖剣士であった彼の道場――血に塗れた遺体の惨たらしき場を示す。
町外れにあるそれは、幸いにも人は寄り付かず、皮肉にも守るべき者は――他ならぬ妖剣士が殺してしまった後だ。
戦闘に対して特に気を払う必要はなく、純粋に鬼を倒せばいいのだと語るが。
「強敵だ。仮に腕を切り落とした所で、充分に弱って無ければすぐに拾い上げるだろう」
腕が無くなっても足、或いは口に刀を咥え――文字通りの修羅として戦ってくる。
詰まる所、普通に敵を追い詰めていく他ないのだとスフィーエは語り。
或る猟兵から、その鬼を説得することは出来るのか、と問われれば彼女は顎に手を当てて僅かに唸り。
「……どれほどの効果があるかは分からないが、無駄にはならないだろうね」
多少の正気を取り戻す補助にはなり、幾許かの攻撃の手を緩ませることは出来るかもしれない。
しかし説得そのもので正気に戻すことは出来ないので、兎に角叩いて弱らせ、刀を引き剥がすしかないのだと語る。
「然る後、刀に憑いた悪霊を滅ぼして欲しい」
元凶たる亡霊はかつての猟書家幹部ほどの力はないのかもしれないが、それでも鬼と化していた妖剣士に勝るとも劣らぬ強敵だ。
尚、妖剣士は亡霊の為した所業に怒り、正気に戻ったまま激しい怒りで、人間の領域を遥かに超えた動きを見せ、亡霊に立ち向かっていくのだという。
「……故に彼の助力も大いに期待できる。この時だけは、恐らく君達に引けを取らないだけの力を発揮するだろう」
それだけの力を発揮する代価が、如何ほどの物だとしても止めることは出来ないが――何処かやり切れぬ顔で、スフィーエは瞼を重たく、元々細い眼を更に細めた。
「……一度断ち斬ってしまったものは戻らない。時はどう足掻いても戻せない」
一通りのことを語り終えたスフィーエは、何ともやりきれない気持ちを抱え、眉間に明らかに皺を寄せていた。
例え鬼を解放し、首謀者を倒したとしても失われた命は決して戻らない。非情な現実に、西洋刀を握る手は冷たく震えていた。
「しかし彼の行く末を、本当に取り返しのつかないものにしてはいけない。どうか、力を貸して欲しい」
それから一呼吸を置くと、静かに吐き出した息と共に、彼女は血と悲しみの匂い立つ戦場へと門を開くのだった……。
裏山薬草
どうも、裏山毒草です。違います薬草です。
意志があって止められないのが辛いのか、終わった時に意志を取り戻してしまうのか。
どちらにせよ、やらかしたこと次第では辛いものがありますね。
さて今回は、妖刀の呪いに囚われ、友人たちを手に掛けてしまった挙句に鬼と化してしまった妖剣士を救い、刀狩の意志を継ぐオブリビオンと決着をつけて貰います。
このシナリオは猟書家シナリオなので、二章構成となっております。
●妖剣士
名は烈。年齢は二十歳程度。道場の弟子や遊びに来ていた親友を手に掛けてしまった。
一章のボスとしては、赤く血塗られたノコギリのような刀を持っている。
●第一章【ボス戦】
鬼と化した妖剣士との戦闘です。
刀を取り落とせば解放はされますが、戦闘不能レベルのダメージを負わない限り取り落とすことはないので普通に戦うことになります。
強敵ではありますが、説得次第では幾許かの弱体化が望めるでしょう。
●第二章【ボス戦】
猟書家幹部『刀狩』の意志を継ぐオブリビオンとの決戦となります。
解放した妖剣士は復讐の為に普段以上の力を発揮しており、皆様と同レベルの実力を発揮します。
上手く共闘すると有利に戦えるでしょう。
それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
裏山薬草でした。
第1章 ボス戦
『闇刃阿修羅』
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POW : 六道輪廻撃
【六本の腕】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : 救世塵殺
自身が装備する【武器】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 後光・偽
【全身】から【目映い光】を放ち、【相手を怯ませる】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「月凪・ハルマ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
大威・景
「おうおう!俺の憧れたサムライエンパイアの住人はこんなものなのか!……冗談だ……オブリビオン相手に猟兵じゃなきゃ分が悪いだろうな。未熟者だがオブリビオンからの解放、手助けする!正気に戻ってくれよ!」
できるだけ30cm以内に入らないように間合いを取りつつ攻撃
もし30㎝に入ったら UC【サイコキネシス】使用 サイキックエナジーで烈を吹き飛ばし距離を置きます。まだ正攻法では負けるかもしれないが、ヒットアンドアウェイで、少しでもダメージを!
アドリブ・絡みは歓迎です。
●憧憬の果て
戦場に辿り着いた瞬間、噎せ返るというにも生温い鉄の臭気が鼻を突いてきた。
続けて襲い掛かる、生温かくも生理的な嫌悪感が否応なしに掻き立てられる、血の脂気に為された殺戮の気配が肌を刺す。
「……阿、亜、唖……」
そこに居る恐ろしき悪鬼と化したは六本腕の修羅――妖剣士が変異した鬼は、その手に鋸めいた刃の血塗られた刀を持っていた。
恐ろしき鬼を前にして尚、ある男は眼前に勢いよく躍り出た。
「おうおう! 俺の憧れたサムライエンパイアの住人はこんなものなのか!」
彼――大威・景(スペースエルフの刀使い・f31866)が刀を突き出しながら声を張り上げていた。
そんな彼に一瞬で距離を詰めた修羅は六本腕より、風より疾く強き一撃を繰り出す。
それを咄嗟に後方へ躱した景だが、その威力に冷や汗を背に滲ませつつ、振るわれる修羅の刀を己が刀で上方へ弾き。
「……冗談だ……」
亡霊の相手は猟兵でなければきついものがある――繰り出される六本腕からの連撃は苛烈。
剣豪としての素養を備えた景であっても、鬼と化した妖剣士の巧みな動きへ対応するのがやっとか。
それでも致命的な一撃の射程には入らぬよう、刀の間合いを把握しつつやり合うも、修羅の突きが繰り出されれば、景は刀の腹で咄嗟に受け止める。
されどその勢いは苛烈、床を滑り後方へ勢いよく後退させられ、極々僅かであるが体勢を崩す。
「うおっぅっと……」
「唖唖唖……!」
転ぶ寸での所にて踏ん張るとも、修羅の前にはやや致命的な隙。
並の亡霊たらば隙と言えぬ隙でも、恐ろしき悪鬼、即ち相手が悪いという他なく気が付くと既に修羅は景の至近距離にいた。
(まずい!)
