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カジノ・メタリカ

#デビルキングワールド

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#デビルキングワールド


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 今日もだめだったか――。
 とある高層マンションの管理をしている悪魔は大変困っていた。家賃の滞納である。元々支払いの滞ることの多い居住者たちであったが、それでも取り立て屋のギャングにかかればそれなりの割合で回収できていたはずだった。
 それが、ここ数か月はぱったりと取り立てが進まない。
「あの、困るんですよね。ここはマンションの共用エントランスなんです。なんでこんなことになってるんです!?」
 管理人に訊かれた悪魔は小首を傾げ、逆に尋ねる。
「こんなことって?」
「カジノですよ、カジノ!! 見ればわかるでしょ!?」
 壁紙は派手な赤と金。ルーレット台やスロットなどが所狭しと置かれ、テンポの速いムーディな音楽がスピーカーから大音量で流れ続ける。
 これがカジノでなくてなんだというのだ?
 頼みの綱のギャングは有り金を全部すった挙句に借金までこさえて追い返されてしまった。
「管理人さんもやる?」
 ディーラーの悪魔に誘われ、管理人はちょっと迷った。もし勝てれば、ちょっとだけでも金を回収できるかもしれない。
「じゃあ、ちょっとだけ……」

「なんて言って、勝てるわけないのにね」
 お約束通り、大負けした管理人に同情するでもなく麒・嵐(東方妖怪の冒険商人・f29276)はあっけらかんとして言った。
「イカサマだよ。裏ではオブリビオンが糸を引いていて、儲けの何割かを自分に貢がせている。目的はもちろん、Dの収奪。それと、このマンションは居心地がいいらしいね。度重なる増改築でダンジョンみたいになった高層マンション――人呼んで『マンションダンジョン』の主気取りってわけだ」

 内部は入り組み、もはや何人の悪魔が暮らしているのかさえ不明である。彼等のほとんどは滞納者であり、猛者は数十年以上も未払いを続けているのだとか。
「オブリビオンが住み着いている辺りは幾つもの淡水槽と一体化した区画で、そこの先住悪魔に入れ知恵をして荒稼ぎさせているらしい。こいつの居場所までたどり着くには、まずカジノの制圧が不可欠だ」
 当然、相手は全力でイカサマを仕掛けてくる。それに対してどう対抗するか。ただひとつ言えることは、ここが“悪”を推奨するデビルキングワールドだということだ。
「ゲームはポーカーかルーレット。エントランスを突破してマンション内部へ踏み込むには、逆にこちらが圧勝してカジノを破産させてやればいい。さて、イカサマギャンブルのお手並み拝見といきましょうか」


ツヅキ
 プレイング受付期間:公開時~常時受付中。

 リプレイは他の参加者とまとめて判定・執筆する場合があります。
 共同プレイングを翔けられる場合はお相手の呼び名とID・もしくは団体名を冒頭にご記載ください。

●第1章
 カジノに作り変えられたエントランスホールにて、悪魔のディーラーがイカサマでみぐるみ剥ごうとしてきます。
 ポーカーとルーレットからゲームをひとつ選んでプレイングをかけてください。

●第2章
 マンションに住む家賃滞納悪魔たちが抵抗を試みますので、引導を渡してあげてください(倒されると素直に家賃を払って出て行きます)。

●第3章
 悪魔を統率し、カジノを運営してDを巻き上げていた真犯人のオブリビオンとの対決です。

 次章以降の受付は前章完結の翌日が目安です。雑記にてご案内しますのでご確認いただけますと幸いです。
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第1章 冒険 『イカサマギャンブルバトル!』

POW   :    相手を直接パワーでねじ伏せる、圧をかけて相手にイカサマをさせない

SPD   :    素早く手札をすり替える、ゲームの道具に細工する

WIZ   :    言葉や仕草で相手の思考を誘導する、ディーラーを買収する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

エピテ・ミュアー
なんて欲望の渦巻いた空間でしょう
デビルキング法を守っているのは良い事です
ですが少々偏り過ぎていますね?
過去の影もちらつくようですしここはお力添え致しましょう

負け続けの方々に語り掛けます
あのディーラーに勝ちたい
負けた分を取り戻したい
聞き届けました
さすれば貴方方のその欲望を叶えましょう

UCを発動しディーラーに勝利する能力に特化した強欲獣を生み出します
ルーレットの形…成程ルーレットで負けた方が多かったのですね

ディーラーにルーレットで挑み
説明等で注意を引いている間に欲望獣をルーレットに一体化させます

後は私の望む目にディーラーから見れば不自然な動きで欲望獣により玉が入るだけです
さあもっと取り戻しましょう



 エピテ・ミュアー(欲を崇める教徒にしてボス・f31574)にとっては堕落しきった内装も音楽も教会の讃美歌の如き陶酔を呼び覚ます。
 ああ、欲望こそ人類に与えられた最も神々しき感情に他なるまい。故にこの場所はエピテにとってまさに聖域であった。
「あなた、ちょっとよろしいですか?」
「え……?」
 身ぐるみ剥がされて呆然としていた管理人は突然現れたエピテに驚いて振り返る。同じテーブルでは同じくカモにされた悪魔たちが互いの傷を舐め合っていた。
「あの、なにか……いまちょっと、気持ちが落ちきっていてまともに話す気力がなくて……」
「ええ、事情は理解しております。少々偏り過ぎてしまったのですね? デビルキング法を守るのは良い事ですが、やり過ぎはよくありません。ですから、お力添え致しましょう」
「ほ、ほんとですか!?」
「ええ。つきましては、どうぞあなたがたのお気持ちを告解してください。必ずや欲望の神の御許に聞き届けましょう」
 悪魔たちの間から喝采が巻き起こった。
「おおお、ありがとうございます……!! なにとぞ、なにとぞお救いください……!!」
「あのディーラーに勝ちたいですか」
「「「はい!」」」
「負けた分を取り戻したいですか」
「「「はいっ!!」」」
「――聞き届けました」
 ざわりとエピテの背から“何か”が生えた。人の想念を喰らい、願いを叶えるための姿かたちを具現化した強欲の獣。
「ルーレットの形……成程ルーレットで負けた方が多かったのですね」
 エピテに気付いたディーラーが顔を上げ、席へと案内する。ルールの説明を聞いている間にそっと欲望獣をルーレットの台に同化させてしまえば、後はエピテの思うがままであった。
「え?」
 また、この客の賭けた数字に玉が入った。
 おかしい――ディーラーの顔に焦りが浮かぶ一方でエピテは涼しい顔のまま次の数字を選んだ。
「黒の15」
 当然、ディーラーはわざと外しにかかる。狙いは真反対にある赤の16付近だったにも関わらず、玉は途中で失速して見事に黒の15で止まった。
「!? あ……当たりです」
 ディーラーの声が震えている。
 エピテは薄っすらと微笑み、さらにチップを増やして勝負に出た。ディーラーがいくらイカサマを仕掛けようとも強欲の獣がそれを無効化し、エピテに軍配を上げる。負けた者たちの欲望を叶えるというただそれだけのために。
「さあ、もっと取り戻しましょう。次は赤の3です」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルルマ・リュネール
カジノは好きよ?
きらびやかな内装もいいし真剣勝負が飛び交ってるのも心が躍る
そして、それ以上にターゲットとしてね
まあ管理人さんは不本意だろうしイカサマやってるなら相応のやり方で勝ちに行くわね

というわけでルーレットで勝負
とりあえず何ゲームか普通に賭けようかしら
勝てないのはもちろん折り込み済み
悔しがる無知な客を装いUC発動しつつ誘惑潜ませディーラーとお話

さて、ここからが本番ね
ストレートアップで全額ベット
もちろんヤケじゃないわよ?さっき仕込んでおいたもの
ちらり、ディーラーさんに目配せして
赤くてきれーな番号。⑦に入れてくれる?
どうせ狙った場所に落とせるんでしょ?



