崩壊世界復興録 ~芽吹く新たな希望達~
#アポカリプスヘル
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既に人類の大半が死滅し、文明が崩壊した世界。猟兵達からはアポカリプスヘルと呼称される、その世界。
人類を絶望の淵に叩き込んだ暗黒の竜巻『オブリビオン・ストーム』は今も猛威を振るい、捨て身の反撃に打って出る人類を翻弄し続けていた。
それでも、人類は諦めない。各地に拠点(ベース)を築きつつ、禁忌にその手を染めながらも……必死に、貪欲に、生き延び続けていたのだ。
●
かつて栄えた、湾岸沿いの新都心。
その一角に、中規模な球技専用スタジアムがある。
平和だった時代にはこの地方のプロスポーツクラブの本拠地でもあったそのスタジアムは、当時の行政からは緊急避難場所に指定されていた程に堅牢で、敷地も広い。
(……あれから一年か)
そんなこの地に、とある新興勢力が拠点(ベース)を置いたのは、今から一年前の事。
当時は人手も少なく、属する奪還者(ブリンガー)も未熟な者が多く……一日一日を生き延びるのが、精一杯だった。
そんな日々に転機が訪れたのが、一年前だ。所属する奪還者達に先んじて近隣のショッピングモールから物資を運び込んでくれた、腕利きの奪還者達と出会ったのは。
そう、転機だ。あの出会いから芽吹いたばかりの新芽であった新興勢力は順調に成長を遂げ、今では近隣でも一目を置かれる勢力へと飛躍するに至っていた。
猟兵、と名乗った彼らとの邂逅。あの出会いが無ければ、今のこの地の賑わいは無かったはずだ。
(とは言え、だなぁ……)
成長と発展は、喜ばしい。だがその裏で、一つの問題が生まれていた。
その問題とは。
(想定以上に、奪還者希望者が集まってしまったのがなぁ……)
新たに拠点に加わった新参の住人。その中でも特に、奪還者を志望する者達の教育についてであった。
拠点の規模が大きくなるつれ、当然物資を集める奪還者の数も多く必要となる。
そんな状況であるので、新たな住人が奪還者を志してくれるのは嬉しい事であるのだが……想定以上に、人が集まりすぎてしまったのだ。
無論、これは喜ばしい事態である。だがこれだけの人数に、長々と教育をするだけの余力は現時点では無い。さりとて、育てなければ先はない……。
「……致し方ないか。奪還者の代表を呼んでくれ。『例の計画』を、実行しよう」
逡巡した時は、僅か。意を決した取り纏め役の男が、声を発する。
皆で生き残り、未来を歩む。その為の計画とは、一体何なのだろうか……?
●
「お集まり頂きまして、ありがとうございます」
艷やかな銀の髪を揺らして、ヴィクトリア・アイニッヒ(陽光の信徒・f00408)が猟兵達を迎え入れる。
穏やかな微笑みを浮かべるその表情からは、差し迫った危機感は感じられない。
どうやら今回の案件は、それほど厳しい物では無いらしい。
「以前アポカリプスヘル世界に於いて、新興の拠点(ベース)の活動を手助けした件を覚えている方はいらっしゃるでしょうか?」
ヴィクトリアの言葉に、ピンと来る物がある猟兵もいるかもしれない。
アポカリプスヘルと呼ばれる文明の崩壊した世界。その世界のとある地に拠点を置く、新興の拠点に纏わる案件である。
出会いは一年前。半年前には『塩作り』のお手伝いをしたりと、それなりの縁を猟兵と結んでいる地だ。
……そう言えばあれから話が無かったが。彼の地は今も、上手くやれているのだろうか?
「あ、はい。あれからは特に大過無く、順調に活動出来ているようね」
苦難を乗り越え、必要な物を生み出す力を身に着けて。今では近隣からも一目置かれる拠点へと成長を遂げたのだという。
だが、そこで。「ですが……」とヴィクトリアが言葉を繋げる。
順調な成長の裏で、拠点に小さな問題が起きているようなのだ。
「拠点の急成長に伴い、人材の育成に悪影響が生じているようなのです」
拠点が大きくなれば、当然維持に必要な物資も相応に必要となる。
それらの物資を集める為に、奪還者の数を揃えていかねばならないのだが……ここで嬉しい誤算が発生した。新参の住人から募った奪還者希望者が、想定以上に集まったのだ。
人数が集まるのは、嬉しい事だ。だがしかし、集まり過ぎても問題だ。教育を施す事にも、労力は必要なのだから。
……新人達にしっかりとした教育を施したい。だが労力が足りない。この事態に、取り纏め役の男は悩み、考え、一つの計画を打ち出した。
その計画とは……。
「拠点外に出ての、サバイバル。その演習です」
発展した拠点の内側は、最低限ではあるが安全な地である。
だがそこから一歩踏み出せば……そこにあるのは荒廃した大地。地は荒れ、建物は崩れ、文化文明は消え失せて暴力が罷り通る、絶望の世界である。
そんな地に、新人達を送り出す。サバイバル演習が、それである。
……一応、監督兼指導役として熟練奪還者も付くわけだが。それでも中々にスパルタな演習であるのは、想像に難くないだろう。
「そこで、皆さんの出番となります」
今回猟兵達に求められているのは、そんな計画の手助けである。
新人達のやる気の方は中々だが、知識や戦闘力は、平凡よりやや下程度。
そんな彼らに同道し、教導するのが猟兵達の務めとなる。
……バリケード構築などの力を使う技術、周辺警戒や物品修理のコツ、様々な知識を教え意識改革を図るなど。教えるべき内容は、色々とあるはずだ。
何を教えるかは猟兵の裁量に任されているので、色々と考えてみると良いだろう。
「何度かの交流もありますので、皆さんの事は好意的に受け止められるはずです」
過去の行動と交流から、猟兵達は『熟練の奪還者』として現地の住民達には知られている。新人達にもその旨は、知らされているはずだ。
そんな猟兵からの教導であるのだから、新人達は喜んで受け入れてくれるはずだ。
……とは言え、あくまでも相手は一般人。無理は禁物なので、匙加減は考える必要があるだろう。
「知識を伝授し、力を磨く。人々の新たな希望を、今後も守る為にも……」
皆さんの御力を、お貸し下さい。
いつものように、丁寧な礼をして。ヴィクトリアは猟兵達を現地へと送り出すのだった。
月城祐一
●月城祐一
2021年、初依頼。
どうも、月城祐一です。前の依頼は20年末にOP提出なのでこの依頼が実質今年初依頼です(どこかで見た構文)
今回は久々のアポヘル依頼。
新芽から若木くらいに成長した例の拠点で、新人奪還者を教導して頂きます。
参考までに、以前の『復興録』は ↓こちら↓ になります。
(【探索行】 https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=19586 )
(【塩作り】 https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=24886 )
読まずにご参加頂いても問題はありませんが、宜しければ是非ご一読下さい。
さて、補足となります。
第一章は日常章。
新人奪還者達に荒野を生き抜く技術を教え込んで頂きます。
演習場所となる環境は、拠点の置かれたスタジアムからほど近い場所。
荒廃した都市部と荒野のちょうど境目であり、どちらの環境に関しても対応した訓練が出来ます。
奪還者達は知識戦闘力共に平均やや下の一般人。年齢性別もバラバラですが、熱意だけはしっかりあります。人数もそれなりに大勢です。
そんな彼らに猟兵達の持つ技術を教え込み、この厳しい世界で生き抜く力を与えるのが目的となります。
教えられる技術は、色々とあるはずです。フラグメントの内容に囚われず、色々と考えてみると良いでしょう。
第二章・第三章については現時点では開示できる情報はありません。
章の進展時に情報開示が行われますので、ご了承下さい。
……安全圏を出てるので、何らかのトラブルは起こり得るかもしれませんね。
希望の新芽は若木へと育ち、新たな芽を開かんと動き出す。
そんな新たに芽吹く希望を、猟兵達は導けるか。
皆様の熱いプレイング、お待ちしております!
第1章 日常
『荒野を生き抜くサバイバル講座』
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POW : バリケードの設営方法など、力を使う技術を伝授する
SPD : 集落周辺の警戒の仕方や、破損した物品の修理のコツを伝授する
WIZ : この世界を生き延びる為の知識を頭に叩き込んだり、意識改革を行う
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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ここは、スタジアムに置かれた拠点のほど近くの荒野。かつての新都心と工業地帯の境目で……今では荒廃した建物と荒野の境界となっていた地である。
そんな場所に連れ出された、拠点の奪還者志望者達。これから行われるという演習を前にして、彼ら彼女らのその表情には緊張の色が浮かんでいた。
「──全員、注目!」
荒野に響く男の声を聞き、ざわついていた空気が静まる。
新人達の前に立つのは、拠点に属する奪還者の内のリーダー格の男。
熟練と呼ばれるにはまだ一歩足りないが……それでもそれなりの経験を積んできた、腕利きの一人である。
「これよりサバイバル演習を行う。だがその前に、紹介しておこう」
そんな男が手を指し示せば、新人達の視線は自然とそちらに向かうだろう。
その視線の先にいたのは数人の人影。言わずと知れた、猟兵達である。
「彼らは今回、この演習の教導役として協力してくれる熟練の奪還者であり……拠点の『恩人』でもある」
そう男が紹介すれば、新人達の目に輝き浮かぶのは憧憬の色。
拠点の『恩人』。それは、以前拠点に対して篤い手助けをしてくれたという人々の事。
その事を、新人達の伝え聞いているのだろう。キラキラとしたその視線を受ければ、猟兵達の心もどこかむず痒さを覚えるかもしれない。
「彼らの経験と知識は、きっと諸君の力になるはずだ。心して、教導を受けるように!」
はい!!