その距離、僅か一尺――即ち修羅が見せた至近距離の超高速にして超威力の斬撃が来るということ。
事実、血塗られた刃の軌跡が“覚悟”してしまった景の眼には非常に緩慢に見えるようだった。このまま行けばその刃が自分を斬り裂く――否。
「……諦める、なぁっ!!」
――それは、鋸刃が迫った自分自身へか、妖刀の狂気に呑まれ自己を見失った修羅への檄か。
勢いよく突き出された掌が、修羅の身体を激しく突き飛ばす。
鋸刃が触れんとしたその瞬間、突き出された掌と、そこから迸る不可視の力場が障壁となって修羅の攻撃が届く前にその身を遠ざけさせていた。
「未熟者だがオブリビオンからの解放、手助けする! 正気に戻ってくれよ!」
そして逆に距離を一気に詰めて修羅の脇腹を、刀の一閃を以て斬り裂くと。
再び突き出した掌よりの、念力の障壁を以て身を遠ざけるのであった。
成功
🔵🔵🔴
四季乃・瑠璃
緋瑪「呪いに操られた剣士…必ず止めよう、瑠璃」
瑠璃「その悪意は絶対に許せない…行こう、緋瑪」
【チェイン】で分身
二人掛かりの感知式、時限式、接触式ボムで敵の操作する武器を爆風で吹き飛ばし、瑠璃がK100の銃撃とボムによる支援を行い、緋瑪が大鎌でまとめて鬼化した事による副腕を狙って切断。
至近距離からボムを叩き込み、吹き飛ばしてダメージを叩き込み限界までボロボロにするよ
緋瑪「刀なんかの言いなりになっちゃダメだよ!そんな刀に大切な人を殺されて悔しくないの!?」
瑠璃「その衝動は貴方のモノじゃない。貴方の意思を歪めた元凶に負けないで」
二人「自身の業で他者を歪ませる亡霊…おまえは後で必ず殺してあげる!」
●許されざる悪意に怒りて
血と死臭に満たされた戦場の中、血を具現したかのように、惨たらしく肌と肉を斬り裂く鋸型の刃が飛び交う。
修羅の耐え難き悲痛な声と共に生み出された恐ろしき妖刀を前にしても、彼女達は必ず負けぬと強き決意の下に絆を顕現した。
「呪いに操られた剣士……必ず止めよう、瑠璃」
「その悪意は絶対に許せない……行こう、緋瑪」
四季乃・瑠璃("2人で1人"の殺人姫・f09675)は半身である緋瑪とその身を二つに分けると、突き付けられた無数の妖刀に立ち向かっていった。
修羅の念力に操られる無数の刀――恐らくは妖刀の複製、原本には及ばぬのだろうが、それでも相当な得物が飛ぶ。
それに抗うように、瑠璃と緋瑪は一斉に掌に取っていた爆弾を投げつければ、鋸刃に引っ掛かった瞬間――轟音と熱風が吹き荒れた。
血塗られた刃に纏う死の匂いすらも蒸発させ、吹き飛ばす熱と衝撃の“面”が二百にも迫る刃を打ち砕く。
爆風を逃れた刃が入れ替わるように突き出されても、瑠璃は銃鞘より取り出した大型拳銃を向ける。
すれば放たれる容赦なき銃弾の“点”への攻撃が着実に空舞う刃を撃ち落としていき。
その間に緋瑪は大鎌を静かに取り出すと、修羅に向けて声を張り上げた。
「刀なんかの言いなりになっちゃダメだよ!」
大鎌に仕込まれた炸薬が爆ぜ、少女の身体に加速を与え修羅の下へ迫らせる――爆発と同時に緋瑪の張り上げられた声に、反撃に移ろうとしていた修羅の動きが僅かに止まって。
「そんな刀に大切な人を殺されて悔しくないの!?」
「我、虞、唖我……!」
――繰り出そうとする反撃も緋瑪に向けられることはなく、腕は動きを見せない。か細くも抗い続ける人としての理性が緋瑪の檄に呼応し、修羅を止まらせているのだろうか。
まだ間に合う――振り下ろされた大鎌が修羅の腕の一つを断ち切る。
苦痛に声を挙げ、留まっていた修羅が動きを再開し、反撃に移らんとすれば大型拳銃の弾がそれを制した。
「その衝動は貴方のモノじゃない。貴方の意思を歪めた元凶に負けないで」
残った複製の妖刀が一斉に飛び掛かると同時、接触式の爆弾を以て吹き飛ばした瑠璃の声が響き。
修羅は蹲り理性と狂気の間でせめぎ合う――その姿を見ながら二人は彼が持つ妖刀を睨みつけて声を重ねた。
「「自身の業で他者を歪ませる亡霊……おまえは後で必ず殺してあげる!」」
重なった声に対し、妖剣士の握る鋸刃の刀より新たに血が滴って床に吸い込まれていく。
まるで妖剣士の葛藤と、二人の殺意を嘲笑うかのように。そんな妖刀へと彼女達は一斉に爆弾を叩きつければ。
迸る轟音と熱風がその修羅の身と妖刀を包み苛めていく――全てを狂わせた元凶に、湧き上がる怒りを刻み込んでいくようだった。
成功
🔵🔵🔴
ハルア・ガーラント
●WIZ
このままじゃ彼は戻れなくなってしまう
戦闘開始と共にUCを発動
執行官さんに援護して貰います
〈咎人の鎖〉での一時的な[捕縛と念動力]による地面への縫い付けで動きを鈍らせつつ
〈銀曜銃〉で[呪詛耐性を持つ浄化]の魔弾を放ちます
鎖の輪に鋸部分を引っかけ行動阻害も
執行官さんには空中や別方向から攻撃して貰い腕の数による一点集中の脅威を減らしましょう
彼の攻撃は殺意を[第六感]で感知、回避
後光は執行官さんの聖盾と[オーラ防御]で目が慣れる迄の攻撃を耐えますね
浄化の効果が少しでも見えたら声をかけます
烈さん
この現実が耐え難いものだとしてもどうか踏み留まって
見届けるのはあなたの役目です
わたしも一緒にいますから
●湧き上がる痛み堪えて
冥き眼の中に赤く輝く瞳、そこから流れる雫の赤きは鬼と化した彼の果て無き慟哭を示しているようだった。
恐ろしき悪鬼そのものの多腕の修羅は、その動きにも容赦はなく、振るう剣の冴えと殺気はそれだけで心を圧する。
(このままでは、元に戻れなくなってしまう……!)
哀しき修羅を前にハルア・ガーラント(宵啼鳥・f23517)は拳を強く握り締めると、その傍らに一つの守護霊を呼び出した。
黒き大翼を持つ天獄の執行官――舞い降りた荘厳なる存在に彼女は声を掛けた。
「あのっ、一緒に戦ってください」
彼女の声に執行官が頷けば、執行官は駆け出し修羅に肉薄せんとし。
ハルアは重厚な白翼に絡む、尖を備えた鎖を修羅を目掛けて伸ばす――其れを咎というには残酷なれど、黄金の鎖が脚に絡み付けば、その動きを地に縫い留めんと力場が放たれる。
「唖、嗚呼、唖、唖!!」
されど修羅の動きはあまりにも苛烈、側面から回り込んできた執行官を目掛け妖刀を薙ぐ。
それを執行官は翳した盾で受け止めれば、ハルアは更に嗾けた鎖の、その輪を鋸刃に引っ掛ける――その形状が仇となったか、修羅の動きがそれに引っ張られ体勢を崩す形になれば。
続け様にハルアの手に握られた銀曜銃より放たれた弾丸が突き刺さり、修羅の身に或る爪痕を残す。
身体の内側より灼かれるような何かに悶えつつも、修羅は全身から眩い光を反撃に放つ。
「っ……」
咄嗟に解き放った光の障壁を以て、修羅の放つ歪んだ後光を防いだが、修羅の動きは想定よりも速く。
血塗られた肉を抉る残酷な刃が、今にもハルアを引き裂かんとするが――ここで漸く撃ち込んだ魔弾が、鬼の身体を蝕む狂気を清めたか、ハルアの肌に触れる寸前で刃は止まった。
「卯、具……縫……!」
「烈さん」
それからは幾度となく動かそうとした刃が動くことはなく、今尚胸中にて続く理性と狂気のせめぎ合いは、齎された浄化によって理性が今は競り勝っているのか。
呻き声より苦悶を伺わせながら、より強く刀の柄を握る修羅に、天使は静かに近づき、その頬に手を添えた。
「この現実が耐え難いものだとしても、どうか踏み留まって」
――愛弟子も、嘗ての親友も、その親友の妻も子も狂気に囚われ手に掛けてしまった、心を何度壊されてもおかしくない罪の意識。
響かせるこの言葉がどれほどの救いになれるかは分からない。けれども、言わずにはいられない。
「見届けるのはあなたの役目です」
まだ倒れて全てを諦める時ではないのだから。
真っ直ぐに見つめてくる緑の瞳に、修羅は僅かに力を抜いた。
「わたしも一緒にいますから」
「嗚呼、嗚呼、嗚呼嗚呼……」
――この狂気が解けるには未だ妖刀の呪いはあまりにも強きに過ぎて。
されど天使の慈愛に満ちた声は確かに、修羅の流す血涙の色を薄くしていた。
成功
🔵🔵🔴
黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流
武器そのものがっていうわけじゃなく、使われている武器に宿るのか。
ある日突然そうなったら対処は確かに難しいだろうな。
初めからそういう武器である、って事なら手にしなきゃいい事だし。
基本存在感を消し目立たない様に立ち回る。そして隙を見てマヒ攻撃を乗せた暗殺のUC剣刃一閃で攻撃。
できるなら声がけを。
そのまま落ちてしまったら誰が彼らを弔うんだ?誰が彼らを覚えているんだ?
