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金と欲望と魔女の館

#デビルキングワールド

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#デビルキングワールド


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「フフフ……いいわ。その願い、叶えてあげる……ただし対価が必要よ」

 うず高く積み上げられた金貨と札束の山の上で、一人の魔女が箒に乗って浮いている。
 ここは魔界にある彼女の館。"願いを叶える魔女"として最近巷で噂になっている彼女は、今日も願いを叶えにやってきた悪魔の相手をしていた。

「この願いに見合う対価は……あなたの有り金全部かしら♪」
「な、なくした鍵を見つけてもらうだけで、そんなに……?!」

 あまりにもぶっ飛んだ請求額。しかしそれを咎めるような法律は魔界には存在しない。
 驚く依頼人の前で、魔女は魅入られそうなほど美しく、しかし邪悪な笑みを浮かべた。

「嫌ならいいのよ? 他を当たってもらっても……」
「い、いえ、払います! 払わせてください!」

 断るどころか逆に、尊敬の表情で持ってきたD(デビル)をありったけ差し出す悪魔。
 彼女が噂になっている理由がこれだった。どんな願いにもフザけた大金を要求し、しかも叶え方は理不尽なものばかり。そのワルさに惹かれ、騙されると分かっていながら願いを叶えてもらいたがる悪魔が引きも切らないのである。

「フフ、ありがとう♪」

 かくして館に収められる財貨は増え続け、積み立てたD(デビル)の上で魔女は笑う。
 目標とする金額まで、あと少し。この世界にカタストロフを起こす、その時まで――。


「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「デビルキングワールドで『シャンバラの魔女』と名乗るオブリビオンが、悪徳な手段で悪魔からカネを巻き上げているようです」
 なぜオブリビオンがカネを――と思うかもしれないが、デビルキングワールドで流通している通貨「D(デビル)」には魔力が籠められており、それを大量に集めたオブリビオンはカタストロフ級の儀式魔術が使用できるらしい。敵はあの手この手でカネをかき集め、世界を滅ぼす儀式の準備を密かに進めているのだ。

「魔界の魔女は世界の根源を操る『欲望具現術(ウィッチクラフト)』の使い手です。シャンバラの魔女はその力で悪魔達の願いを叶え、対価としてカネを請求しています」
 これだけなら真っ当な商売と言えなくもないが、彼女が願いに対して要求する金額はヤバいほど高額で、しかも願いの曲解・歪曲は当たり前。望んだ形で願いが叶うとは限らないし、願いを叶える過程で無関係な者にまでヤバい被害を出す、まさに悪の魔女である。
「ですが、ここは魔界。悪徳と欲望を肯定する『デビルキング法』の施行下においては、彼女の行動は褒められこそすれ公に貶されることはありません」
 悪い奴ほど尊敬され、悪事を働けば称賛されるのがこの世界。それを良いことにシャンバラの魔女は町中にどデカイ豪邸を構え、今日もあくどいやり方で悪魔達の願いを弄び、私腹を肥やし続けている。

「ここまで派手にやっても問題にならないのは、そもそも一般の悪魔が金銭にあまり執着していないのもあります。彼らはカネなんてなくても大して困りませんし、すぐに無償で何でもあげてしまうクセがあるので」
 悪魔を自称するくせに善良でお人好しな魔界の住人達は、不当にカネを巻き上げられても怒らないし気にしない。カネをいっぱい持っているのは悪い奴、という漠然としたワルさを測るバロメーターぐらいにしか使われていないのが実情である。
「しかし前述した通り、オブリビオンにとって魔界の通貨は儀式魔術の触媒になるので、カタストロフが起こらないうちにシャンバラの魔女からカネを奪う必要があります」
 向こうも報復や強盗を警戒しているらしく、あぶく銭にものを言わせて大量の用心棒を雇っている。この警備体制を突破して、シャンバラの魔女を倒すのが今回の依頼である。

「魔女の館を守っているのは『セントウイン』という悪魔です。『カネで雇われるとかカッコいい』というワルっぽい価値観のもとで働いており、雇い主への忠誠心は皆無です」
 見た目はセント硬貨を模した仮面をした全身タイツというヘンテコな連中だが、彼らも悪魔なので戦闘力は高い。力ずくで強行突破するのは不可能ではないが、人数も多いので現実的では無いだろう。オブリビオンではない相手をあまり痛めつけるのも宜しくない。
「ですので、ここは何らかの方法で悪魔を出し抜き、敵のいる部屋に到達してください」
 警備の目を盗んで密かに侵入したり、使用人に変装して紛れ込んだり、方法は色々と考えられるだろう。悪魔は人がよく悪い奴に騙されやすいので、付け入る隙はあるはずだ。
「特にセントウインは悪魔にしてはカネへの執着が強いので、こちらもカネを出せば平気で裏切るのではないでしょうか」
 悪事でカネを集めるオブリビオンには、こちらもワルさとカネの力で対抗というわけだ。悪と悪とがぶつかれば、よりワルいほうが支持を集めるのもこの世界の流儀である。

「シャンバラの魔女は館の一番奥の部屋にいます。これまでの悪事で稼いだカネが全て集められているので、入ればすぐに分かるでしょう」
 善良な悪魔達とは違い、オブリビオンとして蘇った彼女は正真正銘の悪党である。遠慮なく退治して貯め込んだカネを根こそぎ奪ってやろう。それがこの世界のためにもなる。
「奪ったカネはまた別のオブリビオンに集められないよう、派手に散財してしまうのが良いかと思います。ちょうど魔女の館の近くのは、大きい繁華街もあるそうなので」
 ファッションやアイテム、あるいは流行りのスイーツなど、あぶく銭をぱーっと派手に使って遊ぶのはいい休養にもなるだろう。重要なのはオブリビオンにカネを貯めさせない事なので、奪ったカネをただ焼いてしまっても別に構わないが。

「悪魔達はあまり危機感を持っていないとはいえ、シャンバラの魔女が多くの人々を苦しめ、邪悪な儀式を企てているのは事実です。どうかよろしくお願いします」
 "魔女"を名乗る者としても思うところがあるのか、説明を終えたリミティアは神妙な顔で、手のひらにグリモアを浮かべてデビルキングワールドへの道を開いた。悪辣なるオブリビオンの計画を挫くため、魔女の豪邸での戦いが始まる。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 今回の依頼はデビルキングワールドにて、あくどい方法でカネを集めているオブリビオンを退治するのが目的です。

 一章は『セントウイン』との集団戦になっていますが、メインは戦闘ではありません。
 基本的には屋敷を守る彼らとの戦闘を回避して、ボスのいる所まで辿り着くのが目的になります。潜入・交渉・変装、手段は問いません。
 強行突破もできなくはないですが、人数も多くて強いのであまり現実的ではないです。行動原理が単純なので、出し抜くだけなら難しくはないでしょう。

 二章は館のボスである『シャンバラの魔女』との決戦です。
 これまでの悪事で貯め込んだカネを全て集めた部屋にいるので、さながら金庫の中での戦闘のようになります。特に気をつける事はないので派手に暴れて大丈夫です。
 悪意をもって他者の願いをもてあそぶ邪悪な魔女です。容赦はいりません。

 無事戦いに勝利した後は、奪ったカネでショッピングに出かけます。
 大量のカネをそのまま一箇所に残しておくほうが問題なので、世界の為と思って派手に散財してください。その使い方次第では悪魔の尊敬を得られるかもしれません。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『セントウイン』

POW   :    ㉕セントウイン
【自身の筋肉】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
SPD   :    ①セントウイン
レベル×1体の、【仮面】に1と刻印された戦闘用【①セントウイン】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    ⑩セントウイン
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【厨二オーラ】から【暗黒破壊滅殺光線】を放つ。
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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

雛菊・璃奈
ミラ達仔竜を連れて参加…。

【影竜進化】でミラ達を影竜に進化させ、影の中に潜航しながらこっそり屋敷に侵入するよ…。
影の中なら誰にも気づかれずに移動できるしね…。

屋敷内に侵入したら、屋敷の各部屋を回って、魔女が集めた高価な美術品とか宝石とか散財したモノを集めて影の異空間の中に収容、回収していくよ…。
これだけ大きな豪邸を建てるような性格なら、お金集めで我慢できるわけないだろうしね…。

後は各部屋を回るついでに遠隔起動式の呪符による仕掛けを施して屋敷の各所で一斉起動…。
混乱を起こして向かいやすくしようかな…。

後は最奥の部屋まで影の中に入って、お邪魔します…。
あ…熊さんパンツ…(着替え中の魔女)



「我が家族たる竜達……闇の衣を纏いて仮初の進化を得よ……。お願いみんな、わたしに力を貸して……」
 デビルキングワールドの町中にでんとそびえ立つ『シャンバラの魔女』の館に、やって来たのは雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)の3匹の仔竜。彼女が【呪法・影竜進化】の呪文を唱えると、仔竜達はその力で影を操る竜へと一時的な進化を遂げる。
「影の中なら誰にも気づかれずに移動できるしね……」
 ミラ、クリュウ、アイと名付けられた3匹の影竜達と共に、少女の姿は影の中にとぷんと沈み込み、そのまま敵の屋敷にこっそりと侵入する。彼女の意表を突く潜入手段に気が付いた者は、誰もいなかった。

「異常なーし!」
「なーし!」
 館内の警備を担当するのは、カネで雇われた『セントウイン』の集団。カネにがめつくある事がワルくて格好いいと思っている彼らにとって、唸るほどカネを持ったシャンバラの魔女はいい雇い主だった――少なくとも、今のところは。
(でも、あまり熱心に警備してるわけでも無いみたい……)
 所詮はカネで雇われただけの主に、金額以上の忠誠を誓うつもりは無いということか。
 璃奈は不真面目な警備に見つからないよう潜航しながら屋敷の各部屋を回り、時折影の中からこっそりと顔を出す。そして屋敷内に飾られた高価な美術品や宝石など、魔女が散財して集めたモノの数々を集めては影の中に収容していく。

(これだけ大きな豪邸を建てるような性格なら、お金集めで我慢できるわけないだろうしね……)
 必要なのは儀式に使用するD(デビル)通貨だけなのに、滲み出てしまっている魔女の強欲さ。大勢の悪魔から巻き上げた財貨を、璃奈は影という異空間を活かして回収する。
 そのついでに彼女は回った部屋の壁や扉にぺたりと遠隔軌道式の呪符を貼り付け、警備を混乱させるための仕掛けを施していた。
(そろそろいいかな……)
 無駄にでかい屋敷の全てではないが、ある程度財宝を回収できたところで、彼女はその仕掛けを一斉起動。屋敷の各所でド派手な爆発や騒音が起こり、油断しきっていたセントウイン達を仰天させる。

「なんだなんだ!?」
「侵入者か?!」
 仮面の下で慌てふためきながら、セントウイン達は騒ぎのあった場所に急いで向かう。
 この騒ぎに乗じれば、シャンバラの魔女がいる屋敷の最奥に向かうのも容易いだろう。
(お邪魔します……)
 散っていく警備の流れとは逆方向に、影の中に入った璃奈と竜達は音もなく進み。他の部屋とは明らかに造りの違う立派な扉を見つけると、ノックもなく下から忍び込む。そこで彼女が見たものは――。

「あ……熊さんパンツ……」
「きゃっ! ちょっと誰よっ!?」
 目も眩むほどの金貨と札束の山、その中心にいたのは下着姿の美女。どうやら着替え中だったらしいシャンバラの魔女は、突然のアポなし来客に真っ赤になって悲鳴を上げる。
 と――微妙に締まりのない会敵とはなったものの、璃奈は無事にボス部屋への一番乗りを果たしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ファルファラ・ガーデンニア
僕も他の猟兵みたいにたまにはカッコいいことをしろだなんて…まったく余計なお世話だよ。
僕はデビルキング法に従う気なんてないしむしろ法律を守らないなんてすごくワルじゃない?とかなんとかいいくるめたんだけど。

お金で雇われるとかカッコいい…まぁ、それも一理あるかもしれないけれど忠誠心はないとかその辺はみんなが言ういい感じのワルだとは思うけど。

ねぇ、雇い主を裏切るって思いっきりワルでカッコ良くない?
僕はそう思うんだけどどうかな?
仕事を放り出すのもすごくワルでカッコいいなぁ。

あ、よかったら件の魔女のとこまで案内してくれる?お礼はこのお花をだよ(案内させたら【毒使い】で麻痺させて)



「僕も他の猟兵みたいにたまにはカッコいいことをしろだなんて……まったく余計なお世話だよ」
 魔女の力を悪用する邪なオブリビオンの館の前で、ファルファラ・ガーデンニア(花の悪魔の魔王・f31697)は憂鬱そうな顔で呟く。配下のモンスターに何か言われでもしたのか、いつもは己の居城に引きこもりがちな彼も今回の事件に重い腰を上げたようだ。
「僕はデビルキング法に従う気なんてないしむしろ法律を守らないなんてすごくワルじゃない? とかなんとかいいくるめたんだけど」
 悪法も法として律儀にデビルキング法を守る悪魔が多い魔界では、たしかに彼は比較的「悪い子」と言えるかもしれない。ともあれココまで来てしまった以上、また城でのんびりガーデニングをする日常に戻るためには、さっさと事件を解決しないといけない。

