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凍った心を打ち砕いて

#サムライエンパイア #猟書家の侵攻 #猟書家 #『刀狩』 #妖剣士 #宿敵撃破

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●刀は折れ、氷は砕ける
 かつて退治され封じられた狂暴な鬼。長い時を経て蘇り最初に目にしたものは、なぜか自分を神と祀る小さな神社。どうやら荒神として鎮めるため祀られたが、長い時を経るうちに何故だか守り神のような伝承にすり替わっていたらしい。
 しかも間の悪いことに、蘇ったのが侍崩れの野盗から村を守ってくれるよう村人が祈りを捧げている真っ最中。
『雪鬼様が! 雪鬼様が現れなすったぞ!』
『雪鬼様! どうか村をお守りくださいませ!』
 長い封印生活で調子が狂ったか、勢いに押され頼みを聞いてしまい正真正銘の守り神に。
 そしてその後もやれ山火事だ、やれ土砂崩れだと事あるごとに担ぎ上げられ拝み倒され、その都度仕方なく頼みを聞いては感謝され祀り上げられる。時には雪に埋もれ死んだ子どもの弔いまでやらされた。
 かつて自分は人を襲い喰らう悪鬼であったというのに。
 だが村人に慕われるうち、そんな自分も悪くないと思い始めた。そのはずだった。なのに。
「俺、俺は……」
 目の前に散らばるぐちゃぐちゃの肉と雪の積もった村を染める一面の赤と、口の中に広がる懐かしく悍ましいこの味は。
「ぐおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
 鬼はまた死に、鬼が甦った。

●心を溶かし、悪を切り裂け
「各々方、お集まりいただきありがとうにござる」
 シャイニー・デュール(シャイニングサムライ・f00386)が集まった猟兵たちに一礼する。
「本日はサムライエンパイアにて、猟書家の侵攻に抗していただき申す。本日戦っていただくのは猟書家『刀狩』、その後継を狙う者にござる」
 猟書家の一人刀狩。妖剣士を狂わせ幕府転覆のための『刀』として狩り集めていた白竜。彼自身は猟兵の活躍によって倒されたが、数多のオブリビオンがその後継として同じ活動を続けていた。
「今回も一人の妖剣士が鬼として狂わされてしまいました。いえ、そもそも剣士ではないし元々鬼ではあるのですが……」
 どういうことか、と問われるとシャイニーは語りだす。
「かつて悪鬼として封じられ、守り神となって甦った鬼……猟兵用語で言えばカクリヨファンタズムとサムライエンパイアを神隠しで往復した稀有な御仁ですな。彼は刀狩後継の者に狂わされ、自身の金棒で己が守る村の民を皆殺しにしてしまいました」
 これは予知ではなくすでに起こってしまったこと。この悲劇を覆す術はない。
「彼は心壊れたまま人里に現れ、人を殺し喰らおうとします。刀を持つ者を優先的に狙うようですが、これは彼の意思と言うより操っている何者かの意思の様ですな」
 何者か、つまりは刀狩の遺志を継ぐオブリビオンのことだろう。
「皆様には彼と戦っていただきますが、彼は武器である金棒に憑依したオブリビオンによって操られています。どうにかその武器を取り落とさせることで、その憑依を解くことができ申す。無論元より高い力を持ち、悲しみと狂気で暴走している彼に対しそれができれば、でござりますが」
 倒すつもりでいってやっと叶うレベルとの話だ。手加減している余裕はないだろう。
「うまく取り落とさせる事ができれば、憑依の解けたオブリビオンとの決戦となります。この敵は汲むべき事情などない外道と見えますので、一切の温情は不要にござりましょう。この時鬼殿は正気に戻り、敵を討つため手を貸してくれます。その怒りは頂点に達しており、この時に限れば猟兵に匹敵する力すら出すことができます」
 鬼にとっては憎んでも憎み切れぬ相手。己の命も顧みず相手に襲い掛かるだろう。
「なお、この鬼殿は小さな雪女を連れております。どうもこの子は妖怪として誕生したばかりの様で自我も薄く、ただ鬼殿に従って彼の為に懸命に戦おうとするだけのご様子。どういった関係かはご本人に聞いてみてくだされ」
 聞ければ、の話でござるが。シャイニーは真顔でそう言った。
「猟書家の侵攻は放置できぬことでござるが……それとは関係なく、このような事捨ておくわけにはいかぬでござるよ。どうか皆様、悲しい物語を終わらせてきてくださりませ」
 そう言ってシャイニーは深々と一礼し、猟兵たちをサムライエンパイアへと送り出した。


鳴声海矢
 こんにちは、鳴声海矢です。巨漢と幼女の組み合わせは定番ながら萌え所。やや心情よりのシナリオになりますが、敵は強めです。
 今回は倒された猟書家の後継戦となりますので、同様に2章構成のプレイングボーナスあり。今回のプレイングボーナスはこちら。

『プレイングボーナス……正気に返った妖剣士と共に戰う(第2章)』

 第1章では『雪鬼と雪女見習い』との戦闘。彼はほとんど理性を失い、目の前の者を破壊しつくそうと襲ってきます。行動の決定権はほぼ雪鬼にあり、雪女はひたすら彼の手助けに徹します。武器を手放させれば勝利ですが、かなり強いのでほぼ倒すつもりで行った方がいいでしょう(倒せれば武器を落とします)。公式プレイングボーナスはありませんが、説得や呼びかけで多少動きが鈍ることはあるかもしれません。

 第2章では今回の黒幕である猟書家『刀狩』の後継者候補との戦闘になります。侍と刀剣が嫌いなようなので、そういった人を優先的に狙う傾向があります。
 上述の通りこの戦いでは正気に戻った雪鬼(と雪女見習い)が共闘してくれます。怒りによって限界以上の力を出した彼は猟兵に匹敵するくらい強いですが、冷静さは失っており完全に指示に従うとは限りません。特に『下がれ』『逃げろ』など交戦させない指示にはまず従わないでしょう。
 以下、共闘時の雪鬼詳細。

 東方妖怪の妖剣士×地獄の極卒 かつては人食いの悪鬼だったが、守り神として祀られやや軟化している。敵の時使ったユーベルコードをそのまま使える他、種族、ジョブに対応する基本技も使用可能。とにかく黒幕を殺すことだけを考え、その為なら命も捨てる。生き残ったとしてもこの先の事はまだ何も考えていない。

 戦後に彼がどうなるか、どうするかはシナリオの展開と猟兵の意思次第です。彼は今回に限れば被害者ですが、遠く遡れば人を襲い喰らった過去も持っています。雪女見習いは今はまだ雪鬼の妖力で生きているオプションのような存在なので、彼が死ぬか措置なしで引きはがされればほどなく消滅します。大した自我もありません。

 それでは、氷を溶かす熱いプレイングをお待ちしています。
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第1章 ボス戦 『雪鬼と雪女見習い』

POW   :    『こおらせてみる おねがい』『ぶっとべええ!』
【雪鬼渾身の】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【対象を氷漬けにする雪女見習い】の協力があれば威力が倍増する。
SPD   :    『あぶないよ たすける』『すまねえ!』
【客観的に動きを予測し協力する雪女見習い】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
WIZ   :    『がんばれ まけちゃだめだよ』『うおおお!』
【雪鬼が奮闘する中、雪女見習いの応援】を聞いて共感した対象全てを治療する。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ポーラリア・ベルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 雪山の中を進む巨大な青鬼。その足取りは巨体で積雪の上を歩いているとは思えぬほどに軽く、まるで雪に埋もれた道を正しく捉え何事もなく歩いているかのようですらある。
 そう、今は雪深き故に誰も通らぬが、確かにその足の下には道があった。雪に閉ざされ冬に耐える者が多く住む、麓の村へと続く道が。
 鬼がその道を行くのは餌を探してか、あるいは……失った何かを求めてか。
「おにさま、なにかくる」
 鬼の肩に乗る白い着物の少女が囁くと、鬼はその足を止めた。そして目の前から何者かが自分に向かってくるのを自らも確認すると、巨大な金棒を振り上げ唸り声を上げる。
「くだく……つぶす……ころす……くらう……!」
 金棒が雪原に叩きつけられると、雪がまるで白い壁を作るかのように巻き上がり、雪崩を起こさんばかりに山も揺らぐ。
 一見すれば恐るべき悪鬼。だが、その心の奥にある凍てついた悲しみと、それを起こした真の元凶を猟兵は知っているはずだ。
 さあ、この哀しき鬼を狂気から解き放て!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
酷い話としか言えませんねぇ。
参りましょう。

【燦華】を使用、全身を『光』に変換しますねぇ。
この状態でも、猟書家の宿る『金棒』が当たればダメージは有るでしょうが、『雪原』という『足場』の悪影響や『他の攻撃』は無効化出来ますし、まだ見習いである『雪女』さんの冷気も同様ですぅ。
この状態で『金棒』に注意の主体を絞り『光速回避』を中心に動けば、攻撃はほぼ遮断出来るでしょう。
後は『光速斬撃』と『FRS』による[砲撃]で、鬼さんの『利き腕』を狙い[部位破壊]を行いますねぇ。