悔やんでもなお道はまだある。戻って来い。
敵の攻撃は第六感で感知、見切りで回避。
回避しきれないものは本体で武器受けで受け流し、カウンターを叩き込む。
それでも喰らうものは激痛耐性で耐える。
●不可逆なれども
右手には旧月山派の刀工の作の刀を、左手には大振りなる黒き短刀を携え、男は、黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)は血塗られた刃を持つ修羅と相対する。
戦場の殺意と狂気に身を溶け込ませ目立たぬようにしていても、修羅の妖刀はすぐ様に気付き血塗られた刃で薙いでいく。
(……ああ、そうか。元々そういう性質じゃあないんだな)
元々の武器がそうであったのならば、最初から手にしなければ良いだけの話であり、ある日唐突に変わるもの、それもまず耐えられないであろう呪に対応しろというのが土台無理な話か。
一瞬で擦れ違う妖刀の性質を感じながら、瑞樹は逆手に構えた黒い短刀で妖刀をかち上げて。
更に追撃に送られる、多腕からの別の武器が次々と突き出されても、刀と短刀の二刀を以て正確に受け流していく。
「おっと……」
「唖、阿、亞……!」
その隙に存在感を消して戦場の緊張に気配を紛れさせても、修羅の生命の領域を超えたような速度が瑞樹に迫っていく。
そこから放たれる一瞬の肉薄からの、大気をも歪め震わせる修羅の一撃が放たれる――が、瑞樹はそれを軽やかに、後方へ人間離れした超感覚で察知してから躱していき。
床に穴を空け木片の散る中、鋭く眼を向けた修羅を真っ直ぐに見据えると瑞樹は言葉を投げかけた。
「お前の置かれた状況は分かる。辛いことも良く分かる」
本当に唐突に、大切なものが奪われた。
しかもそれが自分自身の――例え意識が無くとも確かに残る、罪の手応えは辛いという言葉では済まされないのかもしれない。
多腕に備えられた短刀が襲うのを、同じく大振りの黒き短刀に火花を散らしながら受け流すと、瑞樹は更に言葉を続けた。
「だが、そのまま落ちてしまったら、誰が彼らを弔うんだ? 誰が彼らを覚えているんだ?」
だからこそ潰える道を進ませてはいけない――修羅の多腕が更に、備えた妖刀と元来備えていた別の刀を以て斬り込んでいけば、即座に横へ身を蹴り出して残した影を斬らせると。
「……悔やんでもなお道はまだある。戻って来い」
「鵜、亞亞亞……」
振り下ろした刀を引く、ほんの極僅かな一瞬の隙を目掛けて、瑞樹は二刀を鮮やかに走らせた。
それはそのまま疾風のように修羅の横を通り過ぎる――修羅の血涙を僅かに頬に受けながら、刻み付けた斬撃の中、仕込まれた麻痺毒が静かに修羅の膝を着かせるのであった。
成功
🔵🔵🔴
華舟・波瑠
【もふ堂】
アレンジ・アドリブ歓迎やー
桐葉殿、非道に憤るは後や。…一緒に彼奴を止めたらんと、彼奴も死者を悼めん。
【陣風一箭】を発動。飛来する【武器を落とす】べく、【クイックドロー】と【スナイパー】で強化した印字打ち(投石)と打根(投げ矢)で迎撃。
桐葉殿の射があったら、それを【援護射撃】として懐に飛び込み、薙刀で【薙ぎ払い】。
おまけに【袖箭】の一射も持ってき!
慟哭し、横たわる者らを真に弔えるのは、俺らやない。主をおいて他に居りゃあせん。
その身で手を合わせらるか。その身で弔えるか。出来ゃあせんやろ。
…なぁ、烈とやら。真に死者を想う誇りがあるなら。この華舟小次郎・春景、主の憑き物、落としたる。
稲宮・桐葉
【もふ堂】
アレンジ・アドリブ歓迎
「なんと惨い仕打ちじゃ!」
惨状を目の当たりにし、犠牲者達の無念を想い憤怒に任せ妖刀ムラサマを引き抜く
『お嬢、落ち着け。俺様の手助けがあっても奴は手に余るぜ』
意思持つ妖刀の珍しく真剣な声も届かず
だが波瑠殿の声に我に返り、主を護る様に侍る機巧大狐ちゃんから雷上動を受け取る
「波瑠殿…すまぬ」
一呼吸置き、静かに弓に矢を番え引き絞る
矢を防がせ攻撃の抑制を試みるぞ
合間に言葉も投げかけるぞ
「烈よ!真の敵を見失うでない!其方も妖剣士ならば愛刀を狂わせたモノの気配、感じ取れるじゃろう?
「愛する者達を奪った輩に屈してはならぬ!
「其方は誇り高きモノノフじゃ!今こそ意地を見せるのじゃ!
●武士への信じるものに
足を踏み入れた途端に肌に纏わりつくような、生臭い血の匂い。
数多に横たわる遺体の数々の、苦悶と悲しみに満ちた顔、顔、顔……目を覆いたくなる惨状という他ない殺戮の跡を前にして、妖狐の女は叫んだ。
「なんと惨い仕打ちじゃ!」
豊かな尾の体毛を文字通りの総毛を立たせ、怒りに打ち震える手で、稲宮・桐葉(戦狐巫女・f02156)は妖刀を抜き放った。
『お嬢、落ち着け。俺様の手助けがあっても奴は手に余るぜ』
意志を持つ刀の諫言すらもその耳には届かず、彼女の歩みは今にも修羅へ向かわんとしていた。
真面に遣り合えば手古摺るでは済まされない悪鬼羅刹、妖刀の声が幾ら語り掛けて来ようとも桐葉の動きは止まらず、紫瞳の瞳孔は戦場の惨状に収縮する。
「こんな……あんな、幼子まで……!」
徐々に、徐々に近づいていく修羅の存在と、血に塗れた鋸刃の刀。
引き裂かれた肉と肌の凄惨さと、遺体に残る涙跡に
そんな彼女を何処までも無慈悲に、修羅はその周囲に血塗られた鋸刃を再度、数多に生成すると、その内の数本を牽制として解き放つ。
据わった眼の桐葉がそのまま鋸刃に裂かれるか――そう思われた瞬間、空気を斬る音も鮮やかに、投げつけられた礫がそれらを撃ち落とす。
「桐葉殿」
傍らに立っていた同じく妖狐である少年、華舟・波瑠(華の嵐・f16124)の言葉は、水を打ったかのように鋭く桐葉を諫める。
「非道に憤るは後や。……一緒に彼奴を止めたらんと、彼奴も死者を悼めん」
【機先を制す】かのように、嗾けられる刀を次々と礫と投げ矢で落としながら彼は語る。
まだその時ではないと。
それに呼応するように、彼女を守るように侍る機巧大狐ちゃんなる四ツ脚の絡繰が滋籐弓を恭しく差し出した。
「波瑠殿……すまぬ」
「ええよ」
それを受け取りながら桐葉が謝罪の意を示せば、微笑みながらそれを波瑠は受け入れて。
無慈悲に向かってくる妖刀の複製を目掛け、桐葉は向き直ると矢を番え弦を引き絞り――刹那。
神の降りたが如く、数多に解き放たれた矢が神業というには生温く、無数に飛び交う鋸刃の複製と打ち合う。
数で一人一人が及ばぬも、解き放たれる矢と礫の巧みな迎撃は着実に、彼らに向かう鋸刃を落していく。
「烈よ!」
その最中、一際強く解き放たれる一矢が、金属の音も高らかに複製の刃を撃ち落とす音と共に、桐葉の叫びが修羅の身体を僅かに震わせた。
「真の敵を見失うでない!」
「我、賀……っ!」
「其方も妖剣士ならば愛刀を狂わせたモノの気配、感じ取れるじゃろう?」
本当に弟子達を、友を、その妻子を手に掛けさせたのは誰か――叫ぶ声に修羅の動きが僅かに止まり。
それに連動するように修羅の手繰る鋸刃が動きを止まると、桐葉はここだと言わんばかりにより強く弦を引き絞り、限界まで溜めた力での矢を放つ。
「今じゃ! 波瑠殿!」
その矢は複製の刀を一気に吹き飛ばし、それによって出来た道を一瞬で駆け抜けると、波瑠は薙刀をその手に修羅へと斬り込んだ。
投げつけられた言葉に硬直していた修羅も、流石に我に返り悪意が齎した衝動の儘に鋸刀を以て波瑠の刃を受け止めた。
「慟哭し、横たわる者らを真に弔えるのは、俺らやない。主をおいて他に居りゃあせん。その身で手を合わせらるか。その身で弔えるか」
その流れで二度、三度と、薙刀と鋸刀の金属音打ち合う音が響き渡る。
多腕の得物が周囲を飛び交う鋸刃の複製と共に一斉に波瑠の下へ突き出されれば、即座に薙刀を旋回させることでそれを弾き。
回す薙刀の流れも自然に、そのまま修羅の腹を彼は自然と薙いでいく。
「……出来ゃあせんやろ」
「唖唖唖っ!!」
――だから、その身を解き放て。妖刀の呪いを手放して、合わせられる掌を取り戻せと。波瑠の青き瞳は静かに、かつ鋭く修羅の眼を射抜き。
挙げられる咆哮が苦痛に依るものか、二人からの語り掛けが齎した、罪への苦悩か――いずれにせよ致命となり得る隙に。
おまけと言わんばかりに袖の下に隠された、至極小型の暗殺用洋弓の鏃が鈍く煌めいた。されど修羅も苦悶の呻きと共に血涙を流し、袖を目掛け刃を突き出さんとするが。
「愛する者達を奪った輩に屈してはならぬ! 烈よ、もう一度言う! 真の敵を見失うな!」
桐葉より強く、道場を揺るがす程に響き渡った声が、修羅の心をもより強く揺さぶり、その動きが止まる。
「――息の根止められりゃ、一矢でも事足りる。ほやろ?」
その瞬間に、波瑠の袖から飛び出た暗殺の矢が、修羅の胸を強かに射抜く――!