「おっと、あんたは客か? 違うならここは通せないぜ!」
「俺たちはセントウイン! シャンバラの魔女様にカネで雇われた傭兵さ!」
 魔女の元に行きたいファルファラの前に立ちはだかるのは、奇妙な仮面をつけた悪魔の集団。ムキムキの筋肉を誇示したり、闇黒の厨ニオーラをアピールしたりと、それぞれが格好を付けながら道を阻む。
「カネを貰ったぶんの仕事はキチンとするぜ!」
「カネがなくなったらオサラバだけどな! カッコ良いだろ!」
 金銭欲の薄い悪魔にしては珍しくカネに執着する彼らもまた、悪魔としては変わり者の部類だろう。別にシャンバラの魔女に忠誠を誓っているわけではないようだが、かといって露骨な侵入者を通すほどその警備は甘くはない。

「お金で雇われるとかカッコいい……まぁ、それも一理あるかもしれないけれど忠誠心はないとかその辺はみんなが言ういい感じのワルだとは思うけど」
 道を塞がれたファルファラはますます憂鬱そうな顔で眉をひそめる。とりあえずここの連中がカネを基準にしてワルくてカッコいい事をしようとしているのは分かった。なら、他にもっとワルい事を教えてやれば気が変わるかもしれない。
「ねぇ、雇い主を裏切るって思いっきりワルでカッコ良くない? 僕はそう思うんだけどどうかな?」
「えっ???」
 そう思って彼が放った問いかけは、セントウイン達に動揺をもたらした。そこはやはり根が善良な悪魔なのか、そういう発想がここの連中には無かったらしい。"裏切り"といういかにもワルそうな響きにドキドキしているのが、仮面越しにでも分かる。

「仕事を放り出すのもすごくワルでカッコいいなぁ」
「そうかな……そうかも!」
「じゃあサボるか! 仕事!」
「うわ、めっちゃワルじゃん俺ら!」
 かくしてあっさり言いくるめられたセントウイン達は、警備の仕事をほっぽって怠け始めた。ファルファラはその横を通り過ぎようとしたところで、ふと何か思いついたように彼らにまた声をかける。
「あ、よかったら件の魔女のとこまで案内してくれる? お礼はこのお花をだよ」
 彼が差し出したのは深紅のゼラニウム。その美しさに惹かれた悪魔達は「いいぜ!」と二つ返事で案内を引き受けるが――花の悪魔の身から咲いたその花の花言葉が「憂鬱」であることを、彼らは知らない。

「着いたぜ! ここが魔女様のおへ……や……ぁ?」
 館の奥までファルファラを案内したところで、セントウイン達は突然身体が麻痺して動けなくなる。彼らに渡されたゼラニウムの花には、どうやら毒が仕込まれていたようだ。
「ありがとう、助かったよ」
 べつに命を取るつもりはないし、悪魔は頑丈なのですぐに治るだろう。まんまと騙されたセントウイン達の「あ……あんた、ワルだな……」という尊敬の眼差しを受けながら、芋虫のように床に這いつくばる連中をまたいで、ファルファラはすたすたと先に進んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

篁・綾
アドリブ連携歓迎だわ。

意外と得意分野なのよね…
【第六感、聞き耳】で周囲を探りつつ、【忍び足】でそっと侵入を。
まぁ、彼らは同心や足軽みたいなものでしょうから、積極的に殲滅する必要はないわよね。

相手をする時間も惜しいし、【闇に紛れる】ように物陰を【忍び足】で移動していきましょう。

出くわした場合、出くわしそうな場合は指定UCを発動。さくっと人型を捨てつつ、【カウンター】ないし【だまし討ち】で相手を幻で包み込みましょう。
【催眠術】も併用し、さくりと。
単体ならば眠らせ、複数ならば幻に包む方を優先で。
幻に包んだ場合は味方として誤認するよう刷り込んでおくわ。
どうしてもの場合は、狭い場所へ逃げ込んでもいいわね



「意外と得意分野なのよね……」
 聞き耳や忍び足といった隠密技能に長けた篁・綾(幽世の門に咲く桜・f02755)は、警備の者がいないか周囲を探りつつ、誰にも気付かれず魔女の館にそっと侵入を果たす。
「何か異常はあったか?」
「いや、こっちは何も」
 館の周りと内部にはあぶく銭で雇われたセントウインが大勢いるが、侵入を察知した者は一人もいない。それだけ綾の隠密が優れている証だが、見たところ彼らはそこまで熱心に警備をしている訳でもなさそうだ。カネで雇われただけなら当然かもしれないが。

(まぁ、彼らは同心や足軽みたいなものでしょうから、積極的に殲滅する必要はないわよね)
 相手をする時間も惜しいし――と、綾は狐耳をピンと立てて警備の物音や気配を探り、闇に紛れるように物陰を音もなく移動する。倒すべき相手が館の主だけである以上、ここで余計な労力を取られまいとする彼女の判断は正解だろう。
「異常なーし」
「ヒマだなー」
 影の如く忍び歩く少女に、セントウイン達はまだ気付いていない。しかし館の奥に向かうにつれて、警備の密度は上がっていく。広い建物とはいえ隠れ潜める場所も無限にあるわけではない、目的地に辿り着く前にいつかは見つかってしまうだろう。

(頃合いかしらね……)
 ただ隠れ続けるのに限界を感じた綾は、相手に発見される前に先手を打つことにした。
 警備に出くわしそうな角で身構え、足音が聞こえた瞬間に【朧桜化身】を発動。さくっと人型を捨てて全身を桜の花弁に変え、風に乗って舞い上がる。
「落ちろ、落ちろ 夢うつつの狭間へ 迫る大蛇に気付かぬように、深い闇へと沈んで眠れ」
「うわっ! なんだなんだっ?!」
 屋内で突然の桜吹雪に包まれたセントウインは慌てふためくが、その動揺は長くは続かなかった。綾が変化したこの桜には眠りと幻をもたらす作用があり、催眠術も併せて用いれば、悪魔ひとりを眠らせることなど容易いことだった。

「Zzz……」
 あっけなく眠りに落ちたセントウインをその場に横たえて、綾は桜に変化したまま次の角へ。今度は複数人の足音が聞こえてくる――それなら眠らせるより幻に包む方を優先。
「うお、なんだこりゃ?! まさか侵入しゃ……なんだ、あんたか」
 再び舞い踊る桜吹雪にセントウイン達は一瞬身構えたものの、すぐに安心したように警戒を解く。桜の幻惑に包まれた彼らの意識に、綾は自分を味方として誤認するように刷り込んだ。きっと悪魔達には彼女の姿が同族か親しい友人のように見えているのだろう。

「そっちも異常なしだな?」
「ええ、お互いにね」
 何食わぬ顔で挨拶を交わして警備とすれ違い、綾は館のさらに奥へ。眠りと幻を自在に操る彼女の歩みを止められる者は誰もなく、やがて最奥にある大きな扉の前に辿り着く。
「ここが魔女の部屋かしら」
 固く閉ざされた扉の下に狭い隙間を見つけると、桜吹雪の身体を活かしてするりと滑り込む。その向こうで彼女を待っていたのは――積み上げられた金貨と札束の山であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
雪花を連れて参加。

【創造支配の紅い霧】を発動。
霧の魔力で魔女とお金の偽物を『創造』し、適当な理由を付けて用心棒達を帰宅させたり、創り出したお金を渡して通して貰うわ。
これで堂々と屋敷を通っても問題ないわね♪

創り出したお金じゃなくて、魔城内の財宝から出しても良かったんだけど…金品に頓着しないんじゃ、Dじゃないと意味無さそうよね…。

それにしても…簡単な頼み聞くだけで有り金全部要求が罷り通るなら、この世界で儲けるのは本当に簡単そうねぇ…。

「おねぇさまー…少しお小遣いが欲しいって言ったら札束くれたのー…」

…返してきなさい、雪花…



「忠義ではなくお金で動く悪魔達……それなら話は早いわね♪」
 文字通り"現金"な悪魔の用心棒を言いくるめるために、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)は【創造支配の紅い霧】を発動。魔女の館を包みこむように現れた魔力の霧から、この世界の金銭の偽物を『創造』する。
「全てを満たせ、紅い霧……。夢も現実も、全てはわたしの思うまま」
 あらゆる物と事象を自在に具現化する事ができる、魔女もビックリのユーベルコードを持つ彼女は、眷属である雪女見習いの「雪花」を連れて、隠れもせず魔女の館に向かう。

「霧が出てきたな……おや魔女様、お帰りなさい」
 館の入り口を守るセントウインは、霧の中から金髪の娘と幼い童女を連れて、自分達の雇い主――シャンバラの魔女がやって来るのを見る。この魔女もまたフレミアが霧の力で創造した偽物。と言っても中身のない操り人形のようなものだが。
「そちらのお嬢さん達は?」
「占いの依頼に来た、新しいお客様よ」
 偽魔女の口を借りて、フレミアは館に入るための適当な理由をでっち上げる。あまり込み入った話をすれば本物との振る舞いの違いからバレる恐れもある、だが例え怪しまれたとしても、彼女には予め用意していた"実弾"があった。

「そうそう、今日から新しい用心棒を雇うことにしたの。悪いけど貴方達はクビよ」
「え、ええっ?! 急にそんなこと言われても困りますよ!」
「ちゃんと退職金は払うわよ。ほら、これでいい?」
 セントウインの手のひらにどさりと乗せられたのは分厚い札束。カネへの執着が強いこの悪魔達には、万の言葉よりもこちらのほうが説得力を持つ。元よりカネで雇われた間柄なら、カネで手を切るのもまた自然な事。
「それを持ってお家に帰りなさい」
「うっひゃあ……ありがとうございます!」
 大金を手渡された悪魔は表情こそ分からないものの、ウキウキの様子で帰宅していく。
 門番のいなくなった扉を押し開け、フレミアは館の中へ。そこにはまだ大勢の警備がいるはずだが、魔力が尽きない限り無尽蔵の贋金を創り出せる彼女に恐れるものはない。

「これで堂々と屋敷を通っても問題ないわね♪」
「ええ、どうぞどうぞ!」
 今まで魔女に雇われていたセントウインも、それ以上の大金をフレミアから渡されるとコロリと鞍替えする。別に情のない金の亡者というわけではなく、彼らはそういう行為を「ワルくてカッコいい」と信じているのだ。
(創り出したお金じゃなくて、魔城内の財宝から出しても良かったんだけど……金品に頓着しないんじゃ、Dじゃないと意味無さそうよね……)
 彼らが執着するのは物欲ではなくあくまでカネ。悪魔特有の価値観の機微も考慮して、創造支配の紅い霧を使ったフレミアの判断は正しかったようで、誰からの妨害も受けずにすんなりと館の奥まで辿り着くことができた。

「それにしても……簡単な頼み聞くだけで有り金全部要求が罷り通るなら、この世界で儲けるのは本当に簡単そうねぇ……」
 デビルキング法の制定下では、どんな暴利や詐欺まがいの商売も咎められない。お人好しな悪魔はちょっとしたお願いで持っているカネをあげてしまうので、その気になればすぐに一財産を築けるだろう――シャンバラの魔女もきっとそうだったに違いない。
「おねぇさまー……」
「あら、どうしたの?」
 と、そこでフレミアの袖をくいくいと引く小さな手。振り返ってみれば、ここまで一緒について来た雪花が、困ったような――あるいは困惑したような顔をしている。

「少しお小遣いが欲しいって言ったら札束くれたのー……」
 雪花が手に持っていたのは、分厚いD(デビル)紙幣の束。先ほどフレミアがセントウインに渡した額よりさらに分厚い。地球の貨幣単位に換算して数百万円はあるだろう。
 セントウインの価値観は「カネで雇われる俺たちカッケエ!」なので、支払われたカネの使い方には無頓着だったらしい。だからと言ってこれは、子供に渡すお小遣いとしてはあまりにも――。
「……返してきなさい、雪花……」
「はいなのー……」
 こめかみを押さえながらため息を吐くフレミアに、とてとて札束を返しにいく雪花。
 そんな一幕も挟みながら、彼女達はシャンバラの魔女の部屋へと向かうのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バンリ・ガリャンテ
カビパンさんと(f24111)

そう。
人類悪魔オブリビオン問わずマインドはサチコたるべし。
すなわち皆よ心に太陽を持て。皆よ心にラスボスを持て。
おわかりか!

