4
カードにすれば何でもあり!?

#キマイラフューチャー #猟書家の侵攻 #猟書家 #忌火起・レッカ #堕悪苦TCG #ゴッドペインター

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#キマイラフューチャー
🔒
#猟書家の侵攻
🔒
#猟書家
🔒
#忌火起・レッカ
🔒
#堕悪苦TCG
🔒
#ゴッドペインター


0




●俺のターンは俺のターン
 薄暗い部屋の中、居並ぶ男女を一人の少年が見渡している。男女は皆執事服やメイド服を纏うが、少年は黒一色のレザー服と言う痛々しい……もとい大変高価そうな服だ。ちなみに部屋はわざわざブラックライトで暗くしたうえで普通のライトをちょこちょこつけるという大変無駄の多い仕様となっている。
「いいか、既にこの街は我ら『堕悪苦(ダーク)TCG』の手に落ちた。だが、この街を手にすることが我々の目的ではない! 我らはこの街を足掛かりに、世界全てをカードゲームに染め上げ、そのカードを制することで世界そのものを支配するのだ!」
 児童誌のホビーマンガのようなセリフを言う少年。まあ彼のような見た目幼い子供が言っている分、いい年したおっさんが玩具で世界征服を図るよりはましかもしれない。
「そのためには、より力のあるカードが必要だ。そしてカードに必要なのは、何よりも美麗な絵! だからこそ我々はゴッドペインターの多く集まるこの街をゲームに染め上げた! あとはゴッドペインターどもを捕らえ、より美麗なる絵を描かせるのみ!」
 そう言いながら少年はカードの束をとりだす。
「もちろん我々『堕悪苦TCG』は暴力などと言う野蛮な手段はとらない。カードバトルにおいてゴッドペインター達を負かし、合法的に協力してもらうのだ。それがこの街の掟なのだからな!」
 そもそもその掟を定めたのも彼らであり、当然ここまで見越しての計画である。
「お前たちには俺が組んだ最強のデッキを与えてやろう。強力なるクリーチャーカードを詰め込んだその名も『猟書家(ビブリオマニア)デッキ』だ!」
 漢字で書いてカタカナの読みを当てるのがポイントらしきそのデッキを配下のメイドが受け取り、使用感を確認するため中を確認する。
『ドーラ・ワルダー』
『ラグネ・ザ・ダーカー』
『マロリー・ドラッケン』
『愛獄人魚マリーツィア』
 ……あっ(察し)
「ちちちちち違う! 間違えた! こ、これはその……あれだ! 試行錯誤の副産物であり今後の研究のためのサンプル品だ! 本物はこっち!」
 慌ててそのデッキをひったくり、別のデッキを渡す少年。こちらはちゃんと色々入っている。最近追加された6枚の新規カードも完備だ。
「さあ行け! 世界を『堕悪苦TCG』のものに!」
 少年の声と共に、彼らは街へと散った。

●お前のターンも俺のターン
「みんなー! カードで遊ぼー!」
 グリモア猟兵ミルケン・ピーチ(魔法少女ミルケンピーチ・f15261)on花園・ぺしぇが、元気よく集まる猟兵に言った。
「あのね、キマイラフューチャーで『忌火起・レッカ』っていう猟書家が、何でもカードゲームで決める街を作っちゃったの。そのカードが現実にも効果を及ぼす危険なカードなんだけど、そのカードをたくさん作るためにゴッドペインターを捕まえようとしてるみたい! だからレッカくんとその手下をやっつけてゴッドペインターを助けて欲しいの!」
 ただね、とミルケンは言う。
「この場所ではカードを通さない行動は全部無効化されちゃうの。だから皆もカードを使って戦わなきゃいけないんだ! カードはみんなに合わせたものを用意してあるよ!」
 どんなに的確で高レベルであろうとも、カードを使わない行動は一切認められない。それがこの街の掟であり、敵も猟兵もそれには必ず従わなければならない。
「まず最初に、部下の執事さんやメイドさんがゴッドペインターを襲ってるから、皆はそこに割り込んでカードバトルで敵をやっつけてね! 助けたゴッドペインターさんに頼めばカードに絵をかき足してパワーアップしてくれるから、お願してみるといいよ!」
 ちなみに対戦中にカードの絵柄を書き換えるのは合法らしい。どうなってんだこのゲームのルール。
「それで部下を全部倒したらレッカくんが出てくるんだけど、レッカくんはみんなをライフポイントがそのまま生命力になる闇のゲーム会場に引きずり込んじゃうの。でもカードバトルで勝てばちゃんと出られるから、カードでやっつけちゃって! でもレッカくんのデッキは部下よりもっと強いよ! 気を付けてね!」
 性格的には生意気盛りの少年だが、その様々な意味での実力は猟書家の名に恥じぬものだ。油断して勝てる相手ではないだろう。
「カードはお土産に持って帰ってもいいけど、よそで戦いに使えたりはしないよ。そう言うカードが欲しかったらちゃんとしたところに発注してね!」
 あくまでここのカードバトル空間は忌火起・レッカの力によるもの、ということだろう。
「ゲームではあるけど最終的には命がけになるから、油断しないで頑張ってね! それじゃ、いってらっしゃーい!」
 元気よくそう言うと、ミルケンは猟兵をキマイラフューチャーへと送り出した。


鳴声海矢
 こんにちは、鳴声海矢です。死人が出たらだいたいラクドスのせい。
 今回はキマイラフューチャーで猟書家とカードバトルをしていただきます。今回のプレイングボーナスはこちら。

『プレイングボーナス(全章共通)……ゴッドペインターに応援される(猟兵のカードにすごい絵を描いて貰えれば、何故か強化されます。理屈は謎ですが、そういうものらしいです)』

 敵に拉致されかけているゴッドペインターを助け、その力を借りてください。色んなタイプのペインターがいますので、自分好みの絵柄のペインターを捏造OKです。

 このシナリオでは行動は全てカードを介して行われます。ユーベルコード、技能、装備全てがカード化。いっそ持ってないものや地形、背景、台詞すらもカードにして構いません。カードを使わない行動は全て失敗すると思ってください。
 もちろん自分自身をカード化しても可。そこにイラストというボタンがあるじゃろ?
 自分以外の猟兵についてはプレイングで合わせるか当人の許可を取ってください。

 特殊な状況なので、敵の行動もフラグメントに表記されているものに限らず、カードの内容次第で千差万別に変化します。能力値別行動は参考程度と思ってください。いっそガン無視しても可。
『○○のカードだと!? ならば俺はそいつに特効を持つ△△のカードで迎え撃つ!』
『××のカード発動。これにより□□のカードの効果が誘発されコンボ成立!』
 敵の行動も含めこんな風に叫べば大体その通りになります。召喚コストとか手札制限とかカウンターで割り込めるタイミングとかの細かいルールは言ったもの勝ち。ピンチ演出も上等。一応ルールそのものを捻じ曲げられるわけではなく、『そういうルールに則って進んでいる』という展開になります。
 もちろんカードは全て立体ビジョン化します。原理は知らん。

 第一章では執事やメイドとの戦いです。彼らは『猟書家(ビブリオマニア)デッキ』を使ってきます。

 第二章では猟書家『忌火起・レッカ』とのバトル。彼は『勝利を定められし(フォーミュラー)デッキ』なるものを使ってきますが、詳細は不明です。不明です。

 最後に、間違える方はいないと思いますがネタシナリオです。デッキの構築はガチでもノリと勢いが足りないと苦戦するかもしれません。クールな計算ずくアピールだってノリのうち。現実のデュエル風景は忘れましょう。

 それでは、プレイング、スタンバイ!
131




第1章 集団戦 『フロガステリ家の召使い』

POW   :    「おかえりなさいませ!ご主人さ、あっ···」
【メイドがすっ転ぶと、怒った執事の頭部が羊】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    「おかえり、坊ちゃん。」「おかえりなさいませ!」
【可愛く声援を送ってくれる銀髪の少年】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    「フロガステリ嬢の御心のままに。」
【お盆の上】から【男はメイド服、女は執事服になるミートパイ】を放ち、【どうしてこうなったのかという疑問】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「私の勝ちです。ではレッカ坊ちゃんのため、上半身が全部埋もれる程の双丘を持った妙齢女性の絵を描いていただきましょう」
「やめろ! 俺はただ、未来ある穏やかな平原を描き、見守る……ただそれだけが望みなんだ!」
「うふふ、それではわたくしの……もとい我ら『堕悪苦TCG』のため、キラキラ美少年801穴添えがっちゅんやっそんカードをお描きいただきますわ」
「嫌じゃ嫌じゃ! 儂は男汁飛び散る六尺兄貴の肉体言語しか描きとうない!」
 街のあちこちでカードバトルに負けたゴッドペインター達が望まぬ強制労働のため連れ去られようとしている。
 本来創作というのは自由に己を表現するためのもの。誰かに、それも悪の組織などに強要され描かされることなどあってはならない。だがカードで負けた者に人権はなく、勝者のみが正義というのがこの街の掟。
 それが絶対だというのなら、その掟に従い正義を示してくれよう! さあ猟兵よ。己の魂をそのカードに乗せ、決闘の場へと上がるのだ!
松内・楓
メイドさんカードのスカートを悉くミニにしようですって…!?
ミニの良さも分かります、ですがロングの良さがあってこそのミニですよ!

「ぼくのカードは『孤高のメイド戦士』!
キーカードを徹底的に強化するファンデッキに見せかけたハマった時の爆発力の高さで勝負です
(という名のオールワークスでのメイド服着替え→軽機関銃での制圧射撃
欠点である強化を無効化された際の脆さを突かれてピンチになるも、ペインターさんの応援で立ち上がり、カードに沢山のメイドさんが描かれて…!

「一人で出来なければ皆でやれば良い!『絆のメイド部隊』! 総攻撃です!!
ロングスカートから明らかに収まらないサイズのミサイルとかが飛んでって敵を爆砕!



