悪役令嬢の破滅フラグを立てろ!
●悪役令嬢の国盗り合戦
悪役令嬢。
それは言うまでもなく悪役である。権威や取り巻き、財力を用いて主人公をいじめまくる令嬢である。
言うまでもなく物語に置いて読者に嫌われる存在だ。
シンデレラの継母や義姉たちがそれに当たるであろうが、まあ、言ってしまえばライバル役であり、嫌われるべくして嫌われるものである。
だが、それは通常の善悪の価値基準がある世界での話である。
そう、ここはデビルキングワールド。
悪徳が美徳の世界であり、善悪が逆転した世界であれば、シンデレラはくそダセーあれであるが、意地悪な継母、義姉はちょークールなのである。
いわば、悪役令嬢とは憧れの存在。
「ライバル役の靴に画鋲を仕込む? ノンノン。そんなの悪さのうちにだって入らないじゃない!」
『悪役令嬢・イレーヌ』は勢いよくふんぞり返って言った。
言うまでもなく彼女はオブリビオンである。
悪魔と呼ばれる種族、猟兵並のユーベルコード使いである彼らを前に、オブリビオン『悪役令嬢・イレーヌ』はケモミミとケモシッポをぴこぴこさせながら言うのだ。
「ライバル役の靴に仕込むのはアツアツホカホカの白米でしょ! 想像しただけで、うへぇってなるでしょ! 靴下はだめになるし、お米を粗末にした気分にもなってしまうわ。そんな地獄の苦しみも、まだまだ序の口よ!」
彼女の言葉に喋る武器を手にした蛇の悪魔『ブギーエカイユ』たちは恐れ慄く。
やべぇ。
やべぇよ、あの人。ヤバいくらいに極悪な事を考えているよ。ざわ……ざわ……。
「さらにさらに~給食の時間には~? はい、そこのアンタ、あなたが悪役令嬢だったらどうする?」
「え、ご飯の量を少なく盛り付けてやる、とか……?」
ざわっ!
お、おい……そんな悪いことしていいのか……!
あいつやるな……!
とかなんとか悪魔たちは大盛りあがりであるが、『悪役令嬢・イレーヌ』は溜息を吐いた。
「あんたばかぁ? その程度で何が悪役令嬢よ! ライバルが牛乳飲んでいる時に変顔して吹き出させるのよ! 恥もかかせた上に、食べ物も粗末にさせる! 一石二鳥でしょうが!」
ばーん!
いまいち釈然としないものを感じるが、それでもその国の悪魔たちは『悪役令嬢・イレーヌ』の言葉に雷に打たれたようにしびれ上がっていた。
「そ、そんな……! そんな極悪な仕打ちを思いつくなんて……! やばい、やばすぎる……! あなたこそが真なる悪役令嬢! いやさ、魔王!」
やんややんや。
悪魔たちは神輿を担ぐように『悪役令嬢・イレーヌ』を胴上げし、新たなる凶悪魔王改、悪役令嬢の誕生に湧く。
「おーほっほっほ! さあ、これからさらに極悪なことをするわよ! 世の中D(デビル)よ! D(デビル)があればなんでもできる! 手始めのあのホネホネの国を占領しましょう。そんでもってD(デビル)を略奪して、集めるのよ!」
悪役令嬢ばんざーい!
悪魔たちはこぞって彼女を神輿に担ぎ、どんちゃこすって感じで、隣国『ホネホネの国』へと侵攻を開始するのだった――。
●悪役令嬢の国
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
彼女の顔は微妙な顔をしていた。
いや、微妙というか疲れていると言うか、なにか悩み事があるような、そんな判然としないものであった。
「……お集まり頂きありがとうございます。デビルキングワールドでの事件なのですが……ええと、皆さんは、その悪役令嬢というものをご存知でしょうか?」
ナイアルテは端切れの悪い顔をしながら、何故か用意されていたガラスの靴に素足を入れる仕草をしてみせた。
きっと彼女なりに悪役令嬢を説明するのに、勇名な童話が適当であろうと判断したためであった。
いや、口で説明してくれればよかったのに、と誰もが思ったに違いない。
「悪役令嬢が新たな国……『悪役令嬢の国』を建国し、周辺の小国『ホネホネの国』を占領し、強大な魔王になろうとしているのです。そして、魔王の権力を利用してD(デビル)をかき集めようとしているのです」
そっとガラスの靴に足を入れて、ぴったりサイズなのを無邪気に喜んでいた顔を引き締めてナイアルテは言う。
言わずとも知れたD(デビル)。それはデビルキングワールドの通貨であり、魔力がこもっているため、これを大量に集めることによって『カタストロフ級の儀式魔術』を行うことができてしまうのだ。
オブリビオン『悪役令嬢・イレーヌ』の目的はそれなのだ。
「世界を滅ぼす『カタストロフ級儀式魔術』。それを成就させるわけにはいきません。まずは、襲われようとしている『ホネホネの国』へ赴き、住んでいる悪魔の皆さんにワルさを見せつけ共にオブリビオン『悪役令嬢・イレーヌ』と戦う仲間としましょう」
この世界の悪魔たちは一般悪魔であっても、猟兵に匹敵するユーベルコード使いである。
対する『悪役令嬢の国』の悪魔たちも同様だ。
猟兵だけでは囲まれて袋叩きに合うだけなので、ここで戦力を拡充しようという算段なのだ。
「『悪役令嬢の国』の悪魔さんたちも一般悪魔でありますので、ワルさを見せつけつつぶっ飛ばしていきましょう。ぶちのめしてもいいですし、ワルさを見せつけることによって、敵からの寝返りも期待できます」
敵包囲網を突破し、元凶であるオブリビオン『悪役令嬢・イレーヌ』を倒せばいいのだが、オブリビオンの悪のカリスマ性は凄まじいものである。
彼女のカリスマを上回るワルさで悪魔たちを引きつけながら戦わなければ、せっかく味方にした悪魔たちも再び寝返ってしまう危険性があるのだ。
「即ち、徹頭徹尾、皆さんはワルのカリスマとして魅力を見せつけつつ、敵軍悪魔さんたちをぶっ飛ばしつつ、オブリビオン『悪役令嬢・イレーヌ』を打倒しなければなりません」
ガラスの靴を履いて、照れつつもナイアルテは集まってくれた猟兵達に告げる。
普段の戦いとは趣きを異なるものとしているが、それでも猟兵達は、デビルキングワールドを見捨てるわけにはいかない。
例え、善悪が逆転していようとも、それでも良い子の種族である悪魔たちを悪のカリスマで惹きつけるオブリビオンを許してはいけない。
難しい戦いになることは必至である。
だが、それでも猟兵たちのワルのカリスマとしてのイメージ、悪役令嬢を上回るワルさを信じて、ナイアルテは頭を下げて猟兵達を見送るのだった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はデビルキングワールドにおいて、圧倒的な強烈ワルのカリスマ性を発揮するオブリビオンが新たに建国した『悪役令嬢の国』をぶっ飛ばしましょう。
そして、悪役令嬢を上回るワルっぷりを発揮すればするほどに畏敬の念を集めるシナリオとなっております。
シナリオに登場する悪魔たちは猟兵の皆さんに匹敵するユーベルコード使いで強いです。
●第一章
集団戦ですが、戦闘ではありません。
『悪役令嬢の国』に攻め込まれようとしている『ホネホネの国』に赴き、その国の悪魔たち『デビルスケルトン』たちに声をかけ、共にオブリビオンの軍勢と戦う仲間にしましょう。
皆さんの思い描くワルさを見せつければ、彼らはちょろいのですぐに仲間になってくれるでしょう。
まあ、ぶちのめして言うこと聞かせるスタイルでも大丈夫です。
●第二章
集団戦です。
『悪役令嬢の国』と『ホネホネの国』の間にある荒原での大決戦となります。
敵軍と激突し、第一章で仲間にした悪魔たちと戦い、包囲網を突破しましょう。
●第三章
ボス戦です。
包囲網突破し、オブリビオンである『悪役令嬢・イレーヌ』と戦いましょう。
オブリビオンである彼女は悪のカリスマを十分に発揮して戦うので、猟兵の皆さんも悪魔たちを惹きつける魅力的な悪として対抗して戦いましょう。
周囲でてんやわんやの大騒ぎのどつきあいをしている悪魔の皆さんは、わりとワルの不二期に敏感なので、猟兵の皆さんが少しでも『ワルっぽくない善良な行動』を取ってしまうと、敵側に寝返ってしまいます。
こうなってしまうと失敗になってしまうので、なるべくワルさを振りまきつつ、『悪役令嬢・イレーヌ』をぶっ倒してしまいましょう。
それでは、悪徳が美徳の世界においての国同士の激突、そこで繰り広げられるワルのカリスマの頂上決戦を制し、D(デビル)による『カタストロフ級儀式魔術』の発動を食い止めるワル物語の一片となれますように、いっぱいがんばります! 夜露死苦どうぞ!
第1章 集団戦
『デビルスケルトン』
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POW : デビルスピア
【槍の穂先】が命中した対象を燃やす。放たれた【槍から伸びる】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : ボーンフレイム
対象の【骨】に【炎】を生やし、戦闘能力を増加する。また、効果発動中は対象の[骨]を自在に操作できる。
WIZ : デビルファイア
レベル×1個の【青色に輝く魔】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
イラスト:させぼのまり
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
デビルキングワールドの小国、『ホネホネの国』。
そこは言うまでもなく住まう悪魔たちは皆、スケルトン系の悪魔たちである。なんだスケルトン系って。
彼らは日々、『デビルキング法』を生真面目に守って悪いことをしようとしている。
具体的には自分達と同じように骨のような体にしてあげることである。
いや、それはもう死んでいるのではないだろうかという疑問は尤もだ。だからこそ、根が善良な彼らは全然他者を自分達と同じような体には酷すぎてできなかったのである。
ええ子たちや……。
だが、それはこの世界にとっては悪徳である。
自分達の思うワルいことをやりきれぬ彼らにとって、此処は分水嶺である。
「ぼ、僕たちはやればできるはず……! うん、そうだ! できるできる! とりあえず、今日のワルイことをしなければ……!」
そんな風に奮起していざ悪いこと……まあ、他の悪魔たちを骨だけにするには、こう、あれだ。暴力的なこととか? 周囲の食料庫を燃やすとか? あとはえっと、ええっと……。
とまあ、こんな具合である。
考えても実行できないのだ。
何故なら、彼らはみんな根が善良だからである!
基本的に良い子なのである!
だから、絶滅しかけたのだ!
しかし、それ以前の問題だ。
今まさに彼らは滅びようとしている。『悪役令嬢の国』が彼らの国にあるD(デビル)を狙って迫っているのだ。
だが、君等は座して滅びるだけであろうか。
答えは否である。
何故なら、『ホネホネの国』には猟兵たちが降り立ったのだ。
素晴らしきワルの雰囲気をまとい、『ホネホネの国』に住まう悪魔たちをしびれさせる、とびっきりのワルたちが――。
フィア・シュヴァルツ
「デビルスケルトンが住む国か。
死霊魔術を操る我が、配下を得るにはちょうどいい国だな」
くくく、悪魔たちを使役し悪役令嬢とやらからDを巻き上げ、我がカタストロフ級の儀式魔術を行使してやろう。
そして、その魔術によって念願の巨乳を手に入れるのだ!
「そのためにもデビルスケルトンに我のカリスマを見せつけねばな!」
心優しい我では、悪役令嬢を越える悪事を思いつくのは難しいところだが、自然体で行くとしよう。
「骨どもよ、他の者たちをお前達と同じような身体にするために……
ダイエットを流行らせるのだ!」
ダイエットだと良いことではないか、だと?
甘いな!
ダイエットはダイエットでも胸のダイエットだ!
巨乳など滅んでしまえ!
『ホネホネの国』。
名が示す通り、骨系スケルトンデビル的ななんかそういう感じの悪魔がいい感じに暮らしている国である。
言うまでもなくデビルキングワールドにおける悪魔たちというのは、基本的に根が善良である。あえて言うのなら良い子ばかりなのである。
だから絶滅仕掛けたというのは皮肉というかなんというか、悲しい現実である。
そのために『デビルキング法』という悪徳こそが美徳であるという法を制定し、絶滅の憂き目から逃れられたのだが、今日も京都てデビルスケルトンたちは、真面目にワルさをしようとがんばっているのだ。
まあ、上手くいかないけれど。
「デビルスケルトンが住む国か。死霊魔術を操る我が、配下を得るにはちょうどいい国だな」
ほくそ笑む影。
影なのにほくそ笑むのがわかるというのはどういうかと言われてしまうかも知れないけれど、雰囲気で察して欲しい。なんかそういうオーラがフィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)の全身から、溢れているのだ!
彼女は元人間であるが禁断の魔術によって悪魔と契約し不老不死となった少女である。なので、外見年齢は15歳で止まっているが、実年齢不詳なのである。
女性に年齢を聞くのはやめておこう。あとが怖いからね。
「くくく、悪魔たちを使役し悪役令嬢とやらからD(デビル)を巻き上げ、我がカタストロフ級の儀式魔術を行使してやろう」
ものすんごいワルい笑顔である。
きっと悪役令嬢たちがせっせと集めたD(デビル)を横取りするためだけに、この事件へと介入してきたのだろう。
なんというワル!
そして、と彼女は心の中で付け加える。
そう、彼女の真の目的は儀式魔術によって念願のおおきなふくらみをてにいれることなのだ!
お、いきなりあいきゅーが激下がりしたぞ?
「そのためにもデビルスケルトンに我のカリスマを見せつけねばな!」
言ってることはすごいが、内心企んでることは、かなりしょうもない理由というか、本人とっては世界を滅ぼすカタストロフ級儀式魔術でないとできないことという程に重要なことなのだ。
しかし、心優しいフィアでは悪役令嬢を超える悪事を思いつくのは難しいところである。
故に彼女は自然体で行くことにしたのだ。
『ホネホネの国』に集まっているデビルスケルトンたちがなにかいい悪事ないかなーってぼんやりしていると、フィアが注目を集めるように盛大に声を上げる。
「骨どもよ、他の者達をお前達と同じような体にするために……」
え、なになーに、とデビルスケルトンたちがワラワラ集まってくる。
確かにデビルスケルトンたちは己たちと同じように骨っ子のようなスタイルにすることを最高のワルだと思って、がんばっている。
だが、それでもなんか死にそうになるまでするのはちょっと違うよねーって根が善良であるがゆえに躊躇いまくっていたのだ。
其処に現れたフィアの圧倒的ワルのカリスマ性は、まるで誘蛾灯に集まる虫のようにデビルスケルトンたちを引きつけたのだ。
「――ダイエットを流行らせるのだ!」
ばーん!
世は大ダイエット時代。
あっちでもこっちでも糖質制限だ、ロングブレスなんちゃらとかそいうのが流行っている。いや、別世界の話であるが。
まあ、それはいいのだ。
「……でも、健康的な体を作るっていう意味でのダイエットだったら良いことじゃない?」
デビルスケルトンたちの疑問も尤もだ。
美しいボディーラインを維持するために運動、ダイエットは必要不可欠。ほっそりとした足、きゅっとしまったウェスト。言うまでもなく大変良いことなのだ。
「甘いな!」
カッ! とフィアの瞳がかがやく。
その一喝にデビルスケルトンたちは慄く。なんだこの圧倒的な迫力は……!
