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こどもたちよ、未来を護れ

#アックス&ウィザーズ #猟書家の侵攻 #猟書家 #眠りの森の魔女ターリア #クレリック #言葉の神シャルムーン

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 分厚い本を抱えたひとが、私に語りかけてきたのは覚えている。
 ――本。言葉の羅列。
 それは私達の仕えるべき存在「言葉の神シャルムーン」を連想させた。双眸を隠した彼女はこの世ならざる存在に見え、これは神の託宣に違いないと私は彼女の言葉を待った。
 あどけなさの残る口元が、淀みなく言葉を発する。
「……え?」
 思わず聞き返してしまった私に、彼女は微かに首を傾げた。
「伝わりにくい箇所がありましたか?」
 薔薇の箔押しをきらめかせて、彼女が分厚い本を紐解く。それと同時に、私の意識は暗黒へと沈んでいった。
 微かに残る意識が、彼女の最後の言葉を聞き取った。
「『群竜大陸で死んで欲しい』と申し上げたのです。シャルムーンのクレリックよ」


「……ゆめ?」
 へんなゆめを見たなあ、と思いながら、わたしは体をおこしました。そして、あれっ、と思いました。
 いつもねているベッドじゃなくて、ごつごつした岩の上にねていたのです。体がいたくて、知らないばしょで、パパもママもいなくて、かなしくなりました。
 これはゆめのつづきなのかな、とかんがえて、わたしはさっきのゆめを思い出そうとしましたが、うまくいきません。なんとか思い出せたのは、
「『ぐんりゅうたいりく』」
 という、きいたことのない言葉だけでした。たいりくというのはばしょの名前だって、パパが言っていたからしっています。
「ここが『ぐんりゅうたいりく』なのかな?」
 きょろきょろとあたりを見回すわたしは、なないろのふわふわをもったふしぎな羊さんを見つけてちかづくのでした――。


「少し急ぐぞ。戦闘準備を整えながら聞いて欲しい」
 肩越しに振り返り、猟兵達が集まったのを確認すると、リリー・リャナンシー(ましろ・f20368)はすぐに視線を戻す。彼女自身も転送の手筈を進め乍ら、此度の概要を話し出す。
「『眠りの森の魔女ターリア』と名乗る猟書家の存在が確認された。彼女は大天使ブラキエルの目論む『天上界への到達』のために事件を起こす。アックス&ウィザーズの数多の神々の一柱『言葉の神シャルムーン』を信仰しているクレリックを浚い、殺害を企てているようだ」
 何故それが天上界の到達に繋がるのかといえば、シャルムーンのクレリックが持つ特殊な素質が理由だという。

「彼らは命尽きるときに強力な「破邪の言葉」を放つ事ができるとされている。それが天上界への道筋になると、ターリアは信じているようだな」
 かつての戦役にて、帝竜ヴァルギリオスは天上界に至る道を封印し、解くことなく死んだ。鍵は『群竜大陸のどこかにある』ということしかわからない。故に破邪の言葉を群竜大陸で解き放つ事により、道筋を探ろうとしているようだ。
「予知が一歩及ばず、クレリックが一人、群竜大陸に浚われてしまった。しかし今から向かえば殺害だけは阻止できる。……だが、少し問題があってな」
 常日頃、表情を変える事のない少女が珍しく口ごもる。

「クレリックがいるのは群竜大陸の『時蜘蛛の峡谷』と呼ばれる場所だ。あそこには『時蜘蛛(ときぐも)』と呼ばれるモンスターが生息していてな。猟書家の配下というわけではないから彼ら自体が襲って来る事はないのだが……峡谷中に張り巡らされた糸に触れると時を奪われ、幼児化してしまう」
 その状態で猟書家を相手どらなければならないのだという。
「これを警戒してか、ターリアは自ら出向くのではなく、配下のオブリビオンをクレリックに差し向けている。生命力を喰らう虹色の獏だ。これは精霊のようなもので年齢の概念が薄いようだな、時蜘蛛の影響をほとんど受けていない」
 こちらのみが幼児化した状態で、かつ同じく幼児化したクレリックを庇いながら、獏の群れを討伐しなければならない。『こども』には過酷な戦場となるだろう。
「獏たちを撥ね退ければ、しびれを切らしたターリアが自ら戦場に現れるだろう。彼女が幼児化の影響をどれだけ受けるかはわからないが、過度な期待はしない方が賢明だろうな」
 彼女の携えた書が、糸の影響を完全に遮断してしまう可能性もある。

「準備完了だ。危険な戦いではあるが、破邪の言葉なるものをあちらに掴まれるわけにはいかない。心してかかれよ」
 仮面の猟兵は静かにそう告げて、猟兵達を見送るのだった。


ion
●お世話になっております。ionです。
 このシナリオは常時プレイングを募集&普段よりもリプレイ返却ペースを早めて行う予定です。
 一章だけ、二章だけなど、お気軽にご参加くださいませ。
 ですが次の満月までの完結は難しいと思うので、そこはご了承いただければ幸いです。
(間に合いそうで、かつ二倍押し返しに必要そうだったら、完結させる可能性はあります)

●幼児化について
 精神・肉体共に個人差があっても大丈夫ですが、これを逃れる事は出来ません。
 子供時代が存在しない猟兵さんも幼児化します。元から幼児の猟兵さんも、ちょぴっとだけ幼くなります。五歳~六歳くらいになることが多いようです。
 基本的には記憶や実戦経験なども退行してしまいますが、猟兵は埒外の存在なので「なんとなく覚えてる」事もあると思います。その辺はふんわりお好きになさってください。
 シナリオクリアで戻ります。

●第一章
 幼児化したクレリックの元に、獏の群れが襲い掛かってきます。
 普段はそこまで強敵ではないですが、こちらは幼児化してますし、あちらはわらわらいます。

●第二章
 猟書家『眠りの森の魔女ターリア』との戦闘です。
 多分なんか都合のいい力で幼児化を逃れてきやがります。つよいです。

●クレリックについて
 五歳くらいの女の子です。名前はエイミー。
 今は幼児化で記憶を失っていますが、元は敬虔なクレリックです。
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第1章 集団戦 『虹色雲の獏羊』

POW   :    夢たっぷりでふわふわな毛
戦闘中に食べた【夢と生命力】の量と質に応じて【毛皮が光り輝き、攻撃速度が上昇することで】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    眠りに誘う七色の光
【相手を眠らせ、夢と生命力を吸収する光】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    ふわふわ浮かぶ夢見る雲
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 にじいろの羊さんはみんな、おやすみの時にかぶるようなぼうしをかぶって、目をとじていました。
「ねてるのかな?」
 わたしは羊さんたちをおこさないように、ふわふわの毛をそーっとさわろうとしました。
「きゃっ」
 すると、羊さんはとつぜん、ぴょーんって大きくジャンプしてお空にとびあがりました。そしてにじいろの毛を、ぴかぴかと光らせました。
「あれ……おかしいな……」
 それを見ているうち、わたしはなんだか体がぐったりしてきてしまいました。目がぐるぐるして、いっぴきの羊さんがなんびきにも見えてしまいます。
(「ひつじが……いっぴき……にひき……」)
 おやすみにさそわれるように、わたしは目をとじました。
 あたまの中で、だれかが「ねちゃだめよ」とさけんでいたけど、なんでだめなのか、おもいだせませんでした。
紫崎・宗田
幼児化は厄介だが…こちとらガキの頃から喧嘩してっからな
羊如きに負ける気はしねぇぜ?

【幼児化】
行動と思考回路が単純化
怪力と炎使いは健在

オレより上を飛ぶんじゃねぇよムカつくな
で、なんでこいつは寝てんだよめんどくせー

色んな事に文句言いつつエイミーはしっかり後ろに【庇い】
【怪力】で軽々と持ち上げた★破殲に炎の【属性攻撃】を宿して

おりてこねーなら落とすからな!