 次々と起こるカードバトル敗北からのゴッドペインター拉致事件。ここでもバトルに負けた一人のペインターが望まぬ絵を描かされそうになっていた。
「さて、あなたへの要望はいまお伝えした通り……」
「だめです!」
 一人の執事がゴッドペインターに迫る中、それを止めるように一つの人影が割り込んだ。
「メイドさんカードのスカートを悉くミニにしようですって……!? ミニの良さも分かります、ですがロングの良さがあってこそのミニですよ!」
 松内・楓(禍討・f29900)はペインターを庇うよう立ちながら、執事に向かって宣言する。
「おや、盗み聞きとは趣味の悪い。しかし彼は既に私に敗北しました。故に何を要求しようと私の自由。それがこの街の掟」
「だったらその掟に従って邪魔させてもらいます! ぼくと勝負してください!」
 そう言ってカードの束を取り出す楓。
「いいでしょう。挑まれた勝負は断れない、それがここのもう一つの掟。私のメイドデッキにてお相手いたします!」
 双方の勝負の意思が固まると同時に周囲の空気が変わる。明らかに何かの力が籠もったカードデッキから手札をとり、楓はその中の一枚を場に出した。
「ぼくのカードは『孤高のメイド戦士』!」
 その宣言と共に場に現れるのは、楓によく似たメイド。それと同時に楓の服もいつの間にかメイド服へと変じている。
「さらに装備カード『軽機関銃』を装備させ、ターンエンド!」
 このターンは召喚酔いのため攻撃はできない。自身にターンが回った執事は不敵に微笑む。
「ほう、メイドのミラーマッチですか。ではこちらもカード『軽量メイド服』を場にセット。これによりミニスカメイド服を着たクリーチャーは召喚コストが軽くなり速攻能力を得る。おいでなさい、ミニスカ猟書家たち!」
 執事の声と共に、本来の服を無視してミニスカメイド服を着た女性猟書家が何人も現れる。いきなりの大型召喚……と思いきや顔と体のサイズが妙に合っていない。恐らく急拵えで作られた低ランクカードなのだろう。
 だが、それでも速攻能力は伊達ではなく、一斉にかけられた攻撃は楓側のメイドの守りを抜け、そのライフポイントを一気に減らした。
「くっ……まだまだ、こちらは孤高のメイド戦士に『神化衣』『プリンセスハート』を装備、さらに『竜湯』でパワーアップし、範囲攻撃でそちらの場をなぎ払います!」
 一気に強化されたメイド戦士の機関銃が、執事の場をなぎ払った。召喚されたメイド猟書家たちの多くがまとめて破壊されていくが、執事は微笑みを崩さない。
「なるほど、そのメイドを徹底強化するデッキですか。ですがファンデッキとコンセプトデッキは違います。私のターン。場に残ったクリーチャーを全て生け贄に捧げ、『チーフメイド・アレキサンドライト』を召喚! 能力、『掃除の時間』によってあなたの持つ装備を破壊しましょう!」
 本業メイドの猟書家、アレキサンドライトのガトリングガンが楓のメイドを撃ち、その装備を破壊していく。もちろん彼女もミニスカ化しているのだが、やはり無理矢理スカート部分を削ったような雑コラ感あふれるイラストだ。どうにもこの執事、自分で絵をどうこうするスキルはあまりないらしい。だからこそ絵を描けるペインターをねらったのだろう。
 そのおかげか軽機関銃こそ残ったが、それ以外の強化は全てはがされてしまった。
「さて、次のターンにまた強化を施すおつもりでしょうが、そう都合良く何枚も強化カードが引けますかね? さらにアレキサンドライトの能力『森の焼き討ち』が自動発動。彼女が場にいる限りあなたのライブラリーはターンごとに焼かれて消えていきます。これで強化の補充はより困難になる。ではターンエンドです」
「くっ……まだ! 強化カード『贋作・三種の神器』をメイド戦士に装備! 攻撃力、防御力を強化し一度だけ相手の能力の対象にならなくなる!」
 ここまで温存した強化カード。これによってメイド戦士の能力は再びアレキサンドライトと同等まで強化された。しかし、楓はこれで手札切れだ。もしこれでアレキサンドライトと相打ちに持ち込めても、相手はまた雑コラミニスカメイドを大量に並べてくることだろう。持久戦も物量戦も不利な状態。これ以上の手は……
「しっかりしてくれ! あんな安直にスカートを切られたメイドより、きちんと着込んで役目をこなす君のメイドの方がずっと美しい!」
 その時、後ろからゴッドペインターの声援が飛んだ。そうだ、自分は後ろに守るものがある。この戦いは自分一人のものではないのだ。
 一人ではない、その意思に答えるかのように、メイド戦士も機関銃を構え前に出る。それはまるで、仲間のために場所を空けたような位置取りだ。
「一人でだめなら……!」
 ゴッドペインターが筆をとり、場に出たカードにそれを走らせる。メイドが動いたことで空きスペースは十分だ。そこに描かれたのは。
「一人で出来なければ皆でやれば良い! 『絆のメイド部隊』! 総攻撃です!!」
 メイド服を完璧に着こなした、何人ものメイド達。それを率いるのはもう『孤高』などではない。絆で繋がれた仲間と共に立つメイド部隊長だ。
「発射!」
 楓とメイド戦士が同時に叫ぶ。それに答えメイド部隊たちは一斉に長いスカートを上げ、そこから明らかに収まらない量のミサイルが大量に放たれた。
「これはミニスカートにはできない芸当でしょう。さあ、真のメイド服の力を見てください!」
 楓のメイド戦士が強化された力でアレキサンドライトを抑え込む。そして守るもののなくなった場をミサイルが通り抜け、その全てが執事へとダイレクトアタックをかけた。
 元より楓のデッキはただのファンデッキではない。徹底強化によるハマったときの爆発力狙いのデッキだ。それ故に相手のフィニッシャーを正面から潰す力を瞬間的に持たせることもできる。そしてそこに、脇を固める仲間が加われば。
「私の……私のミニスカメイドがっ……!!」
 ライフポイントを一気に失い倒れる執事の姿が、その力を物語っていた。
 対戦が終わりメイドたちが消えていくと同時に、楓の服も元に戻る。
 カードによる暴虐を止める反撃の狼煙が、ここに上がったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

津上・未有
大丈夫か?ゴッドペインターよ
助けにきたぞ!感謝するがいい!

お前たち如き、我が闇のデッキで倒してやる!

先攻は我だ!
我は闇の音色奏でるハーモニカを発動!
これは我の手札を全て捨て、デッキから機神を呼ぶ!
祭火神機『ウェスタ』!
ターンエンドだ

…やるな
だが我の手札が0と思って油断したな
さっき捨てた我のカードは我の手札が0の時に効果を発揮する!
墓地のTarnkappeはウェスタを守り!
墓地の邪竜の槍はお前のカードを妨害する!
これが我の無手札必殺!

そして我のターン、ドロー!
我は今引いた魔王剣ベルセルガーをウェスタに装備!
手札が0の時、攻撃力を倍加させる!
一撃でジエンドだ!ウェスタの攻撃!
エンド・オブ・フレア!



 ここでもまた一人、カードバトルに破れ連れ去られかけるゴッドペインターがいた。
「私は特に希望などありません。ただあなたには機械的に強いカードを描いていただければいい……悪い話ではないでしょう?」
「そ、そんな……俺にだってこだわりや描きたいものくらい……」
 好きだけではやっていけないが、その根底には好きがある。とりわけ生活に困る者のいないキマイラフューチャーではやりたいようにやる自由は行動の根底にもなるもの。それを縛られるとあってはゴッドペインターとしてはこの上ない苦痛としか言いようもない。だが、この街でカードバトルに負けるということは、即ち生きることの根幹さえ奪われるに等しい。
 アーティストとしての人生を奪われんとするそのペインターの前に、一つの黒き人影が舞い降りた。
「大丈夫か? ゴッドペインターよ。助けにきたぞ! 感謝するがいい!」
 高らかな宣言と共に舞い降りたのは津上・未有(自称真の魔王・f10638)。魔王を名乗るその威厳に執事は怯むことなく答える。
「おや、助けに来たと。それはつまり……こういうことと捉えてよろしいのですね?」
 カードの束を取り出す執事に、未有は自らも黒一色に染まったカードを取り出して答えた。
「無論だ! お前たち如き、我が闇のデッキで倒してやる!」
 両者の戦いの意思が確認されると、双方に同等のライフポイントが表示される。そして先に手札を引き、揃えたのは未有の方だ。
「先攻は我だ! 我は闇の音色奏でるハーモニカを発動! これは我の手札を全て捨て、デッキから機神を呼ぶ!」
 宣言と共に暗黒のメロディーが場に流れ、それに侵食されるように未有の手札が次々と消え、墓地へと落ちていく。だがその代わりと言わんばかりに炎を纏った謎の機神がデッキをかき分け、その中から現れた。
「祭火神機『ウェスタ』! ターンエンドだ」
 手札すべてと引き換えに1ターン目から大型を呼ぶ速攻デッキ。これならば初手で展開できるような小型モンスターは苦も無く蹴散らされ、ライフポイントをごっそり削ることができるだろう。だが、執事の方も慌てない。
「なるほど、いきなりノーガードとなって勝負をかける戦法ですか。ですがあなたも運が悪い。私の愛用する猟書家デッキは特にそう言った一点張りに強いのです。手札からアリスラビリンスに属するカードを全て墓地へ送り、『機甲戦乙女ロスヴァイセ』を特殊召喚。場に出た時に発動する能力の一つ『超高速狙撃ユーベルコード』で、祭火神機『ウェスタ』を狙撃します」
 こちらも手札と引き換えに即時場に大型を呼び出し、その一撃で攻める展開を行った。ロスヴァイセの放った一撃がウェスタを射抜き着弾地点で爆発を起こす。
「さて、残念ながらこれであなたは丸裸……?」
 だがその爆炎が晴れた時、ウェスタは無傷のままで場に立っていた。プレイヤーへの貫通はもちろん、ウェスタ自身の装甲もまるで削られていない。
「……やるな。だが我の手札が0と思って油断したな。さっき捨てた我のカードは我の手札が0の時に効果を発揮する!」
 墓地に置かれたカードたちが輝き、ウェスタとロスヴァイセそれぞれの前へとその姿を見せていた。
「墓地のTarnkappeはウェスタを守り! 墓地の邪竜の槍はお前のカードを妨害する! これが我の無手札必殺!」
 多大な生贄を要求するカードと墓地に送られることで効果を発するカードを組み合わせる墓地利用コンボ。その上手札0というきつい制限までかかるのだ。その効果が発揮されたときのリターンは当然相応に大きい。墓に落ちたものまで利用し、自身さえも追い込まねば発動できない、正に危険極まる闇のデッキと言えるだろう。
「なるほど。ですが今のはアタックではなく召喚効果。私のメインフェイズはまだ終わっていません。残る手札から集団型オブリビオンを守備表示で召喚。ターンエンドです。そして……」
 ターン終了宣言と同時にロスヴァイセの頭上に数字が表示され、それが凄い勢いで減り始める。
「ロスヴァイセのもう一つの能力、『ラストメッセージ』発動。召喚から3ターン後に双方の場と墓地の全てのカードを道連れに、ロスヴァイセは消滅します。常在能力故に動けなくても問題はない。本当に残念です、貴方のデッキは素晴らしいですが……私とは相性が悪すぎました」
 墓地すら利用するデッキであっても、墓地そのものまで破壊されては本当にどうしようもない。そうなれば残るのはすべて失った丸裸のプレイヤーだけ。それは相手も同じだが、あの余裕からすれば何かしらリカバリー手段は用意してあるのだろう。あとは残りのターンを守りを固めてやり過ごせばいいということか。
「お喋りが多いわ、バカめ!」
 その状況でも未有は傲慢な態度を崩さない。なぜなら、それを打ち破る手はデッキの中に存在しているから。それを信じ、未有はデッキに手をかけた。
「そして我のターン、ドロー!」
 カードを引くと同時に手札が0でなくなることで、二枚の墓地カードは効果を失う。しかしそれとは裏腹に、未有は勝利を確信した笑みを浮かべた。
「我は今引いた魔王剣ベルセルガーをウェスタに装備! 手札が0の時、攻撃力を倍加させる!」
 ウェスタの手に魔王が持っていそうな禍々しい剣が握られる。そして再び手札が0となったことで、その背のTarnkappeもまた再びはためき始めた。
「これぞ祭火神機『ウェスタ』究極魔王体! さあ、覚悟を決めるがよい!」
「ば、馬鹿な!? サーチもせずに引き当てるなど……」
「運さえも足元に跪く、それが魔王よ! 一撃でジエンドだ! ウェスタの攻撃! エンド・オブ・フレア!」
 ウェスタがベルセルガーを振り上げ、動けぬロスヴァイセに切りかかる。強烈な条件を乗り越えた燃える一撃は機甲戦乙女を叩き切り、なお余りある力でプレイヤーのライフを両断した。
「3ターンも待つ必要などない! 貴様の滅びる時は……今だ!」
 先を完全に捨てての究極の『やられる前にやる』。3手先の勝利を待った執事は、2手目にして切り裂かれデッキを散らばらせながら地に倒れた。
「今のご活躍……描かせていただきとうございます、魔王様!」
 描きたいものがここにあると平伏すゴッドペインターの前、未有はこれ以上なく胸を張るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・≪≫=カード名
・アド/絡◎

