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抗争のさなかに惰眠を貪る背徳を

#デビルキングワールド #マンションズ&ドラゴンズ #夢魔エンプーサ #幼き氷狼

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●外は地獄、中は極楽
「──なんっなんだこのマンションはぁッ!?」
 悲鳴混じりの悪魔の絶叫が響き渡る。
 所は魔界の都市部、増築に増築を重ねまくった壮大なる違法建築的高層マンション──すなわち、「マンションダンジョン」の一棟。
 その下層階は大乱闘の無差別闘技場の様相だった。力自慢のアークデーモンが、速さが命のウイングでビルが、魔法と知略を弄するサキュバスが、ガチンコでぶつかり合いながら先を争っている。
 上層階の住人から「家賃を取り立てる権利」を巡って。
「くっそ……なんでこんなことになってんだ!?」
「まさか取り立てがかち合うなんてね……大家のおばあちゃん、ボケちゃったのかしら?」
「フン、知ったことか。全員をぶちのめしたものこそ本物のワルだ!」
 経緯はどうあれ本気でぶつかり合う取り立てギャング達。
 その喧噪を尻目に、大乱闘を一抜けした小さな悪魔は早々に上層階に辿り着いてた。
 が、そこはそこで極寒の迷宮と化していた。吹き荒れる猛吹雪が、飛来する氷刃が、どこからともなく閃く氷の爪が、侵入者を容赦なく襲い……かくて冒頭の絶叫に繋がるのである。
「しゃ、しゃむい……しかもねむいぃぃ……だ、だが俺様もいっぱしのワルだ、無慈悲に取り立ててやるんだじぇ……!」
 ほとんど凍えながらも小悪魔が渾身の力で叩いたのは、固く閉ざされた扉。
「オ、ラァッ、金、払……え……ぇ」
 しばしの間を置いて、ぎぎぃ……と扉がわずかに開き、その隙間に愛らしい少女の顔が覗けた。
 しかし時すでに遅し。小悪魔は扉を叩いた姿勢のまますやぁと睡魔に連れ去られ、その場に昏倒した。
 少女はそっと無慈悲に扉を閉めて、ぬくぬく暖かな室内へと戻る。寒さには強いはずの種族だが、こたつの魔力を知ったのちはその限りではない。
「おそとでたいへんなことになってる取り立て屋さんたちをよそに、おこたでぬくぬくお昼寝……わたしいま、とってもワルなのです……」
 少女は背徳的なまどろみに堕ち、幸せそうな寝息を立てるのだった。

●グリモアベース:ゲネ
「デビルキングワールドで一騒動勃発だ。家賃滞納者を統率するオブリビオンの退治を頼む!」
 ゲネ・ストレイ(フリーダムダイバー・f14843)は溌溂と呼びかけながら。大小様々な箱をでたらめに積み上げたような超ド級違法建築をモニターに映し出した。
 デビルキングワールドの住人である自称悪魔達は、良い子すぎる種族であるがゆえに絶滅寸前に陥った。
 この経験が反転し、デビルキングワールドでは「良い子は駄目だ、悪い奴はカッコいい、欲望は素晴らしい!」というひん曲がった法律と価値観が横行している。
 というわけで、都市部に存在する「マンションダンジョン」においては、数十年に渡って家賃を滞納することでワルぶる無数の住民と、大家から依頼を受けたギャングとの壮絶な(?)家賃争奪戦が日常茶飯事なのである。
 この不毛にも思える抗争にさらに余計な油を注いだ者がいる。もちろんのこと、オブリビオンである。
「『夢魔エンプーサ』。こいつがある日突然現れ、滞納者たちをあっという間に統率、マンションダンジョンを要塞化してしまった。どうやらここを起点に、大規模な虐殺を目論んでいるらしい」
 事が起こる前に、マンションダンジョンに乗り込んでエンプーサを倒すべし。
 言うは易いが、困ったことに、この要塞化が面倒なことになっているようだ。
「第一に、下層部は複数勢力のギャングの抗争状態にある。連中を制圧しなければ上層階にも進めないだろう」
 どうやら取り立ての依頼がかち合ったのが原因らしい。これも敵が手を回してわざと対立するよう仕向けたのだろう。
「第二に、上層階には住民のユーベルコードがあちこちに仕込まれていて、極寒と睡魔の迷宮になっている。氷属性攻撃のトラップやエンプーサ由来の眠りの力に抗いながら、エンプーサ配下の滞納者の部屋に辿り着く必要があるだろう」
 言うなれば、「術者の姿が見えないままに多数のユーベルコードの攻撃にさらされ続ける」ことになる。
 滞納者の部屋に辿り着き、「家賃を払え」と本人に告げることができれば、根が「良い子」の滞納者は大人しく家賃を置いてマンションを去るだろう。
 この二点がクリアできれば、いよいよボスとの戦闘に突入というわけである。
 エンプーサは夢魔と言うだけあって、眠りの力を行使する。戦いの最中にも睡魔に襲われる可能性が高いので、何か対処する策や備えがあるといいだろう。
「まさに今のデビルキングワールドの混沌を表すような事件だな。トンチンカンな住民の価値観はそうそうひっくり返るもんじゃないから、郷に入っては郷に従ってくれ。──つまり、思いっきり暴れてきたまえ!」
 豪快に猟兵をけしかけながら、ゲネはホロモニターの転送術式を輝かせた。


そらばる
 デビルキングワールド、マンションズ&ドラゴンズ。
 ギャングの抗争を制圧し、滞納者達から家賃を取り立て、ボスであるオブリビオンを撃退してください!

==========
●第一章:冒険『やっつけろ!』
 下層部の広範囲で多数のギャング達が抗争を繰り広げています。
 大暴れして適度にのしたり、場外(マンション外)に放り出すなどして強さを見せつけてください。

 戦闘パートではないので上手く大暴れしてもらえればOK。
 相手は魔界の一般住民ですが、悪魔は頑丈なので、斬ったり吹っ飛ばされたり燃やされたり程度なら死にません。息の根を止めるような残酷描写はできません。

●第二章:集団戦『幼き氷狼』
 集団戦ですが、敵は上層階の各々の自宅に引きこもっています。
 眠気を催す極寒の迷宮内を、襲い来る敵のユーベルコードを掻い潜りながら進み、滞納者の部屋まで辿り着いて家賃を取り立ててください。
 無事家賃を取り立てることができれば、滞納者は大人しくマンションを去ります。

●第三章:ボス戦『夢魔エンプーサ』
 マンション最上階、全室ぶちぬきの広大な拷問部屋での戦いとなります。
 この戦闘中、絶え間なく睡魔に襲われます。
 眠気に抗う対策があると有利に戦えるでしょう。
==========

 執筆の進捗やプレイング締め切りなどは、マスターの自己紹介ページで呟いております。目安にどうぞ。
 それでは、皆さんの自由なプレイングをお待ちしています!
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第1章 冒険 『やっつけろ!』

POW   :    パワフル全開!力自慢のアークデーモンと勝負!

SPD   :    スピード自慢!速さが命のウイングデビルと競走!

WIZ   :    マジカル支配!勢力を広げるサキュバスと領地争奪バトル!