胸を抑え膝を着く修羅に対し、波瑠は静かに眼を向けると、胸に手を宛ててこう言った。
「……なぁ烈とやら。真に死者を想う誇りがあるなら。この華舟小次郎・春景、主の憑き物、落としたる」
――元服をせし一人の男子としての名と共に発せられた誓の言葉が、修羅の内に沈んでいた筈の武士の心を打ち。
さらに放たれる桐葉の、その武士の心に檄を入れる声が響く。
「其方は誇り高きモノノフじゃ! 今こそ意地を見せるのじゃ!」
修羅の胸に突き刺さったものは矢だけに非ず、何処までも熱く、誇り高き二人の“武士(もののふ)”の声であった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
御剣・刀也
なんてもまぁ、凄惨な場だな
とはいえ、まずはお前さんか
来いよ。俺も己を一振りの刀と鍛えてきた
その為に真剣勝負もしたし、その果てに命を奪ったこともある
そいつらの強さが鍛え上げた俺と言う刀を見せてやる
六道輪廻撃は第六感、見切り、残像で避けつつ、勇気で被弾を恐れず、ダッシュで懐に飛び込んで防御したら、防御ごと捨て身の一撃で斬り捨てる
後光を放たれたら刀で目を防御し、念動力で操られた飛び道具は武器受けで弾き、ダッシュで逸機に突破する
「お前の悔しさと怒り、それが伝わってくるよ。ぶつけるべき相手はいる。そいつにぶつけるためにも、戻ってこい!」
●真剣勝負
「なんともまぁ、凄惨な場だな」
決して真新しいとは言えぬとも、大切に使われてきたであろう道場の床は、今や惨たらしく濁った血液と飛び散った肉に満たされていた。
「とはいえ……まずは、お前さんか」
戦場の惨状――単純な死体の数々とそれを引き起こした悪意――に眉を潜めつつも、現れた大男、御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)は腰の刀を抜いた。
「唖唖、阿我、亞阿唖……」
それに対し、修羅は立ち上がると血塗られた刀を掲げ、刀也の下へと駆け出していく。
「――来いよ」
一振りの刀として鍛えてきた身、真剣勝負の果てに奪った命も多々在りて、そしてそれをも背負ってきた刃の“重み”を示すように。
煌めく刀の光が、獅子が牙を剥くかの如く修羅へと彼の闘志を強く示す。
修羅の鋸刃が禍々しく赤黒い軌跡を残して、刀也に迫る。それを真っ向から彼は受け止めると、修羅を真っ直ぐに見つめ。
「お前の悔しさと怒り、それが伝わってくるよ」
打ち付けられる刃の響きと、掌に伝わってくる衝撃の痛み。
単なる修羅の膂力と力量だけでない、修羅の耐え難き痛み伝わってくるかのように、受けた剣戟の衝撃と音が刀也の心を打つ。
文字通りの鎬を削りながら、向かい合う刀と刀のせめぎ合いを続ければ、修羅は刀也の刀を打ち払い。
続けて多腕に携えた得物で次々と連撃を繰り出していけば、刀也はそれを弾きつつ言葉を続けた。
「ぶつけるべき相手はいる」
この重く痺れるような悲しい連撃も、本当にぶつけるべきは自分じゃない筈だ。
真一文字に薙いだ刀を以てその連撃を力強く弾き飛ばすと、彼は修羅に檄を飛ばした。
「そいつにぶつけるためにも、戻ってこい!」
「鵜唖阿亜吾蛙亞ッ!!」
それは一瞬のことであったが、刀也の超人的な感覚は修羅の気の高まりを鋭敏に感じていた。
事実、修羅が叫びと共に鋸刃の妖刀を強く握り締め、血の染み込んだ床を勢いよく蹴り出すと、刀也との距離、一尺に満たぬ程に詰められて。
このまま、修羅の剣戟が刀也を一瞬で断ち切るか――そう思われた瞬間だった。
「この切っ先に」
修羅の剣戟は確かに刀也を斬り裂き、微塵も残さずに消し飛ばしていた。
ただし――【場に残した幻の影】のみを。
「一擲をなして」
修羅の剣戟が襲った瞬間、刀也は咄嗟に横へと床を蹴り躱していた。
次の瞬間には、その勢いで再び床を蹴り刀を振り上げながら修羅の懐へと、一気に肉薄すると。
「――乾坤を賭せん!!」
振り下ろされた天地に全てを注ぐかの如き力込められた刀は、相対する敵を屠る獅子の牙が如く。
修羅の身体を深く深く斬り裂き、その身を背中から壁へ叩き付けさせていた。
成功
🔵🔵🔴
月凪・ハルマ
◆POW
取り返しのつかない過ちを犯し、その上で生きていく
……それは、とても厳しくて辛い道になるだろう
それでも、踏みとどまってくれ。絶望のままに堕ちてはいけない
貴方がそのまま堕ちてしまえば、それは更なる悲劇に続く
【見切り】【残像】【第六感】で攻撃を躱しつつ、隙を見て
【雷光手榴弾】を【投擲】
けど、コイツで祓えるのはあくまで『悪意』だ
哀しみ、絶望。それは烈さん自身に克服してもらう他にない、が
妖刀が邪悪なものであるなら、確実にその影響を抑える効果はある
貴方だけじゃない。余所でも妖刀使いと呼ばれる人達が、
猟書家と呼ばれる連中のせいで同じ目に遭っている。だから
―そいつらを叩くために、貴方の力を貸して下さい
●闇、晴れる時
戦いが始まって如何ほどの時が過ぎ去っていったか。
交わした刃も、投げかけた言葉も確かに修羅の身と心に響き、着実に解放へと進ませて行っている筈だった。
「我、賀、嗚呼、亞亞亞亞亞ッ!!」
「……」
されど未だ囚われの身は悲しく刃を震わせる――帽子を目深に鍔で眼を隠しつつ、月凪・ハルマ(天津甕星・f05346)は修羅を憂う。
――例え解放されたとて、罪を背負い生きていくのは、死するよりも遥かに辛いものが待っているだろう。されど彼に言わずにはいられない。
「踏みとどまってくれ。絶望のままに堕ちてはいけない」
修羅はその言葉にも歩みを止めず、投げかけられた言葉の主に、朧気となってしまった思考のまま歩んでいく。
果て無い理性と悪意のせめぎ合いに蝕まれ、ぎこちなくなりつつも確かな敵意を向ける修羅に、ハルマは更に言葉を掛けた。
「貴方がそのまま堕ちてしまえば、それは更なる悲劇に続く」
「卯亜吾阿ッ!」
ハルマの呼びかけも虚しく、修羅は最後の力を振り絞ると言わんばかりに彼に迫っていく。
残された腕から立て続けに放たれる、圧倒的な速度と破壊力の、その圧に気圧されながらも、ハルマはその動きを正確に見切り、残した影を斬らせつつ躱していき。
修羅が刀を振り下ろしたその一瞬、ハルマは取り出したあるものを、勢いよく投げつけた。
「唖賀阿阿阿阿阿ッ!?」
放たれたそれが鈍く、文字通り修羅の胸を打った瞬間、戦場を眩い閃光が迸っていった。
大気を引き裂き耳をつんざくような、火花の苛烈な音が響き、数多にうねり弾ける閃光は雷であり、ハルマが放ったもの――手榴弾からのものだということを知る。
迸るそれに文字通り雷に打たれた衝撃で、修羅の身が幾度となく痙攣を続けた。
「あ、阿、ぐ……」
やがて閃光が収まり、眩きの晴れた中、膝を着いて蹲る修羅の呻き声が――ほんの極々僅かではあるが、今まで人間のそれとは思えなかった声が、徐々に人間と変わらぬそれに転じていく。
――雷が灼いたのは修羅の身ではなく、修羅の身と魂を犯していた邪悪な思念。
それは確実に妖刀に宿る悪意へ牙を届かせ、確かに修羅への影響を抑えていた。
「貴方だけじゃない。余所でも妖刀使いと呼ばれる人達が、猟書家と呼ばれる連中のせいで同じ目に遭っている。だから」
呆然とする修羅にハルマは言葉を紡ぐ。
祓ったのは悪意のみ、蓄積された損傷と言葉で、今こそ“烈”を立ち上がらせる為に。
「――そいつらを叩くために、貴方の力を貸して下さい」
「う、あぁっ……俺、は……俺は……」
その言葉に修羅は流す涙を完全に澄み切ったものと変えて。
これまでに積み重なった猟兵達の声に後押しされて、“烈”は確かに妖刀を手放すのであった。
成功
🔵🔵🔴
第2章 ボス戦
『西天煬龍』
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POW : 貪欲なる暴君
全身を【牡丹色の鱗】で覆い、自身の【美しいものを求める欲望の強さ】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : 蒼花逆鱗
全身を【青色の花弁】で覆い、自身が敵から受けた【ダメージ】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
WIZ : 極楽身毒
自身の【蒐集した美しいもの】を代償に、【恍惚に陥らせる猛毒】を籠めた一撃を放つ。自分にとって蒐集した美しいものを失う代償が大きい程、威力は上昇する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠神楽火・綺里枝」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●邪竜
妖刀が手より零れ落ち、膝を着いた修羅は元の一人の青年と戻っていた。
青い着流しは濁った血の、淀んだ赤色で染まり切り、その表情は未だ辛きが残る。
「お、俺は……何という、ことを……!」
彼こそが烈という妖剣士であり、鬼と化していた青年だった。
彼は自らの手を震えた様子で見つめながら、己が為してしまった殺戮の跡を怯えて見ていた。
だが彼に対して無情にも後悔の時間は許されず、響く声が彼の震えを強引に中断させた。
「ふぅむ、失敗か。さぞかし美しく強き鬼となるかと思ったが」