響く活気に溢れたその返事は、彼らの熱意の顕れだ。
絶望に満ちた世界にあっても、希望を繋ぎ続けたい。そんな決意の顕れだ。
現場に満ちる、陽性の活気。そんな活気を受けながら、猟兵達はこの後どんな教導を施すべきかと思案するのだった。
備傘・剱
生きるすべを教えればいいわけだな?
って事は、多少、甘めでも問題ない、か
さて、生き抜くサバイバルの技術を教授しろ、そういうわけだからな
安心しろ、絶対に死なせはしない
って事で、こっそり、デビルダイスロール、発動
呼び足した一足りない全員に通達する、死にはしないが、死んだ方がましと思えるようなトラップを全方位に仕掛けろ、とな
そのことは、新人達には伝えないぜ
訓練中に絶対に死にはしない、とだけ、伝えよう
血気盛んな若者だ
死んだ方がマシ、と思うような経験をさせなきゃ、ここじゃ生き残れないだろうしよ
あ、それでもついてきた奴には、死にはしないが、毒と言う名の極上の料理をふるまおう
教官が裏切らない、誰がそう決めた?
セフィリカ・ランブレイ
『黄昏てるわね、セリカ』
誰かに教えるって事で、私の師匠を思い出して
『夕凪神無の話はやめて。頭が痛くなる』
あれは反抗期の私が心を入れ替え真面目に父に剣を習おうとした頃
父の師である女に預けられ山籠もり
天才を自負する私がズタボロにされた
ズタボロにされるだけの二ヶ月、教えられた事は何もない
何度も死ぬ目にあいつつ盗んだ相手の技が私の剣だ
私天才だからいいけど!こんな方法で人が育ってたまるか!
『奴に人の心を求めるな』
まず基礎の体力作りが一番!
後は私の得意なのは剣だし、近接武器を使いたい人向けに私の知る限りのコツを教えていくよ
長時間戦うための構えとか、有効な間合いの測り方とか
一つづつ覚えて強くなっていこう!
●
居並ぶ奪還者志望の者達から注がれる、憧憬の視線。
そんな熱の籠もった視線を浴びながら、備傘・剱(絶路・f01759)は考えを巡らせる。
(生きる術を教えれば良いわけだな?)
今回の演習で猟兵達に求められているのは、新人達が奪還者として生き抜く為の技術の教示である。
とは言え、生徒役となる新人達は素人だ。そんな相手に、専門的な分野を教え込むのはまだ早いだろう。
であるならば。まず教えるべきは、基礎の基礎だ。
幸い、身体の使い方に関しては……。
「それじゃあ、まずは身体を動かそうか。何事も基礎の体力づくりが一番だよ!」
セフィリカ・ランブレイ(蒼剣姫・f00633)の声を受けて、威勢の良い返事を返す新人達。
……どうやら体を解し、走り込みからスタートさせるらしい。どうやらこの方面に関しては、セフィリカは中々に明るい様子。任せてしまっても大丈夫だろう。
ならば、剱が成すべき事は……新人達の、『心構え』に関する教育だろうか。
(──出でよ、ダイスの妖怪よ)
静かに念じて喚び出すのは、小憎たらしい妖怪の群れ。ダイス目、つまり運に関わるその妖怪達を喚び出せば。
(通達する。『死にはしないが死んだ方がマシと思えるようなトラップ』を、全方位に仕掛けろ)
下した命令は、この演習場全域への工作だ。
体力や様々な技術に知識。それらは確かに必要な事だが、それだけでは足りない。
大事なのは、『心構え』。常に周囲を疑い、物事の真贋を見極めるという『心構え』こそが、常に危険に身を晒す者達が生き延びる為に必要な事なのだ。
新人達の中には、血気盛んな若者も多くいる。きっと彼ら彼女らはトラップに引っ掛り、手痛い目に遭うだろう事は想像に難くない。
だがその経験こそがきっと彼らの糧になり、この絶望に塗れた世界を生き抜く力となってくれるはずだ。
……まぁ、甘め(注:剱基準)のトラップでもあるし。大丈夫だろう、うん。
「……えーっと。今なんか、した?」
「いいや、何も?」
そんな工作に気付いたか、戸惑い混じりのセフィリカの声にしれっと返す剱。
罠がある事を告げてしまえば、『心構え』も何も無い。不意を突くからこそ、意味があるのだから。
とは言え、だ。
「まぁ、『訓練中に絶対に死にはしない』さ」
「あっ、そう……」
告げるべき事は、告げておくべきか、と。呟かれた剱の言葉に、セフィリカの口から溜息が漏れる。
……詳細は判らないが、きっと彼は何かをしたのだろう。そしてその何かは、(一般的な価値観で言えば)スパルタなんて物じゃない可能性が高い。
その厳しいにも程がある指導姿勢は、まるで……。
「……師匠を思い出すなぁ」
『夕凪神無の話はやめて。頭が痛くなる』
剣の師、と呼んで良いのか判らないが。そんな存在の事を脳裏に思い描けば、セフィリカが腰に佩く相棒にして姉代わりでもある『魔剣シェルファ』のボヤき声も響くだろう。
思い起こすのはかつての日々。反抗期を抜け出し心機一転、真面目に父に剣を習おうとしていたあの頃の事。父の師でもあった女に預けられ、山籠りを強いられていた日々の事だ。
天から与えられた才能。その自負をズタボロにされ続ける事、二ヶ月。その間に師から教えられた事など、何一つ無い。
ただただズタボロにされ、何度も死ぬ目に遭いつつ……視て、盗み、身に付けた。それがセフィリカの剣である。
……まぁ一応、身についたのは事実。事実では、あるけれど。
(──私が天才だったからいいけど! あんな方法で人が育ってたまるかっ!!)
(奴に人の心を求めるな)
極々普通の一般人が、あんなスパルタ指導に耐えきれる訳も無い。技術を修めるより前に、心が折れるのが関の山だろう。
そんな師の指導姿勢と、剱の指導姿勢は通じるものがあるのだ。
(いくら、『絶対に死にはしない』って言ってもねー……?)
セフィリカからすれば、不安を感じるのは当然の事であろう。
……不安だ。実に不安だ。このまま皆に走り込みをさせてしまっても、大丈夫か……?
「……よ、よーし。私も一緒に走ろっかなー? ある程度走ったら、次は近接武器の使い方とかをねー……」
逡巡したのは僅かな時間。セフィリカが下した判断は、新人達の引率に動くという決断だった。
一つ一つ、階段を手を引いて登るかのように。セフィリカの方針は、剱からすればトロ甘も良い所であるだろうが……それも一つの指導方針である。
それに、一人が甘くなるのなら。こちらはより、厳しく行けるという物だ。
(……さて、乗り越えた者の為に準備を進めておくかな)
セフィリカを戦闘に走り出す新人達。その姿を横目に、剱が料理の準備を進めていく。
料理技術は野営の場では勿論重要な技術であるが……。
(さて。教官が裏切らない、誰がそう決めた?)
真贋を見抜き、危険を感じ取る事が出来る者がどれだけいるか。
毒をその手の内に握りながら、剱の口の端に不敵な笑みが浮かぶのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
秋月・信子
●SPD
一度文明が崩壊すれば歴史を重ねて培われた叡智は簡単に失伝するって、誰かが言ってたわね
本の燃えカスがあるし無理は無いわ
じゃあ、今回は基本的な拠点の警戒要領を教えてあげましょう
そんな訳で信子
私が言葉で教える教官、あんたは実演する助教ね?
まず監視は二人でやるのが基本よ
普通は近くから遠くを横に監視するけど、前方に開けている地形の場合は縦に監視を行うのが横監視と縦監視
視線を流して行うのではなく目印になる一点を注視し、次の点へと視線を移動させてその点を注視するように
あと些細な兆候を記録して交代時は申し送るように
けど異変があったからと言って、それに囚われたら駄目よ
多方向からの襲撃もありえますからね?