 ルルマ・リュネール(怪盗リュネール・f31597)がカジノに足を踏み入れた途端、場の空気ががらりと変わる。
 ――まるで、彼女自身が煌びやかな宝石かと見紛うばかりに目を惹く容姿。深紅の仮面から覗く蠱惑的な瞳が捉えたのはきらびやかな内装に相応しく豪華なルーレット台であった。
 ルルマはにっこりと微笑み、椅子に腰かけてしなやかに脚を組む。カジノは好きだ。内装の雰囲気も真剣勝負にのめり込む丁々発止のやり取りも心が躍る。そしてなにより、怪盗リュネールの眼鏡にかなったターゲットとして選ばれるに相応しい場所でもあった。
「なんか、凄い人来たなー……」
 死んだような目でこちらを見ている管理人に投げキスをひとつくれてやる。
「え、わっ❤」
「仇はとってあげるわよ。そこで見てらっしゃい」
「は、はいです!」
 というわけで、ルルマは手始めに幾つかの目を選んでベット。当然ディーラーはその目を避けてボールを投げ入れる。
「あん! 惜しいわ。もう一度」
「かしこまりました」
 ルルマにはディーラーの気分が手に取るようにわかる。きっと私のことを無知で浅はかな客だと侮っていることだろう。
「ねえ、どうして当たらないのかしら?」
 ゲームの合間、テーブルに身を乗り出して囁くように唇を尖らせる。
「運、ですかね」
「あら、それなら自信あるのよ」
 蝶が羽搏くように微かなウインク――蕩けるような甘さの。目と目が合う度に深まる誘惑。もっと、私の眼を見てちょうだい?
 ディーラーが軽く咳払いしたのが合図だった。
「ストレートアップ?」
「ええ、全額ベット」
 ルルマは頬杖をつき、ディーラーに最後の目配せをした後で視線をルーレット台へと向けた。
 ターゲットはただひとつ、
「赤くてきれーな番号。⑦に入れてくれる?」
 ごくりとディーラーが喉を鳴らした。
 乗ってはいけないと分かってはいても、指先は勝手に動いて――吸い込まれるように止まったボールの数字にカジノ中の視線が集まる。
「赤の7……!!」
 狙った場所に間違いなく落とせるディーラーの腕を見抜き、鮮やかに利用したルルマの勝ちであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

岩倉・鈴音
世の中、銭払わずに家に居座れるなんてことはないのですよンッフッフ♪

ポーカーをやる。
胸元に視線誘導するような服を着てカジノにくるよ。
ポーカー知らんで御座いますなンッフッフとかいいながらルールを教えてもらってる間にンッフッフすとーきんぐを発動してポーカーの相手に張り付き手札をガン見ですよ。

ンフフ♪勝って勝って勝ちまくり。



「ンッフッフ♪」
 件のカジノを訪れた岩倉・鈴音(銀河連合調査員【第六猟兵世界担当】・f09514)は合点がいったかのように頷いた。ポーカーの席についている悪魔はどいつもこいつもこのアパートの住民――つまり、ディーラーとグルなのだ。
(「はっはぁ、何も知らずに参加した部外者をカモしようっていう腹積もりかい? 甘いねー」)
 どかっと椅子に腰かけ、わざとらしく前屈みになって胸元を強調する。それだけで悪魔の手元は疎かに。視線は美少女にカスタマイズされた白い谷間へと誘導完了。
「まずは、ルール教えてくれませんかね?」
「初めてなの?」
「そうそう。ポーカー知らんで御座いますなンッフッフ」
「えっとね、カードを交換しながら手札で役を作るんだ」
「ふむふむ」
 ゆらりとテーブルの下で蠢く影。まるで「ンッフッフ♪」と笑うようにさざめき、こっそりと他の参加者の手札を覗き見ていった。
 ――ほうほう、右隣のプレイヤーは自信ありげな顔だが手札は微妙。ハッタリというわけですな?
 ――左隣さんは……なかなかいい手だねー。こりゃあ降りた方が無難だ。うんうん。
 時に勝負し、時に降りつつ。ゲームを繰り返していくうちに鈴音の前には山程のチップが積まれていった。悪魔たちがざわめき始めるが後の祭り。世の中、無銭で家に居座れるなんてことはないのである。
「ンフフ♪ どーしたんです? まだまだ稼ぎますよー」
 もはや、どちらが悪魔なのか分かったものじゃない。余裕でカードを引く鈴音に同席した悪魔たちの顔から見る間に血の気が引いていった。
「はい、ストレート。また私のひとり勝ちですねンッフッフ♪」

大成功 🔵​🔵​🔵​

オズ・ケストナー
【PZ】
わあっ
グリードオーシャンのカジノもこんなふうにきらきらだったっ
音楽に合わせてなんとなく速足早口
瞬きもぱちぱちぱち

ルーレットっ
どこにはいるかあてればいいんだね

キヨのごはんだっ
いただきまーすっ
おいしいっ

わーたーしーはー
この数字にするーっ
合わせてゆっくり

(イカサマはじめてだけど
わるいことはよろこんでもらえるって聞いたからがんばろうっ
ね、シュネー)

こっそりシュネーに磁石を持たせて
テーブルの下へ
ルーレットの盤面を見ながら見えない糸引いて

もうちょっと右かな
はいったっ
怪しまれたらブローチに隠す

ディーラーさんはずっとルーレットしてるの?
話しかけて気を逸らし
あっ、いまの見たっ?

アヤカかっこういいっ
ぴーす


砂羽風・きよ
【PZ】
バレない様に俺は何度か負けて
代わりにオズと綾華を勝たせる計画を立てた

はは、オズ喋るスピードが早くなってる

カジノの島なんてあるのか
俺はあんまギャンブルとかしねーなぁ
2人もしないイメージあるが

(イカサマ…多分普通に俺がやったらバレる気がする
それなら)

なぁ、ディーラー
ずっとこんな勝負してたら腹空かね?
いやー、俺さっきから腹が鳴っててよ
料理作らせてもらうわ!

焼きそばを作り渡そうと
もし断られたら動きが遅くなって逆に食べたら隙が出来る
どっちにしろこっちが有利になるぜ!

だけど怪しまれたらやばいので
俺も一緒に動きを遅くする

おぉし、どこに入るかぁぁねぇ
2人に今だと合図を送る

うおぉ、やったぁじゃねぇかあぁ


浮世・綾華
【PZ】

へえ、カジノって派手なんだな
気分を盛り上げる為かしら

UC使ってシュネーの動きをみてチップをベット
地味な勝ち方で損しないようにしつつ怪しまれないように
オズが大勝できるように賭けてくれたら多分ばっちり

警戒されないようにきよしの飯を食うがきよしの動きに
(え、これ俺もやらないとダメ?)
しょうがないからゆっくり動く

(あ、なるほど…そうやってイカサマしよーとしてたのか)
動きが遅くなれば観察もしやすくなる
猫で敵のイカサマを確認したら
オズが気をそらした隙に阻止!