■行動
また、難しい状況ですねぇ。

まずは攫われそうになっている『Gペインター』の方の前に立って庇いますねぇ。
そして、私のカードをお願いしてみますが、何やら本来以上に体型が極端だったり、露出が多い気が?

さて、相手は『猟書家デッキ』、『召喚系主体』の様ですぅ。
であれば、此方は『召喚体の攻撃無効』『此方からも攻撃不可&維持費有』となる≪【重豊躰】≫を使いますねぇ。
敵方の数が増えすぎたら、彼我全滅系の≪運営神の怒り≫でリセット、維持費がきつくなったら≪一時解除≫で手札に戻し貼りなおしますぅ。
後は、自動ダメージ元の≪FRS≫を展開、ロックしたまま締め上げて仕留めましょう。



 堕悪苦TCGによる大規模作戦が展開される中で戦っているのは執事だけではない。メイドもまた、組織の目的と自身の欲望のためゴッドペインターを捕獲、拉致しようとしていた。
「さあ、あなたには私のデッキ増強に協力していただきますわ」
「やめろ! 俺にそっちの趣味はない!」
 怪しく笑って倒れた男ペインターに迫るメイド。迫るその体を、巨大な二つの山が遮った。
「また、難しい状況ですねぇ」
 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は呟きつつ倒されたゴッドペインターをかばうように立つ。
「こ、これは……!」
 ペインターの目が眩しいものを見るかのように、るこるの豊満な姿態を見上げる。彼のその視線を受け、るこるは彼に白紙のカードを一枚差し出した。
「このカードに私の姿を描きこんでいただけないでしょうかぁ? 私のデッキのキーカードにしたく思いますぅ」
 その言葉に、心得たとばかりにカードに筆を走らせるゴッドペインター。それに対しメイドが自分のカードを出して向かい合う。
「いきなり割り込んできて何という人でしょう……あなたには少し痛い目を見ていただく必要があるよう」
 メイドが自分の手札を揃えると、るこるもまたペインターからカードを受け取り、そのカードを場に出しながら応える。
「望むところですよぉ。それでは私の先攻。私は手札の白紙カードを私自身に書き換え、ライフを半分以上することで特殊召喚しますぅ」
 カードを場に出すと同時に、ペインターの描いたるこるが場に立体となって表れる。それはるこるの特徴をよく捉えた……もとい、捕らえすぎたデザイン。
「え、何よそれ……」
 元々大きなるこるの胸がさらに極端に大きく書かれており、低めになった頭身と相まって縦より横の方が明らかに大きいくらいだ。服装も露出が増えており、胸は半分以上出され、なぜかボタンのようなものが両胸の先に丸々盛り上がっている。スカートも本来よりさらに短く、少しでも動けばいかにも危険そうな丈だ。その姿を見て、ペインターは満足そうにうなずいている。どうやら彼は筋金入りの『こういうの』好きらしい。
「そして手札からユーベルコードのカードを装備。【豊乳女神の加護・重豊躰】で私はあらゆるダメージや敵対的効果を無効化し、さらに巨大化することで場の他のカードやプレイヤーへの攻撃を自動で自分に対象を変更します。代償として残りコストを全て捧げることで、ターンエンドですぅ」
 カードのるこるの胸がさらに大きくなり、るこるの場全てを覆い尽くす。これによってるこるの場は鉄壁の防御が敷かれたが、代償としてるこるに装備させるようなカード以外は場に出せなくなり、攻撃に転ずることもできなくなった。
「くっ……そんな大きい者置いちゃって! いいわ。私のターン。私はここでカード『上杉謙信』を守備表示で場に出すわ。憑依対象がないため即座にこのカードは墓地に送られる。そしてそれによって『真田神十郎』を特殊召喚! さらに手札からアリスラビリンスの集団オブリビオンを攻撃表示で場に出し、ターンエンドよ!」
『我は猟書家にして日本一の兵! 真田神十郎、罷り通る!』
 ガッツリボイス付きで出てきた真田神十郎と、その周囲を固めるように現れるオウガ型のオブリビオン。自分にターンが回ってくるが、るこるはカードの効果でドロー以外の行動はとれず、ただユーベルコードの維持コストのみを払いターンを終了させた。
「うふふ、さぁて、それじゃあ私はこのターンのコストを支払い、無名のダークヒーローカードを攻撃表示で召喚。さらに先のターンに召喚した集団オブリビオンであなたに攻撃よ!」
 オウガたちが場のるこるに一斉に殴り掛かるが、当然ながら攻撃は通じず、攻撃失敗でまとめて消されていく。その分メイドのライフポイントも減るが、それはコストの内とばかりにメイドは笑みを浮かべた。
「集団オブリビオンの戦死により、デッキから猟書家『ディガンマ』を特殊召喚! さらにディガンマの能力『六六六(ダークネス)』によりダークヒーローを闇落ちさせヴィラン化、この効果で手札から『カーネル・スコルピオ』が召喚されて、ターンエンドよ!」
『さあ……殺し合いの時間だ! 期待しているぞ、侍に軍人(プロフェッショナル)どもよ!』
『相変わらず君は血気の多い……私は目的が果たせればそれでいいのだが』
 やっぱり喋る猟書家。でもなんでこんな細かい掛け合いまで……と思ったらメイドの口がやたら細かく動いている。どうやら勝手に台詞を妄想してアフレコしているらしい。
 顔ぶれ……というか顔立ちを見るに趣味に走った面子のようだが、2ターンで大型三体を並べられる辺りシナジーは考えているのだろう。
「なるほど……アタッカーデッキ、というわけですかぁ。私はカード≪一時解除≫で重豊躰を一度手札に戻し、然る後<<FSS>>と<<FBS>>を墓地に送ってコスト供給、再度重豊躰を張り直しますねぇ」
 一部の装備カードをエネルギータンク役に回し、ユーベルコードを維持するるこる。そうして動かない間にも、敵側の猟書家は次々と強化カードや護衛のオブリビオンが召喚され、敵の場は戦力過多といえるほどに火力が整っていった。
「さて、だいぶ我慢したみたいだけど、もうすぐあなたの防御もコストオーバーじゃない? さあ、ターンエンドよ!」
 しかる後にまわるるこるのターン。るこるは残ったコストで重豊躰を継続する。そしてそのままターンエンド……しなかった。
「私はこのコストで、魔法カード≪運営神の怒り≫を発動。彼我の場にあるクリーチャーカードをすべて破壊しますぅ」
 しばしばある、特定種のカードを強さ、所属に関わらずすべて破壊するカード。白い破壊の原氏が場を駆け抜け、双方の場をまっさらに戻していく。
『十傑を呼ぶ間もない、だと……!?』
『負ければ殺される……これが殺し合いよ!』
『私は、このような結末など……!』
「あああああ! 私のイケメ……猟書家たちがぁっ!」
 絶叫するメイド。でもまだアフレコしてる辺り結構余裕あるんじゃないかなこの人。
「さらに残ったコストで<<FRS>>を私に装備。そしてプレイヤーに、ダイレクトアタックですぅ!」
 耐えに耐えた果て、ついに山が動いた。砲台による一斉射撃がメイド本人を襲い、コスト代わりに使い減っていたメイドのライフポイントを一気に削り取る。
 FRSはるこるが生存してさえいれば自動で攻撃を繰り返すし、弾を出しつくしたメイドのデッキがFRSを排除できるカードを引くまでまだ時間がかかるだろう。停滞からの場を払っての完全ロック。相手のデッキを召喚系主体と見抜き、敵戦力が場に出そろうまで耐え続けてから一掃するという、正に動かざること山の如しの戦略がこの決闘を制したのであった
 倒れたメイドに恐る恐る、ペインターが近寄る。
「あの……大丈夫、か……?」
「何よ……情けでもかける気……?」
「いやその、あなたも存外立派なものをお持ちなので、出来ればあちらの方と一緒にモデルになってくれればと……」
 まだ並んでいる本体るこるとカードるこるの方を指し、ペインターが言う。
 勝者が掟であるこの街で彼女はこの願いを承諾したのか、そしてるこるはどうしたのか……それはまだ分からない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

水桐・或
ゲームは好きだよ
ルールの範囲内なら奪っても遊びで済むから

まずは召喚コストを溜めないと……
『発煙筒【煙魔】』の【目潰し】効果で相手カードの攻撃を妨害しながら、『ホワイトセージ』で召喚用エネルギーをチャージ

防戦一方に見せかけて敵が切り札を出したら、溜めたエネルギーでこちらも切り札『略奪の腕』を召喚
君の切り札のコントロールを奪わせてもらうよ
さらにUCカード『剥奪術式・奪胎』発動
召喚エネルギーも奪わせてもらおうか