さしたる悩みもない身の上で、さして悩みを聞いてくれる訳でもないカレーうどん屋店主に出会ったとき、私の人生に光明が射したのだオラァ話は最後まで聴け!!(踏みつけ)

手強いとみるやカビさんの高貴な血筋を明かしたり(捏造)
これみよがしにアース銭をばら撒き政策したり。Dの通貨価値が如何程か知らんが、より希少なプレミア硬貨欲しくないの??欲しくないの??

ああん?上様とて構わぬなどと無礼千万口にするか!成敗!
えっつうかこれ戦わにゃならんの?えー……


カビパン・カピパン
バンリさんと(f10655)

悪魔セントウイン…控えい!
このコバヤシサチコッている姿が目に入らぬか!

うおっ、まぶし!>< 彼女の心の中、確かに存在するコバヤシサチコは失明レベルの輝き!

こちらにおわすお方をどなたと心得る。畏れ多くも悩み聞くカレー屋のシャンデリア照明係のバンリさんであらせられるぞ!者ども頭が高い、控えい!
お前たちには後日厳しい沙汰があるであろう。心して待つように!

……えっ
そこは「恐れ入りました」と土下座するシーンでしょう!身分明かしても恐れ入らないなんて。

もうしゃーない。
バンリ「うつけ者、余の顔見忘れたか」→ワル「ば、バンリ様!」→ワル「バンリ様!お手向い致しますぞ」のパターンね。



「悪魔セントウイン……控えい! このコバヤシサチコッている姿が目に入らぬか!」
 館を守る悪魔達の前でカビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)が呼ばわると、カッ! と謎の光が辺りを照らし、1人の少女のシルエットを浮かび上がらせる。
「そう。人類悪魔オブリビオン問わずマインドはサチコたるべし。すなわち皆よ心に太陽を持て。皆よ心にラスボスを持て。おわかりか!」
 なんとなく偉人の格言っぽいが意味の分からない台詞を、やたら眩しい光の中で述べるその娘の名はバンリ・ガリャンテ(Remember Me・f10655)。阿漕な商売を行う魔女を成敗すべくやって来た彼女達、その作戦は水戸光圀公よろしくの正面突破であった。

「こちらにおわすお方をどなたと心得る。畏れ多くも悩み聞くカレー屋のシャンデリア照明係のバンリさんであらせられるぞ! 者ども頭が高い、控えい!」
 バシンバシン、と落語家が拍子木を打つようにハリセンをしばきながら、館の真ん前で騒ぎ立てるカビパン。これだけ喧しくすれば警備が飛び出してくるのも当然の事だろう。
「なんだこいつら?」
「悩み聞くカレー屋? 知ってる?」
 知る人ぞ知る(知らない人は知らない)迷店の名も魔界にはまだ轟いておらず、まして照明係に恐れ入る理由もない悪魔達はただ困惑するばかり。だがそんな冷めた観客の反応はさておき、彼女達はノリノリでこの時代劇風路線を強行する。

「さしたる悩みもない身の上で、さして悩みを聞いてくれる訳でもないカレーうどん屋店主に出会ったとき、私の人生に光明が射したのだオラァ話は最後まで聴け!!」
「へぐッ!?」
「うおっ、まぶし!」
 飽きて帰ろうとした悪魔を踏んづけて、ドスをきかせるバンリさん。彼女のポジションはご隠居なのか将軍様なのかヤクザの人なのか、分からないが迫力は凄い。あと眩しい。
 これを演出したカビパン的には、コバヤシサチコは失明レベルの輝きを放つ者らしい。そんな人間実在するのかよとツッコミを入れたい者もいるだろうが、彼女の心の中には確かに存在するのだ。
「お前たちには後日厳しい沙汰があるであろう。心して待つように!」
 かくしてコバヤシサチコの加護を得たバンリの威光にあてられた悪魔は平伏し、もはや抵抗の気力もなく道を開ける――二人が当初書いていた台本ではその予定だったのだが。

「……えっそこは『恐れ入りました』と土下座するシーンでしょう! 身分明かしても恐れ入らないなんて」
「いやだって恐れ入るような身分じゃなかったし」
 カビパン渾身の脅し文句にもセントウインは恐怖せず、バンリに踏まれた奴も起き上がってくる。お人好しで善良過ぎるという欠点こそあるものの、悪魔は肉体的にもメンタル的にもタフなのだ。これしきのことでビビったりはしない。
「やめたほうがいいよ? さてはこちらのカビさんがどんなお方か知らないな? 恐れ多くも父はなんたら朝のかんたら帝、母はうんたら家の出身で……」
 手強いとみるやバンリはカビパンの高貴な血筋(捏造)を明かしてみるが、ウソ臭いと思われたのかあまり効果はなかった。筋骨粒々なヤツ、厨ニオーラを纏ったヤツ、量産型っぽい奴などなど、様々な悪魔がじりじりとにじり寄ってくる。

「あんまり騒ぐようなら、俺達も雇われてるんでちょっと痛い目見てもらうけど……」
「ちぇ、だったらこれで!」
 高貴な血筋作戦が失敗したバンリはポッケに手を突っ込み、入っていた地球の硬貨をこれ見よがしに投げつける。相手がカネに執着する悪魔なら、カネで懐柔するのが一番だ。
「Dの通貨価値が如何程か知らんが、より希少なプレミア硬貨欲しくないの?? 欲しくないの??」
「えっ欲しい! ください!!」
 それが本物のプレミア品でも、ただの十円玉だとしても、お人好しな魔界の悪魔に見分ける術は無い。このばら撒き政策は大きな効果を挙げ、魔女の館に立ちはだかるセントウインを一時は撃退できるかと思われたのだが――。

「ごめんカビさん、小銭なくなった」
 バンリのポケットマネーに対して、敵の悪魔はあまりに数が多かった。最初にあんなに騒いで警備を集めなかったら足りてたかもしれない。だがそんなことは後の祭りである。
「もうしゃーない。バンリ『うつけ者、余の顔見忘れたか』→ワル『ば、バンリ様!』→ワル『バンリ様! お手向い致しますぞ』のパターンね」
 万策尽きたバンリにカビパンが提案したのは、よくある時代劇のクライマックス的なやつ。どうしたって降参してくれない不届き者はぶった斬れ! という事である。物騒。

「ああん? 上様とて構わぬなどと無礼千万口にするか! 成敗!」
「グワーーーーッ!!!?」
 提案にノッたバンリの【SUGAR ME】が、セントウインの集団を包む。それは万物に干渉し肉体と精神を焼き切る地獄の炎――流石に火力調整はしているだろうが、一般悪魔相手にえらく殺意の高いユーベルコードをぶちかます上様である。
「やってくれたな! であえであえー!」
 明確な攻撃を受ければ向こうも黙ってはいない。警報を聞きつけて館内からさらに増援が現れ、バンリとカビパンをぐるりと取り囲む。もしこれが番組なら主役の大見せ場だ。

「えっつうかこれ戦わにゃならんの? えー……」
 今更ふと我に返ってももう遅い。やっちまった以上は強行突破するしかない。ちなみにカビパンはギャグ特化なので、通常戦力としてカウントされるのはバンリだけである。
「やっちゃってバンリ様!」
「あれ? おれひょっとしてしぬ??」
「「うおー! やっちまえー!」」
 【ハリセンで叩かずにはいられない女】の声援を受け、地獄の炎をぶっぱなすバンリ。
 それは壮絶な戦いとなった。その全てをここで記述するには余白が足りない。ただ一つ結論を述べれば、カビパンのいるギャグ時空においてはギャグに適応した者が勝利する。

「「成敗!」」
「「やーらーれーたー!」」
 適応力の差でセントウインの集団を制したバンリとカビパンは、こんがりミディアムレアに焼けた屍(死んでない)を踏み越えて、ようやく魔女の館に突入するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
善良な悪魔達を騙す様な真似は気が引けるのですが…
カタストロフ阻止の為、致し方ありません

●防具改造でブギ―モンスターのような外套纏い、音声を少し調整し…

警備員の皆さん、大変です!
玄関にこれが…

あくどい値段設定で悪魔を困らせる横暴、許すまじ
魔女に決闘申し込む
屋敷を壊されたくなくば指定の場所へ来るように

~愛と勇気を奉ずる悪逆の騎士・トリテレイア

(決闘状と私物の本の模造品渡し)

こんな内容の物を送り付けてくる筋金入りでヤバイ奴、攻めてくる前に悪っぽく先回りして罠に嵌めて囲んでボコりましょう!
魔女さんから報奨金が出るかもだし他の警備員さんにも伝えてきます!

(外套脱ぎ)
やはり邪本扱いは少し釈然としません…



「善良な悪魔達を騙す様な真似は気が引けるのですが……カタストロフ阻止の為、致し方ありません」
 邪悪な魔女の陰謀を挫く為、魔界にやって来たトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)。悪が尊ばれるこの世界において、騙すことは何ら罪では無いのだが、清廉な騎士道を目指す彼としては抵抗があるようだ。
「まずはこれを纏って、音声を少し調整して……」
 用意したのは自身の巨体をすっぽりと隠せるほどの大きな外套。装甲の上から被ることでブギーモンスターのような格好となり、声も変えて別人になりきれば、魔女の館の前で警備中のセントウイン達の元にゆらありと近付いていく。

「警備員の皆さん、大変です! 玄関にこれが……」
「おお? どうしたどうした?」
 首を傾げるセントウイン達に【覆面の機械騎士】ことトリテレイアが差し出したのは、一通の書状と一冊の本。前者は彼がしたためたもので、後者は彼の私物の模造品である。
「なになに……決闘状?」
「こ、こいつは一体?!」
 まず書状のほうを読んだ悪魔達はその内容に驚愕する。泥棒や復讐という悪事を働こうとする悪魔とは警備として何度か戦ったが、こんな文書を送りつけられるのは初めてだ。


 あくどい値段設定で悪魔を困らせる横暴、許すまじ
 魔女に決闘申し込む
 屋敷を壊されたくなくば指定の場所へ来るように

 ~愛と勇気を奉ずる悪逆の騎士・トリテレイア


「せ、正々堂々としている!!」
「場所を指定して決闘の申し込みなんて!」
「しかも自分から名乗りを上げてるぞ?!」
 まさに"勇者"と呼ぶにふさわしい、デビルキング法で推奨されるワルさに真っ向から逆らった律儀な果たし状。日夜頑張って悪事を働く悪魔達には、この文面は衝撃的だった。
「い、いやでもまだ、文章で正々堂々と見せかけて不意打ちする可能性もあるし……」
「まさかこんな善良なヤツが本当にいるのか?」
「それだけではありません。この本も見てください!」
 逆に疑ってかかりだしたセントウイン達に、トリテレイアは続けて本の方も読ませる。
 そこに記されているのは彼が世界各地で収集した御伽噺や騎士道物語の数々。愛と勇気を尊び、弱きを助け強きを挫く勧善懲悪の物語が電話帳並みの分厚さで収録されている。

「こ、これはヤベー!? マジモンの勇者だ!」
「こんなの発禁モノだろ? 俺怖くて読めねえよ!」
 決闘状に続いてこれまたデビルキング法の基準からぶっ飛んだ内容の書籍に、いよいよビビりだす悪魔達。一体これを用意した「愛と勇気を奉ずる悪逆の騎士」とはどんな人物なのかと、畏怖にも似た感情が芽生えだす。まあその当人は目の前にいるのだが。
「こんな内容の物を送り付けてくる筋金入りでヤバイ奴、攻めてくる前に悪っぽく先回りして罠に嵌めて囲んでボコりましょう!」
「お、おう! そうだな!」
「後悔させてやろうぜ!」
 トリテレイアにそそのかされたセントウイン達は、勇者打倒のために警備の仕事をほっぽり出して指定の場所に向かう。正々堂々とした決闘の申し込みを逆手に取った、すごくワルい行いである――その結果、魔女の館の警備は手薄になってしまうのだが。

「魔女さんから報奨金が出るかもだし他の警備員さんにも伝えてきます!」
「おーけー! たのんだ!」
 外に出ていくセントウイン達とは入れ違いに、疑われる事なく館に入るトリテレイア。同じような事を何度かやって、周りから悪魔がいなくなったところで外套を脱ぎ捨てる。
「やはり邪本扱いは少し釈然としません……」
 内容は定番ながら読めばきっと感動する王道のストーリーなのに。この世界は愛と勇気と騎士道に厳しい――分かってはいても納得し難いものを抱えつつ、機械仕掛けの騎士は館の奥に進むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『シャンバラの魔女』

POW   :    その願いは祈りであり呪いである
自身が【他人の願いを叶えてあげている】いる間、レベルm半径内の対象全てに【その願いに対する対価】によるダメージか【対価によって得られる悪意】による治癒を与え続ける。
SPD   :    命の証明
対象の【身体】に【刻印と角】を生やし、戦闘能力を増加する。また、効果発動中は対象の[身体]を自在に操作できる。
WIZ   :    辺獄の十字架
戦場に、自分や仲間が取得した🔴と同数の【十字架と磔の被害者たち】を召喚し、その【被害者たちの苦痛と苦悶の叫び】によって敵全員の戦闘力を減らす。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はリーゼロッテ・エアクラフトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「何よあんた達? 願いを叶えに来た客……ではなさそうね?」