●
そこかしこから響く驚愕、悲鳴、呻き声。
それらの声の主は、演習に参加した新人達である。
いくら腕利きの猟兵が先頭で引率に動いているとは言え、全ての面倒を見れる訳ではない。手の届かなかった者から『死にはしないけど死んだ方がマシ』なトラップに引っ掛かっていった結果、割りと大惨事な事となってしまったのだ。
──あー、あー。見るも無残ねぇ……。
そんなご覧の有様な光景を前にどうしたものかと狼狽する秋月・信子(魔弾の射手・f00732)の頭に響く声。次いで足元の影が蠢いて、信子と同じ姿のヒトの形を作っていく。
「あっ、もう。『姉さん』、また勝手に……」
『はいはい。細かいことはいいっこ無しよ』
形つくられた自身と瓜二つのヒトガタ(信子の力の根源でもあり、彼女自身が『姉』と慕う反転存在だ)に、信子が小言を漏らすが……そんな小言は馬耳東風と言わんばかりに『姉』は飄々と受け流すばかり。
そんな『姉』の態度はいつもの事で、信子ももう慣れたものだ。
小さく溜息を吐きながら、信子が問う。
「それで、『姉さん』? 何か考えが?」
享楽的で嗜虐的な性質を持つ『姉』。だが猟兵としての務めを疎かにするような怠け者などでは断じて無い。
そんな彼女が、自ら表に出てきたのだ。何か考えがあるのだろうと信子は予想したのだが……。
『ん、そうねー……』
その問いにすぐに答えを返す事無く、『姉』は口元に手をやり周囲を見やる。
鋭く細まる視線が見るのは、呻く新人達の姿。彼らは皆、先程『例のトラップ』の前に成す術も無く倒れた者達だ。
(『一度文明が崩壊すれば、歴史を重ねて培われた叡智は簡単に失伝する』、か……)
過去に聞いた覚えのあるその一節を思い返す。
人類が積み重ねた歴史。その中には『叡智』という名の様々な『技術』が存在する。
だが倒れた新人達に、そんな『技術』は欠片も感じられなかった。罠がある事は理解しても、警戒の仕方がまるでなっていなかったのだ。
……きっとそういった『技術』もまた、文明の崩壊と共に失伝してしまったのだろう。ならば今回は、そんな『技術』──警戒監視の方法を、教えておくべきだろう。
『……信子、あんたは助教ね? はい! 注目、注目!』
そうと決まれば、と。信子の諾否を聞くよりも速く手を叩き、新人達の注目を集める『姉』。
唐突なそれに、呻く新人達の目が向けば……『姉』の口が、ニヤリと曲がる。
『あんた達、警戒の仕方がなってないわ。だから特別に、基本的な警戒監視の方法を教えてあげるわね?』
そうして始まる、『姉』教官と信子助教による警戒講習。
『良い? まず監視っていうのは、二人でやるのが基本よ?』
その上で、近くから遠くを横に見る『横監視』と、縦に見る『縦監視』の実演。その際に視線は流さず、目印となる点と点を定めてその点を注視するようにという指摘も忘れない。
また、些細な兆候があれば記録し、交代時の申し送りと言った報連相……報告・連絡・相談は欠かさずにとも。
『けれど異変があったからと言って──!』
──タタァンッ!!
『姉』の言葉が途切れたその瞬間、響く銃声。目にも留まらぬ速さで『姉』と信子が懐の拳銃を抜き放ち、同時に撃ち放ったのだ。
何が起きたのか判らぬと、目を白黒とさせる新人達。
そんな彼らに向けて……。
『……それに囚われたら、駄目よ?』
嫣然と、『姉』が笑う。信子もまた、ふぅと小さく息を吐く。
姉妹の放った弾丸は、音も無くこちらに飛来した石礫を撃ち抜いていた。恐らくは、『例の罠』の一部なのだろう。
『今みたいに、多方向からの襲撃もありえますからね? それじゃ、実践を──』
高度な警戒と迎撃。二つの技術を示した事で、倒れていた新人達の目に光が戻る。
先程は、駄目だった。だがしっかりとこの技術を身に着ければ……!
信子と『姉』の教導は、脱落しかかっていた新人達を見事に掬い上げる事に繋がったのだった。
成功
🔵🔵🔴
秋山・軍犬
じゃあ、都市部や荒野を適切に休憩をとりつつ
ひたすら歩いてゴミ(物資)拾いしようか
ま、良い物はないかもだけど
危険な拠点の外での移動、活動
肉体労働に慣れさすのが目的だし
枯草や木屑紙屑なんかでも燃料とかになるから
あ、交代で何人かは常に周辺警戒にあたるんすよ
あと、本来は運搬力の関係で持ってくゴミは
厳選するんだけど今回は…
焔「ヒャッハー! 運搬はあたいと鶏達に任せろー!」
はい、焔ちゃんとミュータント鶏、数羽が運搬を
手伝ってくれます…という訳で沢山拾って良いのよ?
…さて、それでは自分は周辺警戒しつつ
この辺の生態調査でもするか
…食べても良い(安全性、生態系を乱さない的な意味で)
ミュータントとかいないかなー?
●
多くの新人達が基礎的な教練を受ける中、極一部ではあるが別行動を取る者達の姿があった。
彼らは所謂、『期待の新人』。身体能力や勘働きに優れた者達である。
……とは言え、彼らも新人である事には変わりはない。拠点外での活動に不慣れである事には、変わりはない。
「はいはい、適切に休憩を取るっすよ。あ、交代で常に何人かは周辺警戒にあたるんすよ?」
そんな彼らの引率役となったのは、秋山・軍犬(悪徳フードファイター・f06631)。自称『りょうへいのたちばをりようしてしりしよくにはしるとってもわるいやつ』である。
そんな軍犬が新人達に課した課題は、『とにかくひたすらに歩いてのゴミ拾い』であった。
(……ま、良い物は無いとは思ってたけど)
新人達が拾い集めてくる物は、確かにロクな物が無い。掻き集めても二束三文にもならない、文字通りのゴミばかりだ。
だが、それでも別に構わない。本来の目的は、別にあるのだから。
その本来の目的とは……。
(危険な拠点外での移動、活動。そして肉体労働に慣れさすのが目的だし?)
そう、拠点外での活動に慣れさせる事。その一点に尽きた。
身体能力や勘に優れた者達であるならば、あと必要なのは慣れだけだ。
この環境に慣れ親しみ、持ち前の能力を十全に発揮できる様になれれば……彼らが立派な『奪還者』に成長するのは、間違いないはず。
軍犬が命じた課題は一見すればタダの新人イジメかとも思えるがその実、深い意味があっての事であったのだ。
それに二束三文のゴミとは言え、無駄だとは言い切れない。枯草や木屑や紙屑なども、燃やせば燃料代わりくらいにはなるのだから。
……とは言え、だ。本来であれば、運搬力の関係で持ち帰るべき物は厳選するのだが。
『ヒャッハー! 運搬はあたいと鶏達に任せろー!』
今回はその辺りの事もちゃんと対策済みである。
気勢をブチ上げてやる気を示すのは、軍犬と契約した『ヒャハ崎 焔』なる精霊の少女。そのすぐ隣には、彼女に良く懐いた鶏の群れがいる。
コケコケー! と騒がしい鶏達は、普通の鶏などでは無い。全長1m級のミュータント鶏だ。その体格から発揮される運搬力は、推して知るべしである。
精霊とミュータント鶏。彼女らの力を使えば、この辺り一帯に転がるゴミは根刮ぎ持ち帰る事が出来る事だろう。
……ところでヒャッハーの精霊とはいったい……?
「んじゃ、焔ちゃん。こっちはよろしくー」
精霊に声を掛ければ、返ってきた答えは威勢の良い奇声。
そんな世紀末感バリバリな声を聞きながら、軍犬は瓦礫の山に足をかけ、するするっと登っていく。
周辺警戒ついでに、この辺りの生態を調査しようと考えたのだ。
「さてさて、(安全性と生態系を乱さない的な意味で)食べても良いミュータントとかいないかなー、っと……ん?」
仕事に託けて未知の食材ゲットだぜ! という本音をオブラートに隠しつつ(隠せたとは言っていない)、周辺をぐるりと眺める軍犬の目が何かを捉える。
荒野の向こう。随分と遠くの方から、何やら多数の土煙が上がっているような?
「んんー……???」
じぃ、と目を凝らしてみる。
良く見れば、土煙は徐々にこちらの方へ近づいているような。
何やらイヤーな予感がしてきたが。落ち着け、しっかりと正体を見極めなければ。
……土煙に隠れた、謎の存在の姿が徐々に浮かび上がってくる。
その、正体は──!
「──な、なんじゃありゃーっ!?」
──第二章に、続く!!
成功
🔵🔵🔴
第2章 集団戦
『ウォーキングタンク』
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POW : 機銃掃射
【砲塔上部の重機関銃】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 対猟兵弾
【対猟兵用の砲弾を装填した主砲(連続砲撃)】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
WIZ : キャニスター弾
単純で重い【散弾】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
「──な、なんじゃありゃーっ!?」
突如響き渡った猟兵の声。
その驚愕の声は必然、その場にいる人々皆の注目を集め……同時に、近づきつつある一群の存在にも気付くだろう。
──ガシャンッ! ガシャンッ!!
響き渡る機械音。土煙を巻き上げて走るその姿は、まさにヒトの姿である。
だが、違う。アレはヒトなどでは決して無い。
その正体は、『オブリビオン・ストーム』に破壊されたかつての文明の名残。陸を駆ける鋼の王者の、派生の一つ。
人間サイズの戦車をコンセプトに開発された無人戦車……『ウォーキングタンク』の、成れの果てだ!
──ガシャンッ! ガシャンッ!!
迫りくる『ウォーキングタンク』の群れ。
何故こんな場所に、唐突に現れたのか。その理由は定かではないが……放置しては、新人奪還者達に犠牲が出るのは想像に難くない。
そんな事を許す訳には、いかないだろう。
武器を手に猟兵達が構えれば、駆ける人型戦車のセンサーが怪しく瞬く。
芽吹いたばかりの新たな希望を守る戦いが、始まろうとしていた。
====================
●第ニ章、補足
第ニ章は集団戦。
新人達の演習に乱入してきた人型戦車『ウォーキングタンク』が相手となります。
章の成功条件は、『敵の撃破』となります。
本文中の通り、敵のサイズは人間サイズ。数の方は、そこそこです。
『戦車』と言うだけあって、火力の方は中々の物。油断は禁物です。
戦場となるのは一章同様、荒廃した都市部と荒野の境界。
遮蔽物となる瓦礫もありますし、機動力を活かす事も難しく無いはずです。
また新人達や拠点所属の奪還者(そこそこ腕利き)も戦場に残っている為、行動の指示を出す事が出来ます。
指示次第では援護を貰う事も出来ますが……実力的には、あまり当てにはならないでしょう。
特に指示がない場合は、遮蔽物に潜み身を隠しているはずです。
暴走する人型戦車の群れ。
その唐突な出現の理由は、偶然なのか。はたまた……?