あれ。なんかしよーとしてたわけ?
そんなわけないよなぁ?とにやり

山盛りのチップにドヤ顔
そっとぴーす返して
シュネー、めっちゃいい仕事してたな



「へえ、この天井の丸い飾り……鏡を貼り付けてあるんだ?」
 ミラーボールを見上げる浮世・綾華(千日紅・f01194)の髪に細かく乱射した光の欠片が降り注いだ。気分を盛り上げるためだろうか? カジノ場は光と音の洪水が躍る興奮の坩堝。
「わあっ、きらきらだっ」
 オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)の足取りも自然と軽やかになる。パーカッションのリズムに合わせてオズのまぶたもぱちぱちと瞬いた。
「グリードオーシャンのカジノもこんな風だったっ。真っ赤な絨毯にテンポの速い音楽っ」
「はは、オズ喋るスピードが早くなってる」
 つん、と砂羽風・きよ(ナマケきよし・f21482)の指先がオズの鼻先に軽く触れる。
「カジノの島なんてあるのか?」
「うんっ」
「へー、俺はあんまギャンブルとかしねーなぁ。つか、2人もしないイメージあるけど」
 きよは顎に手を当て、改めて連れを見た。
 オズは無邪気に目を輝かせてふわふわと笑っているし、綾華の瀟洒なたたずまいはこれだけ騒々しい場所にありながら普段とまるで変わらない。
 ふと、はしゃぐオズと保護者のように寄り添う綾華の会話が漏れ聞こえた。
「ルーレットっ、どこにはいるかあてればいいんだね」
「ああ、わりと凝ってて綺麗な台だな。赤と黒の二色か」
「アヤカの目と髪のいろとおんなじだねっ」
 ――うん、どー考えても俺ら、浮いてる。
(「浮いてるついでに、どーせなら楽しいことやりたいよなぁ。イカサマ……普通に俺がやったらバレる気がするし、それなら」)
 腕をまくりきょろきょろと見回して屋台を出せるスペースがあるのを確認。ちょいちょいとディーラーに耳を貸すようにジェスチャーし、こっそりと訊いた。
「なぁ、ずっとこんな勝負してたら腹空かね?」
「え? いや、別に」
「いやー、俺さっきから腹が鳴っててよ。料理作らせてもらうわ!」
 そこからはきよの独壇場だった。有無を言わさずに持参したヘラで火を通した焼きそばは出来立ての熱々で、オズはさっそく手を合わせて頂きます。
「おいしいっ」
「まあ、悪くないかな」
 なんで俺まで付き合ってるんだろう……綾華がもそもそと箸を動かしていると、隣できよが不思議な動きをし始める。
「よぉぉし、腹もいっっぱいになったから俺らもやるかぁぁ」
「わーたーしーはー、この数字にするーっ。黒の00っ」
 まるで時間がゆっくり過ぎているみたいに、いつも以上におっとり喋るオズ。
「アヤカはー、どれに賭けるー?」
「え、えーと……」
 ちらりと、きよを見るが期待を込めた目で見つめ返された。
「あ……じゃ……あ、黒のー……――」
 しょうがないので、綾華もふたりに合わせてゆっくりと言葉を紡ぎ、スローモーションのように時間をかけてチップを配分する。膝から滑り落ちた黒猫がきよたちと同じくもたもたしているディーラーの足元で可愛らしく尾をくねらせた。
(「どうよ、俺の最後の晩餐は……! あの焼きそばを拒否った時点でディーラーの行動速度は5分の1になる」)
 きよの目論見通り、仕事中の差し入れを断ったディーラーは屋台飯を楽しんでいない対象としてカウントされた。きよたちがゆっくりしているのはこちらの術中に嵌っている彼に怪しまれないための演技である。
 あ、と綾華は目を見張った。
 ディーラーがベルを鳴らし、ベットを受け付ける。参加者の目がチップに集まった隙にルーレット台のホイールを不自然に弄ったのだ。
(「なるほど……そうやってイカサマしよーとしてたのか」)
 黒猫を通して目撃した綾華は片目を瞑り、きよに了解の視線を送る。それを受けたきよはディーラーから見えないように親指を立てた。
「おぉし、どこに入るかぁぁねぇ」
 準備万端、本番はここからだ。
(「イカサマはじめてだけど、わるいことはよろこんでもらえるって聞いたからがんばろうっ。ね、シュネー」)
 チャンスは次のゲームの始まりと共にやってきた。
 イカサマの主役はオズにこっそり磁石を持たされたからくり人形のシュネーである。オズはルーレットの盤面を確認しつつ、見えない糸を繰って彼女をテーブルの下へと送り込んだ。
 そろそろ、どきどき。
 作業中のオズから少し離れた場所で、黒猫がじっと身を伏せて出番を待っている。シュネーはルーレット台の舞裏に飛び付き、磁石を伸ばした。
 ディーラーが最後の確認を取る。
「追加は?」
「そうだな……」
 綾華はそれまで損しないよう地味に増やしておいたチップを黒の00周辺へ置き、一気に勝負をかける。
 先程と同じようにディーラーは客の注意がチップへ向いている間に細工を施そうとするが、シュネーの方が早かった。
「もうちょっと右かな……はいったっ、黒の00っ」
 オズは思わず胸の前でちいさな可愛いガッツポーズ。
「ちょ、ちょっと待ってください。テーブルの下に何か――」
 だが、ディーラーが覗いた時にはもうシュネーの手に磁石はなかった。うまくブローチの裏に隠すことができ、ほっと胸を撫でおろす。
「ねえ、ディーラーさんはずっとルーレットしてるの?」
 気を取り直して次のゲームの準備を進めるディーラーの気を逸らすように話しかけるオズ。
「ええ、まあ……」
 ――その指先が台のホイールに伸びたのを綾華は見逃さない。
「あれ。なんかしよーとしてたわけ?」
 ぎくりと息を呑むディーラー。
「そんなわけないよなぁ?」
 にやりと笑みながら追及すると、面白いように動揺してくれる。
「そ、それはもう……!」
「あっ、いまのわたしも見たっ」
「おぉぉ、俺も見たぞおぉぉ!」
 やいのやいのと文句をつけられたディーラーは以後、ホイールに手を触れられなくなってしまった。
 こうなれば【PZ】の勝ちである。
 時折、きよだけが負ける隣で綾華の前にどんどんと積み上がっていく色とりどりのチップ。
「うおぉ、やったぁじゃねぇかあぁ」
 きよは諸手を挙げて喜び、オズは両手でぴーす。
「アヤカかっこういいっ」
「ま、こんなものかな」
 満足そうに椅子の背もたれに寄りかかった綾華はそっとぴーすを返した。功労賞の黒猫とシュネーには後でたっぷりとお礼をしなければなるまいと、そう思う綾華であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ファルファラ・ガーデンニア
はぁ、マンションにカジノ。違法カジノとかワルカッコいいみたいな感じなのかな?
だけどさ家賃を払って欲しい大家さんに素直に払った方が穏便にすむんじゃ…それでちょっと多めに払って見逃してもらう。所謂買収…そう言う思考は彼らにはないわけだね…さすがDKWの民だ。

とりあえずカジノで遊んでみればいいの?
じゃあ、僕はルーレットで。
ふふ、ディーラーさんよろしくね【誘惑】
さてイカサマにはイカサマを…ルーレットのに植物の種を撒いて後は任意で生やせば…。
はい。ピッタリの数字。僕の勝ち。
イカサマだなんてそんな…僕がそんなことするようなワルい子に見える?君たちの方がワルくてカッコいいはずだろ?【誘惑】【言いくるめ】



「はぁ……」
 気だるげに髪を指先に絡め、ファルファラ・ガーデンニア(花の悪魔の魔王・f31697)はギャンブルに興じる悪魔たちを呆れた眼差しで眺め渡した。
 ――もっと頭を使えばいいのに。
 例えば、所謂買収だとか。やり方はこうだ。家賃を払って欲しい大家さんにちょっと多めにお金を渡して見逃してもらう。これだって充分にワルだし、何もこんな風にマンションをカジノにして大事にする必要はないだろう。
「素直って、大切……」
 ルーレットを選び、台の前に座るファルファラの髪に瑞々しいヒヤシンスが花開いた。花言葉は『ゲーム』あるいは『勝負』。気付いたディーラーの目がファルファラの前で止まった。
「素敵な花ですね」
「ふふ、ありがとう。今日はよろしくね」
 頬杖をつき、上目遣いに微笑みかける。
 今度は薄黄色をした樒が咲き、甘い匂いを漂わせる。ディーラーの目が不自然に泳いだ。誘惑成功。さあ、あとは仕上げだ。
「よろしいですか?」
「うん、これでいくよ」
 ファルファラは鷹揚に頷き、こっそりと台の下に種を撒き落とす。
「――ん?」
 ディーラーが気付いた時には後の祭りだ。
「はい。ぴったりの数字。僕の勝ち」
 手際よく、ボールが止まるタイミングに合わせて台を操作したのは、種から伸びた植物の蔓であった。
「イ……イカサマだ!」
 同席していた悪魔たちが一斉に立ち上がる。
 ファルファラはその指摘すら想定していたかのように、やれやれと肩を竦めてすっとぼけた。
「イカサマだなんてそんな……僕がそんなことするようなワルい子に見える? 君たちの方がワルくてカッコいいはずだろ?」
 にっこりと極上の笑みを浮かべ、それとも、と訊いた。
「いちゃんもんをつけてまで僕の気を惹きたいの? でも残念。赤い薔薇はまだ咲かない……君らではだめなようだね、あしからず」

大成功 🔵​🔵​🔵​

矢来・夕立
【不正】f01867/手帳さん
正々堂々不正をやったって褒められそうな世界ですね。
…アンタその銃でオレの頭をぶち抜く気でしょう。やり方が雑なんですよ。
まあ知識をもらうこと自体は吝かではありません。やり方はともかく。

・方針
配る側には回れませんね。シンプルに袖隠しと行きましょう。
他所のテーブルから同じ規格のトランプをパクります。
服の袖にジョーカーを仕込んで、《闇に紛れて》手札を調整。
イカサマで手堅く勝ったってキリがありません。一発勝負です。

ジョーカーのファイブカード。

…イカサマ?なんの話でしょう。
ジョーカーが五枚入ってたんじゃないですか?逐一確認しました?設備の不良を客のせいにしないでもらえます?


納・正純
【不正】f14904/夕立
聞いたか夕立、ここじゃ正しいことより悪いことが推奨されてるらしい
面白え、それじゃ不正な手段で荒稼ぎに行くかい
取引しろ、夕立。俺の知識をくれてやるから、お前の技を貸しやがれ

・方針
UC【矛盾原理】で夕立に『俺が持つイカサマの知識』を撃ち込み、テーブルに座らせる
あとは任せるさ、手先の細かさじゃ俺よりも夕立の方が上だろうからな
俺は二人の賭けを見学し、ディーラーサイドのイカサマを許さないよう監視して圧をかけておこう
職業柄、『よく見る』ことは得意でね

・台詞
雑で悪いな、俺に出来るのは銃を撃つことだけでね
ディーラーさんよ、イカサマを主張するならすり替えの現場を抑えないと水かけ論だぜ



 黒い手袋に包まれた華奢な指先がトランプを箱ごとくすねていった事にその場の誰もが気付かなかった。
 ――さぁ、正々堂々と不正を始めよう。
 ついさっきの出来事である。矢来・夕立(影・f14904)と納・正純(Insight・f01867)は肩を並べ、騒がしい場内を物色するように見渡していた。
「聞いたか夕立、ここじゃ正しいことより悪いことが推奨されてるらしい」
「ふぅん……アンタ、ここなら優等生になれそうですね」
「はっはァ! 面白え、ならさっそく荒稼ぎに行くかい。――取引しろ、夕立」
 ぴたりと眉間を狙う銃口の奥に潜む闇を夕立は悟りきった眼差しで見つめた。相変わらず、この男はやり方が雑に過ぎる。
「悪いな、俺に出来るのは銃を撃つことだけでね」
「何が欲しいんです?」
「お前の技」
「で、何をくれるんです?」
「俺の知識」
 とんとん、と正純はこめかみを指先で示した。
「フェアトレードだ。一緒に勝者になろうぜ」
「……まあ、いいでしょう。やり方はともかく、取引自体は悪くない」
 否、正純に“取引”を持ち掛けられた時点で夕立に選択権はなかった。親愛なる対抗心を籠めた一瞥をくれて、一言。
「ずるい男ですね」
「さっそく褒められたな。常識の狂った世界も悪くねえ」
 銃声。
 そして、他所のテーブルの上にあったはずのトランプが全て無くなったのである。ここまでが、下準備。