(雪女さんを見て)
まだ、守りたい全てを失ったわけでは無いのですよねぇ?
完全に飲み込まれて手遅れになる前に、何とか。



 人里へと向かい、狂気のまま進んでいく雪鬼。その歩みを止めるべく、一人の猟兵が彼の前に立つ。
「酷い話としか言えませんねぇ。参りましょう」
 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は彼の身に起きたことを思いそう漏らすが、その言葉は雪鬼の耳には届かない。鬼はただ目の前に現れた存在を砕き、食らうべく手に持つ金棒を振り上げた。
「大いなる豊饒の女神、その象徴せし欠片の一つを我が身へ」
 それに合わせるこるは【豊乳女神の加護・燦華】を使用、その身を光へと変える。構わず振り下ろされた金棒をるこるは文字通りの光の速さで避け、その一撃が着弾地点の雪を激しく舞い上げ、雪だけでなく下の土まで抉りその場所に大穴を開けた。
 通常ならいかに物理的な力が強かろうと光を壊すことは出来ないが、雪鬼の金棒には彼を狂わせた元凶である猟書家『刀狩』後継のオブリビオンが宿っている。その影響で非物理の力まで携えていたとしてもおかしくはないと考えたるこるは、その攻撃を受けぬよう回避に努めながら、また同時に攻めるべき的としてもその金棒に注意を向ける。
「そちらを手放していただきますねぇ」
 浮遊砲台『FRS』の砲撃が、鬼の右腕に向けて連続で発射された。鬼はそれを金棒を横薙ぎにし、纏めて叩き落とした。連続で爆発も起きるが、筋肉の塊の様な鬼の剛腕はその衝撃でも微塵も揺らぐことはない。
「まだまだ、こちらもぉ」
 さらには刀だけを光から戻し、それを構えての光速斬撃が鬼の腕を襲う。宙を舞うことで雪原と言う足場の悪ささえ無視した鋭い一撃がその筋肉を裂き、砲撃に耐えた鬼の腕を大きく揺らがせた。
「こおらせてみる、おねがい」
 鬼がダメージを受けたのを見てか、逆側の肩に乗る雪女がるこるに向け、口をすぼめ息を噴き出した。その息は吹雪となって辺りに散らばり、周囲に氷の礫を撒き散らしていく。
 言うまでもなく氷は固体化した水であり、水の特性である光の屈折や乱反射を起こす。その原理を彼女が知っているかどうかは定かではないが、氷を撒き散らすと言うのは光の動きを妨害する手段としては存外効果的だ。
 その氷にるこるの光が取り巻かれた瞬間、鬼の右肩がその氷の礫の中を突っ切った。その勢いできらきらと光を反射させながら、氷が広く辺りに飛び散る。それはまるで、光となったるこるさえ今の勢いで粉々に砕け散ってしまったようですらある。だが鬼の顔に被るその礫は、同時に殺戮の狂気に駆り立てられる彼の流す涙のようにすら見えた。
「こちらですよぉ」
 その顔の上、鬼の頭上から砕けたはずのるこるの声が聞こえた。
 氷は光を反射はするが、遮るわけではない。多少方向を狂わされはしたところで、離脱という一点のみに目的を搾ればその場を逃れることは容易かった。あるいは雪女が光すら通さぬ分厚い氷を作れればまた話は違ったかもしれないが、彼女は雪鬼の手助けをすることだけを使命とした、産まれたばかりの雪女見習い、そこまでの芸当はできるものではない。
 頭上で構えるるこるに対し、鬼は傷ついた右腕で金棒を掲げ、雪女の乗る無傷の左半身をかばうように防御の姿勢を取る。
 その姿は、まるで彼自身が真の悪の居所を知り、それを討つよう捧げているようにも見えた。そして同時に、利き腕を捨ててでも守るものがまだあるとでもいうようにも。
「まだ、守りたい全てを失ったわけでは無いのですよねぇ? 完全に飲み込まれて手遅れになる前に、何とか」
 そう見えるのはきっと間違いではない。故にその意に応えよう。そう決意したるこるの全力の砲撃と斬撃が、鬼の金棒に力強く叩きつけられた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

豊水・晶
こんなむごい仕打ちを受けさせるなんてあんまりです。
荒神がいつの間にか守り神へと伝承が変わるのはそれなりに聞く話です。守り神としての自覚が芽生え始めたときに、このような仕打ちを受けるなんて本当に心が痛みます。祀っていた方々を自らの手で殺めるなど守り神として一番の地獄です。このようなことをさせたオブリビオンは、絶対に許しませんし痛い目を見てもらいます。
雪女さんには極力攻撃が当たらないように注意しながら戦闘を行います。彼女はこの件には関係ありませんしね。
技能(見切り)(破魔)を載せてUC【スイセン・リュウショウノヒラメキ】を使用します。
アドリブや絡みは自由にしていただいて大丈夫です。



 聳えるように前に立つ雪鬼を見て、豊水・晶(流れ揺蕩う水晶・f31057)は彼の身に起こったことを思う。
「こんなむごい仕打ちを受けさせるなんてあんまりです」
 荒神がいつの間にか守り神へと伝承が変わるのはそれなりに聞く話。そして祀ることで注がれる意思、祈りは神の在り様を変えていく。例え元は暴虐の悪鬼であったとしても、そうと願われればそうなっていくものだ。
「守り神としての自覚が芽生え始めたときに、このような仕打ちを受けるなんて本当に心が痛みます」
 生まれかけた心の芽を摘み取られた鬼はかつての姿に戻ったかのように……いや、それよりもずっと悲しい何かと化したように、己の持つ金棒を振り上げる。
 そのまま勢いよく振り下ろされた金棒が、雪を舞いあがらせて地面を抉った。すんでのところでそれを避けた晶は、真横に叩きつけられたその一撃の威力を見て思う。
 これほどの一撃、当たれば猟兵とてただではすまないだろう。ましてや力ない一般人など。彼は心を失ったまま、この一撃で守るべき者を手にかけたのか。
 その一撃を封じんと水纏う水晶の様な二刀を金棒へと打ち付けるが、体重の乗せての二連撃でもその剛腕はびくともしない。
「祀っていた方々を自らの手で殺めるなど守り神として一番の地獄です」
 狂ったままならその地獄を見ずにも済んだだろう。だが、彼は全てが為されてしまった後、一度だけ心を戻され、その地獄を目の当たりにしてしまった。もしそれが意図されたものだとしたら。
「このようなことをさせたオブリビオンは、絶対に許しませんし痛い目を見てもらいます」
 晶はそう言って雪鬼を……否、彼の持つ金棒を睨みつけた。全ての元凶、撃つべき本当の悪鬼はそこにいると分かっているのだから。
 まるでそうさせるなと命じられたかのように、その金棒を鬼がもう一度薙いだ。それを飛び退って再度躱した晶に、雪山の風よりもなお冷たい冷気が噴きかけられる。
「こおらせる、おにさま」
 鬼の肩から懸命に息を吹きかける小さな雪女。その息は一吹きで命を奪うとされる伝承にこそ程遠いが、それでも晶の周囲を凍り付かせ、その動きを鈍らせていく。
 一方で見るからに脆弱な存在。一太刀でも浴びせればたちどころに消え失せるであろう。しかし晶は決してそれをしない。それどころか誤って掠めることすらないように、例え好機であってもそちら側への攻撃には細心の注意を払った。
「彼女はこの件には関係ありませんしね……それに」
 きっとあれは全てを失くした鬼をこちら側に繋ぎとめる最後の細い糸。何があっても切るわけにはいかない。
 両足を雪と氷で繋がれた晶に、鬼はゆっくりと金棒を持ち上げた。その動きは自分の為に敵を氷漬けにした雪女のその献身に報い、その成果を見せつけているようでもある。
 その動きを、足を縫い留められたまま晶は真っ直ぐ見据える。鬼の振るう悲しい力と向き合い、そして切るべきを切るために。
 今までで一番力の乗った、大上段からの一撃が振り下ろされる。晶はそれから目を離さず、その一瞬を見切り、そして動いた。
「竜が天に上る様というのをお見せしましょう」
 己が角を削りだし作られた二刀『瑞玻璃剣』に破魔の力が籠る。刹那に満ちた力が足を止める氷を砕き、【彗閃 竜昇のひらめき】が、文字通りに竜が昇るが如く振り下ろしへと向かい切り上げられた。
 ぎぃん、と高い音が鳴り響き、鬼は地を殴り、竜神は天を舞った。鋭く昇った技は剛力で下ろされた金棒と触れ合い、その中心を深く切り裂く。力と技が合わさり、金棒には深い傷が穿たれていた。
 その傷から血が流れるようなことはもちろんない。だが、そこから邪悪な何かが漏れだし、形を成しつつあること。鬼とすれ違って地に降りた晶は、確かに鬼の後ろ姿からそれを見て取ったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジェイク・リー
アドリブOK

「ずっと待っていた」
着物に袴、般若面姿に毛先に向かうに従って白色から紫色にグラデーションしている長髪に水牛の様な角を生やしている3メートル程の人が現れる。
「俺はヤマト、ジヴァ・アラスの息子だ!閻羅刀に戻ってようやく会えた!」
「細かい事は後で聞くとしてだ。やれるのか?」
身の丈はある刃幅の広く赤い刀身に青い刃紋を持つ大太刀を背から抜く。
連携しつつ攻め、薄らと青色の霊気を帯びた霊光刀として繋がりを弱らせる為に振う。
ヤマトは怪力やダッシュによる体当たり、一閃を繰り出す。
「君は負けちゃいけない!」
さらにヤマトが鼓舞する。
面を取り、袖を消して分かる。
「女だったのかよ」