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ギャング大乱闘
 複雑かつ広大な構造のマンションダンジョン。
 その下層部全域は、今まさに取り立て専門ギャングの抗争の真っただ中であった。
「取り立てんのは俺たちだッ!」
「いいえ、こちらの仕事よッ!」
 ……そんなもん無視して各々とっとと取り立てにいけばいいだろうに、と思わないでもない猟兵達であったが、ここはデビルキングワールド。一度乱闘が始まってしまえば、一番強いヤツ=一番ワルイヤツを決めねば収まりがつかない。
 肉弾戦の正面衝突、縦横無尽のウイングチェイス、陣地を巡って飛び交う魔法。
「あっ、また別のヤツらが来たぞ!」
「どこの組織のモンだてめぇら!」
 マンションに踏み込んだ猟兵達にも殺気立った視線が殺到する。どうやらどこぞのギャングの一味だと勘違いされているようだ。

 ハッキリ言って、話し合いは無意味。理性的・理論的に諭して聞く悪魔達ではない。
 ここはひとつ、魔界流に大暴れして、誰が一番強いのか見せつけてやるのだ!
ジェイ・バグショット
グウェン(f00712)

…なんかすげーカオスな世界だな。うるさ…。
悪ぶるも何も、端から良いヤツじゃねぇしな俺は…。
はは、お前も人のこと言えないくらいには同類な気がするけどよ。

ワルぶる住人たちの会話はどこか気の抜ける内容ばかり
良い子過ぎて絶滅しかけたって?ハッ、マヌケなことで。

アイツら拷問しちまって良いのかねェ…。
職業柄悲惨になりがちな武器ばかり扱う
まぁ頑丈らしいし悪魔って簡単には死なねーだろ。知らんけど。

空中に召喚した七つの鉄輪『荊棘王ワポゼ』
高速回転しながら切り飛ばしたり、拘束して動きを封じたり出来る
おー、お前にぶん殴られたら良くて粉砕骨折だろ。そりゃあ全力で避けるわな
お前もワポゼは避けろよ


グウェンドリン・グレンジャー
ジェイ(f01070)とー

初デビキンワールド……なるほどー、ワルに、なれば、いいんだねー
わるいグウェンドリン。ガンバルゾー
ジェイ……は、割と素で、悪い気がするー
(人のことは言えないのだが、自分のことは全力で棚に上げる)

それじゃー、善良な、一般市民……の、皆さん、やっつけよー
れっつごー
(メキリと音を立てて腰から生える翼のクランケヴァッフェ)

翼、広げて、すれ違いざま……に、翼に込めた、怪力で、ぶん殴る
Black Tail……尾羽風、生体ウィップ、伸ばして、ひっぱたいたり、掴んで投げたり
ジェイ、当たらないように、上手く避けて、ね
(羽根の一枚一枚に生命力吸収を乗せたFeather Rainを放って)



●翼と鉄輪
「……なんかすげーカオスな世界だな。うるさ……」
 ギャングの抗争で混沌たる戦場と化したマンションの内部を、ジェイ・バグショット(幕引き・f01070)は胡乱な眼差しで見渡した。
「初デビキンワールド……なるほどー、ワルに、なれば、いいんだねー」
 ぱちりぱちりとゆっくり目を瞬いて、グウェンドリン・グレンジャー(Heavenly Daydreamer・f00712)はぼんやり呟くと、ふわふわ~っと覇気に欠ける拳を掲げた。
「わるいグウェンドリン。ガンバルゾー」
 奇妙な価値観の世界だが、郷に入っては郷に従うほかない。
 そもそも、この二人は品行方正というわけでもない。
「悪ぶるも何も、端から良いヤツじゃねぇしな俺は……」
「ジェイ……は、割と素で、悪い気がする……」
「はは、お前も人のこと言えないくらいには同類な気がするけどよ」
 自分のことは全力で棚にあげ、ジェイの苦笑もするりと躱して、グウェンドリンはぬるっと戦場に歩み出る。
「それじゃー、善良な、一般市民……の、皆さん、やっつけよー。れっつごー」
 メキリ……ッ
 何かが裂けるような音を立てて、グウェンドリンの腰部から大きな黒い翼が突如生え出た。
 羽搏きと共に黒い羽を散らしながらグウェンドリンは滑空し、そのままギャング同士の乱闘に乱入。すれ違いざまに翼を叩きつけて悪魔の一匹を一撃KOに処した。
「ぐぬふぁっ……」
「んな、なんだぁ!? 一撃で沈んだぞ!?」
「テメ、やろうってのかアァン!?」
 いきり立ちグウェンドリンへと襲いかかるギャング悪魔達。
 しかし体躯の良い力自慢など格好の的だ。黒い翼から尾羽根にも似た生体ウィップが伸ぴ、ビシィッビシィッと激しくしばきあげ、絡め取ってはぶん投げる。
「つぇぇ……ありゃ一等級のワルだぜ!」
「てことは、ヤツを倒せば一等だな! うぉぉ囲め囲めー!」
「ワルイズジャスティス! ワルこそ我が天啓と心得たり!」
 聞こえてくるギャング達の会話は、ワルぶるばかりでどこか気の抜ける内容ばかり。
「良い子過ぎて絶滅しかけたって? ハッ、マヌケなことで」
 皮肉げに肩をすくめるジェイの手元には、彼等に向けるには不釣り合いに思えるほど物騒な拷問器具がギラリと光る。仕事柄、悲惨なことになりがちな武器には事欠かない。
「アイツら拷問しちまって良いのかねェ……」
 微妙に収まりが悪い気分ではある。が。
「まぁ頑丈らしいし悪魔って簡単には死なねーだろ。知らんけど」
 躊躇といえるほどのものは、ない。
 紅い月の下、速やかに空中に召喚されたのは、七つの鉄輪『荊棘王ワポゼ』。
 バサリと翼を鳴らして、不意にグウェンドリンが動きを止めた。
「あれー。ジェイも、やるー? もう、だいぶ、やっちゃった、けどー」
 見れば、グウェンドリンが動きを止めている間も尾羽根風ウィップは溌剌とギャングを蹴散らしている。悪魔達は蜘蛛の子を散らさんばかりの勢いであっちゃこっちゃ逃げ惑うばかり。
「おー、お前にぶん殴られたら良くて粉砕骨折だろ。そりゃあ全力で避けるわな」
「んー。でも、もう……おわり」
 黒い翼が一気に逆毛立ち、刺々しく剣呑な形状へと変じる。
「ジェイ、当たらないように、上手く避けて、ね」
「お前もワポゼは避けろよ」
 ──瞬間、解き放たれた大量の黒羽と七つの鉄輪が戦場を蹂躙した。
 黒々と霞む戦場に、高速回転する鉄輪のもたらす不吉な破壊音が断続的に轟き、マンション内をギャングの阿鼻叫喚で満たしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

赤嶺・愛(サポート)
『世界が平和になりますように』
 人間のパラディン×シーフの女の子です。
 普段の口調は「平和を愛する(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、怒った時は「憤怒(私、あなた、~さん、ね、わ、~よ、~の?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