 正純は深々と椅子に腰かけて紫煙をくゆらせた。面白がるようにずっと唇の端を上げている。ディーラーに声をかけられても、もったいぶったように顔の前で手のひらを左右に動かして参加を断った。
「俺は見学でいい。よく見させてもらうよ」
 じっと見つめられたディーラーの手先が微かに乱れる。そうだ、視線だって十分な武器になる。果たしてこの“眼力”を出し抜き、底無しの“闇”を捻じ伏せることがお前にできるのか?
「――」
 夕立の脳内を何パターンものイカサマが駆け巡る。配る側には回れない。ならばと服の袖へ隠していたカードを手札とすり替え、手持ちのチップを全てベット。
「オールイン」
 ディーラーの眉が不自然に片方だけ上がるのを正純は見た。
(「伸るか反るか?」)
 勝負を降りる手も残されている、が――ディーラーはコールを選択。喉を鳴らし、逃げなかった相手に賞賛の拍手を送る。
 カジノ中の視線がふたりの手元に集まった。
「……フルハウス」
 先にディーラーが手札を開けた。夕立がそれに続く。ゆっくりと翻されるカードの一枚目はジョーカーだった。
「まさか、ファイブカード?」
 悪魔たちの間で囁きが交わされる。
 だとすればディーラーに勝ち目はない。ジョーカー以外の数字が全て同じカードという、あのロイヤルストレートフラッシュよりも強い役だ。
 しかし、イカサマの真骨頂はここからであった。
「え?」
 驚愕のざわめきが一気に広がる。
 ――二枚目も、ジョーカー。
「ありえない!!」
 ディーラーが椅子を蹴飛ばして立ち上がる。夕立が指を離すと、テーブルの上では計五枚のジョーカーが揃っておどけた笑いを浮かべていた。
「ジョーカーのファイブカード……!?」
 イカサマだということはその場の全員が瞬時に理解した。どよめき、喝采が上がる。こんなイカサマは誰も見たことがなかった。
「すげぇ、すげぇ!!」
「一体どうやったんだ?」
 我先にとテーブルを覗き込んでくる悪魔たちを振り払い、ディーラーはあくまで認めないつもりだ。
「ちょっと待って。ジョーカーが五枚も入っているなんてありえません。これはイカサマです」
「本当に?」
 夕立はジョーカーを口元に当てて嘯く。
「ちゃんと逐一確認しました? 設備の不良を客のせいにしないでもらえます?」
「そうだそうだ」
 腕組みをした正純が野次を飛ばした。
「ディーラーさんよ、イカサマを主張するならすり替えの現場を抑えないと水かけ論だぜ」
 にやりと笑い、短くなった煙草の火を消した。じきにここは戦場になる。見学は終わりだ。椅子を蹴り立ち、銃を抜く。
「遊びはここまでだ。とっとと払うもん払って、こっから立ち退いてもらおうか?」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『淡水の悪魔』

POW   :    進撃!お魚軍団
レベル×1体の【お魚軍団】を召喚する。[お魚軍団]は【水】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
SPD   :    淡水砲
【指先】を向けた対象に、【水鉄砲】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    悪魔降雨術
【淡水の雨】を降らせる事で、戦場全体が【川や湖】と同じ環境に変化する。[川や湖]に適応した者の行動成功率が上昇する。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 幸い、地の利は悪魔たちの方にあった。
 逆に言えば、それ以外の全ては猟兵たちに有利だと言える。破産して用無しになったカジノを捨て、悪魔たちは逃げ出したのだ。
 管理人でさえも全貌を把握しきれていないマンションダンジョンの露台から露台へと跳び、猟兵を自分たちの縄張りへ引きずり込むためにわざと時折後ろを振り返っては、きちんとついてきていることを確かめて再び足を速める。
 本来なら、あのままカジノ化したエントランスで他の悪魔たちの力を借りて袋叩きにしてやってもよかったのだ。なのに同席していた悪魔たちときたら、「いやー、すっごいワルだったな! 弟子入りさせてもらいたいくらいだったよ」だとか「一緒に写真撮ってください、家宝にします」だとか言いつつ喜んで寝返ってしまったのである。
「ミスターにも報告しなければなりませんね……」
 つい先月、このマンションダンジョンに現れた巨大な黒竜。カジノを運営してギャング達から金を巻き上げることを提案したのはミスターであった。雇った悪魔の給料さえも踏み倒すその悪辣なやり口に心酔していた者たちも、目の前であれほど華麗なイカサマを見せつけられては気が変わるのも仕方ない。
「では、私が」
 ひとりが頷き、ミスターの元へと急いだ。
 残りは散開して近くの物陰に身を潜める。いつしか、景色はたっぷりと淡水で満たされた水槽が並ぶ区画へと移り変わっていた。
 ここは、彼女たち淡水の悪魔の領域。
 LEDライトに照らされた水中には美しいメタリック色の熱帯魚が自由に泳ぎ回る。赤、水色、ゴールドイエロー、白、エメラルド。優雅だけれど、彼等は獰猛だ。テリトリーを侵した相手を決して逃すことなく、水属性の攻撃で追い回す。
「さあ、どこからでもいらっしゃい。お相手してあげますよ、猟兵さん」
 誘う声は水槽に反響し、出どころがわからないまま儚い泡沫のように消えていった。
ファルファラ・ガーデンニア
へぇ、熱帯魚。なかなか綺麗なものだね。
けど僕の花も負けてはいないよ?【誘惑】

うん…淡水はいいよね。海水じゃないなら問題ないよ。まぁ、海水でも育つ植物はあるけどほとんどの子は塩に弱いから。

僕がこうやって猟兵の仕事をきっちりやってるのを見たら喜ばれそうで嫌なんだけど…。
まぁ、数には数で…
UC【花の魔王軍】

よろしく僕の配下さんたち。

管理人さんは後でしっかり滞納されてる家賃。
回収するんだよ。


岩倉・鈴音
後からくる者たちに示唆するような、そんな戦いをしたいね。
銀河連合突撃斬り込み隊長推して参るー!

地形の変化や水中戦はスキルで対応だね。
おそらく、ギャンブルでみんな沼に引きずりこむ算段だったか……!
魚やら悪魔の能力、見極めてあげるよ。
切り込みや貫通攻撃で確実に魚は仕留めてみる。
スピードで回避をしつつ、魚を追いかけさせ集めて範囲攻撃、ヒットアンドアウェイの要領で時間かせぎ。
ダメージうけたら攻殻毛ガニ大神っ。
どうやら見せるときがきたわ。
銀河連合の秘奥義!かいふくっ



「へぇ、熱帯魚。なかなか綺麗なものだね」
 水槽越しに微笑むファルファラ・ガーデンニア(花の悪魔の魔王・f31697)の声色は蠱惑的な響きに満ちている――さぁ、美しく咲き誇る花々よ戦場を花園へと変えてしまうといい。
「これは、花……!?」
 天井付近に身を隠していた悪魔は鬱蒼と茂る蔓や蔦が水槽を覆い尽くしてゆくのを驚きの眼差しで見つめた。
 ファルファラはくすりと笑い、次々と花咲いた蕾のなかから配下のモンスターを呼び出しながら独り言つ。
「うん……淡水はいいよね。海水じゃないなら問題ないよ。まぁ、海水でも育つ植物はあるけどほとんどの子は塩に弱いから」
「くッ」
 盲点であった。緑は水を吸い、瑞々しく成長する。むしろこの状況は花の悪魔であるファルファラにとってもやりやすい環境であったのだ。
「いきなさい!」
 悪魔の号令が熱帯魚を含む水槽の水を中空に泳がせ、直接体当たりをする形で猟兵を襲わせる。だが、岩倉・鈴音(銀河連合偵察員【第六猟兵世界担当】・f09514)はうまく水流をいなして初撃を躱した。
「!」
「ンフフ、驚きました?」
 水中戦ならお手の物。鈴音は軽く剣を振るい、向かって来る魚の群れを確実に斬り払う。どうやら熱帯魚たちは自分の周囲に水膜を纏った格好で弾丸のように突っ込んでいくのが役目らしい。後から来る猟兵にそれを知らせるため、鈴音は声を張り上げた。
「気を付けてね、こいつら有無を言わさず飛び込んでくるよ……!」
 すぐさま剣を構え直すと、逆にこちらから撃って出た。
「銀河連合突撃斬り込み隊長推して参るー!」
「な――ッ」
 一気に距離を詰められた悪魔の焦った声。魚たちも鈴音の早業に翻弄され、攻撃は空を切る。
「ギャンブルでみんな沼に引きずり込む算段だったんだろうけど、甘かったね」
 鈴音は群れを十分に引き付け、全部まとめて薙ぎ払った。反撃が来る前に後方へ跳躍、代わりに前へ出たのはファルファラの命を受けたアルラウネたちである。
「魔王様がちゃんと猟兵のお仕事をしている喜び!」
「いつもご自分のお城に引き篭もりがちの魔王様が! 嬉しい、嬉しい!」
 ……そうやって喜ばれると、複雑な気分になるファルファラであった。別に、好きで引き篭もっているわけでもない。ただちょっと、今の世界の状況が自分に合わないだけで……。
「いいから、よろしく頼むよ僕の配下さんたち。ああそれと、管理人さんは来てる? 後でしっかり滞納されてる家賃回収するんだよ」
「は、はーい!」
 遠くで隠れている管理人が力強く手を振った。
「はッ!?」
 悪魔は遂に眼前にまでたどり着いた鈴音に気付き、慌てて熱帯魚の弾幕をつくる。だが、それが悪かった。真正面から群れに飛び込んだ鈴音はここぞとばかりに銀河連合の秘奥義を発動――!!
「カ……カニ!?」
「そうよ! どうやら見せるときがきたようね?」
 どこからどう見てもデッカイ毛ガニが悪魔に体当たりし、デッカイハサミのような腕をちょきちょきと動かした。
「や、やだっ、こないでください!」
「ンッフッフ、それは聞けない相談よ」
 毛ガニもとい鈴音は攻撃を受ける度に腕の数を増やし、身長を倍々で増やしていった。しまいには見上げるほどに大きくなって悪魔の前に立ちはだかる。
「あ……あ……」
「反省するならいまのうちよ! さあ、ちゃーんと家賃は払ってもらいますからね?」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浮世・綾華
【PZ】