 悪魔による厳重(?)な警備を突破して、猟兵達は『シャンバラの魔女』と対峙する。
 数え切れない金貨と札束の山で埋め尽くされた部屋の中央で、その女は箒に乗って侵入者を見下ろしていた。嘲るような笑みと、邪悪な眼差しで。

「儀式の準備が整うまであと少しだったのに。空気の読めないヤツは嫌いよ」

 大量のD(デビル)通貨に籠められた魔力を利用した、カタストロフ級の儀式魔術。それを以てこの世界を滅ぼすのが彼女の目的。善良なりにワルぶっているだけの一般悪魔とは違う、真正の邪悪さこそ彼女がオブリビオンである証明。

「馬鹿な悪魔も、邪魔な猟兵も、みんな滅んでしまえばいいのよ。どうせ私に弄ばれるしか能のないクズなんだから」

 美しい容姿でも隠しようのない悪辣さを曝け出してシャンバラの魔女は笑う。その様は悪魔からは「カッコいい」と称賛を受けるのかもしれないが、本気で世界を滅ぼすつもりなら話は別だ。元々デビルキング法は悪魔の絶滅回避の為に制定された法律なのだから。
 多くの悪魔を騙し、利用し、邪悪な野望を遂げんとする彼女の計画は阻止しなければ。

「客でないならとっととお帰り願えるかしら? 命と有り金だけ置いていってね!」

 シャンバラの魔女の身体から魔力が膨れ上がるのと同時に、猟兵達も臨戦態勢を取る。
 詐欺同然の"願いを叶える魔女"は今日で閉店だ。奴が貯め込んだカネを奪い尽くせ。
ファルファラ・ガーデンニア
僕はねデビルキング法をバカらしいは思ってるけど種を残すためと言われれば多少バカらしくても仕方ないかとも思ってる。
つまりどう言うことかって言うと僕はこの世界の頭がお花畑な悪魔たちがそれなりに好きってことだ。
彼らがワルぶるのはいいけど。彼らを利用する本当の悪(あく)であるオブリビオンは嫌いだ。
…これ配下にはばれてるんだろうな

ほんと悪辣な仕掛け…
UC【侵食】
なら逆に僕の得意なフィールドに変えてしまえばいい。はい被害者さんたちはお花を咲かせてあげるから黙って?
この状態なら僕は何処からでも攻撃できるよ?
とりあえず蔦でぐるぐるにしとく?



「僕はね、デビルキング法をバカらしいとは思ってるけど種を残すためと言われれば多少バカらしくても仕方ないかとも思ってる」
 高慢にも全ての存在を見下すシャンバラの魔女に、ファルファラは静かに語りだした。
 悪魔の道徳なんて傍目から見ればバカらしいものだ。だが善良過ぎる悪魔達にとってはそれも必要な規範なのだろう。バカみたいにお人好しな彼らが絶滅しないためには。
「つまりどう言うことかって言うと僕はこの世界の頭がお花畑な悪魔たちがそれなりに好きってことだ」
 彼らがワルぶるのはいいけど。彼らを利用する本当の悪であるオブリビオンは嫌いだ。
 べつに自分も一緒になってワルぶるつもりはないけど。愛すべき彼らの未来を守るために、今は戦おう。

(……これ配下にはばれてるんだろうな)
 静かな決心の裏に気恥ずかしさを覚えつつ、如雨露(魔王笏)を構えるファルファラ。
 対するシャンバラの魔女はにやにやと見下した笑みを浮かべて、パチンと指を鳴らす。
「あんた達もこいつらと同じにしてあげるわ」
 現れるのは【辺獄の十字架】。魔女の阿漕な商売の犠牲者であろう悪魔達が、十字架に磔にされて苦悶の叫びを上げている。有り金の全てを絞り尽くされてもまだ、魔女から逃れられなかった彼らは、自らの苦痛をもって魔女に奉仕させられ続けるのだ。
「ぎゃあああああ……」
「たすけてぇぇぇ……」
 いつもニコニコしている善良な悪魔達が悲鳴を上げて苦しんでいる様は、見る者の心を揺さぶるものがある。それをわざわざ見せつけて、敵を動揺させて戦闘力を削ぐのが魔女の狙いなのだろう。

「ほんと悪辣な仕掛け……なら逆に僕の得意なフィールドに変えてしまえばいい」
 反響する悲鳴にファルファラは眉をひそめながら、ユーベルコードを使って植物の種を降らせる。カネに埋め尽くされた部屋に落ちた種はすぐに芽を出して周囲を【侵食】し、戦場全体を緑の森林に変化させていく。
「草木よ芽吹き森となれ……」
「ちょっと、人様の家で何してくれてんのよ!」
 当然魔女は文句を言うが、花の魔王はそんな事はお構いなし。手に持った如雨露から水をやると、植物の種はすくすくと育ち、十字架と磔の被害者たちにも根を伸ばしていく。

「はい被害者さんたちはお花を咲かせてあげるから黙って?」
「あだだだだ……あっお花きれい」
 ポンッと頭に花が咲くと、磔にされた悪魔達は痛いのを忘れてきゃっきゃと喜びだす。
 まったく単純な連中である。しかしその単純な人の好さがファルファラは嫌いでない。被害者たちを宥めすかしたところで、彼は改めてシャンバラの魔女を睨みつける。
「この状態なら僕は何処からでも攻撃できるよ?」
「調子に乗んじゃないわよ! こんな森すぐに焼き払って――きゃっ?!」
 魔女が何か言い終える前に、森林から伸びた植物の蔦が彼女の脚に絡みつき、箒の上から引きずり下ろす。ここはもう花の悪魔であるファルファラの領域。その意思が及ぶ限り全ての植物は彼の手足となって命令を遂行する。

「とりあえず蔦でぐるぐるにしとく?」
「ちょっ、やめなさ……むぐぐっ!?」
 緑の絨毯の上に落っこちた魔女の肢体に、さらに幾本もの蔦が大蛇のように絡みつく。
 ファルファラが操る植物はキレイで無害なものだけでなく、毒を持つものや生物を養分にするものもある。雁字搦めにされた魔女は、その洗礼をことごとく受ける羽目になる。
「むぐぐ、むぐー!(覚えてなさいよ、このやろー!)」
 その無様な姿は、十字架に磔にされた悪魔達を思えば、見事な意趣返しとなっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
おもむろに物資収納Sの起爆準備済み手榴弾を部屋内に●投擲
部屋の一角にUC撃ち込み火力見せた後、D(デビル)へ銃口向け

願いを無理矢理叶える為、内心を読み取る術もあるやもしれませんが…
私の願いを把握し叶えた瞬間、Dを全て焼却しますのでそのつもりで

こちらの目的はカタストロフ阻止
Dの損失は痛手であれど許容範囲なのですから

(戌MSの「魔薬の見せる~」3章やアルダワ大魔王、ジャバウォック戦等私の本音や願望、醜態など…この緩い世界で晒したくは…!?)

(黙る対価として装甲に罅)

…交渉決裂ですね

発砲すると見せかけ射線に入った魔女を盾で殴打

触れて欲しくない物に触れられれば私だって悪逆の騎士になります!
(逆ギレ)



「ったく、よくもやってくれたわね――」
 どうにか蔦の拘束を解いたシャンバラの魔女は、ほっと息を吐きながら猟兵達を睨む。
 ただ嘲弄するだけでない、明確な"敵"としてようやく彼女が認識を改めた直後――放物線を描いて、足下に一発の手榴弾が転がってくる。
「――っ!?」
 慌てて箒に乗って急上昇した直後、ドカンと大きな爆発が起こり、部屋の一角に積まれていたD(デビル)の山を吹き飛ばす。通常の対人武装よりも明らかにその火力は高い。

「願いを無理矢理叶える為、内心を読み取る術もあるやもしれませんが……私の願いを把握し叶えた瞬間、Dを全て焼却しますのでそのつもりで」
 それを投げつけた張本人――トリテレイアは機体に格納された銃口を貨幣の山に向け、物資収納スペースからこれ見よがしに新しい手榴弾を取り出しつつ警告、否、脅迫する。
 装填された【超高温化学燃焼弾頭】なら、着弾した目標を瞬時に炭化・融解させる事ができる。シャンバラの魔女の目的は収集したD(デビル)による儀式魔術の遂行であり、これまで時間をかけて集めてきたカネを失うのは痛手だろうと見越してのことだ。
「こちらの目的はカタストロフ阻止。Dの損失は痛手であれど許容範囲なのですから」
「くっ……こいつっ?!」
 弱みに銃口を突きつけられた魔女は動くに動けず、歯ぎしりしながら彼を睨みつける。
 ここにいるのは猟兵と魔女だけで、警備の悪魔達も雇用主のプライベートルームには入ってこれない。だからこそ騎士も、騎士らしからぬ手段を迷いなく取ることができる。

(ダークセイヴァーの魔薬事件やアルダワ大魔王、ジャバウォック戦等私の本音や願望、醜態など……この緩い世界で晒したくは……!?)
 これまでの依頼の中でやむを得ず、あるいは敵の術中に嵌まり晒してしまった、騎士の外装の内に隠された本心。懊悩と後悔に苛まれながら、時にこの世界で行われる悪事など児戯に思えるような手段も使う、そんな自分を底抜けに善良な悪魔達には見せたくない。
 それがトリテレイアのせめてもの望みだったのだが――魔女との睨み合いが続く最中、ふいに彼の装甲にピシリと罅が走る。
「……あ、いや、違っ。今のはついうっかりクセでって言うか……?!」
 どうやらシャンバラの魔女は「彼の内面や過去について黙っている事」を願いと解釈したらしい。それをただ沈黙するだけで対価としてダメージを与えるのは実に悪辣だが――それ以上に問題なのは、騎士の内心が魔女に「知られてしまった」ことだった。

「……交渉決裂ですね」
「ちょ、待っ――!」
 問答無用で銃を動かすトリテレイアに、慌てて止めに入ろうとするシャンバラの魔女。
 大事に貯めたカネをここで失うわけにはいけないと、魔女の心理からすればそう動くのは当然だろう。しかし彼は発砲すると見せかけて、射線に入った魔女との距離を詰める。
 その手で振りかぶったのは彼の身の丈ほどのサイズのある、重質量大型シールド――。

「触れて欲しくない物に触れられれば私だって悪逆の騎士になります!」
「ごっふうーーーーっ!!?!」

 本当に、心底誰にも知られたくない事だったのだろう。一応は"願いどおりに"黙っていたにも関わらず、見事な逆ギレをかました機械騎士の一撃がシャンバラの魔女を打つ。
 超質量の鈍器に等しいものを叩きつけられたシャンバラの魔女は、鮮やかな放物線を描いて吹っ飛ばされ、自分が守ろうとしていたD(デビル)の山に激突するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

篁・綾
アドリブ連携歓迎だわ。

こんなところに地獄を立てられても困るのだけれどね。
さあ、お前の世界を塗り替えましょう。

指定UCを発動。死者の魂を癒やし、浄化する無数の桜花の雨の降る世界に
戦場全体を塗り替えるわ。
骸の海から出でし者であるならば、死者であることに相違ないでしょう。
この地は幽世、黄泉比良坂の果ての死者の世界。
…理より外れし者よ、理に従いなさい。
(意訳:私がルールよ)

降り注ぐ桜の雨を【目潰し】代わりに使いつつ、【精神攻撃、マヒ攻撃】を仕掛け動きを鈍らせる等、悪辣な妨害を織り交ぜて撹乱。
隙を【見切り】、【鎧無視攻撃】を撃ち込むわ。
あちらの攻撃は【残像】で回避し【オーラ防御、呪詛耐性】で防御を。



「―――ぷはっ! やってくれたわねこのっ!」
 D(デビル)の山から這い出してきたシャンバラの魔女は、怒りのままに叫び散らす。
 これまで多くの悪魔を騙して富を得てきた彼女には、こんな苦痛や屈辱を受けるのも初めての事だろう。常に対価を支払わせる側であり、支払う側では無かったのだから。
「あんた達も何やってるの! もっと泣き叫びなさい!」
「「ひぃぃぃぃぃ~~っ!!」」
 怒れる魔女は【辺獄の十字架】を召喚し、磔にされた被害者にさらなる苦痛を与える。
 彼らが奏でる苦悶の叫びのコーラスは、魔女に敵対する者から力を奪う。カネの犠牲となった者達がカネの山と並立する様は、まさに魔女が築いた業の深さを表現していた。