ベアトリス・ミラー
※アリス、エルーゼ、華澄、ジェイクと行動
アドリブOK

呼び出した兵士を囮に戦闘をしましょう。
集団戦術による戦闘も視野に入れておくと。
死なない様にしつつも手加減無用で対処しないと。
「新しい人……鬼?」
結構大きいので見上げる感じになりますねえ。


アリス・スラクシナ
※エルーゼ、華澄、ミラー、ジェイクと行動
アドリブOK

手加減無用で攻めつつ死なせるなか。
華鳥封月を抜き、攻める。
見切りで避けつつカウンターで斬り込む。
魔力溜めで溜めながら、ダッシュで動きつつ残像で翻弄する。
乱れ撃ちの要領で翻弄しながら斬りつける。
「鬼がもう一体?」
聞けば魔刀に宿っていた存在とか。この状況なら助かるが。
迂闊に入ると巻き込まれそうだ。

「男と思ったが」
和装とさらしで分からなかったが、まさかの女だった。


藤宮・華澄
※アリス、エルーゼ、ミラー、ジェイクと行動
アドリブOK

有終の刻を持って援護に回ります。
ラヴェンツァを呼び出して結界術や回復に回ってもらいます。
マヒ攻撃で動きの抑制なんかも狙ってみます。
操られてるだけなら、何とかして助けたいです。
たしか雪女も繋がりを絶つと消えるとか。
ならそっちの繋がりを切らずにしないとですね。


エルーゼ・フーシェン
※アリス、華澄、ミラー、ジェイクと行動
アドリブOK

さて、これ以上の被害を食い止める為に止めないと。
空中浮遊で機動力を得て対峙するわね。
夢幻で柄と光刃を形成してダンスと応用して見切りによる回避や乱れ撃ちによる連撃をするわ。
ここで力を使い過ぎない様にしないといけないから、そこは気をつけないと。
「また随分と大きいのが」
期待できそうなのが来たわね。なんていうか、妹みたい?



 人里に至る道の途中、思わぬ妨害を受け足を止める雪鬼。その彼を、今度は五人と言う大勢が取り囲んだ。
「手加減無用で攻めつつ死なせるなか」
 アリス・スラクシナ(邪神の仔・f21329)は戦前に言われたことを思い出す。過去はどうあれ、この鬼はあくまで今はオブリビオンに操られているだけ。その元凶を引き出すことも合わせて相手を殺さないことが必要だが、易々とそれを許してくれる相手でもない。手加減している余裕はないがやりすぎてもいけないという難しい条件を課される戦いだが、完全な解決のためにはそれをしなければいけない。
「さて、これ以上の被害を食い止める為に止めないと」
 エルーゼ・フーシェン(踊り子・f13445)の言う通り、彼にこれ以上の凶行を行わせるわけにはいかない。すでに起こってしまった悲劇を覆すことは出来ないが、ここで止めることは出来るはず。そう考え武器を手に前に立つエルーゼを、鬼は一瞥して金棒でなぎ払った。
「私のファイアチームをみせてあげましょう」
 その一撃をエルーゼが避けるのと入れ替わりに出たベアトリス・ミラー(クリエイター・f30743)が、【クイーン・フォース】の兵士たちを召喚する。その兵士たちにも鬼は容赦なく金棒を叩きつけるが、想像が続く限り無敵の兵士たちはその全てを砕くような一撃にも無傷で平然と耐え、集団戦術をとるべく鬼を取り囲み逃がさない構えを取る。
 その兵士たちを鬼はうっとおしそうに何度も殴りつけた。無敵が続く限りどれほど攻撃を受けても傷などつかないが、一撃ごとに撒きあがる大量の雪と起こる地面の揺れは視覚と体幹に影響を与え、その威力が伝わることによるプレッシャーで想像力の方を揺らがせかねない。
「操られてるだけなら、何とかして助けたいです……行きましょ、ラヴェンツァ!」
 藤宮・華澄(戦医師・f17614)が『有終の刻』を構え、後方から鬼に援護射撃を浴びせた。麻痺の効果を持つ弾丸が鬼に当たり、その動きを少しずつ鈍らせていく。
 さらに召喚した【蒼き旅人ラヴェンツァ】が結界を張り、これより先には進ませないという防衛線の意味も込め戦場を周囲から隔離する。その状態で弾丸を続けざまに浴びせるが、鬼の動きは多少鈍ることこそあれ止まりはしない。
 それでも鈍った動きなら見切ることは容易くなる。強引に繰り出された振り下ろしに合わせ、アリスは『華鳥封月』でのカウンターを取ってその大きな体へ切り込んだ。さらにはエルーゼがその眼前を舞うように動き、顔を狙って連続での攻撃を叩き込む。視界を遮られた鬼はエルーゼを叩き落とそうと金棒を横薙ぎにするが、踊るような動きでそれを乗り越えエルーゼは鬼から離れない。
「おにさま、あぶないよ、したもいる」
 エルーゼに気を取られる鬼に、彼の肩に乗る雪女が囁きかけた。その声に従い鬼は太い脚を蹴りあげ足元にあるものを蹴とばそうとする。その足を切りつけようとしていたアリスはとっさに残像を残す動きでそれを回避。溜めた魔力を乗せた乱れ打ちでその足を押し戻すが、やはり力は強く転倒させるまでには至らない。
「たしか雪女も繋がりを絶つと消えるとか。ならそっちの繋がりを切らずにしないとですね」
 攻撃のみならず防御面でもサポートを行う雪女。本来ならば真っ先に排除したい所だが、鬼との繋がりによって生きている彼女は脆く、そして鬼にとってはただ一つ残った守るべきもの。流れ弾一つでも当ててしまえば最終的な状況は取り返しのつかないほどに悪化すると、華澄はそちらへ銃口を向けることを控えていた。
 ここまでは先を見据えて消耗を抑える目的もあり、行動制限と攻撃の防御、そして狙いの攪乱を主に動いてきた猟兵たち。ならば肝心の制圧は誰が行うのか。その役目は、この男が担っていた。
「来い!」
 ジェイク・リー(嵐を齎す者・f24231)の声と共に現れるのは、着物に袴、般若面姿に毛先に向かうに従って白色から紫色にグラデーションしている長髪、その頭には面の付属物でない水牛のような本物の角の生えた3メートルほどの巨人であった。
「ずっと待っていた」
 巨人はそう言いながら、同程度の体躯を持って鬼と真正面から組み合う。はじめてあらわれた自身と対等の大きさを持つ敵に、鬼はその太い腕を持って抑え込みをかけるが、見た目通りの重量と怪力に好きなようには組み伏せられないでいた。
「新しい人……鬼?」
 ベアトリスがぶつかり合うその巨体を見上げ驚いたように言う。その声に、巨人は思いのほか高めの声で答えた。
「俺はヤマト、ジヴァ・アラスの息子だ! 閻羅刀に戻ってようやく会えた!」
 ガンナーから戦神へと変じた男の名を出し、自己紹介する巨人。その顕現のきっかけはジェイクの探していた魔剣が見つかった……正確にはもとよりあったものが真の姿を取り戻した故と語る。
「また随分と大きいのが……期待できそうだけど」
「息子……? 子どもがいたのか、あいつ……」
「でもアラスさんこの前は結構はしゃいでたような気もしますが……」
「まあ、さらにその前は凄く威厳のある感じでしたし……オンオフ切り替えられる人なのかも」
 父だというアラスを知る仲間たちは、彼の印象と目の前の巨人を見比べながらそれぞれに感想を言う。少なくとも体躯はまるで似つかないが、彼の子だというのなら実力には相当の期待が持てるだろう。
「細かい事は後で聞くとしてだ。やれるのか?」
 召喚主であるジェイクもその実力を測り切れてはいないのか、確認するように問いかける。それに対しヤマとは、身の丈はある刃幅の広く赤い刀身に青い刃紋を持つ大太刀を抜くことで答えた。その姿勢を見て、ジェイク本人もうっすらと青き光を帯びる霊光刀を構える。
 武器を構えたことで、鬼も雪女を首の後ろ側にどかせ、金棒を両手持ちにしそれに応える。そして次の瞬間、武器を構えた二つの巨体が真正面からぶつかり合った。ヤマトの駆け込んでの体当たりを鬼が受け止める形だが、両者とも規格外の巨躯と怪力を持つ故それが周囲に起こる衝撃と振動も半端ではない。その中で、ジェイクは身じろぎ一つすることなく、ぶつかり合う二人の間へと滑り込んだ。
 青い光が狙うのは武器を持つ鬼の手。鬼が何にどうやって操られているのかは分かっている。ならばその繋がりとなっている部分に邪を切る力を注ぎこみ、そのつながりを断つまで。霊光刀はヤマトに抑え込まれ動けない鬼の両腕を切り落とすかのように振り下ろされた。光の刃が間違いなくその手を通り抜けるが、鬼の手は切断されるどころか一筋の傷すらもつかない。だが、ジェイクの手には間違いなく『何か』を切った感触があった。
 鬼の押し返す力が弱まったのを感じたヤマトは、もう一押しとばかりに詰め寄り、般若面越しにその目を見つめる。
「君は負けちゃいけない!」
 鼓舞と共に一度相手の体を弾き返し、その体を一閃する。その圧倒的な気魄と質量に、鬼の巨体はどうと倒れ、雪の上に仰向けに転がった。
 金棒には僅かに右手がかかりまだ手放してはいないが、左手は両手持ちを解き、自分の後ろにいた雪女を掴み、下敷きにならぬよう持ち上げている。その不自然な姿勢は、彼が反射や洗脳を乗り越え何かを守る意思が戻ってきていることの表れか。
 その鬼の前で、ヤマトは面を取る。
「女だったのかよ」
 召喚主であるジェイクさえ驚くその事実。その巨躯と息子と言う名乗りから誰もが男だと思っていたが、考えてみれば確かに般若は女の面だ。
「男と思ったが」
「妹みたい、という感じはしてたけど……」
 体のラインの出ない和装にサラシを巻いていたため分からなかったアリスと、妙な感じはしていたがまさかと思い口には出さなかったエルーゼ。
 新たな驚きに包まれる仲間たちの前で、女鬼はまっすぐに男鬼を見つめていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

ポーラリア・ベル
【1章の宿敵主】
冷たい冷たい、音が、したー。
暴れん坊で、怒りんぼうで、子供達にはめっぽう優しい雪鬼さん。
また遊んでくれるのね!