「お前が……」
――妖刀の中から現れたのは一匹の竜だった。
かつての刀狩にも近いように見えるが、緑の鱗に鮮やかな花を纏ったその竜の如き妖は、人間と戻った烈を見下ろすと、鼻を微かに鳴らしながら失望の声を吐いた。
「残念だ。期待しておったのだがね」
聞き覚えのある声に烈がそれを見上げれば、その竜の顔には心底失望した、と言わんばかりの表情が満ちる。
その竜こそが烈の刀に宿り、当人に望まぬ殺戮の業を背負わせ、鬼と化した悪意だった。
「お前が、全てを、壊した」
今にも血の涙を流しそうな勢いで睨みつける烈だが、それすらも竜は愉悦に大きく裂けた口を歪ませた。
「殺したのはお前自身。全てお前が、手に掛けたのだ。どうかね? 未熟な弟子に示した力は? 嘗ての友を斬り捨てた感触は? その友の妻や、子を裂いた悦びは? ん?」
――竜の嘲笑と声が響いた瞬間、烈と、猟兵達の中で何かが弾けた。
烈が転がっていた妖刀を手に取れば、彼の身からは修羅であった時に勝るとも劣らぬ覇気と、凄まじく濃密な――羽虫程度が迂闊に触れればそのまま昇天しかねぬ程の――殺気を解き放った。
「よもや生き永らえようと思わぬ! だが貴様は! 貴様だけは必ず殺す!」
飛び掛かる烈の動きは猟兵すら目で追うのがやっと。
命を削るかの如き勢いの斬り込みを竜は躱すと、どこまでも傲慢に手を叩きながら言い放った。
「やってみよ。やれるものならば。鬼としての美は諦めたが、代わりにお前の血で華咲かせてくれようか」
「例えこの命果てようと! それのみが我が贖罪!! 殺す! 必ず貴様を殺してやるぅぅぅ!!」
――純然たる悪意を撃ち滅ぼし、これ以上の悲劇を繰り返させないために。
哀しき妖剣士と、怒れる猟兵達と、邪悪なる竜との最後の戦いが始まった……。
黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流
ぶちのめす。
一つ深呼吸して真の姿に。
引き続き存在感を消し目立たない様に立ちまわる。というかそれを意識する事で、怒りで我を忘れないようにする。
この手合いに自分を無くしたらだめだ。
隙を見てUC炎陽で攻撃。敵の持つ「美しいもの」を燃やすって嫌がらせもあるな。
敵の攻撃は第六感で感知、見切りで全力回避。
回避しきれないものは本体で武器受けで受け流し、なるべく直接受けないようにする。
それでも喰らうものはやむを得ない、猛毒・激痛耐性で耐える。
強者と戦う事は時に楽しいけれど、でも殺しに喜びを感じる程俺は堕ちてない。
俺にとってそれは生きている喜びでもあるのだから。
●悲しみ焼き尽くす為に
感情の六秒という言葉があれど、実際にその六秒を経ても尚、湧き上がるこの感情というものは一時の物でないと分かる。
分かるからこそ、瑞樹は目を伏せてゆっくりと、未だ戦場に立ち込め生臭い血の匂いをも取り込むかのように大きく息を吸った。
「……」
肺や胃の腑を満たす血の、胸が焼け付けそうな鉄の匂いと、惨状を引き起こした元凶の所業。
伏せられていた眼が静かに上がれば、瑞樹の覚めるような青は、燃え盛るような鮮やかな橙金色へと染まっていた。
「ぶちのめす」
無意識の内に右手と左手、それぞれに携えた刀と短刀も握り締める手の握力の高まりより、僅かに震えを見せて。
ただ一言、発した言葉に無限の殺意を籠めると、瑞樹は戦場の風景に自然と溶け込むように、存在感を極力に消しながら駆け抜けていく。
だが竜の攻撃は容赦のなく、烈の妖刀を軽々と躱しながら、薙ぎ払った尻尾が瑞樹の寸前を通り過ぎる。
「ぶちのめす……と言った割には、逃げ回っているようだ。それで勝てるのかね?」
竜の嘲笑が響き、逃げる獣を躾けるかのような、長く伸びた尾が迫る。
打ち付けられた尾が床を砕こうとも、瑞樹は存在を潜め戦場を立ちまわり竜の甚振りを潜り抜けていく。
――不愉快だ。
片手間で名の通りの烈しい攻撃をいなしながら、伸ばした尾で煽るように責め立てる、竜の嘲笑も何もかも。
だからこそ瑞樹は己の存在感を極力消すように立ち振る舞う。
そうしなければ、溢れ出た激情は我を忘れさせ、竜の為すがままとなってしまうのだから。
激情に駆られての攻撃が来ないことに、やや不愉快そうに竜は花を鳴らすと、心底嫌そうに頭部を飾る花の一片を取ると。
「興の褪める――少々勿体無いが、彩を知るといい」
その花弁の一片を口元に持っていくと、竜は火を噴き口から放つ業火が瑞樹に迫る。
込められた猛毒の気配は、そのまま陶酔の内に意識を奪うだろう。
「…………」
確かに強敵だ。このまま焼かれれば陶酔のままに死ぬかもしれない。
強者と戦うことには確かに喜びを感じる。されど殺しに喜びを感じる程に堕ちてはいない――それは、生きている喜びでもあるのだから。
「緋き炎よ」
だからと、瑞樹は真っ直ぐに橙金色を向ける。
すれば解き放たれた金谷子神の錬鉄が鮮やかに燃え上がり、竜の放つ猛毒の炎を容易く呑み込み、そのまま竜に驚愕と苦悶の雄叫びをあげさせて。
盛る怒りの業火は、竜の信じる美をも焼き尽くすかのように踊っていった――
大成功
🔵🔵🔵
御剣・刀也
真の姿、いしはま絵師のJC参照
ふ、ふふふ。どこまでもふざけた奴だ
こいつの日常を、当たり前の幸せを奪って吐いた言葉がそれか
もういい。お前はこの世を去れ
貪欲なる暴君で、戦闘力を増強し、速度がましても、心は怒りで熱く、頭は沈着冷静に。第六感で軌道を感じとり、見切り、残像で避けつつ、勇気で失敗を恐れず、相手の真っ正面に立ち向かってきた相手を捨て身の一撃で斬り捨てる
「剣士の誇りを理解できない奴が刀に化ける。使い手の気持ちが分からないなら、お前は武器でも何でもない。さっさと消えろ!」
●激怒の刃、今、冷たく竜を断つ
――元来、笑うという顔というのは攻撃性を酷く露わにするものだという。
だとするならば、彼の――刀也の打ち震える体と零れる笑みもまた、その攻撃性を強く表しているのだろうか。
「ふ、ふふふ、ふふふ……」
「何かおかしいことでもあったのかね?」
そんな刀也に対して、竜は嘲笑を交えながら問いかけた。
――嗚呼、本当に、どこまでもふざけている。
今も激情に駆られ刃を繰り出している妖剣士の、かけがえのない日常を、当たり前の幸せを――弟子が居て、友が居て、友の幸福の証がいて。それを奪った。
「もういい」
――何かが音を立てて切れた音がした。
「お前は、この世を去れ」
次の瞬間、刀也の身が青白く燃え盛る炎のような揺らめきが纏う。
生命の埒外としての真の姿の、凄まじいまでの覇気と殺意を迸らせ、彼の刀にもまた激情を象徴するかのように揺らめきが走る。
だが竜は刀也を傲慢に見下すと口の端を釣り上げて。
「――ふぅん」
鼻を鳴らした竜の身体が、牡丹色の鮮やかな鱗に染まれば、纏わりついていた烈を振り払い刀也へと向かう。
鳴った鼻の音が届くより速く、今にもその爪が彼を引き裂かんとすれば、人間離れした勘は既に彼を動かしていて、竜の爪を甲高い音を立てながら横へ流す。
「剣士の誇りを理解できない奴が刀に化けるか」
「誇りも何も。彼が壊したのは全て、彼自身の剣と技ではないかね」
――確かにそうかもしれない。
だがそうさせたのは紛れもなく竜の悪意、にも関わらず心外だと言わんばかりの声は刀也の怒りを揺さぶる。
だが、だからこそ、振るわれる爪の鋭きも、尾の疾(はや)きも絶対零度の冷たく研ぎ澄まされたかのような思考のまま、軌道の悉くを見切り、紙一重で躱していく。
「使い手の気持ちが分からないなら、お前は武器でも何でもない」
「その通り、私は武器ではない――彼が、武器となるところだったのだからね?」
嘲るように言葉を紡ぎ、続け様に放たれる尾を、刀也は強かに見切り、刀を振り下ろして文字通り叩き落し。
一瞬、驚愕し痛みに顔を顰める竜の真正面から、捨て身の勢いで懐に潜り込むと。
「――さっさと消えろ!」
例えこの一撃で仕留めきれなかろうと、失敗を恐れずに。
この怒りを以て打ち倒せるならば、命すらも惜しみなく賭けの金子として注ぎ込むように。
驚愕する竜が音越えの速度を以て下がるよりも尚速く、盛大な袈裟懸けに下ろされた獅子の牙が如き強く獰猛な斬撃が。
強靭な牡丹色の鱗を硝子細工のように打ち砕き、その下の生来の鱗も、筋肉も全て紙の如く斬り裂いて――竜の身体に血飛沫を噴き上げさせながら、その身体を背中から地に叩きつけさせるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
四季乃・瑠璃
瑠璃「幾ら詭弁を並べたっておまえの罪は明白」
緋瑪「人に悪意を植えつけ、自分は安全なトコから馬鹿笑い。醜いったらないね」
瑠璃「性根が腐った竜なんてこんなもの。A&Wの帝竜達に比べれば小物も良いトコだよ」
UCで分身&強化
二人掛かりで凍結の魔力を込めた凍結ボム【属性攻撃、爆撃、早業、鎧砕き、鎧無視】で敵の動きを鈍らせ、瑠璃がK100による銃撃で援護。
緋瑪が機巧大鎌の機巧で一気に接近し、竜の首元や関節を狙って斬撃を繰り出し、そのままボムの追撃で離脱。
連携して攻撃を加えつつ、烈さんから気を逸らして隙を作り、致命の一撃のをアシスト。動揺した敵へ【限界突破】最大のジェノサイドノヴァを炸裂させて消し飛ばすよ!