「ダイエットはダイエットでも胸のダイエットだ! 巨乳など滅んでしまえ!」
……。
シン、と静まり返った広場。
それはそうである。だって、思いっきり自己中なあれであった。個人的な理由であった。健康的な体とか、なんかそういうのとは別次元と言うか別ベクトルというか、そんな理由である。
むしろ、妬み嫉み的なアレであった。
だが、ここは悪徳こそが美徳の世界。
何度でも言おう。此処はデビルキングワールド! フィアのように己の欲望のままに振る舞うことこそ、ワル! ワルの真骨頂!
「おー! 巨乳滅ぶべし!」
デビルスケルトンたちの喝采が聞こえる。それでいいのか。
いいのだろうなぁって思いながら、フィアは万雷の如き喝采を浴びて、デビルスケルトンたちの骨っ子魂を掌握していくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
良い出汁が取れそうじゃない…
という訳でまずは街頭で新ビジネスのプレゼンだね
はい皆さんお立ち会い
悪いことに困ってる?そんな貴方に朗報!
なんと簡単に悪い事が出来ちゃうビジネスをご紹介
やることは簡単
まずは証明写真を用意
そしてこの特注の巨大寸胴に水と一緒に入って煮られるだけ
後は私が何か良い感じに煮られてる写真とか撮っとくから
後はこの出汁を良い感じに味付けしてラーメンスープにしてビニールにイン!
そして市販の麺とかと一緒にパッケージングして
完成!ホネホネ国特製ラーメン
最後に原材料(住人)の写真を袋閉じにして入れて
食後に開封して下さいと記載
食べた後に原材料が分かって、食欲減衰
ホネ化まっしぐらってすんぽーよ!
デビルスケルトン達は今日も元気に骨っ子である。
なんだその江戸っ子みたいな言い方と思われるかも知れないが、まあ、仕方ない。彼らはスケルトン系悪魔たちである。
言うまでもなく骨である。
肉の器なんかだっせーよな! これからの時代は骨っすよ、骨! みたいなノリである。ウソである。
そんな『ホネホネの国』を見つめて商機を感じ取っていたのは、月夜・玲(頂の探究者・f01605)である。
「良い出汁が取れそうじゃない……」
ウソだろ、玲さん。
完全に商売人の顔をしている。もうこうなった彼女は止められない。
ビジネスモンスターに早変わりである。
怪しげな雰囲気なんてあっても気にしない気にしない。敏腕すぎる手腕は、これまでデビルキングワールドでしっちゃかめっちゃかやってきたことから窺い知れよう。
マジでヤバい。
「はい、皆さんお立ち会い」
『ホネホネの国』の街頭に立ち、玲は大手を振ってデビルスケルトンたちに呼びかける。
彼らデビルスケルトンたちは見た目はかなり凶悪で怖い面構えをしているが、根本的に善良なのだ。
通常の世界であれば、玲の言葉は無視されたり特に興味ないねって感じでスルーされることもあるかもしれないが、ここデビルキングワールドは違う。
頼まれたら断れない。
即ち、この世界において一番くそちょろいバイトは、ティッシュ配りであり。ありゃっす、おなしゃーす! って言っていれば皆ポケットティッシュ受け取ってくれるのだ。
「悪いことに困ってる? そんな貴方に朗報! なんと簡単に悪いことができちゃうビジネスをご紹介!」
玲の言葉にデビルスケルトンたちはどよめく。
みんな疑問に思わないのだろうか。玲の瞳は完全にD(デビル)の形になっていることを。あれは完全に商売人の目である。やべぇのに関わってはならぬという警鐘……は、まあ、鳴らないんだろうね。仕方ないね。
「どんなことなのー? そんな簡単にできるのかな?」
「そーそー、そう思うよねーでも、やることは簡単。まずは証明写真を用意。はい、ぱしゃっとな」
玲は疑問の声を上げたデビルスケルトンをスマホで、写真を取る。
「そして、この特注の巨大寸胴に水と一緒に入って煮られるだけ」
はいよー、と玲がデビルスケルトンの一人をぐつぐつ煮立つ寸胴の中に投げ込む。そぉい!ってな具合にデビルスケルトンが寸胴に入れられて煮立てられていく。
やばい。
絵面が猟兵のやることじゃないですよ、玲さん!
「気にしなーい。後は私がなにか良い感じに煮られてる写真とか撮っとくから……おー、いいねー、イイヨイイヨー! 最高ダネー! セクシーダネー!」
最高に嘘臭い。
だが、それでもデビルスケルトンたちにとっては、煮立つ寸胴に入れられるくらい訳ないのである。何故なら、めちゃつよだから。
「後はこの出汁を良い感じに味付けしてラーメンスープにしてビニールにイン!」
おい、衛生法とかそういうの大丈夫なのか! となるが、デビルスケルトンたちは気にしない。青白いなんかこう、ゲーミング出汁だけど気にしない。
「そして、市販の麺とかと一緒にパッケージングして完成! ホネホネ国特製ラーメン! 最後に原材料(住人)の写真を袋とじにして入れてトレーディングカードにすれば、おっけ! 食後に開封してくださいって記載してね!」
でも、お高いんでしょう?
いいえ、なんと今だけ! 今だけ3袋でにーきゅっぱD(デビル)でご奉仕しております!
みたいなお昼時のコマーシャルみたいなそんな営業スマイルと共に玲がプレゼンを行う。
実にいい笑顔である。
天職なのでは?
「も、もしかして……」
ごくりんこ。
デビルスケルトンたちが生唾を飲み込む。そう、玲の言う悪いこととは、こういうことであるのだ。
「そう、食べた後に原材料がわかって、食欲減衰。ホネ化まっしぐらってすんぽーよ!」
やべぇ!
マジでヤバいの来た!
みんなマイルドなやつで来るとてっきり思っていたら、一番洒落にならん感じの人来たー! とデビルスケルトンたちは大盛りあがりである。
オレも僕も君も貴方も!
みんなみんな『ホネホネ国特製ラーメン』になぁれ、と言う具合に玲に殺到するデビルスケルトンたち。
ここにスケルトン系悪魔たちのカリスマ、月夜・玲が爆誕した瞬間であった――!
大成功
🔵🔵🔵
シン・フォーネウス
悪役令嬢?ああ、あの理不尽に喚き散らして自分の優位性を他者に押し付ける奴らか。
まあなあ、ワルはワルなんだが……なんていうかこう、小物感が凄すぎて俺的にはワルの極みってイメージねぇんだよな。
ならワルとは何か。言うまでもねぇ、俺のワルは、とにかく『掃除』することだ。
UC発動、行って来い俺の下僕、お掃除開始だ!
なに、簡単なことだ。相手の断りなく断捨離を進める。(デッキブラシを構えて)
悪役令嬢だの何だの言うが、んなもの手持ちの財産をちらつかせて上から目線の小悪党に過ぎねぇ。要はDがなけりゃなんもできねぇってことだ。
行くぞお前ら!三下の令嬢にヒーヒー言わせてやるぞォ!
(アドリブ等歓迎)
「悪役令嬢?」
その言葉はデビルキングワールドの『ホネホネ国』に響いた。
「ああ、あの理不尽に喚き散らして自分の優位性を他者に押し付ける奴等か」
シン・フォーネウス(水竜の従者・f31485)――死の悪魔にして幻影を操る力を持ち、契約者に全力で尽くす悪魔である。
といっても今は主に尽くす悪魔である。
この『ホネホネ国』を狙っているオブリビオン『悪役令嬢・イレーヌ』は確かに凶悪なオブリビオンである。
悪魔たちは、その凶悪なるカリスマ性を求めて集っている。
「まあなあ、ワルはワルなんだが……なんていうかこう、小物感が凄すぎて俺的にはワルの極みってイメージねぇんだよな」
溜息が出てしまう。
だってそうだろう。聞けば聞くほどに『悪役令嬢・イレーヌ』は小物すぎるのだ。いや、別に悪いとは言ってない。
他者に悪口を言えない。シンだった悪魔である。根本的に善良であり、お人好し体質なのだ。
とはいえ、だ。
どうしたってオブリビオンである。『悪役令嬢・イレーヌ』は排除しなければならないし、この世界を『カタストロフ級儀式魔術』によって滅ぼされるわけにはいかない。
この『ホネホネ国』において、シンは猟兵として、此処に住まうデビルスケルトンたちに示さねばならない。
何を?
そう、ワルとしての魅力をだ。
「なら、ワルとはなにか。言うまでもねぇ、俺のワルは、とにかく『掃除』することだ。行ってこい、お掃除開始だ!」
その瞳がユーベルコードに輝く。
献身ノ軍団(クリーン・ソロネ)が溢れるようにして飛び出していく。それはお掃除ロボットと無数の高圧洗浄機である。
29個のビーム砲塔を備え、あらゆる環境において飛ぶことすらできてしまう超高性能な軍団である。
彼らを使役するシンの手にはデッキブラシである。
え、まじで掃除? 比喩的なアレではなく? こう、汚物は洗浄だー! ひゃっはー! って感じのアレではなく?
「はん! なに、簡単なことだ。相手の断り無く断捨離をすすめる……! 行くぜ俺の下僕たち! お掃除開始だ!」
構えたデッキブラシでもってシンは『ホネホネ国』を駆ける。
そう、相手の断り無く断捨離としてものを捨てる……否、断捨離を敢行する。それは非常なるお掃除であった。
棄てられない雑誌。
棄てられない衣服。
棄てられない置物。
もうそんなこと言ってられないのである。デビルキングワールドの住宅事情を鑑みなければならない。もったいない精神は大切である。
どんなものでも捨てることなく有効に活用すること。それはとってもエコである。
だが、ここはデビルキングワールドである。
悪徳こそが美徳。
即ち、エコとは。この世界における美徳とは真逆のことなおである!
「というわけで、此処らへん一帯のゴミをどーん! てな! お掃除の時間だおらぁ!」
そんなノリでシンは次々とデビルスケルトンたちが棄てられずに取っていた住宅を圧迫する品物たちを次々と断捨離していく。
もうあちこちから悲鳴が響き、高圧洗浄機の水を噴出させる音が聞こえてくる。
容赦のない断捨離。
相手の意志を尊重しない行い。
けれど、それはデビルスケルトンたちの心をしびれさせるのだ。
「あー! ひどい! ひどいけど、クール!」
「それはだめ! それは棄てたらー!? 容赦のないダストシュート!?」
デビルスケルトンたちは悲鳴を上げているが、シンの振る舞いにどこか喜んでいる節がある。というかカッコイイとすら思っているのだ。
正直言って他の世界の価値観から見たら、そうとうやべーやつである。
「悪役令嬢だの何だの言うが、んなもの手持ちの財産ちらつかせて上から目線の小悪党に過ぎねぇ。要はD(デビル)がなけりゃなんもできねぇってことだ。行くぞお前ら! 三下の令嬢にヒーヒー言わせてやるぞォ!」
なんかものすごい気合入っているが、シンさん、なんか昔悪役令嬢とあったの? と疑いたく成るほどの気合の入りようである。
そんな彼を慕うデビルスケルトンたちが雄叫びを共に上げる。
この事がきっかけで、そのうち断捨離の悪魔としてシンはきっと多分メイビー、知られるようになるきっかけになったとかなかったとか――。
大成功
🔵🔵🔵
才堂・紅葉
皆さんの前で『シンデレラ』を語りますね
ギターの【楽器演奏】に【アート】で弾き語りです
「さて、この主役の少女についてどう思います?」
芳しくない反応は想定内
「浅いですね。この物語において一番の悪はシンデレラです」
「彼女は義姉達から王子との婚姻の機会を奪い、最終的に継母と義姉から全てを奪い去ります。これは決して偶然ではなく、周到な計画によるものです」
「Sinderella……罪被りの少女と呼ばれる由来です」
ロックでしょう?と微笑し、【早着替え】で真の姿のドレスを翻す
傲慢な威風を纏い、彼らに問いましょう
「これから悪役令嬢の全てを奪いに行くわ。貴方達も、私と一緒に最新のシンデレラと洒落こみませんか?」
デビルキングワールドに住まう悪魔たちは、一人ひとりが猟兵に匹敵するユーベルコード使いであることは知られていることだろう。
この『ホネホネ国』に住まうデビルスケルトンたちも一人ひとりが猟兵と同じほどの実力を有している。
けれど、オブリビオンに統率された『悪役令嬢の国』の悪魔たちも同様である。猟兵達だけでは、彼らに囲まれてボコボコにされてしまうだけだ。だからこそ、猟兵達は溢れ出るワルとしてのカリスマを発揮し、デビルスケルトンたちを仲間に引き入れなければならないのだ。
そんな『ホネホネ国』の広場で才堂・紅葉(お嬢・f08859)はギターを片手に弾き語りをしていた。
なんで?
いや、ちょっとまってマジでなんで?
しゃららんと、見事なギターの音色が物悲しいというか、雰囲気出しているけれど、いやちょっとマジで。え、ねぇ、説明は!?
とまあ、そんな具合に紅葉は童話『シンデレラ』の内容を弾き語っているのだ。
継母と義姉にいびられるシンレラ。
魔法使いの魔法でかぼちゃの馬車とガラスの靴を得て……とまあ、通常の善悪の世界であればオーソドックスなシンデレラストーリーである。
女の子であれば、大体の子は一度は憧れるものである。
「さて、この主役の少女についてどう思います?」
紅葉はギターを音色を鳴らして、集まってきたデビルスケルトンたちに問いかける。
彼らは一様に微妙な顔をしていた。
というか、むしろ継母や義姉たちの方にこそ憧れの視線を向けていた。ひどい振る舞いと、いびり。
あら、シンデレラさん、このホコリはなにかしら?
この濃い味噌汁はなんです! 私を高血圧で殺すつもりかしら! みたいなそんな感じのいびりにこそ、このデビルキングワールドの悪魔たちは憧れるのだ。
「非常にダセーって思う。先ずなんにも悪いことしてないし。そういうのどうかと思う」
「ていうか、王子も王子だよな。なんで、シンデレラ選ぶ? 義姉、もしくは継母を娶るべきでは?」
「あと魔法使いの見た目が悪いのがいいのに、良いことしてるのもまた……」
やんややんやである。
その反応を紅葉は予想していた。想定内であった。
悪徳こそが美徳の世界であればこその反応。嫌悪の方が先立つ。だが、紅葉は知っている。嫌悪の感情はひっくり返せるのだ。
無関心ではない所が肝心である。
「浅いですね」
――!?
それは悪魔たちに電流走る言葉であった。
浅い? 俺たちが浅い!? 冗談じゃねぇ! ってやつである。
「この物語において一番の悪はシンデレラです」
――!? え!? となるのは天の声というか、地の文も同様である。流石に紅葉さん、それはうがった見方すぎませんか!
「いいですか? 彼女は義姉たちから王子と婚姻の機会を奪い、最終的に継母と義姉から全てを奪い去ります」
まあ、それが勧善懲悪的なストーリーだし?
むしろ、今まで散々イビリ散らしてきたのだから、因果応報では?
だが、紅葉は続ける。新約シンデレラストーリーを!
「これは決して偶然ではなく、周到な計画によるものです」
ばーん!
な、なんだってー!? どういうことなんだ紅葉さん!