皆さんの熱いプレイング、お待ちしております!
====================
備傘・剱
おーおー、おあつらえ向きっていうか、なんていうか…
次の授業にぴったりなのが来たじゃないかぁ!
ってことで、全員注目!
今から、実戦的な授業を始める
なに、大丈夫、人間、死ぬ気で攻撃すれば、出来ない事は、ない!
って事で、本当に死なれちゃ困るから、全員に護霊亀、発動!
メダルを張り付けていくぜ
俺は、衝撃波、呪殺弾とブレス攻撃で動きを止めつつ、武装を壊して、授業向きなある程度、危険度を残しているが、何とか倒せるぐらいに痛めつけるぞ
あ、マジで危険そうなときは、オーラ防御で守りつつ結界術で動きを封じて誘導弾と鎧無視攻撃で完全破壊するぞ
落ち着いて、敵の弱点を探りつつ、確実に破壊しろよ
アドリブ、絡み、好きにしてくれ
●
土煙を巻き上げ迫る、『ウォーキングタンク』の一群。
かつての文明が造り出した軍事力の象徴は、只人の身で相手をする事は難しい。
ましてや、この場にいる者の多くは訓練を積み始めたばかりの新人ばかりなのだ。普通であるならば逃げの一手を考えるのも、当然と言えるだろう。
だが、剱の導き出した考えは違っていた。
「おー、おー。お誂え向きっていうか、なんというか……ぴったりなのが来たじゃないかぁ!」
今この場にいるのは、奪還者として活動する事を目指す新人達だ。そんな職を目指すのであれば、将来的に鉄火場を潜り抜ける事は避け得ないだろう。
ならば、この場で。新人達に経験を積ませてやるのも、悪い事では無いはずだ。
「……って事で。全員注目! 今から、実戦的な授業を始めるぞ」
手を高く打ち鳴らしつつ振り向いて、座り込む新人達の注目を集める。
剱の周囲にいる新人達は、例のトラップを見事に突破した中々に見所のある者達だ。だがそんな彼らであっても、突然の乱入者の登場に右往左往し動揺してしまっていた。
この世界に生きる人々はオブリビオンの脅威をその肌身で知っているのだから、怯え竦むのも仕方ないだろう。
だが、それではいけない。奪還者を目指すというのならば、こんな事で怯んで足を止めてはいけないのだから。
「なに、大丈夫。人間、死ぬ気でやれば出来ない事は、無い!」
そんな新人達の尻を蹴るかのように剛毅さを魅せつけながら、剱が懐から取り出したのは数枚のメダル。
そのメダルをピンッと指で弾けば、メダルは新人達の胸元へと吸い付いて……。
「──この者の明日を開く礎となれ。【護霊亀(プロテクト・ガーディアン)】、発動!」
力ある事ばを受けて、メダルから力が解き放たれる。
放たれたその力は、頑健な甲羅で身を守る霊亀の物。その力が発動する限り、新人達の身の安全も護られるはずだ。
……突発実戦授業と言い、先の例のトラップと言い。剱の指導方針がスパルタなのは、紛れもない事実である。
だが剱が新人達の事を軽んじているのかと言えば、そうでは無い。
全ては、新人達の将来の事を考えての事。新人達の事も、ちゃんと考えているのもまた事実であるのだ。
──ガシャンッ! ガッシャン!!
そんな護りの力を新人達に貼り付けた、その直後。遂に『ウォーキングタンク』が剱の下へと辿り着く。
砲塔部のセンサーが怪しく輝く。直後、砲口が剱を指向して。
ズバンッ!!
轟音一声。放たれた砲弾が剱を襲う。
放たれた砲弾は、対猟兵弾。生命の埒外の存在に通じるその砲弾が、音を置き去りにする速度で剱へ迫る。
(大丈夫だ、この程度なら避けられる……が)
そんな砲弾を、剱の目はしっかりと捉えていた。そして躱そうと思えば余裕で躱せる程度には、体の反応も追いついていた。
しかし、躱せない。ここで躱しては、護りの力を貼り付けたとは言え新人達に万が一が起こる可能性がある。
ならば、ここは──!
「──受けて、立つ!」
叫ぶ剱。伸ばす掌からサイキックエナジーの奔流が湧き出して、砲弾を遮る壁となる。
ぶつかり合う砲弾と壁。矛と盾が拮抗したのは、ほんの一瞬。
──ズガァッ!
次の瞬間、爆ぜる砲弾。矛を弾いた盾足る壁は、尚も健在だ。
目の前で生じたその現象に、無人戦車のAIは動揺を示す事もなく即座に第二射の構えを見せる。
……だが。
「遅い!」
その第二射が放たれるより更に疾く、閃く剱の掌。
腕に装備されたガントレットが剱の戦意を増幅し、作り上げた漆黒の弾丸が撃ち放たれたのだ。
その弾丸の密度は、まさに弾幕。その全てが剱の意思を受けて誘導されて、人型戦車の弱点……巨大な砲塔を支える下半身に叩き込まれていく。
突き刺さる無数の弾丸に、砕かれる下半身。人型戦車はそのまま姿勢を崩し、擱座する。
……機動力は奪った。崩れ落ちたその姿勢では、照準も碌に定まらないはず。『教材』とするには、程よい具合と言っていいだろう。
「……さて、ここからはお前達の番だ」
崩れ落ちた戦車を尻目に、新人達に振り返る剱。
そんな彼の言葉を受ければ、新人達は互いに顔を見合わせて……一つ頷き、ゆっくりと立ち上がるだろう。
常に周囲を疑う事を体験し、真贋を見極める『心構え』を体感し。今こうして、戦闘に於ける経験も積み上げようとしている新人達。
長じれば、彼らはきっと一廉の人材となってくれる事だろう。
「落ち着け。敵の弱点を探りつつ、確実に破壊しろよ」
剱は新人達の動きを見守り、時に指摘し叱咤を飛ばす。
その厳しい言葉の内には確かに、強い期待が込められているのだった。
大成功
🔵🔵🔵
秋月・信子
●POW
姉さんも、丁度良いし実戦に勝る訓練はないから後はよろしくね、と言い残して影に戻りましたか…
とは言え、流石に新人さん達を前線に出す訳にも行きませんから…こうしましょう
皆さん、これから指示を出します
まず私がLAMを撃ち、クライネスを走らせて相手の注意を引きます
その間に皆さんは、廃墟の脆くなった壁に指向性地雷を取り付けて下さい
そして私が【おびき寄せ】た敵がこのラインを越えたら一斉に起爆し、それで生じる瓦礫を利用して相手を動きを封じます
後は手榴弾なり、火炎瓶なり、供出した予備のLAMなりで一網打尽です
とは言いましたが、あくまでも自信付けです
瓦礫の影を利用した『影の流砂』で倒したように演出します
●
迫りつつある乱入者。その存在を、警戒監視訓練を行っていた信子と『姉』は実は早い段階で察知していた。
では、迎撃準備が整っていたのかと言えば、そうではなかった。
迫りくる敵の存在を認識した『姉』は、『後はよろしくね』と言い残して影に戻っていってしまったのだ。
(実戦に勝る訓練はない、っていうのは確かにそうですけど……)
はぁ、と溜息を零しつつ。さてどうしたものかと信子は考える。
確かに『姉』の言い分は正しい。とは言え、流石に今の段階の新人達を前線に出せば無駄に犠牲が出るだけだ。
……響いた猟兵の驚愕の叫びと、その先に見える人型戦車に慄く新人達を見れば、その想定に間違いは無いと確信が持てる。
ならば、新人達を後方の安全圏まで下げるべきだろうか?
(それはそれで、勿体無い、かな?)
確かに安全圏まで新人達を下げれば、安全は確保出来るだろう。だがそうすれば、『比較的安全に実戦経験を積める』という貴重な機会を失ってしまう事になる。
経験は、何事にも代えがたい財産だ。そして積み上げた経験は自信となり、士気を支える土台となってくれるのだ。
……その事を、かつてはただの優秀な文系少女であった信子は良く知っているのだ。
「……ふぅ。みなさん、落ち着いて下さい。指示を出します」
故に信子は、『新人達の安全を確保しつつ実戦経験を積める策』を採った。
具体的に言えば、『囮』だ。信子自身が囮となって敵の目を引き付け、その間に新人達がここに罠を敷設。後はここまで敵を誘き寄せ、仕留めるという流れである。
当然、信子に掛かる負担は大きいが、信子とて腕利きの猟兵だ。その実力は、過去のこの地との交流で証明済である。
新人達の信頼も篤く……反対意見は、出なかった。
「罠と武器の使い方は、解りますね? それじゃあ……行きます!」
愛用の装軌式オートバイに積まれた予備の武器を新人達に預け、信子が行く。その足回り故の高い悪路走破性をもってすれば、荒野を往くのも何のそのである。
だが凄まじい勢いで荒野を駆ける信子のその姿を、『ウォーキングタンク』が見逃すはずもない。人型戦車の砲塔部のセンサーが信子の姿を視認した、次の瞬間。
──ガガガガガガガッッッ!!!