「こんなところに地獄を立てられても困るのだけれどね」
 だが、そんな犠牲者達の悲鳴にも動じない者が一人。桜柄の長羽織の袖を揺らし、彼女――綾はすっと前に出る。業と欲と金に塗れたこの景色は、これ以上見るに耐えないと。
「さあ、お前の世界を塗り替えましょう」
 彼女が【幽桜紅雨】を発動すると、何処からともなく無数の花弁がひらりひらりと室内に降り注ぐ。それは死者の魂を癒やし、浄化する桜花の雨。磔の犠牲者達の苦悶を鎮め、汚れた金の山を覆い、虚飾の館が綾の制御する領域に塗り替えられてゆく。

「骸の海から出でし者であるならば、死者であることに相違ないでしょう」
 舞い散る桜吹雪の中に佇む綾の姿は、まるで一枚の絵画のように美しく。しかしそれを目に焼き付ける前に、桜の雨は彼女を隠してしまう。敵を見失ったシャンバラの魔女は、慌ててきょろきょろと周囲を見回し、降りかかる花弁を振り払う。
「この地は幽世、黄泉比良坂の果ての死者の世界。……理より外れし者よ、理に従いなさい」
「五月蝿いわよ、このっ!!」
 声を頼りに魔術を放っても、捉えるのは桜に紛れた残像ばかり。仮に当たったところで呪詛に耐性を持ち、オーラの護りで身を固めた彼女には大したダメージにならなかっただろうが。綾の作り出した幽世の果てでは、魔女だろうと死者が彼女に仇なせるものか。

「……分かりやすく言うと。私がルールよ」
 身も蓋もない意訳を呟きながら、桜花の雨と共に敵を撹乱する綾。同時に織り交ぜられる精神を苛む言葉と麻痺の呪いは、シャンバラの魔女から着実に抵抗力を奪っていった。
「人様の家で調子に乗ってるんじゃないわよ……くぅっ!」
 磔の被害者達の叫びもとうに聞こえない。孤立無援の魔女がどれだけ吠えたところで、劣勢は覆るものではなく。ついに彼女が膝を付いた瞬間、綾は愛刀「彼岸桜」を抜いた。

「儚く消えよ、悪意の虚!」
 抜けば花散る白銀の刃。一瞬の隙を突いて放たれた一閃はあらゆる物理的・魔術的防御を抜けて、魔女の胴体に撃ち込まれた。ぱっと咲いて散るのは、桜よりも紅い鮮血の華。
「があッ!!?!」
 獣のような悲鳴を上げてばたりと倒れ伏すシャンバラの魔女。まだ息はあるようだが、その傷は深い――広がっていく血溜まりに触れないよう、綾は音もなくその場を離れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バンリ・ガリャンテ
カビさんと(f24111)

待って待って実は俺こーもん様より鬼平ハンカチーフ?派で…あーでもその魔女箒で斬り合うのはおすすめせんなぁ。美しくないじゃない?やはりここは伝統美と機能美と放課後美を兼ね備えた江戸箒じゃなけりゃあ……。
チャンバラじゃねーよシャンバラだよと突っ込む魔女さんはスルーでDのかわりとばかり江戸箒を押し付ける。
江戸箒職人頭・高○さんの作品だ。いいっていいって遠慮なさんな。

『0円と江戸箒を手に入れた』
おっ!アンケートのご協力有難う御座いました!
そうそう俺たちナシ金だしクッパされたいしぶっちゃけそのD横領したいし?まぁ叶えたい願いと言えばその程度のものですよ。ねぇ格さん。


カビパン・カピパン
バンリさんと(f10655)

アレがチャンバラの魔女…助さんポジションにしますか。
有り金全部払うからこの願い叶えて!
願い→このアンケートのいいえに回答してください
 はい ・ いいえ
魔女は頭が痛くなってきた。

ちなみに私達、一文無しなので。
チャラーン♪

『0円を手に入れた』

「無を取得、おめでとう」
「変な効果音とテロップを出すな!」
「本来ならこう言うときは是非この金をお使いくださいと差し出すべきでは?マリ〇パーティのクッパだって恵んでくれるし。お客だし、有り金全部置いたし、私はもう既に死んでいるから命ないし、言う通りにしたんですが…助さん、何かおかしなことでも?」
矛盾と不条理と理不尽さが魔女を襲った。



「アレがチャンバラの魔女……助さんポジションにしますか」
「待って待って実は俺こーもん様より鬼平ハンカチーフ? 派で……あーでもその魔女箒で斬り合うのはおすすめせんなぁ。美しくないじゃない?」
 猟兵にボコボコにされる魔女を眺めながら、カビパンとバンリはあーだこーだと呑気な会話を繰り広げていた。さっきのようにまた時代劇風小芝居をやるつもりなのだろうか、とりあえず魔女が強制参加させられるのは確定らしい。
「やはりここは伝統美と機能美と放課後美を兼ね備えた江戸箒じゃなけりゃあ……」
「何をそんな箒に拘ってんのよ! あとチャンバラじゃないわよシャンバラよ!」
 と突っ込む魔女を華麗にスルーして、バンリはD(デビル)の代わりとばかりに江戸箒を押し付ける。素材から厳選したホウキモロコシを使用し、職人の手で編み上げられた、シンプルで実用的な逸品である。

「江戸箒職人頭・高○さんの作品だ。いいっていいって遠慮なさんな」
「してないわよ! 箒なんかよりカネを寄越しなさい!」
 礼はいらねえよと言わんばかりのドヤ顔のバンリに、キレ散らかすシャンバラの魔女。
 ぶっちゃけどんなに高品質でもただの箒、戦闘中に渡されたって使い道に困るだろう。というかなんで持ってきてたのだろうかこんなもの。
「じゃあ有り金全部払うからこの願い叶えて!」
 金よこせという魔女の発言に反応して、ずいっと出てきたのはカビパン。D(デビル)と引き換えに願いを叶えるのがこの魔女の本業だ、こう頼まれては断ることはできまい。
 ひょいと差し出されたのは一枚の紙。どうやらこれに彼女の願いが書いてあるようだ。

「フン、いったいどんな願いを……」
 出来る限り最悪な形で叶えてやろうかと考えながら、紙を受け取るシャンバラの魔女。
 だがそこに書いてあった内容は非常に短く、それでいて彼女を困惑させるものだった。
『願い→このアンケートのいいえに回答してください 【はい ・ いいえ】』
 文面通りに「いいえ」に回答すれば、拒否の意を示したことになる。しかし「はい」に回答すれば願いを拒むことになる。一体どっちに回答するのが正しいのか。答えはない。
「……どうしろっていうのよ」
 魔女は頭が痛くなってきた。こいつらが何がしたいのかは分からないが、とにかく全力でバカにされている気がする。長い魔女生の中でもこんなフザけた扱いは初めてである。

「おっ! アンケートのご協力有難う御座いました!」
「ちなみに私達、一文無しなので。チャラーン♪」
 擬音を口で言いながら、何も持ってないのにカネを渡す仕草をするバンリとカビパン。
 そしてテレビ番組で使われるフリップボードを取り出す。そこにはこう書かれていた。
『0円と江戸箒を手に入れた』
「変な効果音とテロップを出すな!」
 どこのRPGでもこんなフザけたリザルトないわよと、ついに堪忍袋の緒が切れた魔女。
 しかし願いを満足に叶えることもできない無能魔女がキレたところで、彼女達にはノーダメージである。逆に「何怒ってんの大丈夫?」とでも言いたげな態度であった。

「本来ならこう言うときは是非この金をお使いくださいと差し出すべきでは?」
 自分のペースを崩さないまま、【ハリセンで叩かずにはいられない女】は逆に魔女を問い詰める。対価を払わないばかりか逆にカネをよこせとかいう悪魔もビックリの超理論、だがそれを彼女はさも当然のごとく堂々とした調子で語る。
「マリ〇パーティのクッパだって恵んでくれるし。お客だし、有り金全部置いたし、私はもう既に死んでいるから命ないし、言う通りにしたんですが……助さん、何かおかしなことでも?」
「そうそう俺たちナシ金だしクッパされたいしぶっちゃけそのD横領したいし? まぁ叶えたい願いと言えばその程度のものですよ。ねぇ格さん」
 助さんことバンリもうんうんと大きく頷いて、格さんことカビパンに同意する。これまた悪魔も引くくらいに「その程度」どころじゃない欲望全開だが、別に魔女はパーティゲームのお邪魔キャラではないし、文無しのビリのための救済措置も用意されていない。

「その願いだけは聞けないわよ! ってか一文無しに用はないわ! 帰りなさい!」
 カネを集めてカタストロフを起こすのがシャンバラの魔女の目的。それと相容れない願いを叶えるつもりなどさらさら無いが、しかしそれで二人が納得するはずも無いだろう。
「じゃあやっぱりチャンバラに付き合ってもらおーか」
「今回も『お手向い致しますぞ』のパターンね」
「え? ええ??」
 刀のようにハリセンを構えるカビパンと、江戸箒を構えさせられる魔女。後者がまだよく分かっていないうちに、前者が思いっきりスパーン! とハリセンを振り下ろし――。

「成敗!」
「グワーーーッ!!?」

 その瞬間、タイミング良くバンリの【BURN BURN ME】が相手の体内で爆裂。トドメ演出のような紅紫色の炎に包まれて、チャンバラ――もといシャンバラの魔女が吹っ飛ぶ。
 最期までノリについて行けないまま、矛盾と不条理と理不尽さのフルコースに襲われた彼女の心には、一生モノのトラウマが刻まれたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
純真なこの世界の住民を騙すくらいしか能の無い輩が何を言ってるのかしら?
顔立ちは可愛らしいし、降伏するなら、とも思ったんだけどね…それに、わたしの雪花を狙うなんて…身の程を教えてあげる

【吸血姫の覚醒】を発動。
願いを叶えてる隙なんて与えて貰えると思わない事ね。

動こうとした瞬間に【念動力】で動きを束縛し、超高速で接近。
空中に跳ね上げる様に強化した膂力と【怪力】でピンボールの様に跳ね飛ばし、再び超高速飛行で回り込んで床へ叩きつけ、空中から爆裂の魔力弾【高速・多重詠唱、全力魔法、属性攻撃、誘導弾】連射で追撃し、
最後は雪花を守りつつ【魔力溜め、限界突破、砲撃、全力魔法】魔力砲撃で屋敷ごと崩壊させるわ


雛菊・璃奈
他者を見下す自信家のオブリビオンなので、【神滅】で核を破壊し、その力を奪う事で仕置きしようと考えたけど、
自分を排除した後に一緒に連れて来てたミラ達を売り飛ばす、または素材として売るって相手の言葉を聞いた瞬間(静かにキレて)【九尾化・魔剣の媛神】封印解放…。

わたしの家族に手を出す者は許さない…!

九尾の呪力による呪力の縛鎖で手足を瞬間的に拘束し、終焉の魔剣を顕現させ、一斉斉射で容赦なく全身を串刺しにして壁に張りつけ…!
更に【呪詛】で侵食し、完全に身動きすら封じた状態で【神滅】を使用し、敵の核と力の源を破壊…。

完全に滅びるまでの僅かな時、無力さと後悔に苛まれながら滅びると良いよ…



「ぐ、う……くそっ、くそっ、くそっ! この私を一体誰だと思っているの?!」
 傷つき、追い詰められ、窮地に立たされたシャンバラの魔女は、唾が飛ぶ勢いで叫ぶ。
 儀式の達成に必要なカネが集まるまで後少し。バカな悪魔共を騙してカネを巻き上げるだけの簡単な仕事のはずだった。なのに、偉大な魔女であるはずの自分が、どうして。
「純真なこの世界の住民を騙すくらいしか能の無い輩が何を言ってるのかしら?」
「他者を見下す自信家……お仕置きが必要だね……」
「黙りなさい! あんたら全員皆殺しよ! この損失は命で償うだけじゃ足りない……」
 当初の余裕はどこへやら、明らかに狼狽する彼女に、冷たい言葉を投げかけるのはフレミアと璃奈。逆上した魔女は顔を真っ赤にして聞くに耐えない暴言を吐き散らすが――。
「そうね、あんた達が連れてるそのコ達にも支払って貰わないとね! 雪女とドラゴンならいい素材になりそうだわ!」
 ――その一言は明らかに余計だった。彼女が指差したのは雪花とミラ達。大事な眷属や家族を素材扱いしたうえ、カネで売り飛ばそうという邪悪な発言が二人の逆鱗に触れた。

「我が血に眠る全ての力……今こそ目覚めよ!」
「我が眼前に立ち塞がる全ての敵に悉く滅びと終焉を……封印解放……!」
 その言葉を聞いた瞬間に、ユーベルコードを発動する二人。【吸血姫の覚醒】を遂げたフレミアからは真祖の魔力が、【九尾化・魔剣の媛神】の封印を解いた璃奈からは莫大な呪力が溢れ出し、爆発的な勢いで戦場の空気を塗り替えていく。
「顔立ちは可愛らしいし、降伏するなら、とも思ったんだけどね……」
 その中で変身を遂げたフレミアの姿は、幼さの残る普段の外見から17~8歳ほどに成長し、背中には4対の真紅の翼が生えている。真祖の血統にふさわしい高貴な雰囲気を纏いながらも、そのかんばせには隠しきれない怒りが滲み出ている。
「核を破壊し、力を奪う事で仕置きしようと考えてたけど……もう容赦しない……」
 一方の璃奈は九本の尾を生やし、解放した呪力のオーラの中から無数の魔剣を顕現させる。その刃と呪いが司る"終焉"の力は、表情を変えぬまま静かにキレた彼女の激情に呼応して、ただそこに在るだけで周囲のカネの山を崩壊させていく。