やる時はやるの?
って、結局センセー頼りじゃん

どーも、久しぶりデス
うん、一緒に出掛けた時に買ったあやかしメダルに住んでてさ――
っと詳しい話はまた後でな

センセの攻撃がすごいんじゃん
きよし、今日の夕飯はかっぱ巻きにした方がいいんじゃない?
オズの言葉に目を瞬かせ、軈て悪戯に
ふふ
そうだよ、食べちゃうの

そんならオズ
俺らも負けじと連携しようか

水相手はあんまり得意くないんだケドも
攻撃手を弱めるくらいなら?
オズの行動を見つつ、攻撃を引き付けるように動き扇で跳ね返す
隙を狙って咎力封じ
目を合わせれば分かる、「今だ」って

俺らもすごかったでしょ
センセー
今度は俺らと連携しよーよ

おっけー
きよしとの連携は囮作戦な


砂羽風・きよ
【PZ】
俺だってやる時はやるぜ!
――先生手伝ってくれ!

俺は強くなるために弟子になったんだ

「わしを頼ってるではないか」
ま、まぁ、いいだろ!俺も戦うし!

「なんじゃ、その言い方は」
…すみません!よろしくお願いします!

俺はデッキブラシで魚に突き刺し
先生には皿を投げて攻撃をしてもらう

よっしゃ、見たか綾華オズ!
俺達の連携スゲーだろ!

ふはは、まだまだこんなもんじゃねーぞ!
先生!お願いします!

「全く頼りよって」
術で水の渦を作り敵を巻き込む

俺だってスゲーだろ?!
へへ、そうだな!カッパ巻き何本も作ってやるぜ!
オズも綾華も食うか?

「そうじゃな、おぬし達の方が強そうじゃ」

お、おいおい!綾華、オズ!
俺とも連携しよーぜ!


オズ・ケストナー
【PZ】
せんせい?
アヤカもしりあい?

現れた河童に目を輝かせ
はじめまして、わたしはオズだよっ
キヨのししょーなんだねっ

わかった
おはなしは、あとでのおたのしみ
いくよっ

すごいすごいっ
キヨとせんせいに拍手

せんせいはかっぱまきがすきなの?
かっぱが巻かれる姿を想像して、そういう遊びだと思っていたら

……たべもの?たべちゃうの?
きょとん

おっけーっ
アヤカに応えて駆け出す
シャボン玉に乗り素早く魚の間を縫って
アヤカと目が合えば悪魔の動きが抑えられる

ありがとうの言葉の代わりに
魔鍵を振り下ろし生命力吸収

かんりにんさんに、お金をはらわないとダメだよっ

わあ、うんうん
わたしもせんせいとれんけいするっ
ふふふ、キヨもいっしょにねっ



なるほど、なるほど――一瞬で状況を察した砂羽風・きよ(ナマケきよし・f21482)はデッキブラシ片手に一枚のあやかしメダルを指先で弾いた。
「俺だってやる時はやるぜ! ――先生手伝ってくれ!」
 だが、どろんと現れたカッパ先生の鋭い突っ込みがきよを直撃。調子のよい弟子を容赦なく喝破する。
「さっそく、わしを頼ってるではないか」
「ごもっとも」
 その小気味よさがおかしくて、浮世・綾華(千日紅・f01194)は吹き出すように軽く笑った。
「やる時はやるのかと思ったら、結局センセー頼りじゃん」
「い、いいだろ! 俺も戦うし! ぷはっ!?」
 水鉄砲と一緒に「なんじゃ、その言い方は」なんて叱られたらさすがのきよも形無しである。
「……すみません! よろしくお願いします! 力を貸してください!」
「うむ。まあ、いいだろう」
 ふたりのやり取りをきょとんとして見守るオズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)の顔におっきな「はてな」が浮かんだ。
 興味津々に目を輝かせ、皆を順番に見つめてから尋ねる。
「せんせい? アヤカもしりあい?」
「うん、一緒に出掛けた時に買ったあやかしメダルに住んでてさ――。ね、センセー? どーも、久しぶりデス」
 礼儀正しく挨拶する綾華に習い、オズもぺこりとお辞儀した。
「はじめまして、わたしはオズだよっ。キヨのししょーなんだねっ」
 すると、先生の方も「うむ」とまんざらでもない様子で頷いた。そこへ降り注ぐ不意打ちの水鉄砲。綾華はひらりと着物を翻して躱し、オズに向かって笑いかけた。
「っと、詳しい話はまた後でな」
「うん、わかった」
 あとでのおたのしみだね、とオズも楽しそうに微笑み、
「いくよっ」
 オズの周りをおおきなシャボン玉が取り囲んだ。ふわふわとマンションダンジョンうを浮遊しながら移動する。
「みつけたっ」
 水槽の陰に隠れていた悪魔と目が合い、にっこりと手を振った。
「え、わっ――」
 驚いて体勢をくずしたところへ先生の投げた皿が直撃。とっさに魚たちを呼び戻そうとするが、きよが高々とデッキブラシを突き上げる。
「とったぞー!」
 悪魔の操る魚たちが柄に突き刺さり、ぴちぴちと尾を動かしていた。
「すごいすごいっ。いきがぴったりだねっ」
 見事な連携に、オズはいっぱい拍手する。
「へへっ、俺達の連携スゲーだろ!」
 きよは得意げに親指を立て、喝采に応えた。一方、綾華の方は戦いの最中においても冷静であった。
「センセの攻撃がすごいんじゃん」
 なんて憎まれ口を叩くのを忘れない。
「あ、綾華ァ! お前こんな時まで!」
「きよし、今日の夕飯はかっぱ巻きにした方がいいんじゃない?」
「だからきよしじゃなくてきよ! カッパ巻きは何本だって作るけど!」
 きよは律儀に反応し、ちらりとふたりに視線を流しながら呟いた。
「オズも綾華も食うか?」
「えっ」
 オズは目をぱちくりさせ、きよと先生を交互に見やる。
「たべるの? あそびじゃなくて?」
 ぴんときた綾華が揶揄い混じりに訊いた。
「オズ、さてはかっぱ巻きって先生が巻かれてる姿を想像してるな?」
「うんっ」
 力いっぱい頷くオズにきよは「マジでか」と神妙な顔になった。しかし、綾華は「ふふ」と軈て悪戯っぽく目を輝かせてオズの耳元に嘘を吹き込む。
「そうだよ、食べちゃうの」
「ええっ」
 驚くオズ。綾華は堪えきれないように腹を抱え、肩を震わせている。きよはお手上げだとばかりにふたりから離れ、先生と一緒に敵を薙ぎ倒していった。
「こいつら、やる……!」
「ふはは、まだまだこんなもんじゃねーぞ! 先生! お願いします!」
「全く頼りよって」
 ぼやきつつ、先生はちょちょいと指先を動かしただけで水の渦を作り、魚たちをくるくるまとめて巻き込んでしまった。
「っし!」
 スゲーだろ、と言わんばかりにピースしてくるきよを綾華は適当にあしらい、オズを呼び寄せる。
「いいね、準備が整ったら合図するから」
「おっけーっ」
 ――さあ、二重奏のはじまりだ。
 素早く群れと群れの合間をすり抜けるシャボン玉に魚たちは追いつけない。どちらかというと、綾華にとって水は相性の悪い相手だ。
「でも、攻撃手を弱めるくらいなら――」
 迫る魚を扇で跳ね除け、舞うような仕草で十分に注意を惹きつけたところで、突如として周囲に伏せておいた拷問具が敵へと殺到。
 ――目と目が、合った。
 ありがとう、と声に出して伝える代わりにオズはおもいっきり魔鍵を振り下ろす。逃げ場を失った悪魔は生命力を吸われ、ふらふらと倒れ込んでしまった。
「かんりにんさんに、お金をはらわないとダメだよっ」
「は、はーい……」
「あとなんにんいるの?」
「ご、ごにん……」
「ふーん、なるほどね」
 綾華は閉じた扇で肩を叩き、流し目を送る。
 まだ、敵がどこかに隠れているのだ。
「センセー、今度は俺らと連携しよーよ」
「そうじゃな、おぬし達の方が強そうじゃ」
 先生は一も二もなく頷いた。オズが「わあ」と嬉しそうに手を挙げ、「わたしもっ」と名乗りを上げた。
「わたしもせんせいとれんけいするっ」
「お、おいおい! 綾華、オズ! 俺とも連携しよーぜ!」
 慌てて間に割り込むきよに綾華は涼やかな眼差しを向け、面白がるようにこんな提案をする。
「おっけー。きよしとの連携は囮作戦な」
「だからきよ! つかなんで囮!?」
「ふふふ、キヨもいっしょにねっ」
 オズが右手に綾華、左手にきよの手を繋いだ。ばんざーいっと皆で気合いを入れるように大きく振り上げる。
「みんなで、がんばろーっ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルルマ・リュネール
あら、綺麗なところ。水族館みたい
カジノといいある意味名物いっぱいのマンションじゃない
私オフは静かにのんびり過ごしたいタイプだから住みたいとは思わないけど