放たれたのは、砲塔上部に据えられた重機関銃。仮に直撃すれば……いや、掠っただけでも。柔らかなヒトの体は簡単に千切れてしまうだろう。
その破壊力を信子は良く知っている。ハンドルを小刻みに動かし、火線に囚われぬようにと回避に専念だ。
そんな小回りの良さを見せる目標に、人型戦車のAIは脅威度を高めたか。信子を狙う火線が一本、また一本と増えていく。
……本来ならLAM(携帯式対戦車無反動砲)を撃ち放って敵の注意を引き付けるつもりだったが、その余裕は無さそうだ。まぁ敵の注意を引きつけたから、ヨシとしよう。
とは言え、だ。
「くっ、ぅ……!」
降り注ぐ銃火。回避の為にハンドルを切れば、その度に揺さぶられる車体と体。重圧が体に圧しかかり、消耗を強いていく。
……新人達の準備は、まだか。視線を後方に向ければ……。
「──っ!」
今まさに、支度が整ったか。準備完了を知らせるシグナルを、信子の視線が捉える。
再びハンドルを切り、アクセルを開く。唸りを上げるエンジンが轟いて、車体を一気に加速させる。
その姿は、まるで一目散に遁走を始めたように人工戦車のAIには見えただろうか。逃しはしないというように、数量の人型戦車が信子を追って地を駆ける。
あと、100メートル。50メートル、10メートル。
信子が境界線を越え都市部へと駆け込み、次いで追い掛ける人型戦車が『そのライン』を踏み越えて。
──ズバンッ!
響く重低音が、数度。ほぼ同時のタイミングで鳴り響く。
その瞬間、人型戦車達に降り注ぐ無数の瓦礫。新人達が仕掛けた罠(指向性地雷)が廃墟を崩壊させたのだ。
崩れ落ちる廃墟。面を押し潰すかのような瓦礫の雨に、人型戦車は回避に動こうとするが……もう遅い。
次々と降り注ぐ瓦礫に埋もれて、人型戦車の動きが封じられていく。
「今です!」
そうとなれば、あとは簡単だ。
信子の指示が戦場に響けば、あちらこちらから姿を表す新人達。その手には信子の予備の武器が握られており……新人達は狙いを定め、思い思いに銃火を放つ。
降り注ぐ銃火は、瓦礫に埋まり身動きが取れない戦車達を次々に捉えて、スクラップへと変えていく。
……が、しかしだ。敵はオブリビオン。並大抵の攻撃では、撃破は難しい。
そんな事は、信子とて百も承知である。
(影の触手よ……!)
故にトドメとして放つのは、理外の力であるユーベルコード。己の権能でもある、影の力だ。
信子の足元から伸びる影は、瓦礫の下の闇をその支配下に置いて。目立たぬ様に、だが確実に敵の力を削っていく。
こうして少しずつ削っていけば、新人達の銃弾が敵を撃破したという『演出』も出来るはずだろう。
……必要なのは、『新人達が戦えた』という経験と自信。その為ならば、いくらでも縁の下の力持ちになってやろう。
新人達が放つ銃火が人型戦車の装甲を叩く様子を目にしながら、信子は影の力の調整に意識を傾けるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
秋山・軍犬
焔「火炎放射神拳、20㎝焦熱徹甲拳ッ!」
…はい、という訳で念の為に呼んでてよかった焔ちゃん
元気に戦車装甲をぶち抜く彼女を
新人の護衛に付ければ滅多事はないよね
で、新人達は先ずは落ち着く事、恐慌せず安全圏に退避ね
援護? 君ら対戦車装備なんてないでしょ?
攻撃しても相手の気を引くだけよ
君らの現在の練度で囮役とか無いから
戦う奴の負担を増やさない事が君らの仕事ね
…しかし、戦闘は拠点の弾薬とか減るから
食材になる奴なら良かったのに
戦車か~…せめて、このバキッと(怪力+覇気+グラップル)
剥がした機銃や装甲版、再利用できんかな?
オブリビオンのパーツだから安全性を
鑑定しないとだけど、う~ん…?(メカニック+見切り)
●
「火炎放射神拳、20cm焦熱徹甲拳ッ!!!!」
轟ッ!! と、吹き上がる炎。奇声一発拳を振るったヒャッハーの精霊少女の一撃が、人型戦車の装甲を穿つ。
最新の科学が生んだ装甲であっても容易くブチ抜くその拳とその熱量は、紛うこと無き必殺拳。
そんな拳を振るう精霊が護衛に付いているのだから、軍犬が面倒を見ていた新人達に犠牲が無いのは当然であった。
とは言え、だ。突然の乱入者に新人達が動揺を覚えるのは致し方ない事である。
「はいはい。新人達は先ずは落ち着くこと。アレ見れば判る通り、滅多な事は無いだろうから」
そこを宥めるのが、軍犬の役割だ。
今もまた別の人型戦車に拳を叩きつけて奇声を上げる精霊を指差せば、新人達の動揺も収まるだろう。
そうして動揺を収めれば……。
「それじゃ、後は慌てず騒がず安全圏に退避ね」
新人達を、後方の安全圏へと送り出すのみである。
……が、そこで新人達から不満の声が漏れる。
自分達とて奪還者を目指す者。自分達だって戦えると……そんな不満だ。
せめて、援護だけでもと。食い下がろうとする彼らに対し。
「援護? いやいや、君ら対戦車装備なんてないでしょ?」
軍犬の反応は、にべもない物だった。
……確かに、新人達は奪還者志望。それも所謂『期待の新人』だ。
そんな立場であれば当然、これから戦場に臨む事もあるだろう。だがそれは、今ではない。
他の猟兵の様に、手取り足取り出来れば話は別であるかもしれないが……それも出来ない以上、装備も練度も無い者達を戦場に立たせる理由など、有りはしないのだ。
「戦う奴の負担を増やさない事が、今の君らの仕事ね」
さ、行った行ったと。追い払うかのように軍犬が手を振れば、新人達も不承不承と言った様子で指示に従い引いていく。
もうちょっと言い方はあったかもしれないが……時には事実を指摘するのも、優しさだ。
そしてその事実から感じた悔しさが、彼らの成長の糧となってくれる事を祈りたい物である。
「しかし、うーん……戦車か~」
去っていく新人達を見送って、意識を戦場へ戻す。
軍犬の視線の先では、また一体の人型戦車が火炎放射神拳の餌食となっている様子が目に映る。
現れたオブリビオンは、戦車。鉄の塊である。軍犬の理想(食べても問題ない未知の食材)とは相容れぬ存在である。
……だがまぁ。鉄というのはこの崩壊世界では貴重な物資だ。装備品の機銃やら装甲板やら、剥がして再利用出来れば非常に有効そうなのだが……。
「オブリビオンのパーツだからなぁ……うーん?」
問題は、この戦車がオブリビオンであるという事か。汚染されていないとも限らないし、持ち帰って大惨事というのは避けたい所である。
擱座した人型戦車の装甲板をバキッとその手で引き剥がし、検分する軍犬。首を傾げつつ鑑定に勤しむその後ろでは、更に一体の人型戦車が大破炎上し地に転がるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
セフィリカ・ランブレイ
理想的、とは言わないが
実際に成功体験を積むのは、最高の訓練だ
自分はやれるって感情は魂を奮い立たせる
私がボコボコにされた時も、この私が!やれないわけないでしょ!の気持ちに支えられたし
あれはただの意地だった気かな……
『で、どうするわけ?』
沈みかけた私をシェル姉が引き戻す
数を減らす所からだね
皆を退避させつつ
私との戦いを見ててね。相手はどんな動きをするのか
どう動けば、相手の攻撃に対処できるのか。それをイメージしてみて
勿論貴方達は一人で戦うんじゃない、皆で戦うんだからね?
【月詠ノ祓】
相手の攻撃を見極め、回避の例を見せつつ切り伏せる
何体か残すよ。そいつとは彼らが戦うんだからね
勿論サポートはするけどさ!
●
成功体験、というのは重要な物である。
その経験は心に自信を植え付け、魂を奮い立たせる糧となるからだ。
(私がボコボコにされたときも、『この私が! やれないわけないでしょ!!』って気持ちに救われたし)
自身、そんな経験があるからこそ。セフィリカもまた、新人達を後ろに下げる事はしなかった。
ここで彼らを後ろに下げて忸怩たる思いを抱かせるよりは、前向きになる要素を心に抱かせてやりたかったのだ。
(……いやまぁ、私のときはただの意地だった気もするな)
(──で、どうするわけ?)
一瞬沈み込みかけた意識を、相棒の声が引き戻す。
あぁ、そうだ。今はとにかく、迫りつつあるあの人型戦車の群れへの対処を考える段階だ。
まずは、あの数を減らす事。
その上で、戦い方を見せつけて……新人達の手本となれればいいのだが。
「ま、やるだけやってみますか。皆、少し退避して……私のやり方を見ててね!」
言いつつ魔剣を引き抜いて、飛び出すセフィリカ。その姿を認めて、人型戦車の砲塔が狙いを定める。
セフィリカを狙う砲門。その筒先を、セフィリカが睨む。
(……うん、確かに戦車は厄介だ)
砲は強力で、装甲に護られた防御力もかなりの物。
その上、相手は人型だ。小回りだって、馬鹿には出来ない。
だが、しかしだ。相手の武装が銃である以上。その狙いは銃口の先の直線上。
つまりその銃口から逃れてしまえば、銃弾の直撃を受ける事などありはしないのだ。
「相手の攻撃を見極めれば……ッ!」
零れ出る鋭い呼気。瞬間、相手の砲弾が放たれるよりも早くセフィリカの脚が地を蹴り、驚異的な加速でその体を射線から外す。
空を切る砲弾。その行末を振り返る事無く、再びセフィリカが地を蹴って距離を詰め。
──ザンッ!