ほわぁ!?なんだか変わった金棒持ってる?あたしも、あたしも対抗するの!
【アート】で作った氷の金棒を、雪を固めて冷気で固めてー。
吹雪で【目潰し】しながら【空中戦】ひたすら避けて、主に【怪力】で何度も打ち合っては壊れた氷棒を修復したり、足元に叩きつけて地面を崩して転ばせたりするの。

そうやって戦いながら、徐々に【天候操作】の吹雪と【絶対冷凍】で、冬をどんどん強めていくの。
応援してる見習いさんと一緒に、凍り切るまで、ずっと、ずっと遊ぼ――
(怒りで凍りが割れるかもしれないけど)



 ゆっくりと身を起こす雪鬼と、彼に寄り添う幼い雪女。その姿の上から、鐘の音のように澄んだ声が聞こえた。
「冷たい冷たい、音が、したー」
 その声に両者が顔を上げると、そこには白く光る何かが舞っていた。それはこの山に降る雪よりも冷たく、寒さなど慣れ切っているはずの雪鬼にすらひやりとした感覚を覚えさせる、透明な声。
「暴れん坊で、怒りんぼうで、子供達にはめっぽう優しい雪鬼さん。また遊んでくれるのね!」
 ポーラリア・ベル(冬告精・f06947)が、雪のようにふわふわと、とても楽しそうに雪鬼の前に舞い降りた。彼女はこの鬼を知っているのか。ポーラリアの目に敵意は見えず、純粋に相手を遊び相手としか見ていない、そんな風な仕草で目の前を飛び回る。だがそんなポーラリアも、今の鬼にとってはまだ叩き落とすべき羽虫に過ぎない。鬼は右手の金棒を持ちあげ、まさに蠅叩きでもするかのようにポーラリアへ向けて打ち下ろした。
 ひらり、とその攻撃を避けながら、驚いたように金棒を見るポーラリア・¥。
「ほわぁ!? なんだか変わった金棒持ってる? あたしも、あたしも対抗するの!」
 ポーラリアは自身の眼前に冷気を巻き起こし、雪を巻き上げ氷を纏わせ、大きな何かをそこに形作っていく。そうしてできたのは、鬼の金棒にも匹敵するほどに巨大な雪と氷の金棒。自身の体の10倍以上はあろうかというそれを、ポーラリアは両手で支えて持ち上げた。
「どっちが綺麗か、勝負するの!」
 その金棒を振り上げ、鬼の金棒に叩きつけるポーラリア。その一撃は鬼の巨躯さえ雪に沈みこませる重い一撃となる。その後も何度も金棒同士がぶつかり合い、周囲に氷の礫を撒き散らした。傍から見たらひとりでに動く金棒にポーラリアがしがみついているようにしか見えないが、実際にはその動きは完璧に彼女の制御の下にあり、金棒自体の重さに力を加えた重量をバランスを崩す場所へと次々と叩きつけていた。
「おにさま、がんばって、まけちゃだめだよ」
 肩に乗る雪女が鬼に声援を送る。それを力にしたかのように、鬼は大きく振りかぶり、全力の打ち下ろしを金棒に叩きつけた。その一撃に、氷でできた金棒は対に耐えきれず真ん中から折れて先が宙を舞う。
「はわっ!? ならばこちらは、こうなのー!」
 その舞った氷を、何とポーラリアは小さな手で空中でキャッチ。そのまま鬼の足元に力任せに投げつけ、そこにある雪を舞い散らせて足場を大きく抉った。
 そこで大きく揺らぐ雪鬼の目に、今度は強烈な吹雪が叩きつけられる。寒さそのものには耐えられても視界はそれで奪われ、上下ののバランスを同時に奪われた雪鬼はたまらずその場に膝をついた。
 だが、相手の武器も折れたはず。ならば追撃をいなすのは容易いと、鬼は己の金棒を上へと持ち上げた。だが、そこに叩き込まれたのは。
「……!?」
 ポーラの巻き起こした冷気によって新たな氷を纏い、完全に修復された金棒。予想外に重い一撃で鬼はさらに体を沈ませ防戦一方となる。
「……ずるい」
「えー、そっちは二人だもん、これくらいいーよね?」
 雪女がじと目で抗議するが、ポーラリアは取り合わない。一見すれば幼い子供同士の言い合いだが、自我のないはずの雪女がそれを言うということは、彼女に注がれる力が増えている……つまり鬼は本当の力を取り戻しつつあるということなのか。
 そこからさらに金棒の打ち合いは続く。武器同士がぶつかり合うごとに削れた氷が飛び散り、雪があたりに舞い上がる。そしてそれに呼ばれるかのように、雲はどんどん厚くなり、風は吹き荒れ吹雪となる。雪の積もる速度は砕かれるのより早く、雪鬼の巨大な脚が半分以上雪の中に埋もれ、そこから動くのはその大力をもってしても困難を極めそうに見えた。
「おにさま、そんなのにまけないで、がんばって」
 懸命に応援を送る雪女に答えるよう鬼は腕を振るい続けるが、その動きは少しずつ鈍っていた。
 猛吹雪の中で続く、雪と氷のチャンバラごっこ。その動きを完全に止める、最後の一撃が冬告精から告げられた。
「なにもかも、冬の静寂の如く凍てつき止まる。あたしの奥の手、見せてあげる!」
 一際大きなその声と共に、周囲の全てが止まる。風も、声も、時間さえも。それは全てを凍らせ止める【絶対冷凍】。その静止した世界の中、ポーラリアはたった一人ふわりと浮き上がる。
「応援してる見習いさんと一緒に、凍り切るまで、ずっと、ずっと遊ぼ――」
 極限まで高まった冬が、鬼の金棒に打ち下ろされた。遊びの世界に『お前』はいらない。そう冷たく告げるかのように。
 凍り付いて逆らう力さえ止められた鬼の手から、驚くほどあっさり金棒は離れ、雪の中に落ちた。その金棒にある猟兵たちが刻んだ無数の傷。そこから赤と青二色の禍々しい力が大量に漏れ出し、人の形を作っていく。
 そしてそれが雪原に立つと同時に、雪鬼は己を纏う静止の氷を全て砕き飛ばし動き出した。その体から立ち上るのは、冬すら煮えたぎらせる怒り――

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『楊・美虎』

POW   :    蚩尤殺五兵砕
【己の肉体があらゆる武器に勝るという信念】を籠めた【高速の連撃や、武装を狙った功夫】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【武器や兵器】のみを攻撃する。
SPD   :    雀落拳/龍墜脚
自身の【赤か青のどちらか(途中切り替え可能)の瞳】が輝く間、【赤ならば拳撃、青ならば蹴撃】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    羽衣死闘
【拳法による攻撃】が命中した対象を爆破し、更に互いを【あらゆる武器の使用を封じる『天虎の羽衣』】で繋ぐ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠メル・メドレイサです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 雪鬼の手から離れた金棒から染み出した二色の邪気。それは混ざりあって立ち上がり、一人の女の形をとった。
「どしたアルか鬼サン? せっかく強くしてあげたんだから離しちゃ駄目アルよ」
 ふざけたような口調で言う二色の瞳を持ったチャイナドレスの女。女は大したことでもないかのように鬼に軽く話し続ける。
「鬼サンおサムライいっぱい殺してたネ。ワタシもおサムライ嫌いアルよ。刀持っただけで偉くなった気になってる糞雑魚蛞蝓だからね。あ、でも鬼サンは好きよ。湯麺おいしい言ってる羅刹の子いたからね。だから鬼サンワタシと一緒に、おサムライの刀バキバキに折るよろし」
 この女は鬼が何のために侍を殺したのか、それを考えてなどいないのだろう。自分の遊びに付き合わせるような軽さで言いながら、さらに言葉を重ねる。
「それに、刀狩サン死んじゃったからね。強い人クルセイダーサンのところつれてけば、ワタシも正式に猟書家なれるかもしれないアル。ダイジョブダイジョブ、きっと科挙よりは簡単よ……タブンネ」
 そもそも猟書家に登用制度があるなど聞いたこともない。自分の好き嫌いと根拠もない野心のため、この女は鬼を狂わせ、己が守るものを滅ぼさせたということか。
 鬼の手が金棒を掴み、今までにない程の力で女に叩きつけられた。女は雪という足場の悪さを感じさせぬ軽やかな動きで舞い上がりそれをかわす。
「お前だけは……殺す」
 かつて悪鬼であった頃にすら宿したことのないほどの怒りと殺意。まさに『鬼』という言葉そのものと化したその身からは、猟兵にすら並ぶほどの力が立ち上っているのが見てとれる。
「あらら、鬼サン雪のくせに熱くなりすぎよ……ん? そういえば見たことない人いるね。もしかしてあなたたちのせいか? しょーがないアル。あなたたち食べさせれば多分鬼サンまた戻ってくれるね! こーみえてワタシとっても強いアルよ。楊・美虎(ヤン・メイフゥ)、推して参るよ!」
 軽々しくそう言って拳を構える女。彼女を討った所で失われたものは戻らない。だが怒りに燃える雪鬼にそんな綺麗事は通じまいし、何の意味もないだろう。
 猟兵よ、今はただ彼と共に、この女に己の罪の重さを刻み込むのみだ!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
話をする必要も無さそうな相手ですねぇ。
参りましょう。