性格は明るく、人と話す事が好きで
平和的な解決を望む優しい性格の女の子ですが
戦う事でしか依頼を成功出来ない時は戦う事も厭わないです。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●蒸気と愛を込めて
 ワーワーギャーギャードッタンバッタン。
 賑やかな、デビルキングワールドとしてはごくごく一般的なギャング抗争の喧騒を見渡して、赤嶺・愛(愛を広める騎士・f08508)は軽く吐息をついた。
「話し合いで平和的解決がいちばんだと思うのだけど……」
 種族の価値観がそれにそぐわぬのならば、仕方ない。
「戦うことでしか解決できないのなら、私も容赦はしないわ!」
 力強く掲げたハート形の盾が、手当り次第に暴れまわるアークデーモンの拳を受け止めた。
「ぬぁっ!? こ、この……!」
 渾身の拳を思いがけず防がれ、アークデーモンは意地になって盾をさらに押し返してくる。
 拮抗は互角……いや、体躯で勝るアークデーモンがやや優勢か。
 勝ちを確信した悪魔の笑みが、白く霞む空気に紛れかき消される。
 突如視界を濁らせた蒸気は、拳を受け止めた可愛らしい盾から噴き出ていた。
「この程度でワルだなんて……甘いわよ!」
 勢いよく噴出する蒸気が推力となり、盾が一気に大きな拳をはねのけた。
 愛は即座に身を翻す。しかと握りしめた大剣が大量の蒸気を噴き出しながら、体勢を崩すアークデーモンを目にも留まらぬ速度で斬りつける。
「こ、こんな小娘にぃぃぃぃ!?」
 勢い余って吹き飛ばされ、窓を突き破って場外……もといマンションの外に消えていくアークデーモン。
 唖然とその行方を見送ったギャング達が視線を返すと、息一つ乱さず佇む愛の手元で、大剣に施されたハートの意匠がキラリと光を弾いた。
「さあ、次は誰かしら!?」
 ──フロア内は縦横無尽に噴き荒れる蒸気とギャング達の阿鼻叫喚に満たされる。
 制圧された悪魔達はのちに語る。もう、ハートマークは見るのも懲り懲りだ、と。

成功 🔵​🔵​🔴​

イザナ・クジョウ
つまんないなぁ…ここには殺していい悪人は居ないんだね…
【アドリブOK】
ちょっと眠たくなっちゃうな。ま、いいや。
善良な人は悪人ってことで。
襲いかかってきた人から順番に…急所に一発食らわせて行くことにしよっと。

余裕見せといたほうがみんなわたしのこと強いって思うのかな。
足払いでこけさせたり、槍の柄の部分で思いっきりひっぱたいたりして攻撃してみよ。まぁ善良なんだからこんくらいじゃ死なないでしょ?

あー、つまんないなぁ。
戦場と比べたら眠っててもできちゃいそう。



●眠たげな処刑人
「俺がワルだッ!」
「なにおう、オレサマこそがワルだぞッ!」
 誰がワルかにこだわるギャング悪魔達の抗争は、どこか幼稚でマヌケに見える。
 張り合いがない、とイザナ・クジョウ(処刑槍の悪魔の勇者・f31369)は吐息をついた。
「つまんないなぁ……ここには殺していい悪人は居ないんだね……」
「なに余裕ぶっこいてんだゴルァ!」
 悪魔達は恥も外聞もなく寄ってたかって襲いかかってくる。
「ちょっと眠たくなっちゃうな。ま、いいや。善良な人は悪人ってことで」
 猟兵に匹敵するユーベルコードを使う種族だけに、悪魔の戦闘力は決して侮れない。
 が、常に戦場に身を置く猟兵からしてみれば、その動きは明確に素人そのものだ。
 真正面からバカ正直に突っ込んできた一人を足に引っ掛け、死角から襲いかかってきた拳を振り返りもせずに片手で受け止め。
 すかさず何気ない仕草で肘鉄をみぞおちに、無造作な蹴りを脛に見舞ってやれば、床に転がり悶絶する悪魔の二丁あがり。
「~~~~っ!」
「あががががが」
「うるさいなぁ。善良なんだからこんくらいじゃ死なないでしょ?」
 にべもなくぼやきつつ大あくびするイザナ。
 明確な隙を見せた瞬間、頭上に影が差すや大きな拳が降ってきた。その速度、膂力、共に他とは格が違う。
「────っ」
 イザナは咄嗟に槍の柄で拳を受け止める。叩き込まれた衝撃ものしかかる重さも、今のイザナにとってはなかなかの強度だ。
「悪いけど……あなたは殺すには値しないよ」
「なに……!?」
 物騒な言葉と突如イザナの頭部から生えだした角に悪魔が怯んだと同時、瞬時にして悪魔の巨体が膂力任せに押し返された。半ば浮足立つ形でひっくり返った悪魔を、翻った槍の柄が思いっきりひっぱたく。
 ドップラー効果の悲鳴を引きながら、見事吹き飛ばされて壁に激突する大悪魔。
 唖然とするギャング達の視線を、トン、と槍の柄が床に立てられた音が引き戻す。イザナは相変わらず眠たげな目。角は誰にも気づかれないうちに引っ込めて、あくまで余裕の表情だ。
「あー、つまんないなぁ。戦場と比べたら眠っててもできちゃいそう」
 挑発じみたぼやきを零し、眠たげな処刑人は凝りもせず襲いかかってくるギャング達を次々に転がしていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『幼き氷狼』

POW   :    魔狼の氷爪
【氷で出来た爪を作り出す】事で【狩りを行う魔狼】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    封じの氷塊
【口】から【猛吹雪】を放ち、【氷塊に閉じ込めること】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    吹き荒れる氷刃
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【氷の刃】で包囲攻撃する。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●極寒の罠とぬくぬく狼
 容赦なくぶちのめしたギャング達を下層部に転がしたまま、猟兵達は上層階への攻略へと乗り出した。
 踏み入れればそこは極寒。痛いほどの寒風が吹き荒れ、床や壁は霜をふき、ところどころは凍結し……まるで別世界の様相だ。
 これらは全て、上層階に住む『幼き氷狼』達の能力である。
 氷の力司る魔狼の少女達。まだ幼く純粋で、誘惑にも弱く、簡単にオブリビオンの配下に収まってしまっている。
 現在は絶賛こたつ寝ブーム。部屋の外を極寒にしておいて自分達はぬくぬくお昼寝、という背徳を楽しんでいるのである。
 ここを突破するには、幼き氷狼達のユーベルコードによる罠を、ひたすら避けたり凌いだりしながら、彼女達の部屋へとたどり着くしかない。
 「部屋の扉をノックすること=敵撃破」と言い換えてもいいだろう。
 眠気さえ催す寒さの中、氷狼達の仕掛けた猛吹雪や氷爪、氷刃のトラップを乗り越えて、家賃を引っ立てるのだ!
イザナ・クジョウ
寒っ…わたし冷え性なんだよね。困るんだけど。
【アドリブOK】
所詮犬ころってことね。ご主人さまに尻尾振ってるだけで
頭は空っぽなんだから。
(軽く挑発)
だからまぁ、こういうもので勝負してあげよっか。
(ユーベルコードを用いて狼の嫌いなものを即座にポケットから取り出す)
ほーら、恐いモノいっぱい出るわよー。
もしドアからどいてくれないならー。これを2倍でも3倍でも出してあげちゃおっかなー?
そしたら今度は好きなものでも出してあげてもいいんだけどねー。
(上手いこと行ったときには、ドアを思いっきり蹴る形でノックする。)