随分つめられたけど、形勢逆転
これが僕の略奪者デッキだ

猟書家デッキ……『マロリー・ドラッケン』のカードはないかな?
持ってたらアンティとして奪っ……貰いたかったんだけど
可愛いよね、マロちゃん



 ゲームの勝敗によって全てが決まるこの街。だが、その掟はある意味で水桐・或(剥奪と獲得・f31627)にとっては好ましく思えるものですらあった。
「ゲームは好きだよ。ルールの範囲内なら奪っても遊びで済むから」
 元々カードゲームにはアンティルールというものがあり、対戦時に自身の持つカードを賭けることが公式に認められる場合が多々ある。他から奪うことを宿命付けられた或にとって、そのルールは己の運命に従いながらも良心の呵責を多少なりとも和らげられるこの上なく有難いものでもあった。
 そして相手がそのルールにおいて誰かの全てを奪おうと言うのなら、己もまたそのルールに従い相手から奪ってくれようと、或は一人のメイド相手に勝負を仕掛けていた。
「まずは召喚コストを溜めないと……『発煙筒【煙魔】』の【目潰し】効果で相手カードの攻撃を妨害。さらに『ホワイトセージ』で召喚用エネルギーをチャージ。ここはこれでターンエンドだ」
 静々とカードを展開し、場の防御を整えつつ自身の力を溜める。毒性こそないが煙草の臭いのする煙は視覚と嗅覚を惑わし、効果のある間はプレイヤーへの直接攻撃を防ぐ壁となって場を覆い隠した。
 その煙の前に、メイドは攻め込めないならと自身も場を整えるカードを次々に展開していく。
「そう来ますか。では私はカード『災魔の卵』を場に召喚。その上で蒸気災魔を守備表示で召喚。ターンエンドです」
 攻撃力は0、守備力も微々たるものしかない卵が場に現れ、続けて多くの災魔が中央に置かれた卵を守るように布陣した。
「そう……だがこの煙の効果はまだ切れない。さらにもう一つ『ホワイトセージ』使用。さらにコストを溜めてターンエンドだ」
 あくまで淡々と、或はコストを溜め続ける。だが、彼が溜める以外の行動をとっていないことをメイドは気づいていた。
「さて、その煙は確かに攻め込むことは出来ないし、もしかしたらそちらの場からもこちらに出ることは出来ないのかもしれませんね。ですがそれでも、煙の中にユニットを展開することは出来るはず……なぜなさらないので?」
 溜めたコストで何をする気かは分からないが、今の所何かが出てくる様子はない。よほど巨大な何かを呼び出すつもりなのか、あるいは手札事故を起こしているのか。
 いずれにせよ煙が晴れるまで攻めることは出来ないのだからと、メイドもまた場を整えることに専念する。
 そのまま静かなる準備時間が双方の間に流れ続けるが、数手目で突如メイドの場にある災魔の卵が脈動を始めた。
「来ました。災魔の卵の効果は二つ。一つは戦闘で破壊された場合トークンとして蒸気災魔をばらまく。そしてもう一つは一定ターン破壊されずに場に残った場合、『探求のオルガノン』『マロリー・ドラッケン』『ドクター・パラケルスス』『魔鬼士』『偽りの炎精マナール』のいずれかを能力を即時使用できる状態で場に召喚する。さあ、今こそ孵化の時です!」
 宣言と共に殻にひびが入り、卵が砕け散った。大量に噴きあがる蒸気と共に中から出てきたのは。
「マロリー・ドラッケン誕生! 攻め込む必要はありません、インテリジェンス・イービル・ワンドで場諸共あなたを……」
「待ってたよ。溜めたエネルギーを全て使用。こちらの切り札『略奪の腕』を召喚。これは相手の行動に割り込む形でユニットの操作権を奪い取る」
 剥奪と獲得の力の刻まれた二つの篭手が場に現れ、まずは剥奪の篭手が場にいる蒸気災魔たちを或の場へと引き込んだ。
「なっ……!? でも、溜めたエネルギーもそれで切れたようですね。せっかく時間があったのだから先に出しておけばよかったものを!」
 相手のターンに割り込む場合、使用コストは跳ね上がる。事前に出しておけば左腕分の力も残っていたが、或のプールにはもうその力は残っていない。
「ないものは奪えばいいんだ。召喚エネルギーも奪わせてもらおうか」
 重ねて使われるのは、【剥奪術式・奪胎】のカード。これは発動に右手を要するという制限があり、右手の名を関するカードがなければ誰のターンだろうと使用は出来ない。だが、その右手はたった今割り込みで強引に使わせた。そしてその周りには、有象無象の蒸気災魔が群れている。
「大丈夫、命があればまた回復するよ」
 剥奪の腕が、蒸気災魔たちのエネルギーを搾り上げた。そしてその力で今度は左腕を強引に動かす。
「君の切り札のコントロールを奪わせてもらうよ」
 吸着の左腕がマロリーにくっつき、その動きを操り始める。出した瞬間の切り札を奪い取る。その為に、或は過剰とも言えるくらいにエネルギーをため込み続けていたのだ。
「随分つめられたけど、形勢逆転。これが僕の略奪者デッキだ」
 動かせるカードのなくなったメイドはあえなくターンエンドを宣言する。そして或本来のターン。すでにコストは完全になくなったが、もうその必要すらない。
「ただでさえも強いカードが強化されている。本当にすごい切り札だね。さあ、それじゃあ能力全開で行ってくれ。マロリー軍団、出撃!」
 或の場に煙はあれどマロリーがいるのはあくまでメイドの場。動くのに支障のないマロリーの持つ三つの能力がノーコストで一度に発動、本来なら或に放たれるはずだったそれが、召喚主であるメイドに纏めて叩きつけられた。フィニッシャーとして申し分ないその威力はメイドのライフポイントを全て吹き飛ばし、勝負を決める。長き静寂と待ちの果て、切り札が出てからの一瞬の奪い合いで勝負は決したのだった。
 膝をつくメイドに或は静かに歩み寄る。
「猟書家デッキ……『マロリー・ドラッケン』のカードはないかな? 持ってたらアンティとして奪っ……貰いたかったんだけど」
 ゲームに勝利した報酬としてのカードの要求。この街の掟からすれば大人しいくらいだ。特殊召喚によらない通常使用のためにも持っていたのだろう。メイドは歯噛みしながらもデッキの中からマロリー・ドラッケンのカードを抜き取り、或に差し出す。
「可愛いよね、マロちゃん」
 そのカードを獲得の左手で受け取り、或は戦いの場を後にした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
執事とメイドの2人がかりな上
銀髪ショタをプレイヤーとして召喚され
3人で生贄を共有した高速召喚で
相手の場には猟書家がズラリ

くっ……
守護闘気【オーラ防御・激痛耐性】でダメージ半減!
癒しの光【祈り・医術】でライフ回復!

私のオブリビオン達では猟書家に敵わないけど
相手は高速召喚に優れる分
墓地には生贄となったクリーチャーだらけ

『百鬼夜行』発動!
互いの墓地のクリーチャーをゲームから除外し
その数だけ守護霊を特殊召喚!
憑依【ハッキング】とのコンボで
場の猟書家を全て味方に!

ドーラ・ワルダーで執事に
探求のオルガノンでメイドに
レプ・ス・カムで銀髪ショタに攻撃!
淫魔の闘技【誘惑・慰め・生命力吸収】の魅了効果で反撃不可!



 猟兵たちの活躍により、執事とメイドたちは次々と打ち倒され、ゴッドペインターたちも解放されていった。
 そして残る執事とメイドも一人ずつ……となったのだが、彼らはそれぞれの立場を司る長。部下の不始末の責任を取るとばかりに二人纏めての勝負を挑んできた。
 それに応えたのはドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)。勿論基本的にゲームはフェアでなければならず、ドゥルールは一人で二人分の手札を持ちライフポイントも二倍となることを許されていた。だが、それでもそもそも思考する頭が二つあり、狙われる的は二分されている。それだけでも大きなハンデであり、どうしても後手に回らざるを得ない展開となっていた。
 そして苦戦の原因はもう一つ。
「お姉さん、そろそろ諦めた方がいいと思うよ?」
 銀髪の美少年がドゥルールにそう言った。彼もまた自分の手札を持つ『三人目』のプレイヤー。二対一のルールを反故にしたわけではない。彼はメイドと執事が連携して放つユーベルコードのカードによって召喚された、合法的な追加プレイヤーなのだ。
 少年は自分のアタックフェイズで召喚した猟書家を差し向ける。指示を受けたその猟書家は、巨大な乳房の口を開いてドゥルールの場にいるオブリビオンカードを一飲みにした。
「くっ……守護闘気【オーラ防御・激痛耐性】でダメージ半減! 癒しの光【祈り・医術】でライフ回復!」
 防御カードを展開しどうにか自分へのダメージを抑え込むドゥルール。だが飲まれたカードは戦闘不能となり、墓地に落ちる。猟書家の中でも高い力を持つレディ・ハンプティ。その重量級のボディはコストも重いが、一度呼び出されれば並のオブリビオンなど歯牙にもかけない実力があった。
「そろそろ降参するのをお勧めします。自身の可愛い手札が無為に墓地に送られて行くのを見るのはお辛いでしょう」
 執事がどこまで本気か分からない口調でそう進言した。その彼の前にいるのは、片眼鏡をかけた角を持つ老紳士……サー・ジャバウォック。
 それだけではない。三人の場と墓地を共有しての大量生贄や、時に味方同士で攻撃をぶつけあい特殊召喚条件を満たすなどの高速展開により、彼らの場にはオウガ・フォーミュラ級を含めた何体もの猟書家が並んでいた。
 もちろんドゥルールの場にも彼女の愛し、吸収したオブリビオンがカードとして並んでいるのだが、正面からぶつかり合った時の不利はどうしても否めない。
「あなたのデッキの多様さには感服します。ですが、愛着だけでバトルは勝てないもの……弱いカードはどんどん捨て札にする冷酷さもゲームには必要ですわ」
 そう言うメイドの前にいるのは、彼女の言う通り多くのカードを生贄に呼び出された猟書家たち。メイドの指示の元、猟書家とオブリビオンが再度ぶつかり合い、そしてオブリビオンたちが墓地へと落ちていった。
 その姿を見て、ドゥルールは考える。
(私のオブリビオン達では猟書家に敵わないけど、相手は高速召喚に優れる分墓地には生贄となったクリーチャーだらけ……)
 弱いものは用が済めば不要、とばかりに生贄に捧げられたクリーチャーカードの山。さらにはフォーミュラを呼び出すため、一部の猟書家すら生贄に捧げられている。それは骸となったカードの山……否、海とでも呼べる光景だ。
「そう……ところで、あなた達ハロウィンは元々どういうお祭りだったか知ってる? ハロウィンはね、死者がこの世に還ってくる日。その霊を追い払ったり、仲間と誤認させたりするために仮装をすると一説に言われているわ」
 突如、まるで時季外れな行事の開設を始めるドゥルール。それに対し執事は馬鹿にしたような笑みを浮かべる。
「そう言った講釈でしたら9ヶ月後にどうぞ。もっとも、それまであなたが無事でいられればの話ですが」
「それよりもあなたのターンですわ。この上で何かできることがあるというならご存分に」
 メイドの台詞に、ドゥルールは落ち着いて一枚のカードをかざした。
「『百鬼夜行』発動! 互いの墓地のクリーチャーをゲームから除外しその数だけ守護霊を特殊召喚!」
 そのカードが輝くと同時に、全ての墓地のカードが消え失せる。そしてそのカードの数だけ、ドゥルールに亡霊と化したクリーチャーカードが現れた。
「そして憑依【ハッキング】とのコンボで場の猟書家を全て味方に! さあ、年中無休でトリック&トリート♪」
 その宣言と共に、亡霊となったオブリビオンたちが一斉に猟書家たちを取り囲んだ。霊たちはその体の中に入り込み、そのコントロールを一時的にドゥルールの側に奪い取る。
「さあ、プレイヤーにダイレクトアタックよ。ちゃんと相性を考えてね?」
 ドゥルールの宣言と共に、三人の猟書家が執事、メイド、少年にそれぞれすり寄る。
『さあ平伏しなさい、従うのが好きなのでしょう!?』
「わ、私には坊ちゃまが……!」
 執事にはドーラ・ワルダーが彼の被虐心を煽り。
『カードなんて無駄な児戯です。僕がもっと素敵な姿にしてあげますよ』
「う……そんな生意気言って……」
 メイドには探求のオルガノンが自信たっぷりに高圧的に迫り。
『えーと、君は召喚された存在なんだね。じゃあ君が消えないように固定して……オッケー! それじゃ大人の度の始まりだ!』
「や、やめてください! 何する気ですか!」
 少年にはレプ・ス・カムがぐいぐい迫ってリードする。
 そこから展開されるのは、ドゥルールの得意の手である【誘惑・慰め・生命力吸収】を一纏めにした『淫魔の闘技』による魅了吸収効果。
 カード自体がリムーブされている故亡霊たちはターン終了時に消え失せるが、墓地に大量のカードがあったが故この1ターンで出せる効果は致命レベル。
 自身のライフポイントが跳ね上がるのを見ながら、場に来た残る猟書家カードたちのデザインを愛でるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『忌火起・レッカ』