「そう、ガラスの靴をわざと置き忘れて逃げた。それは己の価値を高めるプレミア感! ガラスの靴って所がまた憎らしいところです。王子の気を引くには十分。さらには魔法使い! ただでなんでもやるわけがありません。取引をして……いえ、シンデレラは魔法使いの弱みを握っていたのです。脅していたのです!」
えー!?
デビルスケルトンたちは驚愕する。
あんな人畜無害なる娘だったのに、裏では用意周到に事をなしていたのである。印象がひゃくはちじゅうど変わってしまった……!
「Sinderella……罪かぶりの少女と呼ばれる由来です」
ロックでしょう? と微笑んだ紅葉の姿がハイペリアの紋章を浮かばせ、ドレス姿に早変わり。
あ、なる。灰かぶり姫と灰ペリアってわけね。なるほどなー。ちなみにそんな事実はない。
その姿は、これまで紅葉が語ったシンデレラストーリーをなぞるような姿であった。
彼女の傲慢なる威風堂々たる立ち振舞にデビルスケルトンたちはおののき、痺れるのだ。
「これから悪役令嬢の全てを奪いに行くわ。貴方達も、私と一緒に最新のシンデレラと洒落込みませんか? いえ、洒落込むのです」
まさに現世に降り立った最強の極悪姫。
その写し身とでも言うべき紅葉の姿は、デビルスケルトンたちの瞳に燦然と輝く悪のカリスマとして映ることだろう――!
大成功
🔵🔵🔵
茜・皐月
「わるいこと、わるいこと…んー…」
お悩み少女人格、持ってる箒で街角お掃除中。
延々悩みながら街角お掃除、掃いて磨いてつやつやぴかぴか、ツルッツルまで。
閃き。
「お掃除するのね!ツルッツルにして、みんなすってんころりんさせるの!」
『ある意味何もない所で転ぶ羞恥心を与えられるわね』
娘人格の補足。何もない所で転ぶの、恥ずかしいじゃん?しかも自然なフリで立とうとしたら足元ツルッツルだからまた滑って転ぶ…痛いし恥ずかしいし、名案な悪戯!
「坂道つるつるにしてその先にガラスがあってがっしゃーん!とか」
『貴女飛んでるから転ばないじゃない』
そう、箒で掃いてる彼女、魔法で空中浮遊してるから高みの見物出来る。悪ーい!
一概にワルいことと言われても、善良なる者には、その一端すら思い浮かべることが難しいものである。
デビルキングワールドに住まう悪魔たちであってもそうなのだ。
彼らは根が善良なる良い子な種族である。
故に絶滅しかけたというのは皮肉でしかないが、それを回避するための法、『デビルキング法』には、こう記されている。
『悪いことはカッコイイこと! クールなこと! みんな積極的に悪いことしようぜ!』
まあ、色々いいたいことはあるだろう。
生真面目に法律遵守しているのはワルではないのではないだろうかという矛盾を抱えることになるけれど、誰も何も言わない所が空気読めていると言うか、やはり悪魔足り得る所以であろうか。
真面目なのである。良い子なのである。むしろ、いいことじゃろってなるところなのである。
「わるいこと、わるいこと……んー……」
猟兵である茜・皐月(多重人格者のウィザード・f05517)の体に宿る人格のうち、少女の人格は悩みに悩んでいた。
持っている箒で『ホネホネ国』の街角をせっせと掃き続けている。
すでに街角は磨いてつやつやぴかぴか、ツルッツルになるまで皐月の持つ箒で掃除されているのだ。
あ、ははーん。
この子もあれだな? やりすぎちゃうタイプであるし、集中すると周りが見えなくなるタイプでは? と誰もが思ったことだろう。
ついでにいうと、予想の斜め上からの解答を得てしまうタイプでもあるだろう。
ぴかぴかの鏡面じみた街角の路面を見て皐月の頭上に豆電球が閃いた。
これは確実にろくでもないことを思いついたときの顔である。
「お掃除するのね!」
あれ!?
今、掃除していたよね!? え、なんで? なんでなんで? え、怖い。
何事だろうと皐月を見守っていた悪魔たちから、ドン引きする声が響く。
だって、そこもうきれいになってるし。
「ツルッツルにして、みんなすってんころりんさせるの!」
おむすび大作戦である。どじょうが出てきてこんにちわってあれである。いや、そういうわけではないかもしれないけれど、所謂悪戯である。
いいことを思いついたと言わんばかりに皐月の中の少女の人格が俄然やる気になって手にした箒で街頭の路面を掃き続ける。
『ある意味何も無いところで転ぶ羞恥心を与えられるわね』
皐月の中にある娘の人格が補足する。
いや、それでもだいぶ可愛いタイプの悪戯であるが、それでも『ホネホネの国』の悪魔であるデビルスケルトンたちにとっては、極悪であった。
「すっ転ばせて辱めた上に、怪我までさせる、だと……!?」
「あの子、恐ろしい子ッ!」
えー、ちょっろ。ちょろすぎんよー。
デビルスケルトンたちは皐月のあまりに無邪気に、そんな極悪なことをする様子に、ワルのカリスマを見出したのだ。
『なにもないところで転ぶの恥ずかしい……転んでから自然なフリで立とうとしても足元ツルツルだから、また滑って転ぶ……痛いし恥ずかしいし、名案な悪戯ね……」
確かにそうだけども。
これで通用してしまう所が、悪魔たちのちょろいところである。他の世界であったら、絶対に通じないやつである。
だが、それでも皐月の少女人格に生み出した悪戯は、悪魔たちに受け入れられるのだ。
「坂道ツルツルにして、その先にガラスがあってがっしゃーん! とかね!」
『貴女、飛んでるから転ばないじゃない』
「だって、ほら。ボクは転びたくないし? 高みの見物できるし?」
えへへ、と笑う皐月は、魔法で空中浮遊によって地面から浮いているのだ。
だからか!
あんなにツルツルになるまで磨き倒したのに彼女自身が転ばない理由は!
そんなずるいやり方があったなんて!
「ボクって悪ーい! ね? そうでしょう?」
そんな風に無邪気な笑顔でほほえみながら、えっぐい悪戯をしかける皐月は、きっとそのワルさでもってデビルスケルトンたちを引きつけていくだろう。
彼女についていけば、これからもものすごい悪戯に加担できるかもしれない。
そんな期待とともに皐月の掃いてピカピカの路面をデビルスケルトンたちは、すってんころりんと転げ回るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ジフテリア・クレステッド
D(デビル)!D(デビル)!D(デビル)!
Dだぁーっ!!ヒャッハー!!
どうせこのままじゃ悪役令嬢の国に奪われてカタストロフの触媒に使われちゃうんだよね?
だったら私がこの国中のDを奪い尽くしてやるよーっ!!ヒャッハハハハハハー!!!
オラオラ!そこのホネども!あなたたちもDを持っているんだよね?
だったらよこせぇーっ!!ほらっ!ジャンプするんだよ!!
あん?これっぽちしか持ってない?
しょっぱいなあ…ねえ、あなたたち。親の連絡先と友達の連絡先を教えなよ。そこから盗るからさあ!!
ははは!負け犬の遠吠えが心地いいなあ!
次は悪役令嬢の国から奪い尽くしてあげるよぉ!
(…こんなんで本当に仲間にできるんだろうか。)
世の中金じゃないというが、大体のことはお金で解決できるものである。
確かにお金で買えないものもあるかもしれないけれど、お金で買えないものを買うために必要なものはお金で買えてしまうものである。
だからそれがどうしたのだという話であるが、即ちお金とはイコール、力だ。
そして、悪徳が美徳の世界『デビルキングワールド』においてお金、即ちD(デビル)とは、より現実的な力であった。
D(デビル)には魔力が宿っている。
その込められた魔力を使って一般的なオブリビオンであっても『カタストロフ級の儀式魔術』を執り行うことができてしまうのだ。
故に、この世界においてD(デビル)とは力そのものであった。
「D(デビル)! D(デビル)! D(デビル)!」
そう叫ぶのはガスマスクをつけた少女、ジフテリア・クレステッド(ビリオン・マウスユニット・f24668)であった。
猟兵であり、フラスコチャイルドである彼女は清浄なる環境においての脆弱性を克服するために生み出された存在である。
本来の耐毒性能すらも無い彼女の吐息は毒素を撒き散らす生きた公害そのものであり、彼女のガスマスクは本来の用途と違い、己の毒素を撒き散らさぬためのフィルターでもあった。
正直に言おう。
デビルキングワールドの住人たちからすれば、彼女の見た目は、超絶クールであった。なんだ生きてるだけで毒素を撒き散らす公害って。かっこよすぎじゃね? と。
そんな彼女がD(デビル)と連呼しているものだから、『ホネホネ国』の悪魔たちであるデビルスケルトンたちは溢れんばかりのワルの雰囲気(ガスマスク)に引き寄せられていた。
「D(デビル)だぁ―っ!! ヒャッハー!!」
ジフテリアはもうやりたい放題である。
むしろ、やけくそでもあった。
このまま『ホネホネ国』を放っておけば、『悪役令嬢の国』にD(デビル)を奪われて『カタストロフ』の触媒に使われてしまうのだ。
だったら、自分がこの国中のD(デビル)を奪い尽くしてやろうっていう寸法である。
「ヒャッハハハハハハー!!!」
もうテンション爆上がりである。
正直、姿と相まってかなりのサイケデリックっていうか、通常の世界だったら、絶対に近づいてはならない感じの人になってしまっている。
「オラオラ! そこのホネども! あなたたちもD(デビル)を持っているんだよね? だったらよこせぇーっ!!」
やり口はもうカツアゲ。
繁華街に迷い込んだ中学生をカモるようなやり口である。お? 君等どこ中? ん? みたいなあれである。
「も、もう、これだけしかないんですぅ……!」
デビルスケルトンたちは、その姿形からは想像できないほど気弱な声をあげながら、ジフテリアにD(デビル)を差し出すが、なんか嬉しそうなのは気のせいか。いや、気の所為ではない。
何故なら、これはいわば、憧れのロックンローラーやプロレスラーからビンタされる類の『ありがとうございます!!』って感じのアレになっているのだ。
ご褒美?
「これっぽちの訳がないよね? ほらっ! ジャンプするんだよ!!」
「ひーん! 本当にもう持ってないんですぅ!」
さらにジャンプさせて小銭まで巻き上げる姿勢。その姿勢、ワルだね!
モードチェンジ:魔界盗賊(モードチェンジ・マカイトウゾク)となったジフテリアは止められない。
故郷のお姉さまに心の中で謝りながら、ジフテリアは心を鬼にして、この世界における美徳をこなしているだけに過ぎないのだ。
だから、お姉さま、ジフテリアさんを許してやってください!
「あん? これっぽちしか持ってない? しょっぱいなあ……ねえ、あなたたち。親の連絡先と友達の連絡先を教えなよ。そこから盗るからさあ!!」
「ヒェッ……! お父さんお母さんはやめてください! 友達を売るなんてできないけど……!」
けど?
あん? とジフテリアがメンチを切る。おう、言ってみろよ、的な。
「……――親兄弟、友達クラスメイト、売りまぁす!!」
潔かった。
あっさりと屈してしまったデビルスケルトンたち。うぅ、と酷すぎる、ワルすぎる……と涙ながらにつぶやく彼らの顔はなんか嬉しそうなのは、もうそういう趣味なんじゃないかなって思うほどであったが、勘違いしないでいただきたい。
デビルキングワールドは、こういう善悪逆転の価値観の世界なのだ。
特殊な性癖とかそういうんじゃないのである!
「ははは! 負け犬の遠吠えが心地いいなあ! さあ、次は悪役令嬢の国から奪い尽くしてあげるよぉ! わかったら、あなたたちは今日から私の舎弟だよ! わかった?」
「はい!!!!」
ものすごく嬉しそうな顔でジフテリアに付き従う悪魔たち。
ジフテリアの背後にはぞろぞろとデビルスケルトンたちの群れ。まさに悪魔の行軍である。
しかし、その先頭に立つジフテリアは内心複雑であった。
だってそうであろう。
普段は良い子なのである。こんなことしていいのかという気持ちをユーベルコードによって切り替えているだけなのだ。
こんなんで本当に仲間にできるんだろうかと思っていたのだが、あまりにもちょろすぎて、裏がありそうなくらいであったが、残念!
裏などなにもないほどに悪魔たちはくそちょろなのである――!
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
『ワルでなければ寝返られる』ですか
威圧は兎も角、法に真っ向から勝負を挑む勇者のような振舞いは逆効果…
記憶データ無くともこの身は遺憾ながら悪名高き銀河帝国製ウォーマシン
そちらの適性も十分にあります
心苦しいですが、心を鬼…いえ機械に…
ホネホネの国の皆様、こちらをご覧ください
(手元のスイッチをカチリ、遠くで●破壊工作で仕掛けた爆弾炸裂)
『アレ』と同じ物を複数、皆様の国の幼稚園に仕掛けさせて頂きました
私か装置の破壊でも爆発しますのでご注意を
さて、私の要求は悪役令嬢の国との戦への皆様のご参加です
賢明な判断を期待します
騎士として想定し得る限りの『最悪』を使いましたが
…やはり憂鬱です
悪魔受けが良いのも猶更…
悪徳こそが美徳。
その言葉は言うは易く行うは難しというやつである。
通常の世界の善悪観、倫理観を持ち合わせる猟兵たちにとって、それはあまりにも難しいことなのである。
何故なら、彼らの心には確かに善き心が宿っているから。
しかし、この世界、デビルキングワールドに住まう悪魔たちにも同じことが言える。彼らが悪徳を美徳とするのは、彼らの心根があまりにも善良すぎたせいなのだ。
そのせいで彼らは絶滅仕掛けたからこそ、『デビルキング法』によって悪徳を為すことを善き行いとして遵守しているのだ。
遵法精神を持つ生真面目さ。いや、生真面目さって美徳じゃね? と思うが、仕方ない。だって悪魔たちは根本的に良い子なのだから!
「『ワルでなければ寝返られる』ですえか……」
そしてまた一人、ここに思い悩む猟兵が居た。
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は機械じかけの騎士である。騎士道精神を炉心に燃やす彼にとって、ワルのように振る舞うことはあまりにも難しいことであったのかもしれない。
「威圧は兎も角、法に真っ向から勝負を挑む勇者のような振る舞いは逆効果……」
どうしたものか。
機械であるがゆえに、トリテレイアは懊悩する。
己の中にある騎士道精神と相反する行い。
それを行うことこそが、この世界の美徳。ならばこそ彼はッ、覚悟をッ、決めたのだッ!
「記憶データ無くともこの身は遺憾ながら悪名高き銀河帝国製ウォーマシン。そちらの適性も十分にあります」
覆面の機械騎士/機械仕掛けの騎士の振舞い(マスクド・マシンナイト)……それこそが、トリテレイアのユーベルコード。
己の言動や挙動を最適化する。このデビルキングワールドにだ。
即ち、それは悪逆の騎士として振る舞うということである。
「心苦しいですが、心を鬼に……いえ機械に……」
大丈夫? 無理してない? と心配になるくらいトリテレイアは割と落ち込んでいるのだが、切り替えの速さもまたウォーマシン特有のものであったことだろう。
トリテレイアは手にスイッチを持ち、周囲の悪魔たちに呼びかけた。
「『ホネホネの国』の皆様、こちらを御覧ください」
え、なにー? とデビルスケルトンたちが注目する前にいきなりトリテレイアはスイッチを押した。
瞬間、遠方でいつのまにか仕掛けた爆弾を炸裂させ、凄まじい地鳴りと轟音を響かせ、爆煙を上げ様子を見ながら、トリテレイアのアイセンサーがワルっぽく輝いた。
「『アレ』と同じものを複数、皆様の国の幼稚園に仕掛けさせて頂きました。私か装置の破壊でも爆発しますのでご注意を」
……わりと洒落にならんやつである。
トリテレイアの機械音声がまたいい仕事をするのである。正直言って怖い。
マジでやる気であるということを伝えるには十分であった。
「な、なんてことを……! い、いったなにが目的なんだ……!」
「さて、誘導ありがとうございます。私の要求は『悪役令嬢の国』との戦への皆様のご参加です。件目にな判断を期待します」
トリテレイアの要求はそれだけであった。
即ち、人質を取るから戦えということである。それは通常の世界であれば、身代金要求とか、映画とかであったら、確実に悪役の部類である。
恫喝ってやつだね!