【なぎ払い】で発生させた【衝撃波】に炎を乗せた鎌鼬で遠距離攻撃
直撃した羊には燃焼の【継続ダメージ】と
他の羊にも引火する【範囲攻撃】

羊肉はうまいってきいたぞ
相手が悪かったな

【指定UC】で狼の脚力を利用し飛びつき
火炎と噛みつきで着実に減らしてやる




「あれ? えーっと……」
 何でここにいるんだっけか、とこどもの紫崎・宗田(孤高の獣・f03527)は目をぱちくりさせた。確かそう、何かをぶちのめさなければならなかった筈だったのだが。
 それはなんだっけか、と考えるちっちゃな宗田の顔に影が落ちる。見上げれば七色獏羊たちがもふもふと空を飛び交っていた。
「オレより上を飛ぶんじゃねぇよ、ムカつくな」
 そういえば気になる事がもうひとつ。同じ年頃の子どもが地面に転がってすうすう寝息を立てている。
「なんでこいつは呑気に寝てんだよめんどくせー……」
 悪態づきつつも、しっかり子どもを庇うように羊たちに立ちはだかる宗田である。ちょっぴり背丈が縮んでも、口の悪さと根の優しさは変わらないようだ。それに――
「おい、羊ども! お前らがやったんだろ!? おりてこい!」
 大人の宗田が持ってもなお巨大な戦斧『破殲』を、幼児の細腕でぶんぶん振り回して羊たちを威嚇する。振り上げる度に焔が舞い上がり、空往く獏羊たちを照らしていた。怪力と炎を操る能力も健在のようだ。
「おりてこねーなら……落とすからな!」
 ひときわ力強く大地を踏みしめ、漆黒斧を薙ぎ払う。捲き起こった衝撃波が鎌鼬となり、焔と共に羊たちへと襲い掛かった。
 燃やされ、吹き飛ばされた羊が他の羊にぶつかり、引火する。彼らのふわふわの体型と、数だけはやたら多い事を活かした合理的な戦術である――
「ガキだからって舐めんなよ、みーんなまとめてブン殴ってやる」
 ――と、いうわけではないらしい。ちっちゃな宗田は血気盛んで単純な、男の子らしい男の子の様子。けれど羅刹の怪力に黒狼の焔が合わされば、見事燃え尽きた羊たちはばたばたと地面に落ちてくる。
「羊肉はうまいってきいたぞ」
 火も通せたしラッキー、なんて、育ち盛りの宗田はご機嫌である。
 更にまだ空に居残っている気にくわない連中には、炎狼に変異させた脚で飛びつき、火炎のみならず噛みつき攻撃までお見舞いしてやる。
「ふふん、相手が悪かったな」
 何せ反骨心溢れすぎて故郷まで追われた宗田だ。お子さま時代だって、喧嘩くらいお手の物。羊ごときにやられるわけがなかったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ビスマス・テルマール
体が縮じんでるっ!?ここは何処ですかっ!?コロニーの中では

あっ!あんな所にひつじっぽいのが……女の子を

先生も居ないんじゃ
わたしがやるしか

●POW
先生の不思議なちから
なめろうの味と力の感覚
……確か、だいちのちから

わたしも何か出来る気がする
一か八か、真似してみよう
確かこんな感じ?

せいせいかいしっ!(UC)ラムにくのなめろうビームモフモフ(ウール)っ!

ぽよんぽよん弾みながら
『第六感』に頼りモフモフ『ジャンプ』モフモフ前面『ダッシュ』で

バリア(オーラ防御)みたいなの
はって

ひつじみたいなのと
襲われてる子の前にわりこみますっ!

行ったり来たりで
たいあたり、たいあたりで『2回攻撃』

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎




「体が……縮んでるっ!?」
 と、ビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)が声を上げて――それからあれっ、と辺りを見回した。
「ここは何処ですかっ!? コロニーの中では……」
 既に南国宇宙船で過ごしていた頃に記憶までもが退行している事実に、ちっちゃなビスマスは気づけない。見慣れない景色に戸惑い巡らせた視線が、羊たちと眠る少女を捉えた。
「あっ! あんな所にひつじっぽいのが……」
 よくはわからないけれど、あのまま放っておいたら女の子が危ない気がする。けれどここはコロニー船ではない。頼もしい先生は、ここにはいない。
「……わたしがやるしか」
 ぎゅっ、とおててを握りしめて、ビスマスは必死で思い出す。
 先生の不思議なちから。なめろうの味と、力の感覚。
「たしか、だいちのちから」
 呟けば、小さなビスマスの胸に温かいものが宿るようだった。
 自分にも出来る気がする、と確信めいたものがあった。
「いちかばちか、まねしてみよう。ええと……『せいせいかいしっ!』」


 今まさに少女の生命力を奪い取ろうとしていた羊たちは、突然飛来してきた謎の存在にそれを阻まれる事になる。
「ええと……とおりすがりのなめろうヒーローが相手ですっ!」
 羊たちに負けず劣らずもふもふの『それ』が、しゃべった。
 よく見れば、それはもふもふに身を包み、ぽよぽよとゴムボールみたいに辺りを跳ねまわる子どもビスマスだった。
 縦横無尽に飛び回ってはふわふわの羊たちを弾き飛ばし、蹴散らしていく。羊たちも負けじと毛皮をぴかぴかさせて応戦するが、その攻撃はビスマスのオーラ防御に尽く弾かれてしまう。
「すごい、バリアみたいなのができてる……!」
 思わず声を上ずらせてしまうビスマス。バリアといえば古今東西、こどものロマンともいえる。それがほんとに出来ちゃうなんて!
「これがあれば、どーんってぶつかって大丈夫そうですねっ。たいあたり、たいあたりですっ!」
 思いっきり反動をつけて、敵の群れへと突っ込んでいくビスマス。
 雲のような羊たちは、あっという間に飛ばされていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

睦月・伊久
本当に子供の……というか、子鹿のような身体に……精神は問題ないようですが(しっかり体には斑がついている

岩場のような不安定な場所は得意分野なので、エイミーさんを狙う敵に向かって【ダッシュ】し、勢いで跳躍して何体かを【踏みつけ】ます(【悪路走破】併用

普段より身体が小さめなのでそこまでの数を巻き込めないとは思いますが……傷がつけば問題ありません。【連鎖する呪い】をかけます

多数いるとの事でしたのでジャンプした時に玉突き事故が起きたりするような「不慮の事故」を起こしやすいと思いまして

UC発動後は巻き込まないように【怪力】でエイミーさんを抱えるか背中に乗せて逃げます。寝ずにしっかり掴まっていてくださいね




「本当に子供の……というか、子鹿のような身体に……」
 ヒトの上半身を捻って見下ろす身体。睦月・伊久(残火・f30168)の鹿を思わせる下半身には、普段はない鹿の子斑までついている。そういえばやけに頭が軽いのも、伊久の立派な枝角が小さくなってしまっているからだろうか。ゆるくかぶりを振れば、絡みつく執着の糸がつられて揺れる感覚がした。変わらぬそれに溜息のひとつも零したくはなったが、それはつまり、伊久の記憶や人格に変化が起きていない事の証明ともいえるだろう。
「精神は問題ないようですね。それが救いでしょうか」
「うぅ……ん」
 エイミーがちいさく唸って薄く目を開いた。すかさず小鹿の伊久が駆け寄って手を差し伸べる。
「あれ、わたし……」
「大丈夫ですか、エイミーさん」
「……なんで、わたしの名前をしってるの?」
「話は後です。乗って下さい」
 子供の腕でうんしょっと頑張ってエイミーを引き上げ、その背に乗せる。逃がさないとばかりに羊獏たちが二人を取り囲んだ。
「あの羊さんたち、なんかヘンなの」
 まだ状況の掴めていない様子のエイミーだが、先程眠らされ生命力を奪い取られた時を思い出したのかぶるっと身震いをした。
「大丈夫です。僕につかまっていて下さい」
 かつて守り神として祀られた獣は穏やかに告げる。ちっちゃな小鹿に子供の聲で云われても頼りないだろうか、と肩をすくめかけたが、怯えるエイミーは縋るように伊久にしがみついた。
 ならばその想いに報いようと、細い四肢が力強く大地を踏みしめた。伊久の周りにたなびく霞の如き霊障が濃さを増し、ふわりと羊獏たちを包み込んでいく。
 振り払うように羊たちは短い四肢をばたばたさせて、勢いをつけた空中ジャンプで伊久に襲い掛かろうとするけれど。
「めえっ」
「めえ!?」
 真正面から二体がぶつかり合って、雲のように軽い身体はあっという間に弾き飛ばされる。弾き飛ばされた先でまた他の羊にぶつかって、それがまた――さながらビリヤード台の上で鮮やかに踊らされる球のように、あっちへこっちへとくるくる飛ばされ、目を回して地面に落ちていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
※アドリブ、連携歓迎

わたくし、またこどもになっちゃった……
せんそうのときから、これで4かいめだわ
ちっちゃくなったって、おいのりとうたのちからはまけないもん!