銀閃一閃、振るわれる魔剣。その一太刀で鋼を断ち、人型戦車を斬り捨てる。
崩れ落ちる鉄の塊。その姿を一顧することも無く。
「……さて、ちゃんと見てたかな?」
新人達に振り返り、セフィリカが笑うが……新人達の表情は、呆気に取られた物だった。
卓越した剣技と、身体能力。そして反射神経と直感。その全てに秀でたセフィリカだからこそ出来た、人型戦車の討伐だ。
これと同じことをやるのは、無理という物では……と。新人達が呆気に取られるのも無理はないだろう。
「まぁ、ほら。貴方達は一人で戦うんじゃない。皆で戦うんだからね?」
そんな新人達を宥める様に、セフィリカは笑う。
そう。セフィリカの戦い方をしっかりと見ろとは言ったが、別に同じことを一人でしろとは言っていないのだ。
チームを組み、手分けをして。それで同じことが出来る様になれば、それでいいのだ。
「どう動けば、相手の攻撃に対処出来るか。それを常にイメージすることが大事だからね」
笑顔を浮かべたままのセフィリカの言葉に、頷く新人達。
きっと彼らはセフィリカの教えを理解し、実行し。一廉のチームへと、成長を遂げてくれるはずだ。
「さぁ、それじゃあ次は君達の番! 勿論サポートはするから、安心して!」
そんな期待を込めつつ、新人達を促すセフィリカ。
残りの敵は、あと僅か。これならきっと、新人達でも上手くやれるはず。
セフィリカがそう感じた、その瞬間だった。
──ゾクッ。
セフィリカの背筋を走る、悪寒。
その悪寒は、過去にも感じたことがある物のはず。
『命の危機』を告げる、それであった。
「──退避ッ! 急いでッ!!」
慌てて叫ぶセフィリカ。その必死の様子に新人達も脱兎の如く逃散って、物陰へ潜み……。
──ドゴォォォォォッ!!!
猛烈な爆音と、全てを押し流すかのような爆炎と爆風が。
演習場を、突き抜けたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『『超重戦車』スーパーモンスター』
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POW : ウルトラ・ザ・キャノン
【旧文明の国際条約の破棄】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【主砲の砲弾を大都市を一撃で消滅させる砲弾】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD : 加農・ファランクス
レベル分の1秒で【全砲門に砲弾を再装填し、連続で砲弾】を発射できる。
WIZ : ゴールキーパー
【連続で射撃攻撃を行う、大口径の車載機銃】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「アララギ・イチイ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
演習場に吹き荒れた、猛烈な爆炎。
全てを吹き飛ばすかのようなそれを間一髪、猟兵と新人奪還者達は躱していた。
今の爆風は、なんだったのか。まるで天から猛烈な爆撃を受けたかのようなそれは、なんだったのか。
疑問を頭に浮かべたまま、一行がゆっくりと顔を上げれば……。
そこに、奴はいた。
──ゴゴゴゴゴゴゴ……。
重く響く駆動音。黒く輝く鋼の巨体。
そしてなにより特徴的な、長大な巨砲。
先程相手をした『ウォーキングタンク』などとは比べ物にならぬ程の、圧倒的な巨体を誇る暴走戦車がそこにいた。
まさか、今のは奴の砲撃であったのか。あの人型戦車は、奴の露払いだったのだろうか。
……いや、その辺りの事を考える余裕は無いだろう。
奴がゆっくり進む進路のその先には……あのスタジアムが。成長しつつある、拠点があるのだ。
もしあの巨砲が牙を向けば。いくらスタジアムが堅牢であったとしても、一溜りもないはずだ。
……ここで、食い止めねばならない。拠点に属する者達が、覚悟を固めるが。
──ここは、任せろ。
その前に立つのは、猟兵達だ。
いくらなんでも、アレの相手をするのは奪還者達では荷が重いだろう。
ならば、彼らには大人しく下がってもらって……猟兵達が、引き受けるべきであろう。
──ここから先へは、進ませない。
ここから先は、演習などではない。
本気を出した猟兵が見せる、理外の力のぶつかり合いだ。
かつての文明が生み出した機械仕掛けの怪物を、猟兵達は止める事が出来るだろうか?
====================
●第三章、補足
第三章はボス戦。
『『超重戦車』スーパーモンスター』が相手となります。
本文中の通り、敵のサイズは巨大。装甲も分厚くなっています。
また外観の通り、大小様々な砲門で身を守り火力も十分以上の物を持っています。
まさに、その名の通りの怪物であると言えるでしょう。
戦場となるのは、一章二章と代わりはありません。
ですが都市部の廃墟は敵の砲撃で薙ぎ払われ、既に遮蔽の意味をなしません。
猛烈な火力をどう凌ぎ、敵の装甲を抜く攻撃を通すかが重要な要素となるでしょう。
本文中の通り、拠点所属の奪還者達は後退しています。戦闘に関与する事はありません。
しかし遠目から猟兵の活躍を見届けようと、ギリギリの所で踏み止まっています。
そんな彼らの前で、どんな風に振る舞うか。その辺りも考えると面白いかもしれませんね。
迫りくる、科学が生み出した『怪物』。
圧倒的な火力と装甲を、猟兵はどう対処するのか。
皆様の熱いプレイング、お待ちしております!
====================
備傘・剱
さぁて、生徒にスパルタかましたんだ
先生もスパルタ方式で頑張らないと、示しがつかんからな
全兵装、完全起動、そして、雷獣駆、発動
オーラ防御を体に纏い、式神を召喚して、敵の攻撃をかく乱するぞ
そして、ブレス攻撃を弾幕にして、接近し、誘導弾、呪殺弾、衝撃波を零距離射撃と鎧砕きに鎧無視攻撃、雷獣駆の攻撃能力を一点集中して、装甲をぶち抜くぞ
その後は、高機動を利用して車輪を重点に機動力を削ぐ形で攻撃していくぞ
これだけの巨体、細かい敵の相手は苦手と見た
それに、砲塔は、念動力と怪力で捻じ曲げてくれるわ
さぁ、楽しい授業の時間だ
悪い例を知る為な
こんな戦い方は、ガチの命知らずがやる事だぜ?
アドリブ、絡み、すきにしてくれ
●
大地を揺るがす重低音。
天を衝くかのような巨大な砲身を猛々しく掲げながら、鉄の怪物が迫る。
……その威圧感は、まさに圧倒的。真正面から挑むのは自殺行為であると、誰もがそう感じるだろう。
「さぁて、生徒にスパルタかましたんだ……」
だがそんな『怪物』を前に、剱の顔に怯みは無い。
演習と人型戦車との戦いにおいて、剱は生徒である新人探索者達に掃討なスパルタ教育を課していた。
剱の指導は、常人ならば確実に怯み脱落するのは間違い無い程に厳しかった。
だがそんな厳しい教えにも、新人達の多くが歯を食いしばりながら食らいついて来てくれたのだ。
そんな彼らの前で、芋を引くような態度を見せては……先生として、示しが付かないではないか。
「全兵装、完全起動」
決意と戦意を示す様に言葉を紡げば。剱の全身至る所に埋め込まれたバッテリーが稼働する。
廻り始める生体電流。その漆黒の電流が体を包めば、五体に身に付けた装備群が稼働する。
瞬く剱の額。電光迸る角を輝かせ、一歩二歩……。
「──雷獣駆(ブレイジングビート)、発動!」
地を蹴り、跳躍すれば。剱の体が、掻き消える。
……【雷獣駆(ブレイジングビート)】。漆黒の迅雷を纏い、戦闘能力の向上と飛翔能力を得るという、剱の持つユーベルコードの一つである。
その最大の特徴は、やはり飛翔速度だろう。その最大速度は時速9700km、つまり秒速2.7kmに達すると言うのだ。
それほどの速さであるのだから、常人の目で捉えられるはずも無い。姿が掻き消えた様に見えるのも、当然の事だろう。
そんな異能の業で剱が加速した、次の瞬間。
──ズガガガガガッ!!!
『怪物』に、無数の爆炎が咲き乱れる。
剱の姿は……『怪物』を見下ろすかのような、上空にある。
どうやら一瞬であの位置まで翔け上がり、何らかの攻撃を『怪物』に見舞ったらしい。
……爆炎が収まり、戦場を満たした白煙が晴れる。
そこから現れた、『怪物』の姿は……。
「……この程度では、かすり傷にもならんか」
全くの、無傷。上空からの攻撃を意にも介さぬという様に、その進路は変わらぬままだ。
成程。その見た目の通り、防御力に関してはかなりの物であるらしい。
だが、それはそれで別に構わない。
今の攻撃は、あくまでも仕込み。
本命は、これからなのだから。
「さて、悪い例を知る為の──楽しい授業の時間だ」
呟き、再び体に電流を巡らせる。
ゆらり、と体を脱力させて──。
──ドンッッッ!!!