『FBS』を四肢に嵌め飛行、【接穣】を使用し『祭器』全てを強化しますねぇ。
『FSS』は私と鬼さんの周囲に配置し防御を中心に、攻撃主体の『FRS』と共に[砲撃]を行いますぅ。
そして『FMS』を展開、相手の周囲に小さめのバリアを複数展開、回避や移動の阻害と退避阻止を行うと共に、光線による包囲攻撃を行いますねぇ。
相手が此方の『武器』を狙っても、【接穣】により『即時修復効果』が付与されている以上、破壊されても即修復し攻撃と防御を行うことが可能ですぅ。
鬼さんの『金棒』が狙われたら『FSS』で庇い、一緒に確実に叩いて参りましょう。



 己のしたことの悪辣さなど知らぬ実に、軽い調子で拳を構える楊・美虎。それに向き合うのは文字通りの鬼の形相をした雪鬼と、硬い表情をした夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)だ。
「話をする必要も無さそうな相手ですねぇ。参りましょう」
 冷たくそれだけ言うと、るこるは戦輪『FBS』を四肢に嵌め飛行する。
「大いなる豊饒の女神、豊かなる器を今一度、新しき力へとお導き下さい」
 るこるは【豊乳女神の加護・接穣】を重ねて発動、装備する祭器を強化し自身と雪鬼の周りに配置した。ビームシールド『FSS』はあくまで防御用として鬼の動きを妨げぬ位置へ置き、さらに砲台『FRS』を敵を取り囲むように配置、そこから一斉の砲撃を仕掛ける。
「飛び道具はずるいアルよ!? そう言うのはやめて、正々堂々勝負して欲しいアルね!」
 連続の砲撃を雪の上を軽々撥ねて避ける美虎。そのまま大きく跳ね、FRS本体へと連続で蹴りを叩き込んでいく。決して脆くはないはずの祭器が一蹴りごとに次々と破壊されていくが、それらは全て即座に修復、治る端から再びの砲撃を美虎に浴びせかけた。
「えー、なによコレ? 壊れたものはそのままが正しい姿アルよ!」
 それは心もか。その問いがるこるに浮かぶが、それを口にはしない。この身勝手極まる相手と問答するのはそれだけで時間の無駄だということが分かり切っているから。るこるはその代わりと言わんばかりに、10枚の円盤『FMS』を美虎の周りに配置し、その周囲にバリアを張った。
 バリアは敵味方の区別なく接触したものを弾く力場を作り、美虎に纏わりつく。
「邪魔ね……あいたっ!?」
 いかに技自慢の美虎であっても、光線で作られた壁を殴って壊すことは出来ない。自身の肉体はあらゆる武器に勝ると確信する彼女ではあるが、どこをどう殴れば壊せるのか分からないものへの対策は容易には出来なかった。
「うーん、これとっても邪魔ね……しょーがない、鬼さん、もったいないけどそっち壊すアルよ!」
 美虎は身を低くし、地面すれすれの回転蹴りで雪を巻き上げ、下を掘る。その抉れた部分を器用に駆けてFMSの守りをくぐり、そのまま腕の力で自身を跳ね上げ鬼の頭上高く跳躍した。
 そのまま鋭い蹴りが鬼の金棒へと叩き込まれる。だがその瞬間。
「壊したければこちらをどうぞぉ」
 割って入ったるこるのFSSがその蹴りを受け止めた。止めた盾はそのまま破壊されるが他の盾は付属の方で連続射撃を行い、美虎を押し返そうとする。
「あーもう、うっとおしいアル!」
 連続射撃を高速連撃で叩き落としダメージこそ受けないが、無限に再生する武器を壊し切ることは出来ず結局は防御止まりとなっている。一方るこるの側も砲撃と障壁で美虎の動きを制限することこそできるが、対武器の戦闘を得手とする彼女に中々致命打を与えられず、見た目は派手ながら一種の膠着状態に陥っていた。
「埒が明かないアルネ……そっちもそろそろ飽きてこないか?」
「いえ、別にぃ。それに私は……一人ではありませんのでぇ」
 鬼がFSSで守られた金棒を振り上げる。ビームシールドを周囲に纏ったそれは、まるでるこるの力を借りて一回り大きく強化されたようにも見えた。
「すぐ直るので気にする必要はありません。遠慮なく壊してくださいませぇ」
「おぉ……おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
 それは了承の返事か、怒りの咆哮か。ビームシールドを纏った金棒が、勢いよく美虎の頭上に振り下ろされた。
「おっと、これはさすがに……ひゃうっ!?」
 一歩下がろうとした美虎が、背中まで迫っていたFMSに弾き返される。ならば横へと行こうとするが、雪女の放った氷の息がその足を一瞬捉え、鈍らせた。
 そして強烈な一撃が美虎に叩きつけられる。猟兵にも並ぶと事前に言われていた通り、その力は周囲の雪を全て巻き上げ、FSSすら叩き壊しその下にあったものを粉砕した。
 加護の力でFSSはすぐに元に戻るが、雪が全てはじけ飛び下の土が見えた山の地面。そこに足を半ば土に埋めさせた美虎が頭を抑えうずくまっていた。
「あぐっ……がっ……!」
 調子のいい言葉も穿けぬまま回転蹴りで土を払って飛び出し、そのままバク転を繰り返し金棒の間合いから離れていく美虎。
「壊すことでしか終わらせられないなら、どうぞご存分に」
 取り戻せぬならせめてともに破壊しよう。るこるのその意思を負い、鬼は金棒をさらに強く握りしめるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

豊水・晶
ようやく姿を現しましたね。とても会いたかったんですよ。あなたとはたくさんオハナシする必要があると思っていました。でも、今のお話を聞いて少し考えが変わりました。
自身の欲望のために遊び半分で今までのことを起こしていたというのなら、慈悲を掛ける必要はないと思うんです。
どうですか?といっても強制なんですけどね。
竜神による神罰を享け今までの犠牲にしてきた方々に詫びながら消えてください。