「わたしの雪花を狙うなんて……身の程を教えてあげる」
「わたしの家族に手を出す者は許さない……!」

 シャンバラの魔女は、絶対に言ってはならないことを口にした。二人の本気の殺意を受けてようやくそれを悟った彼女は、慌てて【辺獄の十字架】を召喚しようとするが――。
「ひ―――ッ!!」
 動こうとした瞬間にフレミアの念動力が拘束し、璃奈の放つ呪力の縛鎖が手足を縛る。
 真祖の魔力と九尾の呪力――真の力を解放した猟兵二人がかりの拘束である。いかなるオブリビオンとて脱出は至難だろう。指先ひとつ動かせず硬直するシャンバラの魔女に、瞬間移動と見紛う程の速さでフレミアが迫る。

「願いを叶えてる隙なんて与えて貰えると思わない事ね」
「ご、がッ?!」
 超高速の接近からのひと蹴り。ドラゴンと同等以上に強化された膂力で蹴り上げられた魔女はピンボールのように跳ね飛ばされ、天井を突き抜けて空中を舞う。直後にフレミアは再び超高速飛行でそれに追いつくと、背後に回り込んでもう一撃を見舞う。
「力の差を味わいなさい」
「がふっ!! げっ、ごほっ、ぎゃあッ!!!?」
 今度は天から地へ――床が陥没するほどの勢いで叩きつけられた魔女に、上空から追撃の魔力弾が降り注ぐ。誘導性能を付与されたそれらは全て目標に的中し、凄まじい爆裂を引き起こした。爆炎の中で苦悶に絶叫する魔女の顔は、やがて恐怖の色に染まっていく。

「無限の魔剣よ……家族を守るために、わたしに力を……!」
 魔女の受刑はまだ終わらない。続いて璃奈が顕現させた終焉の魔剣が、一斉斉射の号令と共に襲い掛かる。一本一本が怒りの呪詛で強化された刃の豪雨――それは容赦なく標的の全身を串刺しにする。
「がぁぁぁ……も、許し……ぐああぁぁぁぁぁっ!!?」
 自分が弄んできた数多の犠牲者と同じ格好で、壁に張りつけられたシャンバラの魔女。
 許しを乞う言葉に耳を貸さず、魔剣の媛神はさらなる呪詛を送り込む。病毒の如く侵食する呪いはすぐに全身を巡り、もはや敵は息をすることと苦痛を享受することを除けば、完全に身動きすら封じられた状態となった。

「雪花、こっちに来なさい」
「は、はいなのー……」
 魔女が完全に抵抗する術を失ったところで、フレミアは雪花を自分の傍に呼び寄せる。
 片腕でそっと抱きかかえたまま空中に浮かび、もう片腕をぴんと伸ばして魔力を集中。これまでの爆裂魔力弾とは比較にならないほどのエネルギーが集束されていく。
「ひ……や、やめて……!」
 身動きの取れない魔女は磔にされたまま藻掻くが、魔剣の拘束は緩まない。その直後、【妖刀魔剣術・神滅】の構えを取った璃奈が、神速の踏み込みで間合いを詰め、ありったけの呪力を込めた魔剣を一閃する。

「神をも滅ぼす呪殺の刃……あらゆる敵に滅びを……」
 その一撃は肉体を断つものに非ず、対象の核や力の根源のみを斬る必滅の剣。あらゆる願望を叶える魔女の力を、オブリビオンとしての存在の核を、魔剣の媛神は斬り捨てた。
「完全に滅びるまでの僅かな時、無力さと後悔に苛まれながら滅びると良いよ……」
「わ……私の力が、消えていく……そんな……ウソよ、いや、いやいやいや……!」
 仔竜を連れて離脱していく璃奈の捨て台詞に、魔女は真っ青になりながら必死に叫ぶ。
 彼女がこれまで高慢に好き勝手ができていたのも、全ては魔女の力があったからこそ。それが失われた恐怖と絶望は計り知れないものだろう。彼女にとって唯一幸いだったのは、与えられた時間があとほんの少ししか残されたいないことだった。

「これで最後よ」
 まるで死神の宣告のように、冷たい言葉と共にフレミアが渾身の魔力砲撃を放つ。それはシャンバラの魔女だけでなく彼女の屋敷ごと崩壊させるのに十分な威力を有していた。
「ぁ――――!!!!!!」
 無限とも思える一瞬を後悔と絶望に費やしながら、魔女の姿は真紅の魔力光の中に消え――刹那、目も眩むほどの爆光と衝撃波が、周囲数十メートルの全てを吹き飛ばした。


 ――その後に残るのはバラバラになった屋敷の廃墟と、散らばったD(デビル)だけ。
 金と欲望で魔界を滅ぼそうとした邪悪な魔女は、かくして滅びを迎えたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『デビルキングショッピング』

POW   :    魔ファストフードや流行りの魔スイーツを食べに行く

SPD   :    最新の魔ガジェットや流行りの魔アイテムを買いに行く

WIZ   :    最新モードの魔ファッションや魔コスメを買いに行く

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵達の活躍によって、悪魔相手に阿漕な商売をしていたシャンバラの魔女は倒れた。
 彼女が拠点としていた屋敷も戦いの余波で破壊され、もはや再建は不可能な状態に。これでもう善良な悪魔達が不当な搾取やいわれのない被害を受けることも無くなるだろう。

 一件落着――と言いたいところだが、まだ魔女の置き土産と言うべき物が残っている。
 それは彼女が蓄財していた大量のD(デビル)。幾らかは戦闘中に消失したが、それでもまだ途轍もない額の硬貨や紙幣がこの場には残されている。一般悪魔は落ちているカネなど何の興味もないだろうが、オブリビオンにとっては魔力の宝庫のようなものだ。

 またオブリビオンに同じような事件を起こさせないためには、猟兵の手でこのカネを処分してしまうのが良いだろう。別に焼いてしまってもいいし、派手に散財するのもいい。
 ちょうど魔女の館の近くにはショッピングに最適な繁華街がある。フード、スイーツ、ファッション、コスメ、ガジェット等々、手に入らないものはほとんど無い大きな街だ。
 なるべく一箇所にカネが集中しないよう、手分けして色んな店でぱーっと派手にD(デビル)を使えば、再び集めなおすのも難しくなるだろう。ついでにお大尽なところを見せつければ、悪魔からの好感度アップも間違いなしだ。

 かくして猟兵達は戦いの後の息抜きも兼ねて、魔界の繁華街に繰り出していく。
 ワルく、カッコよく、そしてド派手に。デビルキングショッピングを楽しもう。
フレミア・レイブラッド
そうね…使わなきゃいけない纏まったお金がある事だし、贅沢に使ってしまいましょうか。

雪花はもちろん、【虜の軍勢】でエビルウィッチやヴィラン隊、邪神のエージェント達、神龍教派のクレリック、ジョーカー、ハーベスター、光の断罪者、サーヴァントバニー等々、眷属達を大集合。
みんなにお小遣いとして分配し、思い思いにショッピングを楽しんでくる様送り出すわ♪

後はショッピング後に近くの高級レストランでも貸し切りにでもして、眷属達とみんなでディナーを満喫するとしましょうか。
こういう機会こそ、みんなを労ってあげないとね♪

雪花にも可愛い服とかたくさん買って(着せ替えして)あげないとね♪

「お手柔らかにお願いするのー」



「そうね……使わなきゃいけない纏まったお金がある事だし、贅沢に使ってしまいましょうか」
 一人では使い切れない程の大量のカネの山を見て、フレミアはにこりと楽しげに笑う。
 そして【虜の軍勢】を発動し、異空間にある自らの拠点【魔城スカーレット】から、虜にした眷属達を呼び寄せる。
「お呼びですか?」「参上しました」「ご命令を」「なんのお仕事?」
 エビルウィッチやヴィラン隊、邪神のエージェント、神龍教派のクレリック、ジョーカー、ハーベスター、光の断罪者、サーヴァントバニー等々、個性豊かな眷属達が大集合。魔城の外でこれだけの人数が勢揃いするのは、めったに無いことだろう。

「今日はみんなにお小遣いをあげるわ。これを持って思い思いにショッピングを楽しんでくるように」
 フレミアは呼び集めた眷属達にD(デビル)を分配すると、そう言いつけて繁華街に送り出す。一人で使い切れない額なら、人手を増やして散財してしまおうということだ。
 気まぐれな主人からの突然の小遣い(それも多額)に、素直に喜ぶ者もいれば戸惑う者もいて、眷属達の反応は様々だ。しかしショッピングと聞いて嫌な顔をする者はいない。この子らも女性であり、こうして外の世界で羽を伸ばすのもいい機会だろう。

「では私共は日用品の補充を」
「あたしは新しい服を見に行こうかしら」
「流行りのスイーツを食べてみたいです!」
 業務の延長として実用品を購入する者もいれば、思いきり趣味の嗜好品を買い集める者もいて、買い物の内容にも個性が出るようだ。楽しそうに繁華街のあちこちに散っていく眷属達を見送って、フレミアも雪花を連れてショッピングを楽しむことにする。

「雪花にも可愛い服とかたくさん買ってあげないとね♪」
「お手柔らかにお願いするのー」
 言外に自分を着せ替え人形にして楽しもうという意図を察したのか、雪女見習いの少女は苦笑しつつもまんざらでは無さそうな顔。いつもの着物から洋服にドレス、悪魔が好みそうなパンクなファッション等、服ひとつ取ってもこの街には様々な店がある。
「この服なんて似合うんじゃない? それからこれも♪」
「おねぇさまも一緒に着るのー」
 持ち運べないほど買い込んでも、ユーベルコードで魔城に直接転送すれば問題なし。
 灯りの消えない繁華街で、二人はたっぷりと魔界の最新モードを満喫したのだった。

「後はみんなでディナーを満喫するとしましょうか」
 自身と眷属のショッピングが一段落したところで、フレミアは近くの高級レストランに彼女らを集める。魔界中から選りすぐりのシェフを集めたという名店で、もちろん店内はあぶくD(デビル)にものを言わせて貸し切りにしてある。
「こういう機会こそ、みんなを労ってあげないとね♪」
「「ありがとうございます、フレミア様!」」
 主人からの心遣いに眷属達も笑顔で感謝を述べる。席についた彼女達の前に並ぶのは、豪勢な魔界料理の数々。中には人間界では見ない品もあるが、どれも絶品には違いない。
 かくして、魔城スカーレットの主とその従者達が一堂に会しての晩餐会は、それはそれは盛大なものとなったという――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
ラン達や蝶子さん、失敗作さん(「キノコの迷宮の『おともだち』」)も呼んで、みんなで喫茶店ヤスイーツ専門店のはしごしたり、お店や露店で購入したり…(みんなで山ほどスイーツの袋を抱えて休憩)

「ご主人!」
「スイーツ!」
「飼い過ぎ!」

「きゅぅきゅぅ♪」(スイーツの袋に顔突っ込んで喜ぶ仔竜達)

この世界のスイーツが美味しいのが悪い…ちょっと見た目が変なモノもあるけど…味は美味しい…

折角だからみんなの服とか日用品とかも買っていく…?