●爆ぜる殺意の化身
倒れ伏していた竜を目掛け、烈の妖刀が迫る――だが竜は掌で受け止めながら立ち上がる。
「本当にしつこい。私の呪いに囚われた時点でその程度だろうに」
鋸刃が鱗を削る不愉快な痛みに顔を顰め、烈に負わせた罪を嘲笑うその態度に、彼は更に激怒し刀を薙ぎ。
それを掌で受け止めると、尾の一撃で烈を薙ぎ払わんとしたが――その時、竜の額を盛大に鉛弾が激しく打ち据えた。
次いで薙がれた鋸刃を後方へ跳躍して躱す竜だったが、それに更に追い縋るように解き放たれた榴弾が爆ぜた。
「幾ら詭弁を並べたっておまえの罪は明白」
「人に悪意を植えつけ、自分は安全なトコから馬鹿笑い。醜いったらないね」
榴弾から爆ぜる、蒼白き極低温の烈風吹き荒れ、竜の身体に霜を纏わりつかせ、その動きを封じ込めながら。
命を削ることも厭わぬ、激しき殺意が齎す莫大な力を迸らせた瑠璃と緋瑪が竜の腐り切った性根を斬り捨てた。
「性根が腐った竜なんてこんなもの。アックス&ウィザーズの帝竜達に比べれば小物も良いトコだよ」
――さぁ腐り切った竜を殺そう。
竜が抗うように牡丹色を纏うと同時、瑠璃の突き出した大型拳銃の神すら屠る銃弾が鱗の生成される傍から、其れを剥ぐかのように身を打ち据えて。
その間に大鎌を取り出し、仕込まれた炸薬を爆ぜさせ、その勢いを以て緋瑪が竜へと迫ると。
竜の爪を鎌の柄で打ち落としつつ、炸裂の勢いを乗せ、死神の如き閃きが走った。
次の瞬間には、竜の喉、関節、尾――ありとあらゆる強固な鱗の隙間から、斬り裂かれたが故の血が噴き出して。
続け様に放たれる瑠璃からの弾丸が竜の体勢を次々と崩しつつ、駄目押しとしての緋瑪の大鎌が振り下ろされ、竜の身を倒し。
「烈さん、今だよ!」
置き土産のように竜が立ち上がるその前に、接触式の爆弾を押し当てると、爆ぜる衝撃と風を以て緋瑪が後退しながら烈に声を張り上げた。
「感謝するぞ!」
爆発にのたうち回る竜を目掛け、後退する緋瑪と入れ替わるように烈は一気に刀を突き立てた。
鋸刃の肉を抉り裂く残酷な痛みが竜の腹を容赦なく抉り、暴れ回る尾を踏み付けて。
引き抜く際にも鋸の肉と血管を削る、耐え難い苦痛が竜に刻み付けられていき。
「「さぁ、他者を歪ませた醜い亡霊……おまえはここで殺す!」」
退いた烈と更にまた入れ替わるように投げ放たれた殺人姫達の、必殺の爆弾が。
命を振り絞った力の全てを込めた、眩き殲滅の名を冠する爆弾が呻く竜の腹部へと打ち付けられて。
そして立ち上るは、苛烈に眩き、触れる者全てを塵に帰すが如き熱量の柱――その中に竜の苦悶は掻き消され、その身もまた灼かれ往くのであった。
大成功
🔵🔵🔵
華舟・波瑠
【もふ堂】
アドリブ歓迎や!
華狐化神にて【威厳】ある神狐の姿に変化。桐葉殿が回復を担うなら、俺は口に咥えた薙刀で龍に斬りかかり撹乱。無視などさせてやらせんよ。
烈殿が会心の一撃を与えられる様、【鼓舞】し、【勇気】を与えつつ、【体勢を崩す】べく援護するわ。
烈殿。殺気が漏れ過ぎや、ほいでは太刀筋も見切られる。
…斬るに、殺るに、心は余分。武芸者の主なら判るやろ。
敵の渾身の一撃は回避行動を取りながら、【咄嗟の一撃】と【スナイパー】でその『美しいもの』を撃ち抜き、価値を減ずる事で対処。威力、下がるかや?
桐葉殿も狙わせなどさせんよ。
烈殿。恥を晒してでも生きられよ。あの者らに赦されるまで…生き切られよ。
稲宮・桐葉
【もふ堂】
アドリブ歓迎じゃ!
真の姿、肌に朱の紋様を宿し艶やかな九尾の妖狐と化すぞ
烈殿!よくぞ戻られた!
彼奴はわらわ達にも赦せぬ敵じゃ!共に戦うぞ!
怒りに呑まれてはならぬ。明鏡止水じゃ!
ムラサマ『桐ちゃん初っ端、怒りに我を忘れてた…』
や、やかましいっ!だまれ、鈍ら刀がっ!
烈殿・波瑠殿が存分に戦えるよう、わらわは《神楽鈴・聖朱紋》等で補助に徹するぞ
【祈り・浄化】負傷、毒の治療
【結界術・オーラ防御】身の護り
《機巧大狐》は敵を牽制じゃ
じゃがUC使用時は無防備かつ疲労するわらわを【かばう】のじゃ
烈殿、彼の者らを殺めたのはお主ではない
自分を責めてはならぬぞ
辛い時はわらわを訪ねるのじゃ
もふもふで癒すからの!