ひゅー!
え、もしかして、あたいたち今恫喝されてる!? とデビルスケルトンたちはなんかときめいていた。
え、こわ。と普通の善悪観の人々は思ったかも知れないが、このデビルキングワールドではそうではない。
なぜなら、善悪が逆転しているから。
そう、トリテレイアの脅迫、恫喝は、いわば彼らにとって口説き文句なのだ!
それも熱烈に口説かれているのと同じである!
トゥンク……!
何がトゥンクじゃい! となる光景である。トリテレイアが憂鬱になるのも無理なからぬことである。
騎士として想定し得る限りの『最悪』の手段を用いたのに、なんだか好評なのである。
「あんたすごいな……! いいぜ、その話に乗った! 俺たちが『悪役令嬢の国』の連中と戦えば、子どもたちの安全は保証してくれるんだな……!」
と、きらきらした目……っていうか、眼窩でデビルスケルトンたちはトリテレイアのもとに集まってくるのだ。
悪魔受けが良いのも考えものである。
作戦事態は上手く言ったのに、トリテレイアは釈然としないものを感じ、さらには陰鬱なる気持ちを機体装甲に隠しながら精一杯悪逆の騎士らしく振る舞うのだ。
「ええ、あなた方が確りと働いてくれれば、の話ですがね」
もうヤケであった。
だが、その自棄であっても、悪魔たちには大受けであり、ものすごい盛り上がりと戦意高揚を果たして、彼らは『悪役令嬢の国』を迎え撃つために駆け出すのだった――!
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『ブギーエカイユとその相棒たち』
|
POW : 猛蛇
単純で重い【頼れる相棒である喋る武器で】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 操蛇
対象の【喋る武器の使い手】に【喋る武器】が【魔法で角】を生やし、戦闘能力を増加する。また、効果発動中は対象の[喋る武器の使い手]を自在に操作できる。
WIZ : 轟蛇
【自身の持つ喋る武器】から【雷属性の魔法弾】を放ち、【感電】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:まっくろくろな
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『ホネホネの国』と『悪役令嬢の国』の間にある荒原には、今や両者の軍容が睨み合っていた。
何も遮るもののない荒原。
互いの数は拮抗している。猟兵たちがワルとしての魅力を発揮し、ほぼ『ホネホネの国』の全国民を引き連れて『悪役令嬢の国』の軍勢と相対することができた。
「わー! めっちゃおるー!」
「向こうもやる気だなー!」
両国の悪魔たちは、かなりノリノリである。
一度戦争ごっこやりたかったんだよねっていうくらいのノリである所が、彼らの凄まじいところである。
『悪役令嬢の国』の悪魔たちは皆、蛇の悪魔である。喋る武器を手に、これから起こるであろう両軍の激突にそわそわしているのである。
「すんごく悪そう……! あっちもこっちも、みんなすごいなぁ!」
悪魔たちはこれがD(デビル)を巡る戦いであるとわかっているのだが、どうにも緊張感に乏しい。
「あんた達! 連中をぎったんぎったんのズタボロ雑巾にしてしまいなさい!」
ただ、その中で一人、オブリビオンである『悪役令嬢・イレーヌ』だけがやる気満々であった。
否、殺る気満々であった。
彼女にとって目下目障りなのは猟兵だけである。
ならば、この数に物を言わせて猟兵たちを集中攻撃してくるだろう。この集中攻撃を躱し、猟兵達はオブリビオンを目指さなければならない。
だが、考えて見て欲しい。
この悪魔たちのユルさを。
そう、彼らはさらにワルいオーラを持つ者たちに流されやすい。
簡単なことだね! そう、オブリビオンよりもさらにワルなオーラを出せば、頼まれれば断れない悪魔たちだ。きっと悪役令嬢から寝返ってくれるかもしれない。
まあ、もちろん、問答無用でぶっとばしてもいいんだけどね!
さあ、猟兵たちよ。
さらなるワルさでもって、悪役令嬢をきゃん言わすのだ――!
シン・フォーネウス
喋る武器を持つ蛇の悪魔か。めちゃくちゃクールじゃねえか、ちょっと借りることって……じゃねぇ、倒す。倒すぞ!
……いや待て。そうだな。その喋る武器やっぱり貸してくれねぇか?
まあほら、ちょっと調理器具足りてなくてな、鍋をかき混ぜる用に使う。雷放つとかIH感あるだろ?ない?あるだろ。(闘争心)
斧の刃の部分が邪魔だな。取るか。取って柄だけにするってぇのはアリだろ。ない?あるだろ。(闘争心)
……交渉めんどくせぇ!行って来いお掃除軍団!!『掃除』開始だ!!(思考回路停止悪魔)
地形とか破壊しまくって令嬢の国までビーム飛ばしてやらぁ!!
はっはぁ!これだよ!俺がやりてぇのは掃除とか料理とかそういうもんなんだよ!!
荒原にて激突する『悪役令嬢の国』の軍勢と『ホネホネの国』の軍勢。
悪魔たちはそれぞれ、『ブギーエカイユとその相棒たち』と『デビルスケルトン』たちである。
彼らは炎やら雷やらユーベルコードを炸裂させながら、ド派手に戦いを繰り広げる。
それはいわば、猟兵レベルのユーベルコード使いたちによる激突である。それはもう派手派手過ぎて、本当にこれが一般悪魔たち同士の戦いであるのかと目を疑うほどである。
「行くよ、相棒!」
『おうさ! やったれ相棒!』
蛇の悪魔と喋る武器のタッグである悪魔たちは、生まれたときからずっと一緒なのである。
一人に付き一つの喋る武器。
それはどちらかが死せるまで続く長い付き合い。
故に彼らの連携は猟兵並のユーベルコードと合わさって凄まじい力を発揮していた。
「ぐわー」
なんとも気の抜けた雰囲気で放たれた雷に打たれてデビルスケルトンがホネホネに透けて……あ、最初からホネだったね。失敬。
まあ、そんなゆるっとした雰囲気でやられていくのだ。
「喋る武器を持つ蛇の悪魔か」
その戦いぶりを静かに見守る将……猟兵、シン・フォーネウス(水竜の従者・f31485)の姿があった。
彼の瞳は戦局を見据えるために、戦いの様子がよく見える一段高いところに立ち、デッキブラシを肩に担ぎながら、『悪役令嬢の国』の軍勢を構成している悪魔たちの姿を見ていた。
どれだけ彼らがゆるい感じでも、自分達と同じくらいのユーベルコード使いであることは油断ならぬことである。
だからこそ、その瞳は眼光鋭いのだ。
「――めちゃくちゃクールじゃねえか、ちょっと借りることって……」
ん?
今なんて?
「……じゃねぇ、倒す。倒すぞ!」
己の浮かべた言葉を振り払うようにシンは混乱続く戦場へと飛び込んでいく。お、もしかして、これはあれかな?
見た目に反して、ちょっとポンとしてコツな感じか? と思われたがシンの力は言うまでもない。
その手にしたデッキブラシで『ブギーエカイユ』たちの手にした武器たちを振り払い、手から落とさせるのだ。
一瞬の早業であった。
「……いや待て。そうだな。その喋る武器、やっぱり貸してくれねぇか?」
シンが手を差し出す。
振り落とした喋る武器を慌てて拾っていた『ブギーエカイユ』たちの顔が、え、と疑問に固まる。
なんで?
「まあほら、ちょっと調理器具が足りなくてな、鍋をかき混ぜる用に使う。雷放つとかIH感あるだろ? ない? あるだろ」
まさかのオール電化!
いやまあ、わかるけど。ユーベルコードって便利だなーとか。世界が世界であれば技術革新どころではないアレであるが、それでも『ブギーエカイユ』たちは首を横に降る。
「たとえこの生命が尽きても! 相棒は渡さない!」
キリッ! 非常にいいことを言っているのだが、悪徳を美徳とする世界において、それはどうなのかなってところである。だが、彼らの心根が善良であることを忘れてはならない。
彼らは良い子なのだから!
って、あー!
やめてやめて、取り上げるのやめてくださいよ、シンさんー!
さっと取り上げた相棒こと喋る武器たちがガタガタ震えているが、シンは構うこと無く品定めするように見つめる。
「斧の刃の部分が邪魔だな。取るか。取って柄だけにするってぇのはアリだろ。ない? あるだろ」
もはやシンの瞳はやべぇやつ特有のぐるぐるしたあれになっている。
目的のためなら非情なる手段も辞さない。そんな強行突破の構えを見せるシンに縋り付く『ブギーエカイユ』たち。
「あー! やめて! やめてくださいー! 相棒にひどいことするのやめてー!」
シンの足元にすがりつきながら、懇願する『ブギーエカイユ』たち。
その姿はどっちが悪魔かわからない。いや、シンも悪魔だから正しいのだが、極悪が過ぎる。
「……交渉めんどくせぇ! 行って来いお掃除軍団!! 『掃除』開始だ!!」
交渉……?
何処らへんに交渉要素があったのか割と疑問であるが、そんなことはどうでもいいのだ。シンの瞳がユーベルコードにかがやく時、召喚されるはお掃除ロボットと高圧洗浄機に29のビーム砲塔が備えられた献身ノ軍団(クリーン・ソロネ)!
もはや問答無用である。
おっと思考回路停止悪魔なんていうことを言ってはならない。
言ったが最後どうなるかわかるね?
そう、ビームだ。
「はっはぁ! これだよ! 俺がやりてぇのは掃除とか料理とかそういうもんなんだよ!!」
実に良い笑顔でシンの放ったお掃除ロボット達による『お掃除』(物理)が炸裂する。
ビーム砲塔から放たれたビームが大地を薙ぎ払い、『悪役令嬢の国』まで凄まじい熱線でもって大地を抉る。
その爆発に巻き込まれるように一般悪魔たちが、ワーワーキャキャー言いながらぶっ飛ばされていく。
まさに悪魔的。
破壊の権化のような気がしないでもないが、シンは確かに『お掃除』するように『悪役令嬢の国』の軍勢を薙ぎ払い、『悪役令嬢』目指して、己のフラストレーションを解消するように進撃し続けるのだった――!
大成功
🔵🔵🔵
茜・皐月
「およよよ、ヘビさんいっぱーい」
あいも変わらず無邪気な少女人格、箒に乗って敵陣を観戦中。
敵の攻撃の届かないとこで見てるのって悪の幹部っぽくない?
片手には鋭く折られた木の枝一本。
UCで操られた影は槍の形をとったり崩したり。
影を操る悪役っぽい。
「狙うはタイショーの首なのね!!とっておきの深淵へ誘ってあげるの!」
ホネホネさんに号令をかけて、開戦開戦ー!
影を操ってチクチクチクチクしてはきゃっきゃと無邪気に笑って見せたり。
魔法弾が飛んできても影で射抜いて霧散させてあげよう。
蹂躙蹂躙!!!悪役街道まっしぐらー!
『悪役…なのかしら…??』
娘人格、一抹の疑問を呟くのであった。
『悪役令嬢の国』の軍勢の多くは喋る武器を手にした『ブギーエカイユ』。蛇の悪魔たちであった。
彼らは言うまでもなくオブリビオン『悪役令嬢・イレーヌ』の放つ悪のカリスマ性に引き寄せられて彼女に付き従って『ホネホネの国』へと侵攻しているだけに過ぎない。
激突する『ブギーエカイユとその相棒たち』と『デビルスケルトン』たち。
彼らの戦いは正に猟兵同士が戦うのと同じ光景であったことだろう。
なにせ彼らは猟兵に匹敵するユーベルコード使いなのだ。
雷と炎が乱舞し、荒原を明滅させる。こんな多数の悪魔たちに取り囲まれてしまえば、如何な猟兵と言えど突破は難しいだろう。
「およよよ、ヘビさんいっぱーい」
だが、そんな戦いの苛烈さなど何処吹く風といったように茜・皐月(多重人格者のウィザード・f05517)は空飛ぶ箒に乗って『悪役令嬢の国』の陣容を観戦しているのだ。
敵の攻撃である雷も皐月には届かない。
まさに今彼女がしているのは、激突する有象無象の集弾を空の高いところか見下ろして、『ふっ、やるな』とか後の物語に出てくる強敵ムーヴであった。
確実に後半で仲間になるか、主人公の宿敵であるとか、なんかそんな感じのムーブであったが、皐月は何もしないで高みの見物というのもバツが悪いのか、手にした木の枝の一本を軽く手折り、先端を鋭くした。
「敵の攻撃の届かないとこで見てるのって悪の幹部っぽくない?」
くるくると折った木の枝の先端を回しながら、皐月は笑った。
眼下では『ブギーエカイユ』たちと『デビルスケルトン』たちが激しくぶつかり合っている。
まるで部下にしんどいことをさせて、自分は上澄みの良いところだけを持ってく悪役其の物であったし、そんな皐月にワルのオーラを感じてがんばってる『デビルスケルトン』たちも大概であった。
「ま、でも何もしないってのものね。その血肉と共に、深淵へと行き着け」
皐月の瞳がユーベルコードに輝き、深淵からの誘い(シンエンカラノイザナイ)のように槍状の影が地面からそそり立ち、『悪役令嬢の国』の軍勢を派手に吹き飛ばす。
その姿は正に影を操る悪役っぽかった。
仲間にした『デビルスケルトン』たちもテンションが跳ね上がるというものである。
「狙うはタイショーの首なのね!! とっておきの深淵へ誘ってあげるの!」
言ってることは大変に物騒なことなのであるが、皐月の見た目も相まって、日曜の朝とかにやってる番組の類の撮影のようにさえ見えてしまうから不思議である。
彼女の号令と共にテンションの上がった『デビルスケルトン』たちが荒原を駆ける。
『ブギーエカイユとその相棒たち』を吹き飛ばしながら、『デビルスケルトン』たちは次々と『悪役令嬢の国』の軍を打ち破っていくのだ。
まさに無双状態。
さらに皐月が空から指揮棒を操るように影の槍で敵の防御を突き崩していくのだから、たまったものではない。
「きゃっきゃ、ホネホネさんたち、今なのねー!」
無邪気に笑いながら皐月の操るユーベルコードの影が地中から再び『悪役令嬢の国』の軍勢を突き上げてはぶっ飛ばしていく。
そこへ号令を聞きつけた『デビルスケルトン』たちが一気になだれ込んで包囲網を食い破っていくのだ。
「蹂躙蹂躙!!! 悪役街道まっしぐらー!」
確かに皐月の言葉通り蹂躙そのものであった。
けれど、やっていることは魔法少女のアレである。
皐月のその立ち振舞に味方になってくれている悪魔たちがいつ疑問を抱くかわからない。
だからこそ、彼女の中のもう一つの人格が一抹の疑問をつぶやく。
『悪役……なのかしら……?』
いや、ほんとそれな!