次の瞬間、空気を貫く音を残して再び掻き消える剱の体。
音を置き去りにする世界の中で、剱が真っ直ぐに見据えたのは敵の下底部。鋼鉄の巨体を支える、車輪部分だ。
敵はその巨体故、機動力はお世辞にも早く無い。
ならばまずはそこを突くべきだ、と。剱はそう、考えたのだ。
そんな剱の行動を防ぐかのように、据え付けられた大小様々な砲や機銃が剱に向けられ、迎撃の砲火が立ち昇る。
濃密なその対空砲火は、隙を見出す事も難しい程。接近までのほんの僅かな時間でこうまで濃い対空砲火を形成出来るとは……圧倒的な攻撃力は、こういった応用の仕方も出来るという事だろうか。
だが、まぁ……。
「──全て、遅いな」
『見当違いの方向へと飛んでいく』対空砲火の火線を眺めた剱のその呟きの通り。『怪物』の行動は全てにおいて、遅かったのだ。
……一番最初に剱が放った攻撃。アレが仕込みである事は、既に触れた通りである。
その仕込みとは、周囲に式神を配する為の目眩まし。敵の攻撃を撹乱し、惑わす為の一手であったのだ。
その撹乱があった上に、そもそも剱の速度が早すぎる。
『怪物』の対空砲火が剱を捉えられる道理など、最初からありはしなかったのだ。
「こんな戦い方は、ガチの命知らずがやる事だが……!」
懐へと潜り込み、ガントレットに覆われた掌を車輪へと叩きつける。
額の角と共に強い稲光を放つその一撃には、剱の身に付けたありとあらゆる武技が込められている。
その力を、ユーベルコードで底上げしているのだ。
いくら装甲が硬かろうが、砕けぬはずなど無い!
──ゴッ、ガァァァァァッ!!
響く爆音。鋼が裂ける破断音。そして大きく揺らぐ、鋼の『怪物』。
剱自身が言う通り、命知らずの所業ではあったが……その行いは、敵に確かな一撃を刻み込むのだった。
大成功
🔵🔵🔵
火土金水・明
「戦車は横方向ではなく縦方向から攻撃をしたほうが良いと聞いた覚えがありますが、ここまで大きいと考えてしまいますね。ひとまず、範囲攻撃でいきましょうか。」
【WIZ】で攻撃です。
攻撃方法は、【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】と【貫通攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【全力魔法】の【サンダーランス】を【範囲攻撃】にして、『『超重戦車』スーパーモンスター』全体を巻き込めるように攻撃します。相手の攻撃に関しては【見切り】【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「少しでもダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等はお任せします。
●
「戦車は横方向ではなく縦方向からの攻撃をしたほうが良いと、聞いた覚えがありますが……」
我が身を省みぬ命知らずの一撃が鋼の巨体を揺らすその光景を眺めながら、火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)が呟く。
戦車とは、陸の王者とも呼ばれる兵器である。地上戦の要として、時に敵戦線を崩す矛となり、時に友軍を守る盾ともなる兵器である。
だがその性質上、戦車には幾つかの弱点がある。特に顕著なのは、地に埋め込まれた地雷や空を征く航空機など……縦方向からの攻撃に対する弱さであろう。
しかし、迫りつつあの『怪物』は……。
「ここまで大きいと、考えてしまいますね」
猟兵の一撃は確かに通じたはず。だがその巨体から見れば、損害は軽微という事か。
どうやらあの『怪物』は、その巨体故のタフさで以てその弱点を克服しているらしい。
……尤も、見たところ相手が猟兵の動きに完璧に対応しているとも思えない。
で、あればだ。
「……ひとまずは、範囲攻撃でいきましょうか」
状況を見極め明が選んだのは、範囲攻撃。
鋼の巨体の全身を、余す事無く包み込むような攻撃を打ち込む、その為に。
「我、求めるは、新たな雷撃の力……」
呟き、意識を集中する。
体に渦巻く力を高め、練り上げていく姿をイメージすれば。その手に携えた七色に輝く杖が一層強く輝いて、その力の高まりを示すだろう。
膨れ上がる力は次第に臨界へと向かい、バチリバチリと……紫電を奔らせ暴れ出す。
そうして極限まで高めた、その力を──!
「──サンダー、ランスッ!」
稲妻の槍と変えて、撃ち放つ!
放たれたその槍の数は、実に490本。その数を前にすれば、頑健さを誇る巨体は逆に仇となる。
轟く雷鳴。『怪物』の装甲を貫き突き刺さる槍の一本一本が、その稲妻の具現化である。
如何に頑健さを、タフさを誇る『怪物』であろうと、タダでは……。
「……っ」
瞬間、明の背筋に走る悪寒。感じたその直感のままに外套の裾を翻せば、稲妻の残滓が明の残影を造り出し……。
──ガガガガガガガッ!!
直後、その残影は飛来した機関砲弾に爆ぜ散り消える。
とは言え、ただ無為に撃ち抜かれた訳ではない。稲妻の力を内包していた残影は、爆ぜた際にその力を撒き散らし機関砲弾を巻き込んでいた。明の盾としての役目を果たしたのだ。
そんな残影を囮に使った、明はと言うと……。
「残念。それは残像です」
稲妻が荒れ狂うその隙に、既に射線の外へと逃れていた。ここまで距離を取れば、反撃はもう無いだろう。
……しかし、あれだけの攻撃の直撃を受けてなお、反撃する事が出来るとは。
「……本当に、呆れる程のタフさですね」
とは言え、『怪物』はその至る所から白煙を上げている。無傷、という訳では無いはずだ。
決定的な一打、とは行かなかったが。だがそれでもしっかりとダメージを与え、続く者へとバトンを繋ぐ。
明は見事に、己に課したその務めを果たして見せたのだった。
成功
🔵🔵🔴
セフィリカ・ランブレイ
流石に新人訓練の範疇じゃない
何時かは彼らにもあれが倒せる脅威である事、示さなきゃね!
解体プラン必要だね
足を止めて砲台壊して機関を潰す
私も機械屋だ、狙われたくない場所はわかる
構造の脆い所を割り出して攻めよう
シェル姉、行くよ!
剣を握り力を込める。私と魔剣の魔力が混ざり合う
髪が青く染まり、紫電で靡く
その姿、力はかつての剣の魔神のよう
この速さで、相手を攪乱して攻撃に移る
『使い過ぎには注意しなさい。融合に近いこの状態、長く続くと戻らなくなるわよ』
シェル姉の声がいつもより近く聞こえる
【神薙ノ導・檻神】
戦う相手を理解し、自分を最適化するのが神薙ノ導
派生進化したこれは、残り続ける斬撃で相手の択そのものを縛る
●
(アレの相手は、流石に新人訓練の範疇じゃあないね……!)
砂埃と煤とで汚れた衣服を手で払いつつ、セフィリカが立ち上がる。
その視線が向けられるのは、迫りつつある鋼の『怪物』。
既に数度猟兵の攻撃を受け至る所から白煙を巻き上げてはいるものの、その威容はまだ健在。
先程セフィリカ自身が間一髪躱した砲撃も考えれば、新人達にアレの相手をさせるのは酷というものか。
ならば、ここは自分が請け負うべきだ。その上で、何時かは彼らにもアレが倒せる脅威である事を示すべきだろう。
……新人達には、その道に到れる可能性があるのだから。
「とは言え、なぁ……」
アレだけの巨体である。解体プランは必須だろう。
セフィリカは類稀なる才を持つ剣士であるが、同時に優秀な技師(エンジニア)でもあり、操縦者でもある。
そんな多角的な視点を持つセフィリカからすれば、敵が狙われたくない場所は手に取るように判る。
(足を止めて、砲台を壊して、機関を潰す、かな……?)
足に関しては、既に狙っている者がいる。任せてしまって問題無いだろう。
ならば、各部を動かすエネルギーを供給する動力機関……は、敵も恐らく守りを固めているはずだ。
やはり、ここで叩くべきは……。
「やたら多い、砲門かな」
そうと決めれば、話は早い。
腰に佩く相棒である魔剣を抜き放ち、意識を注げば。セフィリカの内に宿る魔力に、魔剣に宿る魔力が呼応する。
混ざり合う二つの魔力。膨れ上がるその力は、迸り靡く紫電と変わる。
「──シェル姉、行くよ!」
紫電にの中で踊る、セフィリカの『青髪』。その姿は、魔剣に宿る剣の魔神……シェルファの生き写し。
溢れ出る魔力。その強力無比な力は否応なく、多くの存在の意識を惹き寄せる事だろう。
──ギギ、ゴゴゴ……!
『怪物』もまたその例外ではなく、セフィリカが発する気配を脅威と見たか。
無数の砲門が重く不気味な音を立てながら向けられて……篭められた砲弾が、放たれる。
絶え間なく放たれ続ける砲火。糸を通す隙間すら無い程の密度のそれは、まさしく死の壁だ。
そんな壁を前にして、セフィリカの表情に怯えは無い。
むしろ不敵に口の端を釣り上げて……次の瞬間、ひゅん、と。姿が掻き消える程の疾さで迫る砲弾を躱してみせる。
そうして、その疾さのままに。
「ハァッ!!」
今度は『怪物』の懐へと潜り込み、手近な砲門へ向けて魔剣を振るう。
閃く剣閃。同時に魔剣の魔力が時空を歪ませ、その場に残り繰り返される斬撃を作り出す。
……機械というのは、繊細な物だ。特に銃というものは、銃身の僅かな歪みが故障の原因となり、最悪暴発さえありうるのだ。
セフィリカが狙ったのは、それだ。繰り返される斬撃で砲門を歪ませ、砲自体を使用出来ない状況にしてしまう事を、狙ったのだ。
『使い過ぎには注意しなさい。長く続くと戻らなくなるわよ』
「りょーかい! 次ッ!!」
普段よりも近い距離から聞こえる『姉』と慕う存在の声に返しつつ。再びその場から姿から姿を晦まし、セフィリカは別の砲門を狙う。
己の才覚と経験を活かし、セフィリカは的確にその力を振るうのだった。
大成功
🔵🔵🔵
秋月・信子
●POW&真の姿
演習用に持ち込んだ武器弾薬は先程の戦闘でほぼ使い切り、残っているのは先程使わず仕舞いだったLAMだけですね
それならば…コード・ヴァイス
飛行ユニット展開、目指すは…頂の主砲と思わしき巨砲
私の魔弾としても、この巨躯を機能停止させるには弾がいくらあっても足りません
ですが、唯一装甲が施されていない箇所…つまり砲弾の発射口
その奥で既に装填済みの砲弾並びに次弾が積まれた弾薬庫に誘爆させれば…
対空射撃は、向けられた射線から【見切り】、弾幕を掻い潜り目標に到達したら魔弾化させた弾頭を砲口に向け発射します
『紅蓮の魔弾』よ…鋼鉄の怪物の内部を爆炎で燃やし尽くしなさい
過ぎたる力は身を滅ぼす、ですね
秋山・軍犬
…もしもし秘水ちゃん?(通話中)
ちょっと【指定UC】を…実家の仕事が忙しい?(爆風回避)
そう言わずにお願いしますよっ…と!(砲弾迎撃)
秘水「も~、忙しいのに呼ばないで…」
…って何ですアレ…拠点の方に…ええ!?