●狼の苦手なもの
「寒っ……」
 極寒のフロアに到達したイザナ・クジョウ(処刑槍の悪魔の勇者・f31369)は、反射的に腕を抱いて身を縮めた。
「わたし冷え性なんだよね。困るんだけど」
 ぼやきつつ、迷宮めいた構造の内部を猫背で進む。オブリビオンに利用されるとは、まったく迷惑な悪魔達だ。
「所詮犬ころってことね。ご主人さまに尻尾振ってるだけで頭は空っぽなんだから」
 聞こえているかはわからないが、どこへともなく軽く挑発の声を上げてやる。
 暗くすぼまった通路の先で、魔狼の魔力がうごめく気配。
 次の瞬間、魔狼の群れの幻影が現れ、吹雪を引き連れながら通路の奥から飛ぶように駆けてくる。逞しい脚力で強力に跳躍し、掲げられた氷の爪がギラリと──
「だからまぁ、こういうもので勝負してあげよっか」
 イザナは即座に、ポケットに突っ込んでいた両手を引き抜いた。
 と同時、爪を掲げて飛び上がっていた魔狼達の幻影が、びたーっと空中で静止した。ただでさえ毛むくじゃらの全身が文字通り総毛立っている。
 ポケットからばら撒かれたのは、香りの強いハーブや香辛料。嗅覚の鋭い動物の多くが苦手とする食物である。
「ほーら、恐いモノいっぱい出るわよー」
 イザナは構わず召喚を続ける。狼を絶滅に追い込む密猟者、一部地域では狼を捕食するとも言われる巨大虎など、狼の天敵が次から次へと現れる。
「もしそこをどいてくれないならー。これを二倍でも三倍でも出してあげちゃおっかなー? そしたら今度は好きなものでも出してあげてもいいんだけどねー」
 狼達はたまらず身を翻し、キャインキャイン鳴きながら逃げ出した。最後尾の数匹は涙目になりつつも、イザナに向けて最後っ屁とばかりにバウワウ吠えたててから姿を消した。
 狼の吠え声に乗せて軽く吹きつけられた極寒の冷気に、イザナのこめかみの血管がビキリと盛り上がる。
 ──ガンッ
 殺気のこもったヤクザキックが、沈黙する住居の扉を凹ませんばかりに蹴りつけた。
 しばしして、寝起きが最悪でしたと顔に書いた幼き氷狼がじっとりと扉を開き、
「……何卒、天敵ラッシュはご勘弁を、なのです……!」
 必死の懇願と共に家賃を差し出し、速やかに住居を引き払うのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジェイ・バグショット
グウェン(f00712)

ハァ…、クソさみぃ…。
空間系の魔法攻撃か?
このままじゃ凍死するまで秒読みって感じだな。
元々悪い顔色にもはや血の気は無いに等しい。
寒さで動きもままならない中、さっさと帰りたい一心で進む

おー…、良い技持ってんじゃん。
ひとまず凍死冬眠は免れそうだ。
周囲の火に幸いとばかりに暖を取る

ガキだろうとぶちのめせば良いだけだろ。
一人だけ良い思いしてるって?
へぇ〜…仕置が必要だな。

ぬくぬく寝てると知れば手加減などしてやる気も失せる
叩き起してやろうぜ、なァ?
そういうの俺ら得意だろ、とグウェンに目配せ

拷問具「荊棘王ワポゼ」は高速回転し勢いよくドアへ激突
ぶち破るべくギャギャギャと激しい音が響く


グウェンドリン・グレンジャー
ジェイ(f01070)と

……カラス、恒温動物。なので、へーきへーき……嘘、まじ寒い
(改造人間とはいえあくまでベースは人間である。腰から生えた翼は羽毛が逆立って)

うーん、これは、冬眠不可避
あー、もー、眠いけど、寝たら死ぬ
ラムプ、掲げて、Brigid of Kildare
召喚した、女司教で、周囲に炎属性攻撃
Imaginary Shadow……念動力、に、炎を付与、私……と、ついでにジェイ、を、守るよう、壁として、展開

ガキンチョ共……は、大人パワーで、蹂躙してやるー
お前も、ガキンチョ、って?
いーのいーの。UKなら、もう成人

もしもーし、家賃、取り立て、きましたー
(ありったけのPOWでノックして)



●お子サマどもには鉄槌を
「ハァ……、クソさみぃ……」
 白い息を吐きながら、ジェイ・バグショット(幕引き・f01070)はぼやく。元々悪い顔色には、もはや血の気はないに等しい。
「……カラス、恒温動物。なので、へーきへーき……嘘、まじ寒い」
 グウェンドリン・グレンジャー(Heavenly Daydreamer・f00712)の息も白い。瞼はいつも以上に重たそうだ。
 改造人間と言えどもあくまでベースは人間。同じ恒温動物ではあるものの、体温の高さは鳥類には及ばない。腰から生えた翼も、本体の感覚に正直に羽毛を逆立たせている。
 寒さで動きもままならない中、二人は気を紛らわせるように言葉を交わし続けながら、さっさと帰りたい一心で先へ進む。
 目的の階層に近づけば近附ほど気温は低下し、吹き付ける風はほどなく氷雪混じりの猛吹雪と化した。屋内であるはずの共有廊下は白々と雪にまみれ、極寒が二人の全身を芯から苛む。
「空間系の魔法攻撃か? このままじゃ凍死するまで秒読みって感じだな」
「うーん、これは、冬眠不可避。あー、もー、眠いけど、寝たら死ぬ」
 グウェンドリンがたまらず前方にランプを掲げた。
 瞬間、ランプに舞い降りるように召喚された女司教を中心に、炎の魔法が花咲くように広がった。グウェンドリンの念動力そのものに炎が付与され、結界の如く二人を守るように展開する。吹雪も雪も押しのけられて、安全地帯と呼べる空間が形成された。
「おー……、良い技持ってんじゃん」
 ひとまず凍死冬眠は免れそうだ。ジェイは幸いとばかりに、陽炎のように揺らめき周囲に展開する炎に手を翳して暖を取った。
 しかし、和らいだとは言えど未だ猛吹雪の只中、長居はしていられない。
 炎の結界によってなんとか体温と命を繋ぎながら前へ進む二人の足取りには、いつしか理不尽な寒さへの怒りがこもり始める。
「ガキだろうとぶちのめせば良いだけだろ」
「なぁんか、自分だけ……良い思い、してる、らしいねー。ぬくぬくー」
「へぇ~……仕置が必要だな」
「ガキンチョ共……は、大人パワーで、蹂躙してやるー」
「お前も大概ガキンチョだろーが」
「いーのいーの。UKなら、もう成人」
 軽口の中に物騒な殺気を秘めて、ひたと前へ急ぐ二人の視線の先に、件の住居の扉が見えてきた。
 ……あの中でぬくぬく寝ていると知れば、手加減などしてやる気も失せる。
「叩き起してやろうぜ、なァ?」
 そういうの俺ら得意だろ、と目配せしながら紅い月を召喚するジェイ。
 瞬時に空中に棘だらけの鉄輪が多数出現し、不吉な高速回転を開始する。……本気である。
 鉄輪は四方八方に散り、扉という扉に片っ端から激突し始めた。ギャギャギャ──と激しい破壊音が辺りで一斉に響き渡る。もちろん、ぶち破るために。
 グウェンドリンも手近な扉の前に立ち、グーに固めた拳を何気ない動作で振り下ろした。
「もしもーし、家賃、取り立て、きましたー」
 ドゴォ……ッ
 それはノックのはずだった。が、猟兵がありったけの力を込めて振り下ろした拳が、ただのノックで済むはずもなかった。
 結果、グウェンドリンの拳は金属製の扉にめり込み、大いに凹ませた。一撃で再起不能にひしゃげる扉。しかしノック(仮)は止まらない。
 各所の扉の奥から慌てふためくくぐもった気配があるが、二人はお構いなしで破壊を続ける。
 マンション中に響く異常な破壊音は、扉を破壊し尽くし、滞納者一同が平身低頭土下座した姿を見届けるまで続いたという……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鯉澄・ふじ江(サポート)
怪奇ゾンビメイド、16歳女子
誰かのために働くのが生きがいの働き者な少女
コイバナ好き