だが、悪魔たちはというと……。
「わー! わー! いけいけごーごー! 魔女のおねーさんの影につづけー! ひゃっほー!」
デビルスケルトンたちは皐月の無邪気さが移ったかのようにはしゃぎながら『ブギーエカイユ』たちをぶっ飛ばしていく。
さながらそれは、ナーフな銃できゃっきゃするようなごっこ遊びのようなものであった。
それを見下ろす皐月の娘人格はなんとも言えないような気分で辟易したようにつぶやくのだ。
『……いいのね、それで―――』
そうです!
これでいいのです……!
大成功
🔵🔵🔵
ジフテリア・クレステッド
根がお人好しのあなたたちは、私が、奪ったDを色々ツンデレな屁理屈をつけて最終的には国に還元する形にするとでも心の奥底では考えているんじゃないかな?
…甘いよ。
奪ったDを取り込みUC発動!さらには儀式用に調整し寿命の代わりに消費!
しっかり私のためだけに使って何処にも残さない!
というわけで高速移動と広範囲毒ガス散布で無差別毒ガステロだよ!ホネたちも巻き込むけど仕方ない。近くにいるやつが悪い。
毒ガスで動けなくなった連中からも持ってたらDを奪ってUCに使う。悪役令嬢が使う分を根刮ぎ消費する…!
敵も味方もDの前では等しく邪魔者なんだよ。立ってDを持っているのは私だけでいい…!
(殺しはしないから許して…)
D(デビル)に固執する者は、このデビルキングワールドに住まう悪魔たちの中には少ない。
頼めば大体のことは断らずにやってくれる一般悪魔たちばかりであるがゆえに、通貨はあまり意味がないのだ。大体の場合、D(デビル)とはそれをワルさのパーセンテージ程度にしか考えられていない。
だからこそ、悪魔たちはあまりにD(デビル)にはこだわらないのだ。
この世界においてD(デビル)に固執する者は、逆説的に考えてオブリビオン以外考えられない。
ジフテリア・クレステッド(ビリオン・マウスユニット・f24668)は、山のようにかき集めてきたD(デビル)の山の上に君臨し、彼女がD(デビル)をかき集めさえた一般悪魔『デビルスケルトン』たちを前にして傲岸不遜なる立ち振舞で言う。
「根がお人好しなあなたたちは、私が、奪ったD(デビル)を色々ツンデレな屁理屈をつけて最終的には国に還元する形にするとでも心の奥底では考えているんじゃないかな?」
え、違うの?
彼女のもとに集った悪魔『デビルスケルトン』たちは、きょとんとしていた。
いやマジでそんなことを考えていたのだ。
あの人なんだかんだで優しいだろうなって、妙な確信があった。だからこそ、ジフテリアは容赦しない。
彼女は決めたのだ。
一度やると決めたからには。やり通さなければならぬ意地があるッ。
「……甘いよ」
ぼそりとジフテリアがつぶやく。
彼女の背後には凄みがあった。絶対に退かぬと、絶対に臆さぬという凄みが。
「華麗なる怪盗の流儀……なんてものはないっ!!D(デビル)だD(デビル)だーっ!!」
それは奪ったDを触媒にして起動するユーベルコード。
本来であれば寿命を消費するところを膨大に集めたD(デビル)に込められた魔力消費によって贖い、彼女は高らかに宣言するのだ。
――簡易D儀式発動・魔界盗賊ジフテリア参上!(マカイトウゾクジフテリアサンジョウ)
「しっかり私のためだけに使って何処にも残さない!」
ええー!?
デビルスケルトンたちは戦いた。マジでほんとにアレだけ山のように自分達から巻き上げたD(デビル)を一瞬で消費してしまっていた。
それはジフテリアの『魔界盗賊』の真なる姿。
目にも留まらぬ圧倒的な速度で敵軍を切り裂くように駆け抜けていく。
さらには彼女の吐息である毒素を広範囲に解き放ち、無差別毒ガステロを敢行するのだ。
「ぼ、僕らはー!? 巻き添えになっちゃうんですけどー!?」
「近くにいるやつが悪い」
「そんなー!?」
デビルスケルトンたちを巻き添えにしながら、ジフテリアは超高速で戦場を駆け抜ける。ホネっ子たちの尊い犠牲は忘れないよ、多分。
そんな具合でジフテリアは毒ガスを振りまきながら、『悪役令嬢の国』の軍勢を尽く無力化していく。
そう、生命を死に至らしめるジフテリアの吐き出す毒であるが、『魔界盗賊』の真成る姿となったジフテリアは、毒素の効果範囲と、その効力を完全にコントロールできるのだ。
巻き添えにしたように思えたデビルスケルトンたちであったが、絶妙なコントロールで死なないくらいにバッタバタ倒れた程度に過ぎない。
時間が経てば後遺症なく復帰できるだろう。
「敵も味方もD(デビル)の前では等しく邪魔者なんだよ」
そう、口ではこんなこと言っているが、やってることは割と寛大である。所謂ツンツンデレってやつである。
しかし、今はそんなことを説明している場合ではない。
「ばたんきゅー!」
倒れ込んだ敵の懐に在ったD(デビル)すらもジフテリアは目ざとく見つけて、ユーベルコードの効果を持続するための魔力へと買えていくのだ。
「立ってD(デビル)を持っているのは、私だけでいい……!」
格好良く決め顔しているが、内心は『殺しはしないから許して……』である。
ジフテリアもデビルキングワールドの悪魔たちと同じく、きっと心根は真面目で優しい子なのだろう。
きっとそう信じている。
ただ、今ちょっと、そのぉ……倒れた敵の懐からD(デビル)を強奪しているシーンが続いてはおりますが、本当にいい子なんです!
本当なんです――!
大成功
🔵🔵🔵
才堂・紅葉
「皆さん。本日は略奪に伺いました!」
スケルトン神輿の椅子に腰掛け宣戦布告
王城から拝借したゴージャスな椅子の座り心地は最高ですね
「出なさい、天蛇王」
この世界で拾った蛇矛の【封印を解く】と、チャイナドレスに早着替えします
「行きなさい。倒さなくてよいわ、組み付いて動きを封じなさい」
【気合】で指示し、敵兵にホネがしがみ付くのを確認
蛇矛を揮い、その動きに合わせて動く巨大な大水蛇を召還します
後は蛇矛の乱舞に合せて、大水蛇を放ち味方ごと【吹き飛ばし】ますね
【衝撃波】メインで実ダメージを抑えるのがコツです
「さぁ。貴方達、次よ!」
冷やかな眼差しで更なる死兵を命じ、景気良く吹き飛ばしましょう
悪事は気が咎めますね
『悪役令嬢の国』と『ホネホネの国』の軍勢が激突する荒原において、飛び交うのはユーベルコードの輝きであった。
「敵もさることながらー! 僕らも負けていられないね!」
『おうともさー! 相棒! いくぜー!』
蛇の悪魔と喋る武器のコンビ、『ブギーエカイユとその相棒たち』はユーベルコードによって、その頭部に角を生やし、戦闘力を強化して『ホネホネの国』の軍勢を押し戻し始めていた。
彼ら一人ひとりが猟兵に匹敵するユーベルコード使いだ。本気になった彼らを妨げることが出来るものは誰ひとりとしていない。
だが、ここに例外がある。
ユーベルコードによって強化された『ブギーエカイユ』たちをぶっ飛ばしながら、どんちゃかとやってきたのは、スケルトン神輿に担がれた才堂・紅葉(お嬢・f08859)であった。
「皆さん。本日は略奪に伺いました!」
『ホネホネの国』の王城から拝借したゴージャスな椅子をスケルトン神輿に備え付けて、紅葉は高いところから見下ろしていた。
とっても悪役であった。
むしろ、もう魔王ではないかなって思うほどの迫力を醸し出しながら、紅葉は手にした蛇矛“天蛇王の封印を解いた。
それはユーベルコードの輝き。
「出なさい、天蛇王(テンジャオウ)」
厳かな言葉が紡がれる。
それは紅葉が命じた言葉。王座から下知があるように蛇矛“天蛇王”が九頭の大水蛇が乱舞するように『悪役令嬢の国』の軍勢を飲み込んで組み伏せていく。
「倒さなくてよいわ。組み付いて動きを封じなさい」
そんな紅葉はいつのまにかチャイナドレスに早着替えをしていた。
え、カメラ外でそういうことされるの困るよ君ーっていうやつである。まあ、お茶の間的にカメラの外で早着替えしてくれる方が助かるので、オールオッケである。
チャイナドレスの紅葉が蛇矛を振るう度に、その動きに合わせるように大水蛇が動く。
それは乱舞そのもの。
けれど、その動きは『ホネホネの国』の軍勢をも巻き込んで吹き飛ばしていく。
「巻き添えなんで!? えー!?」
「こっちは味方なんですけどー!?」
そんな悲鳴が心地よい。いや、心地よいっていう顔をしているだけで実際には心苦しいし、悪事には気が咎めるのだが、こういうやり方が悪魔たちの寝返りを防ぐのだから仕方ない。
マジで仕方ない。
「しっかり組み付いて、相手を封じていなさい。こういうのがワルっぽくていいでしょう? 巻き添えにしてあげると言っているんです!」
ものすごい悪い顔で紅葉は凄む。
「はわわ……! わ、わかりました~!」
デビルスケルトンたちは紅葉の言葉にしびれながら、巻き添え確定の死兵として戦場に突入していく。
いや、別にほんとに死ぬほどのダメージを与えようというわけではないのだ。
蛇矛を振るった衝撃波でせいぜい派手に吹っ飛ぶだけである。めちゃつよな悪魔たちであるからこそできる外道戦法。
しかたない。
こっちのほうが悪魔たちの受けがいいのだ。
「さぁ。貴方達、次よ!」
冷ややかな眼差しに、ぞくぞくとホネっ子たちが震え上がる。
しびれているのだ。あんな冷たい目で見られたら、目覚めてはならぬものが目覚めてしまいそうに成るのだ。
この気持ち、もしかして……トゥンクってやつである。
まあ、これで寝返りが怒らないというのなら儲けものである。だが、それでも紅葉の中にある良心が痛む。
「悪事は気が咎めますね」
えー。
結構ノリノリであったように……という言葉は蛇矛によって操られた大水蛇の乱舞によって打ち消されて、空の彼方にぶっ飛ばされる。
悲しいかな。
このデビルキングワールドにおいて、それはお仕置きではなく、単にご褒美なのだ。
字面が最悪であるが、それでも紅葉はスケルトン神輿の玉座の上からワルの演舞と共に『悪役令嬢の国』の軍勢を『ホネホネの国』の軍勢もろともぶっ飛ばし続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
蛇かー…
蛇の悪魔か…
蛇か…珍味…イケる!
よし、敵は蛇の悪魔
勝ったら尻尾の先っぽ辺り切り落として、蒲焼にして食べさせてあげる!
私は食べないけど
おら、突撃しろ!!
あ、尻尾切り落とした蛇の残りの部分は瓶詰しといてね
後でお酒入れて蛇酒作ってみよう、蛇酒
ハブ酒じゃないけど、売れるんじゃない珍味として
私は飲まないけど
という訳で、この戦争に負けたら私たちはこーいう事をするんで
寝返るなら今のうちだよ
【光剣解放】起動
ほれほれ、串はいくらでもあるんだからさ!
蒲焼き放題だよ!
あ?ホネホネ君たちもしっかりやらないと
切り刻んでどっかの犬の悪魔用の骨にして流通させちゃうぞ!
さーいけさーいけ
食材ゲットで大儲けチャンスだぞー
猟兵たちはデビルキングワールドでワルのカリスマ性を発揮すべく、普段とは慣れぬ善悪観のもとに奮闘していた。
ある者は普段の己を隠し。ある者はいつか見たであろう悪役をなぞるように。そして、ある者は、ぶっちゃけるように立ち振る舞うのだ。
「蛇かー……蛇の悪魔か……」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は物憂げな赤い瞳で『悪役令嬢の国』の軍勢である『ブギーエカイユとその相棒たち』の姿を見つめていた。
彼らは皆、蛇の悪魔であり、その手には喋る武器を相棒として掲げている。
角を生やしたり、雷の力で雷撃を放ったりとデビルスケルトンたちと真っ向から激突し、ふっとばしたり、ぶっとばしたりを繰り返していた。
それでも死者が出ることはない。
何故なら、彼らは猟兵に匹敵するユーベルコード使い。はっきり言って、ハチャメチャに強い。派手にぶっ飛ばされていてもしばらくしたらむっくりと起き上がって、また戦いに加わるのだ。
はっきり言ってキリがない。
ん? 今キリがないって言った?
「蛇か……珍味……イケる!」
いや、地の文よりもやべーこと言った人がいた。そう、玲さんである。
その瞳ははっきり言って、さらなる商売チャンスに輝いていた。さっきまでの物憂げな瞳はなんであったのかと思うほどに爛々としていた。
「よし、敵は蛇の悪魔。勝ったら尻尾の先っぽ辺り切り落として、蒲焼きにして食べさせてあげる!」
そんな風にして玲はデビルスケルトンたちを鼓舞する。
だが、正直な話、デビルスケルトンたちはドン引きしていた。え、カニバリズムとかないわーって顔をしていた。
ホネっ子であるが、彼らにだって同じ悪魔という種族的な価値観がある。
いくら蛇の尻尾を切って蒲焼きだよ、美味しいよって言われても食欲減退なのである。
自分達の出汁を取ってラーメンとして売りさばくことを提案した玲に乗った連中とは思えぬ反応であった。
だが、玲は気にしない。というか、悪魔の価値観なんて知ったことではない。
だって、私は食べないけどね、と思いっきり予防線を張りつつ、デビルスケルトンたちをせっつかすのだ。
「おら、突撃しろ!! あ、尻尾切り落とした蛇の残りの部分は瓶詰めしといてね。後でお酒入れて蛇酒作ってみよう、蛇酒。ハブ酒じゃないけど、売れるんじゃない珍味として。私は飲まないけど」
まさかの全部まるっと『ブギーエカイユ』たち再利用計画を建てている所が恐ろしい。
正直に言って、みんなマジでやべーやつに関わってしまった感をデビルスケルトンたちは感じていた。
誰だよ、あの人に着いていこうと言ったやつ。
そんな責任逃れのなすりつけ合いが始まったところで玲が声高々に『悪役令嬢の国』の軍勢に向かって叫ぶ。
「というわけで、この戦争に負けたら私達はこーいうことするんで、寝返るなら今のうちだよ」
そう、彼女の目論見、算段はすでに彼らにも知れ渡っていた。
正直敵に回したくない人が、敵にいると。
そう、あの赤い瞳! 黒髪になびく一房の青い毛束。
そして、あの股、背、棚(?)。
「おまたせ! ほれほれ串はいくらでもあるんだからさ! 蒲焼き放題だよ!」
ついでのように玲のユーベルコードが輝き、光剣解放(セイバー・リリース)によって開放された光の剣が『悪役令嬢の国』の軍を散々に食いちぎるように打ち込まれ続ける。
あ、串って、もしかしてそういう……。
「そういこと! あ? ホネホネ君たちもしっかりやらないと、切り刻んでどっかの犬の悪魔用の骨にして流通させちゃうぞ!」
ヒェッ。
この人味方までも商材にするつもりなんだ……!? デビルスケルトンたちもブギーエカイユたちもガクブルである。
彼女のご機嫌を少しでも損ねてしまえば、次の商売の材料にされてしまうのは己達である。
彼らの瞳には悲哀があった。
同時に互いにとって何が最善であるかをも理解していた。それは玲さんを打倒すべき敵として結託するのではなく、魔王の中の魔王として崇め奉り、ご機嫌を損ねないようにもり立てていくことであった。
「さーいけさーいけ。食材ゲットで大儲けチャンスだぞー!」
あはは、とお気楽に笑う玲さん。
笑っているけど、その瞳が笑ってない。これはマジなやつやぞ! と悪魔たち震え上がり、彼女の道行きを邪魔せぬようにと、まるで海が割れるように戦場は、オブリビオンまでの道を作るのだった――!