家賃滞納もワルだなーって感じるけどそれはそれとしてお仕事だもの
しっかり払って退去してもらおうかしら

本業はドロボウだけど銃の扱いだって結構自信あるのよね
ヴェリテで魚を撃ち落としつつ視力で本体の位置を捉えて威嚇射撃
相手のUCを引き出したらそれに合わせてこちらもUC発動
魔力を込めて相殺を狙う

……ああ、ところであなた
さっき私が威嚇で撃った弾覚えてる?
あれ、誘導弾だから。戻ってくるわよ



「ふうん……熱帯魚が泳ぐ水槽、ねえ」
 まるで水族館のようなマンションダンジョン。水滴に映る紅はライトによって拡散し、ルルマ・リュネール(怪盗リュネール・f31597)の居場所をひとつに絞らせない。しなやかな身のこなしで水流を躱し、黄金の銃――ヴァリテを腰から引き抜いた。。
「悪魔さん? カジノといいこの場所といい、ある意味名物いっぱいのマンションじゃないの。ギャング相手にちまちまと稼いでいないで、せっかくだから観光客でも呼び込んでみたらいかが?」
 もっとも、と銃身に口付けながら本音を呟く。
「私オフは静かにのんびり過ごしたいタイプだから住みたいとは思わないけど」
 ちらりと横目で捉えただけで、ルルマは相手の足元を狙って引き金を引いた。弾は足場に当たり、跳弾してどこかへ消えてしまう。
 はっと気づいた悪魔が人差し指をこちらに向けた。
「そこですね……!」
 わざと注意を引かれたのだとは思いもよらず、ルルマの思惑通りに事は進む。
「そう、それが欲しかったのよ」
 激しく迸る水鉄砲目がけ、放たれた魔弾が衝撃波を生んで嵐のように荒ぶった。
「まだまだ……ッ」
 悪魔もねばる。
 だが、ルルマの悪戯っぽい一言が敵の集中を奪っていった。
「……ああ、ところであなた。さっき私が威嚇で撃った弾覚えてる?」
「え?」
 驚いて目を見開く悪魔に、ウインクひとつ。
「あれ、誘導弾だから。戻ってくるわよ」
 ――肩越しに振り返る悪魔目がけ、ヴァリテより放たれた魔弾が文字通り“戻って”くるではないか。目を回して倒れた悪魔に投げキスして、ルルマは長い髪をゆったりとかき上げた。
「家賃滞納するワルもいいけど、それはそれとしてしっかり払うもの払ってもらうわよ」
 ところで、と頬に指先を当てて首を傾げる。
「この魚全部あなたたちのものなの? 引っ越しするのにこれ片付けるのは大変そうねえ……まあ、頑張ってちょうだいな。こういう綺麗なのは私、嫌いじゃないわ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐々・夕辺(サポート)
『…なによ。笑えと言われて笑えたら苦労はしないわ』
 妖狐の精霊術士×スカイダンサーです。
 普段の口調は「私、あなた、(名前)さん、ね、よ、なの、かしら?)」です。

ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。

巧く笑えないけれど、情緒は普通の女の子です。
笑顔や大笑いすることだけNGです。
よろしくおねがいします!



「どいて、巻き込まれるわよ!」
 淡水の悪魔を追いかけ、マンションダンジョンの深部へと足を踏み入れた佐々・夕辺(凍梅・f00514)は見物に押しかけた悪魔を乱暴に追い払った。
「まったく、ワルに憧れるのはいいけど危険に首を突っ込むのは悪い癖ね?」
 つん、と顎を上向けてわざと突っぱねるように腕を組む。それにしても不思議な場所だ。悪魔はこんなところに住むのが普通なのだろうか。
「どこを見ても水槽だらけ。他のところがどうなっているのか気になるわね……って、あら?」
 ふと上方を見上げた時だった。
 ぎんぎらぎんの電飾に飾られた“いかにも”な部屋がある。目を凝らすと、真っ黒な扉が見えた。まるでダンジョンの最後に待つボスの間みたいな紋章が入った重厚な印象の。
「なにかしら、あそこ――」
 横合いから飛び込んでくる魚の群れを飛びずさって躱し、夕辺は指の間に挟んだ鋼の管を構える。
「いまは目の前の敵を倒すのが先、ってことね? いいわ、まとめて相手してあげる。かかってらっしゃい!」

成功 🔵​🔵​🔴​

矢来・夕立
【不正】手帳さん/f01867

▼方針
夕立:囮・フェイント、【紙技・影分身】を併用
正純:【魔弾理論】による本命の攻撃

魚がこんなに綺麗なのに連れはアラサーのおじさん。
オレはがっかりしました。もっといいひとと来たかった。
しかも忍者をデコイにするって発想、本当にどうかと思うんですけど。
嘆こうが文句を言おうがシゴトは進まないんでやりますが。

分身には分かりやすく雑魚っぽい挙動を取らせる。
こうして付け入りたくなるスキを作ってあげるんです。
イカサマするときも相手は選ぶでしょう?
まあオレとニセモノのどっちを選んでもおんなじですよ。今回の役はブタですから。
スペードのエースは後ろに控えています。


納・正純
【不正】f14904/夕立

ハハ! 奇遇だな夕立、俺もがっかりしてた所さ
まさか魔界まで来てクソガキとお魚鑑賞とは、人生は何があるか分かんねえな
おやまあ、まさか適材適所という言葉をご存じでない?
俺は『見る』と『撃つ』のが専門でね、その他は全部器用な奴に任せてるのさ

・方針
シンプルな作戦で行こうか
ギャンブルと同じさ……いつだって、最後に一番強いのはシンプルな作戦だからな
夕立を囮に用いて、彼が敵の攻撃を誘った瞬間に【魔弾論理】で敵の攻撃もろとも敵を狙い撃つ
命中率の高さが売りなのかい? そりゃ丁度良い、コールだ。乗ったぜ、その勝負
ブタ同士での勝負なら――勝つのは真っ黒な『死のカード』を持ってる方さ



 どうやら、世の中はシチュエーションと同行者の掛け合わせによってその価値が決まるらしい。
「あ、夕立。お前、俺と来たこと後悔してるだろ。顔に出てんだよ」
「気のせいでしょう。本音はその通りですが、顔には出してません。不愛想なのは元からです」
「で、やんのか? やんねぇのか?」
「やりますよ、でなければシゴトが進みませんので。ただ忍者をデコイにするなんて発想、本当にどうかと思いますよ」
「おやまあ、まさか適材適所という言葉を御存知ない? 俺は夕立の器用さを買ってるだけさ」
 カサリ、紙の鳴る音。
 カチリ、撃鉄を起こす音。
 納・正純(Insight・f01867)の前に進み出た矢来・夕立(影・f14904)がふたりになった。正確に言うと、用意した形代が影武者のように分身したのである。
 とっさにどちらを攻撃するか迷った敵に向かって無造作に飛びかかる分身をよそに、夕立は両腕を組んで淡々と戦場を見渡した。
 綺麗だ。
 ライトが反射する鋼色の鱗も、薄っすらと透けてゆらめく水の波紋も。
 ――もっといいひとと来たかった。
「せめてシゴトは完璧にやってくれますよね、アラサーのお・じ・さ・ん?」
「ハハ! そりゃこっちの台詞だぜクソガキ。まさか魔界まで来てお前とお魚鑑賞とは、人生は何があるか分かんねえな」
 この場合、軽口を叩く余裕があるということなのだろう。互いにどちらがよりがっかりしたのかを罵り合いつつ、敵の居所を把握する。
 残り、2人。
 おそらくは少し離れた場所からこちらの出方を窺っている。それだけ距離が離れていたら分身と本体の区別はつくまい。
 わすれるな、と正純は音もなく唇を動かした。先にイカサマギャンブルを仕掛けたのはそちらだということを。
「!?」
 みっつの人影のうち、もっとも動きが遅かった目標を狙って指先を向けた悪魔はあまりの手応えのなさに愕然と目を見開いた。
「これは、囮……ッ!?」
「なら、本物は」
 ぴたりと指先を向けられた夕立は両の手のひらを軽く上向け、首を横に振る。
「残念。どっちもブタですよ」
 夕立が一歩だけ横にずれると銃を構えた“スペードのエース”の姿があった。磨き抜かれた鋼の銃口。真なる式への論理追及に知識の全てを捧げし、魔弾論理の一発をその身に味わえ。
「コールだ」
 とっさに放たれた水鉄砲にもその目は惑わされることなく、指先はトリガーを引き絞る。どちらも命中率には定評がある。飛沫を吹いて襲い来る水流と弾丸がぶつかった途端、互いに真正面から激突した影響で射角がずれた。
「――もらったな」
 だが、それすらも計算のうちだったなら?
「ブタ同士での勝負なら――勝つのは真っ黒な『死のカード』を持ってる方さ」
 跳弾した弾丸が角度を変えて悪魔を貫き、戦闘不能に陥らせる。夕立は形代に戻った紙片を拾い上げ、肩を竦めた。
「……オレを囮役に使ったのは高くつきますよ。手帳さん? 聞いてます? おだてたって無駄ですからね。まったくもう……」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『デビルドラゴン』