にじいろのひつじさん……かわいいけど、ひとをころすのはいけないの!
クレリックさんにひどいことしちゃだめー!
わたくしたちがまもらなきゃ!

このままじゃあのひつじさんがお空へにげちゃう!
【主よ、哀れみ給え】
かみさまにおいのりをささげて
これいじょうあのにじいろひつじさんがわるいことをしないようにって

にじいろのひかりにまけないように
わたくしもせいなるひかりでてらします
「破魔」のちからをこめた「浄化」のまほうで
わるいゆめはもうおしまい!




 ちいちゃい背丈に、まっしろな羽をぱたぱたさせて。
「わたくし、またこどもになっちゃった……」
 これで4かいめだわ、と呟くヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)の姿は、天使の歌声を持つ歌姫と呼ばれ大切に育てられてきた子ども時代そのものだけれども。
「ちっちゃくなったって、おいのりとうたのちからはまけないもん!」
 がんばらなきゃ、とおててを握る姿は、戦場翔ける白鳥そのもの。大きな青い眸が見据えるのは猟兵達の活躍によって目を醒ましたエイミーと、尚も彼女に襲い掛かる羊たちの群れ。
「にじいろのひつじさん……かわいいけど、ひとをころすのはいけないの!」
 クレリックさんにひどいことしちゃだめー! とぱたぱた駆け寄るヘルガだけれど、新たな危険を察知した獏羊たちはふよふよと空中に散らばってしまう。
「たすけてくれてありがとう」
 エイミーがヘルガの背に隠れながら、ぺこりと頭を下げる。どういたしまして、ときちんと答えるヘルガだけれど、空高く跳びあがってしまった羊たちを見上げて困ったように眉を下げる。
「あれじゃあ、わたくしではおいつけません」
 縦横無尽に空を駆けまわるには、雛鳥はあまりに幼い。けれどこのままでは、羊たちがまたあの不思議な光で生命力を奪いに来るだろう。
「どうしよう……」
「あわてないで。かみさまにおいのりをささげましょう」
 これいじょう、あのにじいろひつじさんがわるいことをしないように、って。
 小さな手をしっかり組んで紡がれる懸命な祈り。エイミーも見よう見まねでヘルガに続く。
「てんにましますわれらがかみよ、そのみこころのもと、われらにかごを」
「どうか、われわれをみちびき、おまもりください。ことばのかみ、シャルムーンよ……あれっ?」
 自然と流れ出た詠唱に、エイミー自身が驚いたように目をぱちくりさせていた。
 二人の想いに応えるように、ヘルガの天使の翼が光り輝く。虹色の光にも負けないくらい眩い輝きが、神に背いた羊たちに懺悔の時を齎す。
「めえ!?」
「め……」
 目を眩まされ動けぬ羊たちだが、悔い改める気は微塵もないようだ。聖なる光の束縛から逃れようと必死に身を捩っている。神の慈悲に背いた彼らに降り注ぐのは終焉。
「『破魔』のちからをこめた『浄化』のまほうで、わるいゆめをおしまいにするのです!」
 光はいっそう強くきらめき、羊たちを消し去っていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ペペル・トーン
ねぇ、そこのあなた?ねぇ、おきて
わたし、1人はさみしいの。いっしょに来て?
…お名まえ、きいてもいい?

うふふ、こんなに広いばしょで2人ぼっちね
小さなお魚なわたしたちが、大きなお魚に見つかってはあぶないわ
きょうはモコモコみたいだけど、あれもきっとよくないものよ
だから、ね?こわくないように手をつないで?
そっと、そっと音をたてないように

だいじょうぶ
手をつないでいるなら、見えなくなってしまうのよ?
それにね、よく見て
およぐモコモコがとびあがるなら、おちてくるばしょをみてよけたらいいの
少しつかれたってへいきよ、あなただってつかれているじゃない

ずっとこうしてかくれておはなししていたきがするわ
あれは、ええと…




 ねぇ、とちいさなエイミーを呼ぶ聲。
「ねぇ、そこのあなた? ねぇ、おきて」
 猟兵達とはぐれたエイミーは、いつの間にかまた眠りに落ちていたらしい。それを呼び覚ますのは、翠に白を溶かした、クリームソーダみたいな髪色の女の子――ちいさなペペル・トーン(融解クリームソーダ・f26758)。
「わたし、一人はさみしいの。いっしょに来て?」
 こくこくと頷くエイミーに、ペペルはふわりと微笑んだ。泡が漂うように。
「……お名まえ、きいてもいい?」
「エイミーよ」
「エイミーちゃん。すてきなお名まえ」
 ペペルがエイミーの顔を覗き込むように顔を傾けると、長い前髪の隙間から、片方だけハイビスカスみたいに鮮やかに赤い眸が見えた。
「うふふ、こんなに広いばしょで二人ぼっちね。小さなお魚なわたしたちが、大きなお魚に見つかってはあぶないわ」
「うん。でもここでは……」
 エイミーが空を見上げて、不安そうに身体を寄せる。
「そうね、きょうはモコモコみたいだけど、あれもきっとよくないものよ」
 空にぷかぷか浮かぶ七色の獏羊たち。見た目は絵本の中の不思議な生き物みたいだけれど、エイミーの命を狙う魔女の手先。
 すぐに仕掛けてこないのは、新たにやってきたペペルを警戒しているのだろうか。
「こわくないの?」
「一人きりだったらこわいけど、今はエイミーちゃんがいるもの」
 ――こわくないように、手をつないで?
 差し伸ばされた手を、そうっと音を立てないように取れば。
「見えなくなってしまうのよ。手をつないでいるあいだは」
 エイミーが目をまん丸にして空を見上げる。先程までぷかぷか漂っているだけだった羊たちがせわしない様子であちこち飛び回っていた。明らかに動揺している。獲物がいきなり消え失せてしまったことに。
「……ほんとに?」
「ほんとよ。見つからないようにっちゃい声でおしゃべりしてればだいじょうぶ」
 それにモコモコがとびあがったりおっこちたりしてきても、よーくみてよけたらいいの、とペペルは笑った。
「少しつかれたってへいきよ、あなただってつかれているじゃない」
「すごい。まほうつかいみたい」
 闇雲にしかけてくる羊たちの様子を警戒しつつ、難を逃れたエイミーの顔には笑顔が浮かぶ。微笑み返しつつもペペルは思案するのだった。
「ずっとこうしてかくれておはなししていたきがするわ」
 あれは、ええと――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

スキアファール・イリャルギ
あー……
以前この地で服と包帯に溺れたなー……
……今度は溺れないといいんですけど


(ダメでした――……!)
(布の海に溺れる5歳児くらいに縮んだ影人間)
(あゝ無情――!)

ぷはっ。
あれ……ここどこ……?
あ、ひつじだ。もふもふしてる……さわりたい……(うずうず)

(見かねた猫の使い魔ラトナが影から出てきて彼に猫パンチ!)
わぷっ!? へ? ねこ……?
あ、きみすごいもふもふしてるね……(なでなで)
(「あれ敵だぞ」と言いたげににゃあにゃあ鳴いてるラトナ)
てき……?
えぇと、てきだと、たおすべき?(きょろきょろ)

あ、みてみて、ここにつよそうなぶきがあったよ(※自分の拡声器)
これでおおごえだして(UC)なぐる――!