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
(前章の幼稚園に送り込んでいた遠隔●操縦する低出力レーザーの妖精ロボ使い『セキュリティロボ対銀行強盗』ごっこで子供達と遊びつつ、その音声を一方通行で戦場で流し)
あちらの妖精ロボにも『アレ』が仕込まれています
『ホネホネの国』の皆様
『悪役令嬢の国』の皆様にご説明を
デビルキングになるんだ、等と…微笑ましいですね
未来ある子供達は慈しむべき宝
それがおおそれた悪事を出来ぬまま未来を閉ざされてしまう等…哀しいことです
そうなるかどうかは…貴方達の選択次第です
要求は一つ
我らが畜生以下の悪鬼外道の軍門に下り大将への道を開けて頂きましょう
…早くオブリビオンを倒して帰りたいですね…
懺悔室など利用したくなってきました…
それは長閑な光景であった。
幼子たちがきゃっきゃと笑い合い、楽しそうに遊具やおもちゃで遊ぶ光景。
元気よく走り回り、時には些細なことで泣いたりするけれど、それでも愛らしい光景であった。誰だって頬が下がるような、そんな微笑ましい光景。
これは自律式妖精型ロボ 遠隔操作攻撃モード(スティールフェアリーズ・アタックモード)というユーベルコードによって操作される偵察用妖精型ロボのカメラアイに納められ、送られてきていた光景であった。
「きゃっきゃ、デビルキングのおとーりだ!」
「わー! すごい! ボクらを家来にしてくださいー!」
とまあ、悪魔の子どもたちはごっこ遊びに興じていたり、子を持つ親であれば、いくらでも見ていられる映像であった。
だが、現実は違う。
彼らの親御さんたちは今、戦場にいる。
『悪役令嬢の国』と『ホネホネの国』の間にある荒原にて、両軍は激しくぶつかり合っている。
何故、そんな中、そんな平和な映像を一方的に見せられているかというと……
「あちらの妖精ロボにも『アレ』が仕込まれています」
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は抑揚のない声で『デビルスケルトン』たちに告げる。
あの映像の中で無邪気にはしゃいでいる子供らは、皆、彼らの子供であった。
そう、此処まで言えばわかるだろう。
脅されているのだ! わりとマジな感じで! ウォーマシンであるがゆえにトリテレイアもまた生真面目なる性分なのである。
悪役に徹しろと言われたのならば、そうするのが彼の流儀である。
とっても真面目なのである!
「『ホネホネの国』の皆様、『悪役令嬢の国』の皆様にご説明を」
しかも、それを己が伝えるのではなく、被害者である『ホネホネの国』の悪魔たちに敵側へと伝えろというのだ。
性根が善良たる悪魔たちにとって、これほど効く戦法もない。
「自分達は、仕方なく従わされているんだ……! すんごいあくどい方法で……!」
「すんごい悪どい方法……!」
なんか彼らちょっと喜んでいる気がしないでもないのは気のせいだろうか。いや、気の所為ではない。
彼らにとって、トリテレイアの脅迫方法は考えつかないような悪い手法であった。
今のトリテレイアは極悪非道なる悪逆の騎士であるが、同時にデビルキングワールドの悪魔たちにとっては憧れのワルである。
そんなワルに脅されて戦いに赴いている己達にデビルスケルトンたちは割とあっさりちょろく心酔していた。
「デビルキングになるんだ、等と……微笑ましいですね。未来ある子どもたちは慈しむべき宝。それがおおそれた悪事を出来ぬまま未来を閉ざされてしまうなど……悲しいことです」
それは言外に言うこと行かなければ……ボン! ……だぜ、と言っているようなものであった。
なんという外道! なんという非道! それでも血が流れているのか! お前のオイルは何色だー!
とまあ、そんなやり方のほうが受けがいいのである。
仕方ないのである。トリテレイアさんも断腸の思いで今演じているのだ。
「そうなるかどうかは……貴方達の選択次第です」
アイセンサーが揺らめくように輝く。
ごくりんこ。
きっと『悪役令嬢の国』の悪魔たちは生唾を飲み込んだだろう。これから自分達はどんなことを要求されてしまうのだろうと。
「要求は一つ。我らが畜生以下の悪鬼外道の軍門に下り、大将への道を開けて頂きましょう」
トリテレイアが要求した瞬間、即座に大軍勢が割れる。
かなり早かった。
なんか打ち合わせしてた? というくらい、あっさりとトリテレイアの前の道が開く。
その先にあるのは大将首であるオブリビオン『悪役令嬢・イレーヌ』の姿。
トリテレイアは己の弄した策が上手くはまったことを喜ぶべきであるのだが、その電脳に与えられる負荷、ストレスは多大なものであった。
きっと後にも先にも、彼がこれだけ弱音を吐きかけたことはなかったことだろう。
「……早くオブリビオンを倒して帰りたいですね……懺悔室など利用したくなってきました……」
懺悔するウォーマシン。
それはそれで見てみたい気もするのだが、それはそれとして、トリテレイアはそんな負荷を電脳が受けているということはおくびにも出さないで、割れた軍勢の道を悠々と歩く。
まだ駄目なのだ。
まだ悪役は続けないといけないのだ。そう自分に言い聞かせ、トリテレイアは悪逆の騎士らしく、ワルのオーラを無理矢理ひねり出しながら、全ての元凶、オブリビオンの元へと向かうのだった――!
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『悪役令嬢・イレーヌ』
|
POW : やっておしまいなさい!
戦闘力のない、レベル×1体の【取り巻き】を召喚する。応援や助言、技能「【精神攻撃】【物を隠す】【略奪】」を使った支援をしてくれる。
SPD : 自分がこの場にふさわしいと思っておいでかしら?
対象への質問と共に、【自分の背後】から【取り巻き】を召喚する。満足な答えを得るまで、取り巻きは対象を【あんまり痛くない攻撃か、冗談のような罵倒】で攻撃する。
WIZ : ちゃんと話を聞いていたかしら!?
【指さした指先】を向けた対象に、【眩しいけどあまり痛くない稲妻】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:ちーと
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ニャコ・ネネコ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
荒原にて激突した二つの悪魔の国。
『悪役令嬢の国』と『ホネホネの国』の両軍は時に猟兵にぶっ飛ばされ、時に猟兵の醸し出す圧倒的ワルのオーラの前にひれ伏した。
ついに猟兵達は長く苦しい悪役を演じるという役目を終えられそうであった。いや、一部、ノリノリの人もいたが、まあ大体はみんな苦しい思いをしながら、ここまでやってきていたのだ。
此処まで来て、オブリビオンを逃してしまうわけにはいかない。
「……え、駄目? 逃げてはだめ? なんでよ! なんか私の軍勢、みんなあっちに心酔してるんですけど!? なんでなんで!? 私のほうが悪そうじゃない!」
そんな感じでトンズラ決め込もうとしていた『悪役令嬢・イレーヌ』であったが、逃げられるわけがない。
だってそうだろう。
その泥棒風呂敷の中にはこれまで集めに集めたD(デビル)が満載なのだ。
イチから集めようという根性が『悪役令嬢』に在るわけもない。ついでにいうと、財力に対する執着も半端ない。
故に、よせばいいのに彼女はD(デビル)の詰まった大風呂敷を抱えて、身動きが取れなくなっていたのだ。
「ええい! もう! 仕方ないわね! 猟兵が何よ! オブリビオンだって生きているんだ友達なんだ、でしょ!」
手のひらを太陽にかざしてみれば。
いや、そんないい歌でごまかそうとしたって、そうは問屋が降ろさない。
この世界は美しくも残酷なる世界。
悪徳を美徳とするデビルキングワールドである。努力。友情。熱血。そういうのは、善悪が逆転しているが故にクソダセーのである!
だからこそ、今まで悪のカリスマを発揮していた『悪役令嬢・イレーヌ』は己の言葉によって、そのカリスマを失墜させた。
「なんでよー!? お友達って書いて下僕って読むでしょう!」
あ、そういうこと言う?
ならば、容赦など要らない。
猟兵の皆さん、やっちゃってくださーい!
茜・皐月
『悪役令嬢と言うのなら、私がお相手致しましょう』
ぶわり、姿も変わって娘人格が宙から見下す。吊り目がちの瑠璃色に宿るは嘲り。くすくすくす。
『あらあらあら、おかわいそうに…あんなにたくさんお仲間がいたはずなのに、今では独りぼっちですわね?』
悪役令嬢の末路といえば破滅。おかわいそうに…くすくすくすくす。
並行して放つUCで、それはそれは素敵な悪夢を魅せるのです。
ほぅらごらん、たくさんの人が貴女を嘲り指差し、けして手を差し伸べることはない。
断罪の時に救いなどないのである。
『ねぇ、ご存知?大抵の末路は、私財を取り上げられて身一つで国外追放…いただきますわ、そのD』
無数の悪夢の手に大風呂敷を奪われるといい。
『悪役令嬢』。それはいわば敵役というやつである。
物語には主人公がいて、ヒーローがいて、ヒロインがいるように、敵役もまた必要な存在である。
『悪役令嬢』とは即ち、それである。
破滅するために存在する者。確かに恵まれた財力、人脈、はたまた才能があるのだろう。
けれど、その上にあぐらをかき、他者を貶めることばかりをするから叩き落されるのだ。奈落へ。
ここはデビルキングワールド。
悪徳が美徳の世界。
オブリビオン『悪役令嬢・イレーヌ』の生き方は、良い子の種族である悪魔たちにとって刺激的で、それでいて憧れの存在であったことだろう。
『デビルキング法』に則った悪役。
欲望を欲望のままに開放し、己のためだけにひた走る力は、悪魔たちにはなかったものだ。だから憧れる
『悪役令嬢というのなら、私がお相手いたしましょう』
茜・皐月(多重人格者のウィザード・f05517)の姿が変わる。
その髪は茜色に染まり、その瞳はユーベルコードに輝く。
「あ、あんたたちね! 私の邪魔をしたのは! 私の『カタストロフ級儀式魔術』があれば、こんな世界なんて簡単に変えてやれるのにぃ! 何よ、悪役令嬢っていうだけで、そんな倒して当然みたいな顔しちゃって!」
『悪役令嬢・イレーヌ』が憤慨し、大風呂敷に溜め込んだD(デビル)の頂上で皐月を指差す。
彼女の背後から取り巻きの影が現れ、皐月を目指すが彼女は未だ宙に浮遊したままである。
ツリ目がちの瑠璃色の瞳に宿るのは嘲りであった。
どれだけ取り巻きを増やそうとも、もはや彼女の周囲には彼女に味方する悪魔の姿はないのだ。
くすくすくす、と彼女の笑い声が静かに響く。
『あらあらあら、おかわいそうに……あんなにたくさんお仲間がいたはずなのに、今は一人ぼっちですわね?』
「な、なによ! そんなこといって。いいじゃない、取り巻きがいるんだから! あんただって一人じゃないの!」
『悪役令嬢イレーヌ』の言葉に、皐月は面白そうに笑っていた。
『悪役令嬢の末路と言えば破滅。おかわいそうに……くすくすくすくす』
その瑠璃色の瞳がユーベルコードに輝く。
それは幻想悪夢(イリュージョン・ナイトメア)。
彼女の放つ幻影は視覚や聴覚、更には味覚や嗅覚に作用し、触覚や心にさえ幻覚を見せていく。
『ほぅらごらん、たくさんの人が貴女を嘲り指差し、決して手を差し伸べることはない。断罪の時に救いなどないの』
皐月の放ったユーベルコードによって見せられる幻影は、『悪役令嬢・イレーヌ』の五感全てに訴えてくる。
「い、いや! なんでそんなひどいこと言うの! いいじゃない、悪役令嬢が夢見たって! ヒロインになったっていいじゃないのー!」
そんな風に叫ぶ『悪役令嬢・イレーヌ』。
けれど、悲しいかな。彼女の訴えは誰にも届くことはない。それは皐月が見せる幻影にしか過ぎないのだ。
あ、ぺったんことか、洗濯板とか、そういうたぐいの罵りばっかりなので、やーい負けヒロインー! とかそれ以上に幻影は見てないので、そんなひどくないですはい。
けれど、皐月はくすくすくすくすと笑う。
これがどれだけ幻影であったとしても、『悪役令嬢・イレーヌ』の心はズタボロであろう。
『ねぇ、ご存知? 大抵の末路は、私財を取り上げられて身一つで国外追放……』
そう、極刑にならぬだけマシというものである。
もしかしたのならば、『悪役令嬢・イレーヌ』は、そんなバットエンディングを変えたくて、D(デビル)をかき集め『カタストロフ級儀式魔術』を求めたのかも知れないが、それが世界を破壊するというのならば、皐月は止めなければならない。
『……いただきますわ、そのD』
その言葉と同時に皐月の見せる幻影たちが『悪役令嬢・イレーヌ』から無数の悪夢の手によって大風呂敷を奪われるという幻影を見せつけ、その心を散々に砕くのだ。
「いーやー! 私のお金ー!!」
いや、貴女のじゃないでしょうに、と皐月は、此処までしても尚D(デビル)に執着を見せる『悪役令嬢・イレーヌ』の執念にため息を付きながら、彼女のバットエンディングを幻視するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
苦しい戦いだった…
慣れない悪役、心にも無い言葉…
だが全ては平和の為!
そう、私は愛と!正義と!友情第一の猟兵!
だけど私にも慈悲の心はあるよ…
そのDを置いて逃げて大人しくするなら、首と胴体を分離させるだけで許してあげるからさ…
よし、建前終わり
悪役令嬢といえば追放やなんか剣でザクーって斬られて終わるやつ
それじゃあ面白くない
新時代の悪役令嬢はもっと派手にやっつけられなけりゃ!
【アームデバイス起動】
圧縮空間よりデバイス召喚
取り巻きはむんずと彼方へ投げ捨てイレーヌを確保
さあ、追放(物理)の時間だよ
しっかり掴んで振り回して…ぶん投げる
そのまま逃げられたら困るから、紐で結んで手繰り寄せるね…
これが追放ものか〜
『月夜・玲(頂の探究者・f01605)は苦しんでいた。
葛藤を抱えていた。
その胸のうちは荒れ狂う波間のように散々に。
けれどもやらなければならない。これが猟兵の戦いである。世界の悲鳴に応え、オブリビオンを討つ。
それが彼女に課せられた使命であり、世界に選ばれた戦士の宿命なのだ。
デビルキングワールド。
悪徳こそが美徳の世界。逆転した善悪観の中で彼女の中にある善性が泣いていた。
慣れない悪役、心にもない言葉……。
一般悪魔たちに告げる言葉の全てが偽りであったけれど、それは紛れもなく彼らを救うため。
オブリビオン『悪役令嬢・イレーヌ』が不当に集めたD(デビル)によって『カタストロフ級儀式魔術』を行使するのを阻止するためであった。
敢えて玲は、己の一身に彼らの誹りを、恐れを、恐怖を引き受けたのだ。それは尊い献身であった。
だが、全ては平和の為!