自身が怪物寄りの存在なので
例えどんな相手でも対話を重んじ問答無用で退治はしない主義

のんびりした喋り方をするが
これはワンテンポ間をおいて冷静な判断をする為で
そうやって自身の怪物としての凶暴な衝動を抑えている
機嫌が悪くなると短文でボソボソ喋るようになる

ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し
自身の怪我は厭わず他者に積極的に協力します
また、例え依頼の成功のためでも
自身の矜持に反する行動はしません
 
何でもやります、サポート採用よろしくおねがいします!

(流血、損壊系のグロ描写やお色気系描写もOKです)


エドゥアルト・ルーデル(サポート)
『ヒャッハー!頭ねじ切ってオモチャにしてやるでござる!!』

口調:拙者、名字+氏、~でござる、~ですぞ
属性:混沌・悪

弱きを困惑させ強きを嫌がらせの果に弄り倒す正義なんてどこ吹く風なゴーイング・マイ・ヒャッハー系

シリアスな空気だと破壊するか自分が爆発する
可愛い女の子を見れば興奮する変態
エンジョイ&エキサイティングをモットーに好きなように生きて好きなように死ぬギャグキャラ
オタクらしく戦闘中でも状況に有ったセリフやパロ技を適当にぶっ込みながら戦う様はイカレポンチすぎて敵味方問わず困惑と驚愕させることに定評がある
公言しないが空軍のパイロット


チヒローズ・イッシー(サポート)
自由都市を故郷に持ち、本人も自由を愛する女性です。
戦闘では指定したユーベルコードを状況に応じて使い、人々の自由を取り戻す為に皆さんと力を合わせて戦います。
オラトリオの聖者×プリンセスということで、もしよければキラキラっとした華やかな戦闘演出を描写していただけると嬉しいです。

口調はステータスシートの通り、「なの、よ、なのね、なのよね?」という感じの優しく人当たりのいい女の子といった感じの喋り方です。
一人称は「私」、二人称は基本的に年齢や男女を問わず「さん」付けの呼び方です。
あとはマスターさんにお任せします。よろしくお願いします!


氷咲・雪菜(サポート)
 人間のサイキッカー×文豪、13歳の女です。
 普段の口調は「何となく丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、
 独り言は「何となく元気ない(私、あなた、~さん、ね、よ、なの、かしら?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

氷や雪が好きな女の子で、好きな季節は冬。
性格は明るく、フレンドリーで良く人に話しかける。
困っている人は放ってはおけない。
戦闘は主にサイコキャノンを使って戦う。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


ミュー・ティフィア(サポート)
困ってそうですね。少しお手伝いしましょうか?

口調 (私、あなた、呼び捨て、です、ます、でしょう、でしょうか?)