●双神狐舞
――色々と言いたいことはある。けれども今は、共に戦うべき者、捕らわれの修羅であった人間に妖狐は元気よく声を掛けた。
「烈殿! よくぞ戻られた!」
何よりも喜ぶべきは人として戻ってくれたこと。
まずはそれを祝うと、嘲笑い続ける竜を真っ直ぐに睨みつけた。
「彼奴はわらわ達にも赦せぬ敵じゃ! 共に戦うぞ!」
「……、ああ」
簡潔に烈は答え、強く強く握り締めた刀を以て殺意を剥き出しに、獰猛な獣のように竜へと斬りかかる。
其の時、何処か申し訳の無さそうな目の潤みを見送れば、桐葉は波瑠に真っ直ぐ向き直ると。
「行くぞ波瑠殿!」
「ああ……萌え出でて、燃え上がったろうやないの!」
次の瞬間、膨大な空気を焦がす覇気と霊力が溢れかえる。
其処に現れたのは、一つ、真白き肌に鮮やかな花の咲くような紋様を映し、国を傾けるが如き魔性と霊性を持つ九尾狐。
もう一つは豊穣神の眷属たる神々しい狐が、薙刀と機構を携えて厳かに立つ姿。
二つの大霊狐の並び立つ姿にも目もくれず、妖剣士は叫び竜へと刀を打ち下ろした。
「ふぅぅぅっ……!」
その刃は大気をも歪める。正に猟兵に比肩する一撃だが、竜はそれを難なく躱している。
余裕綽綽と言った様子で嘲笑いつつ、烈にその爪を突き立てんとした瞬間、その爪と火花を散らしながら盛大に打ち落としていた影が在った。
顔を歪めた竜の眼に映るは、薙刀を咥えた一匹の神の如き霊力を纏う狐――波瑠だった。
「烈殿。殺気が漏れすぎや、ほいでは太刀筋も見切られる」
「うぐっ……春景殿」
「くくっ、どうした? あの溢れん程の殺気……美しきが勿体無……」
薙刀を咥えつつ器用に喋る波瑠に烈が口を噤めば、間髪入れずに竜が煽らんとする。それを振り向き様の咥えた薙刀による打ち払いで制すると、改めて烈を真っ直ぐに見つめ。
「黙りや。……烈殿」
――斬るに、殺すに、漏れるほどの心は無用。武芸者の主なら判るやろ。
無言の問いかけと、竜よりの煽りへの怒り、その二つのせめぎ合いで身体を震わせる烈だったが。
「これより舞いしは生命の息吹を言祝ぐ舞い。八百万の神たちよ我が舞い奉納たてまつる。なにとぞ我らに幸をもたらし賜え」
――其の時、戦場に鈴の音が響き降り注いだ桜の花があった。
「怒りに呑まれてはならぬ。明鏡止水じゃ!」
柔らかな癒しを降り注がせた桐葉からの声もあり、烈は僅かに力を抜き竜に斬りかかる。今度の動きは力強さこそあれど、良き意味で抜けた力は技の生来の冴えを映す――その姿に頷く桐葉の耳に、妖刀からの呟きが入った。
『桐ちゃん初っ端、怒りに我を忘れてた……』
「や、喧しいっ! だまれ、鈍ら刀がっ!」
妖刀の突っ込みに僅かに焦りながらも、すぐ様に彼女は傾国の魔性が如き美しき大妖の威厳を顔に降ろし舞を続ける。
例え竜の爪が、尾が、戦場に竜のではない新鮮な血を飛び散らせようとも、澄み切った鈴の音色が一つなり白薄紅の花弁が降り注ぎ。
舞い踊る女の肌に輝く朱色の紋が、傷を、瘴気を――たちまち清め癒していく。
絶え間なく戦場に癒しを振り撒く九尾に苛立ったか、竜は己が身に咲く花を握り潰し毒の火炎を解き放とうとしたが。
花を潰すよりも早く、【ある種の皮肉】のように咄嗟に放たれた機構の水が、“竜”の“吐”く火を消すようにその花を散らさせて。
続け様に眼前を横切る鮮やかなる薙刀の刃が、竜の眼を寸前で掠めたじろがせた。
されど竜も即座に尾を伸ばし反撃を桐葉へと向けるが、彼女に向かった尾の刺突は絡繰仕掛けの鉄の狐が、その前脚で叩き落す。
「忌々しい……、!?」
竜の歯噛みの刹那、竜の身体がぐらつき、その身体が後方へ倒される。
何故ならば伸びきった尾を下から上へかち上げるように、跳躍した波瑠の薙刀が一閃し体勢を崩させ、その隙を機巧大狐がその重量を以て竜の上半身を殴打することで、竜の背を床へ叩き付けさせていたのだ。
「「今(や/じゃ)! 烈殿!!」」
重なる声に妖剣士は静かに頷き、改めて刀の柄を確かに握り。
溢れかえる殺意を二人の神獣が如き者達からの助言を胸に刻み、振り下ろす剣の重みはそのままに、振るわれる剣の閃きは水の流れるが如く滑らかに。
竜の立ち上がると同時、袈裟懸けに擦れ違った鋸の刃が、鱗を削り火花を散らしながら肉を抉り裂く、血の華を鮮やかに咲かす。
「……俺は」
「殺めたのはお主ではない。自分を責めてはならぬぞ」
刀に滴る血と、白目を剥いて苦悶に悶え一時気を失った竜を見遣り、烈が怯えたように身体を震わせる――恐らくは斬った時の感覚に殺戮を想起したか。
それを制するように、桐葉が柔らかく笑めば、凛とした引き締まった顔つきの波瑠が真っ直ぐに烈を見つめると、彼は言葉を続けた。
「恥を晒してでも生きられよ。あの者らに赦されるまで……生き切られよ」
「っ……ああ」
「辛い時はわらわを訪ねるのじゃ。もふもふで癒すからの!」
下唇を噛み締め、涙を流す烈へと何処か妖しく、されど朗らかに笑った九尾の体毛のざわめきに烈は表情を涙交じりの笑みと変え。
殺伐としたこの戦場へと、ほんの僅かにではあるが良き和みが齎される――舞い散る桜吹雪は、仄かな温もりを以て戦場を包んでいた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
月凪・ハルマ
外道の言葉を聞く必要も、問答をする意味も無い
――ただ、叩き潰す
◆SPD
早々に真の姿を開放
手裏剣の【投擲】で牽制しながら【忍び足】で【目立たない】様に
常に敵の死角へ移動
隙を見て【早業】で接近。旋棍の打撃を叩き込んだ後、
離脱して再度死角からの手裏剣投擲、の流れを繰り返す
敵からの攻撃は【見切り】【残像】【武器受け】【第六感】
【瞬間思考力】を駆使して躱す
そして当然、向こうはUCで自己強化してくるだろうから
確実に当たるタイミングを見計らい、牽制の手裏剣の中に
【潜刃・禍ッ牙】を紛れ込ませてそれを封じる
奴がしたことへの怒りは確かにある……が、
奴を絶つのは俺の役目じゃない
――出番です、烈さん。止めをよろしく
●志は貴方に
終幕は近きではあるが、油断のならぬ気配は何とするべきか。
発せられる愉悦に満ちた声は、場にいる誰もの空気を冷たく重たいものと変える、何処までも不快を煽る声だった。
「――おいおい、お開きにはまだ早いんじゃあないのかね?」
振り返れば、そこには竜がいた。流石に無傷ではないし十二分に損傷は重ねられてはいるが、充分に戦えると見える。
「臭い三文芝居で立ち直る姿など……ああ、醜い。何をしようと今更変えられるものであるまいに」
おお、酷い酷いと竜は抉れた身に不快感を示し、鼻を鳴らして烈と、彼を立ち上がらせんとした猟兵の奮闘を嘲笑う。
凍てついた空気にハルマは帽子に隠れた眼の熱量を下げ、微かな舌打ちを交えて竜を睨みつけた。
「……」
「何かね少年。その目は? ……不愉快だ」
――こいつは知らない。妖剣士がどれだけの罪に悔やんだか、どれだけの痛みを背負わされてしまったか。
もういい。こんな外道になど、問答も言葉を聞く必要もない。
弾かれたように帽子が外れれば、ハルマの髪の毛が一瞬にして伸び――身体を纏う衣は黒く転じ、伸びた髪の毛は真白く染まる。
夜叉というのは正に彼のことをいうのだろうか。
夜叉が黒衣より取り出した手裏剣が竜の足元に手早く突き刺されば、竜はそれを即座に横へ跳び躱し。
だがその躱した場所へ決められていたかのように躍り出ると、両手に構えた旋回棍の蒸気も高らかに、完全なる資格より竜を斜め後ろより殴打して。
竜が反撃に尾を薙げば、影に溶け込むかのように戦場へと紛れ手裏剣を解き放っていく。
「……不愉快と言った筈だ」
一撃離脱を繰り返し、存在を消しては戦場に紛れ、手裏剣と旋回棍の殴打を積み重ねる。
夜叉の地味であるが、だからこそ着実に死へ近づける痛みに竜は分かりやすく顔を歪めると、その気配に悍ましきを纏った。
「……」
――それを言うならば、外道の言葉を聞く価値もない。
竜の鱗が鮮やかな青へと染まろうとしたその刹那、ハルマは更に牽制として手裏剣を解き放つ。
重ねた損傷が多ければ多い程に力を発揮するが故、竜はその邪法の為に敢て受けてしまったが――それは自滅への一歩。
「ぬぐっ……!」
込められた鉄刃への毒は、邪法封じの毒――青き鱗を一瞬で元の緑に変えられ、怒りに顔を歪めた竜をハルマは見据える。
胸の奥底から湧き上がる怒り、傲慢極まりない竜の所業に抑えきれない怒りは確かにある――だが、それを絶つのは、怒りをぶつけるのは自分ではなくて。
「――出番です、烈さん。止めをよろしく」
その言葉に応えるように、今一度、止水の心を取り戻した妖剣士が振り上げた刀は。