そう、私は愛と! 正義と! 友情第一の猟兵!』
あ、ここまでモノローグです。
台本通りに呼んだつもりなので、若干嘘っぽいなぁとか、そういうのはないです。玲さんは裏表のない素敵な人です。
そんなやり取りがあったとかなかったとかは置いておくとしよう。
今まさにオブリビオン『悪役令嬢・イレーヌ』は猟兵に寄る幻影によって、その心をひどく痛めつけられていた。
茫然自失の体であったが、それでも意識を保ち、叫ぶのだ。
「――って、今のモノローグだったの!? むしろ、ひどくない!? なんであんなのに私の人望が全部かっさらわれるわけ!?」
そう叫びたくなるのも無理なからぬことである。
玲のこれまでの振る舞いは正に魔王の中の魔王。わりとマジで相手取っては駄目なタイプの魔王である。
そんな彼女に一般悪魔たちが惹かれるのも当然と言える。
だって、善悪逆転しているからね。
「だけど私にも慈悲の心はあるよ……そのDを置いて逃げておとなしくするなら、首と胴を分離させるだけで許してあげるからさ……」
いや、かなり怖いこと言ってるー!? と悪魔たちがしびれにしびれまくっている。俺たちにできないことをさらっと言ってのける! そこにシビれるあこがれるゥ!
「よし、建前終わり」
え!?
今の建前だったの!? と『悪役令嬢・イレーヌ』が顔面蒼白になる。今の建前なのかどうかという審議は別として、かなり無茶なことを言われた。
「悪役令嬢と言えば、追放やなんか剣でザクーって切られて終わるやつ。それじゃあ面白くない。新時代の悪役令嬢はもっと派手にやっつけられなけりゃ!」
まあ、破滅フラグを回避するためだけに人たらしになってしまう悪役令嬢もいるぐらいである。
確かにってうなずける部分もあるけど、玲さん。
もしかして……。
「イエス! さあ、追放かっこ物理の時間だよ」
限定的に展開された、アームデバイスが起動(アームデバイスキドウ)し、玲の背後に現れるは巨大なる豪腕。
「ひぇっ! あんたまさか!」
そのまさかである。
『悪役令嬢・イレーヌ』は抵抗すら許されるずに、むんずと掴まれて彼方へと投げ飛ばされる。
しかも、しっかりと掴んでぐるんぐるんと振り回してからのぶん投げである。
サイクロン投法もびっくりである。
悲鳴と共に『悪役令嬢・イレーヌ』が吹き飛んでいく。
だが、彼女は頭の中でこれは逃げるチャンスでは、と思っていたのだ。猟兵は厄介であるが、距離さえ稼げば再起は可能なのである。
「なら、このまま勢いに乗って、逃げ――げふっ!?」
ぐん! と加速したまま飛んでいた『悪役令嬢・イレーヌ』の身体が空中で、まるで何かに引っ張られるように止まる。
いや、何かに引っ張られるっていうか、物理的に紐で彼女はくくりつけられているのだ。
「キャッチアンドリリース。そのまま逃げられても困るからね。紐で縛っといたよ」
いつのまに!
アームデバイスが『悪役令嬢・イレーヌ』を引き寄せ、さらにまたぐるんぐるんとサイクロン掃除機もびっくりな勢いで回転させる。
「いや、いやぁ~! もうお星さまになるのいや~!」
だが、そんな悲鳴を聞く玲さんではない。
容赦なく第二投目が繰り出され、再び『悪役令嬢・イレーヌ』は空の彼方へと飛び、再び引き寄せられる。
それを何度も繰り返して、玲の額には汗が光っていた。
「これが追放ものか~」
いい汗かいたし、飽きたと言わんばかりに玲は引き戻す途中で紐を離して伸びをする。
そんな彼女の背後で『悪役令嬢・イレーヌ』はぐるぐると目を回しながら、大地に激突するのだった――。
大成功
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ジフテリア・クレステッド
質問には質問で返そう。『オブリビオンは猟兵以上の悪なのか。』
あなたはオブリビオン。存在そのものが悪。だけど、それだけだよ。
悪の存在だから世界を滅ぼす。当たり前のことだよ。いや、寧ろ自分の存在意義を果たしている分、ただのいい子ちゃんだ。
だけど私たち猟兵は違う…世界の敵に対抗する正義の使者が本分でありながらも、この2つの国で行ったような悪事だって易易とこなす。芯が正義でも悪逆を為すことができる真の悪なんだよ。
悪魔たちよ!聞くがいい!猟兵こそがこの世界を蝕む最悪の毒にして悪!あなたたちの種を守る究極悪!救世主であると知るがいい!!
(これで今後もこの世界での猟兵の地位は安泰…やるなら最後まで、だよ。)
オブリビオン『悪役令嬢・イレーヌ』が大地に激突し倒れ伏す。
その姿はすでに這々の体であったが、それでも未だに逃げることを諦めてはいなかった。
なぜなら、彼女は諦めきれていなかった。
大風呂敷を広げて包んでも尚有り余るD(デビル)。これだけの数があれば、彼女の望む『カタストロフ級儀式魔術』だって執り行うことが出来る。
そうすれば、彼女が悪役令嬢と呼ばれることのない世界が生み出せる。
悪役令嬢という名に縛られる人生などまっぴらごめんなのである。
いわば、彼女は悪役令嬢という意義すらも、この世界から消し去ろうとしているのだ。
「あんた達猟兵にわかってたまるものですか! 私がどれだけひどい目にあってきたのかを! どれだけがんばってきたのかを! だってそうでしょう! 私ばっかりがバットエンディングしかないなんてありえないでしょう!」
それは悪だ。
在ってはならぬ悪だ。
『悪役令嬢・イレーヌ』は叫ぶように、猟兵達に問いかける。
その問いかけによって彼女の影から次々と取り巻きが出現し、すでに猟兵達によって籠絡された『悪役令嬢の国』の悪魔たちの代わりを務めるように戦場に駆け出す。
「質問には質問で返そう。『オブリビオンは猟兵以上の悪なのか』」
その問いかけは、ジフテリア・クレステッド(ビリオン・マウスユニット・f24668)のものであった。
彼女の体にある偽神細胞が活性化していく。
ユーベルコードの輝きであり、救世機能一時解放・世界毒化世界奪還計画再始動(セイヴァーリリース・ワールドブリンガーリスタート)を告げるものでもあった。
生み出される頑固な怪物。
それは満足な答えを得るまで止まらぬ怪物である。
「あなたはオブリビオン。存在其の物が悪。だけど、それだけだよ。悪の存在だから世界を滅ぼす。当たり前のことだよ。いや、むしろ、自分の存在意義を果たしている分、ただのいい子ちゃんだ」
怪物が取り巻きたちを食い荒らすように世界そのものをオブリビオンのみを殺す毒に変えて霧散させていく。
それは環境すらも変えていくユーベルコードであった。
オブリビオンが悪であるのならばこそ、世界は悲鳴を上げる。
猟兵はその悲鳴に応える戦士である。これがもしも、世界を蝕む毒であるというのならば、世界の敵にこそ効く毒素。
正しく世界の奪還であった。
「何がいい子ちゃんよ! 私は私の欲望のままに振る舞う! 私がやりたいことを! バッドエンディングを回避したいだけよ! それの何が悪いっていうの!」
『悪役令嬢・イレーヌ』が叫ぶ。
けれど、ジフテリアは否定する。
それは己の求めた答えではないと否定する。それは彼女にとって霞がかかったような答えでしかない。
「お前たちの蒙昧な答えに、私は決して満足しない」
己の体の中で偽神細胞が活性化していく。止まらない。止められない。どれだけ『悪役令嬢・イレーヌ』が生み出す取り巻き達があふれようとも、ジフテリアのユーベルコードが放つ毒素は、彼女たちを蝕んでいくのだ。
「だけど私達猟兵は違う……世界の敵に対抗する正義の使者が本分でありながらも、この二つの国で行ったような悪事だて易易とこなす。芯が正義でも悪逆を為すことのできる真の悪なんだよ」
だからこそ、ジフテリアは己の力を開放する。
毒素ばかりを撒き散らす自身であっても、為すことの出来ることが在る。それは生命の意味であったのかも知れないし、救世への第一歩であったのかもしれない。
「悪魔たちよ! 聞くがいい! 猟兵こそがこの世界を蝕む最悪の毒にして悪! 貴方達の種を護る究極悪! 救世主であると知るがいい!!」
噴出する毒素が『悪役令嬢・イレーヌ』だけに作用し、その毒で持って彼女を蝕む。
これでいいのだ。
言っていることは荒唐無稽であったかもしれない。これが真にデビルキングワールドの悪魔たち、その種を護ることになるかはわからない。
けれど、それでもジフテリアは己の心に誓っていた。
悪逆を語るのであれば、最後までである。
「そして、オブリビオンよ。これが私の持つ毒素。世界を救う、世界を取り戻すための毒。その毒が貴方を討つと知れ!」
ジフテリアは最後まで己の為すべきことを為す。
絶滅を回避するために制定されたのが『デビルキング法』であるというのならば、それを踏まえた上で猟兵のこの世界での地位を決定づけさせる。
悪徳こそが美徳。
ならばこそ、ジフテリアは救世主となろう。
世界を蝕むことなく、世界を取り戻す毒となろう。
「それを為すために私は在るのだから――!」
その毒は、オブリビオンだけを蝕む。
ここに再始動した世界奪還計画は、さらなる一歩を踏み出すことによって、ジフテリアと猟兵達に、この世界での礎となるのだった――。
大成功
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サージェ・ライト
お呼びじゃなくても参じましょう
私はクノイチ、世に潜み、このタイミングを待っていたのです!!!
…うそですごめんなさい道に迷ってましたっ!(八つ当たり『漆黒竜ノ牙』投擲!
最後の最後に現れて稼ぎを掠め取る!
さすがクノイチ!私ワルいですね!かっこいいですね!
そんなわけで【電光石火】でその風呂敷をずばーっと切り裂きます
溢れたDは落とし物
すなわち拾った私に幾らか所有権が発生します!
むしろこのままネコババします!
ふっ、なんて完璧なクノイチムーブ
ツッコミすら許しません!
む、胸は今関係ないし、潜めてるもん?!
おのれ、気づいてはいけない場所に気付きましたね?
八つ当たり【電光石火】をくらえー!
※アドリブ連携OK
ワルってなんだろう。
デビルキングワールドにおいて哲学であった。
いや、ちょっと意味分かんないなって思われるかも知れないが、良い子の種族である悪魔たちにとっては死活問題でもあった。
かつて善良であるがゆえに絶滅仕掛けた経緯を持つ彼らにとって、ワルとは即ち良いことである。
悪いことをすればするどに良しとされる善悪観。
されど根本的に善良な彼らはどうにもワルには成りきれない。故にオブリビオンの悪しき欲求を素直に表現することに憧れを持つのだ。
「お呼びじゃなくても参じましょう。私はクノイチ、世に潜み、このタイミングを待っていたのです!!!」
サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)はまっていた。
そう、猟兵達によってオブリビオンが消耗させられていくところを。
最後の最後に現れて稼ぎをかすめ取る。
流石クノイチ! と言われたかったのだ。
だが、残念ながら本当はそうではない。
単純に道に迷っていたのだ。
天の声にはお見通しである。そういうの天ちゃんよくないって思うな。この声が届いているかわからないけれど、それでもサージェはギクっと何故か肩を震わせた。
「……うそですごめんなさい道に迷ってました!」
とかいいながらもちゃっかり『悪役令嬢・イレーヌ』に向かってクナイを投げつける所は流石というべきか。汚い、流石クノイチ汚い!
「道に迷ってたんなら、そのまま迷っておきなさいよ!? そしてなんでクナイ投げつけるの!?」
当たったら痛いでしょうが! と『悪役令嬢・イレーヌ』が叫ぶ。
いや、まあ、うん。確かに痛いだろうが、突っ込むところが違うというか。微妙にサージェと『悪役令嬢・イレーヌ』の対話は平行線であった。
「私ワルいですからね! かっこいいですから! そんなわけで動くこと雷霆の如し! とりゃー!」
手にしたクナイで電光石火(イカズチノゴトキスルドイザンゲキ)の如く凄まじい速度で『悪役令嬢・イレーヌ』が大事にしがみついていたD(デビル)のたんまり貯め込まれた大風呂敷を切り裂いていく。
溢れるD(デビル)。
それはきらきらと輝く欲望の証。バッドエンディングを回避するための『カタストロフ級儀式魔術』を行うために『悪役令嬢・イレーヌ』がかき集めていたD(デビル)が溢れるように飛び散っていく。
「あー! 私のD(デビル)がぁー!? まってまって、やめてやめてー!」
だが断る。
そんな風にしてサージェは大風呂敷を一切の容赦なく切り裂いていく。
「溢れたD(デビル)は落とし物。即ち、拾った私にいくらかの所有権が発生します! むしろこのままネコババします!」
う、ワルすぎる。
やってることはネコババだけど悪どい。道端に散らばった小銭を踏んづけて所有権を主張するようなものである。
周囲の一般悪魔たちも引いていた。
正直、ちょっとワルとは……と考えるほどに引いていた。だが、サージェは気にしていない。
むしろ、己の完璧なるクノイチムーヴに満足さえしていたのだ。
「ツッコミすら許しません!」
見よ、この電光石火のネコババ術を! ものすごい勢いでD(デビル)を集めていくサージェ。尚、彼女が集めたD(デビル)は後で没収後に交番に届けられました。
「なによなによ、ちょっと胸が大きいくらいで! そんなに見せびらかして、潜むもくそもないでしょー!」
やけっぱちの罵倒が『悪役令嬢・イレーヌ』から飛ぶ。
だってそうだろう。スタイル良し。顔よし。そんなサージェが潜むとか土台無理な話である。
むしろ、アイドルとかやったほうがよくない? って思わないでもない。
「む、胸は今関係ないし、潜めてるもん?!」
「いや、無理でしょ。その胸で潜むのは無理でしょ。たゆんたゆんしてるじゃない」
ぐさりと、刺さる言葉。
人によっては誇らしい気分になるかもしれないけれど、サージェにとってはそうではない。
なにがたゆんたゆんじゃい!
そんな気分である。こっちは必死にクノイチしているというのに!