「この世界の日用品って命があったり勝手に動き出しそうで怖いわよね…」

慣れれば大丈夫じゃないかな…?
何かあっても壊れ難そうだし…。



「この世界にはどんなスイーツがあるのかな……」
 魔女との戦いを終えてから、璃奈が真っ先に向かったのは魔界のスイーツの店だった。
 甘いものが大好きな彼女は、今日はこの街の甘味を満喫するつもりのようだ。もちろん【共に歩む奇跡】で一緒に暮らす仲間、メイド人形のラン達や友達のミレナリィドール、帝都で救った演劇少女なども連れて、みんなで楽しいスイーツ巡りの始まりである。

「あらお嬢ちゃんたち、かわいいね!」
「スイーツのお店を探しているの? だったらオススメはここのシュークリームかな!」
「あっちの屋台のたいやき屋さんも、あんこたっぷりで美味しいよ!」
 璃奈達が通りを歩いていると、すれ違う悪魔達からたびたび声をかけられる。基本的に善良で気のいい彼らに聞けば、すぐに繁華街にあるめぼしいスイーツの情報は集まった。
 それを元に喫茶店やスイーツ専門店をはしごしたり、お店や露店で話題になっていた品を購入してみたり。お金について気にする必要がない為、今日の璃奈はノンストップだ。
「あれと、これと、それと……あと、こっちはお持ち帰りで……」
「はい、喜んでー♪」
 金払いのいいお客さんに、店のほうもニコニコ笑顔。魔界では金=ワルさのバロメータというひとつの指標があるので、惜しげもなくほうぼうで大金を使う璃奈達のことを、さぞかし偉大なワルだと思っているのだろう。

「ふぅ……ちょっと休憩……」
 街中の甘味処をひととおり巡ったところで、璃奈と仲間達は広場のベンチに腰を落ち着ける。みんなスイーツが詰まった袋を山ほど抱えて、ほんのり甘い香りを漂わせている。
「ご主人!」
「スイーツ!」
「買い過ぎ!」
 流石にこんなには食べ切れないんじゃないかと、メイド人形のラン達が苦言を呈する。しかし璃奈はどこ吹く風で、袋の中から奇妙なパッションピンクのマカロンを取り出してぱくり。

「この世界のスイーツが美味しいのが悪い……ちょっと見た目が変なモノもあるけど……味は美味しい……」
 人間目線ではヘンテコに見えることもある、独特の魔界的なセンスで作られたお菓子。だがそれもすっかり慣れた様子で味わう璃奈に、メイド達はやれやれとため息をついた。
 まあ、なんだかんだと言いつつも、ここにいる全員甘いものは嫌いではない。メイド達もしっかり自分の分を袋に確保しているあたり、この世界の甘味は気に入ったようだ。

「折角だからみんなの服とか日用品とかも買っていく……?」
 いい機会だからとスイーツの他にもショッピングを提案する璃奈。普段の生活で必要な物は勿論、女子としては新しい服も欲しいだろう。それを聞いた演劇少女の「蝶子」が、ふと気になった様子でぽつりと呟く。
「この世界の日用品って命があったり勝手に動き出しそうで怖いわよね……」
「慣れれば大丈夫じゃないかな……? 何かあっても壊れ難そうだし……」
 魔界のアイテムの中には喋るマントや帽子など、実際に生きている装飾品なども多々あるが、あまり璃奈は気にしていない様子。魔剣や妖刀といった普通ではない器物を普段から扱っているゆえだろうか。

「わたし、あたらしいふく、ほしい! かわいいの!」
「ん……じゃあ、行こうか……」
 話を聞いていたミレナリィドールの少女も賛成に回ったことで、璃奈達は休憩を終えて再び歩きだした。少女達の賑やかなデビルショッピングは、まだまだ終わりそうにない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ファルファラ・ガーデンニア
んー…ショッピング…お買い物。
特にこれといって欲しいものはないし僕の私物は今あるもので十分だからね。
かと言ってお金でキャンプファイアーする気はないし…しかたない。
とりあえず近くの悪魔に美味しいスイーツの店でも聞いてみようか。

(案内してもらったお店でお茶をして)
うん、評判通り美味しいケーキだ。
これなら彼らも喜んでくれるはず。
店員さん。ショーケースのケーキ全部ちょうだい?
あと配達とかしてくれると助かるんだけど…。
はい、ここ。僕のお城ね。

送り出された手前手ぶらで帰るのもなんだしお土産ってやつだよ。
あとケーキよりも肥料がいい子もいるかもしれないからそっちも買って帰ろう。



「んー……ショッピング……お買い物。特にこれといって欲しいものはないし僕の私物は今あるもので十分だからね」
 戦利品として大量のお金を獲得したは良いものの、ファルファラはその使い道に首を傾げていた。一応繁華街まで来てはみたものの、これといった目的地があるわけでもない。
「かと言ってお金でキャンプファイアーする気はないし……しかたない」
 とりあえず近くの悪魔に美味しいスイーツの店でも聞いてみることにする。戦闘の後で少し休憩もしたいし、城で待っている配下のために何か買っていくのも悪くないだろう。

「スイーツのお店? それならあそこのケーキ屋さんはどうかな」
 尋ねられた悪魔たちは喜んでオススメのお店にファルファラを案内する。いかにも魔界らしいワルそうな店構えだが、ショーケースに並ぶケーキはどれも普通に美味しそうだ。
 試しに気になったケーキをひとつ、紅茶と一緒に注文してみる。店内に用意された食事スペースに腰掛けて、大きなイチゴの乗ったショートケーキをぱくりとひと口。
「うん、評判通り美味しいケーキだ。これなら彼らも喜んでくれるはず」
 ふんわりとした食感に甘すぎない甘さ、それにイチゴの甘酸っぱさが紅茶とよく合う。
 喜びを表す花をぽんと咲かせながら、花の魔王は優雅に昼のティータイムを満喫する。

「店員さん。ショーケースのケーキ全部ちょうだい?」
「えっ。ぜ、全部ですか?!」
 しばらくして一服を終えたファルファラは、こともなげな調子で店員に注文を告げる。
 もちろん相手はビックリだが、彼は「うん、全部」と涼しい顔で、魔女の館から回収してきたD(デビル)の札束をレジに置く。お釣りはいらないよ、といかにもお大尽なことを付け加えて。
「こ、こんな大金初めて見ました。お客さんってもしかして凄くワルい人……?」
 単純な悪魔店員はお金持ち=ワルい人という偏見スレスレの思い込みにより、ファルファラに尊敬の視線を向けながらケーキの梱包を始める。デビルキング法を遵守するつもりのない彼としては、あまり期待を寄せられすぎても逆に困るのだが。

「あと配達とかしてくれると助かるんだけど……。はい、ここ。僕のお城ね」
「お城! ということは魔王様でしたか! すごい!」
 自身の居城のメモを渡すと、店員はキラキラ目を輝かせながら快くデリバリーを引き受けてくれた。ケーキの鮮度が落ちないよう、超特急で送り届けるとのことである。親切。
「それにしてもこんなに沢山注文されるなんて、よほどケーキがお好きなんですか?」
「送り出された手前、手ぶらで帰るのもなんだしお土産ってやつだよ」
 たまにはカッコいいことをしろと自分を依頼に参加させた、配下モンスターのトレントやアルラウネ達――おせっかいなところもあるものの、基本的にはかわいい子達だ。帰ったらきっと武勇伝を聞かれるだろうなと、ひとりひとりの顔を思い浮かべる。

「部下思いなんですね。さすが魔王様です!」
「そんなのじゃないよ」
 照れたようにピンクの花を咲かせつつ、ケーキ屋を後にするファルファラ。ショーケース纏め買いで大分D(デビル)は消費したものの、まだそれなりにお金は残っている。
「ケーキよりも肥料がいい子もいるかもしれないから、そっちも買って帰ろう」
 園芸屋さんはどこかな――と、賑やかな繁華街の中をふらりと歩く。当初はあまり乗り気でない様子だったものの、配下のお土産を考える彼の表情はどこか楽しげでもあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ
【アドリブ・連係歓迎】POW
お腹空いたなー☆
いっただっきまーす♪

魔シェフとして魔ファストフードや魔スイーツを食べまくる!
UC【素晴らしく肉肉しい晩餐】で部下(?)の肉塊を召喚し、繁華街中の魔ファストフードや魔スイーツを買ってこさせて、食べまくる!
持ち帰りOKな高級料理とかでもOK!
「料理」人なので食べ比べしてレビューなんかもしちゃったりして♪

周囲でお腹を空かせてる悪魔達がいれば、彼等にも御裾分け!
食べきれないくらいの量をあげましょう!
お残ししちゃうのはワルだし、食べきれない量を渡すのもある意味ワル!
カッコイーネ!?



「お腹空いたなー☆」
 魔女との戦いが終わった街に、ふらっと現れるピンク色の影。まるで食べ放題の気配を嗅ぎつけたようにやって来た、彼女の名はラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ(いつもはらぺこ系ラスボス(可食・高栄養・美味)・f31483)。とにかくD(デビル)を散財するのが目的のこのショッピングにおいて、飛び入り参加は大歓迎である。
「この街にはどんな美味しいものがあるかな?」
 どろどろした肉塊状の下半身をうごめかせて、繁華街に繰り出すはらぺこ系ラスボス。
 とはいえこの街は広く、食べ物関連の店も無数にあるだろう。そこで彼女は【素晴らしく肉肉しい晩餐】で部下(?)の巨大肉塊を召喚し、自分の代わりに街中の魔ファストフードや魔スイーツを買ってこさせることにした。

「持ち帰りOKな高級料理とかでもOK!」
 ラヴィラヴァの指示のもと、ぶよぶよした肉塊達は増殖と分裂を繰り返しながら街中に散っていく。見た目こそやや不気味ではあるが、命令には忠実かつ美味しい部下たちだ。
 ほどなくして彼女の元には、屋台のファストフードやスイーツ店の甘味を始めとして、山のような魔フードの数々が届けられることとなる。
「いっただっきまーす♪」
 大きなフォークとナイフを手に、それをむしゃむしゃと食べまくるラヴィラヴァ。とても一人で食べ切れる量には見えないのだが、はらぺこラスボスは胃袋までラスボス級なのか、物凄いペースで食べて食べて食べまくってもまったく満腹になる様子がない。

「このチーズケーキは濃厚な味わいがクセになるね! こっちのお店のやつは甘酸っぱいレアな食感がイイね♪」
 料理人らしくそれぞれの料理を食べ比べして、レビューなんかもしちゃったりしつつ。
 大いにショッピングを楽しんでいたラヴィラヴァは、ふと物欲しそうな様子でこちらを見ている悪魔達の視線に気付く。ぐぅぅ、と小さな腹の虫も聞こえてきた。
「ひょっとしてお腹を空かせてる? じゃあ御裾分け!」
「えっ、いいの?」
 驚く彼らにもちろん! と笑顔で答えて、彼女は山のような料理をずずいと押しやる。
 底なしの食欲を持つ彼女ならともかく、その量は一般悪魔には明らかに食べきれないくらいの量だ。残しちゃうのも勿体ないしと、遠慮がちになる悪魔達だったが――。

「お残ししちゃうのはワルだし、食べきれない量を渡すのもある意味ワル! カッコイーネ!?」
「な、なるほど!」
「カッコイーです!」
 その主張にあっさり納得した悪魔達は「ありがとうお姉さん!」とお礼を言って魔フードの山に食いつく。なんとも楽しそうなその様子に惹かれたのか、近くにいた悪魔も次々とやってきて、やがてその場はちょっとした宴会の様相を呈してくる。
「うんうん、イイネイイネ♪」
 "みんなおなかいっぱいになれるせかい"こそラヴィラヴァの目指す世界。皆が幸せそうに食事をする光景を、誰よりもたくさん食べながら、彼女は楽しげに見回すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
(或る屋敷前)

ここへ来る迄に為に大変な労力とDを使いました
悪魔達の暗黒街への潜入
闇情報屋への情報収集
裏社会の実力者達とのコネクション構築…

だからこそ手ぶらで帰る訳にはいきません
さあ、見せて頂きましょう

この世界に存在した騎士の御伽噺を!!

貴方が『デビルキング法制定以前の最悪の禁書を保管してるって悪いね!』と隠し持っているのは調べが付いているのです!

強情ですね
…ですが!