「あー……」
 色のない膚に、くっきり浮かぶ隈。元より健康的という言葉とは縁遠いスキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)の貌が、今日はいつも以上に浮かない表情をしている。
「以前この地で服と包帯に溺れたなー……今度は溺れないといいんですけど」
 とはいえ、この地を訪れたからには『幼児化』の洗礼を受けないわけにはいかない。意を決して踏みだした一歩。
「……あ」
 縮む身体。怪奇人間の長身を包む黒包帯と衣装たちは、今日もその変化についてきてはくれなかった。
 世は無常。フラグは回収されるものであったらしい。


「……ぷはっ」
 赤と黒の海を掻き分けて、ちいさなスキアファールが――この姿の頃にはきっと、別の名前があったのだろうけれども――身体を起こす。
「あれ……ここどこ……?」
 きょろきょろと辺りを見回しながら立ち上がろうとして、自分が服を着ていない事に気づく。ひとまず赤いパーカーを羽織って、ちいさな子どもは歩き出す。
「あ、ひつじだ」
 ふわふわ漂う七色羊。無害そうな愛らしい見た目で、ちょいちょいと手招きをしている。
「もふもふ……さわりたい」
 ふらふらと吸い寄せられるように近寄る子どもに、どこからともなく現れた猫が容赦ない猫パンチをお見舞い!
「わぷっ!? へ、ねこ……?」
 薄金の目をしたその猫が、ぴょんっと着地して子どもを見上げる。
「あ、きみすごいもふもふしてるね……」
 羊のふわふわとはまた違った長毛猫のもふもふを心置きなく堪能する子ども。猫はいやがることなく撫でられっぱなしだ。
「よくなついてるね。誰かのペットかな」
「にゃあ」
 それもそのはず。影に住み着くその猫は、スキアファールの使い魔ラトナなのだから。
「……ん? 何か言いたいの?」
「にゃあにゃあ」
「てき……? あのひつじたちが?」
「にゃ」
 何だかんだ意思疎通できる一人と一匹。子どもはびっくりして辺りをきょろきょろ。
「えぇと、てきだと、たおすべき? なにか、ぶきが……あっ!」
 つよそうなぶきがあったよ! と子どもがうんしょうんしょ持ち上げたのは、小振りながらもごっつい見た目の蒸気機関式拡声器。
「こうかな?」
 小さな体から振り絞った聲は、何十倍、何百倍にも拡張されて羊たちの耳を打つ。
 周辺の岩肌さえも罅割れるほどの衝撃波。
 それでも即死を免れた丈夫な羊には。
「ええいっ!」
 ごつい形状を活かした脳天フルスイングが、容赦なく襲い掛かるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鬼桐・相馬
●WIZ
手袋を外した左掌へ文字を書いておく
「くれりっくをまもれ」と
〈獄卒の金砕棒〉を顕現させてから峡谷へ進むよ
槍は幼児姿じゃ使い辛いかもしれない

幼児になってもある程度の[戦闘知識]は残っているだろう
金砕棒の棘に獏達の毛を絡ませくっつけながら[怪力を駆使した範囲攻撃]を
敵の攻撃は生まれ持った[野生の勘と視力]で動きを捉え[武器受け]する

手の「くれりっく」という単語を幼児の俺が理解するかは分からないが
複数のモノに襲われている存在を放ってはおかないだろうと信じたい
彼女への攻撃は優先的に武器で受けて[かばう]よ

だいじょうぶ、おれのうしろにかくれて

飛び上がる敵にはUCを発動、炎を取り付かせ地へ落とそう




 棘だらけの凶悪な金棒を、ちいさな子どもが軽々と持ち歩いている。
「『くれりっくをまもれ』……くれりっくってだれだろう?」
 呟くのはちっちゃな羅刹、鬼桐・相馬(一角鬼・f23529)。いつの間にかここにいて、いつの間にか片方だけ手袋が外れていて、その左掌に文字が書いてあった。何故か見覚えのある文字を頼りに、子どもは護るべき誰かを探していたのだった。
「あっ!」
 黄金色の目が見開かれる。峡谷の不安定な足場の上で、同じくらいの女の子が、羊の群れに襲われていた。
 すくみあがる女の子へと、ぴょんぴょん跳ねてぶつかろうとする羊たち。真正面から体当たりでもされようものなら、谷間へとまっさかさまに落ちてしまいそうだ。
 愛らしささえ感じられる羊たちの無慈悲な猛攻に、女の子は少しでも恐怖から逃れようとぎゅっと目をつぶった。――だが訪れるはずの衝撃と痛みがいつまでも来なくて、おそるおそる目を開ける。
「だいじょうぶ?」
 羊と自信の間に立ちはだかる男の子が、肩越しに言葉を投げかけてくる。身を挺して相馬が女の子を庇っていたのだった。頑丈な獄卒の金砕棒で、羊の体当たりをしっかりと受け止めて。
 えいっと気合を込めてブン回す。棘に毛糸が絡んでしまった獏羊は哀れ振り回され、撥ね飛ばされて転がっていった。
「きみがくれりっく?」
「ええと……そうみたい」
 まだ確信は持てない様子だが、女の子はそう云って頷いた。それだけで相馬にとっては十分だった――否、たとえ彼女が護るべき存在では無かったとしても、窮地に陥った少女を相馬は見棄てない。それはいくら背が縮もうと変わらない。
 護れというメッセージと、子供でも扱える武器。それさえあれば自分は目的を果たせるであろうという大人の相馬の読みが、見事に的中したかたちだった。
「だいじょうぶ、おれのうしろにかくれて」
 ちいさなナイトのようにエイミーを背に庇いながら、相馬は羊の群れを睨みつける。
「おおぜいでだれかをいじめるような奴は、おれがゆるさない」
 応戦するように羊たちが跳びあがる。撹乱するように複雑な動きを見せる群れを、金の双眸がじっと追いかけて。
 記憶はなくとも、白に金混ざる天獄の炎はその手に宿る。高度を落とし襲い掛かって来る羊へと憑りつき、ひときわ明るい炎の華をあちこちで舞い上がらせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

※口調がたどたどしくなるものの、思考は略変化なし
幼い宵に思わず表情を緩めながらも重そうな杖に大丈夫かと支える様に手を伸ばそう
…まあ俺もなんだ、この小さな手では人の事は言えぬのだが

戦闘時は何だ、振り回すよりも振り回されるようなメイスを諦めればソードブレイカーを両手で持ち行動
エイミーや宵に向かう敵を【穢れの影】で絡め取り『怪力』をのせソードブレイカーにて切りつけて行こうと思う
しょう、俺のうしろから、でるなよ…?
ジャンプする敵には警戒しつつ『盾受け』にて宵やエイミーを『かば』えればと思うが…なにより身が小さいからな
共に跳ねてしまうやもしれん
…くっ…やはりもっとたんれんがひつようだな…


逢坂・宵
ザッフィーロ(f06826)と
幼年化による影響は舌足らずな口調のみ、意識はほぼ変わらず

背丈が縮みその分重く感じる杖を持ち直しつつも
かれに支えられればありがとうございますと笑みを向け
いつものメイスが大きく見えるほどに幼いかれもかわいらしいです

エイミーさんは「オーラ防御」を付与した「結界」で守りつつ
彼女のそばに立ちしっかり結界で守れるように
ザッフィーロを援護をしながら「衝撃波」で敵を「吹き飛ばし」てゆきます
ええ、きみからはなれませんよ

ジャンプする敵には【ハイ・グラビティ】で身動きを封じていきます
敵と一緒にぽんっと跳ねるかれにはこっそり和んでしまうかも
いまカメラに撮れないのが、ざんねんですね……