竜の知覚とほぼ同時、袈裟掛けへと斬り下ろされ、その骨肉を抉り散らしていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
大威・景
「残念ながら俺は未熟者……技も少なくてなぁ……烈さん!お前が決めろ!」
刀やUC【サイコキネシス】で西天煬龍の攻撃を押し退けながら移動。もちろん攻撃もしますが、どちらかといえば烈を守りつつデコイや盾として行動します。
アドリブ・絡みは歓迎です。
●宙の森人、今武士へと
戦いは佳境も佳境、最後の一押しこそ難しきを極めるが世の常であるが、時間も数えるのすらも莫迦らしく思える膠着が続く。
傲慢極まりなき高等生物気取りの竜だったが、その実力は確かなようで、振るわれる爪の手応えは受けた刀に甲高く響き、その衝撃は柄を握る手を重たく痺れさす。
それでも彼には、景なる森人の武士には退却の選択はなく、勇敢に竜の攻めに抗い、その攻撃の悉くを弾き押し返していく。
幾度目か、爪と刀の火花が散った中に、竜は景の果敢なる剣を嘲笑った。
「抗うかね? ああ、無粋。何たる無粋。見苦しきを知るが良い」
その瞬間、竜の鱗が鮮やかな牡丹色へと染まっていく。
竜の基準からすれば景の刀技は一笑に伏すものかもしれないが――
「彼を、笑うな!」
かの志を笑えるものが何処に居ようか。
嘲笑する竜に怒るように、烈が妖刀を閃かせれば、竜は牡丹色に転じた鱗の強靭な尾で烈の攻撃を弾き。
そのまま追撃に、返す刀と言わんばかりの尾がうねり、烈を打ち据えんとする――が。
「抗うさ。俺の憧れたサムライエンパイアの刀使いを、あんなにしたことは許せねぇ!」
薙ぎ払われようとした尾を、即座に念動力の掌で勢いを留めると、刀による縦の打ち下ろしを以て竜の尾を強引に叩き落す。
気迫の籠った一撃に、流石に強靭な鱗を貫いた衝撃が尾の中を侵す――苦痛に不愉快さを隠さぬ竜は口の端を釣り上げて。
「ほう。それで仇を討つ気かね。その刀とやらで」
何度も打ち合った景の刀を見下しながら、竜は彼を煽り。
嘲りに心乱しそうになるも、冷静に景は――剣豪だけではなき、理力の騎士としての素養を以て、その内の力を高めつつ。
「けど残念ながら俺は未熟者……技も少なくてなぁ……」
飽く迄、刀の使い手としては独学に過ぎぬ身の上、誇れると自分では思えずに扱える技の種類も少ない。だがそれは彼が“役立たず”であることを意味しない。
「――だからそれで食い下がる!」
「ぬぅぅっ!」
少ない技ならば少ない技なりに、全力で喰らいつき、出来ることを行う。
全身から気流を噴き上げて飛び掛からんとした竜を目掛け、彼は掌を突き出すとそこから不可視の力場を作り出した。
ここぞという時に溜め込んだ理力の掌が、強張らせた景の掌と連動し、強靭な鎖となってその身体を縛り付ける。
「烈さん! お前が決めろ!」
「――感謝する。異郷の武士(もののふ)よ」
後は今、命を振り絞って強い力を出してくれる、そして本当に仇を討つべき相手に託すだけ。
武士の激励を受けた妖剣士は、強き念に囚われた竜の身体を、また深く深く抉り斬り裂いていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ハルア・ガーラント
●WIZ
「刺し違えても」
あなたのいのちはそんなに軽くない
武人ならいのちのその差を技術で補える領域へ到達してください
本当は烈さんの気持ち痛い程分かる
けど同意なんてしない
涙はすぐ拭い毅然とします
〈咎人の鎖〉を敵に絡ませつつ[マヒ攻撃]も行い隙を作ります
そこを烈さんに攻撃して貰えたら
敵の攻撃は殺意を[第六感]で察知し[オーラの障壁で防御]
敵が美しいものを使う動きを見せたらUC発動
毒が身体を蝕む以上の回復を
剣にのせるのはいのちじゃない、強い覚悟と意志
烈さんには生きて欲しい
呪いなんて逃げ出す位に名のある妖剣士となって
彼らのことを忘れないで、伝えて
いつか出逢うその時に「ごめんなさい」できたらって思うんです
●終れぬ懺悔の終いと始り
戦いの本当に本当の終幕が近きに寄れば、竜は頭を抱えわざとらしく溜息を大きく吐いた。
その様相に歯噛みする妖剣士は名の通り苛烈に斬りかかる――受け止める手すらも、鋸刃が削る苦痛に顔を顰め、竜は吐き捨てる。
「いい加減にしつこい。こうまで醜く見苦しいか」
「黙れ! 貴様を滅せるならば、この命――」
例え捨ててでもと叫ぼうとした烈を、厳かな天の御使いの声が制した。
「あなたのいのちはそんなに軽くない」
――痛いほど、彼の気持ちはわかる。彼の背を押してあげることは容易い。
だけれども、押すのは安易な同意の言葉でも態度でもなく。
「武人なら、いのちのその差を、技術で補える領域へ到達してください」
「……あ、ああ……」
振るわれるハルアの鎖が竜の繰り出す爪と尾と打ち合い、仕込まれた麻痺の力が動きを鈍麻させ。
妖剣士が攻める隙を作り出していけば、竜は歯噛みしながら花を握り潰した。
「鬱陶しい。本当に本当に鬱陶しい。忌々しき醜き猟兵共が」
怒る竜が毒を孕んだ炎を解き放つ。
それをハルアの障壁が高熱を防ぎ散らしても、孕む瘴気は烈の身体を蝕む――それでも、命を削りかねない身を震わせ、踏み込んでいくが。
「――!」
何とも形容のしがたい、されど不快とは思えぬ天使の歌声が響く。
成し遂げる仇討は、この懺悔を終わりにする力は、いのちを削る力じゃない。刀に乗せるものは強い意志と覚悟だから。
身体を蝕む以上の浄化と癒しが、歌声の韻律と大気の揺らぎが、妖剣士の背を強く押す。
「離せぇっ! 離さぬかぁっ!!」
負わされた懺悔にすら苦しむ者の背を押すのならば、負わせた罪を自覚せずにのうのうと嗤う真の咎人には裁きの鎖となる。
罪を罪と悔やまず、さらなる業を振り撒かんとしている竜を、黄金の鎖が縛り付け、響く歌声が輝きを増す度に、金属の打ち合う音が次第に静かなるものとなっていく。
時間にしてほんの数瞬、だがその数瞬にて力を奪われ、それでも尚敵愾心を燃やす竜の眼に映った者は、静かに刃を振り上げた妖剣士の姿であり。
「――もう終わりにしよう」
袈裟懸け一閃、降ろされた刃が竜の身体を今度こそ斬り伏せた。
やがて戦いは終わり、消えゆく竜の身体を見守りながら烈は刀を鞘へと納め、その様子をハルアは真っ直ぐと見つめた。
「……」
「生きてください。忘れてはいけません」
――非情と分かるその願いに胸は痛むけれど、その痛みに天使は泣いてはいけない。だからこそ彼女は射抜くほどに鋭く見つめる。
「いつか、『ごめんなさい』が出来るその日まで」
いつの日かこのような【悪意】ですらも逃げ出す妖剣士となって、失われた命と出逢うことができて。その時に彼自身の言葉で、彼らに【それ】を伝えることが出来る、その日まで。
響いた真摯なる言葉に、膝を着いた妖剣士の顔には、何処までも澄み切った清流が伝っていた。
●哀しみの花よいつか無くなれと祈りて
失われたものは、戦いが終わったとしても決して戻りはしない。
刻まれてしまった傷は、決してなかったことにもできはしない。
だからこそ彼らは悼む。
失われてしまった命を、深く傷つけられてしまった妖剣士の心の痛みを。
戦いは終わり、亡霊の消滅を見送った猟兵と烈は、失われてしまった命の埋葬を終え、墓前に手を合わせた。
得物が得物なだけあって、その肌に刻まれた傷跡は惨たらしく、その表情は驚愕と悲しみに満ちていた。
その一つ一つを丁寧に弔いを終えると、
同様の事件は周知とされている以上、烈に厳しい沙汰が下されることはないだろうが、彼の心は彼自身を決して許すことはできないだろう。
もちろん、失われてしまった弟子達や烈の友、友のその妻子などの親類縁者共々、やり場のない怒りを抱え悲しみを抱えていくのかもしれない。
そしてそれを――悪意に操られたとはいえ、消せぬ罪を刻まれてしまった烈自身も、何よりもその悲しみを抱えながら。
それでも彼は生きていくのだろう。
戦の最中に猟兵から何度も言われた、潰えるな、生きて抗えという言葉と、償いの念を抱えながら。
烈がこれからどのような道を選ぶか、罪を償いながらも歩み続けるか、はたまた――。
それでも未来にせめて、彼が許され、心安らかに居られる道を願わずにいられない。
見送った背の平穏を願う者、どうにもならない現実に怒る者、それを招いた刀狩の意志という毒に怒る者。
様々な思いを抱えながら、哀しき鬼をまた一つ祓った猟兵達は、侍帝国を後にするのだった……。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2021年01月31日
宿敵
『闇刃阿修羅』
を撃破!
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