 怒れる鬼の復讐が始まった。それに共に並ぶのは、豊水・晶(流れ揺蕩う水晶・f31057)。彼女は静かな表情で、目の前の敵と向き合った。
「ようやく姿を現しましたね。とても会いたかったんですよ。あなたとはたくさんオハナシする必要があると思っていました」
 落ち着いた声で言う晶に、楊・美虎は拳を構えて答える。
「はいはい、何アルか? 何でもお答えするよ?」
 まるで世間話でも振られたかのような軽い返答。その姿勢に、晶はやはり、とでもいうかのように少し冷たい目をしてからさらに続けた。
「でも、今のお話を聞いて少し考えが変わりました」
 もし、この敵にも何か悲しい過去があるなら、深い理由や覚悟があるなら。例え戦うという結果は変わらねど、凶行の理由とそこに至った心情を問うてみる価値はあると思っていた。だが、結果は違った。
「自身の欲望のために遊び半分で今までのことを起こしていたというのなら、慈悲を掛ける必要はないと思うんです」
 自分の欲求と、ただ刀剣を持った者が嫌いだからとうそれだけの理由。ただそれだけで、神になりかけていた鬼は自ら守るものを手にかけさせられたのだ。この相手に何かを問うのは最早無意味。晶は敵のあまりに身勝手すぎる言葉に、ただ失望と共にそう思うだけとなっていた。
「どうですか? といっても強制なんですけどね」
 最早語るつもりもない、その意思を込め、晶は己の持つ『瑞玻璃剣』と『天竜護法八大宝珠』を構えた。
「そんなこと言われても、答えようないアルよ!」
 相手の心境を慮ることなどなく、美虎は一歩踏み込んで拳を振るう。刀剣嫌いの彼女ゆえ、その拳はまず剣を持つ方の手へと向けられた。
 晶はすっと体を躱し、その直撃を躱す。そしてそのまま拳を切り落とすかのように、瑞玻璃剣を振り下ろした。
「残念ね!」
 手を返し、剣の腹を美虎は拳で打ち払いその軌道を反らした。それと同時にその手元で大きな爆発が起こり、二人を包み込む。
「……く」
「剣なんてダメよ。これでゆっくり戦おうね?」
 美虎の肩にかけられていた羽衣が、紐のように互いの手を繋いでいた。それで繋がれた手からは握る力が抜け、瑞玻璃剣が手から零れ落ちる。
 インファイトなら己の距離、とばかりに美虎は片足で回転しつつ、鋭い回し蹴りを放った。晶はとっさにもう片方の手を上げその蹴りを防ぐが、細さの割に重い蹴りで一瞬体が傾く。
「竜神による神罰を享け今までの犠牲にしてきた方々に詫びながら消えてください」
 その状態でも、決して晶の表情は崩れない。目の前の外道の好きにさせてやる義理など何一つないし、僅かな優勢、一時の高揚すら与える価値もないと。
 晶は力を込めて手に当たった足を振り払い、そして手に握りしめた天竜護法八大宝珠を美虎へ向けた。
「天におられる竜王よ。われらが敵を滅されますよう願い奉る」
 その願いに応えるよう、雪空から一筋の雷が落ち、美虎を焼き焦がした。
「あやぁぁぁぁぁっ!? 何アルか、武器使っちゃダメなはずよ!?」
「貴女を撃つのはこの宝珠でなく神の罰。蹴りたければ蹴ればいいでしょう。それでも神はあなたに罰を下し続けます」
 その言葉と共に再度落ちる雷。美虎も体から煙を上げながら、宝珠を持つ晶の手を何度も蹴りつけた。
 ほとんどノーガードの打ち合いの末、ついに晶の手から宝珠が落ちる。それと同時に雷が落ちるのが止まり、ダメージの蓄積で晶の足もついに揺らいだ。
「やったね! じゃあこれで……」
 とどめ、とばかりに高く足を振り上げる美虎。だが、膝をついた晶の表情は依然冷たく。
「神よ、罰を下し給え」
 竜神たる己ではなく、他の神へ告げる。その言葉に応えるように、晶ばかりに注力していた美虎の真後ろから、巨大な金棒の一撃が振り下ろされた。
「ぎゃうっ!?」
 強かに殴られ、またも雪に埋まる美虎。振り下ろされたのは、全てを奪われた守り神からの天誅であった。
 荒く怒る鬼神と静かに怒る竜神の神罰が、雪原に幾度となく打ち下ろされるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘×
グロ×
SPD

力は強いけど単純ね。
あの鬼、死ぬわ

守護霊のドーピングで戦闘力増強。
鬼に反撃しようと美虎の瞳が輝く瞬間を見切り
無情なる刻で19.4秒の時止め

美虎をダッシュ・怪力・捕縛で抱擁。
夜魔の翼の空中戦で上空に連れ去りながら
吸血しつつ呪詛を注ぐマヒ攻撃

時が動き出したら
鬼に催眠術・全力魔法をかけ
あのまま攻撃していたら鬼は死に
雪女も悲しげな表情で消えていた未来を見せ
その子の為に頭を冷やせと諭す

美虎、貴女が侍を嫌う理由にも頷けるわ。
私の故郷の人間も一人一人は弱いくせに
武器や仲間を得ると強気になる奴ばかりだった。
真に強く美しい貴女達を救う為に私が居るの

胸や局部を擦り合わせ
慰めながら生命力吸収のキス



 怒りのまま美虎へと襲い掛かる鬼と、ただ彼に従いその手助けをする小さな雪女。その動きは荒々しく正に破壊の化身と呼べるほどであるが、同時にそれは余りにも感情的で直線的。その姿を、ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)は雪の向こうから冷たい目で見つめていた。
「力は強いけど単純ね。あの鬼、死ぬわ」
 その言葉通り、猛然と襲い掛かる鬼の打撃を美虎は一見ギリギリで、しかしその二色の双眸は確かに鬼の動きを捕らえて躱し続けていた。
 やがて隙だらけの大振りで大上段に振り上げた時、美虎の瞳が青く輝く。そして龍さえも落とす9連の蹴りが鬼を貫こうとした、その時。
「未来さえ、私には追いつけない」
 時間操作の魔力を持つドレスを纏ったドゥルールが、己に宿した例と共にその場へと飛び込んだ。その一瞬の間に美虎の脚は鬼の大きな腹に先が触れており、発動が後一瞬でも遅ければそれは皮膚を破り、中の肉を抉っていたであろう位置。
 ドゥルールは停止した【無情なる刻】の中、美虎を捕らえ『夜魔の翼』を広げて空中へと連れ去る。そのまま相手の体を抱きすくめ、その首筋に歯を突き立てて血を吸い上げて代わりに麻痺の呪詛を注ぎ込んだ。
 そして19.4秒、ドゥルールだけが近くできるその時間が過ぎ去った時。
「ぐっ……なっ……あっ……!?」
 動かそうとしていた蹴り足が動かず、それどころか地を踏んでいた足すら宙に浮いている状態で、美虎はドゥルールの腕の中で身を悶えさせた。
 そしてその下では、目標を見失った鬼の金棒が雪原を抉り虚しく雪を巻き上げていた。何の手ごたえもないことに鬼は怒りのやりどころを失い、周囲を見回しながら闇雲に金棒を振り回す。
「おにさま、あれ……」
 肩に乗る雪女が宙に浮くドゥルールと美虎を指さす。
「お前も、そいつの仲間か……!」
 美虎を抱くドゥルールにも怒りの目を向け、その巨体を伸びあがらせ叩き落とそうとする鬼。その鬼の目をドゥルールは冷たく見つめ、その視線を通し催眠と幻影を放った。
 その内容は美虎の蹴りに腹を穿たれ息絶える鬼と、彼に悲し気に縋って消えていく雪女の姿。ドゥルールが割り込まなければ、今まさに現実となっていただろう光景。
「人を守るあなたを救うつもりはないけど、ただその子の為に頭を冷やしなさい」
 鬼の姿をしていても、人を守る神に変じつつある彼は救う対象に含まれない。だが、その肩にいるたった一つの存在。その為に生きる義務があるのだと、ドゥルールは彼にそう告げた。鬼はその言葉に、振り上げた金棒を下ろし、小さな雪女を撫でる。その目は少しだけ穏やかに、そして冷静さを取り戻したようにも見えた。
「美虎、貴女が侍を嫌う理由にも頷けるわ。私の故郷の人間も一人一人は弱いくせに武器や仲間を得ると強気になる奴ばかりだった。真に強く美しい貴女達を救う為に私が居るの」
 そう言って美虎と豊かな胸と唇を合わせ、足と股を絡ませ合いそこから生命力を吸い上げるドゥルール。
「むぐっ……う、うぅ……」
 麻痺のきいている美虎は上手く返事もできないが、次第にその体から抵抗する力は抜けていく。
「あなたのように自らを鍛えて技にした者は美しいわ。ただ手に持った武器を振るうだけではそれは武器に使われているだけだもの」
 武器を厭い身一つで戦う姿勢、それそのものは尊いと、彼女を受け入れるドゥルール。そしてその技の発露が人に取り付き力ないものを殺させることでなく、救われた世界でさらに磨かれるようにと、ドゥルールは彼女に愛を注ぐ。
 その光景を鬼は複雑そうに見上げながらも、手で雪女の顔を塞ぎその行為を見えないよう遮った。それはまるで乳が娘にテレビのよろしくないシーンを遮るような、そんな光景にも見える。そんな安らかな世界がこののち彼らに在りえるのか、それはまだ誰にも分からない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エルーゼ・フーシェン
※アリス、華澄、ミラー、ジェイクと行動
アドリブ・絡みOK

自分勝手な理由でここまでするなんてね。
「まあ色々と言いたいことはあるけど、言っても分からないでしょうね」
試験の方が遥かにマシだって分かるわよ?こっちにはこの鬼より強い神がいるし。
武器を形成せずに徒手で相手するわ。日頃の鍛錬を発揮できるか試すにはいい機会だし。
第六感と見切りで避けつつ、カウンターで叩きこむ。
ヤマトや氷鬼と共に共闘し、追い詰めるわよ。
舐めて挑んだことを後悔させてあげるわ。


アリス・スラクシナ
※エルーゼ、華澄、ミラー、ジェイクと行動
絡み・アドリブOK

試験ならどれ程楽だろうな。少なからず、命のやり取りをせずに済む。
「大方、試験にでも落ちる程度の頭しかないのだろ」
華鳥封月を抜き、対峙する。ヤマトの実力はまだ分からないが、単純な力押しではないようだ。
(あれだけの長刀をあそこまで使うとは)
戦神の娘……まあ息子と名乗ってる理由は不明だが技量はあるようだ。
第六感と見切り、ジャストガードで防ぐと同時に受け流して隙を作れれば。
「元々格闘技もさせられていたからな。なくとも相手にできる」


藤宮・華澄
※アリス、エルーゼ、ミラー、ジェイクと行動
絡み・アドリブOK

私は回復などの援護に回ります。
隠れられそうな場所からスナイパーや誘導弾を用いて援護します。
迷彩と目立たない様にしたりして、見つからない様にしますね。
万が一来たら見切りや第六感で回避しつつ何とか退避します。