 夢喰らう獏羊も数を減らし、逃げ回るエイミーがほっと息をつきかけたころ。
「きゃっ」
 岩陰から身を躍らせた羊がエイミーへと突進する。七色の身体が少女にぶつかる直前、見えない何かに弾き飛ばされた。
「おけがはありませんか?」
 結界を張った子ども、逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)が言葉をかける。頷くエイミーに歩み寄ろうとして、携えた星の杖の大きさに少しばかりよろめいた。
「しょう、大丈夫か」
 小さくなった宵を支えたのは、同じく小さくなったザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)。ありがとうございます、と宵は笑いかける。
「……まあ俺もなんだ、この小さな手で人の事は言えぬのだが」
 宵の肩に添えた手が我ながら頼りなく見えて、そう零してしまうザッフィーロ。
「ふふ。いつものメイスが大きく見えて、かわいらしいですよ」
 二人とも、身体がちっちゃくなって口調は少しばかりたどたどしくなっているけれど、精神は元の大人のまま。となれば眼前の彼の子供時代を堪能する余裕もあるというもので。
 もっともこれが初めてというわけではないのだけれど、大切な人の愛らしい姿は何度見ても頬が緩んでしまうから。
「……と、今はそれどころではない、か」
「ええ」
 どちらからともなく、エイミーを庇うように前に出る。羊たちは猟兵の活躍によって数を減らしており、今ではほんの数頭ほど。
「うちもらしのないようにしましょう」
「ああ」
 杖を構え直す宵に倣うように、ザッフィーロもメイスを振り上げ……ようと、したけれど。
「……きびしいな」
 ただでさえ長物の上、鞭のようにも扱える代物である。普段ならば遠近問わず扱いやすいそれも、子どもの腕には文字通り手に余る。振り回すというよりも振り回されてしまいそうだ、とため息こぼし、代わりに抜いたのは最後の所有者から賜ったソードブレイカー。
「しょう、俺のうしろから、でるなよ……?」
「ええ、きみからはなれませんよ」
 そしてしっかりと結界を維持できるように、宵はエイミーの傍に立つ。
 空中を緩やかに浮遊し、時に蹴り上げ勢いつけてぶつかってくる羊たち。
「たあっ」
 ザッフィーロの刃が閃き、七色の羽毛に深紅の筋を刻み込んだ。宵帝の杖の杖が光り輝き、傷を負った羊を衝撃波で弾き飛ばす。
 仲間をやられた獏羊が低く唸り、猛然と突っかかってきた。狙いは、最後の一撃を放った宵のほう。
「――! させん!」
 次の羊に斬りかかろうとしていたザッフィーロが踵を返し、羊の軌道へ身を躍らせる。普段ならば体格に優れたザッフィーロは難なくそれを受け止められる筈だった、が。
(「だめだ、うけとめきれない……!」)
 しかし宵を傷付けさせるわけにはいかないと、ちっちゃな手で必死に羊へしがみつく。羊は目障りな子どもを振り払おうとぶんぶんと身体を揺すり、でたらめに飛び回る。
「ザッフィーロ……!」
 慌てて術を練る宵だが、その実思わず零れそうになる笑みを堪えるのに必死だった。ザッフィーロと羊にしてみれば決死の攻防戦だが、宵から見ればちいさくなったかわいいかれが、もこもこの羊といっしょにぽんぽん跳ねているようにしか見えなかったのだから。
(「……いまカメラに撮れないのが、ざんねんですね……」)
 とは、思いつつ。
「――うごかないで、もらえますか」
 杖先を確りと地面に固定し、放たれる不可視の衝撃波。星元来の力――“重力”が、浮遊する羊たちを地面に縛り付ける。
「た、たすかった」
 虹色もこもこからよっこいしょと這い出してきたザッフィーロが、ソードブレイカーを振るい羊たちを屠っていく。
 鮮やかな剣戟は大人時代と比べても見劣りしないほどであったが、全てを斃しきっても尚、ザッフィーロの顔は浮かなかった。
「……あれしきにおくれをとるとは。やはりもっとたんれんがひつようだな」
 生真面目な彼にしてみれば、宵の前で醜態を晒してしまったことがなによりも堪えていたのだけれども。
「ふふ。とてもかっこうよかったですよ、ザッフィーロ」
 小さい身体を一生懸命張ったちいさなナイトの姿を、宵はしっかりと目に焼き付けていたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『眠りの森の魔女ターリア』

POW   :    ようこそ眠りの森へ
戦場全体に、【「眠りの森」 】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
SPD   :    醒めざる夢の茨
【棺の中から伸びる「眠りの茨」 】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    忘却の眠り
【記憶を一時的に奪う呪詛 】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【過去の記憶】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠リミティア・スカイクラッドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「……彼らはやられてしまいましたか」
 ちいさな少女の聲。ヒツジの消えた宙には、いつのまにか代わりにヒツギが浮かんでいた。
 茨で満ちた棺に身を預けるのは、本抱く魔女ターリア。ただし棺は魔女に対して幾分大きい。――というよりも。
「わたしが縮んでいるのでしょうか。やはり直接戦闘は分が悪いですね」
 思案するようにちいさな魔女は呟いた。薔薇の馨が強くなる。
「あれ、また、さっきみたいに……」
 呟いたエイミーの言葉はそこで途切れた。かくんと眠りに誘われる彼女を、傍に居た猟兵が助け起こす。そして猟兵達も気づく。魔女の茨から漂う馨が、抗い難い眠気を齎すことに。

「私は『眠りの森の魔女ターリア』。破邪の言葉持つシャルムーンのクレリックに、そして我々の目的を阻む者達に、醒めぬ眠りを与えましょう」

===========================
 プレイングは常時募集しております。
 集計に間に合いそうなので、29日16時までの完結を目指します。タイミングによっては不採用が出る場合がありますが、ご了承くださいませ。
 なるべくMSページにて「このくらいのタイミングで締め切ります」というのを早めに提示できればと思っています。
===========================
紫崎・宗田
流石にアレは噛み千切れねぇな
歯が先にやられそうだ

むむ、と眉を顰め
眠気は【気合い】と
普段なら外さない★角隠しのバンダナを口元に巻き
一時的に馨を緩和

全部焼き尽くしてやるよ

炎の【属性攻撃】を宿した武器で
再度【薙ぎ払い】の【衝撃波】を利用し遠距離攻撃を仕掛けつつ
★龍形態のクオン(炎龍~貫~)に
飛行しながらの火炎ブレスで直接攻撃を仕掛けさせる

追い詰められる程【闘争心】を掻き立てられるのは性分故か

出口が一つならお前だって立場は同じだろ
クオンに敵の傍で鳴き声をあげさせ
【聞き耳】と【第六感】で位置把握
【指定UC】の【怪力、重量攻撃】で狙い撃ち

…見えん
クオン、後たのむ
あのよくわかんねー女も(龍使いの荒いチビっこ


ビスマス・テルマール
わたしが居る限り……眠い

『マスターしっかりしロ……随分縮んでいるガ、一体如何シタ?』

●POW
いつの間に変な喋る針鼠杖と友だちに
なったのか知りませんが

眠ったらダメな状況……何とか

エイミーさんを『オーラ防御&呪詛耐性&かばう』しつつ早口言葉(高速詠唱)でクロガさん(UC)で『範囲攻撃』の『鎧無視攻撃』で眠い森(相手のUC)の木々を『第六感』に頼り『大食い』

発見後
敵にUC返し

懐にあったドライバー……もしかして
(普段の鎧装姿になり)