POW   :    ドラゴニックコンボ
【黒竜の爪】が命中した対象に対し、高威力高命中の【尻尾攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    ノヴァブレス
【漆黒の炎】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    魔竜軍団
召喚したレベル×1体の【ドラゴン】に【黒き炎の翼】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「すみませんでした……」
 猟兵に叱られ、お仕置きされた悪魔はしゅんとして管理人に謝った。きちんと家賃を払い、順番にマンションを後にする。
「ふう……」
 管理人はひと息をつき、おそるおそるといった様子で上階の物々しい扉を見上げた。
「あとは、あの人か……ああいえ、さっきの悪魔たちを扇動してカジノで荒稼ぎさせていた黒幕ですよ。ミスターって呼ばれてる黒竜さんです。どうします、部屋に踏み込んでみますか?」
 と、猟兵の意向をたずねた時であった。
「これは何の騒ぎだ?」
 低すぎる、聞いた者が思わず震えあがるようなどすの効いた声。当の本人の黒竜であった。管理人はしどろもどろになりながら誤魔化そうとする。
「えっ、あっ、お出かけだったんですか!? い、いやーなんでもないんですよ、ほんと! いやだなーあはは」
「下のカジノ、ぶっ潰されたみたいだが?」
 ぎくっ、と管理人の動きが止まった。
 黒竜はゆっくりと猟兵を見渡しただけで状況を理解したようである。咥えていた葉巻を指に挟み、紫煙をくゆらせながら戦いに誘った。
「で? 俺があいつらみたいに改心すると思うわけねえよな。いいぜ、かかってこいよ。ちょうど部屋に飾る生首が欲しかったところだ、よみどりみどりで嬉しいぜ……!!」
浮世・綾華
【PZ】

よぉ、ミスター
残念ながら部屋に飾る生首にはなってやれねーケド
カジノみたいな刺激は与えてやれるかもよ
な、とオズときよをみて

改心したって、しなくたって
お前は倒さなきゃならねー相手だし
容赦しなくて良さそうだから
俺も楽しませて貰うわ

きよし、ほら早速囮作戦だよ
(オズが純粋に応援してる……まぁいいか)
お、センセとも早速連携じゃん
はぁい、炎は任せました
俺らも頑張りますからねえ

避けきれない炎は絡繰ル指で鍵刀を複製
掴まって空飛びながら避ける
なんだかんだ鍵刀を向かわせきよしも助けてやる

タイミングを見計らって空から奇襲
数多の鍵刀に紛れて、重力のまま刃を下ろす

おしおき
ああ。しっかり俺らに倒されてちょーだい


砂羽風・きよ
【PZ】
あぁ、生首になんてなってやるか!

ちょ、待て待て?!
こんな強そうな奴を俺ひとりで相手すんのか?!
マ、マジか

「はよぅ、行けい!」
先生まで!

オ、オズが応援してる…!
――オズ、後のことは任せた(親指立てた)

くそ、こうなったらやってやる!
『きよしののぼり旗』を持って
ふはは、この俺がお前を倒してやる!
逃げながら攻撃を躱し囮になる

「わしが水で炎を消す、後はお主達で頑張るのじゃ」
ムゲンジョウロを片手に雨のような水を降らす

アチ―!もっと手加減してくれたっていいじゃねーか!
けどな綾華の炎より全然熱くねーぞ!もっとこっち来やがれ!
水を含んだモップ巻き付ける

管理人を困らせることすんじゃねー!
おしおきしてやる!


オズ・ケストナー
【PZ】
うんうん、カジノたのしかったっ
首だけになったらなおるかわからないもの
おことわりだよっ

アヤカが言うなら考えがあるんだと思って頷く
キヨ、ふぁいとーっ

すぐにでも助けに飛んでいけるよう
シャボン玉に身を包み
だいじょうぶだからねの意味込め親指立てる
シャボン玉に乗ればびゅんびゅん動けること、キヨも知ってるものっ
ほら、おっけーだってっ(伝わったと思ってご満悦)

ひそひそ声で
せんせい、すごいすごいっ
よーしわたしもっ

攻撃を回避しながら静かに近づき
アヤカの奇襲に合わせて背後を狙う
魔鍵で生命力吸収

尻尾で払われないよう合間を縫って攻撃
ほらほら、こっちだよーっ

そうだよ、これはダメなわるいことだからねっ
おしおきだよっ



「よぉ、ミスター。留守中に邪魔して悪かったね」
 明け透けな敵の挑発も、浮世・綾華(千日紅・f01194)にとってはあるひとつの戯れに過ぎない。
 乗った、と笑んで。
「部屋に飾る生首にはなってやれねーケド、カジノみたいな刺激は与えてやれるかもよ。な?」
「あぁ、生首になんてなってやるか!」
 砂羽風・きよ(ナマケきよし・f21482)は拳を握り締め、熱く力説。オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)も彼の後を引き継いで話の輪に加わった。
「うんうん、首だけになったらなおるかわからないもの。おことわりだよっ」
「いや、治ってもいやじゃね……?」
 綾華は突っ込むきよの背をとん、と鍵刀の柄で前に押し出し、
「ほら、早速囮作戦だよ」
「え?」
 待て、ときよは手を前に突き出してぶんぶんと首を横に振った。
「こんな強そうな奴を俺ひとりで相手しろってか!?」
「キヨ、ふぁいとーっ」
 応援するオズの瞳がきらきらと輝いている。「わぁ」と綾華は面白がるように目を瞠り、「期待に応えてやれよ」ときよの背をさらに前へ。
「マ、マジか」
 先生も頷き、
「はよぅ、行けい!」
「くそっ、わかったよ。――オズ、後のことは任せた」
 きよが覚悟で親指を立てれば、オズも満面の笑みで同じ仕草を返してくれる。「大丈夫だよ、いつでも助けに飛んでいくからね」――そんな意味を込めたジェスチャーは、きよの視点からだと「逝ってよし」の合図に見えたとか見えなかったとか。
「くそ、こうなったらやけだ! ――おらよ、俺の生首欲しけりゃどっからでもかかってきやがれ!」
 ばさっと黒字に『きよし』の文字が入ったのぼりを引っ掴み、わざと目立つように相手の前に躍り出る。
(「さあこい、さあ――……げっ!?」)
 だがしかし、思っていた以上に巨大な炎が襲いかかってくるではないか。
「せ、先生ッ」
「わしが水で炎を消す、後はお主達で頑張るのじゃ」
「わ、わかった。って、蒸気すらもアチー!」
 囮として敵を引き付けるというよりも逃げ惑うといったほうが相応しそうなきよの奮闘をよそに、綾華はすらりと刀を抜く。お言葉に甘え、炎は先生にお任せしよう。
「俺らも頑張ろうか、オズ」
「えいえいおーっ」
 オズの乗ったシャボン玉は器用に竜尾の攻撃をかいくぐり、天井近くまで一気に上昇。眼下には元気に逃げ回るきよと、如雨露で降らせた雨で炎を抑える先生、それに空中を無数に飛び交う鍵刀の複製を手がかりにひょいひょいと炎を躱す綾華たちの活躍が一望できた。
「せんせい、すごいすごい」
 オズは小声でささやき、音がしないように手のひらを僅かに合わせた。みんなすごい、かっこいい。
(「わたしも、がんばるよっ」)
 みんなと一緒だと、なにも怖くない。
 もっと、もっと、がんばれる――!
「ほらほら、こっちだよーっ」
「ちっ、すばしっこい……!」
 近寄っては一突き、追いかければ逃げる。繰り返しているうちに黒竜が苛つくのがわかった。
「きよし、ひとつ貸しな」
 適当な複製を向かわせて逃げる手伝いをしてやると、きよはあっかんべーで対抗する。
「はは、かわいくないやつ」
 さて、と足元を見下ろした。
「結構高いとこまで来たもんだな」
 軽く手を挙げると、ぴんと来たオズが頷いた。
 黒竜ことミスターも持ち前のビジネス精神がうずいてしまったようで、戦いもそっちのけでスカウト活動を始める始末。
「意外と骨があるじゃないか? 生首にしちまうのは惜しいな。お前ら、俺の下で働けよ」
「――じょおっだん!! 自惚れるなよな、お前の炎より綾華の炎の方が全然熱いし偉そうだし意地悪だしっ、ワルさで言ったらお前なんて綾華の足元にも及ばねー!!」
 きよは黒竜の首に足をかけ、ぐるんと逆上がりの要領で肩に乗っかった。頭の角に濡らしたモップを巻き付けてやれば、これでもう逃れられまい。
「な、なにすんだお前!?」
「おしおきだ! 管理人を困らせることすんじゃねー!」
「ちっ、やめろ、俺の鱗にモップを擦りつけるなっ――――」
 ――すっ、とオズの乗ったシャボン玉が黒竜の背後に忍び寄る。相手は気付いていない。
「そうだよ、わるいこにはおしおきだよっ!!」
「な――」
 いつの間に、と思う暇さえなかった。
 掴んでいた鍵刀を離し、綾華は自由落下に任せて敵の首を斬り払った。同時にオズが突き刺した魔鍵を捻ると、吸い出されるように大量の生命力が黒竜から失われる。
「うッ……」
「どう、カジノよりたのしい?」
 無邪気に尋ねるオズを見ていると、綾華はたまーに心配にならないでもない。なんて温度差。泣きたいくらいに。
「まぁいいか。ミスター? ってわけだからさ、しっかり俺らに倒されてちょーだいよ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルルマ・リュネール
【予告状】
マンションを占拠しイカサマをもって肥やした私腹
怪盗リュネールが頂戴します