POW   :    来たぜ……オレの切り札がァッ!
無敵の【時と場合に応じた特殊効果付きのモンスター】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD   :    テメェ自身が放った呪文で自滅しなァ!
対象のユーベルコードに対し【その効果対象を別のものに変更する速攻魔法】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
WIZ   :    時間を稼ぎやがれ、《爆弾人形(マネボム)》共ッ!
戦闘力のない、レベル×1体の【召喚者自身への攻撃を捨て身で守る爆弾人形】を召喚する。応援や助言、技能「【かばう】、【時間稼ぎ】、【捨て身の一撃】」を使った支援をしてくれる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠惑草・挧々槞です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 全ての執事とメイドを倒し、ゴッドペインターたちは皆解放された。だが、そこに空中から高らかな声が響き渡る。
「こんな連中に負けるとは、堕悪苦TCGの恥さらしどもめ!」
 その声に上を見ると、ビルの上階に堂々と立つ一人の少年の姿が。
「かくなる上はこの忌火起・レッカ自らが、お前たちを闇のゲームへ招待してやろう!」
 そう叫んで彼が指を鳴らすと辺りの空間が歪曲し、猟兵とゴッドペインターたちがまとめて闇に満ちた空間に飲み込まれる。
「ここは堕悪苦空間、ここではライフポイントはプレイヤーの生命力と直結する! 弱いものならば1戦も持つことなく命を失うことになるだろう。敗北者には死を……これぞまさに決闘だ!」
 調子よくまくしたてるレッカ。一見すれば調子に乗ったただの子どもだが、命をゲームに紐づける空間を作り出し大勢をそこに供せ敵に連れ込める、その力は間違いなく本物だ。
「さあ、誰からでもかかってくるがいい。このオレの勝利を定められし(フォーミュラー)デッキに焼き尽くされたいものからな!」
 そう言ってカードの束を取り出すレッカ。猟兵よ、己の相棒たるカードを携え、定められた勝利を打ち崩せ!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
成程、こういう方ですかぁ。
描いて頂いたメイドさんとのツーショット、使わせていただきますぅ。

相手は『特殊効果付きのモンスターの召喚』が主体の様ですから、それを封じましょう。
≪【告律】(一定ターンの間、お互いに全てのユニットが召喚出来なくなる)≫を展開、他方法ですり抜けを狙ったユニットは≪運営神の怒り≫と『打消し』で対処しますねぇ。
効果が切れかけたら≪一時停止≫で手札に戻し再設置、デッキの残りは全て『打消し』『ドロー強化』『サーチ系』という『ユニット無しのフルパーミッション』ですぅ。
後は≪骸の海(起動型:敵方の山札X枚をゲームから取除く)≫でライブラリアウトを狙いますねぇ。



 猟書家『忌火起・レッカ』の展開した堕悪苦空間。そこはカードゲームの結果が生命に直結する恐るべき空間。その効果は当然術者であるレッカ自身にも及んでいるが、レッカにそれを恐れた様子は全くない。恐らくは自身の勝利を微塵も疑っていないのだろう。
 その少年らしく、そして猟書家らしい傲岸不遜さに夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は改めて思う。
「成程、こういう方ですかぁ」
 彼の内面はある種分かりやすい。だが、決してそれが侮っていい理由にはならないと、るこるは改良を施したばかりのカードデッキを取り出した。
 レッカもまた自分のデッキを出し、それに応える。
「いいだろう、ゲームの始まりだ! さあ、先に攻めるのは……ち、テメェか」
 頭上で回るコインが裏を向き、るこるの先攻を示す。
「相手は『特殊効果付きのモンスターの召喚』が主体の様ですから、それを封じましょう。描いて頂いたメイドさんとのツーショット、使わせていただきますぅ」
 るこるはそう言って一枚のカードを場に出す。それは先に助けたゴッドペインターの描いた、るこるとメイドのツーショット姿のカード……なのだが、ない白描いたのは『あの』ペインターである。両者ともにがっつり極大化とデフォルメが効かされ、着ている服の意味がなくなるほどに両胸が盛り上がっている。
「【告律】、一定ターンの間お互いの場にユニットを召喚することは出来なくなりますぅ」
 場にるこるとメイドの姿が立体となって表示され、レッカの場までその圧倒的巨体で支配することで場にユニットを出せないという状況を示した。
「テメェ、やべぇもんだしやがって……カ、カードの効果がだぞ!」
 思わず赤面しながらわめくレッカ少年。彼の性癖が歪まないことを祈るばかりである……もっとも手遅れかもしれないが。
 だが、それはそれ、彼はカードプレイヤーとしては一流だ。目の前の状況に流されず自身のカードを展開していく。
「俺のターン! アーティファクト『ダンジョンメーカー』を場に設置。こいつはユニットじゃねぇオブジェクトだぜ。そこにエネルギーカードとライフポイントを注ぎこむことでダンジョン精製、場にダンジョンを完成させ、ターンエンドだ!」
 ユニットを出せないならばを整えるとばかりに、自分の場に迷宮を展開するレッカ。迷宮の壁がメイドの胸にめり込んでいるが気にしない。
「では私のターン。私はカードを二枚引き、二枚捨てます。そしてエネルギーを溜めて、そのままターンエンドです」
 ドローカードを使って手札をかき回し、エネルギーを置くだけで終了。動きがない当たりは停滞ロックとも似ているが、るこるの場には【告律】以外のカードは出ておらず現状ターン数が嵩むだけだ。
「俺のターン。迷宮の奥にボス災魔が特殊召喚される。こいつは通常召喚じゃないからそっちのカードも意味はないぜ。さらに『グラン・ギニョール』の槌で迷宮を叩き壊し、災魔を生贄に捧げ『大魔王アウルム・アンティーカ』を特殊召喚! ターンエンド!」
 2ターン目にしてフォーミュラを呼び出したレッカ。これが勝利を定められしデッキの真骨頂とでもいうのか。だが、るこるも慌てない。
「それでは私は通常ドローに加えカードを一枚サーチ。さらに≪運営神の怒り≫を使い、場のユニットを全て除去してターンエンドですぅ」
 問答無用でユニットを破壊する白きカードは、大魔王であろうと容赦なく破壊する。だが、それにレッカは我が意を得たりと笑んだ。
「かかったな! アウルム・アンティーカが墓地に送られることで『大魔王レオ・レガリス』が特殊召喚! そして俺のターンで『赤の首』にレオ・レガリスを食わせて……」
 場にいる大魔王が骨から獣へと姿を変え、さらにそれさえ破壊しようとするレッカ。だが、それに割り込んでるこるが動く。
「それでは、『打消し』でそれを止めさせてもらいましょう。それから『一時停止』でこのターンのレオ・レガリスの攻撃を止めさせていただきますぅ」
 カウンターと割り込みで相手に何もさせないフルパーミッションのデッキ。恐らくこのまま高速展開で大魔王を進化させていきたいのだろうレッカは思い通りに行かないことに歯噛みするが、それでもるこる側から攻め込まないこともあり、少しずつ彼の準備は進んでいった。
「ちっと時間はかかったが……来たぜ……オレの切り札がァッ! 『大魔王ウームー・ダブルートゥ』! 次のターン、全ての形態を再召喚し一斉攻撃をかける! ターンエンド!」
 ついに最終形態まで魔王の進化は進んだ。次のターン、圧倒的火力を持ってるこるを蹂躙しつくすつもりなのだろう。だが、るこるは平静を保ったままであった。
「こちらも準備は整いました。まずカードをそのサイズに応じてエネルギー化できるカードを張り、さらに場に出るエネルギーが倍加するものも設置。そして【告律】カードをエネルギー化、エネルギー源は私とメイドさんのお胸を指定しますぅ。その質量に応じ出たエネルギーを全て≪骸の海>>……敵方の山札X枚をゲームから取除くという軌道型カードに注ぎます。対象はもちろん、あなたのデッキですよぉ」
 るこるとメイドの胸から大量の白いエネルギーが溢れ出し、それがレッカの山札を襲い、押し流した。それでもまだ落ち着かぬ奔流はビジョンだけとはいえレッカ自身をも飲み込み、押し流していく。
「うわっぷ、ぐ、おぉぉぉぉ!?」
 如何な強力なカードを揃えようと、ライブラリがなくなれば負けという基本ルールには逆らえない。潤沢にあったレッカのライフは一瞬にして0となり、それ相応のダメージをレッカ自身に与えた。
 場で今だ頬を染めながらエネルギーを噴き出するこるとメイドの映像の前でうずくまるレッカ。彼が顔を真っ赤にし体を折りたたんで前に蹲っているのは、自慢のカードバトルで負けた屈辱からだと思ってあげるのがきっと優しさだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

松内・楓
相手が強すぎる…!
最後のメイドが隊長を庇い、場にはまた一人になったメイド戦士…
けど、諦めない!