術者側は眠くならないなら
わたしも迷路に入り
防御に『地形の利用』もしつつ
敵に『砲撃』の『一斉発射』


※クロガさんは帝竜戦役⑩魔法の杖(雅瑠璃MS)参照
※アドリブ掛け合い大歓迎




「わたしが居る限り……!」
 せいいっぱい大きな眸をあけて、聲をあげるビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)だけれども。
 茨がしゅるしゅると伸びていく。噎せ返るほどの馨が、彼女を眠りに誘う。視界がぼやけて、意識を手放しかけた時、何か硬いものがビスマスの肩を叩いた。
『マスターしっかりしロ……随分縮んでいるガ、一体如何シタ?』
「ん、……んー?」
 重たい瞼を何とかこじ開けて聲のする方を見ると、サングラスをかけた針鼠――が先端にあしらわれた杖が、必死にこちらへと語りかけてきていた。
「ハリネズミさん? わたしを知ってるの?」
『忘れテしまったのカ? オレだ、クロガだ』
「クロガさん……」
 口にすると、何やら懐かしい心地のする名前だった。こんな風に共に戦った事が、以前もあったような。
「流石にアレは噛み千切れねぇな。歯が先にやられそうだ」
 むむ、と眉を顰め茨の迷宮を睨む紫崎・宗田(孤高の獣・f03527)が、普段なら人前で外す事のない額のバンダナを解く。羅刹の象徴である尖角が解放され、一時的に馨を緩和する。
「完全に防げるわけじゃねぇか……残るは気合でどうにかするぜ」
 子ども特有のやわらかほっぺをぱんぱんっと両手で叩き、眠さにいつも以上に鋭くなった目つきで辺りを見回した。出口よりも先に見つけたのは、やや離れたところで転がっている女の子の姿。
「エイミーさん!」
「あの女、また寝てやがる」
 宗田が駆け寄って、その頬をぺちぺちと叩いてみるけれど、エイミーは微かに眉を寄せただけでまたすやすやと夢の中。自分にしたのと同じくらい力を込めて叩けば起きるかも知れないけれど、それはちょっぴり気が引ける。
「……まったく」
 しょうがねえな、とぶつぶつ文句を云いながら、力自慢の羅刹は子どもをうんしょっとおぶるのだった。
「やさしいですね」
「出口もわかんねぇのに置いてくわけにもいかねぇだろ」
 万一に備えてエイミーに防御の障壁を施すビスマスに、宗田は照れ隠しのようにぼやきながら。
「それより、俺らも長居は危なそうだぜ」
「どうしましょう……?」
『オレを頼れヨ、マスター』
「クロガさんを?」
 いつの間にか手に飛び込んできた杖。それと同時に、ビスマスは彼の力を思い出す。
「クロガさん、あのユーベルコードを――喰らえますか?」
『問題ナイ』
 任せておけ、と黒炎獣のオーラが杖から迸り、焼き払っていく。
「そいつも炎使いか。こりゃあいい」
 続くように宗田が炎宿した巨大な武器を振り、衝撃波と共に広範囲に炎を飛ばしていく。力自慢の羅刹にさえ喰らいきれないのなら、全て焼き尽くしてしまえばいい。眠りいざなう迷宮に閉じ込められたこの状況でも、ちいさな羅刹は力任せの戦法を変える事はなかった。むしろ追いつめられたこの状況こそ、生粋の戦闘民族である羅刹の血を滾らせるというもの。
「そうだろ、クオン?」
 漆黒の巨大槍に聲をかければ、赤い眸を爛々と輝かせる黒龍へと姿を変える。空へと舞い上がったクオンが火炎のブレスを撒き散らせば、茨は最早迷宮の役割を果たす事さえできない。
 龍がひときわ高く吼え、身を翻した。
「そっちにいるんだな?」
 宗田とビスマスがクオンを追えば、茨の『出口』に佇む小さな魔女。
「もう逃がしませんよ」
 ビスマスが掲げた杖の先端から再び黒炎が舞い上がる。今度は焼き払う力ではなく、クロガが『喰らった』力の開放。黒炎の中から噴出されるのは、迷宮を模った茨そのもの。燃やし尽くした分がそのまま顕現し、魔女を閉じ込める。
「逆にたどって、魔女さんを追いかけようかと思ってましたけど」
 圧縮された茨は迷宮というよりも檻のよう。これならば探すまでもないようだ、とビスマスは頷いた。
 ふと懐に何かをしまい込んでいた事に気づき、取り出してみる。見覚えのあるドライバーを装着すれば、ビスマスの身体がたちまち全身鎧装に包まれる。
 ありったけの砲撃を轟かせるビスマス。轟く掃射音と眩い光に宗田が目を細める。エイミーを横たわらせ、ニヤリと笑った。
「ここまで追い詰めりゃ、もうこれを使っちまっても大丈夫だな」
 得物に宿る焔の力が、宗田自身の力が、格好の燃料を得たように強く激しく燃え盛る。燃料――即ち、宗田自身の『視力』。
 戦場において欠かせない筈のものを、宗田はいとも簡単に投げ打った。
 問題ない。クオンが吼えている。吐くブレスの熱も、燃やされる女の気配も、膚と耳で感じ取れる。それに何よりも、敵を求めてやまない羅刹の角が。
 それらを追えば、視界のひとつ潰されたところで狙いを違える道理はない。猛然と叩き込んだ一撃が、砲撃と炎にまみれた魔女の身体に、深々と傷を刻み込んだ。
「クオンにそこの女、後は頼んだぜ」
 あとあの、よくわかんねー女のことも、と。
「はい、かならず」
 力強く頷くビスマスに、視界を失ったちびっこは白い歯を見せ、命運を託すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
おおきなひつぎに入った女の人
初めて見たはずなのに、なんだかこわいかんじがする……
あれ? だんだんねむくなって……

大切な思い出が消えていく
お父さまやお母さま、大切な友だち、
そしてなにより、大好きなヴォルフのことが……!

ずっと前にも同じようなこわい思いをしたことがあった
頭の中のきおくを消されて、のぞかれて、いじくられて……
いやだ……もうやめて!!

わたくしの思い出、大切なたからもの
それをうばうなんて、こんなひどいことぜったいにゆるさない!

せいいっぱい勇気を出して歌う【怒りの日】
世界を滅ぼすこわい悪魔を神罰の光で焼きつくす歌
どんなにこわくても……ぜったいに負けない!
エイミーさんやみんなをまもるために!




「――あの人……」
 小さな歌姫、ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)が仰ぎ見るのは、大きな棺に入った魔女。
「初めて見たはずなのに、なんだかこわいかんじがする……」
 たたかわなくちゃ、とヘルガの心が告げている。けれど身体がついていかない。
「あ、れ……? だんだん、ねむくなって……」
 眩む意識の中。黒布で覆われ見えない筈の魔女の眸が、ヘルガの裡を覗き込んでいるようなビジョンが浮かぶ。
 ――みないで。
 叫んだつもりだった。けれど聲にはならなかった。
 お父さまやお母さま、大切な友だち。思い出の中の大切な人達のことも。
 故郷を滅ぼされ、自身も追われていた時、助けてくれた大好きなヴォルフの事も。
 覗かれて、奪われていく。
(「ああ、だめ、いやだ……!」)
 以前もこんなことがあった。頭の中を覗かれて、消されて、――醜く改変されて。
(「ち、がう、それは、わたくしじゃ、ない」)

「――て、もうやめて!!!」

 硝子が砕けるような音とともに、ヘルガの意識は覚醒した。


「目覚めてしまったのですね」
 冷ややかな聲。棺の魔女が、ちいさな雛鳥を嘲るように見下ろしていた。
「わたくしの思い出、大切なたからもの。それをうばうなんて、こんなひどいことぜったいにゆるさない!」
「そうですか」
 しゅるしゅると茨が蠢いて、ヘルガを再び眠りへといざなおうとする。
「ご安心ください。あなたがたの次に『彼』も連れて来てさしあげましょう。醒めない眠りへ――ひとりが、怖いのでしょう?」
 目元を隠し、表情が掴めぬ魔女が淡々と告げる。ヘルガの脳裡に再び心を覗き込む眸が見えて、恐怖に身がすくみそうになるけれど。
「いいえ」
 唇を噛んで踏みとどまる。
「わたくしが怖いのは、わたくしがひとりぼっちになることよりも、ヴォルフをひとりぼっちにさせてしまうことです」
 お前がいなくなったらどうすればいい、と頬をしとどに濡らしたひと。
 もう二度と、彼を悲しませない。
「そして、エイミーさんやみんなをまもるために! わたくしは、ぜったいに負けない!」
 震える喉を奮い立たせて、紡ぐ神罰の歌。
 裁きの光は雨のように降り注ぎ、白鳥と狼を、人々の夢を踏み躙る悪魔を滅していくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ペペル・トーン
あの子はわるい子ね、いけないわ

どうしようと迷う時に内から聞こえるのは
瓶にしまったあの子達の声
…ああ、そうね
あの子たちが何とかするわ
きて 小さなおともだち
同じくらいでかわいい?
でも、わたしのほうが少し大きいわ

ね、きいて?
あの子は、わたしをきずつけるわ
わたしたちをはなればなれにしてしまうの
それでいい?
ふふ、そうよね
だったら、あの子とあそんできて
とびきりのおはなしをつくってあげましょ?
あまった子たちは、わたしとエイミーちゃんをまもって

呪詛が当たって、忘れてしまっても
思い出は今も重なるものだから
まけたりしないで
わたしたちはずっといっしょよ

ふふ、おはなしのさいしょはかなしいものよ
だからこんなにつめたいの


鬼桐・相馬
●WIZ
さっきのふわもこのおやぶんは、おまえか

UCを発動し黒鼬を頭にのせ戦う
エイミーには眠りと覚醒を繰り返して貰うかな
その度に俺達の装備品は強化されていく筈だ
敵の攻撃は[視力・野性の勘]で茨や呪詛を捉え[武器受けや呪詛耐性]で凌いでいきたい

忘却の眠り……俺、ある時点から前の記憶がないんだ
エイミーの事は左掌を見ればまた思い出すだろうがそれ以外はあまり効果がないんじゃないかと思う

強化陣が高効果になったら[ダッシュ]で敵へ接近、金砕棒を振りかぶる
敵の棺桶の後ろ側を[怪力]で殴りつけ大地へ棺桶諸共倒し、挟み込んで密閉
俺の炎を茨に延焼させ燻してみるよ