(機械馬に曳かせた馬車の大量トランクのD見せ)

感謝いたします
では早速閲覧を…


やはり昔の善良な悪魔達の手によるものか
他世界よりほのぼのとしておりますね
勇壮さには欠けますが、この優しさはとても好みで~

(ウキウキで私物の本に書き記し蒐集)



「……ここですね」
 魔界の歓楽街からほど近くにある、或る屋敷前にて。何やらただならぬ物々しい雰囲気を漂わせる機械仕掛けの騎士がいた。まるでシナリオ一本分に相当するような冒険を繰り広げてきた後のように、その立ち居振る舞いには疲労が見受けられる。
「ここへ来る迄に為に大変な労力とDを使いました。悪魔達の暗黒街への潜入、闇情報屋への情報収集、裏社会の実力者達とのコネクション構築……」
 極悪非道(魔界基準)な悪魔達との駆け引きは、清廉な騎士にはとても神経を使うものだった。まあ大体においてカネをばらまいてワルさをアピールすればみんな感服してスラスラ情報を吐いてくれるのだが。とにかく大変だったのだ、色々と。

「だからこそ手ぶらで帰る訳にはいきません」
「そうか……君の目的はやはり……」
 現れた屋敷の主の前で、トリテレイアは断固たる決意で語る。言葉から滲み出すその気迫は、まるで戦闘中のような緊迫感を出しており、余程大事な目的があるのだと分かる。
 悪の道(悪魔レベル)に踏み込んでまで、一体何を求めてここに来たというのか。その答えを彼は口にする。

「さあ、見せて頂きましょう――この世界に存在した騎士の御伽噺を!!」

 騎士物語や御伽噺の収集。それはトリテレイアが密かに行っている趣味あるいはフィールドワークである。世界各地で彼が集め書き記した物語の書は既に電話帳サイズとなり、そろそろ新しい刊を発行してもいいのではないかという分量に達している。
「貴方が『デビルキング法制定以前の最悪の禁書を保管してるって悪いね!』と隠し持っているのは調べが付いているのです!」
「ふっふっふ、ついにバレてしまったか……私の秘蔵の禁書コレクションが……!」
 びしりとトリテレイアに指を突きつけられ、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる悪魔。なぜ御伽噺の本を持っているだけでそんなワルそうな顔ができるのかと言えば、それはここがデビルキングワールドだからとしか言いようがない。

「だが、折角苦労して集めたものを簡単には見せられんなあ!」
「強情ですね……ですが!」
 あくまで禁書を秘蔵しようとする悪魔に対し、トリテレイアは機械馬「ロシナンテⅡ」に曳かせた馬車の中から大量のトランクを持ち出す。中を開いて見せれば、詰まっているのは分厚いD(デビル)の札束。
「これでいかがですか?」
「いいよ!」
 即決だった。それまでの威厳はどこへやら、コロッと笑顔でトランクを受け取る悪魔。
 この手の"交渉"はここに来るまでに何度もこなしてきているのだろう。慣れたものだ。

「感謝いたします。では早速閲覧を……」
「はいはーい。こっちですよ!」
 悪魔に案内されて通された書庫で、トリテレイアはようやく目的のものと対面する。
 どれも古い本ばかりだが保存状態はいい。手に取ってページを捲ってみると、そこにはこの世界で昔から語り継がれてきた御伽噺や、勧善懲悪の騎士道物語が綴られていた。
「やはり昔の善良な悪魔達の手によるものか、他世界よりほのぼのとしておりますね。勇壮さには欠けますが、この優しさはとても好みで~」
 彼はいつになくウキウキした様子で、私物の本に内容を書き記し蒐集していく。使ったD(デビル)の額など、この報酬に比べれば安いもの――"悪魔の御伽噺"を記したせいか、その書にはまた新たな魔力が宿りだしたのに、持ち主はまだ気付いてはいないが。

大成功 🔵​🔵​🔵​

篁・綾
アドリブ連携歓迎だわ。
POW分野で。

イマイチお金をぱっと使うというのがピンと来ないのよね。
とりあえずお釣りはいらないわして会計に叩きつければいいのかしら、この場合。
まぁ、ともあれ後払い会計であると思しきスイーツ店を中心に襲撃をかけましょう。
宵越しの銭は持たないスタンスが喜ばれる…のとはちょっと違うのよね。多分。

入店と同時に会計に向かい、お会計を一束分くらいでぽーんと済ませてから頂けばよさそうね。
ちゃれんじめにうとか、大人数向けのものを皆でしぇあするのもいいでしょう。

そういうのを色んなお店でやれば、それなりに散財できるでしょう。
それでも余った分は、そうね。
花吹雪にして空から撒いてしまいましょう。



「イマイチお金をぱっと使うというのがピンと来ないのよね」
 魔女の館から回収したD(デビル)の札束を持ちつつ、手持ち無沙汰そうに綾は呟く。
 急に度を越した大金が手に入っても、案外使い道は思いつかないものだ。日頃から余り贅沢な生活をしていなければ尚更だろう。
「とりあえずお釣りはいらないわして会計に叩きつければいいのかしら、この場合」
 目的はとにかくあちこちでお金を使うことなので、それで特に問題はないだろう。ともあれ彼女は後払い会計であると思しきスイーツ店を中心に襲撃をかけてみることにした。

(宵越しの銭は持たないスタンスが喜ばれる……のとはちょっと違うのよね。多分)
 人間には理解し難い悪魔の価値観に頭を悩ませつつ、近場で評判の魔スイーツ店にやってきた綾。まずは入店と同時に会計に向かい、分厚い札束をぽーんとひとつレジに置く。
「いらっしゃいませ……えっ!?」
「お会計よ。先に済ませておくわ」
 店員はもちろんびっくり仰天。とんだお大尽様のおなりだと目を丸くしているが、綾は涼しい顔で空いている席に座る。メニュー表を見たところだと、この店は制限時間内に食べきればタダになる、特製チャレンジパフェとやらがあるらしい。

「この、ちゃれんじめにうを頂けるかしら」
「あっ、はい! チャレンジパフェひとつー!」
 ほどなくして綾の目の前のテーブルに置かれるのは、バケツのような大きな器に入った山盛りのパフェ。フルーツやクリームをふんだんに使って美味しそうだが、明らかに普通の人間の胃袋に収まるサイズではなかった。
「すっごーい……めちゃくちゃおっきい」
「あれ、ほんとに食べ切れるのかな……」
 初手の札束アピールが効いたのか、近くにいる他の客もちらちらと様子を見ている。一体どうやってこの甘味の物量を攻略するのかと興味津々のようだ。そんな彼らに気付いた綾は、ふと振り返るとくいくい、と手招きして。

「良かったら、皆で食べないかしら」
「「えっ、いいの???」」
 返ってきたのは二重の意味の疑問符。一般的なチャレンジメニューとは一人で食べきるのが前提の挑戦のはずだが、それを大人数でシェアするというまさかの発想である。これには客だけでなく店員からも「それはちょっと」という声が上がったが――。
「私が注文したものを、誰と食べても私の自由じゃないかしら」
 そう言って札束をぴらぴらさせるとあっさり黙った。チャレンジの常識を覆すある意味ワルな所業は、純朴な悪魔達にとっては衝撃だったようだ。まあ、それはそれとして彼らも甘いものは大好きなので、食べていいと言われると喜んで集まってくるのだが。

「「ごちそうさまでしたー! ありがとうお姉さん!」」
「ええ。美味しかったわ」
 それから十分ほどしてチャレンジパフェは無事完食。もちろん制限時間内だが、流石に無料にはしてもらえなかった。というか散財するのが目的なので代金を返されても困る。
 相席した悪魔達の笑顔に見送られ、綾は次のスイーツ店へ。そんなことを色んなお店で繰り返すことで、パンパンに詰まっていたお財布もどんどん軽くなっていった。

「――それでも、少し余ったわね」
 暫くしてスイーツ巡りを終えた綾の手には、ちょうど札束一つぶんの金が残っていた。
 そろそろ甘いものばかりでお腹いっぱいになってきた。もうこのくらいで十分かと考えた彼女は札束をぽいと空中に放り投げて、間髪入れずに【桜花葬攻】を一閃。
「散らせ、散らせ その儚き花を」
 居合の一太刀ですぱっと斬られた札束は、桜の花びらになってはらはらと散っていく。
 空に撒かれた桜吹雪は、その場にいた悪魔達の目を喜ばせて、どこかに飛んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
バンリさんと(f10655)
カネの処理ですか、私に良い考えがあります。これなら絶対に再び集めなおすことは不可能ですし、ド派手でカッコ良いでしょう。
ショッピング?そんな贅沢でリッチなことするわけないでしょう、常識的に考えて。

大量のDが存在するという概念に縛られるのがナンセンスよ。広い視野を持ってあらゆる視点から考えてみなさい。つまりカネの存在を根本からなかった事にすれば良いの。

このカネ全部を燃やせば、はい解決。

これから毎日カネを焼こうぜ?さぁバンリさん燃やしちゃって。

大尽というか恐ろしい発想をする圧倒的な悪のカリスマ二人組のことを、悪魔たちは畏怖と敬意を籠めてデビルキングの梟雄と呼ぶようになる。


バンリ・ガリャンテ
カビさんと(f24111)

やったね!俺たちお大尽におなーりー
エッ焼いちゃうの?!ふーんそうかー… ふふ。いいね。俺とあなたにしっくりな始末の付け方よ。ドハデなこれこそ如何にも資金洗浄ってなもんだ。それに。
カビパンさん、あなたってば思いがけず『ロマンチスト』なんだね。欲深魔女の後腐れを焼き清めて終おうだなんて思うにとても……、感傷的だよ。

前腕を五本の爪で掻きむしる。
噴き出した炎はかっ消え、一瞬おいてDは炎の柱に呑まれるだろう。
のちに我々が梟雄と持て囃されるエトセトラはさておき、俺は見たのさ。
地獄火に照らされたハリセン女教皇の横顔を。
摩訶不思議たる美を。
類ないカリスマと呼ばざるを得ん、それをね。



「やったね! 俺たちお大尽におなーりー」
 魔女との壮絶な戦い(?)の結果ゲットした大金の山を見て、陽気にはしゃぐバンリ。
 しかし帰るまでが遠足とよく言うように、この金を使い切るまでが今回の依頼である。何買おっかなーと考える彼女に、なんかキリッとした顔でカビパンが提案する。
「カネの処理ですか、私に良い考えがあります。これなら絶対に再び集めなおすことは不可能ですし、ド派手でカッコ良いでしょう」
「お? なになに、どっかショッピング行くの?」
「ショッピング? そんな贅沢でリッチなことするわけないでしょう、常識的に考えて」
 近くには繁華街もあるし、そこで何か買って帰るのかとバンリは思ったようだが、どうもカビパンの考えは違うらしい。真面目そうな顔をして、何か突拍子もないことをやりそうな予感がするのは気のせいだろうか。

「大量のDが存在するという概念に縛られるのがナンセンスよ。広い視野を持ってあらゆる視点から考えてみなさい。つまりカネの存在を根本からなかった事にすれば良いの」
 いかにも真面目くさった口調で難しそうな言い回しをするカビパン。その手は散らばったD(デビル)を拾い集めては一箇所に纏めていく。オブリビオンが集めたこのカネを根本から無かった事にするとは、要するに――。
「このカネ全部を燃やせば、はい解決」
「エッ焼いちゃうの?! ふーんそうかー……」
 あまりにシンプルかつ乱暴な解決策に、最初はバンリも驚いたようだが、すぐに落ち着いて何か考えだした。ややあってから納得したように、その口元に小さな笑みが浮かぶ。

「ふふ。いいね。俺とあなたにしっくりな始末の付け方よ。ドハデなこれこそ如何にも資金洗浄ってなもんだ。それに」
 被った帽子の鍔をくいと弄りながら、バンリは笑う。その視線は話す相手のことを探るように、見透かすように。それからちらりと横目に山積みのカネと、シャンバラの魔女が最期にいた場所を見て。
「カビパンさん、あなたってば思いがけず『ロマンチスト』なんだね。欲深魔女の後腐れを焼き清めて終おうだなんて思うにとても……、感傷的だよ」
「おや、バレてしまいましたか。実はそうなんです、故郷ではロマンチスト大尽と呼ばれていまして」
 からかいとも真剣ともつかない調子で話すバンリに、カビパンもまた同じ調子で返す。
 実際のところ彼女が本当にそのつもりでカネを焼くのを提案したのかは、普段の言動が言動なので分からない。その真意はすべて彼女の胸の内である。

「これから毎日カネを焼こうぜ? さぁバンリさん燃やしちゃって」
「おーけーおーけー。俺達らしくぱっと派手にやろうか」
 積み上げ終えたカネの前でカビパンが告げ、バンリが前腕を五本の爪で掻きむしる。
 血の代わりに噴き出した炎はかっ消え、一瞬おいてD(デビル)は炎の柱に包まれた。
「噴き出して。喚いて。累いを焼け」
 【BURN BURN ME】――爆裂する獄炎の熱量にかかれば、札束も硬貨も燃え尽きるまであっという間。立ち上る紅紫の炎の明るさは遠くからでもよく見えて、付近にいた悪魔が何事かと集まってくる。

「えっ、お金を燃やしちゃってるの?」
「それって燃やすほどいっぱいお金を持ってるってこと?」
「すごい……すごくワルい人たちだ……!」
「ボク知ってる! こういうヒトを"きょーゆー"って言うんだ!」
 大尽というか恐ろしい発想をする二人組の所業を見た悪魔達は、その圧倒的な悪のカリスマを大いに持て囃しだした。のちに彼女達は畏怖と敬意を籠めて「デビルキングの梟雄」と呼ばれるようになったらしいが――それはまた別の話、別の物語である。

「…………」
 そんなエトセトラはさておき、燃えるカネと悪魔の騒ぎをよそに、バンリは見たのだ。
 地獄火に照らされたハリセン女教皇の横顔を。捉えどころのない摩訶不思議たる美を。
 真意定かならぬまま、彼女は魔女の遺産が灰になっていく様を黙って見守っていた。
(類ないカリスマと呼ばざるを得ん、てやつだね)
 気付かれないようにと鍔越しにその横顔を眺めながら、バンリは心の中で独り言ちる。
 あれだけあった大量のD(デビル)も、ほどなくして全て灰燼に帰し、紅紫の炎も静かに消えた。少女が見たひとときの玄妙とともに。



 ――かくして、魔界を滅ぼさんとした金と欲望と魔女の物語は終わりを迎える。
 自分達が騙されていたとも知らず、悪魔達は今日も元気に悪事を謳歌している。
 だが、そんな平和な日常の裏に猟兵達の活躍があったのは、確かな事実だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月04日


挿絵イラスト