「孤高のメイド戦士は世を忍ぶ仮の姿…
墓地の仲間を供物として捧げることで彼女は力を増す
最後まで共に戦うと言った仲間のために、今、真の姿を現す!

「来てっ!竜神魔法少女、メイプル!!
ちなみに触手とかスライムとかに致命的に弱いんだけど今回そういう話じゃないので割愛!

「死して尚共に戦う仲間と、彼女は戦い続けるんです!
「メイプルブラスター、フルバーストっ!
ペインターさんの魂の一筆が加わり衣装は神々しさを増す!いわゆる劇場版フォーム!!
仲間の魂に背を押され、ロッドから放たれる極大出力の光が敵を呑み込み浄化する――!



 猟書家の一人忌火起・レッカ。その外見はまだ幼さを残す少年であり、精神的にも外見相応、その姿勢は生意気な子どもそのものである。
 だが一方でそのカードゲームの腕は本物であり、相手のデッキに合わせた盤展開や行動に合わせた切り返しなど、自身の戦略の構築と相手のコントロールを双方同時にこなす一流プレイヤーである。
 その腕の前に、松内・楓(禍討・f29900)は窮地に追い込まれていた。
「相手が強すぎる……!」
 彼が用いるのはキーカード『孤高のメイド戦士』を徹底強化するデッキ。瞬間的な爆発力に長けたそのデッキは敵の大型を難なくねじ伏せる瞬間火力を持ち、さらにゴッドペインターの協力による『絆のメイド部隊』への進化によって対集団への対応能力も得ていた。
 だが、そのメイド部隊ですらレッカの展開する勝利を定められしデッキの前に次々と倒れされていき、とうとう残るはリーダーであるメイド戦士と、最後の仲間メイド一人だけとなってしまった。
「俺のターン! 俺は手札から『豊臣秀吉』を出し、『織田信長』に憑依させる。そして信長でメイド部隊長に攻撃!」
 毛玉を担いだ髭のおじさんがメイド隊長に猛然と切りかかる。その前に最後のメイドがかばうように飛び出してその剣を受け、身代わりとなって切り裂かれ消えていった。
 墓地にまた一枚メイドのカードが積まれる。これでメイド部隊は体調を残して全滅し、絆のメイド部隊はまたしても孤高のメイド戦士へと戻ってしまった。
「キーカードを強化するデッキに仲間を増やす……悪い考えじゃねぇけどなぁ! あいにくだが、こっちも同じことができるんだよ! しかも一つ一つの手札がそっちより強い状態でな! さあ、ターンエンドだ! 何かできるもんならしてみやがれ!」
 素の状態でも強い信長に、手札から武将カードを兵装として使う能力『魔軍転生』。今はクルセイダーが使う能力だが、本来は信長が用いていたものだ。シナジーどころかそもそもその為のカードデザインとなっており、当然爆発力は甚大だ。
「まあ、ここまで抵抗できたのは褒めてやるよ。相当な数の魔軍将を引きはがされちまった。だがもう終わりだ、お前を助ける奴はいない! さあ、最後のターンを始めな!」
 レッカが今まで墓地に落とされた将のカードを見ながら、しかし余裕たっぷりに言う。その前で、楓もまた自分の墓地を見つめ、倒れていったメイドたちの姿を思い浮かべる。
「いいえ、まだ、ぼくを助けてくれる仲間はいます。彼女たちは、決して消えていったわけではない! 孤高のメイド戦士は世を忍ぶ仮の姿……墓地の仲間を供物として捧げることで彼女は力を増す。最後まで共に戦うと言った仲間のために、今、真の姿を現す!」
 楓の声と共に、メイド戦士が光に包まれる。それと同時に彼女のメイド服も形を変え始めた。これは執事戦でも用いた強化カード『神化衣』、いや……
「ユーベルコード【ドレスアップ・プリンセス】! メイド戦士は神の衣をまとい、次なる高みへと昇る! そこに押し上げてくれるのは、共に戦った仲間の魂! 来てっ! 竜神魔法少女、メイプル!!」
 メイド服に神の纏う羽衣のような衣装が施され、同時に周囲に仲間のメイドたちの霊が舞う。輝く光の中現れたのは、孤高のメイド戦士の真の姿『竜神魔法少女メイプル』のカードであった。
 ちなみに触手とかスライムとかに致命的に弱いのだが、今回の相手はフォーミュラの中でも特にガチ度(色んな意味で)の強い信長である。そう言った要素は一切持ち合わせていないので割愛だ。
「なるほど……だが、いくら強い攻撃でも単騎で破壊できるのは憑依している魔軍将だけ! 秀吉、信長の盾になって死ね!」
 レッカの言う通り、憑依の数だけ信長の形態はある。これがメイド部隊が信長を攻略できなかった理由だ。だが、楓はそれに対して怖じる様子は一切ない。
「死して尚共に戦う仲間と、彼女は戦い続けるんです! ゴッドペインターさん、おねがいします!」
 楓の掛け声に、ペインターが筆を走らせる。それはメイプルの衣装に竜の力強さと少女の可憐な美しさ、そして神の威厳を書き足し、さらなる神々しさを持たせた。それはさながら劇場版フォーム。作画担当泣かせのキラキラ全盛り衣装だ。
 その衣装は見せかけだけではなく、光となったメイドたちの魂が神罰の光を放ち、信長に憑依した秀吉を浄化していく。邪霊に対する特効効果、それは敵の弱点を突くものであった。そして墓地に落ちた将たちは最早信長を助けない。
「使い捨てていくあなたの憑装と違い、メイドたちとメイプルは永遠に絆で繋がれています! さあ邪悪な魔王よ、骸の海へ変える時です!」
 メイプルがロッドを構え、信長へと向ける。そこにチャージされて行くのは眩い光。
「メイプルブラスター、フルバーストっ!」
「ぐああああーーーっ!!」
 仲間の魂に背を押され、ロッドから放たれる極大出力の光が敵を呑み込み浄化する――!
 巨大クリーチャーを破壊されたことでレッカのライフポイントは0まで削り切られ、それに伴うダメージを受けたレッカはカードを飛び散らせながら後方に吹き飛ばされる。
 その前で楓とメイプルは並んで最後のポーズを決め、勝利を宣言をするのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

津上・未有
…堕悪苦空間か
敗北者に死…魔王たる我でも、それはやはり怖い、な
それに、猟兵としてはオブリビオンは見過ごせん
言っておくが、我は正義の味方ではない
あくまで我は悪だ!猟兵として、魔王として、お前を倒す!
ゴッドペインターよ、この戦いをいいリアクションで盛り上げてくれよ!

我が使うのは無手札必殺デッキだ!
手札0で真価を発揮するカード群で戦う!
だが…さっきゴッドペインターに新たなカードももらったからな!
さっきとはまた違うぞ!

まずは魔王の軍勢を発動!プチデビルたちを呼ぶ!
更にこいつらを生贄に…現れろ!祭火神機『ウェスタ』!
そして残りの手札を全て伏せる!

我が無手札必殺に死角はない!
底知れぬ絶望の淵へ沈め!