ベアトリス・ミラー
※アリス、エルーゼ、華澄、ジェイクと行動
絡み・アドリブOK

さて、相手の動きを読んで策を講じるも戦術。
呼び出したら迷彩で隠れつつ華澄さんの援護に回しましょう。
「見てる限りではお強いですね。しかしそれが通じるかと言われれば」
相手の力量を図れず、好き嫌いで言うのであれば科挙すら抜けられないでしょうね。
「あ、ごめんなさい。あなた落第生なんですね。相手を見極められないのなら問題を解くなんて夢のまた夢でしょうから暴力でしか解決策ないんですね」
怒らせてはいけないのは、鬼より戦神であるこちらかと。
「ありがとうございます、アラスさん」


ジェイク・リー
アドリブOK

アラスがミラーをジャストガードで間に入る。
「煽るのはいいが程々にしておけ」
ヤマトから親父と呼ばれるが、後にしろと言う。
「雑魚だのなんだの宣っていたが、己の力量も弁え切れぬ阿呆に語る資格はない」
魔刀、天地刃が納められた鞘を持ち、魔力溜め覇気・威厳・殺気を放ち恐怖を与えると同時に歩いて近づく。
「お前の拳は軽い。真偽を見抜く目も無い」
残像で攻撃を誘い込み、隙を突いて両手持ちからの大上段からの縦一文字に振り下ろす。
「遠い日に会った子を助けようとする父を重ねただけだ」
鬼と雪女を遠き日に会った子連れの豪傑の一人と重ねたと話す。



「自分勝手な理由でここまでするなんてね」
 エルーゼ・フーシェン(踊り子・f13445)が美虎が語ったその動機に呆れかえる。
「大方、試験にでも落ちる程度の頭しかないのだろ」
 アリス・スラクシナ(邪神の仔・f21329)も、その思慮も覚悟もない考えに呆れと侮蔑を示す。今まで様々な敵と戦い、その中で目的や思想を説くものは少なからずいたが、今目の前にいる相手はその中でも最低の部類に入ると、二人は相手への嫌悪を一切隠さぬ様子で言った。
「……私は回復などの援護に回ります」
 一方藤宮・華澄(戦医師・f17614)は相手を悪し様に否定することはしない。ただ己の銃を構え、必要な場所へと位置を動いただけだ。だがそれは相手に対し思うことがないからではない。この相手に対し何かを考え、語るだけ無駄だという見限り、それ故の言葉少なな行動であった。
 そうした意図をどこまで感じ取っているのか、美虎は調子を取り戻すかのように手足を振り、構えを取る。
「たくさんいるね、でもワタシ強いよ? 手も足も二本ずつだけど、とっても早く動くからね」
 彼女たちの心底からの軽蔑を、戦場でよくあるただの挑発程度にしかとっていないのだろうか。さして怒る様子もないその姿勢は、むしろ自分からの相手への挑発にすらなっているかもしれなかった。
「まあ色々と言いたいことはあるけど、言っても分からないでしょうね」
 その姿勢に、やはりと呆れ顔のままエルーゼが武器を構えず徒手で相対した。日頃の鍛錬を発揮できるか試すにはいい機会だと言うのがその理由の一つだ。
「試験ならどれ程楽だろうな。少なからず、命のやり取りをせずに済む」
 一方でアリスは『華鳥封月』を抜いて敵と向かい合った。二本一組の剛刀に、美虎の二色の瞳がぎらりと光る。
「シロートさんの拳法怖くないね。先にそっちの刀、折らせて貰っちゃうよ」
 一瞬のうちに踏み込み、その二刀へ向けて素早い拳が放たれた。それはスピードとパワーが同時に乗った鋭い一撃であり、直撃すれば鍛えられた鋼すらへし折りそうにも見える。だが、その拳は刃に届く寸前、二度の破裂音と共に跳ね上げられた。
「あいたっ!?」
 拳の皮が破れ血が雪原に滴り落ちる。その元となったのは、華澄の構えた『有終の刻』から放たれた弾丸であった。
 如何な早い拳でも、どこに来るかが分かり切っていればいくらでも狙いを付けられる。まずは得物を持つ者を一人にすることで敵の動きを誘導するのが、エルーゼが武器を持たぬもう一つの意味であった。
「さて、相手の動きを読んで策を講じるも戦術なので」
 その一手の発案者なのか、ベアトリス・ミラー(クリエイター・f30743)が得意げに言う。普段はのんびりとした口調な彼女だが、今日だけはその奥に言い知れない悪意が込められていた。
「見てる限りではお強いですね。しかしそれが通じるかと言われれば」
 どんな強い技でも、効果的に中てられなければ意味はない。科挙を引き合いに出した美虎だが、相手の力量を図れず好き嫌いで言う彼女にそれを抜ける知力が果たしてあるのか。
「あ、ごめんなさい。あなた落第生なんですね。相手を見極められないのなら問題を解くなんて夢のまた夢でしょうから暴力でしか解決策ないんですね」
 さらに罵倒は続く。美虎のような存在に対しとりわけ嫌悪する理由でもあるのだろうか。エルーゼやアリスのものよりさらに辛辣なその言葉に、さしもの能天気な美虎も怒りがわいてきたようだ。
「あなた、ちょっとうるさいね。黙るよろし!」
 神速の踏み込みからの直突き。【クイーン・フォース】の兵たちを華澄の支援に回していたこともあり、その予想以上の速さに対応が遅れてしまう。無防備に狙われるベアトリスを今度は別の男が守りに入った。
「煽るのはいいが程々にしておけ」
 その攻撃を受け止めたのはジェイク・リー(嵐を齎す者・f24231)が呼び出した戦神アラス。鋭い打撃をぴったりいなしその一撃を防いだアラスは、そのまま一度拳を押して美虎を一歩押し返した。
「ありがとうございます、アラスさん」
 柄にもなく言い過ぎた、そうとでもいう風にベアトリスは敵からまた距離を取る。
「親父!」
 彼をそう呼ぶのは、3メートルの巨躯を持つ鬼のヤマト。『彼女』もまたジェイクの呼び出した存在だが、体躯からして似ていないアラスとの明確な関係は未だ明かされてはいない。
「後にしろ、先にこれを片付ける。雑魚だのなんだの宣っていたが、己の力量も弁え切れぬ阿呆に語る資格はない」
 アラスもまた美虎の姿勢を否定する。戦神と名乗る彼だからこそ、実力はあってもそれを過信し、無益な力とする彼女は許しがたい存在なのだろうか。
 ともあれこれにて役者は揃った。後は武を語るに足りぬこの愚か者に相応の制裁を下す時間だ。
 魔刀『天地刃』を収めた鞘を手に、そこに魔力を溜めながらゆっくりと美虎に近づいていくアラス。その全身からは覇気と殺気が迸り、並のものならそれだけで戦意を失う程の威圧感を全身から溢れさせている。そして攻撃の間合いに入った、その時。
「だあっ!」
 アラスではなく、ヤマトが長刀を構え切りかかった。その一撃は虚を突いて美虎を捕らえ、その身を大きく切り裂く。
「不意打ちとか卑怯よ!」
「試験の方が遥かにマシだって分かるわよ? こっちにはこの鬼より強い神がいるし」
 試験は所詮初めと終わりの合図がある。戦場にそんなものなどないし、相手に合わせ一人ずつ出向くというルールもない。勝手にこれを試合か何かと勘違いした美虎に、エルーゼの素手による攻撃が叩きつけられた。それはダンスと融合したような、直線を基本とする美虎の拳とはまるで違う曲線の拳。反撃で蹴り足を出すも、回るような動きで躱されて逆にそれを蹴りあげられる。
「元々格闘技もさせられていたからな。なくとも相手にできる」
 合わせてやろうかと、アリスもまた武器を収め素手による攻撃を仕掛けた。それに対し美虎はいなしからの反撃を試みるが、その反撃まで予測していたアリスの防御に止められた。
 そして格闘戦に関わる間に、ヤマトの刀が再度美虎を切り裂く。
(あれだけの長刀をあそこまで使うとは)
 巨大な武器を振っているとは思えぬ繊細な動きに、アリスは内心舌を巻いた。
「そんな拳では銃には勝てません」
 そしてさらにかかるのは、華澄が女兵士たちと連携して放つ各種の弾丸。誘導弾は多数の方向から美虎を狙い、それを次々裁いている間に本命の狙撃が彼女の急所を狙う。抜ける場所のない近代戦術。拳に対し銃を用いる、それを卑怯などと喚くのは戦いを遊びと捉える甘えでしかないと、華澄の弾丸は傷と痛みを持って美虎へと教えていた。
 強引に弾丸の包囲を抜け出した美虎は、目を輝かせ9連の拳をアラスへと打ち込む。
「お前の拳は軽い。真偽を見抜く目も無い」
 その拳は、虚しくアラスの残した残像だけを貫いた。がら空きになったその身をエルーゼとアリスが打ち、華澄と兵士の弾丸が逃げ場を失くさせる。
 そうして敵中で動けなくなった美虎に、二つの巨大な得物が振り上げられた。
「何で、お前たちはここで俺に譲る」
 優勢に多少なりと冷静さを取り戻したか、雪鬼がアラスにそう尋ねる。鬼は猟兵と並ぶほどに強い。しかし冷静に、相手の怒りさえ利用できる猟兵たちだけで仕留めた方が確実であり、自分をそこに混ぜる必要はないだろうと、そう思ってのことだ。
「遠い日に会った子を助けようとする父を重ねただけだ」
 鬼と雪女を遠き日に会った子連れの豪傑の一人と重ねたと、ただそう答えるアラス。
 助けられなかった、それどころか自ら滅ぼしてしまった鬼にその言葉はどう響くか。しかし間違いなく、まだ一つ鬼には残されたものがあった。
 両手持ちにされた巨大な武器二つが、大上段からの縦一文字に振り下ろされ雪山を揺るがした。その響きは、まるで鬼の代わりに山が泣いているかのようですらあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ポーラリア・ベル
沢山遊んだー♪…そしたらなんだか、怖いのが来たわ。
…雪を、冬を惑わした、悪い子は貴方ね?
―手伝うよ。手伝うの。