わるいことをすればじぶんにかえってくる
いんがおうほうだ




「あの子はわるい子ね、いけないわ」
 夢を奪う悪い羊さんよりも、もっと明確な悪意。
 どうしよう、と迷うペペル・トーン(融解クリームソーダ・f26758)の裡から、囁き声がきこえてくる。しゅわしゅわ弾ける泡みたいな言葉たちは、瓶にしまったあの子たち。
「……ああ、そうね。あの子たちがなんとかするわ」
 きて、と解き放つのは、ペペルのちいさなお友だち。ふわふわ泡のフラスコチャイルドたち。
「え? なあに? 同じくらいでかわいい?」
 いつもはペペルよりもうんと幼く見える彼女たちだけど、ペペルがちっちゃくなった今では、なんだか随分よく似ている。
「でも、わたしのほうが少し大きいわ」
 次々溢れてくるみんなに埋もれがちになりながら、ペペルは胸を張るのだった。
「さっきのふわもこのおやぶんは、おまえか」
 魔女を睨み据えるちっちゃな鬼桐・相馬(一角鬼・f23529)の頭の上には、蜃気楼のような炎宿した黒鼬が鎮座している。普段は体格に優れた相馬に乗っかっている事もありとても小さい印象の不知火鼬が、今日は二回りほど大きく見えた。
 勿論これはただのマスコットキャラというわけではなく、相馬を幻術から護ってくれる冥府産の優れもの。そして鼬の張る強化陣は相馬だけではなく、戦場を共にする猟兵、そしてエイミーにも作用する。
「ん、んー……」
 重たい眼をこすったエイミーが、新たに訪れた魔女を見上げて身を竦めた。
「あんぜんなところまでさがっていろ」
 相馬の言葉に、エイミーはこくこく頷いて岩陰に身を潜める。
 おそらく、と相馬は推測する。不知火鼬がいるとはいえ、猟兵ではない彼女が魔女の眠りを完全に打ち破る事は出来ないだろう。猟兵と魔女が交戦している間、浅い眠りと覚醒を繰り返すような状態になるのではないか。
 それも相馬の狙いのひとつであった。仲間が窮地に陥るたびに強化陣は輝き、相馬達の力はより一層研ぎ澄まされる。
「あとは、くれりっくが本当にピンチになる前に、あいつをたおすだけだ」


「ね、きいて?」
 ちいさなペペルよりもちょっぴりだけちいさい子たちが、ペペルの言葉に耳を傾ける。
「あの子は、わたしをきずつけるわ。わたしたちをはなればなれにしてしまうの」
 ――それでいい?
 魔女を視線で指して問えば、ふわふわの子たちはぶんぶんと必死で首を振る。
「ふふ、そうよね。だったら、あの子とあそんできて」
 放たれた子たちは、瓦礫でできた幽霊船に乗り込んで。カトラリーや食器やおもちゃでめいめい武装し、それぞれのいろを爛々と輝かせて、眠りの魔女へと飛び掛かる。
「あまった子たちは、わたしとエイミーちゃんをまもって」
 ペペルと、物陰でうつらうつらしているエイミーには、優しく寄り添う。
 呪詛が当たって、ぱちんと頭の中の記憶が弾けてしまっても。
「大丈夫。だいじょうぶよ、思い出は今も重なるものだから」
 ペペルの言葉は、忘れないで、ではなかった。
「まけたりしないで。わたしたちはずっといっしょよ」
 また一緒に歩んで行けばいいの。それがおともだちだから。
 ナイフの剣にフォークの槍が振り翳され、おもちゃのピストルがぴかぴか光る。
 ソーダの泡みたいにたくさん浮かび上がってくる子たちに焦れたのか、魔女の狙いはペペルたちから相馬へと。忘却の呪詛が、ちいさな相馬へ向かう――けれど。
「わるいな、おれにはあんまり効果がないみたいだ」
 ある時点から前の記憶がない相馬。ただでさえ幼くなった今では、より一層失うものが存在しない。
 不知火鼬の強化陣がひときわ強く輝いた直後、相馬が地を蹴った。振りかぶる金砕棒の狙いは魔女本体ではなく、彼女が身を預ける棺桶の背面。地面へ叩きつけ、挟み込んで密閉する。
「わるいことをすれば、じぶんにかえってくる。いんがおうほうだ」
 やがて獄卒となる子どもが云い放って、体内に宿る炎を茨に延焼させていく。火あぶりにされた魔女の悲鳴は業火の爆ぜる音に掻き消された。
「ふふ、おはなしのさいしょはかなしいものよ」
 帰って来る幽霊船を迎え入れるように手を伸ばし、ペペルが呟いた。――だからこんなに、つめたいの。
 冥府の炎は、まるで水底のようにあおあおと燃えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

睦月・伊久
……させませんよ。
一方的な欲望に巻き込まれた誰かが、目の前で犠牲になる所なんて……もう見たくありませんから(絡みつく赤糸をチラリと見遣りながら

エイミーさんに茨が当たらないように【かばい】ます。

とはいえ、この小さい身体では武器を振るったところで庇いきれないでしょう……なので助っ人に来てもらいます。【赫鳥召喚】で呼び出した赫鳥さんに火の【属性攻撃】や炎の身体で茨を焼いてもらいます。

こちらに来る前に敵ごとどんどん焼いちゃってください。
焼ける匂いでちょっとは薔薇の香りも薄まるかもですし……

……ヒト型のものがが焼けるのは、やはり……(複雑そうな顔
いえ、それでも今を生きる人を守ることが最優先です。


スキアファール・イリャルギ
(猫の使い魔ラトナは威嚇している!)
わ、すごい怒ってる……もふもふ……
んーと……あのひとはとにかくわるいひとってこと?
(「そうだぞ」と言いたげに鳴くラトナ)
じゃあ、たおさない、と……うぅんねむい……
でもねたら、いたくてこわいゆめをみそうなんだ……なんでそうおもうんだろう……?

(微睡む彼の前に、ひかりが現れて)
……わっ?
わぁ、きれいなひかりだ……
(ひかり――コローロは「任せて」と言いたげに瞬く)
……えっと、たすけてくれるの?

(コローロは"色"を生み出して眠りの茨を焼いて)
(その儘"色"を弾丸やナイフのようにして敵を撃つ!)
すごい……! ありがとう!
よし、てきがひるんでいるうちに、ぶきでなぐるね!




 身を蝕む炎を払うように振るわれた蔓が、そのまま鞭のようにしなってエイミーを打擲せんとする。
『醒めざる夢の茨』。
 それが届くより先に、力強く地を蹴って身を躍らせた者がいた。
「……させませんよ」
 血が滲むほどに唇を噛みしめ、その痛みで眠りに抗いながら、睦月・伊久(残火・f30168)が魔女を睨みつける。
「一方的な欲望に巻き込まれた誰かが、目の前で犠牲になる所なんて……もう見たくありませんから」
 執着がそのまま形をとったかのような、赤。己に絡みつく糸に目をやったのはほんの刹那のこと。
(「この小さい身体では庇いきれない」)
 小鹿の細脚を奮い立たせ、喚ばうのは炎の鳥。伊久が赫鳥と呼ぶ精霊が翼をはためかせ、茨を焼き払わんと飛び交う。
「すごい、かっこいい……」
「シャーッ!!」
「わ、こっちはすごい怒ってる……」
 神がかったもふもふを目一杯膨らませて魔女を威嚇する猫妖精ラトナに、ちいさなスキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)は目をまんまるにした。
(「毛が逆立つとぽわんってして、ますますもふもふ……なんて云ってる場合じゃないのかな」)
「んーと……あのおんなのひとはとにかくわるいひとってこと?」
「にゃ!」
 いきなり襲ってきたからしてそれは事実らしいし、自分に戦う力があるのも、なんとなくわかっている。
「じゃあ、たおさないと……うぅん、ねむい……」
 先程見つけたごっつい拡声器を一生懸命握りしめるけれど、伊久と違って精神も子供に戻ったスキアファールは意識を失わないようにするのがやっとだった。神モフ猫さんも必死で起こそうとしているが、眠気はどんどんと強くなっていく。
「でもねたら、いたくてこわいゆめをみそうなんだ……」
 ――なんでそうおもうんだろう?
 あの魔女が悪い人という以上に、理由がある気がしてならない。けれど幼い彼には、うまくそれを言葉に出来なくて。