軍犬さん迎撃しますよ!精霊機神に乗って下さい!
まずは…精霊式防護結界、多重展開!
防御を固め他の皆さんや拠点への砲撃を引き付けましょう
敵も50m級の精霊機神を無視はできない筈です
そして、邪神すら討つ触手の勇気とか魂の力で
その砲撃ごと叩き潰して…あ、皆さん大きい攻撃いきますんで
退避お願いします!
秘水「腕部必滅機構、封印解除…触手精霊力無限増殖…掌握!」
超重必滅術式、テンタクルスインパクトッ!!
●
「もしもし、秘水ちゃん? ちょっと『テンタクルスマン』を……実家の仕事が忙しいっ?」
時は少し遡り、猟兵の攻撃が『怪物』の身を削り始める少し前。
押し寄せる敵から放たれた砲弾が乱れ飛び、広がる爆風を軽やかに躱す軍犬の姿があった。
その手に握られるのは携帯電話。耳に当てて連絡を取る『秘水ちゃん』とは、軍犬と契約を交わした水精霊の一種であった。
「まぁまぁ、そう言わずにお願いしますよっ……と!」
渋る通話先の相手を宥めつつ、直撃コースに乗っていた砲弾を迎撃。響く爆音に、軍犬も思わず顰めっ面だ。
……そんな通話先の爆音が気になったのか。はたまた単純に軍犬の懇願に根負けしたのか。
軍犬の側の空間が歪み、ぽんっと全長20cm程度の影が顕れる。
「……も~、忙しいのに呼ばないで……」
ブツブツと呟く小さな影。彼女こそが契約精霊こと、『秘水 クティ』。蛸の足のような下半身を持つ、触手の精霊だ。
実はお嬢様であるらしい彼女。実家の方でお勤めが忙しかったらしく、その呟きには多分に愚痴の色が篭められているが……。
「──って、なんですアレ!?」
「あ、アレどうもあの拠点に向かってるっぽいっすよ?」
「ええっ!? 軍犬さん、迎撃しますよ!!」
遠くから見ても判る鋼の異形を目にすれば、その愚痴も吹っ飛ぶだろう。
そうしてその上で、アレが例の拠点……『塩田作り』を手伝った、あの拠点に向かっていると聞けば。
精霊少女の心に灯る義憤の炎は燃え上がり、無垢なる触手が顕現する。
「大切なものを守る為、今こそ顕現せよ! 汝、無垢なる触手! 『テンタクルスマン』!」
少女の義憤に応じ、次元を越えて顕れる巨大な人影。
全長50mを誇るその巨体は、最近流行りの人型兵器(キャバリア)などでは無い。ユーベルコードが具現化した、精霊機神と呼ぶべき存在だ。
……戦場に突如現れたそんな巨体に脅威を感じたか。今まさに猟兵達の攻撃を受けつつあった『怪物』が反応を示す。
上層に鎮座する最も巨大な砲門……砲口径120cmを誇る最強の主砲が、『テンタクルスマン』に狙いを定めたのだ。
「よぉし、まずは……精霊式防護結界、多重展開!」
そんな敵の動きに、機体を操る軍犬は慌てない。
敵がこちらを狙うであろう事は想定出来ていた。
ならば防御をしっかりと固め、敵の攻撃を引き付けようと……軍犬は最初から、そうするつもりで動いていたのだ。
(──あれは確か、塩田の時に……)
そんな軍犬と、彼が喚び出した『テンタクルスマン』の様子を別の位置から眺めている者がいた。
先程の人型戦車との戦いでは自ら囮役を務めていた、信子である。
勇壮なあの巨体は、塩田作りの際に共に作業に従事した覚えた信子にはあった。
そんな巨体の、あの動きは……今度は彼らが、囮役を務めてくれるというのだろうか?
ならば、彼らがあの『怪物』の動きを引き付けているその隙に。自分が勝負を決める一手を打たねばならないだろう。
そう直感し、信子が手持ちに武装を確認するが……。
「残っているのは、LAMだけですね……」
持ち込んだ重火器の殆どは、新人達が弾丸を撃ち果たして使用不可。残る武器で有用そうなのは、先程の戦いで使う機会が無かったLAMくらいであった。
……敵はあの巨体で、そのサイズに比する様に頑健さも相当な物。猟兵達が次々と痛打を与えているが……現状の信子の手札では、火力不足の感は否定出来ない。
「それならば……ROSETTA、『コード・ヴァイス』」
だがそんな火力不足は、あくまでも普通に戦えば、である。
懐から端末を取り出す信子。その画面に浮かぶホログラムに向けて音声入力を行えば、たちまち信子の体を光が包む。
青を基調とするセーラー服が光に解け、露わになる白い肌。その柔らかな肢体に光が張り付けば、たちまち白を基調としたインナースーツと、青を基調とした機械的なアーマーが構築されていく。
この装備は、信子の能力を補佐する戦闘服。身体能力の強化を始めとした、様々な機能を有するパワード・スーツだ。
「飛行ユニット、展開!」
そんなスーツが有する機能の一つ、飛行ユニットを展開させて。信子の体が、宙を舞う。
LAMを携えて高空へと駆け昇れば。眼下では今まさに、精霊機神が巨砲の直撃を受けた所だ。
華開く爆炎。都市一つを灰燼に帰す威力が秘められたその砲撃を受けた『テンタクルスマン』が大きく揺らぐが……固めた防御が奏功したか。致命傷には、至っていないようだ。
そんな精霊機神へ向けて、また再び巨砲が狙いを定めて──。
「──往きますっ!」
その瞬間を、信子が狙う。
今度は一気に距離を落とし、飛び込んだのは巨砲の砲門のその目の前。
黒々と深い砲門。その中に篭められた悪意へ向けて。
「セット、ファイヤ!」
担ぐ無反動砲を、叩き込む。
信子の手持ちの火力では、『怪物』に対して火力不足である事は既に触れた。
だが、しかし。『怪物』には信子の攻撃が刺さる箇所が僅かではあるが存在する事を……銃器使いである信子は、悟っていた。
それは、装甲が唯一張り巡らされていない砲門の発射口。その中でも特に巨大な主砲が、信子の狙いだ。
……砲門の中には、当然砲弾が装填されている。そしてその先には、次に放たれる次弾と、弾薬庫が存在する。
信子が放った無反動砲の弾頭は、長大な砲門の中を一直線に飛んで……そんな装填済の砲弾と、見事に接触する!
──カッ!!!
白い光が、荒野を満たした。次いで全てを薙ぎ払うかのような爆風が戦場を押し流し、周囲一体を吹き飛ばしていく。
……信子の放った無反動砲は、炎の力が篭められた魔弾と化した物。そんな一撃が装填済の砲弾と接触し、起爆して。そのまま弾薬庫ごと焼き払い……猛烈な爆発を引き起こしたのだ。
朦々と立ち込める爆煙。その中から姿を表した『怪物』は……その上部構造物の大半を吹き飛ばされた、見るも無残な姿を晒していた。
信子の一撃は、見事に敵に致命の一打を与えていたのだ。
だが、しかし……。
──ゴゴ、ゴゴゴ……。
『怪物』の動きが、止まらない。
機動力を奪う猟兵の攻撃を受けてなお、最後の足掻きを見せるかのように。
前へ前へと、動きを止めずに前へと進む。
「腕部必滅機構、封印解除……」
そんな手負いの獣の進路を塞いだのは、50m級の巨大な人型……『テンタクルスマン』だった。
砲撃を受けた影響か。機体の至る所が焼け爛れ、相当な損傷である事は想像に難くない。
だが、しかしだ。そんな程度で、邪神を討つ正しき怒りと魂を止める事など、出来はしない。
振り上げられる、機体の拳。その拳が、振り下ろされる中。
「……触手精霊力無限増殖、掌握!」
「超重必滅術式、テンタクルスインパクト!!」
高まる力を迸らせて、軍犬と精霊が叫ぶ。
文字通り、必殺の威力が篭められた一撃である。手負いの『怪物』に、防ぐ手立てなどありはしない。
鋼に突き刺さる拳。そのまま装甲が引き裂かれ、内部機構を叩き潰し……生じた衝撃が、地を揺らして爆炎を掻き消せば。
……『怪物』の最後の足掻きも、止まる事だろう。
立ち上がる精霊機神。勝利を掴んだその勇姿を称えるかのように、退避していた新人奪還者達が集まってくる。
……新人奪還者達の演習。大きなトラブルはあった物の……猟兵達の活躍もあって、何とか無事の成功を収めるのだった。
今日のこの日の経験は、きっと彼らをより良い方向へと導いてくれる事だろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