基本的に誰に対しても友好的です。

時々うん、と相槌をしたり、敬語はやや崩れちゃったりします。

好きなものは紅茶です。
余裕があったら飲みたいです。

なるべくなら助けられる人は助けます。
復興のお手伝いとかは積極的に頑張っちゃいます!
現地の人達との交流やケアもしていきたいです。

もちろんオブリビオンや悪人には容赦なしです!
相手次第では手加減するかもしれないですけど。

ユーベルコードやアイテムは何でも使います。

いかなる場合でも公序良俗に反する事には関わりません。

不明点や細かい部分はお任せします。



●明るく愉快な家賃とりたて隊
「ヒャッハー! 頭ねじ切ってオモチャにしてやるでござる!!」
 局所極寒なんのその、エドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)は異様に高いテンションを爆発させる。
「だ、駄目ですぅ。今回は退治任務ではないのですぅ~」
 慌てて諌める鯉澄・ふじ江(縁の下の力任せ・f22461)。退治の絡まぬ任務は得意分野、変に争いは起こしたくない。
「ええ、家賃の取り立てが目的よ。滞納者と言っても相手は女の子なんだから、あまり怯えさせたりはしないでね」
 立っているだけでお姫様然としてキラキラまばゆいチヒローズ・イッシー(オラトリオの聖者・f20852)も、フランクな物腰でエドゥアルトに釘を刺した。
 が、
「ナニィ、見目麗しいおなごばかりに囲まれてウハウハだと思っていたらここにきてまたおなご!? くぅぅ我が世の春でござる……!」
 却って目を輝かせ、感涙を流すエドゥアルト。やけにテンションが高いと思ったらそういう理由らしい。
 だいぶアレな光景だが、今回のメンバーは明るいフレンドリーな良い子揃い。個性的な人だなぁ、という優しい認識で片付けて、さっそくマンション攻略に取り掛かる。
「さあ、大家さんがお困りです! 張り切って家賃徴収に行きましょう!」
 人助けとあって気合の入るミュー・ティフィア(絆の歌姫・f07712)が一同を先導した。
 嵐とまでは行かずとも、上層階には屋内とは思えぬ寒風が常に吹き荒れている。床や壁は霜げて視界一面白っぽい。
 しかし明らかに氷点下であろうこの環境に、氷咲・雪菜(晴天の吹雪・f23461)は難なく適応してみせた。
「冷たくて心地良い……氷狼さんたちとは仲良くなれそうです」
「そうなんだ、すごいなぁ。私は眠くなってきちゃった。早く帰って温かい紅茶が飲みたいよ……あ」
 寒さに気を取られてうっかり敬語を忘れつつ、ミューは目を瞬いた。前方に大きめの空間がある。
「棟と棟を繋ぐ多目的ホール、といったところかしら」
「そうみたいです。目的の部屋はこの先ですね」
 首を傾げるチヒローズに、雪菜は廊下に目ざとく見つけた案内図の霜を削ぎ落としながら示して見せた。ゴールは近い。
「……でもぉ、開けた場所には罠を仕掛けやすいのでぇ……」
 熟慮してから言葉にするふじ江の警告は、それがゆえに少し遅かった。……というかたぶん、間に合っていても結果は同じだっただろう。
「ならば先を急がねばっ。待っているでござるよまだ見ぬ美少女たち!」
 案の定、エドゥアルトが猪突猛進にホールに突入していってしまったのである。一拍ののち、短く情けない悲鳴。仲間が駆けつけた時には、ホール入口でぶっ倒れているエドゥアルトの姿があった。
「──! 皆さん、私の後ろへ!」
 全員が慌ててホールに足を踏み入れると同時、閃いた予感に従ってミューは先頭に躍り出た。
 暗がりになって見通せない奥から、突如として飛来する無数の氷刃。自動的に発動する罠だ。複雑な軌道で飛翔する大量のそれを、咄嗟に狙いをつけて撃ち落とすことは難しい……ならば。
 ──Lala〜♪ Lalala〜♪
 出し抜けに、ミューの歌声がホールに響き渡る。
 ミュー一人を目指して殺到する氷刃、仲間達の悲鳴。しかし。
 歌は世界の理と絆を結ぶ。因果律からはみ出したその身に触れた氷刃は、矛盾を抱えて瞬時に跡形なく消滅した。世界の理によって、初めからなかったものとされたのだ。
 ミューはそのまま歌い続け、ホール中をゆっくりと練り歩いた。励起された罠が次々に発動しては、ミューに触れて消失していく。
 と、その時。
 騒がしい足音と共に、一行が来た廊下の奥から駆け込んでくる人影が一つ。
「えっ、……えっ!?」
「なんで!?」
 混乱もあらわに、そこに倒れている男と新たに現れた男を見比べる少女達。
 しかし新たに現れた男──紛うことなきエドゥアルト本人は、お構いなしにユーベルコードを発動する。
「傭兵たるもの、リスポーンくらいできるでござる! 拙者が死んだ! この人でなし!」
 横たわったままのエドゥアルトがクラッカーのように破裂した。おめでたい紙吹雪と共に放出されたのは……ギャグ時空。
 たちまちホール中の天井から大量の金ダライが降り注ぎ始めた。複雑に飛び交う氷刃が、根こそぎ金ダライの痛打の餌食となって打ち落されていった。
 そこで限界が来たか、うーん、と気を失って再びぶっ倒れるエドゥアルト。ギリギリまで力を使ったらしい。
 一方で歌い続けるミューはもちろん、他の面々も無傷である。
 ギャグ時空が収束したホールに獣の遠吠えが響き渡った。
 吹雪を引き連れ現れたのは魔狼の群れの幻影だ。幼き氷狼達の術の本質的な部分なのだろう。
「来たわね。上空は任せて!」
 凛として皆の前に出たチヒローズの全身が、燦然たる輝きに包まれ輪郭を失った。光の中で変じていく美しくも凛々しいシルエット。
 力の高まりが極限に達した瞬間、光は晴れ、そこに佇んでいたのは豪華絢爛なドレスを身に纏うプリンセスだった。
 チヒローズはふわりと空中に浮き上がると、きらめく花弁を振りまきながら一気にホールを飛翔する。
「幻影といっても、術を発しているのなら実体はあるはずよね。なら、攻撃は効くはず……!」
 高まる鼓動に合わせてプリンセスの空飛ぶハートが、すれ違いざまに魔狼を打ち据え消滅させる。殺到する敵の氷爪を躱し、さらに加速、急旋回。空中の魔狼達は次々に霧散していく。
 一方、地上を強襲した魔狼達は猛吹雪を吐き出した。
 極寒の冷気が大量に吹き付ける中、平然と佇む雪菜。身体のあちこちを氷塊に覆われ始めながらも、向かい来る魔狼達をしかと見据えながら、両手のひらを合わせて力を溜める。
「雪も氷も寒さも、私の味方です。知ってますか?」
 手のひらを薄く開いたところから、バチバチと青白い電流が爆ぜ、徐々に膨らんでいく。
「……電気の抵抗は、寒くなればなるほどなくなっていくんです……!」
 雪菜は限界まで溜めた電流を押し出すように解き放った。
 膨れ上がった高圧電流が、一切の減衰なくホール中に広がった。吹雪すら押し戻すまばゆい光の中で、直撃した魔狼は消滅し、余波を受けた他の魔狼達も感電したように立ちすくむ。
 動きを止めた個体をハートで撃ち抜きながらチヒローズが地面に舞い戻り、雪菜と背中合わせに言葉を交わす。
「あと少しね。一気に片付けましょう」
「はい。東側にもう一度電流を撃つので、取り零しをお願いします!」
 猟兵達は散開し、各々の全力をもって魔狼の罠を退けていった。

 少しのち、ぬくぬくあったかい一室にて。
「……んぬ?」
 こたつですやすや眠っていた幼き氷狼は、奇妙な物音と気配にのろりと目を覚ました。
 目をこすりながら名残惜しげにこたつから這い出し、物音のしたほう……玄関へとのたのた向かう。
「むぅ、ネズミでも入り込……むわけはないのです。……いえ、罠を仕掛ける前から入り込んでたとしたらワンチャン……そういえば最近お掃除サボり気味なのでした……もしや……虫……?」
 恐ろしい想像に頭を巡らせたのと、玄関前の廊下への扉を開けたのは同時。
 ……薄暗い廊下の、色々お見せできない感じに散らかった床の上に……ぬらりと動くシルエット、が……
「……あらあら~?」
 「それ」はドロドロに溶けた肉塊に見えた。
 そして、喋った。
「わたしぃ、足をどこへやったかしらぁ? ……あ、氷狼さん、お会いしたかったですぅ。家賃払ってくださいなぁ」
 そして、肉塊に浮かび上がった人間の顔が、氷狼を見て、にっこりと笑いかけた……
 ……氷狼の声にならない超音波じみた悲鳴がマンション中に轟き渡ったのは、言うまでもない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『夢魔エンプーサ』

POW   :    妖艶なる拷問具
【夢魔の魔力】を籠めた【拷問具】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【魂】のみを攻撃する。
SPD   :    秘めたる欲望の問いかけ
質問と共に【対象を拘束する拷問具】を放ち、命中した対象が真実を言えば解除、それ以外はダメージ。簡単な質問ほど威力上昇。
WIZ   :    覚めない夢への誘い
【夢魔の魔力】から、対象の【現実を忘れたい】という願いを叶える【拷問具】を創造する。[拷問具]をうまく使わないと願いは叶わない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●『夢魔エンプーサ』
 かくして猟兵達の(一部苛烈な)家賃徴収は大成功を収め、滞納者である『幼き氷狼』達はすごすごと(大部分がほうほうの体で)マンションを後にした。
 残るはこのマンションダンジョンを牛耳るボスの討伐のみ。
 霜や寒さもだいぶマシになった廊下を進み、上階へと向かううちに、脳裏がふわりと浮き上がるような感覚を覚える。
 滞納者フロアから徐々に蓄積し、気づかないほど微かに、ぼんやりと思考に霞をかけてきた眠気が、いよいよ牙を剥いてきたのだ。
「──眠れ良い子よ」
 眠気に抗う猟兵達の脳髄を溶かすような甘い声が響く。
 気づけばそこはマンションの最上階。全室ぶち抜きの、まるで地下駐車場のような広さの巨大な部屋だった。
 室内は鉄の処女、ファラリスの雄牛、ユダのゆりかごなどなど、有名なものから用途の想像がつかないようなものまで、各種大量の拷問器具があらゆる場所に無造作に転がっている。
 そしてその忌まわしい部屋の窓辺に、夜景を背に妖しく微笑む妖艶な美女が一人。
「私の楽園を踏みにじる『良い子』たち……お眠りなさい。そしてこの世界の理に従って、滅びなさい」
 咎めるのではなく赦すような甘やかな声が、遠くにいながらにして耳元に囁きかけるような心地よい誘惑が、猟兵の思考を痺れさせる。
 敵は『夢魔エンプーサ』。夢を力とする忌まわしき悪魔。
 ……この眠気はどうやらエンプーサを倒すまで消えてはくれそうにない。
 しかし戦いの最中に眠りに落とされたら大惨事だ。なんなら夢の中で拷問にかけられるかもしれない。
 この決戦は眠気との戦いでもある。逆に言えば、対抗手段さえあればかなり有利に戦えるはず。

 魔界の愉快な滞納騒動の、これが仕上げ。
 混乱を悪化させた諸悪の根源、夢魔エンプーサを退治するのだ!
ミュー・ティフィア
うぅ、眠い……!でも……っ!