盗る直前の予告、無作法でごめんね?
そのお詫びっていったらなんだけどもうひとつ教えてあげる
――あなたの『眼』頂戴するわね
さあ、お仕事の仕上げ、始めようかしら

UC発動して爪の攻撃を動体視力で引き付けて回避
私、眼には自信があるの。そういう悪魔だからね
あなた、こういうのって体験したことある?
眸の悪魔による呪詛で相手の視界を盗む
ふふ、見えないかしら?

それじゃあフィナーレね
鱗は硬そうだし抜くなら柔らかいところ
跳んで。魔力を込めたヴェリテでとびっきりの弾丸を口に零距離射撃で

BANG!!



 ミスターにはミスターの流儀があるようにルルマ・リュネール(怪盗リュネール・f31597)にはルルマの流儀があった。
 カッ、と軽い音を立てて黒竜の顔の脇に突き刺さる一枚のカード。

 “マンションを占拠しイカサマをもって肥やした私腹”
      “怪盗リュネールが頂戴します”

「てめぇ、どっから」
「無作法でごめんね?」
 軽くウインクし、ルルマはすらりと立ち上がる。水槽上部に取り付けられた浄化槽の縁だ。
「――あなたの『眼』頂戴するわね」
 この仕事も残るは最後の仕上げだけ。渾身の攻撃が空を切ったことが信じられなかったらしく、ミスターは驚いたようにルルマを見た。
 目だ。
 あの目が、俺の爪を避けた――!?
 正解、とルルマが笑う。
「眼には自信があるの。そういう悪魔もいるってこと、お見知りおきを❤ あなた、こういうのって体験したことある?」
「!?」
 さあ、眸の悪魔による呪いの一幕をご照覧あれ。自分の顔を手で覆い、愕然と動けなくなった相手に対してルルマは甘く囁いた。
「ふふ、見えないかしら?」
「いったい何をした?」
「盗んだのよ。いったでしょ? 私は怪盗リュネール。予告状を出した以上、必ずそれは奪われる」
 
 ――BANG!!

 真っ赤な竜の口腔内に突き込まれた銃口から硝煙の匂いが立ちのぼる。狂乱の悲鳴すら拍手喝采の代わりとして受け取ってあげましょう。
「とびっきりの弾丸の味はいかがだったかしら? ミスター」

大成功 🔵​🔵​🔵​

納・正純
【不正】夕立/f14904

奇遇だね、ミスター。お会いできて光栄だよ
俺も丁度店に飾るための黒竜の剥製が欲しかった所さ
お誂え向きの相手で嬉しいぜ
夕立、総取り狙いだ 派手に行こう!

・方針
相手への対策は爆発消火狙いで行こう
罠の設置と敵の陽動は夕立に任せよう
どっちみち、俺の担当は「良く狙って」「撃つ」ことだ
罠の位置を掴み次第、UC【六極定理】を発動
レベル1の弾丸を5つ作って罠を狙い撃ち、敵の炎を無力化してやる
敵に隙が出来次第、残りのレベルを全て注ぎ込んだ弾丸を作って、リボルバーで敵の首を狙い撃つ

・台詞
派手に暴れるなよ、ミスター? 修繕費は割り勘だぜ
夕立、後詰めは任せた。できれば鮮やかな切り口で頼む


矢来・夕立
【不正】手帳さん/f01867
アンタの店のことなんかどうでもいいですけど、あんなの飾ってたらお客さんが減りますよ。

・方針
敵UCへの対策:爆発物による破壊消火
夕立:フロアの構造の把握、五箇所に爆薬を設置
正純:銃撃による起爆、トドメ

・構造の把握・伝達
フロアの一番上、一番奥、中間地点。
その辺に式紙を飛ばして貼り付けておきます。
これだけ分かればあとは勝手に弾道を割り出すでしょう。

・爆薬の設置
マンションの構造を利用して隠れながら移動。
延焼を止められる位置を五か所選んで爆薬を設置。
距離を詰める、手帳さんから注意を逸らす。
どちらも目的のひとつではありますが、本命はこれ。

・後詰
…要ります?必要ならやりますが。



 ――影。
 他の猟兵が交戦しているさなか、誰にも知られること無く動いていた矢来・夕立(影・f14904)は最後の式神を吐息で飛ばして柱の中ほどにこっそりと忍ばせた。
 他は天井付近のライト、そして奥の壁など。三点透視法の要領で設置した弾道を導くための布石である。
(「……なんか、体よく使われてるような気がするようなしないような」)
 柱の上から見下ろした連れはなんだか楽しそうにミスターとやらとお喋り中だ。勿論、こちらが罠を仕掛ける間の時間稼ぎではあるのだろうがちょっと仕事量が違い過ぎやしないだろうか?
(「あとで、奢らす」)
 そうしようったら、そうしよう。耳を澄ますと会話の端々が漏れ聞こえる。夕立は音もなく通風口から中二階へと潜り込み、爆薬を仕掛けながら聞き耳を立てた。
「奇遇だね、ミスター」
 納・正純(Insight・f01867)は威嚇するように笑い、撃鉄に触れた親指に力を込める。
「お会いできて光栄……ってやつ? お誂え向きの相手で嬉しいぜ。俺も丁度店に飾るための、そう、お前みたいな黒竜の剝製が欲しかった所さ」
 あくまで対等に啖呵を切る傲岸不遜な態度が気に入ったのか、ミスターは獰猛な笑みを浮かべて正純を見た。
 怒気が陽炎となって鱗から立ちのぼるのを、正純はぞくぞくするような高揚感を覚えつつ見守った。まだだ、夕立からの合図がない。全ての爆弾が設置されるまであと少しかかりそうだ。唸りを上げて迫りくる漆黒の炎を正純はぎりぎりまで引き付けてから背を逸らして後宙一発、着地と同時に斜め右方へ飛びずさる。
 その時、五つ全ての爆弾を設置し終えた夕立がわざとミスターの気を惹くように音を立てて飛び降りた。
「小僧め!」
 小回りが利く夕立にとって、これだけ巨大な相手の懐へ飛び込むことは朝飯前だ。
 辺り一帯はもはや火の海と化していた。構わず黒炎を吐きまくるミスターは半分ヤケなのではないかとさえ思う。
「火傷まみれじゃ生首の価値が下がっちまうわな。怪我する前に自分から差し出しな」
「――だそうですよ?」
 どうします、とくすんだ赤みの瞳が正純を見た。
 合図。
「いいからあんまり派手に暴れるなよ、修繕費は割り勘だぜ……ッ!」
 刹那、正純の瞳が好奇心に燃え上がった。
 これを撃てばお前はどうなる? そう――put your hands upするならいまのうちだぜ、ミスター。
 五つの弾丸が散開して正確に爆弾を射抜いた。爆発音が各所で轟き、噴煙と煙が充満する。
「な……なにが起こった!?」
「知りたいなら教えてやるよ。爆発消火ってやつだ。詳しくは自分でググッて調べやがれ!」
 親指の腹で勢いよくリボルバーの弾倉を回す。先ほど使った五つの弾丸を除く全てを費やした、ただ一発きりの決め弾がカチリと嵌り、
「夕立、後詰めは任せた。できれば鮮やかな切り口で頼む」
「……要ります?」
 鋭い銃声が響いた。
 夕立は両手を広げ、ミスターは仰向けに背中から倒れて動かない。マンションは半壊し、管理人は涙目。
「必要ならやりますが」
「あー……じゃ、片付けでも手伝うか? 死体はちゃんと残ってるな」
 正純は獲物を見つけた猫みたいに目を輝かせた。
「アンタの店のことなんかどうでもいいですけど、こんなの飾ってたらお客さんが減りますよ」
「駄目なん?」
「自己責任でどうぞ」
 あっちでは管理人が「私のマンションがぁああ~」と泣き喚いて収集がつかなくなっていた。屋根が崩れ、仰ぎ見えた燃えるような夕空にうっすらと白い月が昇っていた。
 随分と長い時間を過ごしていたようだ。
 とにかくも、ミスターの討伐によって事件は“無事に”解決された。そういうことにしておこう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月10日


挿絵イラスト