 二戦負けを喫し、レッカは胸を抑えうずくまる。それはゲームに負けた屈辱からではない。自らが貸したルールに則り、失ったライフポイントの分己の命そのものを削られているから。作り出した者の命すら奪っていくこの世界に、津上・未有(自称真の魔王・f10638)は思わず恐怖を感じる。
「……堕悪苦空間か。敗北者に死……魔王たる我でも、それはやはり怖い、な」
 死を恐れるのは当然の事。ましてや本来ただのゲームでしかないカードに命をかけさせられる。それを考えればどうしたって怖いという感情を消し去ることは出来ない。
 だが、それでも未有は逃げるようなことはしない。
「それに、猟兵としてはオブリビオンは見過ごせん」
 それはこの場に彼女がいる理由の一つ。しかしそれは、分かりやすい正義感や使命感などからではない。
「言っておくが、我は正義の味方ではない。あくまで我は悪だ! 猟兵として、魔王として、お前を倒す! ゴッドペインターよ、この戦いをいいリアクションで盛り上げてくれよ!」
「ははーっ!」
 堂々たる未有の宣言に、正に魔王の配下、といった様子で先刻助けたゴッドペインターが答える。その姿に己の中の何かを刺激されたのか、レッカは堂々と立ちあがりカードを構えた。
「魔王だと? この闇の世界に王はこの忌火起・レッカただ一人でいい! 偽物の王様にゃあ出てってもらおうかぁ!」
 戦いの始まりと共に、まずは潜行を得た未有が動く。
「我が使うのは無手札必殺デッキだ! 手札0で真価を発揮するカード群で戦う!まずは魔王の軍勢を発動! プチデビルたちを呼ぶ! 更にこいつらを生贄に……現れろ!祭火神機『ウェスタ』! そして残りの手札を全て伏せる! ターンエンドだ!」
「おお……これこそ魔王様必勝の型、無手札必殺! 早々にこれとは勝負はもう決まったも同然!」
 一手目にしてフィニッシャー級を出した未有を仰々しく称えるペインター。だが気づいているだろうか。むしろこのリアクションは負けフラグに近いということを。レッカは余裕の笑みで自身の手札から一枚のカードを出した。
「俺のターンだ。俺は場にこの『はじまりの牢獄』を出す。そしてカード『林檎の国』『おやすみなさいの国』を場に出す。こいつは場に制限を課す強力なカードだ……だが、俺はあえてこの二つを破壊しライフポイントを削る。そして猟書家『キング・ブレイン』を召喚! ターンエンドだ!」
 命を削り、強力なカードを無駄死にさせコスト代わりにしながら強いユニットを出したレッカ。しかし一手目に払えるコストではただ出しただけにとどまっており、無手札にて強化されたウェスタのスペックには及ばない。
「我のターン。引いたカードをウェスタのコストとして墓地に落とし、無手札必殺を継続! キング・ブレインに攻撃だ!」
 ウェスタの一撃がキング・ブレインを粉砕し、レッカのライフポイントをさらに削る。だが、レッカはまさにそれこそが狙いとばかりに笑みを浮かべた。
「きたぜぇ……まずは一つ、力の解放だぁ……!」
 場に出ていたはじまりの牢獄が脈動し、かかっていた鍵が一つはじけ飛んだ。そしてそれを見せつけるように、レッカはその前にさらなるカードを展開していく。
「このターン俺は『プリンセス・エメラルド』を通常召喚、さらに場に『金の卵の国』を置き、卵によってライフを補充。ターンエンドだ」
 一見すると欠員を補充しただけのジリ貧状態。実際そう見たペインターは未有に対してさらなる攻勢を進言した。
「僅かなライフを回復するなど、もはや敵は万策尽きた模様! 魔王様、あの緑の年増も破壊してしまってください!」
「うむ……」
 興奮するペインターと逆に、険しい顔でウェスタを攻撃に向かわせる未有。その一撃はプリンセス・エメラルドを破壊するが、それによって後ろの牢獄の鍵がまたも壊れ、レッカの笑みはさらに凄味を増した。
「さーて、このターン俺は卵の国を生贄に捧げ、『レディ・ハンプティ』を特殊召喚。さらにコストを払って『サー・ジャバウォック』も場に出してターンエンドだ。さあ魔王様よ、今度はどっちを破壊する?」
 挑発するように言うレッカ。それに応えるように、未有はウェスタに攻撃を支持した。
「良かろう、ウェスタで攻撃だ。破壊するのは……」
 その言葉と共に伏せたカードの一枚が開く。
「後ろの牢獄だ! 装備カード『セブンリーグブーツ』をウェスタに装備、跳ねるようどこまでも行き、はじまりの牢獄を破壊せよ!」
 一足飛びに場を飛び跳ね、不気味に脈動する牢獄を攻撃したウェスタ。牢獄にひびが入り砕けそうになるが、レッカはまだ笑みを崩してはいない。
「ち、たったこれだけか……まあいい。その攻撃に対応して場の二体は生贄に捧げ、そのコストで『望遠鏡の一撃』を割り込み使用。お前の伏せカードを壊させてもらうぜ。余剰コストのバーンでダメージは食らうが仕方ねぇ。そして牢獄が戦闘で破壊されることにより……『オウガ・オリジン第四強化体』召喚!」
 最後に鍵がもう二つ弾け、それと共に全体が壊れた牢獄から出てきたのは黒い顔を持った少女。その力は猟書家よりもはるかに高く、今のウェスタすら凌ぐほどだ。
「こいつが召喚されたのはお前の戦闘フェイズ。よってこのターンから早速動くことができる。完全体じゃないのは残念だが……行け、オウガ・オリジン! 能力『斬り裂きの街の探偵』でウェスタを通り越し、プレイヤーにダイレクトアタック!」
 オウガ・オリジンの体が霧に紛れて消え、一瞬で未有の前に現れ、その胸にナイフを突き立てた。勿論ビジョンの攻撃ゆえ実際に傷がつくわけではないが、高い攻撃力でごっそりとライフが削られ、それに合わせ未有自身の生命力も奪われる。
「魔王様!」
「猟書家を倒させたあたりからそんな気はしておったわ……猟書家が死ぬほどオウガ・オリジンは力を取り戻す。考えれば当たり前の事よ。というか貴様最初に自分の上司殺させたな? とんだワルだな」
 余裕の表情は崩さないが目が泳いでいるレッカ。やっぱりあれを最初に出したのはわざとらしい。
 だが、そこを突いたところで現状未有が不利なのは変わらない。むしろ口封じと言わんばかりに次のターンで仕留めにかかってくるのは明白である。
「ま、魔王様……」
「うろたえるな! 貴様それでもこの魔王の僕か! 最後の時まで己の勝利を疑わぬ……それが魔王たるものの取るべき態度よ!」
 ペインターを一喝し己のカードに手をかける未有。そしてそのカードを引き、堂々とウェスタの効果で墓地に落とした。
「本来はここで『邪竜の槍』と『魔王剣ベルセルガー』を墓地に落とし強化するところだが……さっきゴッドペインターに新たなカードももらったからな! さっきとはまた違うぞ! ペインターに進化させたこのカード、即ち『邪神竜の槍』と『大魔王剣ベルセルガー』!」
「ず、ずりぃぞそんなの!?」
 先の執事戦で使った者より格段に強まったカードがウェスタに力を与える。それは猟書家四人を食らったオウガ・オリジンすら軽く上回る、まさに圧倒的魔王力の権化だ。
「我が無手札必殺に死角はない! 底知れぬ絶望の淵へ沈め!」
 さらに魔王らしさを増した剣がオウガ・オリジンを叩き切り、その後ろにいるレッカにも甚大な貫通ダメージを与えた。要所要所でライフを削っていたレッカはそのままライフをすべて失い、両断されるビジョンの後ろで仰向けに倒れていく。
「おお……神々しいです、魔王様!」
 感激の涙すら流しているペインターの前。仰向けになったレッカすらかくやと言う程に、未有は胸を張って魔王の威厳を堕悪苦空間に示すのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
爆弾人形は自爆して相手クリーチャーを道連れにする
壁であり、フォーミュラ召喚の生贄でもある。
速攻で終わらせる気ね

冷静に分析するも
私の場にオブリビオンはゼロ

猟書家の美女達を詰め込んだら
手札事故ったわ★

超結界【結界術・全力魔法】で爆弾人形の攻撃は通さないけど
フォーミュラには貫通されて虫の息

でも最後に『私達の楽園』を引き当て
手札のドン・フリーダム、レディ・オーシャン、女性猟書家達を
生贄なしで特殊召喚

【集団戦術】で戦闘力を一つに束ね
敵フォーミュラを撃破!
金縛り【念動力・マヒ攻撃】で爆弾人形は庇えない

【2回攻撃】でもう1回殴れるドン★
見惚れてるスケベ君を
淫魔の闘技【誘惑・慰め・生命力吸収】で楽園に御招待♥



「時間を稼ぎやがれ、《爆弾人形(マネボム)》共ッ!」
 ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)が攻め込ませたオブリビオンを道連れに、防御表示の爆弾人形たちが一斉に爆発した。その爆発に巻き込まれ、オブリビオンカードたちは次々と墓地へと送られていく。
「さあ、これで墓地に送るカードの数は十分だ。こいつはとにかく時間がかかるが……ようやく出番だぜ。俺のターン、『『銀河皇帝』リスアット・スターゲイザー』を召喚!」
 多数並んだ旗艦の後ろに、黄金の輪を背負った威厳ある男が堂々と登場した。この男が出るまでの展開を考え、ドゥルールはレッカのコンセプトを推理する。
「爆弾人形は自爆して相手クリーチャーを道連れにする壁であり、フォーミュラ召喚の生贄でもある。速攻で終わらせる気ね」
「その通りだ。さらに場の『白騎士ディアブロ』と『黒騎士アンヘル』を生贄に捧げ、『マインド』及び『黒き槍の船』を特殊召喚し搭乗、速攻能力を持たせる! 行け、銀河皇帝!」
その男は場に並ぶ己が配下を乗り越え、重い一撃を放った。
 ドゥルールの場はもうプレイヤーを守るクリーチャーはおらず、あるのは能力カードで張った結界と、一定ターンそれを強化する魔法カードのみ。先に自爆した人形程度の攻撃なら防げるそれも、文字通りに格の違うフォーミュラの一撃を防ぐことは出来ず、たった一撃でドゥルールのライフはほとんどが削り取られた。
「どうした? さっきからロクな抵抗もしねえじゃねえか。その後生大事にしてるカードはなんだ? まあ大方使う対象のいない強化か条件を満たせない特殊効果カードってとこだろうがな」
 既に風前の灯火となったドゥルールのライフを見ながら、レッカは小ばかにしたように言う。
 事実、ここまでのゲームでレッカがフォーミュラ召喚の長い手順を踏んでいる間、ドゥルールは場当たり的に小型クリーチャーを出すばかりで碌な攻撃や妨害を行わなかった。それどころか手札を溢れさせ、明らかに送る意味のないカードを墓地に送ることすらあった。
(猟書家の美女達を詰め込んだら手札事故ったわ★)
 その理由はクリーチャー過多による手札事故。とりわけ特殊能力が多く何らかのカードと連携することを前提としている猟書家は、そのシナジー用のカードがないと単なる重いだけのクリーチャーと成り果てることも多い。一応『アズマ』や『今川義元』あたりはただ出すだけでも単純に強いファッティだが、彼らは男性でありドゥルールのデッキには採用されていない。
 結果的に出しても本領を発揮できないカードや、今の手札とシナジーを持たない強化カードが手札の中でダブつき、相手の盤展開をむざむざと見過ごす結果となってしまっていた。
 そして今の銀河皇帝の圧倒的な攻撃力。恐らくこれがドゥルールのラストターンとなるであろう。
 その運命のカードを、ドゥルールはドローした。
「さあ、悪あがきに何か一体でも出すか? だが大人しくサレンダーすることをお勧めするぜ。ダメージがないなら痛くはねぇからなぁ!」
 既に勝ったとばかりにいうレッカ。だがその前で、ドゥルールは今しがた引いたカードを高く掲げた。
「いいえ、最後に愛は勝つ。それを見せてあげるわ。死霊術とは不変不朽の美。その真髄は永遠の愛!! 【私達の楽園】!」
 最後にドゥルールが引いたカード。それは彼女のユーベルコードをカード化した【私達の楽園】。その発動と共に、ドゥルールの墓地と手札が淡く輝き、そこかないくつもの姿が現れる。
「手札のドン・フリーダム、レディ・オーシャン、そして女性猟書家達を生贄なしで特殊召喚!」
 手札のカードを守護霊として問答無用で召喚する強力極まりないカード。だが、その代償として『霊』となった故に場に留まり続けることは出来ず、ターン終了時に骸の海へ還る……つまりリムーブされる。その状況ではあるが、ドゥルールはこの一ターンで愛する霊たちと共に勝負をかけるつもりでいた。
「【集団戦術】で戦闘力を一つに束ね敵フォーミュラを撃破! 金縛り【念動力・マヒ攻撃】で爆弾人形は庇えないわよ!」
 同格のフォーミュラである『ドン・フリーダム』にジェネシス・エイト最強であった『レディ・オーシャン』が力を貸し、パワーの合計値で大きく上回った銀河皇帝を破壊する。本来彼を守るために配備されていた爆弾人形やマインド、戦艦などは『エンデリカ』の黒薔薇に絡めとられ、動くことができない。そのまま他の猟書家たちの攻撃を受け、銀河帝国軍は次々崩壊していった。
 だが、流石は銀河皇帝、貫通したダメージはさほど大きくなく、レッカのライフはまだ潤沢に残っている。
「へ、へへ、これくらい……どうせ次のターンには消えちまうんだからな……!」
 そう言って強がるレッカ。その視線は、今しがた銀河皇帝を討ったドン・フリーダムとレディ・オーシャンに注がれている。きっと敵のフィニッシャーを注視しその力を値踏みしているのだろう。きっとそうだろう。
「残念だけどもう一つだけ使ったカードがあるのよ。【2回攻撃】でもう1回殴れるドン★」
 技能カード故流石にアタックフェイズを二度行えるような強力なものではなく、パワーを半分にしたうえで攻撃が二度当たるというものだ。だが、攻撃に参加していたのはボス級である猟書家ばかり。半分にしても有象無象は蹴散らせたし、最大の障害である銀河皇帝は最強クラス二人掛かりで倒した。事故を起こし手札が詰まっていたということは、一度流れ出せばそれは怒涛の奔流となって氾濫を起こすのだ。
「見惚れてるスケベ君を淫魔の闘技【誘惑・慰め・生命力吸収】で楽園に御招待♥」
「だ、誰がスケベだ……のわっ!?」
 真っ赤になって反論するレッカに、ドン・フリーダムの裸体が抱き着き、レディ・オーシャンが覆いかぶさる。さらにこちらが当代とばかりにプリンセス・エメラルドがハイレグから伸びた長い脚を見せつけ、バトラー・サファイアも主に従ってかっちり着込んだ服を緩める。エンデリカが所在無さげにしているのは、多分ある一点の力が足りないからだろう。
「今のでちゃんと攻撃対象は指定できたみたいね、スケベ君」
「ば、バカいえ……ぬおぉぉぉぉぉっ!?」
 召喚されたビジョンに埋もれ何が起こっているかは分からない。だがカウンター上では、レッカのライフポイントが未経験の勢いで空になるまで搾り取られて行くのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