覚悟を胸に刃物で腕を軽く斬って痛みで睡魔を誤魔化します。
辛いけどうっかり寝ちゃってあんな恐ろしい拷問器具で拷問されるよりはずっとマシです。
後は絆の光の詠唱の歌を歌い続けていればきっと眠りには落ちないはず。

慈愛・アドリビトゥムの盾受けで攻撃を防いで、シールドバッシュで相手を弾き返しながら、星剣・パルティータ達で牽制。
時間を稼いでなるべく長く詠唱です。

忘れたい現実なんてない。
痛くて眠くて辛い今この瞬間だって私にとっては大切な宝物。今を生きてる証なんです。
だから貴女に叶えてほしい願いなんてない!

しっかり最後まで歌いきって全力魔法の絆の光でエンプーサを浄化です!



●この現実こそが絆
「うぅ、眠い……! でも……っ!」
 ミュー・ティフィア(絆の歌姫・f07712)は立っているだけで侵食してくる目眩のような眠気に抗い、力強く顔を上げた。
 震える手で握りしめたナイフを、胸に宿した覚悟と共に振り下ろす。
「っ──」
 腕に走る鮮血、鋭い痛み。
「……まぁ」
 エンプーサが感心したように微笑む。
「眠りへと誘われる快楽に抗うために、自分自身を傷つけるなんて。愚かね」
「……なんとでも! うっかり寝ちゃってあんな恐ろしい拷問器具で拷問されるよりはずっとマシですから!」
 血を流す腕の痛みはそのままに、ミューは深く息を吸い込んだ。
「この歌に私の全てを込めて……これが私達の光です……!」
 開かれた喉から紡がれるのは、神秘の旋律。ミューの姿は神々しい光に包まれる。一音一音の向こう側に、これまで結んだ全ての絆を想いながら。
「光の波動……厄介ね」
 エンプーサは神妙に呟いた。
 光に阻まれ眠りの力は届かない。ミューは歌い続け、光が消えることはないだろう。
「なら、この誘惑には耐えられるかしら?」
 エンプーサが静かに掌を翻した瞬間、周囲の空中に多種多様な拷問器具が生み出された。
 それらは様々な「忘れたい現実」に対応した誘惑を宿していた。見たくない現実がある者のための目玉をくり抜く器具、コンプレックスのある身体部位を削ぎ落とし切り落とし潰す器具、全てを忘れさせるための怪しげな薬剤……
 手を変え品を変え襲いかかるエンプーサの拷問器具を、自律的に宙を舞う大盾が押し返し、同じく宙を舞う十二本の銃剣が主を守って牽制していく。
 ──忘れたい現実なんてない。
 ──痛くて眠くて辛い今この瞬間だって私にとっては大切な宝物。今を生きてる証なんです。
 切実な想いは、歌に乗ってエンプーサに叩きつけられる。
 ……時間は十分に稼いだ。
「──だから貴女に叶えてほしい願いなんてない!」
 最後の節まで詠唱を終え、ミューは極限まで高めた力を解き放った。
「────…ッ」
 帯状に放射された絆の光が、エンプーサの姿を浄化の輝きで塗りつぶした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イザナ・クジョウ
あー…眠い…
まいっか…どうせこんなやつ…大したことないし…
眠ってたら終わって…
【アドリブOK】
とりあえず眠気には勝てなそう…
でも、実は私の命はもう片方…
槍の方にも存在しているのよね。
槍の方に意識を移して攻撃するしかないか。
真の姿として、この槍の姿で攻撃を仕掛けるわ

ユーベルコードを使って油断したところを不意打ち…
まぁいいよね。勇者は卑怯者って言うし。



●槍と少女
「あー……眠い……」
 イザナ・クジョウ(処刑槍の悪魔の勇者・f31369)はのっけから眠気に敗北していた。
 というかそもそも、勝つ気がなかった。
「まいっか……どうせこんなやつ……大したことないし……眠ってたら終わって……」
 身体の支えにしていた槍を伝って、ずるずると倒れ込むイザナ。カララン、と軽快な音を立てて槍が床に転がり、すぐにすぅすぅと健やかな寝息が響き始める。
「素直な、良い子ね」
 エンプーサは寝顔を覗き込みご満悦に微笑むと、拘束用の拷問具を顕現した。眠っている相手を拘束するのは容易く、質問を投げかけても寝言で正確に答えられる可能性は限りなく低い。まさに格好のカモだ。
 ……しかし。
「あ。それ無駄だから」
「!?」
 眠ったはずの少女の声が響き、エンプーサははっと顔を上げた。
 瞬間、閃いた殺気に身を躱すも、鋭い痛みがエンプーサの背を掠めた。小さく噴き散る鮮血。
「不意打ちは卑怯だったかな? まぁいいよね。勇者は卑怯者って言うし」
 またしても出どころ不明の声。
「何、が……」
 傷は浅いながら混乱に泳ぐエンプーサの目前には、一振りの処刑槍が宙に浮かんでいた。
 ──イザナの命は、実はもう片方……槍のほうにも存在している。睡魔に生身が敗北すると同時、意識を槍の側に移したのだ。
 すなわち、この槍こそがイザナの真の姿。
 だがそんな事実を敵に突きつけてやる道理もない。エンプーサから見れば自律行動か遠隔操作、あるいは姿の見えない使い手が操っている……そんなところだろう。
「何が起こってるかもわからない? どれだけの悪魔や猟兵を傷つけてきたか知らないけど、そんな程度で私に勝とうなんてさ。恥ずかしいと思わない?」
 槍となったイザナは嘲笑うようにブンブンと身体を振り、ひたとその切っ先をエンプーサに突きつけた。
「じゃ、死んでよ」
 瞬間、処刑槍は質量を無視した複雑かつでたらめな変形を遂げた。
 完成した巨大ギロチンの刃が、エンプーサへと一直線に襲いかかる──
 夢魔の鮮血が、無味乾燥な拷問部屋を赤く穢した。

成功 🔵​🔵​🔴​

グウェンドリン・グレンジャー
ジェイ(f01070)と

(首をかしげる)
ジェイー、どしたー
悪いもの、でも、食べた?……大丈夫なら、いいんだけど

……あなたが、悪玉の親玉
(ふぁーと欠伸をしつつ)ダメダメ、寝たらだめ……
(友の言葉に頷く)早く、しないと、焼き鳥、される

(バッサバッサと腰から生やしたMórríganを羽ばたかせ、空中戦で飛び上がる。狙うは、ハウンド・ドッグの攻撃直後)
いくよー、ごーもん、オコトワリ
怪力、限界突破、込めた、Angel's Hummerで、エンプーサへ、頭から踵落とし

さらに追撃
エンプーサへ、念動力で、上から圧をかけ、行動阻害
Black Tail、伸ばし、足目掛け、先制攻撃
今だよー、首、いけるー


ジェイ・バグショット
グウェン(f00712)

拷問具と赤髪の女…一番嫌な組み合わせだな。
自身の記憶の中で最大のトラウマとも言える組み合わせに顔色は益々優れない
あー…なんでもねぇよ。
グウェン、早いとこ終わらせようぜ…
こんな所で眠っちまったら最悪だ。
睡魔に抗い、寝たら見るのは悪夢に違いない

UCハウンド・ドッグ
傷口から刻印により血液生物(狼)を二体生成し、敵を攻撃
狼は形が崩れても再生可能の為、攻撃を避ける必要はない
豪快な踵落としに口笛吹いてグウェンに合わせて拷問具を召喚し操る

拷問具『首刎ねマリー』
拘束具と断頭台の刃が各自飛来し
拘束具で捉えると瞬時に断頭台が完成し刃が切断する

眠りにつくのはお前の方だ。Good night.