「急ぎましょう、赫鳥さん」
 猟兵が眠りに囚われたのを察知し、伊久が赫鳥へと呼びかける。スキアファールを蝕む茨を焼き払い、そのまま魔女へと突っ込んでいく。
「――!」
 分厚い本を庇うように抱きながら、魔女が再び茨を繰り出した。精霊はその身体をひときわ煌々と輝かせ、一切の回避行動もせずに飛び込んでいった。
 炎が茨に燃え移り、魔女へと届く。髪が燃えて、服が燃えて、とうとう白い膚をも灼いていく。
「ああっ……!」
 様々なものが焦げる匂いが、薔薇の馨を掻き消していく。魔女の幼い子供のような悲鳴が伊久の耳を揺さぶる。人の姿をしたものが燃えゆく姿は、心優しき守護者にとってあまりにも残酷な光景だった。
 護るべき人々が無残に殺されていく映像が、脳裏をかすめる。
「っ、やはり……いえ」
 湧き上がってしまった感情を抑えるように、ぶんぶんと首を振った。
「それでも、今を生きる人を守る事が最優先です」
 自分の動揺で、赫鳥に攻撃の手を休ませるわけにはいかない。
 そうして茨が燃え、馨が薄れれば、スキアファールの眠りも微睡みのように浅くなって。
 ふっ、と目の前にあらわれた光の眩しさに、とうとう彼は目をひらく。
「わぁ、きれいなひかりだ……」
 ひかり――コローロが、任せてと言いたげにちかちかと瞬いた。
「……えっと、たすけてくれるの?」
 スキアファールが魔女を見る。魔女と、身を挺して戦い続ける獣人を。
 あのひとの力にならなきゃ、と小さな子どもは決意した。
「おねがい」
 ひかりはひときわ強く輝いて、それから火花のように炸裂する。赤に紫、黄色に翠。様々な“色”が眠りの茨を焼き払っていく。周囲に拡散したのちに収縮し、鋭く研ぎ澄まされた“色”が今度は弾丸やナイフのように魔女の胸を貫いた。
「すごい……! ありがとう!」
 今ならいける、とスキアファールが拡声器を持ち直す。
「赫鳥さん、合わせましょう」
 頷いた伊久が精霊へと呼びかけ、子どもを阻むありとあらゆる茨を焼き尽くしていく。燃え盛る魔女の元へとスキアファールが突っ込んだ。
「これでっ……!」
 最後の一撃は、ありったけの力を込めた、鈍器での殴打。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

戦闘と同時に【狼たちの饗宴】
宵へ向かう茨を燃やしながら狼をターリアヘと嗾けてゆこう
茨に棺はよく燃えるだろうからな
だが、攻撃を受け記憶を一時的に奪われれば思わず動きを止めてしまうやもしれん
己へ駈け寄る黒髪の少年の姿には不思議そうに視線を
…?おまえは…だれだ?
そう問うも吸い込まれるような綺麗な笑みに、そして耳を擽る声に胸が高鳴れば見惚れる様その姿を見つめてしまう
だが、俺を護ろうとする少年を守らねばという衝動と共に正気が戻れば『盾受け』にて『かば』う様に前に出よう
しょう、たすかったと声を投げつつ炎の狼を再びターリアヘ
俺のしょうへの記憶を奪うなど、ゆるせんゆえに…!
ようしゃはせん…!


逢坂・宵
ザッフィーロ(f06826)と

エイミーさんを守るように「オーラ防御」を張った「結界」で保護しつつ
「属性攻撃」「全力魔法」「一斉発射」を付加した【天響アストロノミカル】にて茨を弾きながら敵へと攻撃しましょう

敵の攻撃からかれも守ろうとしますが
攻撃を受けたかれにあわてて近寄ったなら
向けられた言葉に一瞬きょとんとして

ああ、敵の攻撃の効果でしょうか
それからかれへ向かって笑って見せましょう
ぼくはきみにしんそこほれこんだ、ひとりのいきものですよ

そして今度こそかれを守ろうと、ユーベルコードで防戦と攻撃を
正気に戻ったかれにも笑って
記憶があろうとなかろうと君を愛することは変わりませんが
やっぱり、格好良いですね




 炸裂したのは、目を灼くほどにまばゆい光の雨。
 天響アストロノミカル。空一面の流星群が、一斉に魔女の元へと降り注ぐ。
 閃光に身を潜めるようにして、狼の群れが魔女へと飛び掛かっていった。――正確には、狼の形をした炎たちだ。人々の穢れに晒され続けてきた聖なる指輪から解き放たれた炎が、負の感情を爆発させるように唸り、茨や魔女に食らいついて燃やしていく。
「いっきにたたみかけましょう」
「ああ」
 星々を操る逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)も、狼たちを行使するザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)も、魔女の生命力が残り少ない事を膚で感じ取っていた。
 身体が縮んだとはいえ、成すべきことは変わらない。魔術に優れる宵が、救出対象を護る結界と後方支援を担う。ザッフィーロは攻撃の他、宵の詠唱が阻まれないように盾の役割も果たす。
 手袋の下に在る本体のように、滅多な事では打ちのめされない頑丈な身体。だからこそザッフィーロは宵のために何度でも身を差し出すし、彼の強さを誰より知る宵もまた、彼という盾に身を委ねる事が出来ていた。
 此度も、然り。
 伸びた茨から放たれた呪詛。ただし普段と違ったのは、ふわふわと頼りない靄のようにしか見えないそれを喰らったザッフィーロが、膝をついたまま立てなくなってしまったこと。
「ザッフィーロ!」
 隙を突かれる事のないよう、ありったけの隕石を降り注がせながら、宵が駆け寄った。
「ザッフィーロ。だいじょうぶですか」
 ザッフィーロが霞む視界をこじ開ける。黒髪の少年が心配そうに見下ろしてきていた。
「……? おまえは、だれだ?」
 呪詛の影響。一時的な記憶喪失。向けられた言葉と訝しげな視線に、宵がきょとんとしたのはほんの一瞬だった。
「ぼくですか? ぼくはきみにしんそこほれこんだ、ひとりのいきものですよ」
 記憶喪失の少年は銀色の目を見開いた。まるで星の引力のように、自分の何もかもを吸い込まれてしまいそうな笑顔。耳を擽る甘い聲。
「あんしんしてください。きみがきゅうちに立っているのなら、ぼくがまもります」
 大きな杖を掲げ、宵は今一度隕石を行使する。熾烈さを増した光が、決意に満ちた少年の貌をしろく照らしていた。
(「おれに、しんそこほれこんだ……?」)
 ザッフィーロの視界からは、魔女もエイミーも消えていた。ただ凛と佇む彼だけがそこに居た。
 そこまで想う人が自分の事を忘れてしまっても、少しも狼狽えずにいられる強さ。何故そうあれるのかと問いかけるよりも早く、宵が振り返ってまた微笑んだ。
「しんじているからですよ。きみを」
「――……“しょう”」
 意識よりも早く、聲が漏れていた。口に出せば、それが何よりも愛しい言葉である事をはっきりと自覚した。
「……しょう。ああ、すまない。おまえをわすれるなんて」
「いいんですよ」
 立ち上がるザッフィーロを支えながら、宵は変わらぬ笑みを向けた。
「きみのきおくがあってもなくても、ぼくはかわりませんから」
 只愛し、共に歩んで行くだけだと。
「――ああ。たすかった」
 茨の呪詛を全て吐き棄ててしまおうとしているように、ザッフィーロが深く深く息を吐き。
 再び上げた視線は、どんな刃物よりも鋭く、魔女を刺すのだった。
「俺のしょうの記憶をうばうなど、ゆるさぬぞ……!」
 血肉を喰らう狼炎たちがひときわ飢えたように唸り、牙を剥く。差し向けられた茨に撥ね飛ばされそうになっても、負傷も厭わずにその牙で食らいつき、焼き払っていく。
 まるでザッフィーロの怒りが乗り移ったかのように勇猛な狼たちに合わせるよう流星を降らせながら、宵は静かに微笑むのだった。
「……さきほどは、ああ云いましたけれど」
 いつものかれが、やっぱり一番格好いいですね、と。


 魔女が骸の海へと沈んでいく。戦火はここら一体の時蜘蛛の糸をも焼き払っており、猟兵とエイミーの身体や精神は徐々に平穏を取り戻していく。
「我らが神より賜った言葉を、悪しき者達の野望に使われそうになっていたとは……」
 エイミーはぶるっと身震いをし、それから気丈に貌を上げ、猟兵達ひとりひとりに礼を述べた。
「魔女を阻止して頂き、本当にありがとうございました。私達の力が必要な時には、遠慮なく声をかけてくださいませ」
 破邪の言葉なるものが真実か。それはクレリック達にもわからないという。けれど――。
「あなた方に、言葉の神シャルムーンのご加護がありますように」
 眠りの魔女ターリアの、そして大天使ブラキエルの目論見をひとつ阻止した事。
 それは紛れもなく、この世界を守るためのちいさな、そして確実な一歩となった事だろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年01月29日
宿敵 『眠りの森の魔女ターリア』 を撃破!


挿絵イラスト