「おのれ、気づいてはいけない場所に気づきましたね? 八つ当たりのユーベルコードをくらえー!」
おそらくサージェ至上、もっともろくでもない理由でユーベルコードを発現させた瞬間であったかもしれない。
自分ではっきり八つ当たりって言ったしね。
放たれた電光石火の如き輝き放つサージェのクナイが『悪役令嬢・イレーヌ』を撃ち、何故か天高く吹き飛ばされ顔面から大地に激突する。
なんか今劇画調の背景になった気がしないでもないが、気の所為である。
著作権とか色々あるのである。
鈍い音と、たゆんたゆんとした音を立てながら、サージェはネコババしたD(デビル)を抱えて、後にシリカさんに引っかかれて交番に届け出ることになるのだけれど、それはまた別のお話である――。
大成功
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フィア・シュヴァルツ
「くっ、悪を成さねばならんとは、心優しい我にとって、なんてハードルの高い試練だ……」
ほら、胸が大きくない人間は心が広くて優しいと言うだろう?(注:言いません
まあ、ここは悪人を演じ、オブリビオンを滅するとするか。
いいか、あくまで悪人の演技だからな、演技。
「ククク、悪役令嬢とやらもここまでのようだな。
これからは真の悪役令嬢である我の時代よ!
おとなしくDを置いていくのだな!」
なお、Dを置いていっても無事に帰すとは言っていない。
問答無用で【ミゼリコルディア・スパーダ】を放つぞ。
「悪役令嬢のお約束、『上履きにカッターの刃』『ヒロインの服をカッターで切り刻む』を再現する魔術を食らうが良い!」
胸囲の格差社会とはよく言ったものである。
いや、別に今それに言及する必要なんて無いのではないかと思われるだろうが、持たざる者にとってはのっぴきならぬ事情である。
それは『悪役令嬢・イレーヌ』にとっても同様であった。
いや、まだ成長過程だし? と余裕ぶっていられる分彼女の方は幾分マシであったかもしれない。
だが、年齢不詳。不老不死となったフィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)にとってはのっぴきならぬ事情であった。
「くっ、悪を為さねばならんとは、心優しい我にとって、なんてハードルの高い試練だ……」
くっ! と歯噛みするようにフィアは心を痛めていた。
いやー、本当にござるか~? と尋ねたくなる気持ちがないでもないけれど、フィアさんがそう言っているからそうなのである。
きっと表面上は、いやそんなこと思ってないでしょ、とか豊かな膨らみに対する嫉妬じゃないのかなとか、そんなことを言ってはいけない。
お約束というやつなのである。
「ほら、胸が大きくない人間は心が広くて優しいと言うだろう?」
なら『悪役令嬢・イレーヌ』もそうじゃないんですかね? と一般悪魔たちが若干引き気味で行ってくるが、フィアは聞こえないふりをした。
都合の悪いことは聞こえない仕様なのである。
「とりま、善人のフリをするのも楽じゃないのだ。というわけで、開幕初手ミゼリコルディア・スパーダ!」
いきなりである。
前置きもクソもないのである。
飛翔する幾何学模様を描く無数の魔法剣の群れ。
それはあまりにも膨大な数であり、『悪役令嬢・イレーヌ』を含め、みなあんぐりと口を開けてほうけていた。
一般悪魔でさえ猟兵に匹敵するユーベルコード使いである。
それでもまさか、前置きなしでユーベルコードをぶっぱするなんて誰も思わないのである。
「ククク、悪役令嬢とやらもここまでのようだな。これからは真の悪役令嬢である我の時代よ! おとなしくDを置いていくのだな!」
もはや脅しである。
無数の魔法剣の切っ先を見せながら、フィアは宣言する。
その姿は正に悪役そのもの。
令嬢っていうか、もう悪の幹部とか親玉とか、そういう役どころだよねって一般悪魔たちは思ったけれど、口にはしなかった。
口にした瞬間、魔法剣が飛んできてずんばらりんってやられることは明らかであった。
「いやよ! なんで私のD(デビル)を――」
『悪役令嬢・イレーヌ』が言葉を紡いだ瞬間、それを断ち切るように放たれる魔法剣。どすどすっと重たい音を立ててD(デビル)を包んだ大風呂敷に突き立てられ、D(デビル)が溢れていく。
「なお、Dを置いていっても無事に帰すとは言っていない。あと、悪役令嬢のお約束、『上履きにカッターの刃』、『ヒロインの服をカッターで切り刻む』を再現する魔術を食らうがいい!」
え、まさか。
その魔法剣ってそのために出したの!?
一般悪魔たちが慄く。なんで服刻むの!? そんなひどいことしないで! って思ったが、黙ってた。
だって、なんか下手なこといったら巻き添え食いそうな雰囲気であったからだ。
「問答無用が過ぎない!?」
「やかましい。こっちは慣れぬ演技で忙しい」
フィアは特に大変な思いをしているようには思えないが、ノリノリで魔法剣を操作して、『悪役令嬢・イレーヌ』の服を切り裂いたりに忙しいのだ。
いや、決して、なんか演技忘れてない? とかそんなことを思ってはいけない。
だって、演技だから。あくまで悪人の演技だから。演技。
だから、楽しんでなんかいないのである――!
大成功
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シン・フォーネウス
何言ってやがんだ、おのずとバッドエンドっつーワルワルな結末を迎えられるとか悪魔たちが羨んでんぞお前。
相手を見下して高笑いするわ、ワルなことしたのがバレてギロチンで死刑にされるわ、後ろから暗殺者に襲われるわ。
お前どんだけ恵まれてんだよ!
くれ!その自然発生するワルワルな行為とその結末、1%でも良いから俺にくれ!
……でもダメだわ。俺男だから貰えねぇわ。もし俺がやったらただの不良ワルだからな。令嬢までいけねぇのが残念だ。
UC発動、この際だから痛ぇのはナシにする。お前の周囲に存在する取り巻き、認知情報からまとめて抹消してやる。
この場にふさわしいも何も、ブーメランだぞお前。
(アドリブ共闘等歓迎)
オブリビオン『悪役令嬢・イレーヌ』を悪役令嬢たらしめる豪奢な衣服はこれまで猟兵たちの攻撃を受けてボロボロであった。
見るも無残な姿であったが、それでも生来の気高さ、プライドの高さは喪われていなかった。
「うぅ……こんなはずじゃなかったのにぃ! なんでなんで私のことばっかり邪魔するの!? 私はちょっと『カタストロフ級儀式魔術』でバットエンディングを回避して、ヒロインの座を奪い返して、くそちょろ人生を送りたいだけなのに!」
正直、ちょっと可愛そうだなーって思うのも仕方のないことである。
一般悪魔たちもひどいことをするのはかっけーことと、『デビルキング法』によって定められているから、しびれこそするが、性根の善良さがついつい顔を出してしまいそうになる。
でも、ちょっと言ってることがあれである。
バッドエンディング回避したいという気持ちはわからないでもないが、そのためにちょっくら世界を壊しますって言われて承服する者はいない。
だからこそ、シン・フォーネウス(水竜の従者・f31485)は声を大にして言うのだ。
「何言ってやがんだ、おのずとバットエンドっつーワルワルな結末を迎えられるとか、悪魔たちが羨んでんぞお前」
いや、確かにワルの権化的な最後であるが、ちょっぴり良い子の悪魔たちの心が傷まないでもないんだけど、まあ、正直今の現状羨ましいよね。
だって、確実にワルだし。
必ずバットエンディング直行だし。
「相手を見下して高笑いするわ、ワルなことしたのがバレてギロチンで死刑にされるわ、後ろから暗殺者に襲われるわ。お前どんだけ恵まれてんだよ! くれ! その自然発生するワルワルな行為とその血圧、1%でいいから俺にくれ!」
シンの絶叫は心の叫びであった。
死の悪魔である彼であるが、今はどっちかっていうと奉仕の悪魔である。
わりと切実な願いであった。
彼も悪魔である以上、その性根は善良であるのだろう。だからこそ、踏み込めない。踏み抜くべきところで踏み抜くことができない。
だからこそ、シンは欲したのだ。
オブリビオンが持つ素直な欲望。その欲望に向かってひた走る悪を。けれど、悲しいかな……。
「……でもダメだわ。俺男だから貰えねぇわ。もし俺がやったらただの不良ワルだからな。令嬢までいけねぇのが残念だ」
まあ、いいとこ、大雨が降りしきる中、棄てられている子犬に傘をあげて自分はズム濡れで帰るムーブとかしかできない。
いや、それワル不良じゃなくって、不良がときおり見せる優しさにトゥンク……ってなるやつ!
全然悪くない! どっちかっていうと、ヒロインとヒーローで言うところのヒーローよりか、もしくは三角関係になるライバル役のやつ!
どちらにせよ、シンはワルには慣れない運命である。
もう色々諦めるようにシンはユーベルコードに瞳を輝かせる。
「現と幻は曖昧になる。俺の力はそういうワルな能力なんだぜ?」
いや、この際だから痛いのはナシにするって言ってる時点でかなり、ワルに説得力ないのであるが、気にしたら負けであろう。
「な、なによ、これ! なんで私のユーベルコードで生み出した取り巻きたちが……!」
そう、『悪役令嬢・イレーヌ』の認知をまとめて抹消する。
彼女に味方するはずの取り巻きたちの姿はない。
「幻視痛(ファントム・ペイン)。それが俺のユーベルコード。お前はもうお前の取り巻きすら認知することはない」
シンのユーベルコードは確かに痛みを伴うものではなかった。
けれど、『悪役令嬢・イレーヌ』にとってはそうではない。
彼女にとって取り巻きとは即ち、己の力の象徴である。『悪役令嬢の国』に君臨する者として、相応しいのは取り巻きの数だ。
それが触れば増えるほどに、己の『悪役令嬢』としての格が上がっていく。
皮肉なことである。
彼女が求めたバットエンディング回避のための『カタストロフ級儀式魔術』を為すためには、己の『悪役令嬢』としての格が必要であるなんて。
「ま、確かにお前には相応しい場かもしれないが……ブーメランだぞお前」
シンの言葉に『悪役令嬢・イレーヌ』はがっくり膝をつく。
正直、可愛そうだなーとか、自分が仕えている主を思い出させられて暗澹たる気持ちになりつつも、悪魔特有のお人好し体質で、どうにも放ってはおけないのだ。
「ま、うちの主よりは幾分マシじゃねーの? って、聞いてはいないか」
やれやれ、とシンは項垂れる『悪役令嬢・イレーヌ』を背に、再び己の主の自堕落ぶりをどう更生しようかと頭を悩ませるのだった――。
大成功
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トリテレイア・ゼロナイン
(悪役っぽくUCをブンブンしながら)
(●世界知識)
主人公に立ち塞がるモノは悪役令嬢だけではありません
宮廷闘争など児戯とばかりの悪意と悲嘆の坩堝
主役も悪役も攻略対象も等しく死んでゆく選択肢を間違えた末の戦乱バットエンドですとか
そして華やかな騎士達も歴史を少し紐解けば血と闘争と乱暴狼藉の地金が剥き出しの地獄絵図
極めつけは私の種族は『ウォー』マシンです
貴女が辿る結末の最悪の一つを司るのに相応しい身かと
(これまでの行為で自責思考が悪化)
そんなハードな展開、この世界には無かった?
……
取り巻きの精神攻撃など効きません
…効きませんったら!
カタストロフを企んだ貴女には骸の海への強制送還の刑です!
(逆ギレ)
「主人公に立ちふさがるモノは悪役令嬢だけではありません」
トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、その手に拘束鉄爪内蔵式対装甲破砕鉄球(ワイヤード・ジェット・モーニングスター)を持ち、ブンブンと風切り音を立てながらオブリビオン『悪役令嬢・イレーヌ』へと迫っていた。
もう悪役すぎる姿に一般悪魔たちは心酔するように道を開けるばかりであるが、トリテレイア自身は、電脳に負荷がかかっていることを自覚していた。
機械じかけの騎士であったとしても、やはり電脳に対する負荷というのは想像を絶するものであったことだろう。
なまじ炉心に騎士道精神が燃えているが故に、トリテレイアはなんとも言えない気分で言葉を紡いでいる。
なにせ、今頑強な鉄球の繋がれたワイヤーを持つ自分自身の姿は己が思い描く理想の騎士からは程遠く、些か蛮族じみている。
まあ、銃火器よりかは騎士としての格好、体面はあるかもしれないが、一般悪魔たちのきらきらした羨望の眼差しを受けては、そうも思えないのである。
気を取り直してトリテレイアは言葉を紡ぐ。
オブリビオン『悪役令嬢・イレーヌ』は猟兵たちの攻撃、ついでに精神的なダメージによってうなだれているが、容赦はできないのである。
「宮廷闘争など児戯とばかりに悪意と悲嘆の坩堝。主役も悪役も攻略対象も等しく死んでゆく選択肢を間違えた末の戦乱バットエンドですとか」
いや、その知識何処の世界の知識なのと問いかけたくなるが、これ以上トリテレイアの電脳の負荷をかけることはやめておこう。
多分どこかの世界の知識を解凍した結果なのだろうけれど……多分、UDCアースかサクラミラージュ、もしくはキマイラフューチャー。
余計な詮索はナシにしておいて、トリテレイアは一歩また足を踏み出す。
「そして華やかな騎士たちも歴史を少し紐解けば血と闘争と乱暴狼藉の地金がむき出しの地獄絵図」
それは華やかなり世界の裏側であったことだろう。
知らぬわけではない。けれど、それもまた事実である。影が色濃くなればなるほどに光は輝きを増すのだから。
「極めつけは私の種族は『ウォー』マシンです。貴女がたどる結末の最悪の一つを司るのに相応しい身かと」
自分で行っておいて何であるが、トリテレイアは自責の念がさらに己の電脳に負荷を掛けることを自覚していた。
ものすごくストレスなのである!
清廉なる真白き騎士であるとは己の口からは言えない。言えないけれど、それとこれとは話は別なのである。
己が選んで悪役として演じているにも関わらず負荷が掛かっているのは仕方ない。
けれど、もうどうにも限界なのである。
「っていうか、そんなハードなバッドエンディングなかったんですけど!?」
ここで漸く『悪役令嬢・イレーヌ』はヤケクソになって叫んだ。
もう正直、心も体もズタボロである。
いつぽっきり折れても仕方ないぐらいである。けれど、それでも彼女は叫んだ。
「いくらなんでも酷すぎない!? 取り巻きも取り上げられるし、集めたD(デビル)はネコババされちゃうし、もう踏んだり蹴ったりもいいとすぎるんですけど! これ以上のバットエンディングがないってくらいに!」
もはやそれは、自業自得だった気もするのだが。
だがしかし。
やめろ、『悪役令嬢・イレーヌ』。その言葉はトリテレイアに効く。
「……」
トリテレイアは押し黙っていた。
もう電脳にかかる負荷は凄まじいものであった。かつてこれほどまでに彼の思考が停止しかけるほどに追い詰められたことはあっただろうか。
多分無い。
しかし、彼とて猟兵である。
やらねばならぬことはあるのだ。
「……効きませんったら! カタストロフを目論んだ貴女には骸の海への強制送還の刑です!」
もはやそれは逆ギレというやつであった。
トリテレイアにしては珍しい行いであった。騎士として在るまじき行いであったかもしれない。
けれど、機械騎士だって逆ギレしたいときだってある。
振り回した鉄球を叩きつけ、『悪役令嬢・イレーヌ』はギャグ漫画みたくぺっしゃんのぺらぺらになりながら霧散していく。
ただ、なんか妙にきれいな浄化されたような顔で言うのだ。
「次は、る人たらしな悪役令嬢に生まれ変わりたいな……」
具体的には破滅フラグをへし折っていくやつ。
霧散し消えていく『悪役令嬢・イレーヌ』を見送りながら、トリテレイアは己の電脳に掛かった負荷がわずかにすっとしたような、微妙な気分になるのだった――。
大成功
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