●罪には罰を
 極寒は去った。しかしジェイ・バグショット(幕引き・f01070)の顔色はますます優れない。
 視線の先には、大量の拷問器具に囲まれた妖艶なる夢魔。
(「拷問具と赤髪の女……一番嫌な組み合わせだな」)
 そんな胸中の呟きを聞き取ったかのように、顔色の悪い相棒を振り返って、グウェンドリン・グレンジャー(Heavenly Daydreamer・f00712)は首を傾げた。
「ジェイー、どしたー。悪いもの、でも、食べた?」
「あー……なんでもねぇよ」
 ジェイは軽く手を振った。グウェンドリンの心配ごと、記憶の中に染み付いたトラウマとも言える面影を振り払うように。
「……大丈夫なら、いいんだけど」
 若干の釈然としないものを残しつつ、グウェンドリンは視線を転じた。
「……あなたが、悪玉の親玉」
 エンプーサへと投げかけた言葉の語尾が、ふぁーと緊張感に欠ける欠伸に潰れてしまう。
「ダメダメ、寝たらだめ……」
「グウェン、早いとこ終わらせようぜ……こんな所で眠っちまったら最悪だ」
 睡魔に抗いながら相棒に警告するジェイ。
 周囲を取り囲む有象無象の拷問器具。手招くような夢魔の笑み。眠れば見るのは悪夢に違いない。
 コツリ、コツリ……ヒールを鳴らし、魔力を手元に灯しながらゆっくりと歩み寄るエンプーサ。
 その姿を正面に見据えながら、グウェンドリンは友に頷く。
「早く、しないと、焼き鳥、される」
 二人の出した結論は、「早急な戦いの幕引き」。
 エンプーサは人体の様々な部位を切り落とすための巨大オオバサミを手元に顕現させながら、嘲笑の代わりに微苦笑を零す。
「幸福な眠りを拒むの、小鳥さん?」
 その瞳が細められた瞬間、さらなる眠気が二人を襲った。
「……っ、ぬかせ……!」
 気力でどうにか眠気に抗いながら、ジェイは刻印を輝かせながら腕の表皮を掻き切った。
 作り出した傷口から流れた血がたちまち血液生物を生成する。エンプーサへと疾風の如く襲いかかる、二体の狼。
「勇敢な狼さん、おいでなさい」
 エンプーサは慌てず動じず、オオバサミを俊敏に振るって対抗した。しかし狼達は攻撃を回避しない。本質が液体であるがため、多少形が崩れてもすぐに再生可能なのだ。
 敵もさるもの、損傷を恐れず襲い来る二体を、涼しい顔で捌いていなしていく。
 だがそのおかげで、注意は逸れた。
 眠気で脱力しそうな全身を奮い立たせ、グウェンドリンは急激に腰から生やした黒い翼を激しく羽搏かせて、一気に天井付近へと飛び上がった。
 狼達の動きに呼吸を合わせ、二体が別角度から同時に跳躍した瞬間、一気に敵頭上へ飛翔──
「いくよー、ごーもん、オコトワリ」
 ゆるい掛け声からはあまりにもかけ離れた、怪力限界突破した踵落としが、エンプーサを強襲する。
「────ッ!」
 エンプーサは狼達を薙ぎ払い、一気に原型を留めぬまでに破砕したオオバサミをその勢いのまま頭上に掲げた。降り注ぐ踵落としを受け止め防いだ──はずだった。
 砕けたのは、蹴撃の直撃を受けたオオバサミだった。粉々に砕け散る破片の雨の中、瞠目するエンプーサの驚愕が手にとるようにわかる。
 その驚愕さえも抑え込むように、グウェンドリンはありったけの念動力でエンプーサの次の動きを阻害し、腰から伸ばした長い尾羽根状のウィップで敵の足を捉えた。
 ジェイは豪快な踵落としに小さな口笛を吹きつつ、さらなる追撃に移ろうとしているグウェンドリンの動きに合わせて拷問具を召喚する。
 拷問具『首刎ねマリー』。……いわゆるところの、ギロチンだ。
「今だよー、首、いけるー」
 エンプーサを捕らえたグウェンドリンの呑気な声。
 お互いにかなり眠気が回りつつあったが、気力の勝利か、互いに声を掛け合ったことが功を奏したか、あるいはよほど運がよかったか。幸いにして二人とも倒れずに済んでいる。
「眠りにつくのはお前の方だ」
 二つに分離し飛来する拷問具。拘束具がエンプーサの全身を捕らえると同時、瞬時にして断頭台が完成した。
 罪人が悲鳴を上げる暇も、動揺する余裕さえ与えず、断罪の刃は支柱の間を一気に滑り降りる。
「Good night.」
 カシャン──
 小気味良い音と余韻を引いて、刑は執行された。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


●悪魔の世界の平和とは
 ぼとり、と最上階に首が転がった音を、下層階でひっくり返っているギャング達が聞いたはずもない。
 が、オブリビオンの支配によって空間が歪んでいた最上階が、違法建築ながらにそれなりにまともな姿を取り戻していく気配は、昏倒していた悪魔達の意識を一斉に引っ張り戻すのに十分な衝撃をもたらした。
「……なっなんだ!?」
「えっ、あれ、何があったの……?」
「──おめらァ!」
 混乱するギャング達を叱り飛ばす小さな影。
 ギャング達が振り返ると、大家である老婆が竹箒を手に一同をねめつけていた。
「人が頼んだ仕事もせんと、なぁにを呑気に寝とんじゃァ!」
「あ。いやすまん、今から急いで取り立てにだな……」
「やがましっ。ほんなもん、他のお人がぜぇんぶ片付けてくだすったわい!」
「は? 嘘だろ!?」
「嘘なもんか。はねっかえりの狼娘どもァ、ついさっき全員金置いて出ていきよったわい」
 色めき立つギャング達。先を越されただのどこの組の仕業だの、ぎゃいのぎゃいの。
 老婆のシワだらけのこめかみに、新たな青筋が一本盛り上がる。
「──やがましゃあーーーー!! 能無しどもァとっとどでてけーーーーーーッ!!」
 竹箒千本ノックで飛び交う大量の家具や調度品。そういえば老婆と言えど悪魔だった。
「くっそーあのババァ相当なワルだぜぇ……!」
「見てろ、いつか絶対取り立てリベンジしに来てやるからなぁー!」
 ギャング達はやっぱりなんだかズレた誓いを胸にしながら、ほうほうの体でマンションを後にするのだった。
 これぞまさに、デビルキングワールドの日常である。

最終結果:成功

完成日:2021年02月24日


挿絵イラスト