水桐・或
やっぱり名前の通り、フォーミュラを召喚するデッキか
なら僕はあのカードを奪い取ろう

略奪効果はコストが高いのが難だね

『ホワイトセージ』でエネルギーを溜めつつ、さっきの戦いで獲得した『マロリー・ドラッケン』を召喚

相手の攻撃でトリガーする効果「リアライズ・パニック」で低級モンスターを呼びぶつけて時間稼ぎだ

時が来たらペインターの人にマロちゃんのカードに僕のUC『他化自在腕』を描いてもらい「ダブル・マロリー」で効果を倍加
伸びるこの腕はどこにでも届く
敵墓地のカードを自分の墓地へ【略奪】
さらにデッキから、這い上がりし大悪『クライング・ジェネシス』を奪って召喚!
骸の海発射装置で墓地のモンスターを呼び、一斉攻撃だ



 忌火起・レッカは猟書家である。それはつまりオブリビオンとしても上位に入る存在ということであり、例えカードゲームに特化していても、そのタフネス、生命力は並のオブリビオンの比ではない。それ故に、ライフポイントが命に直結するこの堕悪苦空間で幾度も敗北を喫しても、その命を失わずにいられた。
 だがその強靭な命も、ついに終わりを迎える時が来た。彼の残る生命力は、丁度ゲーム一回分のライフポイント、それと同じほどしか残っていない。
 これが最後のゲーム。故にレッカは、文字通りに己の命を懸けたカードを手に対戦相手と向かい合った。
 彼が全てを託したそのデッキを、水桐・或(剥奪と獲得・f31627)は静かに見つめる。
「やっぱり名前の通り、フォーミュラを召喚するデッキか。なら僕はあのカードを奪い取ろう」
 騙しや裏の意味などない、名前通りの強力なデッキ。そのデッキに、或は必ずあるはずの一つのカードを思い浮かべた。
「さあ、行くぜ! 俺は最後までこのカードと共にある! 俺のターン、場に『ダストブロンクス』のカードを置き、さらにそこへ『ダークポイント』を召喚。まずはこいつでターンエンドだ!」
 黒一色の体に白いコートの怪人を場に置き、同時にフィールドを書き換えるカードを置いたレッカ。その夫人を見て、或は確信する。間違いなくあのカードはデッキの中にあると。
「なら僕のターン。『ホワイトセージ』でエネルギーを溜め、それを使って『マロリー・ドラッケン』を守備表示で召喚。ターンエンドだ」
 先刻メイドとの対戦でアンティとして奪ったマロリー・ドラッケンのカード。召喚された彼女はまるで怪人の威容に怯えるよう身を縮ませてその場にとどまった。
「なるほど、それじゃあ俺のターン、『アトランティス』を場に出し、ダークポイントを生贄に捧げて『スカムキング』を特殊召喚! 先に出したダストブロンクスのフィールド適応でパワーアップし即座に能力を使う。『キングアンドクイーン』、アシュリー、攻撃だ!」
 汚泥の巨漢の中から裸体の美女が飛び出し、マロリーに魔法攻撃を仕掛ける。
「マロリーが攻撃の対象になったことでトリガー、カウンター能力『リアライズ・パニック』が発動する。小型の低級モンスタートークンが召喚され、マロリーへのダメージを肩代わりするよ」
 或が攻撃が届く前にそう言うと、マロリーの前に出た本のページから大量の泥を固めたようなスライムが現れ、マロリーをかばってはじけ飛んでいく。マロリー自身は守備態勢に入っていたこともあり、攻撃によるダメージは一切受けていなかった。
「それじゃあ僕のターン。マロリーは守備を継続、そしてもう一つホワイトセージを使って力を溜め、ターンエンドだ」
 このターンも守りを固める或。先のメイド戦でも使った時が来るまでに備える街の戦法、攻撃を遮る煙幕の代わりがマロリーと言ったところか。だが、メイドより使用デッキもプレイヤーとしての腕も上なレッカに同じ手が通じるだろうか。
「は! なるほど、読めたぜてめぇの考えが。だが甘いぜ! 『ドクター・アトランティス』を召喚し、召喚効果で『クローン装置』を作る! こいつで俺の場にいるクリーチャーは本体が動けなくなる代わりに力を劣化させたクローントークンが作れるようになる。トークンは装置か本体が壊れない限り俺のコントロール下で現れ続けるぜ……たとえフォーミュラでもなぁ! そしてクローン装置がある状態で本体を生贄に捧げ、より強力な幹部を呼ばせてもらう。ドクター・アトランティスを生贄に捧げ『鋼神ウルカヌス』、スカムキングを生贄に捧げて『レディ・オーシャン』召喚!!」
 場に出したフォーミュラを奪い取る魂胆だと察したのだろう、レッカはそれを無数の劣化コピーを出す物量作戦で破る手に出た。或が勝利を定められしデッキの内容を察したように、レッカもまた先の戦いから或の戦法を予測していたのだ。これでは例え高いコストを払って一体を奪っても、劣化コピーが延々現れ続けジリ貧となってしまう。その上で強力なクリーチャーを展開していき、圧倒的な物量戦を挑もうと言うのだろう。
 だが、或は全く表情を崩さなかった。彼は自身のターンでコストを目いっぱい貯め、そして一枚のカードを差し出した。
「これは僕のユーベルコードカード【略奪の腕:他化自在腕】だ。コストを用い僕はこれを使う。ただし、僕の技としてではない。使うのは……」
 その言葉と共に、後ろに控えていたゴッドペインターが筆を持って進み出る。その筆はマロリーのカードを撫で、彼女の手に刻印を施した。
「今からこのカードはマロちゃんの力となった。そしてマロリー自身の能力として『ダブル・マロリー』発動。彼女の持つ効果はこれで倍加する!」
 マロリーの隣に眼鏡のないマロリーが現れた。そして二人は刻印のついた手を伸ばす。
「他化自在腕、第一の効果として墓地からカードを奪取する。ジェネシス・エイト、ここへ」
 マロリーの手がレッカの墓地から死したジェネシス・エイトを引き上げ自分の墓地に引きずり込む。
「略奪効果はコストが高いのが難だね。だから、マロちゃんに二人になってもらうことで少し踏み倒させてもらった。正確には二つ略奪するコストはあったんだけど、奪ったものを使えないんじゃ意味がない。伸びるこの腕はどこにでも届く。君のデッキから、這い上がりし大悪『クライング・ジェネシス』を奪って召喚!」
 もう一人のマロリーの手が伸び、レッカのデッキに突っ込まれる。そしてその腕に引っ張られて現れたのは、胸に大きな黒い穴の開いた巨大な怪人……『クライング・ジェネシス』その人であった。
 クライング・ジェネシスの胸の穴に、黒色の渦が巻き起こる。
「骸の海発射装置で墓地のモンスターを呼び、一斉攻撃だ。いかにクローンを作れるとは言えど、大元を奪われてしまっては意味がないだろう」
 墓地に引き込んだジェネシス・エイトたちが甦り、クライング・ジェネシスと共にレッカの場に踏み込んでいく。
「ば、馬鹿な……俺の、勝利を定められし(フォーミュラー)デッキが……」
「ならその定められた勝利を奪わせてもらうよ。そう、彼風に言うなら……『凄え能力をパクってやったぜ! 怒涛の「過去」を喰らって地獄に堕ちな!』」
 他人の物を奪って戦った巨悪が、自身が略奪されて元の主に牙を剥いた。空くと骸の行軍が、最強の幹部さえ踏み潰して後ろにいるレッカさえも飲みこんだ。
「ぐああああーーーっ!! 畜生……畜生! もう少しだったのに……! もう少しで世界は堕悪苦TCGに跪いて……! 新しいフォーミュラーカードもリリースされたのに……!」
 悪の組織としての世界征服の野望と、カードファンとしての新カード……恐らくはカルロス・グリードだろう、それへの期待。それを抱きながら、レッカは自身の作り出した闇のゲームに飲まれて消えた。
 それと同時に堕悪苦空間は晴れ、周囲は元の姿に戻る。
 略奪の悪魔は、ここに街の平和と、真に絵を描く自由を略奪し返したのであった。
 最もこの街から書き足し自由なカードゲームのブームが去るのかどうかは、彼にも分からないことではあったが。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月06日
宿敵 『忌火起・レッカ』 を撃破!


挿絵イラスト