雪女の反対側の雪鬼の肩に乗って【エレメンタル・ファンタジア】や、雪女と一緒に【属性攻撃・氷】の、足場凍結、吹雪、地盤沈下で、攻撃を当てやすい様支援するの。

羽衣で繋がれたら【怪力】で全力抵抗しつつ
―起こってしまえば止められない武器ってあるのよね。
えへへ、災害!
(事前に起こした雪崩に巻き込もうと)

事後:
人間さんの事、これからの事、悔んだり、悲しんでるなら。
ポーラの所に来るといいの。みんな、待ってるよ。
(吹雪の中、関わった人が見える幻を起こして誘導。雪女共々フェアリーランドにご招待しようと)



 己の成した所業の報いのように、幾度となく猟兵と鬼に攻撃を叩きつけられた美虎。かつて彼女が作った惨劇を一人で再現させられるかのように雪原に血を流す彼女の前に、白く冷たい冬が舞い降りた。
「沢山遊んだー♪……そしたらなんだか、怖いのが来たわ」
 最初だけは明るく、そして後は冷たく、ポーラリア・ベル(冬告精・f06947)は美虎に囁く。
「……雪を、冬を惑わした、悪い子は貴方ね?」
 全てを雪に閉ざす、冬の恐ろしき側面を露にした声で、ポーラリアは冬の訪れを告げる。そしてたった今まで『遊び』の相手だった鬼の右側に回り込みながら飛び。
「―手伝うよ。手伝うの」
 雪女の乗る反対側、鬼の右肩に腰を下ろした。
「しょうがないよ、しばらく休むしかないね……その前に、お掃除はしとくよ!」
 勝手な野心を一旦諦め、逃亡し傷を癒すことに専念するつもりなのだろう。それ故失敗した計画の後腐れである鬼を始末しようというどこまでも身勝手な理由で、鬼に殴り掛かる美虎。その足元に、二つの氷の吐息が吹きかけられた。
「んなっ!?」
 凍り付き、雪に縫い留められる美虎の両足。脆弱な存在でしかない雪女の吐息でも、ポーラリアの冬の力が添えられればオブリビオンを凍てつかせることもできる。そうしてその間に釘づけにされた美虎を、鬼が金棒で横薙ぎに殴りつけた。その凄まじい勢いに美虎の上半身が真横に折れるが、足を止められているため吹き飛んで衝撃を殺すこともできない。鬼の剛力がダイレクトにその体にのしかかり、肉をちぎり骨を軋ませた。
「がんばって、おにさま」
「そうだよ、あたしも応援するからね! 悪い子には、大自然のおしおきだよー!」
 雪女と共に、ポーラリアが鬼を応援する。だが彼女が送るのは声援だけではない。その声に応えるように空は荒れ、猛吹雪が巻き起こる。それは雪を命とする雪鬼や雪女にとっては涼風でしかないが、それに属しない者にとっては痛いほどの冷たさとなって肌を切り裂いていく。召喚主にも制御能わぬ【エレメンタル・ファンタジア】の猛吹雪だが、雪の支配するこの地にあっては属性さえ合わせておけば制御する必要すらなかった。
 氷の幕が美虎を覆い、体を、顔を、そして拳をもその中へ閉じ込めていく。さらに足元には新雪が積もり、下側からも彼女の体を詰めたい牢獄へと封じ込めていった。
 その美虎を雪鬼は吹雪を越えて確かに睨みつけ、その金棒で滅多打ちにしていく。
「ぐ、あ、がっ……! ワタシが折れちゃうところよ……やっぱり惜しかったね、これ。でも、それもバイバイよ!」
 血を吐き、骨を砕かれながらも強引に上半身を戻し、美虎が鬼の腹に正拳を叩き込んだ。そこから爆発が起こり、鬼とポーラリアを包み込む。
 爆炎はすぐに吹雪に掻き消されるが、その後に現れたのは、長く伸びた羽衣で一纏めに巻かれたポーラリアと雪鬼、そして雪女の姿だった。
「やだ……とれない……」
「放せ……お前……!」
 雪女がじたばたと藻掻くが、ユーベルコード製の羽衣である。非力な分体に過ぎない彼女がどうこうできるようなものではない。鬼もまた同じく羽衣に巻かれ、自身の武器である金棒を取り落としていた。
 唯一ポーラリアだけが羽衣を掴み、強引に引き延ばしたり振り回したりしてその戒めを多少なりともずらしている。
「ダメダメよ、こうなったら大人しく拳で語り合いましょね……うおあっ!?」
 美虎が鬼に殴り掛かろうとした瞬間、ポーラリアが怪力を発揮し羽衣を引っ張り、繋がっている美虎を強引に自分側へ引っ張りこんでバランスを崩させた。
「駄目なのはそっちなの。二人には手出しさせないの!」
 そのまま羽衣を振り回し、美虎が攻撃できないように邪魔をし続けるポーラリア。だが、美虎の方も羽衣を引き返し、ポーラリアの手を外させようとする。
 そのまましばらく羽衣を使っての綱引きが続くが、やがて山の間をこだまするように、低い地鳴りのような音が響き始めた。
「何アルか……地震?」
「来たのね。―起こってしまえば止められない武器ってあるのよね」
 ポーラリアの声をかき消すように地鳴りはどんどん大きくなる。さらにははっきりと体で感じ取れるほどにも足元は揺れ出した。だが、地震にしてはあまりにも長すぎる。
「鬼さん、思いっきり踏んじゃっていいのよ。君はしっかりつかまっててね」
 ポーラリアの言葉に、雪鬼は頷き雪からその巨大な片足を抜き持ち上げた。そして雪女は、言われた通り雪鬼の角にしがみつく。
「お前は雪鬼様を怒らせた……雪に喰われて死ね!」
「ゆきのなかは、つめたいよ……」
「ま、まさか……やめるアル!」
「えへへ、災害!」
 鬼の脚が叩きつけられ、地を、雪を大きく揺らした。そしてそれが引き金になったかのように、山の上から大量の雪が雪崩となって滑り落ちてきた。
 ポーラリアが戦いの間ずっと降らせ、積もらせ、揺らがせて仕込んできた最大最後の武器。最早武器と言う範疇に収まらぬそれは、羽衣の影響を受けることもなく、その場にいた者全てを無限の白の中へと飲み込んでいった。
 そして轟音と雪崩がその場を支配しつくした後。やがてすべては収まり、今度は静寂がそこの主となる。
 その中で、一か所の雪が大量に巻き上がり、そこから白と青に彩られた三つの姿が現れた。
「……終わりだ」
「……なの」
 雪から這い出てきた雪鬼は、しんしんと雪の降る空を見上げ、ポーラリアもそれに合わせ静かに頷く。冬と雪に属する者だからわかる。この雪の下に邪なる生命は最早いないと。雪鬼の言葉通り、暴虐を起こした拳士は雪に飲まれその命を喰らわれたのだ。


 雪鬼はポーラリアを掴んで肩から下ろし、そのまま雪女を連れ、雪の向こうへと歩き出した。それは彼が狂気の中で元来た方向。住む者のいなくなった村の祀る者のいない社へ帰ろうというのか。あるいは。
 その姿が雪に消える前に、ポーラリアは彼を呼び止める。
「人間さんの事、これからの事、悔んだり、悲しんでるなら」
 その声に、鬼の足が止まる。していないはずがない。その心を持ったからこそ、彼は狂気に追いやられたのだから。
「ポーラの所に来るといいの。みんな、待ってるよ」
 吹雪の中に幻影が見えた。それは彼とかかわった人々の姿。必死に拝み倒してきた村人。こちらの嫌な顔も無視し、助けてくれた礼と少ない蓄えを捧げてきた農民たち。幼子の骸を抱き、せめて神の手で送ってほしいと泣いた母親。
 幻だとは分かっている。他ならぬ自分が殺したのだ。その記憶、その罪が消えることは永遠にない。その罪を忘れ安穏と生きるなど、決して許されることではない。
 己一人悪鬼として消えていくのならそれが良い。そう再び歩き出そうとする。その顔を肩に乗る雪女がじっと見つめていた。
「……おにさま」
 その目には、なかったはずの意思の光があるように見えた。失ったものを戻すことは出来ない。だが、今あるものを消さないことはできる。
 ポーラリアは、フェアリーランドの入口である壺を鬼へと差し出す。
 太く武骨な指が動き、生の入口へと触れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年01月31日
宿敵 『雪鬼と雪女見習い』 を撃破!


挿絵イラスト